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特許7037127アクリルアミド構造とアクリル酸エステル構造を含むポリマーを含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】アクリルアミド構造とアクリル酸エステル構造を含むポリマーを含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20220309BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20220309BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220309BHJP
   C08F 220/54 20060101ALI20220309BHJP
   C08F 220/12 20060101ALI20220309BHJP
   C08F 8/30 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/26 511
G03F7/11 502
G03F7/20 521
G03F7/20 501
C08F220/54
C08F220/12
C08F8/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019207959
(22)【出願日】2019-11-18
(62)【分割の表示】P 2016521041の分割
【原出願日】2015-05-11
(65)【公開番号】P2020052402
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2019-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2014106314
(32)【優先日】2014-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 涼
(72)【発明者】
【氏名】染谷 安信
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴文
(72)【発明者】
【氏名】西田 登喜雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 力丸
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/161126(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
G03F 7/26
G03F 7/20
C08F 220/54
C08F 220/12
C08F 8/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される単位構造と下記式(2)で表される単位構造からなるポリマー(A)、少なくとも2つのブロックイソシアネート基を有する架橋性化合物(B)、及び溶剤(C)を含む段差基板へ塗布するためのレジスト下層膜形成組成物であって、該ポリマー(A)は、該式(1)で表される単位構造と該式(2)で表される単位構造がモル%で式(1)で表される単位構造:式(2)で表される単位構造=25乃至60:75乃至40の割合で共重合しているポリマーであることを特徴とする該組成物。
【化1】
(式(1)、式(2)中、R及びRはそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、XはNH基を示し、Rはベンゼン環又はナフタレン環を示し、Rはヒドロキシル基を示し、Xは酸素原子を示し、Yはメチル基を示す。)
【請求項2】
がベンゼン環である請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
架橋性化合物(B)が、前記ポリマー(A)の質量に対して1乃至40質量%の割合で含まれる請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
更に架橋触媒を含む請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組
成物。
【請求項5】
半導体基板上に請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からレジスト下層膜を形成する工程、該レジスト下層膜上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像によりレジスト膜にレジストパターンを形成する工程、形成されたレジストパターンによりレジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
半導体基板上に請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からレジスト下層膜を形成する工程、該レジスト下層膜上に無機ハードマスク層を形成する工程、更に無機ハードマスク層上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像によりレジスト膜にレジストパターンを形成する工程、形成されたレジストパターンにより無機ハードマスク層をエッチングする工程、パターン化された無機ハードマスク層によりレジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板加工時に有効なリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、並びに該レジスト下層膜形成組成物を用いるレジストパターン形成法、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体デバイスの製造において、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。前記微細加工はシリコンウェハー等の被加工基板上にフォトレジスト組成物の薄膜を形成し、その上に半導体デバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたフォトレジストパターンを保護膜としてシリコンウェハー等の被加工基板をエッチング処理する加工法である。ところが、近年、半導体デバイスの高集積度化が進み、使用される活性光線もKrFエキシマレーザー(248nm)からArFエキシマレーザー(193nm)へと短波長化される傾向にある。これに伴い活性光線の基板からの乱反射や定在波の影響が大きな問題であった。そこでフォトレジストと被加工基板の間に反射防止膜(BottomAnti-ReflectiveCoating、BARC)を設ける方法が広く検討されるようになってきた。例えば、アクリルアミド構造を含むポリマーを含む感光性レジスト下層膜形成用組成物が開示されている(特許文献1参照)。
ヒドロキシアクリルアミドの単位構造を有するポリマーを含むレジスト下層膜形成用組成物が開示されている(特許文献2参照)。
