(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】水処理フィルタのコーティング装置及びコーティング方法
(51)【国際特許分類】
B05C 7/04 20060101AFI20220308BHJP
B05C 3/109 20060101ALI20220308BHJP
B05D 7/22 20060101ALI20220308BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20220308BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220308BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220308BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20220308BHJP
B05D 1/18 20060101ALI20220308BHJP
C04B 41/85 20060101ALI20220308BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
B05C7/04
B05C3/109
B05D7/22 Z
B05D7/00 K
B05D7/24 301E
B05D3/00 D
B05D3/12 A
B05D1/18
B05D3/00 B
B05D7/00 C
C04B41/85 C
B01D39/20 D
B05D7/00 B
(21)【出願番号】P 2021507424
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012409
(87)【国際公開番号】W WO2020189770
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2019052492
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】菓子 未映子
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 智則
(72)【発明者】
【氏名】山口 欣秀
(72)【発明者】
【氏名】神林 琢也
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-254985(JP,A)
【文献】特表2007-526827(JP,A)
【文献】特開2008-161799(JP,A)
【文献】特開2003-230808(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062521(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/20
B05C 3/109
B05D 1/18
B05D 3/00
B05D 3/12
B05D 7/00
B05C 7/04
B05D 7/22
B05D 7/24
C04B 41/81
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質セラミックの隔壁で仕切られた複数の流路を有するフィルタ部材をスラリでコーティングするためのコーティング装置であって、前記コーティング装置は、
前記スラリを格納するタンクと、
前記フィルタ部材を格納するハウジングであって、前記フィルタ部材の前記流路の等価直径をd、前記ハウジングの側壁部の内側面と前記フィルタ部材の外側面との隙間をLとした場合、前記隙間Lがd以下となる条件を満たす前記ハウジングと、
前記ハウジングの内部を減圧可能な減圧手段と、
前記タンク、前記ハウジング及び前記減圧手段を連通する連通手段と
を有することを特徴とする水処理フィルタのコーティング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコーティング装置であって、前記ハウジングは円筒形状を有することを特徴とする水処理フィルタのコーティング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のコーティング装置であって、前記フィルタ部材の外側面の外径をR、前記フィルタ部材の前記流路の等価直径をd、前記ハウジングの前記側壁部の前記内側面の内径をWとした場合、Wは(R+2d)以下であることを特徴とする水処理フィルタのコーティング装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のコーティング装置であって、前記ハウジングの前記側壁部は、前記内側面の少なくとも一部が弾性体素材より構成されていることを特徴とする水処理フィルタのコーティング装置。
【請求項5】
多孔質セラミックの隔壁で仕切られた複数の流路を有するフィルタ部材をスラリでコーティングするコーティング方法であって、
前記フィルタ部材の前記流路の等価直径をd、前記フィルタ部材を格納するハウジングの側壁部の内側面と前記フィルタ部材の外側面との隙間をLとした場合、前記隙間Lがd以下となる条件を満たす前記ハウジングに前記フィルタ部材を格納し、
減圧手段により前記ハウジングの内部を減圧することにより、前記ハウジングと連通するタンクに格納されたスラリを前記ハウジングの内部に吸引して流入させ、前記スラリを前記フィルタ部材に浸潤させた後、前記ハウジングから前記スラリを排出させる
ことを特徴とする水処理フィルタのコーティング方法。
【請求項6】
請求項5に記載のコーティング方法であって、前記ハウジングは円筒形状を有し、円筒形状の前記フィルタ部材を前記スラリでコーティングすることを特徴とする水処理フィルタのコーティング方法。
【請求項7】
請求項6に記載のコーティング方法であって、前記フィルタ部材の外側面の外径をR、前記フィルタ部材の前記流路の等価直径をd、前記ハウジングの前記側壁部の前記内側面の内径をWとした場合、Wは(R+2d)以下である前記ハウジングに前記フィルタ部材を格納して前記スラリでコーティングすることを特徴とする水処理フィルタのコーティング方法。
【請求項8】
請求項5乃至7の何れかに記載のコーティング方法であって、前記スラリを前記ハウジングの内部に吸引して流入させることを、前記タンクの内部を大気に解放した状態で行うことを特徴とする水処理フィルタのコーティング方法。
【請求項9】
請求項5乃至7の何れかに記載のコーティング方法であって、前記スラリを前記ハウジングの内部に吸引して流入させることを、前記減圧手段により前記ハウジングの内部を減圧して前記ハウジングの前記側壁部を内側に変形させた後に行うことを特徴とする水処理フィルタのコーティング方法。
【請求項10】
請求項5乃至7の何れかに記載のコーティング方法であって、前記ハウジングから前記スラリを排出させることを、前記減圧手段により前記ハウジングの内部を減圧して前記ハウジングの前記側壁部を内側に変形させた後に行うことを特徴とする水処理フィルタのコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水処理フィルタをスラリでコーティングするコーティング装置及びコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理フィルタは、主に多孔質材料、例えば多孔質セラミックで構成されるフィルタ部材を、スラリと呼ばれるコーティング剤でコーティングすることで製造される。フィルタ部材をスラリのコーティング剤でコーティングする方法として、例えば特許文献1には、セラミック一体性触媒担体部材の内部骨格構造をコーティング物質のスラリで含浸する方法が開示されている。
