(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】シリカ膜形成用組成物、前記組成物から製造されるシリカ膜、および前記シリカ膜を含む電子素子
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20220310BHJP
C01B 33/12 20060101ALI20220310BHJP
H01B 3/12 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
H01L21/316 B
C01B33/12 C
H01B3/12 336
(21)【出願番号】P 2020085864
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】10-2019-0057715
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】張 勝 宇
(72)【発明者】
【氏名】郭 澤 秀
(72)【発明者】
【氏名】▲はい▼ 鎭 希
(72)【発明者】
【氏名】趙 ▲げん▼ 洙
(72)【発明者】
【氏名】金 義 賢
(72)【発明者】
【氏名】盧 健 培
(72)【発明者】
【氏名】司空 峻
(72)【発明者】
【氏名】李 忠 憲
(72)【発明者】
【氏名】任 浣 熙
(72)【発明者】
【氏名】黄 丙 奎
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216341(JP,A)
【文献】特開2013-001721(JP,A)
【文献】特開2015-115369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
C01B 33/12
H01B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーヒドロポリシラザンおよび溶媒を含むシリカ膜形成用組成物であって、
CDCl
3を用いて測定される前記パーヒドロポリシラザンの
1H-NMRスペクトルにおいて、N
3SiH
1およびN
2SiH
2に由来するピークをPeak1とし、NSiH
3に由来するピークをPeak2としたとき、前記Peak1および前記Peak2の総面積(P
1+P
2)に対する前記Peak1の面積(P
1)の比であるP
1/(P
1+P
2)が0.77以上であり、前記Peak1の領域中の前記Peak1と前記Peak2とが連結する極小点から化学シフト値4.78ppmまでの領域を領域Bとし、化学シフト値4.78ppmから前記Peak1の極小点までの領域を領域Aとしたとき、前記領域Bの面積(P
B)に対する前記領域Aの面積(P
A)の比であるP
A/P
Bが1.5以上であり、
前記パーヒドロポリシラザンの重量平均分子量は、6,000g/mol~30,000g/molである、シリカ膜形成用組成物。
【請求項2】
前記Peak1および前記Peak2の総面積(P
1+P
2)に対する前記Peak1の面積(P
1)の比であるP
1/(P
1+P
2)が、0.77~0.82である、請求項1に記載のシリカ膜形成用組成物。
【請求項3】
前記Peak1の領域中の前記領域Bの面積に対する前記領域Aの面積の比であるP
A/P
Bが1.5~2.0である、請求項1または2に記載のシリカ膜形成用組成物。
【請求項4】
前記パーヒドロポリシラザンの重量平均分子量は、6,000g/mol~15,000g/molである、請求項1~3のいずれか1項に記載のシリカ膜形成用組成物。
【請求項5】
前記パーヒドロポリシラザンの含有量は、前記シリカ膜形成用組成物の総量に対して0.1~30質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載のシリカ膜形成用組成物。
【請求項6】
前記溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p-メンタン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、酢酸ブチル、酢酸アミル、メチルイソブチルケトン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のシリカ膜形成用組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のシリカ膜形成用組成物の硬化物を含む、シリカ膜。
