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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】可動回折素子及び分光装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/02 20060101AFI20220308BHJP
   G01J 3/18 20060101ALI20220308BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20220308BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
G02B26/02 J
G01J3/18
B81B3/00
H01L41/09
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017050629
(22)【出願日】2017-03-15
(65)【公開番号】P2018155816
(43)【公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】藤島 正幸
(72)【発明者】
【氏名】野口 英剛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英記
(72)【発明者】
【氏名】末松 政士
(72)【発明者】
【氏名】安住 純一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 修一
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-501211(JP,A)
【文献】国際公開第2016/065887(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0307150(US,A1)
【文献】特開2016-133658(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103091835(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0262346(US,A1)
【文献】特開2005-172626(JP,A)
【文献】特開2010-148265(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0218877(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0146392(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/02
G01J 3/18
B81B 3/00
H01L 41/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
櫛歯状の可動素子と、
前記櫛歯状の可動素子の各素子間に配置される固定素子と、
前記可動素子を支持する支持部と、
前記支持部に接続された第1のカンチレバー型アクチュエータと、
前記第1のカンチレバー型アクチュエータの先端に接続された変位規定部と、
前記第1のカンチレバー型アクチュエータと平行に配置される第2のカンチレバー型アクチュエータと、を備え、
前記可動素子及び前記固定素子は、反射膜層を有し、
前記第2のカンチレバー型アクチュエータの変形時に発生するたわみ角は、前記第1のカンチレバー型アクチュエータで発生するたわみ角と略同等とした可動回折素子。
【請求項2】
前記可動素子の前記各素子を櫛歯状に連結させる連結辺部を備えることを特徴とする請求項1に記載の可動回折素子。
【請求項3】
前記第1のカンチレバー型アクチュエータと前記第2のカンチレバー型アクチュエータとが、前記可動素子の長手方向と略平行に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の可動回折素子。
【請求項4】
前記第1のカンチレバー型アクチュエータと前記第2のカンチレバー型アクチュエータと前記可動素子の長手方向と交差するように配置されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の可動回折素子。
【請求項5】
前記第1のカンチレバー型アクチュエータと前記第2のカンチレバー型アクチュエータとを、それぞれ複数段備えることを特徴とする請求項第1乃至4の何れか1項に記載の可動回折素子。
【請求項6】
