(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】遮光膜用黒色樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20220309BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G02F1/1335 500
(21)【出願番号】P 2020212683
(22)【出願日】2020-12-22
(62)【分割の表示】P 2015043998の分割
【原出願日】2015-03-05
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 亨
(72)【発明者】
【氏名】藤城 光一
(72)【発明者】
【氏名】中島 祥人
(72)【発明者】
【氏名】河野 正範
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-205474(JP,A)
【文献】特開2014-119640(JP,A)
【文献】特開2010-185072(JP,A)
【文献】特開2011-033793(JP,A)
【文献】特開2005-275218(JP,A)
【文献】特開2012-237952(JP,A)
【文献】国際公開第2013/061990(WO,A1)
【文献】特開2014-067028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G02F 1/1335
G02B 5/00 - 5/136
G06F 3/041
G02F 7/004- 7/06
G02F 7/075- 7/115
G02F 7/16 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光若しくは熱による硬化性樹脂、及び/又は光若しくは熱による硬化性単量体、(B)分散媒中に黒色遮光性粒子が分散されてなる黒色遮光性粒子含有分散液、(C)分散媒中に色調整用粒子が分散されてなる色調整用粒子含有分散液、並びに(D)シリカを必須成分として含有する遮光膜用黒色樹脂組成物であり、前記組成物中において、(B)成分中の黒色遮光性粒子の平均二次粒子径D
Bが60~150nmであり、(C)成分中の色調整用粒子の平均二次粒子径D
Cが60~150nmであり、このD
CとD
Bとの比D
C/D
Bが0.2~1.2の範囲であり、
且つ(C)成分に含まれる色調整用粒子の質量m
C
と、(B)成分に含まれる黒色遮光性粒子の質量m
B
との比m
C
/m
B
が0.03~0.2の範囲であり、前記色調整用粒子は、黄色顔料及び/又は橙色顔料であることを特徴とする遮光膜用黒色樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光膜用黒色樹脂組成物、当該組成物を硬化させた遮光膜をガラス等の透明基板上に有した遮光膜付基板、並びに当該遮光膜付基板を構成要素とするLCD等のディスプレイ用カラーフィルター及び表示装置用タッチパネルに関する。詳しくは、透明基板上に微細な遮光膜を形成するのに適した光又は熱により硬化する黒色樹脂組成物及び当該遮光膜を選択的な位置に形成した遮光膜付基板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビ、液晶モニター、カラー液晶携帯電話など、あらゆる分野でカラー液晶パネルが用いられている。カラー液晶パネルは、カラーフィルターが形成された基板と対向基板(TFT基板)とをシール材を介して貼り合わせ、両基板の間に液晶が充填された構造となっている。このうち、カラーフィルターの製造方法としては、通常、ガラス、プラスチックシート等の透明基板の表面に、赤、緑、青各色間の混色抑制によるコントラスト向上の役割を果たすブラックマトリックスを形成し、続いて、あらゆる自然色を表現する役割を果たす赤、緑、青の異なる色相を順次、ストライプ状あるいはモザイク状等の色パターンで形成する方法が用いられている。また、タッチパネルにおいて、前面ガラス上にタッチパネル回路を形成する場合に、金属等の取出し配線を隠すために画面の周辺部に額縁状に形成した遮光層を形成する方法が採られている。
【0003】
カラーフィルターのブラックマトリックスやタッチパネルの額縁を形成する遮光膜の遮光材としては、主に遮光性の高いカーボンブラックが用いられている。しかし、カーボンブラックの反射光は、通常、着色していない黒、すなわち無彩色の黒とはなっておらず、多くの場合若干茶色系の色目に着色しているため、その着色した光、すなわち無彩色からずれた光が漏れてくることにより、カラーフィルターでは黒色や輝度の低い色を表示した場合、所望の色が表示できないという問題が起こる。また、電源OFF時に黒色ベゼル(液晶表示装置やタッチパネルの表示画面の周囲の額縁部分)と色がずれて意匠性がよくないという問題もあり、デザイン性に対する要求が多様化する中で、黒色の色相を調整するニーズがますます高まっている。なお、カーボンブラック以外の黒色遮光材においても、多くの場合は無彩色の黒になっておらず、したがって、無彩色の黒に調整する技術が要望されている。近年では、液晶パネルの視認性向上及び意匠性を持たせるためにブラックマトリックスを“ニュートラルブラック”(着色しない黒:無彩色)にすることが求められている。また、タッチパネルにおいても額縁部分を黒色ベゼルの色相と一致させておくことが必要となる場合があり、その場合は、タッチパネル額縁をニュートラルブラックとすることが求められる。
【0004】
ニュートラルブラックを実現するためには、特許文献1には、C光源又はF10光源における樹脂ブラックマトリックスの透過光及び/又は反射光のXYZ表色系における色度座標を光源の色度座標と一致させることが必要であるという記載がある。ただし、具体的に記載されている技術は、カーボンブラックと該カーボンブラックが無彩色からずれた茶色系の色相を帯びているのに対して、茶色系の色相の補色である青系または紫色系の顔料からなる有機顔料を分散させて色度を調整する技術であり、補色用の顔料を多く加える必要がある。ところが、特に遮光性を高くするためにカーボンブラックの含有量がレジスト中において高い場合には、さらに補色用の顔料を大量に加えると硬化性に寄与するバインダー樹脂や硬化性単量体成分等の配合割合が相対的に小さくなるため、塗膜が十分に硬化しにくくなり、塗膜とガラス基板との密着性が低下して、剥がれ等が生じやすくなるという問題や、耐環境試験後の抵抗率、密着性の低下という信頼性特性への悪影響を与えてしまう。また、透過光の色度調整についてのみ記載されており、反射光についての色度調整については具体的に示されていない。
