IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社サイオクスの特許一覧 ▶ 住友化学株式会社の特許一覧

特許7037329窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法
<>
  • 特許-窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法 図1
  • 特許-窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法 図2
  • 特許-窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法 図3
  • 特許-窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法 図4
  • 特許-窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法 図5
  • 特許-窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法 図6
  • 特許-窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法 図7
  • 特許-窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法 図8
  • 特許-窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法 図9
  • 特許-窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法 図10
  • 特許-窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法 図11
  • 特許-窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法 図12
  • 特許-窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法 図13
  • 特許-窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、半導体装置選別プログラム、および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20220309BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20220309BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20220309BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C23C16/34
H01L21/205
H01L21/66 L
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2017208139
(22)【出願日】2017-10-27
(65)【公開番号】P2019077600
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】515131378
【氏名又は名称】株式会社サイオクス
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】堀切 文正
(72)【発明者】
【氏名】吉田 丈洋
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-308377(JP,A)
【文献】特開2005-056979(JP,A)
【文献】特開2008-098664(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136552(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/38
C23C 16/34
H01L 21/205
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板であって、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面は、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)は、以下の式(1)で近似され
前記主面の中心における前記θ は、前記主面の中心における前記θ よりも大きく、
前記式(1)により求められる前記θ に対する、実測した前記θ の誤差の絶対値の最大値は、前記式(1)により求められる前記θ に対する、実測した前記θ の誤差の絶対値の最大値よりも小さい
窒化物半導体基板。
【数1】
【請求項2】
前記主面の少なくとも一部における前記オフ角(θ,θ)は、以下の式(3-1)および式(3-2)を満たす
請求項に記載の窒化物半導体基板。
0.47≦θ≦0.71 ・・・(3-1)
-0.20≦θ≦0.26 ・・・(3-2)
【請求項3】
前記主面の少なくとも中心における前記オフ角(θ,θ)は、前記式(3-1)および前記式(3-2)を満たす
請求項に記載の窒化物半導体基板。
【請求項4】
前記主面の全面積に対する、前記オフ角(θ,θ)が前記式(3-1)および前記式(3-2)を満たす領域の面積の割合は、50%超である
請求項又はに記載の窒化物半導体基板。
【請求項5】
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板であって、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面は、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ 、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ 、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ ,θ )の変化の割合を(M ,A )、前記主面の中心における前記オフ角(θ ,θ )を(M ,A )としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ ,θ )は、以下の式(1)で近似され、
前記主面の中心における前記θは、前記主面の中心における前記θよりも大きく、
前記式(1)により求められる前記θに対する、実測した前記θの誤差の絶対値の最大値は、前記式(1)により求められる前記θに対する、実測した前記θの誤差の絶対値の最大値よりも小さ
化物半導体基板。
【数2】
【請求項6】
前記主面の少なくとも一部における前記オフ角(θ,θ)は、以下の式(4-1)および式(4-2)を満たす
請求項に記載の窒化物半導体基板。
-0.05≦θ≦0.21 ・・・(4-1)
0.36≦θ≦0.65 ・・・(4-2)
【請求項7】
前記主面の少なくとも中心における前記オフ角(θ,θ)は、前記式(4-1)および前記式(4-2)を満たす
請求項に記載の窒化物半導体基板。
【請求項8】
前記主面の全面積に対する、前記オフ角(θ,θ)が前記式(4-1)および前記(4-2)を満たす領域の面積の割合は、50%超である
請求項又はに記載の窒化物半導体基板。
【請求項9】
前記主面内の任意の位置において、前記式(1)から求められる前記オフ角に対する、実測した前記オフ角の誤差は、±0.12°以内である
請求項1~のいずれか1項に記載の窒化物半導体基板。
【請求項10】
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板であって、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面は、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ 、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ 、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ ,θ )の変化の割合を(M ,A )、前記主面の中心における前記オフ角(θ ,θ )を(M ,A )としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ ,θ )は、以下の式(1)で近似され、
前記主面内の任意の位置において、前記式(1)から求められる前記オフ角に対する、実測した前記オフ角の誤差は、±0.12°以内である
窒化物半導体基板。
【数3】
【請求項11】
前記θの変化の割合の絶対値|M|は、前記θの変化の割合の絶対値|A|と異なる
請求項10に記載の窒化物半導体基板。
【請求項12】
前記θの変化の割合の絶対値|M|は、前記θの変化の割合の絶対値|A|よりも小さい
請求項11に記載の窒化物半導体基板。
【請求項13】
前記主面の少なくとも一部における前記オフ角(θ,θ)は、以下の式(2)を満たす
請求項10~12のいずれか1項に記載の窒化物半導体基板。
0.0784≦θ +θ ≦0.578 ・・・(2)
【請求項14】
前記主面の少なくとも中心における前記オフ角(θ,θ)は、前記式(2)を満たす
請求項13に記載の窒化物半導体基板。
【請求項15】
前記主面の全面積に対する、前記オフ角(θ,θ)が前記式(2)を満たす領域の面積の割合は、50%超である
請求項13又は14に記載の窒化物半導体基板。
【請求項16】
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面と、前記主面に繋がる側面の一部を構成するオリエンテーションフラットとを有する窒化物半導体基板であって、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面は、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記オリエンテーションフラットに平行な方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記オリエンテーションフラットに垂直な方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)、前記結晶の(11-20)面に対する前記オリエンテーションフラットの角度をγとしたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)は、以下の式(1)’で近似され
前記主面の中心における前記θ は、前記主面の中心における前記θ よりも大きく、
前記式(1)により求められる前記θ に対する、実測した前記θ の誤差の絶対値の最大値は、前記式(1)により求められる前記θ に対する、実測した前記θ の誤差の絶対値の最大値よりも小さい
窒化物半導体基板。
【数4】
【請求項17】
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面と、前記主面に繋がる側面の一部を構成するオリエンテーションフラットとを有する窒化物半導体基板であって、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面は、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記オリエンテーションフラットに平行な方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記オリエンテーションフラットに垂直な方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ 、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ 、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ ,θ )の変化の割合を(M ,A )、前記主面の中心における前記オフ角(θ ,θ )を(M ,A )、前記結晶の(11-20)面に対する前記オリエンテーションフラットの角度をγとしたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ ,θ )は、以下の式(1)’で近似され、
前記主面の中心における前記θ は、前記主面の中心における前記θ よりも大きく、
前記式(1)により求められる前記θ に対する、実測した前記θ の誤差の絶対値の最大値は、前記式(1)により求められる前記θ に対する、実測した前記θ の誤差の絶対値の最大値よりも小さい
窒化物半導体基板。
【数5】
【請求項18】
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面と、前記主面に繋がる側面の一部を構成するオリエンテーションフラットとを有する窒化物半導体基板であって、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面は、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記オリエンテーションフラットに平行な方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記オリエンテーションフラットに垂直な方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ 、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ 、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ ,θ )の変化の割合を(M ,A )、前記主面の中心における前記オフ角(θ ,θ )を(M ,A )、前記結晶の(11-20)面に対する前記オリエンテーションフラットの角度をγとしたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ ,θ )は、以下の式(1)’で近似され、
前記主面内の任意の位置において、前記式(1)から求められる前記オフ角に対する、実測した前記オフ角の誤差は、±0.12°以内である
窒化物半導体基板。
【数6】
【請求項19】
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板と、
前記窒化物半導体基板上に設けられ、III族窒化物半導体からなる半導体層と、
を有し、
前記窒化物半導体基板の前記主面に対して最も近い低指数の結晶面は、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記窒化物半導体基板において、前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)は、以下の式(1)で近似され
前記主面の中心における前記θ は、前記主面の中心における前記θ よりも大きく、
前記式(1)により求められる前記θ に対する、実測した前記θ の誤差の絶対値の最大値は、前記式(1)により求められる前記θ に対する、実測した前記θ の誤差の絶対値の最大値よりも小さい
半導体積層物。
【数7】
【請求項20】
前記窒化物半導体基板の前記主面の全面積に対する、前記オフ角(θ,θ)が前記式(3-1)および前記式(3-2)を満たす領域の面積の割合は、50%超であり、
前記半導体層の主面の全面積に対する、前記半導体層の主面の算術平均粗さRaが30nm以下である領域の面積の割合は、50%超である
請求項19に記載の半導体積層物。
0.47≦θ≦0.71 ・・・(3-1)
-0.20≦θ≦0.26 ・・・(3-2)
【請求項21】
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板と、
前記窒化物半導体基板上に設けられ、III族窒化物半導体からなる半導体層と、
を有し、
前記窒化物半導体基板の前記主面に対して最も近い低指数の結晶面は、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記窒化物半導体基板において、前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ 、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ 、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ ,θ )の変化の割合を(M ,A )、前記主面の中心における前記オフ角(θ ,θ )を(M ,A )としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ ,θ )は、以下の式(1)で近似され、
前記主面の中心における前記θ は、前記主面の中心における前記θ よりも大きく、
前記式(1)により求められる前記θ に対する、実測した前記θ の誤差の絶対値の最大値は、前記式(1)により求められる前記θ に対する、実測した前記θ の誤差の絶対値の最大値よりも小さい
半導体積層物。
【数8】
【請求項22】
前記窒化物半導体基板の前記主面の全面積に対する、前記オフ角(θ,θ)が前記式(4-1)および前記(4-2)を満たす領域の面積の割合は、50%超であり、
前記半導体層の主面の全面積に対する、前記半導体層の主面の算術平均粗さRaが30nm以下である領域の面積の割合は、50%超である
請求項21に記載の半導体積層物。
-0.05≦θ≦0.21 ・・・(4-1)
0.36≦θ≦0.65 ・・・(4-2)
【請求項23】
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板と、