【請求項8】
請求
項7に記載のシリカ膜を含む、電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ膜形成用組成物、前記組成物から製造されるシリカ膜、および前記シリカ膜を含む電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体技術が発達するに伴い、より小さなサイズの半導体チップに、集積度を高くし性能が改善された高集積および高速化の半導体メモリセルに対する研究が続けられている。しかし、半導体の高集積化の要求に伴って配線間の間隔が狭くなり、RC遅延(Resistive-capacitive delay)、クロストーク、応答速度の低下などの現象が発生し、これは半導体インターコネクション(interconnection)の側面から問題を起こし得る。このような問題を解決するために、デバイス間に適切な分離が必要である。
【0003】
そのため、ケイ素含有材料で形成されたシリカ膜が、半導体素子の層間絶縁膜、平坦化膜、パッシベーション膜、素子間を分離する絶縁膜などとして幅広く用いられている。シリカ膜は、半導体素子だけでなく表示装置などの保護膜、絶縁膜などとしても用いられている。
【0004】
半導体装置、液晶などの線幅40nm以下の半導体装置において、パターンの集積密度がより深化しており、このような集積密度の深化に伴って、狭いパターンを埋め込む絶縁膜に、流動性CVD(F-CVD、Flowable Chemical Vapor Depositionition)や、塗布法で形成されたシリカ膜が使用されるようになってきている。このような絶縁特性を有するシリカ膜を形成するために、塗布型絶縁膜(SOD、Spin-On Dielectric)の材料として無機ポリシラザン含有コーティング液が使用されている。この際、基材の位置によってシリカ膜厚(Thickness:THK)の偏差が生じるため、後工程の進行に影響を与えることがあり、これは製品の絶縁特性に悪影響を与え得る。
【0005】
特に、無機ポリシラザン含有コーティング液をスピンコーティング法によってパターンウエハー上に塗布して硬化する場合、ウエハーの位置、パターンブロックの位置などによってシリカ膜厚(THK)が変わる現象が発生する。前記シリカ膜厚(THK)が均一でない場合、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等の後工程の進行時に悪影響を及ぼし得る。
【0006】
そこで、従来の発明では、ポリシラザン合成時の分子量を高くする方法で上記問題を解決しようとする試みがあった。しかしながら、ポリシラザンの分子量が高い場合は、水分と接触した際にゲル化するなどの問題が発生し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一実施形態は、シリカ膜形成時のシリカ膜厚(THK)の均一性に優れたシリカ膜形成用組成物を提供する。
【0008】
本発明の他の実施形態は、前記シリカ膜形成用組成物から製造されるシリカ膜を提供する。
【0009】
また、本発明のさらに他の実施形態は、前記シリカ膜を含む電子素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、パーヒドロポリシラザン(PHPS)および溶媒を含むシリカ膜形成用組成物であって、CDCl3を用いて測定される前記パーヒドロポリシラザン(PHPS)の1H-NMRスペクトルにおいて、N3SiH1およびN2SiH2に由来するピークをPeak1とし、NSiH3に由来するピークをPeak2としたとき、前記Peak1および前記Peak2の総面積(P1+P2)に対する前記Peak1の面積(P1)の比であるP1/(P1+P2)が0.77以上であり、前記Peak1の領域内の前記Peak1と前記Peak2とが連結する極小点から化学シフト値4.78ppmまでの領域を領域Bとし、化学シフト値4.78ppmから前記Peak1の極小点までの領域を領域Aとしたとき、前記領域Bの面積(PB)に対する前記領域Aの面積(PA)の比であるPA/PBが1.5以上を満足するシリカ膜形成用組成物に関する。
【0011】
前記シリカ膜形成用組成物は、前記パーヒドロポリシラザン(PHPS)の1H-NMRスペクトルにおいて、前記Peak1および前記Peak2の総面積に対する前記Peak1の面積の比であるP1/(P1+P2)が0.77~0.82であり得る。