また、反射色をニュートラルブラックにする方法としては、遮光材であるカーボンブラックやチタン窒化物に着色顔料の赤色顔料や黄色顔料を添加して調色する技術が開示されている(特許文献2及び特許文献3)が、用いる遮光材と着色顔料の分散状態に関して言及されておらず、目的とするニュートラルブラックまたは好まれる傾向があるニュートラルブラックから幾分青味の反射色に調整することが確実にできる技術に対する要望が高まってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO95/35525号パンフレット
【文献】特開2011-227467号公報
【文献】特開2014-119640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる技術の諸欠点に鑑み、創案されたものであり、その目的とするところは、遮光性が高い黒色の遮光膜であり、かつ反射光が無彩色の黒またはやや青味を帯びた黒色という色度に調整されたカラーフィルター用ブラックマトリックス等の遮光膜を提供することにある。すなわち、遮光材を樹脂中に分散せしめてなる特定の遮光膜用黒色樹脂組成物を使用して、反射光のL*a*b*表色系における色度座標(a*,b*)≒(0.0、0.0)の遮光膜を得ることが1つの目的であり、実用的には、黒色ベゼルと色度を一致させるための色度調整が可能であることが重要であるので、a*、b*を-側(マイナス側)に色度調整して黒色ベゼル等の色相に合わせた遮光膜を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究を行った結果、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色遮光性粒子、および硬化性樹脂や硬化性単量体に加えて、特定の色調整用粒子を用いて黒色樹脂組成物とし、当該黒色樹脂組成物において、黒色遮光性粒子の平均二次粒子径と色調整用粒子の平均二次粒子径との比を特定の範囲とし、尚且つ黒色遮光性粒子の質量と色調整用粒子の質量との質量比を特定の範囲にすることにより、得られる遮光膜を無彩色化又は青味を帯びた黒色に色度を調整することができることを見出した。この際、色調整用粒子の色相は、カーボンブラックが無彩色から茶色系にずれた色相である場合に、そのずれた色相と補色(反対色)の関係にある青色や紫色の顔料を配合するのではなく、むしろ、ずれた色相と同系色である黄色や橙色の顔料を少量含有させることにより、硬化後の膜特性や信頼性を維持した上で、遮光膜を無彩色化又は青味を帯びた黒色に色度を調整することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。即ち、
(1)(A)光若しくは熱による硬化性樹脂、及び/又は光若しくは熱による硬化性単量体、(B)分散媒中に黒色遮光性粒子が分散されてなる黒色遮光性粒子含有分散液、並びに(C)分散媒中に色調整用粒子が分散されてなる色調整用粒子含有分散液を必須成分として含有する遮光膜用黒色樹脂組成物であり、前記組成物中において、(C)成分中の色調整用粒子の平均二次粒子径DCと、(B)成分中の黒色遮光性粒子の平均二次粒子径DBとの比DC/DBが0.2~1.2の範囲であり、且つ(C)成分に含まれる色調整用粒子の質量mCと、(B)成分に含まれる黒色遮光性粒子の質量mBとの比mC/mBが0.03~0.2の範囲であることを特徴とする遮光膜用黒色樹脂組成物。
(2)本発明はまた、更に、前記黒色遮光性粒子が、カーボンブラックであることを特徴とする(1)の遮光膜用黒色樹脂組成物である。
(3)本発明はまた、前記色調整用粒子が、黄色顔料であるC.I.ピグメントイエロー139及び/又は橙色顔料であるC.I.ピグメントオレンジ61であることを特徴とする(1)又は(2)の遮光膜用黒色樹脂組成物である。
(4)本発明はまた、(1)~(3)のいずれかの遮光膜用黒色樹脂組成物を透明基板上の片面に塗布して、硬化させて得られる遮光膜付基板であり、前記透明基板の遮光膜が塗布された面とは反対の面側から測定したCIE Lab色空間表示系における遮光膜付基板のb*値が、-1.0<b*<+0.2を満たすことを特徴とする遮光膜付基板である。
(5)本発明はまた、(4)の遮光膜付基板を有するカラーフィルターである。
(6)本発明はまた、(4)の遮光膜付基板を有するタッチパネルである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の黒色樹脂組成物を使用することにより、反射色が無彩色又は無彩色から青味を帯びた黒色といった色相を制御した黒色硬化膜(遮光膜)を透明基板上に形成することが可能になり、当該遮光膜が形成された遮光膜付透明基板を表示装置用のカラーフィルターやタッチパネルに適用することができる。すなわち、本発明によれば、表示画面の非点灯時にも意匠性に優れるカラーフィルターやタッチパネルを設計することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の黒色樹脂組成物における(A)成分である光若しくは熱による硬化性樹脂、及び/又は光若しくは熱による硬化性単量体としては、熱又は光により硬化反応を生じる官能基、例えば、(メタ)アクリル基、ビニル基などのエチレン性不飽和二重結合や、エポキシ基、オキセタン基などの環状反応性基を分子内に少なくとも1個以上有する樹脂又は単量体であれば、使用することができる。
【0011】
