(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物およびこれを含む物品
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20220310BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20220310BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20220310BHJP
C08K 5/1515 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/42
C08L83/04
C08K5/1515
(21)【出願番号】P 2021500839
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 KR2019014995
(87)【国際公開番号】W WO2020096352
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2018-0135446
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0135445
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0140503
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パン、ヒョン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ウン
(72)【発明者】
【氏名】ペ、チュンムン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、テヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ムホ
(72)【発明者】
【氏名】ヨム、ス-キル
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/149030(WO,A1)
【文献】特表2004-524423(JP,A)
【文献】特開2013-107979(JP,A)
【文献】特開2010-65164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L69/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記の化学式1で表される第1繰り返し単位を含む線状ポリカーボネート樹脂;
(b)下記の化学式1で表される第1繰り返し単位を含む分枝状ポリカーボネート樹脂;
前記線状ポリカーボネート樹脂および前記分枝状ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、
(c)フッ素化スルホネート系金属塩0.04~0.15重量部;
(d)25℃での動粘度が5~60mm
2/秒のフェニルメチルシリコーンオイル1.5~5.0重量部;および
(e)フェニルメチルシリコーン樹脂0.05~0.2重量部を
含み、
前記フェニルメチルシリコーン樹脂は、フェニルおよびメチル置換基を含み、固相の網状型ポリオルガノシロキサン樹脂である
ポリカーボネート樹脂組成物。
【化10】
前記化学式1において、
R
1~R
4はそれぞれ独立して、水素、C
1-10アルキル、C
1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、
Zは非置換であるかもしくはフェニルで置換されたC
1-10アルキレン、非置換であるかもしくはC
1-10アルキルで置換されたC
3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO
2、またはCOである。
【請求項2】
前記化学式1で表される第1繰り返し単位は、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、
およびビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニル
メタンからなる群より選択される1つ以上の芳香族ジオール化合物に由来するものである、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記化学式1で表される第1繰り返し単位は、下記の化学式1-2で表される、請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【化11】
【請求項4】
前記分枝状ポリカーボネート樹脂は、前記化学式1で表される第1繰り返し単位および複数の前記第1繰り返し単位を互いに連結する3価または4価の第2繰り返し単位を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
前記第2繰り返し単位は、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,3,5-トリス-(2-ヒドロキシエチル)シアヌル酸、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプタン-2,2,2-ビス[4,4'-(ジヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン、1,4-ビス-(4',4''-ジヒドロキシトリフェニルメチル)-ベンゼン、2',3',4'-トリヒドロキシアセトフェノン、2,3,4-トリヒドロキシ安息香酸、2,3,4,-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2',4',6'-トリヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオフェノン、ペンタヒドロキシフラボン、3,4,5-トリヒドロキシフェニルエチルアミン、3,4-トリヒドロキシフェニルエチルアルコール、2,4,5-トリヒドロキシピリミジン、テトラヒドロキシ-1,4-キノン水和物、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、および1,2,5,8-テトラヒドロキシアントラキノンからなる群より選択される1つ以上の分枝剤に由来するものである、請求項4に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
前記第2繰り返し単位は、下記の化学式2-1で表される、請求項4または5に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【化12】
【請求項7】
前記線状ポリカーボネート樹脂および前記分枝状ポリカーボネート樹脂の総重量を基準として、
前記線状ポリカーボネート樹脂を50~80重量%含み、
前記分枝状ポリカーボネート樹脂を20~50重量%含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
前記フッ素化スルホネート系金属塩は、
ナトリウムトリフルオロメチルスルホネート、
ナトリウムペルフルオロエチルスルホネート、
ナトリウムペルフルオロブチルスルホネート、
ナトリウムペルフルオロヘプチルスルホネート、
ナトリウムペルフルオロオクチルスルホネート、
カリウムペルフルオロブチルスルホネート、
カリウムペルフルオロヘキシルスルホネート、
カリウムペルフルオロオクチルスルホネート、
カルシウムペルフルオロメタンスルホネート、
ルビジウムペルフルオロブチルスルホネート、
ルビジウムペルフルオロヘキシルスルホネート、
セシウムトリフルオロメチルスルホネート、
セシウムペルフルオロエチルスルホネート、
セシウムペルフルオロヘキシルスルホネート、および
セシウムペルフルオロオクチルスルホネートからなる群より選択される1つ以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項9】
