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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】半導体加工用テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20220308BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20220308BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220308BHJP
   H01L 23/12 20060101ALN20220308BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J133/14
C09J201/00
H01L23/12 501C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017122631
(22)【出願日】2017-10-05
(65)【公開番号】P2018203974
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】岩永 有輝啓
(72)【発明者】
【氏名】大久保 恵介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智陽
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-049509(JP,A)
【文献】特開2012-104716(JP,A)
【文献】特開2010-265453(JP,A)
【文献】中国特許第109005665(CN,B)
【文献】国際公開第2016/117554(WO,A1)
【文献】特開2009-094493(JP,A)
【文献】特開2008-004751(JP,A)
【文献】特開2015-149398(JP,A)
【文献】特開2015-164160(JP,A)
【文献】特開2016-076694(JP,A)
【文献】国際公開第2016/151911(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/30
C09J 201/00
H01L 23/12
C09J 133/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層の表面上に設けられた粘着層と、
前記粘着層の表面上に設けられた熱硬化性を有する接着層と、
前記接着層の表面上に設けられた剥離フィルムと、
をこの順序で備える半導体加工用テープであって、
前記接着層は、170℃で1時間の硬化処理がされた後において、80℃における貯蔵弾性率が1MPa以上7MPa以下であり且つウエハに対するピール剥離力が8N/m以上30N/m以下であり、
前記接着層は、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合成分として含み且つ重量平均分子量が50万以上200万以下であるエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体である熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂と、フィラーとを少なくとも含み、
前記接着層における前記熱可塑性樹脂の含有量を100質量部としたとき、前記接着層における前記熱硬化性樹脂の含有量が10質量部以上37質量部以下であり且つ前記接着層における前記フィラーの含有量が10質量部以上100質量部以下である、半導体加工用テープ。
【請求項3】
前記接着層が硬化促進剤を更に含み、
前記接着層における前記熱可塑性樹脂の含有量を100質量部としたとき、前記接着層における前記硬化促進剤の含有量が0.01質量部以上3質量部以下である、請求項1又は2に記載の半導体加工用テープ。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂がo-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と、フェノールアラルキ ル樹脂とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体加工用テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体加工用テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化及び高機能化の要求が高まっている。これらの要求に応じて、電子機器を構成する半導体装置については、小型化、薄型化及び高密度実装化が求められている。
半導体装置は、基板、ガラス又は仮止め材に固定された半導体チップを樹脂で封止する封止工程、封止された半導体チップを必要に応じて個片化するダイシング工程等を経て製造される。上記製造過程において、ウエハを研磨する工程が実施される場合もある。
これらの工程はチップ又は基板等を保護用テープで覆った状態で実施されることが多い。保護用テープは、通常、特定の加工工程の前に保護すべき面に貼り付けられ、該加工工程後に剥離される。
【0003】
特許文献1は、金属製リードフレームを用いない基板レス半導体パッケージの製造に使用される半導体製造用耐熱性粘着シート、該シートに用いる粘着剤、及び該シートを用いた半導体装置の製造方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-129649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、多種多様なパッケージ及びそれらの製造プロセスが開発されている中で、チップ、半導体ウエハ及び基板等の被着体を仮固定するための接着テープに求められる性能も変わりつつある。例えば、半導体装置の製造過程における加熱処理に起因する高温環境下に、接着テープが有する接着層が曝された後、この接着層を介して基板にウエハを仮固定するプロセスも提案されている。しかし、本発明者らの検討によると、従来の接着テープは熱の影響で接着層の密着力が低下し、これにより、例えば、基板に仮固定したウエハの搬送時にウエハが基板から剥離してしまい、これが次工程における不具合の原因となっている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、半導体装置の製造過程における加熱処理によって熱硬化した後であっても、ウエハに対する十分な密着性を有する接着層を備えた半導体加工用テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半導体加工用テープは、基材層と、基材層の表面上に設けられた粘着層と、粘着層の表面上に設けられた熱硬化性を有する接着層と、接着層の表面上に設けられた剥離フィルムとをこの順序で備え、上記接着層は、170℃で1時間の硬化処理がされた後において、80℃における貯蔵弾性率が7MPa以下である。