(A)成分としてのエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、(A-1)エチレン性不飽和二重結合を有する樹脂と(A-2)エチレン性不飽和二重結合を有する重合性単量体があり、塗工などプロセス条件、光又は熱で硬化させる条件、硬化物の物性等を考慮して、(A-1)または(A-2)を単独で用いることもできるし、任意の割合で混合して用いることもできる。
【0012】
(A-1)成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレートなどのアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート(以下、これらをまとめて「アルキル(メタ)アクリレート」などのように記載する場合がある。)、環状のシクロヘキシルアクリレートまたはシクロヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレート及びスチレンなどから、カルボキシル基を有するものを1種類以上含む3~5種類の重合性モノマーを用いて合成した共重合体のカルボキシル基に、エポキシ基又はイソシアネート基と少なくとも1個以上のエチレン性不飽和二重結合とを有するグリシジルメタクリレート、イソシアネートエチルアクリレート又はメタクリロイルイソシアネート等を反応させて得られる光又は熱により硬化する不飽和二重結合を有する硬化性樹脂を挙げることができる。このような構造を有する硬化性樹脂としては、重量平均分子量が5000~100000であり、酸価が50~150である硬化性樹脂を用いることが、耐熱性、現像性の点から好ましい。
【0013】
また、(A-1)成分の別の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸グリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族若しくは脂環式エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂又はジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート型硬化性樹脂を挙げることができる。このエポキシ(メタ)アクリレート型硬化性樹脂にさらに酸一無水物及び酸二無水物を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、フォトリソグラフィー法でアルカリ現像によるパターン形成可能な樹脂組成物とする場合に好適に使用できる。この場合の好適な重量平均分子量は2000~20000、酸価は50~150である。
【0014】
また、(A-2)エチレン性不飽和二重結合を有する重合性単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類を挙げることができる。
【0015】
また、(A)成分としては、(A-3)エポキシ基、オキセタン基など環状反応性基を分子内に少なくとも1個以上有する化合物を挙げることができる。この具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む重合体、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸(3’,4’-エポキシシクロヘキシル)メチルに代表される脂環式エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物(例えばDIC社製HP7200シリーズ)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えばダイセル社製「EHPE3150」)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば日本曹達社製「NISSO-PB・JP-100」)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等を挙げることができる。
【0016】
(A)成分は、(A-1)および(A-2)のようなエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、(A-3)環状反応性基を有する化合物とを、一方のみで用いてもよく、両方の化合物を混合して用いてもよい。
【0017】
更に、(A)成分としてエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を使用する場合は、紫外線や熱によりラジカル、カチオン、アニオンなどを発生する光重合開始剤、熱重合開始剤等を共存させて使用することが好ましい。また、(A-3)環状反応基を有する化合物を使用する場合は、環状反応基と光もしくは熱により反応する化合物、例えばカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基を有する化合物等を硬化剤として共存させて使用することが好ましい。
【0018】
例示された(A)成分の硬化物の屈折率は1.48~1.6の範囲にあるものを選定することが好ましい。例えばアクリル樹脂系硬化物の場合、屈折率は1.49~1.55であり、化学構造に芳香族基をもつスチレンモノマーなどとの共重合により調整される。エポキシ樹脂系では1.50~1.60であり、ビスフェノール系エポキシ樹脂や芳香族酸無水物硬化剤を用いると屈折率は高くなり、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂や脂環式酸無水物硬化剤を用いると比較的屈折率が低くなる。
なお、(A)成分の含有量については、溶剤成分を除く黒色樹脂組成物の固形分(硬化後に固形分となる硬化性単量体成分を含む)中、25~60質量%の範囲であればよく、35~55質量%の範囲であることが好ましい。
【0019】
