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  • 特許-シリコンウェーハのエッチング方法 図1
  • 特許-シリコンウェーハのエッチング方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】シリコンウェーハのエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
H01L21/306 B
H01L21/306 R
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019078801
(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2020178018
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】大西 邦明
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-197360(JP,A)
【文献】特開2015-070080(JP,A)
【文献】特開2016-042503(JP,A)
【文献】特表2016-515300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハの表面及び/又は裏面に供給ノズルを通して酸エッチング液を供給しながら、前記シリコンウェーハを回転させることで、前記酸エッチング液の供給範囲を前記シリコンウェーハの表面及び/又は裏面の全面に拡大して酸エッチングを行うスピンエッチング工程を含むシリコンウェーハのエッチング方法であって、
前記スピンエッチング工程において、前記酸エッチング液に含まれるSi溶解量に応じて前記シリコンウェーハの回転数を変えて酸エッチングを行うことを特徴とするシリコンウェーハのエッチング方法。
【請求項2】
前記スピンエッチング工程を繰り返し行うことで、複数のシリコンウェーハの連続加工を行い、
前記連続加工中に、前記スピンエッチング工程において使用した前記酸エッチング液を回収し、前記酸エッチング液を保存するエッチング液タンクに戻して再び酸エッチング液として使用することを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハのエッチング方法。
【請求項3】
前記酸エッチング液として、弗酸、硝酸を含む混合液、又は、これに酢酸、燐酸、硫酸のうち少なくともいずれか一つを加えた混合液を用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシリコンウェーハのエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハのエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハの製造工程において、単結晶インゴットの状態から薄くスライスされたウェーハは、面取り加工と研削加工を経て平坦化を行うのが一般的である。この際、ウェーハ表裏面には上記加工に起因する大小様々なキズや加工歪みが導入され、これらが後工程で顕在化すると重大な品質上の問題になり得る。
【0003】
そこで、通常はエッチング処理を行って、これらのキズや加工歪を除去する。エッチング方法としては複数のウェーハの表裏面を同時に処理するバッチ方式や枚葉でウェーハの表面と裏面を順に処理するスピンエッチング方式が知られている(特許文献1参照)。また、目的に応じて酸エッチング液で処理する場合とアルカリエッチング液で処理する場合の2通りの手段があり、例えば酸エッチングの場合だと適宜濃度を調節した弗酸と硝酸等を含んだ混酸を用いるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-53178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スピンエッチング方式によるシリコンウェーハの酸エッチングを行う場合、通常、使用したエッチング液を回収し、再度エッチング液として用いる。このため、シリコンウェーハを酸エッチングすると、加工枚数に応じてエッチング液に含まれるSi溶解量は増加する。また、Si溶解量の増加はエッチング液に含まれるエッチング化学種の減少を意味するため、平均エッチング速度が減少する。このため連続加工時には平均エッチング速度の減少が避けられない。
【0006】
また、スピンエッチングにおけるウェーハエッチング速度は、加工条件とエッチング液の流体特性に応じてウェーハ面内分布をもつ。この分布は加工条件と流体特性のうちどちらか一方が変化するだけでも変動する。したがって、上記のようにSi溶解量の変化が伴うスピンエッチング加工を行う場合には、平均エッチング速度だけではなくウェーハ面内のエッチング速度分布の変化も考慮する必要がある。従来は、連続加工時には弗酸補給を行うのが一般的であるが、この方法では平均エッチング速度の低下には対応できるもののウェーハ面内のエッチング速度分布の変化には対応できない問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、酸エッチング液のSi溶解量が変化しても、ウェーハ面内のエッチング速度分布の変化を抑制することができ、エッチング後のウェーハ形状を良好にすることができるシリコンウェーハのエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するために、本発明は、シリコンウェーハの表面及び/又は裏面に供給ノズルを通して酸エッチング液を供給しながら、前記シリコンウェーハを回転させることで、前記酸エッチング液の供給範囲を前記シリコンウェーハの表面及び/又は裏面の全面に拡大して酸エッチングを行うスピンエッチング工程を含むシリコンウェーハのエッチング方法であって、