【0008】
上記接着層の80℃における貯蔵弾性率が7MPa以下ということは、接着層が170℃で1時間程度の熱履歴を受けた後においても、接着層は十分な柔軟性を有していることを意味する。接着層が柔軟であることで、被着体に対する優れた密着性を実現できる。具体的には、上記接着層は、170℃で1時間の硬化処理がされた後において、ウエハに対するピール剥離力が8N/m以上であることが好ましい。なお、本明細書でいう「ピール剥離力」は剥離速度50mm/分、剥離角度90°で測定されるピール剥離力を意味する。
【0009】
本発明に係る半導体加工用テープの用途として、基板に対するウエハの仮固定が挙げられる。すなわち、本発明に係る半導体加工用テープは、半導体装置の製造過程において、剥離フィルムを剥離した後に接着層の第1の面に基板を仮固定するとともに、基材層及び接着層を剥離した後に接着層の第2の面にウエハを仮固定するために使用することができる。上述のように、半導体加工用テープを仮固定の用途で使用する場合、基材層、粘着層、接着層及び剥離フィルムはいずれも最終的に製造される半導体装置に残存しない。
【0010】
上記接着層は、170℃で1時間の硬化処理がされた後において、120℃における貯蔵弾性率が7MPa以下であることが好ましい。接着層がこの要件を満たすことにより、ウエハに対する密着力がより安定的に発揮される。
【0011】
上記接着層は、少なくとも、熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂とを含むことが好ましい。この場合、接着層における熱可塑性樹脂の含有量を100質量部とした際の、接着層における熱硬化性樹脂の含有量は、1質量部以上30質量部未満であることが好ましい。接着層がこの要件を満たすことにより、ウエハに対する密着力がより安定的に発揮される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体装置の製造過程における加熱処理によって熱硬化した後であっても、ウエハに対する十分な密着性を有する接着層を備えた半導体加工用テープが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の半導体加工用テープの一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2図2(a)~(f)は、図1に示す半導体加工用テープを仮固定用テープとして使用して半導体装置を製造する工程を模式的に示す断面図である。
図3図3(a)~(d)は、半導体装置を製造する工程であって、図2(f)に示す工程に続く工程を模式的に示す断面図である。
図4図4は半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0015】
<半導体加工用テープ>
図1は本実施形態に係る半導体加工用テープを模式的に示す断面図である。同図に示す半導体加工用テープ10は、基材層1と、粘着層2と、熱硬化性を有する接着層3と、剥離フィルム4とがこの順序で積層されている。半導体加工用テープ10の接着層3は、170℃で1時間の硬化処理がされた後において、80℃における貯蔵弾性率が7MPa以下である。接着層3は、上記のような熱履歴を受けた後において、被着体に対する優れた密着性を有する。かかる接着層3を備える半導体加工用テープ10は、半導体装置の製造過程の種々の工程に適用可能であり、特に部材同士の仮固定に好適に適用可能である。
半導体加工用テープ10の幅は、例えば、200~400mmであり、10~200mm又は400~600mmであってもよい。
【0016】
上述のとおり、接着層3は、170℃で1時間の硬化処理がされた後において、80℃における貯蔵弾性率が7MPa以下であり、5MPa以下であることが好ましく、3MPa以下であることがより好ましい。この値が7MPa以下であることで、被着体に対する優れた密着性を実現できる。優れた密着性をより安定的に達成する観点から、接着層3は、170℃で1時間の硬化処理がされた後において、120℃における貯蔵弾性率が7MPa以下であることが好ましく、5MPa以下であることがより好ましく、3MPa以下であることがさらに好ましい。なお、上記熱履歴後の接着層3の80℃及び120℃における貯蔵弾性率の下限値はいずれも、例えば、1MPaである。
【0017】
接着層3の貯蔵弾性率は以下のようにして求めることができる。半導体加工用テープ10を所定のサイズに裁断し、これから基材層1及び粘着層2を剥がすことによって接着層3と剥離フィルム4との積層体からなる試料を準備する。これを170℃で1時間加熱して硬化させる。このようにして得られた硬化処理後の接着層3を所定のサイズ(例えば、4mm×30mm)に裁断することによって試料を得る。この試料の弾性率を動的粘弾性測定装置()を用いて測定する。すなわち、試料に引張荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度10℃/分の条件で-50℃から300℃まで測定する。
【0018】
170℃で1時間の硬化処理がされた後において、ウエハに対する接着層3のピール剥離力は、8N/m以上であることが好ましく、10~30N/mであることがより好ましく、20~30N/mであることがさらに好ましい。このピール剥離力が8N/m以上であることでウエハに対する十分な密着性を確保できる。
【0019】
