(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】離型層用組成物およびその硬化物を含む離型フィルム
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20220314BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220314BHJP
C09D 5/20 20060101ALI20220314BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220314BHJP
【FI】
C09D183/04
B32B27/00 L
C09D5/20
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2020538934
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(86)【国際出願番号】 KR2019011953
(87)【国際公開番号】W WO2020067670
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-07-14
(31)【優先権主張番号】10-2018-0115902
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヒョン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・チン・シム
(72)【発明者】
【氏名】サン・ユル・イ
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ジュン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】クワン・ス・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・チャン・ユ
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-082487(JP,A)
【文献】特表2011-509323(JP,A)
【文献】特開平06-093183(JP,A)
【文献】特開2003-261855(JP,A)
【文献】特開平02-187466(JP,A)
【文献】特開平04-020570(JP,A)
【文献】特開2002-356067(JP,A)
【文献】特開平09-052319(JP,A)
【文献】特開2012-207125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニル基を含有するシリコーン系樹脂;シリコーン系架橋剤;シランカップリング剤;金属触媒;および溶剤;を含み、
前記シリコーン系架橋剤の含有量は、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、1.5重量部以上4.5重量部以下であ
り、
前記シリコーン系架橋剤は、水素原子がシリコン原子に直接結合したものであり、
前記シランカップリング剤の含有量は、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、1.5重量部以上4.5重量部以下であり、
前記金属触媒の含有量は、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、3重量部以上9.5重量部以下であり、
前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂は、シリコンに結合したフェニル基とシリコンに結合した水素のモル比が1:1~1:1.5である、離型層用組成物。
【請求項2】
前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂の含有量は、前記溶剤100重量部に対して、1重量部以上15重量部以下である、請求項
1に記載の離型層用組成物。
【請求項3】
前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂の粘度は、5,000cps以上10,000cps以下である、請求項1
または2に記載の離型層用組成物。
【請求項4】
前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂の重量平均分子量は、50,000以上150,000以下である、請求項1から
3の何れか一項に記載の離型層用組成物。
【請求項5】
基材と、
前記基材の一面上に備えられ、請求項1から
4の何れか一項に記載の離型層用組成物の硬化物を含む離型層とを含む離型フィルム。
【請求項6】
前記離型層は、下記式1を満足する、請求項
5に記載の離型フィルム:
[式1]
20%≦{(Y-X)/X}×100≦35%
前記式1中、
Xは、前記離型層をTesa7475標準粘着テープに付着し、25℃で1日保管した後の離型層の離型剥離力であり、
Yは、前記離型層をTesa7475標準粘着テープに付着し、60℃で7日保管した後の離型層の離型剥離力を意味する。
【請求項7】