【0003】
具体的には特許文献1の
図1及び3ページ目右カラム乃至3ページ目左カラムに記載の通り、一体化物18の下部末端18aよりコーティングスラリを吸入するために、一体化物の上部末端18bにカバー14を被せ、カバー内を真空にすることでパン10のコーティングスラリを一体化物に吸い上げる、ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された含浸方法によりスラリでコーティングするためには、一体化物の外側面が、多孔質ではないが含水性のあるセラミックの膜(以下、「外皮」と称する場合がある)で被覆されていることが前提である。外皮は含水すると、水の表面張力により水膜が形成されるため非通気性となり、外皮で覆われたフィルタ内部を真空に保つことができるからである。しかし、外皮のあるフィルタを水処理フィルタとして用いる場合には、コーティング後、実際に水処理に用いている間に、外皮は劣化し、水処理フィルタから剥離してしまう。その結果、処理後の水が外皮で汚れてしまう。当該傾向は水処理フィルタによる水処理時間が長くなるほど顕著となる。
【0006】
本発明は、多孔質セラミックが外側面に露出しているフィルタ部材、即ち、外皮のないフィルタ部材であっても、隔壁部材の多孔質セラミックにスラリを確実にコーティングできる水処理フィルタのコーティング装置及びコーティング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明では、多孔質セラミックの隔壁で仕切られた複数の流路を有するフィルタ部材をスラリでコーティングするための水処理フィルタのコーティング装置を、前記スラリを格納するタンクと、前記フィルタ部材を格納するハウジングであって、前記フィルタ部材の前記流路の等価直径をd、前記ハウジングの側壁部の内側面と前記フィルタ部材の外側面との隙間をLとした場合、前記隙間Lがd以下となる条件を満たす前記ハウジングと、前記ハウジングの内部を減圧可能な減圧手段と、前記タンク、前記ハウジング及び前記減圧手段を連通する連通手段とを有して構成した。
【0008】
前記コーティング装置において、前記ハウジングは円筒形状としてもよい。前記ハウジングを円筒形状とした場合、前記フィルタ部材の外側面の外径をR、前記フィルタ部材の前記流路の等価直径をd、前記ハウジングの前記側壁部の前記内側面の内径をWとした場合、Wは(R+2d)以下であることが好ましい。また、前記コーティング装置において、前記ハウジングの前記側壁部は、前記内側面の少なくとも一部を弾性体素材により構成してもよい。
【0009】
また、上記した課題を解決するために、本発明では、多孔質セラミックの隔壁で仕切られた複数の流路を有するフィルタ部材をスラリでコーティングする水処理フィルタのコーティング方法を、前記フィルタ部材の前記流路の等価直径をd、前記フィルタ部材を格納するハウジングの側壁部の内側面と前記フィルタ部材の外側面との隙間をLとした場合、前記隙間Lがd以下となる条件を満たす前記ハウジングに前記フィルタ部材を格納し、減圧手段により前記ハウジングの内部を減圧することにより、前記ハウジングと連通するタンクに格納されたスラリを前記ハウジングの内部に吸引して流入させ、前記スラリを前記フィルタ部材に浸潤させた後、前記ハウジングから前記スラリを排出させるようにした。
【0010】
前記コーティング方法において、前記ハウジングは円筒形状として、円筒形状の前記フィルタ部材を前記スラリでコーティングしてもよい。前記ハウジングを円筒形状とした場合、前記フィルタ部材の外側面の外径をR、前記フィルタ部材の前記流路の等価直径をd、前記ハウジングの前記側壁部の前記内側面の内径をWとした場合、Wは(R+2d)以下であることが好ましい。
【0011】
前記コーティング方法において、前記スラリを前記ハウジングの内部に吸引して流入させることを、前記タンクの内部を大気に解放した状態で行ってもよい。また、前記スラリを前記ハウジングの内部に吸引して流入させることを、前記減圧手段により前記ハウジングの内部を減圧して前記ハウジングの前記側壁部を内側に変形させた後に行ってもよい。
【0012】
前記コーティング方法において、前記ハウジングから前記スラリを排出させることを、前記減圧手段により前記ハウジングの内部を減圧して前記ハウジングの前記側壁部を内側に変形させた後に行ってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外皮のないフィルタ部材であっても、隔壁部材の多孔質セラミックにスラリを確実にコーティングできるので、外皮のない水処理フィルタが得られ、以って外皮が劣化して剥がれ落ちることによる水質汚染の問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係るフィルタ部材の形状を示した図で、(a)は平面図、(b)は正面の断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るコーティング装置の概略の構成を示したブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係るコーティング方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態及び第2実施形態に係るコーティング方法におけるスラリ流入工程の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態に係るコーティング装置のハウジングであって剛体側壁ハウジングの外観を示した斜視図である。
【
図6】
図5に示す剛体側壁ハウジングにフィルタ部材を挿入した状態を示す平面図である。
【
図7】ハウジングの内壁径Wとフィルタ部材の外側面の外径Rとの差(W-R)と、スラリの残留割合のばらつきとの関係を示すグラフである。
【
図8】第2実施形態に係るコーティング装置の概略の構成を示したブロック図である。
【
図9】第2実施形態に係るコーティング方法におけるスラリ排出工程の詳細のうち自然排出工程を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態に係るコーティング方法におけるスラリ排出工程の詳細のうち減圧排出工程を示すフローチャートである。
【
図11】第3実施形態に係るコーティング装置のハウジングであって弾性体側壁ハウジングの外観を示した斜視図である。
【
図12】
図11に示す弾性体側壁ハウジングにフィルタ部材を挿入した状態を示す断面図である。
【
図13】第3実施形態に係るコーティング方法におけるスラリ流入工程の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る好ましい実施の形態である第1実施形態(以下、態様1と称する場合がある。)の水処理フィルタのコーティング装置及びコーティング方法について、図面を参照して説明する。
【0016】
<第1実施形態のフィルタ部材>
まず、本発明においてコーティング対象となる外皮の無いフィルタ部材について説明する。