前記第1のカンチレバー型アクチュエータと前記第2のカンチレバー型アクチュエータは、圧電素子を用いた圧電アクチュエータを備えることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の可動回折素子。
【請求項7】
前記第1のカンチレバー型アクチュエータと前記第2のカンチレバー型アクチュエータは、熱素子を用いた熱アクチュエータを備えることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の可動回折素子。
【請求項8】
前記櫛歯状の可動素子、前記第1のカンチレバー型アクチュエータ及び前記第2のカンチレバー型アクチュエータと対向する部位に貫通孔を有することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の可動回折素子。
【請求項9】
前記固定素子は、櫛歯状であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の可動回折素子
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の可動回折素子を備えたことを特徴とする分光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動回折素子及び分光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターに代表される画像表示装置において、GLV(Grating Light Valve)等の光源からの光を回転ミラーなどの光走査手段を用いて2次元画像を生成する方法が知られている。GLVは複数の短冊状の可動素子を1次元的に配列した構造であり、可動素子と、その可動素子に対向する基板間に電圧を印加することにより、可動素子が基板側に変位する。このような素子はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)リボン素子と呼ばれ、一部の素子を変位させることで、一次元配列した素子が回折格子として働き、回折光を変調させることができる。
特許文献1には、単独であるいは他の変調器とともに動作できる光変調器を実現することを目的に、複数の回素子を2つのグループに分けた構造とし、それぞれ単独に高さを変化させる手段を備えた可動回格子が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の構成では、素子は変位方向に2通りの位置しか選択できなかった。すなわち、変位量が0のときと、素子が変位して、対向する面に素子が接触するときの2通りである。仮に特許文献1の構成で、この2通り以外の変位量を選択するようにした場合、素子に撓みが発生し、出射光に誤信号が含まれてしまう。
本発明は、可動回素子の撓みを低減することにより、誤信号を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明に係る可動回素子は、櫛歯状の可動素子と、前記櫛歯状の可動素子の各素子間に配置される固定素子と、前記可動素子を支持する支持部と、前記支持部に接続された第1のカンチレバー型アクチュエータと、前記第1のカンチレバー型アクチュエータの先端に接続された変位規定部と、前記第1のカンチレバー型アクチュエータと平行に配置される第2のカンチレバー型アクチュエータと、を備え、前記可動素子及び前記固定素子は、反射膜層を有し、前記第2のカンチレバー型アクチュエータの変形時に発生するたわみ角は、前記第1のカンチレバー型アクチュエータで発生するたわみ角と略同等とした
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、可動回素子に撓みや傾きが発生することで生じる誤信号を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の第1の実施形態に係る可動回素子の構成を説明する図。
図2図1A―A線断面図。
図3】第1の実施形態に係る可動回素子の電圧印加時の状態を説明する図。
図4第1の実施形態に係る可動回折素子の第1及び第2のカンチレバー型アクチュエータのたわみ角を説明する図。
図5】本発明の第2の実施形態に係る可動回素子の構成を説明する図。
図6】第2の実施形態に係る可動回素子の第1及び第2のカンチレバー型アクチュエータのたわみ角を説明する図。
図7】本発明の第の実施形態に係る可動回素子の構成を説明する図。
図8実施形態に係る可動回素子の第1及び第2のカンチレバー型アクチュエータのたわみ角を説明する図。
図9】本発明の第4の実施形態に係る分光装置の一形態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて説明する。実施形態において、同一機能や同一構成を有するものには同一の符号を付し、重複説明は適宜省略する。図面は一部構成の理解を助けるために部分的に省略あるいは簡素化して記載する場合もある。
