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特許7038211感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及びフォトマスク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及びフォトマスク
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220310BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20220310BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/20 521
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020527544
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2019025174
(87)【国際公開番号】W WO2020004392
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2018125419
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 英幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 年哉
【審査官】倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-140346(JP,A)
【文献】国際公開第2009/119821(WO,A1)
【文献】RAJTA, I. et al.,Proton beam micromachining on strippable aqueous base developable negative resist,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B: Beam Interactions with Materials & At,NL,ELSEVIER,2005年03月17日,231,423-427
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/039
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学異性体のL体またはD体のうち、一方の比率が他方の比率より1%以上高い乳酸エチルを溶剤として含み、
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】
光学異性体のL体またはD体のうち、一方の比率が他方の比率より1%以上高い乳酸エチルを溶剤として含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
前記乳酸エチルの光学純度が99%以下である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
前記乳酸エチルの含有量が、前記溶剤の全量に対して10質量%以上である、請求項1又は2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂を含む、請求項2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
前記酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂が、酸の作用により分解し、極性が増大する基を有する樹脂であって、酸の作用により分解し、極性が増大する基がアセタール構造を有する、請求項1又は4に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
更に、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
前記活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物から生成される酸のpKaが-10以上5以下である、請求項6に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項8】
更に、酸拡散制御剤を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項9】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する化合物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項10】
フォトマスク製造用である、請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
【請求項12】
請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
前記レジスト膜を露光する露光工程と、
露光された前記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含むパターン形成方法。
【請求項13】
請求項12に記載のパターン形成方法を用いて作製されたフォトマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及びフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)などの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域又はクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線からi線に、更にKrFエキシマレーザー光に、というように短波長化の傾向が見られ、現在では193nm波長を有するArFエキシマレーザーを光源とする露光機が開発されている。また、更に解像力を高める技術として、従来から投影レンズと試料の間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」ともいう)で満たす、所謂、液浸法の開発が進んでいる。
【0003】
また、現在では、エキシマレーザー光以外にも、電子線(EB)、X線及び極紫外線(EUV)等を用いたリソグラフィーも開発が進んでいる。これに伴い、各種の放射線に有効に感応する化学増幅型レジスト組成物が開発されている。
上記化学増幅型レジスト組成物に含まれる溶剤として、乳酸エチル(EL)が知られている。
例えば、特許文献1には、有機溶剤として酢酸エチル及び酸化防止剤を含むレジスト組成物が記載されており、乳酸エチルを含む有機溶剤に溶解してなるレジスト組成物において、レジスト組成物の経時によるレジストパターンの寸法変動が抑制されたレジスト組成物が提供される旨記載されている。
また、特許文献2には、乳酸エチルを含む有機溶剤、及び酢酸を含むレジスト組成物が記載されており、乳酸エチルを含む有機溶剤に溶解してなるレジスト組成物において、経時によるレジスト組成物の感度劣化が抑制されるとともに、必要とされるリソグラフィー特性を有するレジスト組成物が提供される旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2007-171466号公報
【文献】日本国特開2007-25467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2で記載されているように、レジスト組成物を一定期間保存した後に、パターン形成を良好に行うことが着目されているが、近年の超微細パターン形成の要求に伴い、更なる良化が望まれている。
本発明の課題は、一定期間保存した場合であっても、良好な感度、良好な解像性、良好なパターン形状を極めて高次元で並立可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びにこれを用いた、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及びフォトマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らの検討により、溶剤として、光学異性体のL体またはD体のうち、一方の比率が他方の比率より1%以上高い乳酸エチルを含む感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を使用することにより、驚くべきことに、一定期間保存した場合であっても、良好な感度、良好な解像性、良好なパターン形状を極めて高次元で並立可能であることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0007】
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
<1>
光学異性体のL体またはD体のうち、一方の比率が他方の比率より1%以上高い乳酸エチルを溶剤として含み、
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<2>
光学異性体のL体またはD体のうち、一方の比率が他方の比率より1%以上高い乳酸エチルを溶剤として含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
上記乳酸エチルの光学純度が99%以下である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<3>
上記乳酸エチルの含有量が、上記溶剤の全量に対して10質量%以上である、<1>又は<2>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<4>
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂を含む、<2>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<5>
上記酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂が、酸の作用により分解し、極性が増大する基を有する樹脂であって、酸の作用により分解し、極性が増大する基がアセタール構造を有する、<1>又は<4>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<6>
更に、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含む、<1>~<5>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<7>
上記活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物から生成される酸のpKaが-10以上5以下である、<6>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<8>
更に、酸拡散制御剤を含む、<1>~<7>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<9>
ラクトン構造又はスルトン構造を有する化合物を含む、<1>~<8>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<10>
フォトマスク製造用である、<1>~<9>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<11>
<1>~<9>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
<12>
<1>~<9>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
上記レジスト膜を露光する露光工程と、
露光された上記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含むパターン形成方法。
<13>
<12>に記載のパターン形成方法を用いて作製されたフォトマスク。
本発明は、上記<1>~<13>に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記[1]~[12])についても記載している。
【0008】
[1]
光学異性体のL体またはD体のうち、一方の比率が他方の比率より1%以上高い乳酸エチルを溶剤として含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[2]
上記乳酸エチルの含有量が、上記溶剤の全量に対して10質量%以上である、[1]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[3]
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂を含む、[1]又は[2]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0009】
[4]
更に、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[5]
更に、酸拡散制御剤を含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[6]
上記活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物から生成される酸のpKaが-10以上5以下である、[4]又は[5]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0010】
[7]
上記酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂が、酸の作用により分解し、極性が増大する基を有する樹脂であって、酸の作用により分解し、極性が増大する基がアセタール構造を有する、[3]~[6]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[8]
ラクトン構造又はスルトン構造を有する化合物を含む、[1]~[7]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[9]
フォトマスク製造用である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0011】
[10]
[1]~[8]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
[11]
[1]~[8]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
前記レジスト膜を露光する露光工程と、
露光された前記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含むパターン形成方法。
[12]
[11]に記載のパターン形成方法を用いて作製されたフォトマスク。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、一定期間保存した場合であっても、良好な感度、良好な解像性、良好なパターン形状を極めて高次元で並立可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びにこれを用いた、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及びフォトマスクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されない。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV:Extreme Ultraviolet)、X線、軟X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書中における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も含む。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0014】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種を表す。また(メタ)アクリル酸はアクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種を表す。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布ともいう)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー株式会社製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶剤:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー株式会社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0015】
本明細書中における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【0016】
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう)は、光学異性体のL体またはD体のうち、一方の比率が他方の比率より1%以上高い乳酸エチルを溶剤として含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物である。
【0017】
本発明者らは、鋭意検討の結果、詳細な理由は定かではないが、光学異性体のL体またはD体のうち、一方の比率が他方の比率より1%以上高い乳酸エチルの保存安定性が非常に良好であることを見出した。
上記乳酸エチルの保存安定性が良好であることにより、上記乳酸エチルを本発明の組成物の溶剤として使用した場合も、上記組成物の保存安定性が良好であることに寄与し、組成物を一定期間保存した場合であっても、良好な感度、良好な解像性、良好なパターン形状を極めて高次元で並立可能との効果が得られるものと推定される。
【0018】
本発明の組成物は、レジスト組成物であることが好ましく、ポジ型のレジスト組成物であっても、ネガ型のレジスト組成物であってもよい。また、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。なかでも、ポジ型のレジスト組成物であり、アルカリ現像用のレジスト組成物であることが好ましい。
また、本発明の組成物は、化学増幅型のレジスト組成物であることが好ましく、化学増幅型のポジ型レジスト組成物であることがより好ましい。
【0019】
[溶剤]
本発明の組成物は、溶剤を含有する。
上記溶剤は、光学異性体のL体またはD体のうち、一方の比率が他方の比率より1%以上高い乳酸エチル(以下、「光学純度が1%以上の乳酸エチル」ともいう)を含む。
一方の比率とは、乳酸エチル全量に対するL体又はD体の含有比(質量比)を表す。
【0020】
本発明においては、乳酸エチル全量に対するL体の比率が、乳酸エチル全量に対するD体の比率より1%以上高くても良く、乳酸エチル全量に対するD体の比率が、乳酸エチル全量に対するL体の比率より1%以上高くても良い。
【0021】
上記溶剤における乳酸エチルの光学純度は1%以上であるが、好ましくは20%以上であり、更に好ましくは50%以上である。
【0022】
上記溶剤における乳酸エチルの光学純度の上限値は特に限定されないが、100%以下、典型的には99%以下である。
【0023】
上記光学純度は、キラルGC(ガスクロマトグラフィー)により測定することができる。
【0024】
光学純度が1%以上の乳酸エチルとしては、市販品の乳酸エチルを用いることもでき、また、ラセミ体の乳酸エチルから酵素を用いて製造することができる。
また、細菌を用いて光学純度が高い乳酸を製造し、得られた乳酸をエチルエステル化により光学純度が1%以上の乳酸エチルを製造することもできる。
【0025】
また、光学純度が1%以上の乳酸エチルにおいて、光学純度の調整方法としては、所望の光学純度を有する乳酸エチルが上市されている場合には、市販品をそのまま使用してもよく、所望の光学純度を有する乳酸エチルを上記の手法等で製造してもよい。また、特定の光学純度を有する乳酸エチルと、これとは光学純度が異なる乳酸エチル(例えば光学純度が0の乳酸エチルのラセミ体など)とを混合して、所望の光学純度を有する乳酸エチルを得てもよい。
【0026】
上記溶剤は、光学純度が1%以上の乳酸エチルのみを含んでも良く、光学純度が1%以上の乳酸エチルに加えて、乳酸エチル以外の溶剤(以下、「その他の溶剤」とも言う)を含んでも良い。
【0027】
その他の溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エチル以外の乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及びピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0028】
有機溶剤として、構造中に水酸基を有する溶剤と、水酸基を有さない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を有する溶剤、及び水酸基を有さない溶剤としては、前述の例示化合物を適宜選択できるが、水酸基を含む溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、又は乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、又は、2-ヒドロキシイソ酪酸メチルがより好ましい。また、水酸基を有さない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を有していてもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、又は酢酸アルキル等が好ましく、これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエトキシプロピオネート、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、エチルエトキシプロピオネート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は2-ヘプタノンが更に好ましい。水酸基を有さない溶剤としては、プロピレンカーボネートも好ましい。
水酸基を有する溶剤と水酸基を有さない溶剤との混合比(質量比)は、1/99~99/1であり、10/90~90/10が好ましく、20/80~60/40がより好ましい。水酸基を有さない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が、塗布均一性の点で好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有することが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶剤でもよいし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤でもよい。
【0029】
上記光学純度が1%以上の乳酸エチルの含有量は、上記溶剤の全量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0030】
[酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂]
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂を含有することが好ましい。
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂は、酸の作用により現像液に対する溶解性が増大する樹脂する樹脂でも良いし、酸の作用により現像液に対する溶解性が減少する樹脂でも良い。
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂としては、酸の作用により分解し極性が増大する基(以下、「酸分解性基」とも言う)を有する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」又は「樹脂(A)」ともいう)又は、酸の作用により構造が変化して、現像液に対する溶解性が減少する樹脂(例えば、酸の作用により架橋剤との架橋反応により構造が変化する樹脂、架橋性基を有する樹脂同士が架橋反応により構造が変化する樹脂等)が挙げられる。
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂が樹脂(A)である場合、本発明のパターン形成方法において、典型的には、現像液としてアルカリ現像液を採用した場合には、ポジ型パターンが好適に形成され、現像液として有機系現像液を採用した場合には、ネガ型パターンが好適に形成される。
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂が酸の作用により構造が変化して、現像液に対する溶解性が減少する樹脂である場合、本発明のパターン形成方法において、典型的には、現像液としてアルカリ現像液を採用した場合には、ネガ型パターンが好適に形成され、現像液として有機系現像液を採用した場合でも、ネガ型パターンが好適に形成される。
