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特許7036880粘着剤層付き偏光板及びその製造方法、その製造に用いる活性エネルギー線硬化性高分子組成物並びに液晶表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】粘着剤層付き偏光板及びその製造方法、その製造に用いる活性エネルギー線硬化性高分子組成物並びに液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220308BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220308BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J7/38
G02F1/1335 510
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020170022
(22)【出願日】2020-10-07
(62)【分割の表示】P 2019132525の分割
【原出願日】2015-10-13
(65)【公開番号】P2021009405
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2020-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 謙一
(72)【発明者】
【氏名】内藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-199413(JP,A)
【文献】特開2012-247574(JP,A)
【文献】特開2015-014011(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0076562(KR,A)
【文献】特開2007-304366(JP,A)
【文献】特開2010-277063(JP,A)
【文献】特開2013-037353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C09J 7/38
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光素子(P)の一方の面に透明保護フィルム(PF1)が設けられ、他方の面には硬化層(BL1)及び帯電防止剤含有粘着剤層が設けられた粘着剤層付き偏光板であって、
前記硬化層(BL1)は、平均膜厚が0.5~10μであり、エチレン性不飽和基を有する高分子化合物を主成分とし、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンを含有する活性エネルギー線硬化性高分子組成物の水性溶液より形成されたものであり、
前記エチレン性不飽和基を有する高分子化合物は、少なくとも一部が自己乳化型エマルジョンである、粘着剤層付き偏光板。
【請求項2】
ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光素子(P)の一方の面に透明保護フィルム(PF1)が設けられ、他方の面には硬化層(BL1)及び帯電防止剤含有粘着剤層が設けられた粘着剤層付き偏光板であって、
前記硬化層(BL1)は、平均膜厚が0.5~10μmであり、エチレン性不飽和基を有する高分子化合物を主成分とし、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンを含有する活性エネルギー線硬化性高分子組成物の水性溶液より形成されたものであり、
前記透明保護フィルム(PF1)と前記偏光素子(P)との間に、膜厚0.5~10μmであって、前記硬化層(BL1)と同一組成の硬化層(BL2)が設けられている、粘着剤層付き偏光板。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和基を有する高分子化合物は、少なくとも一部が水分散性ポリウレタン(メタ)アクリレートである自己乳化型エマルジョンである、請求項1または2に記載の粘着剤層付き偏光板。
【請求項4】
前記活性エネルギー線硬化性高分子組成物は、多官能(メタ)アクリレート化合物を更に含有し、該多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量が活性エネルギー線硬化性高分子組成物の水性溶液における固形分中の1~40重量%である、請求項1~3の何れかに記載の粘着剤層付き偏光板。
【請求項5】
前記活性エネルギー線硬化性高分子組成物の水性溶液において、固形分中のエチレン性不飽和基を有する高分子化合物の含有量が50~99重量%であることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の粘着剤層付き偏光板。
【請求項6】
前記エチレン性不飽和基を有する高分子化合物の数平均分子量が、5000~100000であることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の粘着剤層付き偏光板。
【請求項7】
前記活性エネルギー線硬化性高分子組成物の水性溶液が、更にエチレン性不飽和基を有するボロン酸化合物を含有することを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の粘着剤層付き偏光板。
【請求項8】
前記ボロン酸化合物が、4-ビニルフェニルボロン酸、または下記式で表されるボロン酸化合物であることを特徴とする請求項に記載の粘着剤層付き偏光板。
【請求項9】
前記粘着剤層が、前記偏光板の硬化層(BL1)の偏光素子(P)とは反対面に、直接又は透明保護フィルム(PF2)を介して設けられていることを特徴とする請求項1~8の何れかに記載の粘着剤層付き偏光板。
【請求項10】
前記透明保護フィルム(PF2)が、厚み10~50μmのセルロースアシレート系フィルムであることを特徴とする請求項9に記載の粘着剤層付き偏光板。
【請求項11】
前記粘着剤層が、イオン性帯電防止剤を含有することを特徴とする請求項1~10の何れかに記載の粘着剤層付き偏光板。
【請求項12】
請求項1~11の何れかに記載の偏光板を液晶セルの少なくとも片側に貼合した液晶表示装置。
【請求項13】
請求項1~11の何れかに記載の偏光板の製造に用いる活性エネルギー線硬化性高分子組成物であって、水性溶液としたときに、エチレン性不飽和基を有する高分子化合物を水性溶液固形分中に50~99重量%及び多官能(メタ)アクリレート化合物を水性溶液固形分中に1~40重量%含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性高分子組成物。
【請求項14】
ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光素子(P)の片面にのみ透明保護フィルム(PF1)を積層し片面偏光板とする工程、
該片面偏光板の偏光素子上に、主溶媒が水である活性エネルギー線硬化性高分子組成物の水性溶液を塗布する工程、
塗付された活性エネルギー線硬化性高分子組成物の水性溶液を乾燥後、大気圧下、通常雰囲気下で活性エネルギー線を照射し硬化層を形成する工程、及び
帯電防止剤含有粘着剤層を設ける工程、を含むことを特徴とする請求項1~11の何れかに記載の粘着剤層付き偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光素子の上に特定の水溶媒の電離放射線硬化性組成物より形成された硬化層を有する粘着剤層付き偏光板及びその偏光板の製造方法に関する。更には、その偏光板の製造に用いる活性エネルギー線硬化性高分子組成物及びその偏光板を用いた液晶表示装置等の画像表示装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は、液晶テレビや、パソコン、携帯電話、デジタルカメラなどの液晶パネル等の用途で広く用いられている。通常、液晶表示装置は、液晶セルの両側に粘着剤で偏光板を貼合した液晶パネル部材を有し、バックライト部材からの光を液晶パネル部材で制御することにより表示が行われている。ここで、偏光板は偏光素子とその両側に貼合された保護フィルムとからなり、一般的な偏光素子は延伸されたポリビニルアルコール(PVA)系フィルムをヨウ素又は二色性色素で染色することにより得られ、保護フィルムとしてはセルロールアシレートフィルムなどが用いられている。
