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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】表面形状測定機
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/20 20060101AFI20220311BHJP
   G01B 5/28 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
G01B5/20 C
G01B5/28 102
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018241291
(22)【出願日】2018-12-25
(62)【分割の表示】P 2018020118の分割
【原出願日】2018-02-07
(65)【公開番号】P2019138898
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】高梨 陵
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特公平4-60523(JP,B2)
【文献】特開2001-133247(JP,A)
【文献】実開平2-81406(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定面の表面形状を測定する表面形状測定機において、
揺動支点を中心として揺動自在に支持されるスタイラスと、前記スタイラスの先端部に設けられ且つ前記スタイラスの長手方向に対して垂直又は斜めの一方向側に延びる触針と、前記スタイラスの先端部から前記一方向側に離れた位置に設けられたスキッドと、前記揺動支点を中心とする回転方向のうち、前記触針が前記一方向側に回転する第1回転方向に前記スタイラスを付勢して、前記触針の先端を前記スキッドよりも前記一方向側に突出させる付勢部材と、を備える検出器と、
前記検出器を、前記第1回転方向と、前記第1回転方向とは反対側の第2回転方向とに揺動自在に支持する第1弾性支持部材と、
前記第1弾性支持部材を、前記揺動支点の軸方向に垂直で且つ前記被測定面に平行な駆動方向に沿って移動させる駆動部と、
前記駆動部により前記第1弾性支持部材を介して駆動される前記検出器を前記被測定面に沿って移動自在に支持する直線状の検出器ガイドと、
前記被測定面に接触する1又は複数の第1接触点を有し、前記検出器ガイドを持するガイド支持部材と、
備える表面形状測定機。
【請求項2】
前記スタイラスが前記付勢部材の付勢力に抗して予め定めた基準回転位置から前記第2回転方向に回転された場合、前記触針の先端は、前記スタイラスの前記第2回転方向の回転角度が一定角度に達するまでは前記スキッドよりも前記一方向側に突出している請求項1に記載の表面形状測定機。
【請求項3】
前記スタイラスの前記第2回転方向の回転角度が前記一定角度に達し、さらに前記スキッドに対して前記一方向側とは反対方向側の力が加えられた場合、前記検出器が、前記第1弾性支持部材を基準として前記第2回転方向に回転する請求項2に記載の表面形状測定機。
【請求項4】
前記検出器の一部、前記第1弾性支持部材、及び前記駆動部を収納するケースであって、前記駆動方向に対して垂直なケース壁面と、前記ケース壁面に形成され且つ前記検出器が挿通される検出器挿通穴とを有するケースと、
前記ケースに設けられた第2弾性支持部材であって、且つ前記検出器ガイドを前記第1回転方向と前記第2回転方向とに揺動自在に支持する第2弾性支持部材と、
を備える請求項1からのいずれか1項に記載の表面形状測定機。
【請求項5】
前記ガイド支持部材は、3つの第1接触点で前記被測定面に接触する請求項1からのいずれか1項に記載の表面形状測定機。
【請求項6】
前記スキッドは、前記触針が挿通される触針挿通穴を有する請求項1からのいずれか1項に記載の表面形状測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定面の表面形状を測定する表面形状測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの被測定面の表面形状を測定する表面形状測定機が知られている。この表面形状測定機は、揺動支点を支点として揺動自在に取り付けられたスタイラス、及びこのスタイラスの先端に設けられた触針等を有する検出器と、この検出器を被測定面に沿って移動させる駆動部と、を備える。表面形状測定機は、検出器の触針を被測定面に接触させた状態で、駆動部により検出器とワークとを水平方向に相対移動させることにより、触針で被測定面をトレースしながらスタイラス(触針)の変位を検出する。この変位検出結果に基づき被測定面の表面形状が得られる。