前記フェニルメチルシリコーンオイルは、下記の化学式3で表される、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【化13】
前記化学式3において、
R
5およびR
6はそれぞれ独立して、C
1-10アルキル、C
1-10アルケニル、またはC
6-10アリールであり、
R
7はフェニルであり、
nは0~10の整数であり、
mは1~10の整数である。
【請求項10】
前記化学式3は、下記の化学式3-1で表されるものである、請求項9に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【化14】
化学式3-1において、nおよびmは前記化学式3で定義した通りである。
【請求項11】
前記線状ポリカーボネート樹脂および前記分枝状ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、
(f)エポキシ系耐加水分解剤0.05~0.2重量部;および
(g)紫外線吸収剤0.1~0.5重量部をさらに含む、
請求項1~10のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項12】
前記エポキシ系耐加水分解剤は、エポキシ基が脂肪族環に融合された構造を含む化合物である、
請求項11に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項13】
前記紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、オキサルアニリド化合物、安息香酸エステル化合物、およびトリアジン化合物からなる群より選択される1つ以上である、
請求項11または12に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項14】
UL94規格に基づき、1.5mmの厚さを有する試験片に対して測定した難燃性等級がV-0である、
請求項1~13のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項15】
厚さ2.5mm、幅10mmの螺旋状金型を用いて330℃で射出成形した時、測定した流動長さ(Spiral length、cm)が50cm以上である、
請求項1~14のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項16】
ASTM D1238(300℃および1.2kgの荷重;10分間測定)による溶融指数(MI)が7~50g/10分である、
請求項1~15のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項17】
UL94 vertical評価条件で測定した滴下(drip)の個数が0個である、
請求項1~16のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項18】
UL94 vertical評価条件で測定した全体燃焼時間(sec)が50秒以下である、
請求項1~17のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を含む、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2018年11月6日付の韓国特許出願第10-2018-0135445号、2018年11月6日付の韓国特許出願第10-2018-0135446号、および2019年11月5日付の韓国特許出願第10-2019-0140503号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品に関する。より具体的には、加工性が良好で、難燃性、耐候性および透明度に優れたポリカーボネート樹脂組成物とこれから製造される成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAのような芳香族ジオールとホスゲンのようなカーボネート前駆体とが縮重合して製造され、優れた衝撃強度、寸法安定性、耐熱性および透明性などを有し、電気電子製品の外装材、自動車部品、建築素材、光学部品などの広範囲な分野に適用される。
【0004】
特に最近多様な電気電子製品素材の軽量化および薄膜化が行われ、これに適用するためのポリカーボネート樹脂についてより高い水準の難燃性が要求されている。
【0005】
特にポリカーボネートの難燃性を高めるために、Br系またはCl系難燃剤を用いた研究が従来進められていたが、当該難燃剤を用いた難燃化は、有害ガスの発生による毒性および環境問題により使用禁止規制がますます強化されている。特に欧州地域への輸出製品に対する規制が厳しく、今後、小型物内外装材製品に対しても全面的な規制が入ると予想されている。
【0006】
そこで、前記難燃剤を代替できる物質に関する研究が進められており、一例として、スルホン酸系金属塩が挙げられる。このようなスルホン酸系金属塩としては、カリウムペルフルオロブタンスルホネート(KFBS)、カリウムジフェニルスルホネート(KSS)などが挙げられる。米国特許第3,775,367号には、ポリカーボネート樹脂にこのような金属塩を用いてUL-94 V0級の優れた難燃性と耐熱性および衝撃強度を維持できることが記述されている。米国特許第3,775,367号から、このような金属塩を組成物の全体重量に対して0.5重量%以上の小さい含有量で用いて、約4mm程度の薄い厚さを有する成形物を製造した場合にもUL-94 V0水準の難燃度を示し得ることが分かる。しかし、厚さがより薄い成形物を製造する場合、所望の難燃性を得るためには金属塩の含有量を増加させなければならないが、過剰の金属塩がポリカーボネート樹脂の分解をもたらして、結果として難燃性が低下する問題があった。
【0007】
Br系またはCl系難燃剤以外の難燃剤を用いて難燃度と耐熱性を得るための他の方法として、シリコーン化合物を用いる技術が報告された(WO99/028387)。しかし、この場合にも2mm程度の厚さで優れた難燃性を示すことは難しく、難燃性を向上させるために難燃剤の含有量を増加する場合、耐熱性に劣る問題点があった。
【0008】
また、燃焼中に低分子量の分解産物が樹脂の分解を加速化して樹脂の粘度を急激に低下させ、下へ火花が落ちる滴下現象(dripping)が起こるが、これを防止するために滴下防止剤を投入したりもする。しかし、従来の滴下防止剤は、樹脂組成物の透明性を低下させ、透明性を維持しながら滴下防止物性を満たすことは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第3,775,367号
【文献】WO99/028387
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、優れた加工性、難燃性、耐候性および透明度を示すポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記ポリカーボネート樹脂組成物を含む成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下を含むポリカーボネート樹脂組成物を提供する:
(a)下記の化学式1で表される第1繰り返し単位を含む線状ポリカーボネート樹脂;
(b)下記の化学式1で表される第1繰り返し単位を含む分枝状ポリカーボネート樹脂;
前記線状ポリカーボネート樹脂および前記分枝状ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、
(c)フッ素化スルホネート系金属塩0.04~0.15重量部;
(d)25℃での動粘度が5~60mm2/秒のフェニルメチルシリコーンオイル1.5~5.0重量部;および
(e)フェニルメチルシリコーン樹脂0.05~0.2重量部;
【0013】
【0014】
前記化学式1において、
R1~R4はそれぞれ独立して、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、