前記離型層をTesa7475標準粘着テープに付着し、25℃で1日保管した後の離型層の離型剥離力は、500gf/in以上1,250gf/in以下である、請求項
5または
6に記載の離型フィルム。
【請求項8】
前記離型層をTesa7475標準粘着テープに付着し、60℃で7日保管した後の離型層の離型剥離力は、1,200gf/in以上1,650gf/in以下である、請求項
5から
7の何れか一項に記載の離型フィルム。
【請求項9】
前記離型層の表面エネルギーは、25mN/m以上35mN/m以下である、請求項
5から
8の何れか一項に記載の離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2018年9月28日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-0115902号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本発明に組み込まれる。
【0002】
本発明は、離型層用組成物およびその硬化物を含む離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
離型フィルムは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、個人用携帯情報端末およびナビゲーション、有機発光ダイオード、高分子発光ダイオード(Polymer Light Emitting Diodes)、偏光板などのディスプレイユニット分野、コーティング分野、粘着剤分野、接着剤分野などの多様な分野で用いられている。主に、離型フィルムは、対象物品の表面、粘着剤の表面、接着剤の表面などを保護するか、対象物品のキャリア(carrier)の役割を果たすことができる。このような離型フィルムは、対象物品などの製造過程、運搬および保存過程では対象物品に付着するものの、最終物品の製造時に除去できる。
【0004】
最近、自動車などの外観を保護するためにペイントプロテクションフィルム(Paint Protection Film、PPF)が用いられており、これに対する需要が伸びる傾向にある。PPFは、ポリウレタンフィルムなどの基材と粘着層とから構成されている。PPFを製造するためには、シート形態に製造されたポリウレタンフィルムなどの基材を粘着層と貼り合わせなければならないが、ポリウレタンフィルムを製造するために、成形用基材の離型フィルムが用いられている。ただし、PPFに用いられるポリウレタンフィルムなどの基材を離型フィルム上で成形する場合、ポリウレタンフィルムなどの基材自体がタック(Tack)または粘着力を有さずに離型フィルムからすぐに剥離されるトンネリング現象などが発生する。このような現象が発生する場合には、PPF製品としての品質が低下し、製造工程上の難易度が増加する問題がある。また、このような問題を防止するために、離型処理されていない無処理PETフィルム上に基材を形成する場合には、基材がPETフィルムと容易に剥離されず、製品として使用しにくい問題がある。
【0005】
そこで、PPFなどのフィルムを製造することが容易な離型フィルムの開発が必要な現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、適切な離型剥離力を保有する離型フィルムおよびこれを実現できる離型層形成用組成物を提供しようとする。
【0007】
ただし、本発明が解決しようとする課題は上述した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施態様は、フェニル基を含有するシリコーン系樹脂;シリコーン系架橋剤;シランカップリング剤;金属触媒;および溶剤;を含み、前記シリコーン系架橋剤の含有量は、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、1.5重量部以上4.5重量部以下である離型層用組成物を提供する。
【0009】
また、本発明の一実施態様は、基材と、前記基材の一面上に備えられ、前記離型層用組成物の硬化物を含む離型層とを含む離型フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施態様に係る離型層用組成物は、適切な離型剥離力を保有して、多様な分野で使用されるフィルムの製造に適した離型フィルムを提供することができる。
【0011】
本発明の一実施態様に係る離型フィルムは、適切な離型剥離力を保有することにより、多様な分野で使用されるフィルムの製造に適するという利点がある。
【0012】
本発明の効果は上述した効果に限定されるものではなく、言及されていない効果は本願明細書から当業者に明確に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0014】
本願明細書全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0015】
本願明細書全体において、単位「重量部」は、各成分間の重量比率を意味することができる。
【0016】
本願明細書全体において、「Aおよび/またはB」は、「AおよびB、または、AまたはB」を意味する。
【0017】
