(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】パターン化電極接着層が備えられた電気化学素子用の分離膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/46 20210101AFI20220307BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20220307BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20220307BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20220307BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20220307BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20220307BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20220307BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20220307BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20220307BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20220307BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20220307BHJP
【FI】
H01M50/46
H01G11/52
H01M50/403 D
H01M50/417
H01M50/42
H01M50/426
H01M50/434
H01M50/443 B
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/449
H01M50/463 B
(21)【出願番号】P 2020554844
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(86)【国際出願番号】 KR2019007106
(87)【国際公開番号】W WO2019240500
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2018-0067487
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュ-ソン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ア-ヨン・イ
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0040865(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0018408(KR,A)
【文献】特開2015-103482(JP,A)
【文献】特表2017-500688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/46
H01G 11/52
H01M 50/403
H01M 50/417
H01M 50/42
H01M 50/426
H01M 50/434
H01M 50/443
H01M 50/446
H01M 50/449
H01M 50/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性高分子基材と、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に形成されている電極接着層と、を含む分離膜であって、
前記電極接着層が、バインダー高分子を含む二つ以上のユニットからなり、前記ユニットは、電極接着層が形成されていない非形成部によって相互分離されており、
前記分離膜は、四つ以上の辺を有する多角形であり、前記多角形の内角が0°超過180°未満であり、前記非形成部は、所定の幅を有する線状であって、分離膜のいずれか一辺(第1辺)からいずれか他辺(第2辺)へ延び、前記第1辺及び第2辺は、相互隣接する辺であっていずれか一点を介して連結されて
おり、
前記分離膜は、表面の形状が四角形であり、
前記四角形は、表面の形状が縦横比1を超過する長方形であり、
分離膜の長辺から短辺まで延びる線状の非形成部が一つ以上含まれ、
前記線状の非形成部は、分離膜の一長辺から他長辺へ延びる非形成部または分離膜の一短辺から他短辺へ延びる非形成部は含まない、電気化学素子用の分離膜。
【請求項2】
パターン化電極接着層は、分離膜の全体面積を基準にして70%以上95%以下であるように分離膜に形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項3】
前記電極接着層は、乾燥状態であることを特徴とする請求項1
または2に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項4】
正極、負極、前記正極と負極との間に介在された分離膜、及び電解液を含む電気化学素子であって、
前記分離膜が請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の電気化学素子用の分離膜である、電気化学素子。
【請求項5】
請求項1に記載の電気化学素子用の分離膜の製造方法であって、
バインダー高分子樹脂と有機溶媒を混合してバインダー溶液を準備する段階と、
前記バインダー溶液を多孔性高分子基材の表面の少なくとも一面にパターンコーティングして前記表面にバインダー溶液のパターンが形成される段階と、
前記コーティングされたバインダー溶液において、溶媒と非溶媒との相分離によって電極接着層に微細気孔を形成する段階と、
前記段階によって前記分離膜の少なくとも一面に前記パターン化した電極接着層が形成される段階と、を含む、電気化学素子用の分離膜の製造方法。
【請求項6】
前記バインダー高分子樹脂は、バインダー溶液中に3~50wt%の量で含まれていることを特徴とする請求項
5に記載の電気化学素子用の分離膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン化電極接着層を備えた電気化学素子用の分離膜及びその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2018年6月12日出願の韓国特許出願第10-2018-0067487号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、電気化学素子分野においては、安全性の確保に大きく注目している。特に、リチウム二次電池のような二次電池は、正極、負極及び分離膜を備えた電極組立体を有し、このような電極組立体は、正極と負極との間に分離膜が介在された構造で製作することができる。