Zは非置換であるか、またはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、非置換であるか、またはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【0015】
本発明はまた、前記ポリカーボネート樹脂組成物を含む成形品を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるポリカーボネート樹脂組成物とその成形品は、優れた加工性、難燃性、耐候性および透明度を示すことができる。
【0017】
これによって、本発明のポリカーボネート樹脂組成物とその成形品は、中空成形および射出成形工程に適しており、電気電子部品、照明器具部品などの素材として適切に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は多様な変更が加えられて様々な形態を有し得るが、特定の実施例を例示し下記に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0019】
以下、発明の具体的な実施形態によるポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品についてより詳しく説明する。
【0020】
それに先立ち、本明細書に使用される専門用語は単に特定の実施形態を言及するためであり、本発明を限定することを意図しない。そして、ここで使用される単数形態は、文章がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0021】
ポリカーボネート樹脂組成物
発明の一実施形態によるポリカーボネート樹脂組成物は、
(a)下記の化学式1で表される第1繰り返し単位を含む線状ポリカーボネート樹脂;
(b)下記の化学式1で表される第1繰り返し単位を含む分枝状ポリカーボネート樹脂;
前記線状ポリカーボネート樹脂および前記分枝状ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、
(c)フッ素化スルホネート系金属塩0.04~0.15重量部;
(d)25℃での動粘度が5~60mm2/秒のフェニルメチルシリコーンオイル1.5~5.0重量部;および
(e)フェニルメチルシリコーン樹脂0.05~0.2重量部を含む。
【0022】
【0023】
前記化学式1において、
R1~R4はそれぞれ独立して、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、
Zは非置換であるか、またはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、非置換であるか、またはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【0024】
本発明の一実施形態によるポリカーボネート樹脂組成物は、前記線状ポリカーボネート樹脂と分枝状ポリカーボネート樹脂を同時に含む。前記分枝状ポリカーボネート樹脂は、基本的な主鎖として第1繰り返し単位を含みかつ、重合時に含まれている分枝剤によって複数の前記第1繰り返し単位が分枝状(branched)の第2繰り返し単位で連結された構造を有し、鎖のもつれ現象が強化された構造を有する。これによって、線状ポリカーボネート樹脂を単独で用いた場合に比べて優れた溶融強度(Melt strength)を有することができ、よって、中空成形(blow molding)時により優れた加工性を示すことができる。
【0025】
また、本発明によるポリカーボネート樹脂組成物は、前記線状ポリカーボネート樹脂および分枝状ポリカーボネート樹脂と共に、難燃剤としてフッ素化スルホネート系金属塩、フェニルメチルシリコーンオイル、およびフェニルメチルシリコーン樹脂を含み、これらの相互作用によってポリカーボネート樹脂組成物がUL-94 V-O等級の難燃性を示しながら、同時に優れた流動性、加工性、耐候性および透明度を示すことができる。
【0026】
これによって、本発明の一実施形態によるポリカーボネート樹脂組成物はこれに限定されるものではないが、このような特性が要求される電気電子部品、照明器具部品などの素材として特に有用に使用できる。
【0027】
以下、発明の一実施形態によるポリカーボネート樹脂組成物についてより詳しく説明する。
【0028】
(a)線状ポリカーボネート樹脂
本発明による「線状ポリカーボネート樹脂」とは、前記化学式1で表されるポリカーボネート系の第1繰り返し単位を含む樹脂で、後述する分枝状繰り返し単位を含まないという点から分枝状ポリカーボネート樹脂と区分される。
【0029】
具体的には、前記化学式1で表される繰り返し単位は、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成される。
【0030】
前記化学式1において、好ましくは、R1~R4はそれぞれ独立して、水素、メチル、クロロ、またはブロモである。
【0031】
また、好ましくは、Zは非置換であるか、またはフェニルで置換された直鎖もしくは分枝鎖のC1-10アルキレンであり、より好ましくは、メチレン、エタン-1,1-ジイル、プロパン-2,2-ジイル、ブタン-2,2-ジイル、1-フェニルエタン-1,1-ジイル、またはジフェニルメチレンである。さらに、好ましくは、Zはシクロヘキサン-1,1-ジイル、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【0032】
前記化学式1で表される繰り返し単位は、下記の化学式1-1で表される芳香族ジオール化合物に由来するものであってもよい。
【0033】
【0034】
前記化学式1-1において、R1~R4およびZは前記化学式1で定義した通りである。
【0035】
非制限的な例として、前記化学式1で表される繰り返し単位は、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、およびa,ω-ビス[3-(ο-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンからなる群より選択される1以上の芳香族ジオール化合物に由来することができる。
【0036】
前記「芳香族ジオール化合物に由来する」の意味は、前記化学式1-1で表される芳香族ジオール化合物のヒドロキシ基とカーボネート前駆体とが反応して、前記化学式1で表される繰り返し単位を形成することを意味する。
【0037】
非制限的な例として、芳香族ジオール化合物のビスフェノールAとカーボネート前駆体のトリホスゲンとが重合された場合、前記化学式1の繰り返し単位は、下記の化学式1-2で表される。
【0038】
【0039】
前記カーボネート前駆体としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジ-m-クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ホスゲン、トリホスゲン、ジホスゲン、ブロモホスゲン、およびビスハロホルメートからなる群より選択された1種以上を使用することができる。好ましくは、トリホスゲンまたはホスゲンを使用することができる。
【0040】
前記線状ポリカーボネート樹脂は1,000~100,000g/mol、好ましくは10,000~60,000g/molであり、さらに好ましくは15,000~50,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有することができる。より好ましくは、前記重量平均分子量(Mw)は17,000g/mol以上、18,000g/mol以上、または20,000g/mol以上である。さらに、前記重量平均分子量は43,000g/mol以下、42,000g/mol以下、または41,000g/mol以下である。この時、重量平均分子量は、GPC(gel permeation chromatograph)を用いて測定した標準ポリカーボネート(PC Standard)に対する換算数値である。