以下に好ましい実施態様である樹脂(A)について記載する。
【0031】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0032】
樹脂(A)としては、公知の樹脂を適宜使用することができる。例えば、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落[0055]~[0191]、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落[0035]~[0085]、米国特許出願公開2016/0147150A1号明細書の段落[0045]~[0090]に開示された公知の樹脂を樹脂(A)として好適に使用できる。
【0033】
酸分解性基は、極性基が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を有することが好ましい。
極性基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(典型的には、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、並びに、アルコール性水酸基等が挙げられる。
【0034】
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、水酸基としてα位がフッ素原子などの電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基など)は除く。アルコール性水酸基としては、pKa(酸解離定数)が12以上20以下の水酸基であることが好ましい。
【0035】
中でも、極性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、又は、スルホン酸基が好ましい。
【0036】
酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)としては、例えば、式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられる。式(Y1):-C(Rx)(Rx)(Rx)式(Y2):-C(=O)OC(Rx)(Rx)(Rx)式(Y3):-C(R36)(R37)(OR38)式(Y4):-C(Rn)(H)(Ar)
【0037】
式(Y1)及び式(Y2)中、Rx~Rxは、各々独立に、アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。なお、Rx~Rxの全てがアルキル基(直鎖若しくは分岐)である場合、Rx~Rxのうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
なかでも、Rx~Rxは、各々独立に、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、Rx~Rxは、各々独立に、直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して、単環又は多環を形成してもよい。
Rx~Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
式(Y1)又は式(Y2)で表される基は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0038】
式(Y3)中、R36~R38は、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。R37とR38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。R36は水素原子であることも好ましい。
【0039】
式(Y3)としては、下記式(Y3-1)で表される基が好ましい。
【0040】
【化1】

【0041】
ここで、L及びLは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とアリール基とを組み合わせた基)を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基、アルデヒド基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
アルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
なお、L及びLのうち一方は水素原子であり、他方はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、アルキレン基とアリール基とを組み合わせた基であることが好ましい。
Q、M、及び、Lの少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員若しくは6員環)を形成してもよい。
パターンの微細化の点では、Lが2級又は3級アルキル基であることが好ましく、3級アルキル基であることがより好ましい。2級アルキル基としては、イソプロピル基、シクロヘキシル基又はノルボルニル基が挙げられ、3級アルキル基としては、tert-ブチル基又はアダマンタン基を挙げることができる。これらの態様では、Tg(ガラス転移温度)や活性化エネルギーが高くなるため、膜強度の担保に加え、かぶりの抑制ができる。
【0042】
式(Y4)中、Arは、芳香環基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。Arはより好ましくはアリール基である。
【0043】
樹脂(A)は、アセタール構造を有することが好ましい。
酸分解性基は、アセタール構造を有することが好ましい。アセタール構造は、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基などの極性基が、上記式(Y3)で表される基で保護された構造である。
【0044】
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、式(A)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0045】
【化2】
【0046】
は、2価の連結基を表し、R~Rは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、Rは酸の作用によって分解し脱離する基を表す。
は、2価の連結基を表す。2価の連結基としては、-CO-、-O-、-S―、-SO-、―SO-、炭化水素基(例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等)、及び、これらの複数が連結した連結基等が挙げられる。中でも、Lとしては、-CO-、アリーレン基が好ましい。
アリーレン基としては、フェニレン基が好ましい。
アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
【0047】
~Rは、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。1価の置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、又はハロゲン原子が挙げられる。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
シクロアルキル基は、単環型であってもよく、多環型であってもよい。このシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3~8とする。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0048】
は、酸の作用によって分解し脱離する基(脱離基)を表す。
中でも、脱離基としては、上記式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられ、上記式(Y3)で表される基が好ましい。
【0049】
上記各基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及び、アルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられる。置換基中の炭素数は、8以下が好ましい。
【0050】
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、一般式(AI)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0051】
【化3】
【0052】
一般式(AI)において、
Xaは、水素原子、又は、アルキル基を表す。
Tは、単結合、又は、2価の連結基を表す。
Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状、又は、分岐鎖状)、又は、シクロアルキル基(単環、又は、多環)を表す。ただし、Rx~Rxの全てがアルキル基(直鎖状、又は、分岐鎖状)である場合、Rx~Rxのうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して、シクロアルキル基(単環若しくは多環)を形成してもよい。
【0053】
Xaにより表される、アルキル基としては、例えば、メチル基又は-CH-R11で表される基が挙げられる。R11は、ハロゲン原子(フッ素原子等)、水酸基又は1価の有機基を表し、例えば、炭素数5以下のアルキル基、及び、炭素数5以下のアシル基が挙げられ、炭素数3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Xaとしては、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシメチル基が好ましい。
【0054】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、芳香環基、-COO-Rt-基、及び、-O-Rt-基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、又は、シクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-基が好ましい。Tが-COO-Rt-基を表す場合、Rtは、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、-CH-基、-(CH-基、又は、-(CH-基がより好ましい。
【0055】
Rx~Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基が好ましく、その他にも、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
一般式(AI)で表される繰り返し単位は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0056】
上記各基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及び、アルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられる。置換基中の炭素数は、8以下が好ましい。
【0057】
一般式(AI)で表される繰り返し単位としては、好ましくは、酸分解性(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル系繰り返し単位(Xaが水素原子又はメチル基を表し、かつ、Tが単結合を表す繰り返し単位)である。
【0058】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を、1種単独で含んでもよく、2種以上を併用して含んでもよい。
【0059】
樹脂(A)に含まれる酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量(酸分解性基を有する繰り返し単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、10~90モル%が好ましく、20~80モル%がより好ましく、30~70モル%が更に好ましい。
【0060】
(ラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、更にラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
ラクトン基又はスルトン基としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればいずれの基でも用いることができるが、好ましくは5~7員環ラクトン構造又は5~7員環スルトン構造を有する基であり、5~7員環ラクトン構造にビシクロ構造、又は、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、又は5~7員環スルトン構造にビシクロ構造、又は、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、がより好ましい。下記一般式(LC1-1)~(LC1-21)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基、又は下記一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造を有する基が主鎖に直接結合していてもよい。好ましい構造としては、一般式(LC1-1)、一般式(LC1-4)、一般式(LC1-5)、一般式(LC1-6)、一般式(LC1-13)、及び、一般式(LC1-14)で表される基が好ましい。
【0061】
【化4】

【0062】
ラクトン構造部分又はスルトン構造部分は、置換基(Rb)を有していてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及び、酸分解性基等が挙げられる。n2は、0~4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在するRbは、異なっていてもよく、また、複数存在するRb同士が結合して環を形成してもよい。
【0063】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位等が挙げられる。
【0064】
【化5】
【0065】
一般式(AI)中、Rbは、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1~4のアルキル基を表す。
Rbのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、及び、ハロゲン原子が挙げられる。
Rbのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。Rbは、水素原子又はメチル基が好ましい。
Abは、単結合、アルキレン基、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、又は、これらを組み合わせた2価の基を表す。なかでも、単結合、又は、-Ab-CO-で表される連結基が好ましい。Abは、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は、単環若しくは多環のシクロアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、又は、ノルボルニレン基が好ましい。
Vは、ラクトン構造又はスルトン構造を有する基を表す。
Vのラクトン構造又はスルトン構造を有する基としては、一般式(LC1-1)~(LC1-21)、一般式(SL1-1)~(SL1―3)のうちのいずれかで示される基が好ましい。
【0066】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位は、通常、光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)は90以上が好ましく、95以上がより好ましい。
【0067】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。なお、式中RxはH、CH、CHOH、またはCFを表す。
【0068】
【化6】

【0069】
【化7】
【0070】
ラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1~60モル%が好ましく、5~50モル%がより好ましく、10~40モル%が更に好ましい。
【0071】
(酸基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、酸基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
酸基としては、酸解離定数(pKa)が13以下の酸基が好ましい。
pKaは、後述の上記光酸発生剤から生成される酸のpKaにおけるpKaと同様である。
【0072】
酸基を有する繰り返し単位としては、式(B)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0073】
【化8】
【0074】
は、水素原子、又は、1価の有機基を表す。
1価の有機基としては、-L-Rで表される基が好ましい。Lは、単結合、又は、エステル基を表す。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0075】
及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、アルキル基を表す。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子が挙げられる。
【0076】
は、単結合、又は、エステル基を表す。
は、(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基、又は、(n+m+1)価の脂環式炭化水素環基を表す。芳香族炭化水素環基としては、ベンゼン環基、及び、ナフタレン環基が挙げられる。脂環式炭化水素環基としては、単環であっても、多環であってもよく、例えば、シクロアルキル環基が挙げられる。
は、水酸基、又は、フッ素化アルコール基(好ましくは、ヘキサフルオロイソプロパノール基)を表す。なお、Rが水酸基の場合、Lは(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基であることが好ましい。
は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子が挙げられる。
mは、1以上の整数を表す。mは、1~3の整数が好ましく、1~2の整数が好ましい。
nは、0又は1以上の整数を表す。nは、1~4の整数が好ましい。
なお、(n+m+1)は、1~5の整数が好ましい。
【0077】
酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(I)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0078】
【化9】
【0079】
一般式(I)中、
41、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
【0080】
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がより好ましく、炭素数3以下のアルキル基が更に好ましい。
【0081】
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のシクロアルキル基としては、単環型でも、多環型でもよい。なかでも、シクロプロピル基、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の炭素数3~8個で単環型のシクロアルキル基が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R41、R42、R43におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0082】
上記各基における好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、及び、ニトロ基が挙げられる。置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0083】
Arは、(n+1)価の芳香環基を表す。nが1である場合における2価の芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、及び、アントラセニレン基等の炭素数6~18のアリーレン基、又は、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、及び、チアゾール環等のヘテロ環を含む芳香環基が好ましい。
【0084】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n-1)個の任意の水素原子を除してなる基が挙げられる。
(n+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していてもよい。
【0085】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキレン基、及び、(n+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43で挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、及び、ブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基等のアリール基;等が挙げられる。
により表わされる-CONR64-(R64は、水素原子又はアルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、炭素数8以下のアルキル基が好ましい。
としては、単結合、-COO-、又は、-CONH-が好ましく、単結合、又は、-COO-がより好ましい。
【0086】
におけるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、及び、オクチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基が好ましい。
Arとしては、炭素数6~18の芳香環基が好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、及び、ビフェニレン環基がより好ましい。
一般式(I)で表される繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン構造を備えていることが好ましい。即ち、Arは、ベンゼン環基であることが好ましい。
【0087】
一般式(I)で表される繰り返し単位としては、下記一般式(1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0088】
【化10】
【0089】
一般式(1)中、
Aは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。
Rは、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基を表し、複数個ある場合には同じであっても異なっていてもよい。複数のRを有する場合には、互いに共同して環を形成していてもよい。Rとしては水素原子が好ましい。
aは1~3の整数を表す。
bは0~(3-a)の整数を表す。
【0090】
以下、一般式(I)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。式中、aは1又は2を表す。
【0091】
【化11】
【0092】
【化12】
【0093】
【化13】
【0094】
なお、上記繰り返し単位のなかでも、以下に具体的に記載する繰り返し単位が好ましい。式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは2又は3を表す。
【0095】
【化14】
【0096】
酸基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、10~80モル%が好ましく、15~75モル%がより好ましく、20~70モル%が更に好ましい。
【0097】
樹脂(A)は、上記した繰り返し構造単位以外にも、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、解像力、耐熱性、感度等を調節する目的などによって、様々な繰り返し単位を有していてもよい。
【0098】
樹脂(A)は、常法(例えばラジカル重合)に従って合成できる。一般的な合成方法としては、例えば、(1)モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、(2)モノマー種と開始剤を含有する溶液を1~10時間かけて滴下することにより加熱溶剤へ加える滴下重合法等が挙げられる。
【0099】
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、1,000~200,000が好ましく、2,000~30,000がより好ましく、3,000~25,000が更に好ましい。分散度(Mw/Mn)は、通常1.0~3.0であり、1.0~2.6が好ましく、1.0~2.0がより好ましく、1.1~2.0が更に好ましい。