【0003】
近年、液晶パネル薄型化のために、上記偏光素子の両面に貼合された二枚の保護フィルムのうち、液晶セル側の偏光板保護フィルムをなくすことが行われている。
一方、粘着剤付き偏光板を液晶表示装置に貼合する際に、離型フィルムを剥離した時に発生する静電気を防止するために粘着剤層にイオン性液体などの帯電防止剤を配合することが提案されている。(例えば特許文献1)
上記を組み合わせると、偏光子の片面にのみ保護フィルムを有する片面偏光板では、偏光素子に保護フィルムを介さずに粘着剤層を積層することになるが、特許文献2に記載されているようにイオン性液体やイオン性固体を有する粘着剤層を偏光素子に保護フィルムを介さずに積層すると、偏光素子を劣化させ湿熱耐久性能が低下し、その結果光学特性が大きく低下する欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2007/034533号パンフレット
【文献】特開2014-048497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような状況に鑑みて、本発明の課題、すなわち本発明が解決しようとする課題は、偏光素子の片方の面にのみ偏光板保護フィルムを有し、偏光素子のもう一方の面にイオン性液体等の帯電防止剤を配合した粘着剤層を有する、粘着剤層付き薄型偏光板でありながら、湿熱耐久試験後においても光学特性が良好な耐湿熱耐久性を備えた粘着剤層付き偏光板を提供することである。
【0006】
本発明者等は鋭意検討の結果、湿熱耐久試験後の光学特性の低下は粘着剤中の帯電防止剤や偏光素子中のヨウ素錯体が水分を媒体として移動するためと推定され、多官能(メタ)アクリレートモノマーと光重合開始剤を有機溶剤に溶解した紫外線硬化性組成物を片面偏光板の偏光素子上に塗布し、乾燥後、窒素パージ下でUV照射し、硬化層を設けることで、それらの移動を抑制することができ、偏光板の湿熱耐久性を向上させることを見出した。
【0007】
しかしながら、ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させて作製する偏光素子を用いた偏光板製造工程では、通常、有機溶剤は殆ど用いられないため防爆、乾燥後の有機溶剤の回収等に対応した有機溶剤仕様にはなっていない。したがって、上記の方法を偏光板の製造工程に導入するには製造設備を有機溶剤仕様に改造しなければならず、偏光板製造業者に著しい負担を与える。また、有機溶剤(VOC)を用いることで環境への負荷も大きくなるという新たな問題点も浮上した。
加えて、多官能(メタ)アクリレートモノマーを用いる場合、窒素パージ設備を用いず大気下でUV照射を行うと、酸素による硬化阻害により、硬化層表面が未反応となり、そのままハンドリングするとハンドリングロールにモノマーを付着させるなどの問題が起こる。そのため、窒素パージ設備の導入も必要となる問題も新たに生じることとなった。
【0008】
上記のような状況に鑑みて、本発明の課題、すなわち本発明が解決しようとする課題は、偏光素子の一方の面にのみ偏光板保護フィルムを有し、他方の面にイオン性液体等の帯電防止剤を配合した粘着剤層を有する、粘着剤層付き薄型偏光板でありながら、湿熱耐久試験後であっても光学特性が良好な耐湿熱耐久性を備えた粘着剤層付き偏光板を、偏光板製造工程の改造の負荷も小さく、環境負荷も少ない方法によって偏光板を提供することであり、また、そのような偏光板を作成するための活性エネルギー線硬化性高分子組成物を提供することである。
本発明の別の目的はそのような偏光板の製造方法を提供することであり、更に本発明の別の目的は、湿熱耐久試験後の表示特性が改善された耐湿熱耐久性を備えた液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討の結果、ポリビニルアルコール系樹脂にヨウ素を吸着配向させてなる偏光素子の、一方の面にのみ透明保護フィルムを有し、前記偏光素子の透明保護フィルムとは反対面にイオン性化合物等の帯電防止剤を含有する粘着剤層を積層した粘着剤層付き偏光板において、エチレン性不飽和基を有する高分子化合物を主成分として含有する水系の活性エネルギー線硬化性組成物より形成され、特定の膜厚を有する硬化層を、偏光素子と粘着剤層の間に設置することで耐湿試験後の光学特性劣化を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
また、本発明の硬化層は偏光素子の両面に透明保護フィルムを有する偏光板においても偏光素子と液晶セル側の透明保護フィルム(PF2)の間に積層することで偏光板の湿熱耐久性を改善できることを見出し、第2の発明の完成に至った。特に前記のように本発明で課題とした湿熱耐久試験後の光学特性の低下は水分を媒体として発生すると推定され、第2の発明の態様においては、液晶セル側の透明保護フィルム(PF2)として比較的透湿性の高い厚みが10~50μmのセルロースアシレート系フィルムである時に効果が見られる。
本発明が解決しようとする課題は、下記の手段により解決することができる。
【0011】
(1)ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光素子(P)の一方の面に透明保護フィルム(PF1)が設けられ、他方の面には硬化層(BL1)及び帯電防止剤含有粘着剤層が設けられた粘着剤層付き偏光板であって、
前記硬化層(BL1)は、平均膜厚が0.5~10μであり、エチレン性不飽和基を有する高分子化合物を主成分とする活性エネルギー線硬化性高分子組成物の水性溶液より形成されたものであることを特徴とする粘着剤層付き偏光板。
(2)前記活性エネルギー線硬化性高分子組成物の水性溶液において、固形分中のエチレン性不飽和基を有する高分子化合物の含有量が50~99重量%であることを特徴とする(1)に記載の粘着剤層付き偏光板。
【0012】
(3)前記活性エネルギー線硬化性高分子組成物の水性溶液が、エチレン性不飽和基を有する高分子組成物の自己乳化型エマルジョンであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の粘着剤層付き偏光板。
(4)前記エチレン性不飽和基を有する高分子化合物が、水分散性ポリウレタン(メタ)アクリレートであることを特徴とする(1)~(3)の何れかに記載の粘着剤層付き偏光板。
(5)前記エチレン性不飽和基を有する高分子化合物の数平均分子量が、5000~100000であることを特徴とする(1)~(4)の何れかに記載の粘着剤層付き偏光板。
【0013】
(6)前記活性エネルギー線硬化性高分子組成物が更に多官能(メタ)アクリレート化合物を含み、該多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量が活性エネルギー線硬化性高分子組成物の水性溶液における固形分中の1~40重量%であることを特徴とする(1)~(5)の何れかに記載の粘着剤層付き偏光板。
(7)前記活性エネルギー線硬化性高分子組成物が、更に光ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする(1)~(6)の何れかに記載の粘着剤層付き偏光板。
(8)前記粘着剤層が、前記偏光板の硬化層(BL1)の偏光素子(P)とは反対面に直接又は透明保護フィルム(PF2)を介して設けられていることを特徴とする(1)~(7)の何れかに記載の粘着剤層付き偏光板。
(9)前記透明保護フィルム(PF2)が、厚み10~50μmのセルロースアシレート系フィルムであることを特徴とする(8)に記載の粘着剤層付き偏光板。
(10)前記粘着剤層が、イオン性帯電防止剤を含有することを特徴とする(1)~(9)の何れかに記載の粘着剤層付き偏光板。
【0014】
(11)前記透明保護フィルム(PF1)と前記偏光素子(P)との間に、膜厚0.5~10μmであって、前記硬化層(BL1)と同一組成の硬化層(BL2)が設けられていることを特徴とする(1)~(10)の何れかに記載の粘着剤層付き偏光板。
(12)(1)~(11)の何れかに記載の偏光板を液晶セルの少なくとも片側に貼合した液晶表示装置。
