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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 201
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2017236477
(22)【出願日】2017-12-08
(65)【公開番号】P2019104124
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】依田 和久
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-151585(JP,A)
【文献】特開2012-045875(JP,A)
【文献】特開2008-100405(JP,A)
【文献】特開2005-231283(JP,A)
【文献】特開2013-176898(JP,A)
【文献】特開2002-144592(JP,A)
【文献】特開平11-254693(JP,A)
【文献】特開2016-172373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルをノズル面に有する液体吐出ヘッドと、
洗浄液を収容し、前記ノズル面に対して洗浄液を付与する洗浄液収容部材と、を備え、
前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を前記ノズル面に接触させるときに該ノズル面のノズルに該洗浄液が接触するのを防止する接触防止手段を有し、
前記接触防止手段は、前記洗浄液収容部材の内部に配置され、前記ノズル面上のノズルをキャッピングするキャップ部材であることを特徴とする液体を吐出する装置
【請求項2】
項1に記載の液体を吐出する装置において、
前記キャップ部材は、前記洗浄液が前記ノズル面に接触する前に、該ノズル面のノズルをキャッピングすることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項3】
請求項1は2に記載の液体を吐出する装置において、
前記キャップ部材は、前記洗浄液が前記ノズル面から離れた後に、該ノズル面のノズルをキャッピングした状態が解除されることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項4】
請求項1至3のいずれか1項に記載の液体を吐出する装置において、
前記キャップ部材は、前記洗浄液収容部材に対して相対移動可能に構成されていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体を吐出する装置において、
前記キャップ部材は、前記ノズル面のノズルをキャッピングするキャップ部と、前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を攪拌する攪拌部とを備えていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体を吐出する装置において、
前記攪拌部は、前記キャップ部の外壁から、前記キャップ部材と前記洗浄液収容部材との相対移動方向に対して交差する方向へ突出する突出部で構成されていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項7】
請求項5は6に記載の液体を吐出する装置において、
前記攪拌部は、プロペラ状部材であることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項8】
請求項4至7のいずれか1項に記載の液体を吐出する装置において、
前記洗浄液が前記ノズル面から離れているデキャップ時間に応じて、前記キャップ部材と前記洗浄液収容部材との相対移動回数を変更することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項9】
請求項1至8のいずれか1項に記載の液体を吐出する装置において、
前記キャップ部材は、前記洗浄液が前記ノズル面から離れているとき、該ノズル面に接触する接触箇所が該洗浄液収容部材の内部の洗浄液の液面よりも上側に位置するように構成されていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の液体を吐出する装置において、
前記洗浄液収容部材の内部へ洗浄液を供給する供給手段と、
前記洗浄液収容部材の内部から洗浄液を排出する排出手段とを有し、
所定の洗浄液入替条件を満たしたら、前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を前記排出手段により排出して新しい洗浄液を前記供給手段により供給する洗浄液入れ替え動作を行うことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項11】
液体を吐出するノズルをノズル面に有する液体吐出ヘッドと、
洗浄液を収容し、前記ノズル面に対して洗浄液を付与する洗浄液収容部材と、を備え、
前記洗浄液収容部材の内部へ洗浄液を供給する供給手段と、
前記洗浄液収容部材の内部から洗浄液を排出する排出手段と、
前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を前記ノズル面に接触させるときに該ノズル面のノズルに該洗浄液が接触するのを防止する接触防止手段とを有し、
所定の洗浄液入替条件を満たしたら、前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を前記排出手段により排出して新しい洗浄液を前記供給手段により供給する洗浄液入れ替え動作を行うことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の液体を吐出する装置において、
前記所定の洗浄液入替条件は、前記洗浄液に含まれる前記液体の濃度が規定濃度以上であるという条件を含み、
前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を前記ノズル面に接触させた後に前記条件を満たすときには、前記洗浄液入れ替え動作を行った後に、再度、前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を前記ノズル面に接触させることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の液体を吐出する装置において、
前記洗浄液収容部材は、その内壁面が洗浄液の中から洗浄液の液面へ向かって先細るように形成されていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項14】
液体を吐出するノズルをノズル面に有する液体吐出ヘッドと、
洗浄液を収容し、前記ノズル面に対して洗浄液を付与する洗浄液収容部材と、を備え、
前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を前記ノズル面に接触させるときに該ノズル面のノズルに該洗浄液が接触するのを防止する接触防止手段を有し、
前記洗浄液収容部材は、その内壁面が洗浄液の中から洗浄液の液面へ向かって先細るように形成されていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の液体を吐出する装置において、
前記洗浄液が前記ノズル面から離れている時間に応じて、前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を該ノズル面に接触させる時間を変更することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項16】
液体を吐出するノズルをノズル面に有する液体吐出ヘッドと、
洗浄液を収容し、前記ノズル面に対して洗浄液を付与する洗浄液収容部材と、を備え、