【0008】
(第1の実施形態)
図1図4を用いて、本発明の第1の実施形態に係る可動回素子1の構成について説明する。図1は第1の実施形態の構成を説明する平面図、図2図1A―A線断面図、図3は電圧印加時の状態を示す斜視図、図4はたわみ角を説明する図である。
本実施形態に係る可動回素子1は、図1図2に示すように、可動素子10と、固定素子12と、可動素子10を支持するための支持部13、13と、支持部13、13と可動素子10とを連結するアクチュエータ部14、14を備えたMEMS素子である。可動素子10は、複数の短冊状の素子10A・・が、連結辺部11から長辺方向Xに突出し、長辺方向Xと同一平面内において交差する短辺方向Yに並列配置された櫛歯状の可動素子である。可動素子10は、連結辺部11側を支点として各素子の先端側が長辺方向X及び短辺方向Yと交差する方向に変位可能とされている。ここでいう交差する方向を変位方向Zとする。変位方向Zは、図2においては紙面垂直方向となる。固定素子12は、可動素子10の各素子間に配置される複数の固定の素子を備えた櫛歯状の素子である。
【0009】
アクチュエータ部14、14は、直線形状の第1アーム141、141と直線形状の第2アーム142、142とを備えている。第1アーム141、141と第2アーム142、142とは、互いに平行となるように形成されている。アクチュエータ部14、14は、第1アーム141、141と第2アーム142、142とが連結部143、143でそれぞれ連結されている。第1アーム141、141は、それぞれ支持部13、13に連結されて一体化されている。第2アーム142、142は、短辺方向Yに位置する可動素子10の連結辺部11の両端にそれぞれ連結されて一体されている。アクチュエータ部14、14は、それぞれ駆動源を備えることで、第1アーム141、141と第2アーム142、142とを個別に変形させるように機能する。
【0010】
本実施形態において、第1アーム141、141は、図3に示すように、駆動源として圧電素子144が設けられることで、圧電素子144が設けられた部位が第1のカンチレバー型アクチュエータ(以下「第1アクチュエータ部」と記す)15、15として機能する。第2アーム142、142は、駆動源として圧電素子145が設けられることで、圧電素子145が設けられた部位が第2のカンチレバー型アクチュエータ部(以下「第2アクチュエータ部」と記す)16、16として機能する。
圧電素子144、144は、図3に示すように、第1アーム141、141の支持部13寄りの端部側に配置されている。圧電素子145、145は、第2アーム142、142における連結部143、143寄りに配置されている。圧電素子144、144と圧電素子145、145とは、それぞれ長辺方向Xにおいて、互いに反対側に位置するように、その位置がずれて第1アーム141、141と第2アーム142、142にそれぞれ設けられている。つまり、第1アクチュエータ部15、15と第2アクチュエータ部16、16とは圧電素子を備えた圧電アクチュエータである。
第1アクチュエータ部15、15と連結部143、143の間に位置する第1アーム141、141の部位は、変位方向Zへの変位規定部17、17として機能する。第2アクチュエータ部16、16は、それぞれ第1アクチュエータ部15、15と平行に配置され、圧電素子145、145に通電されることで、連結辺部11寄りの第2アーム142、142を水平にする機能を備えている。
【0011】
可動回素子1は、可動素子10、固定素子12、第1アクチュエータ部15、15、第2アクチュエータ部16、16と可動回折格子と対向する部位に、貫通孔105が形成されていて、可動素子10、第1アクチュエータ部15、15、第2アクチュエータ部16、16の変位(第1アーム141、141と第2アーム142、142の変位)を許容するように構成されている。なお、本実施形態では、変位方向Zが上下方向としているので、可動回素子1に貫通孔105を形成しているが、変位方向Zが上方向の場合を考慮すると、この貫通孔は無くても良い。
図4は、圧電素子144、145に電圧を印加したときの第1アクチュエータ部15と第2アクチュエータ部16の側面図を示す。電圧印加により、圧電素子144、145が収縮し、第1アクチュエータ部15と第2アクチュエータ部16にたわみが発生する。それぞれのアクチュエータ部で発生するたわみ角をθ1、θ2とすると、図4に示す状態となる。すなわち、θ1=θ2の関係を保つことで、連結辺部11は水平となり、その先に接続される可動素子10は水平のまま変位方向Zに変位することが可能となる。なお、第1アクチュエータ部15と第2アクチュエータ部16の変位量Z1は、図4に示すように、(変位規定部)×sinθ1で表される。このような背景から第1アクチュエータ部15の先端部分に変位規定部17を設けている。