(B)成分に含まれる黒色遮光性粒子としては、黒色有機顔料、又は無機系顔料等を特に制限なく用いることができる。黒色有機顔料としては、例えばペリレンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、ラクタムブラック等が挙げられる。無機系顔料としては、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、チタンブラック、酸窒化チタン、チタン窒化物等を挙げることができる。これらの黒色遮光性粒子は、1種類単独でも2種以上を適宜選択して用いることもできる。その屈折率が1.6を超えるもので、可視光を吸収する黒色顔料が、目的とする薄膜における遮光率ならびに遮光膜用組成物の保存安定性の観点で主体的に用いられる。本発明に用いられる黒色遮光性粒子としては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ランプブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等のいずれのものを用いても良い。さらに、遮光性を調整する目的としため黒色染料などその他の遮光成分を1種もしくは複数種混合して用いてもよいが、黒色遮光性粒子は遮光成分中の60%以上が好ましい。例えば、擬似黒色有機顔料系や染料系の遮光成分を多く用いると、遮光率が低下する。
【0020】
これら黒色遮光性粒子やその他の遮光成分を、高分子分散剤等の分散剤及び溶剤を含む分散媒と共にビーズミル中で分散し、黒色遮光性粒子を含有する分散液(黒色遮光性粒子含有分散液)とし、これを(A)成分及び後述の(C)成分と混合することにより本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物を調製することができる。この分散液中に分散された黒色遮光性粒子の平均二次粒径DBは、60nm~150nmに、好ましくは80nm~120nmに調製する。なお、本発明において、「平均二次粒子径」とは、分散溶媒または相当の溶媒にて希釈し、動的光散乱法で測定され、キュムラント法により求められる平均粒子径の値を言う。なお、黒色遮光性粒子は例えばカーボンブラックのように微小な一次粒子がブドウの房状につながった形態のものでは、その形態における粒子径(平均二次粒子径)が物性を発現するために重要であり、また、ブドウの房状につながっていなくても微小な粒子径(平均一次粒径)のものほど分散液中では凝集しやすく、その凝集状態での粒子径(平均二次粒子径)が重要になる。従って、本発明では、分散液中での粒子径を平均二次粒子径としている。
【0021】
例えば、カーボンブラックでは、PGMEA溶媒中0.1質量%粒子濃度で測定した値である。平均二次粒子径DBが60nm未満であると、高遮光率を達成するために黒色遮光性粒子の濃度を高くするのに必要な高分子分散剤の添加が増えるか、また保存時に粘度増加が生じやすい。平均二次粒子径DBが150nmを超えると、形成された遮光膜の表面平滑性が好ましくなく、またフォトリソグラフィーで形成した際のパターンエッジの直線性が損なわれる。
【0022】
因みに、タッチパネル用遮光膜及びカラーフィルター用ブラックマトリックスにおける遮光度(OD=‐log[透過度])はOD4以上が要求され、一方で膜厚は3μm以下、好ましくは2μm以下の薄膜化が要求されている。理由としては、タッチパネルでは、タッチパネル遮光膜上の金属配線とタッチパネル上導電膜との接続に際する断線防止のためであり、ブラックマトリックスではカラーフィルターの平坦化のためである。このような薄い遮光膜でも高い遮光度を得る目的で、例えばカーボンブラック系黒色遮光性粒子は、組成物中の全固形分に対して35質量%以上70質量%以下とすることが好ましい。
【0023】
(C)成分に含まれる色調整用粒子に使用可能な黄色顔料及び橙色顔料としては、例えば、
C.I.ピグメントイエロー(PY)20,24,31,53,83,86,93,94,109,110,117,125,137,138,139,147,148,150,153,154,166及び173等;
C.I.ピグメントオレンジ(PO)36、43、51、55、59、61、71、73等;
などが挙げられるが、このうち、C.I.ピグメントイエローがOD値を4.0以上に保ちつつ、効率よくb*値をマイナス化することができるので好ましい。また、色調整用粒子として特に好ましく用いることができる具体的な例としては、PY139やPO61を挙げることができる。
【0024】
これら色調整用粒子を、高分子分散剤等の分散剤及び溶剤を含む分散媒と共にビーズミル中で分散し、色調整用粒子を含有する分散液(色調整用粒子含有分散液)とし、これを(A)成分及び(B)成分と混合することにより本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物を調製することができる。更に、この(C)成分に分散された色調整用粒子の平均二次粒子径DCについては、前記(B)成分中の黒色遮光性粒子の平均二次粒子径DBとの比DC/DBが、0.2~1.2の範囲となるようにする。この平均二次粒子径DCは、分散溶媒または相当の溶媒にて希釈し動的光散乱法で測定され、キュムラント法により求められる平均粒子径の値である。例えば、イエロー顔料粒子では、その分散液が0.1~1.0質量%粒子濃度での測定値である。平均二次粒子径の比DC/DBが1.2を超えると、b*値をマイナス化する効果が実質的に見られなくなる。また、平均二次粒子径の比DC/DBが0.2を下回ると組成物の分散安定性が低下する。遮光膜用に使用されるカーボンブラック含有分散液の平均二次粒子径は60~150nmであるので、30nm以下のイエロー顔料含有分散液を調製するのは困難である。DCの好ましい平均二次粒子径は60~150nm、より好ましくは80nm~120nmである。
【0025】
また、本発明においては、前記組成物中において、(C)成分に含まれる色調整用粒子(固形分)の質量mCと、(B)成分に含まれる黒色遮光性粒子(固形分)の質量mBとの質量比mC/mBが0.03~0.2の範囲となるようにする。このmC/mBが0.03を下回るとb*の低減効果は見られず、0.2を超えると遮光率(OD/μm)が低下する。
【0026】