【0041】
そして、前記線状ポリカーボネート樹脂は、ASTM D1238(300℃および1.2kgの荷重;10分間測定)による2g/10分~50g/10分、あるいは3g/10分~40g/10分の溶融指数(MI)を有する方が、全体樹脂組成物が有する物性の安定した発現の面から好ましい。
【0042】
また、前記線状ポリカーボネート樹脂は、前記線状ポリカーボネート樹脂および前記分枝状ポリカーボネート樹脂の総重量を基準として、50~80重量%、または50~70重量%、または55~65重量%含まれる。
【0043】
前記線状ポリカーボネート樹脂の含有量が少なすぎると、加工性が低下する問題があり、逆に、前記線状ポリカーボネート樹脂の含有量が多すぎると、滴下(dripping)防止効果に問題がありうる。
【0044】
一方、上述した線状ポリカーボネート樹脂は、前記化学式1-1で表される芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体を出発物質として一般的な芳香族ポリカーボネート樹脂の知られた重合方法により直接製造することができる。
【0045】
前記重合方法としては、一例として、界面重合方法を用いることができ、この場合、常圧と低い温度で重合反応が可能であり、分子量の調節が容易な効果がある。前記界面重合は、酸結合剤および有機溶媒の存在下で行うことが好ましい。また、前記界面重合は、一例として、予備重合(pre-polymerization)後、カップリング剤を投入してから、再び重合させる段階を含むことができ、この場合、高分子量のポリカーボネートを得ることができる。
【0046】
前記界面重合に使用される物質は、ポリカーボネートの重合に使用できる物質であれば特に限定されず、その使用量も必要に応じて調節可能である。
【0047】
前記酸結合剤としては、一例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物を使用することができる。
【0048】
前記有機溶媒としては、通常、ポリカーボネートの重合に使用される溶媒であれば特に限定されず、一例として、メチレンクロライド、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0049】
また、前記界面重合は、反応促進のために、トリエチルアミン、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド、テトラ-n-ブチルホスホニウムブロミドなどの3級アミン化合物、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物などのような反応促進剤を追加的に使用してもよい。
【0050】
前記界面重合の反応温度は0~40℃であることが好ましく、反応時間は10分~5時間が好ましい。また、界面重合反応中、pHは9以上または11以上に維持することが好ましい。
【0051】
また、前記界面重合は、分子量調節剤をさらに含んで行うことができる。前記分子量調節剤は、重合開始前、重合開始中、または重合開始後に投入可能である。
【0052】
前記分子量調節剤として、モノ-アルキルフェノールを使用することができ、前記モノ-アルキルフェノールは、一例として、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール、およびトリアコンチルフェノールからなる群より選択された1種以上であり、好ましくは、p-tert-ブチルフェノールであり、この場合、分子量調節効果が大きい。
【0053】
前記分子量調節剤は、一例として、芳香族ジオール化合物100重量部に対して、0.01重量部以上、0.1重量部以上、または1重量部以上でかつ、10重量部以下、6重量部以下、または5重量部以下で含まれ、この範囲内で所望の分子量を得ることができる。
【0054】
(b)分枝状ポリカーボネート樹脂
本発明による「分枝状ポリカーボネート樹脂」とは、前記化学式1で表されるポリカーボネート系の第1繰り返し単位を含む分枝状(branched)のポリカーボネート樹脂を意味する。より具体的には、前記化学式1で表されるポリカーボネート系の第1繰り返し単位のほか、複数の前記第1繰り返し単位を互いに連結する3価または4価の分枝状の第2繰り返し単位をさらに含むコポリカーボネート樹脂を意味する。
【0055】
前記第1繰り返し単位に関する説明は先に説明した通りである。
【0056】
また、前記3価または4価の第2繰り返し単位は、前記化学式1-1で表される芳香族ジオール化合物とカーボネート前駆体との重合時に添加された分枝剤によって、主鎖に対して分枝状にグラフト重合されて形成された繰り返し単位を意味する。
【0057】
具体的には、前記3価または4価の第2繰り返し単位は、3個または4個のヒドロキシル基を有するフェノール誘導体化合物である分枝剤、例えば、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,3,5-トリス-(2-ヒドロキシエチル)シアヌル酸、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプタン-2,2,2-ビス[4,4’-(ジヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン、1,4-ビス-(4',4''-ジヒドロキシトリフェニルメチル)-ベンゼン、2',3',4'-トリヒドロキシアセトフェノン、2,3,4-トリヒドロキシ安息香酸、2,3,4,-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2’,4’,6’-トリヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオフェノン、ペンタヒドロキシフラボン、3,4,5-トリヒドロキシフェニルエチルアミン、3,4-トリヒドロキシフェニルエチルアルコール、2,4,5-トリヒドロキシピリミジン、テトラヒドロキシ-1,4-キノン水和物、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、および1,2,5,8-テトラヒドロキシアントラキノンからなる群より選択される1種以上の分枝剤に由来するものであってもよい。
【0058】
前記「分枝剤に由来する」の意味は、上述した分枝剤の3個または4個のヒドロキシ基がカーボネート前駆体と反応して、複数の前記化学式1で表される繰り返し単位とグラフト重合されながら3価または4価の第2繰り返し単位を形成することを意味する。
【0059】
このような第2繰り返し単位は、下記の化学式2で表されるものであってもよい。
【0060】
【0061】
前記化学式2において、R1~R4およびZは前記化学式1で定義した通りであり、前記Qは分枝剤に由来する3価または4価のフェノール誘導体化合物である。
【0062】
非制限的な例として、芳香族ジオール化合物としてビスフェノールA、カーボネート前駆体としてトリホスゲン、前記分枝剤として1,1,1,-トリス(4'-ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)を用いて重合された場合、前記化学式2の繰り返し単位は、下記の化学式2-1で表される。
【0063】
【0064】
前記分枝状ポリカーボネート樹脂は、98~99.999モル%の前記第1繰り返し単位と、0.001~2モル%の前記第2繰り返し単位とを含むことができる。あるいは、98~99.99モル%の前記第1繰り返し単位と、0.01~2モル%の前記第2繰り返し単位とを含むことができる。あるいは、98~99.9モル%の前記第1繰り返し単位と、0.1~2モル%の前記第2繰り返し単位とを含むことができる。前記第2繰り返し単位の含有量が過度に減少する場合、分枝状構造による伸張粘度物性の改善が十分に実現されにくいことがある。これに対し、前記第2繰り返し単位の含有量が高すぎる場合、ゲルが多量形成されて物性が劣化することがある。
【0065】