(13)(1)~(11)の何れかに記載の偏光板の製造に用いる活性エネルギー線硬化性高分子組成物であって、水性溶液としたときに、エチレン性不飽和基を有する高分子化合物を水性溶液固形分中に50~99重量%及び多官能(メタ)アクリレート化合物を水性溶液固形分中に1~40重量%含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性高分子組成物。
【0015】
(14)ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光素子(P)の片面にのみ透明保護フィルム(PF1)を積層し片面偏光板とする工程、
該片面偏光板の偏光素子上に、主溶媒が水である活性エネルギー線硬化性高分子組成物の水性溶液を塗布する工程、
塗付された活性エネルギー線硬化性高分子組成物の水性溶液を乾燥後、大気圧下、通常雰囲気下で活性エネルギー線を照射し硬化層を形成する工程、及び
帯電防止剤含有粘着剤層を設ける工程、を含むことを特徴とする(1)~(11)の何れかに記載の粘着剤層付き偏光板の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により薄型であり、帯電防止に優れ、湿熱耐久試験後の光学特性変化(偏光度低下など)の少ない耐湿熱耐久性を備えた粘着剤層付き偏光板を提供することができる。本発明の粘着剤層付き偏光板を用いることで高温高湿環境経時後の光漏れが押さえられた表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[偏光素子]
本発明のポリビニルアルコール(以降PVAとも称す)系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光素子は、周知の偏光素子を用いることができる。このような偏光素子は、一般にPVA系樹脂フィルムを用い、このPVA系樹脂フィルムをヨウ素で染色し、一軸延伸することによって形成される。
【0018】
PVA系樹脂は、前述のように、一般に、ポリ酢酸ビニル系樹脂を鹸化して得られるものを用いる。鹸化度は、約85モル%以上、好ましくは約90モル%以上、より好ましくは約99モル%~100モル%である。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。PVA系樹脂の重合度としては、1000~10000、好ましくは1500~5000である。このPVA系樹脂は変性されていてもよく、たとえば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどでもよい。
【0019】
偏光素子の製造方法は特に限定されないが、予めロール状に巻かれたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを送り出して延伸、染色、架橋などを行って作製する方法やポリビニルアルコール系樹脂と延伸用樹脂基材との積層体を作製し、積層体の状態で延伸を行う工程を含む方法が典型的である。本発明ではこれら、何れの方法も用いることができる。これらの偏光素子の製造方法については特開2014-48497号公報の段落[0109]~[0128]に記載されており、本発明ではこれらの方法を用いることができる。また、本発明の偏光素子の厚みは3~35μmが好ましく、4~30μmがより好ましく、5~25μmが更に好ましい。
【0020】
[硬化層]
本発明の硬化層(BL1)(BL2)はエチレン性不飽和基を有する高分子化合物を主成分とし、主溶媒が水である活性エネルギー線硬化性高分子組成物の水性溶液から形成される。本発明でエチレン性不飽和基を有する高分子化合物を主成分とするとは、前記硬化性高分子組成物の水性溶液固形分中、エチレン性不飽和基を有する高分子化合物の含有量が最も多いことを意味する。エチレン性不飽和基を有する高分子化合物は1種類でも2種類以上でも構わない。エチレン性不飽和基を有する高分子化合物を2種類以上有する場合、「エチレン性不飽和基を有する高分子化合物の含有量」とはエチレン性不飽和基を有する高分子化合物全ての含有量(化合物個々の含有量の合計)を意味する。
【0021】
活性エネルギー線硬化性高分子組成物固形分中のエチレン性不飽和基を有する高分子化合物の含有量は50~99重量%が好ましく、70~99重量%がより好ましく、80~99重量%が更に好ましい。含有量をこの範囲に抑えることで硬化層を積層した偏光板の耐湿試験後の光学特性変化を抑制することができる。
尚、硬化層(BL1)と(BL2)の2層を有する偏光板の構成においては、硬化層(BL1)と(BL2)は同一の活性エネルギー線硬化性高分子組成物から形成されることが生産性の観点で好ましいが、異なる活性エネルギー線硬化性高分子組成物から形成されても構わない。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化性高分子組成物中のエチレン性不飽和基を有する高分子化合物の少なくとも一部はエチレン性不飽和基を有する高分子エマルジョンであることが、湿熱耐久性改良効果の点で好ましい。湿熱耐久性改良には疎水的な構造が好ましいと本発明者らは推測しているが、エマルジョン型の高分子化合物は疎水性構造を有しており、湿熱耐久性改良の観点で好ましい。
また、エマルジョン型の高分子化合物には界面活性剤を乳化剤として使用する強制乳化型と化合物中に親水基を導入した自己乳化型があるが、自己乳化型高分子エマルジョンは乾燥後に界面活性剤のブリードアウトがなく、本発明ではより好ましい。
【0023】
次に本発明で活性エネルギー線硬化性高分子化合物として好ましく使用することのできる、ポリウレタン構造を有し、(メタ)アクリレート基を有する自己乳化型エマルジョンである水分散性ポリウレタン(メタ)アクリレートについて説明する。
【0024】
(水分散性ポリウレタン(メタ)アクリレート)
一般にポリウレタンはポリオールとポリイソシアネートの反応生成物であるが、ポリオールの少なくとも一部にイオン性又は非イオン性の親水特性を有する官能基(親水性基)を有するポリオール用いることで、ポリウレタンに親水性基を導入することができる。このようなポリオールの好ましい例としては、カルボン酸塩及びスルホン酸塩等のアニオン塩の基、又は、カルボン酸基もしくはスルホン酸基等のアニオン塩基に転換させることのできる酸性基を1つ以上有するポリオールが挙げられる。具体的には、α,α-ジメチロールアルカン酸、例えば2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸等を好ましいポリオールの例として挙げることができる。
【0025】
同様に、ポリオールの少なくとも一部に(メタ)アクリロイル基を有するポリオールを用いることでポリウレタンに(メタ)アクリロイル基を導入することができる。このような化合物としては(メタ)アクリロイルジヒドロキシ化合物及びポリ(メタ)アクリロイルジヒドロキシ化合物が好ましい。
また、イソシアネート末端ポリウレタンを合成した後にヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート化合物で末端キャッピングすることでポリウレタンに(メタ)アクリロイル基を導入することもできる。これらの方法を併用することもできる。
【0026】
本発明の水分散ポリウレタン(メタ)アクリレートとしては、特表2014-529639の[0017]~[0028]に放射線硬化性ポリウレタン分散体として記載されているものを好ましく用いることができる。
【0027】
水分散ポリウレタン(メタ)アクリレートは市販されているものを用いることもでき、例えば、UCECOAT(登録商標)7674、UCECOAT(登録商標)7655、UCECOAT(登録商標)7699、UCECOAT(登録商標)7571、UCECOAT(登録商標)7689、UCECOAT(登録商標)7690、UCECOAT(登録商標)7890、UCECOAT(登録商標)7578、UCECOAT(登録商標)7710、UCECOAT(登録商標)7730、UCECOAT(登録商標)7733、(以上全て商品名、Allnex社製)等を挙げることができ、本発明で好ましく用いることができる。
【0028】