【0003】
このような表面形状測定機として、検出器に取り付けられたスキッドを被測定面に接触させた状態で、触針により被測定面をトレースする携帯型のタイプ(スキッド測定タイプ)の測定機が良く知られている(特許文献1参照)。この携帯型の表面形状測定機では、スキッドに対するスタイラスの変位を検出することで、被測定面の表面形状として被測定面の表面粗さを測定することができる。
【0004】
また、特許文献1に記載の表面形状測定機では、検出器に対してスキッドが着脱自在に取り付けられており、スキッドを取り付けた状態で触針により被測定面をトレースするスキッド測定と、スキッドを取り外した状態で触針により被測定面をトレースするスキッドレス測定とが選択可能になっている。このため、特許文献1に記載の表面形状測定機では、スキッドレス測定を行うことにより、被測定面(段差等)の形状及び被測定面のうねりなどを測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-133247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、携帯型(スキッド測定タイプ)の表面形状測定機では、被測定面の表面形状として表面粗さを測定することができるが、表面粗さ以外の被測定面の表面形状、例えば被測定面(段差等)の形状及び被測定面のうねりなどを測定することはできない。このため、表面粗さ以外の被測定面の表面形状を測定する場合には、真直度保証がなされている上位機種の表面形状測定機で測定を行う必要がある。
【0007】
また、特許文献1に記載の表面形状測定機では、スキッド測定とスキッドレス測定とが切替可能になっているものの、スキッドレス測定で段差等の形状を測定する際に、段差等の大きさによってはこの段差に触針を引っ掛けて破損させるおそれがある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、被測定面の表面粗さと、被測定面の表面粗さ以外の表面形状とを同時に測定し、且つ触針の破損を防止可能な表面形状測定機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するための表面形状測定機は、被測定面の表面形状を測定する表面
形状測定機において、揺動支点を中心として揺動自在に支持されるスタイラスと、スタイラスの先端部に設けられ且つスタイラスの長手方向に対して垂直又は斜めの一方向側に延びる触針と、スタイラスの先端部から一方向側に離れた位置に設けられたスキッドと、揺動支点を中心とする回転方向のうち、触針が一方向側に回転する第1回転方向にスタイラスを付勢して、触針の先端をスキッドよりも一方向側に突出させる付勢部材と、を備える検出器と、検出器を、第1回転方向と、第1回転方向とは反対側の第2回転方向とに揺動自在に支持する第1弾性支持部材と、第1弾性支持部材を、揺動支点の軸方向に垂直で且つ被測定面に平行な駆動方向に沿って移動させる駆動部と、駆動部により第1弾性支持部材を介して駆動される検出器を被測定面に沿って案内する直線状の検出器ガイドと、被測定面に接触する1又は複数の第1接触点を有し、検出器ガイドを、検出器の被測定面に対向する面側とは反対面側に対向する位置に支持するガイド支持部材と、検出器に設けられ、検出器を検出器ガイドに沿って移動自在に検出器ガイドにより支持させる検出器支持部材と、を備える。
【0010】
この表面形状測定機によれば、被測定面に対して略平行に配置された検出器ガイドに沿って検出器を移動させるため、被測定面(ワーク)を基準とする所謂ワーク基準で、検出器による被測定面のスキッドレス測定を実行できる。さらに被測定面の段差等の高さが高い場合には、スキッドレス測定からスキッド測定に自動的に切り替えることができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る表面形状測定機において、スタイラスが付勢部材の付勢力に抗して予め定めた基準回転位置から第2回転方向に回転された場合、触針の先端は、スタイラスの第2回転方向の回転角度が一定角度に達するまではスキッドよりも一方向側に突出している。これにより、検出器により被測定面をスキッドレス測定することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る表面形状測定機において、スタイラスの第2回転方向の回転角度が一定角度に達し、さらにスキッドに対して一方向側とは反対方向側の力が加えられた場合、検出器が、第1弾性支持部材を基準として第2回転方向に回転する。これにより、被測定面の段差等の高さが高い場合には、スキッドレス測定からスキッド測定に自動的に切り替えることができるので、触針の破損が防止される。