ヒドロキシアルキレンメタクリルアミドの単位構造と芳香族アルキレンメタクリレートの単位構造とを含むポリマーを含む反射防止膜形成用組成物が開示されている(特許文献3参照)。
【0003】
今後、レジストパターンの微細化が進行すると、解像度の問題やレジストパターンが現像後に倒れるという問題が生じ、レジストの薄膜化が望まれてくる。そのため、基板加工に充分なレジストパターン膜厚を得ることが難しく、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間に作成されるレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になってきた。このようなプロセス用のレジスト下層膜として従来の高エッチレート性(エッチング速度の早い)レジスト下層膜とは異なり、レジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜、レジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜や半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜が要求されるようになってきている。
アクリルアミド構造を有し、アルカリ水溶液で除去可能な有機ハードマスク層形成用組成物が開示されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2005/111724号パンフレット
【文献】特開2009-025670
【文献】特開2001-027810
【文献】国際公開第2012/161126号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、半導体装置製造のリソグラフィープロセスに用いるためのレジスト下層膜形成組成物を提供することである。また本発明の目的は、無機ハードマスク層とのインターミキシングが起こらず、優れたレジストパターンが得られ、レジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜、レジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜や半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を提供することにある。また本発明の目的は、248nm、193nm、157nm等の波長の照射光を微細加工に使用する際に基板からの反射光を効果的に吸収する性能をレジスト下層膜に付与することにある。さらに、本発明の目的はレジスト下層膜形成組成物を用いたレジストパターンの形成方法を提供することにある。そして、上層からのパターン転写や基板の加工時にドライエッチングが可能であり、基板加工後はアルカリ水溶液で除去が可能なレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は第1観点として、下記式(1)で表される単位構造と下記式(2)で表される単位構造を含むポリマー(A)、ブロックイソシアネート基、メチロール基又は炭素原子数1乃至5のアルコキシメチル基より選ばれる少なくとも2つの基を有する架橋性化合物(B)、及び溶剤(C)を含むレジスト下層膜形成組成物であって、該ポリマー(A)は、該式(1)で表される単位構造と該式(2)で表される単位構造がモル%で式(1)で表される単位構造:式(2)で表される単位構造=25乃至60:75乃至40の割合で共重合しているポリマーであることを特徴とする該組成物、
【化1】
(式(1)、式(2)中、R及びRはそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、X及びXはそれぞれNH基又は酸素原子を示し、Rは芳香族環を示し、Rはヒドロキシル基又はカルボキシル基を示し、Yは置換されていても良い炭素原子数1乃至10のアルキル基を示す。)
第2観点として、Rがベンゼン環である第1観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、第3観点として、架橋性化合物(B)が、前記ポリマー(A)の質量に対して1乃至40質量%の割合で含まれる第1観点又は第2観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第4観点として、更に架橋触媒を含む第1観点乃至第3観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物、
第5観点として、半導体基板上に第1観点乃至第4観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物からレジスト下層膜を形成する工程、該レジスト下層膜上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像によりレジスト膜にレジストパターンを形成する工程、形成されたレジストパターンによりレジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む、半導体装置の製造方法、及び
第6観点として、半導体基板上に第1観点乃至第4観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物からレジスト下層膜を形成する工程、該レジスト下層膜上に無機ハード
マスク層を形成する工程、更に無機ハードマスク層上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像によりレジスト膜にレジストパターンを形成する工程、形成されたレジストパターンにより無機ハードマスク層をエッチングする工程、パターン化された無機ハードマスク層によりレジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む、半導体装置の製造方法である。
特に本発明は、第1観点のレジスト下層膜形成組成物が、下記式(1)で表される単位構造と下記式(2)で表される単位構造を含むポリマー(A)、少なくとも2つのブロックイソシアネート基を有する架橋性化合物(B)、及び溶剤(C)を含む段差基板へ塗布するためのレジスト下層膜形成組成物であって、該ポリマー(A)は、該式(1)で表される単位構造と該式(2)で表される単位構造がモル%で式(1)で表される単位構造:式(2)で表される単位構造=25乃至60:75乃至40の割合で共重合しているポリマーであることを特徴とする該組成物に関する。
【化2】
(式(1)、式(2)中、R及びRはそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、X及びXはそれぞれNH基又は酸素原子を示し、Rは芳香族環を示し、Rはヒドロキシル基又はカルボキシル基を示し、Yは置換されていても良い炭素原子数1乃至10のアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜は、その上層にある無機ハードマスク層とインターミキシングを起こすことなく、良好なレジストのパターン形状を形成することができる。
