(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/24 20060101AFI20220314BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220314BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CEY
B01J20/26 D
B01J20/30
(21)【出願番号】P 2020529204
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 KR2018014974
(87)【国際公開番号】W WO2019117513
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2017-0169497
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0148842
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】パク、ボヒ
(72)【発明者】
【氏名】ナム、テ-ウ
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ヨン-チェ
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ヨン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、チユン
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-526502(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054731(WO,A1)
【文献】特開2009-035657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28;99/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C08F 2/00- 2/60
B01J 20/00-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤が架橋重合されたベース樹脂(base resin)を準備する段階(段階1);
前記ベース樹脂に
、前記ベース樹脂100重量部に対して0.02~0.5重量部のHLBが0以上6以下である疎水性物質、
HLBが8以上である親水性高分子、および表面架橋剤を混合する段階(段階2);および
前記段階2の混合物を昇温して前記ベース樹脂に対する表面改質を行う段階(段階3);
を含む、高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記段階2において、前記疎水性物質を先に前記ベース樹脂に乾式で混合し、次いで前記表面架橋剤、および親水性高分子を混合する、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記表面架橋剤および親水性高分子は、水に溶解して表面架橋溶液状態で混合する、請求項2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記疎水性物質は、溶融温度(melting point)が前記段階3の昇温温度以下である、請求項1~3のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記疎水性物質は、グリセリルステアレート(glyceryl stearate)、グリコールステアレート(glycol stearate)、マグネシウムステアレート(magnesium stearate)、グリセリルラウレート(glyceryl laurate)、ソルビタンステアレート(sorbitan stearate)、ソルビタントリオレート(sorbitan trioleate)、およびPEG-4ジラウレート(PEG-4 dilaurate)からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1~4のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記親水性高分子は、デキストリン系化合物、セルロース系化合物、ポリビニルアルコール系化合物、およびポリエチレングリコール系化合物からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1~
5のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記疎水性物質は、グリセリルステアレート(glyceryl stearate)であり、前記親水性高分子は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)である、請求項1~
6のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記親水性高分子は、前記ベース樹脂100重量部に対して0.001~0.5重量部で混合する、請求項1~
7のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記段階3は、90~190℃の温度で行う、請求項1~
8のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記段階1は、
酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、内部架橋剤、および重合開始剤を含むモノマー組成物を重合して含水ゲル状重合体を形成する段階;
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階;
前記乾燥した重合体を粉砕する段階;および
前記粉砕した重合体を分級する段階を含む、請求項1~
9のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記高吸水性樹脂は、下記式1により求められる通液性(permeability、単位:秒)が30秒以下である、請求項1~
10のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法:
【数1】
前記式1において、
T1は、
内径20mmであり、下端にglassフィルタが装着されたクロマトグラフィ管内に分級(30#~50#)した高吸水性樹脂試料0.2±0.0005gを入れて
0.9%塩水を加えて塩水体積が50mlになるようにした後、30分間放置後、液面高さが40mlから20mlまで減るのにかかる時間であり、Bは、塩水が満たされたクロマトグラフィ管で液面高さが40mlから20mlまで減るのにかかる時間である。
【請求項12】
酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体が架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂;および
前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、前記架橋重合体が表面架橋剤を介して追加架橋されている表面改質層を含み、
前記表面改質層は、
前記ベース樹脂100重量部に対して0.02~0.5重量部のHLBが0以上6以下である疎水性物質および
HLBが8以上である親水性高分子を含み、
下記式1により求められる通液性(permeability、単位:秒)が30秒以下である、高吸水性樹脂:
【数2】
前記式1において、
T1は、
内径20mmであり、下端にglassフィルタが装着されたクロマトグラフィ管内に分級(30#~50#)した高吸水性樹脂試料0.2±0.0005gを入れて