【0012】
可動回素子1は、図2に示す断面のように、支持部13が、シリコン支持層101、酸化シリコン層102、シリコン活性層103、絶縁層110及び保護層111を積層して構成されている。可動素子10及び固定素子12は、シリコン活性層103の上に反射膜層106を積層されて構成されている。
各アクチュエータ部14の第1アーム141、141は、シリコン活性層103上に下層電極201と圧電層202と上部電極203を備えた電圧素子144がそれぞれ積層されている。各上部電極203の上には絶縁層110及び保護層111が積層されている。アクチュエータ部14の第2アーム142、142は、基本的には1は第1アーム141、141と同様の構成であるが、図2では、断面の関係で圧電素子145、145は表示されていない。図中、符号105は貫通孔を示している。
アクチュエータ部14、14は、下層電極201と上部電極203間に通電することで、変位後方Zに変位するように構成されている。可動回素子1の積層構造は、1つの例に過ぎず、この積層構造に限定するものではない。
【0013】
本実施形態において、可動素子10は、図3図4に示すように、第2アクチュエータ部16、16によりそれぞれ発生する第2アーム142、142の変位方向Zへのたわみ角θ2、θ2が、第1アクチュエータ部15、15によりそれぞれ発生する第1アーム141、141の変位方向Zへのたわみ角θ1、θ1と略同等となるように構成されている。
【0014】
近年、MEMSの可動回素子は光スイッチや分光器など新たな用途に応用する動きが盛んになってきている。従来のMEMSの可動回素子の高さ方向(変位方向)への変位量は、可動素子に駆動力が働いていない場合と、可動素子に駆動力が働いたときの2値しかなかったが、任意の変位で可動素子を静止させるような多値の制御も要望されている。
2値型の可動回素子は、駆動力が働いたときに、可動素子と対向する面に可動素子を接触させることで可動素子の平面度を保っていた。しかし、多値型の可動回素子では、変位位置によっては、可動素子を対向する固定素子等に面接触させることができず、可動素子にたわみや傾きが発生する。このため、可動回素子の両端と中央付近では高さが異なり、出射光の特性が均一にならないため、誤信号が発生してしまう。
【0015】
しかし、本実施形態に係る可動回素子1によると、第1アクチュエータ部15、15と変位方向Zへの変位規定部17、17を備えているので、可動素子10に変位方向Z(垂直方向)の変位を与えることができる。また、第1アクチュエータ部15、15と第2アクチュエータ部16、16を互いに平行に配置しているので、第2アクチュエータ部16、16の先端16a、16aでの、第1アクチュエータ部15、15と第2アクチュエータ部16、16と直交する短辺方向Yへの傾きの発生を抑制することができる。
さらに、第1アクチュエータ部15、15により発生するたわみ角θ1、θ1と、第2アクチュエータ部16、16により発生するたわみ角θ2、θ2を同等にすることによって、第2アクチュエータ部16、16の先端11、11(あるいは142)での、第1アクチュエータ部15、15と第2アクチュエータ部16、16と平行な方向(長辺方向X)の傾きの発生を抑制することができる。
これらの構成により、可動回素子1は、たわみ、傾きを発生させずに変位方向Zに変位することが可能となるため、可動回素子1に撓みや傾きが発生することで生じる誤信号を低減することができる。
【0016】
本実施形態では、第1アーム141、141と第2アーム142、142の駆動源として圧電素子144、144と圧電素子145、145をそれぞれ用いて第1アクチュエータ部15、15と第2アクチュエータ部16、16を構成している。この場合、第1と第2の各アクチュエータ部15、16でそれぞれ発生する変位方向Zへのたわみ角θ1、θ2は、圧電素子144、145のサイズ、構造材の寸法・材質と、その拘束条件によって決まる。
構造材の寸法、材質が決定しており、第1アクチュエータ部15、15と第2アクチュエータ部16、16の圧電素子144、144と圧電素子145、145の拘束条件を揃えることが困難な場合は、各圧電素子144、145のサイズを調整し、可動素子10の長辺方向Xの傾きを抑制することができる。各圧電素子144、145の拘束条件を揃えることが可能であれば、各圧電素子144、145の各サイズを同じにすることで、可動素子10の長辺方向Xの傾きを抑制することができる。プロセスの簡便性を考慮すると、後者のように各圧電素子144、145のそれぞれの拘束条件、サイズを同じにすることが望ましい。