また、本発明のレジスト下層膜形成組成物により、レジストに近いドライエッチング速度の選択比、レジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比や半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つ、優れたレジスト下層膜を提供することができる。
このため本発明のレジスト下層膜形成組成物から得られたレジスト下層膜は、上層の無機ハードマスク層に転写されたレジストパターンをドライエッチングでレジスト下層膜に転写可能である。更にレジスト下層膜に転写されたレジストパターンはドライエッチングにより半導体基板の加工が可能である。
さらに、本発明のレジスト下層膜形成組成物はそれにより形成されるレジスト下層膜に基板からの反射を効率的に抑制する性能を付与することも可能であり、該レジスト下層膜は露光光の反射防止膜としての効果を併せ持つこともできる。
従って、本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜は、平坦化膜、レジスト層の汚染防止膜、ドライエッチ選択性を有する膜として用いることができる。これにより、半導体製造のリソグラフィープロセスにおけるレジストパターン形成を、容易に、精度良く行うことができるようになる。
また本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は熱安定性が高いため、それから形成されるレジスト下層膜では、無機ハードマスク層形成のための真空蒸着時や、焼成時の分解物による上層膜への汚染が防げ、また、焼成工程の温度マージンに余裕を持た
せることができるものである。
さらに、本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物から形成されたレジスト下層膜は半導体基板を加工した後、アルカリ水溶液による除去が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は下記式(1)で表される単位構造と下記式(2)で表される単位構造を含むポリマー(A)、ブロックイソシアネート基、メチロール基又は炭素原子数1乃至5のアルコキシメチル基より選ばれる少なくとも2つの基を有する架橋性化合物(B)、及び溶剤(C)を含むレジスト下層膜形成組成物であって、該ポリマー(A)は該式(1)で表される単位構造と該式(2)で表される単位構造がモル%で式(1)で表される単位構造:式(2)で表される単位構造=25乃至60:75乃至40の割合で共重合しているポリマーであることを特徴とする該組成物である。
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、必要に応じて酸発生剤、界面活性剤等の添加剤を含むことができる。
この組成物の固形分は0.1乃至70質量%、または0.1乃至60質量%である。固形分はレジスト下層膜形成組成物から溶剤(C)を除いた残りの成分の含有割合である。固形分中に上記ポリマー(A)を1乃至99.9質量%、または1乃至99質量%、または50乃至98質量%の割合で含有することができる。上記ポリマー(A)の重量平均分子量は例えば1000乃至1000000、又は1000乃至100000、又は1000乃至50000の範囲にすることができる。
【0009】
式(1)、式(2)中、R及びRはそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、X及びXはそれぞれNH基又は酸素原子を示し、Rは芳香族環を示し、Rはヒドロキシル基又はカルボキシル基を示し、Yは置換されていても良い炭素原子数1乃至10のアルキル基を示す。
【0010】
前記芳香族環としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環等が挙げられるが、特にベンゼン環が好ましい。
【0011】
前記アルキル基における置換基としてはヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基等が挙げられる。
前記炭素原子数1乃至10のアルキル基としては例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル
-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等が挙げられる。
【0012】
本発明に用いられるポリマー(A)の構造は以下に例示することができる。
【化3】
【化4】
【化5】
【0013】
本発明に用いられる架橋性化合物(B)は、ブロックイソシアネート基、メチロール基又は炭素原子数1乃至5のアルコキシメチル基を少なくとも2つ有する架橋性化合物である。
架橋性化合物(B)がポリマー(A)に対して1乃至40質量%、好ましくは1乃至30質量%の割合でレジスト下層膜形成組成物に含まれる。
【0014】
前記ブロックイソシアネート基とは、イソシアネート基(-N=C=O)が適当な保護基によりブロックされた有機基である。
ブロックイソシアネート基は、イソシアネート基とブロック化剤を反応させてブロックイソシアネート基を形成することができる。
【0015】
ポリマー(A)中のヒドロキシル基又はカルボキシル基と反応する時にはブロック化剤が脱離して、ヒドロキシル基又はカルボキシル基とイソシアネート基が反応し架橋構造を形成する。
【0016】
ブロック化剤としては、イソシアネートと反応可能な活性水素含有化合物であり、例えばアルコール、フェノール、多環フェノール、アミド、イミド、イミン、チオール、オキシム、ラクタム、活性水素含有複素環、活性メチレン含有化合物が挙げられる。
【0017】
ブロック化剤としてのアルコールは例えば炭素原子数1乃至40のアルコールが挙げら
れ、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、エチレンクロルヒドリン、1,3-ジクロロ-2-プロパノール、t-ブタノール、t-ペンタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、ブチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール等が例示される。
【0018】
ブロック化剤としてのフェノールは例えば炭素原子数6乃至20のフェノール類が挙げられ、フェノール、クロロフェノール、ニトロフェノール等が例示される。
ブロック化剤としてのフェノール誘導体は例えば炭素原子数6乃至20のフェノール誘導体が挙げられ、パラ-t-ブチルフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール等が例示される。
【0019】
ブロック化剤としての多環フェノールは例えば炭素原子数10乃至20の多環フェノールが挙げられ、それらはフェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族縮合環であり、ヒドロキシナフタレン、ヒドロキシアントラセン等が例示される。