0.9%塩水を加えて塩水体積が50mlになるようにした後、30分間放置後、液面高さが40mlから20mlまで減るのにかかる時間であり、Bは、塩水が満たされたクロマトグラフィ管で液面高さが40mlから20mlまで減るのにかかる時間である。
【請求項13】
前記疎水性物質は、グリセリルステアレート(glyceryl stearate)、グリコールステアレート(glycol stearate)、マグネシウムステアレート(magnesium stearate)、グリセリルラウレート(glyceryl laurate)、ソルビタンステアレート(sorbitan stearate)、ソルビタントリオレート(sorbitan trioleate)、およびPEG-4ジラウレート(PEG-4 dilaurate)からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項
12に記載の高吸水性樹脂。
【請求項14】
前記高吸水性樹脂は、前記高吸水性樹脂1gを水道水100gに浸漬させて10分間膨潤させた後、膨潤した前記高吸水性樹脂を水道水に浸漬させた最初時点から1時間濾過紙上で放置してから、前記高吸水性樹脂から前記濾過紙に再び染み出た水の重量で定義される再湿潤特性(無加圧水道水短期再湿潤)が2.0g以下である、請求項
12または
13に記載の高吸水性樹脂。
【請求項15】
前記高吸水性樹脂は、前記高吸水性樹脂4gを水道水200gに浸漬させて6時間膨潤させた後、膨潤した前記高吸水性樹脂を0.75psiの圧力下に1分間濾過紙上で放置してから、前記高吸水性樹脂から前記濾過紙に再び染み出た水の重量で定義される再湿潤特性(加圧水道水再湿潤)が1.5g以下である、請求項
12~
14のいずれかに記載の高吸水性樹脂。
【請求項16】
前記高吸水性樹脂は、前記高吸水性樹脂4gを塩水100gに浸漬させて2時間膨潤させた後、膨潤した前記高吸水性樹脂を0.75psiの圧力下に1分間濾過紙上で放置してから、前記高吸水性樹脂から前記濾過紙に再び染み出た塩水の重量で定義される再湿潤特性(加圧塩水再湿潤)が5.0g以下である、請求項
12~
15のいずれかに記載の高吸水性樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は、2017年12月11日付韓国特許出願第10-2017-0169497号および2018年11月27日付韓国特許出願第10-2018-0148842号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれている。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂およびその製造方法に関する。より詳細には、向上した再湿潤(rewet)特性および通液性を有する高吸水性樹脂およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer,SAP)とは、自体重量の5百ないし1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であり、開発業者ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)等それぞれ異なる名前で命名している。前記のような高吸水性樹脂は、生理用具として実用化され始め、現在は子供用紙おむつや生理用ナプキンなど衛生用品の他に園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における鮮度保持剤、および湿布用などの材料として広く使われている。
【0004】
このような高吸水性樹脂は、最も多い場合、おむつや生理用ナプキンなど衛生材分野において広く使われているが、このような用途のためには水分などに対する高い吸収力を示す必要があり、外部の圧力にも吸収した水分が抜け出ず、これに加えて、水を吸収して体膨張(膨潤)した状態でも形態をよく維持して優れた通液性(permeability)を示す必要がある。
【0005】
しかし、前記高吸水性樹脂の基本的な吸収力および保水力を現わす物性である保水能(CRC)と、外部の圧力にも吸収された水分をよく保持する特性を現わす加圧下吸収能(AUL)は、共に向上させることが難しいと知られている。これは高吸水性樹脂の全体的な架橋密度が低く制御される場合、保水能は相対的に高くなるが、架橋構造が粗くなってゲル強度が低くなることにより加圧下吸収能は低下し得るからである。逆に、架橋密度を高く制御して加圧下吸収能を向上させる場合、過密な架橋構造の間に水分が吸収されにくい状態になって基本的な保水能が低下し得る。上述した理由によって、保水能および加圧下吸収能が共に向上した高吸水性樹脂を提供するのに限界がある。
【0006】
しかし、最近おむつや生理用ナプキンなどのような衛生材の薄膜化に伴い高吸水性樹脂により高い吸収性能が求められている。その中でも、相反する物性である保水能と加圧吸収能の同時向上と通液性の改善などが重要な課題として台頭している。
【0007】
また、おむつや生理用ナプキンなどの衛生材にはユーザーの重量によって圧力が加えられる。特に、おむつや生理用ナプキンなどの衛生材に適用される高吸水性樹脂が液体を吸収した以後、これにユーザーの重量による圧力が加えられると高吸水性樹脂に吸収された一部の液体が再び染み出る再湿潤(rewet)現象と、小便が漏れる漏出(leakage)現象が発生し得る。
【0008】
したがって、このような再湿潤現象を抑制するため様々な試みが行われている。しかし、まだ再湿潤現象を効果的に抑制できる具体的な方案が提示されていない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のような従来技術の問題を解決するために、本発明は再湿潤および小便漏出現象が抑制される高吸水性樹脂およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明の一側面によれば、
酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤が架橋重合されたベース樹脂(base resin)を準備する段階(段階1);
前記ベース樹脂にHLBが0以上6以下である疎水性物質、親水性高分子、および表面架橋剤を混合する段階(段階2);および
前記段階2の混合物を昇温して前記ベース樹脂に対する表面改質を行う段階(段階3);
を含む、高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明の他の一側面によれば、
酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体が架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂;および
前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、前記架橋重合体が表面架橋剤を介して追加架橋されている表面改質層を含み、
前記表面改質層は、HLBが0以上6以下である疎水性物質および親水性高分子を含み、
下記式1により求められる通液性(permeability、単位:秒)が30秒以下である高吸水性樹脂を提供する:
【数1】
前記式1において、
T1は、クロマトグラフィ管内に分級(30#~50#)した高吸水性樹脂試料0.2±0.0005gを入れて塩水を加えて塩水体積が50mlになるようにした後、30分間放置後、液面高さが40mlから20mlまで減るのにかかる時間であり、Bは、塩水が満たされたクロマトグラフィ管で液面高さが40mlから20mlまで減るのにかかる時間である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高吸水性樹脂およびその製造方法によれば、優れた諸般吸収物性と通液性を示し、かつ再湿潤現象および小便漏出現象が抑制された高吸水性樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有し得るため特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0014】
