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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】マーカ検出方法及び車両用システム
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/08 20060101AFI20220308BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20220308BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20220308BHJP
【FI】
G01V3/08 A
G01B7/00 101H
G05D1/02 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019525356
(86)(22)【出願日】2018-06-07
(86)【国際出願番号】 JP2018021792
(87)【国際公開番号】W WO2018230423
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】P 2017116969
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-044427(JP,A)
【文献】特開2017-083189(JP,A)
【文献】特開2007-132689(JP,A)
【文献】特開平09-292238(JP,A)
【文献】特開平11-095837(JP,A)
【文献】特開2000-227998(JP,A)
【文献】米国特許第5191528(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/08
G01B 7/00
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に複数の磁気センサが配列された車両側の磁気検出ユニットを用いて道路に敷設された磁気マーカを検出するマーカ検出方法であって、
車両の走行中に前記磁気検出ユニットが前記磁気マーカの真上に位置するに至ったか否かを判断することにより前記磁気マーカを検出すると共に、検出された磁気マーカに対する車両の横ずれ量を特定するマーカ検出処理と、
前記磁気マーカを検出したか否かに関わらず、前記磁気検出ユニットに作用する車幅方向の磁気分布の中心位置を特定すると共に、車両の走行に応じた前記中心位置の位置的な変化の度合いを表す指標を処理することで外乱となる磁気発生源の存在可能性を判定する判定処理と、を実施するマーカ検出方法。
【請求項7】
道路に敷設された磁気マーカを検出する車両用システムであって、
車幅方向に複数の磁気センサが配列された磁気検出ユニットと、
外乱となる磁気発生源の有無を判定する判定ユニットと、を有し、
請求項1~6のいずれか1項のマーカ検出方法の実行により前記磁気発生源の存在可能性を判定する車両用システム。
【請求項8】
請求項7において、車両の運転を支援する制御を実行する制御ユニットを備え、該制御ユニットは、前記磁気発生源の存在可能性に応じて前記運転を支援する制御を実行するか否かを含めて制御の内容を切り替える車両用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に敷設された磁気マーカを検出するためのマーカ検出方法及び車両用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、道路に敷設された磁気マーカを車両制御に利用するための車両用のマーカ検出システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようなマーカ検出システムを用いて、例えば道路に沿って敷設された磁気マーカを検出すれば、自動操舵制御や車線逸脱警報や自動運転など各種の運転支援を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-202478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のマーカ検出システムでは、次のような問題がある。すなわち、磁気センサ等に作用する様々な外乱磁気に起因し、磁気マーカの検出確実性が損なわれるおそれがあるという問題がある。例えば鉄製のマンホールの蓋や他の車両なども外乱磁気の発生源となり得る。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、誤検出を抑制するためのマーカ検出方法及び車両用システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、車幅方向に複数の磁気センサが配列された車両側の磁気検出ユニットを用いて道路に敷設された磁気マーカを検出するマーカ検出方法であって、
