(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】液体搬送装置及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20220310BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
B41J2/17 201
B41J2/165 211
(21)【出願番号】P 2018015484
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】酒井 慶太郎
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-190279(JP,A)
【文献】特開平11-188895(JP,A)
【文献】特開2016-193535(JP,A)
【文献】特開2015-030173(JP,A)
【文献】特開2011-051139(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0050797(US,A1)
【文献】特開2017-164988(JP,A)
【文献】米国特許第08662632(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液搬送元と液搬送先とを接続して液体の搬送路を形成する搬送管を備える液体搬送装置において、
前記搬送管を押圧した状態で、前記搬送管における前記液体の搬送方向下流側に向けて移動する押圧移動手段を備え
、
前記押圧移動手段は、偏心カムであることを特徴とする液体搬送装置。
【請求項2】
液搬送元と液搬送先とを接続して液体の搬送路を形成する搬送管を備える液体搬送装置において、
前記搬送管を押圧した状態で、前記搬送管における前記液体の搬送方向下流側に向けて移動する押圧移動手段を備え、
前記押圧移動手段は、ローラ部材であり、
前記ローラ部材は、前記搬送管における前記液体の搬送方向上流側に向けて移動するときには回転し、前記搬送方向下流側に向けて移動するときには回転しない構成であることを特徴とする液体搬送装置。
【請求項3】
請求項1
または2の液体搬送装置において、
前記液搬送元の内部の前記液体を吸引し、前記搬送管を介して前記液搬送先に向けて圧送する液送ポンプを備えることを特徴とする液体搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至
3の何れか一項に記載の液体搬送装置において、
前記押圧移動手段の移動速度を可変制御可能であることを特徴とする液体搬送装置。
【請求項5】
液体を吐出する吐出孔が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出面と対向し、前記液体を回収するキャップ部材と、
前記キャップ部材が回収した前記液体を収容する回収液体収容部と、
前記キャップ部材の内部の前記液体を前記回収液体収容部まで搬送する液体搬送手段と、を備える液体を吐出する装置において、
前記液体搬送手段として、請求項1乃至
4の何れか一項に記載の液体搬送装置を備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項6】
請求項
5の液体を吐出する装置において、
前記キャップ部材は、前記吐出面と対向する位置と前記吐出面と対向しない位置との間で移動可能であり、
前記搬送管の少なくとも一部は前記キャップ部材の移動方向に沿って配置され、
前記押圧移動手段は、前記キャップ部材の移動に連動して前記搬送方向下流側に向けて移動することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項7】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドから前記液体を吸引するキャップ部材と、
前記キャップ部材によって吸引された前記液体を収容する液体収容部と、
前記キャップ部材と前記液体収容部とを接続する液体流路と、を備え、
前記キャップ部材は、前記キャップ部材が前記液体吐出ヘッドから離れる方向に移動するとき、前記液体流路を押圧しながら移動する押圧移動手段を有
し、
前記キャップ部材が、前記液体吐出ヘッドと対向するキャッピング位置から、前記液体吐出ヘッドと対向しない退避位置へと移動するとき、前記押圧移動手段が前記液体流路を押圧しながら移動することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項8】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドから前記液体を吸引するキャップ部材と、
前記キャップ部材によって吸引された前記液体を収容する液体収容部と、
前記キャップ部材と前記液体収容部とを接続する液体流路と、を備え、
前記キャップ部材は、前記キャップ部材が前記液体吐出ヘッドから離れる方向に移動するとき、前記液体流路を押圧しながら移動する押圧移動手段を有し、
前記キャップ部材の内部の前記液体を吸引し、前記液体流路を介して前記液体収容部に向けて圧送する液送ポンプを備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項9】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドから前記液体を吸引するキャップ部材と、
前記キャップ部材によって吸引された前記液体を収容する液体収容部と、
前記キャップ部材と前記液体収容部とを接続する液体流路と、を備え、
前記キャップ部材は、前記キャップ部材が前記液体吐出ヘッドから離れる方向に移動するとき、前記液体流路を押圧しながら移動する押圧移動手段を有し、
前記押圧移動手段は、偏心カムであることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項10】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドから前記液体を吸引するキャップ部材と、
前記キャップ部材によって吸引された前記液体を収容する液体収容部と、
前記キャップ部材と前記液体収容部とを接続する液体流路と、を備え、
前記キャップ部材は、前記キャップ部材が前記液体吐出ヘッドから離れる方向に移動するとき、前記液体流路を押圧しながら移動する押圧移動手段を有し、
前記押圧移動手段は、ローラ部材であり、
前記ローラ部材は、前記液体流路における前記液体の搬送方向上流側に向けて移動するときには回転し、搬送方向下流側に向けて移動するときには回転しない構成であることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項11】
請求項
7乃至
10の何れか一項に記載の液体を吐出する装置において、
