IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社KOKUSAI ELECTRICの特許一覧

特許7036832半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法
<>
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図1
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図2
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図3
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図4
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図5
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図6
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図7
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図8
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図9
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図10
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図11
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図12
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図13
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図14
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図15
  • 特許-半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置、プログラム及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/285 20060101AFI20220308BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20220308BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
H01L21/285 C
H01L21/285 301
C23C16/34
C23C16/455
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019542974
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2018011719
(87)【国際公開番号】W WO2019058608
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2017183406
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】小川 有人
(72)【発明者】
【氏名】清野 篤郎
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-067869(JP,A)
【文献】特開2003-077864(JP,A)
【文献】特表2003-524888(JP,A)
【文献】特表2005-503484(JP,A)
【文献】特表2002-525432(JP,A)
【文献】特開2011-168881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205
H01L 21/28-21/288
H01L 21/44-21/445
H01L 29/40-29/51
C23C 16/34
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内の基板に対して、金属とハロゲンを含む第1ガスを供給し、前記第1ガスの供給開始時もしくは開始後に、シリコンおよび水素を含み、ハロゲンを含まない還元ガスの供給を開始し、前記第1ガスと前記還元ガスと、を同時に供給するタイミングと、前記第1ガスの供給停止後に前記還元ガスの供給を継続するタイミングとを有し、少なくとも前記還元ガスを供給する間の前記処理室内の圧力を、シリコン原子が実質的に含まれない膜が形成されるような範囲内の値とする第1の工程と、
前記処理室内に残留する前記第1ガスおよび前記還元ガスを除去する第2の工程と、
前記基板に対して、窒素と水素を含む第2ガスを供給する第3の工程と、
前記処理室内に残留する前記第2ガスを除去する第4の工程と、
を順次繰り返して、前記基板上に、シリコン原子を実質的に含まない金属窒化膜を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1、2、3、4の工程を順に複数回繰り返す請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程では、前記基板に対して前記還元ガスを供給している状態で前記第1ガスを止める請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程では、前記基板に対して前記還元ガスを供給していない状態で前記第1ガスを供給し始める請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の工程では、前記基板に対して前記還元ガスを供給していない状態で前記第1ガスを供給し始め、前記基板に対して前記還元ガスを供給している状態で前記第1ガスを止める請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の工程では、少なくとも前記還元ガスを供給する間の前記処理室内の圧力を130Pa以上3990Pa未満の範囲内の値とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の工程では、少なくとも前記還元ガスを供給する間の前記処理室内の圧力を500Pa以上2660Pa未満の範囲内の値とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記還元ガスは、モノシラン、ジシラン、トリスジメチルアミノシランのいずれかである請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1ガスは、チタン元素を含み、前記金属窒化膜はチタン窒化膜である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1の工程では、前記第1ガスの供給開始後、0.01以上5秒以下経過後に前記還元ガスを供給する請求項1乃至9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1の工程では、前記還元ガスを供給している間の圧力を前記第1ガスのみを供給している間よりも高くする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1の工程は、前記還元ガスの供給時間を0.01秒以上60秒以下とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
基板を収容する処理室と、
前記処理室内に、金属とハロゲンを含む第1ガス、シリコンおよび水素を含み、ハロゲンを含まない還元ガス、窒素と水素を含む第2ガスを供給するガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