車両の走行中に前記磁気検出ユニットが前記磁気マーカの真上に位置するに至ったか否かを判断することにより前記磁気マーカを検出すると共に、検出された磁気マーカに対する車両の横ずれ量を特定するマーカ検出処理と、
前記磁気マーカを検出したか否かに関わらず、前記磁気検出ユニットに作用する車幅方向の磁気分布の中心位置を特定すると共に、車両の走行に応じた前記中心位置の位置的な変化の度合いを表す指標を処理することで外乱となる磁気発生源の存在可能性を判定する判定処理と、を実施するマーカ検出方法にある。
【0007】
本発明の一態様は、道路に敷設された磁気マーカを検出する車両用システムであって、
車幅方向に複数の磁気センサが配列された磁気検出ユニットと、
外乱となる磁気発生源の有無を判定する判定ユニットと、を有し、
上記のマーカ検出方法の実行により前記磁気発生源の存在可能性を判定する車両用システムにある。
【発明の効果】
【0008】
例えば前記磁気マーカが敷設された車線に追従して車両が走行する場合には、前記磁気検出ユニットに作用する車幅方向の磁気分布の中心位置が一定に近くなると期待できる。そして、この場合には、この車幅方向の磁気分布の中心位置の位置的な変化がゼロに近くなると予測できる。本発明に係るマーカ検出方法は、このような知見に基づいて前記磁気マーカ以外の外乱となる磁気発生源の存在可能性を判定する方法である。
【0009】
本発明に係るマーカ検出方法では、前記磁気検出ユニットに作用する車幅方向の磁気分布の中心位置の位置的な変化の度合いを表す指標を処理することで前記磁気発生源の存在可能性を判定する。そして、本発明に係る車両用システムは、このマーカ検出方法を実行することで前記磁気発生源の存在可能性を判定する。
【0010】
本発明によれば、外乱となる前記磁気発生源の存在可能性を判定することで、前記磁気マーカの誤検出を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両用システムを示す説明図。
図2】車両用システムの構成を示すブロック図。
図3】磁気マーカを示す図。
図4】磁気マーカを通過する際の進行方向の磁気計測値の時間的な変化を例示する説明図。
図5】磁気マーカを通過する際の各磁気センサによる車幅方向の磁気計測値の分布を例示する説明図。
図6】マーカ検出処理の流れを示すフロー図。
図7】車間制御の流れを示すフロー図。
図8】追従対象の先行車両の選択方法の説明図。
図9】操舵制御の流れを示すフロー図。
図10】外乱となる磁気発生源の判定処理の流れを示すフロー図。
図11】外乱となる磁気発生源が無い区間を示す図。
図12】外乱となる磁気発生源が有る区間を示す図。
図13】磁気マーカを通過する際の各磁気センサによる車幅方向の磁気計測値の他の分布を例示する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における好適な態様について説明する。
本発明に係るマーカ検出方法において、前記磁気マーカが敷設された道路を車両が走行しているとき、前記磁気マーカを通過する毎に前記中心位置を繰り返し検出して前記中心位置の位置的な変化の度合いを表す指標を生成することも良い。
この場合には、前記磁気マーカが敷設された道路を車両が走行しているとき、外乱となる前記磁気発生源の存在可能性を効率良く判定できる。
【0013】
本発明において、前記指標は、前記中心位置の位置的な変化量あるいは変化率であると良い。
前記磁気マーカの近傍に外乱となる前記磁気発生源が有る場合には、前記中心位置の位置的な変化量あるいは変化率の値が大きくなる可能性が高い。例えば変化量あるいは変化率に関する閾値処理を実行することで、前記磁気発生源の有無を判定することも可能である。
【0014】
本発明に係るマーカ検出方法において、車両の操舵輪の舵角の変化度合い、あるいは車両に生じたヨーレイトにより前記指標を補正すると良い。
例えば車両側で急激な操舵が行われた場合には、前記磁気発生源が無くても、前記中心位置の位置的な変化の度合いが拡大する可能性が高い。そこで、前記舵角の変化度合い、あるいは前記ヨーレイトにより前記指標を補正すれば、例えば急激な操舵が行われた場合であっても前記磁気発生源に関する誤判定を回避できる。
【0015】
本発明に係るマーカ検出方法において、車両の操舵輪の舵角の変化度合い、あるいは車両に生じたヨーレイトの値が所定の閾値未満であるとき、前記磁気発生源の存在可能性を判定することも良い。
前記舵角の変化度合いあるいは前記ヨーレイトの値が所定の閾値以上であるような場合には、車両が進路を変更している最中である可能性が高い。このような走行状況では、前記磁気発生源を精度高く判定できないおそれがある。前記舵角の変化度合いあるいは前記ヨーレイトの値が所定の閾値未満のときに前記磁気発生源の存在可能性を判定すれば、判定精度を高く維持できる。
【0016】
本発明に係る車両用システムは、車両の運転を支援する制御を実行する制御ユニットを備え、該制御ユニットは、前記磁気発生源の存在可能性に応じて前記運転を支援する制御を実行するか否かを含めて制御の内容を切り替えると良い。
前記磁気発生源の存在可能性に応じて制御の内容を切り替えれば、前記磁気マーカ以外の前記磁気発生源に起因して制御が不安定に陥るおそれを未然に回避できる。