前記分枝状ポリカーボネート樹脂は10,000~100,000g/mol、好ましくは20,000~50,000g/molの重量平均分子量を有することができる。より好ましくは、前記重量平均分子量(Mw)は10,000g/mol以上、21,000g/mol以上、22,000g/mol以上、23,000g/mol以上、24,000g/mol以上、25,000g/mol以上、26,000g/mol以上、27,000g/mol以上、または28,000g/mol以上である。また、前記重量平均分子量は100,000g/mol以下、50,000g/mol以下、45,000g/mol以下、42,000g/mol以下、または40,000g/mol以下である。この時、重量平均分子量は、GPC(gel permeation chromatograph)を用いて測定した標準ポリカーボネート(PC Standard)に対する換算数値である。
【0066】
そして、前記分枝状ポリカーボネート樹脂は、ASTM D1238(300℃および1.2kgの荷重;10分間測定)による1g/10分~50g/10分、あるいは1.5g/10分~40g/10分の溶融指数(MI)を有する方が、全体樹脂組成物が有する物性の安定した発現の面から好ましい。
【0067】
また、前記分枝状ポリカーボネート樹脂は、前記線状ポリカーボネート樹脂および前記分枝状ポリカーボネート樹脂の総重量を基準として、20~50重量%、または30~50重量%、または35~45重量%含まれる。
【0068】
前記分枝状ポリカーボネート樹脂の含有量が少なすぎると、滴下防止効果に問題があり、逆に、前記分枝状ポリカーボネート樹脂の含有量が多すぎると、加工性が低下する問題がありうる。
【0069】
一方、上述した分枝状ポリカーボネート樹脂は、上述した前記化学式1-1で表される芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および分枝剤を出発物質として一般的な芳香族ポリカーボネート樹脂の知られた重合方法により直接製造することができる。前記重合方法としては、一例として、界面重合方法を用いることができ、界面重合に関する説明は上述したところを参照する。
【0070】
(c)フッ素化スルホネート系金属塩
本発明による難燃剤は、Br系またはCl系難燃剤の使用による有害ガスの発生による毒性および環境問題に対する代替剤として使用可能であり、優れた難燃性を生じるために、前記ポリカーボネートに加えて使用可能である。
【0071】
ポリカーボネートは、機械的性質、電気的性質および耐候性が他の種類の樹脂に比べて相対的に優れているが、難燃性の劣悪により、難燃性が要求される様々な分野に適用されるためには難燃性の改善が要求される。そこで、本発明では、上述したポリカーボネート樹脂のほか、フッ素化スルホネート系金属塩と後述するフェニルメチルシリコーンオイルおよびフェニルメチルシリコーン樹脂をさらに含むことで難燃性を改善することができる。また、低いヘイズを示して非常に優れた透明度を示すことができる。
【0072】
ここで、「フッ素化スルホネート系金属塩」は、フッ素化スルホン酸イオンと金属イオンの塩化合物を意味するもので、ポリカーボネートのチャー形成速度を増加させて、前記ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性の改善に寄与する。
【0073】
例えば、前記フッ素化スルホネート系金属塩は、ナトリウムトリフルオロメチルスルホネート(sodium trifluoromethyl sulfonate)、ナトリウムペルフルオロエチルスルホネート(sodium perfluoroethyl sulfonate)、ナトリウムペルフルオロブチルスルホネート(sodium perfluorobutyl sulfonate)、ナトリウムペルフルオロヘプチルスルホネート(sodium perfluoroheptyl sulfonate)、ナトリウムペルフルオロオクチルスルホネート(sodium perfluorooctyl sulfonate)、カリウムペルフルオロブチルスルホネート(potassium perfluorobutyl sulfonate)、カリウムペルフルオロヘキシルスルホネート(potassium perfluorohexyl sulfonate)、カリウムペルフルオロオクチルスルホネート(potassium perfluorooctyl sulfonate)、カルシウムペルフルオロメタンスルホネート(calcium perfluoromethane sulfonate)、ルビジウムペルフルオロブチルスルホネート(rubidium perfluorobutyl sulfonate)、ルビジウムペルフルオロヘキシルスルホネート(rubidium perfluorohexyl sulfonate)、セシウムトリフルオロメチルスルホネート(cesium trifluoromethyl sulfonate)、セシウムペルフルオロエチルスルホネート(cesium perfluoroethyl sulfonate)、セシウムペルフルオロヘキシルスルホネート(cesium perfluorohexyl sulfonate)、およびセシウムペルフルオロオクチルスルホネート(cesium perfluorooctyl sulfonate)からなる群より選択される1種以上の化合物であってもよい。
【0074】
好ましくは、フッ素化スルホネート系金属塩として、カリウムペルフルオロブチルスルホネートが使用できる。
【0075】
また、前記フッ素化スルホネート系金属塩は、前記線状ポリカーボネート樹脂および前記分枝状ポリカーボネート樹脂の合計100重量部に対して、0.04重量部以上、または0.08重量部以上でかつ、0.15重量部以下、または0.12重量部以下で含まれる。
【0076】
前記フッ素化スルホネート系金属塩の含有量が少なすぎると、難燃性が低下する問題があり、逆に、前記フッ素化スルホネート系金属塩の含有量が多すぎると、透明性が低下する問題がありうる。したがって、このような観点から、前記フッ素化スルホネート系金属塩は上述した範囲の含有量で含まれることが好ましい。
【0077】
一方、フッ素化スルホネート系金属塩は、難燃性に優れているものの、これを含む組成物の射出成形時にバブル(bubble)を起こしうるという欠点がある。そこで、フッ素化スルホネート系金属塩を代替する有機スルホネート系難燃剤としてナトリウムドデシルベンゼンスルホネートを使用しようとする試みがあった。しかし、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネートは、ポリカーボネート樹脂の透明性や機械的強度を低下させるという欠点があった。
【0078】
このため、本発明のポリカーボネート樹脂組成物では、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネートを含まず、前記フッ素化スルホネート系金属塩に加えて、後述するフェニルメチルシリコーンオイルと、フェニルメチルシリコーン樹脂を共に用いることによって、難燃性は維持しながらフッ素化スルホネート系金属塩によるバブルの発生を防止することができ、これによって優れた難燃性および加工性を同時に達成することができる。
【0079】
(d)フェニルメチルシリコーンオイル
一方、本発明によるポリカーボネート樹脂組成物は、難燃性改善のために、25℃での動粘度が5~60mm2/秒のフェニルメチルシリコーンオイルをさらに含む。
【0080】
ここで、「フェニルメチルシリコーンオイル」は、シロキサン繰り返し単位の側鎖もしくは末端置換基としてメチル基およびフェニル基を含有するシリコーン(silicone)ポリマーを意味するもので、好ましくは、末端置換基としてメチル基を含有し、側鎖置換基としてフェニル基を含有するシリコーンポリマーを意味する。このようなフェニルメチルシリコーンオイルは、繰り返されるシロキサン主鎖によって前記ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性および難燃性の改善に寄与しながら、フェニル基を必須として含有して難燃性を向上させる効果を示すことができる。