前記ガス供給系、前記排気系を制御して、前記処理室内に収容された基板に対して、前記第1ガスを供給し、前記第1ガスの供給開始時もしくは開始後に、前記還元ガスの供給を開始し、前記第1ガスと前記還元ガスと、を同時に供給するタイミングと、前記第1ガスの供給停止後に前記還元ガスの供給を継続するタイミングとを有し、少なくとも前記還元ガスを供給する間の前記処理室内の圧力を、シリコン原子が実質的に含まれない膜が形成されるような範囲内の値とする第1の処理と、前記処理室内に残留する前記第1ガスおよび前記還元ガスを除去する第2の処理と、前記基板に対して、前記第2ガスを供給する第3の処理と、前記処理室内に残留する前記第2ガスを除去する第4の処理と、を順次繰り返して、前記基板上に、シリコン原子を実質的に含まない金属窒化膜を形成するよう制御するように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項14】
基板処理装置の処理室内の基板に対して、金属とハロゲンを含む第1ガスを供給し、前記第1ガスの供給開始時もしくは開始後に、シリコンおよび水素を含み、ハロゲンを含まない還元ガスの供給を開始し、前記第1ガスと前記還元ガスと、を同時に供給するタイミングと、前記第1ガスの供給停止後に前記還元ガスの供給を継続するタイミングとを有し、少なくとも前記還元ガスを供給する間の前記処理室内の圧力を、シリコン原子が実質的に含まれない膜が形成されるような範囲内の値とする第1の手順と、
前記処理室内に残留する前記第1ガスおよび前記還元ガスを除去する第2の手順と、
前記基板に対して、窒素と水素を含む第2ガスを供給する第3の手順と、
前記処理室内に残留する前記第2ガスを除去する第4の手順と、
を順次繰り返して、前記基板上に、シリコン原子を実質的に含まない金属窒化膜を形成する手順をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項15】
処理室内の基板に対して、金属とハロゲンを含む第1ガスを供給し、前記第1ガスの供給開始時もしくは開始後に、シリコンおよび水素を含み、ハロゲンを含まない還元ガスの供給を開始し、前記第1ガスと前記還元ガスと、を同時に供給するタイミングと、前記第1ガスの供給停止後に前記還元ガスの供給を継続するタイミングとを有し、少なくとも前記還元ガスを供給する間の前記処理室内の圧力を、シリコン原子が実質的に含まれない膜が形成されるような範囲内の値とする第1の工程と、
前記処理室内に残留する前記第1ガスおよび前記還元ガスを除去する第2の工程と、
前記基板に対して、窒素と水素を含む第2ガスを供給する第3の工程と、
前記処理室内に残留する前記第2ガスを除去する第4の工程と、
を順次繰り返して、前記基板上に、シリコン原子を実質的に含まない金属窒化膜を形成する基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、基板処理装置プログラム及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元構造を持つNAND型フラッシュメモリのコントロールゲートには例えばタングステン(W)膜が用いられており、このW膜の成膜にはWを含む六フッ化タングステン(WF6)ガスが用いられている。また、このW膜と絶縁膜との間にバリア膜として窒化チタン(TiN)膜を設けることがある。このTiN膜は、W膜と絶縁膜の密着性を高める役割をすると共に、W膜中に含まれるフッ素(F)が絶縁膜へ拡散することを防止する役割を担い、成膜は四塩化チタン(TiCl4)ガスとアンモニア(NH3)ガスを用いて行われるのが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-6783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、バリア膜として用いられているTiN膜は、TiCl4ガスとNH3ガスを用いて成膜されるが、成膜過程で発生する副生成物として塩酸(HCl)がある。このHClは、TiN膜の表面に吸着し、成膜速度の低下等に繋がる。
【0005】
本発明は、成膜過程で発生する副生成物と反応する還元ガスを処理室内に供給して処理室外に排出することにより、金属膜の成膜阻害要因を低減することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
処理室内の基板に対して、金属含有ガスと、シリコンおよび水素を含み、ハロゲンを含まない還元ガスと、を同時に供給するタイミングを有し、少なくとも前記還元ガスを供給する間の前記処理室内の圧力を130Pa以上3990Pa未満の範囲内の値とする第1の工程と、
前記処理室内に残留する前記金属含有ガスおよび前記還元ガスを除去する第2の工程と、
前記基板に対して、窒素含有ガスを供給する第3の工程と、
前記処理室内に残留する前記窒素含有ガスを除去する第4の工程と、
を順次繰り返して、前記基板上に、シリコン原子を実質的に含まない金属窒化膜を形成する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成膜過程で発生する副生成物と反応する還元ガスを処理室内に供給して処理室外に排出することにより、金属膜の成膜阻害要因を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略を示す縦断面図である。
図2図1におけるA-A線概略横断面図である。
図3】本発明の一実施形態における基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態におけるガス供給のタイミングを示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態におけるガス供給のタイミングの変形例を示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態におけるガス供給のタイミングを示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態におけるガス供給のタイミングの変形例を示す図である。
図8】本発明の第3の実施形態におけるガス供給のタイミングを示す図である。
図9】本発明の第3の実施形態におけるガス供給のタイミングの変形例を示す図である。
図10】本発明の第4の実施形態におけるガス供給のタイミングを示す図である。
図11】本発明の第4の実施形態におけるガス供給のタイミングの変形例を示す図である。
図12】本発明の比較例におけるガス供給のタイミングを示す図である。
図13】(A)は、本実施例による成膜速度と比較例による成膜速度を示す図であって、(B)は、本実施例により形成されたTiN膜の膜組成と比較例により形成されたTiN膜の膜組成を示す図である。
図14】本実施例により形成されたTiN膜と比較例により形成されたTiN膜のXPSスペクトルを示す図である。(A)はチタン(Ti2p)のXPSスペクトルを示し、(B)は窒素(N1s)のXPSスペクトルを示し、(C)は塩素(Cl2p)のXPSスペクトルを示す。
図15】SiH4ガス供給時の処理室内の圧力と屈折率と膜厚との関係を示す図である。
図16】SiH4ガスの供給時間の臨界値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の第1の実施形態>
以下、図1~4を参照しながら説明する。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
基板処理装置10は、加熱手段(加熱機構、加熱系)としてのヒータ207が設けられた処理炉202を備える。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成するアウタチューブ203が配設されている。アウタチューブ203は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウタチューブ203の下方には、アウタチューブ203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)などの金属からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部と、アウタチューブ203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、アウタチューブ203は垂直に据え付けられた状態となる。