前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を前記ノズル面に接触させるときに該ノズル面のノズルに該洗浄液が接触するのを防止する接触防止手段を有し、
前記洗浄液が前記ノズル面から離れている時間に応じて、前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を該ノズル面に接触させる時間を変更することを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非液体吐出時に、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドのノズル面に洗浄液収容部材を被せて、該洗浄液収容部材の内部の洗浄液を該ノズル面に接触させる液体を吐出する装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、記録ヘッドのノズル面にヘッド保管容器(洗浄液収容部材)を被せ、ヘッド保管容器内を洗浄液で満たし、ノズル面全体を洗浄液に浸漬させた状態で保管するインクジェット記録装置(液体を吐出する装置)が開示されている。この装置では、ノズル面に付着したインクを洗浄液で洗浄する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、洗浄液収容部材の内部の洗浄液をノズル面に接触させる従来の装置では、ノズル面に形成されているノズルの内部に洗浄液が進入する。そのため、ノズル内部の液体と洗浄液とが混ざり合い、その後にノズルから吐出される液体の状態(粘度や固形分濃度など)が変化してしまう等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、液体を吐出するノズルをノズル面に有する液体吐出ヘッドと、洗浄液を収容し、前記ノズル面に対して洗浄液を付与する洗浄液収容部材と、を備え、前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を前記ノズル面に接触させるときに該ノズル面のノズルに該洗浄液が接触するのを防止する接触防止手段を有し、前記接触防止手段は、前記洗浄液収容部材の内部に配置され、前記ノズル面上のノズルをキャッピングするキャップ部材であることを特徴とする液体を吐出する装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ノズル内部の液体と洗浄液とが混ざり合うことに起因した問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を側面から見た説明図。
図2】同インクジェット記録装置の要部を上方から見た説明図。
図3】同インクジェット記録装置に設けられる維持回復機構の一部を示す斜視図。
図4】同維持回復機構の一部を示す平面図。
図5】同維持回復機構の駆動機構の概略を示す模式図。
図6】同維持回復機構における洗浄液の供給排出機構の概略を示す模式図。
図7】同維持回復機構におけるワイパブレードの昇降機構(上下動機構)を示す説明図。
図8】本実施形態のクリーニングシーケンスの流れを示すフローチャート。
図9】ワイピング前における記録ヘッドとワイパブレードとの位置関係を示す説明図。
図10】ワイピング中における記録ヘッドとワイパブレードとの位置関係を示す説明図。
図11】ワイピングの終了間際における記録ヘッドとワイパブレードとの位置関係を示す説明図。
図12】ワイピング終了時における記録ヘッドとワイパブレードとの位置関係を示す説明図。
図13】第一キャップの昇降機構を示す説明図。
図14】(a)は、キャリッジがヘッドキャップ位置に移動してキャッピングを開始する直前の状態における記録ヘッドと第一キャップ及び第二キャップとの位置関係を示す説明図。(b)は第一キャップがキャッピングされ、かつ、第二キャップがノズル面に被せられていない状態における記録ヘッドと第一キャップ及び第二キャップとの位置関係を示す説明図。(c)は、第一キャップのキャッピング後に第二キャップがノズル面に被せられていない状態における記録ヘッドと第一キャップ及び第二キャップとの位置関係を示す説明図。
図15】第二キャップに保持される第一キャップの数を説明するための説明図。
図16】(a)及び(b)は、第一キャップによって洗浄液を攪拌する構成及び動作を示す説明図。
図17】第二キャップ内の洗浄液の攪拌能力を高めるための第一キャップの形状の一例を示す説明図。
図18】第二キャップ内の洗浄液の攪拌能力を高めるための第一キャップの形状の他の例を示す説明図。
図19】第二キャップの上昇又は下降の途中の状態を示す説明図。
図20】キャッピングシーケンスの流れを示すフローチャート。
図21】液体吐出ユニットの一例を示す要部平面説明図。
図22】液体吐出ユニットの他の例を示す要部平面説明図。
図23】液体吐出ユニットの更に他の例を示す正面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る液体を吐出する装置として、画像形成装置であるシリアル型インクジェット記録装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を側面から見た説明図である。
図2は、同インクジェット記録装置の要部を上方から見た説明図である。
【0009】
本実施形態のインクジェット記録装置1は、装置本体の左右の側板21A,21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31,32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持している。キャリッジ33は、主走査モータによって駆動されるタイミングベルトを介して、ガイドロッド31,32に沿って図2中矢印で示す方向(キャリッジ主走査方向)に移動する。
【0010】
キャリッジ33には、液体であるインクを吐出するための液体吐出ヘッドとして、2つの記録ヘッド34a,34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)が搭載されている。記録ヘッド34は、主走査方向と直交する副走査方向に複数のノズルを配列した2つのノズル列を備えるノズル面が下方に向くように、すなわち、ノズルからのインク吐出方向が下方を向くように、キャリッジ33に装着されている。
【0011】
本明細書において、「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0012】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34の各ノズル列に対応した各色のインクを供給するためのサブタンク35a,35b(区別しないときは「サブタンク35」という。)を搭載している。サブタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジから、供給ポンプユニットによって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0013】
図2に示すように、キャリッジ33の移動方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81が配置されている。維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面のノズル列を覆う接触防止手段としてのキャップ部材である第一キャップ82a,82b(区別しないときは「第一キャップ82」という。)、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材であるワイパブレード83、増粘したインクを排出するための空吐出時にインクを受ける空吐出受け部84、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などが備わっている。