【0013】
本発明の他の態様に係る表面形状測定機において、検出器支持部材は、検出器ガイドが挿通されるガイド挿通穴と、ガイド挿通穴を構成する検出器支持部材の内壁面に設けられ、且つ検出器ガイドの検出器に対向する面側とは反対側の面に接触する第2接触点と、を有し、検出器支持部材は、第2接触点を介して検出器ガイドに検出器を支持させる。これにより、被測定面の段差等の高さが高い場合には、第2接触点と検出器ガイドとの接触が解除されるため、スキッドレス測定からスキッド測定に自動的に切り替えることができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る表面形状測定機において、検出器の一部、第1弾性支持部材、及び駆動部を収納するケースであって、駆動方向に対して垂直なケース壁面と、ケース壁面に形成され且つ検出器が挿通される検出器挿通穴とを有するケースと、ケースに設けられた第2弾性支持部材であって、且つ検出器ガイドを第1回転方向と第2回転方向とに揺動自在に支持する第2弾性支持部材と、を備える。これにより、被測定面が非水平である場合でも、この被測定面に対して検出器ガイドを略平行に配置することができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る表面形状測定機において、ガイド支持部材は、3つの第1接触点で被測定面に接触する。これにより、被測定面に対して検出器ガイドを略平行に配置することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る表面形状測定機において、スキッドは、触針が挿通される触針
挿通穴を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の表面形状測定機は、被測定面の表面粗さと、被測定面の表面粗さ以外の表面形状とを同時に測定し、且つ触針の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】表面形状測定機の外観斜視図である。
図2】表面形状測定機の正面図である。
図3】表面形状測定機の側面図である。
図4】検出器の側面図である。
図5】測定装置の断面図である。
図6】被測定面が非水平である場合の測定装置の断面図である。
図7】表面形状測定機による被測定面の表面形状の測定処理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[表面形状測定機の全体構成]
図1は、表面形状測定機10の外観斜視図である。図2は、表面形状測定機10の正面図である。図3は、表面形状測定機10の側面図である。図1から図3に示すように、表面形状測定機10は、ワークの被測定面9(図3参照)上に配置され、この被測定面9の表面形状を測定する携帯型(ハンディ型)の測定機である。ここでいう被測定面9の表面形状とは、被測定面9の表面粗さと、表面粗さ以外の表面形状(例えば被測定面9の形状及びうねり等)と、が含まれる。
【0020】
なお、図中のXYZ軸は互いに直交する軸であり、XY軸が水平方向に平行な軸であり、Z軸が水平方向に直交する軸である。なお、本明細書において「平行」には「略平行」が含まれ、且つ「垂直」には「略垂直」が含まれる。
【0021】
表面形状測定機10は、測定装置12とデータ処理装置14(図2及び図3では図示を省略)とを含む。測定装置12は、検出器16と、駆動装置18と、検出器ガイド20と、を備える。
【0022】
検出器16は、詳しくは後述するが、X軸方向に平行な方向に延びた形状を有している。この検出器16は、駆動装置18によってX軸方向に平行な方向(すなわち、被測定面9)に沿って移動されることにより、被測定面9を触針48(図4参照)でトレースする。そして、検出器16は、スタイラス42(図4参照)の変位を示す検出信号をデータ処理装置14へ出力する。
【0023】
検出器16のX軸方向(+)側の先端部には、ノーズピース22が設けられている。ノーズピース22には、詳しくは後述するがスキッド24と、ガイド挿通穴26とが設けられている。そして、このノーズピース22を介して、検出器16が検出器ガイド20に移動自在に支持される。
【0024】
