(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】内視鏡用可撓管、内視鏡型医療機器、及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/005 20060101AFI20220310BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20220310BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
A61B1/005 511
A61B1/00 717
G02B23/24 A
(21)【出願番号】P 2020566412
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(86)【国際出願番号】 JP2020000876
(87)【国際公開番号】W WO2020149260
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2019005384
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100202898
【氏名又は名称】植松 拓己
(72)【発明者】
【氏名】中井 義博
(72)【発明者】
【氏名】芳谷 俊英
(72)【発明者】
【氏名】阿部 慎也
(72)【発明者】
【氏名】堀田 一馬
(72)【発明者】
【氏名】千賀 武志
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-67566(JP,A)
【文献】特開平5-220102(JP,A)
【文献】特開昭59-154417(JP,A)
【文献】米国特許第6083152(US,A)
【文献】シランカップリング剤,日本,信越化学株式会社,2017年,pp. 1-28,https//www.silicone.jp/catalog/pdf/SilaneCouplingAgents_J.pdf,特に第7, 10頁を参照。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を構成材料とする可撓管基材と、該可撓管基材の外周を覆う樹脂被覆層とを有する内視鏡用可撓管であって、
前記可撓管基材と前記樹脂被覆層との間に下記一般式(1)で表される化合物を含むプライマー層を有し、前記樹脂被覆層が、少なくともプライマー層と接する側にポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種の化合物を含む、内視鏡用可撓管。
【化1】
式中、LL
1は、1価の置換基又はn1価の連結基を示す。L
1は、単結合又は2価の連結基を示す。Y
1~Y
3は置換基を示す。n1は1~4の整数である。
ただし、Y
1~Y
3のうちの少なくとも1つがアルコキシ基及びヒドロキシ基から選ばれる基であり、n1が1である場合、LL
1-L
1及びY
1~Y
3の全てがアルコキシ基及びヒドロキシ基から選ばれる基ではない。
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)~(4)のいずれかで表される化合物である、請求項1に記載の内視鏡用可撓管。
【化2】
式中、LL
1aは、水素原子、複素環基、ヒドロキシ基、スルファニル基、イソシアナト基、チオシアナト基、ウレイド基、シアノ基、酸無水物基、アジド基、カルボキシ基、アシル基、チオカルバモイル基、リン酸基、ホスファニル基、スルホン酸基又はスルファモイル基を示す。
L
2は単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NR
a-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、チオアミド結合若しくはスルホニル基又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組合せてなる2価の基を示す。
L
3~L
5は単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NR
a-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、チオアミド結合、ウレア結合、チオウレア結合、スルホニル基若しくはスルホンアミド結合又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなる2価の基を示す。
LL
1bは、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NR
a-、2価の複素環基、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合、2価のリン酸基、ホスファンジイル基若しくはスルホニル基又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなる2価の基を示す。
LL
1cは、n2価のアルカン、n2価のアルケン、n2価のアルキン、n2価のアレーン、n2価の複素環基、3価のリン酸基、ホスファントリイル基若しくはイソシアヌレート基、又は、これらの基と、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NR
a-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、チオアミド結合及びスルホニル基のうちの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなるn2価の基を示す。
R
aは、水素原子又は置換基を示す。
Y
4、Y
7、Y
10及びY
13はヒドロキシ基又はアルコキシ基を示す。Y
5、Y
6、Y
8、Y
9、Y
11、Y
12、Y
14及びY
15はヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキル基又はケトオキシム基を示す。
n2は3又は4である。
【請求項3】
前記一般式(2)中、
LL
1aが、水素原子、脂環基、複素環基、ヒドロキシ基、スルファニル基、チオシアナト基、酸無水物基、カルボキシ基、アシル基又はスルホン酸基を示し、
L
2が、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NR
a-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合若しくはスルホニル基又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組合せてなる2価の基を示す、請求項2に記載の内視鏡可撓管。
【請求項4】
前記一般式(2)中、
LL
1aが、水素原子、ヒドロキシ基、カルボン酸無水物基、カルボキシ基、アシル基又はスルホン酸基を示し、
L
2が、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、-NR
a-、エステル結合若しくはアミド結合又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組合せてなる2価の基を示す、請求項2又は3に記載の内視鏡可撓管。
【請求項5】
前記一般式(3)中、
LL
1bが、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合若しくはスルホニル結合又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなる2価の基を示し、
L
3及びL
4が、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合若しくはスルホニル基又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなる2価の基を示す、請求項2~4のいずれか1項に記載の内視鏡可撓管。
【請求項6】
前記一般式(3)中、
LL
1bが、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合若しくはスルホニル結合又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなる2価の基を示し、
L
3及びL
4が、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、エステル結合若しくはアミド結合を示す、請求項2~5のいずれか1項に記載の内視鏡可撓管。
【請求項7】
前記一般式(4)中、n2が3であって、LL
1cがイソシアヌレート基を示し、L
5がアルキレン基を示す、請求項2~6のいずれか1項に記載の内視鏡可撓管。
【請求項8】
前記可撓管基材を構成する金属がステンレススチールである、請求項1~7のいずれか1項に記載の内視鏡用可撓管。
【請求項9】
前記可撓管基材を構成する金属が表面に不動態皮膜を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の内視鏡用可撓管。
【請求項10】
前記樹脂被覆層が単層構造又は複層構造であり、前記プライマー層と接する層中にポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種の化合物を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の内視鏡用可撓管。
【請求項11】
前記樹脂被覆層が、少なくともプライマー層と接する側にポリアミド、ポリエステル及びポリウレタンの少なくとも1種の化合物を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の内視鏡可撓管。
【請求項12】
前記樹脂被覆層が2層構造であり、該2層構造の内層及び外層の厚みの割合が、前記可撓管基材の軸方向において傾斜的に変化している、請求項1~11のいずれか1項に記載の内視鏡用可撓管。
【請求項13】
前記の内層及び外層の厚みの割合が、前記内視鏡用可撓管の一端において内層:外層=5:95~40:60であって、他端において内層:外層=95:5~60:40である、請求項1~12いずれか1項に記載の内視鏡用可撓管。
【請求項14】
請求項1~13いずれか1項に記載の内視鏡用可撓管を有する内視鏡型医療機器。
【請求項15】
金属を構成材料とする可撓管基材の少なくとも外周に、下記一般式(1)で表される化合物を含むプライマー層を形成する工程、及び
前記可撓管基材の外周に形成された前記プライマー層に接して、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種の化合物を含む樹脂を被覆することにより樹脂被覆層を形成する工程
を含む、内視鏡用可撓管の製造方法。
【化3】
式中、LL
1は、1価の置換基又はn1価の連結基を示す。L
1は、単結合又は2価の連結基を示す。Y
1~Y
3は置換基を示す。n1は1~4の整数である。
ただし、Y
1~Y
3のうちの少なくとも1つがアルコキシ基及びヒドロキシ基から選ばれる基であり、n1が1である場合、LL
1-L
1及びY
1~Y
3の全てがアルコキシ基及びヒドロキシ基から選ばれる基ではない。
【請求項16】
前記樹脂被覆層が2層構造であり、該2層構造の少なくとも内層がポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種の化合物を含み、該2層構造の内層及び外層の厚みの割合が、前記可撓管基材の軸方向において傾斜的に変化している、請求項15に記載の内視鏡用可撓管の製造方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の内視鏡用可撓管の製造方法により内視鏡用可撓管を得る工程、及び、
得られた内視鏡用可撓管を内視鏡用型医療機器の挿入部に組み込む工程
を含む、内視鏡型医療機器の製造方法。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか1項に記載の内視鏡用可撓管を内視鏡用型医療機器の挿入部に組み込むことを含む、内視鏡型医療機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用可撓管、内視鏡型医療機器、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、患者の体腔内、消化管内又は食道等を観察するための医療用機器である。体内に挿入して用いるため、臓器に傷をつけず、患者に痛みないし違和感を与えないものが望まれる。そのような要請から、内視鏡の挿入部(体腔内に挿入される構造部)を構成する可撓管には、柔らかく屈曲する金属帯片を螺旋状に巻いて形成された螺旋管が採用されている。さらに、螺旋管の周囲は柔軟な樹脂で被覆され、この樹脂被覆層が必要によりトップコート層で被覆されて、食道、消化管又は体腔等の内表面に刺激ないし傷を与えない工夫がなされている。
【0003】
上記の樹脂被覆層は、例えば、螺旋管を筒状網体で覆った可撓管基材の外周面に、樹脂を押し出し成形することにより形成することができる。このとき、先端側は体腔内に挿入しやすくするために軟らかく、後端側は操作しやすくするために硬くすることが好ましい。この点を考慮し、樹脂被覆層として互いに硬さが異なる内層及び外層の二層構造を採用し、内層と外層の厚みの割合を可撓管の軸方向で変化させることが提案されている。
【0004】
