(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】悪臭防止型排水設備
(51)【国際特許分類】
F04D 15/00 20060101AFI20220309BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20220309BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20220309BHJP
F04D 13/08 20060101ALI20220309BHJP
E03F 5/22 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
F04D15/00 D
F04D15/00 B
F04D15/00 J
F04D15/00 H
F04D29/58 D
F04D29/42 E
F04D13/08 G
E03F5/22
(21)【出願番号】P 2021072081
(22)【出願日】2021-04-21
(62)【分割の表示】P 2016236576の分割
【原出願日】2016-12-06
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】打田 博
(72)【発明者】
【氏名】東海林 健太
(72)【発明者】
【氏名】磯野 美帆
(72)【発明者】
【氏名】カク 剣明
(72)【発明者】
【氏名】平本 和也
(72)【発明者】
【氏名】栗田 要
(72)【発明者】
【氏名】ラナデ シュルナリ
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-37930(JP,A)
【文献】実開昭59-43695(JP,U)
【文献】特開平4-60194(JP,A)
【文献】特開2015-96715(JP,A)
【文献】特開2002-310088(JP,A)
【文献】特開2002-21771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 15/00
F04D 29/58
F04D 29/42
F04D 13/08
E03F 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内の液を排水するために複数の水中モータポンプと、
前記水槽内の水位を検出する水位検出器と、
前記水中モータポンプの動作を制御する制御装置と、
を備えたポンプ設備において、
前記水中モータポンプのうち少なくとも1台は、連続気中運転を可能とする冷却機構を具備した連続気中運転可能な水中モータポンプとし、
前記水位検出器は、
前記水中モータポンプが気中に露出されるポンプ露出水位と、
前記ポンプ露出水位よりも低い水位であるポンプ停止水位と、
を検出し、
前記制御装置は、前記水位が前記ポンプ露出水位より低く、且つ前記ポンプ停止水位より高い状態にて所定期間経過後には、前記連続気中運転可能な水中ポンプにて排水させることを特徴とする、ポンプ設備。
【請求項2】
前記連続気中運転可能な水中モータポンプが具備する前記冷却機構は、モータの周囲に設けられる冷却フィンを備えることを特徴とする、請求項1に記載のポンプ設備。
【請求項3】
前記連続気中運転可能な水中モータポンプが具備する前記冷却機構は、モータの周囲に設けられる冷却ジャケットを備え、該冷却ジャケットにポンプ揚水が導かれるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載のポンプ設備。
【請求項4】
前記連続気中運転可能な水中モータポンプが具備する前記冷却機構は、モータの周囲に設けられる冷却ジャケットを備え、該冷却ジャケットに冷却水が封入されるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載のポンプ設備。
【請求項5】
前記連続気中運転可能な水中モータポンプが具備する前記冷却機構は、冷却棒が設けられることを特徴とする、請求項1に記載のポンプ設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ設備、モータポンプ、モータポンプを制御する制御装置、および悪臭防止型排水設備に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水、廃水、または河川水のように、夾雑物および汚物が混じった液体を水槽に一時貯留し、水中ポンプにて排水する排水設備がある。ここで、水槽に液体が長時間残留すると、液体の腐敗が進行し、悪臭や有毒ガスを発生させる原因となる。例えば、建築物の地階部分にあり、公共下水道管よりも下に位置する地下の汚水ピットでは、汚水が建物内に長時間滞留するのを防止するため、地下の汚水ピット内に小型の水槽(バレル)を設置し、少量の汚水でも水槽内の汚水がポンプ起動水位まで上昇するようにした悪臭防止型排水設備が知られている(特許文献1)。
【0003】
更に、液体を効果的に排出し、水槽に長時間残留させないように様々な工夫がなされてきた。排水設備では、一般的に、ポンプが故障した場合でも排水が中断されることを避けるため、水槽内に複数台のポンプが設置される。水槽に複数台の水中ポンプを設置し、複数台運転、バックアップ運転、および交互運転を制御することにより、水槽内の水位に応じて水中ポンプを安定稼働させる技術が知られる(特許文献2、3)。このような技術で使用される水中ポンプを連続運転する場合は、温度が上昇した駆動モータを冷却するために、水槽内の液にモータを沈めた状態にて運転させるのが望ましい。特に、清水に比べて粘性が高い汚水を取り扱う水中ポンプでは、ポンプ運転中はモータのトルクが高くなりモータが発熱し高温となるので、モータ部分を水没させて、排水液によりモータ部を冷却しながら連続運転するのが一般的である。
【0004】
他方、上記のような種別の水中ポンプとは異なり、モータが大気中に露出した状態(即ち、液の水位がモータの高さ以下の状態)でも一定期間以上の連続運転を可能とする種別のモータポンプも知られる(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-70142号公報
【文献】特開2008-38677号公報
【文献】特開2016-37930号公報
【文献】特開2011-163263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1による悪臭防止型排水設備がマンションや商業ビルで用いられる場合では、通常、深夜の時間帯は下水の排出がほとんどないため、水中ポンプの起動水位まで水位が上昇するのに時間がかかる。一般的に、排水設備は、建物における最大水量にて計画されるため、昨今の少子高齢化により入居者数が減ったマンション等では、実際に排出される汚水量よりも計画時の排水槽が大きく、水中ポンプの起動水位まで水位が上昇するのに時間がかかる虞がある。そのため、夜間などはポンプが起動せずに長時間にわたり汚水が滞留してしまう虞がある。
【0007】
特許文献2、3では、ポンプの起動水位または起動方法の工夫がなされている。ここで、工場における排水設備では、工場から出る汚水を処理することが出来るよう大型の汚水
槽が設置されている現場が多い。昨今の省エネ意識の高まりにより、これまで24時間稼働させていた工場でも、深夜や休日には設備の稼働を完全に停止させることがある。その場合、深夜や休日に工場内で排出される汚水は警備員がトイレで使用する程度である。そうすると、本来ならば、工場排水を処理するための大型の排水設備では汚水槽の水位はほとんど変化しないことが考えられる。つまり、特許文献2のようにポンプ起動水位を下げる工夫をしてもポンプ起動水位まで水位が上昇しない虞がある。
【0008】
そこで、水槽の水位がポンプ起動水位まで達していなくてもポンプを駆動することができるように、モータが大気中に露出した状態でも一定期間以上の連続運転を可能とするモータポンプの積極的な採用が期待される。しかしながらその一方で、このようなモータポンプは、特許文献4のように、冷却構造を付加する必要があり、装置の複雑化および高価格化を招く。また、モータが高温とならないためにはモータの容量を大型化することも考えられるが、これに伴い工場設備も大型化する。具体的には、モータ容量を大きくすると、モータポンプが大型化するばかりかモータ容量が大きくなることによって電源容量も大きくする必要があるため、電源設備も大型化する。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、複数のモータポンプを配置して効果的に動作させるポンプ設備において、水槽に液を長時間残留させることのない排水設備を提供することを目的の1つとする。また、モータが大気中に露出した状態でも一定期間以上の連続運転を可能とする特定の種別のモータポンプについて、適切な配置態様を提供することを目的の1つとする。更に、従来型のモータポンプと上記特定の種別のモータポンプを混在させて、適切な動作態様を実現することを目的の1つとする。加えて、当該特定の種別のモータポンプを適切に動作させるための制御装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[形態1]形態1によれば、水槽内の液を排水するために、モータを備えたモータポンプを複数個配置したポンプ設備が提供される。かかるポンプ設備では、複数のモータポンプは、第1種別および第2種別のモータポンプを含み、第1種別のモータポンプは、一定期間以上の連続気中運転を可能とし、且つ、第2種別のモータポンプは、一定期間以上の連続気中運転を不可能とすることを特徴とする。形態1によれば、第1種別および第2種別のモータポンプを混在させ、水槽に液体を長時間残留させることのない、液体の効率的な排水を実現することができる。これにより、水槽内の液の腐敗の量を極力少なくし、悪臭の発生を抑制することができる。
【0011】
[形態2]形態2によれば、形態1のポンプ設備において、第2種別のモータポンプが連続気中運転を可能とする期間よりも短い第1期間が規定され、第1種別のモータポンプは、第1期間以上の連続気中運転を可能とする冷却機構を具備し、第2種別のモータポンプは、第1期間以上の連続気中運転を可能とする冷却機構を具備しない。形態2によれば、混在させる第1種別および第2種別のモータポンプを明確に棲み分けることができる。
【0012】
[形態3]形態3によれば、形態2によるポンプ設備において、第1種別のモータポンプおよび第2種別のモータポンプは、水中にて連続運転を可能とする。形態3によれば、第1種別のモータポンプおよび第2種別のモータポンプを水中にて連続運転なものとすることにより、第1種別のモータポンプおよび第2種別のモータポンプのモータが被水してもモータポンプが故障することなく排水可能な排水設備を実現することができる。
【0013】
[形態4]形態4によれば、形態2または3のポンプ設備において、第2種別のモータポンプは、水槽内に配置される。形態4によれば、第2種別のモータポンプを水槽内で使用することにより、水槽内の水位がポンプ露出水位以上であれば第2種別のモータポンプ
のモータ部を水槽内の液にて冷却することができるため、第2種別のモータポンプを効果的に運転することができる排水設備を実現することができる。
【0014】