170℃で1時間の硬化処理がされた後において、接着層3の収縮率は、2%未満が好ましく、1.8%以下がより好ましく、1.6%以下がさらに好ましい。この値が2%未満であることで、半導体装置の製造過程において、接着層3に対してウエハ又は基板が仮固定された状態で接着層3に熱が加わっても位置ずれを十分に抑制できる。
【0020】
接着層3の収縮率は以下のようにして求めることができる。半導体加工用テープ10を所定のサイズ(例えば、100mm×100mm)に裁断し、これから基材層1及び粘着層2を剥がすことによって接着層3と剥離フィルム4との積層体からなる試料を準備する。これを130℃、1時間加熱して硬化させ、硬化処理後の接着層3のサイズを計測する。熱硬化前の試料面積と熱硬化後の試料面積を以下の式に代入して収縮率が算出される。
収縮率(%)=(硬化後の試料面積)/(硬化前の試料面積)×100
【0021】
接着層3は、熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂と、硬化促進剤と、フィラーとを含むことが好ましい。接着層3における熱可塑性樹脂の含有量を100質量部とした際の、これらの成分の含有量の好ましい範囲は以下のとおりである。すなわち、接着層3における熱硬化性樹脂の含有量は1質量部以上30質量部未満であることが好ましく、5~29質量であること部がより好ましく、10~28質量部であることがさらに好ましい。接着層3における硬化促進剤の含有量は、0.01~3質量部であることが好ましく、0.02~2質量部であることがより好ましく、0.03~1質量部であることがさらに好ましい。接着層3におけるフィラーの含有量は1~330質量部であることが好ましく、1~300質量部であることがより好ましく、5~200質量部であることがさらに好ましく、10~100質量部であることが特に好ましい。これらの要件を満たす接着層3は半導体装置の製造過程における種々の加工工程において求められる密着性、耐熱性及び剥離性をより一層安定的に向上することができる。
【0022】
接着層3と粘着層2は、加工工程の際に剥離が生じないように十分に密着していることが好ましい。接着層3と粘着層2の密着力は、両者のT字剥離強度で評価することができる。接着層3と粘着層2のT字剥離強度(剥離速度:50mm/分)は、15N/m以上が好ましく、16~100N/mがより好ましい。T字剥離強度は、以下の方法で行う。接着層3と粘着層2とをラミネータで貼り合せた後に25mm幅の切込みを入れることによって測定用試料を準備する。このときに、UV照射型の粘着剤を用いる場合は、適宜光UV照射を行う。剥離速度は50mm/分で測定する。
【0023】
以下、半導体加工用テープ10を構成する接着層3、粘着層2、基材層1及び剥離フィルム4について説明する。
【0024】
[接着層]
上述のとおり、接着層3は、熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂と、硬化促進剤と、フィラーとを含むことが好ましい。
【0025】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、熱可塑性を有する樹脂、又は少なくとも未硬化状態において熱可塑性を有し、加熱後に架橋構造を形成する樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、半導体加工用テープとして、収縮性、耐熱性及び剥離性に優れる観点から、反応性基を有する(メタ)アクリル共重合体(以下、「反応性基含有(メタ)アクリル共重合体」という場合もある)が好ましい。
熱可塑性樹脂として、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体を含む場合、接着層3は、熱硬化性樹脂を含まない態様でもよい。すなわち、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体と、硬化促進剤と、フィラーとを含む態様でもよい。
熱可塑性樹脂は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
(メタ)アクリル共重合体としては、アクリルガラス、アクリルゴム等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、アクリルゴムが好ましい。アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、(メタ)アクリル酸エステル及びアクリロニトリルから選択されるモノマーの共重合により形成されるものが好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、共重合成分としてブチルアクリレート及びアクリロニトリルを含む共重合体、共重合成分としてエチルアクリレート及びアクリロニトリルを含む共重合体が好ましい。
【0028】
反応性基含有(メタ)アクリル共重合体は、反応性基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合成分として含む反応性基含有(メタ)アクリル共重合体であることが好ましい。このような反応性基含有(メタ)アクリル共重合体は、反応性基を有する(メタ)アクリルモノマーと、上記のモノマーとが含まれる単量体組成物を共重合することにより得ることができる。
【0029】
反応性基としては、耐熱性向上の観点から、エポキシ基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水酸基、エピスルフィド基が好ましく、中でも架橋性の点から、エポキシ基及びカルボキシル基がより好ましい。
【0030】
本実施形態において、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体は、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合成分として含むエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体であることが好ましい。この場合、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、グリシジルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等が挙げられる。反応性基を有する(メタ)アクリルモノマーは、耐熱性の観点から、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0031】