内視鏡の操作性、耐久性等の向上には、可撓管基材とそれを覆う樹脂被覆層との密着性を高めることが重要である。この密着性が十分でないと、可撓管を体腔内に挿入した際に、可撓管の屈曲により樹脂被覆層に皺、浮き、裂け、剥がれ等が生じやすくなり、また、体腔内で可撓管を回転させた際に樹脂被覆層に捩れが生じやすくなる。樹脂被覆層に皺、浮き、裂け、剥がれないし捩れが生じると、体腔内に可撓管表面が引っ掛かるなどして被検者に苦痛を与えるおそれがある。また、可撓管は体腔内に挿入されると体液に曝される。例えば、胃内視鏡検査においては塩酸を含む胃液に曝される。したがって可撓管には、強い酸に繰り返し曝されても可撓管基材と樹脂被覆層との密着性を維持できることが求められる。
上記の密着性を高めるために、可撓管基材と樹脂被覆層との間にプライマー層を介在させることが知られている。例えば特許文献1には、金属製芯材(可撓管基材)表面にプライマーを塗布した後、外皮層を被覆成形すること、このプライマーとして、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤などを用い得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、曲げ動作を繰り返しても可撓管基材とそれを覆う樹脂被覆層との密着性を十分に維持することができ、また、強い酸性の液体(例えば、胃液)に浸漬させても可撓管基材と樹脂被覆層との密着性の低下を生じにくい内視鏡用可撓管、及び、この内視鏡用可撓管を備えた内視鏡型医療機器を提供することを課題とする。また本発明は、上記内視鏡用可撓管の製造方法及び上記内視鏡型医療機器の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは内視鏡用可撓管における樹脂被覆層の形成について検討を重ねた結果、金属材料で構成される可撓管基材の表面に、特定構造のシランカップリング剤を含むプライマー層を形成し、さらに、このプライマー層に接する樹脂被覆層の構成材料として特定種のポリマーを適用することにより、上記課題を解決できることを見い出した。本発明は、これらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成させるに至ったものである。
【0008】
本発明の上記課題は下記の手段により解決された。
<1>
金属を構成材料とする可撓管基材と、この可撓管基材の外周を覆う樹脂被覆層とを有する内視鏡用可撓管であって、
上記可撓管基材と上記樹脂被覆層との間に下記一般式(1)で表される化合物を含むプライマー層を有し、上記樹脂被覆層が、少なくともプライマー層と接する側にポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種の化合物を含む、内視鏡用可撓管。
【化1】
式中、LL
1は、1価の置換基又はn1価の連結基を示す。L
1は、単結合又は2価の連結基を示す。Y
1~Y
3は置換基を示す。n1は1~4の整数である。
ただし、Y
1~Y
3のうちの少なくとも1つがアルコキシ基及びヒドロキシ基から選ばれる基であり、n1が1である場合、LL
1-L
1及びY
1~Y
3の全てがアルコキシ基及びヒドロキシ基から選ばれる基ではない。
【0009】
<2>
上記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)~(4)のいずれかで表される化合物である、<1>に記載の内視鏡用可撓管。
【化2】
式中、LL
1aは、水素原子、複素環基、ヒドロキシ基、スルファニル基、イソシアナト基、チオシアナト基、ウレイド基、シアノ基、酸無水物基、アジド基、カルボキシ基、アシル基、チオカルバモイル基、リン酸基、ホスファニル基、スルホン酸基又はスルファモイル基を示す。
L
2は単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NR
a-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、チオアミド結合若しくはスルホニル基又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組合せてなる2価の基を示す。
L
3~L
5は単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NR
a-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、チオアミド結合、ウレア結合、チオウレア結合、スルホニル基若しくはスルホンアミド結合又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなる2価の基を示す。
LL
1bは、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NR
a-、2価の複素環基、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合、2価のリン酸基、ホスファンジイル基若しくはスルホニル基又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなる2価の基を示す。
LL
1cは、n2価のアルカン、n2価のアルケン、n2価のアルキン、n2価のアレーン、n2価の複素環基、3価のリン酸基、ホスファントリイル基若しくはイソシアヌレート基、又は、これらの基と、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NR
a-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、チオアミド結合及びスルホニル基のうちの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなるn2価の基を示す。
R
aは、水素原子又は置換基を示す。
Y
4、Y
7、Y
10及びY
13はヒドロキシ基又はアルコキシ基を示す。Y
5、Y
6、Y
8、Y
9、Y
11、Y
12、Y
14及びY
15はヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキル基又はケトオキシム基を示す。
n2は3又は4である。
【0010】
<3>
上記一般式(2)中、
LL1aが、水素原子、脂環基、複素環基、ヒドロキシ基、スルファニル基、チオシアナト基、酸無水物基、カルボキシ基、アシル基又はスルホン酸基を示し、
L2が、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NRa-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合若しくはスルホニル基又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組合せてなる2価の基を示す、<2>に記載の内視鏡可撓管。
<4>
上記一般式(2)中、
LL1aが、水素原子、ヒドロキシ基、カルボン酸無水物基、カルボキシ基、アシル基又はスルホン酸基を示し、
L2が、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、-NRa-、エステル結合若しくはアミド結合又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組合せてなる2価の基を示す、<2>又は<3>に記載の内視鏡可撓管。
【0011】
<5>
上記一般式(3)中、
LL1bが、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合若しくはスルホニル結合又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなる2価の基を示し、
L3及びL4が、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合若しくはスルホニル基又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなる2価の基を示す、<2>~<4>のいずれか1つに記載の内視鏡可撓管。
<6>
上記一般式(3)中、
LL1bが、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合若しくはスルホニル結合又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなる2価の基を示し、
L3及びL4が、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、エステル結合若しくはアミド結合を示す、<2>~<5>のいずれか1つに記載の内視鏡可撓管。
【0012】
<7>
上記一般式(4)中、n2が3であって、LL1cがイソシアヌレート基を示し、L5がアルキレン基を示す、<2>~<6>のいずれか1つに記載の内視鏡可撓管。
<8>
上記可撓管基材を構成する金属がステンレススチールである、<1>~<7>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管。
<9>
上記可撓管基材を構成する金属が表面に不動態皮膜を有する、<1>~<8>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管。
【0013】
<10>
上記樹脂被覆層が単層構造又は複層構造であり、上記プライマー層と接する層中にポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種の化合物を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管。
<11>
上記樹脂被覆層が、少なくともプライマー層と接する側にポリアミド、ポリエステル及びポリウレタンの少なくとも1種の化合物を含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の内視鏡可撓管。
<12>
上記樹脂被覆層が2層構造であり、この2層構造の内層及び外層の厚みの割合が、上記可撓管基材の軸方向において傾斜的に変化している、<1>~<11>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管。
<13>
上記の内層及び外層の厚みの割合が、上記内視鏡用可撓管の一端において内層:外層=95:5~60:40であって、他端において内層:外層=5:95~40:60である、<12>に記載の内視鏡用可撓管。
<14>
<1>~<13>いずれか1つに記載の内視鏡用可撓管を有する内視鏡型医療機器。
【0014】
<15>
金属を構成材料とする可撓管基材の少なくとも外周に、下記一般式(1)で表される化合物を含むプライマー層を形成する工程、及び
上記可撓管基材の外周に形成された上記プライマー層に接して、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種の化合物を含む樹脂を被覆することにより樹脂被覆層を形成する工程
を含む、内視鏡用可撓管の製造方法。
【化3】
式中、LL
1は、1価の置換基又はn1価の連結基を示す。L
1は、単結合又は2価の連結基を示す。Y
1~Y
3は置換基を示す。n1は1~4の整数である。
ただし、Y
1~Y
3のうちの少なくとも1つがアルコキシ基及びヒドロキシ基から選ばれる基であり、n1が1である場合、LL
1-L
1及びY
1~Y
3の全てがアルコキシ基及びヒドロキシ基から選ばれる基ではない。
【0015】
<16>
上記樹脂被覆層が2層構造であり、この2層構造の少なくとも内層がポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種の化合物を含み、この2層構造の内層及び外層の厚みの割合が、上記可撓管基材の軸方向において傾斜的に変化している、<15>に記載の内視鏡用可撓管の製造方法。
<17>
<15>又は<16>に記載の内視鏡用可撓管の製造方法により内視鏡用可撓管を得る工程、及び、
得られた内視鏡用可撓管を内視鏡用型医療機器の挿入部に組み込む工程
を含む、内視鏡型医療機器の製造方法。
<18>
<1>~<13>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管を内視鏡用型医療機器の挿入部に組み込むことを含む、内視鏡型医療機器の製造方法。
【0016】
本発明において、特定の符号で示された置換基又は連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時もしくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。また、特に断らない場合であっても、複数の置換基等が隣接するときにはそれらが互いに連結したり縮環したりして環を形成していてもよい意味である。
本発明において、各置換基の例として説明される各基の「基」は無置換の形態及び置換基を有する形態のいずれも包含する意味に用いる。例えば、「アルキル基」は置換基を有してもよいアルキル基を意味する。また、基の炭素数が限定されている場合、この基の炭素数は、特段の断りがない限り、置換基を含めた全炭素数を意味する。
本発明において、化合物の表示については、化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、構造の一部を変化させたものを含む意味である。更に、置換又は無置換を明記していない化合物については、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有していてもよい意味である。このことは、置換基及び連結基についても同様である。
