(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】光モニタ回路
(51)【国際特許分類】
H04B 10/075 20130101AFI20220309BHJP
H01L 31/02 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
H04B10/075
H01L31/02 A
(21)【出願番号】P 2018004440
(22)【出願日】2018-01-15
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】本田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】亀井 新
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-037231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0008984(US,A1)
【文献】特開2005-101322(JP,A)
【文献】特開2010-258711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/075
H01L 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モニタ光の光パワーを監視する光モニタ回路であって、
ディザ信号により前記モニタ光を光変調するディザ変調回路と、
前記ディザ変調回路からの出力光を電気信号に変換するフォトディテクタと、
前記フォトディテクタからの電気信号のうち、前記ディザ信号の周波数に対応する電気信号を取り出すフィルタ回路と、
前記フィルタ回路の出力信号を増幅し光パワーを算出する増幅回路と、を
備え、
前記フィルタ回路は、周波数阻止型のフィルタで構成されており、前記周波数阻止型のフィルタは、前記フォトディテクタの暗電流の中心周波数において大きな損失を示し、前記ディザ信号の周波数においては損失をほぼ示さない、
ことを特徴とする光モニタ回路。
【請求項2】
偏波合流回路と、そのTM偏波経路の前段に更に接続してTE偏波をTM偏波に回転する偏波回転回路とを備えるか、または偏波分離回路と、そのTM偏波経路の後段に更に接続してTM偏波をTE偏波に回転する偏波回転回路とを備えた偏波ダイバーシティ構成の光回路において、
TE偏波経路と前記TM偏波経路から前記モニタ光を分岐する光分岐回路をそれぞれの偏波経路に備え、
前記光分岐回路から分岐された2つの前記モニタ光を監視する、
ことを特徴とする請求項
1記載の光モニタ回路。
【請求項3】
モニタ光の光パワーを監視する光モニタ回路であって、
ディザ信号により前記モニタ光を光変調するディザ変調回路と、
前記ディザ変調回路からの出力光を電気信号に変換するフォトディテクタと、
前記フォトディテクタからの電気信号のうち、前記ディザ信号の周波数に対応する電気信号を取り出すフィルタ回路と、
前記フィルタ回路の出力信号を増幅し光パワーを算出する増幅回路と、
を備え、
偏波合流回路と、そのTM偏波経路の前段に更に接続してTE偏波をTM偏波に回転する偏波回転回路とを備えるか、または偏波分離回路と、そのTM偏波経路の後段に更に接続してTM偏波をTE偏波に回転する偏波回転回路とを備えた偏波ダイバーシティ構成の光回路において、
TE偏波経路と前記TM偏波経路から前記モニタ光を分岐する光分岐回路をそれぞれの偏波経路に備え、
前記光分岐回路から分岐された2つの前記モニタ光を監視する、
ことを特徴とする光モニタ回路。
【請求項4】
前記フィルタ回路は、前記ディザ信号により前記フォトディテクタからの電気信号を同期検波する同期検波回路で構成されており、
前記同期検波回路は、前記ディザ信号の周波数と同じ周波数の信号のみを取り出す、
ことを特徴とする請求項
3記載の光モニタ回路。
【請求項5】
前記フォトディテクタは、2つの前記モニタ光を入力する導波路を二つ備える2光入力の一つのフォトディテクタである
ことを特徴とする請求項
2乃至4のいずれか1項に記載の光モニタ回路。
【請求項6】
前記ディザ信号を発生するディザ発生回路は、前記ディザ変調回路に前記ディザ信号を印加すると共に、主信号を変調する光変調回路の位相調整部にも接続されて変調最適点を探すのに用いられ、共有されること、
を特徴とする請求項
2乃至5のいずれか1項に記載の光モニタ回路。
【請求項7】
前記ディザ信号を発生するディザ発生回路は、前記ディザ変調回路に前記ディザ信号を印加すると共に、主信号を変調する光変調回路のドライバ回路のゲイン調整部にも接続されて変調最適点を探すのに用いられ、共有されること
を特徴とする請求項
2乃至5のいずれか1項に記載の光モニタ回路。
【請求項8】
前記ディザ信号を発生するディザ発生回路は、主信号を変調する光変調回路に接続するドライバ回路であり、
前記ドライバ回路からの変調電気信号を、主信号を変調する光変調回路と前記モニタ光を変調する前記ディザ変調回路とで共用する、
ことを特徴とする請求項
2乃至5のいずれか1項に記載の光モニタ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光回路の光モニタ回路、例えば偏波ダイバーシティ構成を有する光送受信回路において光信号の光パワーを監視する光モニタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に長距離の光通信において、1チャネルあたりの通信容量を飛躍的に増大できる、デジタルコヒーレント方式の光伝送システムが開発され、商用導入も進みつつある。デジタルコヒーレント方式の通信では、直交する2つの偏波の光(偏光)に別の信号を与えて伝送量を倍増する、偏波多重方式が一般に適用されている。
【0003】
各偏波に信号を付与する際の信号形式には様々なものがあるが、現在最も盛んに商用導入が進められているシステムは、チャネルあたり100ギガビット/秒の通信容量を有するQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)を採用したものがほとんどである。
【0004】
(従来の光送信回路における光モニタ回路)
図1は、従来技術の光送信回路(光変調回路)における光パワーモニタ回路の実現構成を示すものである。
