(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 51/04 20060101AFI20220314BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20220314BHJP
C08L 35/06 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
C08L51/04
C08L25/12
C08L35/06
(21)【出願番号】P 2020527868
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 KR2018014904
(87)【国際公開番号】W WO2019112239
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2017-0165310
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0149687
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】テ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソン・リョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ジェ・クオン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・フィ・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】キュ・ソン・ジョン
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-182835(JP,A)
【文献】特開2004-244518(JP,A)
【文献】特開2000-191867(JP,A)
【文献】特開2004-307734(JP,A)
【文献】特開2006-233132(JP,A)
【文献】特開2009-155421(JP,A)
【文献】国際公開第2017/095060(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 51/04
C08L 25/12
C08L 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルアクリレート系ゴム質重合体
に、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位
がグラフト重合された第1の共重合体
10~35重量%と、
アルキルアクリレート系ゴム質重合体
に、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位
がグラフト重合された第2の共重合体
1~25重量%と、
芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む第3の共重合体
10~35重量%と、
芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む第4の共重合体
5~30重量%と、
マレイミド系単位、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む第5の共重合体
15~40重量%とを含み、
前記第1の共重合体のアルキルアクリレート系ゴム質重合体は、平均粒径が0.05~0.18μmであり、
前記第2の共重合体のアルキルアクリレート系ゴム質重合体は、平均粒径が0.2~1.0μmであり、
前記第3の共重合体と前記第4の共重合体の重量平均分子量の差は、100,000~200,000g/molであり、
前記第1の共重合体は、前記第1の共重合体の全重量に対して、前記アルキルアクリレート系ゴム質重合体を35~60重量%、前記芳香族ビニル系単位を25~45重量%、前記ビニルシアン系単位を5~25重量%含み、
前記第2の共重合体は、前記第2の共重合体の全重量に対して、前記アルキルアクリレート系ゴム質重合体を35~60重量%、前記芳香族ビニル系単位を25~45重量%、前記ビニルシアン系単位を5~25重量%含み、
前記第3の共重合体は、前記芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を、85:15~60:40の重量比で含み、
前記第4の共重合体は、前記芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を、85:15~60:40の重量比で含み、
前記第5の共重合体は、前記第5の共重合体の全重量に対して、前記マレイミド系単位を25~50重量%、前記芳香族ビニル系単位を45~70重量%、前記ビニルシアン系単位を0.1~20重量%含み、
前記第1の共重合体のシェルの重量平均分子量は、90,000~180,000g/molであり、
前記第2の共重合体のシェルの重量平均分子量は、110,000~170,000g/molである、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記第3の共重合体は、重量平均分子量が100,000~200,000g/molである、請求項
1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記第4の共重合体は、重量平均分子量が210,000~300,000g/molである、請求項1