【0014】
また、後述する図3にも示すように、維持回復機構81の下方には、維持回復動作によって生じる廃液(空吐出されたインク等)を収容するための交換不能な廃液タンク100を備えている。また、維持回復機構81の側方には、交換可能な廃液タンク101を備えている。
【0015】
記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0016】
また、図2に示すように、キャリッジ33の移動方向他方側の非印字領域には、画像形成動作中などに行われる空吐出時にインクを受ける空吐出受け部88が配置されている。この空吐出受け部88には、記録ヘッド34のノズル列に対応した開口部89などが備わっている。
【0017】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置における維持回復機構81について、図3ないし図5を参照して説明する。
図3は、維持回復機構81の一部を示す斜視図である。図4は、同維持回復機構81の一部を示す平面図である。図5は、同維持回復機構81の駆動機構の概略を示す模式図である。図6は、同維持回復機構81における洗浄液の供給排出機構の概略を示す模式図である。
【0018】
維持回復機構81は、フレーム211に対し、ノズル面に対して洗浄液を付与する洗浄液収容部材としての第二キャップ212、ワイパブレード83、及び、ワイパ清掃手段であるワイパクリーナ86が、それぞれ昇降可能(上下動可能)に保持されている。第一キャップ82a,82bは、第二キャップ212に保持されており、第二キャップ212と一緒に昇降可能(上下動可能)な構成となっている。
【0019】
ワイパブレード83と第一キャップ82aとの間には、空吐出受け部84が配置されており、この空吐出受け部84のワイパブレード83側上端部は、ワイパブレード83に付着したインクを掻き落して除去する第2ワイパ清掃手段としてのワイパクリーナ部85を構成する。ワイパブレード83のクリーニングを行うときには、ワイパクリーナ86によりワイパブレード83をワイパクリーナ部85へ押し付けた状態で、ワイパブレード83を下降させる。これにより、ワイパブレード83に付着したインクが、空吐出受け部84のワイパクリーナ部85で掻き落とされ、空吐出受け部84に回収される。
【0020】
また、印字領域に近い側の第一キャップ82aには、可撓性チューブ219を介して吸引手段であるチュービングポンプ(吸引ポンプ)220が接続され、第一キャップ82aは吸引と保湿用(以下、単に「吸引用」という。)のキャップとして用いられる。一方、印字領域から遠い側の第一キャップ82bには、吸引ポンプ220が接続されておらず、第一キャップ82bは単なる保湿用キャップとして用いられる。したがって、記録ヘッド34の吸引動作を行う場合、その吸引動作の対象となる記録ヘッド34を、吸引用の第一キャップ82aによってキャッピング可能な位置に選択的に移動させ、ヘッド吸引動作を行う。
【0021】
また、これらの第一キャップ82a,82b及びワイパブレード83などの下方には、フレーム211に回転自在に支持されたカム軸221が配置されている。このカム軸221には、第二キャップ212を昇降させるためのキャップカム222と、ワイパブレード83を昇降させるためのワイパカム224と、空吐出受け部84内で空吐出された液滴を受ける回転体としてのコロ226と、ワイパクリーナ86を揺動させるためのクリーナカム228と、キャリッジロック87を昇降させるためのキャリッジロックカム229がそれぞれ設けられている。
【0022】
モータ231のモータ軸231aには、モータギヤ232が設けられ、吸引ポンプ220のポンプ軸220aに設けられたポンプギヤ233がモータギヤ232に噛み合って配置されている。また、ポンプギヤ233と同軸で一体に構成された第一中間ギヤ234には、第二中間ギヤ235が噛み合って配置され、第二中間ギヤ235には、一方向クラッチ237付きの第三中間ギヤ236が噛み合って配置されている。この第三中間ギヤ236と同軸に配置されて一体的に軸回転する第四中間ギヤ238には、第五中間ギヤ239が噛み合って配置され、この第五中間ギヤ239には、上述したカム軸221に固定されたカムギヤ240が噛み合っている。クラッチ237付きの第三中間ギヤ236及び第四中間ギヤ238の回転軸である中間軸241は、フレーム211に回転可能に支持されている。
【0023】
本実施形態の維持回復機構81においては、記録ヘッド34のノズル34Aを形成した面(ノズル面)に付着したインクや不純物を取り除く場合、まず、モータ231の駆動により、ワイパカム224を介してワイパブレード83を上昇させる。この状態で、印字領域にあるキャリッジ33を維持回復機構81との対向位置(非印字領域)に向けて移動させることにより、ワイパブレード83によって記録ヘッド34のノズル面をワイピングし、付着インクや不純物などを払拭する。
【0024】
また、記録ヘッド34のノズル34Aを外気に露呈した状態のまま放置すると、ノズル内部のインクが乾燥して増粘し、固着してしまって、インク吐出性能が低下してしまう。これを防ぐために、記録ヘッド34のノズル面におけるノズル34Aを覆うように第一キャップ82でキャッピングする。このときも、モータ231を駆動し、キャップカム222を介して第二キャップ212を上昇させ、これに伴って上昇する第一キャップ82を、記録ヘッド34のノズル面に接触させ、第一キャップ82でノズル面上のノズル34Aを覆うようにキャッピングする。
【0025】
ところで、ワイピングのみではクリーニングしきれずに拭き残しが生じてノズル面にインク等が残存する場合がある。このようにインク等がノズル面に残存すると、インク等がノズル面に固着してしまう。インクが固着している状態のノズル面を再びワイパブレード83によりワイピングすると、固着インクがノズル面から剥がれ、これがノズル34Aに押し込まれて吐出不良を引き起こすおそれがある。
【0026】
また、ワイピングの拭き終わり箇所(ノズル面端部)には、インクが溜まりやすく、徐々に固着インクが堆積していく。このような堆積によってノズル面から突出した固着インクが液体吐出対象である記録紙等に接触すると、記録品質(印刷品質)を低下させることになる。
【0027】
更に、クリーニング対象である記録ヘッド34のワイピングによって、これに隣接する記録ヘッド34等にインクを飛ばしてしまうと、その記録ヘッド34からインクが垂れ落ちて、液体吐出対象である記録紙等を汚してしまい、あるいは、液体吐出対象が搬送される搬送路をインクで汚してこれが後に搬送されてくる記録紙等を汚してしまい、記録品質(印刷品質)を低下させることになる。また、隣接する記録ヘッド34等に飛ばされたインクが、当該記録ヘッド34のワイピングによるインクの堆積を促進させるおそれもある。
【0028】
そこで、本実施形態では、クリーニングシーケンスにおいて、記録ヘッド34のノズル面に、第二キャップ212の内部に収容された洗浄液を接触させることにより、ワイピングのみではクリーニングしきれずにノズル面に残存するインク等を除去する。
【0029】
図6に示すように、第二キャップ212には、洗浄液供給チューブ214を介して、供給手段としてのチュービングポンプ(洗浄液供給ポンプ)213が接続されている。洗浄液供給ポンプ213は、洗浄液貯蔵タンク215から洗浄液供給チューブ214を通じて第二キャップ212の内部へ洗浄液216を供給する。また、第二キャップ212には、洗浄液廃液チューブ217を介して排出手段としてのチュービングポンプ(廃液用ポンプ)218が接続されている。廃液用ポンプ218は、第二キャップ212の内部の洗浄液216を、洗浄液廃液チューブ217を通じて廃液タンク101へ排出する。
【0030】