本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートのいずれか一方又は両方を含む意味で用いる。このことは、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリルアミド」、「(メタ)アクリロニトリル」及び「(メタ)アクリロイル基」についても同様である。
本発明において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の内視鏡用可撓管は、曲げ動作を繰り返しても可撓管基材とそれを覆う樹脂被覆層との密着性を十分に維持することができ、また、強い酸性の液体(例えば、胃液)に浸漬させても可撓管基材と樹脂被覆層との密着性の低下を生じにくく、曲げ耐久性と強い酸性の液体に対する耐久性に優れる。
本発明の内視鏡型医療機器は、体腔内に挿入される構造部である可撓管が、曲げ耐久性に優れ、また、強い酸性の液体に対する耐久性にも優れる。したがって、本発明の内視鏡型医療機器は使用時における被検者の負担をより軽減することができる。
本発明の内視鏡用可撓管の製造方法によれば、曲げ耐久性に優れ、また、強い酸性の液体に対する耐久性にも優れる内視鏡用可撓管を得ることができる。
本発明の内視鏡型医療機器の製造方法によれば、この機器を構成する可撓管を、曲げ耐久性に優れ、また、強い酸性の液体に対する耐久性にも優れる可撓管とすることができる。したがって、本発明の内視鏡型医療機器の製造方法により、使用時における被検者の負担がより軽減された内視鏡型医療機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】電子内視鏡の一実施形態の構成を示す外観図である。
【
図2】内視鏡用可撓管の一実施形態の構成を示す部分断面図である。
【
図3】内視鏡用可撓管の製造装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の内視鏡型医療機器の好ましい実施形態について、電子内視鏡を例に説明する。電子内視鏡は、内視鏡用可撓管が組み込まれ(以下、内視鏡用可撓管を単に「可撓管」と称することもある)、この可撓管を体腔内、消化管内又は食道等に挿入して体内を観察等する医療機器として用いられる。
図1に示した例において、電子内視鏡2は、体腔内に挿入される挿入部3と、挿入部3の基端部分に連設された本体操作部5と、プロセッサ装置又は光源装置に接続されるユニバーサルコード6とを備えている。挿入部3は、本体操作部5に連設される可撓管3aと、そこに連設されるアングル部3bと、その先端に連設され、体内撮影用の撮像装置(図示せず)が内蔵された先端部3cとから構成される。挿入部3の大半の長さを占める可撓管3aは、そのほぼ全長にわたって可撓性を有し、特に体腔等の内部に挿入される部位はより可撓性に富む構造となっている。
【0020】
<可撓管基材>
可撓管は、最内層として金属を構成材料とする可撓管基材を有する。
図2に示すように、可撓管基材14は、最内側に金属帯片11aを螺旋状に巻回することにより形成される螺旋管11に、金属線を編組してなる筒状網体12を被覆して両端に口金13をそれぞれ嵌合した形態とすることが好ましい。可撓管基材14を構成する金属は、腐蝕を防ぐために、その表面に不動態化処理が施されていることが好ましい。すなわち、可撓管基材14はその外周(表面)に不動態皮膜を有することが好ましい。この不動態化処理は常法により行うことができる。例えば、硝酸などの強力な酸化剤を含む溶液に浸漬したり、空気(酸素)中もしくは水(水蒸気)中で加熱したり、酸化剤を含む溶液中で陽極酸化したりすることにより、金属表面に不動態皮膜を形成することができる。
可撓管基材14を構成する金属は、ステンレススチールが好ましい。ステンレススチール表面は通常、クロムと酸素(O
2)が結合して不動態皮膜が形成された状態にある。しかし、可撓管基材14の構成材料としてステンレススチールを使用する場合であっても、ステンレススチール表面全体に、より均一な不動態皮膜をより確実に形成させるために、ステンレススチールに上述した不動態化処理を施すことが好ましい。
【0021】
<プライマー層>
本発明において、可撓管基材の外周には、プライマー層(図示せず)が設けられている。このプライマー層を設けることにより、内視鏡用可撓管の曲げ耐久性及び強い酸性の液体に対する耐久性を高めることができる。本発明において、このプライマー層は下記一般式(1)で表される化合物を含む。
【0022】
【0023】
式中、LL1は、1価の置換基又はn1価の連結基を示す。L1は、単結合又は2価の連結基を示す。Y1~Y3は置換基を示す。n1は1~4の整数である。(n1が1の場合、LL1は1価の置換基を示し、n1が2~4の整数である場合、LL1は2~4価の連結基を示す。)
ただし、Y1~Y3のうちの少なくとも1つがアルコキシ基及びヒドロキシ基から選ばれる基であり、n1が1である場合、LL1-L1及びY1~Y3の全てがアルコキシ基及びヒドロキシ基から選ばれる基ではない。
【0024】
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)~(4)のいずれかで表される化合物であることが好ましく、内視鏡用可撓管の曲げ耐久性及び強い酸性の点から、下記一般式(3)又は(4)で表される化合物であることがより好ましい。
【0025】
【0026】
式中、LL1aは、水素原子、脂環基、複素環基、ヒドロキシ基、スルファニル基、イソシアナト基、チオシアナト基、ウレイド基、シアノ基、酸無水物基、アジド基、カルボキシ基、アシル基、チオカルバモイル基、リン酸基、ホスファニル基、スルホン酸基又はスルファモイル基を示す。
L2は単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NRa-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、チオアミド結合若しくはスルホニル基又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組合せてなる2価の基を示す。
L3~L5は単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NRa-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、チオアミド結合、ウレア結合、チオウレア結合、スルホニル基若しくはスルホンアミド結合又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなる2価の基を示す。
LL1bは、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NRa-、2価の複素環基、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合、2価のリン酸基、ホスファンジイル基若しくはスルホニル基又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなる2価の基を示す。
LL1cは、n2価のアルカン、n2価のアルケン、n2価のアルキン、n2価のアレーン、n2価の複素環基、3価のリン酸基、ホスファントリイル基若しくはイソシアヌレート基、又は、これらの基と、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NRa-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、チオアミド結合及びスルホニル基のうちの2つ以上の基若しくは結合とを組み合わせてなるn2価の基を示す。
Raは、水素原子又は置換基を示し、水素原子を示すことが好ましい。
Y4、Y7、Y10及びY13はヒドロキシ基又はアルコキシ基を示す。Y5、Y6、Y8、Y9、Y11、Y12、Y14及びY15はヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキル基又はケトオキシム基を示す。
n2は3又は4である。
なお、アミド結合中の一部の構造(「-NH-」)を取り出して-NRa-と解さず、エステル結合中の一部の構造(「-O-」)を取り出して「-O-」と解さない。また、酸無水物基が複素環を有する場合でも、この酸無水物基を複素環基とは解さない。
【0027】
一般式(2)で表される化合物中のLL1a-L2-に該当する構造については、LL1a、L2の順に構造を当てはめる。
ただし、LL1aで表される基及びLL1aで表される基等とL2で表される結合との組合せのいずれにも解せる基(例えば、ヒドロキシ基、スルファニル基、チオシアナト基、ウレイド基、酸無水物基、カルボキシ基、アシル基、カルバモイル基)がある場合には、これらの基は、LL1aで表される基として優先して解する。またL2がアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NRa-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、チオアミド結合及びスルホニル基の2つ以上の組合せである場合は、この組合せを構成する基(結合)の数が最も少なくなるように解する。
後述の例示化合物K-5を例に取って説明すると、LL1aはアシル基を示し、L2は酸素原子とアルキレン基との組合せを示す。また後述の例示化合物K-8を例に取って説明すると、LL1aはスルファニル基を示し、L2はアルキレン基を示す。また後述の例示化合物K-11を例に取って説明すると、LL1aはチオシアナト基を示し、L2はアルキレン基を示す。
【0028】
一般式(3)で表される化合物中の-L3-LL1b-L4-に該当する構造については、L3、L4、LL1bの順に構造を当てはめる。この際、L3で表される基(結合)の組合せ数及びL4で表される基(結合)の組合せ数が最小になるようにL3及びL4を選択する。
後述の例示化合物K-24を例に取って説明すると、L3はアルキレン基を示し、L4はアルキレン基を示し、LL1bはエステル結合と-O-との組合せを示す。また後述の例示化合物K-25を例に取って説明すると、L3はアルキレン基を示し、L4はアルキレン基を示し、LL1bは2つのエステル結合とアルケニレン基との組合せを示す。
ただし、-L3-LL1b-L4-に該当する構造が、1種類の基(例えば、アルキレン基)である場合には、L3及びL4は単結合を示すものとする。
【0029】
また、一般式(4)で表される化合物中のLL1c-(L5)n2-に該当する構造について、L5、LL1cの順に構造を当てはめる。この際、L5で表される基等の組合せ数が最小になるようにL5を選択する。
ただし、LL1c-(L5)n2-に該当する構造が、1種類の基(例えば、n2価のアルカン)である場合には、n2個のL5は単結合を示すものとする。
【0030】
LL1aとして採り得る脂環基は、シクロアルキル基、シクロアルケニル基及びシクロアルキニル基のいずれでもよい。シクロアルキル基の炭素数は、3~20が好ましく、4~15がより好ましく、5~10がさらに好ましい。シクロアルケニル基及びシクロアルキニル基の炭素数は、いずれも、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10がより好ましく、6がさらに好ましい。
【0031】
LL1aとして採り得る複素環基を構成する複素環は、飽和又は不飽和の脂肪族複素環でも芳香族複素環でもよく、単環でも縮合環でもよい。また、橋かけ環でもよい。複素環が有するヘテロ原子は、例えば、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子が挙げられる。1つの複素環が含むヘテロ原子の数は、特に制限されないが、1~3個が好ましく、1又は2個がより好ましい。複素環の炭素数は2~10が好ましく、4又は5がより好ましい。複素環は3~7員環が好ましく、3~6員環がより好ましく、3~5員環がさらに好ましい。複素環の具体例として、エポキシ環、3,4-エポキシシクロヘキサン環、フラン環及びチオフェン環が挙げられる。
【0032】
LL1aとして採り得るアシル基の炭素数は0~40が好ましく、0~30がより好ましく、0~20がより好ましく、0~15がより好ましく、0~10がさらに好ましい。本発明においてアシル基は、ホルミル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基及びアリールカルボニル基を含む。上記アルケニルカルボニル基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基が好ましく挙げられる。
【0033】
LL1aとして採り得る酸無水物基としては、カルボン酸無水物の構造を有する1価の基が好ましく、例えば、3,4-ジヒドロ-2,5-フランジオニル等の無水マレイン酸基、無水コハク酸基、無水グルタル酸基、無水アジピン酸基及び無水シトラコン酸基が挙げられる。
【0034】
L2として採り得るアルキレン基は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~25がより好ましく、1~20がより好ましく、1~15がより好ましい。アルキレン基の具体例として、メチレン、エチレン、イソプロピレン、ブチレン、ペンチレン、シクロへキシレン、へプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン及びウンデシレンが挙げられる。