図1は、第1実施形態に係るフィルタ部材1の形状を示した図で、(a)は平面図、(b)は正面の断面図である。フィルタ部材1の端面および側壁は、外皮の無い構造のため、多孔質セラミックの材質が露出している。態様1のフィルタ部材1は、円筒形状であって、外径Rの円筒状の外側面を有し、さらに多孔質セラミックの隔壁2で仕切られた、複数の流路3(より具体的には流路3a及び流路3b)とを有している。なお、本発明においてコーティング対象のフィルタ部材は、円筒形状に限定されず、流路の延伸方向に対して直行方向の断面視で、楕円形、三角形、正方形、長方形、多角形など円形以外の形状であってもよい。
【0017】
複数の流路3は、
図1(a)の平面図で見た場合に、端面において互いに平行でない第1方向および第2方向に並んで配置されており、
図1(b)の正面の断面図で見た場合に、流入側の端面または流出側の端面の何れか一方に交互に設けられた封止部4とを有する。
【0018】
なお、封止部4は、水及び洗浄液を透過させない素材であることが好ましい。さらに、水及び洗浄液に長時間接した場合に劣化や溶出が少ないことが好ましい。素材の例としては、セラミック、シーリング剤(シリコーン、エポキシ、アクリル系)、接着剤、コーキング剤がある。
【0019】
流路3は、処理前の水の流入側(
図1(b)における下)が開口し、反対側の処理後の水の流出側が封止部4によって封止された第1の流路3bと、処理後の水の流出側(
図1(b)における上)が開口し、反対側の処理前の水の流入側が封止部4によって封止された第2の流路3aとの2種類がある。第1の流路と第2の流路とは、第1方向および第2方向にそれぞれ交互に配置されている。
【0020】
ここで、流路3の等価直径dをd=4S/V、ここでSは流路断面積、Vは濡れ縁長さで流路の辺の合計長、と定義する。
図1のように流路3が正方形の場合は、dは一辺の長さに当たる。
【0021】
なお、多孔質セラミックの材質は、コーディエライト、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニアなどが考えられるが、多孔質のフィルタが形成できれば上記に限定されるものではない。しかし、多孔質セラミックの材質は、熱膨張率が小さいため成形が容易なコーディエライト、アルミナが好ましい。
【0022】
<第1実施形態のコーティング装置>
以下、第1実施形態(態様1)のコーティング装置について説明する。
図2は、第1実施形態に係るコーティング装置の概略の構成を示したブロック図である。
図2に示すように、態様1のコーティング装置200は、スラリ5を格納するタンク6、フィルタ部材1を格納するハウジング7、ハウジング7の内部を減圧可能な減圧手段であるポンプ9、並びにタンク6、ハウジング7及び減圧手段(ポンプ9)を連通する連通手段である管8、10及びバルブ80、110より構成される。そして、態様1のコーティング装置200は、ハウジング7の側壁部の内側面とフィルタ部材1の外側面との隙間Lが、フィルタ部材1の流路の等価直径d以下となる条件を満たすハウジング7を含んで構成されている。以下、態様1のコーティング装置200の構成要素について詳しく説明する。
【0023】
スラリ5は、フィルタ部材1をコーティングするための液体である。スラリ5は一つのフィルタ部材1をコーティングした後に、所定回数、再利用してもよい。
【0024】
タンク6は、スラリ5を格納する容器である。タンク6には大気導入構造として開口6gが設けられている。
【0025】
ハウジング7は、フィルタ部材1を格納し、かつスラリ5で満たされる、内部空間を有する。なお、以下、ハウジング7の内部空間を単に「内部」と省略することがある。ハウジングは、その全体又は一部を、外部から内部を視認可能な透過性素材から構成してもよい。透過性素材により透明窓等の透過領域を設けることで、フィルタ部材のコーティング状況やスラリの排出状況をハウジングの外部から確認することができる。
【0026】
減圧手段であるポンプ9は、スラリ5をハウジング7に流入させるために、ハウジング7内部の空気を除去(言い換えれば、ハウジング7の内部空間を減圧)するためのポンプである。なお、ポンプ9はハウジング7に一時満たされたスラリ5の排出を促進するために、ハウジング7内部に空気を送り込む(言い換えれば、ハウジング7の内部空間を加圧する)能力を有してもよい。また、ポンプ9は、不図示の大気導入構造を有し、連通手段を介してハウジング7内部を大気に解放可能としている。なお、態様1のコーティング装置200において、重力方向は
図2で紙面の上から下に向かう方向として、上からポンプ9、ハウジング7、タンク6の位置関係とすることで、スラリ5をハウジング7から排出する際に重力を利用可能としている。しかし、これに限定されず、ポンプ9に加圧能力がある場合は前述の上下関係を満たさなくてもよい。
【0027】
連通手段である管8、10は、前述のタンク6、ハウジング7、及び減圧手段であるポンプ9を接続する構成要素である。なお、管8、10は剛体でもよく、弾性体でもよい。バルブ80、110は、夫々、管8、10に設置されて連通手段を構成する。
【0028】
図2に示すように、連通手段である管8、10及びバルブ80、110は以下の通り配置されている。
【0029】
(管10)タンク6と、ハウジング7との間を接続する管10は、バルブ110が配置されている。なお、管10は、スラリ5の液体中まで伸びている必要があるため、端部はタンク6上面より下にまで伸びている。
【0030】
(管8)ハウジング7と、ポンプ9との間を接続する管8は、バルブ80が配置されている。
【0031】
<第1実施形態のコーティング方法>
以下、第1実施形態(態様1)のコーティング方法について説明する。
図3は、第1実施形態に係るコーティング方法の処理の流れを示すフローチャートである。なお、コーティングの各工程を行う主体は、作業者として説明するが、一部又は全ての工程をソフトウェアプログラム(或いは当該プログラムを実行する計算機)で行ってもよい(以下、説明する他の実施形態についても同様である)。そして、態様1のコーティング方法は、フィルタ部材の流路の等価直径をd、フィルタ部材を格納するハウジングの側壁部の内側面とフィルタ部材の外側面との隙間をLとした場合、隙間Lがd以下となる条件を満たすハウジングにフィルタ部材を格納する工程を含んでいる。以下、
図3のフローチャートに従って各工程(工程A~F)を説明する。
【0032】
(工程A)作業者は、タンク6の内部にスラリ5が十分入っているかをチェックし(S11)、スラリ5の量が不足している場合(S11でYESの場合)には、スラリ5をタンク6に供給する(S12)。なお、既にタンク6に十分な量のスラリ5が格納されている場合(S11でNOの場合)は、(S12)は不要である。
【0033】
(工程B)作業者は、前述した隙間Lの条件を満たすハウジング7にフィルタ部材1を格納する(S13)。なお、(S12)と(S13)とは入れ替えてもよく、同時に行ってもよい。
【0034】
(工程C)作業者は、タンク6からハウジング7に、スラリ5を流入させる(S14)。以下の説明では本工程を「スラリ流入工程」と称する。
【0035】
(工程D)作業者は、ハウジング7に格納されたフィルタ部材1にスラリ5を十分浸潤させるまで待つ(S15)。なお、当該待ち時間は例えば5分程度と考えられる。なお、ハウジング7に外部から内部を視認可能な透明窓等を設けていれば、作業者は、透明窓等からフィルタ部材1を監視し、フィルタ部材1から泡沫が出なくなったタイミングで本工程を終えてもよい。
【0036】
(工程E)作業者は、ハウジング7からスラリ5を排出させる(S16)。排出させたスラリ5はタンク6に戻される。以下の説明では、本工程を「スラリ排出工程」と称する。本態様では、排出させたスラリ5はタンク6に戻される形態について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、バルブ110を三方弁にして管10を枝分かれさせ(図示せず)、スラリ5をタンク6とは別のタンク(図示せず)に排出してもよい。