また、洗浄液供給ポンプ213及び廃液用ポンプ218は、制御手段としての制御部230によって制御される。詳しくは、後述するように、所定の洗浄液入替条件が満たされたら、制御部230は、廃液用ポンプ218を制御して第二キャップ212の内部の洗浄液216を排出し、洗浄液供給ポンプ213を制御して第二キャップ212の内部へ新しい洗浄液216を供給する洗浄液入れ替え動作を行う。所定の洗浄液入替条件としては、例えば、第二キャップ212の内部の洗浄液216におけるインク分の濃度が規定濃度(例えば50%)以上になったという条件、キャッピング動作の回数が規定回数(例えば20回)以上になったという条件などが挙げられる。
【0031】
ここで、上述したように第二キャップ212の内部に収容された洗浄液216をノズル面に接触させる場合、ノズル面に形成されているノズル34Aも洗浄液216が接触してしまうと、ノズル34Aの内部に洗浄液216が進入してしまう。この場合、ノズル内部のインクと洗浄液とが混ざり合い、その後にノズル34Aから吐出されるインクの状態(粘度や固形分濃度など)が変化してしまい、適正な吐出性能を発揮できなくなるなどの問題を引き起こす。また、この問題を解消するために、洗浄液216と混ざり合ったインク部分をノズル34Aから排出(空吐出)してから、記録のためのインク吐出動作(本動作)を行うと、記録に用いられないインクの消費量が多くなるという新たな問題が生じる。
【0032】
本実施形態においては、第二キャップ212の内部の洗浄液216をノズル面に接触させるときにノズル面のノズル34Aに洗浄液216が接触するのを防止する接触防止手段を設けている。このような接触防止手段を設けることで、第二キャップ212の内部の洗浄液216をノズル面に接触させるときに、接触防止手段によってノズル面のノズル34Aに洗浄液216が接触することが防止され、ノズル内部のインクと洗浄液216とが混ざり合うことがない。したがって、ノズル34Aから吐出されるインクの状態(粘度や固形分濃度など)が洗浄液216によって変化してしまうという問題を解消することができる。また、ノズル34Aからインクを吐出する本動作の前に、洗浄液216と混ざり合ったインク部分をノズル34Aから排出する動作(空吐出動作)が不要となるので、インクの消費量も抑制できる。
【0033】
接触防止手段としては、第二キャップ212の内部の洗浄液216をノズル面に接触させるときにノズル面のノズル34Aに洗浄液216が接触することを防止できるものであれば、特に制限はない。本実施形態は、接触防止手段として、第二キャップ212の内部に配置され、ノズル面上のノズル34Aを覆うキャップ部材である第一キャップ82を用いる例である。
【0034】
次に、ワイパブレード83の昇降機構(上下動機構)について、図7を参照して説明する。
図7は、ワイパブレードの昇降機構(上下動機構)を示す説明図である。
ワイパブレード83は、ワイパホルダ341に取り付けられている。このワイパホルダ341の副走査方向両端部には、ガイドピン342,343が設けられ、このガイドピン342,343が、ガイド部材345(これはフレーム211自体でも良い。)に形成したガイド溝346に嵌め合わされることで、ガイド溝346に沿ってワイパホルダ341に取り付けられたワイパブレード83が上下動可能に構成されている。ガイド溝346の上端部には、ガイドピン342の上昇を規制する規制部材であるストッパ347が設けられ、ワイパブレード83の上昇位置が規制される。
【0035】
ワイパホルダ341の両脚部341a,241aの間には、可撓性部材348が取り付けられている。この可撓性部材348には、カムピン349を設けた舌片348aが形成されており、カムピン349がワイパカム224のカム溝に移動自在に嵌合する。
【0036】
次に、本実施形態における維持回復機構81を用いたヘッドメンテナンスであるクリーニングシーケンスについて説明する。
図8は、本実施形態のクリーニングシーケンスの流れを示すフローチャートである。
クリーニングが開始されると、まず、インクジェット記録装置1の待機状態、すなわち、ノズル面が第一キャップ82によってキャッピングされたキャッピング状態から、第一キャップ82をノズル面から外した状態にする(デキャップする)(S1)。続いて、クリーニング対象である記録ヘッド34がメンテナンス位置(吸引用第一キャップ82aに対向する位置)に移動するように、キャリッジ33を主走査方向へ移動させる(S2)。
【0037】
次に、モータ231を駆動し、キャップカム222を介して第二キャップ212を上昇させる。これにより、第二キャップ212に伴って上昇する第一キャップ82がまず記録ヘッド34のノズル面に接触し、第一キャップ82でノズル面上のノズル34Aを覆うようにキャッピングされる(S3)。
【0038】
また、第二キャップ212が更に上昇し、第二キャップ212の上部がキャリッジ33の下面に当接するまで上昇することで、第二キャップ212が当該記録ヘッド34のノズル面の全体を覆うように被せられる。第二キャップ212の内部には洗浄液216が充填されているため、当該記録ヘッド34のノズル面に洗浄液216が接触する。このとき、吸引用第一キャップ82aがノズル面上におけるノズル近傍部分のみを覆うようにノズル34Aをキャッピングしている。そのため、洗浄液216がノズル34Aに接触することなく、ノズル近傍部分以外のノズル面部分に付着しているインク等が洗浄液216によってクリーニングされる(S4)。
【0039】
本実施形態では、第二キャップ212がノズル面に被せられたとき、記録ヘッド34の側面が第二キャップ212の内部にまで入り込むように位置する。よって、記録ヘッド34の側面も第二キャップ212の内部の洗浄液216に接触する。したがって、本実施形態においては、記録ヘッド34の側面に付着するインクも、洗浄液216によってクリーニングされる。
【0040】
一方、ノズル内の異物や増粘インク、気泡等を取り除くため、維持回復機構81の吸引ポンプ220を駆動し、クリーニング対象である記録ヘッド34のノズルから一定量のインクを吸引するヘッド吸引動作を行う(S5)。ヘッド吸引動作後は、ノズル面に不要なインクが付着していたりノズルのメニスカスが壊れていたりするので、第一キャップ82をデキャップした後(S6)、キャリッジ33を移動させて、ワイパブレード83によりノズル面をワイピングし(S7)、インクを拭き取るとともに、ノズルのメニスカスを形成する。ここで、ワイピングの終了間際には、維持回復機構81のワイパカム224を回転させ、ワイパブレード83を下降させる。また、これと同時に回転するクリーナカム228により、ワイパクリーナ86がワイパブレード83をワイパクリーナ部85へ押し付けた状態にする。これにより、ワイパブレード83に付着したインクが、空吐出受け部84のワイパクリーナ部85で掻き落とされ、空吐出受け部84に回収される。
【0041】
続いて、キャリッジ33を移動してクリーニング対象である記録ヘッド34を印字領域側へ退避させた後(S8)、維持回復機構81の吸引ポンプ220を再度稼働させ(S9)、吸引用第一キャップ82aの内部に残存するインク等を吸い取る。
【0042】
また、互いに異なる色用のノズル列をもつ記録ヘッド34の場合、ワイパブレード83に付着した他色のインクがワイピング時にノズル内に混入することになる。そのため、クリーニング対象である記録ヘッド34を再びメンテナンス位置(吸引用第一キャップ82aに対向する位置)に移動させ(S10)、記録ヘッド34を駆動させてノズル内のインクを吸引用第一キャップ82aへ吐出する空吐出を行う(S11)。
【0043】
その後、キャリッジ33を移動してクリーニング対象である記録ヘッド34を印字領域側へ退避させた後(S12)、維持回復機構81の吸引ポンプ220を再度稼働させ(S13)、吸引用第一キャップ82aの内部に空吐出されたインク等を吸い取る。そして、第一キャップ82によってキャッピングし(S14)、クリーニングを終了する。
【0044】