駆動装置18は、検出器16と同様にX軸方向に平行な方向に延びた形状を有している。駆動装置18は、詳しくは後述するが、検出器16のX軸方向(-)側の基端部を保持して、この検出器16をX軸方向に平行な方向、すなわち被測定面9に沿って移動させる。このため、本実施形態ではX軸方向が本発明の駆動方向に相当する。
【0025】
検出器ガイド20は、詳しくは後述するが直線状に形成されており、駆動装置18のX
軸方向(+)側の端部に取り付けられている。この検出器ガイド20は、3つのガイド設置点28(図2参照)により被測定面9に対して略平行な姿勢で支持されており、駆動装置18により駆動される検出器16を被測定面9に沿って案内する。
【0026】
データ処理装置14は、検出器16及び駆動装置18にそれぞれ電気的に接続されている。データ処理装置14には、各種情報を表示する表示部34と、各種操作を行うための操作部36との他に、図示は省略するが、外部機器又は外部記憶媒体に接続するためのコネクタ、及び電源のオンオフ操作に用いられる電源スイッチなどが設けられている。
【0027】
データ処理装置14は、操作部36への入力操作に応じて駆動装置18を制御して、検出器16を移動させることで、検出器16の触針48(図4参照)により被測定面9をX軸方向に沿ってトレースさせる。また、データ処理装置14は、検出器16から入力されるスタイラス42(触針48)の変位の検出信号に基づき、被測定面9の表面形状(表面粗さ及びうねり等)の測定データを算出する。
【0028】
[検出器の構成]
図4は、検出器16の側面図である。図4に示すように、検出器16は、揺動支点40と、スタイラス42(アーム又は測定子ともいう)と、付勢部材44と、検出センサ46と、触針48と、これら各部を収納するハウジング49と、を備える。
【0029】
揺動支点40は、Y軸方向に平行な回転軸(揺動軸)を備える。この揺動支点40は、スタイラス42を揺動自在に支持する。
【0030】
スタイラス42は、揺動支点40に揺動自在に支持されるスタイラス本体部42aと、スタイラス本体部42aからスタイラス長手方向の一方側[X軸方向(+)側]に延びたスタイラス先端部42bと、スタイラス本体部42aからスタイラス長手方向の他方側[X軸方向(-)側]に延びたスタイラス基端部42cと、を備える。なお、スタイラス42の形状は図4に示した形状に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0031】
スタイラス先端部42bの先端部分には触針48が設けられている。触針48は、スタイラス42のスタイラス長手方向に対して垂直又は斜めに突出、すなわち略Z軸方向(-)側(本発明の一方向側に相当)に突出した下向き触針である。
【0032】
なお、スタイラス先端部42bの先端部分及び触針48は、ハウジング49からそのX軸方向(+)側に突出しており、後述のノーズピース22内に収容されている。
【0033】
スタイラス基端部42cのX軸方向(-)側の基端部には、後述の検出センサ46の一部を構成するコア46aが設けられている。
【0034】
スタイラス42は、揺動支点40を基準として、触針48の形成側に回転する第1回転方向SW1と、この第1回転方向SW1とは反対側の第2回転方向SW2とに揺動される。なお、図示は省略するが、ハウジング49内にはスタイラス42の回転範囲、すなわち第1回転方向SW1の最大角度位置と、第2回転方向SW2の最大角度位置とを規定する規制部材が設けられている。
【0035】
付勢部材44は、スタイラス基端部42cをZ軸方向(+)側に付勢する。この付勢部材44としては、例えばコイルバネ及び板バネ等の各種バネが用いられる。なお、バネ以外の公知の付勢方法でスタイラス基端部42cの付勢を行ってもよい。これにより、スタイラス42は、揺動支点40を中心として、付勢部材44により第1回転方向SW1に付勢される。
【0036】
検出センサ46は、例えば線形可変差動変圧器(Linear Variable Differential Transformer:LVDT)であり、既述のスタイラス基端部42cに設けられたコア46aと、ハウジング49内に設けられたコイル46bとにより構成される。
【0037】
コア46aは、スタイラス基端部42cからそのZ軸方向(-)側に延びた形状の鉄心である。コイル46bは、ハウジング49内においてスタイラス基端部40cのZ軸方向(-)側の位置に設けられている。コイル46bにはその内部にコア46aが非接触で挿入される。
【0038】