【実施例
【0017】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、道路に敷設された磁気マーカ10を検出するためのマーカ検出方法及び車両用システム1に関する例である。この内容について、図1図13を用いて説明する。
【0018】
本例のマーカ検出方法は、図1及び図2のごとく、車幅方向に複数の磁気センサCn(nは1~15の整数)が配列されたセンサユニット11を用いて磁気マーカ10を検出する方法である。このマーカ検出方法では、磁気マーカ10を検出するマーカ検出処理に加えて、磁気マーカ10以外の外乱となる磁気発生源の存在可能性を判定するための判定処理が行われる。
【0019】
外乱となる磁気発生源の存在可能性の判定処理では、センサユニット11を用いて車幅方向の磁気分布が取得され、この車幅方向の磁気分布の中心位置が検出される。そして、磁気マーカ10を車両5が通過する際の車幅方向の磁気分布の中心位置の位置的な変化の度合いを表す指標が処理されて外乱となる磁気発生源の存在可能性が判定される。
【0020】
車両用システム1は、上記のマーカ検出方法を実行して磁気マーカ10を検出し、磁気マーカ10が敷設された車線100に追従して車両5を自動走行させる運転支援システムの例である。
この車両用システム1は、磁気センサCnを備えるセンサユニット11のほか、検出ユニット12を含めて構成されている。検出ユニット12は、センサユニット11から磁気分布データを取り込み各種の演算処理を実行するユニットである。検出ユニット12は、上記のマーカ検出処理のほか、磁気マーカ10以外の外乱となる磁気発生源の有無を判定する上記の判定処理等を実行する。
【0021】
車両用システム1は、上記のセンサユニット11及び検出ユニット12に加えて、先行車両との距離等を計測する前方検知ユニット42、外部制御が可能な操舵ユニット45やエンジンスロットルユニット46やブレーキコントロールユニット47、各ユニットを制御する制御ユニット41等を備えている。
【0022】
操舵ユニット45は、車両5の操舵輪の操舵角(舵角)を制御するユニットである。操舵ユニット45は、操舵角センサを備えており、操舵角を計測して外部出力可能である。エンジンスロットルユニット46は、エンジンに燃料を送り込むスロットル開度の制御によりエンジン出力を調節するユニットである。ブレーキコントロールユニット47は、ブレーキシステムの作動流体の液圧等を制御することで制動力を調節するユニットである。
【0023】
以下、磁気マーカ10を概説した後、前方検知ユニット42、センサユニット11、検出ユニット12、及び制御ユニット41について順番に説明する。
(磁気マーカ)
磁気マーカ10は、車両5が走行する道路の路面100S(図1参照。)に敷設される道路マーカである。磁気マーカ10は、左右のレーンマークで区分された車線100の中央に沿って例えば3m間隔で配列されている。
【0024】
磁気マーカ10は、図3のごとく、直径20mm、高さ28mmの柱状をなし、路面100Sに設けた孔に収容された状態で敷設される。磁気マーカ10をなす磁石は、磁性材料である酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料中に分散させたフェライトプラスチックマグネットであり、最大エネルギー積(BHmax)=6.4kJ/mという特性を備えている。
【0025】
本例の磁気マーカ10の仕様の一部を表1に示す。
【表1】
【0026】
この磁気マーカ10は、センサユニット11の取付け高さとして想定する範囲100~250mmの上限の高さ250mmにおいて、8μT(マイクロテスラ)の磁束密度の磁気を作用できる。なお、磁気マーカ10をなす磁石の表面磁束密度Gsは45mT(ミリテスラ)となっている。
【0027】
(前方検知ユニット)
図2の前方検知ユニット42は、レーザ光を利用して対象物までの距離を計測するユニットである。図示は省略するがこの前方検知ユニット42は、レーザ光の発光部と、反射光の受光部と、発光から反射光を受光するまでの遅延時間を計測する計時部と、を含めて構成されている。発光部は、レーザ光の出射方向を変更するためのポリゴンミラー(回転多面鏡)を備えている。
【0028】
ポリゴンミラーによる出射方向の変更範囲は、水平方向±15度の範囲となっている。前方検知ユニット42は、このようにレーザ光の方向を変更することで1次元的なラインスキャンが可能である。前方検知ユニット42は、水平方向±15度の1次元範囲の各位置について上記の遅延時間を計測し、この範囲に存在する物体までの距離を特定する。
【0029】
前方検知ユニット42は、出射方向の中心軸が車両5の前後方向に一致するように取り付けられる。車載状態の前方検知ユニット42は、車両5の正面側の水平方向±15度の1次元範囲に属する各位置に対して距離データがひも付けられた距離情報を生成して出力する。
【0030】
(センサユニット)