図1 には、連続光を発生する光源(9100)、例えば偏波多重QPSK方式の光変調器(9101)、 可変光減衰器(VOA: Variable Optical Attenuator)(9102)、光分岐回路(9103)、光検出器(PD: Photo Detector、フォトディテクタ)(9104),増幅回路(91041)が示される。
【0005】
光変調器(9101)には、光源(9100)からの連続光と図示しない送信光変調用の変調電気信号がそれぞれ入力され、該変調電気信号によって連続光を変調して送信信号光として伝送路へ送出される。このとき、光分岐回路(9103)によって、光パワーをモニタされる主信号である送信信号光の経路上から一部の光パワーをモニタ光として分岐する。該モニタ光をPD(9104)によって受光して電気信号に変換し、送出される送信光信号の強度(光パワー)を電気信号として検出する。検出された電気信号は、例えばトランスインピーダンスアンプ(TIA)のような増幅回路(91041)で増幅して、光パワーを算出して後段回路にモニタ(監視)信号として流す。このような光モニタ回路のモニタ結果出力に応じて、例えばVOA(可変光減衰器)(9102)を駆動し、送信信号光の強度を調節するのが一般的である。
【0006】
偏波多重方式の光送信回路においては、将来的には更なる回路の小型化が求められる。この目的のため、InP(インジウム燐)光導波路やシリコン光導波路による光集積回路(PIC: Photonic Integrated Circuit)により、複数の要素光回路を同一チップに集積する研究開発が進められている。
【0007】
一方で、一般にInP光導波路やシリコン光導波路による光回路は、強い偏波依存性を有するため、偏波多重方式の光送信回路あるいは光受信回路は、独立した2つの偏波(TE/TM、便宜的にX偏波、Y偏波とも称する。)に対応した別々の系統(偏波経路)を設けた、偏波ダイバーシティ構成をとるのが通常である。
【0008】
(従来の光受信回路における光モニタ回路)
図2には、従来技術の光受信回路における光パワーモニタ回路の実現構成を示す。
【0009】
図2には、図示しない局発光源からの連続光(参照光)を入力する光入力経路(9201)、伝送路から受信した受信信号光の入力経路(9202)、光受信回路(9203)、光分岐回路(9204)、PD(光検出器)(9205)、増幅回路(92051)、 検出された図示せぬモニタ信号を受けて光パワーを調節するVOA(可変光減衰器)(9206)が示される。
【0010】
光受信回路(9203)は、局発光源からの連続光(参照光)と受信信号光がそれぞれ入力され、受信信号光を参照光で復調して電気信号に変換する機能を持つ。このとき、光分岐回路(9204)によって主信号経路上の受信信号光から一部の光パワーをモニタ光として分岐する。該モニタ光をPD(9205)によって受光して、入力される受信光信号の強度(光パワー)を電気信号としてモニタ(監視)する。検出された電気信号は、例えばトランスインピーダンスアンプ(TIA)のような増幅回路(92051)で増幅して、光パワーを算出して後段回路に信号を流す。このような光モニタ回路の出力に応じて、例えばVOA(9206)を駆動し、受信光信号の強度を調節する光モニタ機能とするのが一般的である。
【0011】
また、光受信回路、光送信回路ともに、光信号の強度をモニタすることで、何らかの異常で光信号が入力(出力)されない状態(信号断)を感知できることも、一般的に求められる機能である。
【0012】
(PD:フォトディテクタ)
図3は、従来技術におけるモニタ光の受光素子である、
図1のPD(9104)、
図2のPD(9205)を、シリコン光集積回路として実現した一般的なゲルマニウムフォトディテクタの構造例を示したものである。ここで
図3(a)は上部から見た平面図、
図3(b)は
図3(a)におけるA-A’の断面構成を示した図である。
【0013】
図3には、モニタ光の入力するシリコン導波路(521)、シリコン導波路へのpインプラント領域(522)、シリコン導波路への p++インプラント領域(523)、シリコン導波路上に成長した Ge結晶(524)、Ge結晶への nインプラント領域(525)、電極(526)、石英で形成された上部クラッド(527)、同じく石英で形成された下部クラッド(528)、シリコン基板(529)が示される。
【0014】
このような一般的な構造のゲルマニウムフォトディテクタの設計例では、下部クラッドの厚さは2μm、シリコン導波路(521)のコア厚さは0.22μm、Ge結晶(524)の厚さは0.4μm、光の進行方向に対するGe結晶(524)の長さは50μm、幅は10μm程度である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【文献】H Fukuda et al, Silicon photonic circuit with polarization diversity,Optics Express vol. 16, 2008, p.p.4872 - 4880
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
デジタルコヒーレント偏波多重方式における、偏波ダイバーシティ構成の光送信回路、光受信回路における送受信光パワーのモニタ回路においては、偏波回転・合流する上流、あるいは偏波分離・回転する下流において、各偏波の主信号経路上において信号光からモニタ光を分岐し、それぞれモニタPDで受光してモニタする構成がとられていた。
【0017】
これらの光モニタ回路は、使用される規格によって異なるが、一般的には大きなダイナミックレンジを持つ光パワー入出力を検出する必要がある。特に、光受信回路においてダイナミックレンジの下側で受信光パワーが非常に小さい時には、これを更に光分岐回路(9204)を通して受光するため、-30~-70dBm程度の光パワーを検出する必要がある。
【0018】
一般的なPDが持つ感度をおおよそ1A/Wとすると、検出すべき光が-30~-70dBm程度の光パワーだった場合、光電流は1000nA~0.1nA程度の値となる。ここで一般的なフォトダイオードの暗電流は室温でも1000nA~0.1nA程度あり、検出すべき光電流とほぼ同等の値となるため、光パワーのモニタPDは、自身の暗電流と同じ程度の信号を感度よく検出しなければならない。特にシリコン光集積回路に一般に用いられるゲルマニウムフォトディテクタは、この暗電流が10~0.1μA程度と比較的大きい。