【0012】
アウタチューブ203の内側には、反応容器を構成するインナチューブ204が配設されている。インナチューブ204は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。主に、アウタチューブ203と、インナチューブ204と、マニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部(インナチューブ204の内側)には処理室201が形成されている。
【0013】
処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で鉛直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。
【0014】
処理室201内には、ノズル410,420,430がマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430には、ガス供給管310,320,330が、それぞれ接続されている。ただし、本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。
【0015】
ガス供給管310,320,330には上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322,332がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管310,320,330には、開閉弁であるバルブ314,324,334がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320,330のバルブ314,324,334の下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管510,520,530がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520,530には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC512,522,532及び開閉弁であるバルブ514,524,534がそれぞれ設けられている。
【0016】
ガス供給管310,320,330の先端部にはノズル410,420,430がそれぞれ連結接続されている。ノズル410,420,430は、L字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430の垂直部は、インナチューブ204の径方向外向きに突出し、かつ鉛直方向に延在するように形成されているチャンネル形状(溝形状)の予備室201aの内部に設けられており、予備室201a内にてインナチューブ204の内壁に沿って上方(ウエハ200の配列方向上方)に向かって設けられている。
【0017】
ノズル410,420,430は、処理室201の下部領域から処理室201の上部領域まで延在するように設けられており、ウエハ200と対向する位置にそれぞれ複数のガス供給孔410a,420a,430aが設けられている。これにより、ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aからそれぞれウエハ200に処理ガスを供給する。このガス供給孔410a,420a,430aは、インナチューブ204の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410a,420a,430aは上述の形態に限定されない。例えば、インナチューブ204の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410a,420a,430aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0018】
ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aは、後述するボート217の下部から上部までの高さの位置に複数設けられている。そのため、ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aから処理室201内に供給された処理ガスは、ボート217の下部から上部までに収容されたウエハ200の全域に供給される。ノズル410,420,430は、処理室201の下部領域から上部領域まで延在するように設けられていればよいが、ボート217の天井付近まで延在するように設けられていることが好ましい。
【0019】
ガス供給管310からは、処理ガスとして、金属元素を含む原料ガス(金属含有ガス)が、MFC312、バルブ314、ノズル410を介して処理室201内に供給される。原料としては、例えば金属元素としてのチタン(Ti)を含み、ハロゲン系原料(ハロゲン化物、ハロゲン系チタン原料)としての四塩化チタン(TiCl4)が用いられる。
【0020】
ガス供給管320からは、処理ガスとして、還元ガスが、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内に供給される。還元ガスとしては、例えばシリコン(Si)及び水素(H)を含み、ハロゲンを含まない還元ガスとしての例えばシラン(SiH4)ガスを用いることができる。SiH4は還元剤として作用する。
【0021】
ガス供給管330からは、処理ガスとして、反応ガスが、MFC332、バルブ334、ノズル430を介して処理室201内に供給される。反応ガスとしては、例えば窒素(N)を含むN含有ガスとしての例えばアンモニア(NH3)ガスを用いることができる。
【0022】
ガス供給管510,520,530からは、不活性ガスとして、例えば窒素(N2)ガスが、それぞれMFC512,522,532、バルブ514,524,534、ノズル410,420,430を介して処理室201内に供給される。以下、不活性ガスとしてN2ガスを用いる例について説明するが、不活性ガスとしては、N2ガス以外に、例えば、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いてもよい。
【0023】
主に、ガス供給管310,320,330、MFC312,322,332、バルブ314,324,334、ノズル410,420,430により処理ガス供給系が構成されるが、ノズル410,420,430のみを処理ガス供給系と考えてもよい。処理ガス供給系は単にガス供給系と称してもよい。ガス供給管310から原料ガスを流す場合、主に、ガス供給管310、MFC312、バルブ314により原料ガス供給系が構成されるが、ノズル410を原料ガス供給系に含めて考えてもよい。また、ガス供給管320から還元ガスを流す場合、主に、ガス供給管320、MFC322、バルブ324により還元ガス供給系が構成されるが、ノズル420を還元ガス供給系に含めて考えてもよい。また、ガス供給管330から反応ガスを流す場合、主に、ガス供給管330、MFC332、バルブ334により反応ガス供給系が構成されるが、ノズル430を反応ガス供給系に含めて考えてもよい。ガス供給管330から反応ガスとして窒素含有ガスを供給する場合、反応ガス供給系を窒素含有ガス供給系と称することもできる。また、主に、ガス供給管510,520,530、MFC512,522,532、バルブ514,524,534により不活性ガス供給系が構成される。
【0024】
本実施形態におけるガス供給の方法は、インナチューブ204の内壁と、複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内の予備室201a内に配置したノズル410,420,430を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420,430のウエハと対向する位置に設けられた複数のガス供給孔410a,420a,430aからインナチューブ204内にガスを噴出させている。より詳細には、ノズル410のガス供給孔410a、ノズル420のガス供給孔420a及びノズル430のガス供給孔430aにより、ウエハ200の表面と平行方向に向かって原料ガス等を噴出させている。
【0025】