【0012】
前記シリカ膜形成用組成物は、前記パーヒドロポリシラザン(PHPS)の1H-NMRスペクトルにおいて、前記領域Bに対する前記領域Aの面積の比であるPA/PBが1.5~2.0であり得る。
【0013】
前記パーヒドロポリシラザン(PHPS)の重量平均分子量は、3,000g/mol~30,000g/molであり得る。
【0014】
前記パーヒドロポリシラザン(PHPS)の重量平均分子量は、5,000g/mol~15,000g/molであり得る。
【0015】
前記パーヒドロポリシラザン(PHPS)の含有量は、前記シリカ膜形成用組成物の総量に対して0.1~30質量%であり得る。
【0016】
前記溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p-メンタン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、酢酸ブチル、酢酸アミル、メチルイソブチルケトン、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0017】
本発明の他の実施形態は、前記シリカ膜形成用組成物から製造されるシリカ膜に関するものである。
【0018】
また、本発明のさらに他の実施形態は、前記シリカ膜を含む電子素子に関するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シリカ膜形成時の膜厚(THK)の均一性に優れたシリカ膜形成用組成物が提供される。
【0020】
本発明の他の実施形態に係るシリカ膜は、優れた膜厚(THK)の均一性を有することにより、これを含む電子素子の半導体収率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】パーヒドロポリシラザン(PHPS)の
1H-NMRスペクトルであって、Peak1、Peak2、領域A、および領域Bの区間を表わした図である。
【
図2】パターン化されたウエハー上にシリカ膜を形成した後、ウエハーの径に沿って切断して、ウエハー内の一部のパターンブロックの断面を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されることはなく、本発明は後述する請求の範囲の範疇によって定義されるのみである。
【0023】
層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるとするとき、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。反対にある部分が他の部分の「直上」にあるとするときには、中間に他の部分がないことを意味する。
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係るシリカ膜形成用組成物を説明する。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、パーヒドロポリシラザン(PHPS)および溶媒を含むシリカ膜形成用組成物であって、CDCl3を用いて測定されるパーヒドロポリシラザン(PHPS)の1H-NMRスペクトルにおいて、N3SiH1およびN2SiH2に由来するピークをPeak1とし、NSiH3に由来するピークをPeak2としたとき、前記Peak1およびPeak2の総面積(P1+P2)に対するPeak1の面積(P1)の比であるP1/(P1+P2)が0.77以上であり、Peak1の領域中のPeak1とPeak2が連結する極小点から化学シフト値4.78ppmまでの領域を領域Bとし、化学シフト値4.78ppmからPeak1の極小点までの領域を領域Aとしたとき、前記領域Bの面積(PB)に対する領域Aの面積(PA)の比であるPA/PBが1.5以上であるシリカ膜形成用組成物を提供する。
【0026】
ポリシラザンは、ケイ素原子と窒素原子とが連続的に交互に結合(シラザン結合)して基本骨格を形成する重合体をいい、ポリシラザンのケイ素原子および窒素原子に置換された原子が全て水素(H)原子である場合をパーヒドロポリシラザン(PHPS)と呼ぶ。
【0027】
パーヒドロポリシラザン(PHPS)を
1H-NMRスペクトルで分析すると、パーヒドロポリシラザン(PHPS)内のN
3Si-H、N
2Si-H
2、およびNSi-H
3で表される単位に由来する3種類のSi-H基を確認することができる(
図1参照)。
【0028】