[形態5]形態5によれば、形態2から4の何れかのポンプ設備であって、水槽内の水位を検出する水位検出器と、複数個のモータポンプの動作を制御する制御装置と、を更に備え、水位検出器は、第2種別のモータポンプが気中に露出されるポンプ露出水位を検出可能とし、制御装置は、水槽内の水位がポンプ露出水位よりも低い期間を計測し、水槽内の水位がポンプ露出水位よりも低い状態が第1期間経過した時点において、第2種別のモータポンプは停止状態である。形態5によれば、第2種別のモータポンプを不適切に連続気中運転させることがないように制御することにより、モータポンプの故障を予防することができる。また、第2種別のモータポンプが停止中の間は連続気中運転が可能な第1種別のモータポンプによって、水槽に液体を長時間残留させることのないよう、液体の排水を有効に制御することにより、水槽内の液の腐敗の量を極力少なくし、悪臭の発生を抑制することができる。
【0015】
[形態6]形態6によれば、形態5のポンプ設備において、制御装置は、水位がポンプ露出水位よりも低い状態にて第2種別のモータポンプが連続気中運転した期間を第2期間として計測し、第2種別のモータポンプが連続気中運転を停止した後に停止中の第2種別のモータポンプが再び運転されるまでの停止期間は、第2期間よりも長いものとし、停止期間中は第1種別のモータポンプ、または停止中の第2種別のモータポンプ以外の第2種別のモータポンプのみを運転可能とする。形態6によれば、第2種別のモータポンプが連続気中運転した後にモータを冷却するための期間として第2期間を設けることにより、連続気中運転した第2種別のモータポンプが再運転時に高温となり故障するのを予防できる。また、連続気中運転した第2種別のモータポンプの停止期間中には、他の第1種別および第2種別のモータポンプを運転することにより水槽内の液の腐敗の量を極力少なくし、悪臭の発生を抑制することができる。更に、第1種別および第2種別のモータポンプを有効に活用でき、第2種別のモータポンプの故障を予防することができる。
【0016】
[形態7]形態7によれば、形態5または6のポンプ設備において、制御装置は、以前に運転させたモータポンプの運転履歴を記憶する記憶部を更に備え、水位検出器は、ポンプ露出水位よりも高い水位であるポンプ起動水位を検出可能とし、制御装置は、ポンプ起動水位が検出されたときに、記憶部に記憶された運転履歴に基づいて決定されるモータポンプを始動させる。形態7によれば、モータポンプのローテーション運転を実現することにより、運転させるモータポンプを有効に選択することができ、ポンプ運転時間や発停回数の平準化を図ることにより、排水設備内の特定のモータポンプが交換寿命に達することを予防することができる。
【0017】
[形態8]形態8によれば、形態7のポンプ設備において、第2種別のモータポンプを2台以上備え、運転履歴に基づいて決定される始動するモータポンプは第2種別のモータポンプから選択される。形態8によれば、ポンプ露出水位よりも低い場合には第1種別のモータポンプを優先的に運転する本排水設備において、水槽内の水位がポンプ露出水位よりも高い場合には優先的に第2種別のモータポンプを始動させることにより、モータポンプの運転期間並びに運転回数を平準化することができる。また、運転させるモータポンプを有効に選択することにより、本排水設備のモータポンプの運転期間並びに運転回数を平準化することができる。
【0018】
[形態9]形態9によれば、形態7または形態8のポンプ設備において、複数設定されたポンプ起動水位によって、運転させるモータポンプの台数が決定される。形態9によれば、液体の排水の制御をより柔軟に設定することができる。
【0019】
[形態10]形態10によれば、形態7から形態9の何れかのポンプ設備において、水位検出器は、ポンプ露出水位よりも低い水位であるポンプ停止水位を検出可能とし、制御装置は、複数のモータポンプの全てが停止しており、且つポンプ停止水位が検出されるがポンプ起動水位が検出されない第3期間を計測し、第3期間が所定の第4期間より長い場合に、制御装置は、第1種別のモータポンプを運転させる。形態10によれば、ポンプ起動水位まで水位が上昇していない場合でも、第1種別のモータポンプを一定期間以上にわたり連続気中運転させることができ、水槽内に液体が貯留するのを抑制することができる。特に、液が汚水の場合は、モータポンプを運転させて水流を作ることにより、悪臭や有毒ガスの発生を予防することができる。
【0020】
[形態11]形態11によれば、形態1から形態10の何れかのポンプ設備において、第1種別のモータポンプが第2種別のモータポンプより低い位置に配置される。形態11によれば、水槽内の液体の残留量を極力少なくすることができ、液体の効率的な排水を実現することができる。
【0021】
[形態12]形態12によれば、形態2から10の何れかのポンプ設備において、第1種別のモータポンプが具備する冷却機構は、モータの周囲に設けられる冷却フィンを備える。形態12によれば、第1種別のモータポンプを比較的安価に実装することができる。
【0022】
[形態13]形態13によれば、形態2から10の何れかのポンプ設備において、第1種別のモータポンプが具備する冷却機構は、モータの周囲に設けられる冷却ジャケットを備え、冷却ジャケットにポンプ揚水が導かれるように構成される。形態13によれば、第1種別のモータポンプを有効な冷却効果と共に実装することができる。
【0023】
[形態14]形態14によれば、形態2から10の何れかのポンプ設備において、第1種別のモータポンプが具備する冷却機構は、モータの周囲に設けられる冷却ジャケットを備え、冷却ジャケットに冷却水が封入されるように構成される。形態14によれば、取扱液がモータ部に浸入することなく冷却を可能とする。そして、メンテナンンスが容易な第1種別のモータポンプを実装することができる。
【0024】
[形態15]形態15によれば、形態2から10の何れかのポンプ設備において、第1種別のモータポンプが具備する冷却機構は、冷却棒が設けられる。形態15によれば、第1種別のモータポンプを簡易な構造で実装することができる。
【0025】
[形態16]形態16によれば、モータポンプが提供され、かかるモータポンプは、形態1から15の何れかによるポンプ設備において具備される。
【0026】
[形態17]形態17によれば、悪臭防止型排水設備が提供され、かかる悪臭防止型排水設備は、形態1から形態15の何れかに記載のポンプ設備が適用される。
【0027】
[形態18]形態18によれば、水槽内の液を排水するための複数のモータポンプを制御する制御装置が提供される。かかる制御装置は、水位検出器にて検出した水槽内の水位データを受信可能であり、複数のモータポンプが、第1種別および第2種別のモータポンプを含み、第1種別のモータポンプは、第1期間以上の連続気中運転を可能とする冷却機構を具備し、第2種別のモータポンプは、第1期間以上の連続気中運転を可能とする冷却機構を具備せず、当該制御装置が、複数のモータポンプの全てが停止状態であるかどうかを判定し、水位データに基づいて、水槽内の水位が、所定の水位よりも低い状態にある第2期間を計測し、停止状態であり、且つ、第2期間が所定の第3期間より長いかを判定し、停止状態であり、且つ、第2期間が所定の第3期間より長い場合に、第1種別のモータポンプを運転させる、ように動作する。形態18によれば、第1種別および第2種別のモ
ータポンプを混在させ、水槽に液体を長時間残留させることのない、液体の効率的な排水の制御を実現することができる。これにより、水槽内の液の腐敗の量を極力少なくし、悪臭の発生を抑制することができる。また、ポンプ起動水位まで水位が上昇していない場合でも、第1種別のモータポンプを一定期間以上にわたり連続気中運転させることができ、水槽内に液体が貯留するのを抑制することができる。特に、液体が汚水の場合は、モータポンプを運転させて水流を作ることにより、悪臭や有毒ガスの発生を予防することができる。
【0028】
[形態19]形態19によれば、水槽内の液を排水するための複数のモータポンプを制御する制御装置が提供される。かかる制御装置は、水位検出器にて検出した水槽内の水位データを受信可能であり、複数のモータポンプが、第1種別および第2種別のモータポンプを含み、第1種別のモータポンプは、第1期間以上の連続気中運転を可能とする冷却機構を具備し、第2種別のモータポンプは、第1期間以上の連続気中運転を可能とする冷却機構を具備せず、当該制御装置が、水位データに基づいて、水槽内の水位が第2種別のモータポンプが気中に露出されるポンプ露出水位よりも低い位置にある第2期間を計測し、第2期間が第1期間と等しくなるときには、連続気中運転を行った第2種別のモータポンプが停止された状態とするように動作する。形態19によれば、第1種別および第2種別のモータポンプを混在させ、水槽に液体を長時間残留させることのない、液体の効率的な排水の制御を実現することができる。また、第2種別のモータポンプを不適切に連続気中運転させることがないように制御することにより、モータポンプの故障を予防することができる。更に、第2種別のモータポンプが停止中の間は連続気中運転が可能な第1種別のモータポンプを運転させることよって、水槽に液体を長時間残留させることのないよう、液体の排水を有効に制御することにより、水槽内の液の腐敗の量を極力少なくし、悪臭の発生を抑制することができる。
【0029】
[形態20]形態20によれば、形態19の制御装置において、第2種別のモータポンプが停止されている間に、第1種別のモータポンプ、または停止されている第2種別のモータポンプ以外の第2種別のモータポンプのみを運転可能とする。形態20によれば、第2種別のモータポンプが連続気中運転した後にモータを冷却するための期間を設けることにより、連続気中運転した第2種別のモータポンプが再運転時に高温となり故障するのを予防することができる。また、連続気中運転した第2種別のモータポンプの停止期間中には、他の第1種別および第2種別のモータポンプを運転することにより水槽内の液の腐敗の量を極力少なくし、悪臭の発生を抑制することができる。更に、第1種別および第2種別のモータポンプを活用でき、第2種別のモータポンプの故障を予防することができる。
【0030】
[形態21]形態21によれば、悪臭防止型排水設備が提供され、かかる悪臭防止型排水設備は、下水道管よりも低い位置に設置された排水槽であるピット内に収容され、排水された液を一時貯留する汚水槽と、ピット内の汚水槽外に設けられて汚水槽に接続される第1種別のモータポンプと、汚水槽内に設けられる第2種別のモータポンプと、を備え、第1種別のモータポンプは、所定期間以上の連続気中運転を可能とする冷却機構を具備し、第2種別のモータポンプは、所定期間以上の連続気中運転を可能とする冷却機構を具備しない。形態21によれば、第1種別および第2種別のモータポンプを混在させ、水槽に液体を長時間残留させることのない、液体の効率的な排水を実現することができる。また、第1種別のモータポンプを汚水槽外に設けて使用することにより、メンテナンスが容易となる。更に、水槽内の水位がポンプ露出水位以上であれば第2種別のモータポンプのモータ部を水槽内の液にて冷却することができるため、第2種別のモータポンプを効果的に運転することができる悪臭防止型排水設備を実現することができる。これにより、水槽内の液の腐敗の量を極力少なくし、悪臭の発生を抑制することができる。
【0031】
[形態22]形態22によれば、形態21の悪臭防止型排水設備であって、汚水槽内の