【0100】
樹脂(A)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、樹脂(A)の含有量は、全固形分中に対して、通常20質量%以上の場合が多く、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、99.5質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、98質量%以下が更に好ましい。
なお、本発明の組成物の全固形分とは、溶剤を除く他の成分(感活性光線性又は感放射線性膜を構成し得る成分)を意図する。
【0101】
[活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物]
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」又は「光酸発生剤(B)」ともいう)を含有することが好ましい。
光酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物である。
光酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物が好ましい。例えば、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、ジアゾニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物、イミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート化合物、ジアゾジスルホン化合物、ジスルホン化合物、及びo-ニトロベンジルスルホネート化合物が挙げられる。
【0102】
光酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物を、単独又はそれらの混合物として適宜選択して使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0125]~[0319]、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落[0086]~[0094]、及び、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落[0323]~[0402]に開示された公知の化合物を好適に使用できる。
【0103】
光酸発生剤としては、例えば、下記一般式(ZI)、一般式(ZII)又は一般式(ZIII)で表される化合物が好ましい。
【0104】
【化15】
【0105】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1~30であり、好ましくは1~20である。
また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)及び-CH-CH-O-CH-CH-が挙げられる。
は、アニオン(非求核性アニオンが好ましい。)を表す。
【0106】
一般式(ZI)におけるカチオンの好適な態様としては、後述する化合物(ZI-1)、化合物(ZI-2)、一般式(ZI-3)で表される化合物(化合物(ZI-3))及び一般式(ZI-4)で表される化合物(化合物(ZI-4))における対応する基が挙げられる。
なお、光酸発生剤は、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201~R203の少なくとも1つと、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201~R203の少なくとも一つとが、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0107】
まず、化合物(ZI-1)について説明する。
化合物(ZI-1)は、上記一般式(ZI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、すなわち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、及びアリールジシクロアルキルスルホニウム化合物が挙げられる。
【0108】
アリールスルホニウム化合物に含まれるアリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及びベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖状アルキル基、炭素数3~15の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0109】
201~R203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立に、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、又はフェニルチオ基を置換基として有してもよい。
【0110】
次に、化合物(ZI-2)について説明する。
化合物(ZI-2)は、式(ZI)におけるR201~R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含む芳香族環も包含する。
201~R203としての芳香環を有さない有機基は、一般的に炭素数1~30であり、炭素数1~20が好ましい。
201~R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基であり、より好ましくは直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、又はアルコキシカルボニルメチル基、更に好ましくは直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基である。
【0111】
201~R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、及び、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)が挙げられる。
201~R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1~5)、水酸基、シアノ基、又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0112】
次に、化合物(ZI-3)について説明する。
【0113】
【化16】
【0114】
一般式(ZI-3)中、Mは、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表し、環構造を有するとき、上記環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、及び炭素-炭素二重結合の少なくとも1種を含んでいてもよい。R1c及びR2cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。R1cとR2cとが結合して環を形成してもよい。R及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、又はアルケニル基を表す。R及びRが結合して環を形成してもよい。また、M、R1c及びR2cから選ばれる少なくとも2つが結合して環構造を形成してもよく、上記環構造に炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。Zは、アニオンを表す。
【0115】
一般式(ZI-3)中、Mで表されるアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1~15(好ましくは炭素数1~10)の直鎖状アルキル基、炭素数3~15(好ましくは炭素数3~10)の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数3~15(好ましくは炭素数1~10)のシクロアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びシクロヘキシル基、及びノルボルニル基等が挙げられる。
Mで表されるアリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、及びベンゾチオフェン環等が挙げられる。
【0116】
上記Mは、更に置換基を有していてもよい。この態様として、例えば、Mとしてベンジル基などが挙げられる。
なお、Mが環構造を有する場合、上記環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、及び、炭素-炭素二重結合の少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0117】
1c及びR2cで表されるアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基としては、上述したMと同様のものが挙げられ、その好ましい態様も同じである。また、R1cとR2cは、結合して環を形成してもよい。
1c及びR2cで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0118】
及びRで表されるアルキル基、及びシクロアルキル基としては、上述したMと同様のものが挙げられ、その好ましい態様も同じである。
及びRで表されるアルケニル基としては、アリル基又はビニル基が好ましい。
上記R及びRは、更に置換基を有していてもよい。この態様として、例えば、R及びRとして2-オキソアルキル基又はアルコキシカルボニルアルキル基などが挙げられる。
及びRで表される2-オキソアルキル基としては、例えば、炭素数1~15(好ましくは炭素数1~10)のものが挙げられ、具体的には、2-オキソプロピル基、及び2-オキソブチル基等が挙げられる。
及びRで表されるアルコキシカルボニルアルキル基としては、例えば、炭素数1~15(好ましくは炭素数1~10)のものが挙げられる。また、RとRは、結合して環を形成してもよい。
とRとが互いに連結して形成される環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又は、炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0119】
一般式(ZI-3)中、MとR1cとが結合して環構造を形成してもよく、形成される環構造は、炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0120】
上記化合物(ZI-3)は、なかでも、化合物(ZI-3A)であることが好ましい。
化合物(ZI-3A)は、下記一般式(ZI-3A)で表され、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0121】
【化17】
【0122】
一般式(ZI-3A)中、
1c~R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cとしては、上述した一般式(ZI-3)中のR及びRと同義であり、その好ましい態様も同じである。
及びRとしては、上述した上述した一般式(ZI-3)中のR及びRと同義であり、その好ましい態様も同じである。
【0123】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、RとRは、各々結合して環構造を形成してもよく、この環構造は、各々独立に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又は、炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。また、R5c及びR6c、R5c及びRは、各々結合して環構造を形成してもよく、この環構造は、各々独立に炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。また、R6cとR7cは、各々結合して環構造を形成してもよい。
上記環構造としては、芳香族又は非芳香族の炭化水素環、芳香族又は非芳香族の複素環、及びこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環が挙げられる。環構造としては、3~10員環が挙げられ、4~8員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0124】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRが結合して形成する基としては、ブチレン基、及びペンチレン基等が挙げられる。
5cとR6c、及びR5cとRが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、メチレン基、及びエチレン基等が挙げられる。
Zcは、アニオンを表す。
【0125】
次に、化合物(ZI-4)について説明する。
化合物(ZI-4)は、下記一般式(ZI-4)で表される。
【0126】
【化18】
【0127】
一般式(ZI-4)中、
lは0~2の整数を表す。
rは0~8の整数を表す。
13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又は単環若しくは多環のシクロアルキル骨格を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
14は、複数存在する場合は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、又は単環若しくは多環のシクロアルキル骨格を有するアルコキシ基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
15は、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、又はナフチル基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、又は窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。一態様において、2つのR15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成することが好ましい。
は、アニオンを表す。
【0128】
一般式(ZI-4)において、R13、R14及びR15のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状である。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又はt-ブチル基等がより好ましい。
【0129】
次に、一般式(ZII)、及び(ZIII)について説明する。
一般式(ZII)、及び(ZIII)中、R204~R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204~R207のアリール基としてはフェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204~R207のアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェン等が挙げられる。
204~R207のアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、又は、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)が好ましい。
【0130】
204~R207のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立に、置換基を有していてもよい。R204~R207のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~15)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、及びフェニルチオ基等が挙げられる。
は、アニオンを表す。
【0131】
一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZとしては、下記一般式(3)で表されるアニオンが好ましい。
【0132】
【化19】
【0133】
一般式(3)中、
oは、1~3の整数を表す。pは、0~10の整数を表す。qは、0~10の整数を表す。
【0134】
Xfは、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。
Xfは、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子又はCFであることがより好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが更に好ましい。
【0135】
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R及びRが複数存在する場合、R及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
及びRで表されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数1~4が好ましい。R及びRは、好ましくは水素原子である。
少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例及び好適な態様は一般式(3)中のXfの具体例及び好適な態様と同じである。
【0136】
Lは、2価の連結基を表す。Lが複数存在する場合、Lは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、-COO-(-C(=O)-O-)、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。これらの中でも、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-SO-、-COO-アルキレン基-、-OCO-アルキレン基-、-CONH-アルキレン基-又は-NHCO-アルキレン基-が好ましく、-COO-、-OCO-、-CONH-、-SO-、-COO-アルキレン基-又は-OCO-アルキレン基-がより好ましい。
【0137】
Wは、環状構造を含む有機基を表す。これらの中でも、環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の炭素数7以上の嵩高い構造を有する脂環基が好ましい。
【0138】
アリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基及びアントリル基が挙げられる。
複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよいし、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及びピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。ラクトン環及びスルトン環の例としては、前述の樹脂において例示したラクトン構造及びスルトン構造が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又はデカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。
【0139】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、炭素数1~12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、及び、スピロ環のいずれであってもよく、炭素数3~20が好ましい)、アリール基(炭素数6~14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0140】
一般式(3)で表されるアニオンとしては、SO -CF-CH-OCO-(L)q’-W、SO -CF-CHF-CH-OCO-(L)q’-W、SO -CF-COO-(L)q’-W、SO -CF-CF-CH-CH-(L)q-W、SO -CF-CH(CF)-OCO-(L)q’-Wが好ましい。ここで、L、q及びWは、一般式(3)と同様である。q’は、0~10の整数を表す。
【0141】
一態様において、一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-としては、下記の一般式(4)で表されるアニオンも好ましい。
【0142】
【化20】
【0143】
一般式(4)中、
B1及びXB2は、各々独立に、水素原子、又はフッ素原子を有さない1価の有機基を表す。XB1及びXB2は、水素原子であることが好ましい。
B3及びXB4は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。XB3及びXB4の少なくとも一方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることが好ましく、XB3及びXB4の両方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることがより好ましい。XB3及びXB4の両方が、フッ素原子で置換されたアルキル基であることが更に好ましい。
L、q及びWは、一般式(3)と同様である。
【0144】
一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-は、ベンゼンスルホン酸アニオンであってもよく、分岐鎖状アルキル基又はシクロアルキル基によって置換されたベンゼンスルホン酸アニオンであることが好ましい。
【0145】
一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-としては、下記の一般式(SA1)で表される芳香族スルホン酸アニオンも好ましい。
【0146】
【化21】
【0147】
式(SA1)中、
Arは、アリール基を表し、スルホン酸アニオン及び-(D-B)基以外の置換基を更に有していてもよい。更に有してもよい置換基としては、フッ素原子及び水酸基等が挙げられる。
【0148】
nは、0以上の整数を表す。nとしては、1~4が好ましく、2~3がより好ましく、3が更に好ましい。
【0149】
Dは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸エステル基、エステル基、及び、これらの2種以上の組み合わせからなる基等が挙げられる。
【0150】
Bは、炭化水素基を表す。
【0151】
好ましくは、Dは単結合であり、Bは脂肪族炭化水素構造である。Bは、イソプロピル基又はシクロヘキシル基がより好ましい。
【0152】
一般式(ZI)におけるスルホニウムカチオン、及び一般式(ZII)におけるヨードニウムカチオンの好ましい例を以下に示す。
【0153】
【化22】
【0154】
一般式(ZI)、一般式(ZII)におけるアニオンZ-、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-の好ましい例を以下に示す。
【0155】
【化23】
【0156】
【化24】
【0157】
上記のカチオン及びアニオンを任意に組みわせて光酸発生剤として使用できる。
【0158】
上記のカチオン又はアニオンは、ラクトン基又はスルトン基を有していても良い。
ラクトン基又はスルトン基としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればいずれの基でも用いることができるが、好ましくは5~7員環ラクトン構造又は5~7員環スルトン構造を有する基であり、5~7員環ラクトン構造にビシクロ構造、又は、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、又は5~7員環スルトン構造にビシクロ構造、又は、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、がより好ましい。下記一般式(LC1-1)~(LC1-21)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基、又は下記一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造を有する基がより好ましい。好ましい構造としては、一般式(LC1-1)、一般式(LC1-4)、一般式(LC1-5)、一般式(LC1-6)、一般式(LC1-13)、及び、一般式(LC1-14)で表される基が好ましい。
【0159】
【化25】
【0160】
ラクトン構造部分又はスルトン構造部分は、置換基(Rb)を有していてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及び、酸分解性基等が挙げられる。n2は、0~4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在するRbは、異なっていてもよく、また、複数存在するRb同士が結合して環を形成してもよい。
【0161】
上記光酸発生剤から生成される酸のpKaが-10以上5以下であることが好ましい。
【0162】