【0020】
ブロック化剤としてのアミドは例えば炭素原子数1乃至20のアミドが挙げられ、アセトアニリド、ヘキサンアミド、オクタンジアミド、スクシンアミド、ベンゼンスルホンアミド、エタンジアミド等が例示される。
【0021】
ブロック化剤としてのイミドは例えば炭素原子数6乃至20のイミドが挙げられ、シクロヘキサンジカルボキシイミド、シクロヘキサエンジカルボキシイミド、ベンゼンジカルボキシイミド、シクロブタンジカルボキシイミド、カルボジイミド等が例示される。
【0022】
ブロック化剤としてのイミンは例えば炭素原子数1乃至20のイミンが挙げられ、ヘキサン-1-イミン、2-プロパンイミン、エタン-1,2-イミン等が例示される。
【0023】
ブロック化剤としてのチオールは例えば炭素原子数1乃至20のチオールが挙げられ、エタンチオール、ブタンチオール、チオフェノール、2,3-ブタンジチオール等が例示される。
【0024】
ブロック化剤としてのオキシムは例えば炭素原子数1乃至20のオキシムであり、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジメチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、ホルムアミドオキシム、アセトアルドキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等が例示される。
【0025】
ブロック化剤としてのラクタムは例えば炭素原子数4乃至20のラクタムであり、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピルラクタム、γ-ピロリドン、ラウリルラクタム等が例示される。
【0026】
ブロック化剤としての活性水素含有複素環化合物は例えば炭素原子数3乃至30の活性水素含有複素環化合物であり、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリンジン、インドール、インダゾール、プリン、カルバゾール等が例示される。
【0027】
ブロック化剤としての活性メチレン含有化合物としては例えば炭素原子数3乃至20の
活性メチレン含有化合物であり、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等が例示される。
【0028】
ブロックイソシアネート基を少なくとも2つ有する架橋性化合物(B)は、その具体例としては、例えばタケネート〔登録商標〕B-830、同B-870N(三井化学(株)製)、VESTANAT〔登録商標〕B1358/100(エボニックデグサ社製)が挙げられる。
【0029】
メチロール基又は炭素原子数1乃至5のアルコキシメチル基を少なくとも2つ有する架橋性化合物(B)は、メラミン系、置換尿素系、またはそれらのポリマー系等が挙げられる。例えばメトキシメチル化グリコールウリル、ブトキシメチル化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグワナミン、ブトキシメチル化ベンゾグワナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、メトキシメチル化チオ尿素、またはメトキシメチル化チオ尿素等の化合物である。また、これらの化合物の縮合体も使用することができる。
【0030】
本発明では上記架橋反応を促進するための触媒として、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp-トルエンスルホン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸等の酸性化合物又は/及び2,4,4,6-テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2-ニトロベンジルトシレート、その他有機スルホン酸アルキルエステル等の熱酸発生剤を配合する事が出来る。配合量は全固形分に対して、0.0001乃至20質量%、好ましくは0.0005乃至10質量%、好ましくは0.01乃至3質量%である。
【0031】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、リソグラフィー工程で上層に被覆されるフォトレジストとの酸性度を一致させる為に、光酸発生剤を添加する事が出来る。好ましい光酸発生剤としては、例えば、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のオニウム塩系光酸発生剤類、フェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロゲン含有化合物系光酸発生剤類、ベンゾイントシレート、N-ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート等のスルホン酸系光酸発生剤類等が挙げられる。上記光酸発生剤は全固形分に対して、0.2乃至10質量%、好ましくは0.4乃至5質量%である。
【0032】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物には、上記以外に必要に応じて更なる吸光剤、レオロジー調整剤、接着補助剤、界面活性剤などを添加することができる。
【0033】
更なる吸光剤としては例えば、「工業用色素の技術と市場」(CMC出版)や「染料便覧」(有機合成化学協会編)に記載の市販の吸光剤、例えば、C.I.DisperseYellow1,3,4,5,7,8,13,23,31,49,50,51,54,60,64,66,68,79,82,88,90,93,102,114及び124;C.I.DisperseOrange1,5,13,25,29,30,31,44,57,72及び73;C.I.DisperseRed1,5,7,13,17,19,43,50,54,58,65,72,73,88,117,137,143,199及び210;C.I.DisperseViolet43;C.I.DisperseBlue96;C.I.Fluorescent Brightening Agent 112,135及び163;C.I.SolventOrange2及び45;C.I.SolventRed1,3,8,23,24,25,27及び49;C.I.PigmentGreen 10;C.I.PigmentBrown2等を好適に用いることができる。
上記吸光剤は通常、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下の割合で配合される。
【0034】