【0019】
光電流の検出は、モニタPDの後段に置かれる増幅回路などの電子回路によって行われる。もし暗電流が決まった値であれば、電子回路はその暗電流値からの差分を見る事で、光電流を検出することが出来る。しかしながら、実際にはPDの暗電流は製造によってばらつき、また温度にも敏感に影響を受けるため、単純に固定の暗電流値を差し引いただけでは光電流の値を検出することはできない。
【0020】
解決法の一つとして、例えば光が入力されていない時に、PDの暗電流を各温度、製造個体ごとにあらかじめ測定しておき、光が入った時にはその測定結果を参照して差し引く方法があるが、この方法では測定結果の記録のための回路が追加で必要となり、回路規模が大きくなり複雑かつ高コスト化するという課題があった。
【0021】
これらの課題、問題点をまとめると、
(1)モニタPDが持つ暗電流と、入力された光信号を検出した時に出る光電流の値がほぼ同じか、または光電流が暗電流を下回るため、単純にPDから来る電流値をモニタしただけでは誤差が大きくなってしまう
(2)モニタPDの暗電流は製造個体によってばらつき、また温度によって大きく変化するため、モニタPDから来る電流値から固定の値を差し引けば光電流の値がわかるわけではない
(3)温度や製造個体ごとに暗電流を記録し、光が入った時に逐次参照し差し引く方法では、回路規模が増大し複雑化、高コスト化が起こり現実的では無い
という問題点に整理される。
【0022】
本発明は、かかる問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、偏波ダイバーシティ構成の光送信回路、光受信回路における送受信光パワーのモニタを行う光モニタ回路において、-30~-70dBm程度の低光パワーにおいても、単純・低コストな制御回路とPDで光パワー検出を可能とし、必要な配線数が少なく抑えられ、モニタ精度に優れた光モニタ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、このような目的を達成するために、以下のような構成を備えることを特徴とする。
(発明の構成1)
モニタ光の光パワーを監視する光モニタ回路であって、
ディザ信号により前記モニタ光を光変調するディザ変調回路と、
前記ディザ変調回路からの出力光を電気信号に変換するフォトディテクタと、
前記フォトディテクタからの電気信号のうち、前記ディザ信号の周波数に対応する電気信号を取り出すフィルタ回路と、
前記フィルタ回路の出力信号を増幅し光パワーを算出する増幅回路と、を備え、
前記フィルタ回路は、周波数阻止型のフィルタで構成されており、前記周波数阻止型のフィルタは、前記フォトディテクタの暗電流の中心周波数において大きな損失を示し、前記ディザ信号の周波数においては損失をほぼ示さない、ことを特徴とする光モニタ回路。
(発明の構成2)
偏波合流回路と、そのTM偏波経路の前段に更に接続してTE偏波をTM偏波に回転する偏波回転回路とを備えるか、または偏波分離回路と、そのTM偏波経路の後段に更に接続してTM偏波をTE偏波に回転する偏波回転回路とを備えた偏波ダイバーシティ構成の光回路において、
TE偏波経路と前記TM偏波経路から前記モニタ光を分岐する光分岐回路をそれぞれの偏波経路に備え、
前記光分岐回路から分岐された2つの前記モニタ光を監視する、
特徴とする発明の構成1記載の光モニタ回路。
(発明の構成3)
モニタ光の光パワーを監視する光モニタ回路であって、
ディザ信号により前記モニタ光を光変調するディザ変調回路と、
前記ディザ変調回路からの出力光を電気信号に変換するフォトディテクタと、
前記フォトディテクタからの電気信号のうち、前記ディザ信号の周波数に対応する電気信号を取り出すフィルタ回路と、
前記フィルタ回路の出力信号を増幅し光パワーを算出する増幅回路と、を備え、
偏波合流回路と、そのTM偏波経路の前段に更に接続してTE偏波をTM偏波に回転する偏波回転回路とを備えるか、または偏波分離回路と、そのTM偏波経路の後段に更に接続してTM偏波をTE偏波に回転する偏波回転回路とを備えた偏波ダイバーシティ構成の光回路において、
TE偏波経路と前記TM偏波経路から前記モニタ光を分岐する光分岐回路をそれぞれの偏波経路に備え、
前記光分岐回路から分岐された2つの前記モニタ光を監視する、ことを特徴とする光モニタ回路。
(発明の構成4)
前記フィルタ回路は、前記ディザ信号により前記フォトディテクタからの電気信号を同期検波する同期検波回路で構成されており、
前記同期検波回路は、前記ディザ信号の周波数と同じ周波数の信号のみを取り出す、ことを特徴とする発明の構成3に記載の光モニタ回路。
(発明の構成5)
前記フォトディテクタは、2つの前記モニタ光を入力する導波路を二つ備える2光入力の一つのフォトディテクタである
ことを特徴とする発明の構成2乃至4のいずれか1項に記載の光モニタ回路。
(発明の構成6)
前記ディザ信号を発生するディザ発生回路は、前記ディザ変調回路に前記ディザ信号を印加すると共に、主信号を変調する光変調回路の位相調整部にも接続されて変調最適点を探すのに用いられ、共有されること、
を特徴とする発明の構成2乃至5のいずれか1項に記載の光モニタ回路。
(発明の構成7)
前記ディザ信号を発生するディザ発生回路は、前記ディザ変調回路に前記ディザ信号を印加すると共に、主信号を変調する光変調回路のドライバ回路のゲイン調整部にも接続されて変調最適点を探すのに用いられ、共有されること
を特徴とする発明の構成2乃至5のいずれか1項に記載の光モニタ回路。
(発明の構成8)
前記ディザ信号を発生するディザ発生回路は、主信号を変調する光変調回路に接続するドライバ回路であり、
前記ドライバ回路からの変調電気信号を、主信号を変調する光変調回路と前記モニタ光を変調する前記ディザ変調回路とで共用する、
ことを特徴とする発明の構成2乃至5のいずれか1項に記載の光モニタ回路。
【発明の効果】
【0024】
以上記載したように、本発明によれば、偏波ダイバーシティ構成の光送信回路、光受信回路における送受信光パワーのモニタを行う光モニタ回路において、-30~-70dBm程度の低光パワーにおいても、単純・低コストな制御回路とPDで光パワー検出を可能とし、必要な配線数が少なく、モニタ精度に優れた光モニタ回路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来の光送信回路における光パワーモニタの実現構成を示す図である。