【0017】
(第2の実施形態)
図5図6を用いて本発明の第2の実施形態を説明する。図5は、第2の実施形態の構成を説明する上面図、図6はたわみ角を説明する図である。
第2の実施形態に係る可動回素子1Aは、複数の短冊状の素子10A・・が短辺方向Yに並列配置された櫛歯状の可動素子10と、櫛歯状の可動素子10の間に配置される櫛歯状の固定素子12と、可動素子10を短辺方向Yで、両側から支持する支持部13A、13Aと、支持部13A、13Aと可動素子10Aの間に設けられたアクチュエータ部14A、14Aを備えている。アクチュエータ部14A、14Aは、互いに平行に配置された直線形状の第1アーム141A、141Aと直線形状の第2アーム142A、142A、第1アーム141A、141Aと第2アーム142A、142Aをつなぐ連結部143A、143Aを有し、それぞれのアームに駆動源として圧電素子144、145を備えることで、カンチレバー型の第1アクチュエータ部15A、15Aと第2アクチュエータ部16A、16Aを構成している。第1アクチュエータ部15A、15Aの先端15Aa、15Aaと連結部143(圧電素子144、144と連結部143、143)の間には変位方向Zへの変位規定部17A、17Aが設けられている。
【0018】
本実施形態において、可動回素子1Aは、図6に示すように、第1の実施形態同様に、第2アクチュエータ部16A、16Aによりそれぞれ発生する第2アクチュエータ部16A、16Aの変位方向Zへのたわみ角θ4、θ4が、第1アクチュエータ部15A、15Aにより発生する変位方向Zへのたわみ角θ3、θ3と略同等となるように構成されている。
また、可動回素子1Aは、第1アクチュエータ部15A、15Aと第2アクチュエータ部16A、16Aとが、可動素子10の長辺方向Xと同一平面内において直交する方向となる短辺方向Yに向かってそれぞれ延びていて、互いに平行となるように配置されている点が、第1の実施形態に係る可動回素子1と異なる点である。つまり、第1の実施形態では、短辺方向Yに延びる連結辺部11に対して各アクチュエータ部が交差する方向に延びているが、本実施形態においては、短辺方向Yに延びる連結辺部11と同一方向に各アクチュエータ部がそれぞれ延びている。
【0019】
本実施形態のように、第1アクチュエータ部15A、15Aと第2アクチュエータ部16A、16Aを可動素子10の長辺方向Xと直交する短辺方向Yに並べて配置することにより、可動素子10の長辺方向Xの傾きの発生を抑制することできる。また、第1アクチュエータ部15A、15Aの変形によって発生する先端15Aa、15Aaの傾きを、第2アクチュエータ部16A、16Aにより水平に戻すことにより、可動素子10の各素子同士の連結辺部11に発生する、可動素子10の短辺方向Yのたわみを抑制することできる。これらにより、可動回素子1Aを、たわみや傾きを発生させることなく変位方向Zに変位させることが可能となるため、可動回素子1Aに撓みや傾きが発生することで生じる誤信号を低減することができる。
【0020】
(第3の実施形態)
図7図8を用いて本発明の第3の実施形態を説明する。図は、第3の実施形態の構成を説明する上面図、図8はたわみ角を説明する図である。
第3の実施形態に係る可動回素子1Bは、複数の短冊状の素子10A・・が短辺方向Yに並列配置された櫛歯状の可動素子10と、櫛歯状の可動素子10の間に配置される櫛歯状の固定素子12と、可動素子10を短辺方向Yで、両側から支持する支持部13B、13Bと、支持部13B、13Bと可動素子10の間に設けられたアクチュエータ部14B、14Bを備えている。本実施形態に係るアクチュエータ部14B、14Bは、互いに平行に配置された第1アーム141B、141Bと第2アーム142B、142B、第1アーム141B、141Bと第2アーム142B、142Bをつなぐ連結部143B、143Bを有し、それぞれのアームに駆動源として圧電素子144、145を備えることで、カンチレバー型の第1アクチュエータ部15B、15Bと第2アクチュエータ部16B、16Bを構成している。第1アクチュエータ部15B、15Bの先端15Ba、15Baと連結部143、143(圧電素子144、144と連結部143、14)の間には変位方向Zへの変位規定部17B、17Bが設けられている。
本実施形態では、第1アクチュエータ部15B、15Bと第2アクチュエータ部16B、16Bとが短辺方向Yにそれぞれ2組ずつ連続して(複数段)形成されている。つまり、一方の第1アクチュエータ部15Bは、2本の第1アーム141B、141Bを備え、一方の第2アクチュエータ部16Bは、2本の第2アーム142B、142Bを備えていて、可動回素子1Bとして合計4本ずつ、第1アームと第2アームを備えている。