前記窒化物半導体基板上に設けられ、III族窒化物半導体からなる半導体層と、
を有し、
前記窒化物半導体基板の前記主面に対して最も近い低指数の結晶面は、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記窒化物半導体基板において、前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ 、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ 、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ ,θ )の変化の割合を(M ,A )、前記主面の中心における前記オフ角(θ ,θ )を(M ,A )としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ ,θ )は、以下の式(1)で近似され、
前記主面内の任意の位置において、前記式(1)から求められる前記オフ角に対する、実測した前記オフ角の誤差は、±0.12°以内である
半導体積層物。
【数9】
【請求項24】
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板を作製した後に、該窒化物半導体基板を選別するよう、コンピュータに実行させる基板選別プログラムであって、
前記窒化物半導体基板は、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が、前記主面に対して湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)が、以下の式(1)で近似されるよう構成され、
前記主面内において前記式(1)から求められる前記オフ角(θ,θ)が所定の条件を満たす領域の面積の、前記主面の全面積に対する割合に基づいて、前記窒化物半導体基板をランク付けして選別する手順を
前記コンピュータに実行させる
基板選別プログラム。
【数10】
【請求項25】
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板を用いて半導体装置を製造するときに、前記半導体装置を選別してピックアップするよう、コンピュータによってピックアップ装置に実行させる半導体装置選別プログラムであって、
前記窒化物半導体基板は、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が、前記主面に対して湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)が、以下の式(1)で近似されるよう構成され、
前記主面内での所定位置(x,y)において前記式(1)から求められる前記オフ角(θ,θ)が所定の条件を満たすときに、当該所定位置における前記半導体装置を良品として選別してピックアップする手順を
前記コンピュータによって前記ピックアップ装置に実行させる
半導体装置選別プログラム。
【数11】
【請求項26】
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板を作製する工程と、
前記窒化物半導体基板上にIII族窒化物半導体からなる半導体層をエピタキシャル成長させ、半導体積層物を作製する工程と、
前記半導体積層物を切り分け、半導体装置を作製する工程と、
前記半導体装置を選別する工程と、
を有し、
前記窒化物半導体基板を作製する工程では、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)が、以下の式(1)で近似されるように、前記窒化物半導体基板を作製し、
前記半導体装置を選別する工程では、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)に基づいて、前記半導体装置を選別する
半導体装置の製造方法。
【数12】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体基板、半導体積層物、基板選別プログラム、基板データ出力プログラム、基板データ出力プログラム付き窒化物半導体基板、オフ角座標マップ、オフ角座標マップ付き窒化物半導体基板、半導体装置選別プログラム、窒化物半導体基板の製造方法、半導体積層物の製造方法、半導体装置の製造方法および基板データ出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)などのIII族窒化物半導体の結晶からなる窒化物半導体基板では、主面の法線に対して結晶の主軸がなす角度であるオフ角が、該基板の製造方法に起因して、主面内で所定の分布を有することがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-22212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、窒化物半導体基板の主面内でのオフ角に依存する、半導体層の表面モフォロジを容易に制御することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板であって、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面は、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)は、以下の式(1)で近似される
窒化物半導体基板、およびそれに関連する技術が提供される。
【数1】
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、窒化物半導体基板の主面内でのオフ角に依存する、半導体層の表面モフォロジを容易に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板を示す概略上面図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板のm軸に沿った概略断面図であり、(c)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板のa軸に沿った概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板のm軸に沿った概略断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の主面の範囲を示すオフ角座標マップである。
図4】表面モフォロジ良好領域を示すオフ角座標マップである。
図5】領域A、領域Bおよび領域Cを示すオフ角座標マップである。
図6】本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の主面の範囲と、領域A、領域Bおよび領域Cとの関係を示すオフ角座標マップである。
図7】本発明の一実施形態に係る各種プログラムを実行するコンピュータを示す概略構成図である。
図8】本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示すフローチャートである。
図9】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図10】(a)~(g)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略断面図である。
図11】(a)~(c)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略断面図である。
図12】(a)~(c)は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を示す概略断面図である。
図13】(a)~(f)は、実施例1~3において窒化物半導体基板の主面での位置に対するオフ角を測定した結果を示す図である。
図14】実施例2に係る窒化物半導体基板の主面の範囲と、領域A、領域Bおよび領域Cとの関係を示すオフ角座標マップである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0009】
(1)窒化物半導体基板(窒化物半導体自立基板、窒化物結晶基板)
まず、図1を用い、本実施形態に係る窒化物半導体基板10(以下、「基板10」と略すことがある)について説明する。図1(a)は、本実施形態に係る窒化物半導体基板を示す概略上面図であり、(b)は、本実施形態に係る窒化物半導体基板のm軸に沿った概略断面図であり、(c)は、本実施形態に係る窒化物半導体基板のa軸に沿った概略断面図である。なお、m軸に沿った断面およびa軸に沿った断面は、それぞれ、基板の主面の中心を通る断面である。
【0010】
本実施形態の基板10は、例えば、後述のIII族窒化物半導体からなる半導体層をエピタキシャル成長させる下地基板として構成されている。基板10は、III族窒化物半導体の結晶(単結晶)からなる自立基板である。本実施形態では、基板10は、例えば、GaN自立基板である。
【0011】
なお、基板10の直径は例えば2インチ以上であり、基板10の厚さは例えば300μm以上4mm以下である。基板10の導電性は特に限定されるものではないが、基板10を用いて縦型のショットキーバリアダイオード(SBD)としての半導体装置を製造する場合には、基板10は例えばn型であり、基板10中のn型不純物は例えばシリコン(Si)またはゲルマニウム(Ge)であり、基板10中のn型不純物濃度は例えば1.0×1018cm-3以上1.0×1019cm-3以下である。
【0012】
以下、ウルツ鉱構造を有するIII族窒化物半導体の結晶において、<0001>軸(例えば[0001]軸)を「c軸」といい、(0001)面を「c面」という。なお、(0001)面を「+c面(III族元素極性面)」といい、(000-1)面を「-c面(窒素(N)極性面)」ということがある。また、<1-100>軸(例えば[1-100]軸)を「m軸」といい、(1-100)面を「m面」という。また、<11-20>軸(例えば[11-20]軸)を「a軸」といい、(11-20)面を「a面」という。
【0013】
基板10は、例えば、エピタキシャル成長面となる主面(表面)10sを有している。本実施形態において、主面10sに対して最も近い低指数の結晶面は、例えば、c面10f(+c面)である。なお、基板10の主面10sの表面粗さ(算術平均粗さRa)は、例えば、10nm以下、好ましくは5nm以下である。
【0014】
また、基板10は、例えば、主面10sと裏面(符号不図示)とに繋がる側面(符号不図示)の一部を構成する平坦面としてのオリエンテーションフラット10of(以下、「オリフラ10of」と略すことがある)を有している。本実施形態では、オリフラ10ofは、例えば、a面である。なお、オリフラ10ofは、c面に垂直な面であれば、a面以外であってもよい。
【0015】
以下、基板10の主面10sに沿った方向のうち、オリフラ10ofに平行な方向を「x方向」とし、基板10の主面10s内での位置のうち、オリフラ10ofに平行な方向の座標を「x」とする。一方で、基板10の主面10sに沿った方向のうち、オリフラ10ofに垂直な方向を「y方向」とし、基板10の主面10s内での位置のうち、オリフラ10ofに垂直な方向の座標を「y」とする。なお、基板10の主面10sの中心の座標(x,y)を(0,0)とする。本実施形態では、例えば、オリフラ10ofがa面であることから、x方向はm軸に沿った方向(略m軸方向)であり、y方向はa軸に沿った方向(略a軸方向)である。
【0016】
本実施形態では、基板10の主面10sに対して最も近い低指数の結晶面としてのc面10fは、例えば、後述する基板10の製造方法に起因して、主面10sに対して凹の球面状に湾曲している。ここでいう「球面状」とは、球面近似される曲面状のことを意味している。また、ここでいう「球面近似」とは、真円球面または楕円球面に対して所定の誤差の範囲内で近似されることを意味している。
【0017】
本実施形態では、基板10のc面10fは、例えば、m軸に沿った断面およびa軸に沿った断面のそれぞれにおいて球面近似される曲面状となっている。
【0018】
また、本実施形態では、c面10fの曲率半径は、例えば、m軸に沿った断面およびa軸に沿った断面のそれぞれにおいて、基板10の半径よりも充分に大きくなっている。具体的には、c面10fの曲率半径は、例えば、基板10の半径に対して100倍以上である。より具体的には、c面10fの曲率半径は、例えば、1m以上、好ましくは4m以上、より好ましくは、10m以上である。
【0019】
本実施形態では、c面10fが上述のように凹の球面状に湾曲していることから、少なくとも一部のc軸10cは、主面10sの法線に対して傾斜している。主面10sの法線に対してc軸10cがなす角度である「オフ角」は、主面10s内で所定の分布を有している。
【0020】
以下、主面10sの法線に対するc軸10cのオフ角のうち、m軸に沿った方向成分を「θ」とし、「オフ角m軸成分θ」と略すことがある。また、主面10sの法線に対するc軸10cのオフ角のうち、a軸に沿った方向成分を「θ」とし、「オフ角a軸成分θ」と略すことがある。なお、c軸10cが傾斜することでm軸およびa軸も傾斜することとなるため、上記したm軸に沿った方向成分およびa軸に沿った方向成分とは、厳密には、m軸を主面10sに正射影させた方向成分、およびa軸を主面10sに正射影させた方向成分と言い換えることができる。また、以下において、該オフ角をベクトルとして(θ,θ)と表記し、オフ角の大きさ(オフ量)を「θ」とする。なお、θ=θ +θ である。
【0021】
図1に示すように、基板10の主面10sにおいて、オフ角の大きさθが等しい線(等オフ角線10e)は、略円弧状となっている。基板10の主面10sにおける等オフ角線10eの中心では、オフ角の大きさθが0°である。また、基板10の主面10sにおいて、等オフ角線10eがその中心から離れているほど、等オフ角線10eでのオフ角の大きさθが大きくなっている。
【0022】
ここで、図2を用い、本実施形態の基板10のm軸に沿った断面におけるオフ角m軸成分θについて説明する。図2は、本実施形態に係る窒化物半導体基板のm軸に沿った概略断面図である。
【0023】
図2に示すように、m軸に沿った断面において、c面10fの曲率中心を「O’」とし、主面10s上の所定の点を点「A」とし、曲率中心O’を通る主面10sの法線とc面10fとの交点を点「B」とし、曲率中心O’を通る主面10sの法線と主面10sとの交点を点「C」とする。また、m軸に沿った断面におけるc面10fの曲率半径を「R」とし、基板10の直径を「r」とする。また、主面10sの中心Oと点Aとの距離を「x」とし、主面10sの中心Oと点Cとの距離(すなわち、x方向における、主面10sの中心Oと曲率中心O’とのずれ量)を「x」とする。
【0024】
点Aを通る主面10sの法線と、曲率中心O’および点Cを通る主面10sの法線とが平行であることから、角度AOCは、点Aでのオフ角m軸成分θと等しい。したがって、AC間距離は、θを用いて、以下の式で求められる。
x+x=Rsinθ
【0025】
本実施形態では、上述のように、c面10fの曲率半径Rが基板10の半径rよりも充分に大きいため、主面10sの法線に対するc軸10cのオフ角(オフ角m軸成分θ)は、充分に小さくなっている。オフ角が充分に小さいことから、sinθ≒θと近似することができ、AC間の距離RsinθをAB間の円弧の距離Rθと近似することができる。
【0026】
したがって、上記式は、以下の式のように近似することができる。
x+x=Rθ
これをθの式とすると、
θ=x/R+x/R
【0027】
上記式によれば、本実施形態の基板10のm軸に沿った断面での主面10s上の任意の点において、オフ角m軸成分θは、xの一次式で近似的に表すことができる。すなわち、基板10のm軸に沿った断面において、θは、xに対して実質的に線形に変化している(xに対して比例的に変化している)と考えることができる。
【0028】
また、本実施形態では、上述のように、基板10のc面10fが、a軸に沿った断面においても球面近似される曲面状となっているため、本実施形態の基板10のa軸に沿った断面での主面10s上の任意の点において、オフ角a軸成分θは、yの一次式で近似的に表すことができる。すなわち、基板10のa軸に沿った断面において、θは、yに対して実質的に線形に変化している(yに対して比例的に変化している)と考えることができる。
【0029】
以上のことから、主面10s内での位置(x,y)(x方向およびy方向のそれぞれの距離、単位mm)に対するオフ角(θ,θ)の変化の割合(傾き、比例定数)を(M,A)(単位°/mm)とし、主面10sの中心Oにおけるオフ角(θ,θ)を(M,A)(単位°)としたとき、基板10の主面10s内での任意の位置(x,y)におけるオフ角(θ,θ)は、以下の行列を用いた式(行列方程式)(1)で近似的に表すことができる。
【0030】
【数2】
【0031】
なお、オリフラ10ofをc面に垂直な任意の面とし、a面に対するオリフラ10ofの角度を「γ」としたとき、基板10の主面10s内での任意の位置(x,y)におけるオフ角(θ,θ)は、以下の式(1)’で近似的に表すことができる。
【0032】
【数3】
【0033】
以下、式(1)に関する記載は、式(1)’に置き換えることが可能である。
【0034】
なお、式(1)および式(1)’のそれぞれにおいて、MおよびAは、それぞれ、m軸に沿った方向のc面10fの曲率半径の逆数、およびa軸に沿った方向のc面10fの曲率半径の逆数に対応する(但し、M等の単位において°からラジアンへの変換が必要である)。
【0035】
基板10の主面10s内での任意の位置(x,y)におけるオフ角(θ,θ)が上記式(1)で近似的に表されることで、基板の主面内の任意の位置(x、y)におけるオフ角(θ,θ)を即座に求めることができる。
【0036】