コイル46bは、図示は省略するが、一次コイルと、2種類の二次コイルとにより構成されている。コイル46bの一次コイルがデータ処理装置14により励磁されると、2種類の二次コイルからコア46aのZ軸方向の位置(変位)を示す検出信号がデータ処理装置14へ出力される。その結果、揺動支点40、スタイラス42(触針48)、及びコア46aの位置関係と、検出センサ46で検出されたコア46aのZ軸方向の位置とに基づき、スタイラス42(触針48)のZ軸方向の変位を検出することができる。
【0039】
なお、検出器16(ハウジング49)のX軸方向(-)側の基端部には、駆動装置18に接続する検出器接続部16aが設けられている(図5参照)。
【0040】
ノーズピース22は、ハウジング49のX軸方向(+)側の先端部の先端面側に取り付けられている。このノーズピース22には、スタイラス先端部42bの先端部分及び触針48を収容する不図示の収容空間が設けられている。また、ノーズピース22には、収容空間からZ軸方向(-)側に離れた位置、すなわちスタイラス先端部42bの先端部分からZ軸方向(-)側に離れた位置にスキッド24が設けられている。さらに、ノーズピース22には、収容空間からZ軸方向(+)側に離れた位置にガイド挿通穴26が形成されている。
【0041】
スキッド24は、被測定面9に対向するスキッド底面24aと、触針48が挿通される触針挿通穴24bと、を有する。既述の通り、付勢部材44はスタイラス42を第1回転方向SW1に付勢するため、触針48は、スキッド24のスキッド底面24aからZ軸方向(-)側に突出する。このスキッド底面24aからの触針48の突出は、スタイラス42が付勢部材44の付勢力に抗して予め定めた後述の基準回転位置から第2回転方向SW2に一定角度だけ回転されるまで継続する。そして、スタイラス42の第2回転方向SW2の回転角度が一定角度まで達すると、触針48の先端とスキッド底面24aとのZ軸方向位置が一致した一致状態となり、スキッド底面24aが被測定面9に接触する。
【0042】
ここでスタイラス42の予め定めた基準回転位置とは、例えば、被測定面9上に測定装置12を配置した状態(測定開始前の状態)でのスタイラス42の初期回転位置である。なお、スタイラス42の第1回転方向SW1の最大回転位置を基準回転位置としてもよく、この基準回転位置については特に限定されるものではない。
【0043】
ガイド挿通穴26は、検出器16の長手方向(図中ではX軸方向)に平行な方向にノーズピース22を貫通した貫通穴である。このガイド挿通穴26には、後述の検出器ガイド20が挿通される。そして、ガイド挿通穴26のZ軸方向の穴径は、検出器ガイド20のZ軸方向の厚みよりも大きく形成されている。また、ガイド挿通穴26を構成するノーズピース22の内壁面には、検出器ガイド20のZ軸方向(+)側のガイド上面20aに接触するガイド接触点50(本発明の第2接触点に相当)が設けられている。
【0044】
[駆動装置の構成]
図5は、測定装置12の断面図である。なお、図5の符号VAは表面形状測定機10の測定開始時(トレース開始時)の状態であり、符号VBは表面形状測定機10の測定完了時(トレース完了時)の状態である。
【0045】
図5に示すように、駆動装置18は、ケース56と、このケース56の内部に収納された駆動ガイド58、スライダ60、駆動部62、及び板バネ64と、を備える。ケース56は、駆動部62等の他に、検出器16(ハウジング49)のX軸方向(-)側の基端部と、検出器接続部16aとを収納する。このため、ケース56のX軸方向(+)側で且つX軸方向に垂直なケース壁面56aには、検出器16がX軸方向に沿って進退自在に挿通される検出器挿通穴66が形成されている。
【0046】
駆動ガイド58は、ケース56内のX軸方向(-)側の領域に設けられており、且つX軸方向に延びた形状を有している。スライダ60は、駆動ガイド58に移動自在に取り付けられている。これにより、スライダ60は、駆動ガイド58に沿ってX軸方向に移動可能となる。
【0047】
駆動部62は、図示は省略するがモータ及び送りねじ等で構成される公知の駆動機構である。この駆動部62は、スライダ60に接続(連結)されており、このスライダ60を駆動ガイド58に沿ってX軸方向に移動させる。
【0048】
板バネ64は、本発明の第1弾性支持部材に相当するものであり、XY面に平行で且つX軸方向に延びた略平面形状に形成されている。この板バネ64のX軸方向(+)側の先端部は検出器接続部16aに接続され、且つX軸方向(-)側の基端部はスライダ60に接続されている。この板バネ64は、スライダ60(駆動装置18)に対して検出器16及び検出器接続部16a(以下、検出器16等と略す)を、既述の第1回転方向SW1と第2回転方向SW2とに揺動自在に支持する。
【0049】