pKa(酸解離定数)とは、水溶液中でのpKaのことを表し、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に定義される。pKaの値が低いほど酸強度が大きいことを示す。水溶液中でのpKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測できる。あるいは、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0163】
光酸発生剤は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
光酸発生剤は、低分子化合物の形態であることが好ましい。
光酸発生剤が、低分子化合物の形態である場合、分子量は3,000以下が好ましく、2,000以下がより好ましく、1,000以下が更に好ましい。
光酸発生剤が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、前述した樹脂(A)の一部に組み込まれてもよく、樹脂(A)とは異なる樹脂に組み込まれてもよい。
光酸発生剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0164】
光酸発生剤の具体例を以下に記載するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0165】
【化26】
【0166】
本発明の組成物中、光酸発生剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、0.1~35質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~30質量%が更に好ましく、1~25質量%が特に好ましい。
【0167】
[アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基を有する含フッ素化合物]
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基を有する含フッ素化合物(以下、「含フッ素化合物(C)」ともいう)を含有することが好ましい。
含フッ素化合物(C)は、フッ素を含むことで本発明の感活性光線性又は感放射線性膜の表面に偏在することができ、所望の性能を発揮することができる。
【0168】
アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基は、「極性変換基」とも呼ばれ、具体例としては、ラクトン基、カルボン酸エステル基(-COO-)、酸無水物基(-C(O)OC(O)-)、酸イミド基(-NHCONH-)、カルボン酸チオエステル基(-COS-)、炭酸エステル基(-OC(O)O-)、硫酸エステル基(-OSOO-)、スルホン酸エステル基(-SOO-)などが挙げられる。
なお、アクリレートなどにおけるような、繰り返し単位の主鎖に直結したエステル基は、アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解性が増大する機能が劣るため、本発明における極性変換基には含まれない。
含フッ素化合物(C)は、表面偏在性の観点から、フルオロアルキル基を有することが好ましい。
含フッ素化合物(C)は、樹脂(「樹脂(C)ともいう」)であることがより好ましい。
含フッ素化合物(C)は、極性変換基を有する繰り返し単位(「繰り返し単位(c)」ともいう)を含む樹脂であることがより好ましい。
繰り返し単位(c)として、例えば、一般式(K0)で示される繰り返し単位を挙げることができる。
【0169】
【化27】
【0170】
一般式(K0)中、Rk1は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は極性変換基を含む基を表す。
k2はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は極性変換基を含む基を表す。
但し、Rk1、Rk2の少なくとも一方は、極性変換基を有する。
なお、一般式(K0)に示されている繰り返し単位の主鎖に直結しているエステル基は、前述したように、本発明における極性変換基には含まれない。
【0171】
極性変換基としては、一般式(KA-1)又は(KB-1)で表される部分構造におけるXで表される基であることが好ましい。
すなわち、繰り返し単位(c)は、一般式(KA-1)及び(KB-1)で表される部分構造の少なくとも1つを有し、極性変換基が一般式(KA-1)又は(KB-1)で表される部分構造中のXで表されることが好ましい。
【0172】
【化28】
【0173】
一般式(KA-1)又は(KB-1)におけるXは、カルボン酸エステル基:-COO-、酸無水物基:-C(O)OC(O)-、酸イミド基:-NHCONH-、カルボン酸チオエステル基:-COS-、炭酸エステル基:-OC(O)O-、硫酸エステル基:-OSOO-、スルホン酸エステル基:-SOO-を表す。
及びYは、それぞれ同一でも異なっても良く、電子求引性基を表す。
なお、繰り返し単位(c)は、一般式(KA-1)又は(KB-1)で表される部分構造を有する基を有することで、好ましい極性変換基を有するが、一般式(KA-1)で表される部分構造、Y及びYが1価である場合の(KB-1)で表される部分構造の場合のように、上記部分構造が結合手を有しない場合は、上記部分構造を有する基とは、上記部分構造における任意の水素原子を少なくとも1つ除いた1価以上の基を有する基である。
一般式(KA-1)又は(KB-1)で表される部分構造は、任意の位置で置換基を介して樹脂(C)の主鎖に連結している。
【0174】
一般式(KA-1)で表される部分構造は、Xとしての基とともに環構造を形成する構造である。
一般式(KA-1)におけるXとして好ましくは、カルボン酸エステル基(即ち、KA-1としてラクトン環構造を形成する場合)、及び酸無水物基、炭酸エステル基である。より好ましくはカルボン酸エステル基である。
一般式(KA-1)で表される環構造は、置換基を有していてもよく、例えば、置換基Zka1をnka個有していてもよい。
ka1は、複数ある場合はそれぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、エーテル基、ヒドロキシル基、アミド基、アリール基、ラクトン環基、又は電子求引性基を表す。
ka1同士が連結して環を形成しても良い。Zka1同士が連結して形成する環としては、例えば、シクロアルキル環、ヘテロ環(環状エーテル環、ラクトン環など)が挙げられる。
nkaは0~10の整数を表す。好ましくは0~8の整数、より好ましくは0~5の整数、更に好ましくは1~4の整数、最も好ましくは1~3の整数である。
【0175】
ka1としての電子求引性基は、ハロゲン原子に代表される後述のY及びYとしての電子求引性基と同様である。
なお、上記電子求引性基は、別の電子求引性基で置換されていてもよい。
【0176】
ka1は好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、エーテル基、ヒドロキシル基、又は電子求引性基であり、より好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基又は電子求引性基である。なお、エーテル基としては、アルキル基又はシクロアルキル基等で置換されたもの、すなわち、アルキルエーテル基等が好ましい。電子求引性基の好ましい例は、後述のY及びYとしての電子求引性基と同様である。
ka1としてのハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
ka1としてのアルキル基は置換基を有していてもよく、直鎖、分岐のいずれでもよい。直鎖アルキル基としては、好ましくは炭素数1~30、更に好ましくは1~20であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基等が挙げられる。分岐アルキル基としては、好ましくは炭素数3~30、更に好ましくは3~20であり、例えば、i-プロピル基、i-ブチル基、t-ブチル基、i-ペンチル基、t-ペンチル基、i-ヘキシル基、t-ヘキシル基、i-ヘプチル基、t-ヘプチル基、i-オクチル基、t-オクチル基、i-ノニル基、t-デカノイル基等が挙げられる。メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基などの炭素数1~4のものが好ましい。
ka1としてのシクロアルキル基は、置換基を有していてもよく、単環型でもよく、多環型でもよく、有橋式であってもよい。例えば、シクロアルキル基は橋かけ構造を有していてもよい。単環型としては、炭素数3~8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。多環型としては、炭素数5以上のビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができ、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基、テトシクロドデシル基、アンドロスタニル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては下記構造も好ましい。なお、シクロアルキル基中の炭素原子の一部が、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0177】
【化29】
【0178】
上記脂環部分の好ましいものとしては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、デカリン基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基、トリシクロデカニル基である。
これらの脂環式構造の置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の低級アルキル基が好ましく、更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を表す。上記アルコキシ基としては、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~4個のものを挙げることができる。アルキル基及びアルコキシ基が有してもよい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~4)等を挙げることができる。
【0179】
ka1のラクトン環基としては、後述する(KA-1-1)~(KA-1-17)のいずれかで表される構造から水素原子を除した基が挙げられる。
【0180】
ka1のアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0181】
ka1のアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基が更に有し得る置換基としては、水酸基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、上記のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ベンジル基、フエネチル基、クミル基等のアラルキル基、アラルキルオキシ基、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ベンゾイル基、シアナミル基、バレリル基等のアシル基、ブチリルオキシ基等のアシロキシ基、上記のアルケニル基、ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、アリルオキシ基、ブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基、上記のアリール基、フエノキシ基等のアリールオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアリールオキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0182】
一般式(KA-1)におけるXがカルボン酸エステル基であり、一般式(KA-1)が示す部分構造がラクトン環であることが好ましく、5~7員環ラクトン環であることが好ましい。
なお、下記(KA-1-1)~(KA-1-17)におけるように、一般式(KA-1)で表される部分構造としての5~7員環ラクトン環に、ビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環していることが好ましい。
一般式(KA-1)で表される環構造が結合してもよい周辺の環構造については、例えば、下記(KA-1-1)~(KA-1-17)におけるもの、又はこれに準じたものを挙げることができる。
【0183】
一般式(KA-1)が示すラクトン環構造を含有する構造として、下記(KA-1-1)~(KA-1-17)のいずれかで表される構造がより好ましい。なお、ラクトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましい構造としては、(KA-1-1)、(KA-1-4)、(KA-1-5)、(KA-1-6)、(KA-1-13)、(KA-1-14)、(KA-1-17)である。
【0184】
【化30】
【0185】
上記ラクトン環構造を含有する構造は、置換基を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基としては、上記一般式(KA-1)が示す環構造が有してもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0186】
ラクトン構造は光学活性体が存在するものもあるが、いずれの光学活性体を用いてもよい。また、1種の光学活性体を単独で用いても、複数の光学活性体を混合して用いてもよい。1種の光学活性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90%以上のものが好ましく、より好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上である。
【0187】
一般式(KB-1)のXとして好ましくは、カルボン酸エステル基(-COO-)を挙げることができる。
【0188】
一般式(KB-1)におけるY及びYは、それぞれ独立に、電子求引性基を表す。
【0189】
電子求引性基は、下記式(EW)で示す部分構造であることが好ましい。式(EW)における*は(KA-1)に直結している結合手、又は(KB-1)中のXに直結している結合手を表す。
【0190】
【化31】
【0191】
式(EW)中、
ewは-C(Rew1)(Rew2)-で表される連結基の繰り返し数であり、0又は1の整数を表す。newが0の場合は単結合を表し、直接Yew1が結合していることを示す。
ew1は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトリル基、ニトロ基、後述の-C(Rf1)(Rf2)-Rf3で表されるハロ(シクロ)アルキル基、ハロアリール基、オキシ基、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、及びこれらの組み合わせをあげることができ、電子求引性基は例えば下記構造であってもよい。なお、「ハロ(シクロ)アルキル基」とは、少なくとも一部がハロゲン化したアルキル基及びシクロアルキル基を表す。Rew3、Rew4は、各々独立して任意の構造を表す。Rew3、Rew4はどのような構造でも式(EW)で表される部分構造は電子求引性を有し、例えば樹脂の主鎖に連結していてもよいが、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、フッ化アルキル基である。
【0192】
【化32】
【0193】
ew1が2価以上の基である場合、残る結合手は、任意の原子又は置換基との結合を形成するものである。Yew1、Rew1、Rew2の少なくとも何れかの基が更なる置換基を介して樹脂(C)の主鎖に連結していてもよい。
ew1は、好ましくはハロゲン原子、又は、-C(Rf1)(Rf2)-Rf3で表されるハロ(シクロ)アルキル基又はハロアリール基である。
ew1、Rew2は、各々独立して任意の置換基を表し、例えば水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
ew1、Rew2及びYew1の少なくとも2つが互いに連結して環を形成していてもよい。
【0194】
ここでRf1はハロゲン原子、パーハロアルキル基、パーハロシクロアルキル基、又はパーハロアリール基を表し、より好ましくはフッ素原子、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基、更に好ましくはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。
f2、Rf3は各々独立して水素原子、ハロゲン原子又は有機基を表し、Rf2とRf3とが連結して環を形成してもよい。有機基としては例えばアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基等を表し、これらはハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)で置換されていても良く、より好ましくは、Rf2、Rf3は、(ハロ)アルキル基である。Rf2はRf1と同様の基を表すか、又はRf3と連結して環を形成していることがより好ましい。
f1とRf3とは連結して環を形成してもよく、形成する環としては、(ハロ)シクロアルキル環、(ハロ)アリール環等が挙げられる。
f1~Rf3における(ハロ)アルキル基としては、例えば前述したZka1におけるアルキル基、及びこれがハロゲン化した構造が挙げられる。
f1~Rf3における、又は、Rf2とRf3とが連結して形成する環における(パー)ハロシクロアルキル基及び(パー)ハロアリール基としては、例えば前述したZka1におけるシクロアルキル基がハロゲン化した構造、より好ましくは-C(n)(2n-2)Hで表されるフルオロシクロアルキル基、及び、-C(n)(n-1)で表されるパーフルオロアリール基が挙げられる。ここで炭素数nは特に限定されないが、5~13のものが好ましく、6がより好ましい。
【0195】
ew1、Rew2及びYew1の少なくとも2つが互いに連結して形成してもよい環としては、好ましくはシクロアルキル基又はヘテロ環基が挙げられ、ヘテロ環基としてはラクトン環基が好ましい。ラクトン環としては、例えば上記式(KA-1-1)~(KA-1-17)で表される構造が挙げられる。
【0196】
なお、繰り返し単位中(c)中に、一般式(KA-1)で表される部分構造を複数、一般式(KB-1)で表される部分構造を複数、あるいは、一般式(KA-1)の部分構造と一般式(KB-1)の両方を有していてもよい。
なお、一般式(KA-1)の部分構造の一部又は全部が、一般式(KB-1)におけるY又はYとしての電子求引性基を兼ねてもよい。例えば、一般式(KA-1)のXがカルボン酸エステル基である場合、そのカルボン酸エステル基は一般式(KB-1)におけるY又はYとしての電子求引性基として機能することもあり得る。
【0197】
繰り返し単位(c)が、1つの側鎖上に、フッ素原子と極性変換基とを有する繰り返し単位(c’)であっても、極性変換基を有し、かつ、フッ素原子を有さない繰り返し単位(c*)であっても、1つの側鎖上に極性変換基を有し、かつ、同一繰り返し単位内の上記側鎖と異なる側鎖上に、フッ素原子を有する繰り返し単位(c”)であってもよいが、樹脂(C)は繰り返し単位(c)として繰り返し単位(c’)を有することがより好ましい。すなわち、極性変換基を少なくとも1つ有する繰り返し単位(c)が、フッ素原子を有することがより好ましい。
なお、樹脂(C)が、繰り返し単位(c*)を有する場合、フッ素原子を有する繰り返し単位(後述する繰り返し単位(c1))とのコポリマーであることが好ましい。また、繰り返し単位(c”)における、極性変換基を有する側鎖とフッ素原子を有する側鎖とは、主鎖中の同一の炭素原子に結合している、すなわち下記式(K1)のような位置関係にあることが好ましい。
式中、B1は極性変換基を有する部分構造、B2はフッ素原子を有する部分構造を表す。
【0198】
【化33】
【0199】
また、繰り返し単位(c*)及び繰り返し単位(c”)においては、極性変換基が、一般式(KA-1)で示す構造における-COO-で表される部分構造であることがより好ましい。
【0200】
樹脂(C)のアルカリ現像液に対する加水分解速度は0.001nm/sec以上であることが好ましく、0.01nm/sec以上であることがより好ましく、0.1nm/sec以上であることが更に好ましく、1nm/sec以上であることが最も好ましい。
ここで樹脂(C)のアルカリ現像液に対する加水分解速度は23℃のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)(2.38質量%)に対して、樹脂(C)のみで樹脂膜を製膜した際の膜厚が減少する速度である。
【0201】
本発明の樹脂(C)は、少なくとも2つ以上の極性変換基を有する繰り返し単位(c)を含有し、かつ、フッ素原子を有する樹脂(C1)であることが好ましい。
【0202】
繰り返し単位(c)が少なくとも2つの極性変換基を有する場合、繰り返し単位(c)は、下記一般式(KY-1)で示す、2つの極性変換基を有する部分構造を有することが好ましい。なお、一般式(KY-1)で表される構造が、結合手を有さない場合は、上記構造における任意の水素原子を少なくとも1つ除いた1価以上の基である。
【0203】
【化34】
【0204】
一般式(KY-1)において、
ky1、Rky4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、エーテル基、ヒドロキシル基、シアノ基、アミド基、又はアリール基を表す。或いは、Rky1、Rky4が同一の原子と結合して二重結合を形成していてもよく、例えばRky1、Rky4が同一の酸素原子と結合してカルボニル基の一部(=O)を形成してもよい。
ky2、Rky3はそれぞれ独立して電子求引性基であるか、又はRky1とRky2が連結してラクトン環を形成するとともにRky3が電子求引性基である。形成するラクトン環としては、上記(KA-1-1)~(KA-1-17)の構造が好ましい。電子求引性基としては、上記式(KB-1)におけるY、Yと同様のものが挙げられ、好ましくはハロゲン原子、又は、上記-C(Rf1)(Rf2)-Rf3で表されるハロ(シクロ)アルキル基又はハロアリール基である。好ましくはRky3がハロゲン原子、又は、上記-C(Rf1)(Rf2)-Rf3で表されるハロ(シクロ)アルキル基又はハロアリール基であり、Rky2はRky1と連結してラクトン環を形成するか、ハロゲン原子を有さない電子求引性基である。
ky1、Rky2、Rky4はそれぞれ互いに連結して単環又は多環構造を形成しても良い。
【0205】
ky1、Rky4は具体的には式(KA-1)におけるZka1と同様の基が挙げられる。
ky1とRky2が連結して形成するラクトン環としては、上記(KA-1-1)~(KA-1-17)の構造が好ましい。電子求引性基としては、上記式(KB-1)におけるY、Yと同様のものが挙げられる。
【0206】
一般式(KY-1)で表される構造としては、下記一般式(KY-2)で示す構造であることがより好ましい。なお、一般式(KY-2)で表される構造は、上記構造における任意の水素原子を少なくとも1つ除いた1価以上の基である。
【0207】
【化35】
【0208】
式(KY-2)中、
ky6~Rky10は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、エーテル基、ヒドロキシル基、シアノ基、アミド基、又はアリール基を表す。
ky6~Rky10は、2つ以上が互いに連結して単環又は多環構造を形成しても良い。
ky5は電子求引性基を表す。電子求引性基は上記Y、Yにおけるものと同様のものが挙げられ、好ましくはハロゲン原子、又は、上記-C(Rf1)(Rf2)-Rf3で表されるハロ(シクロ)アルキル基又はハロアリール基である。
ky5~Rky10は具体的には式(KA-1)におけるZka1と同様の基が挙げられる。
【0209】
式(KY-2)で表される構造は、下記一般式(KY-3)で示す部分構造であることがより好ましい。
【0210】
【化36】
【0211】
式(KY-3)中、
ka1、nkaは各々上記一般式(KA-1)と同義である。Rky5は上記式(KY-2)と同義である。
kyはアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。Lkyのアルキレン基としてはメチレン基、エチレン基等が挙げられる。Lkyは酸素原子又はメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることが更に好ましい。
繰り返し単位(c)は、付加重合、縮合重合、付加縮合、等、重合により得られる繰り返し単位であれば限定されるものではないが、炭素-炭素2重結合の付加重合により得られる繰り返し単位であることが好ましい。例として、アクリレート系繰り返し単位(α位、β位に置換基を有する系統も含む)、スチレン系繰り返し単位(α位、β位に置換基を有する系統も含む)、ビニルエーテル系繰り返し単位、ノルボルネン系繰り返し単位、マレイン酸誘導体(マレイン酸無水物やその誘導体、マレイミド、等)の繰り返し単位、等を挙げることが出来、アクリレート系繰り返し単位、スチレン系繰り返し単位、ビニルエーテル系繰り返し単位、ノルボルネン系繰り返し単位が好ましく、アクリレート系繰り返し単位、ビニルエーテル系繰り返し単位、ノルボルネン系繰り返し単位がより好ましく、アクリレート系繰り返し単位が最も好ましい。
【0212】
繰り返し単位(c)のより具体的な構造としては、以下に示す部分構造を有する繰り返し単位が好ましい。