レオロジー調整剤は、主にレジスト下層膜形成組成物の流動性を向上させ、特にベーキング工程において、レジスト下層膜の膜厚均一性の向上やホール内部へのレジスト下層膜形成組成物の充填性を高める目的で添加される。具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、またはノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。これらのレオロジー調整剤は、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常30質量%未満の割合で配合される。
【0035】
接着補助剤は、主に基板あるいはレジストとレジスト下層膜の密着性を向上させ、特に現像においてレジストが剥離しないようにするための目的で添加される。具体例としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’ービス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、ビニルトリクロロシラン、γークロロプロピルトリメトキシシラン、γーアミノプロピルトリエトキシシラン、γーグリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2ーメルカプトベンズイミダゾール、2ーメルカプトベンゾチアゾール、2ーメルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物や、1,1ージメチルウレア、1,3ージメチルウレア等の尿素、またはチオ尿素化合物を挙げることができる。これらの接着補助剤は、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常5質量%未満、好ましくは2質量%未満の割合で配合される。
【0036】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物には、ピンホールやストレーション等の発生がなく、表面むらに対する塗布性をさらに向上させるために、界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロツクコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトツプEF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製、商品名)、メガファックF171、F173、R-30、R-40、R-40LM(大日本インキ(株)製、商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製、商品名)、アサヒガードAG710、サーフロンSー382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC1
06(旭硝子(株)製、商品名)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤の配合量は、本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下である。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0037】
本発明で、上記のポリマー及び架橋剤成分、架橋触媒等を溶解させる溶剤(C)としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトシキ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等を用いることができる。これらの有機溶剤は単独で、または2種以上の組合せで使用される。
【0038】
さらに、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の高沸点溶剤を混合して使用することができる。これらの溶剤の中でプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、及びシクロヘキサノン等がレベリング性の向上に対して好ましい。
【0039】
本発明に用いられるレジストはフォトレジストや電子線レジスト等を用いることができる。
【0040】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜の上部に塗布されるフォトレジストとしてはネガ型、ポジ型いずれも使用でき、ノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、アルカリ可溶性バインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、骨格にSi原子を有するフォトレジスト等があり、例えば、ロームアンドハーツ社製、商品名APEX-Eが挙げられる。
【0041】
また本発明の組成物から形成されるリソグラフィー用レジスト下層膜の上部に塗布される電子線レジストとしては、例えば主鎖にSi-Si結合を含み末端に芳香族環を含んだ樹脂と電子線の照射により酸を発生する酸発生剤から成る組成物、又はヒドロキシ基がN-カルボキシアミンを含む有機基で置換されたポリ(p-ヒドロキシスチレン)と電子線の照射により酸を発生する酸発生剤から成る組成物等が挙げられる。後者の電子線レジスト組成物では、電子線照射によって酸発生剤から生じた酸がポリマー側鎖のN-カルボキシアミノキシ基と反応し、ポリマー側鎖がヒドロキシ基に分解しアルカリ可溶性を示しアルカリ現像液に溶解し、レジストパターンを形成するものである。この電子線の照射により酸を発生する酸発生剤は1,1-ビス[p-クロロフェニル]-2,2,2-トリクロ
ロエタン、1,1-ビス[p-メトキシフェニル]-2,2,2-トリクロロエタン、1,1-ビス[p-クロロフェニル]-2,2-ジクロロエタン、2-クロロ-6-(トリクロロメチル)ピリジン等のハロゲン化有機化合物、トリフェニルスルフォニウム塩、ジフェニルヨウドニウム塩等のオニウム塩、ニトロベンジルトシレート、ジニトロベンジルトシレート等のスルホン酸エステルが挙げられる。
【0042】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を使用して形成したレジスト下層膜を有するレジストの現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びコリンである。
【0043】
次に本発明のレジストパターン形成法について説明すると、精密集積回路素子の製造に使用される基板(例えばシリコン/二酸化シリコン被覆、ガラス基板、ITO基板などの透明基板)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法によりレジスト下層膜形成組成物を塗布後、ベークして硬化させ塗布型レジスト下層膜を作成する。ここで、レジスト下層膜の膜厚としては0.01乃至3.0μmが好ましい。また塗布後ベーキングする条件としては80乃至400℃で0.5乃至120分間である。その後レジスト下層膜上に直接、または必要に応じて1層乃至数層の塗膜材料を塗布型レジスト下層膜上に成膜した後、レジストを塗布し、所定のマスクを通して光又は電子線の照射を行い、現像、リンス、乾燥することにより良好なレジストパターンを得ることができる。必要に応じて光又は電子線の照射後加熱(PEB:PostExposureBake)を行うこともできる。そして、レジストが前記工程により現像除去された部分のレジスト下層膜をドライエッチングにより除去し、所望のパターンを基板上に形成することができる。