【0035】
L2として採り得るアルケニレン基は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。アルケニレン基の炭素数は、2~20が好ましく、2~15がより好ましく、2~10がより好ましく、2~6がさらに好ましい。アルケニレン基の具体例として、エテニレン及びプロぺニレンが挙げられる。
【0036】
L2として採り得るアルキニレン基は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。アルキニレン基の炭素数は、2~20が好ましく、2~15がより好ましく、2~10がより好ましく、2~6がさらに好ましい。アルキニレン基の具体例として、エチニレン及びプロピニレンが挙げられる。
【0037】
L2として採り得るアリーレン基の炭素数は6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~12がより好ましく、6~10がさらに好ましい。アリーレン基の具体例として、例えば、フェニレン及びナフチレンを挙げることがでる。
【0038】
L2として採り得る-NRa-のRaにおける置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~8)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~12、より好ましくは炭素数2~8)、アルキニル基(好ましくは炭素数2~12、より好ましくは炭素数2~8)、アリール基(好ましくは炭素数6~20、より好ましくは炭素数6~10)及び複素環基が挙げられる。Raとして採り得る複素環基を構成する複素環は、LL1aとして採り得る複素環基を構成する複素環を挙げることができ、好ましい形態もLL1aとして採り得る複素環基の好ましい形態と同じである。
-NRa-としては、例えば、-NH-が挙げられる。
【0039】
L2として採り得る、上記基若しくは上記結合を2つ以上組合せてなる2価の基(以下、「L2として採り得る組合わせてなる基」とも称す。)を構成する、組合わせる基若しくは結合の数は、2~8が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。
また、L2として採り得る組合わせてなる基の分子量は、20~1000が好ましく、30~500がより好ましく、40~200がさらに好ましい。
L2として採り得る組合わせてなる基としては、例えば、ウレア結合、チオウレア結合、カルバメート基、スルホンアミド結合、アリーレン-アルキレン、-O-アルキレン、-NRa-アルキレン、アミド結合-アルキレン、-S-アルキレン、アルキレン-O-アミド結合-アルキレン、アルキレン-アミド結合-アルキレン、アルケニレン-アミド結合-アルキレン、アルキレン-エステル結合-アルキレン、アリーレン-エステル結合-アルキレン、-(アルキレン-O)-、アルキレン-O-(アルキレン-O)-アルキレン(「(アルキレン-O)」はいずれも繰り返し単位)、アリーレン-スルホニル-O-アルキレン及びエステル結合-アルキレンが挙げられる(「基」を省略して記載している。以下同様に記載することもある。)。
【0040】
L3~L5として採り得るアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基及び-NRa-としては、上記L2として採り得るアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基及び-NRa-を挙げることができ、好ましい形態もL2として採り得るアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基及び-NRa-の好ましい形態と同じである。
【0041】
LL1bとして採り得るアルキレン基は、直鎖、分岐及び環状のいずれでもよい。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~25がより好ましく、1~20がより好ましく、1~15がより好ましい。アルキレン基の具体例として、メチレン、エチレン、イソプロピレン、ブチレン、ペンチレン、シクロへキシレン、へプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン及びウンデシレンが挙げられる。
【0042】
LL1bとして採り得るアルケニレン基は、直鎖、分岐及び環状のいずれでもよい。アルケニレン基の炭素数は、2~20が好ましく、2~15がより好ましく、2~10がより好ましく、2~6がさらに好ましい。アルケニレン基の具体例として、エテニレン及びプロぺニレンが挙げられる。
【0043】
LL1bとして採り得るアルキニレン基は、直鎖、分岐及び環状のいずれでもよい。アルキニレン基の炭素数は、2~20が好ましく、2~15がより好ましく、2~10がより好ましく、2~6がさらに好ましい。アルキニレン基の具体例として、エチニレン及びプロピニレンが挙げられる。
【0044】
LL1bとして採り得るアリーレン基は、L2~L5として採り得るアリーレン基を挙げることができ、好ましい形態もL2~L5として採り得るアリーレン基の好ましい形態と同じである。
【0045】
LL1bとして採り得る2価の複素環基を構成する複素環は、LL1aとして採り得る複素環基を構成する複素環を挙げることができ、好ましい形態もLL1aとして採り得る複素環基の好ましい形態と同じである。また、LL1bとして採り得る-NRa-としては、上記L2として採り得る-NRa-を挙げることができ、好ましい形態もL2として採り得る-NRa-の好ましい形態と同じである。
【0046】
LL1bとして採り得る、上記基若しくは上記結合を2つ以上組合せてなる2価の基(以下、「LL1bとして採り得る組合わせてなる基」とも称す。)を構成する、組合わせる基若しくは結合の数は、2~8が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。
また、LL1bとして採り得る組合わせてなる基の分子量は、20~1000が好ましく、30~500がより好ましく、40~200がさらに好ましい。
LL1bとして採り得る組合わせてなる基としては、例えば、ウレア結合、カーボネート基、スルホンアミド結合、ジスルフィド結合、エステル結合-アルケニレン-エステル結合、-(アルキレン-O)-及び-O-(アルキレン-O)-(「(アルキレン-O)」はいずれも繰り返し単位)が挙げられる。
【0047】
LL1cとして採り得るn2価のアルカンのうちの3価のアルカン、すなわち、アルカントリイル基の炭素数は1~20が好ましく、3~15がより好ましく、4~12がより好ましく、5~10がさらに好ましい。
【0048】
LL1cとして採り得るn2価のアルカンのうちの4価のアルカン、すなわち、アルカンテトライル基の炭素数は1~20が好ましく、3~15がより好ましく、4~12がより好ましく、5~10がさらに好ましい。
【0049】
LL1cとして採り得るn2価のアルケンのうちの3価のアルケン、すなわち、アルケントリイル基の炭素数は2~20が好ましく、3~15がより好ましく、4~12がより好ましく、5~10がさらに好ましい。
【0050】
LL1cとして採り得るn2価のアルケンのうちの4価のアルケン、すなわち、アルケンテトライル基の炭素数は2~20が好ましく、3~15がより好ましく、4~12がより好ましく、5~10がさらに好ましい。
【0051】
LL1cとして採り得るn2価のアルキンのうちの3価のアルキン、すなわち、アルキントリイル基の炭素数は3~20が好ましく、3~15がより好ましく、4~12がより好ましく、5~10がさらに好ましい。
【0052】
LL1cとして採り得るn2価のアルキンのうちの4価のアルキン、すなわち、アルキンテトライル基の炭素数は3~20が好ましく、3~15がより好ましく、4~12がより好ましく、5~10がさらに好ましい。
【0053】
LL1cとして採り得るn2価のアレーンのうちの3価のアレーン、すなわち、アレーントリイル基の炭素数は6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~12がより好ましく、6~10がさらに好ましい。アレーントリイル基の具体例として、例えば、ベンゼントリイル及びナフタレントリイルを挙げることができる。
【0054】
LL1cとして採り得るn2価のアレーンのうちの4価のアレーン、すなわち、アレーンテトライル基の炭素数は6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~12がより好ましく、6~10がさらに好ましい。アレーンテトライル基の具体例として、例えば、ベンゼンテトライル及びナフタレンテトライルを挙げることができる。
【0055】
LL1cとして採り得るn2価の複素環基を構成する複素環は、LL1aとして採り得る複素環基を構成する複素環を挙げることができ、好ましい形態もLL1cとして採り得る複素環の好ましい形態と同じである。また、LL1cとして採り得る-NRa-としては、上記L2として採り得る-NRa-を挙げることができ、好ましい形態もL2として採り得る-NRa-の好ましい形態と同じである。
【0056】
LL1cとして採り得る、上記基と、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NRa-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、チオアミド結合及びスルホニル基のうちの2つ以上の基若しくは結合とを組み合わせてなるn2価の基(以下、「LL1cとして採り得る組合わせてなる基」とも称す。)を構成する、組合わせる基若しくは結合の数は、2~8が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。
また、LL1Cとして採り得る組合わせてなる基の分子量は、20~1000が好ましく、30~500がより好ましく、40~200がさらに好ましい。
LL1cとして採り得る組合わせてなる基としては、例えば、グリセロール基、トリメチロールプロピル基、1,3,5-トリアジン基及びイソシアヌル基(1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン-1,3,5-トリイル基)が挙げられる。
【0057】
Y4~Y15として採り得るアルコキシ基を構成するアルキル基は、直鎖、分岐及び環状のいずれでもよく、これらの形態を組合わせて有してもよい。本発明において、このアルキル基は直鎖のアルキル基であることが好ましい。アルコキシ基を構成するアルキル基の炭素数は、1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~5がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。アルコキシ基を構成するアルキル基の具体例として、メチル、エチル、プロピル、t-ブチル、ペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0058】
Y5、Y6、Y8、Y9、Y11、Y12、Y14及びY15として採り得るアルキル基としては、Y4~Y15として採り得るアルコキシ基を構成するアルキル基を挙げることができ、好ましい形態もY4~Y15として採り得るアルコキシ基を構成するアルキル基の好ましい形態と同じである。
【0059】
ケトオキシム基は下記構造を有する置換基である。
【0060】
【0061】
上記構造中、R11及びR12は置換基を示し、*はケイ素原子に対する結合部を示す。
R11及びR12が採り得る置換基として、上記Raにおける置換基が挙げられ、好ましい形態もRaとして採り得る置換基の好ましい形態と同じである。
【0062】
ケトオキシム基として例えば、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基及びジエチルケトオキシム基等が挙げられる。
【0063】
一般式(1)で表される化合物は、本発明の効果を損なわない範囲内で置換基を有してもよい。この置換基として、上述のLL1aとして採り得る基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基が挙げられる。また、この置換基として、無置換のシリル基、及び、アルコキシ基又はヒドロキシ基を置換基として有しない置換シリル基が挙げられる。
【0064】
一般式(2)中、LL1a又はL2と、Y5及びY6の少なくともいずれか1つとは互いに連結して環を形成してもよい。この環の環構成原子数は3~10が好ましく、4~8がより好ましく、5又は6がさらに好ましい。
【0065】
一般式(3)中、LL1b又はL3と、Y8及びY9の少なくともいずれか1つとは互いに連結して環を形成してもよい。この環の環構成原子数は3~10が好ましく、4~8がより好ましく、5又は6がさらに好ましい。また、LL1b又はL4と、Y11及びY12の少なくともいずれか1つとは互いに連結して環を形成してもよい。この環の環構成原子数は3~10が好ましく、4~8がより好ましく、5又は6がさらに好ましい。また、これらの環は同時に2以上形成されていてもよい。
【0066】
一般式(4)中、LL1c又はL5と、Y13及びY14の少なくともいずれか1つとは互いに連結して環を形成してもよい。この環の環構成原子数は3~10が好ましく、4~8がより好ましく、5又は6がさらに好ましい。