センサユニット11(図1及び図2)は、車両5の底面に取り付けられる磁気検出ユニットである。センサユニット11は、例えば、フロントバンパーの内側に取り付けられる。本例の車両5の場合、路面100Sを基準とした取付け高さが200mmとなっている。
【0031】
センサユニット11は、車幅方向に沿って10cm間隔で配列された15個の磁気センサCnと、出力データを生成するデータ生成回路110と、を備えている(図2参照。)。センサユニット11は、15個の磁気センサCnのうちの中央の磁気センサC8が車両5の車幅方向の中心に位置するように車載されている。
【0032】
データ生成回路110は、磁気センサCnの磁気計測値の車幅方向の磁気分布データを生成して外部出力する回路である。データ生成回路110は、各磁気センサCnを同期して動作させた後、各磁気センサCnの磁気計測値を順番に読み出して車幅方向の磁気分布データを生成するように構成されている。
【0033】
磁気センサCnは、アモルファスワイヤなどの感磁体のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するという公知のMI効果(Magnet Impedance Effect)を利用して磁気を計測するMIセンサである。磁気センサCnは、直交する2方向の磁気成分の大きさを検出可能に構成されている。センサユニット11では、車両5の進行方向及び車幅方向の磁気成分を感知するように磁気センサCnが組み込まれている。したがって、データ生成回路110が生成する車幅方向の磁気分布データとしては、以下の2種類の車幅方向の磁気分布データがある。
【0034】
(第1の磁気分布データ)
センサユニット11を構成する各磁気センサCnの進行方向の磁気計測値の分布である磁気分布データ。
(第2の磁気分布データ)
センサユニット11を構成する各磁気センサCnの車幅方向の磁気計測値の分布である磁気分布データ。
【0035】
磁気センサCnは、磁束密度の測定レンジが±0.6mTであって、測定レンジ内の磁束分解能が0.02μTという高い感度を実現している。上記のように磁気マーカ10は、センサユニット11の取付け高さとして想定される範囲の上限である高さ250mmにおいて8μT程度の磁気を作用する。磁束分解能が0.02μTの磁気センサCnによれば、磁気マーカ10の磁気を確実性高く感知できる。
【0036】
磁気センサCnの仕様の一部を表2に示す。
【表2】
【0037】
(検出ユニット)
検出ユニット12は、センサユニット11が出力する車幅方向の磁気分布データを取得して各種の演算処理を実行する演算ユニットである。検出ユニット12は、演算処理を実行するCPU(central processing unit)のほか、ROM(read only memory)やRAM(random access memory)などのメモリ素子等を含んで構成されている。
【0038】
検出ユニット12は、センサユニット11から取得する上記の第1及び第2の磁気分布データについて各種の演算処理を実施する。演算処理としては、磁気マーカ10を検出するためのマーカ検出処理のほか、外乱となる磁気発生源の存在可能性を判定する判定処理等がある。
【0039】
マーカ検出処理では、進行方向の磁気計測値の分布である前記第1の磁気分布データを利用して磁気マーカ10が検出されると共に、車幅方向の磁気計測値の分布である前記第2の磁気分布データを利用して磁気マーカ10に対する車両5の横ずれ量が検出される。
判定処理では、上記の第2の磁気分布データを利用して外乱となる磁気発生源の有無が判定される。
検出ユニット12は、これらの処理の結果を反映したマーカ検出情報を制御ユニット41に向けて出力する。
【0040】
(制御ユニット)
制御ユニット41は、磁気マーカ10が敷設された車線100に沿って車両5を走行させるための車線追従制御を実行するユニットである。制御ユニット41は、前方検知ユニット42の距離情報、操舵ユニット45が出力する操舵角、検出ユニット12のマーカ検出情報などの取得情報に基づいて車線追従制御を実行する。
【0041】
制御ユニット41は、上記の取得情報に基づいて操舵ユニット45やエンジンスロットルユニット46やブレーキコントロールユニット47などを制御し、先行車両との車間距離を保持しつつ車線100に追従して車両5を自動走行させる。なお、制御ユニット41は、外乱となる磁気発生源が有る旨の判定情報がマーカ検出情報に含まれる場合、車線追従制御の内容を切り替え、これにより誤制御を回避する。
【0042】
次に、磁気マーカ10を検出する(1)マーカ検出処理、及び車線100に追従して車両5を自動走行させるための(2)車線追従制御について説明する。さらに、磁気マーカ10以外の(3)外乱となる磁気発生源の有無の判定処理、及び磁気発生源が有ると判定されたときの(4)外乱作用下の車線追従制御の内容について説明する。
【0043】
(1)マーカ検出処理
マーカ検出処理は、センサユニット11から前記第1及び第2の磁気分布データを取得して検出ユニット12が実行する処理である。