【0044】
上記フォトレジストでの露光光は、近紫外線、遠紫外線、又は極端紫外線(例えば、EUV)等の化学線であり、例えば248nm(KrFレーザー光)、193nm(ArFレーザー光)、157nm(Fレーザー光)等の波長の光が用いられる。光照射には、光酸発生剤から酸を発生させることができる方法であれば、特に制限なく使用することができ、露光量1乃至2000mJ/cm、または10乃至1500mJ/cm、または50乃至1000mJ/cmによる。
また電子線レジストの電子線照射は、例えば電子線照射装置を用い照射することができる。
【0045】
本発明では、半導体基板上に本発明のレジスト下層膜形成組成物から該レジスト下層膜を形成する工程、その上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、形成されたレジストパターンにより該レジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を経て半導体装置を製造することができる。
【0046】
今後、レジストパターンの微細化が進行すると、解像度の問題やレジストパターンが現像後に倒れるという問題が生じ、レジストの薄膜化が望まれてくる。そのため、基板加工に充分なレジストパターン膜厚を得ることが難しく、レジストパターンだけではなく、レ
ジストと加工する半導体基板との間に作成されるレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になってきた。このようなプロセス用のレジスト下層膜として従来の高エッチレート性レジスト下層膜とは異なり、レジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜、レジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜や半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜が要求されるようになってきている。また、このようなレジスト下層膜には反射防止能を付与することも可能であり、従来の反射防止膜の機能を併せ持つことができる。
【0047】
一方、微細なレジストパターンを得るために、レジスト下層膜のドライエッチング時にレジストパターンとレジスト下層膜をレジスト現像時のパターン幅より細くするプロセスも使用され始めている。このようなプロセス用のレジスト下層膜として従来の高エッチレート性反射防止膜とは異なり、レジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つレジスト下層膜が要求されるようになってきている。また、このようなレジスト下層膜には反射防止能を付与することも可能であり、従来の反射防止膜の機能を併せ持つことができる。
【0048】
そのような薄膜レジストを用いるプロセスでは、レジストパターンをエッチングプロセスでその下層膜に転写し、その下層膜をマスクとして基板加工を行うプロセスや、レジストパターンをエッチングプロセスでその下層膜に転写し、さらに下層膜に転写されたパターンを異なるガス組成を用いてその下層膜に転写するという行程を繰り返し、最終的に基板加工を行う。本発明のレジスト下層膜形成用組成物及びそれから形成されるレジスト下層膜はこのプロセスに有効であり、本発明の組成物からのレジスト下層膜を用いて基板を加工する時は、加工基板(例えば、基板上の熱酸化ケイ素膜、窒化珪素膜、ポリシリコン膜等)に対して十分にエッチング耐性を有するものである。
【0049】
本発明では基板上に本発明のレジスト下層膜を成膜した後、レジスト下層膜上に直接、または必要に応じて1層乃至数層の塗膜材料をレジスト下層膜上に成膜した後、レジストを塗布することができる。これによりレジストのパターン幅が狭くなり、パターン倒れを防ぐ為にレジストを薄く被覆した場合でも、適切なエッチングガスを選択することにより基板の加工が可能になる。
【0050】
即ち、半導体基板上に本発明のレジスト下層膜形成組成物から該レジスト下層膜を形成する工程、その上にケイ素成分等を含有する塗膜材料による無機ハードマスク層を形成する工程、更にその上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、レジストパターンにより無機ハードマスク層をエッチングする工程、パターン化された無機ハードマスク層により該レジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を経て半導体装置を製造することができる。
【0051】
このレジスト下層膜形成組成物からレジスト下層膜を基板上に形成し、その上に無機ハードマスク層を形成し、その上にレジスト膜を形成し、露光と現像によりレジストパターンを形成し、形成されたレジストパターンを無機ハードマスク層に転写し、無機ハードマスク層に転写されたレジストパターンをレジスト下層膜に転写し、そのレジスト下層膜で半導体基板の加工を行うプロセスにおいて、本発明のレジスト下層膜形成組成物は以下の点で有利である。このプロセスで無機ハードマスク層は有機ポリマーや無機ポリマーと溶剤を含む塗布型の組成物によって行われる場合と、無機物の真空蒸着によって行われる場合がある。無機物(例えば、窒化酸化ケイ素)の真空蒸着では蒸着物がレジスト下層膜表面に堆積するが、その際にレジスト下層膜表面の温度が400℃前後に上昇する場合がある。
これに対し、本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、熱安定性が高いため、それから形成されるレジスト下層膜では、無機ハードマスクを形成するための真空蒸着時や焼成時の分解物による上層膜への汚染が防げ、また、焼成工程の温度マージンに余裕を持たせることができるものである。
【0052】
また、本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、反射防止膜としての効果を考慮した場合、光吸収部位が骨格に取りこまれているため、加熱乾燥時にフォトレジスト中への拡散物がなく、また、光吸収部位は十分に大きな吸光性能を有しているため反射光防止効果が高い。
【0053】
さらに、本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、プロセス条件によっては、光の反射を防止する機能と、更には基板とフォトレジストとの相互作用を防止する機能或いはフォトレジストに用いられる材料又はフォトレジストへの露光時に生成する物質の基板への悪作用を防ぐ機能とを有する膜を形成する材料としての使用が可能である。
【0054】