また、板バネ64により検出器16等とスライダ60とを連結することで、既述の駆動部62は、スライダ60及び板バネ64を介して、検出器16等をX軸方向に沿って移動させる。そして、被測定面9の表面形状の測定時には、データ処理装置14の制御の下、駆動部62が検出器16等をX軸方向(+)側からX軸方向(-)側に移動させることで、検出器16の触針48により被測定面9をX軸方向に沿ってトレースする。
【0050】
[検出器ガイドの構成]
検出器ガイド20は、ケース56の(駆動装置18)に取り付けられており、且つ被測定面9に略平行で且つ触針48のトレース方向(X軸方向)に延びた略長板状を有する。この検出器ガイド20は、X軸方向において、ケース56のケース壁面56aよりもX軸方向(+)側の位置に支持されている。また、検出器ガイド20は、Z軸方向において検出器16の被測定面9に対向する面側とは反対面側、すなわち検出器16のZ軸方向(+)側の面に対向する位置に、3つのガイド設置点28を介して支持されている。
【0051】
検出器ガイド20のX軸方向(-)側の基端部は、板バネ70を介して、駆動装置18のケース56のケース壁面56aに取り付けられている。板バネ70は、本発明の第2弾性支持部材に相当するものであり、XY面に平行で且つX軸方向に延びた略平面形状に形成されている。これにより、検出器ガイド20は、板バネ70を介して、駆動装置18に対し既述の第1回転方向SW1と第2回転方向SW2とに揺動自在に支持される。その結果、被測定面9が非水平である場合、板バネ70を基準として検出器ガイド20が回転することにより、検出器ガイド20を被測定面9に対して略平行にすることができる(図6参照)。
【0052】
各ガイド設置点28は、単独では本発明の第1接触点に相当し、それぞれZ軸方向(-)側に延びたピン形状を有しており、被測定面9に接触する。例えば、ガイド設置点28の1つは検出器ガイド20のX軸方向(+)側の先端部に設けられ、且つガイド設置点28の残りの2つは検出器ガイド20のX軸方向(-)側の基端部において検出器16をY軸方向に挟み込むように設けられている。これにより、各ガイド設置点28は、本発明のガイド支持部材として機能し、検出器ガイド20を、検出器16よりもZ軸方向(+)側の位置において被測定面9上に3点支持する。
【0053】
このように、板バネ70を基準として検出器ガイド20を回転させながら、各ガイド設置点28により被測定面9上に検出器ガイド20を3点支持することで、検出器ガイド20を被測定面9に対して略平行にすることができる(図6参照)。
【0054】
この際に、各ガイド設置点28の各々のZ軸方向(-)側の先端位置、すなわち検出器ガイド20から各ガイド設置点28の先端までの長さは個別に調整可能である。これにより、検出器ガイド20のZ軸方向の高さ位置を調整することができる。また、各ガイド設置点28の各々の先端位置を個別に調整することで、仮に被測定面9が非水平な場合でも(図6参照)、検出器ガイド20を被測定面9に略平行にすることができる。
【0055】
検出器ガイド20のX軸方向(+)側の先端部は、既述のノーズピース22のガイド挿通穴26に挿通される。また、検出器ガイド20の検出器16に対向する面側とは反対側の面、すなわちガイド上面20aには、既述のガイド接触点50が接触する。これにより、検出器ガイド20は、ガイド接触点50(ノーズピース22)を介して、既述の検出器16をガイド上面20aに沿って移動自在に支持する。
【0056】
従って、既述の駆動装置18(駆動部62)がスライダ60及び板バネ64をX軸方向に移動させると、検出器16が、被測定面9に対して略平行な姿勢で3点支持されている検出器ガイド20に沿って移動する。これにより、被測定面9に対して略平行な検出器ガイド20に沿って検出器16の触針48が被測定面9をトレースするため、検出器ガイド20によるワーク基準(被測定面基準)での被測定面9の表面形状の測定を行うことができる。また、この場合には、検出器ガイド20の真直度に応じた精度で表面形状の測定を行うことができる。
【0057】
この際に、各ガイド設置点28は、測定装置12が被測定面9上に配置された状態(測定開始前の状態)において、検出器ガイド20のZ軸方向の高さ位置が以下の条件を満たすように調整している。この条件とは、スキッド24と被測定面9との間に隙間が形成され、且つスキッド底面24aからZ軸方向(-)側に触針48が突出し、さらにスタイラス42がその回転範囲(検出範囲)の略中央に位置することである。これにより、測定装置12は、被測定面9の表面形状の測定開始時にはスキッドレス測定を最初に実行する。
【0058】