以下、本発明の一実施形態による高吸水性樹脂およびその製造方法について詳細に説明する。
【0015】
本発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、
酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤が架橋重合されたベース樹脂(base resin)を準備する段階(段階1);
前記ベース樹脂に、HLBが0以上6以下である疎水性物質、親水性高分子、および表面架橋剤を混合する段階(段階2);および
前記段階2の混合物を昇温して前記ベース樹脂に対する表面改質を行う段階(段階3);
を含む。
【0016】
本発明の明細書で、「ベース樹脂」または「ベース樹脂粉末」は、水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された重合体を乾燥および粉砕して粒子(particle)またはパウダー(powder)形態で作ったものであり、後述する表面改質または表面架橋段階を行っていない状態の重合体を意味する。
【0017】
アクリル酸系単量体の重合反応によって収得される含水ゲル状重合体は、乾燥、粉砕、分級、表面架橋などの工程を経て粉末状の製品である高吸水性樹脂として市販される。
【0018】
最近、高吸水性樹脂において吸収能、通液性のような諸般吸収物性だけでなく実際のおむつが使われる状況において表面の乾燥(dryness)状態がどれほど保持されるかはおむつの特性を計る重要な尺度である。
【0019】
本発明の一実施形態による製造方法によって収得される高吸水性樹脂は、保水能、加圧吸収能、通液性などの物性に優れるため、優れた諸般吸収性能を示し、塩水によって膨潤した後にも乾燥した状態が維持され、高吸水性樹脂に吸収された小便が再び染み出る再湿潤(rewet)および小便漏出(leakage)現象を効果的に防止できることを確認して本発明に至った。
【0020】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法において、まず前記高吸水性樹脂の原料物質であるモノマー組成物は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含むモノマー組成物を重合して含水ゲル状重合体を収得し、これを乾燥、粉砕、分級してベース樹脂(base resin)を準備する(段階1)。
【0021】
これについては下記でより詳細に説明する。
【0022】
前記高吸水性樹脂の原料物質であるモノマー組成物は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および重合開始剤を含む。
【0023】
前記アクリル酸系単量体は、下記化学式1で表される化合物である:
【0024】
【0025】
前記化学式1において、
R1は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキルグループであり、
M1は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0026】
好ましくは、前記アクリル酸系単量体は、アクリル酸、メタクリル酸ならびにこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機塩からなる群より選ばれる1種以上を含む。
【0027】
ここで、前記アクリル酸系単量体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであり得る。好ましくは前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのようなアルカリ物質で部分的に中和させたものが使用され得る。この時、前記アクリル酸系単量体の中和度は、40~95モル%、または40~90モル%、または45~85モル%であり得る。前記中和度の範囲は、最終物性に応じて調整され得る。しかし、前記中和度が過度に高いと中和した単量体が析出されて円滑な重合を行うことが難しく、逆に中和度が過度に低いと高分子の吸収力が大きく落ちるだけでなく取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を現わし得る。
【0028】
前記アクリル酸系単量体の濃度は、前記高吸水性樹脂の原料物質および溶媒を含むモノマー組成物に対して約20~約60重量%、好ましくは約40~約50重量%であり得、重合時間および反応条件などを考慮して適切な濃度にし得る。ただし、前記単量体の濃度が過度に低くなると高吸水性樹脂の収率が低く経済性に問題が生じ得、逆に濃度が過度に高くなると単量体の一部が析出または重合された含水ゲル状重合体の粉砕時の粉砕効率が低くなるなど工程上問題が生じ得、高吸水性樹脂の物性が低下し得る。
【0029】
本発明の高吸水性樹脂製造方法において重合時に使用される重合開始剤は、高吸水性樹脂の製造に一般に使用されるものであれば特に限定されない。
【0030】
具体的に、前記重合開始剤は、重合方法によって熱重合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を使用することができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などの照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生するので、さらに熱重合開始剤を含むこともできる。
【0031】
前記光重合開始剤は、紫外線のような光によってラジカルを形成できる化合物であればその構成の限定なしに使用することができる。
【0032】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選ばれる一つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体例として、商用のlucirin TPO、すなわち、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethyl-benzoyl-trimethyl phosphine oxide)を使用することができる。より多様な光開始剤についてはReinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」p115によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0033】
前記光重合開始剤は、前記モノマー組成物に対して約0.01~約1.0重量%の濃度で含まれ得る。このような光重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり得、光重合開始剤の濃度が過度に高いと高吸水性樹脂の分子量が小さく物性が不均一になる。
【0034】
また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選ばれる一つ以上を使用することができる。具体的に、過硫酸塩系開始剤の例としては過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na2S2O8)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K2S2O8)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH4)2S2O8)等があり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N、N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N、N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))等がある。より多様な熱重合開始剤についてはOdianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley、1981)」、p203によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0035】