【
図2】従来の光受信回路における光パワーモニタの実現構成を示す図である。
【
図3】(a)は従来の一般的なゲルマニウムフォトディテクタの構造を示す平面図、(b)はそのA-A’ 断面図である。
【
図4】(a)は本発明の実施例1の光モニタ回路を含む光送信回路の構成を示す平面図であり、(b)はそのフィルタの周波数特性図である。
【
図5】(a)及び(b)は、本発明の実施例1の光モニタ回路において、モニタ光にディザを掛けた時にPDが出力する信号及び増幅回路が受ける信号をそれぞれ示す波形図である。
【
図6】本発明の実施例2の光モニタ回路を含む、光受信回路の構成を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施例3の光モニタ回路を含む、偏波ダイバーシティ構成の光送信回路の構成を示す図である。
【
図8】本発明の実施例4の光モニタ回路を含む、偏波ダイバーシティ構成の光送受信回路の構成を示す図である。
【
図9】本発明の実施例5の光モニタ回路を含む、光送信回路の構成を示す図である。
【
図10】本発明の第5の実施形態を実施例2へ適用した例である、光受信回路の光モニタ回路を示す図である。
【
図11】本発明の第5の実施形態を実施例3へ適用した例である、偏波ダイバーシティ構成の光送信回路の光モニタ回路を示す図である。
【
図12】本発明の第5の実施形態を実施例4へ適用した例である、偏波ダイバーシティ構成の光送受信回路の光モニタ回路を示す図である。
【
図13】本発明の実施例6の光モニタ回路を含む、偏波ダイバーシティ構成の光送信回路の構成を示す図である。
【
図14】(a)及び(b)は、本発明の実施例6の光モニタ回路に用いられる2光入力のゲルマニウムフォトディテクタの2つの構造例を示す平面図である。
【
図15】本発明の実施例7の光モニタ回路を含む、偏波ダイバーシティ構成の光送信回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0027】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る光モニタ回路について説明する。
【0028】
図4(a)は、本実施例1における光モニタ回路を含む、光送信回路の構成を示す平面図である。
【0029】
図4(a)には、連続光を発生する光源(100)、送信光変調用の光変調器(101)、 VOA(102)、モニタ光の光分岐回路(103)、光変調回路またはVOAなどで構成されるディザ変調回路(104)、ディザ変調用の電気信号(ディザ信号)を発生するディザ発生回路(105)、光検出器(PD)(106)、フィルタ(107)、モニタ電気信号増幅用の増幅回路(108)が示される。
【0030】
本発明の特徴は、ディザ変調回路 (104)をPD(106)と光分岐回路(103)の間に入れ、光分岐回路(103)から分岐したモニタ光に対して、ディザ発生回路(105)からのディザ信号で光変調をかける点にある。
【0031】
ここで述べるディザ信号(Dither)の周波数は、PD暗電流の中心周波数よりは高い必要があるが、送信光変調用の光変調器(101)に印加される数~数10GHzオーダの送信光変調用電気信号よりは低い、例えば数10~数100MHz程度の周波数帯の電気信号で充分である。
【0032】
ディザ変調回路(104)でディザ変調されたモニタ光は、PD(106)において電気信号に変換される。PD(106)から出る電気信号の内、暗電流の中心周波数成分(通常DC(直流)成分を中心とした所定の周波数帯域幅の成分)を周波数阻止型のフィルタ(107)でブロック(阻止)することで、モニタ光に関連するディザのかかったAC信号のみが増幅回路(108)に入力されるようになる。増幅回路(108)では、このディザのかかったAC信号を復調するなどして、モニタ光の強度に対応した出力を得て、例えばVOA(102)が制御される。
【0033】
図4(b)には、このようなフィルタ(107)の周波数特性の例を示す。縦軸が損失、横軸が周波数である。暗電流の中心周波数は通常、DC近傍にあり、周波数阻止型のフィルタ(107)の周波数特性は、いわゆる高域通過型のハイパスフィルタの特性となる。
【0034】
ディザ変調回路(104)の後段のPD(106)で発生する暗電流にはディザ変調がかかっていないため、暗電流のスペクトルの中心周波数(132)は、そのままDC(0Hz)近傍に有り、フィルタ(107)で減衰される。一方、ディザ発生回路(105)からのディザ信号の周波数(131)は、暗電流のスペクトル帯域幅より充分高い周波数であって、フィルタ(107)の損失が充分に小さい周波数になるように設定されている。
【0035】
フィルタ(107)のスペクトル形状は、ディザ信号の周波数(131)で損失がほぼ無く信号が通過し、暗電流の中心周波数(132)において大きな損失を示す周波数阻止型のフィルタであれば、必ずしも
図4(b)の通りでなくても良い。このようなフィルタは、例えばPD(106)と増幅回路(108)の間に直列に容量を接続することで簡単に作製できる。
【0036】
[実施例1の電気信号の波形図]
図5には、
図4の実施例1の光モニタ回路において、ディザ発生回路(105)からのディザ信号で、ディザ変調回路(104)によりモニタ光にディザを掛けた時に、PD(106)が出力する信号(a)と、増幅回路(108)が受ける信号(b)の波形図を、横軸を時間にして示す。
【0037】
図5(a)のPD出力の信号レベル(201)は、ディザ変調回路(104)の光変調回路またはVOAが消光しているとき、信号レベル(202)は通過しているときを指す。ディザ発生回路(105)からのディザ信号の振幅は、ディザ変調回路(104)のVOA又は光変調器を、通過または消光に切り替えられるほど充分に大きいとする。信号レベル(201)、(202)の1組がディザの1周期にあたる。信号レベル(201)において、消光しているにもかかわらずPD出力の電流値が有るのは、PD(106)が暗電流を持つからである。
【0038】
図5(b)には、フィルタ(107)後段の増幅回路(108)が受ける信号を示す。フィルタ(107)がDC成分をカットするため、
