(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】反応設備、オートクレーブからのスラリー抜出方法
(51)【国際特許分類】
B01J 3/02 20060101AFI20220308BHJP
C22B 3/02 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
B01J3/02 C
C22B3/02
B01J3/02 E
(21)【出願番号】P 2017219987
(22)【出願日】2017-11-15
【審査請求日】2020-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和昭
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 義裕
(72)【発明者】
【氏名】杉本 真代
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-039395(JP,B1)
【文献】特開昭47-015371(JP,A)
【文献】特開2015-122994(JP,A)
【文献】国際公開第2012/042840(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/096550(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0329933(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102660347(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 3/00-3/08
F16J 12/00-13/24
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
B01J 10/00-12/02,14/00-19/32
B01D 11/00-12/00
F16J 15/40-15/453,15/54-15/56
F16J 15/16-15/32,15/324-15/3296,15/46-15/53
C22B 1/00-61/00
C01B 13/00-13/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温高圧の条件下にて反応を行うオートクレーブを備える反応設備であって、
前記オートクレーブの内部圧力と等圧かあるいは
前記オートクレーブの内部圧力よりも0.2MPa以上1.0MPa以下の範囲で低く維持した状態で、該オートクレーブにて生じた固形分を含むスラリーを導入するレシービングベッセルと、
フラッシュバルブが設けられ、前記レシービングベッセルに導入されたスラリーのうちの上澄み液のみを、急減圧させながら導入するフラッシュベッセルと、を備える
反応設備。
【請求項2】
前記フラッシュベッセルには、前記上澄み液を導入する際の急減圧により生じたフラッシュ蒸気を排出する蒸気排出口が設けられており、
前記蒸気排出口から排出されたフラッシュ蒸気が回収される
請求項1に記載の反応設備。
【請求項3】
前記フラッシュベッセルは、前記蒸気排出口を介して熱交換器に接続されており、
前記蒸気排出口から排出されたフラッシュ蒸気が前記熱交換器により回収され熱交換される
請求項2に記載の反応設備。
【請求項4】
前記レシービングベッセルには、不活性ガス又は圧縮空気を装入するガス装入配管が接続されており、該ガス装入配管を介した不活性ガス又は圧縮空気の装入により内部圧力が調整される
請求項
1~3のいずれか1項に記載の反応設備。
【請求項5】
高温高圧の条件下にて反応を行うオートクレーブにて生じたスラリーを抜き出すスラリー抜出方法であって、
前記オートクレーブにて生じた固形分を含むスラリーを、該オートクレーブの内部の圧力と等圧かあるいは
前記オートクレーブの内部圧力よりも0.2MPa以上1.0MPa以下の範囲で低く維持した状態でレシービングベッセルに移送し、
次いで、前記レシービングベッセル内に導入したスラリーのうちの上澄み液のみを、フラッシュバルブが設けられたフラッシュベッセルに急減圧させながら移送し、
前記レシービングベッセルにおいては、内部圧力を徐々に減圧させた後に、該レシービングベッセルに残存した、固形分を含むスラリーを抜き出し、
前記フラッシュベッセルにおいては、導入した前記上澄み液を抜き出すとともに、該フラッシュベッセル内に生じたフラッシュ蒸気を回収する
オートクレーブからのスラリー抜出方法。
【請求項6】
前記レシービングベッセル内に導入したスラリーを静置させ、該スラリーに含まれる固形分を自然沈降させることによって分離し、該スラリーのうちの上澄み液のみを前記フラッシュベッセルに移送する
請求項
5に記載のオートクレーブからのスラリー抜出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートクレーブを備える反応設備に関するものであり、より詳しくは、高温高圧の条件下で反応を生じさせて固形物を含むスラリーを生成させるオートクレーブを備える反応設備、及びそのオートクレーブからのスラリーの抜出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高温・高圧反応容器(以下「オートクレーブ」という)内における未反応物や反応生成物を含むスラリーは、そのオートクレーブが高温かつ高圧で運転されるが故に、常温かつ大気圧にしてからフラッシュベッセルに抜き出されていた。具体的に、