熱可塑性樹脂のTgは、-50℃~50℃であることが好ましい。熱可塑性樹脂のTgが50℃以下であると、接着層3の柔軟性を確保しやすい。また、被着体に貼り付ける際に凹凸が存在する場合、追随しやすくなり、適度な接着性を有するようになる。一方、熱可塑性樹脂のTgが-50℃以上であると、接着層3の柔軟性が高くなりすぎることを抑制しやすく、優れた取扱性及び接着性、剥離性を達成できる。
【0032】
熱可塑性樹脂のTgは、示差走査熱量測定(DSC)によって得られる中間点ガラス転移温度値である。熱可塑性樹脂のTgは、具体的には、昇温速度10℃/分、測定温度:-80~80℃の条件で熱量変化を測定し、JIS K 7121:1987に準拠した方法によって算出した中間点ガラス転移温度である。
【0033】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、10万以上200万以下であることが好ましい。重量平均分子量が10万以上であると、仮固定の用途で使用する場合、耐熱性を確保しやすくなる。一方、重量平均分子量が200万以下であると、仮固定の用途で使用する場合、フローの低下及び貼付性の低下を抑制しやすい。上述した観点から、熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、50万以上200万以下であることがより好ましく、100万以上200万以下であることがさらに好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0034】
反応性基を有する(メタ)アクリル共重合体がグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートを共重合成分として含む場合、これらの含有量は合計で、共重合成分全量を基準として、0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~15質量%であることがより好ましく、1.0~10質量%であることがさらに好ましい。含有量が上記範囲内であると、接着層3の柔軟性と接着性、剥離性をより高水準で両立することができる。
【0035】
上述のような反応性基を有する(メタ)アクリル共重合体としては、パール重合、溶液重合等の重合方法によって得られるものを用いてもよい。または、HTR-860P-3CSP(商品名、ナガセケムテックス(株)製)等の市販品を用いてもよい。
【0036】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、熱により硬化する樹脂であれば特に制限なく用いることができる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。これらは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
エポキシ樹脂は、硬化して耐熱作用を有するものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂などを用いることができる。エポキシ樹脂は、また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等、従来公知のものを用いることができる。
【0038】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、エピコート807、エピコート815、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009(いずれも三菱ケミカル(株)製)、DER-330、DER-301、DER-361(いずれもダウケミカル社製)、YD8125、YDF8170(いずれも東都化成(株)製)等が挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、エピコート152、エピコート154(いずれも三菱ケミカル(株)製)、EPPN-201(日本化薬(株)製)、DEN-438(ダウケミカル社製)等が挙げられる。
o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、YDCN-700-10(新日鉄住金化学(株)製)、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1012、EOCN-1025、EOCN-1027(いずれも日本化薬(株)製)、YDCN701、YDCN702、YDCN703、YDCN704(いずれも東都化成(株)製)等が挙げられる。
多官能エポキシ樹脂としては、Epon 1031S(三菱ケミカル(株)製)、アラルダイト0163(BASFジャパン社製)、デナコールEX-611、EX-614、EX-614B、EX-622、EX-512、EX-521、EX-421、EX-411、EX-321(いずれもナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。
アミン型エポキシ樹脂としては、エピコート604(三菱ケミカル(株)製)、YH-434(東都化成(株)製)、TETRAD-X、TETRAD-C(いずれも三菱ガス化学(株)製)、ELM-120(住友化学(株)製)等が挙げられる。
複素環含有エポキシ樹脂としては、アラルダイトPT810(BASFジャパン社製)、ERL4234、ERL4299、ERL4221、ERL4206(いずれもユニオンカーバイド社製)等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