中でも水分を除去するとタックフリーになるUCECOAT(登録商標)7571、UCECOAT(登録商標)7655、UCECOAT(登録商標)7689、UCECOAT(登録商標)7849がより好ましく、UCECOAT(登録商標)7571が特に好ましい。
その理由は、上記の水分を除去するとタックフリーになる水分散ポリウレタン(メタ)アクリレートを用いると、UV照射設備に窒素パージ設備を設けなくても、ハンドリングロールを汚すなどの問題を回避できるため、窒素パージ設備を省略でき、偏光板製造工程の改造負担が小さくなるためである。
【0029】
(多官能(メタ)アクリレート)
本発明の活性エネルギー線硬化性高分子組成物はエチレン性不飽和基を有する高分子化合物からなる自己乳化型エマルジョンに加えて、多官能(メタ)アクリレート化合物を更に含有することが好ましい。疎水的な多官能(メタ)アクリレート化合物は単独では水分散が難しいが自己乳化型エマルジョンと併用することで、水系溶液への分散が可能になり、偏光板の湿熱耐久性改良効果をより大きくすることができる。
本発明で好ましく用いることのできる多官能(メタ)アクリレート化合物は多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類であり、中でも(メタ)アクリル当量(分子量/官能基数)が50~300で、粘度が30~1000mPa・s(25℃)のものが、分散が比較的容易であり且つ湿熱耐久性改良効果が大きく好ましい。
【0030】
このような化合物として例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0031】
中でもペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
これらは2種類以上を併用して含有させることができる。また、2種類以上が含まれる市販品を用いることもできる。
【0032】
本発明の多官能(メタ)アクリレートは市販されているものを用いることができ、新中村化学工業(株)製 NKエステル A-DCP、DCP、A-TMPT、TMPT、ATM-35E、A-TMMT、大阪有機化学工業(株)製 ビスコート(登録商標)#195、ビスコート(登録商標)#300、ビスコート(登録商標)#360、ダイセル・オルネクス(株)製 アクリレートモノマー IRR 214-K、PETIA、PETRA、TMPTA、TMPEOTA、EBECRYL 135、OTA 480、EBERCRYL 40、荒川化学工業(株)製 BS710、BS730等を挙げることができる。
【0033】
本発明の多官能(メタ)アクリレートの含有量は前記活性エネルギー線硬化性高分子組成物(BLC)の固形分中、1~40重量%であることが好ましく、5~25重量%であることがより好ましく、8~20重量%であることが更に好ましい。この範囲にすることで、硬化層を設けた偏光板の湿熱耐久性が良好であり、分散性の良好な組成物を調製することができる。
【0034】
(重合開始剤)
本発明の活性エネルギー線硬化性高分子組成物は、重合開始剤を含むことが好ましく、重合開始剤としては光重合開始剤が好ましい。これらの重合開始剤については、特開2014-170130号公報段落[0064]~[0067]の記載を参考にすることができる。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3-ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。光重合開始剤の具体例、及び好ましい態様、市販品などは、特開2009-098658号公報の段落[0133]~[0151]に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。
本発明では常温で液体状の光開始剤または水溶性の光重合開始剤が分散性が良好で好ましく、水溶性の光開始剤は更に湿熱耐久性の改良効果が大きくより好ましい。
【0035】
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、BASF社製の「イルガキュア(登録商標)651」、「イルガキュア(登録商標)184」、「イルガキュア(登録商標)819」、「イルガキュア(登録商標)907」、「イルガキュア(登録商標)1870」(CGI-403/イルガキュア(登録商標)184=7/3混合開始剤)、「イルガキュア(登録商標)500」、「イルガキュア(登録商標)369」、「イルガキュア(登録商標)1173」、「イルガキュア(登録商標)2959」、「イルガキュア(登録商標)4265」、「イルガキュア(登録商標)4263」、「イルガキュア(登録商標)127」、“OXE01”等;日本化薬(株)製の「カヤキュアー(登録商標)DETX-S」、「カヤキュアー(登録商標)BP-100」、「カヤキュアー(登録商標)BDMK」、「カヤキュアー(登録商標)CTX」、「カヤキュアー(登録商標)BMS」、「カヤキュアー(登録商標)2-EAQ」、「カヤキュアー(登録商標)ABQ」、「カヤキュアー(登録商標)CPTX」、「カヤキュアー(登録商標)EPD」、「カヤキュアー(登録商標)ITX」、「カヤキュアー(登録商標)QTX」、「カヤキュアー(登録商標)BTC」、「カヤキュアー(登録商標)MCA」など;サートマー社製の“Esacure(登録商標)(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KTO46,KT37,KIP150,TZT)”等、及びそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
【0036】
中でも常温で液状の開始剤としては「イルガキュア(登録商標)1173」2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンまたは水溶性の「イルガキュア(登録商標)2959」(1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン)がより好ましく、水溶性の「イルガキュア(登録商標)2959」(1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン)が最も好ましい。
【0037】
本発明の活性エネルギー線硬化性高分子組成物(BLC)中の光重合開始剤の含有量は、前記組成物に含まれる重合可能な化合物を重合させ、かつ開始点が増えすぎないように設定するという理由から、組成物中の全固形分に対して、0.5~8質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。
【0038】
(偏光素子との密着強化剤)
偏光素子と硬化層の密着を強化するために、エチレン性不飽和基を有するボロン酸化合物やエチレン性不飽和重合性基とアミノ基、アミド基、およびカルボキシ基からなる群より選択される1以上の官能基と水酸基を有する化合物、またはエチレン性不飽和基とブロックイソシアネート基を有する化合物を用いることもできる。
【0039】
密着強化剤については、特開2012-150428号公報の段落[0166]にボロン酸誘導体が記載されており、これらの中でエチレン性不飽和基を有するボロン酸化合物を好ましく用いることができる。
エチレン性不飽和基を有するボロン酸化合物を用いる場合、含有量は前記活性エネルギー線硬化性高分子組成物(BLC)の固形分中、0.01~10重量%であることが好ましく、0.05~5重量%であることがより好ましく、0.1~3重量%であることが更に好ましい。
【0040】
次に、エチレン性不飽和重合性基とアミノ基、アミド基、およびカルボキシ基からなる群より選択される1以上の官能基と水酸基を有する化合物としては、特開2011-221186号公報の段落[0031]に記載されており、このような化合物を好ましく用いることができる。
エチレン性不飽和重合性基とアミノ基、アミド基、およびカルボキシ基からなる群より選択される1以上の官能基と水酸基を有する化合物を用いる場合、含有量は前記活性エネルギー線硬化性高分子組成物(BLC)の固形分中、0.5~10重量%であることが好ましく、1~8重量%であることがより好ましい。
【0041】
エチレン性不飽和基とブロックイソシアネート基を有する化合物について説明する。ブロックイソシアネート基とは、通常の条件では、イソシアネート基を他の官能基で保護することにより該イソシアネート基の反応性を抑える一方で、加熱により脱保護し、活性なイソシアネート基を再生させることができるイソシアネートブロック体のことを示す。