本願明細書全体において、ある化合物の「重量平均分子量」および「数平均分子量」は、その化合物の分子量と分子量分布を用いて計算される。具体的には、1mlのガラス瓶にテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)と化合物を入れて化合物の濃度が1wt%のサンプル試料を用意し、標準試料(ポリスチレン、polystryere)とサンプル試料をフィルタ(ポアサイズが0.45mm)を通して濾過させた後、GPCインジェクタ(injector)に注入して、サンプル試料の溶離(elution)時間を標準試料のキャリブレーション(calibration)曲線と比較して化合物の分子量および分子量分布を得ることができる。この時、測定機器としてInfinity II 1260(Agilient社)を用いることができ、流速は1.00mL/min、カラム温度は40.0℃に設定することができる。
【0018】
本願明細書全体において、シリコーン系樹脂に含まれるシリコンに結合したフェニル基とシリコンに結合した水素のモル数は、核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)装置(Oxford 300 NMR、VARIAN社)を用いて測定されたグラフにより計算される。
【0019】
本願明細書全体において、離型層の離型剥離力は、離型層をTesa7475標準粘着テープに2Kgの荷重で3回往復圧着して付着し、設定された温度で設定された時間の間保管した後、測定機器(AR-1000、ケムインストルメント社)を用いて、剥離速度に応じて測定した離型層を剥離する平均的な力を意味することができる。
【0020】
本願明細書全体において、化合物の粘度は、25℃の温度でブルックフィールド粘度計(DV-II PRO Viscometer、Brookfield社)で測定した値であってもよい。
【0021】
以下、本明細書についてさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明の一実施態様は、フェニル基を含有するシリコーン系樹脂;シリコーン系架橋剤;シランカップリング剤;金属触媒;および溶剤;を含み、前記シリコーン系架橋剤の含有量は、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、1.5重量部以上4.5重量部以下である離型層用組成物を提供する。
【0023】
本発明の一実施態様に係る離型層用組成物は、適切な離型剥離力を保有して、多様な分野で用いられるフィルムの製造に適した離型フィルムを提供することができる。具体的には、前記離型フィルムは、車両の外装保護フィルムとして用いられるペイントプロテクションフィルム(Paint Protection Film、PPF)に適用可能である。
【0024】
本発明において、離型フィルムは、車両の外装保護フィルムなどの自動車分野、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、個人用携帯情報端末およびナビゲーション、有機発光ダイオード、高分子発光ダイオード(Polymer Light Emitting Diodes)、偏光板などのディスプレイユニット分野、コーティング分野、粘着剤分野、接着剤分野などの多様な分野で使用されるもので、対象物品の表面、粘着剤の表面、接着剤の表面などを保護したり、対象物品のキャリア(carrier)の役割を果たしたり、所定のフィルムを製造するための基材フィルムとして用いられ、前記フィルムから除去される役割を果たせるフィルムを意味することができる。また、離型フィルムは、対象物品などの製造過程、運搬および保存過程では対象物品に付着するものの、最終物品の製造時に除去されるフィルムを意味することができる。
【0025】
本発明の一実施態様によれば、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂は、シリコーン骨格のラジカルにフェニル基が結合したものであってもよい。また、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂のシリコーン骨格のラジカルには、不飽和アルキル基、飽和アルキル基、および水素のうちの少なくとも1つが結合してもよい。具体的には、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂は、フェニル基、不飽和アルキル基、飽和アルキル基、および水素を含有することができる。
【0026】
また、前記シリコーン骨格は、シリコン原子と酸素原子を含むことができ、シリコン原子のラジカルと前記フェニル基のラジカルとの間の結合により、共有結合が形成される。前述したものと同様に、前記不飽和アルキル基、飽和アルキル基、および水素のうちの少なくとも1つは、前記シリコーン骨格のラジカルに結合してもよい。さらに、前記シリコーン骨格は、直鎖もしくは分枝鎖の鎖状であってもよい。
【0027】
