(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】吸着ピックアップ及び移載方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20220311BHJP
B65B 35/18 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
B25J15/06 A
B65B35/18
(21)【出願番号】P 2018038376
(22)【出願日】2018-03-05
【審査請求日】2020-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】七島 光博
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-112664(JP,A)
【文献】実開昭59-116193(JP,U)
【文献】特開平05-116082(JP,A)
【文献】特開2005-001055(JP,A)
【文献】特開2014-091542(JP,A)
【文献】特開2000-326275(JP,A)
【文献】特開2000-141268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0328779(US,A1)
【文献】特開2015-223716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B65B 35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品が封入され、少なくともトレー上面の平面部の一部を覆うシュリンクを有する食品用プラスチックトレーを吸着する吸着ピックアップであって、
内部に空洞を有し、全長が収縮可能で前記トレー上面の平面部
の前記シュリンクに吸着する吸着部の吸着面が軟質の樹脂で形成された吸着パッドと、
前記シュリンクに吸着痕がつかない圧力であって、前記シュリンクを吸着し開放するまでの間前記吸着パッド内の真空状態を維持することができる圧力となるように前記吸着パッド内を陰圧に制御する空気圧制御部と、
多数の貫通孔を有し前記吸着部の前記吸着面の内側に配置され、前記トレーを吸着したときに前記トレー上面の平面部
の前記シュリンクに接する板状部材と、
を備えることを特徴とする吸着ピックアップ。
【請求項2】
前記板状部材は、前記吸着部内に前記吸着面の縁部と略平行になるように配置されていることを特徴とする請求項1記載の吸着ピックアップ。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記板状部材の全面に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の吸着ピックアップ。
【請求項4】
前記吸着パッドは、楕円形吸着パッドまたは円形吸着パッドであることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の吸着ピックアップ。
【請求項5】
前記トレー上面の平面部に接触する少なくとも2つの接触面を有し、前記接触面の間に前記吸着パッドを配置する吸着パッド配置部が設けられた防振用部材を備え、
前記吸着パッドの前記吸着面は、非吸着時に前記防振用部材の前記接触面よりも予め定められた長さだけ下部に位置し、吸着時に前記防振用部材の前記接触面よりも予め定められた長さだけ上部に位置することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の吸着ピックアップ。
【請求項6】
前記シュリンクは、前記トレーの全体を覆う全シュリンクまたは少なくとも前記トレー上面の平面部の一部を覆う帯シュリンクであることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の吸着ピックアップ。
【請求項7】
前記食品は、惣菜または弁当であることを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の吸着ピックアップ。
【請求項8】
食品が封入され、少なくともトレー上面の平面部の一部を覆うシュリンクを有する食品用プラスチックトレーを移載する移載方法であって、
内部に空洞を有し、全長が収縮可能で前記トレー上面の平面部に吸着する吸着部の吸着面が軟質の樹脂で形成された吸着パッドと、多数の貫通孔を有し前記吸着部の前記吸着面の内側に配置され、前記トレーを吸着したときに前記トレー上面の平面部に接する板状部材とを備える吸着ピックアップを前記トレーの上方で前記シュリンクが接触しない位置に移動させる移送準備工程と、
前記吸着ピックアップの前記吸着パッドの前記吸着面を前記トレーを覆う前記シュリンクに接触させる吸引準備工程と、