また、基板10の主面10s内での任意の位置(x,y)におけるオフ角(θ,θ)が上記式(1)で近似的に表されることで、基板10の主面10sの範囲(輪郭)を、オフ角m軸成分θおよびオフ角a軸成分θをそれぞれ座標軸とする直交座標系のオフ角座標マップ(オフ角座標マップ情報)20に表示させることができる。
【0037】
ここで、図3を用い、オフ角m軸成分θおよびオフ角a軸成分θをそれぞれ座標軸とするオフ角座標マップ20について説明する。図3は、本実施形態に係る窒化物半導体基板の主面の範囲を示すオフ角座標マップである。
【0038】
図3に示すオフ角座標マップ20において、基板10の主面10sの外縁の位置(x,y)(例えば単位mm)におけるオフ角(θ,θ)(例えば単位°)をプロットしていくと、該オフ角座標マップ20においても、実際の基板10の主面10sの円形状に対応する略円形状を描くことができる。つまり、実際の基板10の主面10sの範囲に対応させて、オフ角座標マップ20において、基板10の主面10sの範囲を表示させることができる。
【0039】
なお、オフ角座標マップ20での基板10の主面10sの範囲では、θ軸方向の直径が2|M|rであり、θ軸方向の直径が2|A|rである。|M|≠|A|であれば、オフ角座標マップ20での基板10の主面10sの範囲は、楕円となる。
【0040】
例えば、図1(a)に示す実際の基板10の主面10sにおいて、中心Oと異なる任意の点Pについて考える。
【0041】
本実施形態では、上述のように、基板10の主面10s内での任意の位置(x,y)におけるオフ角(θ,θ)が上記式(1)で近似的に表されており、すなわち、(x,y)に対してオフ角(θ,θ)が実質的に線形に変化している。これにより、図1(a)での実際(実空間)の基板10の中心Oに対する点Pの相対的な位置関係を、図3に示すオフ角座標マップ20での基板10の中心Oに対する点Pの相対的な位置関係に対応させることができる。このように、基板10の中心Oに対する点Pの相対的な位置関係の対応付けを行うことにより、オフ角座標マップ20において、点Pでの座標値から当該点Pでのオフ角(θ,θ)を読み取ることができる。具体的には、図1での実際の基板10の中心Oに対する点Pの相対的な位置関係に基づいて、図3のオフ角座標マップ20において点Pをプロットすることで、点Pでの座標値から当該点Pでのオフ角(θ,θ)が例えば(0.12、0.56)であると読み取ることができる。
【0042】
なお、オリフラ10ofがa面以外の面である場合には、実際の基板10の主面10sにおける中心Oに対する点Pの相対的な位置関係を、a面に対するオリフラ10ofの角度γだけ回転させることにより、オフ角座標マップ20での基板10の主面10sの範囲内における中心Oに対する点Pの相対的な位置関係に対応付ければよい。
【0043】
このように、オフ角座標マップ20において、基板10の主面10sの範囲を表示させることで、基板10の主面10sのオフ角分布を容易に把握することができる。例えば、オフ角座標マップ20において、基板10の主面10sの範囲が大きければ、基板10の主面10sのオフ角分布が広いと把握することができ、一方で、基板10の主面10sの範囲が小さければ、基板10の主面10sのオフ角分布が狭いと把握することができる。
【0044】
また、オフ角座標マップ20において、基板10の主面10sの範囲を表示させることで、基板10の主面10sのオフ角に対する、基板10の主面10s上に成長させた半導体層の表面モフォロジの依存性に対応付けて、基板10の主面10sの範囲内での半導体層の表面モフォロジ分布を容易に把握することができる。
【0045】
ここで、図4を用い、基板10の主面10sのオフ角に対する、半導体層の表面モフォロジの依存性について説明する。図4は、表面モフォロジ良好領域を示すオフ角座標マップである。
【0046】
基板の主面のオフ角に対する、半導体層の表面モフォロジの依存性について評価するため、SBDを構成する半導体積層物(エピウエハ)を作製した。半導体積層物は、基板と、半導体層と、を有する積層構造とした。基板は、直径2インチ、400μm厚のn型のGaN自立基板とした。また、半導体層として、下地n型半導体層と、ドリフト層と、を順に形成した。下地n型半導体層をSiドープGaN層とし、下地n型半導体層中のSi濃度を2×1018cm-3とし、下地n型半導体層の厚さを2μmとした。また、ドリフト層をSiドープGaN層とし、ドリフト層中のSi濃度を0.9×1016cm-3とし、ドリフト層の厚さを13μmとした。
【0047】
図4のオフ角座標マップには、半導体積層物の作製に用いた4つの基板のそれぞれについて、主面の範囲が示されている。4つの基板は、互いに異なるオフ角分布を有している。4つの基板のうち、主面の中心のオフ角が(0,0)に近い基板を、「just-off基板」とする。また、主面の中心のオフ角が(0,0)から離れθ軸に近い基板を、「m-off基板」、「m-off改良基板」とする。なお、m-off改良基板のオフ角分布は、m-off基板のオフ角分布よりも狭い。また、主面の中心のオフ角が(0,0)から離れθ軸に近い基板を、「a-off基板」とする。なお、4つの基板のオリフラは、a面である。
【0048】
また、図4のオフ角座標マップには、4つの基板のそれぞれを用いた半導体積層物において、ノマルスキー顕微鏡を用い、半導体層の表面モフォロジを2.25mm角毎に目視で評価した結果を示している。黒色ひし形、白抜き三角、白抜き四角、黒色円の順で、半導体層の表面モフォロジが良好であったことを示している。
【0049】
観察した結果の傾向としては、黒色ひし形の部分では、2.25角視野の全面において、m軸に沿った方向に縞状のステップバンチングが観察された。なお、これは、後述のように、just-off基板のうちオフ角(θ,θ)が(0,0)付近で、顕著に見られた。また、白抜き三角の部分、および白抜き四角の部分では、この順で、2.25mm角視野に占めるステップバンチングの割合が徐々に小さくなっていた。また、黒色円の部分では、2.25mm角視野のほぼ全面において、平坦な表面となっていた。
【0050】
なお、原子間力顕微鏡(AFM)の測定により、黒色ひし形の部分は、表面粗さ(算術平均粗さRa)が70nm以上であることに相当し、白抜き三角の部分は、表面粗さが30nm以上70nm以下であることに相当し、白抜き四角の部分は、表面粗さが10nm以上30nm以下であることに相当し、黒色円の部分は、表面粗さが10nm以下であることに相当することが分かっている。また、レーザ光を半導体層表面に照射した際の散乱光分布を測定することによる表面モフォロジ測定によっても、ノマルスキー顕微鏡による目視評価結果と同様の表面モフォロジ分布の結果が得られることを確認している。
【0051】
図4に示すように、半導体層の表面モフォロジは、基板の主面のオフ角に依存する。オフ角(θ,θ)が(0,0)付近では、半導体層の表面モフォロジが荒れる傾向がある。基板の主面内でオフ角(θ,θ)が(0,0)である部分から、SBDとしての半導体装置を作製した場合、SBDの耐圧が低下する可能性がある。これに対し、オフ角(θ,θ)が(0,0)から所定距離離れた領域(太線で囲まれた領域)内では、半導体層の表面モフォロジが良好となる。以下、オフ角座標マップ20において、半導体層の表面モフォロジが良好となる領域を「表面モフォロジ良好領域」と呼ぶ。基板の主面内でオフ角(θ,θ)が表面モフォロジ良好領域内である部分から、SBDとしての半導体装置を作製することにより、SBDの耐圧を向上させることができる。
【0052】
また、図4に示すように、基板の主面のオフ角に対する、半導体層の表面モフォロジの依存性に対応付けて、基板の主面の範囲内での半導体層の表面モフォロジ分布を容易に把握することができる。例えば、just-off基板では、主面の範囲のうち外縁付近の一部にしか、表面モフォロジ良好領域が得られないことが分かる。つまり、just-off基板を用いて半導体装置を製造した場合では、該半導体装置の歩留りが低下することが予想される。一方で、例えば、m-off改良基板では、オフ角座標マップ20での主面の範囲、すなわち、オフ角分布が狭く、その範囲のほとんどが表面モフォロジ良好領域に含まれることが分かる。つまり、m-off改良基板を用いて半導体装置を製造した場合では、該半導体装置の歩留りを向上させることが可能となる。
【0053】
次に、図5を用い、表面モフォロジ良好領域の分類について説明する。図5は、領域A、領域Bおよび領域Cを示すオフ角座標マップである。図5に示すように、表面モフォロジ良好領域は、例えば、オフ角(θ,θ)の不等式で示すことが可能な3つの領域(A,B,C)に分類される。
【0054】
領域Aは、オフ角の大きさθが所定の範囲内である同心円の領域(ドーナツ状領域)であって、表面モフォロジ良好領域の少なくとも一部を含む領域を示している。具体的には、領域Aは、例えば、以下の式で表される。
0.28≦θ≦0.76
すなわち、
0.0784≦θ +θ ≦0.578 ・・・(2)
【0055】
領域Bは、(0,0)から離れθ軸に近い領域であって、全体が表面モフォロジ良好領域に含まれる領域を示している。つまり、領域Bは、m-off側の表面モフォロジ良好領域と考えることができる。具体的には、領域Bは、例えば、以下の式(3-1)および式(3-2)で表される。
0.47≦θ≦0.71 ・・・(3-1)
-0.20≦θ≦0.26 ・・・(3-2)
【0056】
領域Cは、(0,0)から離れθ軸に近い領域であって、全体が表面モフォロジ良好領域に含まれる領域を示している。つまり、領域Cは、a-off側の表面モフォロジ良好領域と考えることができる。具体的には、領域Cは、例えば、以下の式(4-1)および式(4-2)で表される。
-0.05≦θ≦0.21 ・・・(4-1)
0.36≦θ≦0.65 ・・・(4-2)
【0057】
次に、図6を用い、本実施形態の基板10の主面10sの範囲と、表面モフォロジ良好領域との関係について説明する。図6は、本実施形態に係る窒化物半導体基板の主面の範囲と、領域A、領域Bおよび領域Cとの関係を示すオフ角座標マップである。なお、図6において、本実施形態の基板10の理想的な具体例としての、第1例を「基板11」とし、第2例を「基板12」とする。
【0058】
本実施形態の基板10の主面10sは、例えば、オフ角(θ,θ)が(0,0)となる領域を含まない。基板10の主面10sのオフ角(θ,θ)が(0,0)付近では、上述のように、半導体層の表面モフォロジが荒れる傾向がある。このため、基板10の主面10sがこの領域を避けるように構成されることで、半導体層の表面モフォロジの荒れを抑制することができる。
【0059】
本実施形態の基板10の主面10sの少なくとも一部におけるオフ角(θ,θ)は、例えば、領域A内に含まれ、上記式(2)を満たしている。これにより、基板10を用いた半導体積層物の少なくとも一部から、半導体層の表面モフォロジが良好となる部分を得ることができる。
【0060】
また、本実施形態の基板10の主面10sの少なくとも中心Oにおけるオフ角(θ,θ)、すなわち、(M,A)は、例えば、領域A内に含まれ、上記式(2)を満たしている。これにより、基板10の主面10s内で、オフ角(θ,θ)が領域A内に含まれる部分を広くすることができる。その結果、基板10を用いた半導体積層物から、半導体層の表面モフォロジが良好となる部分を多く得ることができる。
【0061】
また、本実施形態の基板10の主面10sの全面積に対する、オフ角(θ,θ)が式(2)を満たす領域の面積の割合は、例えば、50%超であり、好ましくは、80%以上である。これにより、基板10を用いた半導体積層物から、半導体層の表面モフォロジが良好となる部分を安定的に得ることができる。その結果、半導体装置の歩留りを向上させることができる。
【0062】
本実施形態の基板10の主面10sの少なくとも一部におけるオフ角(θ,θ)は、例えば、領域B内に含まれ、上記式(3-1)および式(3-2)を満たしている。これにより、基板10を用いた半導体積層物の少なくとも一部から、半導体層の表面モフォロジが良好となる部分を得ることができる。
【0063】
また、本実施形態の基板10の主面10sの少なくとも中心Oにおけるオフ角(θ,θ)、すなわち、(M,A)は、例えば、領域B内に含まれ、上記式(3-1)および式(3-2)を満たしている。これにより、基板10の主面10s内で、オフ角(θ,θ)が領域B内に含まれる部分を広くすることができる。その結果、基板10を用いた半導体積層物から、半導体層の表面モフォロジが良好となる部分を多く得ることができる。
【0064】
また、本実施形態の基板10の主面10sの全面積に対する、オフ角(θ,θ)が式(3-1)および式(3-2)を満たす領域の面積の割合は、例えば、50%超であり、好ましくは、80%以上である。これにより、基板10を用いた半導体積層物から、半導体層の表面モフォロジが良好となる部分を安定的に得ることができる。その結果、半導体装置の歩留りを向上させることができる。
【0065】
理想的な第1例としての基板11では、例えば、主面10sの範囲の全体が、オフ角座標マップ20において、領域B内に含まれている。基板11の主面10sの全面積に対する、オフ角(θ,θ)が式(3-1)および式(3-2)を満たす領域の面積の割合は、例えば、100%である。これにより、基板10を用いた半導体積層物の全体から、半導体層の表面モフォロジが良好となる部分を確実に得ることができる。
【0066】
または、本実施形態の基板10の主面10sの少なくとも一部におけるオフ角(θ,θ)は、例えば、領域C内に含まれ、上記式(4-1)および式(4-2)を満たしている。これにより、基板10を用いた半導体積層物の少なくとも一部から、半導体層の表面モフォロジが良好となる部分を得ることができる。
【0067】
また、本実施形態の基板10の主面10sの少なくとも中心Oにおけるオフ角(θ,θ)、すなわち、(M,A)は、例えば、領域C内に含まれ、上記式(4-1)および式(4-2)を満たしている。これにより、基板10の主面10s内で、オフ角(θ,θ)が領域C内に含まれる部分を広くすることができる。その結果、基板10を用いた半導体積層物から、半導体層の表面モフォロジが良好となる部分を多く得ることができる。
【0068】
また、本実施形態の基板10の主面10sの全面積に対する、オフ角(θ,θ)が式(4-1)および式(4-2)を満たす領域の面積の割合は、例えば、50%超であり、好ましくは、80%以上である。これにより、基板10を用いた半導体積層物から、半導体層の表面モフォロジが良好となる部分を安定的に得ることができる。その結果、半導体装置の歩留りを向上させることができる。
【0069】
理想的な第2例としての基板12では、例えば、主面10sの範囲の全体が、オフ角座標マップ20において、領域C内に含まれている。基板12の主面10sの全面積に対する、オフ角(θ,θ)が式(4-1)および式(4-2)を満たす領域の面積の割合は、例えば、100%である。これにより、基板10を用いた半導体積層物の全体から、半導体層の表面モフォロジが良好となる部分を確実に得ることができる。
【0070】
また、本実施形態の基板10では、オフ角m軸成分θの変化の割合の絶対値|M|は、例えば、オフ角a軸成分θの変化の割合の絶対値|A|と異なっている。これは、基板10においてm軸に沿った方向のc面10fの曲率半径がa軸に沿った方向のc面10fの曲率半径と異なることに相当する。これにより、オフ角座標マップ20において、基板10の主面10sの範囲を、表面モフォロジ良好領域の複雑な分布に合うように容易に調整することができる。その結果、基板10の主面10s内において、半導体層の表面モフォロジが良好となる部分を効率よく広くすることができる。
【0071】
さらに、本実施形態の基板10では、オフ角m軸成分θの変化の割合の絶対値|M|は、例えば、オフ角a軸成分θの変化の割合の絶対値|A|よりも小さい。これは、基板10においてm軸に沿った方向のc面10fの曲率半径がa軸に沿った方向のc面10fの曲率半径よりも大きいことに相当する。ここで、上述のオフ角座標マップ20の表面モフォロジ良好領域では、θ軸方向に短く且つθ軸方向に長い領域が多い。そこで、本実施形態では|M|<|A|とすることで、オフ角座標マップ20において、基板10の主面10sの範囲を、表面モフォロジ良好領域のうちθ軸方向に短く且つθ軸方向に長い領域に合うように容易に調整することができる。その結果、基板10の主面10s内において、半導体層の表面モフォロジが良好となる部分をさらに効率よく広くすることができる。
【0072】
また、本実施形態では、基板10の主面10sの任意の位置において、式(1)から求められるオフ角に対する、実測したオフ角の誤差Δθ(以下、「オフ角誤差」ともいう)は、例えば、±0.12°以内であり、好ましくは、±0.06°以内である。オフ角誤差Δθが±0.12°超であると、オフ角座標マップ20において、実測したオフ角に基づく基板10の主面10sの範囲が、式(1)により求められる基板10の主面10sの範囲よりも広くなる。このため、実際の基板10の主面10sの少なくとも一部におけるオフ角(θ,θ)が、上記領域A、領域Bまたは領域Cから外れてしまう可能性がある。これに対し、本実施形態では、オフ角誤差Δθを±0.12°以内とするで、オフ角座標マップ20において、実測したオフ角に基づく基板10の主面10sの範囲が、式(1)により求められる基板10の主面10sの範囲よりも過剰に広くなることを抑制することができる。これにより、実際の基板10の主面10sの少なくとも一部におけるオフ角(θ,θ)が、上記領域A、領域Bまたは領域Cから外れることを抑制することができる。さらに、本実施形態では、オフ角誤差Δθを±0.06°以内とするで、オフ角座標マップ20において、実測したオフ角に基づく基板10の主面10sの範囲を、式(1)により求められる基板10の主面10sの範囲に近づけることができる。これにより、実際の基板10の主面10s内で、オフ角(θ,θ)が上記領域A、領域Bまたは領域C内に含まれる部分を安定的に広くすることができる。
【0073】