水位を検出する水位検出器と、第1種別のモータポンプおよび第2種別のモータポンプの動作を制御する制御装置と、を更に備え、水位検出器は、第2種別のモータポンプが気中に露出されるポンプ露出水位を検出可能であり、制御装置は、汚水槽内の水位がポンプ露出水位よりも低い期間を計測し、汚水槽内の水位がポンプ露出水位よりも低い期間が所定期間経過した時点において、第2種別のモータポンプは停止状態である。形態22によれば、第2種別のモータポンプを不適切に運転させないように制御することにより、モータポンプの故障を予防することができる。また、第2種別のモータポンプが停止中の間は連続気中運転が可能な第1種別のモータポンプを運転させることによって、水槽に液体を長時間残留させることのないよう、液体の排水を有効に制御することにより、水槽内の液の腐敗の量を極力少なくし、悪臭の発生を抑制することができる。
【0032】
[形態23]形態23によれば、ポンプ設備が提供され、かかるポンプ設備は、水槽内の液を排水するために複数の水中モータポンプと、水槽内の水位を検出する水位検出器と、水中モータポンプの動作を制御する制御装置と、を備え、水中モータポンプのうち少なくとも1台は、連続気中運転を可能とする冷却機構を具備した連続気中運転可能な水中モータポンプとし、水位検出器は、水中モータポンプが気中に露出されるポンプ露出水位と、ポンプ露出水位よりも低い水位であるポンプ停止水位と、を検出し、制御装置は、水位がポンプ露出水位より低く、且つポンプ停止水位より高い状態にて所定期間経過後には、連続気中運転可能な水中ポンプにて排水させる。形態23によれば、水中モータポンプのうち少なくとも1台に、連続気中運転可能な水中モータポンプを採用することにより、水槽に液体を長時間残留させることのない、液体の効率的な排水の制御を実現することができる。これにより、水槽内の液の腐敗の量を極力少なくし、悪臭の発生を抑制することができる。また、ポンプ露出水位まで水位が上昇していない場合でも、連続気中運転可能な水中モータポンプを連続気中運転させることで、水槽内に液体が貯留するのを抑制することができる。特に、液体が汚水の場合は、モータポンプを運転させて水流を作ることにより、悪臭や有毒ガスの発生を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】一実施形態によるポンプ設備の全体構成図である。
【
図1B】他の実施形態によるポンプ設備の全体構成図である。
【
図2】一実施形態による制御装置のブロック図である。
【
図3】一実施形態による制御装置においてモータポンプを管理するテーブル図である。
【
図5】一実施形態による制御装置の制御フロー図である。
【
図6】一実施形態による制御装置の制御フロー図である。
【
図7】一実施形態による制御装置の制御フロー図である。
【
図8】一実施形態による制御装置の制御フロー図である。
【
図9A】一実施形態によるポンプ設備の動作例である。
【
図9B】一実施形態によるポンプ設備の動作例である。
【
図10】一実施形態による悪臭防止型排水設備の概要図である。
【
図11】一実施形態による悪臭防止型排水設備の概要図である。
【
図12】一実施形態による悪臭防止型排水設備の概要図である。
【
図13】一実施形態による第2種別のモータポンプの構造を示す概要図である。
【
図14】一実施形態による第1種別のモータポンプの構造を示す概要図である。
【
図15】一実施形態による第1種別のモータポンプの構造を示す概要図である。
【
図16】一実施形態による第1種別のモータポンプの構造を示す概要図である。
【
図17】一実施形態による第1種別のモータポンプの構造を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明に係るポンプ設備、モータポンプ、モータポンプを制御する制御装置、および悪臭防止型排水設備の実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0035】
(第1実施形態)
図1Aを参照して、第1実施形態によるポンプ設備10aの全体構成を説明する。ポンプ設備10aは、水槽20内に貯留された清水、中水、雨水や汚水等のような各種液体(以下、総称して「液」という。また「液体」ということもある。)を排水するために、モータを備えたモータポンプを複数個配置する。具体的には、ポンプ設備10aは、水槽20と、水槽20の底面20bに配置されるモータポンプP1、P2およびPxと、水槽の水位を検出する水位検出器40と、モータポンプP1、P2およびPxの各動作を制御する制御装置100と、を備える。
【0036】
水槽20は、全体として略直方体状(箱状)であり、底面20b、側面20s、および上面20uにより画定される内部空間を有する。水槽20は流入管12および流出管21を備える。液が流入管12を通じて水槽20に流入および貯留された状態で、モータポンプP1、P2およびPxのうちの何れか1つ以上が運転されると、モータポンプP1、P2およびPxに接続された流出管21を通じて水槽20の外に液が排水される。ポンプ設備10aは、更に、水槽20の底面20bに予旋回槽(不図示)を備え、モータポンプP1、P2およびPxと組み合わせて浮遊物や沈殿物を巻込んで排出させるように構成してもよい。
【0037】
各モータポンプP1、P2およびPxは、吸込口(例えば、
図13の222a)を有し、羽根車(例えば、
図13の221)を収容するポンプケーシング部2、および羽根車に回転駆動力を提供するモータ部4を備える。なお、各モータポンプP1、P2およびPxの構成については、
図13から
図17を用いて後述する。本実施形態では、各モータポンプP1、P2およびPxは、キャンドモータポンプ等の水中にて連続運転が可能な水中ポンプとするのがよい。これにより、各モータポンプのモータが被水しても故障することなく排水可能な排水設備を実現することができる。本明細書において、P1、P2およびPxのモータ部4が液面上で気中に露出した状態(即ち、液の水位が冷却を必要とするモータ部4以下の状態)でのモータポンプP1、P2およびPxによる連続運転のことを「連続気中運転」という。以下、本実施形態ではモータポンプの台数を3台(P1、P2およびPx)として説明するが、2台または4台以上でもよい。また、以下に説明するようにモータポンプP1、P2およびPxは、第1種別のモータポンプまたは第2種別のモータポンプの何れかに分類される。ここでは、モータポンプPxは第1種別のモータポンプとし、モータポンプP1およびP2は第2種別のモータポンプとする。
【0038】
第1種別のモータポンプPxは、第2種別のモータポンプP1またはP2と比べて、より長い期間にわたり連続気中運転を可能とする。具体的には、第1種別のモータポンプは、モータ部4を冷却するための冷却機構(
図14から
図17にて詳細を後述)を具備し、一方、第2種別のモータポンプは、モータ部4を冷却するための冷却機構を具備しないものとする(
図13にて詳細を後述)。或いは、第1種別のモータポンプは、冷却機構の代わりにモータ容量を大きくするなどして気中連続運転中のモータ部4の温度をモータポンプが故障する温度以下に抑えることができればよい。
【0039】
第1種別のモータポンプPxは、後述する冷却機構を具備しているため、連続気中運転を行ってもモータ部4の温度がある一定値以上(モータポンプが故障に至る虞がある温度)に上昇しない状態にて保たれる。本明細書では、このことを連続気中運転が可能と定義
する。つまり、連続気中運転が可能であるとは、水槽20内の水位がモータ部4より低い状態が継続した場合でも有効に排水することが可能になることを意味する。
【0040】
第2種別のモータポンプP1およびP2は、冷却機構を具備していない為、連続気中運転するとモータ部4の温度が徐々に上昇していく。そのため、第2種別のモータポンプは、モータ部4が気中に露出し始めてから、少なくても所定の制限期間(例えば、30分間)以内でしか、モータ部4の温度がモータポンプの故障する虞がある温度まで達することなく連続で気中運転を行うことができない。この点、第2種別のモータポンプは、上記所定の制限期間以上は連続気中運転を不可能とすることで、モータ部4の温度上昇に起因する故障を未然に防ぐことができる。本明細書では、所定の制限期間以上の連続気中運転によりモータポンプP1およびP2が故障する虞があることを、所定の制限期間以上は連続気中運転を不可能と定義する。
【0041】
また、第2種別のモータポンプP1およびP2においては、モータ部4を冷却するための冷却機構を具備していないため、所定の制限期間内の連続気中運転によって上昇したモータ部4の温度は、モータポンプP1およびP2停止後に外気または水槽内の液にて自然冷却されることにより緩やかに下降することとなる。そのための期間として、第2種別のモータポンプP1およびP2が、連続気中運転した後、停止してから当該モータポンプP1およびP2が再び運転する間に再運転禁止期間を設ける。ここで、連続気中運転期間が長ければ長いほど、モータ部4の温度は高温となる虞があるため、連続気中運転期間と再運転禁止期間とを関連付けてもよい。一例として、再運転禁止期間は、直前の連続気中運転期間よりも長くするとよい。また、モータポンプP1およびP2に温度センサー(不図示)を設け、モータポンプP1およびP2の温度を制御装置100に取り込み、モータポンプP1およびP2が運転可能な温度以下となるまでの期間を再運転禁止期間としてもよい。
【0042】
前述したように、第1種別のモータポンプPxは、所定の制限期間以上も連続気中運転を可能とし、第2種別のモータポンプP1およびP2は、所定の制限期間以上の連続気中運転を不可能とする。ここで、連続気中運転を行う時は水槽20に流入される液量が少ないときであることから、複数台のモータポンプP1、P2およびPxのうち、1台のみのモータポンプPxを第1種別とし、構造が単純で安価な第2種別のモータポンプP1、P2を2台とするとよい。そうすることで、低コストでありながら水槽内の滞留を防止し排水能力の高いポンプ設備10aを実現することができる。また、第1種別のモータポンプの台数は1台に限らず、第2種別のモータポンプの台数よりも少なくすると同様の効果がある。
【0043】
なお、本実施形態における一例としては、モータポンプP1、P2およびPxは、搬送液に含まれる固形物の大きさ20mm以下の汚水・雑排水を取り扱う片吸込単段遠心形ポンプとする。
【0044】
水位検出器40は、水槽20内の現在の液の水位を検出する。
図1Aの例では、水位検出器40はフロート式のものである。具体的には、水位検出器40は、ポンプ停止水位FLを検出するフロート40aと、ポンプ露出水位FPを検出するフロート40bと、ポンプ起動水位FH1を検出するフロート40cと、満水水位FHnを検出するフロート40nと、を備える。
【0045】
本実施形態によれば、ポンプ停止水位FLは、ポンプ停止水位FL以下にてモータポンプP1、P2およびPxを停止させるための水位であり、水槽20においてモータポンプP1、P2およびPxの全てのポンプケーシング部2の吸込口以上の高さであって、且つ可能な限り吸込口と同等の高さに設定するのがよい。これにより、モータポンプP1、P
2およびPxが運転中に空気を吸ってしまうことを防止し、且つモータポンプP1、P2およびPx停止後に水槽20に残る液を極力少なくすることができる。ポンプ露出水位FPは、水槽20内の液位がポンプ露出水位FP以下にてモータ部4において冷却を必要とする部分が液面より露出する水位であり、即ち、露出水位FP以下では、各モータポンプP1、P2およびPxの運転が連続気中運転となる水位である。
【0046】