ところで、本組成物を硬化膜として構成される遮光膜付基板において色調整粒子がb*低減の機能を発現するするメカニズムとしては、以下が想定される。すなわち、遮光膜付基板において透明基板側から入射した光の一部は、専ら透明基板界面とその近傍の遮光膜内の粒子により反射及び散乱されて透明基板側に出てくる。微粒子による散乱は、その粒子径が光の波長を下回る場合に生じ、特にレイリー散乱領域においては光が微粒子に入射する方向に対しての後方散乱は波長依存性が顕著になる。カーボンブラック粒子と粒子径が同程度またはそれ以下の黄色顔料又は橙色顔料に起因する後方散乱はその補色関係にある青色領域の光をより多く後方に散乱することと考えられる。
【0027】
以上の遮光膜の色調整(b*をマイナス側に調整)のメカニズムを有効に発揮させるには、黒色遮光性粒子と共に色調整用粒子が組成物中及び透明基板上に塗布された膜内においても自己凝集することなく安定的に分散させる必要がある。そこで、本発明における黒色遮光性粒子及び色調整用粒子は、有機溶媒中において高分子分散剤と共にビーズミルで分散され、分散液として供される。
【0028】
本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物には、黒色遮光性粒子や色調整粒子などの成分の溶解又は分散を目的に、1種又は複数種類の溶剤を含有させることができ、特に限定されるものでもない。例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α-もしくはβ-テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられ、これらを数種類用いて溶解、混合させることにより、黒色遮光性粒子や色調整用粒子等を安定的に分散させた均一な組成物とすることが出来る。このような溶剤の含有量については、黒色樹脂組成物100質量部に対して5~2000質量部の範囲であればよく、好ましくは50~1000質量部であり、透明基板上に塗布する方法により適正な固形分、溶液粘度に調整する等の目的で使用される。
【0029】
また、本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤、酸化防止剤、可塑剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤、カップリング剤、界面活性剤等の添加剤を配合することができる。熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることができ、酸化防止剤としてはヒンダートフェノール系化合物等を挙げることができ、可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等を挙げることができ、充填材としては、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等を挙げることができ、消泡剤やレベリング剤としては、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物を挙げることができる。また、界面活性剤としてはフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0030】
また、無彩色から青味を帯びた黒色の意匠性が要求されるLCD、タッチパネルといった表示装置の遮光膜等においては、当該遮光膜の反射率を適正な範囲にすることにより、意匠性を増すというような要請もある。この目的のためには、本発明の組成物中にシリカ等の無機粒子を添加剤として使用することができる。
【0031】
遮光膜用黒色樹脂組成物を透明基板上に塗布する方法として、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、インクジェット機、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れかの方法を採用することができる。溶剤により良好な塗布膜を得るための適正粘度に調整し、これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、加熱又は減圧下で溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、乾燥塗膜が形成される。引き続き光及び/又は熱により硬化することで目的とする遮光膜付基板を調製する。
【0032】
透明基板上に遮光膜パターンを形成する印刷方法として、本組成物を透明基板上に塗布し、乾燥した塗膜にフォトマスクを介して紫外線を照射し、未露光部分を現像液により除去し、更に加熱処理を行うという、フォトリソグラフィー法がある。また、スクリーン印刷法、凹版印刷、グラビア印刷法など転写版を使用して印刷する方法などがあり、更に近年では、インクジェット印刷法は、マスクや印刷版必要としないデジタル印刷方法として着目されている。本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物はいずれのパターン形成方法や印刷方法にも適用可能であり、各印刷法に適合した粘度、表面張力を有する樹脂組成物とするために、前述の硬化性樹脂樹/硬化性単量体や溶剤や界面活性剤などの添加剤を選定する。また、遮光膜パターンの印刷精度や解像度等によって印刷機が選定される。
【0033】
例えば、インクジェット印刷法で遮光膜を形成する場合、本発明の組成物は、粒子が再凝集することが少ないために間欠吐出時のインクジェットノズルの閉塞が少なく、また、保存経時における粘度が安定しているために連続印刷時のパターン膜厚の安定性に寄与する。インクジェット装置については、組成物の吐出液量が調整可能なものであれば特に制限はないが、一般的によく用いられる圧電素子のインクジェットヘッドにおいて、安定的に液滴が形成されるインキ組成物の物性は、ヘッドの構成によっても異なるが、ヘッド内部における温度において、粘度が3mPa・sec~150mPa・secであるのが良く、好ましくは4mPa・sec~30mPa・secであるのが良い。粘度の値がこれよりも大きくなると液滴を吐出できなくなり、反対に、粘度の値がこれよりも小さくなると液滴の吐出量が安定しない。また、ヘッド内部の温度は、用いるインキ組成物の安定性によっても異なるが、室温20℃~45℃で用いるのが望ましい。なかでも、インキ組成物中の固形分を多くして膜厚を向上させるためには、安定吐出可能な粘度にするために35~40℃程度の温度が一般に採用される。以上のような組成物の特性は、これを構成する溶剤や界面活性剤により主に調整され、さらに連続印刷時におけるノズル部分における組成物の乾燥を抑制するためには、溶剤は沸点が180℃以上のものを主体とし、この沸点が180℃以上の溶剤を全溶剤成分中60%以上、好ましくは80%以上で、単独もしくは複数種を用いることができる。沸点が180℃以上の溶媒としてはエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル等の他のエーテル類;γ-ブチロラクトン等の高沸点溶剤類等を用いることができる。