また、本実施形態では、例えば、後述の製造方法に起因して、基板10のオフ角誤差Δθがオフ方向依存性を有している。
【0074】
具体的には、本実施形態では、例えば、基板10の主面10sの中心において、オフ角m軸成分θがオフ角a軸成分θよりも大きい場合に、式(1)により求められるオフ角m軸成分θに対する、実測したオフ角m軸成分θの誤差の絶対値の最大値(以下、「θ最大誤差」ともいう)は、式(1)により求められるオフ角a軸成分θに対する、実測したオフ角a軸成分θの誤差の絶対値の最大値(以下、「θ最大誤差」ともいう)よりも小さい。具体的には、本実施形態の基板10では、例えば、θ最大誤差が0.06°であるのに対して、θ最大誤差が0.12°である。これにより、オフ角座標マップ20において、式(1)により求められる基板10の主面10sの範囲に対する、実測したオフ角に基づく基板10の主面10sの範囲の広がり具合を、θ軸方向に短くすることができる。その結果、オフ角座標マップ20において、例えば、実測したオフ角に基づく基板10の主面10sの範囲を領域Bに合うように調整する際の、θ軸方向の調整精度を向上させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、例えば、基板10の主面10sの中心において、オフ角a軸成分θがオフ角m軸成分θよりも大きい場合に、θ最大誤差は、θ最大誤差よりも小さい。これにより、オフ角座標マップ20において、式(1)により求められる基板10の主面10sの範囲に対する、実測したオフ角に基づく基板10の主面10sの範囲の広がり具合を、θ軸方向に短くすることができる。その結果、オフ角座標マップ20において、例えば、実測したオフ角に基づく基板10の主面10sの範囲を領域Cに合うように調整する際の、θ軸方向の調整精度を向上させることができる。
【0076】
(2)各種プログラムおよびオフ角座標マップ
次に、図7を用い、本実施形態に係る基板選別プログラム、基板データ出力プログラム、半導体装置選別プログラムおよびオフ角座標マップと、それらを実行するコンピュータとについて説明する。図7は、本実施形態に係る各種プログラムを実行するコンピュータを示す概略構成図である。
【0077】
(各種プログラムおよびオフ角座標マップ)
本実施形態に係る基板選別プログラムは、例えば、基板10若しくは半導体積層物を製造する製造者側で用いられるものであり、基板10を作製した後に、該基板10を選別するよう、コンピュータに実行させるものである。具体的には、基板選別プログラムは、例えば、上述の基板10の主面10s内において、式(1)から求められるオフ角(θ,θ)が所定の条件を満たす領域の面積の、主面10sの全面積に対する割合に基づいて、基板10をランク付けして選別する。また、基板選別プログラムは、例えば、基板10に付けられたランクに基づいて、各基板10について、出荷対象外と判定したり、あらかじめ定められたランクごとの基板10に対する価格と対応させて出荷対象としたりすることができる。
【0078】
また、本実施形態に係る基板データ出力プログラムは、例えば、基板10若しくは半導体積層物が提供されるユーザ(半導体装置製造者)側で用いられるものであり、基板10の主面10sの状態に係るデータを出力するよう、コンピュータに実行させるものである。具体的には、基板データ出力プログラムは、例えば、上述の基板10の主面10s内での任意の位置(x,y)を入力したときに、式(1)により、該位置(x,y)におけるオフ角(θ,θ)を後述の表示部に出力する。また、基板データ出力プログラムは、例えば、オフ角m軸成分θおよびオフ角a軸成分θをそれぞれ座標軸とするオフ角座標マップ20を表示部に表示させ、式(1)により出力された、基板10の主面10sの外縁の位置(x,y)におけるオフ角(θ,θ)に基づいて、オフ角座標マップ20上に基板10の主面10sの範囲を表示させる。
【0079】
また、本実施形態に係る半導体装置選別プログラムは、例えば、基板10若しくは半導体積層物が提供されるユーザ側で用いられるものであり、基板10を用いて半導体装置を製造するときに、半導体装置を選別してピックアップするよう、コンピュータによってピックアップ装置に実行させるものである。具体的には、半導体装置選別プログラムは、例えば、基板10の主面10s内での所定位置(x,y)において式(1)から求められるオフ角(θ,θ)が所定の条件を満たすときに、当該所定位置における半導体装置を良品として選別してピックアップするよう、コンピュータによってピックアップ装置に実行させる。
【0080】
なお、上述の各種プログラムを用いた製造方法については詳細を後述する。
【0081】
(コンピュータ)
図7に示すように、コンピュータ70は、例えば、基板10若しくは半導体積層物を製造する製造者側、または基板10若しくは半導体積層物が提供されるユーザ側で用意されるものであり、本実施形態に係る各種プログラムを実行するよう構成されている。具体的には、コンピュータ70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)71、RAM(Random Access Memory)72、記憶装置73およびI/Oポート74を有している。RAM72、記憶装置73およびI/Oポート74は、CPU71とデータ交換可能に構成されている。また、コンピュータ70には、表示部(出力部)75、入力部76、外部記憶装置77および送受信部78が接続されている。
【0082】
記憶装置73は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成され、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等により構成されている。記憶装置73内には、本実施形態に係る各種プログラムやオフ角座標マップ20等が読み出し可能に格納されている。
【0083】
RAM72は、CPU71によって記憶装置73から読み出される各種プログラム等が一時的に保持されるよう構成されている。
【0084】
CPU71は、記憶装置73に格納された各種プログラム等を読み出して実行するように構成されている。
【0085】
外部記憶装置77は、持ち運び可能で且つコンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成され、例えば、磁気テープ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等により構成されている。上述の各種プログラムは、例えば、外部記憶装置77を用いてコンピュータ70にインストール可能である。
【0086】
送受信部78は、例えば、インターネットや専用回線等を介して外部に対して情報を送受信するよう構成されている。上述の各種プログラムは、例えば、送受信部78を用いてインターネットや専用回線等を介してコンピュータ70にインストールされてもよい。
【0087】
表示部75は、上述の製造者またはユーザ等に対して、基板10の主面10s内での所定位置におけるオフ角や、オフ角座標マップ20等を表示するよう構成され、例えば、液晶ディスプレイ等である。入力部76は、上述の製造者またはユーザ等がコンピュータ70に対して情報入力(例えば基板10の主面10sの位置の入力等)を行うよう構成され、例えば、マウスやキーボードである。なお、表示部75および入力部76は、タッチスクリーンディスプレイにより両者を兼ねて構成されていてもよい。また、表示部75は、印刷物を出力するプリンタであってもよい。
【0088】
I/Oポート74は、例えば、ピックアップ装置80に接続されている。これにより、コンピュータ70は、ピックアップ装置80を制御可能になっている。
【0089】
ピックアップ装置80は、例えば、半導体積層物から切り分けられた半導体装置をピックアップするよう構成されている。
【0090】
なお、基板10若しくは半導体積層物を製造する製造者側において、基板選別プログラムを実行させるコンピュータ70には、半導体装置選別プログラムがインストールされていなくてもよい。この場合、コンピュータ70は、I/Oポート74を介してピックアップ装置80に接続されていなくてもよい。
【0091】
一方で、基板10若しくは半導体積層物が提供されるユーザ側において、基板データ出力プログラムまたは半導体装置選別プログラムを実行させるコンピュータ70には、基板選別プログラムがインストールされていなくてもよい。
【0092】
(3)基板データ出力プログラム付き窒化物半導体基板等
上述の本実施形態の基板10は、例えば、基板データ出力プログラム、半導体装置選別プログラムまたはオフ角座標マップ20とともに提供される。基板データ出力プログラム、半導体装置選別プログラムまたはオフ角座標マップ20とともに提供される基板10を、それぞれ、「基板データ出力プログラム付き基板」、「半導体装置選別プログラム付き基板」または「オフ角座標マップ付き基板」と呼ぶ。
【0093】
ここでいうプログラム「付き」との表現は、(1)プログラムやそれに入力するための情報等が、基板10を格納するトレーや同封物に付属している場合、(2)プログラムやそれに入力するための情報等のうち少なくともいずれかが、インターネットや専用回線等を介してダウンロード可能なように提供されている場合等を含む。プログラムにより出力されるオフ角座標マップ20「付き」についても、上述と同様である。なお、この際のオフ角座標マップ20は印刷物であってもよい。
【0094】
なお、以下で説明する本実施形態の半導体積層物も、例えば、基板データ出力プログラム、半導体装置選別プログラムまたはオフ角座標マップ20とともに提供されてもよい。この場合、基板データ出力プログラム、半導体装置選別プログラムまたはオフ角座標マップ20とともに提供される半導体積層物を、それぞれ、「基板データ出力プログラム付き半導体積層物」、「半導体装置選別プログラム」または「オフ角座標マップ付き半導体積層物」と呼ぶ。
【0095】
(4)製造方法
次に、図8図11を用い、本実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法、本実施形態に係る半導体積層物の製造方法、本実施形態に係る半導体装置の製造方法、本実施形態に係る基板データ出力方法について説明する。図8は、本実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示すフローチャートである。図9は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。図10(a)~(g)は、本実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略断面図である。図11(a)~(c)は、本実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略断面図である。図12(a)~(c)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を示す概略断面図である。
【0096】
図9に示すように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、例えば、窒化物半導体基板作製工程S100と、オフ角測定工程S220と、基板選別工程S240と、半導体積層物作製工程S300と、半導体装置作製工程S400と、半導体装置選別工程S500と、を有している。
【0097】
(S100:窒化物半導体基板作製工程)
本実施形態に係る基板10を作製する窒化物半導体基板作製工程S100を行う。本実施形態の窒化物半導体基板作製工程S100では、例えば、VAS(Void-Assisted Separation)法により基板10を作製する。
【0098】
図8に示すように、具体的には、本実施形態の窒化物半導体基板作製工程S100は、例えば、結晶成長用基板準備工程S110と、第1結晶層形成工程S120と、金属層形成工程S130と、ボイド形成工程S140と、第2結晶層形成工程S150と、剥離工程S160と、スライス工程S170と、研磨工程S180と、を有している。
【0099】
(S110:結晶成長用基板準備工程)
まず、図10(a)に示すように、結晶成長用基板1(以下、「基板1」と略すことがある)を準備する。基板1は、例えば、サファイア基板である。なお、基板1は、例えば、Si基板やガリウム砒素(GaAs)基板であってもよい。基板1は、例えば、成長面となる主面1sを有している。主面1sに対して最も近い低指数の結晶面は、例えば、c面1fである。
【0100】
本実施形態では、基板1のc面1fが、主面1sに対して傾斜している。基板1のc軸1cは、主面1sの法線に対して所定のオフ角θで傾斜している。基板1の主面1s内でのオフ角θは、主面1s全体に亘って均一である。基板1の主面1s内でのオフ角θは、基板10の主面10sの中心Oにおけるオフ角(θ,θ)としての(M,A)に影響する。
【0101】
(S120:第1結晶層形成工程)
次に、図10(b)に示すように、例えば、有機金属気相成長(MOVPE)法により、所定の成長温度に加熱された基板1に対して、トリメチルガリウム(TMG)ガス、アンモニアガス(NH)およびモノシラン(SiH)ガスを供給することで、基板1の主面1s上に、第1結晶層(下地成長層)2として、低温成長GaNバッファ層および単結晶のSiドープGaN層をこの順で成長させる。このとき、低温成長GaNバッファ層の厚さおよびSiドープGaN層の厚さを、それぞれ、例えば、20nm、0.5μmとする。
【0102】
(S130:金属層形成工程)
次に、図10(c)に示すように、第1結晶層2上に金属層3を蒸着させる。金属層3としては、例えば、チタン(Ti)層とする。また、金属層3の厚さを例えば20nmとする。
【0103】
(S140:ボイド形成工程)
次に、図10(d)に示すように、上述の基板1を電気炉内に投入し、所定のヒータを有するサセプタ上に基板1を載置する。基板1をサセプタ上に載置したら、ヒータにより基板1を加熱し、水素ガスまたは水素化物ガスを含む雰囲気中で熱処理を行う。具体的には、例えば、窒化剤ガスとして20%のNHガスを含有する水素(H)ガス気流中において、所定の温度で20分間熱処理を行う。なお、熱処理温度を、例えば、850℃以上1100℃以下とする。このような熱処理を行うことで、金属層3を窒化し、表面に高密度の微細な穴を有する金属窒化層5を形成する。また、上述の熱処理を行うことで、金属窒化層5の穴を介して第1結晶層2の一部をエッチングし、該第1結晶層2中に高密度のボイドを形成する。これにより、ボイド含有第1結晶層4を形成する。
【0104】
このとき、例えば、ボイド含有第1結晶層4中に占めるボイドの体積比率である「ボイド化率(体積空隙率)」を、基板1と同心円状または同心楕円状に周方向に均等にする。なお、ここでいう「基板1と同心円状または同心楕円状に周方向に均等にする」とは、「基板1と同心円上または基板1と同心楕円上で周方向に均等にする」と言い換えることができる。具体的な方法としては、例えば、基板1を載置するサセプタを回転させながら、上述の熱処理を行う。また、例えば、ヒータの加熱具合を基板1の面内で調節することで、基板1の温度分布において、基板1の温度を該基板1と同心円状または同心楕円状に周方向に均等にする。これにより、ボイド含有第1結晶層4中において、周方向に均等にボイドを形成することができる。その結果、ボイド含有第1結晶層4のボイド化率を基板1と同心円状または同心楕円状に周方向に均等にすることができる。
【0105】
また、このとき、例えば、ボイド含有第1結晶層4のボイド化率を、基板1の径方向に中心側から外周側に向けて単調に(例えば線形に)増加させる。具体的には、例えば、基板1の温度分布において、基板1の温度を基板1の径方向に中心側から外周側に向けて単調に高くする。このような基板1の温度分布を得る方法としては、例えば、ヒータの加熱具合を基板1の面内で調節することで上述の温度分布を得る方法、第1結晶層2が形成された際に基板1と第1結晶層2との間の線膨張係数差を起因として生じる基板1の表面側に凸の反りを利用して、基板1の外周側のみをサセプタに接触させることで、上述の温度分布を得る方法、またはサセプタの載置面を凹の湾曲面とし、基板1の外周側のみをサセプタに接触させることで、上述の温度分布を得る方法などが挙げられる。このように、基板1の温度を基板1の径方向に中心側から外周側に向けて単調に高くすることで、ボイド含有第1結晶層4のボイド化率を、基板1の径方向に中心側から外周側に向けて単調に増加させることができる。
【0106】
なお、このとき、例えば、ボイド含有第1結晶層4のボイド化率を、基板1の径方向に中心側から外周側に亘って、10%以上90%以下とする。ボイド化率を10%以上とすることで、後述の剥離工程S160で第2結晶層6を安定的に剥離することができる。一方で、ボイド化率を90%以下とすることで、後述の第2結晶層形成工程S150での第2結晶層6の成長中に剥離が生じることを抑制することができる。
【0107】
(S150:第2結晶層形成工程)
次に、例えば、ハイドライド気相成長(HVPE)法により、所定の成長温度に加熱された基板1に対して、塩化ガリウム(GaCl)ガス、NHガスおよびn型ドーパントガスとしてのジクロロシラン(SiHCl)ガスを供給することで、ボイド含有第1結晶層4および金属窒化層5上に第2結晶層(本格成長層)6としてSiドープGaN層をエピタキシャル成長させる。なお、n型ドーパントガスとして、SiHClガスの代わりに、テトラクロロゲルマン(GeCl)ガスなどを供給することで、第2結晶層6としてGeドープGaN層をエピタキシャル成長させてもよい。
【0108】
このとき、第2結晶層6は、ボイド含有第1結晶層4から金属窒化層5の穴を介してボイド含有第1結晶層4および金属窒化層5上に成長する。ボイド含有第1結晶層4中のボイドの一部は、第2結晶層6によって埋め込まれるが、ボイド含有第1結晶層4中のボイドの他部は、残存する。第2結晶層6と金属窒化層5との間には、当該ボイド含有第1結晶層4中に残存したボイドを起因として、平らな空隙が形成される。第2結晶層6と金属窒化層5との間に形成される空隙(の大きさや密度)は、上述のボイド含有第1結晶層4のボイド化率に依存する。この空隙が後述の剥離工程S160での第2結晶層6の剥離を生じさせることとなる。