図5(a)に有った信号レベル(201)の暗電流成分が信号レベル(203)のようにゼロになっている。従って増幅回路(108)は信号レベル(203)と(204)の差を検出すれば、光分岐回路(103)より来るモニタ光信号の強度を検出できる。
【0039】
図5(a)のPD(106)が出力する信号を直接入力したのでは、増幅回路(108)は暗電流成分も増幅してしまうが、
図5(b)のようにフィルタ(107)がDC成分をカットした後の信号であれば、増幅回路(108)ではモニタ光に由来する信号成分のみを増幅するため、検出出力のSN比を上げる事が出来る。ディザ変調回路(104)は、光分岐回路(103)より来るモニタ光信号に対し、消光と通過を切り替える機能が有れば良いため、VOA又は光変調回路で構成することができる。
【0040】
本発明ではPD暗電流の成分を完全に取り除くので、モニタするべき光信号が暗電流より小さくても、信号検出が可能であり、また、暗電流自体のバラつきにも影響されない。追加すべき回路はディザ発生回路(105)とフィルタ(107)、VOA又は光変調回路で構成されたディザ変調回路(104)であり、回路規模は大きくは増えない。従って先に述べた課題をすべて解決しうる発明となっている。
【0041】
図4の枠(120)に囲まれた要素回路は全て光回路であり、例えばシリコン光導波路によって同一チップに集積することができる。もちろん枠外の電子回路として構成されるディザ発生回路(105)やフィルタ(107)、増幅回路(108)などの要素回路も含めて集積化することも可能である。
【0042】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る光モニタ回路について説明する。
【0043】
図6は、本実施例2の光モニタ回路を含む、光受信回路の構成を示す平面図である。
【0044】
図6には、図示しない局発光源からの復調用参照光の光入力経路(301)、受信信号光の入力経路(302)、光受信回路(303)、モニタ光を分岐する光分岐回路(304)、ディザ変調回路(305)、VOA(306)、PD(307)、 フィルタ(308)、モニタ電気信号増幅用の増幅回路(309)、ディザ変調用の電気信号(ディザ信号)を発生するディザ発生回路(310)が示される。
【0045】
第1の実施例と同じく、光分岐回路(304)より分岐したモニタ光は、ディザ変調回路(305)でディザ発生回路(310)からのディザ信号により光変調され、PD(307)で電気信号に変換された後、フィルタ(308)を通って、増幅回路(309)で増幅される。
【0046】
ディザ発生回路(310)からのディザ信号の特性や、ディザ変調回路(305)におけるディザ変調の動作、PD(307)の暗電流に関連するDC成分をカットするフィルタ(308)の特性や実装などは、実施例1と同様である。
【0047】
図6の枠(320)に囲まれた要素回路は全て光回路であり、例えばシリコン光導波路によって同一チップに集積可能である。もちろん枠外の電子回路も含めて集積化することも可能である。
【0048】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る光モニタ回路について説明する。本発明の第3の実施形態では、偏波ダイバーシティ構成の光送信回路における光モニタ回路の構成を示す。
【0049】
図7は、本実施例3の光モニタ回路を含む、偏波ダイバーシティ構成の光送信回路の構成を示す平面図である.
図7は、実施例1(
図4)の光送信回路を偏波ダイバーシティ構成にした構成である。
図7には、図示しない光源からのX偏波の連続光をXとYの2つの偏波経路用に分岐する光パワースプリッタ(405)、Y偏波光変調回路(406)、X偏波光変調回路(407)、Y偏波経路において光変調されたX偏波光をY偏波光に変換する偏波回転回路 (408)、偏波ビームコンバイナ(409)が示される。
【0050】
VOA(410)(411)は、たとえば図示しないモニタ光の検出出力により、各偏波の変調光強度を制御する。光分岐回路(412)(413)からはX/Y偏波経路それぞれの変調光の一部が、モニタ用に分岐され、ディザ変調回路(418)(419)でディザ変調をかけられ、PD(417)(415)で受光され電気変換される。フィルタ(425)(423)、増幅回路(426)(424)の効果は実施例1(
図4)、実施例2(
図6)と同じである。
【0051】
図7では、XとYの2つの偏波経路の変調光がモニタされるが、ディザ発生回路(420)は一つにまとめられている。更にディザ発生回路(420)は、同時に送信光のY偏波変調器(406)(またはX偏波光変調回路(407)、あるいは両方であってもよい。)自体にも、ディザ信号を供給する。Y偏波光変調回路(406)に掛けるディザ信号は、一般的に光変調回路のヒーターなどの位相調整部またはドライバ回路のゲイン調整部に印加され、光変調回路の動作最適点を探るために使われる。
【0052】
図7において、主信号のY偏波光変調回路(406)、あるいはX偏波光変調回路(407)の位相調整部のバイアスは、バイアス(422)で決定する。容量(421)は、ディザ変調回路(418)(419)のバイアスとバイアス(422)とのDCレベルを変える直流分離のために配置してある。
【0053】
コヒーレント光送信回路は、光変調回路の位相調整部やドライバ回路のゲイン調整部にディザを掛けて変調最適点を探すことが一般的であるため、ディザ発生回路(420)は光送信回路の制御回路内に既に組込まれている事が多い。このディザ発生回路(420)を光モニタ回路のディザ変調回路(418)(419)の駆動にも利用して共有することによって、回路規模を増やさず光モニタ機能を実現するという本発明の効果を得る事が出来る。
【0054】
図7の枠(416)に囲まれた要素回路は全て光回路であり、例えばシリコン光導波路によって同一チップに集積可能である。もちろん枠外のディザ信号発生回路(420)、フィルタ(425)(423)、増幅回路(426)(424)などの電子回路も含めて集積化することも可能である。
【0055】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る光モニタ回路について説明する。本発明の第4の実施形態では、偏波ダイバーシティ構成の光受信回路における光モニタ回路の構成を示す。
【0056】