又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記第5の共重合体は、ガラス転移温度が165~190℃である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記第5の共重合体は、N‐フェニルマレイミド/スチレン/アクリロニトリル共重合体である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂組成物は、
前記第1の共重合体15~30重量%と、
前記第2の共重合体5~20重量%と、
前記第3の共重合体15~30重量%と、
前記第4の共重合体10~25重量%と、
前記第5の共重合体20~35重量%とを含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月4日付けの韓国特許出願第10‐2017‐0165310号および2018年11月28日付けの韓国特許出願第10‐2018‐0149687号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関し、より詳細には、耐衝撃性、射出表面特性、金属蒸着性および金属密着性がいずれも優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン系樹脂(ABS系樹脂)は、加工性、耐衝撃性および耐薬品性に優れ、建築用資材、自動車や自動二輪車などの車種の内外装材、電気電子製品などに広範に使用されている。
【0004】
前記ABS系樹脂を自動車の外装材、特に、リアランプハウジング(尾灯またはリアコンビネーションランプ)やリアガーニッシュなどに使用する場合、塗装およびアルミニウム蒸着工程を経るが、蒸着前の塗装工程は、環境汚染およびコストアップの問題を引き起こす。
【0005】
そのため、後加工の効率性を高め、環境汚染を低減するために、従来行っていた塗装工程を省略し、射出物に直接アルミニウム蒸着を行う無塗装蒸着工程が増加している。
【0006】
前記のように、無塗装蒸着工程により製品を製造する場合、アルミニウム蒸着の後、蒸着面の光反射率に優れる必要があり、製品の使用時に発生する熱によって素材の変形が生じないようにしなければならない。
【0007】
しかし、ABS系樹脂を含んで製造されたリアランプハウジングの場合、樹脂内に衝撃補強の用途に使用されるブタジエンゴムの二重結合が、空気中の酸素、オゾンまたは光などによって分解されて、変色および物性低下現象などの問題を引き起こした。
【0008】
そのため、不安定なブタジエンゴム質重合体の代わりに、ブチルアクリレートゴム質重合体にスチレンおよびアクリロニトリルをグラフト共重合させたアクリレート‐スチレン‐アクリロニトリル系樹脂(ASA系樹脂)を、ABS系樹脂の代わりに使用する方法が提案されたが、ASA系樹脂は、ABS系樹脂に比べ、耐候性に優れる一方、外観特性が劣るという欠点があった。
【0009】
かかるASA系樹脂の欠点を改善するために、外観特性に優れたポリメチルメタクリレート(PMMA)およびポリカーボネート(PC)をブレンドして使用する方法が提案されたが、PMMAやPCをブレンドする場合、樹脂組成物の流動性が低下し、加工性、成形性などが低下するという問題があった。
【0010】
一方、自動車や自動二輪車などの外装に適用する素材は、その目的に合致するために、成形後、美麗な外観を有し、機械的物性(特に、常温および低温衝撃強度、剛性)に優れていなければならず、光(特に、紫外線)に対する安定性である耐候性に優れていなければならない。また、成形性に優れ外装材としての働きをしなければならない。特に、自動車の外装材のうちランプハウジング(lamp housing)は、耐衝撃性および成形加工性に優れていなければならない。
【0011】
一般的に、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン(ABS)樹脂は、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリルの三元共重合体として優れた耐衝撃性と剛性を同時に有しており、機械的性質に優れ、成形性に優れ、着色性に優れることで、電気、電子ハウジング、自動車の内装材およびランプハウジング材料といった様々な用途に広範に使用されている。しかし、原料の組成および製造方法に応じて機械的物性の差があり、基本的に不飽和結合を有するゴム成分を有しており、空気中の酸素、オゾンおよび熱または光(紫外線)などに脆いという弱点がある。そのため、外装用素材としては適用性が若干劣り、外装用素材に適用するためには塗装をしなければならないという欠点がある。例えば、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン(ABS)樹脂を、外装材、特に、ランプハウジングとして適用するためには、射出成形したアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン(ABS)樹脂の表面に1次塗装(base coating)をした後、アルミニウム蒸着を行い、また、アルミニウム膜を保護するために2次塗装(top coating)を実施する。前記塗装は、塗装不良が発生することがあり、過剰な溶媒の使用によって環境を破壊し、溶媒の毒性および飛散によって作業者が避ける対象になっているだけでなく、追加工程の発生による生産性の下落およびコストアップなどの問題をもたらす。
【0012】
そのため、塗装を行わずにすぐ蒸着することに関する研究が行われており、蒸着性を高めるために二峰性や異種のゴム成分を使用して、ゴム含量を調節する方法、界面活性剤などを使用して、塗装性および塗装広がり性を向上させる方法などが提案されている。しかし、前記のような方法は、不飽和結合を有するゴム成分を有するアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン(ABS)樹脂を基本樹脂として使用しており、前記不飽和結合を有するゴム成分による耐候性脆弱の問題、すなわち、長期間外部で熱または光に晒されると、表面の色が黄変し、亀裂が発生し、衝撃強度が著しく低下するなどの根本的な問題は解決することができなかった。