【0081】
前記フェニルメチルシリコーンオイルは、25℃での動粘度が5~60mm2/秒であってもよい。具体的には、前記フェニルメチルシリコーンオイルは、25℃での動粘度(mm2/秒)が6以上、7以上、8以上、9以上、または10以上である。また、前記25℃での動粘度(mm2/秒)は50以下、40以下、30以下、25以下、または20以下であってもよい。前記フェニルメチルシリコーンオイルの動粘度が5mm2/秒未満の場合、揮発性が高くてバブルを発生させることがあり、逆に、60mm2/秒を超える場合、透明性を低下させることがある。したがって、このような観点から、上述した動粘度範囲を満足するフェニルメチルシリコーンオイルを使用することが好ましい。
【0082】
好ましくは、前記フェニルメチルシリコーンオイルは、フェニルトリメチコン繰り返し単位を含むシリコーンポリマーである。具体的には、前記フェニルメチルシリコーンオイルは、下記の化学式3で表される。
【0083】
【0084】
前記化学式3において、
R5およびR6はそれぞれ独立して、C1-10アルキル、C1-10アルケニル、またはC6-10アリールであり、
R7はフェニルであり、
nは0~10の整数であり、
mは1~10の整数である。
【0085】
より好ましくは、前記化学式3において、R5およびR6の少なくとも1つはフェニルであってもよい。
【0086】
例えば、前記フェニルメチルシリコーンオイルとしては、前記化学式3のR5~R7がいずれもフェニルである、下記の化学式3-1で表される化合物が使用できる:
【0087】
【0088】
前記化学式3-1において、nおよびmは前記化学式3で定義した通りである。
【0089】
また、前記フェニルメチルシリコーンオイルは、前記線状ポリカーボネート樹脂および前記分枝状ポリカーボネート樹脂の合計100重量部に対して、1.5重量部以上、または1.8重量部以上でかつ、5.0重量部以下、または4.5重量部以下で含まれる。
【0090】
前記フェニルメチルシリコーンオイルの含有量が少なすぎると、難燃性が低下する問題があり、逆に、前記フェニルメチルシリコーンオイルの含有量が多すぎると、透明性が低下する問題がありうる。したがって、このような観点から、前記フェニルメチルシリコーンオイルは上述した範囲の含有量で含まれることが好ましい。
【0091】
(e)フェニルメチルシリコーン樹脂
一方、本発明によるポリカーボネート樹脂組成物は、滴下防止難燃性改善のために、フェニルメチルシリコーン樹脂をさらに含む。
【0092】
ここで、「フェニルメチルシリコーン樹脂」は、フェニルおよびメチル置換基を共に含み、固相の特性を有する網状型ポリオルガノシロキサン樹脂である。前記フェニルメチルシリコーン樹脂は、固相である点から、先に説明した(d)フェニルメチルシリコーンオイルと区別される。
【0093】
前記フェニルメチルシリコーン樹脂としては、Shinetsu社のKR-480などを使用することができる。
【0094】
このような構造のフェニルメチルシリコーン樹脂を用いることによって、滴下防止効果を示すことができる。
【0095】
前記シリコーン樹脂は、前記線状ポリカーボネート樹脂および前記分枝状ポリカーボネート樹脂の合計100重量部に対して、0.05重量部以上、または0.08重量部以上でかつ、0.2重量部以下、または0.1重量部以下で含まれる。
【0096】
前記フェニルメチルシリコーン樹脂の含有量が少なすぎると、滴下防止効果が低下する問題があり、逆に、フェニルメチルシリコーン樹脂の含有量が多すぎると、透明性が低下する問題がありうる。したがって、このような観点から、前記フェニルメチルシリコーン樹脂は上述した範囲の含有量で含まれることが好ましい。
【0097】
(f)エポキシ系耐加水分解剤
一方、本発明によるポリカーボネート樹脂組成物は、耐加水分解性向上のために、エポキシ系耐加水分解剤をさらに含んでもよい。
【0098】
前記エポキシ系耐加水分解剤としては、前記エポキシ基が脂肪族環に融合された(fused、縮合された)構造を有する化合物を使用することができ、前記エポキシが融合された脂肪族環を有する耐加水分解剤の例としては、Daicel社の2021P(3,4-Epoxycyclohexylmethyl3,4-epoxycyclohexanecarboxylate)が挙げられる。
【0099】
また、前記エポキシ系耐加水分解剤は、前記線状ポリカーボネート樹脂および前記分枝状ポリカーボネート樹脂の合計100重量部に対して、0.05重量部以上、または0.06重量部以上、または0.08重量部以上でかつ、0.2重量部以下、または0.15重量部以下、または0.12重量部以下で含まれる。
【0100】
前記エポキシ系耐加水分解剤の含有量が上述した範囲内にある時、樹脂組成物の透明性、および難燃性が低下することなく耐加水分解効果を十分に達成することができ、よって、このような観点から、前記エポキシ系耐加水分解剤は上述した範囲の含有量で含まれることが好ましい。
【0101】
(g)紫外線吸収剤
一方、本発明によるポリカーボネート樹脂組成物は、外部から流入する紫外線を効果的に遮断するために、紫外線吸収剤をさらに含んでもよい。
【0102】
本発明で使用できる紫外線吸収剤としては、本発明によるポリカーボネート樹脂組成物が成形されたフィルム試験片の厚さが3mmの条件で、波長380nmの光透過度を20%以下、好ましくは10%以下とする紫外線吸収剤であれば特別な制限なく使用可能である。
【0103】
好ましくは、前記紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、オキサルアニリド化合物、安息香酸エステル化合物、およびトリアジン化合物からなる群より選択される1種以上が使用できる。
【0104】
例えば、前記紫外線吸収剤として、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5'-tert-ブチル-2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-(1,1,3,3,テトラメチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-2'-ヒドロキシフェニル)-5-ベンゾトリアゾール、2-(3'-tert-ブチル-2'-ヒドロキシフェニル-5'-メチルフェニル)-5-ベンゾトリアゾール、2-(3'-sec-ブチル-5'-tert-ブチル-2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-4'-オクチルオキシフェニルフェニル)-5-ベンゾトリアゾール、または2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどの2-(2'-ヒドロキシフェニル)-ベンゾトリアゾール系の化合物のようなベンゾトリアゾール化合物;4-ヒドロキシ、4-メトキシ、4-オクチルオキシ、4-デシルオキシ、4-ドデシルオキシ、4-ベンジルオキシ、4,2',4'-トリヒドロキシ、または2'-ヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ官能基を有する2-ヒドロキシベンゾフェノン系の化合物のようなベンゾフェノン化合物;4-tert-ブチル-フェニルサリチレート、フェニルサリチレート、オクチルフェニルサリチレート、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4-tert-ブチル-ベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル3,5-ジ-tert-ブチル-4-4ヒドロキシベンゾエート、オクタデシル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、または2-メチル-4,6-ジ-tert-ブチルフェニル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエートなどの置換された安息香酸エステル構造を有する化合物のような安息香酸エステル化合物;または2,4,6-トリフェニル-1,3,5-トリアジン骨格を有するトリアジン化合物などを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0105】