前記シュリンクに吸着痕がつかない圧力であって、前記シュリンクを吸着し開放するまでの間前記吸着パッド内の真空状態を維持することができる圧力となるように前記吸着パッド内部を陰圧にして吸引力を発生させ前記吸着パッドに前記シュリンクを吸着させる吸着工程と、
前記吸着パッドに前記シュリンクを吸着させた状態で前記吸着ピックアップを移動させることにより前記トレーを予め決められた位置まで移動させる移動工程と、
前記吸着パッド内を大気圧または陽圧にして吸着破壊することにより前記トレーを開放する開放工程と
含むことを特徴とする移載方法。
【請求項9】
前記吸着ピックアップは、前記トレー上面の平面部に接触する少なくとも2つの接触面を有し、前記接触面の間に前記吸着パッドを配置する吸着パッド配置部が設けられた防振用部材を有し、
前記吸着工程において発生させた吸引力によって前記吸着パッドの全長を短縮させて前記トレーと前記防振用部材とを当接させることを特徴とする請求項8記載の移載方法。
【請求項10】
前記吸引準備工程において、前記吸着パッドの前記吸着面は前記防振用部材の前記接触面よりも予め定められた長さだけ下部に位置し、
前記吸着工程において、前記吸着パッドの前記吸着面は前記防振用部材の前記接触面よりも予め定められた長さだけ上部に位置することを特徴とする請求項9記載の移載方法。
【請求項11】
前記移動工程においては、前記トレー内の前記食品が偏ることのない加速度以下で前記トレーを移動させることを特徴とする請求項8~10の何れか一項に記載の移載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用プラスチックトレーを吸着する吸着ピックアップ及び該吸着ピックアップを用いた食品用プラスチックトレーの移載方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来食品用プラスチックトレーには、サイズ、外形の違いや仕切り付のものなど様々な形状のものが存在し、そのプラスチックトレーに嵌合して使用される蓋もトレーに合わせて仕切り付のものなど多種多様なものが存在している。また食品用プラスチックトレーに食品が収容された後に、商品名などが表示された帯シュリンクが巻かれたものが特許文献1に開示されている。このような食品用プラスチックトレーは、様々な形状や大きさのものが存在することから、食品工場において食品を収容した後に、作業員が手作業で番重に詰め、スーパーマーケットやコンビニエンスストアに搬送している。
【0003】
なお弾性材料をもって略傘形状に形成されたパッドと、パッドの外方に同芯に配置された支持枠とを有する吸着保持具が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-91542号公報
【文献】実開平1-84993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで特許文献2に開示されている吸着保持具を用いてシュリンクにより覆われた食品用プラスチックトレーを吸着した場合、シュリンクに吸着痕が形成され美観を損ねていた。またシュリンクが延伸することから食品用プラスチックトレーを安定して吸着することが出来ず食品用プラスチックトレーの移載を良好に行うことができない。更に現在、食品工場で働く作業員の確保が困難になっていることから、食品用プラスチックトレーの番重詰めの自動化や食品用プラスチックトレーの番重への移載方法の開発が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、少なくともトレー上面の平面部の一部を覆うシュリンクを有する食品用プラスチックトレーを吸着痕を発生させずに良好に吸着する吸着ピックアップ、及び該吸着ピックアップを用いて食品用プラスチックトレーを安定して移載する移載方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸着ピックアップは、食品が封入され、少なくともトレー上面の平面部の一部を覆うシュリンクを有する食品用プラスチックトレーを吸着する吸着ピックアップであって、内部に空洞を有し、全長が収縮可能で前記トレー上面の平面部に吸着する吸着部の吸着面が軟質の樹脂で形成された吸着パッドと、多数の貫通孔を有し前記吸着部の前記吸着面の内側に配置され、前記トレーを吸着したときに前記トレー上面の平面部に接する板状部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また本発明の吸着ピックアップは、前記板状部材が前記吸着部内に前記吸着面の縁部と略平行になるように配置されていることを特徴とする。
【0009】
また本発明の吸着ピックアップは、前記貫通孔が前記板状部材の全面に形成されていることを特徴とする。
【0010】
またまた本発明の吸着ピックアップは、前記吸着パッドが楕円形吸着パッドまたは円形吸着パッドであることを特徴とする。
【0011】