【0013】
一方、アクリレート‐スチレン‐アクリロニトリル(ASA)樹脂は、不飽和結合を有するゴム成分であるブタジエンゴムの代わりに、不飽和結合を有していないアクリレート系ゴム成分を使用することで、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン(ABS)樹脂の優れた機械的物性および成形加工性を有するとともに、最大の欠点である耐候性を著しく改善した素材として、塗装品または金属材料を用いた屋外用途に多く適用されている。アクリレート‐スチレン‐アクリロニトリル(ASA)樹脂は、塗装などの後加工をしなくても優れた耐候性があることから、光に長期間晒されても変色が少なく、機械的物性の低下が比較的少ないという利点がある。
【0014】
しかし、不飽和結合を有していないアクリレート系ゴム質重合体は、ブタジエン系ゴム質重合体に比べ、衝撃強度補強効果が劣り、低温で衝撃強度補強効果が低いという欠点がある。また、光沢度がアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン(ABS)樹脂に比べ劣るという問題がある。
【0015】
したがって、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン(ABS)樹脂が有する優れた機械的物性および成形加工性を有するとともに、耐候性、蒸着性、表面特性および光沢度に優れた、外装材として容易に適用することができる樹脂の開発が必要となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、成形品に優れた表面特性および金属蒸着性を付与することができ、金属が蒸着された成形品を熱融着するときにも優れた金属密着性を付与することができる熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するために、本発明は、アルキルアクリレート系ゴム質重合体、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む第1の共重合体と、アルキルアクリレート系ゴム質重合体、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む第2の共重合体と、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む第3の共重合体と、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む第4の共重合体と、マレイミド系単位、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む第5の共重合体とを含み、前記第1および第2の共重合体は、アルキルアクリレート系ゴム質重合体の平均粒径が互いに異なり、前記第3および第4の共重合体は、重量平均分子量が互いに異なる熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明による熱可塑性樹脂組成物は、成形品に、優れた表面特性および金属蒸着性を付与することができ、金属が蒸着された成形品を熱融着するときにも優れた金属密着性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に関する理解に資するため、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
本明細書および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0021】
本発明において、アルキルアクリレート系ゴム質重合体およびグラフト共重合体の平均粒径は、動的光散乱(dynamic light scattering)法を用いて測定することができ、詳細には、Nicomp 380 HPL装備(製品名、Nicomp社製)を用いて測定することができる。
【0022】
本明細書において、平均粒径は、動的光散乱法によって測定される粒度分布における算術平均粒径、具体的には、散乱強度平均粒径を意味し得る。
【0023】
本発明において、重量平均分子量は、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography、waters breeze)により標準PS(ポリスチレンスタンダード;standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。
【0024】
本発明において、第1または第2の共重合体のシェルの重量平均分子量は、第1または第2の共重合体をアセトンに溶解し遠心分離した後、アセトンに溶解した部分(sol)をテトラヒドロフランに溶解した後、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC、waters breeze)を用いて、標準PS(standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。
【0025】
本発明において、ガラス転移温度は、ASTM D3418に準じて測定することができる。
【0026】