また、前記紫外線吸収剤は、前記線状ポリカーボネート樹脂および前記分枝状ポリカーボネート樹脂の合計100重量部に対して、0.1重量部以上、または0.2重量部以上でかつ、0.5重量部以下、または0.4重量部以下で含まれる。
【0106】
前記紫外線吸収剤が上述した範囲内にある時、樹脂組成物の透明性の低下、および難燃性が低下することなく耐候性効果を十分に達成することができる。したがって、このような観点から、前記紫外線吸収剤は上述した範囲の含有量で含まれることが好ましい。
【0107】
(h)添加剤
一方、本発明によるポリカーボネート樹脂組成物は、上述した成分以外にも、必要に応じて、衝撃補強剤;流動改質剤;リン系難燃剤などの難燃剤;界面活性剤;核剤;カップリング剤;充填剤;可塑剤;滑剤;抗菌剤;離型剤;熱安定剤;酸化防止剤;UV安定剤;相溶化剤;着色剤;静電防止剤;顔料;染料;防炎剤などの添加剤を追加的に含んでもよい。
【0108】
このような添加剤の含有量は、組成物に付与しようとする物性に応じて異なる。例えば、前記添加剤は、前記線状ポリカーボネート樹脂および前記分枝状ポリカーボネート樹脂の合計100重量部に対して、それぞれ0.01~10重量部含まれる。
【0109】
ただし、前記ポリカーボネート樹脂組成物が有する耐熱性、衝撃強度、耐薬品性などが前記添加剤の適用によって低下するのを防止するために、前記添加剤の総含有量は、前記線状ポリカーボネート樹脂および前記分枝状ポリカーボネート樹脂の合計100重量部に対して、20重量部以下、または15重量部以下、または10重量部以下であることが適切である。
【0110】
上述のような本発明の一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、UL94規格に基づき、1.5mmの厚さを有する試験片に対して測定した難燃性等級がV-0で、優れた難燃性を示すことができる。
【0111】
また、本発明の一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、UL 746Cに基づき、1.5mmの厚さを有するフィルム試験片に対して測定した難燃性等級がWater露出試験(immersion protocol)およびUV露出試験(Weather-O-meter protocol)前後ともV-0で、優れた耐候性を示すことができる。
【0112】
また、本発明の一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、ASTM D1822(1/4inch)に基づいて測定した引張衝撃(tensile impact)が310kJ/m2以上、または315kJ/m2以上、または320kJ/m2以上でかつ、360kJ/m2以下、または350kJ/m2以下、または340kJ/m2以下で、優れた衝撃強度を示すことができる。
【0113】
また、本発明の一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、ASTM D638(1.5mm)に基づき、1.5mmの厚さを有する試験片に対して測定した引張強度(tensile strength)が60MPa以上、または62MPa以上、または64MPa以上でかつ、80MPa以下、または75MPa以下、または70MPa以下で、優れた引張強度を示すことができる。
【0114】
さらに、本発明の一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、UL 746CのWater露出試験(immersion protocol)に基づき、1.5mmの厚さを有するフィルム試験片に対して引張衝撃(tensile impact)の測定時、露出試験後の引張衝撃値が露出試験前の測定値の50%以上であってもよい。
【0115】
同時に、本発明の一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、UL 746CのUV露出試験(Weather-O-meter protocol)に基づき、1.5mmの厚さを有するフィルム試験片に対して引張衝撃(tensile impact)および引張強度(tensile strength)の測定時、露出試験後のそれぞれの値が露出試験前の測定値の70%以上であってもよい。
【0116】
また、本発明の一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、ASTM D256(1/8inch、Notched Izod)に基づき、23℃で測定した常温衝撃強度が790J/m以上、または800J/m以上、または810J/m以上でかつ、900J/m以下、または880J/m以下、または860J/m以下で、優れた常温衝撃強度を示すことができる。
【0117】
また、本発明の一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、ASTM D1003に基づき、3mmの厚さを有する射出試験片に対して測定したヘイズ(Haze)が0.01%以上でかつ、2.4%以下、または2.0%以下、または1.0%以下、または0.8%以下、または0.6%以下、または0.5%以下で、優れた耐候性を示すことができる。
【0118】
また、本発明の一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、厚さ2.5mm、幅10mmの螺旋状金型を用いて330℃で射出成形した時、測定した流動長さ(Spiral length、cm)が50cm以上、または51cm以上、または53cm以上でかつ、65cm以下、または60cm以下、または58cm以下で、優れた加工性を示すことができる。
【0119】
また、本発明の一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、ASTM D1238(300℃および1.2kgの荷重;10分間測定)による溶融指数(MI)が7g/10分以上、または8g/10分以上でかつ、50g/10分以下、または30g/10分以下、または20g/10分以下で、優れた流動性を示すことができる。
【0120】
また、本発明の一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、UL94 vertical評価条件で測定した滴下(drip)の個数が0個で、優れた滴下型難燃性を示すことができる。
【0121】
さらに、本発明の一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、UL94 vertical評価条件で測定した全体燃焼時間(sec)が27秒以上、または28秒以上、29秒以上、30秒以上、または31秒以上、または32秒以上でかつ、50秒以下、または45秒以下、または40秒以下で、優れた難燃性を示すことができる。
【0122】
樹脂成形品
本発明の他の実施形態によれば、上述したポリカーボネート樹脂組成物を含む成形品が提供される。
【0123】
前記成形品は、上述したポリカーボネート樹脂組成物を原料として用いて、押出、射出、またはキャスティングなどの方法で成形して得られる物品である。前記成形方法およびその条件は、成形品の種類に応じて適切に選択および調節可能である。
【0124】
非制約的な例として、前記成形品は、前記ポリカーボネート樹脂組成物を混合および押出成形してペレットに製造した後、前記ペレットを乾燥して射出する方法で得られる。
【0125】
特に、前記成形品は、前記ポリカーボネート樹脂組成物から形成されることによって、優れた加工性、難燃性および透明度を示することができ、好ましくは、電気電子部品、照明器具部品などの素材として適切に使用できる。