検出器ガイド20は、そのガイド上面20aのみで検出器16を支持しているので、検出器16等は、検出器ガイド20に支持されている状態でも板バネ64を基準として第2回転方向SW2に回転可能である。このため、スキッド24のスキッド底面24aに被測定面9に接触した状態で、さらに被測定面9からスキッド底面24a(触針48を含む)に対してZ軸方向(+)側の力(本発明の反対方向側の力)が加えられると、ガイド上面20aとガイド接触点50との接触が解除され、検出器16等が板バネ64を基準として第2回転方向SW2に回転される。これにより、例えば被測定面9の段差が大きい場合、測定装置12による測定がスキッドレス測定からスキッド測定に自動的に切り替えられる(図7参照)。なお、スキッド24のZ軸方向位置を調整することで、スキッドレス測定からスキッド測定への切り替えタイミングを任意に調整することができる。
【0059】
図6は、被測定面9が非水平である場合の測定装置12の断面図である。なお、図6の符号VIAは表面形状測定機10の測定開始時(トレース開始時)の状態であり、符号VIBは表面形状測定機10の測定完了時(トレース完了時)の状態である。
【0060】
図6に示すように、非水平な被測定面9上に測定装置12を配置すると、既述のように板バネ70を基準として検出器ガイド20を回転させながら各ガイド設置点28が非水平の被測定面9上にそれぞれ接触する。これにより、非水平の被測定面9上で検出器ガイド20が各ガイド設置点28により3点支持されるため、検出器ガイド20が非水平の被測定面9に対して略平行になる。その結果、この検出器ガイド20に沿って検出器16等を移動させることで、非水平な被測定面9を基準としてこの被測定面9を検出器16の触針48でトレースすることができる。
【0061】
[表面形状測定機の作用]
図7は、上記構成の表面形状測定機10による被測定面9の表面形状の測定処理を説明するための説明図である。図7の符号VIIAに示すように、被測定面9上に表面形状測定機10の測定装置12を配置する。これにより、既述の図5に示したように、各ガイド設置点28が被測定面9に接触して、この被測定面9上で検出器ガイド20が各ガイド設置点28により3点支持される。その結果、検出器ガイド20が被測定面9に対して略平行になる。
【0062】
なお、既述の図6に示したように被測定面9が非水平である場合でも、各ガイド設置点28が被測定面9に接触する際に、板バネ70を基準として、検出器ガイド20が駆動装置18に対して第1回転方向SW1又は第2回転方向SW2に回転する。これにより、検出器ガイド20を非水平の被測定面9に対して略平行にすることができる。
【0063】
被測定面9上で検出器ガイド20が3点支持されると、この検出器ガイド20のガイド上面20a及びノーズピース22のガイド接触点50を介して、検出器16が被測定面9上に支持される。この際に、スキッド24と被測定面9との間に隙間が形成され、且つスキッド底面24aからZ軸方向(-)側に触針48が突出し、さらにスタイラス42がその回転範囲の略中央に位置するように、各ガイド設置点28により検出器ガイド20のZ軸方向の高さ位置が調整される。これにより、測定開始時には触針48のみが被測定面9に接触するため、測定装置12は被測定面9のスキッドレス測定を行うことができる。
【0064】
オペレータがデータ処理装置14の操作部36に対して測定開始操作を入力すると、データ処理装置14による制御の下、駆動装置18の駆動部62が駆動ガイド58に沿ってスライダ60及び板バネ64をX軸方向(+)側からX軸方向(-)側へ移動させる。これにより、板バネ64等を介して検出器16が、被測定面9に略平行な検出器ガイド20に沿ってX軸方向(-)側へ移動する。その結果、被測定面9(ワーク)を基準として、この被測定面9を検出器16の触針48がトレースするスキッドレス測定が開始される。
【0065】
検出器16の検出センサ46は、スタイラス42(触針48)の揺動による変位を検出し、この変位の検出信号をデータ処理装置14へ出力する。データ処理装置14は、検出センサ46から入力される検出信号と、駆動装置18による検出器16の移動量とに基づき、公知の方法で被測定面9の表面形状を算出する。この際に、表面形状測定機10(測定装置12)では、スキッド24を被測定面9に接触させずに触針48により被測定面9をトレースするスキッドレス測定を行うため、被測定面9の表面粗さのみならず、被測定面9の段差の形状及びうねり等のスキッドレス測定で得られる被測定面9の各種の表面形状も同時に測定することができる。また、この表面形状の測定精度は検出器ガイド20の真直度に依存するため、大掛かりな測定機を用いることなく、低コスト且つ高精度で被測定面9の表面形状の測定を行うことができる。