本発明において、アルキルアクリレート系ゴム質重合体は、アルキルアクリレート系単量体が、重合、詳細には、架橋反応されてシードを製造し、前記シードの存在下で、アルキルアクリレート系単量体が、重合、詳細には、架橋反応されることで製造され得る。前記アルキルアクリレート系単量体は、C1~C10のアルキルアクリレートであってもよく、前記C1~C10のアルキルアクリレートは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートおよびエチルヘキシルアクリレートからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち、ブチルアクリレートが好ましい。
【0027】
本発明において、芳香族ビニル系単位は、芳香族ビニル系単量体から由来した単位を意味し、芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α‐メチルスチレン、α‐エチルスチレンおよびp‐メチルスチレンからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち、スチレンが好ましい。
【0028】
本発明において、ビニルシアン系単位は、ビニルシアン系単量体から由来した単位を意味し、ビニルシアン系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリルおよびα‐クロロアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち、アクリロニトリルが好ましい。
【0029】
本発明において、マレイミド系単位は、マレイミド系単量体から由来した単位であり、前記マレイミド系単量体は、マレイミド、N‐メチルマレイミド、N‐エチルマレイミド、N‐プロピルマレイミド、N‐イソプロピルマレイミド、N‐ブチルマレイミド、N‐イソブチルマレイミド、N‐t‐ブチルマレイミド、N‐ラウリルマレイミド、N‐シクロヘキシルマレイミド、N‐フェニルマレイミド、N‐(4‐クロロフェニル)マレイミド、2‐メチル‐N‐フェニルマレイミド、N‐(4‐ブロモフェニル)マレイミド、N‐(4‐ニトロフェニル)マレイミド、N‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミド、N‐(4‐メトキシフェニル)マレイミド、N‐(4‐カルボキシフェニル)マレイミドおよびN‐ベンジルマレイミドからなる群から選択される1種以上であってもよく、このうち、N‐フェニルマレイミドが好ましい。
【0030】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、1.アルキルアクリレート系ゴム質重合体、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む第1の共重合体と、2.アルキルアクリレート系ゴム質重合体、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む第2の共重合体と、3.芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む第3の共重合体と、4.芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む第4の共重合体と、5.マレイミド系単位、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む第5の共重合体とを含み、前記第1および第2の共重合体は、アルキルアクリレート系ゴム質重合体の平均粒径が互いに異なり、前記第3および第4の共重合体は、重量平均分子量が互いに異なる。
【0031】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、アルキルアクリレート系ゴム質重合体の平均粒径が互いに異なる第1および第2の共重合体を含むことから、耐候性、耐衝撃性、表面特性、金属蒸着性および金属密着性がいずれも優れた熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。仮に、熱可塑性樹脂組成物が、平均粒径が同一である1種のグラフト共重合体のみを含む場合には、耐衝撃性、表面特性、金属蒸着性および金属密着性がいずれも優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することができない。詳細には、アルキルアクリレート系ゴム質重合体を含む第1の共重合体を含んでいない場合には、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が著しく低下し得る。また、熱可塑性樹脂組成物が、平均粒径が小さいアルキルアクリレート系ゴム質重合体を含む第2の共重合体を含んでいない場合には、表面特性、金属蒸着性および金属密着性が著しく低下し得る。
【0032】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、重量平均分子量が互いに異なる第3および第4の共重合体を含むことから、射出表面特性、金属蒸着性および金属密着性がいずれも優れた熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。仮に、熱可塑性樹脂組成物が、重量平均分子量が同一であるマトリックス共重合体のみを含む場合には、射出表面特性、金属蒸着性および金属密着性がいずれも優れた熱可塑性樹脂組成物を製造することができない。詳細には、熱可塑性樹脂組成物が、重量平均分子量が低い第3の共重合体を含んでいない場合には、表面特性および金属蒸着性が著しく低下し得る。また、熱可塑性樹脂組成物が、重量平均分子量が高い第4の共重合体を含んでいない場合には、表面特性、金属蒸着性および金属密着性が著しく低下し得る。
【0033】
以下、本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物の各構成要素について詳細に説明する。