前記スピンエッチング工程において、前記酸エッチング液に含まれるSi溶解量に応じて前記シリコンウェーハの回転数を変えて酸エッチングを行うことを特徴とするシリコンウェーハのエッチング方法を提供する。
【0009】
本発明のシリコンウェーハのエッチング方法であれば、酸エッチング液に含まれるSi溶解量によってシリコンウェーハの回転数を変えることで、Si溶解量の増加によるウェーハ面内のエッチング速度分布の変化を抑制することが可能となる。また、Si溶解量が増加しても、エッチング後のウェーハ形状を良好にすることができる。
【0010】
このとき、前記スピンエッチング工程を繰り返し行うことで、複数のシリコンウェーハの連続加工を行い、
前記連続加工中に、前記スピンエッチング工程において使用した前記酸エッチング液を回収し、前記酸エッチング液を保存するエッチング液タンクに戻して再び酸エッチング液として使用することが好ましい。
【0011】
このような方法であれば、Si溶解量の変化が伴う連続加工時でもシリコンウェーハの形状の変化を最小限に抑えることができる。
【0012】
また、前記酸エッチング液として、弗酸、硝酸を含む混合液、又は、これに酢酸、燐酸、硫酸のうち少なくともいずれか一つを加えた混合液を用いることが好ましい。
【0013】
このような混合液であれば、シリコンウェーハのスピンエッチングに好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシリコンウェーハのエッチング方法であれば、酸エッチング液に含まれるSi溶解量によってシリコンウェーハの回転数を変えることで、ウェーハ面内のエッチング速度分布の変化を抑制することが可能となる。また、Si溶解量が増加しても、エッチング後のウェーハ形状を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】シリコンウェーハの回転数を変更した際の、Si溶解量による平坦度の変化を示す図である。
図2】スピンエッチング方式で用いられる一般的なエッチング装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記のように、スピンエッチング方式による酸エッチングにおいて、酸エッチング液のSi溶解量が変化した場合に、ウェーハ面内のエッチング速度分布の変化が起こる問題があった。
【0017】
酸エッチング液中のSi溶解量が増加すると、酸エッチング液に含まれるエッチング反応化学種の減少だけではなく、酸エッチング液の動粘度も減少する。そのため、酸エッチング液の流体特性が無視できないスピン方式の酸エッチングでは、Si溶解量の増加により、平均エッチング速度の低下だけではなく、面内のエッチング速度の分布状態も変化する。
【0018】
通常、スピンエッチング加工中のシリコンウェーハは角速度一定で回転しているため、拡散律速の酸エッチング液を用いる場合のエッチング速度は、周速が速いウェーハ外周部ほど増加する。したがって、通常はウェーハ外周部ほどエッチング取代が増加する。
【0019】
ここで、Si溶解量が多くなると酸エッチング液の動粘度が減少するため、ウェーハの周速が速い領域での酸エッチング液の平均流速は、Si溶解量が少ないときに比べて減少する。したがって、ウェーハ外周部のエッチング取代はSi溶解量が少ないときに比べて減少する。
【0020】
また、スピンエッチングでは、通常はウェーハの回転中心と酸エッチング液をウェーハに供給するノズルの位置が一致するが、その付近ではエッチング速度はノズル直下に形成される衝突噴流の影響を受ける。衝突噴流の中心にはよどみ点があり、よどみ点では酸エッチング液のウェーハ面に平行な向きの流速は理論上0μm/sである。
【0021】
通常は、よどみ点の領域は無視できる大きさであり、すぐにウェーハの周速によって酸エッチング液の流速が増加するため、エッチング取代の低下としては現れない。しかしながらSi溶解量が増えて酸エッチング液の動粘度が減少してくると、周速によっても酸エッチング液の平均流速が増加しにくくなるため、Si溶解量が少ないときに比べてエッチング速度が遅くなり、したがってその領域のエッチング取代が減少する。
【0022】
つまり、同一の加工条件と同一組成の酸エッチング液を用いても、上記のような原因により、シリコンウェーハ外周部及び中心付近のエッチング速度が変化し、ウェーハ面内のエッチング速度分布が変化してしまうため、酸エッチング液中のSi溶解量が異なるとスピンエッチング加工後のウェーハ形状は異なることとなってしまう。
【0023】
本発明では、このようなウェーハ形状の変化に対応する手段として、Si溶解量に応じたウェーハ回転数の制御を行う。具体的には、Si溶解量が少なく比較的動粘度の大きい酸エッチング液では、ウェーハ回転数を低回転数としてエッチングし、Si溶解量が多く比較的動粘度の小さい酸エッチング液ではウェーハ回転数を高回転としてエッチングすることで、Si溶解量によるウェーハ形状の変化を最小限に抑える。