前記押圧移動手段の移動速度を可変制御可能であることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項12】
請求項
5乃至
11の何れか一項に記載の液体を吐出する装置において、
前記押圧移動手段は、前記キャップ部材の水平方向の移動に連動して水平方向に移動することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項13】
液体を吐出する吐出孔が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出面と対向し、前記液体を回収するキャップ部材と、
前記キャップ部材が回収した前記液体を収容する回収液体収容部と、
前記キャップ部材の内部の前記液体を前記回収液体収容部まで搬送する液体搬送手段と、を備える液体を吐出する装置において、
前記液体搬送手段として、液搬送元と液搬送先とを接続して液体の搬送路を形成する搬送管を備える液体搬送装置であって、前記搬送管を押圧した状態で、前記搬送管における前記液体の搬送方向下流側に向けて移動する押圧移動手段を備える液体搬送装置を備え、
前記押圧移動手段は、前記キャップ部材の水平方向の移動に連動して水平方向に移動することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項14】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドから前記液体を吸引するキャップ部材と、
前記キャップ部材によって吸引された前記液体を収容する液体収容部と、
前記キャップ部材と前記液体収容部とを接続する液体流路と、を備え、
前記キャップ部材は、前記キャップ部材が前記液体吐出ヘッドから離れる方向に移動するとき、前記液体流路を押圧しながら移動する押圧移動手段を有し、
前記押圧移動手段は、前記キャップ部材の水平方向の移動に連動して水平方向に移動することを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体搬送装置及び液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液搬送元と液搬送先とを接続して液体の搬送路を形成する搬送管を備える液体搬送装置が知られている。
特許文献1には、この種の液体搬送装置として、インクを吐出する記録ヘッドを覆うキャップ部材(液搬送元)で受けた廃液を吸引ポンプで吸引し、吸引チューブを介して廃液タンク(液搬送先)に搬送する装置を備えたインクジェット記録装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
液送ポンプと液搬送先とを搬送管で接続して液体を搬送する液体搬送装置では、液送ポンプと液搬送先との間の搬送管が長い場合、液送ポンプだけでは搬送先まで液体を搬送できないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、液搬送元と液搬送先とを接続して液体の搬送路を形成する搬送管を備える液体搬送装置において、前記搬送管を押圧した状態で、前記搬送管における前記液体の搬送方向下流側に向けて移動する押圧移動手段を備え、前記押圧移動手段は、偏心カムであるものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、搬送元と液搬送先との間の搬送管が長い装置であっても、液搬送先への円滑な液体の搬送を行うことが可能となる、という優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】キャップユニットが回収した廃液を廃液タンクに搬送する廃液搬送装置の概略説明図。
【
図4】キャップユニットのスライド動作の説明するインク吐出部の斜視説明図。
【
図6】一方向のみに回転可能なコロローラとコロローラの回転方向を規制する機構との説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0008】
[全体説明]
図2は、本実施形態に係る「液体を吐出する装置」としてのインクジェット記録装置であるプリンタ1の概略構成を示す模式図である。
プリンタ1は、主に、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300、排紙部400から構成されている。
【0009】
プリンタ1においては、給紙部100から給紙される用紙P(媒体、シート材及び記録材である)に対し、画像形成部200で画像形成用の液体であるインクにより画像を形成する。そして、用紙P上に付着したインクを乾燥部300において乾燥させた後、用紙Pを排紙部400から排紙する。
【0010】
[給紙部]
給紙部100は、主に、複数の用紙Pが積載される給紙トレイ110と、給紙トレイ110から用紙Pを一枚ずつ分離して送り出す給送装置120と、用紙Pを画像形成部200へ送り込むレジストローラ対130とから構成されている。
【0011】
給送装置120には、ローラやコロを用いた装置や、エア吸引を利用した装置など、あらゆる給送装置を用いることが可能である。給送装置120により給紙トレイ110から送り出された用紙Pは、その先端がレジストローラ対130に到達した後、レジストローラ対130が所定のタイミングで駆動することにより、画像形成部200へ給紙される。
【0012】
なお、本実施形態において、給紙部100は、画像形成部200へ用紙Pを送り出すものであれば、その構成に制限はない。
【0013】
[画像形成部]
画像形成部200は、主に、受取胴201と、用紙搬送ドラム210(搬送部材)と、インク吐出部220と、受渡胴202とから構成されている。
図3は、画像形成部200の構成を示す模式図である。
受取胴201は、給紙された用紙P(媒体)を受け取り、下流側に搬送する部材である。用紙搬送ドラム210は、受取胴201によって搬送された用紙Pを外周面に担持して搬送する円筒形状の部材である。インク吐出部220は、用紙搬送ドラム210によって搬送される用紙Pに向けてインクを吐出する機構である。受渡胴202は、用紙搬送ドラム210によって搬送された用紙Pを乾燥部300へ受け渡す部材である。
【0014】
給紙部100から画像形成部200へ搬送されてきた用紙Pは、受取胴201の表面に設けられた受取用紙グリッパ201aによって先端が把持され、受取胴201の表面移動に伴って搬送される。受取胴201により搬送された用紙Pは、用紙搬送ドラム210との対向位置で用紙搬送ドラム210へ受け渡される。
【0015】
用紙搬送ドラム210の表面にも搬送用紙グリッパ210aが設けられており、用紙搬送ドラム210へ受け渡された用紙Pの先端が搬送用紙グリッパ210aによって把持される。また、用紙搬送ドラム210の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されており、各吸引孔には吸引装置211によって用紙搬送ドラム210の内側へ向かう吸い込み気流が発生する。