【0021】
可動回素子1Bは、図8に示すように、第2アクチュエータ部16B、16Bで発生するたわみ角θ6が、第1アクチュエータ部15B、15Bで発生するたわみ角θ5と略同等であり、第1アクチュエータ部15B、15Bと第2アクチュエータ部16B、16Bとが、可動素子10の長辺方向Xと平行になるように短辺方向Yに複数段形成されている。
【0022】
本実施形態のように、第1アクチュエータ部15B、15Bと第2アクチュエータ部16B、16Bを可動素子10の長辺方向Xと直交する短辺方向Yに複数並べて配置することにより、可動素子10の短辺方向Yのたわみの発生を抑制することできる。また、第1アクチュエータ部15B、15Bの変形によって発生する先端15Ba、15Baの傾きを、それぞれ隣接する第2アクチュエータ部16B、16Bによりそれぞれ水平に戻すことにより、可動素子10の各素子同士の連結辺部11に発生する、可動素子10の長辺方向Xの傾きを抑制することできる。これらにより、可動回素子1Bを、たわみや傾きを発生させることなく変位方向Zに変位させることが可能となるため、可動回素子1Bに撓みや傾きが発生することで生じる誤信号を低減することができる。
【0023】
(第4の実施形態)
図9を用いて本発明の第4の実施形態を説明する。第4の実施形態は、上記実施形態に係る可動回素子の何れかを備えた分光装置300である。図9は分光装置300の模式図を示す。なお、分光装置300に用いる可動回素子としては、第1の実施形態で説明した可動回素子1を用いることとするが、第2又は第3の実施形態で説明した可動回素子1A、1Bを用いてもよい。
分光装置300は、可動回素子1が取り付けられた基板301と、可動回素子1と対向配置された凹面ミラー302と、検出器303を備えている。基板301には、入射光304を凹面ミラー302へと導入するためのスリット305と、回折光307を検出器303へ導入する開口306が形成されている。
このような構成の分光装置300では、あるスペクトル情報を持つ入射光304を可動回素子1に入射し、0次回折光を除く回折光307を検出器303で受光する。可動回素子1を変位させながら検出器303で回折光307を受光することにより、可動素子変位量と回折光307の光量の関係から入射光304のスペクトル情報を算出することができる。このため、単画素センサで分光スペクトルを得ることができ、従来のセンサアレイを用いた分光装置にくらべ、小型化、低価格化を図ることができる。
【0024】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
図7に示す可動回素子1Bでは、可動素子10の両側に、それぞれ第1アクチュエータ部15B、15Bと第2アクチュエータ部16B、16Bとが、可動素子10の長辺方向Xに平行となるように複数段配置したが、このような形態に限定されるものではない。例えば、図に示す第2の実施形態で説明した可動回素子1Aにおいても、複数の第1アクチュエータ部15A、15Aと第2アクチュエータ部16、16とを、可動素子10の短辺方向Yと直交する方向である長辺方向Xに複数段配置しても良い。
で示した可動回素子1を用いた分光装置300の各構成の配置については、一例に過ぎず、図の構成や配置に限定されるものではない。
各本実施形態において、第1アクチュエータ部と第2アクチュエータ部は、駆動源として圧電素子を用いた圧電アクチュエータとして説明したが、圧電素子に替えて熱素子(発熱素子)を駆動源として用いた熱アクチュエータであってもよい。本実施形態において、変位規定部17、17A、17Bは直線状に形成されているが直線形状に限定するものではない。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0025】
1、1A、1B 可動回素子
歯状の可動素子
12 櫛歯状の固定素子
13、13A、13B 支持部
15、15A、15B 第1のカンチレバー型アクチュエータ
15a、15Aa、15Ba 第1のカンチレバー型アクチュエータの先端
16、16A、16B 第2のカンチレバー型アクチュエータ
17、17A、17B 変位規定部
105 貫通孔
106 反射膜層
144、145 圧電素子
300 分光装置
θ1、θ3、θ5 第1のカンチレバー型アクチュエータのたわみ角
θ2、θ4、θ6 第2のカンチレバー型アクチュエータのたわみ角
X 可動素子の長手方向
Y 可動素子の長手方向と交差する方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】特許第3164824号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9