図2に、オートクレーブとフラッシュベッセルとを備える設備構成例を示し、オートクレーブからフラッシュベッセルにスラリーを抜き出す流れを示す。
【0003】
図2中、符号51はオートクレーブを示し、符号52はフラッシュベッセルを示し、符号53はフラッシュバルブを示し、符号54は、熱交換器を示す。なお、
図2では、フラッシュバルブ53がフラッシュベッセル52の頂部に設けられる例を示すが、このフラッシュバルブ53は、オートクレーブ51とフラッシュベッセル52とを接続してスラリーを移送する配管55に設けられることもある。
【0004】
このような設備において、オートクレーブ51とフラッシュベッセル52の間に設けられるフラッシュバルブ53やオートクレーブ51の下流側の配管55は、スラリーの抜き出しに伴う摩耗によって減肉され易く、交換の頻度も多くなっていた。
【0005】
これは、オートクレーブ内の高温、高圧水がフラッシュバルブを通過する際に急減圧されることによってフラッシュ蒸気となり、フラッシュバルブや配管等の装置を高速度で通過することによる。また、そのフラッシュ蒸気に固形物である未反応物や反応生成物が含まれていると、特にこれら固形物質の硬度が高いとき等、摩耗による減肉がより一層に起こり易い状態となり、装置の損傷につながっていた。さらに、装置の損傷は、運転コストの増大につながる要因にもなっていた。
【0006】
なお、
図2に示す設備では、フラッシュベッセル52にて生じたフラッシュ蒸気を配管56を介して回収し、熱交換器54に供給して、オートクレーブ52に供給する原料を予熱するための熱源として利用することが可能となっている。
【0007】
本件出願人は、スラリーの抜き出しに伴う装置の摩耗等の問題を改善するため、オートクレーブのスラリー取り出し口(吐出口)に加圧貯留容器(以下、「レシービングベッセル」という)を接続して設け、オートクレーブからのスラリーを、そのレシービングベッセルに移送するようにし、その後、スラリーを装入したレシービングベッセルの内部圧力を徐々に低下させた後にスラリーを抜き出す方法を提案している(先行出願:特願2016-107131号)。
【0008】
図3は、先行出願に係る方法を適用した設備構成例を示すものである。具体的には、
図3に示すように、オートクレーブ61の下流側に、配管63を介して、フラッシュベッセルではなく、オートクレーブ61の内力よりも僅かに減圧したレシービングベッセル62(62A,62B)を設ける。そして、オートクレーブ61からのスラリーをレシービングベッセル62に移送させ、その後、レシービングベッセル62の内部圧力を徐々に低下させた後にスラリーを抜き出すようにしている。このような方法によれば、従来のようなフラッシュ蒸気やそのフラッシュ蒸気に同伴される固形物による装置の摩耗等を低減させることが可能となる。なお、
図3では、2つ(2系列)のレシービングベッセル62A,62Bを設け、その2系列にて順次切り替えて連続的にオートクレーブ61からスラリーを抜き出す例を示している。
【0009】
しかしながら、この方法では、フラッシュベッセルではなく、レシービングベッセル62(62A,62B)を設けていることにより、従来のフラッシュベッセルを構成していた場合には可能であったフラッシュ蒸気による熱回収ができなくなり、設備においてエネルギーのロスにつながることになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、高温高圧の条件下で反応を行うオートクレーブから生成したスラリーを抜き出すに際して、反応設備を構成する装置の摩耗や損傷等の発生を低減させるとともに、オートクレーブにて生じた熱エネルギーを有効に回収することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、オートクレーブの下流側にレシービングベッセルを設け、さらにその下流側にフラッシュベッセルを設けて反応設備を構成し、オートクレーブにて生成した固形分を含むスラリーをレシービングベッセルに移送させ、その後上澄み液の一部をフラッシュベッセルに移送することで、装置の摩耗等の発生を低減できるとともに、熱エネルギーを有効に回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
(1)本発明の第1の発明は、高温高圧の条件下にて反応を行うオートクレーブを備える反応設備であって、前記オートクレーブの内部圧力と等圧かあるいは僅かに減圧されており、該オートクレーブにて生じた固形分を含むスラリーを導入するレシービングベッセルと、フラッシュバルブが設けられ、前記レシービングベッセルに導入されたスラリーのうちの上澄み液のみを、急減圧させながら導入するフラッシュベッセルと、を備える、反応設備である。
【0014】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記フラッシュベッセルには、前記上澄み液を導入する際の急減圧により生じたフラッシュ蒸気を排出する蒸気排出口が設けられており、前記蒸気排出口から排出されたフラッシュ蒸気が回収される、反応設備である。
【0015】
(3)本発明の第3の発明は、第2の発明において、前記フラッシュベッセルは、前記蒸気排出口を介して熱交換器に接続されており、前記蒸気排出口から排出されたフラッシュ蒸気が前記熱交換器により回収され熱交換される、反応設備である。