本発明の一実施例によれば、前記モノマー組成物は、高吸水性樹脂の原料物質として内部架橋剤を含む。前記内部架橋剤としては前記アクリル酸系単量体と反応できる官能基を1個以上有し、、エチレン性不飽和基を1個以上有する架橋剤;あるいは前記アクリル酸系単量体の置換基および/または単量体の加水分解によって形成された置換基と反応できる官能基を2個以上有する架橋剤を使用することができる。
【0036】
前記内部架橋剤の具体的な例としては、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、およびエチレンカーボネートからなる群より選ばれた1種以上を使用することができる。
【0037】
このような内部架橋剤は、前記モノマー組成物に対して約0.01~約2重量%の濃度で含まれ、重合された高分子を架橋させることができる。
【0038】
本発明の製造方法において、高吸水性樹脂の前記モノマー組成物は、必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含み得る。
【0039】
上述した酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、光重合開始剤、熱重合開始剤、内部架橋剤および添加剤のような原料物質は溶媒に溶解したモノマー組成物溶液の形態で準備されることができる。
【0040】
この時使用できる前記溶媒は、上述した成分を溶解できるものであれば、その構成の限定なしに使用することができ、例えば水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどで選ばれた1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
前記溶媒は、モノマー組成物の総含有量に対して上述した成分を除いた残量で含まれ得る。
【0042】
一方、このようなモノマー組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を形成する方法も通常用いられる重合方法であれば、特に構成の限定はない。
【0043】
具体的に、重合方法は、重合エネルギー源によって大きく熱重合および光重合に分けられ、通常熱重合を行う場合、ニーダー(kneader)のような攪拌軸を有する反応器で行われ、光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行われるが、上述した重合方法は一例であり、本発明は上述した重合方法に限定されない。
【0044】
一例として、前述したように攪拌軸を備えたニーダー(kneader)のような反応器に、熱風を供給したり反応器を加熱して熱重合をして得られた含水ゲル状重合体は、反応器に備えられた攪拌軸の形態によって、反応器の排出口に排出される含水ゲル状重合体は数センチメートル~数ミリメートル形態であり得る。具体的に、得られる含水ゲル状重合体の大きさは、注入されるモノマー組成物の濃度および注入速度などによって多様であるが、通常重量平均粒径が2~50mmである含水ゲル状重合体が得られる。
【0045】
また、前述したように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で光重合を行う場合、通常得られる含水ゲル状重合体の形態はベルトの幅を有するシート状の含水ゲル状重合体であり得る。この時、重合体シートの厚さは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度によって変わるが、通常約0.5~約5cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度の単量体組成物を供給する場合、生産効率が低いため好ましくなく、シート状の重合体厚さが5cmを超える場合には過度に厚い厚さによって、重合反応がすべての厚さにわたって等しく起きない。
【0046】
この時、このような方法で得られた含水ゲル状重合体の通常含水率は、約40~約80重量%であり得る。一方、本明細書全体において「含水率」は、全体含水ゲル状重合体の重量に対して占める水分の含有量であり、含水ゲル状重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱によって重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算した値で定義する。この時、乾燥条件は、常温で約180℃まで温度を上昇させた後180℃に維持する方式であり、総乾燥時間は、温度上昇段階5分を含んで20分に設定して含水率を測定する。
【0047】
次に、得られた含水ゲル状重合体を乾燥する段階を行う。
【0048】
この時、必要に応じて前記乾燥段階の効率を上げるために乾燥前に粗粉砕する段階をさらに経ることができる。
【0049】
この時、用いられる粉砕機の構成は限定しないが、具体的には、竪型粉砕機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、ロータリーカッターミル(Rotary cutter mill)、カッターミル(Cutter mill)、ディスクミル(Disc mill)、シュレッドクラッシャー(Shred crusher)、クラッシャー(Crusher)、チョッパー(chopper)およびディスクカッター(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選ばれるいずれか一つを含み得るが、上述した例に限定されない。
【0050】
この時、粉砕段階は含水ゲル状重合体の粒径が約2~約10mmになるように粉砕し得る。
【0051】
粒径を2mm未満に粉砕することは、含水ゲル状重合体の高い含水率のため技術的に容易でなく、また、粉砕した粒子間に互いに凝集する現象が現れ得る。一方、粒径が10mm超に粉砕する場合、今後行われる乾燥段階の効率増大の効果が微々たる。
【0052】
上記のように粉砕あるいは粉砕段階を経ていない重合直後の含水ゲル状重合体に対して乾燥を行う。この時、前記乾燥段階の乾燥温度は、約150~約250℃であり得る。乾燥温度が150℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなって最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に重合体の表面のみ乾燥され、今後行われる粉砕工程で微粉が生じ得、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましい前記乾燥は、約150~約200℃の温度であり、さらに好ましくは約160~約180℃の温度で行われる。
【0053】
一方、乾燥時間の場合には工程効率などを考慮し、約20~約90分間行われるが、これに限定されない。
【0054】
前記乾燥段階の乾燥方法も含水ゲル状重合体の乾燥工程として通常用いられる方法であれば、その構成の限定なしに選択して用いることができる。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。このような乾燥段階の進行後の重合体の含水率は、約0.1~約10重量%であり得る。
【0055】
次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥した重合体を粉砕する段階を行う。
【0056】
粉砕段階後得られる重合体粉末は、粒径が約150~約850μmであり得る。このような粒径で粉砕するために用いられる粉砕機は具体的に、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)等が用いられるが、本発明は上述した例に限定されるものではない。