また本発明の吸着ピックアップは、前記トレー上面の平面部に接触する少なくとも2つの接触面を有し、前記接触面の間に前記吸着パッドを配置する吸着パッド配置部が設けられた防振用部材を備え、前記吸着パッドの前記吸着面は、非吸着時に前記防振用部材の前記接触面よりも予め定められた長さだけ下部に位置し、吸着時に前記防振用部材の前記接触面よりも予め定められた長さだけ上部に位置することを特徴とする。
【0012】
また本発明の吸着ピックアップは、前記シュリンクが前記トレーの全体を覆う全シュリンクまたは少なくとも前記トレー上面の平面部の一部を覆う帯シュリンクであることを特徴とする。
【0013】
また本発明の吸着ピックアップは、前記食品が惣菜または弁当であることを特徴とする。
【0014】
本発明の移載方法は、食品が封入され、少なくともトレー上面の平面部の一部を覆うシュリンクを有する食品用プラスチックトレーを移載する移載方法であって、内部に空洞を有し、全長が収縮可能で前記トレー上面の平面部に吸着する吸着部の吸着面が軟質の樹脂で形成された吸着パッドと、多数の貫通孔を有し前記吸着部の前記吸着面の内側に配置され、前記トレーを吸着したときに前記トレー上面の平面部に接する板状部材とを備える吸着ピックアップを前記トレーの上方で前記シュリンクが接触しない位置に移動させる移送準備工程と、前記吸着ピックアップの前記吸着パッドの前記吸着面を前記トレーを覆う前記シュリンクに接触させる吸引準備工程と、前記吸着パッド内部を陰圧にして吸引力を発生させ前記吸着パッドに前記シュリンクを吸着させる吸着工程と、前記吸着パッドに前記シュリンクを吸着させた状態で前記吸着ピックアップを移動させることにより前記トレーを予め決められた位置まで移動させる移動工程と、前記吸着パッド内を大気圧または陽圧にして吸着破壊することにより前記トレーを開放する開放工程と含むことを特徴とする。
【0015】
また本発明の移載方法は、前記吸着ピックアップが前記トレー上面の平面部に接触する少なくとも2つの接触面を有し、前記接触面の間に前記吸着パッドを配置する吸着パッド配置部が設けられた防振用部材を有し、前記吸着工程において発生させた吸引力によって前記吸着パッドの全長を短縮させて前記トレーと前記防振用部材とを当接させることを特徴とする。
【0016】
また本発明の移載方法は、前記吸引準備工程において、前記吸着パッドの前記吸着面は前記防振用部材の前記接触面よりも予め定められた長さだけ下部に位置し、前記吸着工程において、前記吸着パッドの前記吸着面は前記防振用部材の前記接触面よりも予め定められた長さだけ上部に位置することを特徴とする。
【0017】
また本発明の移載方法は、前記移動工程においては、前記トレー内の前記食品が偏ることのない加速度以下で前記トレーを移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少なくともトレー上面の平面部の一部を覆うシュリンクを有する食品用プラスチックトレーを吸着痕を発生させずに良好に吸着する吸着ピックアップ、及び該吸着ピックアップを用いて食品用プラスチックトレーを安定して移載する移載方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態に係る吸着ピックアップ及び食品用プラスチックトレーの正面図である。
【
図2】実施の形態に係る楕円形吸着パッドの斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る楕円形吸着パッドの底面図である。
【
図4】実施の形態に係る吸着ピックアップの底面図である。
【
図5】実施の形態に係る吸着ピックアップを用いた食品用プラスチックトレーの移載方法を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態に係る楕円形吸着パッドによる食品用プラスチックトレーの吸着位置を示す図である。
【
図7】実施の形態に係る吸着ピックアップにより食品用プラスチックトレーを吸着した状態を示す図である。
【
図8】実施の形態に係る吸着ピックアップにより食品用プラスチックトレーを吸着した際の楕円形吸着パッド内の圧力の時間変化を示すグラフである。
【
図9】他の実施の形態に係る円形吸着パッドの形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して実施の形態に係る吸着ピックアップ及び該吸着ピックアップを用いた食品用プラスチックトレーの移載方法について説明する。
図1は実施の形態に係る吸着ピックアップ及び該吸着ピックアップにより吸着される食品用プラスチックトレーの正面図である。
【0021】
吸着ピックアップ2は、惣菜または弁当などの食品が封入され、全体がシュリンク(全シュリンク)4aにより覆われた食品用プラスチックトレー4を楕円形吸着パッド6により吸着し、食品用プラスチックトレー4の移載に用いるものである。
【0022】