このようなエチレン性不飽和基とブロックイソシアネート基を有する化合物の市販品としては、例えば、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ]エチルメタクリレート(カレンズMOI-BP(登録商標),昭和電工製);メタクリル酸2-(0-[1’メチルプロビリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(カレンズMOI-BM(登録商標),昭和電工製)などが挙げられる。
エチレン性不飽和基とブロックイソシアネート基を有する化合物を用いる場合、含有量は前記活性エネルギー線硬化性高分子組成物(BLC)の固形分中、0.5~10重量%であることが好ましく、1~8重量%であることがより好ましい。
【0042】
(溶剤)
本発明の活性エネルギー線硬化性高分子組成物(BLC)は主溶剤が水である。本発明で「主溶剤が水である。」とは硬化性組成物に含まれる全ての溶剤の中で水の含有量が最も多いことを意味する。全溶媒中の水の含有量は70~100重量%であることが好ましく80~100重量%であることがより好ましく、90~100%重量%であることが更に好ましく、95~100重量%であることが特に好ましい。
【0043】
[透明保護フィルム]
本発明の透明保護フィルム(PF1とPF2)は、たとえば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂からなるフィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂からなるフィルム、ポリカーボネート系樹脂からなるフィルム、ノルボルネンなどシクロオレフィン系樹脂からなるフィルム、(メタ)アクリル系重合体フィルムが挙げられる。これらの透明保護フィルムのうち、セルロース系樹脂からなるフィルム、中でもセルロースアシレートフィルムが好ましく用いられる。
【0044】
透明保護フィルムの表面には、アンチグレア処理、アンチリフレクション処理、ハードコート処理、帯電防止処理、防汚処理などのいずれかの表面処理を施して、表面処理層を形成してもよい。表面処理は、これらの2以上の処理が施されていてもよい。これらの表面処理は、一般に、偏光素子との接着面とは反対の面に対して施される。透明保護フィルムとその表面保護層のいずれか一方または両方には、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物などの紫外線吸収剤や、フェニルホスフェート系化合物、フタル酸エステル化合物などの可塑剤を含有していてもよい。
【0045】
本発明で言う透明とは、可視光の透過率が60%以上であることを示し、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
透明保護フィルムの膜厚は光学特性の観点から薄いものが好ましいが、薄すぎると強度が低下し加工性に劣るものとなる。適切な膜厚としては、5~100μmであり、好ましくは10~80μm、より好ましくは15~70μmである。
偏光板の用途によっては、透明保護フィルム(PF2)として光学異方性層を有する光学補償フィルムを用いることもできる。
【0046】
[粘着剤層付き偏光板の層構成]
本発明の粘着剤層付き偏光板が偏光素子の一方の面にのみ透明保護フィルム(PF1)を有する片面偏光板である場合、偏光素子の透明保護フィルムとは反対の面に本発明の硬化層(BL1)を有する。更に透明保護フィルムと偏光素子の間に本発明の硬化層(BL2)を有していても構わない。
また、本発明の粘着剤層付き偏光板が偏光素子の両方の面に透明保護フィルム(PF1)と透明保護フィルム(PL2)を有する場合、偏光素子の透明保護フィルム(PF1)とは反対の面、すなわち透明保護フィルム(PF2)と偏光素子との間に本発明の硬化層(BL1)を有する。また、更に透明保護フィルム(PF1)と偏光素子の間に本発明の硬化層(BL2)を有していても構わない。
本発明において、好ましい粘着剤層付き偏光板の層構成を以下に示す。
【0047】
透明保護フィルム(PF1)/偏光素子(P)/硬化層(BL1)/粘着剤層
透明保護フィルム(PF1)/偏光素子(P)/硬化層(BL1)/透明保護フィルム(PF2)/粘着剤層
透明保護フィルム(PF1)/硬化層(BL2)/偏光素子(P)/硬化層(BL1)/粘着剤層
透明保護フィルム(PF1)/硬化層(BL2)/偏光素子(P)/硬化層(BL1)/透明保護フィルム(PF2)/粘着剤層
【0048】
[粘着剤層付き偏光板の作製方法]
次に本発明の粘着剤層付き偏光板の作成方法について説明する。
(偏光素子(P)と透明保護フィルム(PF1)の接着)
本発明の偏光板は予め透明保護フィルムと偏光素子を接着して積層することができる。上記のようにして作製された偏光素子と透明保護フィルム(PF1)とを、公知の接着剤を用いて接着して積層させることができる。また、後述のように本発明の活性エネルギー線硬化性高分子組成物(BLC)を接着剤として機能させ、透明保護フィルム(PF1)と偏光素子(P)の間に硬化層(BL2)を形成することもできる。
【0049】
偏光素子と透明保護フィルムとの接着の際には、偏光素子と接着剤、透明保護フィルムと接着剤との接着性を向上させるために、偏光素子と透明保護フィルムの貼合面の一方または両方に、あらかじめコロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射、プライマー塗布処理などの表面処理を施してもよい。また、透明保護フィルムに鹸化処理を施してもよい。
【0050】
以上によって、偏光素子の片面に、接着剤層を介して透明保護フィルム(PF1)が形成された偏光板が得られる。
偏光素子の一方の面にのみ透明保護フィルムを有する片面偏光板である場合、上記のように、偏光素子と透明保護フィルムとを接着剤を用いて接着、積層し、片面にのみ透明保護フィルムを有する片面偏光板を作製し、次に片面偏光板の偏光素子の透明保護フィルムとは反対の面に硬化層を積層して作製することができる。
【0051】
(硬化層の積層方法)
本発明の硬化層はいかなる方法によって形成しても構わないが、厚みを制御しながら、偏光素子に本発明の硬化性組成物を積層し、乾燥後活性エネルギー線を照射し硬化層とすることが好ましい。
本発明で厚みを制御しながら、硬化性組成物を偏光素子に積層する好ましい方法として、塗布方式やピンチロールを用いる方法などが挙げられる。
【0052】
塗布方式で硬化層を形成する場合、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)を用いることができる。
塗布方式を用いる場合、上記のように予め、偏光素子(P)に透明保護フィルム(PF1)を貼合したものを作製した上で硬化層(BL1)を形成することが好ましい。
【0053】
また、ピンチロールを用いる方法では、偏光素子(P)と離形性のフィルムとの間に本発明の活性エネルギー線硬化性高分子組成物(BLC)の水性溶液を供給し、ピンチロールを通過させることで圧力を加え、硬化層の厚みをコントロールすることができる。この方法は例えば、特開2012-189968号公報の図2に記載の装置を用いることができる。
【0054】
このピンチロールを用いる方法では、予め、偏光素子(P)に透明保護フィルム(PF1)を貼合したものを作製した上で、偏光素子と離形性のフィルムの間に本発明の活性エネルギー線硬化性高分子組成物(BLC)の水性溶液を供給し、ピンチロールを通過させることで、厚みがコントロールされた硬化層(BL1)を形成することもできるが、硬化層(BL1)を積層すると同時に透明保護フィルム(PF1)と偏光素子(P)との貼合を同時に行うことが生産性の点で好ましい。
【0055】
この場合、偏光素子(P)の一方の面に透明保護フィルム(PF1)を供給し、他方の面に離形性のフィルムを供給し、透明保護フィルム(PF1)と偏光素子の間に接着剤組成物を供給し、離形性のフィルムと偏光素子の間に本発明の活性エネルギー線硬化性高分子組成物(BLC)の水性溶液を供給しピンチロールを通過させることで、透明保護フィルム(PF1)と偏光子(P)の貼合と本発明の硬化層(BL1)の形成とを同時に行うことができる。その後、離形性のフィルムを剥離することで偏光素子の片面にのみ透明保護フィルム(PF1)を有し、偏光素子のもう一方の面に本発明の硬化層(BL1)を有する片面偏光板を作製することができる。