繰り返し単位(c)は、以下に示す部分構造を有する繰り返し単位であり得る。
【0213】
【化37】
【0214】
一般式(cc)において、
は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表し、好ましくはエステル結合を表す。
は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、鎖状若しくは環状アルキレン基を表し、好ましくは、炭素数1若しくは2のアルキレン基又は炭素数5~10のシクロアルキレン基を表す。
Taは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ニトリル基、ヒドロキシル基、アミド基、アリール基又は電子求引性基(上記一般式(KB-1)におけるY及びYとしての電子求引性基と同義である)を表し、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、電子求引性基を表し、更に好ましくは電子求引性基を表す。Taが複数個ある場合には、Ta同士が結合して、環を形成しても良い。
は、単結合又はm+1価の炭化水素基(好ましくは炭素数20以下)を表し、好ましくは単結合を表す。Lとしての単結合は、mが1の場合である。Lとしてのm+1価の炭化水素基は、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、又は、これらの組み合わせから、任意の水素原子をm-1個除いたm+1価の炭化水素基を表す。
Lは、それぞれ独立に、カルボニル基、カルボニルオキシ基又はエーテル基を表す。
Tcは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ニトリル基、ヒドロキシル基、アミド基、アリール基又は電子求引性基(上記一般式(KB-1)におけるY及びYとしての電子求引性基と同義である)を表す。
*は、樹脂の主鎖又は側鎖への結合手を表す。すなわち、式(cc)で表される部分構造が主鎖に直結していてもよいし、樹脂の側鎖に、式(cc)で表される部分構造が結合していてもよい。なお、主鎖への結合手とは、主鎖を構成する結合中に存在する原子への結合手であり、側鎖への結合手とは、主鎖を構成する結合中以外に存在する原子への結合手である。
mは、1~28の整数を表し、好ましくは1~3の整数であり、更に好ましくは1である。
kは、0~2の整数を表し、好ましくは1である。
qは、基(Z-Z)の繰り返し数を示し、0~5の整数を表し、好ましくは0~2である。
rは、0~5の整数を表す。
なお、-(L)r-Tcの代わりに、上記-L-(Ta)mが置換していてもよい。
糖ラクトンの末端にフッ素原子を有する場合、そして同一繰り返し単位内の糖ラクトン側の側鎖と異なる側鎖上にフッ素原子を有する場合(繰り返し単位(c”))も好ましい。
【0215】
としての鎖状アルキレン基は、直鎖アルキレン基の場合は好ましくは炭素数1~30、更に好ましくは1~20であり、分岐アルキレン基の場合は好ましくは炭素数3~30、更に好ましくは3~20である。Rとしての鎖状アルキレン基の具体例としては、上記したZka1としてのアルキル基の具体例から任意の水素原子を1個除いた基を挙げることができる。
としての環状アルキレン基は、好ましくは炭素数3~8であり、その具体例としては、上記したZka1としてのシクロアルキル基から任意の水素原子を1個除いた基を挙げることができる。
Ta及びTcとしてのアルキル基及びシクロアルキル基における好ましい炭素数、及び、具体例は、上記したZka1としてのアルキル基及びシクロアルキル基において記載したものと同様である。
Taとしてのアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1~8であり、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等を挙げることができる。
Ta及びTcとしてのアリール基としては、好ましくは炭素数6~12のアリール基、例えば、フェニル基及びナフチル基を挙げることができる。
としてのアルキレン基、シクロアルキレン基の好ましい炭素数及びその具体例は、Zとしての鎖状アルキレン基及び環状アルキレン基で説明したものと同様である。
【0216】
繰り返し単位(c)のより具体的な構造としては、以下に示す部分構造を有する繰り返し単位が好ましい。
【0217】
【化38】
【0218】
一般式(ca-2)及び(cb-2)において、
nは、0~11の整数を表し、好ましくは0~5の整数、より好ましくは1又は2を表す。
pは、0~5の整数を表し、好ましくは0~3の整数、より好ましくは1又は2を表す。
Tbは、独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ニトリル基、ヒドロキシル基、アミド基、アリール基又は電子求引性基(上記一般式(KB-1)におけるY及びYとしての電子求引性基と同義である)を表し、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、電子求引性基を表す。Tbが複数個ある場合には、Tb同士が結合して、環を形成しても良い。
*は、樹脂の主鎖又は側鎖への結合手を表す。すなわち、式(ca-2)又は(cb-2)で表される部分構造が主鎖に直結していてもよいし、樹脂の側鎖に、式(ca-2)又は(cb-2)で表される部分構造が結合していてもよい。
、Z、Ta、Tc、L、*、m、q、rは、一般式(cc)におけるものと同義であり、好ましいものも同様である。
【0219】
【化39】
【0220】
一般式(KY-4)に於いて、
は、鎖状若しくは環状アルキレン基を表し、複数個ある場合は、同じでも異なっていてもよい。
は、構成炭素上の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された、直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基を示す。
は、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はR-C(=O)-若しくはR-C(=O)O-で表される基(Rは、アルキル基若しくはシクロアルキル基を表す。)を表す。Rが複数個ある場合は、同じでも異なっていてもよく、また、2つ以上のRが結合し、環形成していても良い。
Xは、アルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
Z、Zaは、複数存在する場合はそれぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表し、複数ある場合は、同じでも異なっていてもよい。
*は、樹脂の主鎖又は側鎖への結合手を表す。
oは、置換基数であって、1~7の整数を表す。
mは、置換基数であって、0~7の整数を表す。
nは、繰り返し数を表し、0~5の整数を表す。
-R-Z-の構造として好ましくは、-(CH-COO-で表される構造が好ましい(lは1~5の整数を表す)。
【0221】
としての鎖状若しくは環状アルキレン基の好ましい炭素数範囲及び具体例は、一般式(cc)のZにおける鎖状アルキレン基及び環状アルキレン基で説明したものと同様である。
としての直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基の炭素数は、直鎖状の場合、好ましくは1~30、更に好ましくは1~20であり、分岐状の場合、好ましくは3~30、更に好ましくは3~20であり、環状の場合、6~20である。Rの具体例としては、上記したZka1としてのアルキル基及びシクロアルキル基の具体例を挙げることができる。
及びRとしてのアルキル基及びシクロアルキル基における好ましい炭素数、及び、具体例は、上記したZka1としてのアルキル基及びシクロアルキル基において記載したものと同様である。
としてのアシル基としては、炭素数1~6のものが好ましく、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基などを挙げることができる。
としてのアルコキシ基及びアルコキシカルボニル基におけるアルキル部位としては、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル部位を挙げることができ、アルキル部位の好ましい炭素数、及び、具体例は、上記したZka1としてのアルキル基及びシクロアルキル基において記載したものと同様である。
Xとしてのアルキレン基としては、鎖状若しくは環状アルキレン基を挙げることができ、好ましい炭素数及びその具体例は、Rとしての鎖状アルキレン基及び環状アルキレン基で説明したものと同様である。
【0222】
より好ましくは一般式(KY-5)で表わされる部分構造を有する繰り返し単位である。
【0223】
【化40】
【0224】
一般式(KY-5)に於いて、
は、鎖状若しくは環状アルキレン基を表し、複数個ある場合は、同じでも異なっていてもよい。
は、構成炭素上の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換され、直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基を示す。
は、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はR-C(=O)-若しくはR-C(=O)O-で表される基(Rは、アルキル基若しくはシクロアルキル基を表す。)を表す。Rが複数個ある場合は、同じでも異なっていてもよく、また、2つ以上のRが結合し、環を形成していても良い。
Xは、アルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表し、複数ある場合は、同じでも異なっていてもよい。
*は、樹脂の主鎖又は側鎖への結合手を表す。
nは、繰り返し数を表し、0~5の整数を表す。
mは、置換基数であって、0~7の整数を表す。
~R及びXにおける炭素数の好ましい範囲及び具体例は、一般式(KY-4)で説明したものと同様である。
-R-Z-の構造として好ましくは、-(CH-COO-で表される構造が好ましい(lは1~5の整数を表す)。
【0225】
【化41】
【0226】
一般式(rf-1)及び(rf-2)中、
X´は、電子求引性の置換基を表し、好ましくは、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、フッ素原子で置換されたアルキレン基、フッ素原子で置換されたシクロアルキレン基である。
Aは、単結合又は-C(Rx)(Ry)-で表される2価の連結基を表す。ここで、Rx、Ryは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~6で、フッ素原子等で置換されていてもよい)、又はシクロアルキル基(好ましくは炭素数5~12で、フッ素原子等で置換されていてもよい)を表す。Rx,Ryとして好ましくは、水素原子、アルキル基、フッ素原子で置換されたアルキル基である。
Xは、電子求引性基を表し、好ましくは、フッ化アルキル基、フッ化シクロアルキル基、フッ素又はフッ化アルキル基で置換されたアリール基、フッ素又はフッ化アルキル基で置換されたアラルキル基である。
*は、樹脂の主鎖又は側鎖への結合手を表す。即ち、単結合あるいは連結基を通じて樹脂の主鎖に結合する結合手を表す。
なお、X´がカルボニルオキシ基又はオキシカルボニル基であるとき、Aは単結合ではない。
【0227】
X´としてのフッ素原子で置換されたアルキレン基におけるアルキレン基としては、直鎖アルキレン基の場合は好ましくは炭素数1~30、更に好ましくは1~20であり、分岐アルキレン基の場合は好ましくは炭素数3~30、更に好ましくは3~20である。上記アルキレン基の具体例としては、上記したZka1としてのアルキル基の具体例から任意の水素原子を1個除いた基を挙げることができる。フッ素原子で置換されたアルキレン基としては、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
X´としてのフッ素原子で置換されたシクロアルキレン基におけるシクロアルキレン基としては、好ましくは炭素数3~8であり、その具体例としては、上記したZka1としてのシクロアルキル基の具体例から任意の水素原子を1個除いた基を挙げることができる。フッ素原子で置換されたシクロアルキレン基としては、パーフルオロシクロアルキレン基であることが好ましい。
【0228】
Xとしてのフッ化アルキル基におけるアルキル基としては、直鎖アルキル基の場合は好ましくは炭素数1~30、更に好ましくは1~20であり、分岐アルキル基の場合は好ましくは炭素数3~30、更に好ましくは3~20である。上記アルキル基の具体例としては、上記したZka1としてのアルキル基の具体例を挙げることができる。フッ化アルキル基としては、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xとしてのフッ化シクロアルキル基におけるシクロアルキル基としては、好ましくは炭素数3~8であり、その具体例としては、上記したZka1としてのシクロアルキル基の具体例を挙げることができる。フッ化シクロアルキル基としては、パーフルオロシクロアルキル基であることが好ましい。
Xとしてのフッ素又はフッ化アルキル基で置換されたアリール基におけるアリール基としては、好ましくは炭素数6~12のアリール基、例えば、フェニル基及びナフチル基を挙げることができる。また、フッ化アルキル基で置換されたアリール基におけるフッ化アルキル基の具体例としては、Xとしてのフッ化アルキル基で説明したものと同様である。
Xとしてのフッ素又はフッ化アルキル基で置換されたアラルキル基におけるアラルキル基としては、好ましくは炭素数6~12のアラルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルブチル基等を挙げることができる。また、フッ化アルキル基で置換されたアラルキル基におけるフッ化アルキル基の具体例としては、Xとしてのフッ化アルキル基で説明したものと同様である。
【0229】
樹脂(C)は、繰り返し単位(c)として、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0230】
【化42】
【0231】
一般式(2)中、R21は水素原子又は1価の有機基を表す。Xは二価の連結基を表す。R22及びR23はそれぞれ独立にフルオロアルキル基を表す。R24は水素原子、フッ素原子又は1価の有機基を表す。
【0232】
一般式(2)中のXが表す二価の連結基としては、前述の極性変換基を有する二価の連結基が好ましく、ラクトン構造を有することが特に好ましい。
一般式(2)中、R21は水素原子又はアルキル基を表すことが好ましく、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表すことがより好ましい。
一般式(2)中、R22及びR23はそれぞれ独立にフルオロアルキル基を表し、炭素数1~10のフルオロアルキル基を表すことが好ましく、炭素数1~5のフルオロアルキル基を表すことがより好ましい。
一般式(2)中、R24は水素原子、フッ素原子又は炭素数1~10のフルオロアルキル基を表すことが好ましく、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のフルオロアルキル基を表すことがより好ましい。
【0233】
極性変換基を有する繰り返し単位(c)の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
Raは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。
【0234】
【化43】
【0235】
【化44】
【0236】
樹脂(C)における、繰り返し単位(c)の含有率は、樹脂(C)中の全繰り返し単位に対し、10~100モル%が好ましく、より好ましくは20~100モル%、更に好ましくは30~100モル%、最も好ましくは40~100モル%である。
繰り返し単位(c’)の含有率は、樹脂(C)中の全繰り返し単位に対し、10~100モル%が好ましく、より好ましくは20~100モル%、更に好ましくは30~100モル%、最も好ましくは40~100モル%である。
繰り返し単位(c*)の含有率は、樹脂(C)中の全繰り返し単位に対し、5~70モル%が好ましく、より好ましくは5~60モル%、更に好ましくは10~50モル%、最も好ましくは10~40モル%である。繰り返し単位(c*)と共に用いられる、フッ素原子を有する繰り返し単位の含有率は、樹脂(C)中の全繰り返し単位に対し、10~95モル%が好ましく、より好ましくは15~85モル%、更に好ましくは20~80モル%、最も好ましくは25~75モル%である。
繰り返し単位(c”)の含有率は、樹脂(C)中の全繰り返し単位に対し、10~100モル%が好ましく、より好ましくは20~100モル%、更に好ましくは30~100モル%、最も好ましくは40~100モル%である。
【0237】
樹脂(C)におけるフッ素原子は、樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
【0238】
樹脂(C)は、更に、その他の繰り返し単位を有していてもよい。その他の繰り返し単位の好ましい態様としては以下が挙げられる。
(cy1)フッ素原子を有し、かつ酸に対して安定であり、かつアルカリ現像液に対して難溶若しくは不溶である繰り返し単位。
(cy2)フッ素原子を有さず、かつ酸に対して安定であり、かつアルカリ現像液に対して難溶若しくは不溶である繰り返し単位。
(cy3)フッ素原子を有し、かつ、前掲の(x)、(z)以外の極性基を有する繰り返し単位。
(cy4)フッ素原子を有さず、かつ、前掲の(x)、(z)以外の極性基を有する繰り返し単位。
【0239】
(cy1)、(cy2)の繰り返し単位における、アルカリ現像液に難溶若しくは不溶とは、(cy1)、(cy2)がアルカリ可溶性基、酸又はアルカリ現像液の作用によりアルカリ可溶性基を生じる基(例えば酸分解性基又は極性変換基)を含まないことを示す。
繰り返し単位(cy1)、(cy2)は極性基を持たない脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
【0240】
以下に繰り返し単位(cy1)~(cy4)の好ましい態様を示す。
繰り返し単位(cy1)、(cy2)としては、下記一般式(CIII)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0241】
【化45】
【0242】
一般式(CIII)に於いて、
c31は、水素原子、フッ素原子で置換されていても良いアルキル基、シアノ基又は-CH-O-Rac基を表す。式中、Racは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Rc31は、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
c32は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を有する基を表す。これら基は、珪素原子を含む基、フッ素原子等で置換されていても良い。
c3は、単結合又は2価の連結基を表す。
【0243】
一般式(CIII)に於ける、Rc32のアルキル基は、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数3~20のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3~20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3~20のシクロアルケニル基が好ましい。
アリール基は、炭素数6~20のフェニル基、ナフチル基が好ましく、これらは置換基を有していてもよい。
c32は無置換のアルキル基又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。Lc3の2価の連結基は、アルキレン基(好ましくは炭素数1~5)、オキシ基、フェニレン基、エステル結合(-COO-で表される基)が好ましい。
繰り返し単位(cy1)、(cy2)としては、下記一般式(C4)又は(C5)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0244】
【化46】
【0245】
一般式(C4),(C5)中、
c5は少なくとも一つの環状構造を有し、水酸基及びシアノ基のいずれも有さない炭化水素基を表す。
Racは水素原子、フッ素原子で置換されていても良いアルキル基、シアノ基又は-CH-O-Rac基を表す。式中、Racは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Racは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0246】
c5が有する環状構造には、単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基が含まれる。単環式炭化水素基としては、たとえば、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基が挙げられる。好ましい単環式炭化水素基としては、炭素数3から7の単環式炭化水素基である。
【0247】
多環式炭化水素基には環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれる。架橋環式炭化水素環として、2環式炭化水素環、3環式炭化水素環、4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環(例えば、5~8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環)も含まれる。好ましい架橋環式炭化水素環としてノルボニル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0248】
これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されたヒドロキシル基、保護基で保護されたアミノ基などが挙げられる。好ましいハロゲン原子としては臭素、塩素、フッ素原子、好ましいアルキル基としてはメチル、エチル、ブチル、t-ブチル基が挙げられる。上記のアルキル基は更に置換基を有していても良く、更に有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されたヒドロキシル基、保護基で保護されたアミノ基を挙げることができる。
【0249】
保護基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1~4のアルキル基、好ましい置換メチル基としてはメトキシメチル、メトキシチオメチル、ベンジルオキシメチル、t-ブトキシメチル、2-メトキシエトキシメチル基、好ましい置換エチル基としては、1-エトキシエチル、1-メチル-1-メトキシエチル、好ましいアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などの炭素数1~6の脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基としては炭素数2~4のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0250】
c6はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基を表す。これら基はフッ素原子、珪素原子で置換されていても良い。
c6のアルキル基は、炭素数1~20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。シクロアルキル基は、炭素数3~20のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3~20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3~20のシクロアルケニル基が好ましい。
アルコキシカルボニル基は、炭素数2~20のアルコキシカルボニル基が好ましい。
アルキルカルボニルオキシ基は、炭素数2~20のアルキルカルボニルオキシ基が好ましい。
nは0~5の整数を表す。nが2以上の場合、複数のRc6は同一でも異なっていても良い。
c6は無置換のアルキル基又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基、t-ブチル基が特に好ましい。
【0251】
(cy1)、(cy2)としては、下記一般式(CII-AB)で表される繰り返し単位であることも好ましい。
【0252】
【化47】
【0253】
式(CII-AB)中、
c11’及びRc12’は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Zc’は、結合した2つの炭素原子(C-C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
【0254】
また、上記一般式(CII-AB)は、下記一般式(CII-AB1)又は一般式(CII-AB2)であることが更に好ましい。
【0255】
【化48】
【0256】
式(CII-AB1)及び(CII-AB2)中、
Rc13’~Rc16’は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基あるいはシクロアルキル基を表す。
また、Rcl3’~Rc16’のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