図8は、本実施例4の光モニタ回路を含む、偏波ダイバーシティ構成の光送受信回路の構成を示す平面図である。
【0057】
図8の下部は、
図7の実施例3の偏波ダイバーシティ構成の光送信回路にあたる構成であって、左下から光パワースプリッタ(520)、Y偏波光変調回路(521)、X偏波光変調回路(522)、VOA(523)(524)があり、これより右には
図7と同じ構成がある。
【0058】
図8の上部は、偏波ダイバーシティ構成の光受信回路の構成であって、右上から、図示しない局発光源からの復調用参照光を入力する光入力経路(501)、受信信号光の入力経路(502)、受信信号光をX、Y偏波成分に分離する偏波ビームスプリッタ(507)、分離されたY偏波成分をX偏波光に変換する偏波回転回路(508)である。
【0059】
図8には、さらに復調用参照光をX、Y偏波復調用に分岐する光パワースプリッタ(509)、Y偏波復調用の光コヒーレントミキサ(510)、X偏波復調用の光コヒーレントミキサ(511)、復調された光信号を電気信号に変換する2組のPDアレイ(512)(513)、VOA(518)(519)、モニタ光を分岐する光分岐回路(514)(515)が示されている。
【0060】
光分岐回路(514)(515)より分岐したモニタ光は、実施例1~3と同様に、ディザ変調回路(531)(530)でディザ信号により光変調され、PD(533)(532)で電気信号に変換され、フィルタ(535)(534)を通りPDの暗電流信号成分を除去され、増幅回路(537)(536)で増幅、検出される。
【0061】
実施例4(
図8)の光受信機としての構成は、偏波ダイバーシティ構成である以外は基本、実施例2(
図6)の光受信回路と同様である。
【0062】
また、実施例4(
図8)の光受信回路の光モニタ回路におけるディザ変調に関しては、送受は異なるが実施例3(
図7)の偏波ダイバーシティ構成の光送信回路と基本同様である。この時、光モニタ回路の2つのディザ変調回路(530)(531)に掛けるディザ信号を発生するディザ信号発生回路(538)は、両偏波で統一してあり、また光送信回路のY偏波光変調回路(521)にディザを掛けるのにも使用され共有される。Y偏波光変調回路(521)のバイアスは、バイアス(540)で決まり、容量(539)によって直流分離され、光受信回路の光モニタ回路のディザ変調回路(530)(531)とはDCレベルが異なるように設計してある。
【0063】
実施例3でも述べたように、コヒーレント光送信回路では変調最適点を探すために主信号の光変調器にディザを掛ける事が一般的である。この光送信回路のディザ発生回路(538)から、光受信回路の光モニタ回路のディザ変調回路(530)(531)へもディザ信号を与えることによって、回路規模を広げずに本発明の効果を得られる。もちろん、実施例3(
図7)のように、同時に光送信回路の光モニタ回路のディザ変調回路へディザ信号を与えてもよい。
【0064】
図8の枠(599)に囲まれた要素回路は全て光回路であり、例えばシリコン光導波路によって同一チップに集積可能である。もちろん枠外のディザ信号発生回路(538)、フィルタ(534)(535)、増幅回路(536)(537)などの電子回路も含めて集積化することも可能である。
【0065】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係る光モニタ回路について説明する。
【0066】
図9は、本実施例5の光モニタ回路を含む、光送信回路の構成を示す平面図である。
図9の実施例5の光送信回路の構成は、実施例1(
図4)の光送信回路と基本同様であって、
図9の左から連続光を発生する光源(600)、送信光の光変調器(601)、 VOA(602)、モニタ光の光分岐回路(603)、ディザ変調回路(604)、ディザ発生回路(605)、PD(606)、同期検波回路(607)、信号増幅用の増幅回路(608)が示される。
【0067】
図9の実施例5では、実施例1(
図4)のフィルタ(107)が、同期検波回路(607)になっている点が実施例1との相違点である。
【0068】
同期検波回路(607)は、ディザ発生回路(605)からのディザ信号により、PD(606)の出力電気信号を同期検波するものであり、ディザ信号と周波数、タイミングが同じ信号のみを取り出すことが出来る。従って、DC成分が主であるPD暗電流の影響は受けず、モニタ光信号のディザによる変調成分のみを取り出すことが可能となる。同期検波回路(607)と信号増幅回路(608)は個別の2つの電子回路であっても良いし、集積した1つの電子回路であっても良い。それ以外の回路要素の動作は、実施例1(
図4)の対応する要素と同じであるので、説明は省略する。
【0069】
図9の枠(620)に囲まれた要素回路は、例えばシリコン光導波路によって同一チップに集積することができる。もちろん電子回路も含めて全て集積化しても良い。
【0070】
本実施例5は、本発明の第5の実施形態を実施例1に適用した例であるが、本発明の第5の実施形態は他の実施例2,3,4にも同じように適用できる。以下に、実施例2,3,4のフィルタ(308), (425), (423), (535), (534)を、同期検波回路に置き換えて適用した例を示す。
[第5の実施形態の実施例2への適用例]
例えば
図10は、本発明の第5の実施形態を実施例2へ適用し、実施例2(
図6)の光受信回路の光モニタ回路のフィルタ(308)を、同期検波回路(708)に置き換えた例である。
図10には、不図示の局発光源からの復調用参照光の光入力経路(701)、受信信号光の光入力経路(702)、VOA(706)、光受信回路(703)、モニタ光を分岐する光分岐回路(704)、ディザ変調回路(705)、PD(707)、同期検波回路 (708)、信号増幅用の増幅回路(709)、ディザ発生回路(710)が示される。
【0071】
ディザ発生回路(710)は同期検波回路(708)と接続しており、ディザ信号によりPD出力の同期検波が行われモニタ光成分が取り出される。同期検波回路 (708)以外の回路要素の動作は、実施例2(
図6)の対応要素と同じであるので、説明は省略する。
【0072】
図10の枠(720)に囲まれた要素回路は、例えばシリコン光導波路によって同一チップに集積可能である。もちろん全て集積化しても良い。
【0073】
[第5の実施形態の実施例3への適用例]
同様に