本発明の一実施態様によれば、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂は、シリコンに結合したフェニル基とシリコンに結合した水素のモル比が1:1~1:1.5であってもよい。具体的には、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂は、シリコンに結合したフェニル基とシリコンに結合した水素のモル比が1:1~1:1.4、1:1~1:1.3、または1:1.1~1:1.3であってもよい。シリコンに結合したフェニル基とシリコンに結合した水素のモル比が前述した範囲を満足する前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂を含む離型層用組成物は、適切な表面エネルギーおよび離型剥離力を有する離型層を含む離型フィルムを実現することができる。従来のビニル基のみを含むシリコーン系樹脂を用いる離型剤組成物から形成された離型フィルムの場合、離型フィルム上に形成されたフィルムが離型フィルムから剥離されやすいトンネリング現象が発生したり、または離型フィルムから前記フィルムを容易に剥離できないなど、離型フィルムの離型剥離力を調節することが容易でない問題があった。
【0028】
これに対し、本発明の一実施態様によれば、シリコンに結合したフェニル基とシリコンに結合した水素のモル比が前述した範囲を満足する前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂を用いることにより、適切な離型剥離力を有して前述したトンネリング現象および当該フィルムの離型フィルムからの未剥離現象を効果的に抑制することができる。すなわち、前記離型層用組成物は、離型フィルムとしての性能に優れた離型フィルムを提供できるという利点がある。特に、前記離型層用組成物の硬化物を含む離型フィルムは、ペイントプロテクションフィルムの製造に特化したものであってもよい。
【0029】
本発明の一実施態様によれば、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂の粘度は、5,000cps以上10,000cps以下であってもよい。具体的には、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂の温度25℃、湿度50RH%および周波数30Hzで測定した粘度は、5,000cps以上10,000cps以下、6,000cps以上9,000cps以下、または7,000cps以上8,500cps以下であってもよい。前述した範囲の粘度を有する前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂は、前記シリコーン系架橋剤、シランカップリング剤、金属触媒、および溶剤との混合が容易で、均質な品質が実現された離型フィルムを提供することができる。
【0030】
本発明の一実施態様によれば、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂の重量平均分子量は、50,000(g/mol)以上150,000(g/mol)以下であってもよい。具体的には、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂の重量平均分子量は、70,000(g/mol)以上140,000(g/mol)以下、85,000(g/mol)以上135,000(g/mol)以下、または100,000(g/mol)以上130,000(g/mol)以下であってもよい。前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂の重量平均分子量を前述した範囲に調節することにより、前記離型層用組成物の硬化物を含む離型層の表面エネルギーが過度に高くなるか低くなるのを効果的に防止することができる。さらに、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂の重量平均分子量が前述した範囲の場合、前記離型層用組成物の硬化物を含む離型層の離型剥離力は適切な水準で実現できる。
【0031】
本発明の一実施態様によれば、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂の含有量は、前記溶剤100重量部に対して、1重量部以上15重量部以下であってもよい。具体的には、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂の含有量は、前記溶剤100重量部に対して、5重量部以上12.5重量部以下、7.5重量部以上10重量部以下、8重量部以上12重量部以下であってもよい。前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂の含有量を前述した範囲に調節することにより、前記離型層用組成物をより容易に硬化させることができる。また、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂の含有量が前述した範囲の場合、前記離型層用組成物の硬化物を含む離型層は、適切な表面エネルギーおよび離型剥離力を有することができる。
【0032】