【0016】
受取胴201から用紙搬送ドラム210へ受け渡された用紙Pは、搬送用紙グリッパ210aによって先端が把持されると共に、吸い込み気流によって用紙搬送ドラム210の表面に吸着して、用紙搬送ドラム210の表面移動に伴って搬送される。
【0017】
本実施形態のインク吐出部220は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の四色のインクを吐出して画像を形成するものであり、インクごとに個別の液体吐出ヘッド230(230C,230M,230Y,230K)を備えている。四つの液体吐出ヘッド230は、吐出するインクの色が異なる点以外は同様の構成を備えているため、以下の説明では吐出するインクの色を示す「C」、「M」、「Y」、「K」等の添え字は適宜省略して説明する。
【0018】
液体吐出ヘッド230は、吐出孔から液体を吐出するものであれば、その構成に制限はなく、あらゆる構成のものを採用することができる。必要に応じて、白色、金色、銀色などの特殊なインクを吐出する液体吐出ヘッドを設けたり、表面コート液などの画像を構成しない液体を吐出する液体吐出ヘッドを設けたりしてもよい。
【0019】
インク吐出部220の四つの液体吐出ヘッド230は、画像情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。用紙搬送ドラム210によって搬送された用紙Pがインク吐出部220との対向領域を通過する際に、四つの液体吐出ヘッド230から各色インクが吐出され、当該画像情報に応じた画像が形成される。
【0020】
なお、本実施形態において、画像形成部200は、用紙P上に液体を付着させて画像を形成するであれば、その構成に制限はない。
【0021】
[乾燥部]
乾燥部300は、主に、画像形成部200で用紙P上に付着したインクを乾燥させるための乾燥機構301と、画像形成部200から搬送されてくる用紙Pを搬送する搬送機構302とから構成されている。
【0022】
画像形成部200から搬送されてきた用紙Pは、搬送機構302に受け取られた後、乾燥機構301を通過するように搬送され、排紙部400へ受け渡される。乾燥機構301を通過する際、用紙P上のインクには乾燥処理が施され、これによりインク中の水分等の液分が蒸発し、用紙P上にインクが固着すると共に、用紙Pのカールが抑制される。
【0023】
[排紙部]
排紙部400は、主に、複数の用紙Pが積載される排紙トレイ410から構成されている。乾燥部300から搬送されてくる用紙Pは、排紙トレイ410上に順次積み重ねられて保持される。
【0024】
なお、本実施形態において、排紙部400は、用紙Pを排紙するものであれば、その構成に制限はない。
【0025】
[その他の機能部]
本実施形態のプリンタ1は、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300、排紙部400から構成されているが、他の機能部を適宜追加してもよい。例えば、給紙部100と画像形成部200との間に画像形成の前処理を行う前処理部を追加したり、乾燥部300と排紙部400との間に画像形成の後処理を行う後処理部を追加したりすることができる。
【0026】
前処理部としては、例えば、インクと反応して滲みを抑制するための処理液を用紙Pに塗布する処理液塗布処理を行うものなどが挙げられるが、前処理の内容については特に制限はない。
【0027】
また、後処理部としては、例えば、画像形成部200で画像が形成された用紙Pを反転させて再び画像形成部200へ送って用紙Pの両面に画像を形成するための用紙反転搬送処理や、画像が形成された複数枚の用紙Pを綴じる処理などが挙げられる。しかし、後処理の内容についても特に制限はない。
【0028】
本実施形態では、液体を吐出する装置を、インクジェット記録装置であるプリンタ1の例で説明している。プリンタ1は、シート材である用紙Pの被乾燥面に向けて液体であるインクを吐出する液体吐出ヘッド230を備える。
【0029】
なお、本実施形態においては、複数の液体吐出ヘッドを用紙幅方向(搬送方向と直交する方向)に並べることで、長尺な液体吐出ヘッド(ラインヘッド)としている。特筆しない場合は、「液体吐出ヘッド」とは「ラインヘッド」を意味する。
【0030】
本実施形態の個々の液体吐出ヘッド230は、用紙Pの幅方向にわたる長さ(主走査方向長さ)もったライン型の液体吐出ヘッドであり、用紙Pに対して個々の液体吐出ヘッド230からインクを吐出する。
【0031】
本実施形態において、個々の液体吐出ヘッド230は、用紙搬送ドラム210の回転軸を中心にして放射状に個別に配置している。
【0032】
液体吐出ヘッド230は、吐出孔であるノズルからインクを吐出する。インク吐出部220は、個々の液体吐出ヘッド230のノズルが設けられたノズル面をそれぞれ覆い、ノズル面を保護する役割を持つキャップを備えたキャップユニット290を備える。
キャップユニット290は、液体吐出ヘッド230に対して用紙搬送ドラム210の軸方向(
図2及び
図3の紙面に直交する方向)にスライド可能となっている。キャップユニット290は、スライドすることで、ノズル面230fと対向するキャッピング位置と、ノズル面230fと対向しない退避位置との間で移動する。
【0033】
キャップユニット290をスライドさせる移動機構としては、キャップユニット290を保持する無端ベルトの移動方向を制御することにより、キャップユニット290をスライド移動させる構成を挙げることができる。無端ベルトを用いる構成に限るものではなく、他の例としては、ラックギアをキャップユニット290に配置し、プリンタ1の装置本体側に設けたピニオンギアを回転させることにより、キャップユニット290をスライドさせる構成を挙げることができる。
【0034】
キャップユニット290は、画像形成時以外に液体吐出ヘッド230のノズル面を覆い、ノズルに詰まったインクやノズルから吐出された画像形成に寄与しないインク、ノズル面に付着したインク等を廃液として回収する。
【0035】
図4は、キャップユニット290のスライド動作の説明するインク吐出部220の斜視説明図である。
図4では、液体吐出ヘッド230を保持するヘッド保持フレーム231と、キャップユニット290を
図4中の矢印「A」方向にスライド可能に保持するキャップ保持ガイド291と、キャップユニット290とを示している。
図4は、液体吐出ヘッド230を取り外した状態であり、
図4中のヘッド配置空間230aに液体吐出ヘッド230を配置する構成である。
図2及び
図3に示すインク吐出部220では、用紙搬送ドラム210の回転軸を中心にして放射状に形成された液体吐出ヘッド230とキャップユニット290との組み合わせが四つである。