【0109】
また、このとき、ボイド含有第1結晶層4のボイド化率に応じて、第2結晶層6の成長初期の結晶核である「初期核」を発生させる。ボイド含有第1結晶層4のボイド化率が大きいほど、第2結晶層6の初期核の密度が低くなる。第2結晶層6の初期核の密度は、例えば、第2結晶層6内に生じる引張応力や、第2結晶層6の厚さ方向の転位密度差に影響する。
【0110】
ここで、第2結晶層6内に生じる引張応力に関して、以下のような傾向がある。第2結晶層6の成長過程において、島状の初期核が横方向成長し、隣接する初期核との距離が近づいたとき、初期核の表面が2つ存在しているよりも、初期核の表面が1つに結合したほうが、エネルギー的に安定となる。このため、隣接する初期核同士は、強制的に引き合う(会合する)。初期核は基板1側に拘束されているため、隣接する初期核同士には、引張応力が導入される。これは、W.D.Nix and B.M.Clemens, J.Mater.Res., 14 (1999) 3467に記載されている。第2結晶層6の初期核の密度が低いほど、島状の初期核が会合するまで大きく成長する。会合直前の島状の初期核の大きさが大きいほど、隣接する初期核の会合部の密度が低減され、隣接する初期核同士の引張応力が減少されることとなる。
【0111】
また、第2結晶層6の厚さ方向の転位密度差に関して、以下のような傾向がある。第2結晶層6の成長過程において、第2結晶層6の初期核の密度が低いと、上述のように、島状の初期核が会合するまで大きく成長し、初期核の横方向成長が促進される。これにより、第2結晶層6が成長するにしたがって、該第2結晶層6中の転位が速やかに減少する。その結果、第2結晶層6の初期核の密度が低いほど、第2結晶層6の厚さ方向の転位密度差が縮小することとなる。
【0112】
そこで、本実施形態では、ボイド含有第1結晶層4のボイド化率の分布に応じて、第2結晶層6の初期核の密度を基板1と同心円状または同心楕円状に周方向に均等にするとともに、該初期核の密度を基板1の径方向に中心側から外周側に向けて単調に(例えば線形に)低減させる。これにより、第2結晶層6中に生じる引張応力を基板1と同心円状または同心楕円状に周方向に均等にするとともに、該引張応力を基板1の径方向に中心側から外周側に向けて単調に減少させることができる。また、第2結晶層6の厚さ方向の転位密度差を基板1と同心円状または同心楕円状に周方向に均等にするとともに、該厚さ方向の転位密度差を基板1の径方向に中心側から外周側に向けて単調に縮小させることができる。
【0113】
また、このとき、第2結晶層6は、基板1の配向性が引き継がれて成長される。すなわち、第2結晶層6の主面内でのオフ角θは、基板1の主面1s内でのオフ角θと同様に、主面全体に亘って均一となる。
【0114】
また、このとき、第2結晶層6を平坦化させた後に、第2結晶層6の主面において、c面以外のファセットを生じさせることなく(3次元成長させることなく)、c面のみを成長面として、平坦な第2結晶層6を成長させる。
【0115】
また、このとき、第2結晶層6の厚さを、例えば、600μm以上、好ましくは1mm以上とする。なお、第2結晶層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、生産性向上の観点から、第2結晶層6の厚さを50mm以下とすることが好ましい。
【0116】
(S160:剥離工程)
第2結晶層6の成長が終了した後、第2結晶層6を成長させるために用いたHVPE装置を冷却する過程において、第2結晶層6は、ボイド含有第1結晶層4および金属窒化層5を境に基板1から自然に剥離する。
【0117】
このとき、第2結晶層6には、上述のように、引張応力が導入されている。このため、第2結晶層6中に生じた引張応力に起因して、第2結晶層6には、その表面側が凹むように内部応力が働く。また、第2結晶層6の主面(表面)側の転位密度が低く、一方で、第2結晶層6の裏面側の転位密度が高くなっている。このため、第2結晶層6の厚さ方向の転位密度差に起因しても、第2結晶層6には、その表面側が凹むように内部応力が働く。
【0118】
その結果、図10(f)に示すように、第2結晶層6は、基板1から剥離された後に、その表面側が凹となるように反る。このため、第2結晶層6のc面6fは、第2結晶層6の主面6sの中心の法線方向に垂直な面に対して凹の球面状に湾曲する。第2結晶層6の主面6sの中心の法線に対してc軸6cがなすオフ角θは、所定の分布を有する。
【0119】
このとき、上述の第2結晶層形成工程S150では、第2結晶層6の初期核の密度の分布に応じて、第2結晶層6中に生じる引張応力を基板1と同心円状または同心楕円状に周方向に均等にするとともに、該引張応力を基板1の径方向に中心側から外周側に向けて単調に減少させていた。また、第2結晶層6の厚さ方向の転位密度差を基板1と同心円状または同心楕円状に周方向に均等にするとともに、該厚さ方向の転位密度差を基板1の径方向に中心側から外周側に向けて単調に縮小させていた。これにより、第2結晶層6を凹に反らせる内部応力を、基板1と同心円状または同心楕円状に周方向に均等にするとともに、該第2結晶層6を凹に反らせる内部応力を基板1の径方向に中心側から外周側に向けて単調に減少させることができる。
【0120】
このように第2結晶層6を凹に反らせる内部応力を生じさせることで、第2結晶層6を、例えば、m軸に沿った断面およびa軸に沿った断面のそれぞれにおいて、主面6sの中心の法線を軸として対称に反らせることができる。これにより、第2結晶層6のc面6fを、m軸に沿った断面およびa軸に沿った断面のそれぞれにおいて球面近似される曲面状とすることができる。その結果、最終的に得られる基板10において、主面10s内での任意の位置(x,y)におけるオフ角(θ,θ)を、上述の式(1)で近似的に表すことができる。
【0121】
また、このとき、上述のボイド形成工程S140において、ボイド含有第1結晶層4のボイド化率を基板1と同心円状または同心楕円状に周方向に均等にしたことで、第2結晶層6を、基板1の外周から周方向に均等に剥離させることができる。
【0122】
また、このとき、上述のボイド形成工程S140において、ボイド含有第1結晶層4のボイド化率を、基板1の径方向に中心側から外周側に向けて単調に増加させたことで、第2結晶層6を基板1の径方向に外周側から中心側に向けて徐々に剥離させることができる。第2結晶層6を基板1の径方向の外周側から徐々に剥離させると、第2結晶層6が剥がれたところから、ボイド含有第1結晶層4を構成するGaNのうちのNが抜け、金属Gaが残存する。さらに第2結晶層6を基板1の径方向の中心側に向けて徐々に剥離させることで、第2結晶層6と基板1との間で金属Ga(の液状膜)として残存する最終的な接触範囲の中心位置を、基板1の略中心とすることができる。具体的には、例えば、第2結晶層6と基板1との最終的な接触範囲の直径を、10mm以上20mm以下とすることができる。また、例えば、第2結晶層6と基板1との最終的な接触範囲の中心位置を、基板1の中心から5mm以内、好ましくは1mm以内とすることができる。
【0123】
このように第2結晶層6を基板1から剥離させることによっても、第2結晶層6を、例えば、m軸に沿った断面およびa軸に沿った断面のそれぞれにおいて、主面6sの中心の法線を軸として対称に反らせることができる。
【0124】
また、このとき、上述の第2結晶層形成工程S150においてc面のみを成長面として第2結晶層6を成長させたことで、第2結晶層6を基板1から剥離させる際に、第2結晶層6において径方向の中心に向かう応力を周方向に略均等にすることができる。第2結晶層6の応力を均等にすることで、第2結晶層6を、例えば、m軸に沿った断面およびa軸に沿った断面のそれぞれにおいて、主面6sの中心の法線を軸として対称に反らせることができる。
【0125】
また、このとき、第2結晶層6の反りが方向依存性を有することがある。例えば、ボイド含有第1結晶層4のボイド化率を基板1と同心楕円状に周方向に均等にさせた場合、第2結晶層6の初期核の密度に方向依存性を生じさせることができる。これにより、第2結晶層6中に生じる引張応力や、第2結晶層6の厚さ方向の転位密度差に、方向依存性を生じさせることができる。その結果、第2結晶層6のm軸に沿った方向の反りを、第2結晶層6のa軸に沿った方向の反りと異ならせることができる。
【0126】
当該第2結晶層6の反りの方向依存性を利用することで、第2結晶層6において、m軸に沿った方向のc面6fの曲率半径を、a軸に沿った方向のc面6fの曲率半径と異ならせることができる。その結果、最終的に得られる基板10において、オフ角m軸成分θの変化の割合の絶対値|M|を、オフ角a軸成分θの変化の割合の絶対値|A|と異ならせることができる。
【0127】
また、第2結晶層6の反りの方向依存性を利用することで、例えば、第2結晶層6において、m軸に沿った方向のc面6fの曲率半径を、a軸に沿った方向のc面6fの曲率半径よりも大きくすることができる。その結果、最終的に得られる基板10において、オフ角m軸成分θの変化の割合の絶対値|M|を、オフ角a軸成分θの変化の割合の絶対値|A|を小さくすることができる。
【0128】
また、このとき、上述の第2結晶層形成工程S150において第2結晶層6の厚さを1mm以上としたことで、第2結晶層6の反りを低減することができる。これにより、第2結晶層6においてc面6fの曲率半径が過度に小さくなることを抑制することができ、理想的に球面近似される曲面からの第2結晶層6のc面6fのずれを縮小すことができる。その結果、最終的に得られる基板10の主面10sの任意の位置において、式(1)から求められるオフ角に対する、実測したオフ角の誤差Δθを、±0.12°以内とし、好ましくは、±0.06°以内とすることができる。
【0129】
(S170:スライス工程)
次に、図10(f)に示すように、例えば、第2結晶層6の主面6sの中心の法線方向に対して略垂直な切断面SSにワイヤーソーを案内することで、第2結晶層6をスライスする。これにより、アズスライス基板7(以下、「基板7」と略すことがある)を形成する。なお、基板7の厚さを、例えば、450μmとする。
【0130】
このとき、ワイヤーソーを第2結晶層6の主面6sの中心の法線方向に対して垂直な切断面SSに案内しても、実際には、ワイヤーソーが撓むことがある。このため、実際の切断面SSは、例えば、第2結晶層6の主面6sの中心の法線に対して理想的に垂直な面に対して、所定の方向のみに凹に湾曲する可能性がある。
【0131】
そこで、本実施形態では、上述のワイヤーソーの方向依存性を積極的に利用する。例えば、実際の切断面SSが第2結晶層6の主面6sの中心の法線に理想的に垂直な面に対して凹に湾曲する方向を、第2結晶層6のうちm軸に沿った方向またはa軸に沿った方向とする。これにより、基板7において、m軸に沿った方向のc面7fの曲率半径を、a軸に沿った方向のc面7fの曲率半径と異ならせることができる。その結果、最終的に得られる基板10において、オフ角m軸成分θの変化の割合の絶対値|M|を、オフ角a軸成分θの変化の割合の絶対値|A|と異ならせることができる。
【0132】
本実施形態では、例えば、実際の切断面SSが凹に湾曲する方向を第2結晶層6のm軸に沿った方向とすることで、基板7において、m軸に沿った方向のc面7fの湾曲具合を小さくすることができる。すなわち、基板7において、m軸に沿った方向のc面7fの曲率半径を、a軸に沿った方向のc面7fの曲率半径よりも大きくすることができる。その結果、最終的に得られる基板10において、オフ角m軸成分θの変化の割合の絶対値|M|を、オフ角a軸成分θの変化の割合の絶対値|A|を小さくすることができる。
【0133】
この工程により、図10(g)に示すように、基板7が得られる。なお、基板7のオフ角θは、第2結晶層6のオフ角θから変化する可能性がある。
【0134】
(S180:研磨工程)
次に、研磨装置により基板7の両面を研磨する。
【0135】
このとき、本実施形態では、例えば、基板7のc面7fの曲率半径が大きくなるように、基板7の両面を研磨する。さらに、本実施形態では、例えば、基板7において、m軸に沿った方向のc面7fの曲率半径が、a軸に沿った方向のc面7fの曲率半径と異なるように、基板7の両面を研磨する。
【0136】
具体的には、図11(a)に示すように、まず、保持具(保持側定盤)82に対して、ワックスを介して基板7の主面(表面)7s側を貼りつける。
【0137】
このとき、保持具82の貼り付け面は、例えば、凹の球面状に湾曲している。このような保持具82の貼り付け面に基板7の主面7s側を貼り付けることで、基板7を、その主面7s側が球面状に凸となるように反らせる。これにより、基板7のc面7fの曲率半径を、スライス工程S170後の状態よりも大きくすることができる。
【0138】
また、このとき、保持具82の貼り付け面は、例えば、楕円球面となっている。保持具82の貼り付け面のうち、曲率半径が小さい軸方向を、例えば、基板7のうちm軸に沿った方向またはa軸に沿った方向とする。これにより、基板7を、その主面7f側が楕円球面状に凸となるように反らせることができる。その結果、基板7において、m軸に沿った方向のc面7fの曲率半径を、a軸に沿った方向のc面7fの曲率半径と異ならせることができる。
【0139】
本実施形態では、保持具82の貼り付け面のうち、曲率半径が小さい軸方向を、例えば、基板7のm軸方向に沿った方向とする。これにより、基板7において、m軸に沿った方向のc面7fの曲率半径を、a軸に沿った方向のc面7fの曲率半径よりも大きくすることができる。
【0140】
保持具82に基板7を貼り付けたら、上記基板7を保持する保持具82と、研磨パッド86を有する定盤84と、をそれぞれ回転させ、スラリーを供給しながら、基板7の裏面7b側を研磨パッド86に押し付ける。これにより、基板7の凹んだ裏面7bを、基板7の主面7fの中心の法線に対して垂直な平坦面に研磨する。
【0141】
基板7の裏面7bを研磨したら、図11(b)に示すように、保持具82に対して、ワックスを介して基板7の裏面7b側を貼りつける。なお、このときの保持具82の貼り付け面は、例えば、平坦面とする。
【0142】
保持具82に基板7を貼り付けたら、上記基板7を保持する保持具82と、研磨パッド86を有する定盤84と、をそれぞれ回転させ、スラリーを供給しながら、基板7の主面7s側を研磨パッド86に押し付ける。これにより、基板7の突出した主面7sを、基板7の主面7fの中心の法線に対して垂直な平坦面に研磨(鏡面研磨)する。
【0143】
このように基板7を研磨することで、図11(c)に示すように、基板10が得られる。
【0144】
このとき、研磨工程S180において、基板7のc面7fの曲率半径をスライス工程S170後の状態よりも大きくした状態で、基板7を研磨することで、最終的に得られる基板10において、c面10fの曲率半径を所望の大きさとすることができる。すなわち、オフ角m軸成分θの変化の割合Mと、オフ角a軸成分θの変化の割合Aとを調整することができる。
【0145】
また、研磨工程S180において、基板7のうちm軸方向のc面7fの曲率半径を、a軸方向のc面7fの曲率半径と異ならせた状態で、基板7を研磨することで、最終的に得られる基板10においても、m軸に沿った方向のc面10fの曲率半径を、a軸に沿った方向のc面10fの曲率半径と異ならせることができる。これにより、基板10において、オフ角m軸成分θの変化の割合の絶対値|M|を、オフ角a軸成分θの変化の割合の絶対値|A|と異ならせることができる。
【0146】
また、研磨工程S180において、基板7のうちm軸に沿った方向のc面7fの曲率半径を、a軸に沿った方向のc面7fの曲率半径よりも大きくした状態で、基板7を研磨することで、最終的に得られる基板10においても、m軸に沿った方向のc面10fの曲率半径を、a軸に沿った方向のc面10fの曲率半径よりも大きくすることができる。これにより、基板10において、オフ角m軸成分θの変化の割合の絶対値|M|を、オフ角a軸成分θの変化の割合の絶対値|A|を小さくすることができる。
【0147】
以上の窒化物半導体基板作製工程S100により、主面10s内での位置(x,y)におけるオフ角(θ,θ)が式(1)で近似されるように、基板10を作製することができる。
【0148】
(S220:オフ角測定工程)
基板10が作製されたら、X線回折のロッキングカーブ測定により、基板10の主面10sのうち2点以上においてオフ角(θ,θ)を測定する。このとき、2点のみでオフ角(θ,θ)を測定する場合は、2点でのx座標およびy座標は異なっていることが好ましい。より正確な測定を行う観点では、基板10の主面10sのうち5点以上においてオフ角(θ,θ)を測定することが好ましい。このとき、5点以上の測定点は、例えば、中心Oと、m軸に沿った方向に中心Oを挟んだ2点と、a軸に沿った方向に中心Oを挟んだ2点と、を含むことが好ましい。
【0149】
基板10の主面10sのうち2点以上においてオフ角(θ,θ)を測定したら、式(1)の定数M、A、MおよびAを取得する。なお、x方向およびy方向のそれぞれに3点以上においてオフ角(θ,θ)が測定されている場合には、最小二乗法により、定数M、A、MおよびAを求める。
【0150】
定数M、A、MおよびAを求めたら、該定数M、A、MおよびAを有する式(1)に基づいて基板データ出力プログラムおよび半導体装置選別プログラムを作成する。
【0151】
(S240:基板選別工程)
式(1)の定数M、A、MおよびAを取得したら、当該基板10を作製した製造者は、例えば、コンピュータ70により基板選別プログラムを実行することで、基板10の主面10s内において、式(1)から求められるオフ角(θ,θ)が所定の条件を満たす領域の面積の、主面10sの全面積に対する割合に基づいて、基板10をランク付けして選別する。
【0152】
具体的には、基板10の主面10sの全面積に対する、オフ角(θ,θ)が上記式(2)を満たす領域の面積の割合が所定値以上であるときに、基板10を良品としてランク付けする。