ここでマーカ検出処理による磁気マーカ10の検出方法について簡単に説明しておく。上記のごとく、磁気センサCnは、車両5の進行方向及び車幅方向の磁気成分を計測するように構成されている。例えばいずれかの磁気センサCnが、進行方向に移動して磁気マーカ10の真上を通過するとき、進行方向の磁気計測値は、図4のごとく磁気マーカ10の前後で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。したがって、車両5の走行中では、いずれかの磁気センサCnが検出する進行方向の磁気について、その正負が反転するゼロクロスX1が生じたとき、センサユニット11が磁気マーカ10の真上に位置すると判断できる。
【0044】
また例えば、磁気センサCnと同じ仕様の磁気センサについて、磁気マーカ10の真上を通過する車幅方向の仮想線に沿う移動を想定してみる。この磁気センサによる車幅方向の磁気計測値は、磁気マーカ10を挟んだ両側で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。15個の磁気センサCnを車幅方向に配列したセンサユニット11の場合には、図5のごとく、磁気マーカ10を介してどちらの側にあるかによって磁気センサCnが検出する車幅方向の磁気の正負が異なってくる。
【0045】
つまり、図5の磁気分布データ中のゼロクロスX2の位置が磁気マーカ10の真上の位置となる。例えば同図の場合、磁気センサC9とC10との中間辺りのC9.5のゼロクロスX2の位置が磁気マーカ10の真上の位置(以下、磁気マーカ10の位置という。)となる。ここで、上記のごとくセンサユニット11では、隣り合う磁気センサCnの間隔が10cmであると共に、磁気センサC8が車両5の車幅方向の中心となっている。したがって、図5の場合であれば、車両5の車幅方向の中心を基準として右側に(9.5-8)×10cm=15cmずれた位置が磁気マーカ10の位置となる。
【0046】
なお、例えば車幅方向において車両5が左側に寄って走行すると、センサユニット11に相対して磁気マーカ10が右側にずれて、例えば図5のごとくゼロクロスX2の位置が磁気センサC8よりも右側の正値となる。車両5が右側に寄ったときの横ずれ量を正側とし左側に寄ったときの横ずれ量を負側とすると、例えば図5の場合には、磁気マーカ10の位置である上記の(9.5-8)×10cm=15cmの正負を反転した(-15)cmが車両5の横ずれ量となる。
【0047】
次に、図6を参照してマーカ検出処理の流れを説明する。
検出ユニット12は、上記第1の磁気分布データを構成する磁気センサCnの進行方向の磁気計測値を取得する(S101)。そして、少なくともいずれかの磁気センサCnの進行方向の磁気計測値の経時変化を対象として、図4のX1に相当するゼロクロスの検出を試みる(S102)。検出ユニット12は、このゼロクロスを検出するまで(S102:NO)、磁気センサCnの進行方向の磁気計測値を繰り返し取得する(S101)。
【0048】
検出ユニット12は、進行方向の磁気計測値の経時変化につき図4のX1に相当するゼロクロスを検出できたとき(S102:YES)、磁気マーカ10の真上にセンサユニット11が位置していると判断する。なお、磁気マーカ10の検出判断については、図4のX1に相当するゼロクロスの検出に加えて、進行方向の磁気計測値の経時変化の割合、すなわち磁気計測値の微分値(差分値)の大きさが所定の閾値以上であるという条件が設定されている。
【0049】
検出ユニット12は、図4のX1に相当するゼロクロスの検出に応じて磁気マーカ10を検出できたとき、磁気センサCnが同じタイミングで計測した車幅方向の磁気計測値の分布を表す上記の第2の磁気分布データを取得する(S103)。
【0050】
検出ユニット12は、磁気センサCnの車幅方向の磁気計測値の分布である上記の第2の磁気分布データについて、図5のX2に相当するゼロクロスの車幅方向の位置を特定する(S104)。そして、このゼロクロスの車幅方向の位置に基づいて、磁気マーカ10に対する車両5の車幅方向の横ずれ量を特定する(S105)。具体的には、検出ユニット12は、図5のX2に相当するゼロクロスの車幅方向の位置を示す値の正負を反転し、車幅方向の横ずれ量とする。
【0051】
(2)車線追従制御
車線追従制御では、通常、図7の車間制御と図9の操舵制御とが並行して実行される。
車間制御を実行する制御ユニット41は、図7のごとく、操舵ユニット45の操舵角や車速等の車両情報を取得し、予測される車両5の進路R(図8)を推定する演算を実行する(S201)。
【0052】
制御ユニット41は、前方検知ユニット42の距離情報を取得し、進路R上に物体が存在するか否かを判断する(S202)。図8のごとく進路Rに物体が存在していれば(S202:YES)、この物体を追従対象の先行車両として選択する。そして、この先行車両にひも付けされた距離データを上記の距離情報から読み取り、車間距離として特定する(S203)。なお、先行車両の選択に際しては、その物体の距離の経時変化から静止物であるか移動物であるかの判定を行い、移動物であることを前提として先行車両の選択を行うと良い。
【0053】