【0004】
リチウム二次電池に使用される分離膜は、多孔性である織布または不織布の形態であるか、またはフィルムまたは膜の形態である場合、乾式法または湿式法によって気孔を形成した多孔性分離膜である。しかし、これらの多孔性分離膜は、電極との密着力の向上のためにバインダーを用いるが、このようなバインダーは、多孔性高分子基材の表面にコーティングされるだけでなく、前記多孔性高分子基材の気孔内にも浸透して分離膜のイオン通路機能を損ずるという問題点を有している。
【0005】
多孔性分離膜は、電極と組み立てられて電極組立体または電池(セル)を形成するために、分離膜の上に電極接着層を備えることがあり、このような電極接着層の有無及び/または接着力の発現時点及び/または接着力の大きさは、リチウム二次電池の種類によって具体的に変わり得る。
【0006】
リチウム二次電池の種類には、正極及び負極を丸く巻き取った巻取型(ゼリーロール型);正極、負極及び分離膜を順次積層したスタック型;そして、これらの混合形態として、正極、負極及び分離膜で構成された単位セル(unit cell)を長いシート状の連続的な折り畳みフィルム(folding film)(例えば、分離膜)を用いて折り曲げ/巻き取った構造の積層・折り畳み型;のリチウム二次電池などが挙げられる。
【0007】
このうち、スタック型または積層・折り畳み型リチウム二次電池は、製造が容易であり、空間を効率的に活用できる構造を有し、電極活物質の含量を極大化することができるため、高い集積度の電池を具現することができる。このような積層型または積層・折り畳み型リチウム二次電池の場合には、分離膜の上に備えられた電極接着層が乾燥した状態で電極との接着力が具現されればこそ、定位置で積層型または積層・折り畳み型の構造に製作可能である。ところが、電極組立体が電池ケースに収納された後に電解液が注液された場合、接着された電極では電解液が含浸する空隙が閉塞してしまい、電極への電解液の含浸に時間が長くかかり、その結果、二次電池のエージング(aging)に過度な時間を要するという問題がある。
【0008】
巻取り型リチウム二次電池は、積層・折り畳み型リチウム二次電池に比べて電極と分離膜との接着力に対する必要度が低い方であるが、電極組立体の捻れ防止のために接着力を有する機能性層を分離膜の上に備え得る。この場合にも、電極は電解液の含浸に過度な時間が必要となるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、電極と分離膜との接着のために、分離膜の上に電極接着層を形成すると共に、電極と分離膜との界面における電解液の含浸性を改善させた電極接着層が備えられた分離膜を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、正極、負極、正極と負極との間に挟まれた分離膜及び電解液を含む電気化学素子、より具体的には、リチウム二次電池であって、前記電極接着層が備えられている分離膜を含む電気化学素子を提供することを他の目的とする。
【0011】
また、本発明は、電極組立体に捻れを生じさせないながらも、パターン化した電極接着層を分離膜に形成する方法を提供することをさらに他の目的とする。
【0012】
本発明の他の目的及び長所は、下記する説明によって理解でき、本発明の実施例によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を達成するための電気化学素子用の分離膜に関する。本発明の第1具現例は、前記分離膜に関し、前記分離膜は、多孔性高分子基材と、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に形成されている電極接着層と、を含み、前記電極接着層は、バインダー高分子を含む二つ以上のユニットからなり、前記ユニットは、電極接着層が形成されていない非形成部によって相互分離されており、前記分離膜は、四つ以上の辺を有する多角形であり、前記多角形の内角が0°超過180°未満であり、前記非形成部は、所定の幅を有する線状であって、分離膜のいずれか一辺(第1辺)からいずれか他辺(第2辺)につながり、前記第1辺及び第2辺は、相互隣接する辺であっていずれか一点を介して連結されている。
【0014】
本発明の第2具現例は、前記第1具現例において、前記分離膜は、表面の形状が四角形である。
【0015】
本発明の第3具現例は、前述のいずれか一具現例において、前記分離膜は、表面の形状が縦横比1を超過する長方形であり、分離膜の長辺(long side)から短辺(short side)までつながる線状の非形成部が一つ以上含まれ、前記線状の非形成部は、分離膜の一長辺から他長辺へ延びる非形成部または分離膜の一短辺から他短辺へ延びる非形成部は含まない。
【0016】
本発明の第4具現例は、前述のいずれか一具現例において、パターン化電極接着層は、分離膜の全体面積を基準にして70%以上95%以下であるように分離膜に形成されている。
【0017】
本発明の第5具現例は、前述のいずれか一具現例において、前記電気化学素子用の分離膜の電極接着層は、乾燥状態である。
【0018】
本発明の第6具現例は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在された分離膜、及び電解液を含む電気化学素子であって、ここで、前記分離膜は前述のいずれか一具現例に記載の電気化学素子用の分離膜である。
【0019】
本発明の第7具現例は、前述のいずれか一具現例に記載の分離膜の製造方法であって、前記製造方法は、バインダー高分子樹脂と有機溶媒を混合してバインダー溶液を準備する段階と、前記バインダー溶液を多孔性高分子基材の表面の少なくとも一面にパターンコーティングして前記表面にバインダー溶液のパターンが形成される段階と、前記コーティングされたバインダー溶液において、溶媒と非溶媒との相分離によって電極接着層に微細気孔を形成する段階と、前記段階によって前記分離膜の少なくとも一面に前記パターン化した電極接着層が形成される段階と、を含む。
【0020】
本発明の第8具現例は、前述の他具現例に記載の方法であって、前記バインダー高分子樹脂は、バインダー溶液中に3~50wt%の量で含まれている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一様態によれば、電極接着層を特定のパターンで分離膜の上に形成する場合、電極と分離膜との接着力が優秀であると共に、電極と分離膜との界面における電解液の含浸性を改善することができる。
【0022】
その結果、リチウム二次電池を製造した後に電極が電解液に含浸されるようにする工程であるエージング工程時間を短縮することができる。
【0023】