図2は楕円形吸着パッド6の形状を示す斜視図である。楕円形吸着パッド6は、平面視において楕円形状を有している。楕円形吸着パッド6は、シリコン樹脂などの軟質の樹脂で内部に空洞を有するように形成され、蛇腹構造により全長が収縮可能な吸着部6aを有している。吸着部6aの上部には吸着部6a内を陰圧、陽圧または大気圧に制御するために吸着部6a内の空気を吸引し、または吸着部6a内に空気を導入する空気圧制御部(図示せず)に接続される中空管6bが取り付けられている。また吸着部6aの下部には食品用プラスチックトレー4の上面の平面部に吸着するリップ部6cが形成されている。リップ部6cは楕円錐状に広がった形状を有し、吸着部6aの他の部分に比較して薄く形成されている。
【0023】
図3は楕円形吸着パッド6の底面図である。楕円形吸着パッド6のリップ部6cの内壁は、吸着面6dとして機能する。吸着面6dの内側には、多数の貫通孔7aが全面に形成され、平面形状を有する板状部材7が吸着面6dの縁部と略平行になるように配置されている。即ち板状部材7は、吸着面6dの内側に嵌め込まれており、食品用プラスチックトレー4を吸着したときに食品用プラスチックトレー4の上面の平面部に接する。なお板状部材7は、パンチングメタルを用いて形成されたものであってもよい。
【0024】
図4は楕円形吸着パッド6を備えた吸着ピックアップ2の底面図である。
図4に示すように吸着ピックアップ2は3つの楕円形吸着パッド6を備えている。
図1及び
図4に示すように、吸着ピックアップ2は、3つの楕円形吸着パッド6を配置する吸着パッド配置部8aが設けられた防振用部材8を備えている。防振用部材8の3つの楕円形吸着パッド6を挟んだ位置には、食品用プラスチックトレー4の上面の平面部に接触する2つの接触面8bが設けられている。ここで2つの接触面8bはそれぞれ矩形形状の平面部を有し、食品用プラスチックトレー4の上面の平面部に対向するように形成されている。
【0025】
次に実施の形態に係る吸着ピックアップ2を用いた食品用プラスチックトレーの移載方法について説明する。
図5に示すように、まず吸着ピックアップ2を食品用プラスチックトレー4の上方であって防振用部材8にシュリンク4aが接触しない位置に移動させる(移送準備工程:ステップS10)。次に吸着ピックアップ2の楕円形吸着パッド6の吸着面6dを食品用プラスチックトレー4を覆っているシュリンク4aに接触させる(吸引準備工程:ステップS11)。なお吸引準備工程においては、
図1に示すように楕円形吸着パッド6の吸着面6dは防振用部材8の接触面8bよりも予め定められた長さxだけ下部に位置している。
【0026】
次に楕円形吸着パッド6の内部を陰圧にして吸引力を発生させる(吸引力発生工程:ステップS12)。そして吸引力発生工程において発生させた吸引力によって楕円形吸着パッド6にシュリンク4aを吸着させると共に楕円形吸着パッド6の全長を短縮させて食品用プラスチックトレー4と防振用部材8の接触面8bとを当接させる(吸着工程:ステップS13)。従って、
図6に示すように3つの楕円形吸着パッド6の吸着部6aは、食品用プラスチックトレー4の上面の平面部4bに吸着する。この場合に板状部材7は、食品用プラスチックトレー4の上面の平面部4bが押し付けられ、平面部4bに接した状態になる。これによりシュリンク4aの垂直方向への巻き上げが防止され、吸着痕の形成を防止する。なお吸着工程においては、
図7に示すように楕円形吸着パッド6の吸着面6dは、防振用部材8の接触面8bよりも予め定められた長さyだけ上部に位置している。
【0027】
吸着ピックアップ2は、楕円形吸着パッド6の吸着面6dで食品用プラスチックトレー4を覆っているシュリンク4aを吸着するだけでなく、防振用部材8の接触面8bにより楕円形吸着パッド6を挟んだ両側の位置で食品用プラスチックトレー4を押え付ける。
【0028】
次に楕円形吸着パッド6にシュリンク4aを吸着させた状態で吸着ピックアップ2を移動させることにより食品用プラスチックトレー4を予め決められた位置、例えば番重の位置まで移動させる(移動工程:ステップS14)。ここで食品用プラスチックトレー4の移動は、食品用プラスチックトレー4内の食品が偏ることのない加速度以下で行う。また防振用部材8の接触面8bにより楕円形吸着パッド6を挟んだ両側の位置で食品用プラスチックトレー4を押え付けているため、吸着ピックアップ2に吸着された食品用プラスチックトレー4の姿勢を安定させた状態で食品用プラスチックトレー4を予め決められた位置まで移動させることができる。
【0029】
そして楕円形吸着パッド6内を大気圧または陽圧にして吸着破壊することにより食品用プラスチックトレー4を開放し、食品用プラスチックトレー4を例えば番重内に移載する(開放工程:ステップS15)。
【0030】