【0024】
即ち、本発明は、シリコンウェーハの表面及び/又は裏面に供給ノズルを通して酸エッチング液を供給しながら、前記シリコンウェーハを回転させることで、前記酸エッチング液の供給範囲を前記シリコンウェーハの表面及び/又は裏面の全面に拡大して酸エッチングを行うスピンエッチング工程を含むシリコンウェーハのエッチング方法であって、
前記スピンエッチング工程において、前記酸エッチング液に含まれるSi溶解量に応じて前記シリコンウェーハの回転数を変えて酸エッチングを行うことを特徴とするシリコンウェーハのエッチング方法である。
【0025】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
図2はスピンエッチング方式で用いられる一般的なエッチング装置の模式図である。具体的には、例えば、三益半導体工業株式会社製スピンエッチャーMSE-7000EL-MHを用いることができる。
【0027】
一般的に、エッチング装置100は、エッチング加工部11とエッチング液供給部12で構成される。
【0028】
エッチング加工部11は、真空吸着ステージ2と供給ノズル3を具備することができる。また、エッチング液供給部12は、エッチング液タンク6とエッチング液タンク6からエッチング加工部11へ酸エッチング液8を送液する送液ポンプ13を具備することができる。
【0029】
シリコンウェーハ1は表面または裏面を上にして真空吸着ステージ2の中心に水平に設置され、真空源10に連結した真空吸着ステージ2上に真空吸着で保持することができる。
【0030】
真空吸着ステージ2は、ステージ下方にある図示しないθ軸モータおよびθスピンドル等による回転ユニットによって、真空吸着ステージ2中心を回転軸として図のθ方向に回転することができる。
【0031】
次に、図2に示したエッチング装置100を用いた場合を例に、本発明のシリコンウェーハのエッチング方法を説明する。
【0032】
本発明のシリコンウェーハのエッチング方法では、シリコンウェーハの表面及び/又は裏面へ供給ノズルを通してエッチング液タンク6に保存された酸エッチング液8を供給しながら、シリコンウェーハを回転させて酸エッチング液の供給範囲をシリコンウェーハ1の全面に拡大して酸エッチングを行うスピンエッチング工程を含む。
【0033】
スピンエッチング工程では、真空吸着ステージ上方にある供給ノズル3にエッチング液供給部12のエッチング液タンク6から送液ポンプ13を経由して酸エッチング液8を供給し、真空吸着ステージ2上に保持され回転しているシリコンウェーハ1上に酸エッチング液8を供給することができる。
【0034】
酸エッチング液8を供給している間、供給ノズル3は、図2中の矢印4(供給ノズルの運動方向)で示すように、シリコンウェーハ1中心を通ってシリコンウェーハ1の径方向に直線往復運動するのが一般的である。
【0035】
シリコンウェーハ1上に供給された酸エッチング液8は、シリコンウェーハ1の回転に倣ってシリコンウェーハ1上を移動し、シリコンウェーハ1外周部から液滴5となって振り飛ばされて落下し、エッチング加工部から排出される。
【0036】
このとき、本発明では、酸エッチング液に含まれるSi溶解量に応じてシリコンウェーハの回転数を変えて酸エッチングを行う。
【0037】
上述のように、同一の加工条件と同一組成の酸エッチング液を用いても、シリコンウェーハ外周部及び中心付近のエッチング速度が変化し、ウェーハ面内のエッチング速度分布が変化してしまうため、酸エッチング液中のSi溶解量が異なるとスピンエッチング加工後のウェーハ形状は異なることとなってしまう。本発明であれば、酸エッチング液に含まれるSi溶解量によってシリコンウェーハの回転数を変えることで、Si溶解量の増加によるウェーハ面内のエッチング速度分布の変化を抑制することが可能となる。また、Si溶解量が増加しても、エッチング後のウェーハ形状を良好にすることができる。
【0038】
即ち、Si溶解量が小さく、動粘度が大きい酸エッチング液を用いる場合は、ウェーハ上の酸エッチング液の流速を適度にするためにウェーハ回転数を低回転数とし、Si溶解量が大きく、動粘度が小さい酸エッチング液を用いる場合は、ウェーハ上の酸エッチング液の流速の低下を抑制するためにウェーハ回転数を高回転数とすればよい。
【0039】
ウェーハ回転数の変更は、例えば、Si溶解量6g/Lで行い、Si溶解量6g/L未満では1300rpm未満の回転数、Si溶解量6g/L以上では1300rpm以上の回転数等とすることができる。しかしながら、加工条件や酸エッチング液の組成によって適切なSi溶解量はそれぞれ異なるため、ウェーハ回転数を変更するSi溶解量は6g/Lに限定されるものではない。また、変更前後のウェーハ回転数も、加工条件や酸エッチング液の組成により適宜決定することができる。
【0040】
所定のエッチング取代を満たした後、エッチング加工が終了したらエッチング液タンク6からの酸エッチング液8の供給を停止し、供給ノズル3に給水源7から水9を供給し、真空吸着ステージ2上に保持され回転しているシリコンウェーハ1上に水9を供給することができる。
【0041】