この際、パーヒドロポリシラザン(PHPS)の1H-NMRスペクトルで、各ピークの面積は、当該官能基に含まれている水素原子(H)の個数に比例するため、当該官能基の数が多いほどピーク面積は大きく現れる。したがって、面積比P1/(P1+P2)の値が大きいほど、パーヒドロポリシラザン(PHPS)内のNSiH3官能基に対して、N3SiH1官能基およびN2SiH2官能基の数がより多いことを意味する。
【0029】
一方、3,000g/mol~30,000g/molの重量平均分子量を有するパーヒドロポリシラザン(PHPS)の
1H-NMRスペクトルは、ブロード(broad)のPeakを示す。そのうち、N
3Si-HおよびN
2Si-H
2に由来するPeak(例えば、
図1に示すpeak1)と、NSi-H
3に由来するPeak(例えば、
図1に示すpeak2)とは、互いに相異する化学シフト(ppm)の値の範囲で現れる。
1H-NMRスペクトル上で、これら二つのPeakはうまく分離されて観察されるが、N
3Si-HおよびN
2Si-H
2に由来するPeakは、互いに類似した化学シフト(ppm)の値の範囲で現れるので、
1H-NMRスペクトル上で二つのPeakが非常に重なった状態で現れる。
【0030】
このように、1H-NMRスペクトルにおいて、パーヒドロポリシラザン(PHPS)のN3Si-HとN2Si-H2とに由来するPeakが非常に重なった状態で現れることにより、従来、パーヒドロポリシラザン(PHPS)を定義したり分析したりする場合、Peak1とPeak2との特性または面積比のみを主に考慮していた。しかし、これらだけでは、パーヒドロポリシラザン(PHPS)の構造や特性を解明するに至らなかった。
【0031】
半導体装置において、パターンの集積密度を深化させるために、絶縁膜として、流動性CVD(F-CVD、Flowable Chemical Vapor Depositionition)や塗布法により形成したシリカ膜が使用される。絶縁特性を有するシリカ膜を形成するために、塗布型絶縁膜(SOD、Spin-On Dielectric)の材料として無機ポリシラザン含有コーティング液を使用する。この液を用いてシリカ膜を製造すると、基材の位置によってシリカ膜厚の偏差が生じ、これはシリカ膜を含む電子素子の絶縁特性に悪影響を及ぼす。このような問題を解決するために、従来技術においては、シリカ膜形成用組成物に含まれるポリシラザンの分子量を高くする方法を試みたが、ポリシラザンの分子量が高くなった場合、水分と接触してゲル化(gelation)する問題が発生した。
【0032】
前述した問題と関連して、本願の発明者らは、パーヒドロポリシラザン(PHPS)の1H-NMRスペクトルにおいて、前記Peak1とPeak2との間の面積比P1/(P1+P2)だけでなく、前述した領域Bに対する領域Aの面積比PA/PBが共に特定範囲にある場合、パーヒドロポリシラザン(PHPS)および溶媒を含むシリカ膜形成用組成物で製造したシリカ膜厚の均一性が大きく向上することを発見して、本発明を完成させた。
【0033】
すなわち、本発明の一実施形態に係るシリカ膜形成用組成物は、パーヒドロポリシラザン(PHPS)および溶媒を含み、パーヒドロポリシラザン(PHPS)の1H-NMRスペクトルにおいて、前記P1/(P1+P2)が0.77以上であり、前記PA/PBが1.5以上である組成物をウエハー上に塗布する場合、シリカ膜の膜厚の均一性を大きく向上させることができる。
【0034】
N
3SiH
1およびN
2SiH
2に由来するPeak1と、NSiH
3に由来するPeak2とについて、これらピークの面積比であるP
1/(P
1+P
2)が0.77以上であり、Peak1の領域中のPeak1とPeak2とが連結する極小点から化学シフト値4.78ppmまでの領域を領域B(例えば、
図1の領域B)とし、化学シフト値4.78ppmからPeak1の極小点までの領域を領域A(例えば、
図1の領域A)としたとき、前記領域Bに対する領域Aの面積比P
A/P
Bが1.5以上である組成物を用いてシリカ膜を製造すると、優れた膜厚の均一性を有するシリカ膜を得ることができる。
【0035】
前記パーヒドロポリシラザン(PHPS)の1H-NMRスペクトルにおいて、前記面積比P1/(P1+P2)が0.77以上である条件と、前記面積比PA/PBが1.5以上である条件とは、同時に満足されなければならない。2つのうち1つでも満足できない場合、本発明の一実施形態に係る優れた膜厚(THK)の均一性を有するシリカ膜を製造することは難しい。