【0034】
インクジェット法で用いる場合の本発明の黒色樹脂組成物の固形分の構成比率の例を示すと、(A)硬化性樹脂及び/又は硬化性単量体が25~60質量%、(B)黒色遮光性粒子が35~70質量%、(C)色調整用粒子が1~14質量%の範囲であればよく、(A)成分が35~55質量%、(B)成分が40~60質量%、(C)成分が1~12質量%であることがより好ましい。また、例えば、(A)成分としてエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A-1)とエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(A-2)を併用する場合には、(A-1)/(A-2)が10/90~90/10の範囲であればよく、30/70~70/30の範囲であることが好ましい。また、(A-1)と(A-2)を併用する場合に、さらに2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を併用して硬化物の表面硬度や機械物性等を調整することもでき、この場合、[(A-1)+(A-2)]の100質量部に対して、エポキシ樹脂を1~60質量部の範囲用いることがよく、10~50質量%の範囲がより好ましい。
【0035】
一方、フォトリソグラフィー法では、(A)成分は光硬化性樹脂又は光硬化性単量体であり、さらにアルカリ現像液に溶解させるためのアルカリ可溶性樹脂を混合する。また、重合性不飽和基とカルボキシル基等の酸性基とを分子内に有する不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂が好ましく使用される。たとえば、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル化合物とをラジカル共重合して得られた樹脂のカルボキシル基の一部に、(メタ)アクリル酸グリシジルのような重合性不飽和基とエポキシ基とを1分子中に有する化合物を反応させて得られる不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を始めとして広範な樹脂を用いることができる。
【0036】
透明基板上に印刷された遮光膜の硬化方法ならびに硬化性樹脂成分(A)は、透明基板の耐熱性や使用される環境、要求される寸法精度、信頼性に適合するように選定される。
【0037】
このようにして得られた黒色硬化物(遮光膜)の色相・色度については、黒色を無彩色または青味を帯びた黒色に調整する目的のためには、CIE Lab色空間表示系におけるb*値が、-1.0<b*<0.2、より好ましくは-1.0<b*<0.0に調整することが必要である。なお、本発明におけるこのb*値の測定方法としては、前記で得られた遮光膜付基板のうち遮光膜が塗布された面とは反対の面側から、昼光で照明される物体色を表示する場合に用いられるD65光源(JIS Z8720の昼光の標準イルミナント(測色用の光))またはC光源(JIS Z8720の昼光の補助イルミナント)を用いて、視野角2°又は10°で測定した値である。
【0038】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
以下の実施例における各種評価は断りのない限り以下の通りに行った。
[固形分濃度]
後述の合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔質量:W0(g)〕に含浸させて秤量し〔W1(g)〕、160℃にて2hr加熱した後の質量〔W2(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(質量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0)
【0040】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置〔平沼産業(株)製 商品名COM-1600〕を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めた。
【0041】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC){東ソー(株)製HLC-8220GPC、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuperH-2000(2本)+TSKgelSuperH-3000(1本)+TSKgelSuperH-4000(1本)+TSKgelSuper-H5000(1本)〔東ソー(株)製〕、温度:40℃、速度:0.6ml/min}にて測定し、標準ポリスチレン〔東ソー(株)製PS-オリゴマーキット〕換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた値である。
【0042】
[平均二次粒子径測定]
得られた黒色遮光性粒子含有分散液又は色調整用粒子含有分散液について、動的光散乱法の粒度分布計(大塚電子株式会社製、粒径アナライザーFPAR-1000)により、キュムラント法により求められる平均二次粒子径をそれぞれ測定した。遮光性黒色粒子含有分散液又は色調整用粒子含有分散液をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)にて分散された粒子の濃度が0.1~0.5質量%となるように希釈して測定用サンプルとした。