図4に示すインク吐出部220では、用紙搬送ドラム210の回転軸を中心にして放射状に形成された液体吐出ヘッド230を配置するヘッド配置空間230aとキャップユニット290との組み合わせが便宜的に六つとなっている。
【0036】
インク吐出部220は、ヘッド保持フレーム231から装置本体の後方向(
図4中の矢印「A1」方向)に向けてキャップ保持ガイド291が伸び、退避エリア90を形成している。キャップユニット290はこのキャップ保持ガイド291に保持され、プリンタ1の装置本体の前後方向(
図4中の矢印「A」方向)にスライド可能となっている。
図4では、六つのキャップユニット290のうちの一つが退避エリア90内の退避位置に退避し、他の五つがそれぞれの液体吐出ヘッド230と対向するキャッピング位置にある。
【0037】
プリンタ1が印刷を行う際、キャップユニット290は装置本体の後方の退避エリア90へスライド移動し、スライド前にキャップユニット290が居た位置へ液体吐出ヘッド230を有する印字ユニットが降下し、印刷を行う。
【0038】
図1は、キャップユニット290が回収した廃液を廃液タンク16に搬送する廃液搬送装置10の概略説明図である。
図1(a)は、キャップユニット290が液体吐出ヘッド230と対向するキャッピング位置にある状態を示しており、
図1(b)は、キャップユニット290が退避位置にある状態を示している。
プリンタ1では、液体吐出ヘッド230のノズル面230fを覆い、ノズル面230fを保護するキャップユニット290が、
図1(a)に示すキャッピング位置と
図1(b)に示す退避位置との間でスライド移動する構成となっている。
【0039】
廃液搬送装置10は、液搬送元であるキャップユニット290内の液体であるインクを吸引して搬送先である廃液タンク16に向けてインクを圧送する吸引ポンプ13を備える。吸引ポンプ13は、キャップユニット290に連通し、キャップユニット290からインクを下流側へ排出する構成である。廃液タンク16は、キャップユニット290から回収されたインクを回収し、貯留する廃液収容部である。また、廃液搬送装置10は、吸引ポンプ13と廃液タンク16とを接続して搬送路である廃液経路を形成する搬送管(液体流路)である廃液チューブ14を備える。廃液チューブ14は、押圧されることで潰れ、押圧力がなくなると元に戻る弾性材料からなる。
【0040】
さらに、廃液搬送装置10は、廃液チューブ14を押圧した状態で、廃液チューブ14におけるインクの搬送方向下流側(
図1中の矢印「A1」方向)に向けて移動する押圧移動手段であるコロローラ15を備える。
コロローラ15は、キャップユニット290に配置されており、廃液チューブ14に接触する。
【0041】
プリンタ1で印刷が終了すると、退避位置に位置していたキャップユニット290がキャッピング位置に移動し、液体吐出ヘッド230のノズル面230fをキャップユニット290で覆う。キャップユニット290がキャッピング位置にある状態で、吸引ポンプ13を駆動することで、キャップユニット290内の気体や液体を吸引ポンプ13で吸引する。これにより、ノズル詰まりの原因となる固着インクや異物などをノズル面230fに開口したノズルからキャップユニット290内に排出する。さらに、キャップユニット290内の固着インクや異物を含有する廃液を吸引ポンプ13の下流側に位置する廃液タンク16へ排出する。
【0042】
吸引ポンプ13と廃液タンク16とを接続する廃液チューブ14では吸引ポンプ13で発生した正圧によって廃液が廃液タンク16に向けて搬送させる。しかし、吸引ポンプ13から廃液タンク16までの廃液経路が長いと、吸引ポンプ13で発生した正圧では廃液を廃液タンク16まで搬送しきれず、廃液チューブ14内に廃液が残留することがある。廃液チューブ14内に廃液が残留したままだと、廃液チューブ14内でインクが固まって廃液チューブ14が詰まるおそれがある。
【0043】
吸引ポンプ13による廃液の圧送が終わった後、次の印刷を行うときには、キャップユニット290がキャッピング位置から退避位置へ移動する。
本実施形態では、キャップユニット290がキャッピング位置から退避位置へ移動する際、キャップユニット290の下部に設けられたコロローラ15でキャップユニット290の下方に這い回された廃液チューブ14を押し潰しながら移動していく。
【0044】
これにより、廃液チューブ14におけるコロローラ15によって押し潰されて廃液経路の断面積が小さくなる部分が、コロローラ15を備えるキャップユニット290の移動に伴い廃液の搬送方向下流側に移動する。このとき、断面積が小さくなった部分の廃液チューブ14の内壁面に押された廃液が搬送方向下流側に移動する。よって、吸引ポンプ13よりも廃液の搬送方向下流側の廃液チューブ14内に残留した廃液を廃液タンク16に押し流すことができる。このため、液送ポンプである吸引ポンプ13と液搬送先である廃液タンク16との間の搬送管である廃液チューブ14が長く、廃液チューブ14における流体抵抗が大きい装置であっても、廃液タンク16への円滑な廃液の搬送を行うことができる。
【0045】
プリンタ1は、液体吐出ヘッド230と、液体吐出ヘッド230のノズル面230fと対向し、固着インクや異物等を含有する廃液を回収するキャップ部材であるキャップユニット290とを備えるインクジェットプリンタである。さらに、プリンタ1は、キャップユニット290が回収した廃液を収容する回収液体収容部(液体収容部)である廃液タンク16を備える。また、キャップユニット290の内部の廃液を廃液タンク16まで搬送する液体搬送手段として、
図1を用いて説明した廃液搬送装置10を備える。これにより、キャップユニット290内の廃液を吸引する吸引ポンプ13から廃液タンク16までの搬送経路を長くせざるを得ないインクジェットプリンタであっても、廃液タンク16への円滑な廃液の搬送を行うことができる。
【0046】
特許文献1には、記録に寄与しない液滴をキャップに吐出して、キャップ内の廃液をチューブ内に一時的に貯留し、貯留した廃液を吸引ポンプによってまとめて廃液タンクに排出する構成が記載されている。特許文献1の構成では、吸引ポンプから廃液タンクまでの廃液の搬送経路が長い場合に、吸引ポンプの駆動によってチューブ内に発生した正圧では廃液タンクまで廃液を搬送しきれないという不具合は防止することができない。
【0047】
本実施形態のプリンタ1は、キャップユニット290が退避位置に移動するスライド移動の際に、コロローラ15が廃液チューブ14を押圧して押し潰し、押圧した状態で移動し、廃液チューブ14内のインクを含む廃液を強制的に搬送方向下流側へ運ぶ構成である。このため、廃液の搬送経路のうち、吸引ポンプ13よりも下流側の搬送経路に滞留した廃液を排出させることができ、吸引ポンプ13よりも下流側の搬送経路が長く、流体抵抗が大きい構成であっても円滑に廃液を搬送することが可能となる。
【0048】