排気孔(排気口)204aは、インナチューブ204の側壁であってノズル410,420,430に対向した位置に形成された貫通孔であり、例えば、鉛直方向に細長く開設されたスリット状の貫通孔である。ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aから処理室201内に供給され、ウエハ200の表面上を流れたガスは、排気孔204aを介してインナチューブ204とアウタチューブ203との間に形成された隙間からなる排気路206内に流れる。そして、排気路206内へと流れたガスは、排気管231内に流れ、処理炉202外へと排出される。
【0026】
排気孔204aは、複数のウエハ200と対向する位置に設けられており、ガス供給孔410a、420a、430aから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向に向かって流れた後、排気孔204aを介して排気路206内へと流れる。排気孔204aはスリット状の貫通孔として構成される場合に限らず、複数個の孔により構成されていてもよい。
【0027】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245,APC(Auto Pressure Controller)バルブ243,真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気及び真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができる。主に、排気孔204a,排気路206,排気管231,APCバルブ243及び圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0028】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に鉛直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219における処理室201の反対側には、ウエハ200を収容するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、アウタチューブ203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって鉛直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入及び搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217及びボート217に収容されたウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0029】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が水平姿勢で多段(図示せず)に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。ただし、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料からなる筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0030】
図2に示すように、インナチューブ204内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410,420及び430と同様にL字型に構成されており、インナチューブ204の内壁に沿って設けられている。
【0031】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a,RAM(Random Access Memory)121b,記憶装置121c,I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b,記憶装置121c,I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0032】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する半導体装置の製造方法の手順や条件などが記載されたプロセスレシピなどが、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ)をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピ及び制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0033】
I/Oポート121dは、上述のMFC312,322,332,512,522,532、バルブ314,324,334,514,524,534、圧力センサ245、APCバルブ243、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0034】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピ等を読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC312,322,332,512,522,532による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324,334,514,524,534の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作及びAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止、回転機構267によるボート217の回転及び回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、ボート217へのウエハ200の収容動作等を制御するように構成されている。
【0035】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0036】
(2)基板処理工程(成膜工程)
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、ウエハ200上に、例えばゲート電極を構成する金属膜を形成する工程の一例について、図4を用いて説明する。金属膜を形成する工程は、上述した基板処理装置10の処理炉202を用いて実行される。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0037】
本実施形態による基板処理工程(半導体装置の製造工程)では、
処理室201内のウエハ200に対して、金属含有ガスであるTiCl4ガスと、SiおよびHを含み、ハロゲンを含まない還元ガスであるSiH4ガスと、を同時に供給するタイミングを有し、少なくともSiH4ガスを供給する間の処理室201内の圧力を130Pa以上3990Pa未満の範囲内の値とする第1の工程と、
処理室201内に残留するTiCl4ガスおよびSiH4ガスを除去する第2の工程と、
ウエハ200に対して、窒素含有ガスであるNH3ガスを供給する第3の工程と、
処理室201内に残留するNH3ガスを除去する第4の工程と、
を順次繰り返して、ウエハ200上に、Si原子を実質的に含まないTiN膜を形成する。
【0038】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体」を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面」を意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0039】
また、本明細書において「Si原子を含まないTiN膜」とは、TiN膜中にSi原子を全く含まない場合のほか、Si原子をほぼ含まない場合や、Si原子を実質的に含まない場合等、TiN膜中のSi含有量が極めて低い場合も含まれ、例えばTiN膜中のSi含有量が4%程度であって、好ましくは4%以下である場合も含まれる。
【0040】