【0067】
一般式(2)中、LL1aが、水素原子、脂環基、複素環基、ヒドロキシ基、スルファニル基、チオシアナト基、酸無水物基、カルボキシ基、アシル基又はスルホン酸基を示すことが好ましい。また、L2が、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NRa-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合若しくはスルホニル基又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組合せてなる2価の基を示すことが好ましい。
【0068】
一般式(2)中、LL1aが、水素原子、ヒドロキシ基、カルボン酸無水物基、カルボキシ基、アシル基又はスルホン酸基を示すことが好ましい。また、L2が、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、-NRa-、エステル結合若しくはアミド結合又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組合せてなる2価の基を示すことがより好ましい。
【0069】
LL1a-L2-の具体例としては、水素原子-アルケニレン、水素原子-アリーレン-アルキレン、脂環-アルキレン、複素環-アルキレン、アシル-O-アルキレン、アシル-NRa-アルキレン、スルファニル-アルキレン、複素環-S-アルキレン、チオシアナト-アルキレン、ヒドロキシ-アルキレン、ヒドロキシ-アルキレン-アミド結合-アルキレン、カルボキシ-アルキレン、アシル-アルキレン-アミド結合-アルキレン、酸無水物-アルキレン、水素原子-アリーレン-エステル結合-アルキレン、水素原子-アルキレン-O-(アルキレン-O)-アルキレン、スルホン酸-アルキレン及び水素原子-アリーレン-スルホニル-O-アルキレン等が挙げられる。
【0070】
一般式(2)中、Y4~Y6の少なくとも2つがアルコキシ基又はヒドロキシ基であることが好ましく、Y4~Y6のすべてがアルコキシ基又はヒドロキシ基であることがより好ましい。
【0071】
一般式(3)中、LL1bが、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合若しくはスルホニル結合又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなる2価の基を示すことが好ましい。また、L3及びL4が、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合若しくはスルホニル基又はこれらの基若しくは結合を2つ以上組み合わせてなる2価の基を示すことが好ましく、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、エステル結合若しくはアミド結合を示すことがより好ましい。
【0072】
-L3-LL1b-L4-の具体例としては、アルキレン、アルキレン-エステル結合-O-アルキレン、アルキレン-エステル結合-アルケニレン-エステル結合-アルキレン、アルキレン-O-(アルキレン-O)-アルキレン、アルキレン-アリーレン-アルキレン、アルキレン-S-S-アルキレン等が挙げられる。
【0073】
一般式(3)中、Y7~Y9の少なくとも2つがアルコキシ基又はヒドロキシ基であることが好ましい。
【0074】
一般式(3)中、Y10~Y12の少なくとも2つがアルコキシ基又はヒドロキシ基であることが好ましい。
【0075】
一般式(4)中、n2が3であって、LL1cがイソシアヌレート基を示すことが好ましい。また、L5がアルキレン基を示すことが好ましい。
【0076】
一般式(4)中、Y13~Y15の少なくとも2つがアルコキシ基又はヒドロキシ基であることが好ましく、Y13~Y15のすべてがアルコキシ基又はヒドロキシ基であることがより好ましい。
【0077】
一般式(4)中、nは3であることが好ましい。
【0078】
本発明で用いる一般式(1)の化合物は、単分子で、可撓管基材と樹脂被覆層との接着に寄与するものであり、プライマー層の層厚は通常の接着剤層よりも格段に薄い(換言すれば、厚みという概念を想起できない。)。すなわち、一般式(1)の化合物を含むプライマー層は、可撓管基材と樹脂被覆層との接着のために一定の層厚と柔らかさを必要とする接着剤層とは異なる。それゆえプライマー層は可撓管の弾発性には事実上影響せず、本発明の可撓管は弾発性にも優れるものとなる。
【0079】
本発明において「プライマー層が一般式(1)で表される化合物を含む」とは、一般式(1)で表される化合物が可撓管基材と反応した状態で含まれている形態、及び、一般式(1)で表される化合物が樹脂被覆層と反応した状態で含まれている形態を包含する意味である。すなわち、一般式(1)で表される化合物は少なくとも一部が加水分解してヒドロキシ基が露出した状態となり、これが可撓管基材の構成金属と反応したり、樹脂被覆層の表面の基と反応したりして存在し得るものである。
また、例えば、後述するように、プライマー層がpHを酸性又はアルカリ性に調製した塗布液を用いて形成された場合には、一般式(1)の化合物の一部が、塩またはイオンの形態として存在していてもよい。上記イオンの形態としては、例えば、アニオンを形成し得る基(アニオン性基)がアニオンとして存在する形態が挙げられる。また、上記塩の形態としては、上記アニオン性基が、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン等を対カチオンとして有する塩型の基として存在する形態が挙げられる。
【0080】
一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明において、下記例示化合物K-5を用いる場合、上記樹脂被覆層がポリアミド、ポリエステル、及びポリオレフィンの少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、ポリアミドを含むことがより好ましい。
下記構造中、Meはメチル、Etはエチルを示す。また、K-20の化合物の構造中における( )は繰り返し数6~9の繰り返し単位を表している。K-26の化合物の構造中における( )は繰り返し数6~9の繰り返し単位を表している。
なお、下記化学構造式中、ケイ素原子に結合する置換基としてアルコキシ基を示している化合物について、このアルコキシ基の一部又は全部がヒドロキシ基である構造を有する化合物も一般式(1)で表される化合物の具体例として挙げられる。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
プライマー層中における一般式(1)で表される化合物の含有量は特に制限されないが、下限値は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、97質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。上限値は100質量%とすることができる。
プライマー層中に含有される一般式(1)で表される化合物は、1種でも2種以上であってもよい。一般式(1)で表される化合物が2種以上含有される場合には、その含有量の合計を、上記プライマー層中における一般式(1)で表される化合物の含有量とする。
プライマー層は、一般式(1)で表される化合物の他に、本発明の効果を損なわない範囲内で、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤、安定剤及び消泡剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0085】
<樹脂被覆層>
本発明の可撓管は、プライマー層が設けられた可撓管基材の外周に樹脂被覆層を有する。
図2の形態では、樹脂被覆層15の外面に、耐薬品性等に寄与する、フッ素等を含有したトップコート層16をコーティングしている。
図2において、螺旋管11は1層だけ図示されているが、同軸に2層以上重ねて構成してもよい。なお、図面において、樹脂被覆層15及びトップコート層16は、層構造を明確に図示するため、可撓管基材14の径に比して厚く描いている。
【0086】
本発明において樹脂被覆層は、上述したプライマー層を有する可撓管基材の外周面を被覆する。
図2の形態では、樹脂被覆層15は、可撓管基材14の軸回りの全周面を被覆する内層17と、内層17の軸回りの全周面を被覆する外層18とを積層した二層構成である。通常、内層17の材料には、軟質樹脂が使用され、外層18の材料には、硬質樹脂が使用されるが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
本発明においては後述するように、樹脂被覆層が2層以上の複層構造の場合には、少なくとも最内層(プライマー層と接する層)にポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種が含まれる。また、本発明において樹脂被覆層が単層の場合には、この単層の樹脂被覆層にはポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種が含まれる。すなわち、本発明において樹脂被覆層は、少なくともプライマー層と接する側にポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種の化合物を含む。
上記のポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種の化合物は、-LL
1と樹脂複層を構成するポリマー(化合物)との相互作用を高めて密着性をより向上させ、より優れた曲げ耐久性を得る点から、ポリアミド、ポリエステル及びポリウレタンの少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。樹脂被覆層がポリアイミド、ポリエステル及びポリウレタンの少なくとも1種の化合物を含有する場合、例えば、アミド結合、エステル結合及びウレタン結合のいずれかとの間の水素結合、ポリアミド、ポリエステル及びポリウレタン中のヒドロキシ残基との水素結合、並びに、ポリアミド、ポリエステル及びポリウレタン中のカルボキシ残基、アミノ残基又はヒドロキシ残基との共有結合等の少なくともいずれかが効率的に生じ、樹脂被覆層との密着性をより向上させることができると考えられる。
【0087】
上記樹脂被覆層に含まれるポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンは、熱可塑性であることが好ましい。
上記の熱可塑性ポリマーとしては、比較的膜厚が薄い樹脂被覆層を熱加工により成形する必要性の点から、メルトボリュームレイト(MVR)が、1cm3/10分~100cm3/10分であることが好ましく、2cm3/10分~80cm3/10分であることがより好ましく、3cm3/10分~60cm3/10分であることがさらに好ましい。
MVRは、JIS K 7210-1に基づき測定される値である。
【0088】
(ポリアミド)
ポリアミドとしては、内視鏡用可撓管の樹脂被覆層として適用可能な通常のポリアミドを広く採用することができる。例えば、結晶性ポリアミド、非晶性ポリアミド及びポリアミドエラストマーを挙げることができる。
【0089】
結晶性ポリアミドに特に制限はなく、例えば脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドを挙げることができる。
脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ポリε-カプロアミド(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド6/66)、ポリウンデカミド(ポリアミド11)、ポリカプロアミド/ポリウンデカミドコポリマー(ポリアミド6/11)、ポリドデカミド(ポリアミド12)、ポリカプロアミド/ポリドデカミドコポリマー(ポリアミド6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)およびこれらの混合物又は共重合体等が挙げられる。
【0090】
芳香族ポリアミドとしては、例えば、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/6T)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドTMDT)、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)およびこれらの混合物又は共重合体等が挙げられる。
【0091】
非晶性ポリアミドとしては、例えば、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6-ヘキサンジアミン/ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体、テレフタル酸/2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン/2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン/ω-ラウロラクタムの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6-ヘキサンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン/2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン/2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン/ω-ラウロラクタムの重縮合体、及び、イソフタル酸/テレフタル酸/その他ジアミン成分の重縮合体等が挙げられる。