【0016】
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記レシービングベッセルは、その内部圧力が、前記オートクレーブの内部圧力よりも0.2MPa以上1.0MPa以下の範囲で低く維持した状態で、該オートクレーブから前記固形分を含むスラリーを導入する、反応設備である。
【0017】
(5)本発明の第5の発明は、第4の発明において、前記レシービングベッセルには、不活性ガス又は圧縮空気を装入するガス装入配管が接続されており、該ガス装入配管を介した不活性ガス又は圧縮空気の装入により内部圧力が調整される、反応設備である。
【0018】
(6)本発明の第6の発明は、高温高圧の条件下にて反応を行うオートクレーブにて生じたスラリーを抜き出すスラリー抜出方法であって、前記オートクレーブにて生じた固形分を含むスラリーを、該オートクレーブの内部の圧力と等圧かあるいは僅かに減圧されたレシービングベッセルに移送し、次いで、前記レシービングベッセル内に導入したスラリーのうちの上澄み液のみを、フラッシュバルブが設けられたフラッシュベッセルに急減圧させながら移送し、前記レシービングベッセルにおいては、内部圧力を徐々に減圧させた後に、該レシービングベッセルに残存した、固形分を含むスラリーを抜き出し、前記フラッシュベッセルにおいては、導入した前記上澄み液を抜き出すとともに、該フラッシュベッセル内に生じたフラッシュ蒸気を回収する、オートクレーブからのスラリー抜出方法である。
【0019】
(7)本発明の第7の発明は、第6の発明において、前記レシービングベッセル内に導入したスラリーを静置させ、該スラリーに含まれる固形分を自然沈降させることによって分離し、該スラリーのうちの上澄み液のみを前記フラッシュベッセルに移送する、オートクレーブからのスラリー抜出方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高温高圧の条件下で反応を行うオートクレーブから生成したスラリーを抜き出すに際して、反応設備を構成する装置の摩耗や損傷の発生を低減させるとともに、オートクレーブにて生じた熱エネルギーを有効に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】オートクレーブを備える反応設備の構成の一例を示す構成図であり、オートクレーブからのスラリーの移送の流れを説明するための図である。
【
図2】従来のオートクレーブを備える反応設備の構成を示す構成図であり、オートクレーブに連続する下流側にフラッシュベッセルを接続させた反応設備の図である。
【
図3】オートクレーブの下流側にフラッシュベッセルを設けずにレシービングベッセルを接続させた反応設備の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0023】
≪1.オートクレーブを備える反応設備の構成≫
本実施の形態に係る反応設備は、高温高圧の条件下にて反応を行うオートクレーブを備える反応設備である。具体的に、この反応設備は、高温高圧の条件下で原料物質から固形物である反応生成物を含むスラリーを生成させるオートクレーブと、生成したスラリー(反応後スラリー)をオートクレーブから抜き出すための装置とから構成されている。
【0024】
図1は、本実施の形態に係る反応設備の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、反応設備1は、高温高圧の条件下にて反応を行うオートクレーブ2と、オートクレーブ2にて生じたスラリーを導入するレシービングベッセル3A,3Bと、レシービングベッセル3A,3Bに導入されたスラリーのうちの一部を導入するフラッシュベッセル4と、を備える。また、反応設備1においては、発生したエネルギーを回収し、オートクレーブ2に供給する原料を予熱するための熱源に熱交換する熱交換器5を備える。
【0025】
このように、反応設備1では、オートクレーブ2の下流側にレシービングベッセル3A,3Bが設けられ、さらにその下流側にフラッシュベッセル4が設けられている。
【0026】
[オートクレーブ]
オートクレーブ2は、加圧反応容器であり、反応原料が供給されて、上述のように高温高圧の条件下にて反応を行う。オートクレーブ2では、固形物である反応生成物や未反応物が含まれるスラリーが生成する。
【0027】
オートクレーブ2における反応条件としては、特に限定されないが、例えば150℃~300℃程度の高い温度、1MPa~5MPa程度の高い圧力とすることができる。また、そのオートクレーブ2にて行われる具体的な反応についても、特に限定されず、高温高圧の条件下での反応により固形物を含むスラリーを生じさせるものであれば好ましく適用できる。例えば、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を原料として、150℃~250℃程度の温度、2.5MPa~3.5MPa程度の圧力下にて、溶液中のニッケルイオンをニッケルに還元してニッケル粉を含むスラリーを生じさせる反応を挙げることができる。また、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおける高温加圧酸浸出反応に適用できる。具体的には、230℃~270℃程度の温度、3MPa~5MPa程度の圧力下で、鉱石スラリーを原料として硫酸を添加しながらニッケル等の有価金属を浸出させ、浸出液と鉄等の不純物からなる浸出残渣とを含む浸出スラリーを生成させる反応に適用できる。