(ウエハ搬入)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端開口を閉塞した状態となる。
【0041】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0042】
[第1の工程]
(TiCl4ガス供給)
バルブ314を開き、ガス供給管310内に原料ガスであるTiCl4ガスを流す。TiCl4ガスは、MFC312により流量調整され、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してTiCl4ガスが供給される。このとき同時にバルブ514を開き、ガス供給管510内にN2ガス等の不活性ガスを流す。ガス供給管510内を流れたN2ガスは、MFC512により流量調整され、TiCl4ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル420,430内へのTiCl4ガスの侵入を防止するために、バルブ524,534を開き、ガス供給管520,530内にN2ガスを流す。N2ガスは、ガス供給管320,330、ノズル420,430を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0043】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC312で制御するTiCl4ガスの供給流量は、例えば0.1~2.0slmの範囲内の流量とする。MFC512,522,532で制御するN2ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~20slmの範囲内の流量とする。このときヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば300~600℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。
【0044】
このとき処理室201内に流しているガスはTiCl4ガスとN2ガスのみである。TiCl4ガスの供給により、ウエハ200(表面の下地膜)上にTi含有層が形成される。Ti含有層は、Clを含むTi層であってもよいし、TiCl4の吸着層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。
【0045】
(SiH4ガス供給)
TiCl4ガスの供給開始から所定時間経過後であって例えば0.01~5秒後に、バルブ324を開き、ガス供給管320内に還元ガスであるSiH4ガスを流す。SiH4ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内にN2ガス等の不活性ガスを流す。ガス供給管520内を流れたN2ガスは、MFC522により流量調整され、SiH4ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル430内へのTiCl4ガスとSiH4ガスの侵入を防止するために、バルブ534を開き、ガス供給管530内にN2ガスを流す。N2ガスは、ガス供給管330、ノズル430を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してTiCl4ガスとSiH4ガスとN2ガスが同時に供給されることとなる。すなわち少なくともTiCl4ガスとSiH4ガスとは同時に供給されるタイミングを有する。
【0046】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば130~3990Pa、好ましくは500~2660Pa、より好ましくは900~1500Paの範囲内の圧力とする。処理室201内の圧力が130Paより低いと、SiH4ガスに含まれるSiがTi含有層に進入し、成膜されるTiN膜に含まれる膜中のSi含有率が高くなってTiSiN膜となってしまう可能性がある。処理室201内の圧力が3990Paより高い場合も同様に、SiH4ガスに含まれるSiがTi含有層に進入し、成膜されるTiN膜に含まれる膜中のSi含有率が高くなってTiSiN膜となってしまう可能性がある。このように、処理室201内の圧力は低すぎても高すぎても、成膜される膜の元素組成が変化してしまう。MFC322で制御するSiH4ガスの供給流量は、例えば0.1~5slm、好ましくは0.5~3slm、より好ましくは1~2slmの範囲内の流量とする。MFC512,522,532で制御するN2ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.01~20slm、好ましくは0.1~10slm、より好ましくは0.1~1slmの範囲内の流量とする。このときヒータ207の温度は、TiCl4ガス供給ステップと同様の温度に設定する。
【0047】
TiCl4ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.01~10秒後に、ガス供給管310のバルブ314を閉じて、TiCl4ガスの供給を停止する。つまり、TiCl4ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~10秒の範囲内の時間とする。このとき、ノズル410,430内へのSiH4ガスの侵入を防止するために、バルブ514,534を開き、ガス供給管510,530内にN2ガスを流す。N2ガスは、ガス供給管310,330、ノズル410,430を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してSiH4ガスとN2ガスが供給されることとなる。
【0048】
[第2の工程]
(残留ガス除去)
SiH4ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.01~60秒後、好ましくは0.1~30秒後、より好ましくは1~20秒後にバルブ324を閉じて、SiH4ガスの供給を停止する。つまり、SiH4ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~60秒、好ましくは0.1~30秒、より好ましくは1~20秒の範囲内の時間とする。SiH4ガスをウエハ200に対して供給する時間を0.01秒より短くすると、成長阻害要因であるHClが十分にSiH4ガスにより還元されずTi含有層に残留してしまう可能性がある。SiH4ガスをウエハ200に対して供給する時間を60秒より長くすると、SiH4ガスに含まれるSiがTi含有層に進入し、成膜されるTiN膜に含まれる膜中のSi含有率が高くなってTiSiN膜となってしまう可能性がある。このとき排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはTi含有層形成に寄与した後のTiCl4ガスとSiH4ガスを処理室201内から排除する。このときバルブ514,524,534は開いたままとして、N2ガスの処理室201内への供給を維持する。N2ガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留する未反応もしくはTi含有層形成に寄与した後のTiCl4ガスとSiH4ガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。ここで、成長阻害要因であるHClがSiH4と反応し、四塩化ケイ素(SiCl4)とH2として処理室201内から排出される。
【0049】
[第3の工程]
(NH3ガス供給)