【0036】
一方、パーヒドロポリシラザン(PHPS)溶液をパターンウエハー(Pattern wafer)上に塗布して硬化する過程において、ウエハーの位置およびパターンブロック(Pattern block)の位置などにより膜厚が変わる現象が起こる。特に、シリカ膜形成用組成物がウエハー上に塗布および硬化されるとき、パターンブロックの中心からパターンブロックの縁にいくほど、ウエハー上のシリカ膜厚が漸減する傾向を示す。それにより、パターンブロックの中心と縁とでシリカ膜厚の差が生じ、膜全体の厚さの均一性が低下することになる。
【0037】
図2は、パターンが形成されたウエハー1上にパーヒドロポリシラザン溶液をコーティングしてシリカ膜2を形成した後、これをウエハー1の径に沿って切断したウエハー内の一部のパターンブロック3の断面を概略的に示した図面である。
図2を参照すると、パターンブロック3の縁(Edge)、さらに具体的には、パターンブロックの縁(edge)から第2パターンライン(line)4の上端に塗布されたシリカ膜厚をHeとし、パターンブロックの中心(Center)に形成されたパターンライン5の上端に塗布されたシリカ膜厚をHcとしたとき、一般にHe値はHc値に比べて小さい値を有する。すなわち、He値およびHc値が似ている値であるほど、シリカ膜厚の均一性に優れているということができ、したがって、He/Hc値が1に近い値を有するほどシリカ膜厚の均一性は優れているということができる。
【0038】
そこで、パーヒドロポリシラザン(PHPS)の1H-NMRスペクトルにおいて、面積比P1/(P1+P2)が0.77以上である条件と、面積比PA/PBが1.5以上である条件とを共に満足する場合、パーヒドロポリシラザン(PHPS)を含むシリカ膜形成用組成物によるシリカ膜のHe/Hc値は1に近い数値を示し、これはつまり当該シリカ膜厚の均一性が優れていることを意味する。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記P1/(P1+P2)は0.77~0.82であり得、例えば0.775~0.82、例えば0.78~0.82、例えば0.785~0.82、例えば0.79~0.82、例えば0.795~0.82、例えば0.80~0.82、例えば0.77~0.815で、例えば0.77~0.81、例えば0.77~0.805、例えば、0.77~0.80でもあり得るが、これらに制限されるものではない。P1/(P1+P2)が上記範囲を満足する場合、当該シリカ膜形成用組成物から製造されたシリカ膜は、優れた膜厚(THK)均一性の特性を有することができる。
【0040】
本発明の一実施形態において、前記PA/PBは、1.5~2.0であってもよく、例えば1.6~2.0、例えば1.7~2.0、例えば1.8~2.0、例えば1.9~2.0、例えば1.5~1.9、例えば1.5~1.8、例えば1.5~1.7、例えば1.5~1.6、例えば1.6~1.9、例えば1.7~1.9、例えば1.5~1.8でもあってもよく、これらに制限されない。前記PA/PBが上記範囲を満足する場合、当該シリカ膜形成用組成物から製造されたシリカ膜は、優れた膜厚(THK)均一性の特性を有することができる。
【0041】
一方、パーヒドロポリシラザン(PHPS)の1H-NMRスペクトルは、合成されたパーヒドロポリシラザン(PHPS)を適正濃度で溶媒に溶かした後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去し、そこに1H-NMRスペクトル測定用溶媒、例えば、CDCl3(Chloroform-d)を添加して、1H-NMRスペクトル測定溶液を製造して測定することができる。1H-NMRスペクトルの測定方法は、当該技術分野において通常の知識を有する技術者によく知られている。具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0042】