【0028】
オートクレーブ2には、特に限定されないが、撹拌装置21が設けられており、オートクレーブ2に供給された原料を撹拌して反応効率を高めることができるようになっている。また、オートクレーブ2には、内部に装入された原料や、反応により生じたスラリーのレベルを測定するレベル計22が設けられており、例えば、そのレベル計22によりスラリーの液面を監視しながら、後述するレシービングベッセル3へのスラリー移送を制御することができるようになっている。
【0029】
ここで、オートクレーブ2にて生成される反応後のスラリーは、高温高圧の反応条件下で生成されたものであることから、高い温度と高い圧力を有している。従来、オートクレーブにて生成したスラリーの抜き出しに際しては、オートクレーブにフラッシュベッセルを接続させ、高温高圧のスラリーを大気圧まで減圧させながらフラッシュベッセルに導入し、抜き出し操作を行っていた。しかしながら、そのような従来の方法では、フラッシュベッセルに抜き出されるスラリーが、極めて速い流速でオートクレーブから排出されるようになるため、そのスラリーとの接触により、フラッシュベッセルに設けられたバルブ(フラッシュバルブ)や配管内に摩耗や損傷が生じやすい状態であった。特に、その摩耗等の主な原因は、スラリーに含まれる固形分であり、固形分の硬度が大きいほど摩耗等の度合いが大きくなり、装置の耐久性を低下させていた。
【0030】
そこで、本実施の形態に係る反応設備1においては、オートクレーブ2を、配管11を介してレシービングベッセル3に接続させ、オートクレーブ2にて生成した固形分を含むスラリーを、そのレシービングベッセル3に移送するようにしている。
【0031】
[レシービングベッセル]
レシービングベッセル3は、オートクレーブ2にて生成した固形分を含むスラリーを導入する貯留容器である。オートクレーブ2とレシービングベッセル3とは、配管11を介して接続されており、固形分を含むスラリーは、その配管11を通ってレシービングベッセル3に移送される。
【0032】
そして、レシービングベッセル3は、少なくともスラリーの移送時においては、その内部圧力が、オートクレーブ2の内部圧力と等圧かあるいは僅かに減圧された圧力に調整され、維持されている。このように、反応設備1においては、オートクレーブ2にて生成した固形分を含むスラリーを、大気圧に一気に減圧するのではなく、一旦、オートクレーブ2の内部圧力より僅かに減圧した程度の圧力に調整されたレシービングベッセル3に移送するようにしている。このことから、急速な減圧(急減圧)に伴って高速にスラリーが移動することを防ぎ、装置の摩耗や損傷等の発生を防ぐことができる。
【0033】
ここで、
図1の反応設備1においては、2つ(2系列)のレシービングベッセル3(3A,3B)を備える例を示している。なお、レシービングベッセル3の設置数としてはこれに限定されない。レシービングベッセル3としては、1つ(1系列)のみ備えるものであってもよいが、
図1に示すように2系列等の複数系列を備えるようにすることで、オートクレーブ2からのスラリーを、各系列のレシービングベッセル3A,3Bに順次にかつ連続的に移送させることができる。
【0034】
また、2系列のレシービングベッセル3A,3Bを備える反応設備1において、固形分を含むスラリーをレシービングベッセル3A,3Bに移送する配管11は、分岐配管となっており、分岐した配管11aによりレシービングベッセル3Aにスラリーが移送され、分岐した配管11bによりレシービングベッセル3Bにスラリーが移送される。
【0035】
なお、分岐配管である配管11(11a,11b)において、分岐点の前後にはバルブ12,13,14が設けられており、スラリーの供給のON/OFFを制御している。
【0036】
レシービングベッセル3A,3Bにおいては、上述したようにその内部圧力が、オートクレーブ2の内部圧力と等圧かあるいは僅かに減圧された圧力に調整されている。また、より好ましくは、0.2MPa以上1.0MPa以下の範囲程度の圧力差で僅かに減圧された状態となっている。すなわち、レシービングベッセル3A,3Bの内部圧力を、オートクレーブ2の内部圧力よりも、好ましくは0.2MPa以上1.0MPaの範囲で低く維持した状態で、そのオートクレーブ2から反応後スラリーをレシービングベッセル3A,3Bに移送する。これにより、スラリーの移送がスムーズに進行するようになり、一方で僅かな圧力差であることから、スラリーの高速化を防ぐこともできる。
【0037】
オートクレーブ2とレシービングベッセル3A,3Bとの圧力差が0.2MPa未満であると、固形分を含むスラリーの取り出し(移送)が進みにくくなり、作業効率が低下する可能性がある。一方で、その圧力差が1.0MPaを超えると、オートクレーブ2からのスラリーの排出速度が上がり過ぎてしまい、装置における摩耗や損傷等の発生を効果的に抑制することができない可能性がある。
【0038】
レシービングベッセル3A,3Bにおいては、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス又は圧縮空気を装入するガス装入配管31が接続されている。レシービングベッセル3A,3Bでは、ガス装入配管31を介して不活性ガス又は圧縮空気を装入することで、内部の圧力を調整する。具体的には上述のように、その内部圧力を、オートクレーブ2の内部圧力と等圧かあるいは僅かに減圧された圧力に調整している。