熱硬化樹脂成分の一部であるエポキシ樹脂硬化剤としては、通常用いられている公知の樹脂を使用することができる。具体的には、アミン類、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に二個以上有するビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂硬化剤としては、特に、吸湿時の耐電食性に優れるという観点から、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂が好ましい。
なお、エポキシ硬化剤は、エポキシ樹脂と同時に用いてもよいし、単独で用いてもよい。
【0040】
上記フェノール樹脂硬化剤の中でも、フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、フェノライトTD-2090、フェノライトTD-2149、フェノライトVH-4150、フェノライトVH4170(いずれもDIC(株)製、商品名)、H-1(明和化成(株)製、商品名)、エピキュアMP402FPY、エピキュアYL6065、エピキュアYLH129B65、ミレックスXL、ミレックスXLC、ミレックスXLC-LL、ミレックスRN、ミレックスRS、ミレックスVR(いずれも三菱ケミカル(株)製、商品名)を用いることが好ましい。
【0041】
(硬化促進剤)
硬化促進剤としては、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール-テトラフェニルボレート、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7-テトラフェニルボレート等が挙げられる。これらは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
接着層3がエポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体を含有する場合、係るアクリル共重合体に含まれるエポキシ基の硬化を促進する硬化促進剤を含有することが好ましい。エポキシ基の硬化を促進する硬化促進剤としては、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、イミダゾリン系硬化剤、トリアジン系硬化剤及びホスフィン系硬化剤が挙げられる。これらの中でも、速硬化性、耐熱性及び剥離性の観点から、工程時間の短縮及び作業性の向上が期待できるイミダゾール系硬化剤であることが好ましい。これらの化合物は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
接着層3における硬化促進剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.02~20質量部であることが好ましく、0.025~10質量部であることがより好ましく、0.025~3質量部であることがさらに好ましく、0.025~0.05であることが特に好ましい。硬化促進剤の含有量が上記範囲内であると、接着層3の硬化性を向上させながら保存安定性の低下を十分抑制できる傾向にある。
【0044】
(無機フィラー)
接着層3には、無機フィラーを配合することができる。無機フィラーとしては、銀粉、金粉、銅粉等の金属フィラー、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の非金属無機フィラーなどが挙げられる。無機フィラーは所望する機能に応じて選択することができる。
【0045】
上記無機フィラーは表面に有機基を有するものが好ましい。無機フィラーの表面が有機基によって修飾されていることにより、接着層3を形成するためのワニスを調製するときの有機溶剤への分散性、並びに接着層3の収縮性を抑えられ、弾性率を向上させ、剥離性を向上させることが容易となる。
【0046】
表面に有機基を有する無機フィラーは、例えば、下記式(B-1)で表されるシランカップリング剤と無機フィラーとを混合し、30℃以上の温度で攪拌することにより得ることができる。無機フィラーの表面が有機基によって修飾されたことは、UV測定、IR測定、XPS測定等で確認することが可能である。
【0047】
【化1】
【0048】
式(B-1)中、Xは、フェニル基、グリシドキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ビニル基、イソシアネート基及びメタクリロキシ基からなる群より選択される有機基を示し、sは0又は1~10の整数を示し、R11、R12及びR13は各々独立に、炭素数1~10のアルキル基を示す。
炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。
炭素数1~10のアルキル基は、入手が容易であるという観点から、メチル基、エチル基及びペンチル基が好ましい。Xは、耐熱性の観点から、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基及びイソシアネート基が好ましく、グリシドキシ基及びメルカプト基がより好ましい。式(B-1)中のsは、高熱時のフィルム流動性を抑制し、耐熱性を向上させる観点から、0~5が好ましく、0~4がより好ましい。
【0049】
シランカップリング剤としては、トリメトキシフェニルシラン、ジメチルジメトキシフェニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N,N’-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、ポリエトキシジメチルシロキサン等が挙げられる。
これらの中でも、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましく、トリメトキシフェニルシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランがより好ましい。シランカップリング剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
上記カップリング剤の含有量は、耐熱性と保存安定性とのバランスを図る観点から、無機フィラー100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.05~20質量部であることがより好ましく、耐熱性向上の観点から、0.5~10質量部であることがさらに好ましい。
【0051】