【0057】
そして、このような粉砕段階以後の最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後得られる重合体粉末を粒径に応じて分級する別途の過程を経ることができ、前記重合体粉末を粒径範囲に応じて一定の重量比になるように分級することができる。
【0058】
次に、前記ベース樹脂にHLBが0以上6以下である疎水性物質、親水性高分子、および表面架橋剤を混合する(段階2)。
【0059】
一般的な高吸水性樹脂の製造方法において、乾燥および粉砕した重合体、すなわちベース樹脂に表面架橋剤を含む表面架橋溶液を混合した後、これら混合物に熱を加えて昇温することによって前記粉砕した重合体に対して表面架橋反応を行う。
【0060】
前記表面架橋段階は、表面架橋剤の存在下で前記粉砕した重合体の表面に架橋反応を誘導することによって、より向上した物性を有する高吸水性樹脂を形成させる段階である。このような表面架橋により前記粉砕した重合体粒子の表面には表面架橋層(表面改質層)が形成される。
【0061】
一般的に、表面架橋剤は、高吸水性樹脂粒子の表面に塗布されるので、表面架橋反応は高吸水性樹脂粒子の表面上で起き、これは粒子内部には実質的に影響を及ぼさず、かつ粒子の表面上での架橋結合性は改善させる。したがって、表面架橋結合した高吸水性樹脂粒子は、内部でより表面付近でさらに高い架橋結合度を有する。
【0062】
しかし、このような表面架橋反応によって加圧吸収能と通液性(permeability)は改善することができるが、再湿潤特性は劣り得る。
【0063】
ところが、本発明の製造方法によれば、ベース樹脂に表面架橋剤を混合して表面架橋反応を行うために昇温する前に疎水性物質と親水性高分子を前記ベース樹脂に混合して再湿潤特性と通液性改善を同時に達成することができる。
【0064】
前記疎水性物質は、HLBがその下限値として0以上、または1以上、または2以上であり、かつ上限値として6以下、または5以下、または5.5以下を満足する物質を使用することができる。また、前記疎水性物質は、表面架橋反応時に溶けてベース樹脂の表面改質層に位置しなければならないので溶融温度(melting point)が表面架橋反応温度以下である物質を使用することができる。
【0065】
使用可能な疎水性物質としては例えば、グリセリルステアレート(glyceryl stearate)、グリコールステアレート(glycol stearate)、マグネシウムステアレート(magnesium stearate)、グリセリルラウレート(glyceryl laurate)、ソルビタンステアレート(sorbitan stearate)、ソルビタントリオレート(sorbitan trioleate)、またはPEG-4ジラウレート(PEG-4 dilaurate)などが挙げられ、好ましくはグリセリルステアレートを使用できるが、これに制限されるものではない。
【0066】
前記疎水性物質は、前記ベース樹脂の表面の表面改質層内に分布して高吸水性樹脂が液体を吸収して膨潤する過程で膨潤した樹脂粒子が高くなった圧力により互いに凝集するかまたは固まることを防止し、表面に疎水性を付与することによって液体の透過および拡散をより容易にすることができる。したがって、高吸水性樹脂の再湿潤特性の改善に寄与することができる。また、疎水性物質が表面にコートされているので、内部に吸収された液体が膨潤した樹脂の外側に移動しにくくさせる。したがって、高吸水性樹脂の再湿潤特性の改善に寄与することができる。
【0067】
一方、このような疎水性物質の導入によって高吸水性樹脂の再湿潤特性は、改善することができるが、表面の疎水性が大きくなることによってぬれ性(wetting)が悪くなる。したがって、過量の液体が瞬間的に注入される場合、漏出(leakage)現象が発生する恐れがある。
【0068】
一方、本発明の製造方法によれば、ベース樹脂に前記疎水性物質と共に親水性高分子を共に導入する。前記親水性高分子は、高吸水性樹脂のぬれ性を向上する役割をすることによって再湿潤特性を改善しておむつにおける小便漏出現象を防止することができる。
【0069】
前記疎水性物質は、前記ベース樹脂100重量部に対して約0.02重量部以上、または約0.025重量部以上、または約0.05重量部以上であり、かつ約0.5重量部以下、または約0.3重量部以下、または約0.1重量部以下になるように混合することができる。前記疎水性物質の含有量が0.02重量部未満で過度に少ないと再湿潤特性の改善には不足し、0.5重量部を超えて過度に多く含まれる場合、ベース樹脂と疎水性物質が互いに脱離して再湿潤改善の効果がないか不純物として作用する問題があり得るので、このような観点から前記重量部の範囲が好ましい。
【0070】
前記親水性高分子は、水に溶解する高分子化合物であり、動物系、植物系、多糖類系などの天然高分子、セルロース誘導体、合成高分子などをいずれも用いることができるが、環境、安全、衛生問題の観点から直接人体に接触したときにも安全性に優れた高分子が好ましく、その例としてはデキストリン系化合物、セルロース系化合物、ポリビニルアルコール系化合物、またはポリエチレングリコール系化合物などを使用することができる。
【0071】
また、前記親水性高分子は、HLBが8以上、または9以上、または10以上、または12以上、または13以上であり、かつ20以下、または19以下、または18以下であることを使用することができる。HLBが前記範囲にあるとき、疎水性物質によるぬれ性の下落を補完して本発明が目的とする再湿潤およびぬれ性の改善効果の発現が容易である。
【0072】
また、前記親水性高分子は、これに限定されるものではないが、重量平均分子量(Mw)が約600~約20,000g/molであるものを使用することができる。
【0073】
前記親水性高分子は、前記ベース樹脂100重量部に対して約0.001重量部以上、または約0.005重量部以上、または約0.01重量部、または約0.02重量部以上であり、かつ約0.5重量部以下、または約0.3重量部以下、または約0.1重量部以下になるように混合することができる。前記親水性高分子の含有量が過度に少ないとぬれ性は改善されず、過度に多く含まれる場合、再湿潤特性に悪影響を与え得るので、このような観点から前記重量部の範囲が好ましい。
【0074】
また、本発明の一実施例によれば、前記疎水性物質および親水性高分子は、約1:0.1~約1:10、または約1:0.1~約1:5、または約1:0.5~約1:2の重量比で使用することができる。前記重量比が1:0.1未満であると、親水性高分子によるぬれ性の改善はわずかであり、重量比が1:10を超えて親水性高分子が相対的に過度に多く含まれると、再湿潤特性の改善効果が低くなるので、このような観点から前記重量比の範囲が好ましい。
【0075】
前記疎水性物質および親水性高分子を混合する方法は、前記ベース樹脂に等しく混合できる方法であれば特に限定せず、適切に採択して使用することができる。
【0076】
例えば、前記疎水性物質は、前記ベース樹脂に表面架橋剤を含む表面架橋溶液を混合する前に乾式で混合したり、前記表面架橋溶液に先に分散させて表面架橋溶液と共にベース樹脂に混合する方式で混合することができる。または前記表面架橋溶液とは別に、前記疎水性物質を溶融温度以上に加熱して溶液状態で混合することもできる。
【0077】
また、前記親水性高分子も前記ベース樹脂に表面架橋剤を含む表面架橋溶液を混合する前に別に混合したり、前記表面架橋溶液に溶解して表面架橋剤とともにベース樹脂に混合する方式で混合することができる。
【0078】
前記表面架橋剤添加時、追加で水を共に混合して表面架橋溶液の形態で添加することができる。水を添加する場合、表面架橋剤が重合体にまんべんなく分散される利点がある。この時、追加される水の含有量は、表面架橋剤の均等な分散を誘導して重合体粉末の固まり現象を防止すると同時に表面架橋剤の表面浸透の深さを最適化することを目的として重合体100重量部に対して約1~約10重量部の割合で添加されることが好ましい。