なお、印字中に出るミストや紙粉がノズルに入り込むことで、インクの不吐出(印字抜け)等の吐出不良が発生することを抑制するために、印字動作中にクリーニングシーケンスを自動的に発動させる自動クリーニングがある。自動クリーニングは、例えば、クリーニング終了後から起算して、ノズルから吐出されたインク量(インク消費量)をソフトカウントによって累積カウントし、そのカウント値が規定の閾値を超えた場合(主にミストによる印字抜けを防ぐ目的)、あるいは、印字枚数の累計が規定の閾値を超えた場合(紙粉による印字抜けを防ぐ目的)などに発動する。
【0045】
次に、クリーニング中に行われるワイピングの動作について、図9乃至図12を参照して説明する。
図9は、ワイピング前における記録ヘッドとワイパブレードとの位置関係を示す説明図である。
図10は、ワイピング中における記録ヘッドとワイパブレードとの位置関係を示す説明図である。
図11は、ワイピングの終了間際における記録ヘッドとワイパブレードとの位置関係を示す説明図である。
図12は、ワイピング終了時における記録ヘッドとワイパブレードとの位置関係を示す説明図である。
【0046】
ワイピングは、図9に示すように、予め、維持回復機構81のモータ231の駆動により、ワイパカム224を介してワイパブレード83を上昇させた位置に待機させたうえで、図10及び図11に示すように、キャリッジ33を移動させてワイパブレード83によりノズル面を払拭する。このとき、ワイパブレード83のエッジ部がノズル面に密着して摺動することにより、ヘッド吸引動作後にノズル面上に付着しているインク等を一方へ寄せていく。ワイピング終了時には、図12に示すように、ノズル面上のインク等が付着したワイパブレード83を下降させ、ノズル面からインク等を除去する。
【0047】
次に、第一キャップ82の昇降機構について、図13を参照して説明する。
図13は、第一キャップ82の昇降機構を示す説明図である。
第一キャップ82は、第二キャップ212に対して昇降自在(上下動自在)に保持されており、第一キャップ82と第二キャップ212との間には、第二キャップ212に対して第一キャップ82を上方(ノズル面側)へ付勢する付勢手段としてのスプリング301が介装されている。
【0048】
第二キャップ212は、副走査方向(図13中左右方向)である前後方向(記録ヘッド34のノズル列のノズル並び方向)に移動可能なようにスライダ302に保持されている。スライダ302は、前後端に設けられたガイドピン304,305がフレーム211に形成したガイド溝306に摺動可能に嵌め合わさることで、スライダ302に連結されるキャップカム222により、スライダ302、第二キャップ212及び第一キャップ82が一体的に上下動する構成となっている。
【0049】
第一キャップ82の副走査方向両端部には、ガイドピン310,311が設けられ、このガイドピン310,311は、第二キャップ212に形成された凹部あるいは溝などの係合穴312,313に係合している。また、第一キャップ82の底面には、ガイド軸315が設けられ、このガイド軸315は第二キャップ212のガイド孔に上下動可能に挿通されている。これにより、第一キャップ82は、第二キャップ212に対して上下動可能に保持されている。第一キャップ82と第二キャップ212との間に介装したスプリング301は、第一キャップ82を上側(キャッピング時に第一キャップ82をノズル面へ押圧する側)に付勢している。
【0050】
吸引用第一キャップ82aに接続される可撓性チューブ219は、スライダ302及び第二キャップ212の挿通孔を通り、吸引用第一キャップ82aの短手方向(主走査方向)に対してはキャップ中央位置であって、吸引用第一キャップ82aの長手方向(副走査方向)に対しては中央位置からずれた箇所に、吸引用第一キャップ82aの下方から接続されている。
【0051】
次に、本実施形態における洗浄液216によるクリーニング動作について説明する。
図14は、(a)はキャリッジ33がヘッドキャップ位置に移動してキャッピングを開始する直前の状態における記録ヘッド34と第一キャップ82及び第二キャップ212との位置関係を示す説明図であり、(b)は第一キャップ82がキャッピングされ、かつ、第二キャップ212がノズル面に被せられていない状態における記録ヘッド34と第一キャップ82及び第二キャップ212との位置関係を示す説明図であり、(c)は第一キャップ82のキャッピング後に第二キャップ212がノズル面に被せられていない状態における記録ヘッド34と第一キャップ82及び第二キャップ212との位置関係を示す説明図である。
【0052】
本実施形態においては、上述したとおり、第二キャップ212の内部に洗浄液216が収容されている。第一キャップ82は、第二キャップ212がノズル面から外れているとき、図14(a)及び図14(b)に示すように、当該第一キャップ82のノズル面に接触するノズル面接触箇所(第一キャップ82の開口部の縁)が、第二キャップ212の内部に充填されている洗浄液216の液面よりも上側に位置するように構成されている。具体的には、第一キャップ82は、スプリング301により、第二キャップ212に対して上方(ノズル面側)へ付勢されており、第一キャップ82のノズル面接触箇所が第二キャップ212内の洗浄液216の液面よりも上側の位置に維持されている。これにより、第二キャップ212内の洗浄液216が第一キャップ82の内部に入り込むことが防止される。その結果、第一キャップ82の内部に入り込んだ洗浄液216が、第一キャップ82でノズル34Aをキャッピングしているときにノズル34Aの内部へ進入するような事態を抑制できる。
【0053】
本実施形態では、モータ231の駆動によりキャップカム222が回転することで、第二キャップ212が上昇するとともに、第二キャップ212に保持されている第一キャップ82も一緒に上昇する。このとき、第二キャップ212に保持されている第一キャップ82のノズル面接触箇所は、上述のとおり、スプリング301によって第二キャップ212内の洗浄液216の液面よりも上側に位置しているので、図14(b)に示すように、第一キャップ82が先行してノズル面に接触し、ノズル34Aをキャッピングする。これにより、ノズル面が第二キャップ212内の洗浄液216に接触するのに先行して、第一キャップ82により、ノズル34Aに洗浄液216が接触しないようにしている。
【0054】
モータ231の駆動によりキャップカム222が更に回転すると、第二キャップ212は、スプリング301の付勢力に抗して更に上昇し、図14(c)に示すように、第二キャップ212が記録ヘッド34のノズル面及び側面を覆うように被せられる。これにより、第二キャップ212の内部の洗浄液216が記録ヘッド34のノズル面及び側面に接触し記録ヘッド34のノズル面及び側面に付着するインクが洗浄液216によってクリーニングされる。
【0055】
一方、デキャップ時においては、図14(c)に示す状態から、モータ231の駆動によりキャップカム222を回転させて、第二キャップ212を下降させる。このとき、第一キャップ82は、スプリング301の付勢力によってノズル34Aをキャッピングした状態が維持された状態で第二キャップ212が下降し、図14(b)に示す状態になる。その後、モータ231の駆動によりキャップカム222が更に回転すると、第二キャップ212が更に下降し、これに伴って第一キャップ82も下降する。これにより、第一キャップ82がノズル面から離間し、ノズル34Aはデキャップされ、図14(a)に示す状態になる。
【0056】
本実施形態における第二キャップ212は、2つの記録ヘッド34a,34Bを一緒に収容できる大きさをもち、各記録ヘッド34a,34Bのノズル面に対して同時に洗浄液216を接触させることができるが、個々の記録ヘッド34a,34Bごとに個別の第二キャップ212を設けてもよい。また、第一キャップ82a,82bは、図15(a)及び(b)に示すように、第二キャップ212の内部の洗浄液に一度に接触させるすべてのノズル面上の各ノズル34Aに対して個別に設けられている。ただし、2つ以上のノズル34Aを1つの第一キャップ82でキャッピングするようにしてもよい。
【0057】
次に、第一キャップ82によって洗浄液216を攪拌する構成及び動作について説明する。