【0153】
または、基板10の主面10sの全面積に対する、オフ角(θ,θ)が上記式(3-1)および式(3-2)を満たす領域の面積の割合が所定値以上であるときに、基板10を良品としてランク付けする。
【0154】
または、基板10の主面10sの全面積に対する、オフ角(θ,θ)が上記式(4-1)および式(4-2)を満たす領域の面積の割合が所定値以上であるときに、基板10を良品としてランク付けする。
【0155】
このとき、これらの面積割合が高いほど、高いランクを付ける。例えば、面積割合が50%超以上80%未満であるときに、良品のランクを付け、面積割合が80%以上100%以下であるときに、最良品のランクを付ける。また、面積割合が例えば10%で以下であるときに、当該基板10は、不良品としてランク付けされ、出荷禁止とされる。なお、上記面積割合とランクとの関係は、適宜設定することができる。
【0156】
基板10に対してランクを付けたら、基板10のランクに係る情報を、所定の記録媒体としての外部記憶装置77に記録する。なお、基板10のランクに係る情報は、インターネットや専用回線等を介してダウンロード可能なように提供してもよいし、或いは印刷物として出力してもよい。
【0157】
また、基板10に対してランクを付けたら、基板10が不良品以外の場合には、あらかじめ定められたランクごとの基板10に対する価格と対応させて、当該基板10を出荷対象とする。このとき、基板10のランクが高いほど、高い価格を設定するが、該価格は適宜設定することができる。
【0158】
なお、基板10の価格を設定したら、基板10の価格に係る情報を、基板10のランクに係る情報とともに外部記憶装置77への記録等を行ってもよい。
【0159】
(S300:半導体積層物作製工程)
次に、基板10上にIII族窒化物半導体からなる半導体層50をエピタキシャル成長させ、半導体積層物30を作製する。本実施形態では、半導体積層物30として、例えば、SBDを構成する積層物を作製する。
【0160】
具体的には、図12(a)に示すように、まず、例えば、MOVPE法により、所定の成長温度に加熱された基板10に対して、TMGガス、NHおよびn型ドーパントガスを供給することで、基板10上に、下地n型半導体層51としてn型GaN層を形成する。このとき、下地n型半導体層51中のn型不純物を例えばSiまたはGeとする。また、下地n型半導体層51中のn型不純物濃度を例えば基板10中のn型不純物濃度と同等とし、1.0×1018cm-3以上1.0×1019cm-3以下とする。また、下地n型半導体層51の厚さを0.1μm以上3μm以下とする。
【0161】
下地n型半導体層51を形成したら、下地n型半導体層51上に、ドリフト層52としてn-型GaN層を形成する。このとき、ドリフト層52中のn型不純物を例えばSiまたはGeとする。また、ドリフト層52中のn型不純物濃度を例えば基板10中のn型不純物濃度および下地n型半導体層51中のn型不純物濃度よりも低く、1.0×1015cm-3以上5.0×1016cm-3以下とする。また、ドリフト層52の厚さを下地n型半導体層51の厚さよりも厚く、3μm以上40μm以下とする。これらにより、後述の半導体装置40のオン抵抗を低減するとともに、半導体装置40の耐圧を確保することができる。
【0162】
以上により、本実施形態に係る半導体積層物30が作製される。
【0163】
本実施形態に係る半導体積層物30では、例えば、基板10の主面の全体に対する、オフ角(θ,θ)が式(3-1)および式(3-2)を満たす領域の面積の割合が、50%超であり、好ましくは、80%以上である場合には、半導体層50の主面の全面積に対する、半導体層50の主面の算術平均粗さRaが30nm以下、好ましくは10nm以下である領域の面積の割合は、50%超となり、好ましくは、80%以上となる。
【0164】
または、本実施形態に係る半導体積層物30では、例えば、基板10の主面の全体に対する、オフ角(θ,θ)が式(4-1)および式(4-2)を満たす領域の面積の割合が、50%超であり、好ましくは、80%以上である場合には、半導体層50の主面の全面積に対する、半導体層50の主面の算術平均粗さRaが30nm以下、好ましくは10nm以下である領域の面積の割合は、50%超となり、好ましくは、80%以上となる。
【0165】
本実施形態の半導体積層物30は、例えば、上述の基板選別工程S240で基板10に設定された価格に基づいた価格でユーザに販売される。このとき、半導体積層物30は、上述の基板10のランクに係る情報等とともにユーザ側に提供される。
【0166】
また、本実施形態の半導体積層物30は、例えば、上述の基板データ出力プログラムまたは半導体装置選別プログラムとともにユーザ側に提供される。なお、本実施形態の半導体積層物30は、例えば、上述のオフ角座標マップ20とともにユーザ側に提供されてもよい。
【0167】
(S400:半導体装置作製工程)
次に、例えば、半導体積層物30が提供されたユーザ側において、半導体積層物30を用いて、半導体装置40を作製する。
【0168】
具体的には、図12(b)に示すように、ドリフト層52上の所定の位置にp型電極61を形成する。このとき、p型電極61を例えばパラジウム(Pd)/ニッケル(Ni)膜とする。
【0169】
また、基板10の裏面側にn型電極66を形成する。このとき、n型電極66を例えばTi/アルミニウム(Al)膜とする。
【0170】
p型電極61およびn型電極66を形成したら、不活性ガスの雰囲気下で、半導体積層物30に対して赤外線を照射し、半導体積層物30をアニールする。これにより、p型電極61およびn型電極66のそれぞれの密着性を向上させるとともに、p型電極61およびn型電極66のそれぞれの接触抵抗を低減させる。
【0171】
半導体積層物30をアニールしたら、半導体積層物30をダイシングし、所定の大きさのチップに切り分ける。
【0172】
以上により、図12(c)に示すように、本実施形態に係る半導体装置40が作製される。
【0173】
(S500:半導体装置選別工程)
半導体装置40が作製されたら、基板10の主面10s内での位置(x,y)におけるオフ角(θ,θ)に基づいて半導体装置40を選別する半導体装置選別工程S500を行う。本実施形態の半導体装置選別工程S500は、例えば、オフ角出力工程S520と、マップ表示工程S540と、良品判定工程S560と、を有している。
【0174】
(S520:オフ角出力工程)
半導体積層物30を用いて半導体装置40を作製したユーザは、例えば、コンピュータ70により基板データ出力プログラムを実行することで、基板10の主面10s内での任意の位置(x,y)を入力したときに、式(1)により、該位置(x,y)におけるオフ角(θ,θ)を表示部75に出力する。具体的には、例えば、基板10の主面10sの外縁の位置(x,y)を入力し、該主面10sの外縁の位置(x,y)におけるオフ角(θ,θ)を出力する。
【0175】
(S540:マップ表示工程)
次に、図6および図7に示すように、オフ角m軸成分θおよびオフ角a軸成分θをそれぞれ座標軸とするオフ角座標マップ20を表示部75に表示させ、式(1)により出力された、基板10の主面10sの外縁の位置(x,y)におけるオフ角(θ,θ)に基づいて、オフ角座標マップ20上に基板10の主面10sの範囲を表示させる。
【0176】
このとき、オフ角(θ,θ)が式(2)を満たす領域、すなわち、基板10の主面10sの範囲のうち領域Aと重なる領域を、オフ角座標マップ20上に着色して表示させる。これにより、オフ角(θ,θ)が式(2)を満たす領域内の少なくとも一部において、半導体層50の表面モフォロジが良好となっていると把握することができる。
【0177】
また、このとき、オフ角(θ,θ)が式(3-1)および式(3-2)を満たす領域、すなわち、基板10の主面10sの範囲のうち領域Bと重なる領域を、オフ角座標マップ20上に着色して表示させる。これにより、オフ角(θ,θ)が式(3-1)および式(3-2)を満たす領域の全体に亘って、半導体層50の表面モフォロジが良好となっていると把握することができる。
【0178】
また、このとき、オフ角(θ,θ)が式(4-1)および式(4-2)を満たす領域、すなわち、基板10の主面10sの範囲のうち領域Cと重なる領域を、オフ角座標マップ20上に着色して表示させる。これにより、オフ角(θ,θ)が式(4-1)および式(4-2)を満たす領域の全体に亘って、半導体層50の表面モフォロジが良好となっていると把握することができる。
【0179】
なお、オフ角(θ,θ)が式(2)を満たす領域、オフ角(θ,θ)が式(3-1)および式(3-2)を満たす領域、およびオフ角(θ,θ)が式(4-1)および式(4-2)を満たす領域のそれぞれを、異なる色で表示させてもよい。
【0180】
なお、オフ角座標マップ20が予め提供されている場合は、オフ角出力工程S420およびマップ表示工程S440を行わなくてもよい。
【0181】
(S560:良品判定工程)
オフ角座標マップ20上に基板10の主面10sの範囲を表示させたら、、半導体装置選別プログラムをコンピュータ70によってピックアップ装置80に実行させることで、該オフ角座標マップ20に基づいて半導体装置40を選別してピックアップする。例えば、基板10の主面10s内での所定位置(x,y)において式(1)から求められるオフ角(θ,θ)が所定の条件を満たすときに、当該所定位置における半導体装置40を選別してピックアップする。
【0182】
具体的には、実際の基板10の主面10sのうち、オフ角(θ,θ)が式(2)を満たす領域内から切り分けられた半導体装置40では、半導体層50の表面モフォロジが良好となっている可能性があると判定し、該半導体装置40を良品として選別してピックアップする。
【0183】
または、実際の基板10の主面10sのうち、オフ角(θ,θ)が式(3-1)および式(3-2)を満たす領域内から切り分けられた半導体装置40では、半導体層50の表面モフォロジが確実に良好となっていると判定し、該半導体装置40を最良品として選別してピックアップする。
【0184】
または、実際の基板10の主面10sのうち、オフ角(θ,θ)が式(4-1)および式(4-2)を満たす領域内から切り分けられた半導体装置40では、半導体層50の表面モフォロジが確実に良好となっていると判定し、該半導体装置40を最良品として選別してピックアップする。
【0185】
一方で、実際の基板10の主面10sのうち、オフ角(θ,θ)が上記条件を満たさない領域内から切り分けられた半導体装置40では、半導体層50の表面モフォロジが荒れていると判定し、該半導体装置40を不良品として除外する。
【0186】
以上により、本実施形態のSBDとしての半導体装置40が製造される。
【0187】
(5)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0188】
(a)本実施形態では、基板10のc面10fは、m軸に沿った断面およびa軸に沿った断面のそれぞれにおいて球面近似される曲面状となっている。また、c面10fの曲率半径は、m軸に沿った断面およびa軸に沿った断面のそれぞれにおいて、基板10の半径よりも充分に大きくなっている。これにより、基板10の主面10s内での任意の位置(x,y)におけるオフ角(θ,θ)を、式(1)で近似的に表すことができる。当該式(1)における定数M、A、MおよびAを調整することで、基板10の主面10s内におけるオフ角分布(オフ角のばらつき)を所定の範囲内に容易に調整することができる。その結果、基板10の主面10s内でのオフ角に依存する、半導体層50の表面モフォロジを容易に制御することが可能となる。
【0189】
(b)基板10の主面10s内でのオフ角(θ,θ)が式(1)により近似的に表され、すなわち、オフ角m軸成分θおよびオフ角a軸成分θが、それぞれ、xおよびyの一次式で近似的に表されることで、オフ角測定工程S220において、基板10の主面10sのうちの数点においてオフ角(θ,θ)を測定するだけで、式(1)の定数M、A、MおよびAを決定することができる。つまり、数点のオフ角測定から式(1)を容易に導出することができる。
【0190】
(c)基板10の主面10s内でのオフ角(θ,θ)が式(1)により近似的に表されることで、基板10の主面10s内の任意の位置(x、y)におけるオフ角(θ,θ)を、該式(1)により即座に求めることができる。例えば、半導体装置選別工程S500において、基板10または半導体積層物30が提供されたユーザが、基板10全体のオフ角を測定することなく、基板10の主面10s内の任意の位置(x、y)におけるオフ角(θ,θ)を参照することができる。
【0191】
(d)基板10の主面10s内でのオフ角(θ,θ)が式(1)により近似的に表されることで、オフ角m軸成分θおよびオフ角a軸成分θをそれぞれ座標軸とするオフ角座標マップ20上に、基板10の主面10sの範囲を表示させることができる。
【0192】
ここで、基板の主面内でのオフ角が離散的に分布していたり、または基板の主面の位置に対して非線形に分布していたりする場合では、実際の基板の主面の範囲に対応させて、オフ角座標マップ上に基板の主面の範囲を表示させることができない可能性がある。このため、基板の主面内で、オフ角がどのように分布しているのかを把握することが困難となる。
【0193】
これに対し、本実施形態では、基板10の主面10s内でのオフ角(θ,θ)が式(1)により近似的に表されることで、実際の基板10の主面10sの範囲に対応させて、オフ角座標マップ20において、基板10の主面10sの範囲を表示させることができる。これにより、基板10の主面10s内におけるオフ角分布を容易に把握することが可能となる。例えば、オフ角座標マップ20において、基板10の主面10sの範囲が大きければ、基板10の主面10sのオフ角分布が広いと把握することができ、一方で、基板10の主面10sの範囲が小さければ、基板10の主面10sのオフ角分布が狭いと把握することができる。
【0194】
(e)オフ角座標マップ20において、基板10の主面10sの範囲を表示させることで、基板10の主面10sのオフ角に対する半導体層50の表面モフォロジの依存性に対応付けて、基板10の主面10sの範囲内での半導体層50の表面モフォロジ分布を容易に把握することができる。すなわち、基板10の主面10s内の任意の位置(x、y)におけるオフ角(θ,θ)に基づいて、半導体層50の表面モフォロジを予測することができる。これにより、実際に半導体層50の表面モフォロジ測定(AFM等)を行うことなく、半導体装置選別工程S500において、半導体層50の表面モフォロジが良好な半導体装置40を選別することが可能となる。
【0195】
(f)本実施形態の基板10では、オフ角m軸成分θの変化の割合の絶対値|M|は、例えば、オフ角a軸成分θの変化の割合の絶対値|A|と異なっている。これにより、オフ角座標マップ20において、基板10の主面10sの範囲を、表面モフォロジ良好領域の複雑な分布に合うように容易に調整することができる。
【0196】
ここで、図4に示したように、本発明者は、基板の主面のオフ角に対する半導体層の表面モフォロジの依存性において、表面モフォロジ良好領域は、必ずしもオフ角(0,0)に対して中心対称とならならず、複雑な分布を示すことを見出した。これは、半導体層の表面モフォロジが、基板のオフ角に加え、半導体層成長時の成長炉の状態、基板の置き方、基板の回転方向、基板へのガスの供給方向などに影響を受けたためであると考えられる。このような表面モフォロジの依存性を示すことから、基板の主面内のオフ角分布が等方的であると(すなわち、基板の主面の範囲がオフ角座標マップ上で真円であると)、基板の主面内において、表面モフォロジ良好領域を広くすることが困難となる。
【0197】
そこで、本実施形態では、|M|≠|A|であることで、基板10の主面10s内のオフ角分布を非等方的とすることができ、すなわち、基板10の主面10sの範囲をオフ角座標マップ20上で楕円とすることができる。これにより、オフ角座標マップ20上での表面モフォロジ良好領域の複雑な分布に合うように、基板10の主面10s内のオフ角分布を容易に調整することができる。その結果、基板10の主面10s内において、半導体層の表面モフォロジが良好となる部分を効率よく広くすることができる。
【0198】
(g)さらに、本実施形態の基板10では、オフ角m軸成分θの変化の割合の絶対値|M|は、例えば、オフ角a軸成分θの変化の割合の絶対値|A|よりも小さい。ここで、上述のオフ角座標マップ20の表面モフォロジ良好領域では、θ軸方向に短く且つθ軸方向に長い領域が多い。そこで、本実施形態では|M|<|A|とすることで、オフ角座標マップ20において、基板10の主面10sの範囲を、表面モフォロジ良好領域のうちθ軸方向に短く且つθ軸方向に長い領域に合うように容易に調整することができる。その結果、基板10の主面10s内において、半導体層の表面モフォロジが良好となる部分をさらに効率よく広くすることができる。
【0199】
(h)本実施形態の基板10の主面10sの少なくとも一部におけるオフ角(θ,θ)は、領域A、領域Bおよび領域Cの少なくともいずれかの中に含まれている。これにより、基板10を用いた半導体積層物30の少なくとも一部から、半導体層50の表面モフォロジが良好となる部分を得ることができる。半導体層50の表面モフォロジが良好となる部分から半導体装置40を作製することで、半導体層50の表面における局所的な電界集中を抑制することができる。その結果、半導体装置40の耐圧を向上させることが可能となる。
【0200】
(i)本実施形態では、基板10の主面10sの任意の位置において、式(1)から求められるオフ角に対する、実測したオフ角の誤差Δθが、±0.12°以内である。これにより、オフ角座標マップ20において、実測したオフ角に基づく基板10の主面10sの範囲が、式(1)により求められる基板10の主面10sの範囲よりも過剰に広くなることを抑制することができる。その結果、実際の基板10の主面10sの少なくとも一部におけるオフ角(θ,θ)が、上記領域A、領域Bまたは領域Cから外れることを抑制することができる。