ポンプ露出水位FPは、特に、第2種別のポンプP1およびP2に対し、連続運転中に冷却が必要な機構の高さに応じて個別に設定されてもよい。モータ部4が気中に露出され、連続気中運転に支障がでる水位は、ポンプの種別やモータの構造によって異なるからである。具体的には、ポンプ露出水位FPは、モータ部4におけるロータやステータ(例えば、
図13の242、243)の上端よりも高い位置であるのが一般的である。例えば、モータ部4の機構として、モータ部4の上部に接続された駆動電源用ケーブル(例えば、
図13の245)も冷却が必要な場合は、ケーブル上部の数センチとなるようポンプ露出水位FPが設定されるのがよい。また、他の例としては、モータ部4内の摺動部であり発熱する軸受(例えば、
図13の246)が水没する位置をポンプ露出水位FPとしてもよい。
【0047】
ポンプ起動水位FH1は、ポンプ起動水位FH1以上にて各モータポンプP1、P2およびPxを起動する水位であり、ポンプ露出水位FPよりも高い位置に設定される。ポンプ露出水位FPとポンプ起動水位FH1は同一のものとしてもよい。満水水位FHnは、ポンプ起動水位FH1よりも高い位置に設定され、満水水位FHn以上となると、同時に運転可能な全てのモータポンプP1、P2およびPxが起動する水位である。また、満水水位FHnは、満水水位FHn以上にて水槽20の満水状態を判断するための基準としてもよい。
【0048】
制御装置100は、モータポンプP1、P2およびPx、並びに水位検出器40とケーブル接続され、前述した水位FL、FP、FH1およびFHnに応じて、各モータポンプP1、P2およびPxの動作制御を行う。図示するように、制御装置100は、電源ケーブル50を通じて各モータポンプP1、P2およびPxと接続され、信号ケーブル41を通じて水位検出器40と接続される。また、外部の商用電源(不図示)とも接続されてもよい。当該接続により、制御装置100は、水位検出器40からの水位検出信号(40a、40b、40cおよび40n)に応じて、モータポンプP1、P2およびPx毎に、各モータ部4への駆動電源を適切に制御供給し、各モータポンプP1、P2およびPxを運転/停止する。制御装置100はモータポンプP1、P2およびPxの各動作を制御するための様々な機能を実装可能である。また、制御装置100は、各モータポンプP1、P2およびPxを可変速制御するためにインバータを搭載してもよい。
【0049】
本実施形態のポンプ設備10aは、上記第1種別のモータポンプPx並びに第2種別のモータポンプP1およびP2を、同一水槽の液を排出するために混在させるものであり、水槽20に液を長時間残留させることのない、液の効率的な排水を実現することができる。これにより、水槽20内の液の腐敗の量を極力少なくし、悪臭の発生を抑制することができる。また、制御装置100によって複数の種別のモータポンプに適した運転を実現し、第2種別のモータポンプP1、P2を不適切に連続気中運転させることがないように制御し、第2種別のモータポンプP1、P2のモータ部4の温度上昇による故障を予防することができる。
【0050】
(第2実施形態)
図1Bを参照して、第2実施形態によるポンプ設備10bの全体構成を説明する。
図1Aで説明した第1実施形態と重複する説明は省略する。第2実施形態では、第1種別のポンプPxは第2種別のポンプP1およびP2よりも低い位置に配置される。具体的には、
図1Aでは、水槽20の底面20bは平坦面としたが、
図1Bに示すように、第2実施形態では、水槽20’の底面20’bに凹部を設け、凹部の底面に第1種別のモータポンプPxが配置される。ここでは、フロート40zを用いて、モータポンプPxのポンプ停止水位をモータポンプPxの吸込口の高さに設定するのがよい。
【0051】
本実施形態のポンプ設備10bは、第2種別のポンプP1、P2の停止水位FL以下に水位が下がった後にも継続して液を凹部に案内しつつ、モータポンプPxを連続気中運転させることにより、液面の水位を、モータポンプPxの吸込口の高さまで下降させることを可能にする。更には、水槽20’の底面20’bには、モータポンプPxが配置される凹部から遠いほど高さが大きく、近いほど高さが小さくなる傾向に傾斜が設けられてもよい(不図示)。これにより、水槽20’内の汚水等を更に効果的に凹部に案内することができ、貯留した液を滞留させることなく効率的にモータポンプPxで排水可能となる点で更に有利となる。このように、本実施形態によるポンプ設備10bでは、第1種別のポンプPxを第2種別のポンプP1、P2よりも低い位置に配置することにより、前述の第1実施形態によるポンプ設備の利点に加え、更に、水槽20’内の液の残留量を極力少なくすることができる。つまり、液体の効率的な排水を実現することができる。それによりポンプ設備10bでの悪臭の発生を抑制することができる。
【0052】
第1実施形態および第2実施形態を通じて、水槽20(20’)に配置されるモータポンプの台数は任意の数としてよい。第1種別のモータポンプを複数個設けても、第2種別のモータポンプを複数個設けてもよい。前述したものを除き、モータポンプP1、P2およびPxの配置位置や配置順も任意のものとしてよい。水槽20(20’)の底面20b(20’b)に全てのモータポンプP1、P2およびPxを配置するのみならず、重力方向に沿って側面20s(20’s)に配置してもよい。また、第1種別のモータポンプPxは、連続気中運転が可能なため、水槽20(20’)内部に設置して動作させる以外にも、水槽20(20’)外部に設置して動作させてもよい。具体的には、水槽20(20’)の流出口に接続された吸込配管に、第1種別のモータポンプPxの吸込口を連結させることにより、第1種別のモータポンプを水槽20(20’)の外部に設置して動作させてもよい(
図11で後述)。
【0053】
また、第1実施形態および第2実施形態において、第1種別のモータポンプPxは、所定の制限期間(例えば30分間)以上にわたり連続気中運転を可能とするモータ部4を冷却するための冷却機構を具備する。ここで、まずは、冷却機構を具備しない第2種別のモータポンプの構造の一例を、
図13を用いて説明する。なお、特に明記しない限り、モータポンプに関する以下の
図13から
図17の説明において、同様の構成に関しては同一の参照符号を用い、説明を省略する。
【0054】
図13に示すように、第2種別のモータポンプP1およびP2は、軸線ALを中心に回転する羽根車221と、羽根車221を収容するポンプケーシング部2と、ポンプブラケット223と、を備える。羽根車221は、モータ部4の主軸241に接続され、主軸241の回転に伴って回転する。ポンプケーシング部2は、吸込口222aおよび吐出口222bを有し、ポンプブラケット223と共に水の流路を画定する。ポンプブラケット223は、ポンプケーシング部2にビス(不図示)などを用いて係合され、羽根車221の背面(
図1中、上側)を覆う。ポンプブラケット223は、例えば、アルミニウム合金または銅合金など、熱伝導性の高い素材で形成されることが好ましい。
【0055】
モータ部4は、羽根車221に回転駆動力を提供する。モータ部4は、軸線ALを中心に回転する主軸241と、主軸241と一体に回転するロータ242と、ロータ242の外周側に設けられたステータ243と、を備える。また、モータ部4は、モータフレーム244を備える。モータフレーム244は、略円筒状に形成され、内周面にステータ24
3が固定される。モータフレーム244は、ステンレスで形成されてもよいし、アルミニウム合金または銅合金などの金属で形成されてもよい。モータ部4の駆動により羽根車21が回転し搬送液を加圧することにより、吸込口222aから吐出口222bへ水が圧送される。
【0056】
続いて、冷却機構を具備する第1種別のモータポンプPxの構造について、
図14から
図17を用いて説明する。第1種別のモータポンプPxの冷却機構の一例を
図14に示す。
図14では、モータ部4の周囲に冷却フィン250を設け、冷却フィン250を通じて外気を導入するように構成される。モータフレーム244の外周に冷却フィン250を設けてモータ部4による発熱を空冷および放熱させることでモータ部4を冷却する。当該構造は、構造が単純であり比較的安価に実装可能である。なお、揚水に必要な容量よりも大きな容量のモータ部4を採用することで、よりモータ部4の発熱を抑えることも可能である。
【0057】
第1種別のモータポンプPxの冷却機構における他の例を
図15に示す。
図15では、モータフレーム244の外周に冷却ジャケット260を設け、冷却ジャケット260とモータフレーム244の間に羽根車221により加圧された揚水が、導入口261より導かれるように構成される。冷却ジャケット260とモータフレーム244の間を通った揚水は、戻り配管262より排出される。つまり、モータポンプPxによる揚水の一部をモータ部4の冷却水として利用する構成である。当該構造は、
図14における冷却フィンの構造と比べ、冷却効果が高い。
【0058】
第1種別のモータポンプPxにおける冷却機構の他の例を
図16に示す。
図16では、モータフレーム244の外周に冷却ジャケット270を備え、冷却ジャケット270に冷却液が封入されるように構成してもよい。この冷却液は、モータ部4による発熱を冷却するためにモータフレーム244と冷却ジャケット270間に封入され、一例としてプロピレングリコール等が用いられる。また、主軸241に取り付けた循環羽根271を回転させて、冷却液を冷却ジャケット270内で循環させる。この循環によりモータ部4とポンプケーシング部2にて熱交換がなされ、モータ部4で発生した熱を搬送液に放出することができる。当該構造の場合、モータポンプPxにおける搬送液(汚水)が冷却ジャケット270間に浸入しないので、搬送液の液質に影響を受けずにモータ部4の冷却が可能であり、メンテナンス、特に清掃が容易となる。
【0059】
更なる他の第1種別のモータポンプPxの冷却構造の例を
図17に示す。
図17では、冷却機構として、冷却棒251をモータ部4に設ける。具体的には、冷却棒251は、ポンプブラケット223の空間内に延在し、軸受246の潤滑油227を貫通して、モータ部4に配置するように構成される。ポンプブラケット223は、ポンプケーシング部2と共にモータポンプPxにおける搬送液の流路を画定しており、モータポンプPxにおける搬送液と接触するため、モータ部4で生じた熱が冷却棒を介してポンプブラケット223に伝わり、モータポンプPxにおける搬送液にて冷却棒が冷却される。これにより、簡易な構造でモータ部4の冷却効果を向上できる。
【0060】
実施形態1および実施形態2において、第2種別のモータポンプP1およびP2は、
図1Aおよび
図1Bに示されるように水槽20、20’内に配置される。第2種別のモータポンプP1およびP2は、前述したようなモータ部4の冷却構造を備えていないが、水槽20(20’)内で使用することにより、水槽20(20’)内の水位がポンプ露出水位FP以上であれば第2種別のモータポンプP1およびP2のモータ部4を水槽20(20’)内の液にて冷却することができるため、第2種別のモータポンプP1およびP2を効果的に連続運転することができる。他方で、制御装置100により上記の停止期間、運転期間、制限期間、および再運転禁止期間等に基づく動作の柔軟な制御を可能とする場合に
は、水槽20(20’)の外部で動作させてもよい。具体的には、上記第1種別のモータポンプPxの場合と同様、水槽20、20’の流出口(不図示)を設け、流出口に接続された吸込配管(不図示)に、第2種別のモータポンプP1およびP2の吸込口222aを連結させることにより、第2種別のモータポンプP1およびP2を水槽20(20’)の外部で動作させてもよい。