【0037】
(工程F)作業者は、スラリ5を排出させたハウジング7からフィルタ部材1を取り出して(S17)、一連の工程を終了する。
【0038】
<<第1実施形態のスラリ流入工程の詳細>>
図4は、第1実施形態に係るコーティング方法におけるスラリ流入工程の詳細を示すフローチャートである。なお、
図4は後述する第2実施形態に係るコーティング方法におけるスラリ流入工程の詳細を示すフローチャートも併記している。なお、以下の説明で、バルブが「閉じる」と表記した場合は、バルブの機能上で最も管内の流体の流れを制限できる状態を含んでもよい。言い換えれば、閉状態にしたバルブから多少の流体が漏れたとしても、「閉」として扱ってもよい。また、以下の説明で、バルブを「閉状態とする」と表記した場合は、バルブが開状態である場合は閉じる操作を行い、元々閉状態である場合はそのまま閉状態で維持することを指す。「開状態にする」も「開/閉」が逆な以外は同様の意味である(以下、説明する他の実施形態についても同様である)。態様1のスラリ流入工程(S14)は、下記の通りである。
【0039】
(工程C11)作業者は、バルブ110、80を開状態とする(S141)。
【0040】
(工程C12)作業者は、ポンプ9の減圧動作をオンにする(S142)。これにより、ハウジング7の内部が減圧されて、タンク6に入ったスラリ5が吸引され、ハウジング7に流入する(S143)。その際、タンク6のスラリ5の水位は下がる。
図2に示すように、タンク6は、開口6gによりその内部を大気に解放しているので、タンク6の内部における水位降下によって不足する気体を大気から補充できるので、スラリの吸引を短時間に行うことができる。
【0041】
(工程C13)作業者は、ハウジング7にスラリ5が十分な量格納されたことを確認したら(S144でYESの場合)、ポンプ9の減圧動作をオフにし(S145)、これ以上スラリ5をハウジング7に流入させないようにする。
【0042】
以上が態様1のスラリ流入工程(S14)の詳細である。なお、工程C11において、(S141)でバルブ110を開状態とするとしたが、バルブ110を閉状態から開状態とするタイミングは工程C12においてポンプ9の減圧動作をオン(S142)にした後であってもよい。
【0043】
<<第1実施形態のスラリ排出工程の詳細>>
第1実施形態(態様1)に係るコーティング方法において、ハウジング7に格納されたスラリ5をタンク6に排出して戻すスラリ排出工程(S16)は、下記の通りである。
【0044】
(工程E11)作業者は、バルブ80を開状態のまま、ポンプ9の不図示の大気導入構造から管8を介してハウジング7に大気を導入する。これによりハウジング7内部の気圧は大気圧に戻る。
【0045】
(工程E12)作業者は、バルブ110を開状態とする。これにより、ハウジング7に入っていたスラリ5が大気圧と重力の働きによりタンク6に戻る。なお、タンク6内部のスラリ5の水位上昇によって不要となった気体は、タンク6の開口6gから大気に解放されることから、スラリの排出を短時間に行うことができる。以上が態様1のスラリ排出工程(S16)の詳細である。
【0046】
<第1実施形態のハウジング(剛体側壁ハウジング)>
以下、第1実施形態のコーティング装置におけるハウジングの構成について説明する。態様1のハウジングは、その側壁部が剛体からなる。なお、以下の説明では側壁部が剛体のハウジングを剛体側壁ハウジングと称する場合がある。
図2に示すハウジング7は剛体側壁ハウジングの場合を例示している。
【0047】
なお、ここで言う「剛体」とは、ハウジングに対して与えられる力の源となる、重力、空気圧の変動、水圧の変動によって、ハウジング又はハウジングの部材が大幅に変形しない物体であることを意味しており、まったく変形しないことを意味するものではない。
【0048】
図5は、第1実施形態に係るコーティング装置のハウジングであって剛体側壁ハウジングの外観を示した斜視図である。なお、説明を簡単にするため、コーティング対象のフィルタ部材が円筒形状であって、フィルタ部材の外側面とハウジングの側壁部の内側面とが共に円筒である場合について説明する。
図5のハウジング7は、蓋7-1と、側壁7-2と、底7-3とを有し、側壁7-2は剛体により構成されている。なお、図中の点線は、斜視図の視点から見えない背面や内壁を示している。また、後述する緩衝部材7-10は、ハウジング7の内部に露出しているが、図示の都合により実線で記載している。
【0049】
ハウジング7は、蓋7-1と側壁7-2とが分離可能な構造となっている。この構造により、ハウジング7の側壁7-2の上部が出し入れ口の役割を兼ねているので、作業者は蓋7-1を分離させ(蓋7-1を開けて)、フィルタ部材1をハウジング7に格納する、或いは取り出すことができる。なお、出し入れ口は他の箇所に設置されてもよい。
【0050】
蓋7-1は、
図2に示す管8と接続するための開口部7-4を有する。ハウジング7は軸対象の形状を有するため、開口部7-4は、蓋7-1の幾何学的中心を含むように設けられていることが好ましい。
【0051】
底7-3は、
図2に示す管10と接続するため開口部7-5を有する。開口部7-5は、底7-3の幾何学的中心を含むように設けられている。なお、開口部7-4及び開口部7-5の形状例は、
図5に示すような断面が円の貫通穴である。また、開口部7-4及び7-5の一部として、管8及び10との接続を容易にする管を開口部7-4及び7-5の外部に設けてもよい。なお、蓋7-1及び底7-3の内面は平面でなくてもよく、漏斗状の円錐面であってもよい。
【0052】
側壁7-2は、底7-3と固定されており、蓋7-1とは分離可能な状態で固定されている。なお、側壁7-2と蓋7-1との固定部分の水密性や気密性が求められるため、側壁7-2と蓋7-1との接触部分はネジ溝を設けた締結構造とすることが好ましい。
【0053】
なお、蓋7-1及び底7-3には、弾性力を有する緩衝部材7-10として、Oリングで例示されるOリング7-10T、7-10Bが配置されていることが好ましい。ネジ締結により蓋7-1を回転させて閉めることで、弾性力を有するOリング7-10T、7-10Bを介して、蓋7-1及び底7-3とフィルタ部材1とを当接せしめることから、フィルタ部材1をハウジング7の内部に安定的に固定することができる。
【0054】
<スラリの残留割合とフィルタの水処理性能との関係>
ここで、コーティング後にフィルタ部材に残留するスラリの残留割合とフィルタとしての水処理性能との関係について説明する。フィルタ部材にスラリを確実にコーティングするためには、各流路の隔壁部材の多孔質セラミックに過不足なくスラリをコーティングすることが重要となる。このためには、スラリをフィルタ部材に浸潤させた後のスラリ排出工程でのスラリの排出性及びスラリ排出の均一性を向上させて、フィルタ部材の各流路に残留するスラリの量を適切に制御しなければならない。各流路に残留するスラリ量の適否はスラリの残留割合のばらつきとして評価される。
【0055】
フィルタ部材にて各流路のスラリの残留割合のばらつきがあるということは、フィルタ部材の能力である水処理性能、より具体的には水処理速度(単位時間当たりにフィルタ部材が水処理できる流量である)と所定成分の除去割合とに影響を及ぼす。なぜならば、流路にスラリが規定値以上に残留して、コーティングが過剰な場合は、流路(特に多孔質セラミックで構成される隔壁)が目詰まりをおこし、フィルタ部材の水処理速度が低下する。反対に、流路に残留するスラリが規定値以下であって、コーティングが不足する場合は所定成分の除去割合が低下する。