【0079】
また、前記表面架橋剤としては重合体が有する官能基と反応可能な化合物であればその構成の限定はない。
【0080】
好ましくは生成される高吸水性樹脂の特性を向上させるために、前記表面架橋剤として多価アルコール化合物;エポキシ化合物;ポリアミン化合物;ハロエポキシ化合物;ハロエポキシ化合物の縮合産物;オキサゾリン化合物類;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;環状ウレア化合物;多価金属塩;およびアルキレンカーボネート化合物からなる群より選ばれる1種以上を使用することができる。
【0081】
具体的に、多価アルコール化合物の例としてはモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-またはポリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、ポリグリセロール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、および1,2-シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる1種以上を使用することができる。
【0082】
また、エポキシ化合物としてはエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびグリシドールなどを使用することができ、ポリアミン化合物類としてはエチレンジアミン、ジエチルレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミンおよびポリアミドポリアミンからなる群より選ばれる1種以上を使用することができる。
【0083】
そして、ハロエポキシ化合物としてはエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンおよびα-メチルエピクロロヒドリンを使用することができる。一方、モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物としては例えば2-オキサゾリジノンなどを使用することができる。
【0084】
そして、アルキレンカーボネート化合物としてはエチレンカーボネートなどを使用することができる。これらをそれぞれ単独で使用することもでき互いに組み合わせて使用することもできる。一方、表面架橋工程の効率を上げるために、これらの表面架橋剤のうち1種以上の炭素数2~10の多価アルコール化合物類を1種以上含んで使用することができる。
【0085】
前記添加される表面架橋剤の含有量は、具体的には追加される表面架橋剤の種類や反応条件に応じて適切に選択できるが、通常ベース樹脂100重量部に対して、約0.001~約5重量部、好ましくは約0.01~約3重量部、さらに好ましくは約0.05~約2重量部を使用することができる。
【0086】
表面架橋剤の含有量が過度に少ないと、表面架橋反応がほとんど起きず、重合体100重量部に対して5重量部を超える場合、過度な表面架橋反応の進行により吸収能力および物性の低下現象が生じ得る。
【0087】
一方、上述した前記表面架橋剤の他に多価金属塩、例えば、アルミニウム塩、より具体的にはアルミニウムの硫酸塩、カリウム塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩および塩酸塩からなる群より選ばれた1種以上をさらに含み得る。
【0088】
このような多価金属塩は追加で使用することにより、一実施形態の方法で製造された高吸水性樹脂の通液性などをさらに向上させることができる。このような多価金属塩は、前記表面架橋剤とともに表面架橋溶液に添加され得、前記ベース樹脂100重量部に対して0.01~4重量部の含有量で使用されることができる。
【0089】
次に、前記ベース樹脂、表面架橋剤、疎水性物質、および親水性高分子の混合物に熱を加えて昇温することによって前記ベース樹脂に対して表面改質段階を行う(段階3)。
【0090】
前記表面改質段階は、約90~約190℃、好ましくは約100~約180℃の温度で約10~約90分、好ましくは約20~約70分間加熱させることによって行う。架橋反応温度が90℃未満であるか反応時間が過度に短い場合、表面架橋反応が正しく起きず透過度が低くなり得、190℃を超えるか反応時間が非常に長い場合、保水能が低下する問題が生じ得る。
【0091】
表面改質反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としてはスチーム、熱風、熱い油のような昇温した流体などを使用できるが、本発明はこれに限定されるものではなく、また供給される熱媒体の温度は熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択することができる。一方、直接供給される熱源としては電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、本発明は上述した例に限定されるものではない。
【0092】
前記のような表面改質段階によって、前記ベース樹脂の表面には表面架橋剤とベース樹脂が有する官能基と反応して形成された表面架橋構造が形成され、前記表面架橋構造内に前述した疎水性物質および親水性高分子が等しく分布した表面改質層が形成されることができる。
【0093】
したがって、前記本発明の製造方法で製造された高吸水性樹脂は、このような表面改質層により保水能と加圧吸収能などの物性を低下させず、かつ向上した再湿潤特性、通液性およびぬれ性を有することができる。
【0094】
したがって、本発明の他の一実施形態によれば、酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体が架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂;および前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、前記架橋重合体が表面架橋剤を介して追加架橋されている表面改質層を含み、前記表面改質層はHLBが0以上6以下である疎水性物質および親水性高分子を含み、下記式1により求められる通液性(permeability、単位:秒)が30秒以下である高吸水性樹脂を提供する:
【数2】
前記式1において、
T1は、クロマトグラフィ管内に分級(30#~50#)した高吸水性樹脂試料0.2±0.0005gを入れて塩水を加えて塩水体積が50mlになるようにした後、30分間放置後、液面高さが40mlから20mlまで減るのにかかる時間であり、Bは、塩水が満たされたクロマトグラフィ管で液面高さが40mlから20mlまで減るのにかかる時間である。
【0095】
前記通液性(peremeability)の測定方法は、特許番号US9656242 B2特許に記載された方法に準じて測定した。
【0096】
通液性測定装置は、内径20mmであり、下端にglassフィルタが装着されたクロマトグラフィ管である。クロマトグラフィ管にピストンを入れた状態での液量20mlおよび40mlの液面に線を表示した。この後、クロマトグラフィ管下部glassフィルタとコックとの間に気泡が生じないように逆に水を投入して約10mlを満たして塩水で2~3回洗浄し、40ml以上まで0.9%塩水を満たした。クロマトグラフィ管にピストンを入れて下部弁を開けて液面が40mlから20mlの表示線まで減る時間(B)を記録した。
【0097】
クロマトグラフィ管に塩水を10ml残して、分級(30#~50#)した高吸水性樹脂試料0.2±0.0005gを入れて塩水を加えて塩水体積が50mlになるようにした後、30分間放置した。その後、クロマトグラフィ管内に錘付きのピストン(0.3psi=106.26g)を入れて1分間放置後、クロマトグラフィ管の下部弁を開けて液面が40mlから20mlの表示線まで減る時間(T1)を記録し、T1-Bの時間(単位:秒)を計算した。