【0061】
前述した全ての実施形態において、フロート式の水位検出器40は、水槽20(20’)に対し設置されるものに限定されない。例えば、モータポンプP1、P2およびPx毎に所与の相対位置にフロート(40a、40b、40cおよび40n)を設置してもよい。また、第2種別のモータポンプP1およびP2に関しては、制限期間を越えて連続気中運転を実施すると故障の原因となるので、ポンプ露出水位FPを個別に管理できるよう、第2種別のモータポンプP1およびP2毎にフロートを設置してもよい。また、水位検出器40は、フロート式以外でも、投げ込み式水位センサのようなアナログ式水位検出器も適用可能であり、主に清水用途のポンプ設備では、電極棒も適用可能である。更に、本実施形態のポンプ設備10aおよび10bにおいて、水位検出器40が検出する水位は上記FLからFHnに限定されない。例えば、ポンプ起動水位FH1と満水水位FHnの間に更なるポンプ起動水位をポンプ追加水位FH2、FH3等として設けてもよく、ポンプ起動水位FH1およびポンプ追加水位FH2、FH3・・・が設定される数は、ポンプ設備10aまたはポンプ設備10bが備えるモータポンプの台数に応じて規定するのがよい。この場合、複数設定されるポンプ起動/追加水位によって、運転させるモータポンプの台数が決定されてもよく、液体の排水の制御をより柔軟に設定することができる。なお、検出を要する水位の数に応じて水位検出器40のフロートの個数が決定される点が当業者には容易に理解される。
【0062】
(制御装置によるモータポンプの制御)
図2から
図8を参照して、前述した全ての実施形態による、複数のモータポンプP1、P2およびPxの動作を制御する制御装置100について説明する。
図2は、制御装置100の例示の機能ブロック図である。
図3は、情報処理において用いられる、制御装置100に格納される例示のテーブル図である。
図4は、モータポンプの状態遷移図である。
図5から
図8は、情報処理を示す制御フロー図である。
【0063】
以下の説明において、特にポンプ設備10aとポンプ設備10bを区別する必要がない場合はポンプ設備10と記載し、また、水槽20および水槽20’は水槽20と記載する。更に、特に区別する必要がない限り、
図1BにおけるモータポンプPxの停止水位40zは、ポンプ停止水位FLとする。
【0064】
図2に示すように、制御装置100は、水槽20内の液の水位やモータポンプP1、P2およびPxの状態を検出する検出部120と、各情報処理を実行する処理部140と、各種情報を記憶する記憶部160と、を含む。各機能ブロックは、ソフトウェアおよび/またはハードウェアの一部として実装される。上記以外にも、モータポンプP1、P2およびPx並びに水槽20の状態を表示する表示部、各モータポンプP1、P2およびPxの運転停止を指令し、また各種設定値を変更するための操作を行う操作部等を備えてもよい。また、制御装置100は、リレーシーケンスのみで構成される制御盤としてもよい。なお、
図2の機能ブロックは例示のものであり、これに限定されない。
【0065】
図2における検出部120および処理部140はCPU(Central Processing Unit)
等の処理装置によって実装される。検出部120は、水位検出器40との相互作用により液の水位を検出する水位検出部122と、各モータポンプP1、P2およびPxとの相互作用によりポンプ状態を検出するポンプ状態検出部124と、を含む。水位検出部122は、水位検出器40にて検出したフロート40a、40b、40cおよび40nによる水
位データを受信し、例えば、
図1の水位FL、FP、FH1およびFHnを判断することによって、液の水位がどの間の水位範囲にあるかに関する水位状態を判定する。また、タイマ部142と協働して、水位データに基づいて各水位状態にある期間を特定する。ポンプ状態検出部124は、例えば、各モータポンプP1、P2およびPxのモータ部40の電流を検出して、稼働状況(例えば、運転/停止/故障等)を判定してもよいし、サーマル等の故障検知器を付加して、それらの信号を受信してもよい。また、各モータポンプP1、P2およびPxの運転/停止の判断は、ポンプ司令部146の運転指令ならびに停止指令を代用してもよい。
【0066】
処理部140は、後述する制御フローの動作を実現するように、特定の水位状態における期間を計測するタイマ部142と、各モータポンプP1、P2およびPxの稼働状況に応じた期間を計測するタイマ部144と、各モータポンプP1、P2およびPxに対し、運転/停止を指令するポンプ指令部146と、を含む。
【0067】
例えば、制御装置100は、第2種別のモータポンプP1またはP2における連続気中運転の期間をタイマ部144によって計測し、ポンプ指令部146は、モータポンプP1またはP2における連続気中運転が所定の制限期間を経過した時点において、モータポンプP1またはP2を必ず停止状態となるように制御する(
図7のS530からS550で後述)。ここで、制御装置100は、第2種別のモータポンプP1またはP2を停止させても、制限期間以上にわたり連続気中運転が可能な第1種別のモータポンプPxが運転中であれば、引き続きモータポンプPxの運転を継続させるよう動作制御を行う。これにより、水槽20内に液を長時間残留させることのないよう、液の排水を有効に制御することができる。また、水槽20内の液の腐敗の量を極力少なくし、悪臭の発生を抑制することができる。
【0068】
前述したとおり、第2種別のモータポンプP1またはP2を一旦停止させた後、停止中の第2種別のモータポンプP1またはP2を再度運転させるまでの間に再運転禁止期間を設け、ポンプ指令部146はその動作制御も行う。具体的には、第2種別のモータポンプP1またはP2が気中運転を行った期間をタイマ部144によって各々計測する。当該期間は、再運転禁止期間として停止期間に関連付けられる。一例として、直前の気中運転期間と比例した期間を再運転禁止期間としてもよいし、直前の気中運転期間にある一定期間を加えた期間を再運転禁止期間としてもよい。ポンプ指令部146は、第2種別のモータポンプP1またはP2の再運転禁止期間において、第1種別のモータポンプPx、または再運転禁止期間にない第2種別のモータポンプのみを運転可能なように制御する。このように、第2種別のモータポンプP1またはP2が連続気中運転した後にモータ部4を冷却するための再運転禁止期間を設けることにより、連続気中運転した第2種別のモータポンプP1またはP2が再運転時に高温となり故障するのを予防することができる。また、再運転期間中のモータポンプ以外の第1種別および他の第2種別のモータポンプは、運転可能として排水を継続することにより水槽内の液の腐敗の量を極力少なくし、悪臭の発生を抑制することができる。更に、第1種別および第2種別のモータポンプを有効に活用できることで、第2種別のモータポンプP1またはP2のモータ部4の過熱による故障を予防することができる。
【0069】
記憶部160は、これに限定されないが、揮発性メモリ(例えば、RAM(Random Access Memory)等)、不揮発性メモリ(例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュ・メモリ等)または任意のメモリの組み合わせで実装される。記憶部160は、ポンプ設備10の制御のための各種設定情報、制御情報、および各種履歴情報等を格納する。記憶部160に格納される履歴情報の一例として、
図3に示した運転状態管理テーブル164は、各モータポンプP1、P2およびPxに関し、以前に運転させた運転履歴を記憶してモータポンプの管理を行う。即ち、ポンプ指令部146が各モータポンプP1、P2およびP
xを運転「1」または停止「0」させる際や、ポンプ状態検出部124によって稼働状況(例えば、運転「1」、停止「0」、または故障「-1」)が検出された際に、その日付および時間(YYYYMMDD-hhmmss)と共にレコードが追加されてもよい。なお、テーブルの構成は
図3に限定されず、任意の構成とすることができる。代替として、例えば、各モータポンプP1、P2およびPx毎に稼働状況を管理するテーブルを設けてもよいし、運転状態管理テーブル164以外にも水位状態を管理するテーブルや故障履歴等を別途設けてもよい。
【0070】
図4に示すように、これに限定されないが、制御装置100は、ポンプ設備10のモータポンプP1、P2およびPxの稼働の状況に応じて、2つの状態の間を遷移させるように動作する。2つの状態とは、例えば、モータポンプP1、P2およびPxの全てが停止している「全ポンプ停止状態」、および、モータポンプP1、P2およびPxの内の何れか1つ以上が運転している「ポンプ運転状態」である。具体的には、全てのモータポンプP1、P2およびPxにて「全ポンプ停止状態」にあり、水槽20内の液の水位が所定の起動水位(FH1)以上に達した場合、制御装置100は、所定のモータポンプP1、P2およびPxの何れかを起動させ、ポンプ設備10を「ポンプ運転状態」に遷移させる。他方、ポンプ設備10が「ポンプ運転状態」にある場合は、制御装置100は、水槽20内の液の水位に応じて、所定のモータポンプP1、P2およびPxを継続運転したり、水位が更に上昇したらモータポンプP1、P2およびPxを追加したりする。また、ポンプ設備10が「ポンプ運転状態」にある場合に、制御装置100は、水槽20内の液の水位に応じて、運転中のモータポンプP1、P2およびPxを解列させ、最終的にポンプ設備10内の全てのモータポンプP1、P2およびPxが停止すると、「全ポンプ停止状態」に遷移させる。
【0071】
次に、本実施形態によるモータポンプP1、P2およびPxの動作について、
図5から
図8に記載の制御フローを参照して説明する。制御装置100は、
図5から
図8に記載の制御フローに従ってモータポンプP1、P2およびPxの動作を制御する。
【0072】
まず、制御装置100に電源が印加されると、
図5における全体の制御フローS100が開始される。または、設定部162からの指示に応じてS100が開始されてもよい。制御フローS100の開始に応じて、S110では各モータポンプP1、P2およびPxが運転中か停止中かの運転状態を確認する。運転状態管理テーブル164を参照して各モータポンプの運転状態を確認してもよいし、ポンプ状態検出部124にて各モータポンプP1、P2およびPxの運転状態を確認してもよい。或いは、ポンプ指令部146による各モータポンプP1、P2およびPxへの直前の指令をもって各モータポンプP1、P2およびPxの運転状態としてもよい。(以下では簡単のために、P1、P2およびPxの3台のモータポンプが水槽20内に配置され、各々のモータポンプP1、P2およびPxを制御するための各種水位40(フロート:40a、40b、40cおよび40n)は共通の高さとする。)
【0073】
次に、水槽20内の水位WLを検出(S120)する。水位がポンプ停止水位FL以下(S130:Yes)で、且つ何れかのモータポンプP1、P2およびPxが運転中である場合には、全ての運転中のモータポンプP1、P2およびPxを停止(S140)する。これにより、モータポンプP1、P2およびPxが運転中に空気を吸ってしまうことを防止することができる。その後、S150の判断へ移行する。また、S130がNoの場合は、運転中のモータポンプP1、P2およびPxは運転を継続し、停止中のモータポンプP1、P2およびPxは停止を継続したまま、S150の判断へ移行する。
【0074】