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ334を開き、ガス供給管330内に、反応ガスとしてNH3ガスを流す。NH3ガスは、MFC332により流量調整され、ノズル430のガス供給孔430aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、NH3ガスが供給される。このとき同時にバルブ534を開き、ガス供給管530内にN2ガスを流す。ガス供給管530内を流れたN2ガスは、MFC532により流量調整される。N2ガスはNH3ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル410,420内へのNH3ガスの侵入を防止するために、バルブ514,524を開き、ガス供給管510,520内にN2ガスを流す。N2ガスは、ガス供給管310,320、ノズル410,420を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0050】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC332で制御するNH3ガスの供給流量は、例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。MFC512,522,532で制御するN2ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。NH3ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~30秒の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、TiCl4ガス供給ステップと同様の温度に設定する。
【0051】
このとき処理室201内に流しているガスは、NH3ガスとN2ガスのみである。NH3ガスは、第1の工程でウエハ200上に形成されたTi含有層の少なくとも一部と置換反応する。置換反応の際には、Ti含有層に含まれるTiとNH3ガスに含まれるNとが結合して、ウエハ200上にTiとNとを含みSiを実質的に含まないTiN層が形成される。
【0052】
[第4の工程]
(残留ガス除去)
TiN層を形成した後、バルブ334を閉じて、NH3ガスの供給を停止する。
そして、上述した第2の工程と同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくはTiN層の形成に寄与した後のNH3ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。
【0053】
(所定回数実施)
上記した第1の工程~第4の工程を順に行うサイクルを1回以上(所定回数(n回))行うことにより、ウエハ200上に、所定の厚さ(例えば0.5~5.0nm)のTiN膜を形成する。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。
【0054】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ガス供給管510,520,530のそれぞれからN2ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0055】
(ウエハ搬出)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口される。そして、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0056】
(3)第1の実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を得ることができる。
(a)成膜中に発生し、成膜速度を低下させるHClを効率よく排出でき、成膜速度を上げることができる。
(b)抵抗率を下げることができる。
(c)耐酸化性を向上させる。
【0057】
(4)変形例
上述した第1の実施形態の変形例では、図5に示すように、上述した第1の工程において、TiCl4ガス供給と同時にSiH4ガス供給を開始し、TiCl4ガス供給を停止してからSiH4ガス供給を停止する点のみ異なり、第2の工程~第4の工程は上述した第1の実施形態と同様であって、本変形例においても、図4に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。上述した第1の実施形態及び変形例では、TiCl4ガス供給とSiH4ガス供給を同時に行った後に、TiCl4ガス供給を停止してからSiH4ガスを連続供給した後に停止する構成について説明したが、これに限らず、TiCl4ガス供給とSiH4ガス供給を同時に行った後に、同時にガス供給を停止して残留ガスを除去するようにしてもよい。ただし、上述した第1の実施形態及び変形例のTiCl4ガス供給を停止してからSiH4ガスを連続供給した後に停止する構成の方がSi濃度が低下する。これは、反応副生成物であるHClがウエハ表面に吸着する時間を与えず、SiH4と反応してSiCl4という形で排出されるためである。
【0058】
<第2の実施形態>
図6は、本実施形態に適用される第2の実施形態におけるガス供給のタイミングを示す図である。以下の実施形態では、ガス供給のタイミングについてのみ詳述する。
【0059】
[第1の工程]
(TiCl4ガス供給)
第1の実施形態の第1の工程におけるTiCl4ガス供給ステップと同様の処理手順により、TiCl4ガスを処理室201内に供給する。このとき処理室201内に流しているガスはTiCl4ガスとN2ガスのみであり、TiCl4ガスの供給により、ウエハ200(表面の下地膜)上にTi含有層が形成される。
【0060】
[第2の工程]
(残留ガス除去)
Ti含有層を形成した後、第1の実施形態における第2の工程と同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくはTi含有層形成に寄与した後のTiCl4ガスを処理室201内から排除する。
【0061】
[第3の工程]
(NH3ガス供給)
処理室201内の残留ガスを除去した後、第1の実施形態におけるNH3ガス供給ステップと同様の処理手順でNH3ガスを処理室201内に供給する。
【0062】
(SiH4ガス供給)
このとき、同時にバルブ324を開き、第1の実施形態におけるSiH4ガス供給ステップと同様の処理手順でSiH4ガスを処理室201内に供給する。なお、このとき、ノズル410内へのNH3ガスとSiH4ガスの侵入を防止するために、バルブ514を開き、ガス供給管510内にN2ガスを流す点が第1の実施形態におけるSiH4ガス供給ステップとは異なる。N2ガスは、ガス供給管310、ノズル410を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してSiH4ガスとNH3ガスとN2ガスが供給されることとなる。このときNH3ガスは、第1の工程でウエハ200上に形成されたTi含有層の少なくとも一部と置換反応する。置換反応の際には、Ti含有層に含まれるTiとNH3ガスに含まれるNとが結合して、ウエハ200上にTiとNとを含むTiN層が形成される。
【0063】
NH3ガスの供給を開始してから所定時間経過後に、ガス供給管330のバルブ334を閉じて、NH3ガスの供給を停止する。このとき、ノズル410,430内へのSiH4ガスの侵入を防止するために、バルブ514,534を開き、ガス供給管510,530内にN2ガスを流す。N2ガスは、ガス供給管310,330、ノズル410,430を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してSiH4ガスとN2ガスが供給されることとなる。
【0064】
[第4の工程]
(残留ガス除去)
TiN層を形成し、SiH4ガスの供給を開始してから所定時間経過後にバルブ324を閉じて、SiH4ガスの供給を停止する。このとき排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、上述した第2の工程と同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくはTiN層の形成に寄与した後のNH3ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。ここで、成長阻害要因であるHClがSiH4と反応し、SiCl4とH2として処理室201内から排出される。
【0065】
(所定回数実施)
上記した第1の工程~第4の工程を順に行うサイクルを1回以上(所定回数(n回))行うことにより、ウエハ200上に、所定の厚さのTiN層を形成する。
【0066】
(2)第2の実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を得ることができる。
(a)HClとNH3の反応によるNH4Clの形成を抑制することができる。
【0067】
(3)変形例