本発明の一実施態様によれば、前記シリコーン系架橋剤の含有量は、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、1.5重量部以上4.5重量部以下、2重量部以上4重量部以下、1.5重量部以上3.5重量部以下、2重量部以上3.5重量部以下、または2重量部以上2.5重量部以下であってもよい。前記シリコーン系架橋剤の含有量を前述した範囲に調節することにより、前記離型層の離型剥離力が過度に増加するのを効果的に防止することができる。具体的には、前記シリコーン系架橋剤の含有量が前述した範囲内の場合、前記離型フィルムが高温条件で長い時間保管される場合にも、前記離型層の離型剥離力が大きく増加することを抑制することができる。また、前記離型層用組成物の硬化物を含む離型フィルムの耐久性を向上させることができる。さらに、前記シリコーン系架橋剤の含有量が前述した範囲内の場合、前記離型層用組成物の硬化性が低下するのを防止することができる。したがって、前記離型層用組成物は、離型層の離型性能、すなわち剥離性能が低下することを抑制することができる。
【0033】
本発明の一実施態様によれば、前記シリコーン系架橋剤として、当業界で離型剤組成物の製造に使用されるものを制限なく採用可能である。例えば、前記シリコーン系架橋剤は、1つの分子中に少なくとも2つのシリコン原子結合水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン、具体的には、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)、およびメチルハイドロジェンシロキサンのうちの少なくとも1つを含むことができるが、前記シリコーン系架橋剤の種類を制限するものではない。本発明では、シリコーン系架橋剤として、メチルハイドロジェンシロキサンを使用することができる。
【0034】
本発明の一実施態様によれば、前記シランカップリング剤の含有量は、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、1.5重量部以上4.5重量部以下であってもよい。具体的には、前記シランカップリング剤の含有量は、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、2重量部以上4重量部以下、2重量部以上3重量部以下、または1.5重量部以上3重量部以下であってもよい。前記シランカップリング剤の含有量を前述した範囲に調節することにより、前記離型層の耐久性を向上させることができ、前記離型層に備えられたフィルムの未剥離現象を効果的に防止することができる。
【0035】
本発明の一実施態様によれば、前記シランカップリング剤として、当業界で離型剤組成物の製造に使用されるものを制限なく採用可能である。例えば、前記シランカップリング剤は、アミノ系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、およびメルカプト系シランカップリング剤のうちの少なくとも1つを含むことができる。また、前記シランカップリング剤は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4-グリシジルブチルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-3-(4-(3-アミノプロポキシ)ブトキシ)プロピル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、およびビニルトリメトキシシランのうちの少なくとも1つを含むことができる。ただし、前記シランカップリング剤の種類を前述したものに限定するものではない。本発明では、シランカップリング剤として、ビニルトリメトキシシランを使用することができる。また、前記シランカップリング剤として、2種以上のシランカップリング剤を混合して使用することができる。
【0036】
本発明の一実施態様によれば、前記金属触媒の含有量は、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、3重量部以上9.5重量部以下であってもよい。具体的には、前記金属触媒の含有量は、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、3重量部以上9.5重量部以下、3.5重量部以上9重量部以下、4重量部以上8重量部以下、または5重量部以上6.5重量部以下であってもよい。具体的には、前記金属触媒は、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂と前記シリコーン系架橋剤との硬化反応を促進させる役割を果たすもので、前記金属触媒の含有量を前述した範囲に調節することにより、前記離型層用組成物の未硬化または過硬化を効果的に抑制することができる。
【0037】
本発明の一実施態様によれば、前記金属触媒として、当業界で離型剤組成物の製造に使用されるものを制限なく採用して使用可能である。具体的には、前記金属触媒は、白金系触媒を少なくとも含むことができる。また、前記白金系触媒は、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、および塩化白金酸のオレフィン錯体のうちの少なくとも1つを含むことができるが、前記白金系触媒の種類を限定するものではない。本発明では、前記白金系触媒として、信越シリコーン社のPL-50Tを用いることができる。
【0038】