従って、本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物によるレジスト下層膜は、平坦化膜、レジスト層の汚染防止膜、ドライエッチ選択性を有する膜として用いることができる。これにより、半導体製造のリソグラフィープロセスにおけるレジストパターン形成を、容易に、精度良く行うことができる。
そして、半導体基板を加工した後、本発明の組成物から形成されたレジスト下層膜はアルカリ水溶液による除去が可能である。
【実施例
【0055】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定結果を記載した。
測定には東ソー(株)製GPC装置を用い、測定条件は以下の通りである。
GPCカラム:Shodex〔登録商標〕・Asahipak〔登録商標〕(昭和電工(株)製)
カラム温度:40℃
溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)
流量:0.6mL/分
標準試料:ポリスチレン(東ソー(株)製)
【0056】
合成例1
N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド20.0g(大阪有機化学工業株式会社製)、メタクリル酸メチル(東京化成工業株式会社製)11.3g、2,2-アゾビス(イソブチルニトリル)(東京化成工業株式会社製)3.7gをプロピレングリコールモノメチルエーテル140.2gに加えて溶解させた。この溶液をプロピレングリコールモノメチルエーテル58.5gが85℃に加熱されている、300mLフラスコ中に滴下し、滴下終了後約15時間撹拌した。反応終了後、この溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))45g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))45gを加えて室温で4時間イオン交換処理した後、イオン交換樹脂を取り除いた。得られたポリマーの構造は式(A-1)に示される構造に相当した。ポリマー中のN-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド単位:メタクリル酸メチル単位は50モル%:50モル%であった。ポリマー溶液のポリマー含有量(固形分)は12.0%であった。得られた化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量Mwは、5,000であった。
【0057】
合成例2
N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド16.0g(大阪有機化学工業株式会社製)、メタクリル酸メチル(東京化成工業株式会社製)21.1g、2,2-アゾビス(イソブチルニトリル)(東京化成工業株式会社製)4.3gをプロピレングリコールモノメチルエーテル165.5gに加えて溶解させた。この溶液をプロピレングリコールモノメチルエーテル68.9gが85℃に加熱されている、300mLフラスコ中に滴下し、滴下終了後約15時間撹拌した。反応終了後、この溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))42.0g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))42.0gを加えて室温で4時間イオン交換処理した後、イオン交換樹脂を取り除いた。得られたポリマーの構造は式(A-1)に示される構造に相当した。ポリマー中のN-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド単位:メタクリル酸メチル単位は30モル%:70モル%であった。ポリマー溶液のポリマー含有量(固形分)は13.7%であった。得られた化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量Mwは、9,000であった。
【0058】
比較合成例1
N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド5.0g(大阪有機化学工業株式会社製)、メタクリル酸メチル(東京化成工業株式会社製)0.7g、2,2-アゾビス(イソブチルニトリル)(東京化成工業株式会社製)0.7gをプロピレングリコールモノメチルエーテル25.5gに加えて溶解させた。この溶液をプロピレングリコールモノメチルエーテル10.6gが85℃に加熱されている、100mLフラスコ中に滴下し、滴下終了後約15時間撹拌した。反応終了後、この溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))6.4g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))6.4gを加えて室温で4時間イオン交換処理した後、イオン交換樹脂を取り除いた。得られたポリマーの構造は式(A-1)に示される構造に相当した。ポリマー中のN-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド単位:メタクリル酸メチル単位は80モル%:20モル%であった。ポリマー溶液のポリマー含有量(固形分)は12.6%であった。得られた化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量Mwは、4、700であった。
【0059】
比較合成例2
N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド1.0g(大阪有機化学工業株式会社製)、メタクリル酸メチル(東京化成工業株式会社製)5.1g、2,2-アゾビス(イソブチルニトリル)(東京化成工業株式会社製)0.7gをプロピレングリコールモノメチルエーテル27.1gに加えて溶解させた。この溶液をプロピレングリコールモノメチルエーテル11.3gが85℃に加熱されている、100mLフラスコ中に滴下し、滴下終了後約15時間撹拌した。反応終了後、この溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))6.8g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))6.8gを加えて室温で4時間イオン交換処理した後、イオン交換樹脂を取り除いた。得られたポリマーの構造は式(A-1)に示される構造に相当した。ポリマー中のN-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド単位:メタクリル酸メチル単位は10モル%:90モル%であった。ポリマー溶液のポリマー含有量(固形分)は13.5%であった。得られた化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量Mwは、4、300であった。
【0060】
実施例1
合成例1で得たポリマー溶液(N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド単位:メタクリル酸メチル単位を50モル%:50モル%で含有するポリマーの溶液)52.