【0092】
ポリアミドエラストマーとしては、例えば、アミド系熱可塑性エラストマーと称される、ハードセグメントがポリアミドであるエラストマーを挙げることができる。例えば、ハードセグメントがポリアミドであり、ソフトセグメントがポリエーテル又はポリエステルであるマルチブロックコポリマー、及び、ハードセグメントがポリアミドであり、ソフトセグメントがエーテル結合及びエステル結合の両方の結合様式をもつマルチブロックコポリマーを挙げることができる。ハードセグメントとしては、ポリアミド6、66、610、11及び12等が挙げられる。ソフトセグメントにおけるポリエーテルとしては、ポリエチレングリコール、ジオールポリ(オキシテトラメチレン)グリコール及びポリ(オキシプロピレン)グリコール等が挙げられ、ポリエステルとしては、ポリ(エチレンアジペート)グリコール及びポリ(ブチレン-1,4-アジペート)グリコール等が挙げられる。
【0093】
本発明に用いられるポリアミドは、曲げ耐久性及び強い酸性の液体に対する耐久性の点から、ポリアミド1010、ポリアミド11、ポリアミド12又はポリアミドエラストマーが好ましい。
【0094】
商業的に入手できる、本発明に用いられるポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド11(アルケマ社製、商品名「リルサンBMN O」)、ポリアミド12(ダイセル・エボニック社製、商品名「ダイアミドL1940」)、ポリアミド1010(ダイセル・エボニック社製、商品名「ベスタミドTerraDS16」)、ポリアミド1012(エボニック社製、商品名「ベスタミドTerraDD16」)、非晶性ポリアミド(ダイセル・エボニック社製、商品名「トロガミドCX7323」)、ポリアミドエラストマー(アルケマ社製、商品名「ペバックス7233」及び「ペバックスRnew80R53」)が挙げられる。
【0095】
ポリアミドは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
(ポリエステル)
ポリエステルとしては、内視鏡用可撓管の樹脂被覆層として適用可能な通常のポリエステルを広く採用することができる。例えば、熱可塑性ポリエステル及びポリエステルエラストマーを挙げることができる。
【0097】
熱可塑性ポリエステルは、ジカルボン酸成分とジオール成分とから構成されるポリエステル、及び、ヒドロキシカルボン酸成分から構成されるポリエステル等が挙げられる。
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸及びシクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0098】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール、並びに、ビスフェノールA及びビスフェノールS等のエチレンオキシド付加体等が挙げられる。
【0099】
ヒドロキシカルボン酸成分としては、ε-カプロラクトン、乳酸及び4-ヒドロキシ安息香酸などが挙げられる。
【0100】
熱可塑性ポリエステルは、上記のジカルボン酸成分とジオール成分とから構成されるホモポリマー又は上記のヒドロキシカルボン酸成分から構成されるホモポリマーでもよく、コポリマーでもよく、さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、グリセリン及びペンタエリスリトール等の3官能化合物成分を少量含有していてもよい。
【0101】
ポリエステルエラストマーは、例えば、エステル系熱可塑性エラストマーと称される、ハードセグメントがポリエステルであるエラストマーを挙げることができる。例えば、ハードセグメントが結晶性ポリエステルであり、ソフトセグメントがポリエーテル又はポリエステルであるマルチブロックコポリマー、及び、ハードセグメントが結晶性ポリエステルであり、ソフトセグメントがエーテル結合及びエステル結合の両方の結合様式をもつマルチブロックコポリマーを挙げることができる。
ハードセグメントとしては、ポリブチレンテレフタラート及びポリエチレンテレフタラート等が挙げられる。
ソフトセグメントとしては、ポリテトラメチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、並びに、ポリカプロラクトン等のポリエステル等が挙げられる。
【0102】
例えば、特開平11-92636号公報などに記載のごとく高融点ポリエステルセグメント(ハードセグメント)と分子量400~6,000の低融点ポリマーセグメント(ソフトセグメント)とからなるブロックコポリマーを用いることができる。
【0103】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルは、曲げ耐久性をより向上させるため、ポリブチレンナフタラート由来の構造を有することが好ましい。
【0104】
商業的に入手できる、本発明に用いられるポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエステルエラストマー(東洋紡社製の商品名「ペルプレン P-70B」及び「ペルプレン S-3001」、三菱ケミカル社製の商品名「プリマロイ B1942」)並びにポリブチレンテレフタラート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名「ノバデュラン 5505S」)を挙げることができる。
【0105】
ポリエステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
(ポリウレタン)
ポリウレタンとしては、内視鏡用可撓管の樹脂被覆層として適用可能な通常のポリウレタンを広く採用することができる。例えば、カーボネート系、エーテル系もしくはエステル系又はこれらの混合系のポリウレタンを用いることができる。また、ポリウレタンエラストマーも好ましい。ポリウレタンエラストマーとしては、ウレタン系熱可塑性エラストマーと称される、ハードセグメントがポリウレタンであり、ソフトセグメントがエーテル、エステルもしくはカーボネート結合又はこれらの結合の混合様式をもつブロックポリマーが挙げられ、目的に応じて適宜調製することができる。例えば、低分子のグリコール成分およびジイソシアネート成分からなるハードセグメントと、高分子(長鎖)ジオール成分およびジイソシアネート成分からなるソフトセグメントとを含むブロックポリマーが挙げられる。
高分子(長鎖)ジオール成分としては、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール及びラクトン系ポリエステルジオール等が挙げられる。例えば、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(エチレンアジペート-co-1,4-ブチレンアジペート)、ポリカプロラクトン系ジオール、ポリ(1,6-ヘキシレンカーボネート)、ポリ(1,6-ヘキシレンアジペート-co-ネオペンチレンアジペート)などが挙げられる。高分子(長鎖)ジオールの数平均分子量は、500~10,000が好ましい。
低分子のグリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ビスフェノールA等の短鎖ジオールを用いることができる。短鎖ジオールの数平均分子量は、48~500が好ましい。
上記ジイソシアネート成分としては、例えばジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0107】
上記の実施形態に係るポリウレタンエラストマーとしては、例えば、特開2005-015643号公報の開示を参照することができる。
【0108】
商業的に入手できる、本発明に用い得るポリウレタンとしては、例えば、PANDEX T-2185、T-2983N(以上、DIC(株)製)、ミラクトラン(日本ミラクトラン(株)製)、エラストラン(BASFジャパン(株)製)、レゼミン(大日精化工業(株)製)、ペレセン(ダウ・ケミカル日本(株)製)、アイアンラバー(NOK(株)製)、モビロン(日清紡ケミカル(株)製)などが挙げられる。アイソプラスト(ルーブリゾール社製)、テコフレックス(ルーブリゾール社製)、スーパフレックス830、460、870、420、又は420NS(第一工業製薬社製ポリウレタン)、ハイドランAP-40F、WLS-202、又はHW-140SF(大日本インキ化学工業社製ポリウレタン)、オレスターUD500、又はUD350(三井化学社製ポリウレタン)、並びに、タケラックW-615、W-6010、W-6020、W-6061、W-405、W-5030、W-5661、W-512A-6、W-635、又はWPB-6601(DIC(株)製)等を挙げることができる。
【0109】
ポリウレタンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0110】
(ポリオレフィン)
ポリオレフィンとしては、内視鏡用可撓管の樹脂被覆層として適用可能な通常のポリオレフィンを広く採用することができる。例えば、ポリオレフィン及びオレフィン系エラストマーが挙げられる。
【0111】
ポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び4-メチル-ペンテン等の炭素数2~20のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体が挙げられる。また、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン及びイソプレンなどの炭素数2~20の非共役ジエンとα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。また、エチレン-α-オレフィン共重合体ゴム、エチレン-α-オレフィン-非共役ジエン共重合体ゴム、プロピレン-α-オレフィン共重合体ゴム、及び、ブテン-α-オレフィン共重合体ゴムなどを挙げることができる。また、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン-(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体、エチレン-ブテン-無水マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン-ブテン-無水マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、及び、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等を用いることもできる。
【0112】
オレフィン系エラストマーは、オレフィン系熱可塑性エラストマーと称される、ハードセグメントがポリオレフィンであり、ソフト成分がゴム成分であるエラストマーであり、上記のポリオレフィンとゴム成分のブレンドタイプ、動的架橋タイプ及び重合体タイプ等が挙げられる。
【0113】
オレフィン系エラストマーにおけるポリオレフィンとしては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、1-ブテン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-1-ブテン-エチレン共重合体、プロピレン-α-オレフィン-エチレン共重合体、プロピレン-α-オレフィン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-α-オレフィン-エチレン共重合体、及びポリプロピレンが挙げられる。
オレフィン系エラストマーにおけるゴム成分としては、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、イソブチレン-イソプレン共重合体、プロピレンゴム(PP)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)及びエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)が挙げられる。
オレフィン系エラストマー中におけるポリオレフィン及びゴム成分は、それぞれ、1種単独で含有されていてもよく、2種以上が含有されていてもよい。
【0114】
商業的に入手できる、本発明に用いられるポリオレフィンとしては、例えば、オレフィン系エラストマー(東洋紡社製の商品名「サーリンク 3145D」)を挙げることができる。
【0115】
ポリオレフィンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