【0034】
1.第1の共重合体
第1の共重合体は、アルキルアクリレート系ゴム質重合体、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む。
【0035】
前記第1の共重合体は、熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品に、優れた表面特性および金属蒸着性を付与することができ、金属が蒸着された成形品を熱融着するときにも優れた金属密着性を付与することができる。
【0036】
前記第1の共重合体は、アルキルアクリレート系ゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体がグラフト重合されることで製造され得る。
【0037】
前記アルキルアクリレート系ゴム質重合体は、平均粒径が、0.05~0.18μm、0.08~0.18μmまたは0.1~0.15μmであってもよく、このうち、0.1~0.15μmであることが好ましい。上述の範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品に、より優れた表面特性および金属蒸着性を付与することができる。また、金属が蒸着された成形品を熱融着するときに、より優れた金属密着性を付与することができる。上述の範囲未満の場合には、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が著しく低下し得る。また、上述の範囲を超える場合には、熱可塑性樹脂組成物で製造された成形物の表面特性が低下し、これにより金属蒸着性が低下する。また、金属が蒸着された成形品を熱融着するときに、表面に糸跡、気泡跡などが生じて自動車のリアランプハウジング用として利用できなくなることがある。
【0038】
前記アルキルアクリレート系ゴム質重合体は、前記第1の共重合体の全重量に対して、35~60重量%、40~55重量%または45~50重量%含まれ得、このうち、45~50重量%含むことが好ましい。上述の範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品に、より優れた耐衝撃性、表面特性、金属蒸着性を付与することができる。また、金属が蒸着された成形品を熱融着するときに、より優れた金属密着性を付与することができる。
【0039】
前記芳香族ビニル系単位は、前記第1の共重合体の全重量に対して、25~45重量%、30~45重量%または35~40重量%含まれ得、このうち、35~40重量%含まれることが好ましい。上述の範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の加工性がより改善し、熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品の表面特性がより改善することができる。
【0040】
前記ビニルシアン系単位は、前記第1の共重合体の全重量に対して、5~25重量%、5~20重量%または10~15重量%含まれ得、このうち、10~15重量%含まれることが好ましい。上述の範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の機械的物性と耐薬品性がより改善することができる。
【0041】
前記第1の共重合体は、シェルの重量平均分子量が、90,000~180,000g/mol、100,000~170,000g/molまたは110,000~150,000g/molであってもよく、このうち、110,000~150,000g/molであることがより好ましい。上述の範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の流動性をより改善することができる。
【0042】
前記第1の共重合体は、アルキルアクリレート系ゴム質重合体、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体が、塊状重合、乳化重合および懸濁重合からなる群から選択される1種以上の重合法を用いてグラフト重合されて製造され得、このうち、乳化重合を用いてグラフト重合されて製造されることが好ましい。
【0043】
前記第1の共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の全重量に対して、10~35重量%、15~30重量%または20~25重量%で製造されることができ、このうち、20~25重量%含まれることが好ましい。上述の範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品に、より優れた耐衝撃性および表面特性を付与することができる。また、金属が蒸着された成形品を熱融着するときに、より優れた金属密着性を付与することができる。
【0044】
2.第2の共重合体
第2の共重合体は、アルキルアクリレート系ゴム質重合体、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む。
【0045】
前記第2の共重合体は、熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品に、優れた耐衝撃性を付与することができる。
【0046】
前記第2の共重合体は、前記アルキルアクリレート系ゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体をグラフト重合することで製造され得る。
【0047】