nは0又は1を表す。
【0257】
以下に(cy1)、(cy2)の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH、CHOH、CF又はCNを表す。
【0258】
【化49】
【0259】
(cy3)、(cy4)としては、極性基として水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位であることが好ましい。これにより現像液親和性が向上する。水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルニル基が好ましい。好ましい水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては、モノヒドロキシアダマンチル基、ジヒドロキシアダマンチル基、モノヒドロキシジアマンチル基、ジヒドロキシアダマンチル基、シアノ基で置換されたノルボルニル基等が挙げられる。
上記原子団を有する繰り返し単位としては、下記一般式(CAIIa)~(CAIId)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0260】
【化50】
【0261】
一般式(CAIIa)~(CAIId)に於いて、
cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
c~Rcは、各々独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。ただし、Rc~Rcの内の少なくとも1つは、水酸基又はシアノ基を表す。好ましくは、Rc~Rcの内の1つ又は2つが、水酸基で、残りが水素原子である。一般式(CAIIa)に於いて、更に好ましくは、Rc~Rcの内の2つが、水酸基で、残りが水素原子である。
【0262】
(cy3)、(cy4)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0263】
【化51】
【0264】
(cy1)~(cy4)で表される繰り返し単位の含有率は、樹脂(C)中の全繰り返し単位に対し、5~40mol%が好ましく、より好ましくは5~30mol%、更に好ましくは10~25mol%である。
樹脂(C)は(cy1)~(cy4)で表される繰り返し単位を複数有していてもよい。
【0265】
樹脂(C)中のフッ素原子の含有率は、樹脂(C)の分子量に対し、5~80質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましい。また、フッ素原子を含む繰り返し単位が、樹脂(C)中の全繰り返し単位に対し、10~100質量%であることが好ましく、30~100質量%であることがより好ましい。
【0266】
偏在性向上の観点から、含フッ素化合物(C)の分子量は1000~100000であることが好ましい。
樹脂(C)の重量平均分子量は、好ましくは1000~100000で、より好ましくは1000~50000、更により好ましくは2000~15000である。
【0267】
樹脂(C)の分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は、1~3の範囲が好ましく、より好ましくは1~2、更に好ましくは1~1.8、最も好ましくは1~1.5の範囲である。
【0268】
樹脂(C)は、各種市販品を利用することもできるし、樹脂(A)同様に、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。
【0269】
含フッ素化合物(C)は1種類単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0270】
本発明の組成物中の含フッ素化合物(C)の含有率は、解像性の観点から、本発明の組成物の全固形分を基準として、0.01~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.1~5質量%である。
【0271】
[酸拡散制御剤]
本発明の組成物は、酸拡散制御剤を含有することが好ましい。酸拡散制御剤は、露光時に光酸発生剤等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用する。
酸拡散制御剤としては、例えば、塩基性化合物(DA)、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)、又はカチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)等を酸拡散制御剤として使用できる。本発明の組成物においては、公知の酸拡散制御剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0627]~[0664]、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落[0095]~[0187]、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落[0403]~[0423]、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落[0259]~[0328]に開示された公知の化合物を酸拡散制御剤として好適に使用できる。
【0272】
塩基性化合物(DA)としては、下記一般式(A)~(E)で示される構造を有する化合物が好ましい。
【0273】
【化52】
【0274】
一般式(A)及び(E)中、
200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(炭素数6~20)を表す。R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0275】
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、置換基を有していても無置換であってもよい。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0276】
塩基性化合物(DA)としては、チアゾール、ベンゾチアゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン、又はこれらの構造を有する化合物が好ましく、チアゾール構造、ベンゾチアゾール構造、オキサゾール構造、ベンゾオキサゾール構造、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造若しくはピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、又は、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアニリン誘導体等がより好ましい。
【0277】
活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)(以下、「化合物(DB)」ともいう。)は、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解して、プロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化する化合物である。
【0278】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又は、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0279】
【化53】
【0280】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル構造、アザクラウンエーテル構造、1~3級アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、及びピラジン構造等が挙げられる。
【0281】
化合物(DB)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失し、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここでプロトンアクセプター性の低下若しくは消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(DB)とプロトンとからプロトン付加体が生成するとき、その化学平衡における平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認することができる。
【0282】
活性光線又は放射線の照射により化合物(DB)が分解して発生する化合物の酸解離定数pKaは、pKa<-1を満たすことが好ましく、-13<pKa<-1を満たすことがより好ましく、-13<pKa<-3を満たすことが更に好ましい。
【0283】
酸解離定数pKaとは、水溶液中での酸解離定数pKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に定義される。酸解離定数pKaの値が低いほど酸強度が大きいことを示す。水溶液中での酸解離定数pKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測できる。あるいは、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
【0284】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0285】
本発明の組成物では、光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)を酸拡散制御剤として使用できる。
光酸発生剤と、光酸発生剤から生じた酸に対して相対的に弱酸である酸を発生するオニウム塩とを混合して用いた場合、活性光線性又は放射線の照射により光酸発生剤から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0286】
光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、下記一般式(d1-1)~(d1-3)で表される化合物が好ましい。
【0287】
【化54】
【0288】
式中、R51は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Z2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(但し、Sに隣接する炭素にはフッ素原子は置換されていないものとする)であり、R52は有機基であり、Yは直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基又はアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、Mは各々独立に、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。
【0289】
として表されるスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンの好ましい例としては、一般式(ZI)で例示したスルホニウムカチオン及び一般式(ZII)で例示したヨードニウムカチオンが挙げられる。
【0290】
光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)は、カチオン部位とアニオン部位を同一分子内に有し、かつ、カチオン部位とアニオン部位が共有結合により連結している化合物(以下、「化合物(DCA)」ともいう。)であってもよい。
化合物(DCA)としては、下記一般式(C-1)~(C-3)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0291】
【化55】
【0292】
一般式(C-1)~(C-3)中、
、R、及びRは、各々独立に炭素数1以上の置換基を表す。
は、カチオン部位とアニオン部位とを連結する2価の連結基又は単結合を表す。
-Xは、-COO、-SO 、-SO 、及び-N-Rから選択されるアニオン部位を表す。Rは、隣接するN原子との連結部位に、カルボニル基(-C(=O)-)、スルホニル基(-S(=O)-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)のうち少なくとも1つを有する1価の置換基を表す。
、R、R、R、及びLは、互いに結合して環構造を形成してもよい。また、一般式(C-3)において、R~Rのうち2つを合わせて1つの2価の置換基を表し、N原子と2重結合により結合していてもよい。
【0293】
~Rにおける炭素数1以上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、及びアリールアミノカルボニル基等が挙げられる。好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基である。
【0294】
2価の連結基としてのLは、直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、及びこれらの2種以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。Lは、好ましくは、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらの2種以上を組み合わせてなる基である。
【0295】
窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)(以下、「化合物(DD)」ともいう。)は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体であることが好ましい。
酸の作用により脱離する基としては、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又はヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、又はヘミアミナールエーテル基がより好ましい。
化合物(DD)の分子量は、100~1000が好ましく、100~700がより好ましく、100~500が更に好ましい。
化合物(DD)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d-1)で表される。
【0296】
【化56】
【0297】
一般式(d-1)において、
Rbは、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~30)、アリール基(好ましくは炭素数3~30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1~10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。Rbは相互に結合して環を形成していてもよい。
Rbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0298】
Rbとしては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はシクロアルキル基がより好ましい。
2つのRbが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環式炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。
一般式(d-1)で表される基の具体的な構造としては、米国特許公報US2012/0135348A1号明細書の段落[0466]に開示された構造が挙げられるが、これに限定されない。
【0299】
化合物(DD)は、下記一般式(6)で表される構造を有することが好ましい。
【0300】
【化57】
【0301】
一般式(6)において、
lは0~2の整数を表し、mは1~3の整数を表し、l+m=3を満たす。
Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。lが2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。この複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
Rbは、上記一般式(d-1)におけるRbと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(6)において、Raとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にRbとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
【0302】
上記Raのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらの基は、上記基で置換されていてもよい)の具体例としては、Rbについて前述した具体例と同様な基が挙げられる。
本発明における特に好ましい化合物(DD)の具体例としては、米国特許出願公開2012/0135348A1号明細書の段落[0475]に開示された化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0303】
カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)(以下、「化合物(DE)」ともいう。)は、カチオン部に窒素原子を含む塩基性部位を有する化合物であることが好ましい。塩基性部位は、アミノ基であることが好ましく、脂肪族アミノ基であることがより好ましい。塩基性部位中の窒素原子に隣接する原子の全てが、水素原子又は炭素原子であることが更に好ましい。また、塩基性向上の観点から、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及びハロゲン原子等)が直結していないことが好ましい。
化合物(DE)の好ましい具体例としては、米国特許出願公開2015/0309408A1号明細書の段落[0203]に開示された化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0304】
本発明では、酸拡散制御剤としては、塩基性化合物(DA)であることが好ましく、その中でも一般式(C)で示される構造を有する化合物であることが好ましく、下記一般式(DAC1)、(DAC2)、又は(DAC3)で表される化合物であることが更に好ましい。
【0305】
【化58】
【0306】
【化59】
【0307】
一般式(DAC1)、(DAC2)及び(DAC3)中、ArD1~ArD3は、各々独立に芳香族基を表す。
ArD1~ArD3はアリール基を表すことが好ましく、フェニル基を表すことがより好ましい。
ArD1~ArD3が表す芳香族基は置換基を有していてもよく、置換基としてはアルキル基、アルコキシ基、エステル基などが挙げられ、特にメトキシ基が好ましい。
【0308】
酸拡散制御剤の好ましい例を以下に示す。
【0309】
【化60】

【0310】
【化61】
【0311】
【化62】
【0312】
【化63】
【0313】
本発明の組成物において、酸拡散制御剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸拡散制御剤の本発明の組成物中の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分に対して、0.001~20質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましい。
【0314】
[ラクトン構造又はスルトン構造を有する化合物]
本発明の組成物は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する化合物を含むことが好ましい。
上記ラクトン構造又はスルトン構造を有する化合物としては、上記樹脂(A)において、ラクトン基又はスルトン基を有する樹脂、及びラクトン基又はスルトン基を有する光酸発生剤を挙げることができる。
【0315】
[界面活性剤]
本発明の組成物は、界面活性剤を更に含んでいてもよい。界面活性剤を含有することにより、波長が250nm以下、特には220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥のより少ないパターンを形成することが可能となる。
界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤を用いることが特に好ましい。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0276]に記載の界面活性剤が挙げられる。また、エフトップEF301若しくはEF303(新秋田化成(株)製);フロラードFC430、431若しくは4430(住友スリーエム(株)製);メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120若しくはR08(DIC(株)製);サーフロンS-382、SC101、102、103、104、105若しくは106(旭硝子(株)製);トロイゾルS-366(トロイケミカル(株)製);GF-300若しくはGF-150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS-393(セイミケミカル(株)製);エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802若しくはEF601((株)ジェムコ製);PF636、PF656、PF6320若しくはPF6520(OMNOVA社製);又は、FTX-204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D若しくは222D((株)ネオス製)を用いてもよい。なお、ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業(株)製)も、シリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0316】
また、界面活性剤は、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物を用いて合成してもよい。具体的には、このフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を備えた重合体を、界面活性剤として用いてもよい。このフルオロ脂肪族化合物は、例えば、特開2002-90991号公報に記載された方法によって合成することができる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0280]に記載されているフッ素系及び/又はシリコン系以外の界面活性剤を使用してもよい。
【0317】
これら界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0318】
本発明の組成物が界面活性剤を含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.00001~2質量%、より好ましくは0.0001~2質量%、更に好ましくは0.0005~1質量%である。
【0319】
[その他の添加剤]
本発明の組成物は、上記に説明した成分以外にも、カルボン酸、カルボン酸オニウム塩、Proceeding of SPIE, 2724,355 (1996)等に記載の分子量3000以下の溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、酸化防止剤などを適宜含有することができる。
【0320】
特にカルボン酸は、性能向上のために好適に用いられることもできる。カルボン酸としては、安息香酸、ナフトエ酸などの、芳香族カルボン酸が好ましい。
【0321】
本発明の組成物がカルボン酸を含む場合、カルボン酸の含有量は、組成物の全固形分に対して0.01~10質量%が好ましく、より好ましくは0.01~5質量%、更に好ましくは0.01~3質量%である。
【0322】
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、解像力向上の観点から、膜厚10~250nmで使用されることが好ましく、より好ましくは、膜厚20~200nmで使用されることが好ましく、更に好ましくは30~100nmで使用されることが好ましい。組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
【0323】
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の固形分濃度は、通常1.0~10質量%であり、好ましくは、2.0~5.7質量%、更に好ましくは2.0~5.3質量%である。固形分濃度を上記範囲とすることで、レジスト溶液を基板上に均一に塗布することができ、更にはラインウィズスラフネスに優れたレジストパターンを形成することが可能になる。
固形分濃度とは、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量の質量百分率である。
【0324】
[用途]