前記パーヒドロポリシラザン(PHPS)の重量平均分子量は、3,000g/mol~30,000g/mol、例えば4,000g/mol~30,000g/mol、例えば5,000g/mol~30,000g/mol、例えば5,000g/mol~25,000g/mol、例えば5,000g/mol~20,000g/mol、例えば5,000g/mol~15,000g/mol、例えば5,000g/mol~10,000g/mol、例えば6,000g/mol~30,000g/mol、例えば7,000g/mol~30,000g/mol、例えば8,000g/mol~30,000g/mol、例えば9,000g/mol~30,000g/mol、例えば10,000g/mol~30,000g/mol、例えば10,000g/mol~25,000g/mol、例えば10,000g/mol~20,000g/mol、例えば10,000g/mol~15,000g/molであり得るが、これらに制限されるものではない。パーヒドロポリシラザン(PHPS)の重量平均分子量が上記範囲を満足する場合、当該シリカ膜形成用組成物から製造されたシリカ膜は、優れた膜厚(THK)均一性の特性を有することができる。
【0043】
パーヒドロポリシラザン(PHPS)は、シリカ膜形成用組成物の総量に対して0.1~30質量%、例えば0.5~30質量%、例えば1.0~30質量%、例えば1~25質量%、例えば3~25質量%、例えば5~25質量%、例えば10~25質量%、例えば15~25質量%、例えば1~20質量%、例えば3~20質量%、例えば5~20質量%、例えば10~20質量%、例えば20質量%の濃度で含まれ得るが、これらに制限されるものではない。
【0044】
シリカ膜形成用組成物に含まれる溶媒は、パーヒドロポリシラザンを溶解することができ、パーヒドロポリシラザンと反応しないものであれば特に制限されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p-メンタン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、酢酸ブチル、酢酸アミル、メチルイソブチルケトン、またはこれらの組み合わせが挙げられる。しかしながら、これらに制限されるものではない。
【0045】
本発明の一実施形態に係るシリカ膜形成用組成物は、熱酸発生剤(thermal acid generator、TAG)をさらに含み得る。
【0046】
熱酸発生剤は、シリカ膜形成用組成物の現像性を改善するための添加剤で、組成物に含まれている有機シラン系重縮合体が、比較的低い温度で現像できるようにする。
【0047】
熱酸発生剤は、熱によって酸(H+)を発生できる化合物であれば特に制限されないが、90℃以上で活性化して十分な酸を発生し、揮発性が低いものを選択することが好ましい。
【0048】
熱酸発生剤としては、例えば、ニトロベンジルトシラート、ベンゼンスルホン酸ニトロベンジル、フェノールスルフォネート、およびこれらの組み合わせから選択することができる。
【0049】
熱酸発生剤は、シリカ膜形成用組成物の総量に対して0.01~25質量%の含有量で含まれることが好ましい。上記範囲で含まれる場合、比較的低い温度で上記重縮合体が現像されると共に、コーティング性を改善することができる。
【0050】
本発明のシリカ膜形成用組成物は、界面活性剤をさらに含み得る。
【0051】
界面活性剤としては、特に制限されず、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、エフトップEF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成株式会社製)、メガファック(登録商標)F171、F173(DIC株式会社製)、フロラードFC430、FC431(スリーエム ジャパン株式会社製)、アサヒガードAG710(AGC株式会社製)、サーフロン(登録商標)S-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(AGCセイミケミカル株式会社製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業株式会社製)等や、その他シリコン系界面活性剤を挙げることができる。
【0052】
界面活性剤は、シリカ膜形成用組成物の総量に対して、好ましくは0.001~10質量%の含有量で含まれる。上記範囲で含まれる場合、溶液の分散性を改善すると共に、膜形成時に膜厚の均一性を高めることができる。
【0053】
本発明の他の実施形態によれば、前記シリカ膜形成用組成物から製造されたシリカ膜を提供する。
【0054】
前記シリカ膜は、本発明の一実施形態に係るパーヒドロポリシラザンと溶媒とを含むシリカ膜形成用組成物を、基板上にコーティングして硬化することによって製造することができる。具体的には、基板上に上述したシリカ膜形成用組成物を塗布する工程、前記シリカ膜形成用組成物が塗布された基板を乾燥する工程段階、および150℃以上の不活性ガス雰囲気下で硬化する工程を含む製造方法によって、シリカ膜を製造することができる。