【0056】
スラリの残留割合のばらつきが大きいと、例えば、所定成分の除去を優先しようとする場合には、ばらつきを踏まえてより多くのスラリを残留させる、つまり水処理速度をばらつきの分だけ犠牲にする必要がある。フィルタ部材の水処理性能である水処理速度と所定成分の除去割合の両者を最大化するには、コーティングにおけるスラリの残留割合のばらつきを低減することが重要である。
【0057】
<ハウジングの側壁部の内側面とフィルタ部材の外側面との隙間とスラリの残留割合のばらつきとの関係>
本発明の発明者らは、スラリ排出工程でのスラリの排出性及びスラリ排出の均一性を向上してスラリの残留割合のばらつきを低減するためには、スラリ排出工程でフィルタ部材の各流路に適切に気圧を作用させる必要があることに着目した。スラリ排出工程で各流路に作用する気圧は、外皮のないフィルタ部材では、ハウジングの側壁部の内側面とフィルタ部材の外側面との隙間の寸法の影響を受けると推察された。そこで、ハウジングの側壁部の内側面とフィルタ部材の外側面との隙間の寸法を変化させたときのスラリの残留割合のばらつきについて調査した。
【0058】
以下、前述の隙間の寸法とスラリの残留割合のばらつきとの関係の調査結果について述べる。
図6は、
図5に示す剛体側壁ハウジングにフィルタ部材を挿入した状態を示す平面図である。
図6は、フィルタ部材1が入れられた状態のハウジング7を、
図5に示す蓋7-1を外した状態で上から見た図であって、フィルタ部材1とハウジング7との中心を一致させてフィルタ部材1をハウジング7に設置した場合を示している。
図6で、Wはハウジング7の側壁部の内側面の内径(以下、「内壁径」と称する場合や、「W」と称する場合がある)を、Rはフィルタ部材1の外側面の外径を示している。また、
図6で、Lはハウジング7の側壁部の内側面とフィルタ部材1の外側面との隙間(以下、単に「隙間L」と称する場合がある)を示している。フィルタ部材1は、その中心をハウジング7の中心と一致させて挿入しているので、隙間Lは、WとRとの差の半分である(W-R)/2となる。隙間Lの寸法とスラリの残留割合のばらつきとの関係を調査するため、フィルタ部材1の外側面の外径Rを25.4mm、フィルタ部材の流路3の一辺の長さdを2mmとしたフィルタ部材1を準備した。一方、ハウジング7の側壁部の内側面にテープを貼り付けて、疑似的にハウジング7の内壁径Wを変化させることで、(W-R)の値、即ち、隙間L((W-R)/2で求まる値)の寸法を変化させた。フィルタ部材1をハウジング7の中心に設置して格納して、様態1のコーティング装置及びコーティング方法によりスラリでコーティングして、隙間Lの寸法が異なる条件での複数のフィルタ部材1を作製した。なお、一度コーティングしたフィルタ部材は再利用しなかった。
【0059】
コーティングした複数のフィルタ部材のスラリの残留割合のばらつきを測定してその標準偏差を算出した。なお、スラリの残留割合とは、フィルタ部材が含む全ての流路を仕切る隔壁の多孔質セラミック内に残留したスラリの体積(重量から推定)を分子に、フィルタ部材が含む全ての流路を仕切る隔壁の多孔質セラミック内に保持することのできるスラリの体積を分母とした割合である。
図7は、ハウジングの内壁径Wとフィルタ部材の外側面の外径Rとの差(W-R)と、スラリの残留割合のばらつきとの関係を示すグラフである。
図7で、横軸はWとRとの差(W-R)を、縦軸はスラリの残留割合のばらつきを標準偏差で示した。
【0060】
図7に示す通り、WとRとの差(W-R)が4mmを超えると、即ち、フィルタ部材の流路の一辺の長さd(2mm)の2倍を超えると、スラリの残留割合のばらつきが急激に大きくなることがわかる。本調査ではフィルタ部材とハウジングとの中心を一致させていることから、隙間Lの寸法((W-R)/2)が、フィルタ部材の流路の一辺の長さdを超えると、スラリの残留割合のばらつきが急激に大きくなる、と言い換えることができる。
【0061】
<フィルタ部材とハウジングの中心が一致する場合>
上述の調査結果から、本発明の発明者らは、スラリ排出工程でのスラリの排出性及びスラリ排出の均一性を向上してスラリの残留割合のばらつきを低減して、結果として、外皮のない多孔質セラミックが外側面に露出しているフィルタ部材にスラリを確実にコーティングするためには、以下の数1で定めるように、ハウジングの側壁部の内側面とフィルタ部材の外側面との隙間Lが、フィルタ部材の流路の等価直径d以下となる条件を満たす必要があることを見出した。また、フィルタ部材とハウジングとが共に円筒形状であって、フィルタ部材をハウジングに設置する際に、フィルタ部材とハウジングとの中心が一致する場合には、フィルタ部材の外側面の外径R、フィルタ部材の流路の等価直径d及びハウジングの側壁部の内側面の内径Wの条件は、Wが(R+2d)以下であることが好ましい。具体的には、上述の調査で例示した、外側面の外径Rが25.4mm、流路の一辺が2mmのフィルタ部材をコーティングする場合には、ハウジングの内壁径Wは、フィルタ部材の外側面の外径R(25.4mm)以上、R+4mm(29.4mm)以下とする必要がある。
【0062】
【0063】
<フィルタ部材とハウジングの中心が一致しない場合>
コーティング処理において、作業者がフィルタ部材をハウジングに格納する際に、ミリメートル単位の正確さで、フィルタ部材をハウジング内部の中心に設置することは困難を伴う。また、スラリ流入工程及びスラリ排出工程において、フィルタ部材がハウジングの内部で移動する可能性もある。最も極端な状態としては、フィルタ部材の外側面がハウジングの側壁部の内側面に接触する場合が想定される。即ち、フィルタ部材とハウジングの中心が一致しない場合には、隙間Lは、WとRとの差の半分である(W-R)/2とはならず、WとRとの差(W-R)で決定されることから、数1の条件は数2の条件に変形される。フィルタ部材とハウジングの中心が一致しない場合にも、ハウジングの側壁部の内側面とフィルタ部材の外側面との隙間Lは、フィルタ部材の流路の等価直径d以下となる条件を満たす必要がある。
【0064】
【0065】
(第2実施形態)
以下、本発明に係る実施の形態である第2実施形態(以下、態様2と称する場合がある。)の水処理フィルタのコーティング装置及びコーティング方法について、図面を参照して説明する。態様2のコーティング装置及びコーティング方法においても、フィルタ部材の流路の等価直径をd、ハウジングの側壁部の内側面とフィルタ部材の外側面との隙間をLとした場合、隙間Lがd以下となる条件を満たす構成又は工程を含んでいる。なお、コーティング対象となるフィルタ部材については、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0066】
<第2実施形態のコーティング装置>
以下、第2実施形態(態様2)のコーティング装置について説明する。
図8は、第2実施形態に係るコーティング装置の概略の構成を示したブロック図である。
図8に示すように、態様2のコーティング装置200は、基本的には態様1のコーティング装置と同様に、タンク6、ハウジング7、減圧手段であるポンプ9より構成されているが、タンク6、ハウジング7及び減圧手段(ポンプ9)を連通する連通手段の構成が相違している。即ち、態様2のコーティング装置では、連通手段である管及びバルブが複数設置されている。具体的には、態様2のコーティング装置は、管8、8-2、10、10-2、10-3、10-4及びバルブ80、81、100、110、120、130により構成されている。なお、態様2のコーティング装置200において、ハウジング7は剛体側壁ハウジングであり、重力方向は