また、本発明の他の様態によれば、パターン化電極接着層の製造工程に相分離工程が含まれるため、前記電極接着層の適用による電極組立体の捻れが発生せず、電解液の含浸性が優秀であり、かつ分離膜の抵抗水準を低く維持することができる。
【0024】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一様態による電極接着層130が形成されている分離膜100を図式化して示した図である。ここで、陰影部分は、電極接着層130が形成されている部分を示し、白い部分は、接着層が形成されていない部分である非形成部120を示す。
【
図2】本発明の他の様態による電極接着層130が形成されている分離膜100を図式化して示した図である。ここで、陰影部分は、電極接着層130が形成されている部分を示し、白い部分は、接着層が形成されていない部分である非形成部120を示す。
【
図3】本発明の他の様態による電極接着層が形成されている分離膜を図式化して示した図である。ここで、陰影部分は、電極接着層130が形成されている部分を示し、白い部分は、電極接着層が形成されていない部分である非形成部120を示す。
【
図4】本発明に属しない電極接着層が形成されている分離膜を図式化して示した図である。ここで、陰影部分は、電極接着層が形成されている部分を示し、白い部分は、接着層が形成されていない部分を示す。
【
図7】電極組立体の電解液含浸テストを概略的に図式化して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0027】
このような目的を達成するために、本発明の一面による電気化学素子用の分離膜は、電気化学素子の分離膜として使われるものであって、単位セル(unit cell)に含まれる一構成要素である。前記分離膜100は、多孔性高分子基材140と、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に形成されている電極接着層130と、を含む。ここで、前記電極接着層は、バインダー高分子を含み、前記多孔性高分子基材の表面の一部を被覆する一つ以上のユニット110と、前記ユニットが形成されていない一つ以上の非形成部120と、を含む。本発明の一実施様態において、前記非形成部は、所定の幅を有する線状であり、前記線状は、直線、曲線、ある一部が1回以上折り曲げられた折り曲げ線、点線、一点鎖線などの形状に形成され得る。前記非形成部は、その一端が分離膜の最外郭線をなす「いずれか一辺」から「いずれか他辺」まで延びており、前記「いずれか一辺]と前記「いずれか他辺」とは相互隣接する辺であって、一点で出会っている。即ち、前記電極接着層は、非形成部によって面分割されており、相互所定の間隔で離隔して分離した二つ以上の電極接着層ユニットから構成されている。本発明の一実施様態において、分離膜は、この平面形状がn個の辺を有する多角形であり得、前記非形成部は、隣接している二つの辺を連結する方式で配置されている。前記平面形状は、上面視による分離膜の外郭線によって決められる形状を意味する。例えば、前記分離膜の平面形状は、分離膜に含まれる高分子基材の平面形状によって決められ得る。ここで、nは、3以上の整数である。即ち、非形成部の一端が分離膜の平面の多角形のいずれか一辺から延び、非形成部の他端が他辺まで延びるように形成されており、この際、前記いずれか一辺といずれか他辺とは相互隣接している。即ち、いずれか一点を介して相互連結されているのである。本発明の具体的な一実施様態において、前記電極接着層は、二つ以上のユニットを含み、前記ユニットは、前記非形成部によって相互所定の幅で離隔して分離されている形状を有する。本発明の具体的な一実施様態において、前記ユニット同士の間には電極接着層が形成されていない非形成部が存在し、前記ユニットは相互交差しない。
【0028】
本発明の一実施様態において、前記電極接着層は、前記ユニットを二つ以上含み得る。
【0029】
本発明の具体的な一実施様態において、前記分離膜は、平面形状が4個の辺で囲まれた四角形であり、四角形の各内角が180°未満である。具体的には、前記分離膜の平面形状は、各内角が90°であるものであって、全ての辺の長さが同一である正方形であり得、または、対向する二辺の長さが同一である長方形であり得る。
【0030】
本明細書において、「単位セル」とは、正極、分離膜、負極が順次積層されてなったものであって、電気化学素子を構成する要素として理解される。本明細書において、前記「単位セル」は、「電極組立体」と併用して使われ得る。
【0031】
本発明の一実施様態において、前記分離膜は、対向する二つの辺の長さが同一であり、相互隣接する二辺のいずれか一辺の長さが、他辺の長さよりも長い長方形であり得る。分離膜がこのような形態の長方形である場合、前記非形成部は、長辺から短辺へ延び得る。前記、「長辺」とは、長方形の分離膜を構成する四辺のうち長さが相対的に長い二辺を指すことにする。また、本願の明細書において分離膜の「短辺」とは、長方形の分離膜を構成する四辺のうち長さが相対的に短い二辺を指すこととして理解する。
【0032】
本明細書において、「電極接着層ユニット」または「ユニット」とは、直線または曲線からなるか、もしくは直線と曲線とが混合してなり、一定の面積を有する二次元(two-dimensional)閉曲線形態の、実質的にバインダー高分子を含む部分を指す。例えば、
図1~
図3の各々の電極接着層は5個のユニットからなり、
図4の電極接着層は3個のユニットからなる。前記ユニットは、その平面形状が、長方形、正方形、上辺が長い台形、下辺が長い台形、半円形、三角形のような形状を有し、パターン化電極接着層を構成し得る。しかし、ユニットの形状が前記形状に限定されることではない。
【0033】
前記ユニットの間には、電極接着層が塗布されていない「電極接着層非形成部」が存在する。本明細書において、「電極接着層非形成部」とは、分離膜の表面において電極接着層が塗布されていない部分を指称する。前記電極接着層非形成部には、電極接着層または他の機能性層が実質的に形成されておらず、最終完成したリチウム二次電池において実質的に電解液のみが存在するようになる。電極接着層非形成部を確保するためには、電極接着層の形成のためのバインダー溶液が多孔性高分子基材あるいは有機/無機多孔性コーティング層の表面に適用されるとき、前記バインダー溶液の広がりを防止することが望ましく、このために、バインダー溶液の粘度を30センチポイズ以上にすることが望ましい。
【0034】
本明細書においては、分離膜の表面上に形成されるユニット及び非形成部全体を総称して「電極接着層」と称することもある。
【0035】
前記電極接着層ユニットは、分離膜の中央部へ進むほど電極接着層非形成部の面積がより広く形成されるように設計配置され得る。本発明の一実施様態において、非形成部の幅は、分離膜の中央部分へ進むほど連続的にまたは段階的に広くなり得、及び/または中央部から外郭へ進むほど連続的にまたは段階的に幅が細くなり得る。また、電極接着層ユニットは、電解液が導入される辺を基準にして中央部まで至る距離が最短距離になるように設計配置され得る。これによって、電解液の浸透経路が最短になり、電解液が速く浸透できる。