【0055】
本発明のシリカ膜形成用組成物は、溶液工程で塗布することができ、例えばスピンオンコーティング、スリットコーティング、インクジェット印刷などの方法で塗布することができる。
【0056】
基板は、例えば半導体、液晶などのデバイス基板であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0057】
製造されたシリカ膜については、SEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、SU-8230)のような装置を使用して、ウエハー上に塗布された膜の断面を観察することができる。
【0058】
本発明の一実施形態に係るシリカ膜は、膜厚(THK)の均一性に優れ、したがって、例えば、絶縁膜、導電膜、ハードコート層などの保護膜、半導体キャパシタなどの用途に好適に使用することができる。絶縁膜は、例えば、トランジスタ素子とビット線との間、トランジスタ素子とキャパシタとの間などに使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明のさらに他の実施形態例によれば、前記シリカ膜を含む電子素子を提供する。前記電子素子は、表示装置、半導体、イメージセンサなどが含まれる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の望ましい実施例を記載する。ただし、下記の実施例は本発明の望ましい一例にすぎず、本発明が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0060】
(合成例1:パーヒドロポリシラザン(PHPS)の半製品(A)の製造)
攪拌機および温度制御装置が付いた容量2Lの反応器の内部を、乾燥窒素で置換した。乾燥ピリジン1,500gを反応器に投入し、これを5℃に冷却した。続いてジクロロシラン100gを、1時間にわたって徐々に投入した。さらに、反応器にアンモニア70gを3時間にわたって徐々に投入した。アンモニア投入完了後、乾燥窒素を30分間投入し、反応器内に残存するアンモニアを除去した。得られた白色のスラリー状の生成物を、乾燥窒素雰囲気中で1μmのテフロン製ろ過器を使用してろ過し、ろ過液1,000gを得た。これに乾燥キシレン1,000gを添加した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒をピリジンからキシレンに置換する操作を計3回繰り返して、固形分濃度を80質量%に調整した。その後、空孔サイズ0.1μmのテフロン製ろ過器でろ過した。このような工程を経て、固形分濃度が80質量%であって、重量平均分子量が3,000g/molであるパーヒドロポリシラザン(PHPS)半製品(A)を得た。
【0061】
パーヒドロポリシラザン(PHPS)の製造
(実施例1)
攪拌機および温度制御装置の付いた容量1Lの反応器に、上記合成例1で製造したパーヒドロポリシラザン(PHPS)半製品(A)40g、乾燥ピリジン 365g、および乾燥キシレン 75gを投入し、100℃に昇温した後、下記表1に記載した重量平均分子量になるまで攪拌した。反応終了後、溶媒をジブチルエーテルに置換する工程を50℃で4回繰り返し、固形分濃度を20質量%に調整して、空孔サイズが0.1μmのテフロン製ろ過器でろ過した。これにより、重量平均分子量9,292g/molのパーヒドロポリシラザン(PHPS)を得た。
【0062】
(実施例2~実施例5および比較例1~比較例5)
攪拌機および温度制御装置の付いた容量1Lの反応器に、上記合成例1で製造したパーヒドロポリシラザン(PHPS)半製品(A)40gを添加し、これに乾燥ピリジンおよび乾燥キシレンをそれぞれ下記表1に記載した量で投入した。その後、100℃に昇温し、下記表1に記載した重量平均分子量になるまで攪拌した。反応完了後、溶媒をジブチルエーテルに置換する工程を50℃で4回繰り返し、固形分濃度を20%に調整して、空孔サイズが0.1μmのテフロン製ろ過器でろ過した。これにより、下記表1に記載された重量平均分子量(Mw)を有する実施例2~実施例5および比較例1~比較例5によるパーヒドロポリシラザン(PHPS)を得た。上記重量平均分子量はGPC(Gel Permation Chromatography)測定によるポリスチレン換算値である。
【0063】
【0064】