次いで、S150では、モータポンプP1、P2およびPxが全て「停止ポンプ」(即ち「0」)であるかを判断(S150:Yes)する。全ポンプが「停止ポンプ」である
として「全ポンプ停止状態」と判断される(S150:Yes)場合は、S300のポンプ停止中フローに進み、モータポンプP1、P2およびPxは、運転待機中の状態となる。一方、S150で、モータポンプP1、P2またはPxの何れかが「運転ポンプ」(運転中のモータポンプ)であるとして「ポンプ運転状態」と判断される(S150:No)場合は、S500のポンプ運転中フローに進む。
【0075】
ここで、S300およびS500の処理終了後は、制御フローはS100に戻る。そして、ポンプ動作状態が繰り返し確認され、「全ポンプ停止状態」と「ポンプ運転状態」の間を適宜状態遷移する。制御フローS100は、制御装置の設定部162に設定された任意のトリガで終了してもよい。例えば、ポンプ設備10は、制御フローS100における水位により各モータポンプP1、P2およびPxを運転・停止する「自動モード」、モータポンプP1、P2およびPxをオペレータの指示により試験的に動作させる「試験モード」、各モータポンプP1、P2およびPxを強制的に停止する「停止モード」等の各種モードを保有してもよい。その場合、「自動モード」から「試験モード」や「停止モード」へと移行することにより、制御フローS100が終了し、「試験モード」や「停止モード」から「自動モード」へと移行することにより、制御フローS100が開始するようにしてもよい。
【0076】
図6を参照して、ポンプ設備10が「全ポンプ停止状態」である場合のポンプ停止中フローS300について説明する。前述したS100にてS300に進むと、まず、水位WLがポンプ起動水位FH1以上かが判断(S310)される。なお、ポンプ起動水位FH1の代替としてポンプ露出水位FPとしてもよい。水位WLがポンプ起動水位FH1以上(S310:Yes)の場合は、モータポンプP1、P2またはPxの何れかを起動し、水槽20に貯留した液の排水を開始することになる。S320では、ポンプ指令部146により、最初に運転させる先発ポンプが決定され、当該先発ポンプの運転が開始される。併せて、現在日時と共に運転状態管理テーブル164にその旨のレコードが追加されてもよい。
【0077】
ここで、S320にて始動させる先発ポンプについて説明する。先発ポンプは、記憶部160に記憶された運転履歴に基づいて決定される。具体的には、先発ポンプは、前回の先発ポンプよりローテーションする。前回の先発ポンプがモータポンプP1ならば今回の先発ポンプはP2とし、前回の先発ポンプがモータポンプP2ならば今回の先発ポンプはPxとし、前回の先発ポンプがモータポンプPxならば今回の先発ポンプはP1というように、ポンプNoの順番(または配置の順番)にてローテーションしてもよい。また、各モータポンプP1、P2およびPx毎の積算運転期間を比較して、積算運転期間の短いモータポンプP1、P2およびPxを先発ポンプとしてもよいし、積算運転回数が少ないモータポンプP1、P2およびPxを先発ポンプとしてもよい。更には、ポンプ停止期間が一番長いポンプを先発ポンプとしてもよい。ここでは、モータポンプP1、P2およびPxの台数を3台としているが、ポンプ設備10におけるモータポンプP1、P2およびPxの台数が増減しても同様に先発ポンプのローテーションを行うとよい。また、モータポンプP1、P2またはPxの何れかが故障もしくは再運転期間にて運転不可の場合は、再度先発機のローテーションを行い、起動可能なポンプを起動するとよい。先発ポンプのローテーションを実現することにより、運転させるモータポンプP1、P2およびPxを有効に選択することができ、ポンプ運転期間や発停回数の平準化を図ることにより、排水設備10内の特定のモータポンプP1、P2およびPxが交換寿命に達することを予防することができる。
【0078】
S310でポンプ起動水位FH1が検出されない(S310:No)場合、次に水位WLがポンプ停止水位FL以上且つポンプ起動水位FH1より低い水位であり、加えて、タイマ部142で計測される当該水位状態の期間が一定期間以上経過したかの判断(S33
0)がされる。なお、ポンプ起動水位FH1の代替としてポンプ露出水位FPを採用した場合は、水位WLがポンプ停止水位FL以上且つポンプ露出水位FPより低い水位状態の期間が一定期間以上経過したかが判断される。S330がYesの場合、ポンプ指令部146によって第1種別のモータポンプPxが運転(S340)される。つまり、S340では、ポンプ指令部146により、先発ポンプが第1種別のモータポンプPxに決定され、該先発ポンプの運転が開始される。併せて、現在日時と共に運転状態管理テーブル164にレコードが追加されてもよい。なお、S330でNoの場合は、本ポンプ設備10におけるモータポンプPxの起動条件が成立しないため、「全ポンプ停止状態」をそのまま維持する。ここで、S330でYesにて第1種別のモータポンプPxを起動する場合において、第1種別のモータポンプが複数台存在する場合は、複数の第1種別のモータポンプにて前述した先発機のローテーションを行ってもよい。
【0079】
S330およびS340の動作は、ポンプ起動水位FH1に水位WLが満たない場合であっても、水槽20内の液が長期間滞留するのを防止することを目的とするものであり、制御装置100は、制限期間以上にわたり連続気中運転が可能で且つ再運転禁止期間のない第1種別のモータポンプPxを起動する。このように、ポンプ起動水位まで水位が上昇しない場合でも、第1種別のモータポンプPxにて連続気中運転することにより、水槽20内に液が長時間にわたり滞留するのを抑制することができる。特に、液が汚水の場合は、モータポンプPxを運転させて水流を作ることで、悪臭や有毒ガスの発生を予防することができる。
【0080】
なお、S330における一定期間はポンプ設備10に応じて固有の期間としてもよい。具体的には、搬送液が汚水であれば数分や数時間とし、或いは雨水であれば数時間、数日、または数か月という具合に比較的長くしてもよい。また、S330における一定期間は、設定部162よりユーザが設定変更を可能とし、各現場毎に調整できるようにしてもよい。前述したS300における処理が終了した後(S350)は、S100の制御フローに戻る。
【0081】
図7を参照して、
図5のS150にて運転中のポンプあり(S150:No)と判断された場合のポンプ運転中フロー(S500)について説明する。まず、S510では、水位WLが満水水位FHnより低い(S510:Yes)かが判断される。S510がYesの場合は、S520で水位WLがポンプ露出水位FPより低いか(S520:Yes)が更に判断される。
【0082】
S520がYesの場合、S530では、タイマ部142によって、水位WLがポンプ露出水位FPより低い状態にて一定期間T1以上経過したか(Yes)が判断される。S530がYesの場合、次いで、S540では、制御装置100は、第2種別のモータポンプP1および/またはP2が運転されているかを判断(S540:Yes)する。ここで、一定期間T1は、第2種別のモータポンプに関して規定される前述の制限期間以下に設定されるのがよい。S540がYesの場合、S550では、一定期間T1以上にわたり第2種別のモータポンプを連続気中運転させると故障に繋がる虞があるので、ポンプ指令部146は、運転中の第2種別のモータポンプを停止させるとともに運転中の第1種別のモータポンプPxがあれば運転を継続する。
【0083】
ここで、S550で停止したモータポンプP1および/またはP2は、上述した再運転禁止期間に入る。モータポンプP1および/またはP2の再運転禁止期間中は第1種別のモータポンプPx、または、再運転禁止期間中でない第2種別のモータポンプP1若しくはP2のみが運転可能となるよう制御される。本実施形態による制御装置100では、第2種別のモータポンプP1またはP2を不適切に連続気中運転させることがないように制御することにより、当該第2種別のモータポンプP1またはP2のモータ部4の過熱に起
因する故障を予防することができる。また、第2種別のモータポンプP1およびP2が再運転禁止期間中の間は連続気中運転が可能な第1種別のモータポンプPxか、または再運転禁止期間中でない第2種別のモータポンプP1若しくはP2によって、水槽20に液体を長時間残留させることのないよう、液体の排水を有効に制御する。これにより、水槽20内の液の腐敗の量を極力少なくし、悪臭の発生を抑制することができる。
【0084】
S510がNoの場合は、水槽20内の水位が上昇してきていると判断して、追加可能なモータポンプP1、P2またはPxがあるか(S560)を判断する。追加可能の判断の一例として、故障中でないか、再運転禁止期間中でないか、並列運転可能なポンプ台数以下であるか等の条件により判断することができる。S560がYesの場合、S570では、ポンプ指令部146によって、停止中の追加可能なモータポンプが起動される。併せて、S570では現在日時と共に運転状態管理テーブル164にその旨のレコードが追加されてもよい。また、水位WLが満水水位FHnより高い場合は異常増水状態と判断して、全ての起動可能なモータポンプP1、P2およびPxを同時に起動させて並列運転させてもよい。
【0085】
ここで、S570では、ローテーションの順序(P1→P2→Px→P1)に従ってモータポンプを順次追加するのがよい。また、水位WLが露出水位FPより高いので、第2種別のモータポンプP1またはP2を優先して追加してもよい。但し、第2種別のモータポンプP1またはP2を再度運転させる場合は、再運転禁止期間中でない必要がある。また、追加するモータポンプP1、P2またはPxの何れかが故障にて運転不可の場合は、再度ローテーションを行うとよい。これらの条件を加味して追加させるモータポンプP1、P2またはPxを有効に選択することで、ポンプ運転期間や発停回数の平準化を図ることができ、ポンプ設備10内の特定のモータポンプP1、P2またはPxが交換寿命に達することを予防することができる。更には、ローテーションを行うことで特定のモータポンプP1、P2またはPxの停止期間が長期間になることによるポンプの錆付きロック等のモータポンプP1、P2またはPxの起動不良を解消することが出来る。
【0086】
また、S560がNoの場合、追加できるモータポンプP1、P2およびPxが存在しないと判断し、S580にてS100へ戻り、現在運転中のモータポンプP1、P2およびPxにて運転を継続する。
【0087】
ここで、S520に戻り、S520がNoの場合は
図8のS600に進む。S600では、ポンプ指令部146によって結果的に運転ポンプのローテーションが実施されることになる。S620では、第1種別のモータポンプPxが一定期間TPx以上にわたり運転中であり、且つ第2種別のモータポンプが追加可能であるかが判断される。S620がYesの場合、S640では、ポンプ指令部146によってモータポンプPxが停止される。この時に、併せて、現在日時と共に運転状態管理テーブル164にその旨のレコードが追加されてもよい。水槽20内の水位がポンプ露出水位FPよりも低い場合に第1種別のモータポンプを優先的に運転するポンプ設備10では、第2種別のモータポンプより第1種別のモータポンプの方が運転期間および運転回数が極端に増加することが懸念される。ここでのローテーションは、水槽20内の水位がポンプ露出水位FPよりも高い場合には優先的に第2種別のモータポンプP1またはP2を起動させ、第1種別のモータポンプと第2種別のモータポンプの運転期間および運転回数を平準化することを目的とする。そこで、S640にてモータポンプPxを一旦停止させることで、排水が間に合わなくなり水槽20内の水位が上昇すれば、S320、S570、またはS340の何れかにて該当する第2種別のモータポンプP1またはP2を起動することとなる。これは、結果的に運転ポンプのローテーションが実現されることとなると共に、水槽20の水位が露出水位FP以上で第2種別のモータポンプを起動させることができる。