【0036】
これは、電極が電解液に含浸される場合、電極の縁部よりも電極の中央部が電解液で含浸されるのに時間がかかるためである。電池の製造工程で電池の組立て及び電解液の注液後、電極組立体200が電解液によって充分含浸されるように電池を所定時間放置する工程(エージング工程)を行う。このようなエージング工程において、電池は通常、電極組立体のいずれか一長辺が下方または上方に位置するように立てられた状態で放置される。これによって、電解液は、長辺側から含浸が始まるため、非形成部が短辺から短辺へ延びる電極接着層パターンを有すると、電解液が中央部まで到達する含浸距離が長くなるので、望ましくない。したがって、本発明の一実施様態においては、分離膜が長辺から短辺へ延びる線状の非形成部のみを含むように構成された電極接着層を備えるように準備し、前記分離膜が含まれた電池に対するエージング工程を行うとき、分離膜の長辺が下端に位置するように立ててエージング工程を開始する場合、電解液の含浸効率が改善される。
【0037】
本発明によるパターン化電極接着層が形成された分離膜100の例示的な様態が、
図1~
図3に示されている。
【0038】
図1は、長辺から短辺まで延びる直線から形成された複数個のユニット110(陰影表示部分)から構成されたパターン化電極接着層130であって、前記電極接着層ユニットの間には接着層が形成されていない電極接着層非形成部120(白色表示部分)が存在する。前記電極接着層は、六角形、上辺が長い台形、下辺が長い台形、三角形のユニットからなっており、分離膜の4個の角全てにユニットが位置している。パターン化電極接着層のユニットの全体面積は、電極接着層非形成部の全体面積よりも顕著に大きいことを確認することができる。前記電極接着層非形成部は、電極が電解液により迅速かつ容易に含浸されるようにするために形成されたものであり、各々同じ幅で形成され得る。
【0039】
図2は、長辺から短辺まで延びる直線から形成された複数のユニット(陰影表示部分)で構成されたパターン化電極接着層であって、前記ユニットの間に電極接着層非形成部が存在するという点で
図1と類似である。しかし、
図2の電極接着層非形成部は、分離膜中心側で相対的に広い幅で形成され、電極の中心でより広い電解液の含浸界面が確保されるように設計されている一方、分離膜の縁部における電極接着層非形成部は相対的に狭い幅で形成され、分離膜と電極との接着がより効果的になるように設計されている。
【0040】
図3は、長辺から短辺まで延びる線が1回折り曲げられて形成された電極接着層パターンであって、四角形及び十字形状のユニットから構成されており、分離膜の4個の角全てにユニットが位置している。
【0041】
一方、分離膜の一長辺から他長辺へ延びる線のみから形成されたユニット、あるいは分離膜の一短辺から他短辺へ延びる線のみからなるユニットは、本発明のパターン化電極接着層に含まれない。分離膜の一長辺から他長辺へ延びる線のみからなるユニット、または分離膜の一短辺から他短辺へ延びる線のみからなるユニットがパターン化電極接着層に含まれる場合には、長辺あるいは短辺の縁部に電極接着層が全く塗布されない場合が発生し得、このような一様態が
図4に示されている。
図4を見れば、分離膜の短辺の縁部には、電極接着層が形成されていないので、分離膜と電極との接着が適切に行われない。
【0042】
本発明の一実施様態によれば、パターン化電極接着層は、ユニット部分が分離膜の全表面積を基準にして、70%以上または75%以上であるように形成されてもよく、95%以下または90%以下であるように形成されてもよい。ユニット部分が前記下限値未満に形成される場合には、分離膜と電極との堅固な接着が困難となり、前記上限値よりも多く形成される場合には、電極の電解液含浸性を改善しようとする本発明の効果が達成できない。
【0043】
本発明の一実施様態によれば、前記ユニットの幅(電極接着層非形成部同士の間隔)は、5mm~30mmまたは10mm~25mmの範囲であり得る。前記ユニットの幅は、ユニットを形成する閉曲線の最長幅を意味する。一方、前記ユニット同士の間隔(電極接着層非形成部の幅)は、0.1mm~3mmまたは0.5mm~1mmの範囲であり得る。また、電極接着層を構成するユニットの厚さ(高さ)は0.1μm~3μmまたは0.5μm~1μmの範囲であり得る。
【0044】
本発明の一実施様態によれば、分離膜の4個所の角に電極接着層ユニットが位置し得る。
【0045】
パターン化電極接着層を構成するバインダー高分子としては、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride,PVdF)系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber,SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene,PTFE)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol,PEG)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol,PPG)、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate、TDI)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、ポリエチレン-コ-ビニルアセテート(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(celluloseacetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(acrylonitrile-styrene-butadiene copolymer)及びポリイミド(polyimide)からなる群より選択される一種または二種以上の混合物であり得るが、これらに限定されない。
【0046】
前記ポリビニリデンフルオライド(PVDF)の非制限的な例には、ポリビニリデンフルオライド-コ-トリクロロエチレン、ポリビニリデンフルオライド-コ-テトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド-コ-トリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド-コ-トリフルオロクロロエチレン及びポリビニリデンフルオライド-コ-エチレンからなる群より選択されたいずれか一つまたはこれらの二種以上の混合物であり得るが、これらに限定されない。