プリンタ1では、キャップユニット290は、キャッピング位置と退避位置との間で移動可能であり、廃液チューブ14の一部はキャップユニット290の移動方向に沿って配置されている。そして、コロローラ15は、キャップユニット290の移動に連動して搬送方向下流側に向けて移動する。これによれば、コロローラ15を移動させる専用の移動機構を設けることなく、コロローラ15によって廃液チューブ14を押し潰した状態で、コロローラ15を廃液の搬送方向下流側に向けて移動させる構成を実現できる。
【0049】
また、プリンタ1では、キャップユニット290が、キャッピング位置から退避位置へと移動するとき、押圧移動手段であるコロローラ15が液体流路である廃液チューブ14を押圧しながら移動する。この構成ではキャップユニット290が退避位置へと移動する度にコロローラ15による廃液の搬送を行うことができ、コロローラ15による廃液の搬送のためだけにコロローラ15の移動させなくても、コロローラ15による廃液の搬送ができる。よって、廃液を搬送するためにコロローラ15を移動させる時間を削減できる。
【0050】
コロローラ15が廃液チューブ14を押圧する構成としては、廃液チューブ14に対してコロローラ15を接離する接離機構を備えることが好ましい。キャップユニット290がキャッピング位置にあるときには接離機構によってコロローラ15を廃液チューブ14から離間させる、または、押し潰し量を小さくさせる。これにより、吸引ポンプ13による廃液の圧送を行うときに、廃液チューブ14におけるコロローラ15の押圧によって押し潰された部分で廃液が搬送され難くなることを防止でき、効率的な圧送を行うことができる。そして、キャップユニット290がキャッピング位置から退避位置に移動する前に接離機構によってコロローラ15を廃液チューブ14に圧接させることで、廃液チューブ14を押し潰し、キャップユニット290の移動の際に廃液を押し流すことができる。
【0051】
また、キャップユニット290が退避位置からキャッピング位置に移動するときにも接離機構によってコロローラ15を廃液チューブ14から離間させる、または、押し潰し量を小さくさせてもよい。これにより、廃液チューブ14におけるコロローラ15に押し潰された部分が搬送方向上流側に移動することに起因して、廃液が廃液チューブ14内を逆流することを防止できる。
【0052】
図1(b)は、廃液チューブ14の破線領域「α」で示す範囲内のインクがコロローラ15によって廃液タンク16に向けて押し流された状態である。破線領域「α」で示す範囲の廃液チューブ14は、
図4に示すキャップ保持ガイド291に這い回されており、コロローラ15が、固定の壁を形成するキャップ保持ガイド291に廃液チューブ14を押し付けながら移動する。コロローラ15が、キャップ保持ガイド291との間で廃液チューブ14を挟むことで廃液チューブ14を押し潰し、キャップ保持ガイド291に対して移動することで廃液チューブ14の押し潰された部分の位置を搬送方向下流側に移動させることができる。
【0053】
押圧移動手段の形状としては、コロローラ15のようなローラ形状に限らず、押圧することで搬送管を押し潰し、搬送管に対して押圧した状態で搬送管における液体の搬送方向下流側に移動するものであればよい。
また、押圧移動手段としては、本実施形態のように固定の壁に搬送管を押し付けながら移動する構成に限るものではない。例えば、押圧移動手段が搬送管を挟む挟持部材であって、挟持部材が搬送管を挟むことで搬送管を押し潰し、押し潰した状態で挟持部材が搬送方向下流側に移動する構成であってもよい。
【0054】
図2乃至
図4に示すように、プリンタ1は、液体吐出ヘッド230とキャップユニット290との組み合わせを複数備える。このため、複数のキャップユニット290のそれぞれに対応したキャップユニット290と同数の廃液搬送装置10を備える。
【0055】
図1(b)に示すように、コロローラ15は、キャップユニット290の水平方向の移動に連動して、廃液チューブ14を押し潰しながら水平方向に移動する。廃液チューブ14によって形成される廃液経路が下方に向かう経路の部分では重力が廃液の移動に寄与するため、廃液が廃液チューブ14内に残留し難い。一方、廃液経路が水平方向に向かう経路の部分では重力は廃液の移動に寄与せず、廃液が廃液チューブ14内に残留し易い。このような水平方向の廃液経路の廃液の移動をコロローラ15で補助することにより、効率的な廃液の搬送を行うことができる。
【0056】
本実施形態のプリンタ1では、キャップユニット290がキャッピング位置から退避位置へ移動する移動速度を可変制御可能な構成となっている。これにより、キャップユニット290に設けられたコロローラ15の移動速度が可変制御可能となっている。コロローラ15の移動速度を変更することにより、廃液チューブ14内の廃液の状態に応じた速度で廃液を押し流すことができる。
【0057】
詳しくは、印刷動作終了後、次の印刷動作が行われるまで長時間が経過した場合、廃液チューブ14内に残留した廃液は長期放置されることにより、含有するインクによって増粘し、押し出され難い状態となることがある。増粘した廃液をコロローラ15の移動速度が速い状態で押し出そうとすると、廃液がコロローラ15の移動に追従できず、廃液チューブ14内で押し潰されて廃液チューブ14の内壁に固着するおそれがある。一方、コロローラ15の移動速度を増粘した廃液を押し流すことができるように遅い速度に設定していると、粘性の低い廃液を押し流すときにはコロローラ15の移動時間が無駄に長くなる。さらに、本実施形態のようにコロローラ15をキャップユニット290に設けた構成では、キャッピング位置から退避位置までのキャップユニット290の移動時間が長くなり、プリンタ1の印刷開始までの時間が長くなってしまう。
【0058】
これに対して、プリンタ1では、キャップユニット290の移動速度が可変制御可能となっており、前回の印刷から所定時間経過後に次の印刷を行う場合には、キャップユニット290の退避位置に向かう移動速度を遅くする。これにより、長期放置によって増粘したインクを含む廃液を排出することが可能となる。また、所定時間経過前に次の印刷を行う場合には、キャップユニット290の退避位置に向かう移動速度を速くする。これにより、コロローラ15の移動時間が無駄に長くなることを防止でき、プリンタ1の移動開始までの時間が長くなることを防止できる。
【0059】
次に、コロローラ15の形状について説明する。
図5は、コロローラ15の形状の説明図であり、
図5(a)は円形のコロローラ15の説明図であり、
図5(b)は、卵型の偏心形状のコロローラ15の説明図である。
図5(a)及び
図5(b)の何れの形状も用いることができる。しかし、
図5(b)に示す卵型の偏心形状のような平面カムを用い、平面カムの角度を制御することで、コロローラ15による廃液チューブ14の押圧状態を調整でき、効率的な廃液の搬送や廃液の逆流防止が可能となる。