樹脂被覆層が単層の場合の樹脂被覆層中の、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンから選ばれるポリマーの含有量の合計、及び、樹脂被覆層が複層の場合における最内層中のポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンから選ばれるポリマーの含有量の合計は、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。また、樹脂被覆層が単層の場合の樹脂被覆層はポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種からなる層であってもよく、また、樹脂被覆層が複層の場合における最内層は、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種からなる層であってもよい。
樹脂被覆層が単層の場合の樹脂被覆層、及び、樹脂被覆層が複層の場合における最内層が、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィン以外のポリマーを含む場合、このポリマーは本発明の効果を損なわない限り特に制限はない。ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィン以外のポリマーとしては例えば、ポリスチレン及びポリカーボネートを挙げることができる。
【0117】
なお、樹脂被覆層は、本発明の効果を損なわない範囲で常用の各種添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、耐熱安定剤、無機フィラー、衝撃向上剤、可塑剤、滑剤、金属石鹸、耐光助剤及び着色剤が挙げられる。樹脂被覆層中での上記添加剤の含有量も、適宜調製することができる。このような添加剤は用いる樹脂材料に由来してもよく、また、ポリマーとは別に添加することもできる。
【0118】
樹脂被覆層が複層の場合における最内層以外の層は、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー及びポリエステルエラストマーの少なくともいずれかを含むことが好ましい。これらの樹脂を適宜に組み合わせて所望の物性を有する層を形成することができる。樹脂被覆層が複層の場合における最内層以外の層は、弾発性をより高める観点から、より好ましくはポリウレタンエラストマーを含み、又はポリウレタンエラストマーとポリエステルエラストマーとのアロイを含む。
【0119】
本発明の樹脂被覆層に用い得る上記各ポリマーは、分子量1万~100万が好ましく、分子量2万~50万がより好ましく、分子量3万~30万が特に好ましい。
本発明において、ポリマーの分子量は、特に断らない限り、重量平均分子量を意味する。重量平均分子量は、GPCによってポリスチレン換算の分子量として計測することができる。
【0120】
図2に示すように、本発明において樹脂被覆層15は、可撓管基材14の長手方向(軸方向)においてほぼ均一な厚みで形成されることが好ましい。樹脂被覆層15の厚みは、例えば、0.2mm~1.0mmである。可撓管3aの外径Dは目的に応じて適宜に設定され、例えば、11~14mmである。
図2において内層17及び外層18の厚みは、可撓管基材14の軸方向において、樹脂被覆層15の全体の厚みに対して、各層17及び18の厚みの割合が変化するように形成されている。具体的には、アングル部3bに取り付けられる可撓管基材14の一端14a側(先端側)は、樹脂被覆層15の全厚みに対して、内層17の厚みの方が外層18の厚みよりも大きい。そして、一端14aから本体操作部5に取り付けられる他端14b側(基端側)に向かって、徐々に内層17の厚みが漸減し、他端14b側では、外層18の厚みの方が内層17の厚みよりも大きくなっている。
【0121】
図2において、一端14aにおける内層17の厚みの割合が最大であり、他端14bにおいて、外層18の厚み割合が最大である。内層17の厚み:外層18の厚みは、一端14aにおいて、例えば9:1とし、他端14bにおいて、例えば1:9とすることができる。両端14aから14bにかけて、内層17と外層18の厚みの割合が逆転するように、両層の厚みを変化させている。これにより、可撓管3aは、一端14a側と、他端14b側の硬度に差が生じ、一端14a側が軟らかく、他端14b側が硬くなるように軸方向において柔軟性を変化させることができる。上記内層及び外層は、一端における厚みの割合を95:5~60:40(内層:外層)とすることが好ましく、他端における厚みの割合を5:95~40:60(内層:外層)とすることが好ましい。
なお、内層17と外層18との厚みの割合を5:95~95:5の範囲内とすることにより、薄い方の樹脂の押し出し量についても、精密に制御することが可能である。
【0122】
内層17及び外層18に用いる軟質樹脂及び硬質樹脂は、以下の関係を満たすことが好ましい。成形後の硬度を表す指標である100%モジュラス値の差が、1MPa以上であることが好ましく、3MPa以上であることがより好ましい。溶融状態の樹脂の流動性を表す指標である、150℃~300℃の成形温度における溶融粘度の差は、2500Pa・s以下であることが好ましい。これにより、内層17及び外層18からなる樹脂被覆層15は、良好な成形精度と、先端側と基端側において必要な硬度差の両方が確保される。
【0123】
[トップコート層]
本発明の可撓管には、樹脂被覆層15の外周には、必要によりトップコート層16が配される。トップコート層の材料は特に制限されないが、ウレタン塗料、アクリル塗料、フッ素塗料、シリコーン塗料、エポキシ塗料、ポリエステル塗料などが適用される。
トップコート層を使用する主な目的は、可撓管表面の保護又は艶出し、滑り性の付与、そして耐薬品性の付与である。そのため、トップコート層としては弾性率が高く、かつ表面が平滑になり、耐薬品性に優れるものが好ましい。
【0124】
<可撓管の製造方法>
(プライマー層の形成)
本発明の可撓管基材の製造において、可撓管基材の外周にはまず、プライマー層が形成される。プライマー層は、上記一般式(1)で表される化合物を溶媒に溶解して塗布液を調製し、この塗布液を可撓管基材の外周に塗布したり、スプレーしたり、あるいはこの塗布液中に可撓管基材を浸漬したりするなどして可撓管基材の少なくとも外周に塗布膜を形成した後、塗布膜を常法により乾燥(例えば100℃~170℃の高温乾燥等)することによって形成することができる。
塗布液に用いる溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、トルエンなどの炭化水素系溶媒又はこれらの混合液を用いることができる。また、これらの溶媒に対して、上記一般式(1)で表される化合物におけるケイ素原子が有するアルコキシ基の加水分解を促進させるため、水を混合することが好ましい。また、塗布液のpHは特に制限されないが、例えば、pH調整剤を用いることにより、酸性(例えば25℃におけるpH1~4)又はアルカリ性(例えば25℃におけるpH9~11)に適宜調製してもよい。
塗布液中の一般式(1)で表される化合物の含有量は特に制限されず、例えば、0.01~2質量%とすることができ、0.05質量%以上1.5質量%未満が好ましく、0.1質量%以上1.0質量%未満とすることがより好ましい。
塗布液中には、一般式(1)で表される化合物、溶媒及びpH調整剤の他にも、界面活性剤及び触媒等を含んでもよい。塗布液はより好ましくは、一般式(1)で表される化合物と溶媒とで構成される。
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、可撓管基材の外周の一部に、プライマー層で覆われていない部分があってもよい(すなわち、プライマー層の一部に欠陥が生じていてもよい。)。
【0125】
プライマー層の形成の前に、可撓管基材はアルカリ溶液、界面活性剤水溶液、有機溶剤等により脱脂洗浄しておくことが好ましい。また、上記洗浄後、さらに水ないし温水を用いて洗浄しておくことが好ましい。また、上記水又は温水による洗浄後、乾燥(例えば、100℃で10分間)しておくことが好ましい。
【0126】
(樹脂被覆層の形成)
本発明の内視鏡用可撓管の製造において、樹脂被覆層の形成工程を含む。この樹脂被覆層の形成工程は、上記可撓管基材の外周に形成されたプライマー層に接して、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種の化合物を含む樹脂が被覆されることを含む。
樹脂被覆層の形成について、樹脂被覆層が2層構造の場合を例にして説明する。
樹脂被覆層が内層と外層からなる2層構造の可撓管は、例えば、上記内層を構成する第1樹脂材料(ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種の化合物を含む樹脂材料)と、上記外層を構成する第2樹脂材料とを、上記のプライマー層を形成した可撓管基材の周囲に溶融混練して押し出し成形し、上記可撓管基材を被覆することにより得ることができる。
なお、樹脂被覆層が1層あるいは3層以上の態様も、下記方法を参照し、適宜に層構成を変えることによる得ることができる。
【0127】
図3、
図4に基づき可撓管3a(
図1、
図2)の樹脂被覆層の形成方法の一例について説明する。この形態では、樹脂被覆層15を成形するために連続成形機を用いる。連続成形機20は、ホッパ、スクリュー21a及び22aなどからなる周知の押し出し部21及び22と、可撓管基材14の外周面に樹脂被覆層15を被覆成形するためのヘッド部23と、冷却部24と、連結可撓管基材31をヘッド部23へ搬送する搬送部25(供給ドラム28と、巻取ドラム29)と、これらを制御する制御部26とからなるものを用いることが好ましい。ヘッド部23は、ニップル32、ダイス33、及びこれらを固定的に支持する支持体34からなるものが好ましい。このような装置の構成例としては、例えば、特開2011-72391号公報の
図3~5に記載の装置を使用することができる。
【0128】
ダイス33の内部を所定の成形温度に加熱することが好ましい。成形温度は、150℃~300℃の範囲に設定されることが好ましい。装置内の加熱部を加熱温調することにより第1樹脂材料(軟質樹脂)39及び第2樹脂材料(硬質樹脂)40の各温度を高温にすることができるが、これに加え、スクリュー21a及び22aの各回転数が高いほど、第1樹脂材料39及び第2樹脂材料40の各温度をさらに高くすることができ、それぞれの流動性を高めることができる。このとき、連結可撓管基材31の搬送速度を一定とし、溶融状態の第1樹脂材料39及び第2樹脂材料40の各吐出量を変更することにより、内層17及び外層18の各成形厚みを調整することができる。
【0129】
連続成形機20で連結可撓管基材31に樹脂被覆層15を成形するときのプロセスについて説明すると、連続成形機20が成形工程を行うときは、押し出し部21及び22から溶融状態の第1樹脂材料39及び第2樹脂材料40がヘッド部23へと押し出される。これとともに、搬送部25が動作して連結可撓管基材31がヘッド部23へと搬送される。このとき、押し出し部21及び22は、第1樹脂材料39及び第2樹脂材料40を常時押し出してヘッド部23へ供給する状態であり、押し出し部21及び22からゲート35及び36へ押し出された第1樹脂材料39及び第2樹脂材料40は、エッジを通過して合流し、重なった状態で樹脂通路38を通って成形通路37へ供給される。これにより、第1樹脂材料39を使用した内層17と第2樹脂材料40を使用した外層18が重なった二層成形の樹脂被覆層15が形成される。
【0130】
連結可撓管基材31は、複数の可撓管基材14(この可撓管基材14の外周にはプライマー層が形成されている)が連結されたものであり、成形通路37内を搬送中に、複数の可撓管基材14に対して連続的に樹脂被覆層15が成形される。1つの可撓管基材の一端14a側(先端側)から他端14b側(基端側)まで樹脂被覆層15を成形するとき、押し出し部21及び22による樹脂の吐出を開始した直後は、内層17の厚みを厚くとる。そして、他端14b側へ向かう中間部分で徐々に外層18の厚みの割合を漸増させる。これにより、上記の傾斜的な樹脂被覆層15の厚み割合となるように樹脂の吐出量を制御することが好ましい。
【0131】
ジョイント部材30は、2つの可撓管基材14の連結部であるので、制御部26は押し出し部21及び22の吐出量の切り替えに利用される。具体的には、制御部26は、1本の可撓管基材14の他端14b側(基端側)における厚みの割合から、次の可撓管基材14の一端14a側(先端側)の厚みの割合になるように、押し出し部21及び22の吐出量を切り替えることが好ましい。次の可撓管基材14の一端14a側から他端14b側まで樹脂被覆層15を成形するときは、同様に一端側から他端側へ向かって徐々に外層の厚みが大きくなるように、押し出し部21及び22が制御されることが好ましい。
【0132】
最後端まで樹脂被覆層15が成形された連結可撓管基材31は、連続成形機20から取り外された後、可撓管基材14からジョイント部材30が取り外され、各可撓管基材14に分離される。次に、分離された可撓管基材14に対して、樹脂被覆層15の上にトップコート層16がコーティングされて、可撓管3aが完成する。完成した可撓管3aは、電子内視鏡の組立工程へ搬送される。
【0133】
本発明において、樹脂被覆層は複層である場合、複層を構成する各層の間には、機能層が介在していてもよい。
上記の説明は、図面を参照して、撮像装置を用いて被検体の状態を撮像した画像を観察する電子内視鏡を例に上げて説明しているが、本発明はこれに限るものではなく、光学的イメージガイドを採用して被検体の状態を観察する内視鏡にも適用することができる。
【0134】