【0047】
パターン化電極接着層には、微量の添加剤がさらに含まれ得、製造工程時に混入する不純物が含まれ得るが、このような場合にもパターン化電極接着層は実質的にバインダー高分子からなるものと見なし得る。
【0048】
本発明の一様態によれば、パターン化電極接着層を分離膜に形成する方法が提供される。このような方法の一様態には、バインダー高分子樹脂と有機溶媒とを混合してバインダー溶液を準備する段階;前記バインダー溶液を多孔性高分子基材の表面に所定のパターンでコーティングし、前記表面にバインダー溶液のパターンが形成される段階;前記コーティングされたバインダー溶液において溶媒と非溶媒との相分離によって電極接着層に微細気孔を形成する段階;及び前記段階によって前記分離膜の少なくとも一面に前記パターン化した電極接着層を形成する段階;を含む。
【0049】
バインダー溶液を直接分離膜に塗布する場合には、気孔を通してバインダー溶液が染み込み、分離膜の表面に存在するバインダー高分子の量が不足になり、染み込んだ溶液によって分離膜の気孔が閉塞して分離膜の通気度が低下するという問題がある。このような問題点を解消するために、先行技術文献(国際公開第2015/060698号)においては、バインダー溶液を離型部材などにコーティングして乾燥した後、転写部材を用いて多孔性高分子基材に転写する方法を提案しているが、このような方法は、工程の複雑性及び単価の上昇から望ましくない。
【0050】
本発明は、このような問題点を解消したものであって、相分離によってバインダー高分子成分を部分的にゲル化することでバインダー高分子成分が気孔を通して染み込む問題を制御することができる。また、このような相分離によってバインダー高分子の表面に微細気孔を形成することで電極接着層の抵抗を減少させることができる長所がある。相分離方法は、溶媒及び非溶媒を用いる条件であれば、特に制限されないが、バインダー溶液を製造する段階から非溶媒を一部添加する方式、溶媒に溶解されたバインダー溶液を塗布して非溶媒に浸漬して溶媒を交換する方式、溶媒に溶解されたバインダー溶液を塗布して乾燥する過程中に蒸発潜熱による非溶媒を半乾燥コーティング層の内部へ凝縮させる方式などを用い得る。このような技術で製作された分離膜は、バインダー溶媒による分離膜の気孔閉塞が生じず、分離膜の通気度が優秀となり、電極などの電気化学素子の他の構成要素との結着力が付与される。また、粘着性バインダーが非形成部を含むパターンに形成されるため、非形成部部分の分離膜の表面は、外部に露出して通気度が優秀となる。
【0051】
以下、本発明の一様態による電極接着層を分離膜に形成する方法をより詳しく説明する。
【0052】
先ず、バインダー溶液を準備する(S1)。前記バインダー溶液は、有機溶媒にバインダー高分子樹脂を分散させたバインダー高分子樹脂と溶媒との混合物形態で準備され得る。前記バインダー高分子樹脂の含量は、以後の段階で形成されるパターン化電極接着層の厚さによって変わり得る。望ましくは、バインダー高分子樹脂は、バインダー溶液中に約3~50wt%、望ましくは、5~30wt%の割合で含まれ得る。即ち、バインダー高分子樹脂がバインダー溶液の総100重量部に対し、約3~50重量部、望ましくは、約5~30重量部の割合で含まれ得る。これによって、バインダー溶液の粘度を30センチポイズ以上になるようにし、電極接着層の形成のためのバインダー溶液が多孔性高分子基材などに適用されるとき、前記バインダー溶液の広がりを防止して電極接着層非形成部を確保することが望ましい。
【0053】
本発明の具体的な一実施様態において、前記溶媒は、使用されるバインダー高分子樹脂と均一に混合されるように使われるバインダー高分子樹脂と溶解度指数が類似なものを使うことが望ましい。一方、後述する段階で、前記バインダー溶液をインクジェットプリンターなどのノズルを介して噴射するとき、前記ノズルの閉塞を防止するためには、沸点の高い溶媒を使うことが望ましい。また、以後の段階でバインダーパターンに熱を加えて有機溶媒を除去し、この際、前記有機溶媒が効果的に除去されるようにするためには、沸点が高すぎると、望ましくない。このようなことを考慮すれば、前記溶媒の沸点が80℃~180℃、または100℃~165℃であることが望ましい。本発明において、前記溶媒の非制限的な例には、シクロヘキサン(cyclohexane)、メシチレン(mesitylene)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide)、ジメチルスルホン(dimethylsulfone)、ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate)、アセトン(acetone)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、メチレンクロライド(methylene chloride)、クロロホルム(chloroform)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone,NMP)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、メチルアセテート(methyl acetate)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)からなる群より選択される一種または二種以上の混合物であり得る。望ましくは、前記溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキサン、メシチレン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホン及びジメチルカーボネートから選択される一種または二種以上の混合物を用いることができる。
【0054】
次に、前記バインダー溶液が多孔性高分子基材の表面に所定のパターンでコーティングされて形成される(S2)。前記コーティング方法は、多孔性高分子基材の表面にバインダー溶液のパターンを形成できるコーティング工程によるものであれば、特に限定されない。本発明の望ましい実施形態によれば、前記コーティングは、インクジェットプリンター、ディスペンサ、マイクログラビアまたはノズルを用いて行い得る。
【0055】
次に、塗布されたバインダー溶液に非溶媒を接触させてバインダー高分子を相分離する(S3)。非溶媒は、バインダー高分子樹脂と溶解度指数が相異なるものを使用することが望ましい。前記非溶媒の非制限的な例には、水、メタノール及びエタノールからなる群より選択された一種または二種以上の混合物が挙げられる。非溶媒接触時間は、溶解度指数によって相違し得るが、約10秒~2分、望ましくは、約20秒~60秒の範囲で調整できる。非溶媒接触時間が短いと、相分離効果が現れず、バインダー溶液が多孔性高分子基材の内部に染み込んで抵抗が上昇するという問題があり、非溶媒接触時間が長いと、電極接着層に形成された気孔の大きさが大きくなり、電極接着力を確保しにくくなる。