本発明の一実施態様によれば、前記溶剤は、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、メチルエチルケトン、およびエチルアセテートのうちの少なくとも1つであってもよい。ただし、これらに限定されるものではなく、当業界で一般的に知られた有機溶剤の中から自由に選択されるものであってもよい。
【0039】
本発明の一実施態様によれば、前記離型層用組成物の固形分含有量は、0.5%以上30%以下であってもよい。具体的には、前記離型層用組成物の固形分含有量は、1%以上25%以下、5%以上20%以下、10%以上15%以下、1%以上5%以下、8%以上15%以下、または20%以上28%以下であってもよい。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、前記離型層用組成物の固形分含有量を前述した範囲に調節することにより、前記離型層用組成物を容易に塗布することができる。また、離型層用組成物の硬化時に粘度が急激に増加するのを防止して、塗布時の湿潤性が低下するのを防止することができる。具体的には、前記離型層用組成物の固形分含有量が前述した範囲内の場合、前記離型層用組成物に含まれる前記フェニル基含有シリコーン系樹脂の含有量が相対的に少なくなるため、離型層用組成物の硬化物の耐久性が低下するのを防止することができる。また、離型層用組成物の硬化時に粘度が急激に上昇して、硬化物の表面平坦性が低下することを効果的に抑制することができる。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、前記離型層用組成物は、離型剤、シリカ粒子、および光開始剤のうちの少なくとも1つを含むその他の添加剤をさらに含んでもよい。ただし、前記その他の添加剤の種類を限定するものではなく、当業界で用いられる公知の構成を使用することができる。
【0042】
本発明の一実施態様によれば、前記離型層用組成物は、光硬化または熱硬化により硬化される。具体的には、前記離型層用組成物は熱硬化され、前記離型層用組成物の熱硬化は、100℃以上180℃以下の温度で、30秒以上180秒以下の時間行われる。前記離型層用組成物の硬化温度および硬化時間を前述した範囲に調節することにより、前記離型層用組成物を安定的に硬化させて硬化物の耐久性を向上させることができる。
【0043】
本発明の一実施態様は、基材と、前記基材の一面上に備えられ、前記離型層用組成物の硬化物を含む離型層とを含む離型フィルムを提供する。
【0044】
本発明の一実施態様に係る離型フィルムは、適切な離型剥離力を保有することにより、多様な分野で使用されるフィルムの製造に適するという利点がある。
【0045】
本発明の一実施態様によれば、前記離型フィルムは、離型層および基材を含み、前記離型層は、前記離型層用組成物の硬化物を含むことができる。
【0046】
本発明の一実施態様によれば、基材の一面上に前記離型層用組成物を塗布し硬化させることにより、基材の一面上に備えられた離型層を含む離型フィルムを提供することができる。前記離型層用組成物を基材の一面上に塗布する方法としては、公知の工程を用いることができる。具体的には、インクジェットプリンティング工程、ディスペンシング工程、シルクスクリーン工程、スプレーコーティング工程、スピンコーティング工程、ナイフコーティング工程、ディップコーターコーティング工程、メイヤーバーコーティング工程、グラビアコーティング工程、マイクログラビアコーティング工程などを用いることができる。
【0047】
本発明の一実施態様によれば、前記基材は、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、延伸ポリプロピレン樹脂、セルロース、およびポリ塩化ビニル樹脂のうちの少なくとも1つを含むことができるが、前記基材の種類を制限するものではない。
【0048】
本発明の一実施態様によれば、前記基材の厚さは、5μm以上200μm以下であってもよい。前述した範囲の厚さを有する基材を含む離型フィルムは、耐久性に優れることができる。
【0049】
本発明の一実施態様によれば、前記離型層の厚さは、0.01μm以上10μm以下であってもよい。前述した範囲の厚さを有する離型層を含む離型フィルムは、適切な離型剥離力を保有することができる。
【0050】
本発明の一実施態様によれば、前記離型層は、下記式1を満足できる。
[式1]
20%≦{(Y-X)/X}×100≦35%
【0051】
前記式1中、Xは、前記離型層をTesa7475標準粘着テープに付着し、25℃で1日保管した後の離型層の離型剥離力であり、Yは、前記離型層をTesa7475標準粘着テープに付着し、60℃で7日保管した後の離型層の離型剥離力を意味する。
【0052】
すなわち、前記離型層をTesa7475標準粘着テープに付着し、25℃で1日保管した離型層の離型剥離力(初期離型剥離力)に対して、60℃で7日保管した離型層の離型剥離力(熱処理後の離型剥離力)の変化量は、20%以上35%以下であってもよい。具体的には、初期離型剥離力に対する熱処理後の離型剥離力の変化量は、22%以上34%以下、20%以上25%以下、または30%以上35%以下であってもよい。初期離型剥離力に対する熱処理後の離型剥離力の変化量が前述した範囲を満足する前記離型層を含む離型フィルムは、高温条件でも離型性能を適切な水準に維持できるという利点がある。すなわち、前記離型フィルムは、実際の製品に備えられた後に、多様な条件に露出し、特に高温条件に露出する場合にも、前記離型フィルムは、適切な水準の離型性能を実現することができる。