図8で紙面の上から下に向かう方向として、上からポンプ9、ハウジング7、タンク6の位置関係としている。以下、態様2のコーティング装置200の構成要素について詳しく説明するが、態様1のコーティング装置200と同様の構成要素は同一又は類似の符号で示し、説明は原則として繰り返さず省略する。
【0067】
連通手段である管8、8-2、10、10-2、10-3、10-4は、前述のタンク6、ハウジング7、及びポンプ9を接続する構成要素であり、典型的には複数存在する。なお、管8、8-2、10、10-2、10-3、10-4は剛体でもよく、弾性体でもよい。バルブ80、81、100、110、120、130は、夫々、管8、8-2、10、10-2、10-3、10-4に設置されて連通手段を構成する。
【0068】
図8に示すように、連通手段である管8、8-2、10、10-2、10-3、10-4及びバルブ80、81、100、110、120、130は以下の通り配置されている。
【0069】
(管10-2)タンク6と、ハウジング7との間を接続する管10-2は、バルブ110が配置されている。なお、管10-2は、スラリ5の液体中まで伸びている必要があるため、端部はタンク6上面より下にまで伸びている。
【0070】
(管8)ハウジング7と、ポンプ9との間を接続する管8は、バルブ80が配置されている。
【0071】
(管8-2)管8(ただしハウジング7とバルブ80との間)から分岐し、大気解放される管8-2は、バルブ81が配置されている。
【0072】
(管10-4)ポンプ9と、タンク6との間を接続する管10-4は、バルブ130が配置されている。なお、管10-4は、スラリ5の液体中まで伸びていないことが好ましいため、タンク6の上面で終端する。
【0073】
(管10)管10-4(ただしバルブ130とタンク6との間)から分岐し、管10-2のハウジング7とバルブ110との間に接続される管10は、バルブ100が配置されている。
【0074】
(管10-3)管10が管10-4より分岐する箇所10-40と、バルブ100との間の、管10から分岐し、大気解放される管10-3は、バルブ120が配置されている。
【0075】
ここで、態様2のコーティング装置200のより好ましい構成について説明する。管10-2及び管10-3(の管10の分岐元より下)は、より重力方向(
図8での紙面のでは上下方向、以下同様)に沿った配置とすると、後述するコーティング方法でのスラリ排出工程において、スラリの重力による移動がスムーズであり、管10内に残るスラリの量をより少なくできる。
【0076】
具体的には、例えば、管10は、スラリ5の流れる方向に従うように、管10-2との分岐箇所10-20が、管10-4との分岐箇所10-40より上であり、かつ重力方向に対して直行方向、即ち、
図8で紙面の左右方向に延在する平行部がない又は少ないことが好ましい。このように構成することで、後述するコーティング方法でのスラリ排出工程において、管10内にスラリが残る量を少なくできる。
【0077】
また、ポンプ9については必ずしも1つである必要はない。例えば、後述するコーティング方法において、スラリ流入工程で減圧動作を行うポンプと、スラリ排出工程で減圧動作を行うポンプとを別なポンプとして構成してもよい。ポンプを複数の構成とした場合は、バルブ81及び管8-2を省略し、スラリ流入工程で減圧動作を行っていたポンプを加圧動作に切り替えてもよく、ポンプの大気解放を行ってもよい。
【0078】
<第2実施形態のコーティング方法>
以下、第2実施形態(態様2)のコーティング方法について説明する。態様2のコーティング方法は、基本的には態様1のコーティング方法と同様であって、前述の
図3のフローチャートに従って工程A~工程Fを経てコーティング処理を実施するが、スラリ流入工程の詳細及びスラリ排出工程の詳細が相違している。以下、
図4、
図9及び
図10のフローチャートにより態様2におけるスラリ流入工程の詳細及びスラリ排出工程の詳細を説明する。
【0079】
<<第2実施形態のスラリ流入工程の詳細>>
図4は、第2実施形態に係るコーティング方法におけるスラリ流入工程の詳細を示すフローチャートである。
図4に示すように、態様2のスラリ流入工程(S14)は、下記の通りである。
【0080】
(工程C21)作業者は、バルブ110、120、80を開状態とする。又、作業者は、バルブ100、130、81を閉状態とする(S141)。
【0081】
(工程C22)作業者は、ポンプ9の減圧動作をオンにする(S142)。これにより、ハウジング7の内部が減圧されて、タンク6に入ったスラリ5が吸引され、ハウジング7に流入する(S143)。その際、タンク6のスラリ5の水位は下がる。
図8に示すように、大気解放された管10-3から、開状態のバルブ120、管10、10-4を経由し、タンク6に通じる経路を確保している。これによりタンク6の内部を大気に解放しているので、タンク6の内部における水位降下によって不足する気体を大気から補充できるので、スラリの吸引を短時間に行うことができる。
【0082】
(工程C23)作業者は、ハウジング7にスラリ5が十分な量格納されたことを確認したら(S144でYESの場合)、ポンプ9の減圧動作をオフにし(S145)、これ以上スラリ5をハウジング7に流入させないようにする。
【0083】
以上が態様2のスラリ流入工程(S14)の詳細である。なお、工程C21において、(S141)でバルブ110を開状態とするとしたが、バルブ110を閉状態から開状態とするタイミングは、工程C22においてポンプ9の減圧動作をオン(S142)にした後であってもよい。
【0084】
<<第2実施形態のスラリ排出工程の詳細>>
第2実施形態(態様2)に係るコーティング方法において、ハウジング7に格納されたスラリ5をタンク6に排出して戻すスラリ排出工程(S16)は、下記の通りである。ここで、スラリ排出工程(S16)は、自然排出工程と減圧排出工程の2つの方法がある。自然排出工程は、スラリ5をハウジング7から排出する際に重力を利用したスラリ排出方法である。前述の第1実施形態のスラリ排出工程の詳細(工程E11及び工程E12)でのスラリ排出工程は、自然排出工程である。減圧排出工程は、スラリ5をハウジング7から排出する際に減圧手段であるポンプ9の減圧又は加圧の能力を利用したスラリ排出方法である。なお、スラリ排出工程は、自然排出工程又は減圧排出工程の何れかの方法、または両者を併用する方法を採用してもよい。例えば、自然排出工程後に、減圧排出工程を行ってもよく、逆の工程順序で行ってもよい。
【0085】
<<<第2実施形態のスラリ排出工程の詳細(自然排出工程)>>>
図9は、第2実施形態に係るコーティング方法におけるスラリ排出工程の詳細のうち自然排出工程を示すフローチャートである。態様2のスラリ排出工程(S16)での自然排出工程は、下記の通りである。
【0086】
(工程E21)作業者は、バルブ80を閉状態とし、また、バルブ81を開状態とする(S1601)。これにより大気解放される管8-2からハウジング7に大気が導入され、ハウジング7内部の気圧は大気圧に戻る。
【0087】