【0043】
[粘度測定]
遮光膜用黒色樹脂組成物の粘度をE型粘度計(東機産業製、RE80L)でもって23℃で測定した。
【0044】
[遮光度(OD値)測定]
ポストベーク後の遮光膜付ガラス基板を用いて、大塚電子製OD計で測定した。
【0045】
[反射光学特性の測定]
ポストベーク後の遮光膜付ガラス基板を用いて、遮光膜を形成した面の反対側の面側からコニカミノルタ製測色計CM2600dを用いてD65光源、10°視野にて測定を行った。
【0046】
[膜厚測定]
ポストベーク後の遮光膜付きガラス基板を触針式膜厚計〔テンコール(株)製〕を用いて測定した。
【0047】
[インクジェット吐出安定性試験]
遮光膜用黒色樹脂組成物をコニカミノルタIJ製ピエゾ素子駆動型インクジェットヘッド(14pL/drop;KM512M)に仕込み、パージ、インクジェットヘッド吐出面の洗浄実施後、インキ組成物の吐出状態を30分間連続で飛翔観察カメラにて確認し、液滴が吐出しない、飛翔軌道が明らかに垂直でない等、著しい不具合がないかどうかを観察した。さらに間欠吐出試験(インクジェットヘッド吐出面洗浄後30分間静置し、再吐出したときの不吐出ノズルの数をカウント)にて、全512ノズル中の不吐出ノズルの数が良好(10個以内)であるかどうかを観察した。
【0048】
[現像特性評価]
遮光膜用黒色樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板上に、ポストベーク後の膜厚が1.2μmとなるように塗布し、80℃で1分間プリベークした。その後、露光ギャップを80μmに調整し乾燥塗膜の上に、ライン/スペース=20μm/20μmのネガ型フォトマスクを被せ、I線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで100mj/cm2の紫外線を照射し感光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗板を0.05%水酸化カリウム水溶液中、23℃にて1kgf/cm2圧シャワー現像を行い、パターンが観察された時間を現像抜け時間(BT秒)とし、さらに20秒の現像を行った後、5kgf/cm2圧のスプレー水洗を行い、塗膜の未露光部を除去しガラス基板上に画素パターンを形成し、その後、熱風乾燥機を用いて230℃にて30分間熱ポストベークした。各実施例、及び比較例における得られた遮光膜の評価項目と方法は以下の通りである。
パターン直線性及び塗膜表面の平滑性:ポストベーク後の20μmラインを顕微鏡ならびにSEMで観察し、ギザツキが観測された場合を不良とし、ない場合を良好と判定した。また、粗大粒子によるライン膜厚にばらつきがある場合は、平滑性が不良と判定した。
【0049】
次に、実施例で用いた樹脂の合成例を示すが、まず、以下の合成例、実施例中で用いる略号について示す。
BPFE:9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物。
BPDA:3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA:1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
TPP:トリフェニルホスフィン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
BDGAC:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物〔日本化薬(株)製商品名DPHA〕
HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート
【0050】
[合成例1]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中に、BPFE 78.63g(0.17mol)、アクリル酸24.50g(0.34mol)、TPP 0.45g、及びPGMEA 114gを仕込み、100~105℃の加熱下で12hr撹拌し、反応生成物を得た。
次いで、得られた反応生成物にBPDA 25.01g(0.085mol)及びTHPA 12.93g(0.085mol)を仕込み、120~125℃の加熱下で6hr撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A-1)-1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.8wt%であり、酸価(固形分換算)は103mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは2600であった。
【0051】
[樹脂溶液の調製:A成分溶液]
以下の(A)成分を含有する樹脂溶液A1及びA2を調製した。
(1) 樹脂溶液A1(インクジェット印刷用:熱硬化型樹脂組成物)
BDGAC 82.9質量部、アルカリ可溶性樹脂溶液(A-1)-1 6.3質量部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂〔三菱化学(株)製商品名JER154、エポキシ当量178、1分子中の平均官能基数3.0〕3.2質量部、DPHA 4.0質量部、ビックケミー・ジャパン(株)製商品名 BYK(登録商標)-333の10% BDGAC希釈溶液を1.24質量部、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン〔信越化学工業(株)製商品名 KBE-585〕2.95質量部を混合し、樹脂溶液A1を調製した。
【0052】
(2) 樹脂溶液A2(フォトリソグラフィー印刷用:露光/熱硬化型樹脂組成物)
PGMEA 78.7質量部、アルカリ可溶性樹脂溶液(A-1)-1 12.3質量部、DPHA 2.41質量部、光重合開始剤OXE-02(BASF製)0.81質量部、ビックケミー・ジャパン(株)製商品名 BYK(登録商標)-333の10%BDGAC希釈溶液を1.24質量部、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン〔信越化学工業(株)製商品名 KBE-585〕2.95質量部を混合し、樹脂溶液A2を調製した。