【0201】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0202】
上述の実施形態では、基板10がGaN自立基板である場合について説明したが、基板10は、GaN自立基板に限らず、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウム(InN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)等のIII族窒化物半導体、すなわち、AlInGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の組成式で表されるIII族窒化物半導体からなる自立基板であってもよい。
【0203】
上述の実施形態では、基板10がn型である場合について説明したが、基板10はp型であったり、または半絶縁性を有していたりしてもよい。例えば、基板10を用いて高電子移動度トランジスタ(HEMT)としての半導体装置を製造する場合には、基板10は、半絶縁性を有していることが好ましい。
【0204】
上述の実施形態では、半導体層50がGaNからなる場合について説明したが、半導体層50は、GaNに限らず、例えば、AlN、AlGaN、InN、InGaN、AlInGaN等のIII族窒化物半導体、すなわち、AlInGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の組成式で表されるIII族窒化物半導体からなってもよい。
【0205】
上述の実施形態では、半導体層50が基板10と同じIII族窒化物半導体からなる場合について説明したが、半導体層50のうちの少なくとも1層は、基板10と異なるIII族窒化物半導体からなっていてもよい。
【0206】
上述の実施形態では、半導体積層物30から作製される半導体装置40がSBDである場合について説明したが、該半導体装置40は、SBD以外であってもよい。具体的には、半導体装置40は、例えば、pn接合ダイオード、ジャンクションバリアショットキーダイオード、HEMT等であってもよい。
【0207】
なお、半導体装置40が発光素子としてのpn接合ダイオードであり、発光層にInを含む場合には、基板10の主面10s内におけるオフ角分布(オフ角のばらつき)を所定の範囲内に調整することで、発光層におけるIn含有量のばらつきを抑制することができる。
【0208】
上述の実施形態では、オフ角m軸成分θの変化の割合の絶対値|M|が、オフ角a軸成分θの変化の割合の絶対値|A|よりも小さい場合について説明したが、オフ角a軸成分θの変化の割合の絶対値|A|が、オフ角m軸成分θの変化の割合の絶対値|M|よりも小さくてもよい。これにより、オフ角座標マップ20において、基板10の主面10sの範囲を、表面モフォロジ良好領域のうちθ軸方向に短く且つθ軸方向に長い領域に合うように容易に調整することができる。
【0209】
上述の実施形態では、窒化物半導体基板作製工程S100においてVAS法により基板10を作製する場合について説明したが、III族窒化物半導体と異なる材料からなる異種基板を用い、該異種基板から結晶層を剥離することで、基板10を作製する方法であれば、VAS法以外の方法を用いてもよい。
【0210】
上述の実施形態では、スライス工程S170において、ワイヤーソーを用い、第2結晶層6をスライスする場合について説明したが、例えば、外周刃スライサー、内周刃スライサー、放電加工機等を用いてもよい。
【0211】
上述の実施形態では、|M|≠|A|とする方法として、(a)剥離工程S160において第2結晶層6の反りの方向依存性を利用する方法と、(b)スライス工程S170においてワイヤーソーの方向依存性を利用する方法と、(c)研磨工程S180において保持具82の貼り付け面を楕円球面とする方法と、を用いる場合について説明したが、|M|≠|A|とする方法としては、(a)、(b)および(c)のうち少なくともいずれかの方法を用いればよい。
【0212】
上述の実施形態では、半導体積層物30を基板データ出力プログラムおよび半導体装置選別プログラムとともにユーザ側に提供し、ユーザ側において、半導体装置作製工程S400後に半導体装置選別工程S500としてオフ角出力工程S520、マップ表示工程S540および良品判定工程S560を実施する場合について説明したが、この場合に限られない。上述の場合以外にも、例えば、以下のような2つの変形例が考えられる。
【0213】
変形例1では、まず、窒化物半導体基板作製工程S100または半導体積層物作製工程S300の後にオフ角出力工程S520およびマップ表示工程S540を実施し、オフ角座標マップ20を得る。オフ角座標マップ20を得たら、半導体積層物30を、例えば、当該オフ角座標マップ20とともにユーザ側に提供する。次に、ユーザ側において、半導体装置作製工程S400を行う。半導体装置作製工程S400後に、オフ角出力工程S520およびマップ表示工程S540を実施することなく、すでに提供されているオフ角座標マップ20に基づいて良品判定工程S560を行う。
【0214】
変形例2では、オフ角測定工程S220において定数M、A、MおよびAを求めたら、該定数M、A、MおよびAを有する式(1)に基づいて半導体装置選別プログラムのみを作成する。つまり、基板データ出力プログラムおよびオフ角座標マップ20を作成しない。半導体積層物作製工程S300の後には、半導体積層物30を半導体装置選別プログラムとともにユーザ側に提供する。次に、ユーザ側において、半導体装置作製工程S400を行う。半導体装置作製工程S400後に、オフ角出力工程S520およびマップ表示工程S540を実施することなく、良品判定工程S560を行う。良品判定工程S560では、基板10の主面10s内での所定位置(x,y)において式(1)から求められるオフ角(θ,θ)が、予め設定された条件を満たすときに、当該所定位置における半導体装置40を選別してピックアップする。
【0215】
変形例1および2のように、半導体積層物30をユーザ側に提供する際に提供するプログラム等を適宜選択し、該選択されたプログラム等に応じて、各工程を変更してもよい。
【実施例
【0216】
以下、本発明の効果を裏付ける各種実験結果について説明する。
【0217】
(1)窒化物半導体基板
(1-1)窒化物半導体基板の作製
上述の実施形態のようにVAS法を用い、以下の構成を有する実施例1~3の窒化物半導体基板(以下、基板と略すことがある)を、ほぼ同じ成長条件にて作製した。
【0218】
(基板の構成)
基板:GaN自立基板
基板の直径:4インチ
基板の厚さ:400μm
基板の導電型:n型
基板中のn型不純物:Si
基板中のn型不純物濃度:
(実施例1)ノンドープ、(実施例2)1.21×1018cm-3、(実施例3)ノンドープ
基板の主面:+c面
基板のオリフラ:m面、すなわち、γ=90°
基板のx方向:略a軸方向
基板のy方向:略m軸方向
【0219】
なお、実施例1~3の基板厚は、それぞれ、472μm、504μm、501μmであった。また、実施例1~3の基板における転位密度(平均転位密度)は、互いにほぼ等しく、1.39×10cm-2であった。また、実施例1~3の基板における電子移動度は、それぞれ、337cm/Vs、323cm/Vs、342cm/Vsであった。
【0220】
(1-2)窒化物半導体基板のオフ角の評価
X線回折のロッキングカーブ測定により、実施例1~3の基板の主面のうち、x軸およびy軸のそれぞれ上の複数点において、オフ角(θ,θ)を測定した。
【0221】
(1-3)結果
図13を用い、実施例1~3における窒化物半導体基板のオフ角測定結果について説明する。図13(a)~(f)は、実施例1~3において窒化物半導体基板の主面での位置に対するオフ角を測定した結果を示す図である。なお、図13(a)および(b)が実施例1の結果であり、図13(c)および(d)が実施例2の結果であり、図13(e)および(f)が実施例3の結果である。また、各図において、オフ角m軸成分θを「//m[1-100]」と表記し、その実測値を白抜き四角で示している。また、オフ角a軸成分θを「//a[11-20]」と表記し、その実測値を白抜き円で示している。
【0222】
図13(a)、(c)および(e)に示すように、実施例1~3のそれぞれにおいて、y軸上の位置に対して、オフ角m軸成分θが実質的に線形に変化していることを確認した。また、y軸上の位置に対して、オフ角a軸成分θが実質的に一定であることを確認した。
【0223】
図13(b)、(d)および(f)に示すように、実施例1~3のそれぞれにおいて、x軸上の位置に対して、オフ角a軸成分θが実質的に線形に変化していることを確認した。また、x軸上の位置に対して、オフ角m軸成分θが実質的に一定であることを確認した。
【0224】
ここで、実施例1~3において、y軸上の位置に対するオフ角m軸成分θを最小二乗法によって直線近似することにより、式(1)’の定数MおよびMを求めた。また、x軸上の位置に対するオフ角a軸成分θを最小二乗法によって直線近似することにより、式(1)’の定数AおよびAを求めた。
【0225】
以下の表1に、実施例1~3の定数M、A、MおよびAを示す。
【0226】
【表1】
【0227】
なお、図13(a)、(c)および(e)には、y軸上の位置に対するオフ角m軸成分θを近似した直線(yの一次関数)と、オフ角a軸成分θをAとした直線(定数関数)と、を示している。また、図13(b)、(d)および(f)には、x軸上の位置に対するオフ角a軸成分θを近似した直線(xの一次関数)と、オフ角m軸成分θをMとした直線(定数関数)と、を示している。
【0228】
以下の表2に、実施例1~3のそれぞれにおいて、式(1)’により求められるオフ角m軸成分θに対する、実測したオフ角m軸成分θの誤差の絶対値の最大値(θ最大誤差)と、式(1)’により求められるオフ角a軸成分θに対する、実測したオフ角a軸成分θの誤差の絶対値の最大値(θ最大誤差)とを示す。
【0229】
【表2】
【0230】
表2に示すように、実施例1~3では、θ最大誤差およびθ最大誤差のそれぞれが、0.12°以下となっていた。すなわち、実施例1~3では、式(1)’から求められるオフ角に対する、オフ角の実測値の誤差Δθが±0.12°以内であることを確認した。したがって、実施例1~3では、基板のc面が、m軸に沿った断面およびa軸に沿った断面のそれぞれにおいて、精度良く球面近似されることを確認した。
【0231】
また、実施例1~3では、θ最大誤差がおよそ0.02°であったのに対して、θ最大誤差がおよそ0.12°であった。すなわち、実施例1~3では、基板の主面の中心においてθ>θであり(すなわち、M>A)、θ最大誤差がθ最大誤差よりも小さいことを確認した。
【0232】
次に、図14を用い、代表的な例として、実施例2についてのオフ角座標マップについて説明する。図14は、実施例2に係る窒化物半導体基板の主面の範囲と、領域A、領域Bおよび領域Cとの関係を示すオフ角座標マップである。
【0233】
図14に示すように、実施例2の基板の主面内での任意の位置(x,y)におけるオフ角(θ,θ)が上記定数M、A、MおよびAを用いた式(1)’で近似的に表されることで、実施例2の基板の主面の範囲を、オフ角座標マップに表示させることができることを確認した。
【0234】
また、実施例2の基板の主面の少なくとも一部におけるオフ角(θ,θ)は、領域A内に含まれ、上記式(2)を満たしていることを確認した。また、実施例2の基板の主面の少なくとも中心におけるオフ角(θ,θ)、すなわち、(M,A)は、領域A内に含まれ、上記式(2)を満たしていることを確認した。さらに、実施例2の基板の主面の全面積に対する、オフ角(θ,θ)が式(2)を満たす領域の面積の割合は、50%超であり、具体的には約90%以上であることを確認した。
【0235】
また、実施例2の基板の主面の少なくとも一部におけるオフ角(θ,θ)は、領域B内に含まれ、上記式(3-1)および式(3-2)を満たしていることを確認した。また、実施例2の基板の主面の少なくとも中心におけるオフ角(θ,θ)、すなわち、(M,A)は、領域B内に含まれ、上記式(3-1)および式(3-2)を満たしていることを確認した。さらに、実施例2の基板の主面の全面積に対する、オフ角(θ,θ)が式(3-1)および式(3-2)を満たす領域(着色領域)の面積の割合は、50%超であり、具体的には約80%以上であることを確認した。
【0236】
なお、図示されていないが、実施例1および3のオフ角座標マップについても、実施例2のオフ角座標マップと同様となることを確認した。
【0237】
(2)半導体積層物および半導体装置
(2-1)半導体積層物および半導体装置の作製
実施例2の基板を用い、以下の構成を有する半導体積層物を作製した。
【0238】
(半導体積層物の構成)
層構造:(基板側から)下地n型半導体層、ドリフト層
下地n型半導体層の構成:SiドープGaN層
下地n型半導体層中のSi濃度:2×1018cm-3
下地n型半導体層の厚さ:2μm
ドリフト層の構成:SiドープGaN層
ドリフト層中のSi濃度:0.9×1016cm-3
ドリフト層の厚さ:13μm
【0239】
さらに、実施例2の半導体積層物を用い、以下の構成を有するSBDとしての半導体装置を作製した。
【0240】
(半導体装置の構成)
p型電極:Pd/Ni膜
p型電極の直径:100μm
n型電極:Ti/Al膜
【0241】
(2-2)評価
実施例2の半導体積層物の所定領域において、AFMにより、半導体層の表面モフォロジを測定した。
【0242】
実施例2の半導体装置において、逆バイアスを印加し、絶縁破壊耐圧(以下、耐圧と略す)を測定した。
【0243】
(2-3)結果
実施例2の半導体積層物のうち、基板のオフ角(θ,θ)が式(3-1)および式(3-2)を満たす領域において、半導体層の表面粗さRaがおよそ7nmであることを確認した。つまり、基板のオフ角(θ,θ)が式(3-1)および式(3-2)を満たす領域では、半導体層の表面モフォロジが良好となることを確認した。
【0244】
実施例2の半導体装置のうち、基板のオフ角(θ,θ)が式(3-1)および式(3-2)を満たす領域において、耐圧が少なくとも1kV以上であることを確認した。つまり、当該領域では、半導体層の表面粗さが小さいため、局所的な電界集中を抑制することができ、半導体装置の耐圧を向上させることができることを確認した。
【0245】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0246】
(付記1)
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板であって、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面は、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)は、以下の式(1)で近似される
窒化物半導体基板。
【数4】
【0247】
(付記2)
前記θの変化の割合の絶対値|M|は、前記θの変化の割合の絶対値|A|と異なる
付記1に記載の窒化物半導体基板。
【0248】
(付記3)
前記θの変化の割合の絶対値|M|は、前記θの変化の割合の絶対値|A|よりも小さい
付記2に記載の窒化物半導体基板。
【0249】
(付記4)
前記主面は、前記オフ角(θ,θ)が(0,0)となる領域を含まない
付記1~3のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板。
【0250】
(付記5)
前記主面の少なくとも一部における前記オフ角(θ,θ)は、以下の式(2)を満たす
付記1~4のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板。
0.0784≦θ +θ ≦0.578 ・・・(2)
【0251】
(付記6)
前記主面の少なくとも中心における前記オフ角(θ,θ)は、前記式(2)を満たす
付記5に記載の窒化物半導体基板。
【0252】
(付記7)
前記主面の全面積に対する、前記オフ角(θ,θ)が前記式(2)を満たす領域の面積の割合は、50%超である
付記5又は6に記載の窒化物半導体基板。
【0253】
(付記8)
前記主面の少なくとも一部における前記オフ角(θ,θ)は、以下の式(3-1)および式(3-2)を満たす
付記1~4のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板。
0.47≦θ≦0.71 ・・・(3-1)
-0.20≦θ≦0.26 ・・・(3-2)
【0254】
(付記9)
前記主面の少なくとも中心における前記オフ角(θ,θ)は、前記式(3-1)および前記式(3-2)を満たす
付記8に記載の窒化物半導体基板。
【0255】
(付記10)
前記主面の全面積に対する、前記オフ角(θ,θ)が前記式(3-1)および前記式(3-2)を満たす領域の面積の割合は、50%超である
付記8又は9に記載の窒化物半導体基板。
【0256】
(付記11)
前記主面の中心における前記θは、前記主面の中心における前記θよりも大きく、
前記式(1)により求められる前記θに対する、実測した前記θの誤差の絶対値の最大値は、前記式(1)により求められる前記θに対する、実測した前記θの誤差の絶対値の最大値よりも小さい
付記1~10のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板。
【0257】
(付記12)
前記主面の少なくとも一部における前記オフ角(θ,θ)は、以下の式(4-1)および式(4-2)を満たす
付記1~4のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板。
-0.05≦θ≦0.21 ・・・(4-1)
0.36≦θ≦0.65 ・・・(4-2)
【0258】
(付記13)
前記主面の少なくとも中心における前記オフ角(θ,θ)は、前記式(4-1)および前記式(4-2)を満たす