図11は、本発明の第5の実施形態を実施例3(
図7)の偏波ダイバーシティ構成の光送信回路の光モニタ回路に適用し、フィルタ(423),(425)を同期検波回路(823) (825)に置き換えた例である。
【0074】
図11には、光パワースプリッタ(805)、Y偏波光変調回路(806)、X偏波光変調回路(807)、VOA(810)(811)、偏波回転回路 (808)、偏波ビームコンバイナ(809)が示されている。
【0075】
図11には、モニタ光の光分岐回路(812)(813)、ディザ変調回路 (818)(819)、PD(817)(815)、同期検波回路(823)(825)、増幅回路(824)(826)、共用のディザ発生回路(820)を含む2系統の光モニタ回路も示される。
【0076】
Y偏波光変調回路(806)の位相調整器のバイアスは、バイアス(822)で決定する。容量(821)は、ディザ変調回路(818)(819)のバイアスとY偏波光変調回路(806)のバイアス(822)とのDCレベルを変える直流分離のために配置してある。
【0077】
同期検波回路(823)(825)とディザ発生回路(820)は接続しており、ディザ信号によりPD出力の同期検波が行われ、モニタ光成分の電気信号のみが取り出される。
【0078】
図11の枠(816)に囲まれた要素回路は全て光回路であり、例えばシリコン光導波路によって同一チップに集積可能である。もちろん、ディザ信号発生回路(820)、同期検波回路(823) (825)、増幅回路(826)(824)などの電子回路を含めて全て集積化することも可能である。
【0079】
[第5の実施形態の実施例4への適用例]
同様に
図12は、本発明の第5の実施形態を実施例4(
図8)の偏波ダイバーシティ構成の光送受信回路の光モニタ回路に適用し、フィルタ(534) (535)を同期検波回路(934) (935)に置き換えた例である。
【0080】
図12の下部には、光送信回路の構成として、左下から光パワースプリッタ(920)、Y偏波光変調回路(921)、X偏波光変調回路(922)、VOA(923)(924)も示され、これより右には
図7と同じ構成がある。
【0081】
図12の上部には偏波ダイバーシティ構成の光受信回路の構成が示され、右上から不図示の局発光源からの光入力経路(901)、受信信号光の光入力経路(902)、偏波ビームスプリッタ(907)、偏波回転回路(908)が示される。
【0082】
光パワースプリッタ(909)からは、復調用の参照光がY偏波用の光コヒーレントミキサ(910)、X偏波用の光コヒーレントミキサ(911)に供給され、復調された光信号は2組のPDアレイ(912)(913)により受信電気信号に変換される。
【0083】
偏波ビームスプリッタ(907)で分離された受信信号光の2つの偏波成分は、光分岐回路(914)(915)でモニタ光が分岐されたのち、VOA(918)(919)で光強度が調節され、光コヒーレントミキサ(910)、(911)に供給され光復調される。
【0084】
光分岐回路(914)(915)より分岐したモニタ光は、ディザ変調回路(931)(930)でディザ信号により変調され、PD(933)(932)で受光されて電気信号に変換され、同期検波回路(935)(934)を通りPDの暗電流成分を除去された後、増幅回路(937)(936)で増幅される。同期検波回路(934) (935)とディザ発生回路(938)は接続している。
【0085】
ディザ信号を発生するディザ信号発生回路(938)は、両偏波に共通で統一してあり、またY偏波光変調回路(921)にディザを掛けるのにも使用され共有される。Y偏波光変調回路(921)のバイアスはバイアス(940)から供給され、容量(939)によって、ディザ変調回路(930)(931)のバイアスとはDCレベルが異なるように設計してある。
【0086】
図12の枠(999)に囲まれた要素回路は全て光回路であり、例えばシリコン光導波路によって同一チップに集積可能である。もちろん、ディザ信号発生回路(938)、同期検波回路(934) (935)、増幅回路(936)(937)などの電子回路を含め、全て集積化することも可能である。
【0087】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態は、偏波ダイバーシティ構成の光送信回路の2系統の光モニタ回路にある2つのPDを、1つの2光入力のPDで置き換えたものである。偏波ダイバーシティ構成であっても、両偏波経路の光信号強度の和だけが必要な場合は、このような構成とすることができる。
【0088】
例えば、
図13の実施例6に示すように、偏波ダイバーシティ構成の光送信回路の光モニタ回路において、実施例3(
図7)のPD(415)、(417)を、
図13の2光入力のPD(430)のように一つにまとめることができる。2光入力PD(430)の後段の回路は、フィルタ(425)、増幅回路(426)の1系統にまとめることができる。実施例6の
図13において、その他の要素は実施例3(
図7)と同じ符号で示す。
【0089】
[2光入力のPDの構造]
図14(a)、(b)に、実施例6の光モニタ回路に用いられる2光入力のPD(430)の構造例を2つ示す。
図14では、PD(ゲルマニウムフォトディテクタ)の光検出用の半導体領域への2つの光の入力ポートとして、2つのシリコン導波路(521)、(521’)が配置されている。具体的な素子構造としては例えば、
図14(a)のように半導体領域中央のA-A’面に対して左右に面対称に、2つのシリコン導波路(521)と(521’)を対向配置してもよく、あるいは
図14(b)のように中央のA-A’面に対して一方の側に、2つのシリコン導波路(521)と(521’)が隣接配置してもよい。半導体領域のA-A’面における断面構造は、
図3(b)と同じである。
【0090】
半導体領域の同一の側の端面から光を入力する場合は、導波路(521)と(521’)から入力された光はPD内で伝搬するうちに干渉する可能性があるため、導波路同士を干渉が起きない距離に十分離して配置するなどの設計上の工夫が必要となる。
【0091】
あるいは図示はしないが、
図14(a)のような2つのシリコン導波路(521)(521’)の対向配置の場合は、2つの対向する入力導波路の光軸をずらすようにすれば、光の干渉は低減しつつ、PDデバイスの長さを抑えることが可能である。