接着層3における無機フィラーの含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、330質量部以下であることが好ましく、180質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがさらに好ましい。無機フィラーの含有量の下限は特に制限はないが、熱可塑性樹脂100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、8質量部以上であることがさらに好ましい。無機フィラーの含有量を上記範囲とすることにより、接着層3の収縮性を抑えられ、弾性率を向上させ、剥離性を向上させることが容易となる。
【0052】
(有機フィラー)
接着層3には、有機フィラーを配合することができる。有機フィラーとしては、カーボン、ゴム系フィラー、シリコーン系微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子等が挙げられる。有機フィラーの含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、300質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがさらにより好ましい。有機フィラーの含有量の下限は特に制限はないが、熱可塑性樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましい。
【0053】
(有機溶剤)
接着層3は、必要に応じて、さらに有機溶剤を用いて希釈してもよい。有機溶剤は特に限定されないが、製膜時の揮発性等を沸点から考慮して決めることができる。具体的には、メタノール、エタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の比較的低沸点の溶剤が、製膜時にフィルムの硬化が進みにくいという観点から好ましい。また、製膜性を向上させる等の目的では、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン等の比較的高沸点の溶剤を使用することが好ましい。これらの溶剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
[粘着層]
粘着層2としては、室温で粘着力があり、接着層3に対し密着力を有するものが好ましい。粘着層2として、感圧型及び光硬化型(紫外線又は放射線等の高エネルギー線によって硬化するもの)のいずれも採用可能であるが、感圧型の方が光硬化型よりも被着体の表面が荒れることを抑制しやすい点で、感圧型を採用することが好ましい。また、粘着層2は光硬化型であっても、非光硬化型(例えば、熱によって硬化するもの)であってもよい。
【0055】
光硬化型粘着剤を使用する場合、粘着層2を形成する粘着剤としては、アクリル系共重合体(アクリル樹脂)と、架橋剤と、光重合開始剤とを含有することが好ましい。
非光硬化型粘着剤を使用する場合、粘着力の調整のため、ベース樹脂と、架橋反応によりベース樹脂の官能基と反応させる架橋剤として、エポキシ基、イソシアネート基、アジリジン基及びメラニン基から選ばれた少なくとも一種の官能基を有することが好ましい。これらの架橋剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
ベース樹脂としては、アクリル樹脂、各種合成ゴム、天然ゴム、ポリイミド樹脂等が挙げられる。粘着剤が糊残りしにくい観点で、ベース樹脂は他の添加剤と反応しうる官能基、例えば、水酸基、カルボキシル基等を有しているのが好ましい。
また、反応速度が遅い場合は、適宜にアミン又はスズ等の触媒を用いることができる。粘着特性を調整するために、ロジン系、テルペン樹脂系等のタッキファイヤー、各種界面活性剤等の任意成分を本発明の効果に影響しない程度に適宜含有してもよい。
【0056】
粘着層2の厚さは、1~100μmであることが好ましく、2~50μmであることがより好ましく、5~40μmであることがさらに好ましい。粘着層2の厚さが1μmよりも薄いと接着層との十分な粘着力を確保するのが困難になり、加工がしにくい恐れがあり、一方、100μmよりも厚いと不経済で特性上の利点もない。
【0057】
[基材層]
基材層1としては、既知のポリマーシート又はテープを用いることができる。具体例として、結晶性ポリプロピレン、非晶性ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、低密度直鎖ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフィド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。これらに、可塑剤、シリカ、アンチブロッキング材、スリップ剤、帯電防止剤等を混合した混合物を用いることもできる。
【0058】
上記の中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン‐ポリプロピレンランダム共重合体、ポリエチレン-ポリプロピレンブロック共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体から選ばれる少なくとも1種が主成分である層が、粘着層と接していることが好ましい。これらの樹脂は、ヤング率、応力緩和性、融点等の特性、並びに価格面、使用後の廃材リサイクル等の観点からも好ましく、紫外線による表面改質効果が得られやすい観点からも好ましい。
【0059】
基材層1は、単層でも構わないが、必要に応じて異なる材質からなる層が積層された多層構造を有してもよい。このような基材の製造法としては、多層押し出し法で異なる層を有する基材層を一度で作ってもよいし、インフレーション法、単層押し出し法で作られたテープを接着剤を用いて張り合わせる、又は熱溶着によって張り合わせる等の手法により得てもよい。また基材層1には粘着層2との密着性を制御するため、必要に応じて、マット処理、コロナ処理などの表面粗化処理を施してもよい。
【0060】
[剥離フィルム]