上述した第2の実施形態の変形例では、図7に示すように、上述した第3の工程において、NH3ガスの供給開始から所定時間経過後に還元ガスであるSiH4ガスの供給を開始し、NH3ガスの供給を停止してからSiH4ガスの供給を停止する点のみ異なり、第1の工程、第2の工程及び第4の工程は上述した第2の実施形態と同様であって、本変形例においても、図6に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。
【0068】
<第3の実施形態>
図8は、本発明の第3の実施形態におけるガス供給のタイミングを示す図である。
【0069】
[第1の工程]
(TiCl4ガス供給)
第1の実施形態の第1の工程におけるTiCl4ガス供給ステップと同様の処理手順により、TiCl4ガスを処理室201内に供給する。このとき処理室201内に流しているガスはTiCl4ガスとN2ガスのみであり、TiCl4ガスの供給により、ウエハ200(表面の下地膜)上にTi含有層が形成される。
【0070】
[第2の工程]
(SiH4ガス供給)
ガス供給管310のバルブ314を閉じて、TiCl4ガスの供給を停止する。このとき、同時にバルブ324を開き、第1の実施形態の第1の工程におけるSiH4ガス供給ステップと同様の処理手順により、ガス供給管320内に還元ガスであるSiH4ガスを流す。すなわち、TiCl4ガス供給とSiH4ガス供給を連続して行う。このとき、ウエハ200に対してSiH4ガスとN2ガスが供給されることとなる。
【0071】
[第3の工程]
(残留ガス除去)
バルブ324を閉じて、SiH4ガスの供給を停止する。つまり、このとき排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはTi含有層形成に寄与した後のTiCl4ガスとSiH4ガスを処理室201内から排除する。このときバルブ514,524,534は開いたままとして、N2ガスの処理室201内への供給を維持する。N2ガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留する未反応もしくはTi含有層形成に寄与した後のTiCl4ガスとSiH4ガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。ここで、成長阻害要因であるHClがSiH4と反応し、SiCl4とH2として処理室201内から排出される。
【0072】
[第4の工程]
(NH3ガス供給)
処理室201内の残留ガスを除去した後、第1の実施形態の第3の工程におけるNH3ガス供給ステップと同様の処理手順により、ガス供給管330内に、反応ガスとしてN含有ガスであるNH3ガスを流す。このとき処理室201内に流しているガスは、NH3ガスとN2ガスのみである。NH3ガスは、第1の工程でウエハ200上に形成されたTi含有層の少なくとも一部と置換反応する。置換反応の際には、Ti含有層に含まれるTiとNH3ガスに含まれるNとが結合して、ウエハ200上にTiとNとを含むTiN層が形成される。
【0073】
[第5の工程]
(残留ガス除去)
TiN層を形成した後、バルブ334を閉じて、NH3ガスの供給を停止する。
そして、上述した第3の工程と同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくはTiN層の形成に寄与した後のNH3ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。
【0074】
(所定回数実施)
上記した第1の工程~第5の工程を順に行うサイクルを1回以上(所定回数(n回))行うことにより、ウエハ200上に、所定の厚さのTiN層を形成する。
【0075】
(2)第3の実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を得ることができる。
(a)TiCl4ガス供給後に発生したHClがSiH4と反応し、反応管外へ排出される。
【0076】
(3)変形例
上述した第3の実施形態の変形例では、図9に示すように、上述した第3の実施形態のTiCl4ガスを供給する第1の工程と、SiH4ガスを供給する第2の工程の間に処理室201内の残留ガスを除去する工程を有する点のみ異なる。本変形例においても、図8に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。
【0077】
<第4の実施形態>
図10は、本発明の第4の実施形態におけるガス供給のタイミングを示す図である。
【0078】
[第1の工程]
(TiCl4ガス供給)
バルブ314を開き、第1の実施形態の第1の工程におけるTiCl4ガス供給ステップと同様の処理手順により、TiCl4ガスを処理室201内に供給する。このとき処理室201内に流しているガスはTiCl4ガスとN2ガスのみであり、TiCl4ガスの供給により、ウエハ200(表面の下地膜)上にTi含有層が形成される。
【0079】
[第2の工程]
(残留ガス除去)
第1の実施形態の第2の工程における残留ガス除去ステップと同様の処理手順で、処理室201内に残留する未反応もしくはTi含有層形成に寄与した後のTiCl4ガスを処理室201内から排除する。
【0080】
[第3の工程]
(NH3ガス供給)
第1の実施形態の第1の工程におけるNH3ガス供給ステップと同様の処理手順により、反応ガスとしてN含有ガスであるNH3ガスを処理室201内に流す。このとき処理室201内に流しているガスは、NH3ガスとN2ガスのみである。NH3ガスは、第1の工程でウエハ200上に形成されたTi含有層の少なくとも一部と置換反応する。置換反応の際には、Ti含有層に含まれるTiとNH3ガスに含まれるNとが結合して、ウエハ200上にTiとNとを含むTiN層が形成される。
【0081】
[第4の工程]
(SiH4ガス供給)
ガス供給管330のバルブ334を閉じて、NH3ガスの供給を停止する。このとき、同時にバルブ324を開き、第1の実施形態の第1の工程におけるSiH4ガス供給ステップと同様の処理手順により、処理室201内に還元ガスであるSiH4ガスを流す。すなわち、NH3ガス供給とSiH4ガス供給を連続して行う。
【0082】
[第5の工程]
(残留ガス除去)
バルブ324を閉じて、SiH4ガスの供給を停止する。つまり、このとき排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはTiN層の形成に寄与した後のNH3ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。ここで、成長阻害要因であるHClがSiH4と反応し、SiCl4とH2として処理室201内から排出される。
【0083】
(所定回数実施)
上記した第1の工程~第5の工程を順に行うサイクルを1回以上(所定回数(n回))行うことにより、ウエハ200上に、所定の厚さのTiN層を形成する。
【0084】
(2)第4の実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を得ることができる。
(a)NH3ガス供給後に残留するHClをSiH4と反応させ、反応管外に排出させることができる。
【0085】
(3)変形例
上述した第4の実施形態の変形例では、図11に示すように、上述した第4の実施形態のNH3ガスを供給する第3の工程と、SiH4ガスを供給する第4の工程の間に処理室201内の残留ガスを除去する工程を有する点のみ異なる。本変形例においても、図10に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。
【0086】
以下に実験例を説明するが、本発明はこれらの実験例により限定されるものではない。
【0087】
<実験例>
本実施例では、上述した実施形態における図4に示すガス供給のタイミングを用いてTiN膜を形成した。比較例では、図12に示すガス供給のタイミングを用いてTiN膜を形成した。具体的には、比較例では、TiCl4ガス供給、残留ガス除去、NH3ガス供給、残留ガス除去を繰り返し行ってTiN膜を形成した。
【0088】
図13(A)に示すように、比較例により形成されたTiN膜の成膜速度は0.029nm/cycle、抵抗率は225uΩcmであったのに対して、本実施例により形成されたTiN膜の成膜速度は0.127nm/cycle、抵抗率は178uΩcmであった。すなわち、本実施例により形成されたTiN膜の方が比較例により形成されたTiN膜よりも成膜速度が速く、抵抗率が低いことを確認できた。