シリコンウェーハ1上に供給された水9は、シリコンウェーハ1の回転に倣ってシリコンウェーハ1上を移動し、シリコンウェーハ1上に残留する酸エッチング液8を水9に置換しながらシリコンウェーハ1の外周部から液滴5となって排出される。
【0042】
シリコンウェーハ1上の酸エッチング液8の水への置換が終了したら、給水源7からの水9の供給を停止し、シリコンウェーハ1を高速回転させることでシリコンウェーハ1上の水をすべて飛散させ、乾燥したシリコンウェーハ1を得ることができる。
【0043】
また、本発明では、上記スピンエッチング工程を繰り返し行うことで、複数のシリコンウェーハの連続加工を行い、連続加工中に、上記スピンエッチング工程において使用した酸エッチング液を回収し、エッチング液タンクに戻して再び酸エッチング液として使用することが好ましい。このような方法であれば、Si溶解量の変化が伴う連続加工時でもシリコンウェーハの形状の変化を最小限に抑えることができる。
【0044】
シリコンウェーハ1の外周部から排出された酸エッチング液の液滴5は、エッチング液回収機構14によりエッチング液タンク6に回収することができる。そして、回収後の酸エッチング液を再び酸エッチング液8とすることができる。
【0045】
本発明において、Si溶解量は、例えば、シリコンウェーハ1枚あたりのエッチング取代から、連続加工時のSi溶解量の累計を算出することができ、適切なSi溶解量に達した時点でウェーハ回転数を変更すれば、Si溶解量の変化が伴う連続加工時のスピンエッチング加工において、加工後のウェーハ形状の変化を最小限に抑えた連続加工が可能になる。また、Si溶解量の算出方法は、特に限定されるものではなく、エッチング液タンク等に設けられたSi溶解量を測定する機構15等により求め、求められたSi溶解量に応じてシリコンウェーハの回転数を変えることもできる。また、Si溶解量に応じて、その値に比例してシリコンウェーハの回転数を上げるようにしてもよい。
【0046】
また、本発明で使用する酸エッチング液は弗酸と硝酸を含む混合液とすることができるが、これに酢酸や硫酸や燐酸を適宜組み合わせて混合しても良い。このような混合液は、シリコンウェーハのスピンエッチングに好適に用いることができる。混合比は、質量%で例えば弗酸が1~80%、硝酸が10~80%混合された酸エッチング液でよいが、これに質量比で酢酸が例えば10~30%、硫酸が例えば10~25%、燐酸が例えば10~50%を任意の割合で混合してもよい。
【0047】
尚、上記ではシリコンウェーハの片面をスピンエッチングする場合を例にして説明したが、本発明はこれには限定されず、上面のみならず下面からも酸エッチング液を供給して表裏面を同時にエッチングすることもできる。
【実施例
【0048】
以下、実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【0049】
[実験例]
図2に示したエッチング装置を用いて、シリコンウェーハのエッチング加工を行った。このとき、異なるSi溶解量の酸エッチング液を用いて、シリコンウェーハを低回転数、具体的には回転数300rpmと回転数800rpm、および、高回転数、具体的には回転数1800rpmと回転数2500rpmで加工した。図1に、シリコンウェーハの回転数を変更した際の、Si溶解量による平坦度の変化を示す。ここでいう平坦度は、シリコンウェーハ面内の取代P-V(Peak-Valley)を示す。このときの酸エッチング液は弗酸と硝酸の混合液を用い(質量%で、弗酸4%、硝酸47%であり、100%に満たない残部は水である。)、エッチング液量2.5L/m、酸エッチング液温24℃で加工した。
【0050】
図1に示したように、ウェーハを低回転数、例えば300rpmや800rpmに固定して加工すると、ウェーハ平坦度は、Si溶解量が増えた場合に、この例では1.0μm近辺まで悪化し、ウェーハを高回転数、例えば1800rpmや2500rpmに固定して加工すると、ウェーハ平坦度は、低回転数のときとは逆に、Si溶解量が少ない場合に、この例では1.0μm付近にまで悪化する。
【0051】
そこで、図1に示した例によれば、酸エッチング液のSi溶解量6g/L未満では、例えば300rpmや800rpmのような低回転数、Si溶解量6g/L以上では、例えば回転数1800rpmや2500rpmのような高回転数に変更してエッチングを行えば、Si溶解量によらずウェーハ平坦度を0.7μm以下にできることが分かる。
【0052】
上記のことから、本発明の方法であれば、酸エッチング液に含まれるSi溶解量によってシリコンウェーハの回転数を変えることで、Si溶解量の増加によるウェーハ面内のエッチング速度分布の変化を抑制することが可能となり、酸エッチング液のSi溶解量が変化してもウェーハ平坦度を良好にすることができることが示された。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0054】
100…エッチング装置、
1…シリコンウェーハ、 2…真空吸着ステージ、
3…供給ノズル、 4…供給ノズルの運動方向、 5…液滴、
6…エッチング液タンク、 7…給水源、 8…酸エッチング液、
9…水、 10…真空源、 11…エッチング加工部、
12…エッチング液供給部、 13…送液ポンプ、
14…エッチング液回収機構、 15…Si溶解量を測定する機構。
図1
図2