【0056】
硬化層の形成は、乾燥後に活性エネルギー線照射を行うことで行うが、この活性エネルギー線の照射は離形性のフィルムの剥離前又は剥離後のいずれの段階でも行うことができる。
また、離形性のフィルムとして透明保護フィルム(PF2)を使用し、活性エネルギー線照射後に該フィルムを剥離せず、偏光素子の両面に透明保護フィルムを有する偏光板とすることもできる。この偏光素子の両面に透明保護フィルムを有する偏光板も本発明の好ましい態様の一つである。
【0057】
本発明において硬化層の硬化には、活性エネルギー線として、放射線、ガンマー線、アルファー線、電子線、紫外線などが用いられる。その中でも紫外線を用いてラジカルを発生させる重合開始剤を添加し、紫外線により硬化させる方法が特に好ましい。
紫外線照射の場合、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ、LED等の光線から発する紫外線等が利用できる。また、硬化反応を促進するために、硬化時に温度を高めることもでき、25~100℃が好ましく、更に好ましくは30~80℃、最も好ましくは40~70℃である。
【0058】
(粘着剤層)
本発明では帯電防止剤を含有する粘着剤層を有する。粘着剤としては、たとえば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系などのものが挙げられる。また、活性エネルギー線重合性化合物を含んでいてもよい。
帯電防止剤としては、例えば、アルカリ金属塩よりなるイオン伝導剤、イオン液体、界面活性剤、導電性ポリマー、金属酸化物、カーボンブラック、カーボンナノ材料などを挙げることができる。中でも永久帯電性、無着色の観点から、アルカリ金属よりなるイオン伝導剤および/またはイオン液体が好ましく用いられる。
【0059】
本発明においては、帯電防止剤は含フッ素アニオンを含むイオン化合物が好ましい。この含フッ素アニオンを含むイオン化合物として、例えば、有機カチオンと含フッ素アニオンからなるイオン化合物、アルカリ金属カチオンと含フッ素アニオンからなるイオン化合物などが例示される。有機カチオンと含フッ素アニオンからなるイオン化合物が好ましい。含フッ素アニオンとしてはBF 、PF 、CFCOO、CFSO 、(CFSO、(SOF)、CSO 等が挙げられ、CFCOO、CFSO 、(CFSO、(SOF)、CSO の何れかであることが特に好ましい。
【0060】
有機カチオンとしてはピリジニウムカチオン、ピペリジウムカチオン、ピロリジウムカチオン、ピロリン環を有するカチオン、ピロール環を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。具体的には、1-エチルピリジニウムカチオン、1-ブチルピリジニウムカチオン、1-へキシルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-へキシル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-へキシル-4-メチルピリジニウムカチオン等のピリジニウムカチオン;1-プロピルピペリジニウムカチオン、1-ペンチルピペリジニウムカチオン、1,1-ジメチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-エチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ペンチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘキシルピペリジニウムカチオン等のピペリジニウムカチオン;1,1-ジメチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-メチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-へキシルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘプチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ペンチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-へキシルピロリジニウムカチオン等のピロリジニウムカチオン;2-メチル-1-ピロリンカチオン等のピロリン環を有するカチオン;1-エチル-2-フェニルインドールカチオン、1,2-ジメチルインドールカチオン、1-エチルカルバゾールカチオン等のピロール環を有するカチオン;1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-へキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン等のイミダゾリウムカチオン;テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン等のテトラアルキルアンモニウムカチオンが例示できる。
【0061】
有機カチオンと含フッ素アニオンからなるイオン化合物として、具体的には、1-ブチル-4-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピロリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピロリジウムテトラフルオロボレート;1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,2,3-トリメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-へキシル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート;テトラエチルアンモニウムトルフルオロアセテート、テトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレートなどが挙げられる。
【0062】
一方、アルカリ金属カチオンとしては、K、Li、Na等が例示できる。アルカリ金属カチオンと含フッ素アニオンからなるイオン化合物のうち、LiBF、LiPF、LiCFSO、Li(CFSO)2N、Li(SOF)N、LiCSO等のリチウム塩が帯電防止性能が良好であるため好ましい。
【0063】
本発明に用いる粘着剤組成物中の帯電防止剤の配合量は、粘着剤組成物の全固形分に対して、0.01~10重量%であり、好ましくは0.1~8質量%である。0.01質量%よりも少ないと十分な帯電防止性能が得られず、10重量%よりも多いと、帯電防止剤のブリードにより耐久性が低下するため好ましくない。
【0064】
粘着剤塗布の後、養生工程を設けることが好ましい。この養生工程は、粘着剤を硬化する工程であるが、あわせて、前述の偏光素子と保護フィルムとの間に形成された接着剤層もさらに硬化され安定化する効果も得られる。この養生工程は、15~85℃、好ましくは20~50℃、より好ましくは20~30℃の温度環境下で養生させる。期間は、たとえば、1~90日間であるが、この養生期間が長いと生産性が悪くなるため、好ましくは1~30日間程度、より好ましくは約1~7日間である。また、本発明の粘着剤層付き偏光板は、併せて用いる液晶パネルの大きさにあわせて切断加工してもよい。この切断加工は、偏光板を液晶パネルに貼合した後に行なわれる場合もある。
【0065】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、該液晶セルの少なくとも一方に配置された本発明の粘着剤層付き偏光板とを含み、前記偏光板の粘着剤層によって液晶セルに貼合されていることを特徴とする。
【0066】
(一般的な液晶表示装置の構成)