【0089】
また、図13(B)に示すように、比較例により形成されたTiN膜の膜組成は、Ti49.2%、N49.8%、Cl1.0%であったのに対して、本実施例により形成されたTiN膜の膜組成は、Ti40.7%、N59.2%、Cl0.08%であった。すなわち、本実施例により形成されたTiN膜の方が比較例により形成されたTiN膜よりも膜中のCl濃度を低減できることを確認できた。
【0090】
図14は、本実施例により形成されたTiN膜と比較例により形成されたTiN膜のX線光電子分光(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)スペクトルを示す図である。図14(A)、図14(B)に示すように、比較例により形成されたTiN膜では、Ti-O結合を示す458~459eV付近にピークが大きくできており、大気中の酸素(O)と反応していることを確認できた。一方、本実施例により形成されたTiN膜では、Ti-N結合を示す455eV付近にピークが大きくできており、大気中の酸素によるTi-O結合が少なくなっていることを確認できた。また、図14(C)に示すように、本実施例により形成されたTiN膜では、比較例により形成されたTiN膜と比較して膜中のCl残留濃度が低くなっていることを確認できた。
【0091】
すなわち、本実施例を用いることにより、抵抗率および膜中のCl残留濃度を低くできるほか、大気によるTiN膜の酸化も防止できることを確認できた。これは、本実施例により形成されたTiN膜は、化学量論組成のTi:N=1:1より、Nリッチになっており、酸化しにくい膜になっていると考えられる。また、本実施例により形成されたTiN膜は、Cl濃度が1%以下になっている。これは、NH3ガス供給時にHClが存在しないため、NH3がより吸着しやすくなっていると考えられる。HClが存在する場合でもNH3は副生成物として塩化アンモニウム(NH4Cl)を形成する際に消費される。すなわち、成長阻害要因であるHClを還元することで、比較例で成膜されたTiN膜よりも速い成膜速度を得ることができることを確認できた。
【0092】
本実施形態により形成されるTiN膜中のSi含有量(Si濃度)は4%程度となっている。ここで、本実施形態により形成されるTiN膜中のSi含有量が顕著に低くなるメカニズムについて説明する。
【0093】
図15は、上述した実施形態の還元ガスであるSiH4ガス供給時において、処理室201内の圧力を1Pa~300Pa程度の低圧で供給した場合(図15において■)、500Pa~2660Pa程度の高圧で供給した場合(図15において▲)、低圧から高圧に変化させて供給した場合(図15において●)に形成されるTiN膜の膜厚と屈折率の関係を示す図である。また、図15において「+」は、TiN膜における屈折率の膜厚依存性を示している。横軸は膜厚、縦軸は屈折率を示し、縦軸の屈折率が高いほど膜中のSi含有量が高いことを意味している。
【0094】
図15によれば、SiH4ガス供給時の処理室210内の圧力を500Pa~2660Pa程度の高圧とすることで、膜中のSi含有量(屈折率)を低くすることができることを確認できる。また、1Pa~300Pa程度の低圧の場合も500Pa~2660Pa程度の高圧の場合も、TiCl4ガス供給停止後のSiH4ガス供給時間や供給流量を所定値よりも延ばすと、膜中にSiが進入し、膜中のSi含有率が高くなりTiN層からTiSiN層に変化してしまうことを確認できる。つまり、SiH4ガス供給時の処理室210内の圧力をAPCバルブ243を調整して、例えば130~3990Pa、好ましくは500~2660Pa、より好ましくは900~1500Paの範囲内の高圧とし、SiH4ガスの供給時間を例えば0.1~60秒、好ましくは0.5~30秒、より好ましくは1~20秒の範囲内に調整し、SiH4ガスの供給流量を例えば0.1~5slm、好ましくは0.5~3slm、より好ましくは1~2slmの範囲内に調整することで、Si含有率(屈折率)は低くなり、Si原子を含まないTiN層を形成することができる。
【0095】
すなわち、SiH4ガス供給時の処理室210内の圧力が所定範囲内の高圧である場合でもSiH4ガスの供給時間が長かったり、供給量が多い場合には、屈折率が処理室210内の圧力が低圧である場合と同等以上になってしまうので、圧力の範囲の特定に加えて供給時間、供給量も特定するとよい。
【0096】
図16は、上述した実施形態の還元ガスであるSiH4ガス供給時間の臨界値を示す図である。横軸は膜厚、縦軸は屈折率を示している。図16において■は、TiN膜の屈折率の膜厚依存性を示し、▲は、TiN膜の屈折率のSiH4ガス照射時間依存性を示している。このときヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、475℃となるような温度に設定した。図16に示すTiN膜の屈折率の膜厚依存性のプロット(■)よりも上にあるプロットが、Siを含んでいることを意味する。また、図16に示すTiN膜の屈折率のSiH4ガス照射時間依存性のプロット(▲)において、膜厚38Å付近から矢印方向に、5秒、10秒、20秒、・・・、90秒まで供給時間を延ばして実験を行った。これにより、SiH4ガス供給時間の上限値は20秒程度であることを確認できた。
【0097】
また、上記実施形態及び実施例では、原料ガスとしてTiCl4を用いて説明したが、これに限らず、六フッ化タングステン(WF6)、四塩化タンタル(TaCl4)、六塩化タングステン(WCl6)、五塩化タングステン(WCl5)、四塩化モリブデン(MoCl4)、四塩化ケイ素(SiCl4)、六塩化二ケイ素(Si2Cl6、ヘキサクロロジシラン(HCDS))等のハロゲン含有ガスであって、好ましくはCl含有ガスおよびそれらを用いて形成される膜種に適用することができる。また、タンタル(Ta)系の他、トリクロロジシラン(TCS)等のSi系ガスおよびそれらを用いて形成される膜種にも適用することができる。
【0098】
上記実施形態及び実施例では、HClを還元する還元ガスとしてSiH4を用いて説明したが、これに限らず、Hを含む例えば、ジシラン(Si26)、トリスジメチルアミノシラン(SiH[N(CH323)、ジボラン(B26)、ホスフィン(PH3)等のガスを適用することができる。
【0099】
また、上記実施形態及び実施例では、一種の還元ガスを用いて説明したが、これに限らず、2種以上の還元ガスを用いてもよい。
【0100】
また、上記実施形態及び実施例では、還元ガスを用いて還元する副生成物をHClを用いて説明したが、これに限らず、フッ化水素(HF)、ヨウ化水素(HI)、臭化水素(HBr)等のガスに適用することができる。
【0101】
また、上記実施形態及び実施例では、原料ガスであるTiCl4ガスと還元ガスであるSiH4ガスをそれぞれノズル410,420から処理室201内に供給する構成について説明したが、これに限らず、1つのノズルからプリミックスして供給するようにしてもよい。
【0102】
また、上記実施形態及び実施例では、TiCl4ガスと同時若しくは供給後、NH3ガスと同時若しくは供給後のいずれかに還元ガスを供給する構成について説明したが、これに限らず、TiCl4ガス及びNH3ガスそれぞれの供給時若しくはTiCl4ガス及びNH3ガスそれぞれの供給後に還元ガスを供給する構成についても適用することができる。
【0103】
また、上記実施形態及び実施例では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて成膜を行う構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜を行う場合にも、好適に適用できる。
【0104】
以上、本発明の種々の典型的な実施形態及び実施例を説明してきたが、本発明はそれらの実施形態及び実施例に限定されず、適宜組み合わせて用いることもできる。
【符号の説明】
【0105】
10 基板処理装置
121 コントローラ
200 ウエハ(基板)
201 処理室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16