評価1:パーヒドロポリシラザン(PHPS)の1H-NMRスペクトルでのPeak1、Peak2、領域A、および領域Bの面積測定
実施例1~実施例5および比較例1~比較例5によるパーヒドロポリシラザン(PHPS)溶液(固形分濃度20%)を、それぞれバイアル(vial)に0.1gずつ入れ、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去した。乾燥した溶液を、CDCl3(Chloroform-d)溶媒2.0gと混合して、1H-NMRスペクトル測定溶液を作製した。測定溶液の1H-NMRスペクトルを、300MHzNMRで測定した。
【0065】
1H-NMRスペクトルにおいて、N3SiH1およびN2SiH2に由来するPeak1と、NSiH3に由来するPeak2の面積をそれぞれ測定し、Peak1の領域中のPeak1とPeak2とが連結する極小点から化学シフト値4.78ppmまでの領域Bの面積と、化学シフト値4.78ppmからPeak1の極小点までの領域Aの面積もそれぞれ測定した。
【0066】
Peak1およびPeak2の総面積を基準として、Peak1の面積の比をP1/(P1+P2)で示し、また、領域Bに対する領域Aの比をPA/PBで示す。
【0067】
前記Peak1、Peak2、領域A、および領域BのNMR積分値、P1/(P1+P2)値、およびPA/PB値を下記表2に示す。
【0068】
評価2:シリカ膜製造およびHe/Hc測定
実施例1~実施例5、および比較例1~比較例5により製造されたパーヒドロポリシラザン(PHPS)溶液をスピンコーターで、ライン幅が0.7μmであり、スペース幅が0.7μmであり、高さが1.0μmのパターンが形成された8インチウエハーの上にそれぞれコーティングした。150℃で2分間プリベーク(prebake)した後、酸素(O2)雰囲気下で1,000℃に昇温し、当該温度でH2/O2雰囲気下で1時間硬化させ、実施例1~実施例5、および比較例1~比較例5による組成物から製造されたシリカ膜を得た。
【0069】
上記のシリカ膜でコーティングされたパターンウエハー(Pattern wafer)を、径に沿ってダイシング(dicing)した。その断面を、SEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、SU-8230)を用いて、パターンブロックの縁(edge)から、第2パターンラインの上端からのシリカ膜厚(He)、およびパターンブロック中央(center)にあるパターンラインの上端からのシリカ膜厚(Hc)を測定した。HeをHcで割った値、He/Hcを下記表2に示す。
【0070】
【0071】
上記表2を参照すると、Peak1およびPeak2の総面積を基準として、Peak1の面積の比であるP1/(P1+P2)値が0.77以上の値を有し、領域Bに対する領域Aの面積の比PA/PBが1.5以上である実施例1~実施例5の場合、He/Hc値が最小で0.44であり、すべての実施例でそれ以上の値を示す。
【0072】
一方、P1/(P1+P2)値が0.77未満であり、PA/PBが1.5以上の値を有する比較例1の場合、He/Hc値が0.29の値を示し、実施例1~実施例5によるシリカ膜に比べて、膜厚の均一性が劣ることを確認することができる。
【0073】
また、P1/(P1+P2)値が0.77以上の値を有するが、PA/PBが1.5未満の値である比較例2~比較例5の場合も、He/Hc値がすべて0.29以下の値を示し、実施例1~実施例5の場合に比べてシリカ膜厚の均一性が劣ることを確認することができる。
【0074】
つまり、P1/(P1+P2)値が0.77以上であり、PA/PBが1.5以上であることを共に満足するとき、He/Hc値が1により近づき、これによりパターンブロックの中心(center)と縁(edge)でシリカ膜厚の差が小さな、すなわち、全体的に優れた厚さの均一性を有するシリカ膜を得ることができることが分かる。
【0075】
以上、本発明の望ましい実施例について詳しく説明したが、前記実施例に限られるわけではなく、互いに異なる多様な形態に製造されることができ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せずとも、他の具体的な形態で実施され得るということを理解するであろう。したがって、以上で記述した一実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解しなければならない。