剥離フィルム4は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン等によって形成されている。剥離フィルム4には、任意の充填剤を含有させてもよい。また、剥離フィルム4の表面には、離型処理又はプラズマ処理等が施されていてもよい。
【0061】
<半導体加工用テープの作製方法>
半導体加工用テープ10は、例えば、以下に述べる方法により作製できる。すなわち、まず、剥離フィルム4上に、接着層3の原料樹脂組成物を有機溶剤等の溶媒に溶解させてワニス化したものを、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等により塗工し、溶媒を除去して接着層3を形成する。その後、別途作製した、基材層1と粘着層2とからなる積層体を常温~60℃で積層する。これにより、基材層1上に、粘着層2、接着層3及び剥離フィルム4が、この順に積層された半導体加工用テープ10を得ることができる。
【0062】
<半導体加工用テープの仮固定用テープとしての使用>
半導体加工用テープ10は、半導体装置の製造過程において、剥離フィルム4を剥離した後、接着層3の第1の面F1に基板を仮固定するとともに、基材層1及び粘着層2を剥離した後、接着層3の第2の面F2にウエハを仮固定するために使用することができる。基板としては、接着層3を支持でき且つ上記温度に耐え得る耐熱性を有するものであれば、特に制限はなく、シリコン基板、ガラス基板、石英基板等が挙げられる。ウエハとしては、半導体ウエハ等が挙げられる。
【0063】
図2(a)~(f)は、半導体加工用テープ10を仮固定用テープとして使用して半導体装置を製造する工程を示す断面図である。半導体加工用テープ10を仮固定用テープとして使用する場合、基材層1、粘着層2、接着層3及び剥離フィルム4はいずれも、最終的に製造される半導体装置に残存しない(図3(d)及び図4参照)。
【0064】
まず、半導体加工用テープ10の剥離フィルム4を剥がす。これによって露出した接着層3の第1の面F1と基板Sの表面が接するように、半導体加工用テープ10A(剥離フィルム4を剥離後のもの)を基板Sに貼り付ける(図2(a))。この際の温度は50~90℃程度とすればよい。この温度条件で両者を貼り合わせることで、接着層3と基板Sとの間の接着力を、接着層3と粘着層2との間の接着力よりも大きい状態とすることができる。つまり、基板Sは、接着層3が貼り合わされた状態で接着層3の接着性をコントロールするためのものである。なお、基板Sに貼り合わされた状態の接着層3は、熱が加えられることによって接着性がコントロールされるとともに、所定の耐熱性を有する層となる。
【0065】
図2(a)に示される状態から基材層1及び粘着層2を剥離することにより、図2(b)に示されるとおり、基板Sと接着層3とからなる積層体20が得られる。この積層体20に対して熱を加えることにより、具体的には、例えば、170℃で1時間程度の硬化処理を接着層3に対して施すことにより、接着層3の接着力をさらにコントロールすることができる。このような硬化処理がされた後において、接着層3の80℃における貯蔵弾性率が7MPa以下であることで、接着層3はウエハWに対する優れた密着性を有する。
【0066】
続いて、上記のような硬化処理後の接着層3の第2の面F2に半導体ウエハWの面Wsが接するように接着層3に半導体ウエハWを貼り付ける。なお、半導体ウエハWの面Wsの反対側の面が回路面Wcである。これにより、図2(c)に示されるとおり、接着層3の第1の面F1に基板Sが貼り合わされ、接着層3の第2の面F2に半導体ウエハWが貼り合わされた積層体30が得られる。接着層3と半導体ウエハWとを貼り合わせる際の温度は50~90℃程度とすればよい。この温度条件で接着層3と半導体ウエハWとを貼り合わせることで、接着層3と半導体ウエハWとの間の接着力を、接着層3と基板Sとの間の接着力よりも大きい状態とすることができる。
【0067】
図2(c)に示された積層体30における半導体ウエハWに対して必要な加工(例えば、マイクロバンプ接合)を施した後、基板Sを剥離する。これにより、図2(d)に示されるウエハWと接着層3とからなる積層体40が得られる。続いて、図2(e)に示すように、半導体ウエハWの回路面Wcが支持基板50に向いた状態で、表面にダイシングフィルム50aを有する支持基板50に半導体ウエハWを搭載する。なお、ダイシングフィルム50aとしては、従来のものから適宜選択すればよい。次に、図2(f)に示されるように、接着層3、半導体ウエハW及びダイシングフィルム50aをダイシングする。このとき、支持基板50を途中までダイシングしてもよい。このとき、接着層3は半導体ウエハWを保護する役割を果たす。
【0068】
次に、図3(a)に示されるように、支持基板50をエキスパンドすることにより、切断により得られた各半導体素子Waを互いに離間させつつ、支持基板51側からニードル42で突き上げられた接着層付き半導体素子60を吸引コレット44で吸引してピックアップする。接着層付き半導体素子60は、半導体素子Waと接着層3aとを有する。半導体素子Waは半導体ウエハWを分割して得られるものであり、接着層3aは接着層3を分割して得られるものである。なお、ピックアップ工程では、必ずしもエキスパンドを行わなくてもよいが、エキスパンドすることによりピックアップ性をより向上させることができる。また、ニードル42による突き上げ量は、必要に応じて選択できる。さらに、極薄ウエハに対しても十分なピックアップ性を確保する観点から、例えば、2段又は3段ピックアップ法を行ってもよい。また、吸引コレット44以外の方法によって半導体素子60のピックアップを行ってもよい。
【0069】
図3(b)に示されるように、半導体素子Waの回路面Wcに複数のバンプWbを形成する。その後、図3(c)に示されるように、接着層付き半導体素子60を、熱圧着により、半導体素子搭載用の支持基板70に接着する。その後、半導体素子Waの上面を保護していた接着層3aを剥離することにより、図3(d)に示される構造体80が得られる。
【0070】
続いて、図4に示されるように、必要に応じて半導体素子Waと支持基板70とをワイヤーボンド90により電気的に接続することが好ましい。さらに、ワイヤーボンディングにより接続した後、必要に応じて半導体素子Waを樹脂封止してもよい。樹脂封止材95を支持基板70の表面70aに形成し、他方、支持基板70の表面70aとは反対側の面に外部基板(マザーボード)との電気的な接続用として、はんだボール75を形成してもよい。