【0060】
詳しくは、
図5(b)に示すコロローラ15の回転軸から外周面までの距離が長くなる部分(
図5(b)中のコロローラ15の下部)を廃液チューブ14に当接させることで廃液チューブ14への押圧力を大きくすることができる。これにより、廃液チューブ14の押し潰し量を大きくできる。この状態で、コロローラ15の回転を停止させ、
図1(b)中の矢印「A1」方向に移動させることで、効率的に廃液を搬送方向下流側に向けて押し流すことができる。
【0061】
一方、
図5(b)に示すコロローラ15の回転軸から外周面までの距離が短くなる部分(
図5(b)中のコロローラ15の上部)を廃液チューブ14に対向させることで、廃液チューブ14への押圧力を小さくすることができる。これにより、コロローラ15を廃液チューブ14から離間、または、廃液チューブ14の押し潰し量を小さくできる。この状態で、コロローラ15の回転を停止させ、
図1(b)中の矢印「A1」方向とは逆方向(
図4中の矢印「A2」方向)に移動させることで、廃液が廃液チューブ14内を逆流することを防止できる。
また、吸引ポンプ13で廃液を圧送するときにも、コロローラ15の回転軸から外周面までの距離が短くなる部分を廃液チューブ14に対向させることで、押し潰された部分で廃液が搬送され難くなることを防止でき、効率的な圧送を行うことができる。
【0062】
コロローラ15としては、廃液チューブ14における廃液の搬送方向上流側に向けて移動するときには回転し、搬送方向下流側に向けて移動するときには回転しない構成としてもよい。このような構成の一例を
図6に示す。
図6は、一方向のみに回転可能なコロローラ15とコロローラ15の回転方向を規制する機構との説明図である。
【0063】
図6に示す構成では、コロローラ15が固定されたローラ回転軸151に固定された歯車32と、歯止め揺動軸33を中心に揺動可能な歯止め31とを備える。ローラ回転軸151と歯止め揺動軸33とはコロローラ15を保持して移動する保持部材であるキャップユニット290に保持されている。
この構成では、コロローラ15が
図6中の矢印「B」方向に回転しようとすると、歯止め31が回転する歯車32の歯に沿って揺動し、コロローラ15は自由に回転することができる。一方、コロローラ15が
図6中の矢印「B」方向とは逆方向に回転しようとすると、歯止め31が回転する歯車32の歯に突き当たり、歯車32の回転を止め、コロローラ15の回転が止められる。
【0064】
この構成では、キャップユニット290が退避位置に向けて移動する際にはコロローラ15の回転を止めた状態で廃液チューブ14に当接させ、廃液チューブ14内の廃液を濾し取るように搬送方向下流側に押し流すことができる。一方、キャップユニット290が再度キャッピング位置に戻る際は、コロローラ15は自由に回転できるため、廃液チューブ14に対して負荷をかけずにキャップユニット290の移動が可能となる。これにより、廃液が廃液チューブ14内を逆流することを抑制できる。
【0065】
搬送管である廃液チューブ14は弾性材料からなる。そして、廃液チューブ14における液体の搬送方向上流側の端部が接続された吸引ポンプ13がキャップユニット290の移動によって移動しても、廃液チューブ14が変形し、吸引ポンプ13と廃液タンク16との接続を維持することができる。しかし、このような弾性材料からなる搬送管は、液送ポンプによる正圧が作用すると、搬送経路である内部空間が膨らむように変形し、液送ポンプによる液体を搬送しようとするエネルギーの一部が搬送管の変形に使われてしまう。そして、弾性材料からなる搬送管によって形成される搬送経路が長いほど、変形に使われるエネルギーが大きくなり、液送ポンプで発生した正圧では液体を搬送先まで搬送できず、液体が搬送管内に残留する不具合が生じ易くなる。
本実施形態では、弾性材料からなる廃液チューブ14をコロローラ15で押圧することで押し潰し、廃液チューブ14の内部の廃液を搬送方向下流側に押し流すため、廃液が廃液チューブ14内で残留し続けることを防止できる。
【0066】
本実施形態では、インクジェットプリンタのキャップ部材が回収した廃液を搬送する廃液搬送装置について説明したが、本発明に係る液体搬送装置としてはこれに限るものではない。例えば、特開2016-159501号公報に記載の構成のように、ワイパーブレードで回収した付着物を真空吸引装置で吸引して、回収タンクに搬送する装置であっても、搬送する付着物が液体を含む場合は本発明を適用可能である。
また、本発明は、画像形成装置におけるインクを含む液体を搬送する装置に限らず、液搬送元の内部の液体を吸引し、液搬送先に向けて圧送する液送ポンプと、液送ポンプと液搬送先とを接続して液体の搬送路を形成する搬送管を備える装置であれば適用可能である。
また、吸引ポンプ13等の液送ポンプとしては、油圧ポンプやスクリュポンプ、スクィーズポンプ等の公知の液送ポンプを用いることができる。
【0067】
本実施形態のプリンタ1では、廃液搬送装置10の押圧移動手段であるコロローラ15がキャップユニット290と共にスライドする構成であるが、コロローラ15等の押圧移動手段が単独でスライドする構成でもよい。また、キャップ部材が固定で液体吐出ヘッドを有するユニットが移動する構成の場合は、液体吐出ヘッドを有するユニットの移動に連動して押圧移動手段がスライドし、液体を下流側に搬送する構成としてもよい。また、これらに限らず、廃液チューブ14等の搬送管に沿って、液体の搬送方向下流側に向かって移動する部材があれば、その移動する部材に連動させて押圧移動手段を移動させる構成としてもよい。
【0068】
また、プリンタ1では、送液ポンプである吸引ポンプ13が駆動していないタイミングで押圧移動手段であるコロローラ15が搬送管である廃液チューブ14を押し潰しながら移動する構成である。送液ポンプが駆動するタイミングで押圧移動手段が搬送管を押し潰しながら移動すると、送液ポンプによる液体の圧送をおこなうときに搬送管における押圧移動手段によって押し潰された部分の搬送経路の断面積が狭くなり、液体が搬送され難くなるおそれがある。これに対して、プリンタ1のように、送液ポンプが駆動してないタイミングで押圧移動手段を移動させることより、送液ポンプの駆動時に効率的な圧送を行うことができる。
【0069】
本実施形態において、「液体吐出ヘッド」とは、吐出孔(ノズル)から液体を吐出・噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、三次元造形用材料液等の用途で用いることができる。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子や薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0070】