【0056】
次に、前記多孔性高分子基材の表面にコーティングされたバインダー溶液から溶媒を除去する(S4)。前記溶媒の除去は、バインダー溶液のパターンを加熱することで行われ得る。前記加熱は、通常、ヒーター、オーブン、抵抗加熱、電気誘導加熱、熱風加熱、赤外線加熱などの加熱工程によって行われ得る。前記多孔性高分子基材は、バインダー溶液がコーティングされる支持体としての機能のみならず、前記バインダー溶液を乾燥してバインダー溶液に含まれた有機溶媒を除去するための手段としての機能を共に有し得る。したがって、前記加熱は、多孔性高分子基材に前述の加熱手段を備えて多孔性高分子基材を加熱する方法で行い得る。前記加熱は、約40℃~200℃の温度範囲、望ましくは、約60℃~150℃の温度範囲、より望ましくは、約80℃~120℃の温度範囲で行われ得る。また、前記加熱は、約3秒~180秒間、望ましくは約1秒~60秒間行われ得る。これによって形成されるパターン化電極接着層は、実質的に溶媒を含まない乾燥状態の電極接着層であり得る。
【0057】
次に、これによって分離膜基材の表面にパターン化電極接着層が形成される(S5)。前記パターン化電極接着層は、所定のパターンを有する。前記パターンは、前述のように、分離膜の長辺(long side)から短辺(short side)まで延びる線状で形成されたパターンを一つ以上含み、前記パターンは相互交差しないように形成される。前記パターン化電極接着層は、電極接着層非形成部(non-coating area)、即ち、バインダーが塗布されていない部分を含む。
【0058】
本発明の具体的な一実施様態において、前記パターン化電極接着層の厚さは、約0.1μm~3μm、望ましくは、約0.5μm~1μmであり得る。電極接着層の厚さが前述の範囲に属する場合、多孔性分離膜と電極との優秀な密着力/結合力が得られると共に、分離膜の気孔度を最適の状態に維持することができる。
【0059】
また、本発明は、前述の方法によって製造されたパターン化電極接着層を含む二次電池用の分離膜を提供する。本発明の具体的な一実施様態によれば、前記分離膜は、多孔性高分子基材と、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に形成されたパターン化電極接着層と、を含み得る。
【0060】
本発明の具体的な一実施様態によれば、前記多孔性高分子基材は、一種以上の高分子樹脂からなる高分子膜または前記高分子膜が二層以上積層された多重膜、織布、不織布、単一フィルムまたは多重フィルムを含み得る。これらのうち、前記フィルムは、当業界における公知の乾式法または湿式法によって気孔を形成することで多孔性構造を有し得る。望ましくは、前記分離膜基材層は、ポリオレフィン系の多孔性フィルムを含み得る。前記多孔性高分子基材層は、目的とする孔隙率及び通気性を有するように複数の気孔を有する。このような気孔は、電池において基本的にイオンの通路の役割を果たすが、外部要因または、短絡などの内部要因の理由によって一定範囲以上に温度が上昇する場合、気孔を形成する膜の内部が溶融崩壊されて膜の通路を塞ぐことで電池のさらなる温度上昇を防止する機能を果たす(シャットダウン(shutdown))。
【0061】
また、本発明によるパターン化電極接着層は、コーティングされた分離膜の表面で一定の厚さに維持される。パターン化電極接着層のこのように一定な厚さは、以後の多孔性高分子基材及び電極との結合によって電極組立体、セルまたは電池を形成する場合、パターン化電極接着層の表面に対して局所的に偏重した力が加えられないため、外部の力に対する分離膜及び電池の耐久性を改善することができる。
【0062】
また、本発明の具体的な一実施様態によれば、前記分離膜は、多孔性高分子基材とパターン化電極接着層との間に有機/無機多孔性コーティング層をさらに含み得る。このように分離膜が有機/無機多孔性コーティング層をさらに含む場合、前記パターン化電極接着層は、前記有機/無機多孔性コーティング層の表面にコーティングされる。本発明において、前記有機/無機多孔性コーティング層は、無機物粒子及び結着剤を含んでなり得る。前記有機/無機多孔性コーティング層は、無機物粒子の間のインタースティシャルボリューム(interstitial volume)によって形成される気孔によって多孔性特性を有する。前記インタースティシャルボリュームは、無機物粒子の充填構造で実質的に接触する無機物粒子によって限定される空間を意味する。
【0063】
本発明の具体的な一実施様態において、前記無機物粒子は、電気化学的に安定し、かつ多孔性コーティング層の厚さに適合した粒度を有すれば、特に制限されない。即ち、本発明で使用可能な無機物粒子は、適用される電池の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+基準で0~5V)で酸化及び/または還元反応が起こらないものであれば、特に制限されない。非制限的な例として、前記無機物粒子は、0.001~3μmの範囲の粒径または0.001~2μm範囲の粒径を有し得る。前記無機物粒子が0.001μm未満である場合、分散性が低下し得、3μmを超過する場合、形成されるコーティング層の厚さが増加し得る。
【0064】
前記無機物粒子の非制限的な例には、Al2O3、AlOOH、Al(OH)3、AlN、BN、MgO、Mg(OH)2、SiO2、ZnO、TiO2、BaTiO3またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0065】
また、前記結着剤は、無機物粒子同士の結着力及び無機物粒子と前記分離膜基材層との結着力を提供できるものであれば、特に限定されない。前記有機/無機多孔性コーティング層中における前記無機物粒子の含量は、多孔性コーティング層100wt%を基準にして90wt%~99wt%の範囲であり得る。
【0066】
前記無機物粒子と結着剤から構成される有機/無機多孔性コーティング層の厚さは特に制限されず、多孔性高分子基材の一面を基準にして0.01μm~5μmの範囲であることが望ましい。
【0067】
また、有機/無機多孔性コーティング層の気孔の大きさ及び気孔度も、特に制限されないが、気孔の大きさは0.001μm~3μmの範囲または0.001μm~2μmの範囲が望ましく、気孔度は、10%~90%の範囲が望ましい。気孔の大きさ及び気孔度は、主に無機物粒子の大きさによるが、結着剤の種類によって影響を受ける。例えば、粒径が1μm以下である無機物粒子を用いる場合、形成される気孔もおおよそ1μm以下を示す。このような気孔構造は、追って注液される電解液によって満たされ、このように満たされた電解液は、イオン伝達の役割を果たすようになる。気孔の大きさ及び気孔度が各々0.001μm及び10%未満である場合、抵抗層として作用する恐れがあり、気孔の大きさ及び気孔度が10μm及び90%を各々超過する場合には、機械的物性が低下し得る。多孔性コーティング層が形成された分離膜の厚さは、1μm~100μm、特に望ましくは、10μm~40μmである。