【0053】
[黒色遮光性粒子含有分散液の調製:B成分]
(1) 黒色遮光性粒子含有分散液B1(インクジェット印刷用):
BDGAC中でカーボンブラック濃度25wt%、高分子分散剤10wt%となるようにしてビーズミル中にて分散を行い、黒色遮光性粒子含有分散液B1とした。得られた分散液中のカーボンブラックの平均二次粒子径は96nmであった。
【0054】
(2) 黒色遮光性粒子含有分散液B2(フォトリソグラフィー印刷用):
PGMEA中でカーボンブラック濃度25重量%、高分子分散剤10wt%となるようにしてビーズミル中にて分散を行い、黒色遮光性粒子含有分散液B2とした。得られた分散液中のカーボンブラックの平均二次粒子径は111nmであった。
【0055】
[色調整用粒子含有分散液の調製:C成分]
C.I.ピグメントイエロー顔料PY139と高分子分散剤とをPGMEA又はBDGACにてビーズミルを用いて色調整用粒子含有分散液C1~C4を調製した。各分散液の組成と特性を表1に示した。
【0056】
【0057】
[遮光膜用黒色樹脂組成物及びその遮光膜の調製、並びに評価]
[実施例1~2]
樹脂溶液A1を12.8質量部、カーボンブラック分散液B1を13.5質量部、PY139分散液C1を3.8質量部、さらにシリカ分散液S1(BYK社製NANOBYK-3605)を0.5質量部で混合し、1μmデプスフィルターによって加圧ろ過を行い、遮光膜用黒色樹脂組成物を調製した。作製したインクの初期粘度(室温)は10.3mPa・sec〔23℃、E型粘度計(東機産業)により測定〕だった。この遮光膜用インクを無アルカリガラス上にスピンコートにて回転数を変えて塗布し、これらを90℃にて5分間乾燥、さらに230℃にて30分間ポストベークして遮光膜付ガラス基板を作成した。 それぞれ、膜厚1.1μmを実施例1のサンプル、膜厚1.4μmを実施例2のサンプルとした。表2に各サンプルの組成を示し、表3に各サンプルの評価結果を示した。
【0058】
[比較例1]
PY139含有分散液を除いた以外は実施例1と同様にして表2に示す質量部にて混合して遮光膜用黒色樹脂組成物を調製した。この遮光膜用インクを無アルカリガラス上に塗布し、90℃にて5分間乾燥、さらに230℃にて30分間ポストベークして遮光膜付ガラス基板を作成した。作成したサンプル膜厚は1.3μmであった。サンプル評価結果を表3に示した。
表3に示す通り、実施例1~2では遮光膜付基板も遮光度3以上を示し、彩度b*も-0.08とゼロに近いのに対して、比較例1ではb*は0.2を超えた。
【0059】
[実施例3~4、比較例2~3]
色調整用粒子含有分散液におけるPY139の平均二次粒子径を変えて、表2に示す組成比で、それ以外は実施例1と同様にして遮光膜用黒色樹脂組成物を調製し、更に無アルカリガラス上に実施例1と同様にして遮光膜を形成した。評価結果を表3に示す。
PY139の平均二次粒子径がカーボンブラックの平均二次粒子径96nmを下回る場合は、-1.0<b*<0.2になるのに対し、PY139の平均二次粒子径がカーボンブラックの平均二次粒子径を上回る各比較例の場合は、b*が0.2を超える結果となった。
【0060】
[実施例5~6]
カーボンブラック粒子の質量に対して、色調整用粒子含有分散液におけるPY139の添加質量をかえて、表2に示す組成比で、それ以外は実施例1と同様にして遮光膜用黒色樹脂組成物を調製し、更に無アルカリガラス上に実施例1と同様にして遮光膜を形成した。評価結果を表3に示す。いずれの場合も、PY139粒子が共存しない比較例1に比してb*がマイナス側にシフトし、-1.0<b*<0.2を示した。
【0061】
[参考例7~9、比較例4]
フォトリソグラフィー印刷用樹脂溶液(A2)を用いて、表2に示す組成でもって遮光膜用黒色樹脂組成物を調製した。遮光膜用黒色樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板上にポストベーク後の膜厚が1.0~1.3μmとなるように塗布し、80℃で1分間プリベークした。その後、露光ギャップを80μmに調整し乾燥塗膜の上に、ライン/スペース=20μm/20μmのネガ型フォトマスクを被せ、I線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで100mj/cm2の紫外線を照射し感光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗板を0.05%水酸化カリウム水溶液中、23℃にて1kgf/cm2圧シャワー現像を行い、パターンが観察された時間を現像抜け時間(BT秒)とし、さらに20秒の現像を行った後、5kgf/cm2圧のスプレー水洗を行い、塗膜の未露光部を除去しガラス基板上に画素パターンを形成し、その後、熱風乾燥機を用いて230℃にて30分間熱ポストベークした。
PY139粒子を含有する遮光膜付基板では、b*が-1.0<b*<0.2を示したのに対して、PY139を含有しない遮光膜付基板ではb*が0.2を超える結果となった。
【0062】
[インクジェット吐出性、現像特性の評価]
実施例1~実施例6で調製した遮光膜用黒色樹脂組成物をコニカミノルタIJ製ピエゾ素子駆動型インクジェットヘッド(14pL/drop;KM512M)に仕込み、パージ、インクジェットヘッド吐出面の洗浄実施後、インキ組成物の吐出状態を30分間連続で飛翔観察カメラにて確認した、液滴が吐出しない、飛翔軌道が明らかに垂直でない等、著しい不具合は見られなかった。さらに間欠吐出試験(インクジェットヘッド吐出面洗浄後30分間静置し、再吐出したときの不吐出ノズルの数をカウント)にて、全512ノズル中不吐出ノズルの数が2個以内であり、インクジェット吐出性には全く問題が見られないことを明らかにした。
また、参考例7~9で調整した遮光膜用黒色樹脂組成物について、前述の方法により現像特性(パターン直線性及び塗膜表面の平滑性)の評価を行なった結果、いずれも直線性及び平滑性に問題が無いことを確認した。
【0063】
【0064】