前記アルキルアクリレート系ゴム質重合体は、平均粒径が0.2~1.0μm、0.2~0.7μmまたは0.22~0.5μmであってもよく、このうち、0.22~0.5μmが好ましい。上述の範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物に、より優れた耐衝撃性を付与することができる。上述の範囲未満の場合には、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が著しく低下する。また、上述の範囲を超える場合には、熱可塑性樹脂組成物で製造された成形物の表面特性が著しく低下する。
【0048】
前記アルキルアクリレート系ゴム質重合体は、前記第2の共重合体の全重量に対して、35~60重量%、40~55重量%または45~50重量%含まれ得、このうち、45~50重量%含むことが好ましい。上述の範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品に、より優れた耐衝撃性を付与することができる。
【0049】
前記芳香族ビニル系単位は、前記第2の共重合体の全重量に対して、25~45重量%、30~45重量%または35~40重量%含まれ得、このうち、35~40重量%含まれることが好ましい。上述の範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の加工性がより改善し、熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品の表面特性がより改善することができる。
【0050】
前記ビニルシアン系単位は、前記第2の共重合体の全重量に対して、5~25重量%、5~20重量%または10~15重量%含まれ得、このうち、10~15重量%含まれることが好ましい。上述の範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐薬品性がより改善することができる。
【0051】
前記第2の共重合体は、シェルの重量平均分子量が、110,000~170,000g/mol、120,000~160,000g/molまたは130,000~150,000g/molであってもよく、このうち、130,000~150,000g/molであることがより好ましい。上述の範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の流動性および耐衝撃性がより改善することができる。
【0052】
前記第2の共重合体は、アルキルアクリレート系ゴム質重合体、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体が、塊状重合、乳化重合および懸濁重合からなる群から選択される1種以上の重合法を用いてグラフト重合されて製造され得、このうち、乳化重合を用いてグラフト重合されて製造されることが好ましい。
【0053】
前記第2の共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の全重量に対して、1~25重量%、5~20重量%または10~15重量%含まれ得、このうち、10~15重量%含まれることが好ましい。上述の範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品に、より優れた耐衝撃性を付与することができる。
【0054】
3.第3の共重合体
第3の共重合体は、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む。
【0055】
前記第3の共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の物性のバランス、すなわち、耐熱性、耐衝撃性および流動性のバランスを付与することができる。
【0056】
前記第3の共重合体と第4の共重合体の重量平均分子量の差は、100,000~200,000g/molであってもよく、120,000~180,000g/molであることが好ましい。上述の範囲を満たすと、射出表面特性、金属蒸着性および金属密着性がいずれも優れた熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。上述の範囲未満の場合には、衝撃強度が低くてクラックなどが発生し得、上述の範囲を超える場合には、流動性が低くて射出加工性が低下し得る。
【0057】
前記第3の共重合体は、重量平均分子量が、100,000~200,000g/mol、110,000~180,000g/mol、または120,000~160,000g/molであってもよく、このうち、120,000~160,000g/molが好ましい。上述の範囲を満たすと、機械的特性、流動性および耐熱性のバランスをより良好に取ることができる。前記第3の共重合体の重量平均分子量が上述の範囲未満の場合には、耐衝撃性が著しく低下し得る。前記第3の共重合体の重量平均分子量が上述の範囲を超える場合には、機械的特性、流動性および耐熱性のバランスを取り難い可能性がある。
【0058】
前記第3の共重合体は、前記芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を、85:15~60:40、80:20~65:35または75:25~70:30の重量比で含むことができ、このうち、75:25~70:30の重量比で含むことが好ましい。上述の範囲を満たすと、機械的特性、流動性および耐熱性のバランスをより良好に取ることができる。
【0059】
前記第3の共重合体は、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体を、塊状重合、乳化重合および懸濁重合からなる群から選択される1種以上の方法で製造することができ、このうち、塊状重合で製造することが好ましい。
【0060】