本発明の可撓管は、内視鏡型医療機器に対して広く適用することができる。例えば、内視鏡の先端にクリップ又はワイヤーを装備したもの、あるいはバスケット又はブラシを装備した器具に適用することもできる。なお、内視鏡型医療機器とは、上述した内視鏡を基本構造とする医療機器のほか、遠隔操作型の医療機器など、挿入部が可撓性を有し、体内に導入して用いられる医療ないし診療機器を広く含む意味である。
本発明の内視鏡型医療機器は、その挿入部に本発明の内視鏡用可撓管が組み込まれている。すなわち、本発明の内視鏡型医療機器の製造方法は、本発明の内視鏡用可撓管を、内視鏡型医療機器の挿入部に組み込むことを含むものである。
【実施例】
【0135】
以下に、本発明について実施例を通じてさらに詳細に説明するが、本発明がこれらにより限定して解釈されるものではない。
【0136】
[実施例及び比較例]
<<内視鏡用可撓管の作製>>
図2に示す構造の可撓管を作製した。なお樹脂被覆層は、下表の通り、単層構造又は2層構造とした。
【0137】
<可撓管基材>
ステンレススチール製の金属帯片11aを用いて螺旋管11を形成し、この螺旋管11を、ステンレススチール製の繊維を織り込んだ筒状網体12で被覆した形態の可撓管基材を用意した。この可撓管基材は、長さ80cm、直径12mmである。このステンレススチール製可撓管は、螺旋管及び筒状網体の形成時におけるアニール処理(加熱処理)により、表面に不動態層が形成されている。
【0138】
<プライマー層形成用塗布液の調製>
水/エタノールの質量比を5/75とした溶液を調製した。この溶液に、下表に示す化合物を5.0g/kgの濃度となるように溶解し、プライマー層形成用塗布液とした。
【0139】
<プライマー層の形成>
上記の可撓管基材を、7.5%水酸化ナトリウム水溶液中に、60℃で1分間浸漬することにより洗浄した(脱脂洗浄工程)。次いで蒸留水ですすいだ後、100℃のオーブンで10分間乾燥した。洗浄された可撓管基材を、上記で調製したプライマー層形成用塗布液中に、常温で1分間浸漬し、次いで160℃のオーブン中で10分間乾燥した。こうして、外周(樹脂被覆面)にプライマー層を有する可撓管基材を調製した。
【0140】
<樹脂被覆層の形成>
プライマー層を設けた可撓管基材の外周に、下表に記載される通りの樹脂を押出被覆し(成形温度:200℃)、樹脂被覆層を有する内視鏡用可撓管を作製した。樹脂被覆層の厚さは0.4mmであった。
【0141】
<<評価>>
上記で作製した内視鏡用可撓管について、下記試験例の通り、曲げ耐久性及び塩酸耐久性評価を評価した。下表に結果をまとめて示す。
【0142】
[試験例1] 曲げ耐久性の評価
上記で作製した内視鏡用可撓管(長さ80cm)を、直径10cmのプーリーの半周部分に、U字状に接触させ、U字状の内視鏡用可撓管の一端と他端とを交互に引っ張って往復運動させた。この往復運動において、内視鏡用可撓管の両端から各17.85cmを除いた長さ44.3cmの部分が、プーリーに接触した状態で順次U字の頂点を形成するようにした。樹脂の皺、浮き、裂け、又は剥がれが発生する往復回数を下記評価基準に当てはめ評価した。本試験において「C」以上が合格である。
<曲げ耐久性の評価基準>
AA:15,000回以上
A:10,000回以上15,000回未満
B:1,000回以上10,000回未満
C:100回以上1,000回未満
D:100回未満
【0143】
[試験例2] 塩酸耐久性の評価
上記で作製した内視鏡用可撓管の両端をテフロン(登録商標)栓でキャッピングし、23℃の0.5%塩酸水溶液に150時間浸漬させた。浸漬後、よく表面を水洗し、塩酸水溶液浸漬後の内視鏡用可撓管を調製した。浸漬前の内視鏡用可撓管(浸漬させない内視鏡用可撓管)及び浸漬後の内視鏡用可撓管のそれぞれについて、下記の通りピーリング試験を行い、浸漬前の90°剥離強度PSB及び浸漬後の90°剥離強度PSAをそれぞれ測定した。浸漬前の90°剥離強度PSBに対する浸漬後の90°剥離強度PSAの割合{(PSA/PSB)×100}を求め、下記基準に当てはめ評価した。本試験において「C」以上が合格である。
(ピーリング試験)
内視鏡用可撓管の樹脂被覆層に対し、可撓管基材に切れ込みが到達するようにして、可撓管の軸方向に沿って、長さ5cm、幅1cmであって、樹脂被覆層に対して垂直な切れ込みを入れた。また、この切れ込みの一端については、幅方向にも切れ込みを入れ、ピーリング試験用の掴み部を形成した。形成された切れ込みは、長さ方向が可撓管の軸方向と同じであって、樹脂被覆層の外周面上で1cm幅を有する。可撓管基材と樹脂被覆層との間の90°剥離強度を、作製した1cm幅の切れ込みの端を掴み、可撓管の軸方向に沿って一定速度で、可撓管基材と剥離した樹脂被覆層との角度を90°に保ちながら引き剥がすことにより、測定した。剥離強度はフォースゲージにより測定した値であり、単位はN/cmである。なお、すべての可撓管について、同じ条件で90°剥離強度を測定した。
<塩酸耐久性評価基準>
AA:90%以上
A:80%以上90%未満
B:60%以上80%未満
C:40%以上60%未満
D:40%未満
【0144】
【0145】
【0146】
<表の注>
[被覆層樹脂]
(1)ポリアミド
PA1:ダイアミド L1940(商品名、ダイセル・エボニック社製、ポリアミド12、MVR=8cm3/10分)
PA2:ベスタミド Terra DS16(商品名、ダイセル・エボニック社製、ポリアミド1010、MVR=20cm3/10分)
PA3:リルサン BMN O(商品名、アルケマ社製、ポリアミド11、MVR=36cm3/10分)
PA4:ペバックス 7233(商品名、アルケマ社製、ポリエーテルブロックアミド、MVR=4cm3/10分)
(2)ポリエステル
TPEE1:ペルプレン P-70B(商品名、東洋紡社製、MVR=20cm3/10分)
TPEE2:ペルプレン S-3001(商品名、東洋紡社製、MVR=16cm3/10分)
TPEE3:プリマロイ B1942(商品名、三菱ケミカル社製、MVR=59cm3/10分)
TPEE4:ノバデュラン 5505S(商品名、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、MVR=25cm3/10分)
(3)ポリウレタン
TPU1:ミラクトランE675(商品名、日本ミラクトラン社製)
TPU2:パンデックスT-8185(商品名、ディーアイシーコベストロポリマー社製、MVR=18cm3/10分)
TPU3:パンデックスT-2190(商品名、ディーアイシーコベストロポリマー社製、MVR=12cm3/10分)
(4)ポリオレフィン
PO1:サーリンク 3145D(商品名、東洋紡社製、MVR=54cm3/10分)
【0147】
[プライマー層中の化合物]
(一般式(2)で表される化合物)
K-1:アリルトリメトキシシラン(Gelest社製、商品名「SIA0540.0」)
K-2:フェネチルトリメトキシシラン(Gelest社製、商品名「SIP6722.6」)
K-3:[2-(3-シクロヘキセニル)エチル]トリメトキシシラン(Gelest社製、商品名「SIC2460.0」)
K-4:5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン(Gelest社製、商品名「SIE4675.0」)
K-5:(3-メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン(Gelest社製、商品名「SIM6487.4」)
K-6:3-アクリルアミドプロピルトリメトキシシラン(Gelest社製、商品名「SIA0146.0」)
【0148】
K-7:2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン(Gelest社製、商品名「SID3545.0」)
K-8:11-メルカプトウンデシルトリメトキシシラン(Gelest社製、商品名「SIM6480.0」)
K-9:2-(3-トリメトキシシシルプロピルチオ)チオフェン(Gelest社製、商品名「SIT8411.0」)
K-10:トリエトキシシリルプロピルエチルカルバメート(Gelest社製、商品名「SIT8188.0」)
K-11:3-チオシアナトプロピルトリエトキシシラン(Gelest社製、商品名「SIT7908.0」)
【0149】
K-12:ヒドロキシメチルトリエトキシシラン(Gelest社製、商品名「SIH6175.0」)
K-13:N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-ヒドロキシブチルアミド(Gelest社製、商品名「SIT8189.5」)
【0150】
K-14:カルボキシエチルシラントリオール・2ナトリウム塩(Gelest社製、商品名「SIC2263.0」)
K-15:トリエトキシシリルプロピルマレアミド酸(Gelest社製、商品名「SIT8189.8」)
【0151】
K-16:(3-トリメトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(信越化学工業社製、商品名「X-12-967C」)
【0152】
K-17:3-アセトキシプロピルトリメトキシシラン(Gelest社製、商品名「SIA0100.0」)
K-18:ベンゾイロキシプロピルトリメトキシシラン(Gelest社製、商品名「SIB0959.0」)
K-19:2-(カルボメトキシ)エチルトリメトキシシラン(Gelest社製、商品名「SIC2072.0」)
K-20:トリメトキシシリルプロポキシポリエチレンオキシドメチルエーテル(Gelest社製、商品名「SIT8408.0」)
【0153】
K-21:3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパンスルホン酸(Gelest社製、商品名「SIT8378.3」)
K-22:トリヒドロキシシリルエチルフェニルスルホン酸(Gelest社製、商品名「SIT8378.1」)
【0154】
(一般式(3)で表される化合物)
K-23:1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(Gelest社製、商品名「SIB1832.0」)
K-24:ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)カーボネート(Gelest社製、商品名「SIB1824.56」)
K-25:ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)フマレート(Gelest社製、商品名「SIB1834.5」)
K-26:ビス[(3-メチルジメトキシシリル)プロピル]ポリプロピレンオキシド(Gelest社製、商品名「SIB1660.0」、質量平均分子量700)
K-27:ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン(Gelest社製、商品名「SIB1831.0」)
K-28:ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド(Gelest社、商品名製「SIB1824.6」)
【0155】
(一般式(4)で表される化合物)
K-29:トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業社製、商品名「KBM-9659」)
【0156】
(比較例に用いた化合物)
R-1:テトラエトキシシラン(東京化成工業社製試薬、商品名「78-10-4」)
【0157】
表1に示されるように、可撓管基材の外周にプライマー層を設けずに本発明で規定する樹脂被覆層を被覆した、比較例1~4の内視鏡用可撓管は、いずれも、曲げ耐久性及び塩酸耐久性の両特性に劣っていた。また、比較例5~8の内視鏡用可撓管は、可撓管基材と本発明で規定する樹脂被覆層との間に、一般式(1)に包含されない、テトラエトキシシランを含有するプライマー層を有する。この比較例5~8の内視鏡用可撓管は、樹脂被覆層が有する樹脂の種類によって変動するものの、いずれも、曲げ耐久性及び塩酸耐久性の少なくとも一方の特性に劣っていた。
これに対し、プライマー層が一般式(1)で表される化合物を含有し、このプライマー層に接する樹脂被覆層がポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンの少なくとも1種を含む樹脂を有する実施例1~53の内視鏡用可撓管は、曲げ動作を繰り返しても、また、23℃の0.5%塩酸水溶液に150時間浸漬させても、可撓管基材と樹脂被覆層との密着性を十分に維持できることがわかった。
【0158】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0159】
本願は、2019年1月16日に日本国で特許出願された特願2019-005384に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0160】
2 電子内視鏡(内視鏡)
3 挿入部
3a 可撓管
3b アングル部
3c 先端部
5 本体操作部
6 ユニバーサルコード
11 螺旋管
11a 金属帯片
12 筒状網体
13 口金
14 可撓管基材
14a 先端側
14b 基端側
15 樹脂被覆層
16 トップコート層
17 内層
18 外層
X アングル部3b側(軟)
Y 本体操作部5側(硬)
20 連続成形機(製造装置)
21、22 押し出し部
21a スクリュー
22a スクリュー
23 ヘッド部
24 冷却部
25 搬送部
26 制御部
28 供給ドラム
29 巻取ドラム
30 ジョイント部材
31 連結可撓管基材
32 ニップル
33 ダイス
34 支持体
35、36 ゲート
37 成形通路
38 樹脂通路
39 軟質樹脂
40 硬質樹脂