本実施形態では、複数の液体吐出ヘッドを用紙幅方向(搬送方向と直交する方向)に並べることで、長尺な液体吐出ヘッド(ラインヘッド)とし、液体吐出ヘッドは装置本体に対して移動しない構成となっている。液体吐出ヘッドとしては、他の部品と共に「液体吐出ユニット」を形成し、装置本体に対して移動しながら印刷する構成としてもよい。
【0071】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、供給循環機構、キャリッジ、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0072】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドと供給循環機構が一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドと供給循環機構が一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットの供給循環機構と液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、供給循環機構若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
【0073】
「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドまたは液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0074】
「液体を吐出する装置」としては、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)等がある。また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0075】
「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。「液体が付着可能なもの」の形状しては、用紙Pのようなシート状に限らず、液体が付着するものであればどのような形状でもよい。「液体が付着可能なもの」としては、例えば、フィルム製品、衣料用等の布製品、壁紙や床材等の建材、皮革製品などに使用されるものであってもよい。
【0076】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、三次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0077】
また、本実施形態のプリンタ1は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する「液体を吐出する装置」である。相対的に移動する装置の具体例としては、本実施形態のように液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置や、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置などが含まれる。「液体を吐出する装置」としては、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置に限定するものではない。
【0078】
「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で、用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置がある。また、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて、原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等は何れも同義語とする。
【0079】
以上に説明したものは一例であり、以下の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
キャップユニット290等の液搬送元と廃液タンク16等の液搬送先とを接続して廃液等の液体の搬送路を形成する廃液チューブ14等の搬送管を備える廃液搬送装置10等の液体搬送装置において、搬送管を押圧した状態で、搬送管における液体の搬送方向下流側に向けて移動するコロローラ15等の押圧移動手段を備えることを特徴とする。
これによれば、上記実施形態で説明したように、押圧移動手段によって押圧されることで搬送管が押し潰される。また、押圧した状態で押圧移動手段が移動することで、搬送管における押圧移動手段によって押し潰されて搬送路の断面積が小さくなる部分が液体の搬送方向下流側に移動し、断面積が小さくなった部分の搬送管の内壁面に押された液体が搬送方向下流側に移動する。そして、押圧移動手段が搬送管を押圧しながら移動する範囲では、液搬送元から液搬送先までの液体の搬送路の長さに関係なく、液体を搬送方向下流側に押し流すことができる。このため、搬送元と液搬送先との間の搬送管が長い装置であっても、液搬送先への円滑な液体の搬送を行うことが可能となる。
【0080】
(態様2)
態様1において、液搬送元の内部の前記液体を吸引し、搬送管を介して液搬送先に向けて圧送する吸引ポンプ13等の液送ポンプを備えることを特徴とする。
これによれば、上記実施形態で説明したように、液送ポンプで圧送しきれずに搬送管の内部に残留した液体を搬送方向下流側に押し流すことができる。このため、液搬送元と液搬送先との間の搬送管が長く、搬送管における流体抵抗が大きい装置であっても、液搬送先への円滑な液体の搬送を行うことが可能となる。液送ポンプの配置としては、上記実施形態のように、搬送管の搬送方向上流側端部と接続する配置に限らず、搬送管の搬送方向下流側端部と接続する配置でもよい。また、液搬送元と液搬送先とを接続する搬送管の途中に液送ポンプを配置してもよい。
【0081】
(態様3)
態様1または2の態様において、押圧移動手段は、偏心カムであることを特徴とする。
これによれば、上記実施形態で説明したように、押圧移動手段による搬送管の押圧状態を調整できる。
【0082】
(態様4)
態様1乃至3の何れかの態様において、押圧移動手段は、コロローラ15等のローラ部材であり、ローラ部材は、搬送管における液体の搬送方向上流側に向けて移動するときには回転し、搬送方向下流側に向けて移動するときには回転しない構成であることを特徴とする。
これによれば、上記実施形態で説明したように、ローラ部材が搬送方向下流側に移動するときには搬送管の内部の液体を濾し取るように押し流すことができ、ローラ部材が搬送方向下流側に移動するときには搬送管の内部の液体の逆流を抑制することができる。
【0083】
(態様5)
態様1乃至4の何れかの態様において、押圧移動手段の移動速度を可変制御可能であることを特徴とする。
これによれば、上記実施形態で説明したように、搬送管の内部の液体の状態に応じた速度で液体を押し流すことができる。例えば、インクを含有する液体を搬送する構成の場合、移動速度を変えることで長期放置して増粘したインクも搬送することが可能となる。