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により反応して性質が変化する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明の組成物は、IC(Integrated Circuit)等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、その他のフォトファブリケーション工程、又は平版印刷版、若しくは酸硬化性組成物の製造に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。本発明において形成されるパターンは、エッチング工程、イオンインプランテーション工程、バンプ電極形成工程、再配線形成工程、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等において使用できる。
また、本発明は、フォトマスク製造用である感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。
【0325】
[感活性光線性又は感放射線性膜]
本発明は、本発明の感活性光線又は感放射線性組成物により形成された感活性光線性又は感放射線性膜(好ましくはレジスト膜)にも関する。このような膜は、例えば、本発明の組成物が基板等の支持体上に塗布されることにより形成される。この膜の厚みは、0.02~0.1μmが好ましい。基板上に塗布する方法としては、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により基板上に塗布されるが、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000~3000rpm(rotations per minute)が好ましい。塗布膜は60~150℃で1~20分間、好ましくは80~120℃で1~10分間プリベークして薄膜を形成する。
被加工基板及びその最表層を構成する材料は、例えば、半導体用ウェハの場合、シリコンウェハを用いることができ、最表層となる材料の例としては、Si、SiO、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等が挙げられる。
【0326】
レジスト膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV-40シリーズ、シプレー社製のAR-2、AR-3、AR-5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0327】
なお、本発明のパターン形成方法においては、レジスト膜の上層にトップコートを形成してもよい。トップコートは、レジスト膜と混合せず、さらにレジスト膜上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートについては、特に限定されず、従来公知のトップコートを、従来公知の方法によって形成でき、例えば、特開2014-059543号公報の段落0072~0082の記載に基づいてトップコートを形成できる。
例えば、特開2013-61648号公報に記載されたような塩基性化合物を含有するトップコートをレジスト膜上に形成することが好ましい。トップコートが含み得る塩基性化合物の具体的な例は、上述の酸拡散抑制剤と同様である。
また、トップコートは、エーテル結合、チオエーテル結合、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル結合及びエステル結合からなる群より選択される基又は結合を少なくとも一つ含む化合物を含むことが好ましい。
【0328】
また、トップコートは、樹脂を含有することが好ましい。トップコートが含有することができる樹脂としては、特に限定されないが、感活性光線性又は感放射線性組成物に含まれ得る疎水性樹脂と同様のものを使用することができる。
疎水性樹脂に関しては、特開2013-61647号公報の[0017]~[0023](対応する米国公開特許公報2013/244438号の[0017]~[0023])、及び特開2014-56194号公報の[0016]~[0165]の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
トップコートは、芳香環を有する繰り返し単位を含有する樹脂を含むことが好ましい。芳香環を有する繰り返し単位を含有することで、特に電子線またはEUV露光の際に、二次電子の発生効率、及び活性光線又は放射線により酸を発生する化合物からの酸発生効率が高くなり、パターン形成時に高感度化、高解像化の効果が期待できる。
【0329】
トップコートが複数の樹脂を含む場合、フッ素原子及び/又は珪素原子を有する樹脂(XA)を少なくとも1種含むことが好ましい。フッ素原子及び/又は珪素原子を有する樹脂(XA)を少なくとも1種、及び、フッ素原子及び/又は珪素原子の含有率が樹脂(XA)より小さい樹脂(XB)をトップコート組成物が含むことがより好ましい。これにより、トップコート膜を形成した際に、樹脂(XA)がトップコート膜の表面に偏在するため、現像特性や液浸液追随性などの性能を改良させることができる。
【0330】
また、トップコートは、酸発生剤、架橋剤を含有しても良い。
【0331】
トップコートは、典型的には、トップコート形成用組成物から形成される。
トップコート形成用組成物は、各成分を溶剤に溶解し、フィルター濾過することが好ましい。フィルターとしては、ポアサイズ0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のものが好ましい。また、組成物の固形分濃度が高い場合(例えば、25質量%以上)は、フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは3μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下が更に好ましい。このフィルターは、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば日本国特許出願公開第2002-62667号明細書(特開2002-62667)に開示されるように、循環的な濾過を行ってもよく、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ってもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理等を行ってもよい。
トップコート形成用組成物は、金属等の不純物を含まないことが好ましい。これら材料に含まれる金属成分の含有量としては、10ppm以下が好ましく、5ppm以下がより好ましく、1ppm以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
レジスト組成物の原料(樹脂及び光酸発生剤等)の製造工程(原料を合成する工程等)に用いられる装置の装置内を、一部または全部グラスライニング処理することも、レジスト組成物の金属不純物の含有量を少量(例えば、質量ppmオーダー)にするために好ましい。このような方法が、例えば、2017年12月21日の化学工業日報に記載されている。
【0332】
後述する露光を液浸露光とする場合、トップコートは、レジスト膜と液浸液との間に配置され、レジスト膜を直接、液浸液に接触させない層としても機能する。この場合、トップコート(トップコート形成用組成物)が有することが好ましい特性としては、レジスト膜への塗布適性、放射線、特に193nmに対する透明性、液浸液(好ましくは水)に対する難溶性である。また、トップコートは、レジスト膜と混合せず、さらにレジスト膜の表面に均一に塗布できることが好ましい。
なお、トップコート形成用組成物を、レジスト膜の表面に、レジスト膜を溶解せずに均一に塗布するために、トップコート形成用組成物は、レジスト膜を溶解しない溶剤を含有することが好ましい。レジスト膜を溶解しない溶剤としては、後に詳述する有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)とは異なる成分の溶剤を用いることがさらに好ましい。
【0333】
トップコート形成用組成物の塗布方法は、特に限定されず、従来公知のスピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法などを用いることができる。
【0334】
トップコートの膜厚は特に制限されないが、露光光源に対する透明性の観点から、通常5nm~300nm、好ましくは10nm~300nm、より好ましくは20nm~200nm、更に好ましくは30nm~100nmの厚みで形成される。
トップコートを形成後、必要に応じて基板を加熱(PB)する。
トップコートの屈折率は、解像性の観点から、レジスト膜の屈折率に近いことが好ましい。
トップコートは液浸液に不溶であることが好ましく、水に不溶であることがより好ましい。トップコートの後退接触角は、液浸液追随性の観点から、トップコートに対する液浸液の後退接触角(23℃)が50~100度であることが好ましく、80~100度であることがより好ましい。
液浸露光においては、露光ヘッドが高速でウェハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウェハ上を動く必要があることから、動的な状態におけるトップコートに対する液浸液の接触角が重要になり、より良好なレジスト性能を得るためには、上記範囲の後退接触角を有することが好ましい。
【0335】
トップコートを剥離する際は、有機系現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、レジスト膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。トップコートの剥離がレジスト膜の現像と同時にできるという点では、トップコートは、有機系現像液により剥離できることが好ましい。剥離に用いる有機系現像液としては、レジスト膜の低露光部を溶解除去できるものであれば特に制限されない。
【0336】
有機系現像液で剥離するという観点からは、トップコートは有機系現像液に対する溶解速度が1~300nm/secが好ましく、10~100nm/secがより好ましい。
ここで、トップコートの有機系現像液に対する溶解速度とは、トップコートを成膜した後に現像液に暴露した際の膜厚減少速度であり、本発明においては23℃の酢酸ブチルに浸漬させた際の速度とする。
トップコートの有機系現像液に対する溶解速度を1/sec秒以上、好ましくは10nm/sec以上とすることによって、レジスト膜を現像した後の現像欠陥発生が低減する効果がある。また、300nm/sec以下、好ましくは100nm/secとすることによって、おそらくは、液浸露光時の露光ムラが低減した影響で、レジスト膜を現像した後のパターンのラインエッジラフネスがより良好になるという効果がある。
トップコートはその他の公知の現像液、例えば、アルカリ水溶液などを用いて除去してもよい。使用できるアルカリ水溶液として具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液が挙げられる。
【0337】
[パターン形成方法]
本発明は、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、レジスト膜を露光する露光工程と、露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含むパターン形成方法にも関する。
本発明において、上記露光は、電子線、ArFエキシマレーザー又は極紫外線を用いて行われることが好ましく、電子線又は極紫外線を用いて行われることがより好ましい。
【0338】
精密集積回路素子の製造などにおいてレジスト膜上への露光(パターン形成工程)は、まず、本発明のレジスト膜にパターン状に、ArFエキシマレーザー、電子線又は極紫外線(EUV)照射を行うことが好ましい。露光量は、ArFエキシマレーザーの場合、1~100mJ/cm程度、好ましくは20~60mJ/cm程度、電子線の場合、0.1~20μC/cm程度、好ましくは3~10μC/cm程度、極紫外線の場合、0.1~20mJ/cm程度、好ましくは3~15mJ/cm程度となるように露光する。
次いで、ホットプレート上で、好ましくは60~150℃で5秒~20分間、より好ましくは80~120℃で15秒~10分間、さらに好ましくは80~120℃で1~10分間、露光後加熱(ポストエクスポージャーベーク)を行い、次いで、現像、リンス、乾燥することによりパターンを形成する。ここで、露光後加熱は、樹脂(A)における酸分解性基を有する繰り返し単位の酸分解性によって、適宜調整される。酸分解性が低い場合、露光後加熱の温度は110℃以上、加熱時間は45秒以上であることも好ましい。
現像液は適宜選択されるが、アルカリ現像液(代表的にはアルカリ水溶液)又は有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液ともいう)を用いることが好ましい。現像液がアルカリ水溶液である場合には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)等の、0.1~5質量%、好ましくは2~3質量%アルカリ水溶液で、0.1~3分間、好ましくは0.5~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像する。アルカリ現像液には、アルコール類及び/又は界面活性剤を、適当量添加してもよい。こうして、ネガ型パターンの形成おいては、未露光部分の膜は溶解し、露光された部分は現像液に溶解し難いことにより、またポジ型パターンの形成おいては、露光された部分の膜は溶解し、未露光部の膜は現像液に溶解し難いことにより、基板上に目的のパターンが形成される。
【0339】
本発明のパターン形成方法が、アルカリ現像液を用いて現像する工程を有する場合、アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドドキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリアミルアンモニウムヒドロキシド、ジブチルジペンチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシテチル)アンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1~20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0~15.0である。
特に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38質量%の水溶液が望ましい。
【0340】
アルカリ現像の後に行うリンス処理におけるリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【0341】
本発明のパターン形成方法が、有機溶剤を含有する現像液を用いて現像する工程を有する場合、上記工程における上記現像液(以下、有機系現像液とも言う)としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。
【0342】
本発明において、エステル系溶剤とは分子内にエステル基を有する溶剤のことであり、ケトン系溶剤とは分子内にケトン基を有する溶剤のことであり、アルコール系溶剤とは分子内にアルコール性水酸基を有する溶剤のことであり、アミド系溶剤とは分子内にアミド基を有する溶剤のことであり、エーテル系溶剤とは分子内にエーテル結合を有する溶剤のことである。これらの中には、1分子内に上記官能基を複数種有する溶剤も存在するが、その場合は、その溶剤の有する官能基を含むいずれの溶剤種にも当てはまるものとする。例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、上記分類中の、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤いずれにも当てはまるものとする。また、炭化水素系溶剤とは置換基を有さない炭化水素溶剤のことである。
特に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液であることが好ましい。
【0343】
現像液は、レジスト膜の膨潤を抑制できるという点から、炭素原子数が7以上(7~14が好ましく、7~12がより好ましく、7~10がさらに好ましい)、かつヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤を用いることが好ましい。
上記エステル系溶剤のヘテロ原子は、炭素原子および水素原子以外の原子であって、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。ヘテロ原子数は、2以下が好ましい。
炭素原子数が7以上かつヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤の好ましい例としては、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸2-メチルブチル、酢酸1-メチルブチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸ヘプチル、ブタン酸ブチル、イソブタン酸イソブチルなどが挙げられ、酢酸イソアミル、又はイソブタン酸イソブチルを用いることが特に好ましい。
【0344】
現像液は、上述した炭素原子数が7以上かつヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤に代えて、上記エステル系溶剤および上記炭化水素系溶剤の混合溶剤、又は、上記ケトン系溶剤および上記炭化水素溶剤の混合溶剤を用いてもよい。この場合においても、レジスト膜の膨潤の抑制に効果的である。
エステル系溶剤と炭化水素系溶剤とを組み合わせて用いる場合には、エステル系溶剤として酢酸イソアミルを用いることが好ましい。また、炭化水素系溶剤としては、レジスト膜の溶解性を調製するという観点から、飽和炭化水素溶剤(例えば、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、ヘキサデカンなど)を用いることが好ましい。
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、2,5-ジメチル-4-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等を挙げることができ、ジイソブチルケトン、2,5-ジメチル-4-ヘキサノンを用いることが特に好ましい。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソアミル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、酪酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等を挙げることができる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、4-メチル-2-ペンタノール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
エーテル系溶剤としては、例えば、上記グリコールエーテル系溶剤の他、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が使用できる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
なお、炭化水素系溶剤である脂肪族炭化水素系溶剤においては、同じ炭素数で異なる構造の化合物の混合物であってもよい。例えば、脂肪族炭化水素系溶媒としてデカンを使用した場合、同じ炭素数で異なる構造の化合物である2-メチルノナン、2,2-ジメチルオクタン、4-エチルオクタン、イソオクタンなどが脂肪族炭化水素系溶媒に含まれていてもよい。
また、上記同じ炭素数で異なる構造の化合物は、1種のみが含まれていてもよいし、上記のように複数種含まれていてもよい。
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
有機系現像液における有機溶剤(複数混合の場合は合計)の濃度は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは50~100質量%、さらに好ましくは85~100質量%、さらにより好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。最も好ましくは、実質的に有機溶剤のみからなる場合である。なお、実質的に有機溶剤のみからなる場合とは、微量の界面活性剤、酸化防止剤、安定剤、消泡剤などを含有する場合を含むものとする。
特に、有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液であるのが好ましい。
【0345】
有機系現像液の蒸気圧は、20℃に於いて、5kPa以下が好ましく、3kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が特に好ましい。有機系現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
5kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソアミル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
特に好ましい範囲である2kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0346】
有機系現像液は、塩基性化合物を含んでいてもよい。本発明で用いられる現像液が含みうる塩基性化合物の具体例及び好ましい例としては、前述した感活性光線又は感放射線性組成物が含みうる塩基性化合物におけるものと同様である。
【0347】
有機系現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62-36663号公報、特開昭61-226746号公報、特開昭61-226745号公報、特開昭62-170950号公報、特開昭63-34540号公報、特開平7-230165号公報、特開平8-62834号公報、特開平9-54432号公報、特開平9-5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、好ましくは0.0001~2質量%、さらに好ましくは0.0001~1質量%、特に好ましくは0.0001~0.1質量%である。
【0348】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
上記各種の現像方法が、現像装置の現像ノズルから現像液をレジスト膜に向けて吐出する工程を含む場合、吐出される現像液の吐出圧(吐出される現像液の単位面積あたりの流速)は好ましくは2mL/sec/mm以下、より好ましくは1.5mL/sec/mm以下、更に好ましくは1mL/sec/mm以下である。流速の下限は特に無いが、スループットを考慮すると0.2mL/sec/mm以上が好ましい。
吐出される現像液の吐出圧を上記の範囲とすることにより、現像後のレジスト残渣に由来するパターンの欠陥を著しく低減することができる。
このメカニズムの詳細は定かではないが、恐らくは、吐出圧を上記範囲とすることで、現像液がレジスト膜に与える圧力が小さくなり、レジスト膜・パターンが不用意に削られたり崩れたりすることが抑制されるためと考えられる。
なお、現像液の吐出圧(mL/sec/mm)は、現像装置中の現像ノズル出口における値である。
【0349】
現像液の吐出圧を調整する方法としては、例えば、ポンプなどで吐出圧を調整する方法や、加圧タンクからの供給で圧力を調整することで変える方法などを挙げることができる。
【0350】
また、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0351】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後には、リンス液を用いて洗浄する工程を含んでいてもよいが、スループット(生産性)、リンス液使用量等の観点から、リンス液を用いて洗浄する工程を含まなくてもよい。
【0352】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、レジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。上記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものを挙げることができ、特に、酢酸ブチル及びメチルイソブチルカルビノールを好適に挙げることができる。
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、より好ましくは、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、更に好ましくは、アルコール系溶剤又は炭化水素系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行うことが好ましい。
【0353】
リンス液に含まれる有機溶剤としては、有機溶剤の中でも炭化水素系溶剤を用いることも好ましく、脂肪族炭化水素系溶剤を用いることがより好ましい。リンス液に用いられる脂肪族炭化水素系溶剤としては、その効果がより向上するという観点から、炭素数5以上の脂肪族炭化水素系溶剤(例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ヘキサデカン等)が好ましく、炭素原子数が8以上の脂肪族炭化水素系溶剤が好ましく、炭素原子数が10以上の脂肪族炭化水素系溶剤がより好ましい。