(工程E22)作業者は、バルブ100、130を閉状態とし、バルブ110、120を開状態とする(S1602)。これにより、ハウジング7に入っていたスラリ5が大気圧と重力の働きにより、タンク6に戻る。なお、タンク6内部のスラリ5の水位上昇によって不要となった気体は、管10-4の一部、管10の一部、バルブ120を介して管10-3から大気に解放されることから、スラリの自然排出を短時間に行うことができる。
以上が態様2のスラリ排出工程(S16)での自然排出工程である。
【0088】
<<<第2実施形態のスラリ排出工程の詳細(減圧排出工程)>>>
図10は、第2実施形態に係るコーティング方法におけるスラリ排出工程の詳細のうち減圧排出工程を示すフローチャートである。態様2のスラリ排出工程(S16)での減圧排出工程は、下記の通りである。
【0089】
(工程E201)作業者は、バルブ81を開状態とする(S1611)。これにより、大気解放される管8-2からハウジング7に大気が導入され、ハウジング7内部の気圧は大気圧に戻る。
【0090】
(工程E202)作業者は、バルブ80、120、110を閉状態とし、バルブ130、100を開状態とする(S1612)。
【0091】
(工程E203)作業者は、ポンプ9の減圧動作をオンにする(S1613)。これにより工程E202にて形成した管路の気圧が減圧状態となるため、ハウジング7に残っているスラリ5が排出される。なお、スラリ5は重力の働きにより、管10が管10-4より分岐する箇所10-40からタンク6に落下する。また、タンク6内部のスラリ5の水位上昇によって不要となった気体は、管10-4を介してポンプ9が吸引する。以上が態様2のスラリ排出工程(S16)での減圧排出工程である。
【0092】
(第3実施形態)
以下、本発明に係る実施の形態である第3実施形態(以下、態様3と称する場合がある。)の水処理フィルタのコーティング装置及びコーティング方法について、図面を参照して説明する。態様3のコーティング装置及びコーティング方法においても、フィルタ部材の流路の等価直径をd、ハウジングの側壁部の内側面とフィルタ部材の外側面との隙間をLとした場合、隙間Lがd以下となる条件を満たす構成又は工程を含んでいる。なお、コーティング対象となるフィルタ部材については、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0093】
<第3実施形態のハウジング(弾性体側壁ハウジング)>
以下、第3実施形態のコーティング装置におけるハウジングの構成について説明する。態様3のハウジングは、その側壁部の内側面の少なくとも一部が弾性体素材からなる。なお、以下の説明では側壁部の一部が弾性体からなるハウジングを弾性体側壁ハウジングと称する場合がある。弾性体側壁ハウジングは、フィルタ部材とハウジングの中心が一致しないという両者の設置位置の問題を解消できる。
【0094】
以下、
図11及び
図12により弾性体側壁ハウジングの構成について説明する。
図11は、第3実施形態に係るコーティング装置のハウジングであって弾性体側壁ハウジングの外観を示した斜視図である。
図12は
図11に示す弾性体側壁ハウジングにフィルタ部材を挿入した状態を示す断面図である。態様3のハウジング71は、
図5に示す態様1のハウジング7の側壁7-2を、弾性体を含む側壁71-2fとした点で構成が相違し、それ以外の構成は、基本的に態様1のハウジング7と同様に構成されている。従って、弾性体を含む側壁71-2f以外の構成は、符号7を符号71に読み替えて説明を省略する。なお、側壁71-2fの外径と蓋71-1の外径とは略同一であってもよい。
【0095】
図12に示すように、弾性体を含む側壁71-2fは、弾性体パーツ71-2feと、剛体パーツ71-2frとから構成される。なお、側壁71-2fは、側壁全体を弾性体パーツ71-2feにより構成してもよい。剛体パーツ71-2frは、好適には外側にネジ溝を有し、内側にネジ溝を設けられた蓋71-1や底71-3にネジ締結により固定される。加えて、側壁71-2fは、水密性や気密性を向上させるために、円環形状のゴム状の弾性体71-10T、71-10Bを、蓋71-1、底71-3と剛体パーツ71-2frとで挟み込んでもよい。
【0096】
弾性体パーツ71-2feは、後述する変形性能の観点では柔軟なほうが好ましいものの、ネジ締結を用いたり、円環形状のゴム状の弾性体71-10T、71-10Bによって固定する場合は、固定力の確保の観点から、剛体であるほうが好ましい。また、側壁71-2fは、座屈によって折れてしまうとフィルタ部材1の出し入れの際の作業性に劣るため、蓋71-1が外れた状態で、自立できる程度の硬さであることが好ましい。
【0097】
また、ネジ締結で蓋71-1を固定する場合、作業者は側壁71-2fを把持するほうが作業性に優れる。このため、
図12の紙面上下方向で、剛体パーツ71-2frの長さは、蓋71-1の側壁の長さよりも長くすることで、蓋71-1を側壁71-2fに閉め込み終える(あるいは開け始める)際に、作業者が側壁71-2fを把持できる長さを確保できるので好ましい。
【0098】
なお、固定力を確保できるのであればネジ以外の締結手段を用いてもよい。また、水密性や気密性を向上させることができるのであれば、円環形状のゴム状の弾性体71-10T、71-10B以外の構成や固定方法を用いてもよい。ただし、フィルタ部材1を格納したり、取り出したりする必要があるため、蓋71-1と側壁71-2fとは、開閉自在な構造とすることが好ましい。
【0099】
弾性体パーツ71-2feは、コーティング処理でのスラリ流入工程又はスラリ排出工程において減圧排出工程を採用した場合のポンプ9の減圧動作時に、径方向で内側に向かって変形する。この変形によって、ハウジング71の側壁71-2fの内側面とフィルタ部材1の外側面との隙間Lが、数1又は数2に示すL≦dの条件を満足する。なお、この変形によって、弾性体パーツ71-2feがフィルタ部材1の外側面に接触する場合にも、隙間L=0mmであって、L≦dの条件を満足する。上述の通り、態様3のコーティング装置及びコーティング方法においても、弾性体側壁ハウジングの変形による隙間の減少により、フィルタ部材の流路の等価直径をd、ハウジングの側壁部の内側面とフィルタ部材の外側面との隙間をLとした場合、隙間Lがd以下となる条件を満たすことができる。これにより、前述の隙間の寸法とスラリの残留割合のばらつきとの関係の調査結果で説明した通り、スラリの残留割合のばらつきを低減できる。
【0100】
<<弾性体パーツの素材>>
弾性体側壁ハウジングの弾性体を含む側壁(71-2f)を構成する弾性体パーツ(71-2fe)は、上述の通り、適度な剛性や硬さを有しつつも十分な変形性能を有し、しかもスラリに対して化学的に耐性を有することが好ましい。変形性能や化学的な耐性など弾性体パーツとして必要な機能は、素材と、その弾性力や厚さを適宜選択することで得られる。弾性体パーツに適する素材の一例としては、スラリに常温で1週間連続して接触後の素材の厚さの変化量が1%以下であり、かつ弾性率を表すヤング率の低下が5%以下である素材である。こうした特徴を持つ素材としては、フッ素ゴムの組成群から1種又は複数種を組み合わせた素材や、フッ素ゴムのパーフルオロエラストマーに分類されるKalrez(「Kalrez」はDupont社の登録商標)が一例として考えられる。
【0101】
また、弾性体パーツの素材は、ダイラタンシー特性を有する素材であってもよい。なお、ダイラタンシー特性とは、応力が働いている間は弾性体であり、応力がなくなると流体的に流動する特性である。このような特性を持つ素材を弾性体パーツに採用することで、コーティング処理での減圧動作の際は、弾性体として内側に変形するが、コーティング処理が終了し、弾性体側壁ハウジングの内部が大気圧になると流動性をとり戻して、自重によって内側の変形が元に戻るので好ましい。ダイラタンシー特性を持ち、かつスラリへの耐性を持つ素材としてはポリウレタン(PU)が考えられる。