制御ユニット41は、先行車両との車間距離を予め設定された目標車間距離と比較する(S204)。そして、制御ユニット41は、目標車間距離に対する実際の車間距離の偏差をゼロに近づけるようにエンジンスロットルユニット46やブレーキコントロールユニット47等を制御し、エンジン出力や制動力を調節する(S205)。
【0054】
一方、自車線に先行する車両が存在せず先行車両がない場合には(S202:NO)、予めセットされた目標車速が設定される(S213)。制御ユニット41は、この目標車速を実現できるようにエンジンスロットルユニット46等を制御し、エンジン出力等を調節する(S205)。
【0055】
次に、操舵制御を実行する制御ユニット41は、図9のごとく、検出ユニット12から取得したマーカ検出情報を参照して磁気マーカ10が検出されたか否かを判断する(S301)。磁気マーカ10が検出された場合には(S301:YES)、制御ユニット41は、マーカ検出情報に含まれる横ずれ量を取得する(S302)。
【0056】
制御ユニット41は、操舵ユニット45が出力する操舵角、及びマーカ検出情報に含まれる横ずれ量に基づき、横ずれ量をゼロに近づけるための目標操舵角を演算する(S303)。そして、制御ユニット41は、操舵輪の操舵角を目標操舵角に一致させるように操舵ユニット45を制御し(S304)、これにより磁気マーカ10が敷設された車線に追従する車両5の自動走行を実現する。
【0057】
(3)判定処理
図10の判定処理は、磁気マーカ10以外の外乱となる磁気発生源の存在可能性を判定するために検出ユニット12(判定ユニットの一例。)が実行する処理である。この判定処理では、センサユニット11に作用する車幅方向の磁気分布の中心位置の位置的な変化の度合いを表す指標に基づいて外乱となる磁気発生源の存在可能性が判定される。
【0058】
なお、本例では、磁気マーカ10が道路の方向に沿って一列をなすように敷設されている。したがって、外乱となる磁気発生源が存在しない場合には、車幅方向の磁気分布の中心位置が磁気マーカ10の位置に一致する。つまり、車幅方向の磁気分布の中心位置は、磁気マーカ10の位置に対応する図5のゼロクロスX2に相当する位置となる。
【0059】
検出ユニット12は、操舵ユニット45から一定の時間周期で取得する操舵角の変化量が閾値以内のとき(S401:YES)、次に説明するステップS402以降の処理を実行して外乱となる磁気発生源の存在可能性を判定する処理を実行する。一方、急なハンドル操作が行われる等により操舵角の変化量が閾値を超えている場合には(S401:NO)、車線変更等の進路変更の最中である可能性が高いとしてステップS402以降の処理が迂回される。
【0060】
判定処理を実行するに当たって、検出ユニット12は、まず、各磁気センサCnの車幅方向の磁気計測値の分布である上記第2の磁気分布データを取得する(S402)。なお、第2の磁気分布データを取得する周期は、センサユニット11の各磁気センサCnの検出周期と同じ3kHzである。そして、検出ユニット12は、各磁気センサCnの車幅方向の磁気計測値が離散的に分布するこの第2の磁気分布データについて近似曲線を演算し、その近似曲線がゼロを交差するゼロクロス(図5中のX2に相当)を特定する(S403)。
【0061】
検出ユニット12は、中央の磁気センサC8の位置を基準として、図5のX2に相当するゼロクロスまでの距離Gcを演算し、車幅方向の磁気分布の中心位置として特定する(S404)。例えば図5に例示の場合であれば、図5のX2に相当するゼロクロスの位置がC9とC10との中間辺りのC9.5に相当する位置となっている。上記のように磁気センサC9とC10の間隔は10cmであるから、車幅方向の磁気分布の中心位置を表す距離Gcは、中央に位置するC8を基準として正値の(9.5-8)×10cm=15cmとなる。なお、以下の説明では、車幅方向の磁気分布の中心位置を表す距離Gcを単に中心位置Gcという。
【0062】
検出ユニット12は、上記第2の磁気分布データの取り込み周期毎に上記の中心位置Gcを演算する。そして、100周期前の中心位置Gcと、今回の周期で特定された中心位置Gcと、の差分を、中心位置の時間的な変化量として算出する(S405)。検出ユニット12は、さらに、車速を取得して100周期中の走行距離を特定し、上記の差分を走行距離で除算することで、車幅方向の磁気分布の中心位置の変化度合を表す指標の1例である中心位置の変化率(%)を求める(S406)。
【0063】
検出ユニット12は、中心位置の変化率(%)について閾値処理を実行し(S407)、この変化率が閾値よりも大きいとき(S407:YES)、外乱となる磁気発生源が有ると判定する(S408)。一方、変化率が閾値以下であれば(S407:NO)、外乱となる磁気発生源がないと判定する(S418)。
【0064】
ここで、上記の中心位置Gcの変化率に基づく判定の考え方を図11図12を参照して説明する。これらの図は、磁気マーカ10が配列された車線を示している。図11は、外乱となる磁気発生源が無い区間を示し、図12は、磁気マーカ10以外に外乱となる磁気発生源が有る区間を示している。なお、これらの図では、車線の図示を省略している。