【0068】
本発明の一実施様態によれば、前記有機/無機多孔性コーティング層は、無機粒子及び結着剤を適切な溶媒と混合して有機/無機多孔性コーティング層の形成のためのスラリーを製造した後、これを前記多孔性高分子基材の表面にディップコーティング法、スロットダイコーティング法、マイクログラビアコーティング法、ワイヤコーティング法やドクターブレードコーティング法のような方法で塗布した後、乾燥することで形成し得る。溶媒としては、使用する結着剤と溶解度指数が類似であり、沸点が低いことが望ましい。これは、均一な混合及び以後の溶媒除去を容易にするためである。使用可能な溶媒の非制限的な例としては、アセトン(acetone)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、メチレンクロライド(methylene chloride)、クロロホルム(chloroform)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone,NMP)、シクロヘキサン(cyclohexane)またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0069】
本発明の他の実施様態によれば、パターン化電極接着層が形成された分離膜を正極と負極との間に含む電極組立体200及び前記電極組立体を含む電気化学素子が提供される。
【0070】
前記電極組立体は、二つ以上の対向して回転するロールなどを用いて圧着する段階によって製造され得る。このような圧着段階は、熱間圧延(hot press rolling)、冷間圧延(cold press rolling)またはこれらの組合せ工程によって行われ得る。
【0071】
熱間圧延は、対象物の再結晶温度以上の二つの回転ロールの間を通過させることで圧延する方法であり、使用される熱間圧延ロールが、対象物の融点(絶対温度)の約1/2以上の温度で対象物を圧延することが、変形による加工に有利である。また、熱間圧延は、圧延動力が小さくてもよく、大きい変形を誘導しやすいという長所を有する。そのため、熱間圧延の温度及びロールの回転速度などは、電極組立体で要求される条件及び状態によって調整可能である。
【0072】
冷間圧延は、対象物の再結晶温度以下のロールを使って圧延する方法であって、使用される冷間圧延ロールは、前記熱間圧延ロールと特に相違しなくてもよいので、状況によって、加熱による熱間圧延または冷間圧延のためのロールとして用いることができる。ロールの表面状態が対象物の表面に対して特別な損傷なく対象物にそのまま反映される。そのため、冷間圧延は、熱間圧延で発生し得る対象物(例えば、集合体)の表面の凹凸、しわ、きずなどによる不良を矯正することができ、対象物の厚さを薄く加工でき、加工時における対象物の寸法精度がよく、使用される冷間圧延ロールの表面に応じて滑らかな表面を有する目的物(例えば、電極組立体)が得られる。
【0073】
また、圧着段階は、パターン化電極接着層が接触する対象(例えば、多孔性高分子基材、多孔性コーティング層及び/または電極)の結合力が最大に発現できる温度及び圧力下で施され得る。前記温度は、約80℃~150℃、望ましくは、約90℃~110℃の範囲であり得、前記圧力は、約30kgf~200kgf、または、約50kgf~180kgfの範囲であり得る。前記範囲の温度と圧力でパターン化電極接着層が電極と分離膜との間で圧着されれば、生成した電極組立体の結合力は大幅に上昇し、このような高い結合力は、分離膜の優秀な通気度維持及び電極接着層の薄い厚さと共に、電池の性能及び耐久性の向上に大きく寄与することができる。また、圧着段階において、前記熱間圧延と前記冷間圧延の長所を最大に用いて相互に組み合わせて使用することができる。
【0074】
前記電気化学素子は、電気化学反応をする全ての素子を含み、具体的な例には、全種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはスーパーキャパシタ素子のようなキャパシタなどが挙げられる。特に、前記二次電池のうち、リチウム二次電池、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池またはリチウムイオンポリマー二次電池などが望ましい。
【0075】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例および実験例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例および実験例によって制限されるものではない。本発明による実施例は、多様な形態に変形することができ、本発明の範囲が下記に詳述する実施例に限定されると解釈してはいけない。本発明の実施例は、当業界における平均的な知識を持つ者に対して本発明をより完全に説明するために提供される。
【0076】
評価方法
(1)通気時間
通気度測定機(製造社:Asahi Seiko、製品名:EG01-55-1MR)を用いて一定の圧力(0.05MPa)で100mlの空気が分離膜を通過するのにかかる時間(sec)を測定した。サンプルの左/中/右の各1点ずつ総3点を測定して平均を記録した。
【0077】
(2)剥離力(接着強度)
一つの実施例または比較例(例えば、実施例1)で得た分離膜サンプルを100mm(長さ)×25mm(幅)の大きさで切断し、各々二つの試験片を準備した。二つ試験片を各々積層した後、100℃で10秒間加熱プレスして得られた積層物を接着強度測定機器(LLOYD Instrument,LF plus)に固定し、上部の分離膜試験片を25℃で100mm/minの速度で180゜の角度で剥離し、この時の強度を測定した。
【0078】
実施例1
水を溶媒にし、無機粒子としてアルミナ(Sumitomo社、AES11)と、分散剤としてカルボキシメチルセルロース(ジエルケム社、SG-L02)とを99:1重量比で混合した後、バスケットミルで2時間分散させた。分散したスラリーの固形分は40wt%であった。ここに、結着剤としてアクリル系共重合体(Toyo社、CSB130)1重量部を加えて有機/無機多孔性コーティング層の形成のためのスラリーを完成した。基材としてポリエチレン系多孔性高分子基材(上海エネルギー社、ND12、通気時間188秒/100cc)に、有機/無機多孔性コーティング層の形成のためのスラリーをコーティングして乾燥することで、断面が2μm厚さである有機/無機多孔性コーティング層を形成した。
【0079】