【実施例
【0071】
本発明について実施例に基づいて説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0072】
(粘着フィルムの作製)
粘着剤として、以下の主モノマーと官能基モノマーとを用い、溶液重合法によってアクリル共重合体を得た。すなわち、主モノマーとして2-エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートを用い、官能基モノマーとしてヒドロキシエチルアクリレートとアクリル酸とを用いた。上記アクリル共重合体の重量平均分子量は40万、ガラス転移点は-38℃であった。このアクリル共重合体100質量部に対し、多官能イソシアネート架橋剤(三菱ケミカル(株)製、商品名マイテックNY730A-T)を10質量部配合した粘着剤溶液を調製した。表面離型処理ポリエチレンテレフタレート(厚さ25μm)の上に乾燥時の粘着剤厚さが10μmになるよう粘着剤溶液を塗工乾燥した。さらに、ポリプロピレン/酢酸ビニル/ポリプロピレンからなるポリオレフィン基材(厚さ100μm)を粘着剤面にラミネートした。これにより、粘着層と、ポリオレフィン基材(基材層)とからなる粘着フィルムを得た。この粘着フィルムを室温で2週間放置し十分にエージングを行った。
【0073】
<実施例1>
(接着剤ワニスの調製)
以下の材料を混合するとともに真空脱気することによって接着剤ワニスを得た。
・熱可塑性樹脂:HTR-860P-3(商品名、ナガセケムテックス(株)製、グリシジル基含有アクリルゴム、分子量:100万、Tg:-7℃)100質量部
・熱硬化成分:ミレックスXLC-LL(商品名、三井化学(株)製、フェノールアラルキル樹脂、水酸基当量174)17質量部
・熱硬化成分:YDCN-700-10(商品名、新日鉄住金化学(株)製、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量210)20質量部
・硬化促進剤:2PZ-CN(商品名、四国化成工業(株)製、イミダゾール化合物)0.04質量部
・無機フィラー:アエロジルR972(商品名、日本アエロジル(株)製、酸化ケイ素、真球状シリカ、平均粒径約0.16μm)12質量部
・添加材(シランカップリング剤):適量
・溶剤(シクロヘキサノン):適量
【0074】
(半導体加工用テープの作製)
上記接着剤ワニスを、厚さ75μmの表面離型処理ポリエチレンテレフタレート(帝人デュポンフィルム(株)製、テイジンテトロンフィルム:A-31)上に塗布した。これにより、樹脂フィルムの一方の面に接着層が形成された接着シートを得た。この接着シートと、上記粘着フィルムとを貼り合わせることによって半導体加工用テープを得た。なお、接着シートの接着層と、粘着フィルムの粘着層が直接接するように、接着シートと粘着フィルムとを貼り合わせた。粘着層に対して接着層が粘着していることで、上記ポリエチレンテレフタレートに形成された接着層を粘着層側に確実に反転させることができる。
【0075】
(実施例2)
接着剤ワニスの調製に使用する各材料を表1の実施例2に示す配合としたことの他は、実施例1と同様にして半導体加工用テープを得た。
【0076】
(比較例1)
接着剤ワニスの調製に使用する各材料を表1の比較例1に示す配合としたことの他は、実施例1と同様にして半導体加工用テープを得た。なお、表1における「EXA-830CRP」はDIC(株)製の熱硬化性樹脂(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量170)の商品名である。
【0077】
(比較例2)
接着剤ワニスの調製に使用する各材料を表1の比較例2に示す配合としたことの他は、実施例1と同様にして半導体加工用テープを得た。なお、表1における「LF-4871」はDIC(株)製の熱硬化性樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量118)の商品名であり、「YDF-8170C」は新日鉄住金化学(株)製の熱硬化性樹脂(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量157)の商品名であり、「SC-2050-HLG」は、アドマテックス(株)製のフィラーの商品名である。
【0078】
(比較例3)
接着剤ワニスの調製に使用する各材料を表1の比較例3に示す配合としたことの他は、実施例1と同様にして半導体加工用テープを得た。
【0079】
実施例及び比較例に係る半導体加工用テープを以下の方法により評価した。
(1)硬化処理後の接着層の貯蔵弾性率
実施例及び比較例に係る半導体加工用テープを100mm×100mmのサイズにそれぞれ裁断した。それぞれの試料から粘着フィルム(粘着層及び基材層)と、表面離型処理ポリエチレンテレフタレートとを剥がすことによって接着層のみとし、これを測定用試料とした。実施例及び比較例に係る測定用試料を170℃、1時間加熱して硬化させた。硬化処理後の試料の弾性率を、動的粘弾性測定装置DVE-V4(商品名、(株)レオロジ製)を用い、引張荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度10℃/分の条件で-50℃から300℃まで測定した。その結果から、温度80℃及び120℃における貯蔵弾性率を求めた。表1において貯蔵弾性率の値が7MPa以下であった試料を「A」とし、7MPa超であった試料を「B」とした。
【0080】
(2)ウエハに対する接着層の90°ピール剥離力(ウエハに対する密着力の評価)
上記貯蔵弾性率の評価に使用した硬化後の試料を10mm幅に切断したものを測定用試料とした。測定用試料をシリコンのウエハの表面に貼り付けた。その後、測定用試料に粘着テープ(補助テープ)を貼り付け、ウエハから測定用試料を50mm/分にて90°の角度で引き剥がした。表1において90°ピール剥離力の値が8N/m以上であった試料を「A」とし、8N/m未満であった試料を「B」とした。
【0081】
【表1】
【符号の説明】
【0082】
1…基材層、2…粘着層、3…接着層、4…剥離フィルム、10…半導体加工用テープ、S…基板、W…半導体ウエハ。
図1
図2
図3
図4