【0039】
なお、ガス装入配管31には、供給するガスの流量を調整可能なバルブ32が設けられており、レシービングベッセル3A,3Bの内部圧力を適切に調整可能となっている。
【0040】
レシービングベッセル3A,3Bでは、オートクレーブ2から導入した固形分を含むスラリーを、スラリー排出口33に接続されたスラリー排出配管15を介して排出し、抜き出している。なお、レシービングベッセル3A,3Bから抜き出されるスラリーは、後述するフラッシュベッセル4へ移送させたスラリーの一部の上澄み液を除いた分である。また、抜き出されるスラリーは、オートクレーブ2での反応により生成したほぼすべての固形分を含む。また、レシービングベッセル3A,3Bからのスラリーの抜出量は、スラリー排出配管15に設けられたバルブ30を調整することにより制御することができる。
【0041】
レシービングベッセル3A,3Bからのスラリーの抜き出しに際しては、スラリーが導入されたレシービングベッセル3A,3Bの内部圧力を徐々に低下させ、その内部圧力を大気圧以下とする。スラリーの抜き出しに際して内部圧力を低下させる方法としては、例えば、レシービングベッセル3A,3Bに冷却ジャケット3jを包囲させる等して、内部に存在するスラリーの温度を100℃以下にまで冷却する方法により行うことができる。また、レシービングベッセル3A,3Bは、ガス装入配管31を介して不活性ガス又は圧縮空気が装入されて高圧状態となっているため、内部のガスを排出させるガス排出配管34からガスを排出させることにより、内部圧力を低下させる。ガス排出配管34からのガスの排出は、バルブ32の開閉を調整することで制御することができる。
【0042】
なお、レシービングベッセル3A,3Bには、圧力計38が設けられており、内部の圧力を測定して、所定の圧力条件となるように監視することができる。また、レシービングベッセル3A,3Bには、スラリーの液面を測定するレベル計39が設けられており、オートクレーブ2からレシービングベッセル3A,3Bへのスラリー導入量や、レシービングベッセル3A,3Bからのスラリー抜出量等を監視することができる。
【0043】
さて、本実施の形態に係る反応設備1においては、レシービングベッセル3A,3Bが、配管36を介してフラッシュベッセル4に接続されていることを特徴としている。詳しくは後述するが、反応設備1においては、レシービングベッセル3A,3B内に固形分を含むスラリーを導入し、スラリーを静置させて固形分を自然沈降させた後、スラリーにおける上澄み液のみを、フラッシュベッセル4に移送させるようにしている。
【0044】
[フラッシュベッセル]
フラッシュベッセル4は、フラッシュバルブ41を導入口に設けた容器であり、そのフラッシュバルブ41により、溶液を急速に減圧(急減圧)させながら内部に導入する。具体的に、フラッシュベッセル4では、配管36を介して移送されたスラリーの一部の上澄み液を大気圧程度の圧力まで急減圧させながら、内部に導入する。
【0045】
このとき、上澄み液は、フラッシュバルブ41を通過する際に瞬時に減圧(急減圧)されるため、容器内部への導入に際して100℃以上のフラッシュ蒸気となる。
【0046】
ここで、フラッシュベッセル4に導入される溶液は、オートクレーブ2と等圧かあるいは僅かに減圧した程度の高い圧力状態に維持されたレシービングベッセル3A,3Bから移送される溶液であり、高温高圧の状態である。しかしながら、その溶液は、レシービングベッセル3A,3Bに貯留されたスラリーのうちの上澄み分(上澄み液)のみであり、概ね固形分が含まれていない溶液である。したがって、フラッシュベッセル4への導入に際して、その上澄み液は、フラッシュバルブ41により急減圧されて高速に流れる溶液となるものの、固形分を含まない溶液であるため、フラッシュバルブ41等の装置を摩耗や損傷等を低減させることができる。
【0047】
一方で、上述したように、フラッシュバルブ41により急減圧されてフラッシュベッセル4に導入される上澄み液はフラッシュ蒸気となることにより、そのフラッシュ蒸気が保有する熱を熱源として有効に回収することができる。
【0048】
具体的には、フラッシュベッセル4は、例えば頂部付近に蒸気排出口42が設けられており、フラッシュベッセル4の内部のフラッシュ蒸気を排出することができる。反応設備1では、蒸気排出口42から排出したフラッシュ蒸気を回収することで、そのフラッシュ蒸気が保有する熱を種々の熱源として有効に回収することができる。そして、このことにより、エネルギーのロスを有効に低減することができる。
【0049】
フラッシュベッセル4には、例えば底部にあるスラリー排出口43が設けられており、フラッシュベッセル4内に貯留されたスラリー(上澄み液のみ)を排出し、抜き出すことができるようになっている。なお、スラリー排出口43には、スラリー排出配管15が接続されており、スラリーはスラリー排出配管15を通って抜き出される。また、フラッシュベッセル4からのスラリーの抜き出し量は、スラリー排出配管15に設けられたバルブ40を調整することにより制御することができる。
【0050】
また、フラッシュベッセル4には、スラリーの液面を測定するレベル計44が設けられており、レシービングベッセル3A,3Bからのスラリー(上澄み液のみ)の導入量や、フラッシュベッセル4からのスラリー抜出量等を監視することができる。
【0051】
[熱交換器]