ここに、N-メチルピロリドン(NMP)を溶媒にし、バインダー高分子としてPVDF-HFP(Solvay社、Solef 21510)を固形分10wt%の溶液で準備した後、マイクログラビアコーティングで長辺から短辺へ延びる斜線方向へ電極接着層のパターンを塗布した。ロールの表面には、4mmの塗布領域及び1mmの未塗布領域が生ずるように凹凸を設けた。コーティング後、バインダー溶液の広がり性によって、最終コーティングされた領域の幅は4.2mm、コーティングされていない領域の幅は0.8mmであり、全面におけるコーティング領域の割合は84%であった。コーティング直後、水に40秒間浸漬して相分離して乾燥することで、両面にパターンコーティング層を完成した。完成した分離膜の通気時間は215秒/100ccで良好であった。電極接着層が形成された分離膜を100℃で張り合わせた後に剥離したときの剥離力は、75.6gf/mmで良好であった。完成した分離膜は、コバルト酸リチウム(Lithium cobalt oxide,LCO)系正極と人造黒鉛系負極を用いて、全面加圧によって単位セルを製作した。単位セルを製作して剥離した後、負極の表面を確認すれば、
図5のようにパターン化した接着層の痕跡を確認することができた。
【0080】
実施例2
パターン化電極接着層の形成のためのバインダー溶液に使われるバインダーとしてPVDF-TFE(ポリビニリデンフルオライド-コ-テトラフルオロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-tetrafluoroethylene))(Daikin社、VT-475)を固形分5wt%で準備したことを除いては、実施例1と同様にコーティングして電極接着層を形成した。電極接着層のコーティング領域の割合は82%であった。分離膜の通気時間は208秒/100cc、剥離力は69.4gf/25mmで良好であった。完成した分離膜は、実施例1と同様に単位セルに製造した。
【0081】
実施例3
実施例1からパターン化電極接着層の形成のためのバインダー溶液の溶媒をアセトンに変更すること共に、コーティング直後、水に浸漬する代わりに相対湿度(RH)60%水準の加湿条件で常温乾燥して電極接着層を形成した。電極接着層のコーティング領域の割合は89%であった。分離膜の通気時間は221秒/100cc、剥離力は71.5gf/25mmで良好であった。完成した分離膜は、実施例1と同様に単位セルに製造した。
【0082】
実施例4
パターン化電極接着層の形成のためのバインダー溶液の溶媒を、溶媒であるNMP 50vol%及び非溶媒である水50vol%を混合して準備し、コーティング直後、水に浸漬する工程を省略したことを除いては、実施例1と同様にコーティングして電極接着層を形成した。電極接着層のコーティング領域の割合は83%であった。分離膜の通気時間は217秒/100cc、剥離力は70.6gf/25mmで良好であった。完成した分離膜は、実施例1と同様に単位セルに製造した。
【0083】
実施例5
有機/無機多孔性コーティング層を多孔性高分子基材の両面に導入したことを除いては、実施例1と同様にコーティングして電極接着層を形成した。電極接着層のコーティング領域の割合は84%であった。分離膜の通気時間は247秒/100cc、剥離力は67.6gf/25mmで良好であった。完成した分離膜は、実施例1と同様に単位セルに製造した。
【0084】
比較例1
電極接着層を有機/無機多孔性コーティング層の全面にコーティングしたことを除いては、実施例1と同様に分離膜を製造した。分離膜の通気時間は223秒/100cc、剥離力は80.5gf/25mmで良好であった。完成した分離膜は、実施例1と同様に単位セルに製造した。単位セルを製作して剥離した後に負極の表面を確認した結果、
図6のように全面に接着が行われた痕跡を確認することができた。
【0085】
比較例2
比較例1と同様の方法で有機/無機多孔性コーティング層の全面に電極接着層を形成して単位セルを形成した後、パターニングされた押圧ロールを用いてパターニング接着した。前記パターニングされた押圧ロールは、単位セルの上面または下面に備えられ、回転力を有するローラー部と、前記ローラー部の外周面に備えられ、前記単位セルの上面または下面を部分的に押圧するパターン化した押圧突起を有する。パターニングされた押圧ロールによって押圧された領域では接着力が発現される一方、押圧されていない領域では接着力が見出されなかった。
【0086】
比較例3
電極接着層コーティングの後、相分離工程を行わなかったことを除いては、実施例1と同様に分離膜を製造した。電極接着層のコーティング領域の割合は86%であった。分離膜の通気時間は360秒/100cc水準に大幅増加しており、剥離力は41.5gf/25mmに減少した。この水準の剥離力は、電池組立時における電極脱離によって組立てが不可能である。完成した分離膜は、実施例1と同様に単位セルに製造した。
【0087】
比較例4
実施例1で斜線角度を調整して分離膜のパターン化電極接着層を構成するユニットの一部が分離膜の短辺から延びて短辺で終わる線のみからなるように調整した。電極接着層のコーティング領域の割合は84%であった。
【0088】
比較例5
実施例3のバインダー溶液の固形分を2.5wt%に変更したことを除いては、実施例3と同様の方法で塗布した。パターンロールを用いてパターン塗布されたにもかかわらず、バインダー溶液の粘度が低くてバインダー溶液が広がってしまい、全面塗布と同様に電極接着層が形成された。
【0089】
評価例:電解液の濡れ性の測定
実施例1~5、比較例1~5で製造した単位セルを電解液(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=3:7、LiPF
6 1.0M)に単位セルの長辺部分が浸漬されるようにし、短辺の下端から約1mmの深さで浸漬して10分間電解液が含浸する高さの最小値を測定した。
図7は、電極組立体200の含浸テストを概略的に図式化して示した図であり、容器300に電解液400を入れて、ここに電極組立体を立てられた状態で放置する。また、この単位セルを20層の積層構造にしてリチウム二次電池を完成した。当該電池を1C/1C条件で50回充放電した後、厚さ分布を確認することで単位セルの捻れ有無を非接触式の厚さ測定機を使って確認した。単位セルの中心部に対して端部の厚さが3%以上厚く測定される場合、捻れが発生したと判断した。
【0090】
【0091】
以上の結果から、パターン形態に形成された分離膜の電解液の浸透速度が大幅改善したことが分かる。比較例2の場合には、パターニングされた押圧ロールを用いて電解液の浸透速度は向上できたが、張り合わせ工程における圧力不均一によって電解液の含浸後、捻れが発生した。比較例4の場合には、パターン接着層を形成したにもかかわらず、電解液が導入される長辺側のパターンによりセルの中心部に到達する距離が遠くなって浸透高さが短かった。
【符号の説明】
【0092】
100 分離膜
110 ユニット
120 非形成部
130 電極接着層
140 多孔性高分子基材
200 電極組立体
300 容器
400 電解液