前記第3の共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の全重量に対して、10~35重量%、15~30重量%または20~25重量%含まれ得、このうち、20~25重量%含まれることが好ましい。上述の範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の機械的特性、流動性および耐熱性のバランスをより良好に取ることができる。
【0061】
4.第4の共重合体
第4の共重合体は、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む。
【0062】
前記第4の共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の物性のバランス、すなわち、耐熱性、耐衝撃性および流動性のバランスを付与することができる。
【0063】
前記第4の共重合体は、重量平均分子量が、210,000~300,000g/mol、210,000~290,000g/molまたは220,000~280,000g/molであってもよく、このうち、220,000~280,000g/molが好ましい。上述の範囲を満たすと、成形品を熱融着するときに、融着糸の発生が少なく、気泡跡などが形成されない。これにより、自動車のリアランプハウジング用としてより好適であり得る。上述の範囲未満の場合には、金属が蒸着された成形品を熱融着するときに、糸跡、気泡跡などが多量発生することがあり、自動車のリアランプハウジング用として好適でない可能性がある。上述の範囲を超える場合には、流動性が低くなりすぎて、加工性が低下し得る。
【0064】
前記第4の共重合体は、前記芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を、85:15~60:40、80:20~65:35または75:25~70:30の重量比で含むことができ、このうち、75:25~70:30の重量比で含むことが好ましい。上述の範囲を満たすと、耐衝撃性および加工性に優れるという利点がある。
【0065】
前記第4の共重合体は、芳香族ビニル系単量体およびビニルシアン系単量体を、塊状重合、乳化重合および懸濁重合からなる群から選択される1種以上の方法で製造することができ、このうち、懸濁重合で製造することが好ましい。
【0066】
前記第4の共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の全重量に対して、5~30重量%、10~25重量%または15~20重量%含まれ得、このうち、15~20重量%含まれることが好ましい。上述の範囲を満たすと、金属が蒸着された成形品を熱融着するときに、糸跡、気泡跡などが形成されない。これにより、自動車のリアランプハウジング用としてより好適であり得る。
【0067】
5.第5の共重合体
第5の共重合体は、マレイミド系単位、芳香族ビニル系単位およびビニルシアン系単位を含む。
【0068】
前記第5の共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に、耐熱性を付与することができる。
【0069】
前記第5の共重合体は、ガラス転移温度が、150~190℃、160~185℃または170~180℃であってもよく、このうち、170~180℃であることが好ましい。上述の範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物に、より優れた耐熱性を付与することができる。
【0070】
前記マレイミド系単位は、前記第5の共重合体の全重量に対して、25~50重量%、30~45重量%または35~40重量%含むことができ、このうち、35~40重量%含むことが好ましい。上述の範囲を満たすと、第5の共重合体の耐熱性がより改善することができる。
【0071】
前記芳香族ビニル系単位は、前記第5の共重合体の全重量に対して、45~70重量%、50~65重量%または55~60重量%含まれ得、このうち、55~60重量%含まれることが好ましい。上述の範囲を満たすと、第5の共重合体の加工性および外観特性が改善することができる。
【0072】
前記ビニルシアン系単位は、前記第5の共重合体の全重量に対して、0.1~20重量%、1~15重量%または5~10重量%含まれ得、このうち、5~10重量%含まれることが好ましい。上述の範囲を満たすと、前記マレイミド系単位と芳香族ビニル系単位の相溶性が改善することができる。
【0073】
前記第5の共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の全重量に対して、15~40重量%、20~35重量%または25~30重量%含まれ得、このうち、25~30重量%含まれることが好ましい。上述の範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性がより改善することができる。
【0074】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物で製造され、拡散反射率が2.5%以下であり、熱融着の際に糸が発生せず、ASTM D256に準じた衝撃強度(1/4 In)が7kg・cm/cm以上である成形品を提供することができる。上述の範囲を満たすと、金属蒸着性、金属密着性、および耐衝撃性に優れた成形品を提供することができる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に実現され得、本明細書で説明する実施例に限定されない。
【0076】
製造例1:第1の共重合体の製造
平均粒径が0.12μmであるブチルアクリレートゴム質重合体50重量部、スチレン36.5重量部およびアクリロニトリル13.5重量部をグラフト乳化重合し、グラフト共重合体を製造した。この際、取得したグラフト共重合体のシェルの重量平均分子量は、120,000g/molであった。