図16(a)及び(b)は、第一キャップ82によって洗浄液216を攪拌する構成及び動作を示す説明図である。
第二キャップ212内の洗浄液216は、接触するノズル面上のノズル34Aのインク色や使用頻度などに応じて、第二キャップ212内の場所によって汚れ具合(インク分の濃度)に違いが生じる。そのため、インク分の濃度が高い汚れ具合の進んだ洗浄液部分では、他の洗浄液部分と比べて、早期のうちに洗浄性能が悪化する。このとき、例えば、第二キャップ212内の洗浄液216の洗浄液入替条件として、洗浄液216のインク分の濃度が規定濃度(例えば50%)以上になったという条件を採用する場合、洗浄液216のインク分の濃度を検知する場所によって洗浄液の入れ替え頻度が変わってしまう。
【0058】
例えば、汚れやすい場所(インク分の濃度が高くなりやすい場所)の洗浄液部分を検知する場合には、洗浄液の入れ替え頻度が高くなりすぎ、まだ十分な洗浄性能を発揮できる洗浄液部分(汚れの少ない洗浄液部分)も一緒に入れ替えられる結果、洗浄液の消費量が増大してしまう。一方で、逆に、汚れにくい場所(インク分の濃度が高くなりにくい場所)の洗浄液部分を検知する場合には、洗浄液の入れ替え頻度が低くなりすぎて、汚れて洗浄性能が低下した洗浄液部分(汚れの多い洗浄液部分)が使用され続ける結果、クリーニング不良を生じさせてしまう。
【0059】
本実施形態においては、上述したとおり、キャッピング動作時やデキャップ動作時において、図16(a)及び図16(b)に示すように、第一キャップ82が第二キャップ212に対して相対的に移動する。このとき、第二キャップ212内の洗浄液216の中で第一キャップ82が相対移動するため、これにより第二キャップ212内の洗浄液が攪拌される。その結果、第二キャップ212内の洗浄液216のインク分の濃度は均一化され、適切な時期に洗浄液を入れ替えることで、洗浄液の消費量を増大させずに、クリーニング不良の発生を抑制できる。また、第二キャップ212内の洗浄液216の洗浄液入替条件として、洗浄液216のインク分の濃度が規定濃度(例えば50%)以上になったという条件を採用する場合でも、洗浄液216のインク分の濃度を検知する場所によって洗浄液の入れ替え頻度が変わってしまうようなこともなくなる。
【0060】
しかも、キャッピング動作時やデキャップ動作時において、図16(a)及び図16(b)に示すように、第二キャップ212内の洗浄液216の中を第一キャップ82が移動することで、洗浄液216が流動する。このように流動する洗浄液216をノズル面や記録ヘッド34の側面に接触させることができるので、流動しない洗浄液216をノズル面や記録ヘッド34の側面に接触させる場合よりも、付着したインクの除去性能が向上する。
【0061】
図17は、第二キャップ212内の洗浄液216の攪拌能力を高めるための第一キャップ82の形状の一例を示す説明図である。
図17に示す第一キャップ82は、ノズル面のノズル34Aを覆うキャップ部82Aと、第二キャップ212の内部の洗浄液216を攪拌する攪拌部82Bとを備えている。キャップ部82Aは、弾性体で形成され、ノズル面との密着性が高い構成となっている。攪拌部82Bは、キャップ部82Aの外壁から、第一キャップ82と第二キャップ212との相対移動方向(上下動方向)に対して交差する方向へ突出する板状の突出部で構成される。したがって、第一キャップ82と第二キャップ212との相対移動方向から見たとき、キャップ部82Aの外縁によって囲まれる面積よりも、攪拌部82Bの外縁によって囲まれる面積の方が広くなるように形成されている。すなわち、第一キャップ82と第二キャップ212との相対移動方向から見たときに、外縁によって囲まれる面積は、記録ヘッド34のノズル列<キャップ部<攪拌部という関係となる。
【0062】
このような攪拌部82Bを備える第一キャップ82が第二キャップ212内の洗浄液216の中を相対移動することにより、攪拌部82Bに接する洗浄液216が押し上げられ又は押し下げられ、これにより洗浄液全体に大きな流れを生みだし、第二キャップ212内の洗浄液216を高い攪拌能力で攪拌することができる。
【0063】
図18は、第二キャップ212内の洗浄液216の攪拌能力を高めるための第一キャップ82の形状の他の例を示す説明図である。
図18に示す例は、攪拌部82Bがプロペラ状部材である例である。このようなプロペラ状であることで、第一キャップ82が第二キャップ212内の洗浄液216の中を相対移動することにより、プロペラの面に沿って洗浄液216が一定の方向へ流れ、これにより洗浄液全体に大きな流れを生みだすことができ、第二キャップ212内の洗浄液216を高い攪拌能力で攪拌することができる。
【0064】
図19は、第二キャップ212の上昇又は下降の途中の状態を示す説明図である。
第二キャップ212は、図19に示すように、その内壁面が洗浄液216の中から洗浄液216の液面に向かって先細るように形成されている。これにより、第二キャップ212の上昇又は下降など洗浄液216が流動するときに、内壁面上部近傍の洗浄液部分をノズル面あるいは記録ヘッド34の側面へ向かわせるような洗浄液の流れを作り出すことができる。このような流れによりノズル面や記録ヘッド34の側面に接する洗浄液に勢いを持たせ、より高い除去性能を発揮することが可能となる。特に、洗浄液216が記録ヘッド34の側面に当たるような流れを生み出すことができるので、記録ヘッド34の側面に付着したインクの除去性能が向上する。
【0065】
次に、本実施形態におけるキャッピングシーケンスについて説明する。
図20は、キャッピングシーケンスの流れを示すフローチャートである。
キャッピングシーケンスが開始されると、まず、全記録ヘッド34のノズルをキャッピングできる位置まで移動するように、キャリッジ33を主走査方向へ移動させる(S21)。また、本実施形態のインクジェット記録装置1は、洗浄液がノズル面から離れているデキャップ時間を計測する計測手段を備えている。本実施形態では、記録ヘッド34のデキャップシーケンスを開始してから(又は終了してから)、次のキャッピングシーケンスが開始されるまで(又は終了するまで)の時間を、デキャップ時間として計測する。そして、このデキャップ時間に応じて、待機時間x及び昇降回数yを決定する(S22)。なお、デキャップ時間の計測は、キャッピングシーケンスの終了時にリセットされる。
【0066】
次に、モータ231を駆動し、キャップカム222を介して第二キャップ212を上昇させ、これにより第二キャップ212及び第一キャップ82が上昇する(S23)。その後、まずは、第一キャップ82が記録ヘッド34のノズル面に接触し、第一キャップ82でノズル面上のノズル34Aを覆うようにキャッピングされる(S24)。その後、第二キャップ212を更に上昇させて、第二キャップ212を当該記録ヘッド34のノズル面及び側面に被せる(S25)。これにより、ノズル34Aを除いたノズル面部分と記録ヘッド34の側面が洗浄液216に接触し、付着しているインクが洗浄液216によって除去される。
【0067】
このようにキャッピングを行った後、本実施形態では、所定の洗浄液入替条件を満たすか否かを判断する(S26)。所定の洗浄液入替条件として、例えば、キャッピング動作の回数が規定回数(例えば20回)以上になったという条件を採用する場合には、キャッピング動作の回数をカウントするカウント手段を設け、そのカウント値(キャッピング動作の回数)が規定回数に達したか否かを判断する。また、所定の洗浄液入替条件として、例えば、第二キャップ212の内部の洗浄液216におけるインク分の濃度が規定濃度(例えば50%)以上になったという条件を採用する場合には、洗浄液216内のインク分の濃度を検知する濃度検知手段を設け、その濃度検知手段の検知結果(洗浄液216におけるインク分の濃度)が規定濃度以上になったか否かを判断する。
【0068】