【0098】
前記式1により求められる通液性は、30秒以下、または28秒以下、または25秒以下、または20秒以下、または18秒以下であり得る。前記通液性は、その値が小さいほど優れるため、前記通液性の下限は理論上0秒であるが、一例として約5秒以上、または約10秒以上、または約12秒以上であり得る。
【0099】
前記高吸水性樹脂の具体的な製造方法および物性などに対する詳細な説明は前記高吸水性樹脂の製造方法で上述したとおりである。
【0100】
前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.3により測定した保水能(CRC)が約22g/g以上、または約25g/g以上、または約27g/g以上であり、かつ約40g/g以下、または約38g/g以下、または約35g/g以下の範囲を有することができる。
【0101】
また、前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP242.3により測定した0.3psiの加圧吸収能(AUP)が約20g/g以上、または約22g/g以上、または約25g/g以上であり、かつ約35g/g以下、または約33g/g以下、または約32g/g以下の範囲を有することができる。
【0102】
また、前記高吸水性樹脂は、吸収速度(vortex time)が約35秒以下、または約30秒、または約28秒以下であり得る。前記吸収速度はその値が小さいほど優れるため、前記吸収速度の下限は理論上0秒であるが、一例として約5秒以上、または約10秒以上、または約12秒以上であり得る。
【0103】
前記吸収速度は、生理食塩水に高吸水性樹脂を加えて攪拌させたとき、はやい吸収によって液体の渦(vortex)がなくなる時間(time、単位:秒)を意味し、前記時間が短いほど高吸水性樹脂がはやい初期吸収速度を有するといえる。
【0104】
このように前記高吸水性樹脂は、優れた通液性を示しながらも、より向上した再湿潤特性を示すことができる。
【0105】
より具体的には、前記高吸水性樹脂1gを水道水100gに浸漬させて10分間膨潤させた後、膨潤した前記高吸水性樹脂を水道水に浸漬させた最初時点から1時間濾過紙上で放置してから、前記高吸水性樹脂から前記濾過紙に再び染み出た水の重量で定義される再湿潤特性(無加圧水道水短期再湿潤)が2.0g以下、または1.5g以下、または1.2g以下であり得る。前記水の重量は、その値が小さいほど優れるため理論上下限値は0gであるが、例えば0.1g以上、または0.3g以上、または0.5g以上であり得る。
【0106】
または前記高吸水性樹脂4gを水道水200gに浸漬させて6時間膨潤させた後、膨潤した前記高吸水性樹脂を0.75psiの圧力下に1分間濾過紙上で放置してから、前記高吸水性樹脂から前記濾過紙に再び染み出た水の重量で定義される再湿潤特性(加圧水道水再湿潤)が1.5g以下、または1.2g以下、または1.1g以下、または1.0g以下であり得る。前記水の重量は、その値が小さいほど優れるため、理論上下限値は0gであるが、例えば0.1g以上、または0.3g以上、または0.5g以上であり得る。
【0107】
または前記高吸水性樹脂4gを塩水100gに浸漬させて2時間膨潤させた後、膨潤した前記高吸水性樹脂を0.75psiの圧力下に1分間濾過紙上で放置してから、前記高吸水性樹脂から前記濾過紙に再び染み出た塩水の重量で定義される再湿潤特性(加圧塩水再湿潤)が5.0g以下、または4.0g以下、または3.0g以下、または2.0g以下であり得る。前記塩水の重量は、その値が小さいほど優れるため、理論上下限値は0gであるが、例えば0.1g以上、または0.3g以上、または0.5g以上であり得る。
【0108】
前記再湿潤物性評価で使用した水道水は、電気伝導度が170~180μS/cmである。水道水の電気伝導度は測定物性に大きい影響を与えるので、同等な水準の電気伝導度を有する水道水を使用して再湿潤などの物性を測定する必要がある。
【0109】
上記のように本発明の高吸水性樹脂は、優れた吸収能を有し、多量の小便を吸収した場合にも再湿潤および小便漏出現象が抑制されることができる。
【0110】
本発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容が下記の実施例によって限定されない。
【0111】
<実施例>
(高吸水性樹脂の製造)
(実施例1)
アクリル酸100g、架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA,Mw=523)0.001g、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.32g熱開始剤として過硫酸ナトリウム(sodium persulfate;SPS)0.08g、界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecylsulfate)0.015g、31.5%苛性ソーダ(NaOH)128g、水63.5gを混合してモノマー水溶液組成物を製造した。前記モノマー水溶液組成物を熱重合反応を行って重合されたシートを得た。重合したシートを取り出して3cm×3cmの大きさに切った後、ミートチョッパー(meat chopper)を用いてチョッピング工程(chopping)を実施して粉(crumb)を製造した。前記粉(crumb)を上下に風量転移が可能なオーブンで乾燥した。185℃のホットエアー(hot air)を15分は下方から上方に、15分は上方から下方に流れるようにして均一に乾燥し、乾燥後乾燥体の含水量は2%以下になるようにした。乾燥後、粉砕機で粉砕した後、Amplitute 1.5mmで10分分級(分級mesh組み合わせ:#20/#30/#50/#100)し、各分級分(10%/65%/22%/3%)を収集して粒径が約150μm~850μmであるベース樹脂粉末を得た。
【0112】
以後、前記製造したベース樹脂100重量部に表面架橋液(水6.2重量部、メタノール6.2重量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、グリセロールモノステアレート(glycerol monosterate)0.025重量部、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol 6000)0.025重量部、Na2S2O5 0.05重量部、アルミニウムスルフェート18水和物(aluminum sulfate 18 hydrate;Al-S)0.2重量部、および酸化アルミニウムALu130 0.1重量部)を等しく混合した後、140℃で30分間表面架橋反応を行った。前記表面処理完了後、ふるい(sieve)を用いて平均粒径850μm以下である高吸水性樹脂を得た。
【0113】
(実施例2)
前記実施例1で、表面架橋液に含まれるグリセロールモノステアレート含有量を0.075重量部にし、ポリエチレングリコールの含有量を0.075重量部にしたことを除いては実施例1と同様にして高吸水性樹脂を得た。
【0114】
(実施例3)
前記実施例1で、表面架橋液に含まれるグリセロールモノステアレート含有量を0.15重量部にし、ポリエチレングリコールの含有量を0.075重量部にしたことを除いては実施例1と同様にして高吸水性樹脂を得た。
【0115】
(実施例4)
前記実施例1で、表面架橋液に含まれるグリセロールモノステアレート含有量を0.05重量部にし、ポリエチレングリコールの含有量を0.05重量部にしたことを除いては実施例1と同様にして高吸水性樹脂を得た。
【0116】
(比較例1)
前記実施例1で、表面架橋液にグリセロールモノステアレートとポリエチレングリコールを含まないことを除いては実施例1と同様にして高吸水性樹脂を得た。
【0117】
(比較例2)
前記実施例1で、表面架橋液にポリエチレングリコールを含まないことを除いては実施例1と同様にして高吸水性樹脂を得た。