【0066】
被測定面9の段差等のZ軸方向(+)側の高さが次第に高くなると、揺動支点40を基準として、スタイラス42が付勢部材44の付勢力に抗して第2回転方向SW2に回転する。そして、図7の符号VIIBに示すように、スタイラス42が既述の基準回転位置から第2回転方向SW2に一定角度まで回転されると、触針48の先端とスキッド底面24aとのZ軸方向位置が一致した一致状態となる。これにより、スキッド24のスキッド底面24aが被測定面9に接触する。
【0067】
図7の符号VIICに示すように、一致状態から被測定面9の段差等の高さがさらに高くなると、被測定面9からスキッド底面24a(触針48の先端を含む)に対して、さらに力Z軸方向(+)側の力が加えられる。これにより、検出器ガイド20のガイド上面20aとノーズピース22のガイド接触点50との接触が解除されると共に、検出器16等が板バネ64を基準として第2回転方向SW2に回転する。その結果、表面形状測定機10(測定装置12)による測定がスキッドレス測定からスキッド測定に切り替えられる。
【0068】
このスキッド測定では、スキッド24を基準とした被測定面9の表面形状の測定を行うため、被測定面9の表面粗さの測定のみが実行されるものの、触針48が被測定面9の段差等に引っ掛かって破損することが防止される。
【0069】
[本実施形態の効果]
以上のように本実施形態の表面形状測定機10では、被測定面9に対して略平行に配置された検出器ガイド20に沿って検出器16を移動させることにより、被測定面9を基準とする所謂ワーク基準で検出器16による被測定面9のスキッドレス測定を行うことができる。その結果、被測定面9の表面粗さと、被測定面9の表面粗さ以外の表面形状(形状及びうねり等)とを同時に測定することができる。また、被測定面9の段差等の高さが高い場合には、スキッドレス測定からスキッド測定に自動的に切り替えることができるので、触針48の破損を確実に防止することができる。さらに、検出器ガイド20の真直度に応じた測定精度が得られるので、低コスト且つ高精度で被測定面9の表面形状を測定することができる。
【0070】
[その他]
上記実施形態では、本発明の第1弾性支持部材及び第2弾性支持部材としてそれぞれ板バネを例に挙げて説明したが、板バネ以外の各種の弾性支持部材を用いてもよい。
【0071】
上記実施形態では3つのガイド設置点28により被測定面9上に検出器ガイド20を3点支持しているが、被測定面9に対して検出器ガイド20を略平行な姿勢で支持することができれば、ガイド設置点28の数は1であってもよいし、或いは2又は4以上の複数であってもよい。また、ガイド設置点28の形状もピン形状に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0072】
上記実施形態では、検出器ガイド20が板バネ70を介して駆動装置18に取り付けられているが、駆動装置18に対して検出器ガイド20が分離して設けられていてもよい。
【0073】
上記実施形態では、ノーズピース22を介して検出器16にスキッド24を設けているが、検出器16にスキッド24を直接設けてもよい。また、上記実施形態では、スキッド24の触針挿通穴24bに触針48が挿通されているが、触針48がスキッド24を挿通していなくともよい(上記特許文献1参照)。
【0074】
上記実施形態では、ノーズピース22が検出器16の先端側(X軸方向(+)側)の先端面に取り付けられているが、検出器16に対するノーズピース22の取付位置は特に限
定されるものではない。また、上記実施形態では、ノーズピース22を介して検出器ガイド20に検出器16を移動自在に支持させているが、検出器ガイド20に対して検出器16を移動自在に支持可能であれば各種の検出器支持部材を用いてもよい。
【0075】
上記実施形態では、携帯型の表面形状測定機10を例に挙げて説明したが、スキッド測定が可能な据置型(非携帯型)の測定機にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
9…被測定面,
10…表面形状測定機,
12…測定装置,
16…検出器,
20…検出器ガイド,
20a…ガイド上面,
22…ノーズピース,
24…スキッド,
28…ガイド設置点,
42…スタイラス,
44…付勢部材,
48…触針,
50…ガイド接触点,
56…ケース,
62…駆動部,
64…板バネ,
70…板バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7