所定の洗浄液入替条件を満たすと判断された場合(S26のYes)、制御部230は、廃液用ポンプ218を制御して第二キャップ212の内部の洗浄液216を排出し(S27)、洗浄液供給ポンプ213を制御して第二キャップ212の内部へ新しい洗浄液216を供給する(S28)。
【0069】
一方、所定の洗浄液入替条件を満たさないと判断された場合(S26のNo)、上述の処理ステップS22で決定した待機時間xだけ待機する(S29)。洗浄液がノズル面から離れていたデキャップ時間が長いほど、ノズル面等に付着しているインクの増粘度合いが高く、付着インクの除去が困難になる。そのため、デキャップ時間が長いほど、より長く付着インクに洗浄液216を接触させ、デキャップ時間が長くてもインクを十分に軟化させ又は溶かして除去しやすい状態にする必要がある。そこで、デキャップ時間が長いほど長い時間に設定される待機時間xだけ待機し、ノズル面や記録ヘッドの側面に洗浄液216を接触させた状態を維持し、付着インクの増粘度合いに応じて必要十分な接触時間を確保する。
【0070】
このように待機した後、次に、付着したインクを除去するため、上述の処理ステップS22で決定した昇降回数yだけ、第二キャップ212を昇降させる(S30)。このとき、第一キャップ82でノズル34Aをキャッピングした状態を維持したまま、第二キャップ212を昇降させる。これにより、第二キャップ212内の洗浄液216の中で第一キャップ82が相対移動し、第二キャップ212内の洗浄液に流動が生じて、ノズル面や記録ヘッド34の側面に付着するインクが洗浄液216によって除去される。
【0071】
上述したように、洗浄液がノズル面から離れていたデキャップ時間が長いほど、ノズル面等に付着しているインクの増粘度合いが高く、付着インクの除去が困難になる。そのため、デキャップ時間が長いほど昇降回数yを増やし、洗浄液216をより大きく流動させ、より高い除去性能を生じさせる。これにより、増粘度合いの高い付着インクも除去することができる。
【0072】
このようにして洗浄液216によるクリーニングが終了したら、最後に、第二キャップ212内の洗浄液216に含まれるインク分の濃度を検知し、その検知した濃度が規定濃度以上であるか否かを判断する(S31)。このとき、規定濃度以上であると判断された場合(S31のNo)、制御部230は、廃液用ポンプ218を制御して第二キャップ212の内部の洗浄液216を排出し(S27)、洗浄液供給ポンプ213を制御して第二キャップ212の内部へ新しい洗浄液216を供給する(S28)。そして、再度、洗浄液216によるクリーニングを実行する(S29,S30)。一方、規定濃度未満であると判断された場合(S31のYes)、キャッピングシーケンスを終了する。
【0073】
下記の表1は、デキャップ時間と、これに応じて決定される待機時間x及び昇降回数yとの関係の一例を示す表である。
下記の表1の例は、デキャップ時間が600秒を経過する毎に、待機時間xを10秒、昇降回数yを2回、それぞれ加算していくものであるが、デキャップ時間と待機時間x及び昇降回数yとの関係は、適宜設定される。
【0074】
【表1】
【0075】
本明細書において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0076】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0077】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0078】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0079】
前記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0080】
前記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0081】
また、「液体」は、液体吐出ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。具体的には、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。
【0082】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0083】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0084】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0085】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0086】
例えば、液体吐出ユニットとして、図21に示すように、記録ヘッド34とヘッドタンク441が一体化されている液体吐出ユニット440がある。また、チューブなどで互いに接続されて、記録ヘッド34とヘッドタンク441が一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンク441と記録ヘッド34との間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0087】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0088】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、図22で示したように、液体吐出ユニットとして、記録ヘッド34とキャリッジ33と主走査移動機構102,107~109が一体化されているものがある。
【0089】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0090】
また、液体吐出ユニットとして、図23で示したように、ヘッドタンク若しくは流路部品444が取り付けられた記録ヘッド34にチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。
【0091】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
【0092】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0093】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、液体(例えばインク)を吐出するノズル34Aをノズル面に有する液体吐出ヘッド(例えば記録ヘッド34)と、洗浄液216を収容し、前記ノズル面に対して洗浄液を付与する洗浄液収容部材(例えば第二キャップ212)と、を備え、前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を前記ノズル面に接触させるときに該ノズル面のノズルに該洗浄液が接触するのを防止する接触防止手段(例えば第一キャップ82)を有することを特徴とする液体を吐出する装置(例えばインクジェット記録装置1)である。
本態様においては、洗浄液収容部材の内部の洗浄液をノズル面に接触させるときでも、接触防止手段によってノズル面のノズルに洗浄液が接触することが防止される。よって、ノズル内部に洗浄液が進入せず、ノズル内部の液体と洗浄液とが混ざり合うことがない。したがって、ノズルから吐出される液体の状態(粘度や固形分濃度など)が洗浄液によって変化してしまうという問題を解消することができる。また、ノズルから液体を吐出する本動作の前に、洗浄液と混ざり合った液体分をノズルから排出する動作を行う必要がないので、液体の消費量も抑制できる。よって、ノズル内部の液体と洗浄液とが混ざり合うことに起因した各種問題を解消することができる。
【0094】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記接触防止手段は、前記洗浄液収容部材の内部に配置され、前記ノズル面上のノズルをキャッピングするキャップ部材(例えば第一キャップ82)であることを特徴とするものである。