【0126】
以下、発明の理解のために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は発明を例示するものに過ぎず、発明をこれらに限定するものではない。
【0127】
<実施例>
使用物質
以下、実施例および比較例において下記の物質を使用した。
【0128】
(a)線状コポリカーボネート樹脂
(a-1)前記化学式1-2の繰り返し単位を含むポリカーボネートである、LG化学社で製造したLUPOY PC1080-70(重量平均分子量:19,600g/mol)
(a-2)前記化学式1-2の繰り返し単位を含むポリカーボネートである、LG化学社で製造したLUPOY PC1300-30(重量平均分子量:21,100g/mol)
(a-3)前記化学式1-2の繰り返し単位を含むポリカーボネートである、LG化学社で製造したLUPOY PC1300-15(重量平均分子量:27,800g/mol)
(b)分枝状ポリカーボネート樹脂
(b-1)重量平均分子量が37,600g/molであり、前記化学式1-2の繰り返し単位および2-1を含むポリカーボネートである、LG化学社で製造したLUPOY PC1600-03
(c)有機スルホネート系金属塩
(c-1)カリウムペルフルオロブチルスルホネート(Potassium perfluorobutane sulfonate、KPFBS)である、3M社で製造したFR-2025
(c-2)カリウムジフェニルスルホンスルホネート(Potassium diphenylsulfone sulfonate、KSS)である、Arichem社で製造したKSS-FR
(c-3)TCI Chemical社で製造したSDBS(Sodium dodecylbenzene sulfonate)
(d)フェニルメチルシリコーンオイル
(d-1)下記の化学式3-1で表される、25℃での動粘度が15mm2/秒のフェニルメチルシリコーンオイルである、日本のShinEstu社で製造したKR-56A:
【0129】
【0130】
(d-2)25℃での動粘度が50mm2/秒のフェニルメチルシリコーンオイルである、日本のShinEstu社で製造したKR-2710
(d-3)25℃での動粘度が100mm2/秒のフェニルメチルシリコーンオイルである、日本のShinEstu社で製造したKR-511
(d-4)25℃での動粘度が125mm2/秒の線状フェニルメチルシリコーンオイルである、Dow Corning社で製造したDC-550
(e)フェニルメチルシリコーン樹脂
(e-1)フェニルメチルシリコーン樹脂である、日本のShinEstu社で製造したKR-480
(f)エポキシ系耐加水分解剤
(f-1)Daicel Corporation社で製造した(3',4'-Epoxycyclohexane)methyl3,4-epoxycyclohexylcarboxylateであるCelloxide 2021P
(g)紫外線吸収剤
(g-1)BASF社のTINUVIN329
(h)添加剤
(h-1)Addivant社で製造したトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(tris(2,4-di-tert-butylphenyl)phosphite)であるAlkanox240
(h-2)FACI社で製造したペンタエリスリトールテトラステアレート(pentaerythrityl tetraethylhexanoate、PETS)であるFACI L348
実施例および比較例
下記の表1~4に記載されたような各成分の含有量を混合した後、二軸押出機(L/D=36、Φ=45、バレル温度:240℃)に時間あたり80kgの速度でペレット化した後、JSW(株)N-20C射出成形機を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度80℃で射出成形して試験片を製造した。
【0131】
各実施例および比較例で使用された成分および含有量を下記の表1~4にそれぞれ示した。
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
試験例
前記実施例および比較例の組成物およびこれから形成されたそれぞれの試験片に対して、以下の方法で物性を測定した。
【0137】
1)流動性(Melt Index;MI):ASTM D1238(300℃、1.2kgの条件)に基づいて測定した。
【0138】
2)常温衝撃強度:ASTM D256(1/8inch、Notched Izod)に基づいて23℃で測定した。
【0139】
3)ヘイズ(Haze):ASTM D1003に基づき、厚さ3mmの試験片に対してヘイズメーターを用いて測定した。
【0140】
4)流動長さ(Spiral length):厚さ2.5mm、幅10mmの螺旋状金型を用いて330℃で射出成形して、計10個の射出成形品の平均長さで測定した。
【0141】
5)滴下(drip)個数:UL94 Vertical Test protocolに基づいてDrip(炎を生じる粒子が落ちる場合)される個数を測定した。
【0142】
6)全体燃焼時間:下記の表5のUL94 Vertical test評価基準に基づいてt1、t2、t3を全部加算した値とした。
【0143】
7)難燃性(UL94 Protocol):UL94規格に基づいて難燃性を評価した。具体的には、難燃testの適用に必要な1.5mmの厚さの難燃試験片を5個用意し、下記により評価した。
【0144】
まず、20mmの高さの炎を10秒間試験片に接炎後、試験片の燃焼時間(t1)を測定し、燃焼の様相を記録した。次に、1次接炎後に燃焼が終了すると、再び10秒間接炎後、試験片の燃焼時間(t2)およびグローイング時間(glowing time、t3)を測定し、燃焼の様相を記録した。5個の試験片に対して同一に適用した後、下記の表5の基準により評価した。
【0145】
【0146】
9)耐候性1(UL 746C immersion protocol):UL 746C規格に基づき、Water露出試験による耐候性を評価した。具体的には、testの適用に必要な1.5mmの厚さの試験片を5個用意した後、各試験片に対する難燃性等級、引張衝撃および引張強度値を測定した。次に、70℃の蒸留水に7日間浸漬前処理後、23℃の蒸留水に30分間浸漬してから引張衝撃値を測定し、70℃の蒸留水に7日間浸漬前処理後、23℃、50%の相対湿度で2週間浸漬してから難燃性等級を測定して、露出前の値と比較した。
【0147】
10)耐候性2(UL 746C Weather-O-meter protocol):UL 746C規格に基づき、UV露出試験による耐候性を評価した。具体的には、testの適用に必要な1.5mmの厚さの試験片を5個用意した後、各試験片に対する難燃性等級、引張衝撃および引張強度値を測定した。次に、ASTM G151によるXenon-arc lampを用意し、102分はUVを照射し、残りの18分はUVとWater sprayに露出させる計120分の1サイクルを計1000時間繰り返した後、各試験片に対する難燃性等級、引張衝撃および引張強度値を測定して、露出前の値と比較した。この時、テストは、340nmの波長が0.35W/m2のエネルギーを照射し、black-panelの温度が63℃(誤差3℃)で動作する条件で行われた。
【0148】
前記耐候性1および2テストで、引張衝撃はASTM D1822(1/4inch)に基づいて測定し、引張強度はASTM D638(1.5mm)に基づいて測定した。
【0149】
物性測定の結果を下記の表6~9にそれぞれ示した。
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
(表9中、最初のUL94 test時、等級がV-2と測定された比較例については耐候性を測定しなかった)
表6~9を参照すれば、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、難燃性、流動性、衝撃強度、透明性、耐候性などにおいていずれも優れた特性を示した。