液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光板、及び必要に応じて該液晶セルと該偏光板との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、更にガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm~2mmの厚さを有する。
【0067】
(液晶表示装置の種類)
本発明のフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(TwistedNematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(FerroelectricLiquid Crystal)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の偏光板は、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置でも使用することができる。
【0068】
本発明の偏光板は上記IPSモードの液晶セルの両面に貼合されると、黒表示時の斜め方向から見た時の光漏れが抑制され、特に好ましい。
【実施例
【0069】
以下実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明は以下の実施例に限定され制限されるものではない。
最初に偏光素子の片面にのみ透明保護フィルムを有する以下の層構成を例に本発明を説明する。
透明保護フィルム(PF1)/偏光素子(P)/硬化層(BL1)/粘着剤層
【0070】
(偏光素子の作製)
平均重合度2400、鹸化度99.9モル%の膜厚40μmのPVAフィルムを、25℃の温水中に120秒間浸漬し膨潤させた。次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=2/3)の濃度0.6重量%の水溶液に浸漬し、2.1倍に延伸させながらPVAフィルムを染色した。その後、60℃のホウ酸とヨウ化カリウム含有の酸性浴中で延伸を行い、水洗、乾燥を施し、膜厚15μmの偏光素子を作製した。
【0071】
(偏光板用接着剤の作製)
アセトアセチル基を含有する変性PVA系樹脂(日本合成化学社製:ゴーセネックスZ-410)を水に溶解し、固形分濃度3%に調整した水溶液Aを調製した。次いで、前記水溶液Aに対して0.5重量%となるようにマレイン酸を添加し、その後、架橋剤としてグリオキサールを添加した。グリオキサールの添加量は、Z-410の重量を100とした場合に、重量で5となるようにした。この水溶液に水酸化ナトリウムを加えてpHを2.5に調整して、偏光板用接着剤を得た。
【0072】
(セルロースアシレートフィルムの鹸化)
市販のセルロースアシレートフィルムTD60(富士フィルム(株)製:膜厚60μm)を、55℃に保った1.5mol/LのNaOH水溶液(鹸化液)に2分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、25℃の0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を30秒流水下に通して、フィルムを中性の状態にした。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムを作製した。
【0073】
(片面偏光板の作製)
上記で作成した鹸化処理したセルロースアシレートフィルムの片面に上記で作製した偏光板用接着剤を乾燥後の厚みが80nmになるように塗布し、該接着剤層を介して偏光素子1にロール貼合機を用いて貼合した後に60℃で10分間乾燥し、片面偏光板を得た。
【0074】
[硬化層形成用活性エネルギー線硬化性高分子組成物の調製]
以下、硬化層を形成する活性エネルギー線硬化性高分子組成物(以下、硬化層形成用組成物ともいう。)の水性液の調製法を示す。なお、塗布性等を考慮して、必要に応じて固形分濃度や溶液のPHを調整した。
下記に示すように調製した。
【0075】
(硬化層形成用組成物BLC-1の組成)
UCECOAT 7571(35重量%水溶液) 242.9質量部(固形分 85.0質量部)
A-TMPT 12.0質量部
イルガキュア2959 3.0質量部
【0076】
上記の配合に、固形分濃度を35重量%になるように純水を加え、混合後、超音波を照射した後、ポアサイズ5μmのフィルターを通して硬化層形成用組成物(BLC-1)を調製した。
硬化層形成用組成物BLC-1と同様に、硬化層形成用組成物BLC-2~BLC-8を調製した。それぞれの組成物割合を表1に示す。表1には各成分の固形分の含有質量比を示した。ここで固形分とは、溶媒(BLC-1においては、水:UCECOAT 7571に含有するものも含む)を除いた組成物のことである。
【0077】
表1で使用した材料を以下に示す。
・UCECOAT 7571:水分散性ポリウレタン(メタ)アクリレート(UV Curable Waterborne Resin)[Allnex社製]固形分濃度35重量%、数平均分子量Mn=10000、ポリオールとポリイソシアネートからなるポリウレタン構造を有す、自己乳化型エマルジョン、乾燥後タックフリー
・UCECOAT 7849:水分散性ポリウレタン(メタ)アクリレート(UV Curable Waterborne Resin)[Allnex社製]固形分濃度35重量%、数平均分子量Mn=10000、ポリオールとポリイソシアネートからなるポリウレタン構造を有す、自己乳化型エマルジョン、乾燥後タックフリー
【0078】
・A-TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート[新中村化学工業(株)製]粘度:110(mPa・s/25℃)、アクリル当量:98.7
・ビスコート#360:トリメチロールプロパンEO3.5モル付加物 トリアクリレート[大阪有機化学工業(株)製]粘度:65(mPa・s/25℃)、アクリル当量:147.7
・A-DCP:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート[新中村化学工業(株)製]粘度:120(mPa・s/25℃)、アクリル当量:152.0
・BS-710:ペンタエリスリトールポリアクリレート(主成分がペンタエリスリトールテトラアクリレート)[荒川化学工業(株)製]粘度:500(mPa・s/25℃)、アクリル当量:88.0
【0079】
・BS-730:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート[荒川化学工業(株)製]粘度:560(mPa・s/25℃)、アクリル当量:116.8
・イルガキュア2959:光重合開始剤[BASF社製]
・イルガキュア1173:光重合開始剤[BASF社製]
・PSA1:後記(粘着剤組成物の調製)参照
・PSA2:後記(粘着剤組成物の調製)参照
【0080】
(硬化層付き片面偏光板の作製)
上記で作製した片面偏光板の偏光子上にバーコーターを用いて、硬化層形成用組成物(BLC-1)を乾燥後の膜厚が2.5μmになるように塗布した後に、60℃で10分間乾燥させた。その後、更に大気圧で出力160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量500mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ硬化層付き片面偏光板を作製した。(偏光板1)
【0081】
(偏光板2~14の作製)
硬化層形成用組成物の種類と硬化層の膜厚を表1に示したように変更した以外は偏光板1と同様に片面偏光板2~14を作製した。また、片面偏光板13と14は偏光素子上に硬化層を積層しなかった。
【0082】
次に粘着剤層付き偏光板について説明する。
(粘着剤組成物の調製)
国際公開2010/064551号パンフレットの実施例12に従い帯電防止剤として有機カチオンと含フッ素アニオンからなるイオン化合物である1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオンと(CF3SO22Nアニオンからなるイオン液体を含有する粘着剤組成物(PSA1)を調製した。
同様に比較例11に従いイオン性液体を含有しない粘着剤組成物(PSA2)を調製した。
【0083】
(粘着剤層付き偏光板1の作製)