本態様においては、前記ノズル面上のノズルをキャッピングするキャップ部材を利用して、ノズル面のノズルに洗浄液が接触することを防止することができる。
【0095】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記キャップ部材は、前記洗浄液が前記ノズル面に接触する前に、該ノズル面のノズルをキャッピングすることを特徴とするものである。
本態様によれば、ノズル面のノズルに洗浄液が接触することを安定して防止することができる。
【0096】
[第4態様]
第4態様は、第2又は第3態様において、前記キャップ部材は、前記洗浄液が前記ノズル面から離れた後に、該ノズル面のノズルをキャッピングした状態が解除されることを特徴とするものである。
本態様によれば、ノズル面のノズルに洗浄液が接触することを安定して防止することができる。
【0097】
[第5態様]
第5態様は、第2乃至第4態様のいずれかにおいて、前記キャップ部材は、前記洗浄液収容部材に対して相対移動可能に構成されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、キャップ部材の相対移動によって、洗浄液収容部材内の洗浄液を流動させることができる。これにより、洗浄液によるノズル面のクリーニング性能を向上させたり、洗浄液収容部材内の洗浄液に混ざり込んだインク等の液体の濃度を均一化したりすることが可能となる。
【0098】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記キャップ部材は、前記ノズル面のノズルをキャッピングするキャップ部82Aと、前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を攪拌する攪拌部82Bとを備えていることを特徴とするものである。
本態様によれば、攪拌部82Bによって、洗浄液収容部材内の洗浄液をより大きく流動させることができる。
【0099】
[第7態様]
第7態様は、第6態様において、前記攪拌部は、前記キャップ部の外壁から、前記キャップ部材と前記洗浄液収容部材との相対移動方向に対して交差する方向へ突出する突出部で構成されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、攪拌部82Bによる洗浄液の流動効果を高めることができる。
【0100】
[第8態様]
第8態様は、第6又は第7態様において、前記攪拌部は、プロペラ状部材であることを特徴とするものである。
本態様によれば、攪拌部82Bによる洗浄液の流動効果をより高めることができる。
【0101】
[第9態様]
第9態様は、第5乃至第8態様のいずれかにおいて、前記洗浄液が前記ノズル面から離れているデキャップ時間に応じて、前記キャップ部材と前記洗浄液収容部材との相対移動回数(例えば昇降回数y)を変更することを特徴とするものである。
本態様によれば、デキャップ時間が長くてクリーニングが困難となっているインク等の液体であっても、洗浄液を大きく流動させることで、安定してクリーニングすることが可能となる。
【0102】
[第10態様]
第10態様は、第2乃至第9態様のいずれかにおいて、前記キャップ部材は、前記洗浄液が前記ノズル面から離れているとき、該ノズル面に接触する接触箇所が該洗浄液収容部材の内部の洗浄液の液面よりも上側に位置するように構成されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、洗浄液がキャップ部材の内部に進入することを抑制できる。これにより、キャップ部材の内部に進入した洗浄液が、キャップ部材によってキャッピングされるノズルに接触してしまうことを抑制することができる。
【0103】
[第11態様]
第11態様は、第1乃至10態様のいずれかにおいて、前記洗浄液収容部材の内部へ洗浄液を供給する供給手段(例えば洗浄液供給ポンプ213)と、前記洗浄液収容部材の内部から洗浄液を排出する排出手段(例えば廃液用ポンプ218)とを有し、所定の洗浄液入替条件を満たしたら、前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を前記排出手段により排出して新しい洗浄液を前記供給手段により供給する洗浄液入れ替え動作を行うことを特徴とするものである。
本態様によれば、クリーニング性能が低下した洗浄液を新しい洗浄液に交換できるので、洗浄液によるクリーニング性能を長期的に維持することができる。
【0104】
[第12態様]
第12態様は、第11態様において、前記所定の洗浄液入替条件は、前記洗浄液に含まれる前記液体の濃度が規定濃度以上であるという条件を含み、前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を前記ノズル面に接触させた後に前記条件を満たすときには、前記洗浄液入れ替え動作を行った後に、再度、前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を前記ノズル面に接触させることを特徴とする液体を吐出するものである。
本態様によれば、クリーニング性能が低下した洗浄液によるクリーニング不良の発生を抑制することができる。
【0105】
[第13態様]
第13態様は、第1乃至12態様のいずれかにおいて、前記洗浄液収容部材は、その内壁面が洗浄液の中から洗浄液の液面へ向かって先細るように形成されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、洗浄液によるクリーニング性能を向上させることが可能となる。
【0106】
[第14態様]
第14態様は、第1乃至13態様のいずれかにおいて、前記洗浄液が前記ノズル面から離れているデキャップ時間に応じて、前記洗浄液収容部材の内部の洗浄液を該ノズル面に接触させる時間を変更することを特徴とするものである。
本態様によれば、デキャップ時間が長くてクリーニングが困難となっているインク等の液体であっても、安定してクリーニングすることが可能となる。
【符号の説明】
【0107】
1 :インクジェット記録装置
33 :キャリッジ
34 :記録ヘッド
34A :ノズル
35 :サブタンク
36 :供給チューブ
81 :維持回復機構
82 :第一キャップ
82A :キャップ部
82B :攪拌部
83 :ワイパブレード
84 :空吐出受け部
85 :ワイパクリーナ部
86 :ワイパクリーナ
87 :キャリッジロック
88 :空吐出受け部
89 :開口部
211 :フレーム
212 :第二キャップ
213 :洗浄液供給ポンプ
214 :洗浄液供給チューブ
215 :洗浄液貯蔵タンク
216 :洗浄液
217 :洗浄液廃液チューブ
218 :廃液用ポンプ
219 :可撓性チューブ
220 :吸引ポンプ
221 :カム軸
222 :キャップカム
224 :ワイパカム
226 :コロ
228 :クリーナカム
229 :キャリッジロックカム
230 :制御部
231 :モータ
232 :モータギヤ
233 :ポンプギヤ
234 :第一中間ギヤ
235 :第二中間ギヤ
236 :第三中間ギヤ
238 :第四中間ギヤ
239 :第五中間ギヤ
240 :カムギヤ
241 :中間軸
301 :スプリング
302 :スライダ
304 :ガイドピン
305 :ガイドピン
306 :ガイド溝
310 :ガイドピン
311 :ガイドピン
312 :係合穴
313 :係合穴
315 :ガイド軸
341 :ワイパホルダ
342 :ガイドピン
343 :ガイドピン
345 :ガイド部材
346 :ガイド溝
347 :ストッパ
348 :可撓性部材
349 :カムピン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0108】
【文献】特開2013-176898号公報
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