【0077】
製造例2:第2の共重合体の製造
平均粒径が0.22μmであるブチルアクリレートゴム質重合体50重量部、スチレン36.5重量部およびアクリロニトリル13.5重量部をグラフト乳化重合し、グラフト共重合体を製造した。この際、取得したグラフト共重合体のシェルの重量平均分子量は、140,000g/molであった。
【0078】
製造例3:第3の共重合体の製造
145℃の反応器にスチレン73重量部、アクリロニトリル27重量部、開始剤としてt‐ブチルペルオキシド0.1重量部、分子量調節剤としてt‐ドデシルメルカプタン0.05重量部および反応溶媒としてトルエン20重量部を一定の速度で2時間連続投入しながら塊状重合し、重合生成物を製造した。取得した重合生成物を脱揮発槽に移送し、未反応の単量体および溶媒を回収および除去し、二軸押出機に投入してペレット状の共重合体を製造した。この際、共重合体の重量平均分子量は、125,000g/molであった。
【0079】
製造例4:第4の共重合体の製造
反応器にスチレン73重量部、アクリロニトリル27重量部、イオン交換水100重量部、開始剤として1,1’‐アゾビス(シクロヘキサン‐1‐カルボニトリル)0.1重量部、懸濁剤としてトリカルシウムホスフェート2重量部および分子量調節剤としてt‐ドデシルメルカプタン0.3重量部を投入した。前記反応器を92℃に昇温させた後、360分間重合を行ってから終了した。次いで、前記反応器にギ酸を投入して重合溶液のpHが2.5になるようにした後、水洗、脱水および乾燥して共重合体を製造した。この際、共重合体の重量平均分子量は、270,000g/molであった。
【0080】
実施例および比較例
下記の実施例および比較例で使用された成分の仕様は、以下のとおりである。
【0081】
1)第1の共重合体:製造例1で製造されたグラフト共重合体を使用した。
2)第2の共重合体:製造例2で製造されたグラフト共重合体を使用した。
3)第3の共重合体:製造例3で製造された共重合体を使用した。
4)第4の共重合体:製造例4で製造された共重合体を使用した。
5)第5の共重合体:NIPPON SHOKUBAI社製のPAS 1460(N‐フェニルマレイミド/スチレン/アクリロニトリル共重合体、ガラス転移温度:167℃)を使用した。
【0082】
上述の成分を、下記[表1]に記載の含量通りに混合し、攪拌して、熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0083】
実験例1
実施例および比較例の熱可塑性樹脂組成物を射出して試験片を作製し、下記の方法で物性を評価し、その結果を下記[表1]に記載した。
【0084】
1)衝撃強度(kg・cm/cm、1/4 In):ASTM D256に準じて測定した。
【0085】
2)HDT(℃):ASTM D648‐7に準じて、1/4 In、18.6kgf、120℃/hrの条件下で測定した。
【0086】
実験例2
実施例および比較例の熱可塑性樹脂組成物を射出し、10×10cmに作製した試験片の上に真空蒸着装置(商品名:DSC‐500A、大韓真空社製)を用いて、表面にAlを真空蒸着した。Al膜が形成された試験片に対して、下記のような方法で物性を測定し、その結果を[表1]に示した。
【0087】
3)拡散反射率(%):表面反射率測定装置(商品名:TR1100A、製造社:東京電色)を用いて拡散反射率を測定した。
【0088】
4)常温熱融着性:Al膜が形成された試験片を常温で24時間保管した後、240℃の熱板にて接触熱融着試験を20秒間行い、肉眼で融着面を観察した。
【0089】
5)湿潤熱融着性:Al膜が形成された試験片を、50℃、相対湿度95%の条件下で保管した後、240℃の熱板にて接触熱融着試験を20秒間行い、肉眼で融着面を観察した。
【0090】
◎:糸の発生がなく、気泡の発生なし
○:糸の発生がなく、気泡が少量発生
△:短い糸が発生し、気泡が少量発生
×:長い糸が発生し、気泡が多量発生
【0091】
【0092】
表1を参照すると、実施例1~実施例4の場合、衝撃強度が7kg・cm/cm以上であることから耐衝撃性に優れ、HDTが101℃以上であることから耐熱性に優れ、拡散反射率が2.5%以下であることから射出表面特性およびアルミニウム蒸着性に優れ、熱融着性の評価で糸および気泡が発生していないことからアルミニウム密着性がいずれも優れることを確認することができた。
【0093】
実施例1~実施例4の結果から、請求項1の構成要素を最適の割合で混合したときに、耐衝撃性、耐熱性、アルミニウム蒸着性およびアルミニウム密着性がいずれも優れることを確認することができた。
【0094】
一方、比較例1の場合、第1の共重合体を含んでいないため、射出表面特性が低下してアルミニウム蒸着性が低下したことを確認することができた。また、熱融着性も低下したことを確認することができた。比較例2の場合、第2の共重合体を含んでいないため、衝撃強度が著しく低下したことを確認することができた。比較例3の場合、第3の共重合体を含んでいないため、拡散反射率が高くなって射出表面特性およびアルミニウム蒸着性が低下したことを確認することができた。比較例4の場合、第4の共重合体を含んでいないため、熱融着性が低下したことを確認することができた。比較例5の場合、第5の共重合体を含んでいないため、耐熱性が低下し、拡散反射率が高くなって射出表面特性およびアルミニウム蒸着性が低下したことを確認することができた。比較例6の場合、第4および第5の共重合体をいずれも含んでいないため、耐熱性が低下し、拡散反射率が高くなって射出表面特性およびアルミニウム蒸着性が低下し、熱融着性も低下したことを確認することができた。