【0084】
(態様6)
インク等の液体を吐出するノズル等の吐出孔が形成されたノズル面230f等の吐出面を有する液体吐出ヘッド230等の液体吐出ヘッドと、吐出面と対向し、液体を回収するキャップユニット290等のキャップ部材と、キャップ部材が回収した液体を収容する廃液タンク16等の回収液体収容部と、キャップ部材の内部の液体を回収液体収容部まで搬送する液体搬送手段と、を備えるプリンタ1等の液体を吐出する装置において、液体搬送手段として、態様1乃至5の何れかの態様に係る廃液搬送装置10等の液体搬送装置を備えることを特徴とする。
これによれば、上記実施形態で説明したように、キャップ部材から回収液体収容部まで廃液等の液体を搬送する搬送経路を長くせざるを得ない液体を吐出する装置であっても、円滑な液体の搬送を行うことができる。
【0085】
(態様7)
態様6において、キャップ部材は、吐出面と対向する位置(キャッピング位置等)と吐出面と対向しない位置(退避位置等)との間で移動可能であり、搬送管の少なくとも一部はキャップ部材の移動方向に沿って配置され、押圧移動手段は、キャップ部材の移動に連動して搬送方向下流側に向けて移動することを特徴とする。
これによれば、上記実施形態で説明したように、押圧移動手段を移動させる専用の移動機構を設けることなく、押圧移動手段によって搬送管を押し潰した状態で、押圧移動手段を液体の搬送方向下流側に向けて移動させる構成を実現できる。
【0086】
(態様8)
インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッド230等の液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドから液体を吸引するキャップユニット290等のキャップ部材と、キャップ部材によって吸引された液体を収容する廃液タンク16等の液体収容部と、キャップ部材と液体収容部とを接続する廃液チューブ14等の液体流路と、を備え、キャップ部材は、前記キャップ部材が液体吐出ヘッドから離れる方向に移動するとき、液体流路を押圧しながら移動するコロローラ15等の押圧移動手段を有することを特徴とする。
これによれば、上記実施形態で説明したように、押圧移動手段によって押圧されることで液体流路が押し潰される。押圧した状態で押圧移動手段が移動すると、液体流路における押圧移動手段によって押し潰されて液体流路の断面積が小さくなる部分が液体の搬送方向下流側に移動し、断面積が小さくなった部分の液体流路の内壁面に押された液体が搬送方向下流側に移動する。そして、押圧移動手段が液体流路を押圧しながら移動する範囲では、キャップ部材から液体流路までの液体の搬送路の長さに関係なく、液体を搬送方向下流側に押し流すことができる。このため、キャップ部材と液体流路との間の液体流路が長い装置であっても、液搬送先への円滑な液体の搬送を行うことが可能となる。さらに、キャップ部材が押圧移動手段を有するため、押圧移動手段を移動させる専用の移動機構を設けることなく、押圧移動手段によって液体流路を押し潰した状態で、押圧移動手段を液体の搬送方向下流側に向けて移動させる構成を実現できる。
【0087】
(態様9)
態様8において、キャップ部材が、液体吐出ヘッドと対向するキャッピング位置から、液体吐出ヘッドと対向しない退避位置へと移動するとき、押圧移動手段が液体流路を押圧しながら移動することを特徴とする。
これによれば、上記実施形態で説明したように、液体を搬送するために押圧移動手段を移動させる時間を削減できる。
【0088】
(態様10)
態様8または9において、キャップ部材の内部の液体を吸引し、液体流路を介して液体収容部に向けて圧送する吸引ポンプ13等の液送ポンプを備えることを特徴とする。
これによれば、上記実施形態で説明したように、液送ポンプで圧送しきれずに搬送管の内部に残留した液体を搬送方向下流側に押し流すことができる。このため、液搬送元と液搬送先との間の搬送管が長く、搬送管における流体抵抗が大きい装置であっても、液搬送先への円滑な液体の搬送を行うことが可能となる。
【0089】
(態様11)
態様8乃至10の何れかの態様において、押圧移動手段は、偏心カムであることを特徴とする。
これによれば、上記実施形態で説明したように、押圧移動手段による液体流路の押圧状態を調整できる。
【0090】
(態様12)
態様8乃至11の何れかの態様において、押圧移動手段は、コロローラ15等のローラ部材であり、ローラ部材は、液体流路における液体の搬送方向上流側に向けて移動するときには回転し、搬送方向下流側に向けて移動するときには回転しない構成であることを特徴とする。
これによれば、上記実施形態で説明したように、ローラ部材が搬送方向下流側に移動するときには液体流路の内部の液体を濾し取るように押し流すことができ、ローラ部材が搬送方向下流側に移動するときには液体流路の内部の液体の逆流を抑制することができる。
【0091】
(態様13)
態様8乃至12の何れかの態様において、押圧移動手段の移動速度を可変制御可能であることを特徴とする。
これによれば、上記実施形態で説明したように、液体流路の内部の液体の状態に応じた速度で液体を押し流すことができる。例えば、インクを含有する液体を搬送する構成の場合、移動速度を変えることで長期放置して増粘したインクも搬送することが可能となる。
【0092】
(態様14)
態様7乃至13の何れかの態様において、押圧移動手段は、キャップ部材の水平方向の移動に連動して水平方向に移動することを特徴とする。
これによれば、上記実施形態で説明したように、搬送路が水平方向であり、重力が液体の移動に寄与せず、液体が残留し易い部分の液体の移動を押圧移動手段で補助することができ、効率的な液体の移動を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0093】
1 プリンタ
10 廃液搬送装置
13 吸引ポンプ
14 廃液チューブ
15 コロローラ
16 廃液タンク
32 歯車
33 揺動軸
90 退避エリア
100 プリンタ
100 給紙部
110 給紙トレイ
120 給送装置
130 レジストローラ対
151 ローラ回転軸
200 画像形成部
201 受取胴
201a 受取用紙グリッパ
202 受渡胴
210 用紙搬送ドラム
210a 搬送用紙グリッパ
211 吸引装置
220 インク吐出部
220 液体吐出ヘッド
230 液体吐出ヘッド
230a ヘッド配置空間
230f ノズル面
231 ヘッド保持フレーム
290 キャップユニット
291 キャップ保持ガイド
300 乾燥部
301 乾燥機構
302 搬送機構
400 排紙部
410 排紙トレイ
P 用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0094】