付記12に記載の窒化物半導体基板。
【0259】
(付記14)
前記主面の全面積に対する、前記オフ角(θ,θ)が前記式(4-1)および前記(4-2)を満たす領域の面積の割合は、50%超である
付記12又は13に記載の窒化物半導体基板。
【0260】
(付記15)
前記主面の中心における前記θは、前記主面の中心における前記θよりも大きく、
前記式(1)により求められる前記θに対する、実測した前記θの誤差の絶対値の最大値は、前記式(1)により求められる前記θに対する、実測した前記θの誤差の絶対値の最大値よりも小さい
付記1~7、12~14のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板。
【0261】
(付記16)
前記主面内の任意の位置において、前記式(1)から求められる前記オフ角に対する、実測した前記オフ角の誤差は、±0.12°以内である
付記1~15のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板。
【0262】
(付記17)
前記誤差は、±0.06°以内である
付記16に記載の窒化物半導体基板。
【0263】
(付記18)
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面と、前記主面に繋がる側面の一部を構成するオリエンテーションフラットとを有する窒化物半導体基板であって、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面は、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記オリエンテーションフラットに平行な方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記オリエンテーションフラットに垂直な方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)、前記結晶の(11-20)面に対する前記オリエンテーションフラットの角度をγとしたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)は、以下の式(1)’で近似される
窒化物半導体基板。
【数5】
【0264】
(付記19)
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板と、
前記窒化物半導体基板上に設けられ、III族窒化物半導体からなる半導体層と、
を有し、
前記窒化物半導体基板の前記主面に対して最も近い低指数の結晶面は、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記窒化物半導体基板において、前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)は、以下の式(1)で近似される
半導体積層物。
【数6】
【0265】
(付記20)
前記窒化物半導体基板の前記主面の全面積に対する、前記オフ角(θ,θ)が前記式(3-1)および前記式(3-2)を満たす領域の面積の割合は、50%超であり、
前記半導体層の主面の全面積に対する、前記半導体層の主面の算術平均粗さRaが30nm以下である領域の面積の割合は、50%超である
付記19に記載の半導体積層物。
0.47≦θ≦0.71 ・・・(3-1)
-0.20≦θ≦0.26 ・・・(3-2)
【0266】
(付記21)
前記窒化物半導体基板の前記主面の全面積に対する、前記オフ角(θ,θ)が前記式(4-1)および前記(4-2)を満たす領域の面積の割合は、50%超であり、
前記半導体層の主面の全面積に対する、前記半導体層の主面の算術平均粗さRaが30nm以下である領域の面積の割合は、50%超である
付記19に記載の半導体積層物。
-0.05≦θ≦0.21 ・・・(4-1)
0.36≦θ≦0.65 ・・・(4-2)
【0267】
(付記22)
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板を作製した後に、該窒化物半導体基板を選別するよう、コンピュータに実行させる基板選別プログラムであって、
前記窒化物半導体基板は、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が、前記主面に対して湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)が、以下の式(1)で近似されるよう構成され、
前記主面内において前記式(1)から求められる前記オフ角(θ,θ)が所定の条件を満たす領域の面積の、前記主面の全面積に対する割合に基づいて、前記窒化物半導体基板をランク付けして選別する手順を
前記コンピュータに実行させる
基板選別プログラム、または該プログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【数7】
【0268】
(付記23)
前記窒化物半導体基板に付けられたランクに基づいて、該窒化物半導体基板の価格を設定する手順を、
前記コンピュータに実行させる
付記22に記載の基板選別プログラム、または記録媒体。
【0269】
(付記24)
前記窒化物半導体基板を選別する手順では、
前記窒化物半導体基板の前記主面の全面積に対する、前記オフ角(θ,θ)が以下の式(2)を満たす領域の面積の割合が所定値以上であるときに、前記窒化物半導体基板を良品としてランク付けする
付記22又は23に記載の基板選別プログラム、または記録媒体。
0.0784≦θ +θ ≦0.5625 ・・・(2)
【0270】
(付記25)
前記窒化物半導体基板を選別する手順では、
前記窒化物半導体基板の前記主面の全面積に対する、前記オフ角(θ,θ)が以下の式(3-1)および式(3-2)を満たす領域の面積の割合が所定値以上であるときに、前記窒化物半導体基板を良品としてランク付けする
付記22又は23に記載の基板選別プログラム、または記録媒体。
0.47≦θ≦0.71 ・・・(3-1)
-0.20≦θ≦0.26 ・・・(3-2)
【0271】
(付記26)
前記窒化物半導体基板を選別する手順では、
前記窒化物半導体基板の前記主面の全面積に対する、前記オフ角(θ,θ)が以下の式(4-1)および式(4-2)を満たす領域の面積の割合が所定値以上であるときに、前記窒化物半導体基板を良品としてランク付けする
付記22又は23に記載の基板選別プログラム、または記録媒体。
-0.05≦θ≦0.2 ・・・(4-1)
0.36≦θ≦0.65 ・・・(4-2)
【0272】
(付記27)
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板とともに提供され、該窒化物半導体基板の前記主面の状態に係るデータを出力するよう、コンピュータに実行させる基板データ出力プログラムであって、
前記窒化物半導体基板は、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が、前記主面に対して湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)が、以下の式(1)で近似されるよう構成され、
前記主面内での任意の位置(x,y)を入力したときに、前記式(1)により、該位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)を出力する手順を
前記コンピュータに実行させる
基板データ出力プログラム、または該プログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【数8】
【0273】
(付記28)
前記θおよび前記θをそれぞれ座標軸とするオフ角座標マップを表示させ、前記式(1)により出力された、前記主面の外縁の位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)に基づいて、前記オフ角座標マップ上に前記主面の範囲を表示させる手順を
前記コンピュータに実行させる
付記27に記載の基板データ出力プログラム、または記録媒体。
【0274】
(付記29)
前記主面の範囲を表示させる手順では、
前記オフ角(θ,θ)が以下の式(2)を満たす領域を、前記オフ角座標マップ上に表示させる
付記28に記載の基板データ出力プログラム、または記録媒体。
0.0784≦θ +θ ≦0.5625 ・・・(2)
【0275】
(付記30)
前記主面の範囲を表示させる手順では、
前記オフ角(θ,θ)が以下の式(3-1)および式(3-2)を満たす領域を、前記オフ角座標マップ上に表示させる
付記28に記載の基板データ出力プログラム、または記録媒体。
0.47≦θ≦0.71 ・・・(3-1)
-0.20≦θ≦0.26 ・・・(3-2)
【0276】
(付記31)
前記主面の範囲を表示させる手順では、
前記オフ角(θ,θ)が以下の式(4-1)および式(4-2)を満たす領域を、前記オフ角座標マップ上に表示させる
付記28に記載の基板データ出力プログラム、または記録媒体。
-0.05≦θ≦0.2 ・・・(4-1)
0.36≦θ≦0.65 ・・・(4-2)
【0277】
(付記32)
付記27~31のいずれか1つに記載の基板データ出力プログラムとともに提供される窒化物半導体基板である
基板データ出力プログラム付き窒化物半導体基板。
【0278】
(付記33)
付記28~31のいずれか1つに記載の基板データ出力プログラムによって出力される
オフ角座標マップ。
【0279】
(付記34)
付記33に記載のオフ角座標マップとともに提供される窒化物半導体基板である
オフ角座標マップ付き窒化物半導体基板。
【0280】
(付記35)
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板を用いて半導体装置を製造するときに、前記半導体装置を選別してピックアップするよう、コンピュータによってピックアップ装置に実行させる半導体装置選別プログラムであって、
前記窒化物半導体基板は、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が、前記主面に対して湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)が、以下の式(1)で近似されるよう構成され、
前記主面内での所定位置(x,y)において前記式(1)から求められる前記オフ角(θ,θ)が所定の条件を満たすときに、当該所定位置における前記半導体装置を良品として選別してピックアップする手順を
前記コンピュータによって前記ピックアップ装置に実行させる
半導体装置選別プログラム、または該プログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【数9】
【0281】
(付記36)
付記35に記載の半導体装置選別プログラムとともに提供される窒化物半導体基板である
半導体装置選別プログラム付き窒化物半導体基板。
【0282】
(付記37)
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板を作製する工程を有し、
前記窒化物半導体基板を作製する工程では、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)が、以下の式(1)で近似されるように、前記窒化物半導体基板を作製する
窒化物半導体基板の製造方法。
【数10】
【0283】
(付記38)
前記窒化物半導体基板を作製する工程は、
結晶成長用基板上にIII族窒化物半導体の結晶からなる第1結晶層を成長させる工程と、
前記第1結晶層上に金属層を形成する工程と、
水素ガスまたは水素化物ガスを含む雰囲気中で熱処理を行い、前記第1結晶層中にボイドを形成する工程と、
前記第1結晶層および前記金属層上にIII族窒化物半導体の結晶からなる第2結晶層を成長させる工程と、
前記第2結晶層を前記基板から剥離させる工程と、
を有し、
前記第1結晶層中にボイドを形成する工程では、
前記第1結晶層中に占める前記ボイドの体積比率であるボイド化率を、前記結晶成長用基板と同心円状または同心楕円状に周方向に均等にするとともに、該ボイド化率を、前記結晶成長用基板の径方向に中心側から外周側に向けて単調に増加させる
付記37に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
【0284】
(付記39)
前記第2結晶を成長させる工程では、
前記第1結晶層中の前記ボイド化率に応じて前記第2結晶層の初期核を発生させ、該初期核の密度を前記結晶成長用基板と同心円状または同心楕円状に周方向に均等にするとともに、該初期核の密度を前記結晶成長用基板の径方向に中心側から外周側に向けて単調に低減させる
付記38に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
【0285】
(付記40)
前記第2結晶層を前記基板から剥離させる工程では、
前記第2結晶層を前記結晶成長用基板の周方向に均等に、且つ、前記結晶成長用基板の径方向に外周側から中心側に向けて徐々に剥離させ、前記第2結晶層と前記結晶成長用基板との最終的な接触範囲の中心位置を前記結晶成長用基板の略中心とする
付記38又は39に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
【0286】
(付記41)
前記窒化物半導体基板を作製する工程の後に、前記主面のうち2点以上において前記オフ角を測定し、前記式(1)のうちの前記M、前記M、前記Aおよび前記Aを取得する工程を有する
付記37~40のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
【0287】
(付記42)
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板を作製する工程と、
前記窒化物半導体基板上にIII族窒化物半導体からなる半導体層をエピタキシャル成長させ、半導体積層物を作製する工程と、
を有し、
前記窒化物半導体基板を作製する工程では、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)が、以下の式(1)で近似されるように、前記窒化物半導体基板を作製する
半導体積層物の製造方法。
【数11】
【0288】
(付記43)
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板を作製する工程と、
前記窒化物半導体基板上にIII族窒化物半導体からなる半導体層をエピタキシャル成長させ、半導体積層物を作製する工程と、
前記半導体積層物を切り分け、半導体装置を作製する工程と、
前記半導体装置を選別する工程と、
を有し、
前記窒化物半導体基板を作製する工程では、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が、前記主面に対して凹の球面状に湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)が、以下の式(1)で近似されるように、前記窒化物半導体基板を作製し、
前記半導体装置を選別する工程では、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)に基づいて、前記半導体装置を選別する
半導体装置の製造方法。
【数12】
【0289】
(付記44)
前記半導体装置を選別する工程は、
前記主面内での任意の位置(x,y)を入力したときに、前記式(1)により、該位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)を出力する工程と、
前記式(1)により出力された、前記主面の外縁の位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)に基づいて、前記θおよび前記θをそれぞれ座標軸とするオフ角座標系のオフ角座標マップ上に、前記主面の範囲を表示させるとともに、前記オフ角(θ,θ)が所定の条件を満たす領域を、前記オフ角座標マップ上に表示させる工程と、
前記主面のうち前記オフ角(θ,θ)が所定の条件を満たす領域内から切り分けられた前記半導体装置を良品として選別する工程と、
を有する
付記43に記載の半導体装置の製造方法。
【0290】
(付記45)
III族窒化物半導体の結晶からなり、主面を有する窒化物半導体基板の、前記主面の状態に係るデータを出力する基板データ出力方法であって、
前記窒化物半導体基板は、
前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が、前記主面に対して湾曲した(0001)面であり、
前記主面内での位置のうち前記結晶の<1-100>軸に沿った方向の座標をx、前記主面内での位置のうち前記結晶の<11-20>軸に沿った方向の座標をy、前記主面の中心の座標(x,y)を(0,0)、前記主面の法線に対する前記結晶の<0001>軸のオフ角のうち<1-100>軸に沿った方向成分をθ、前記オフ角のうち<11-20>軸に沿った方向成分をθ、前記主面内での位置(x,y)に対する前記オフ角(θ,θ)の変化の割合を(M,A)、前記主面の中心における前記オフ角(θ,θ)を(M,A)としたときに、
前記主面内での位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)が、以下の式(1)で近似されるよう構成され、
前記主面内での任意の位置(x,y)を入力したときに、前記式(1)により、該位置(x,y)における前記オフ角(θ,θ)を出力する工程を有する
基板データ出力方法。
【数13】
【符号の説明】
【0291】
10 窒化物半導体基板(基板)
10c c軸
10f c面
10s 主面
20 オフ角座標マップ
30 半導体積層物
40 半導体装置
50 半導体層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14