【0102】
また、弾性体パーツは、複数の異なる素材からなる多層構造により構成してもよい。例えば、スラリに直接接する弾性体パーツの内側面の表面は、個体性組成(例えばポリウレタン)の層を有し、ポリウレタン層より内部の層には、よりダイラタンシー特性が強い、液状体塑性(例えば、エポキシ樹脂やポリウレタン(PU)、エンジニアリングプラスチック等の樹脂やグリセリンやポリビニルアルコール(PVA)などの多価アルコールからなる群。より好ましくは個体性組成よりダイラタンシー特性が高い組成からなる素材)の層、を有する多層構造により構成してもよい。
【0103】
<第3実施形態のコーティング装置>
以下、第3実施形態(態様3)のコーティング装置について説明する。態様3のコーティング装置は、基本的には態様1又は態様2のコーティング装置と同様に構成されるので、以下で説明する態様3のコーティング装置における好ましい構成要素以外は、その詳細な説明は省略する。
【0104】
態様3のコーティング装置においては、ハウジングの内部を加圧可能な加圧手段を設置することが好ましい。具体的には、例えば、
図8に示す態様2のコーティング装置に加えて、管8-2にハウジングの内部を加圧可能な加圧手段であるポンプを設置することが好ましい。弾性体側壁ハウジングから構成されたコーティング装置でコーティング処理を実施する場合、スラリ排出工程でハウジング71の内部の気圧を大気圧に戻した後も、弾性体パーツ71-2feがフィルタ部材1と接触したままとなる場合があり、その後、ハウジング71からフィルタ部材1を取り出す作業に支障をきたす場合がある。上記したように、ハウジングの内部を加圧可能なポンプを設置し、スラリ排出工程の後、ハウジング71からフィルタ部材1を取り出す工程の前に、当該ポンプの加圧動作をオンにしてハウジング71の内部を加圧すれば、弾性体パーツ71-2feが外側に変形してフィルタ部材1から離間するので、ハウジング71からのフィルタ部材1の取り出しが容易となる。
【0105】
また、態様3のコーティング装置においては、ハウジングは剛体側壁ハウジングと弾性体側壁ハウジングの両方の機能を備えてもよい。具体的には、例えば、ハウジングは弾性体パーツ71-2feを含む側壁71-2fの外側に、態様1で説明した剛体からなる側壁7-2(
図5に示す)を配置して構成してもよい。剛体からなる側壁7-2を外側に配置することで、ハウジングにスラリを満たした際に、弾性体を含む側壁71-2fが外側に変形することを抑止でき、また、蓋71-1を支えることができる。
【0106】
<第3実施形態のコーティング方法>
以下、第3実施形態(態様3)のコーティング方法について説明する。態様3のコーティング方法は、基本的には態様1のコーティング方法と同様であって、前述の
図3のフローチャートに従って工程A~工程Fを経てコーティング処理を実施するが、弾性体側壁ハウジングを内側に変形させる点で、スラリ流入工程及びスラリ排出工程が相違している。以下、態様3におけるスラリ流入工程の詳細及びスラリ排出工程の詳細について、態様1及び態様2と、相違する工程についてのみ説明し同様の工程の説明は省略する。
【0107】
<<第3実施形態のスラリ流入工程の詳細>>
図13は、第3実施形態に係るコーティング方法におけるスラリ流入工程の詳細を示すフローチャートである。態様3のスラリ流入工程(S14)は、ハウジング71へのスラリ5の流入に先立って、弾性体側壁ハウジングの側壁71-2fの弾性体パーツ71-2feを内側に変形させる。即ち、態様1又は態様2のスラリ流入工程(S14)のうち、夫々、工程C11又は工程C21の前に、以下に説明する工程C31~工程C33を行う。態様1及び態様2のコーティング装置の構成の相違により、態様3のスラリ流入工程で開閉するバルブが異なるので、以下の説明では、態様1のコーティング装置で開閉するバルブを[ ]内に表記し、態様2のコーティング装置で開閉するバルブを[ ]外に表記する。
図13に示すように、態様3のスラリ流入工程(S14)は、下記の通りである。
【0108】
(工程C31)作業者は、[バルブ110]、バルブ100、110、130、81を閉状態とし、[バルブ80]、バルブ80を開状態とする(S1401)。
【0109】
(工程C32)作業者は、ポンプ9の減圧動作をオンにする(S1402)。これにより、ハウジング7の内部が減圧されて(S1403)、弾性体パーツ71-2feを内側に変形させる。
【0110】
(工程C33)作業者は、弾性体パーツ71-2feの変形をチェックして(S1404)、弾性体パーツ71-2feが十分に変形したことを確認後(S1404でYESの場合)、[バルブ110]、バルブ110、120を開状態とする(S1405)。
【0111】
以上が態様3のスラリ流入工程(S14)の詳細である。なお、態様2のコーティング装置を使用して態様3のスラリ流入工程を行う場合、工程C33において、(S1405)でバルブ120を閉状態から開状態とするタイミングは、(S1404)で弾性体パーツ71-2feが十分に変形したことを確認する前であってもよい。
【0112】
<<第3実施形態のスラリ排出工程の詳細>>
態様3のスラリ排出工程(S16)は、基本的には態様1又は態様2のスラリ排出工程と同様の工程でハウジングからスラリを排出するが、前述した自然排出工程と減圧排出工程のうち、弾性体側壁ハウジングを内側に変形させることができる点で、減圧排出工程を採用することが好ましい。しかし、自然排出工程の場合であっても、フィルタ部材の外側面と弾性体側壁ハウジングの内側面との間のスラリ流量がフィルタ部材の流路の流量よりも少ない場合は、自然排出工程を採用してもよい。
【0113】
また、態様3のスラリ排出工程において減圧排出工程を採用した場合には、態様2の減圧排出工程における、バルブ81を開状態としてハウジング71内部の気圧を大気圧とする工程E201の前に、ポンプ9の減圧動作をオンにして、ハウジング71の内部を減圧してもよい。これにより、工程E201の前に、フィルタ部材1の外側面とハウジング71の側壁71-2fの内側面との間のスラリが排出される一方で、ハウジング71の内部に大気が補充されないため、弾性体パーツ71-2feをより内側に変形させることができる。
【0114】
上記で説明した実施の形態によれば、隔壁部材に多孔質セラミックを用いた水処理フィルタにおいて、この多孔質セラミックが外皮に覆われずに外側面に露出しているような構成のフィルタ部材であっても、隔壁部材の多孔質セラミックにスラリを確実にコーティングできるようになった。これにより、水処理フィルタに外皮を備えなくても使用することが可能となり、外皮が劣化して剥がれ落ちることによる水質汚染の問題を無くすことができるようになった。
【0115】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記した実施の形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0116】
1:フィルタ部材、2:隔壁、3:流路、、4:封止部、5:スラリ、6:タンク、7、71:ハウジング、8、8-2、10、10-2、10-3、10-4:管(連通手段)、80、81、100、110、120、130:バルブ(連通手段)、9:ポンプ(減圧手段)、200:コーティング装置