剥離処理されたPET剥離フィルム上にドクターブレードを用いて粘着剤層を塗布し、90℃で3分乾燥した。乾燥後、上記の偏光板1の硬化層側(保護フィルムを積層していない側)に貼り合わせ、23℃、湿度65%の条件で7日放置し、粘着剤層付き偏光板1を得た。粘着剤層の厚みは15μmであった。
【0084】
(粘着剤層付き偏光板2~14の作製)
粘着剤層付き偏光板1に対し、硬化層形成用組成物の種類、硬化層の膜厚、粘着剤組成物の種類を表2に示したものに変更した以外は粘着剤層付き偏光板1と同様にして粘着剤層付き偏光板2~14を得た。
尚、粘着剤層付き偏光板13と14は硬化層がなく、偏光素子に直接粘着剤層が積層されている。
【0085】
(湿熱耐久試験)
上記で作製した粘着型偏光板を35mm×35mmの大きさに裁断し、剥離フィルムを剥がし、50mm×50mm、厚さ1mmのガラス板の片面にラミネーターロールを用いて貼合した後に、50℃5気圧の条件で20分間オートクレーブに保持し、試験片を得た。各水準の対し2枚ずつ試験片を作製した。
作製した試験片を温度60℃、湿度90%RHの条件で500時間投入した。投入前後の偏光フィルム(試験片)の偏光度を、日本分光(株)製のV7100を用いて測定し、以下の式に従って偏光度変化ΔPEを算出した。
【0086】
偏光度の変化量ΔPE=(投入前の偏光度)-(投入後の偏光度)
なお、偏光度の算出は以下の方法に従った。
作製した2枚の偏光板を吸収軸を平行に重ね合わせた場合の透過率(Tp)及び吸収軸を直交させて重ね合わせた場合の透過率(Tc’)を測定し、下記式から偏光度(PE)を算出した。
偏光度PE = ((Tp-Tc’)/(Tp+Tc’))0.5 × 100 [%]
本発明において、湿熱耐久試験後のΔPEは1.0%以下であることが必要であり、0.50%以下が好ましく、0.10%以下がより好ましく、0.02%以下が特に好ましい。
【0087】
(表面抵抗値の測定)
粘着型偏光板のPET剥離フィルムを剥がした後、粘着剤層表面の表面抵抗値を超絶縁抵抗/微小電流計TR8601((株)アドバンテスト製)を用いて測定し、表面抵抗値(Ω/□)の常用対数(logSR)で示した。logSRがより低い方が、帯電防止性が良好であり、本発明においては14.0以下であることが必要であり、13.0以下であることがより好ましい。
【0088】
表1に示す結果から以下のことが明らかである。
1.本発明のエチレン性不飽和基を有する高分子化合物を主成分とする活性エネルギー線硬化性組成物の水溶液より形成された硬化層を有する片面偏光板の硬化層上に帯電防止剤を含有する粘着剤層を積層した粘着剤付き偏光板は、湿熱耐久試験後の偏光度低下がなく耐湿熱耐久性も良好である。
2.活性エネルギー線硬化性組成物がエチレン性不飽和基を有する高分子化合物を主成分とし、更に多官能(メタ)アクリレート化合物を含む場合、湿熱耐久試験後の偏光度低下がより少なく更に耐湿熱耐久性も良好である。
【0089】
【表1】
【0090】
次に硬化層形成用組成物に密着強化剤を用いた例を示す。
(硬化層形成用組成物BLC-9の調製)
下記に示すように固形分の組成を変更した以外は硬化層形成用組成物(BLC-1)と同様にして硬化層形成用組成物(BLC-9)を調製した。
【0091】
(硬化層形成用組成物BLC-9の固形分の組成)
UCECOAT 7571 84.0質量部
A-TMP 12.0質量部
4-ビニルフェニルボロン酸 1.0質量部
イルガキュア2959 3.0質量部
【0092】
(硬化層形成用組成物BLC-9の調製)
硬化層形成用組成物(BLC-9)に対し4-ビニルフェニルボロン酸を以下のボロン酸化合物Aに代えた以外はと同様にして硬化層形成用組成物(BLC-10)を調製した。
【0093】
(BLC-9)と(BLC10)で新たに使用した材料を以下に示す。
・4-ビニルフェニルボロン酸:試薬[東京化成工業(株)製]
・ボロン酸化合物A:下記化学式参照
【0094】
【化1】
【0095】
(粘着剤付き偏光板15と16の作製と偏光板15と16の評価)
粘着剤層付き偏光板1に対し硬化層形成用組成物を(BLC-9)と(BLC-10)に代えた以外は同様にしてそれぞれ粘着剤付き偏光板15と16を作製した。
また、粘着剤付き偏光板1と同様にして粘着剤偏光板22または偏光板23に代えた以外は同様にして、粘着剤付き偏光板15と16を評価した。結果を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
表2に示す結果から硬化層形成用組成物に密着強化剤としてボロン酸化合物を用いても湿熱耐久試験後の偏光度低下がなく耐湿熱耐久性も良好であることが明らかである。
【0098】
次に偏光素子の両面に透明保護フィルムを有する以下の2つの層構成を例に本発明を説明する。
透明保護フィルム(PF1)/偏光素子(P)/硬化層(BL1)/透明保護フィルム(PF2)/粘着剤層
透明保護フィルム(PF1)/硬化層(BL2)/偏光素子(P)/硬化層(BL1)/透明保護フィルム(PF2)/粘着剤層
【0099】
(紫外線吸収剤を含有しないセルロースアシレートフィルムの作製)
特開2012-177894号公報段落[0160]~[0163]を参考に主流の厚みを14μmになるように流量を調節した以外は同様にして、膜厚が20μmの紫外線吸収剤を含有しないセルロースアシレートフィルム(CA-1)を作製した。
【0100】
(セルロースアシレートフィルムCA-1の鹸化)
前述のセルロースアシレートフィルムTD60の鹸化と同様にして、鹸化処理したセルロースアシレートフィルム(CA-1)を作製した。
(片面偏光板の作製)
実施例1と同様にして片面偏光板を作製した。
【0101】
(偏光板21の作製)
前記実施例1と同様の方法で偏光素子を作製した。
鹸化処理したセルロースアシレートフィルムTD60の片面に偏光板用接着剤を乾燥後の厚みが80nmになるように塗布すると同時に、鹸化処理したセルロースアシレートフィルム(CA-1)にも硬化性組成物(BLC-6)を乾燥後の厚みが2.5μmになるように塗布しながら、ロール貼合機を用いて、偏光板用接着剤、硬化性組成物(BLC-6)を介して偏光素子の両側に鹸化処理したセルロースアシレートフィルムTD60と鹸化処理したセルロースアシレートフィルム(CA-1)をそれぞれ貼合した。
【0102】
貼合後、65℃で10分間乾燥し、大気圧で出力160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量1000mJ/cmの紫外線を鹸化処理したセルロースアシレートフィルム(CA-1)側から照射して塗布層を硬化させ硬化層付き偏光板21を作製した。
【0103】
(偏光板22の作製)
偏光板21に対し、鹸化処理したセルロースアシレートフィルムTD60の片面に偏光板用接着剤の代わりに、硬化性組成物(BLC-6)を乾燥後の厚みが1μmになるように塗布した以外は偏光板21と同様にして偏光板22を作製した。
【0104】
(偏光板23の作製)
偏光板21に対し、鹸化処理したセルロースアシレートフィルム(CA-1)の片面に硬化性組成物(BLC-6)の代わりに偏光板用接着剤を乾燥後の厚みが80nmになるように塗布した以外は偏光板21と同様にして偏光板23を作製した。
【0105】
(粘着剤層付き偏光板21の作製)
剥離処理されたPET剥離フィルム上にドクターブレードを用いて粘着剤層を塗布し、90℃で3分乾燥した。乾燥後、上記の偏光板21のセルロースアシレートフィルム(CA-1)側に貼り合わせ、23℃、湿度65%の条件で7日放置し、粘着剤層付き偏光板21を得た。粘着剤層の厚みは15μmであった。
【0106】
(粘着剤層付き偏光板22、23の作製)
粘着剤層付き偏光板21に対し偏光板22または偏光板23に代えた以外は同様にして、夫々粘着剤付き偏光板22と粘着剤付き偏光板23を作製した。
【0107】
(粘着剤付き偏光板21~23の評価)
粘着剤層付き偏光板1と同様にして粘着剤付き偏光板21~23を評価した。結果を表2に示す。
【0108】
【表3】
【0109】
表3に示す結果から以下のことが明らかである。
1.両面に透明保護フィルムを有し、帯電防止剤を含有する粘着剤層積層した粘着剤付き偏光板においても、粘着剤層側に透明保護フィルムと偏光素子との間に本発明の硬化層を積層することで、湿熱耐久試験後の偏光度低下がなくなり湿熱耐久性も良好である。