なお、上記脂肪族炭化水素系溶剤の炭素原子数の上限値は特に限定されないが、例えば、16以下が挙げられ、14以下が好ましく、12以下がより好ましい。
上記脂肪側炭化水素系溶剤の中でも、特に好ましくは、デカン、ウンデカン、ドデカンであり、最も好ましくはウンデカンである。
このようにリンス液に含まれる有機溶剤として炭化水素系溶剤(特に脂肪族炭化水素系溶剤)を用いることで、現像後にわずかにレジスト膜に染み込んでいた現像液が洗い流されて、膨潤がより抑制され、パターン倒れが抑制されるという効果が一層発揮される。
【0354】
上記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0355】
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。
【0356】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃に於いて0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下が更に好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0357】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0358】
リンス工程においては、有機溶剤を含む現像液を用いる現像を行ったウェハを上記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm~4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(PostBake)を含むことも好ましい。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程は、通常40~160℃、好ましくは70~95℃で、通常10秒~3分、好ましくは30秒から90秒間行う。
【0359】
リンス液を用いて洗浄する工程を有さない場合、例えば、特開2015-216403の段落〔0014〕~〔0086〕に記載の現像処理方法を採用できる。
【0360】
また、本発明のパターン形成方法は、有機系現像液を用いた現像工程と、アルカリ現像液を用いた現像工程とを有していてもよい。有機系現像液を用いた現像によって露光強度の弱い部分が除去され、アルカリ現像液を用いた現像を行うことによって露光強度の強い部分も除去される。このように現像を複数回行う多重現像プロセスにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、通常より微細なパターンを形成できる(特開2008-292975号公報の段落[0077]と同様のメカニズム)。
【0361】
本発明における感活性光線又は感放射線性組成物、及び、本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート形成用組成物など)は、金属、ハロゲンを含む金属塩、酸、アルカリ、硫黄原子又はリン原子を含む成分等の不純物を含まないことが好ましい。ここで、金属原子を含む不純物としては、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mn、Mg、Al、Cr、Ni、Zn、Ag、Sn、Pb、Li、またはこれらの塩などを挙げることができる。
これら材料に含まれる不純物の含有量としては、1ppm以下が好ましく、1ppb以下がより好ましく、100ppt以下が更に好ましく、10ppt以下が特に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が最も好ましい。
各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過を挙げることができる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、これらの材質とイオン交換メディアを組み合わせた複合材料であってもよい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用しても良い。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であっても良い。
また、各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
フィルター濾過の他、吸着材による不純物の除去を行っても良く、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用しても良い。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材を使用することができる。
また、本発明の有機系処理液に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
フィルター濾過の他、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材を使用することができる。
【0362】
[収容容器]
現像液及びリンス液に使用し得る有機溶剤(「有機系処理液」ともいう)としては、収容部を有する、化学増幅型又は非化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液の収容容器に保存されたものを使用することが好ましい。この収容容器としては、例えば、収容部の、有機系処理液に接触する内壁が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及び、ポリエチレン-ポリプロピレン樹脂のいずれとも異なる樹脂、又は、防錆・金属溶出防止処理が施された金属から形成された、レジスト膜のパターニング用有機系処理液の収容容器であることが好ましい。この収容容器の上記収容部に、レジスト膜のパターニング用有機系処理液として使用される予定の有機溶剤を収容し、レジスト膜のパターニング時において、上記収容部から排出したものを使用することができる。
【0363】
上記の収容容器が、更に、上記の収容部を密閉するためのシール部を有している場合、このシール部も、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及び、ポリエチレン-ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂とは異なる樹脂、又は、防錆・金属溶出防止処理が施された金属から形成されることが好ましい。
【0364】
ここで、シール部とは、収容部と外気とを遮断可能な部材を意味し、パッキンやOリングなどを好適に挙げることができる。
【0365】
ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及び、ポリエチレン-ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂とは異なる樹脂は、パーフルオロ樹脂であることが好ましい。
【0366】
パーフルオロ樹脂としては、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、四フッ化エチレン-エチレン共重合体樹脂(ETFE)、三フッ化塩化エチレン-エチレン共重合樹脂(ECTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、三フッ化塩化エチレン共重合樹脂(PCTFE)、フッ化ビニル樹脂(PVF)等を挙げることができる。
【0367】
特に好ましいパーフルオロ樹脂としては、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合樹脂を挙げることができる。
【0368】
防錆・金属溶出防止処理が施された金属における金属としては、炭素鋼、合金鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、マンガン鋼等を挙げることができる。
【0369】
防錆・金属溶出防止処理としては、皮膜技術を適用することが好ましい。
【0370】
皮膜技術には、金属被覆(各種メッキ),無機被覆(各種化成処理,ガラス,コンクリート,セラミックスなど)および有機被覆(さび止め油,塗料,ゴム,プラスチックス)の3種に大別されている。
【0371】
好ましい皮膜技術としては、錆止め油、錆止め剤、腐食抑制剤、キレート化合物、可剥性プラスチック、ライニング剤による表面処理が挙げられる。
【0372】
中でも、各種のクロム酸塩、亜硝酸塩、ケイ酸塩、燐酸塩、オレイン酸、ダイマー酸、ナフテン酸等のカルボン酸、カルボン酸金属石鹸、スルホン酸塩、アミン塩、エステル(高級脂肪酸のグリセリンエステルや燐酸エステル)などの腐食抑制剤、エチレンジアンテトラ酢酸、グルコン酸、ニトリロトリ酢酸、ヒドロキシエチルエチオレンジアミン三作酸、ジエチレントリアミン五作酸などのキレート化合物及びフッ素樹脂ライニングが好ましい。特に好ましいのは、燐酸塩処理とフッ素樹脂ライニングである。
【0373】
また、直接的な被覆処理と比較して、直接、錆を防ぐわけではないが、被覆処理による防錆期間の延長につながる処理方法として、防錆処理にかかる前の段階である「前処理」を採用することも好ましい。
【0374】
このような前処理の具体例としては、金属表面に存在する塩化物や硫酸塩などの種々の腐食因子を、洗浄や研磨によって除去する処理を好適に挙げることができる。
【0375】
収容容器としては具体的に以下を挙げることができる。
【0376】
・Entegris社製 FluoroPurePFA複合ドラム(接液内面;PFA樹脂ライニング)
・JFE社製 鋼製ドラム缶(接液内面;燐酸亜鉛皮膜)
【0377】
また、本発明において用いることができる収容容器としては、特開平11-021393号公報[0013]~[0030]、及び特開平10-45961号公報[0012]~[0024]に記載の容器も挙げることができる。
【0378】
本発明の有機系処理液は、静電気の帯電、引き続き生じる静電気放電に伴う薬液配管や各種パーツ(フィルター、O-リング、チューブなど)の故障を防止する為、導電性の化合物を添加しても良い。導電性の化合物としては特に制限されないが、例えば、メタノールが挙げられる。添加良は特に制限されないが、好ましい現像特性を維持する観点で、10質量%以下が好ましく、更に好ましくは、5質量%以下である。薬液配管の部材に関しては、SUS(ステンレス鋼)、或いは帯電防止処理の施されたポリエチレン、ポリプロピレン、又はフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、パーフロオロアルコキシ樹脂など)で被膜された各種配管を用いることができる。フィルターやO-リングに関しても同様に、帯電防止処理の施されたポリエチレン、ポリプロピレン、又はフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、パーフロオロアルコキシ樹脂など)を用いることができる。
【0379】
なお、一般的に、現像液およびリンス液は、使用後に配管を通して廃液タンクに収容される。その際、リンス液として炭化水素系溶媒を使用すると、現像液中に溶解したレジストが析出し、ウェハ背面や、配管側面などに付着することを防ぐために、再度、レジストが溶解する溶媒を配管に通す方法がある。配管に通す方法としては、リンス液での洗浄後に基板の背面や側面などをレジストが溶解する溶媒で洗浄して流す方法や、レジストに接触させずにレジストが溶解する溶剤を配管を通るように流す方法が挙げられる。
配管に通す溶剤としては、レジストを溶解し得るものであれば特に限定されず、例えば上述した有機溶媒が挙げられ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2-ヘプタノン、乳酸エチル、1-プロパノール、アセトン、等を用いることができる。中でも好ましくは、PGMEA、PGME、シクロヘキサノンを用いることができる。
【0380】
[フォトマスク]
また、本発明は、上記したパターン形成方法を用いて作製されたフォトマスクにも関する。上記したパターン形成方法を用いて作成されたフォトマスクは、ArFエキシマレーザー等で用いられる光透過型マスクであっても、EUV光を光源とする反射系リソグラフィーで用いられる光反射型マスクであってもよい。
【0381】
[電子デバイスの製造方法]
また、本発明は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法にも関する。本発明の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイスは、電気電子機器(例えば、家電、OA(Office Automation)関連機器、メディア関連機器、光学用機器、及び通信機器等)に、好適に搭載される。
【実施例
【0382】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0383】
<溶剤>
(乳酸エチル1~5の合成)
グルコースを乳酸菌によって乳酸発酵させ、得られた乳酸をエチルエステル化により、乳酸エチル1~5をそれぞれ得た。
(乳酸エチルC1の合成)
アセトアルデヒドとシアン化水素から乳酸ニトリルを合成し、加水分解し乳酸得た。上記で得られた乳酸をエチルエステル化することで、乳酸エチルC1を得た。
得られた乳酸エチル1~5、及び乳酸エチルC1の具体的な組成について、以下に記載する。各乳酸エチルのL体比率、D体比率は、質量比である。
乳酸エチル1: (L体比率90%、D体比率10%)
乳酸エチル2: (L体比率62%、D体比率38%)
乳酸エチル3: (L体比率53%、D体比率47%)
乳酸エチル4: (L体比率41%、D体比率59%)
乳酸エチル5: (L体比率 8%、D体比率92%)
乳酸エチルC1:(L体比率50%、D体比率50%)
【0384】
また、上記乳酸エチル1と同様に乳酸エチル6~8を合成した。乳酸エチル6~8の具体的な組成について、以下に記載する。
乳酸エチル6: (L体比率80%、D体比率20%)
乳酸エチル7: (L体比率85%、D体比率15%)
乳酸エチル8: (L体比率88%、D体比率12%)
【0385】
<実施例1~5、比較例1>
上記乳酸エチル1~5、及び乳酸エチルC1を用いて、下記のように酢酸含有量、及び純度を測定した。
【0386】
<酢酸含有量>
上記乳酸エチル1~5、及び乳酸エチルC1の酢酸含有量は、イオンクロマトグラフィー(フロンティアラボ社製熱分解装置PY2020Dを接続した株式会社島津製作所社製のガスクロマトグラフ質量分析装置GCMS-QP2010)を用いて測定した(初期値(ppm))。
上記乳酸エチル1~5、及び乳酸エチルC1を23℃で1年保存した後に、各々の酢酸含有量について、イオンクロマトグラフィー(フロンティアラボ社製熱分解装置PY2020Dを接続した株式会社島津製作所社製のガスクロマトグラフ質量分析装置GCMS-QP2010)を用いて測定した(経時後の酢酸含有量(ppm))。
「経時後の酢酸含有量(ppm)-初期値(ppm)」の値が低いほど、保存安定性が良好となる。
【0387】
<純度>
上記乳酸エチル1~5、及び乳酸エチルC1の純度は、ガスクロマトグラフィー(フロンティアラボ社製熱分解装置PY2020Dを接続した株式会社島津製作所社製のガスクロマトグラフ質量分析装置GCMS-QP2010で)を用いて測定した(初期値(%))。
上記乳酸エチル1~5、及び乳酸エチルC1を23℃で1年保存した後に、各々の純度について、ガスクロマトグラフィー(フロンティアラボ社製熱分解装置PY2020Dを接続した株式会社島津製作所社製のガスクロマトグラフ質量分析装置GCMS-QP2010)を用いて測定した(経時後の純度(%))。
「経時後(%)-初期値(%)」の値が低いほど、保存安定性が良好となる。
【0388】
酢酸含有量、純度の評価結果について、下記の表1に示す。
【0389】
【表1】
【0390】
表1から明らかなように、乳酸エチルC1と比べて、乳酸エチル1~5は、保存安定性に優れることが分かった。
【0391】
<樹脂(A)>
使用した樹脂(P-1)~(P-7)について以下に示す。各樹脂の繰り返し単位の構造及びその含有量(モル比率)、重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)も示す。
【0392】
【化64】
【0393】
【化65】
【0394】
<光酸発生剤>
使用した光酸発生剤の構造を以下に示す。
【0395】
【化66】
【0396】
光酸発生剤(S-1)~(S-4)から生成される酸のpKaは、-10以上5以下である。
【0397】
<酸拡散制御剤>
使用した酸拡散制御剤の構造を以下に示す。
【0398】
【化67】
【0399】
<溶剤>
使用した溶剤を以下に示す。
EL1:乳酸エチル1
EL2:乳酸エチル2
EL3:乳酸エチル3
EL4:乳酸エチル4
EL5:乳酸エチル5
EL6:乳酸エチル6
EL7:乳酸エチル7
EL8:乳酸エチル8
ELC1:乳酸エチルC1(比較例用)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0400】
<実施例101~116、比較例101~102>
[レジスト組成物の塗液調製及び塗設]
下記表2に示す成分を下記表2に示す溶剤に溶解させ、下記表2に示した固形分濃度の溶液を調製し、これを0.02μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、レジスト組成物R-1~R-16、R-C1~R-C2を得た。
これらのレジスト組成物を、予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した6インチSiウェハ上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、130℃、300秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚100nmのレジスト膜を得た。
ここで、1インチは、0.0254mである。
なお、上記Siウェハをクロム基板に変更しても、同様の結果が得られるものである。
【0401】
[EB露光及び現像]
上記で得られたレジスト膜が塗布されたウェハを、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50KeV)を用いて、パターン照射を行った。この際、1:1のラインアンドスペースが形成されるように描画を行った。電子線描画後、ホットプレート上で、100℃で60秒間加熱した後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液をパドルして30秒間現像し、純水でリンスをした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた後、95℃で60秒間加熱を行うことにより、線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンのレジストパターンを得た。
【0402】
[評価]
(1)感度
得られたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S-4300)を用いて観察した。線幅50nmの1:1ラインアンドスペースのレジストパターンを解像するときの露光量(電子線照射量)を感度(Eop)とした(経時前の感度)。
上記レジスト組成物を23℃で1年保管し、前述の通りにレジストパターンを形成して、感度を測定した(経時後の感度)。
【0403】
(2)LS解像力
上記の感度を示す露光量における限界解像力(ラインとスペース(ライン:スペース=1:1)が分離解像する最小の線幅)をL/S解像力(nm)とした(経時前の解像力)。
上記レジスト組成物を23℃で1年保管し、前述の通りにレジストパターンを形成して、L/S解像力を測定した(経時後のLS解像力)。
【0404】
(3)形状
得られたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S-4300)を用いて観察した(経時前の形状)。
上記レジスト組成物を23℃で1年保管し、前述の通りにレジストパターンを形成して、形状を測定した(経時後の形状)。
【0405】
なお、下記表2において、溶剤以外の各成分の含有量(質量%)は、全固形分に対する含有比率を意味する。また、下記表2には用いた溶剤の全溶剤に対する含有比率(質量%)を記載した。
評価結果を表3に記載した。
【0406】
【表2】
【0407】
【表3】
【0408】
【表4】
【0409】
【表5】
【0410】
<実施例201>
[レジスト組成物の塗液調製及び塗設]
下記表4に示す成分を下記表4に示す溶剤に溶解させ、下記表4に示した固形分濃度の溶液を調製し、これを0.02μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、レジスト組成物R-21を得た。
これらのレジスト組成物を、予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した6インチSiウェハ上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、100℃、60秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚150nmのレジスト膜を得た。
ここで、1インチは、0.0254mである。
なお、上記Siウェハをクロム基板に変更しても、同様の結果が得られるものである。
【0411】
[極紫外線(EUV)露光]
上記で得られたレジスト膜の塗布されたウェハを、EUV露光装置(Exitech社製 Micro Exposure Tool、NA(開口数)0.3、Quadrupole、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用い、露光マスク(ライン/スペース=1/1)を使用して、パターン露光を行った。露光後、ホットプレート上で、100℃で90秒間加熱した後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて60秒間浸漬した後、30秒間、水でリンスした。その後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた後、95℃で60秒間ベークを行なうことにより、線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンのレジストパターンを得た。
【0412】
[評価]
(1)感度
得られたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S-4300)を用いて観察した。線幅50nmの1:1ラインアンドスペースのレジストパターンを解像するときの露光量(EUV照射量)を感度(Eop)とした(経時前の感度)。
上記レジスト組成物を23℃で1年保管し、前述の通りにレジストパターンを形成して、感度を測定した(経時後の感度)。
【0413】
(2)LS解像力
上記の感度を示す露光量における限界解像力(ラインとスペース(ライン:スペース=1:1)が分離解像する最小の線幅)をL/S解像力(nm)とした(経時前の解像力)。
上記レジスト組成物を23℃で1年保管し、前述の通りにレジストパターンを形成して、L/S解像力を測定した(経時後のLS解像力)。
【0414】
(3)形状
得られたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S-4300)を用いて観察した(経時前の形状)。
上記レジスト組成物を23℃で1年保管し、前述の通りにレジストパターンを形成して、形状を測定した(経時後の形状)。
【0415】
なお、下記表4において、溶剤以外の各成分の含有量(質量%)は、全固形分に対する含有比率を意味する。また、下記表4には用いた溶剤の全溶剤に対する含有比率(質量%)を記載した。
評価結果を表5に記載した。
【0416】
【表6】
【0417】
【表7】
【0418】
使用した樹脂(P-8)について以下に示す。樹脂(P-8)の繰り返し単位の構造及びその含有量(モル比率)、重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)も示す。
【0419】
【化68】
【0420】
酸拡散制御剤(Q-4)の構造を以下に示す。
【0421】
【化69】
【0422】
光酸発生剤(S-5)の構造を以下に示す。
【0423】
【化70】
【0424】
光酸発生剤(S-5)から生成される酸のpKaは、-10以上5以下である。
【0425】
表2~5の結果から、実施例のレジスト組成物は、一定期間保存した場合であっても、パターン形成において、良好な感度、良好な解像性、良好なパターン形状を極めて高次元で並立できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0426】
本発明によれば、一定期間保存した場合であっても、良好な感度、良好な解像性、良好なパターン形状を極めて高次元で並立可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びにこれを用いた、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及びフォトマスクを提供することができる。
【0427】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2018年6月29日出願の日本特許出願(特願2018-125419)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。