【0065】
図11及び図12中の破線は、車幅方向の磁気分布の中心位置を結ぶラインLを示している。図11の区間では、磁気マーカ10以外の外乱となる磁気発生源が無いため、ラインLが磁気マーカ10に沿っている。一方、図12の区間のように例えば鉄製のマンホールなど外乱となる磁気発生源60が磁気マーカ10の近傍に有る場合には、この磁気発生源の磁界に引っ張られて前記中心位置を結ぶラインLが湾曲変形する。
【0066】
外乱となる磁気発生源が無い図11の区間では、ラインLの曲率が道路の曲率と同程度となる。一方、外乱となる磁気発生源が有る図12の区間では、ラインLが上記のように湾曲変形し、この湾曲変形箇所においては、ラインLの曲率が道路の曲率を超えた小さな値となる可能性が高い。例えば高速道路等であれば、ラインLの曲率が、高速道路の設計上の曲率の範囲を超えるような小さな値となる可能性がある。
【0067】
図11の区間を車両が通過する際、磁気マーカ10に沿って車両が走行すれば、上記の中心位置の時間的な変化量はゼロに近くなり、上記ステップS406で算出する変化率がゼロに近づくはずである。一方、図12の区間において、磁気マーカ10に沿って車両が走行する場合、上記の湾曲変形箇所に車両が到達すると、車両側で特定する車幅方向の磁気分布の中心位置が車幅方向に変動する。このときには、車幅方向の磁気分布の中心位置の時間的な変化量が拡大し、これにより上記の変化率が大きな値となる。本例の判定処理は、外乱となる磁気発生源の近傍で上記の変化率が大きな値となる傾向にあることに着目して磁気発生源を検出しようとする処理である。
【0068】
例えば、車両が時速100kmで走行する際、1秒間の走行距離は約27.7mである。このとき、3kHz周期でサンプリングする際の100周期中の移動距離である上記の図10中のS406の距離は、おおよそ0.92m(27.7÷30)となる。例えば、車両が0.92m走行する間の中心位置の変化量の限度を10cmとすれば、上記の図10のS407の閾値としては、例えば、11%(0.1÷0.92)を設定できる。なお、S407の閾値としては、例えば1%~15%の範囲のいずれかの値を設定すると良い。
中心位置の時間的な変化量として、100周期前の中心位置と、今回の周期で特定された中心位置と、の差分を例示したが、差分の対象は、100周期前の中心位置には限定されない。50周期前の中心位置や10周期前の中心位置や1周期前の中心位置等を差分の対象にしても良い。
【0069】
さらに、車両の操舵輪の操舵角の変化量などの変化度合い、あるいは車両に生じたヨーレイトによって、図10のS407の閾値処理の対象である変化率(指標)を補正することも良い。例えば、上記の操舵角の変化量あるいはヨーレイトが閾値(図10のS401の閾値よりも小さい別の閾値。)よりも大きいときには、上記の変化率に1未満の補正係数を掛け合わせ、その値が小さくなるように補正することも良い。操舵角が大きく変化したときや、車両にヨーレイトが生じている場合には、外乱となる磁気発生源が存在しない状況であっても前記変化率が大きくなり、外乱有(S408)の誤判定が発生し易くなる傾向がある。上記のように補正係数を掛け合わせて変化率(指標)を補正すれば、操舵角の変化等に起因して変化率が大きくなる傾向を抑制できる。また、操舵角の変化度合いやヨーレイト等が大きくなるほど、上記の補正係数の値を小さくする等、可変係数を採用しても良い。
【0070】
(4)外乱作用下の車線追従制御
制御ユニット41は、外乱となる磁気発生源が有る旨の判定結果を含むマーカ検出情報を検出ユニット12から取り込んだとき、車線追従制御の内容を通常の制御から外乱作用下の制御に切り換える。
【0071】
外乱作用下の制御と通常の制御との違いは、操舵角の計測値及び磁気マーカ10に対する横ずれ量に基づいて目標操舵角を演算する際の制御ゲインの設定にある。外乱作用下の制御では、通常の制御と比べて制御ゲインが1/2に変更される。これにより、図12のように外乱となる磁気発生源による分布中心の湾曲が生じた場合であっても、車両5の制御に対する影響度合いが抑制される。
【0072】
なお、外乱となる磁気発生源が有る旨の判定がなされたとき、操舵制御を中止することも良い。この場合には、車線追従制御を一旦中断する旨の表示を例えば運転席の表示パネル等に表示することで運転者にハンドル操作を委ねると良い。なお、車間制御については、操舵角の計測値と前方検知ユニット42による距離情報に基づいてそのまま継続しても良い。
【0073】
以上のように本例のマーカ検出方法は、車両5側に作用する車幅方向の磁気分布の中心位置に着目し、外乱となる磁気発生源の有無を判定しようとする方法である。磁気マーカ10が敷設された道路に追従して車両5が走行するとき、磁気マーカ10以外の磁気発生源が無ければ、車幅方向の磁気分布の中心位置が一定に近くなる。一方、磁気マーカ10以外の外乱となる磁気発生源が有れば、車両5側に作用する車幅方向の磁気分布に乱れが生じて、車幅方向の磁気分布の中心位置にずれが生じる可能性が高い。このように車幅方向の磁気分布の中心位置に着目すれば、外乱となる磁気発生源の有無を確実性高く判定できる。