図8(a)は、実施の形態に係る吸着ピックアップ2により食品用プラスチックトレー4を吸着した際の楕円形吸着パッド6内の圧力の時間変化を示すグラフである。ここで食品用プラスチックトレー4を吸着した際の楕円形吸着パッド6内の圧力は、シュリンク4aに吸着痕が付かない条件で、最大の吸引力が発生する圧力としている。このグラフに示すように楕円形吸着パッド6により食品用プラスチックトレー4を吸着し、開放するまでの間、楕円形吸着パッド6内の真空状態を維持することができる。即ち楕円形吸着パッド6によりシュリンク4aを吸着するとシュリンク4aに多少の延伸が生じるため、楕円形吸着パッド6の吸着面6dで食品用プラスチックトレー4のシュリンク4aを吸着するだけでなく、防振用部材8の接触面8bにより楕円形吸着パッド6を挟んだ両側の位置で食品用プラスチックトレー4を押え付けている。従って移載時に食品用プラスチックトレー4の揺れを防止でき食品用プラスチックトレー4の姿勢を安定させることができるため、効果的に楕円形吸着パッド6内の真空状態を維持することができ、食品用プラスチックトレー4の移載を精度よく行うことができる。また食品用プラスチックトレー4の移載の際に、食品用プラスチックトレー4内の食品が偏るのを防止することができる。
【0031】
なお
図8(b)は、板状部材7を有さない楕円形吸着パッドを備えた吸着ピックアップ2により食品用プラスチックトレー4を吸着した際の楕円形吸着パッド内の圧力の時間変化のグラフである。ここで食品用プラスチックトレー4を吸着した際の楕円形吸着パッド内の圧力は、シュリンク4aに吸着痕が付かない条件で最大の吸引力が発生する圧力としている。
図8(a)に示す楕円形吸着パッド6内の圧力と
図8(b)に示す楕円形吸着パッド内の圧力には、両方とも吸着痕がつかない条件であるにもかかわらず、差があることが分かる。吸引力は、大気圧との差が大きくなるほど大きくなるので、楕円形吸着パッド6を用いる場合には、板状部材7を有する楕円吸着パットは、板状部際7を有さない楕円形吸着パッドに比較して大きな吸引力で吸引することが可能となり、シュリンク4aに吸着痕を発生させずに良好に食品用プラスチックトレー4を吸着することができる。
【0032】
また上述の実施の形態の吸着ピックアップ2においては、3つの楕円形吸着パッド6を備えているため平面部4bの領域が限られている食品用プラスチックトレー4であっても楕円形吸着パッド6の吸着面6dが平面部4bからはみ出すことがなく確実に吸着することができる。即ち楕円形吸着パッド6を用いる場合には、円形吸着パッドを用いる場合に比較して、領域が限られている食品用プラスチックトレー4の平面部4bを有効に活用することができる。また多種多様な食品用プラスチックトレー4の吸着に汎用的に用いることができる。
【0033】
なお上述の実施の形態の吸着ピックアップ2においては、
図2~3に示す楕円形吸着パッド6を用いているが、楕円形吸着パッド6に代えて
図9に示す他の実施の形態である円形吸着パッド20を用いてもよい。円形吸着パッド20は、シリコン樹脂などの軟質の樹脂で筒状に形成され、蛇腹構造により全長が収縮可能な吸着部20aを有している。吸着部20aの上部には吸着部20a内を陰圧、陽圧または大気圧に制御するために吸着部20a内の空気を吸引し、または吸着部20a内に空気を導入する空気圧制御部(図示せず)に接続される中空管20bが取り付けられている。また吸着部20aの先端には食品用プラスチックトレー4の上面の平面部4bに吸着するリップ部20cが形成されている。リップ部20cは円錐状に広がった形状を有し、吸着部20aの他の部分に比較して薄く形成されている。ここでリップ部20cの内壁は、吸着面20dとして機能する。
【0034】
吸着面20dの内側には、多数の貫通孔22aが全面に形成され、平面形状を有する板状部材22が吸着面20dの縁部と略平行になるように配置されている。即ち板状部材22は、吸着面20dの内側に嵌め込まれており、食品用プラスチックトレー4を吸着したときに食品用プラスチックトレー4の上面の平面部4bに接する。
【0035】
また上述の実施の形態の吸着ピックアップ2は、3つの楕円形吸着パッド6を備えているが、楕円形吸着パッド6を1つ、または2つ、更に4つ以上備えるようにしてもよい。
【0036】
また上述の実施の形態においてシュリンクは、トレーの全体を覆う全シュリンクに限らず、トレー上面の平面部の一部を覆う帯シュリンクであってもよい。
【0037】
さらに上述の実施の形態では、吸引準備工程(ステップS11)を行った後、吸引力発生工程(ステップS12)を設けているが、1サイクルにかかる時間の短縮等のために、吸引準備工程(ステップS11)の前に吸引力発生工程(ステップS12)を設けて、予め吸着部6aに吸引力を発生させるなど、本願の目的の範囲内で工程の順番を入れ替えてもよい。
【符号の説明】
【0038】
2…吸着ピックアップ、4…食品用プラスチックトレー、4a…シュリンク、6…楕円形吸着パッド、6a…吸着部、6c…リップ部、6d…吸着面、7…板状部材、8…防振用部材、8a…吸着パッド配置部、8b…接触面、20…円形吸着パッド、20a…吸着部、20c…リップ部、20d…吸着面、22…板状部材