熱交換器5は、例えばオートクレーブ2に原料を供給する原料供給配管の途中に設けられる。この熱交換器5は、フラッシュベッセル4と蒸気排出口42を介して接続されており、蒸気排出口42から排出されたフラッシュ蒸気を、蒸気配管45を通じて回収し、そのフラッシュ蒸気を熱に交換する。
【0052】
熱交換器5の構成は、フラッシュ蒸気を有効に熱に交換できるものであれば特に限定されず、公知の装置を用いることができる。
【0053】
以上のような構成を有する反応設備1によれば、オートクレーブ2の下流側にレシービングベッセル3(3A,3B)を設け、さらにその下流側にフラッシュベッセル4を設けることによって、従来の設備のようにフラッシュバルブや配管等の装置への摩耗や損傷の発生を低減させることができる。そしてさらに、この反応設備1によれば、フラッシュベッセル4を所定の位置に設け、フラッシュ蒸気を生じさせるように構成していることから、そのフラッシュ蒸気に由来する熱を有効に回収することができ、反応設備としてエネルギーのロスを防ぐことができる。
【0054】
≪2.オートクレーブからのスラリーの抜出方法について≫
次に、
図1に示す反応設備1において、オートクレーブ2にて生成した固形分を含むスラリーをそのオートクレーブ2から抜き出す方法について具体的に説明する。
【0055】
[反応設備の構成について]
上述したように、反応設備1は、高温高圧の条件下にて反応を行うオートクレーブ2を備える設備であって、オートクレーブ2の内部圧力と等圧かあるいは僅かに減圧されており、オートクレーブ2にて生じた固形分を含むスラリーを導入するレシービングベッセル3(3A,3B)と、フラッシュバルブ41が設けられ、レシービングベッセル3に導入されたスラリーのうちの上澄み液のみを、急減圧させながら導入するフラッシュベッセル4と、を備えている。つまり、反応設備1は、オートクレーブ2の下流側にレシービングベッセル3を設け、さらにその下流側にフラッシュベッセル4を設けて構成されている。
【0056】
なお、反応設備1は、
図1に示すように2系列のレシービングベッセル3A,3Bを備えており、オートクレーブ2とレシービングベッセル3A,3Bとを接続する配管11a,11bに設けられたバルブ12,13,14を調整することで、オートクレーブ2からのスラリーの移送先を切り替え、連続的にスラリーを移送している。
【0057】
[オートクレーブからのスラリーの抜き出しについて]
(レシービングベッセルの内部圧力の調整)
先ず、反応設備1において、オートクレーブ2にて生成した固形分を含むスラリーを抜き出すに際しては、事前の準備作業として、オートクレーブ2の下流側に連続して接続されたレシービングベッセル3A,3Bの内部の圧力を、オートクレーブ2の内部の圧力と等圧かあるいは僅かに減圧した状態に調整する。
【0058】
具体的には、レシービングベッセル3A,3Bに接続されたガス装入配管31を介して、そのレシービングベッセル3A,3B内に不活性ガス又は圧縮空気を装入する。ガス装入配管31を介した不活性ガス等の装入は、ガス装入配管31に設けられたバルブ32a,32bを開閉操作することで制御することができる。また、そのバルブ32a,32bとしては、ガス装入量を制御できるコントロールバルブとすることもできる。なお、バルブ32aは、レシービングベッセル3Aへのガス装入を制御するバルブであり、バルブ32bは、レシービングベッセル3Bへのガス装入を制御するバルブであり、例えばバルブ32aを開状態としてレシービングベッセル3Aにガスを装入しているときには、バルブ32bを閉状態としてレシービングベッセル3Bへのガス装入を停止する。
【0059】
レシービングベッセル3A,3Bには、内部圧力を測定することができる圧力計38が設けられており、その圧力計38によって内部圧力を連続的に測定し監視しながら、ガス装入配管31を介して不活性ガス等を装入する。
【0060】
このような操作により、準備作業として、レシービングベッセル3A,3B内の内部圧力を、オートクレーブ2の内部圧力と等圧かあるいは僅かに減圧された状態とする。より好ましくは、レシービングベッセル3A,3B内の内部圧力を、オートクレーブの内部圧力よりも0.2MPa以上1.0MPa以下の範囲で低く維持した状態とする。
【0061】
(オートクレーブからレシービングベッセルへのスラリーの移送)
次に、オートクレーブ2での高温高圧下での反応により生成したスラリーを、内部圧力が調整されたレシービングベッセル3A,3Bに移送する。ここで、オートクレーブ2からのレシービングベッセル3A,3Bに移送するスラリーは、オートクレーブ2での反応により生じた反応生成物や未反応物から構成される固形分を含むスラリーであり、高温、高圧の状態にあるスラリーである。
【0062】
スラリーの移送の開始は、オートクレーブ2内のスラリーの液面が所定のレベルに達したことを確認したのち、配管11に設けられたバルブ12とバルブ13又はバルブ14を開状態とし、その配管11を介してレシービングベッセル3A,3Bに移送する。なお、オートクレーブ2内のスラリーの液面レベルは、オートクレーブ2に設けられたレベル計22を用いて行うことができる。
【0063】
オートクレーブ2からレシービングベッセル3A,3Bへのスラリーの移送は、レシービングベッセル3A,3Bの内部圧力がオートクレーブ2の内部圧力よりも、好ましくは僅かに低い圧力に維持されていることから、その圧力差によって自然に行われる。なお、配管11に圧力ポンプ等を設けてそのポンプ圧にて移送するようにしてもよい。