【0088】
ここで、ポンプ設備10内の何れかのモータポンプP1、P2またはPxが運転中の場合には、ポンプ指令部146によってモータポンプP1、P2および/またはPxによる運転ポンプのローテーションが定期的(例えば、各モータポンプ毎の連続運転期間が24時間毎とか1週間毎等)に実施されてもよい。運転ポンプのローテーションでは、運転中の各モータポンプP1、P2および/またはPxを停止するのと同時か停止直前に、制御装置の記憶部160に記憶された運転状態管理テーブル164の運転履歴に基づいて決定されるモータポンプP1、P2および/またはPxを始動させるとよい。具体的には、ポンプ指令部146は、一定の期間毎に運転させるモータポンプP1、P2および/またはPxを順次切り替えながら何れか1つ以上のモータポンプP1、P2および/またはPxを交替運転させ、その都度運転状態管理テーブル164にレコードを追加する。ポンプ運転のローテーションは、モータポンプP1、P2およびPx毎の運転期間および停止期間、並びに運転頻度の偏りを抑制し、運転状態の均一化を図ることを目的とする。ローテーションの態様は、これに限定されないが次の手法の何れかかとするのがよい。即ち、(i)配置順に、運転させるモータポンプをローテーションさせる(具体的には、P1→P2→Px→P1・・・の順に運転させる。)、(ii)タイマ部144や運転状態管理テーブル164を用いて各モータポンプの運転期間を特定し、運転期間が短い順に、モータポンプP1、P2および/またはPxをローテーションさせる、或いは(iii)タイマ部144や運転状態管理テーブル164を用いて各モータポンプP1、P2およびPxの停止期間を特定し、停止期間が長い順に、モータポンプP1、P2および/またはPxを起動してローテーションさせる、といった具合である。モータポンプP1、P2およびPxの間のローテーション運転を実現することにより、運転させるモータポンプP1、P2および/またはPxを有効に選択することができ、ポンプ運転期間や発停回数の平準化を図ることにより、ポンプ設備10内の特定のモータポンプP1、P2および/またはPxが交換寿命に達することを予防することができる。また、モータポンプP1またはP2を起動する場合には、現在の停止期間が再運転禁止期間よりも長くなるように待機させる。
【0089】
図7のS500が実施された後は、S100へ戻る(S580)。前述したように、S100ではモータポンプP1、P2およびPxのうちの何れが運転中か否かを判断し、全ポンプ停止中であればS300へ移行し、運転中のポンプがあれば、S500に移行するという動作を繰り返す。
【0090】
(ポンプ設備の動作の変形例)
図9Aおよび
図9Bは、前述した本実施形態によるポンプ設備10の動作の変形例である。前述した制御フローS100では、モータポンプP1、P2およびPxのうちの何れかが運転中に水槽20内の水位が更に上昇すると、更に追加可能なモータポンプP1、P2およびPxのうちの何れかを追加する。このように、モータポンプP1、P2およびPxのうち複数台で起動した後は、水槽20の水位が下がり停止水位FLに達するまでは、追加したモータポンプP1、P2および/またはPxの運転台数を維持する。これは、追加水位以上まで上昇した汚水を早急に排水するためである。特に汚水を取り扱うポンプ設備10では、汚水が水槽20外に溢れると2次被害が増大するため、早急に排水することが求められる。しかしながら、ポンプ設備10が雨水、中水、河川水、上水などを取り扱うポンプ設備であれば、モータポンプP1、P2および/またはPxを追加後に、ある程度水槽20の水位が下がったら、適正なポンプ台数となるまで解列して省エネ運転を行いたい、との要望もある。
図9Aおよび
図9Bでは、このように一旦追加したモータポンプP1、P2および/またはPxを解列する手法について説明する。
【0091】
図9Aでは、モータポンプを3台(P1、P2およびPx)用意し、その内の1台(Px)を第1種別のモータポンプとする。P1およびP2は第2種別のモータポンプである。また、ポンプ停止水位FL、ポンプ露出水位FP、ポンプ起動水位FH1、および満水水位FHnの4つの水位を検出対象とする。この例では、ポンプ露出水位FPは各モータ
ポンプP1、P2およびPxで共通であるとする。
図9Bでは、モータポンプを4台(P1、P2、P3およびPx)用意し、その内の1台を第1種別のモータポンプ(Px)とする。P1、P2およびP3は第2種別のモータポンプである。また、ポンプ停止水位FL、ポンプ露出水位FP、ポンプ起動水位FH1、ポンプ追加水位FH2、および満水水位FHnの5つの水位を検出対象とする。5台以上のモータポンプを設置する場合も同様であるが、変形態様として、第1種別のモータポンプ(Px)を複数台設置してもよい。以下では、水位WLが満水水位FHn以上の位置であり、前述のS525で全台のモータポンプP1、P2、P3、P4およびPxが運転され、その後、各モータポンプP1、P2、P3およびPxの運転により徐々に水位WLが下降することを想定する。
【0092】
図9Aでは、最初は水位WLが満水水位FHn以上のため、全てのP1、P2およびPxが並列運転されている(S10)。水位WLが満水水位FHn以下まで下降すると、まずは、Pxが解列(停止)され、水位WLがポンプ起動水位FH1以上の場合は、P1およびP2の両方で並列運転される(S11)。更に、ポンプ起動水位FH1以下まで下降するとP1またはP2の何れかが解列され、モータポンプの運転台数はP1またはP2の何れか1台となる(S12)。S12の状態にて長時間運転(例えば、数時間から数日の間の任意の期間)された場合、P1とP2のモータポンプ間にてローテーションを実施する。つまり、前述した運転ポンプのローテーションによって、ポンプ指令部146によって、複数の第2種別のモータポンプP1およびP2から、始動するモータポンプが決定される。これにより、モータポンプP1およびP2の運転頻度、運転期間、並びに/または停止期間の均一化を図ることができ、特定のモータポンプP1および/またはP2が故障する頻度を少なくすることができる。更に水槽20内の水位が減少し、水位WLがポンプ露出水位FP以下まで下降して一定期間以上経過すると、運転中のP1またはP2が停止される。この状態にて水位WLがポンプ起動水位FH1以上に上昇しなければ、前述した制御フローのS340にてPxが強制的に運転される(S13)。更に、水位WLが最終的にポンプ停止水位FL以下まで下降すると、第1種別のモータポンプPxも停止され、「全ポンプ停止状態」に遷移される。
【0093】
図9Bも概ね同様であるが、
図9Aに比べてモータポンプP3およびポンプ追加水位FH2が追加されたことにより、第2種別のモータポンプP1、P2およびP3のローテーションを多様なものとすることができる。即ち、水位WLがポンプ追加水位FH2まで下降すると、第2種別のモータポンプP1、P2、および/またはP3を使用してローテーションが実施される(S22)。特に、ポンプ起動水位FH1以上の場合には、第2種別のモータポンプP1、P2およびP3の内の何れか2つの組み合わせ(P1とP2、P2とP3、またはP3とP1の組み合わせ)を用いてローテーションを実施するのがよい。水位WLがポンプ起動水位FH1より低い場合は、第2種別のモータポンプP1、P2およびP3の内から1つを選択するローテーションを行うのがよい。このように、本実施形態によるポンプ設備10では、検出すべき水位の数(即ち、設置するフロートの数)を、モータポンプの設置台数に応じて決定するのがよい。この点、複数設定されたポンプ起動水位によって、運転させるモータポンプの台数が決定されてもよい。第1種別のモータポンプの台数および第2種別のモータポンプの台数のそれぞれに応じて検出すべき水位の数を決定してもよい。これにより、液体の排水の制御をより柔軟に設定することができる。
【0094】
なお、
図9Aおよび
図9Bにおいて、各ステップへ移行する(例えばS10からS11、S11からS12等)場合には、各々のステップ毎にタイマ部144にて経過期間を監視するようにしてもよい。その場合、各ステップ毎に経過期間の閾値を設け、これらの閾値は、固定値として記憶部160に記憶されてもよいし、設定部162より設定変更可能とし記憶部160に記憶されてもよい。また、第1種別のモータポンプは第2種別のモータポンプより長期間にわたり連続気中運転を行うことが出来る。そのため、水位WLがポンプ露出水位FP以上の時には、第1種別のモータポンプを優先的に解列することにより
、各モータポンプにおける運転期間、停止期間および運転回数の平準化できる。
【0095】
(ポンプ設備の悪臭防止型排水設備への適用)
これより、
図10から
図12を参照して、前述した実施形態によるポンプ設備10を悪臭防止型排水設備に適用した適用例について説明する。本実施形態による悪臭防止型排水設備において、建築物1000の地階部分Bは、公共下水道管80よりも下に位置し、地階部分Bで生じた汚水および雑排水等(以下、「汚水等」という。)は、流入管12を介して更に下に設置された排水槽であるピットPi内に設けられた汚水槽20-1に一時貯留される。その後、汚水等は、モータポンプP1およびPxによって汚水ます91に汲み上げられ、汚水ます93を介して公共下水道管80に排水される。なお、建築物1000の1階以上の部分で生じる汚水等は、通常直接に自然流下で汚水ます91に排水されてもよい。
【0096】
図10の適用例1では、樹脂等により形成される複数のパネル部材によって、ピットPi内に汚水槽20-1を設け、汚水槽20-1の内部に複数のモータポンプP1およびPxを設置する。
図11の適用例2では、ピットPiに設けた汚水槽20-2の内部にモータポンプP1を設置するのに加え、汚水槽の外部に複数のモータポンプPxを設置する。
図12の適用例3では、ピットPiの内部に筒型水槽(バレルBrl-N、バレルBrl-N-1、バレルBrl-2およびバレルBrl-1)を相互に連通させて配置し、バレル内に複数のモータポンプP1およびPxを設置する。また、下流方向に向けて各バレルの底の高さが低くなるように高さを調整して、最下流のバレル内にモータポンプPxを配置して汚水等を案内する。本実施形態による悪臭防止型排水設備1500から1700では、前述した制御装置100を、ピットPiの上層階Bの部分に配置して、オペレータによって操作可能とするのがよい。なお、適用例1から3ではモータポンプを2台(P1お
よびPx)示しているが、これに限定されず3台以上としてもよい。このような悪臭防止
型排水設備1500から1700は、第1種別のモータポンプPxおよび第2種別のモータポンプP1を混在させるものであり、汚水槽20-1および20-2、並びにピットPiに汚水等を長時間残留させることのない、汚水等の効率的な排水を実現することができる。これにより、水槽内の液の腐敗の量を極力少なくし、悪臭の発生を抑制することができる。
【0097】
(適用例1)