7g、ブロックイソシアネート系架橋剤(デグザジャパン(株)製、商品名:VESTANAT〔登録商標〕B1358、イソホロンジイソシアネート構造に基づき、オキシム基で保護されたブロックポリイソシアネート)1.6g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:メガファック〔登録商標〕R-40)0.06gを、ピレングリコールモノメチルエーテルアセテート22.4g、プロピレングリコールモノメチルエーテル31.5g、ガンマブチルラクトン11.2gに溶解させ、多層膜によるリソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0061】
実施例2
合成例2で得たポリマー溶液(N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド単位:メタクリル酸メチル単位を30モル%:70モル%で含有するポリマーの溶液)3.9g、ブロックイソシアネート系架橋剤(デグザジャパン(株)製、商品名:VESTANAT〔登録商標〕B1358、イソホロンジイソシアネート構造に基づき、オキシム基で保護されたブロックポリイソシアネート)0.15g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:メガファック〔登録商標〕R-40)0.05gを、ピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.8g、プロピレングリコールモノメチルエーテル2.8g、ガンマブチルラクトン0.9gに溶解させ、多層膜によるリソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0062】
比較例1
比較合成例1で得たポリマー溶液(N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド単位:メタクリル酸メチル単位を80モル%:20モル%で含有するポリマーの溶液)8.9g、ブロックイソシアネート系架橋剤(デグザジャパン(株)製、商品名:VESTANAT〔登録商標〕B1358、イソホロンジイソシアネート構造に基づき、オキシム基で保護されたブロックポリイソシアネート)0.3g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:メガファック〔登録商標〕R-40)0.001gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル10.7gに溶解させ、多層膜によるリソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0063】
比較例2
比較合成例2で得たポリマー溶液(N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド単位:メタクリル酸メチル単位を10モル%:90モル%で含有するポリマーの溶液)8.3g、ブロックイソシアネート系架橋剤(デグザジャパン(株)製、商品名:VESTANAT〔登録商標〕B1358、イソホロンジイソシアネート構造に基づき、オキシム基で保護されたブロックポリイソシアネート)0.3g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:メガファック〔登録商標〕R-40)0.001gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル11.3gに溶解させ、多層膜によるリソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0064】
(フォトレジスト溶剤への溶出試験)
実施例1乃至2、及び比較例1乃至2で調整したレジスト下層膜形成組成物の溶液を、スピンコーターを用いてシリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で240℃1分間焼成し、レジスト下層膜(膜厚0.20μm)を形成した。これらのレジスト下層膜のレジストに使用する溶剤であるOKシンナー(製品名、東京応化工業(株)、プロピレングリコールモノメチルエーテル:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを容積比で7:3)に対する浸漬試験を行った。残膜率はレジスト下層膜をそれぞれスピンコーター上2000rpmの回転下に置き、それぞれ溶剤であるOKシンナーを60秒間滴下し、すぐに3000rpmで30秒間回転させた。結果を表1に示した。残膜率は(浸漬後の膜厚)/(浸漬前の膜厚)×100にて計算した結果である。
【0065】
【表1】
【0066】
(段差被覆性の評価)
実施例1乃至2、及び比較例1乃至2で調整したレジスト下層膜形成組成物の溶液を、スピンコーターにより、段差基板上に塗布した。使用した段差基板((株)アドバンテック製)は、段差の高さは400nm、ホールは開口部径/高さが120nm/120nmであり、酸化珪素膜が被覆された基板である。その後、240℃で60秒間ベークした試料の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。結果を表2に示した。ボイドなく被覆されているものを良好、ホール内にボイドが見られたものを不良と判断した。
【0067】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明はレジスト下層膜形成組成物を用いたレジストパターンの形成方法に用いることができ、そして、上層からのパターン転写や基板の加工時にドライエッチングが可能であり、基板加工後はアルカリ水溶液で除去が可能なレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成組成物を提供する。