【0074】
また、上記のマーカ検出方法を実行する車両用システム1は、外乱となる磁気発生源の有無に応じて車線に追従して車両5を自動走行させる際の制御を切り替える。外乱となる磁気発生源が有ると判定されたときには、制御ゲインを小さくして車両5側の反応を緩慢にすることで外乱となる磁気発生源に起因する挙動の乱れを抑制している。
【0075】
なお、本例では、外乱となる磁気発生源の有無を判定するための指標として車幅方向の磁気分布の中心位置の時間的な変化率を例示している。この変化率に代えて、車幅方向の磁気分布の中心位置の時間的な変化量を指標として利用し、外乱となる磁気発生源の有無を判定することも良い。
【0076】
本例では、操舵角の変化量が閾値を超える場合に、外乱となる磁気発生源の有無の判定処理が実行されないように構成している。操舵角の変化量に代えて、車両の生じたヨーレイトを設定しても良い。ヨーレイトが閾値よりも大きい場合には、車線変更などを行うために運転者の意図的なハンドル操作が行われている可能性が高いことから、外乱となる磁気発生源の有無の判定処理に不適と判断すると良い。ヨーレイトについて例えば大小2つの閾値を設定し、ヨーレイトが小さい閾値よりも大きく、かつ、大きい閾値未満の場合には、上記の補正係数を用いて変化率を補正する一方、ヨーレイトが大きい閾値以上となった場合には、判定処理をキャンセルする等の運用であっても良い。
【0077】
先行車両の車幅方向の相対変位等を利用して車両用システム1が前方道路の曲率を推定することも良い。推定された曲率に応じて、判定処理を行うか否かを判断するための上記のステップS401の操舵角の変化量の閾値を変更することも良い。例えば、推定した曲率が直線道路を表す大きな値のときは、ハンドル操作がほとんど行われないことが予測されることから、操舵角の変化量の閾値を小さくすると良い。一方、推定した曲率がカーブを表す値のときには、進路方向を変更するためのハンドル操作が予想されることから、操舵角の変化量の閾値を若干大きくすると良い。前方道路の曲率のデータを取得可能なナビゲーション装置が車両5に搭載されていれば、前方道路の曲率に応じて上記のステップS401の操舵角の変化量の閾値を変更することも良い。
【0078】
本例では、外乱となる磁気発生源の存在可能性として、その有無を判定するが、これに代えて、例えば100%、60%、20%など、外乱となる磁気発生源の存在可能性を確率的に表すことも良い。あるいは、レベル10を上限として、レベル2、レベル5、レベル9など、存在可能性を度数などにより表すことも良い。存在可能性としては、上記の変化率や変化量などの指標の値を確率的な数値あるいは度数に置き換えることも良い。
【0079】
磁気発生源の存在可能性を確率的な数値あるいは度数によって表す場合の車線追従制御については、度数等によって制御ゲインを段階的に変更することも良い。あるいは、度数等に対する閾値処理により、度数が閾値以下であれば車線追従制御を実行する一方、度数が閾値を超えるときには車線追従制御を中断する等の制御であっても良い。
【0080】
本例では、車両の進行方向及び車幅方向に感度を有する磁気センサCnを採用している。これに代えて、鉛直方向や進行方向や車幅方向の1軸方向に感度を持つ磁気センサであっても良く、車幅方向と鉛直方向の2軸方向や、進行方向と鉛直方向の2軸方向に感度を持つ磁気センサであっても良く、車幅方向と進行方向と鉛直方向の3軸方向に感度を持つ磁気センサであっても良い。
【0081】
例えば鉛直方向に感度を有する磁気センサCnが車幅方向に配列されたセンサユニットを採用する場合、図13に例示するように、磁気マーカの真上が磁気計測値の最大値となると共に、この真上から車幅方向に離れるにつれて磁気計測値が次第に小さくなる正規分布のような線対称の磁気分布が得られる。同図のように正規分布をなしゼロクロスが現れない線対称の磁気分布については、最大値の位置であるピーク点Pを磁気分布の中心位置として取り扱うと良い。
【0082】
本例では、直径20mm、高さ28mmの柱状の磁気マーカ10を例示したが、例えば厚さ1~5mmで直径80~120mm程度のシート状の磁気マーカを採用することもできる。この磁気マーカの磁石としては、例えば、事務用あるいはキッチン等で利用されるマグネットシートに似通った磁石であるフェライトラバーマグネット等を採用すると良い。
【0083】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して上記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0084】
1 車両用システム
10 磁気マーカ
100 車線
11 センサユニット(磁気検出ユニット)
110 データ生成回路
12 検出ユニット(判定ユニット)
41 制御ユニット
42 前方検知ユニット
5 車両
Cn 磁気センサ(nは1~15の整数)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13