図10に示した悪臭防止型排水設備1500は、ピットPi内に設けられた汚水槽20-1と、汚水槽20-1内に設置された複数のモータポンプP1およびPxと、を備える。ピットPiには、ピット開口部(例えば、マンホール)15が形成されており、ピット開口部15にはピット開口部蓋16(例えば、マンホールの蓋)が取り付けられる。複数のモータポンプは、ポンプ設備10が備える第1種別のモータポンプPxと第2種別のモータポンプP1を含む。適用例1の汚水槽20-1は、例えば
図1Aに示した水槽20に相当する。
【0098】
汚水槽20-1は、複数のパネル部材が連結されることにより形成される。全体として略直方体状(箱状)であり、底面20-1a、側面20-1b、および上面20-1cにより画定される内部空間を有している。
図10の例では、一点鎖線によって汚水槽20-1における複数のパネル部材の区切りを示す。汚水槽20-1は任意の枚数のパネル部材で形成されればよい。複数のパネル部材は、例えば樹脂または金属により形成される。また、パネル部材は、複数層の素材により形成されてもよく、例えば繊維強化プラスチック(FRP)、合成樹脂発泡体、および、合成樹脂外装などが積層されて形成されてもよい。
【0099】
汚水槽20-1には、上面20-1cに開口部13が形成されており、開口部13は蓋
14で覆われる。開口部13は、モータポンプの上方に形成され、モータポンプが通過可能な大きさに形成される。具体的には、汚水槽20-1内に2台のモータポンプP1およびPxが設置され、各モータポンプの位置に対応して開口部13および蓋14がそれぞれ設けられてもよい。そうすれば、例えば吊り具を用いてモータポンプP1またはPxを鉛直方向に移動させることにより、汚水槽20-1内にモータポンプP1またはPxを設置したり汚水槽20-1から取り出したりすることができる。つまり、汚水槽20-1の汚水等を抜くことなく、モータポンプP1またはPxの交換およびメンテナンス等を実施することができる。流入管12は、地階部分Bからピット開口部15を通じ、また汚水槽20-1の開口部13を通じて汚水槽20-1内部に配管される。汚水槽20-1内では2台のモータポンプP1およびPxの吐出口のそれぞれに流出管21が接続され、汚水槽20-1の外、且つピットPi内で統合されて汚水ます91側に接続される。
【0100】
(適用例2)
図11に示した悪臭防止型排水設備1600は、ピットPi内に設けられた汚水槽20-2と、汚水槽20-2内に設置された第2種別のモータポンプP1と、汚水槽20-2外に設けられ、配管23を通じて汚水槽20-2の流出口11に接続される第1種別のモータポンプPxと、を備える。適用例2の汚水槽20-2は、例えば
図1Aに示した水槽20に相当する。汚水槽20-2には、上面に開口部13が形成されており、開口部13は蓋14で覆われている。流入管12は、地階部分Bから、ピット開口部15を通じ、また、汚水槽20-2の開口部13を通じて汚水槽20-2内部に配管される。流入管12を通じて汚水槽20-2に汚水等が流入される。汚水槽20-2の底面には凹部が設けられ、汚水等は凹部に案内される。凹部の側面の底面近傍に流出口11が設けられ、流出口11を通じて汚水槽20-2の外部の吸込配管23に汚水等を流出させてもよい。モータポンプPxが運転中に空気を吸うことを防止するために、吸込配管23の下端の高さは流出口11の下端の高さ以下なるように設計されるとよい。
【0101】
2台のモータポンプP1およびPxの吐出口のそれぞれに流出管21が接続される。流出管21は統合され、ピットPiの蓋16を貫通して汚水ます91に接続される。このように、汚水槽20-2に流入された汚水等は、汚水槽20-2内に設置されたモータポンプP1から排水されるのみならず、汚水槽20-2外に設けられたモータポンプPxによっても効果的に排水される。汚水槽20-2外に設けられたモータポンプPxは、第1種別のモータポンプとするとよい。つまり、モータポンプPxは汚水槽20-2外で定常的に連続気中運転を行うと共に、汚水槽20-2が異常増水して、汚水等が汚水槽20-2から被水したような場合も、水中ポンプとして運転が可能な第1種別のモータポンプPxであれば問題なく運転することができる。
【0102】
このように、悪臭防止型排水設備1600は、第1種別のモータポンプPxを汚水槽20-2外に設けることにより、第2種別のモータポンプP1より頻繁に運転され、且つ構造が複雑な第1種別のモータポンプPxのメンテナンスが汚水槽20-2外にて容易に行える、というメリットがある。また、汚水槽20-2内の水位がポンプ露出水位FP以上であれば第2種別のモータポンプP1のモータ部4を汚水槽20-2内の汚水等にて冷却しながらポンプ運転することができるため、第2種別のモータポンプを効果的に運転することができる悪臭防止型排水設備1600を実現することができる。これにより、汚水槽20-2内の汚水等の腐敗の量を極力少なくし、悪臭の発生を抑制することができる。このような悪臭防止型排水設備1600では、更に、前述したように、汚水槽20-2内の水位がポンプ露出水位FPよりも低い状態が所定の期間経過した時点において、第2種別のモータポンプP1は停止状態とするのがよい。そして、第2種別のモータポンプP1が停止中の間は連続気中運転が可能な第1種別のモータポンプPxを運転させるによって、汚水槽20-2に液体を長時間残留させることのないようにするのがよい。このように液体の排水を有効に制御することにより、汚水槽20-2内の液の腐敗の量を極力少なくし
、悪臭の発生を抑制することができる。
【0103】
(適用例3)
図12に示した悪臭防止型排水設備1700は、ピットPi内に設けられ、地階部分Bからの汚水等を一時貯留する複数基のバレルBrl-1からBrl-Nと、バレル内に収容された複数のモータポンプP1およびPxと、を備える。適用例3では、複数基の連結された各バレル(Brl-1、Brl-2、Brl-N-1およびBrl-N)が例えば
図1Aに示した水槽20に相当する。バレルBrl-1からBrl-Nは、連通管30-1および30-N-1によって連結されている。バレルBrl-1に貯留した汚水等を外部に排水するために、当該バレル内部に第1種別のモータポンプPxが設置される。また、バレルBrl-2に貯留した汚水等を外部に排水するために、第2種別のモータポンプP1が設置される。これら以外のバレルにも同様にモータポンプが設置されてもよい。また、1つのバレルに複数のモータポンプが配置されてもよい。モータポンプPxおよびP1が設置されるバレルBrl-1およびBrl-2のそれぞれには、水位検出器40が設置されて、それぞれバレル内部の水位を検出する。また、バレルBrl-1からBrl-Nの何れか1つに水位検出器40が設置され、バレル内部の水位を検出してもよい。なお、複数のバレルのうち最下流のバレル(
図12ではBrl―1)に第1種別のモータポンプPxが設置されるとよい。
【0104】
流入管12は、地階部分Bからピット開口部15aを通じてピットPi内部に配管される。汚水等は最初にバレルBrl-N内に流入するよう配管される。バレルBrl-N内に流入した汚水等は、下流方向のバレルに順次流出する。バレルBrl-1およびBrl-2内の汚水等は、モータポンプPxおよびP1の吐出口に接続される流出管21により、バレルBrl-1およびBrl-2から排水され、ピット開口部15bを通じて汚水ます91へ排水される。なお、
図12では、ピット開口部15aおよび15bを別々に設けているが、ピット開口部は1つでも3つ以上でもよい。
【0105】
バレルBrl-2からBrl-Nを台の上に載せることによって、バレルBrl-1の底面の高さを、他のバレルよりもよりも低くなるように調整するとよい。これにより、汚水等を効果的にバレルBrl-1に案内することができる。バレル底面の高さを下流側に向かう程低くなるように調整するとよい。本適用例では、バレル底面が一番低く配置されるバレルBrl-1の底面に第1種別のモータポンプPxを設置して連続気中運転をさせ、また、バレルBrl-2の底面には第2種別のモータポンプP1を設置する。更には、その他のバレルに第1種別または第2種別のモータポンプを追加で設置してもよい。
【0106】
また、
図12の適用例において、第1種別のモータポンプPxをバレルBrl-1の外に設置してもよい。具体的には、バレルBrl-1の底面Sを含む底面部に流出口(不図示)を設け、ピットPi内であり且つバレルBrl-1外に設置した第1種別のモータポンプPxの流入口と配管にて接続する。その場合、第2種別のモータポンプP1はバレルBrl-1内に設置するとよい。
【0107】
本実施形態によるポンプ設備10に関して説明したモータポンプの動作は、建築物1000の地下に設けた悪臭防止型排水設備1500、1600および1700に適用可能である。すなわち、悪臭防止型排水設備1500、1600および1700においても、制御装置100を適用し、且つ
図5、
図6、
図7および
図8にて説明したモータポンプP1、P2およびPxの制御を実現することにより、ポンプ設備10に関して説明したのと同様の効果を得ることができる。また、悪臭防止型排水設備1500、1600および1700において、モータポンプの台数は3台以上とし、第1種別のモータポンプを1台、残りのモータポンプを第2種別のモータポンプとしてもよい。この構成により、安価で効果的に排水できる悪臭防止型排水設備を実現することができる。但し、第1種別のモータポ
ンプを複数台としてもよい。
【0108】
更には、本実施形態によるポンプ設備10は、清水、中水、雨水や汚水のような各種液の貯留および排水用途の広範な排水設備に適用可能である。また、本実施形態によるポンプ設備10は、建物の地下に設けた悪臭防止型排水設備1500、1600および1700のみならず、地上に設けた各種ポンプ設備にも適用可能である。そして、本実施形態によるモータポンプの動作のための制御装置100はこのような様々なポンプ設備や悪臭防止型排水設備の運転制御装置として利用可能である。
【0109】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、前述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0110】
P1、P2、Px…モータポンプ
2…ポンプケーシング部
4…モータ部
10、10a、10b…ポンプ設備
12…流入管
13…開口部
14…蓋
15、15a、15b…ピット開口部
16、16a、16b…ピット開口部蓋
20、20’…水槽
20b、20’b…底面
20s、20’s…側面
20u、20’u…上面
20-1、20-2…汚水槽
20-1a…汚水槽20-1の底面
20-1b…汚水槽20-1の側面
20-1c…汚水槽20-1の上面
21…流出管
40…水位検出器
40a、40b、40c、40n…フロート
41…信号ケーブル
50…電源ケーブル
80…公共下水道管
91、93…汚水ます
100…制御装置
120…検出部
122…水位検出部
124…ポンプ状態検出部
140…処理部
142、144…タイマ部
146…ポンプ指令部
160…記憶部
162…設定部
164…運転状態管理テーブル
1000…建物
1500、1600、1700…悪臭防止型排水設備
Pi…ピット
B…地階部分
Brl-1、Brl-2、Brl-N-1、Brl-N…バレル(筒型水槽)
30-1、30-N…連通管
221…羽根車
222a…吸込口
222b…吐出口
223…ポンプブラケット
227…潤滑油
241…主軸
242…ロータ
243…ステータ
244…モータフレーム
245…駆動電源用ケーブル
246…軸受
250…冷却フィン
260、270…冷却ジャケット
251…冷却棒
AL…軸線