【0092】
いずれにせよ、1つの2光入力PD(430)に光分岐回路(412)と(413)からの2つのモニタ光入力が入るため、光電流が倍増し、SN比を更に上げる事が出来るとともに、光モニタ回路の構成を簡素化し、配線数を少なく抑えることもできる。
【0093】
図14のようなシリコン導波路(521)(521’)を二つ備える2光入力PDを用いてSN比を上げる本実施例6は、偏波ダイバーシティ構成の光回路のいずれにも適用できる。例えば、実施例4(
図8)の光分岐回路(514)、(515)からのモニタ光分岐に対して用いても良いし、実施例5(
図11)の光分岐回路(812)、(813)からの分岐に対して用いても良いし、実施例5(
図12)の光分岐回路(914)、(915)からの分岐に対して用いても良い。
【0094】
[第7の実施形態]
本発明の第7の実施形態は、送信光変調用の変調電気信号を、光モニタ回路のディザ信号として共用するものである。光モニタ回路のディザ信号は、前述のようにPDの暗電流の帯域幅よりは高い周波数である必要があるが、高いぶんには問題はないので、送信光変調用の変調電気信号を用いることができる。
【0095】
図15に示す実施例7では、実施例3(
図7)の偏波ダイバーシティ構成の光送信回路の構成において、光モニタ回路のディザ変調回路(418)、(419)にディザ信号を供給するディザ発生回路(420)の代わりに、Y偏波光変調回路(406)、X偏波光変調回路(407)に変調用電気信号を供給するドライバ回路(440)を繋げた例である。実施例7の
図15において、実施例3(
図7)と同じ要素は同じ符号で示す。
【0096】
ドライバ回路(440)は、高速変調用電気信号をY偏波光変調回路(406)、X偏波光変調回路(407)に印加する回路である。このドライバ回路(440)の出力を分岐し、光モニタ回路のディザ変調回路(418)、(419)にも印加すれば、実施例3と同様の効果を得ることができる。ドライバ回路(440)と光モニタ回路のディザ変調回路(418)、(419)の間には帯域をカットするフィルタを入れても良いし、動作点を調整するため容量を介して接続しても良い。
【0097】
本実施例7の特長である、送信光変調用のドライバ回路からディザ変調回路への変調用電気信号の分岐は、実施例4(
図8)の偏波ダイバーシティ構成の光送受信回路にも適用可能である。
図8のディザ発生回路(538)の代わりに図示しないドライバ回路から変調用電気信号を分岐し、光モニタ回路のディザ変調回路(531)、(530)に繋いでも良い。
【0098】
同様に、実施例5(
図11)のディザ発生回路(820)の代わりに図示しないドライバ回路から変調用電気信号を分岐し、ディザ変調回路(818)、(819)に繋いでも良い。実施例5(
図12)のディザ発生回路(938)の代わりに図示しないドライバ回路から変調用電気信号を分岐し、ディザ変調回路(930)、(931)に繋いでも良い。いずれの構成においても、光モニタ回路のためのディザ発生回路を省略可能であり、光モニタ回路の構成を簡素化し、配線数を少なく抑えることができる。
【0099】
以上7つの実施例とその適用例によって、本発明の具体的な実現構成例を説明した。いずれの構成例においても、送信または受信の光のうち光分岐回路によって分岐されたモニタ光にディザによる変調をかけ、フィルタや同期検波回路を通してPDの暗電流信号成分を除去した後に増幅回路へ入力したものであり、単純かつ低コストな制御回路の制御が可能であり、必要な配線数を少なく抑え、モニタ精度に優れた送信あるいは受信光パワーのモニタ回路を提供することが出来る。
【0100】
以上説明したように本発明により、コヒーレント送受信回路の光送信回路あるいは光受信回路において、従来に比較して、より単純かつ低コストな制御回路での制御を可能とし、必要な配線数が少なく抑えられ、モニタ精度に優れた送受信光パワーのモニタ回路を実現することができる.
【符号の説明】
【0101】
100、600、9100 ……光源
101、601、9101 ……光変調器
406、521、806、921 ……Y偏波光変調回路
407、522、807、922 ……X偏波光変調回路
510、511、910、911 ……光コヒーレントミキサ
102、306、410、411、518、519、523、524、602、706、810、811、918、919、923、924、9102、9206 ……可変光減衰器(VOA)
105、310、420、538、605、710、820、938 ……ディザ発生回路
104、305、418、419、530、531、604、705、818、819、930、931 ……ディザ変調回路
107、308、423、425、534、535 ……フィルタ
607、708、823、825、934、935 ……同期検波回路
108、309、426、424、536、537、608、709、824、826、936、937、91041、92051 ……増幅回路
405、509、520、805、909、920 ……光パワースプリッタ
408、508、808、908 ……偏波回転回路
409、809 ……偏波ビームコンバイナ(偏波合流回路)
507、907 ……偏波ビームスプリッタ(偏波分離回路)
103、304、412、413、514、515、603、704、812、813、914、915、9103、9204 ……(モニタ)光分岐回路
106、307、415、417、430、532、533、606、707、815、817、932、933、9104、9205 ……フォトディテクタ(PD)
512、513、912、913 ……PDアレイ
120、320、416、599、620、720、816、999 ……枠
131 ……ディザ信号の周波数
132 ……暗電流の中心周波数
201、202、203、204 ……信号レベル
301、302、501、502、701、702、901、902、9201、9202 ……光入力経路
422、540、822、940 ……バイアス
421、539、821、939 ……容量
521、521’ ……シリコン導波路
522 ……pインプラント領域
523 ……p++インプラント領域
524 ……Ge結晶
525 ……nインプラント領域
526 ……電極
527 ……上部クラッド
528 ……下部クラッド
529 ……シリコン基板
303、703、9203 ……光受信回路