【0064】
図1に示す反応設備1のように、2系列のレシービングベッセル3A,3Bを備える場合においては、オートクレーブ2からのスラリー移送先のレシービングベッセル3A,3Bを順次切り替えて行うようにする。例えば、レシービングベッセル3Aに対しては配管11aを介してスラリーを移送し、レシービングベッセル3Bに対しては配管11bを介してスラリーを移送し、それぞれの配管11a,11bに設けられたバルブ13,14の開閉を制御することにより、移送先のレシービングベッセル3の系列を切り替える。
【0065】
そして、例えばオートクレーブ2からレシービングベッセル3Aに対してスラリーの移送を行い(なおこのときは、バルブ13が開状態にあり、バルブ14が閉状態にある)、レシービングベッセル3Aにおけるスラリー液面が所定のレベルに達すると、バルブ13を閉状態にして、そのレシービングベッセル3Aへのスラリー移送を停止する。そして、バルブ13を閉じると同時にバルブ14を開状態にすることによって、オートクレーブ2からのスラリーの移送作業をレシービングベッセル3Bへと切り替える。このように、スラリーの移送先をレシービングベッセル3Aとレシービングベッセル3Bとで順次切り替えることによって、連続的にスラリーを移送するようにする。
【0066】
なお、レシービングベッセル3A,3B内のスラリーの液面レベルは、レシービングベッセル3A,3Bのそれぞれに設けられたレベル計39を用いて行うことができる。
【0067】
(スラリー上澄み液のフラッシュベッセルへの移送)
オートクレーブ2から、例えばレシービングベッセル3Aに固形分を含むスラリーを移送させると、次に、そのレシービングベッセル3Aに導入されたスラリーを内部で静置させることによって、スラリーに含まれる固形分を自然沈降させる。これにより、レシービングベッセル3Aの内部のスラリーでは、下層に固形分が、上層に上澄み液が、それぞれ自然分離した状態となる。
【0068】
そして、固形分と上澄み液とが分離したスラリーが得られたのち、そのスラリーのうちの上澄み液のみを、フラッシュバルブ41を導入口に備えたフラッシュベッセル4に移送する。具体的には、レシービングベッセル3Aとフラッシュベッセル4とを接続する配管36を介し、配管36上のバルブ37aを開状態とすることにより上澄み液のみを移送する(なおこのときは、バルブ37bは閉状態にある)。なお、フラッシュベッセル4に移送する上澄み液は、レシービングベッセル3A内のスラリー中のすべての上澄み液ではなく、その一部分とする。
【0069】
オートクレーブ2の内部圧力と等圧かあるいは僅かに低い圧力の状態にあるレシービングベッセル3Aに移送されたスラリーは、高温、高圧の状態にあり、固形分と上澄み液との自然分離後もその状態にある。配管36を介して、レシービングベッセル3Aからスラリーの上澄み液のみをフラッシュベッセル4に移送すると、フラッシュベッセル4に設けられたフラッシュバルブ41を通過する際に、その上澄み液が急速に減圧(急減圧)される。すると、フラッシュベッセル4内に導入されるに際して、上澄み液が100℃以上のフラッシュ蒸気となる。
【0070】
ここで、フラッシュベッセル4に移送する上澄み液は、スラリーのうちの固形分を除いた溶液分である。したがって、レシービングベッセル3Aからフラッシュベッセル4に高温高圧の上澄み液を移送して急減圧させた場合でも、従来のようなスラリー中の固形分に由来する、フラッシュバルブ等の装置の摩耗や損傷等を抑制することができる。特に、オートクレーブ2にて生成されるスラリーにおいて、反応生成物として硬度が比較的高い固形分が生じた場合でも、スラリー中の固形分はフラッシュベッセル4に移送されないため、フラッシュバルブ41等の装置の摩耗等を有効に低減することができる。
【0071】
そしてまた、このようにして上澄み液のみをフラッシュベッセル4に移送させるようにすることで、フラッシュバルブ41を経てフラッシュ蒸気が生じるようになることから、そのフラッシュ蒸気を熱源として回収することができる。つまり、このような反応設備1を用いたスラリーの抜き出し方法によれば、反応設備1内で熱源を効率的に生じさせることができ、またその発生した熱を回収することでエネルギーロスを防ぐことができる。
【0072】
反応設備1においては、フラッシュベッセル4の蒸気排出口42からのフラッシュ蒸気を蒸気配管45にて回収し、その蒸気配管45を介して接続された熱交換器5にて熱交換されるようになっている。熱交換器5においてフラッシュ蒸気に基づいて交換された熱は、オートクレーブ2に供給される原料を予熱するために熱源として使用される。
【0073】
なお、2系列のレシービングベッセル3A,3Bから、順次交互に、フラッシュベッセル4に対して上澄み液の移送することで、熱回収を無駄なく行うことができる。具体的には、配管36上のバルブ37aを開状態とすると一方でバルブ37bを閉状態とすることで、上述のようにレシービングベッセル3Aからフラッシュベッセル4に上澄み液を移送し、フラッシュベッセル4にて熱回収を行う。そして、レシービングベッセル3Aからの上澄み液の移送後、続いて、配管36上のバルブ37bを閉状態とすると同時にバルブ37bを開状態とすることで、フラッシュベッセル4への上澄み液の移送元をレシービングベッセル3Bに替え、レシービングベッセル3Bからフラッシュベッセル4への上澄み液の移送を開始し、熱回収を行う。
【0074】