【0118】
(比較例3)
前記実施例1で、表面架橋液にグリセロールモノステアレートの含有量を0.015重量部にし、ポリエチレングリコールを含まないことを除いては実施例1と同様にして高吸水性樹脂を得た。
【0119】
(参照例1)
前記実施例1で、表面架橋液に含まれるグリセロールモノステアレートの含有量を0.01重量部にしたことを除いては実施例1と同様にして高吸水性樹脂を得た。
【0120】
<実験例>
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂に対し、次のような方法で物性を評価した。
【0121】
別に表記しない限り、下記物性評価は、いずれも恒温恒湿(23±1℃,相対湿度50±10%)で行い、生理食塩水または塩水は0.9重量%塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を意味する。
【0122】
また、下記再湿潤物性評価に使用した水道水は、Orion Star A222(Thermo Scientific社)を用いて測定したとき、電気伝導度が170~180μS/cmのものである。
【0123】
(1)遠心分離保持容量(CRC:Centrifuge Retention Capacity)
各樹脂の無荷重下吸収倍率による保水能をEDANA WSP241.3により測定した。
具体的には、高吸水性樹脂W
0(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸水させた。30分経過後、遠心分離機を用いて250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を抜いて封筒の質量W
2(g)を測定した。また、樹脂を用いず同じ操作をした後にその時の質量W
1(g)を測定した。得られた各質量を用いて次のような式によりCRC(g/g)を算出した。
【数3】
【0124】
(2)加圧吸収能(AUP:Absorbtion Under Pressure)
各樹脂の0.3psiの加圧吸収能をEDANA法WSP242.3により測定した。
具体的には、内径60mmのプラスチックの円筒底にステンレス製400mesh金網を装着させた。常温および湿度50%の条件下で金網上に高吸水性樹脂W
0(g)(0.90g)を均一に散布し、その上に0.3psiの荷重を均一にさらに付与できるピストンは外径60mmより若干小さく円筒の内壁との間隙がなく上下動きが邪魔されないようにした。この時、前記装置の重量W
3(g)を測定した。
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルタを置いて、0.9重量%塩化ナトリウムで構成された生理食塩水をガラスフィルタの上面と同一レベルになるようにした。その上に直径90mmの濾過紙1枚をのせた。濾過紙の上に前記測定装置をのせて、液を荷重下で1時間吸収させた。1時間後測定装置を持ち上げて、その重量W
4(g)を測定した。
得られた各質量を用いて次の式により加圧吸収能(g/g)を算出した。
【数4】
【0125】
(3)通液性(Permeability)
通液性(peremeability)の測定方法は、特許番号US9656242 B2公報に記載された方法に準じて測定した。
通液性測定装置は、内径20mmであり、下端にglassフィルタが装着されたクロマトグラフィ管である。クロマトグラフィ管にピストンを入れた状態での液量20mlおよび40mlの液面に線を表示した。この後、クロマトグラフィ管の下部glassフィルタとコックとの間に気泡が生じないように逆に水を投入して約10mlを満たして塩水で2~3回洗浄し、40ml以上まで0.9%塩水を満たした。クロマトグラフィ管にピストンを入れて下部弁を開けて液面が40mlから20mlの表示線まで減る時間(B)を記録した。
クロマトグラフィ管に塩水を10ml残して、分級(30#~50#)した高吸水性樹脂試料0.2±0.0005gを入れて塩水を加えて塩水体積が50mlになるようにした後、30分間放置した。その後、クロマトグラフィ管内に錘付きのピストン(0.3psi=106.26g)を入れて1分間放置後、クロマトグラフィ管の下部弁を開けて液面が40mlから20mlの表示線まで減る時間(T1)を記録し、T1-Bの時間(単位:秒)を計算した。
【0126】
(4)ぬれ性(wetting time)
吸収速度(vortex time)を測定する国際公開出願第1987-003208号に記載された方法に準じてぬれ性(wetting time)を秒単位で測定した。
具体的には、23℃~24℃の50mLの生理食塩水に2gの高吸水性樹脂を入れ、マグネットバー(直径8mm、長さ30mm)を600rpmで攪拌しながら、液体上部に濡れていない高吸水性樹脂が観察される時間までを測定した。時間が長いほどぬれ性が良くないと評価する。
【0127】
(5)無加圧水道水短期再湿潤(rewet、1hr)
(I)コップ(上部分直径7cm、下直径5cm、高さ8cm、体積192ml)に高吸水性樹脂1gを入れて水道水(tap water)100gを注いだ後膨潤させた。
(II)水道水を注いだ時点から10分後にフィルターペーパー(製造メーカー:whatman,catalog No.1004-110,pore size 20-25μm、直径11cm)5枚上に膨潤した高吸水性樹脂が入ったコップを裏返した。
(III)水道水を注いだ時点から1時間後にコップと高吸水性樹脂を除去してフィルターペーパーに付いている水道水の量(単位:g)を測定した。
【0128】
(6)加圧水道水再湿潤(rewet、6hrs)
(I)直径13cmのペトリ皿(petri dish)に高吸水性樹脂4gを均等に振りかけて分散させて水道水200gを注いだ後6時間膨潤させた。
(II)6時間膨潤させた高吸水性樹脂をフィルターペーパー(製造メーカー:whatman,catalog No.1004-110,pore size 20-25μm、直径11cm)20枚の上に敷いて直径11cm、5kg錘(0.75psi)で1分間加圧した。
(III)1分間加圧後フィルターペーパーに付いた水道水の量(単位:g)を測定した。
【0129】
(7)加圧塩水再湿潤(rewet、2hrs)
(I)直径13cmのペトリ皿(petri dish)に高吸水性樹脂4gを均等に振りかけて分散させて塩水100gを注いだ後2時間膨潤させた。
(II)2時間膨潤させた高吸水性樹脂をフィルターペーパー(製造メーカー:whatman,catalog No.1004-110,pore size 20-25μm、直径11cm)20枚の上に敷いて直径11cm、5kg錘(0.75psi)で1分間加圧した。
(III)1分間加圧後フィルターペーパーに付いた塩水の量(単位:g)を測定した。
【0130】
(8)吸収速度(Vortex time)
吸収速度(vortex time)は、国際公開出願第1987-003208号に記載された方法に準じて秒単位で測定した。
具体的には、23℃~24℃の50mLの生理食塩水に2gの高吸水性樹脂を入れ、マグネットバー(直径8mm、長さ30mm)を600rpmで攪拌して渦流(vortex)が消える時までの時間を秒単位で測定して算出した。
【0131】
前記実施例と比較例に関する物性値を下記表1に記載した。
【0132】
【0133】
表1を参照すると、疎水性物質と親水性高分子をいずれも使用した本発明の実施例1~4は、いずれも優れたぬれ性と通液性を示し、無加圧下および加圧下で水道水に対する再湿潤量と加圧下の塩水再湿潤量が非常に少なく、改善した再湿潤特性を示すことを確認した。
【0134】
これに対し、比較例1は再湿潤と通液性が実施例よりいずれもよくなく、親水性高分子を導入していない比較例2と3は、再湿潤特性は実施例と類似の水準であったが、ぬれ性と吸収速度が良くないことがわかる。
【0135】
疎水性物質を0.01重量部で含む参照例1は、比較例1よりは再湿潤特性と通液性が良かったが、実施例1~4よりは良くないことがわかる。