レシービングベッセル3Aからフラッシュベッセル4への上澄み液の移送は、レシービングベッセル3A内のスラリーの液面レベルが所定の設定値以下となったことを検知したときに停止する。移送の停止は、配管36上に設けられたバルブ37を閉状態とすることによって行うことができる。なお、レシービングベッセル3A内のスラリーの液面レベルは、レベル計39による測定値を監視することで行うことができる。
【0075】
なお、レシービングベッセル3Aからフラッシュベッセル4へ上澄み液を移送するにあたっては、移送に伴ってレシービングベッセル3A内のスラリーのレベルが低下しても、レシービングベッセル3Aの内部圧力が下がらないようにすることが好ましい。すなわち、フラッシュベッセル4への上澄み液の移送に際しても、レシービングベッセル3Aの内部圧力を、オートクレーブ2の内部圧力と等圧かあるいは僅かに低い圧力に維持することが好ましい。これにより、レシービングベッセル3Aからフラッシュベッセル4に対して上澄み液のみを移送することによりフラッシュバルブ41を経て生じる熱の回収を、より効率的に行うことが可能となる。
【0076】
レシービングベッセル3Aの内部圧力の調整は、圧力計38にて測定される圧力値を連続的に監視し、適宜、レシービングベッセル3A内にガス装入配管31を介して不活性ガスや圧縮空気を装入することにより行うことができる。具体的には、レシービングベッセル3Aからの上澄み液をフラッシュベッセル4に移送する際には、圧力計38により測定される圧力値を監視しながら、ガス装入配管31に設けられたバルブ32aを調整し(なおこのとき、バルブ32bは閉状態とする)、不活性ガスや圧縮空気の装入を制御することによって、レシービングベッセル3Aの内部圧力を調整する。
【0077】
(スラリーの抜き出し)
フラッシュベッセル4への上澄み液の移送終了後、レシービングベッセル3Aから残余のスラリーの抜き出しを行う。具体的には、レシービングベッセル3Aに容器周囲に設けられている冷却ジャケット3jによる冷却によって、内部に貯留されている固形分を含むスラリーの温度を100℃以下まで低下させ、これにより、レシービングベッセル3Aの内部の圧力を低下させる。また適宜、レシービングベッセル3Aに接続されたガス排出配管34を介して内部に存在するガスを排出することにより、内部圧力を低下させる。レシービングベッセル3Aからのガス排出配管34を介したガスの排出は、バルブ35aの開閉を調整することにより制御することができる。なお、レシービングベッセル3Aからのスラリーの抜き出し終了後、レシービングベッセル3Bからスラリーを抜き出すに際しては、同様にして、バルブ35bの開閉を調整してガス排出配管34を介したガスの排出を制御しながら行う。
【0078】
そして、レシービングベッセル3Aの内部圧力が大気圧以下の圧力まで減圧されたのち、レシービングベッセル3Aの底部に設けられたスラリー排出口33からスラリーを排出させて抜き出す。レシービングベッセル3Aから排出させたスラリーは、スラリー排出配管15を介して反応設備1外に抜き出すことができる。また、スラリー排出配管15上に設けられたバルブ30aを調整することで、レシービングベッセル3Aからのスラリーの排出及び抜き出しを制御することができる。
【0079】
なお、レシービングベッセル3Aからのスラリーの抜き出し終了後、続いてレシービングベッセル3Bからのスラリーの抜き出し操作を行う。レシービングベッセル3Bからのスラリーの抜き出しに際しても、冷却ジャケット3jによる冷却によってスラリー温度を100℃以下まで低下させることで、レシービングベッセル3Aの内部の圧力を低下させる。また適宜、レシービングベッセル3Bに接続されたガス排出配管34を介し、バルブ35bの開閉を調整して内部に存在するガスの排出を制御することで、内部圧力を低下させる。そして、レシービングベッセル3Bの内部圧力が大気圧以下の圧力まで減圧されたのち、底部に設けられたスラリー排出口33からスラリーを排出させて抜き出す。このとき、スラリー排出配管15上に設けられたバルブ30bを調整することで、レシービングベッセル3Bからのスラリーの排出及び抜き出しを制御することができる。
【0080】
また、フラッシュベッセル4においても、レシービングベッセル3Aから導入したスラリー(上澄み液)が貯留された状態であるため、フラッシュ蒸気を有効に回収したのち、内部圧力を低下させて大気圧以下の圧力まで減圧させたのち、スラリー排出口43からスラリーを排出させて抜き出す。フラッシュベッセル4から排出させたスラリーは、スラリー排出配管15を介して反応設備1外に抜き出すことができる。また、スラリー排出配管15上に設けられたバルブ40を調整することで、フラッシュベッセル4からのスラリーの排出及び抜き出しを制御することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 反応設備
2 オートクレーブ
3,3A,3B レシービングベッセル
4 フラッシュベッセル
5 熱交換器
11,11a,11b 配管
12,13,14 バルブ
15 スラリー排出配管
21 撹拌装置
22 レベル計
30a,30b バルブ
31 ガス装入配管
32a,32b バルブ
33 スラリー排出口
34 ガス排出配管
35a,35b バルブ
36 配管
37a,37b バルブ
38 圧力計
39 レベル計
40 バルブ
41 フラッシュバルブ
42 蒸気排出口
43 スラリー排出口
44 レベル計
45 蒸気配管