【0053】
また、初期離型剥離力に対する熱処理後の離型剥離力の変化量が前述した範囲を満足する場合、前記離型層に残留する未反応化合物が少ないことから、前記離型層の品質が均質に実現されることを確認することができる。
【0054】
本発明の一実施態様によれば、前記離型層の離型剥離力は、前記離型層をTesa7475標準粘着テープに付着し設定された温度および時間の間離型フィルムを保管した後、50RH%の湿度条件下、0.3m/minの剥離速度および180゜の剥離角度で測定されるものであってもよい。
【0055】
本発明の一実施態様によれば、前記離型層をTesa7475標準粘着テープに付着し、25℃で1日保管した後の離型層の離型剥離力は、500gf/in以上1,250gf/in以下であってもよい。25℃で1日保管した後の離型剥離力が前述した範囲を満足する前記離型層を含む前記離型フィルムは、適切な水準の離型剥離力を保有するので、前記離型層上で形成されるフィルムは、トンネリング現象および未剥離現象を抑制できる。
【0056】
本発明の一実施態様によれば、前記離型層をTesa7475標準粘着テープに付着し、60℃で7日保管した後の離型層の離型剥離力は、1,200gf/in以上1,650gf/in以下であってもよい。60℃で7日保管した後の離型剥離力が前述した範囲を満足する前記離型層を含む前記離型フィルムは、高温条件でも優れた離型性能を実現できるという利点がある。すなわち、高温条件でも離型層上で形成されるフィルムは、トンネリング現象および未剥離現象を抑制できる。
【0057】
本発明の一実施態様によれば、前記離型層の表面エネルギーは、25mN/m以上35mN/m以下であってもよい。前記離型層の表面エネルギーが前述した範囲を満足する前記離型フィルムは、適切な水準の離型剥離力を保有することができる。
【0058】
本発明の一実施態様によれば、前記離型フィルムは、ペイントプロテクションフィルムに適用されるものであってもよい。具体的には、前記離型フィルムは、ペイントプロテクションフィルムの製造工程およびペイントプロテクションフィルムの運搬過程に適用されるものであってもよい。より具体的には、前記離型フィルムの離型層上にペイントプロテクションフィルムの基材フィルムを形成できるポリウレタン樹脂組成物を塗布し、前記ポリウレタン樹脂組成物を硬化させて前記離型層上にポリウレタン樹脂層(ペイントプロテクションフィルムの基材)を形成することができる。この後、前記離型層は、適切な離型剥離力を保有しているので、前記ペイントプロテクションフィルムの基材は、前記離型層からの未剥離現象およびトンネリング現象の発生が抑制され、前記ペイントプロテクションフィルムの基材を容易に前記離型層から剥離することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0060】
離型フィルムの製造
実施例1
粘度測定器としてブルックフィールド粘度計(DV-II+ PRO Viscometer、Brookfield社)を用いて、温度25℃、湿度50RH%および周波数30Hzで測定した粘度が7,000cpsであり、前述した方法で測定した重量平均分子量が100,000(g/mol)、シリコンに結合したフェニル基(Si-Ph)とシリコンに結合した水素(Si-H)のモル比が1:1.1であるフェニル基を含有するシリコーン系樹脂(信越シリコーン社)、シリコーン系架橋剤(X-92-122、信越シリコーン社)、シランカップリング剤(X-92-158、信越シリコーン社)、白金系触媒(PL-50T、信越シリコーン社)、および溶剤としてトルエンを用意した。
【0061】
この後、トルエン100重量部に対して、フェニル基を含有するシリコーン系樹脂の含有量が10重量部、前記フェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、シリコーン系架橋剤の含有量が2重量部、シランカップリング剤2重量部、白金系触媒5重量部を含む離型層用組成物を製造した。
【0062】
この後、製造された離型層用組成物をメイヤーバー8番を用いて、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート基材上に2.5g/m2の厚さに塗布した。この後、基材上に塗布された離型層用組成物を150℃で1分間硬化させた後、50℃で24時間熟成(aging)して離型フィルムを製造した。
【0063】
実施例2~実施例3
下記表1のようなフェニル基を含有するシリコーン系樹脂を用意し、下記表2のようにフェニル基を含有するシリコーン系樹脂、シリコーン系架橋剤、シランカップリング剤、白金系触媒を含む離型層用組成物を製造したことを除き、前記実施例1と同様の方法で離型フィルムを製造した。
【0064】
この時、実施例3では、実施例1で用意したフェニル基を含有するシリコーン系樹脂を使用した。また、実施例2でトルエン100重量部に対してフェニル基を含有するシリコーン系樹脂の含有量は10重量部であり、実施例3でトルエン100重量部に対してフェニル基を含有するシリコーン系樹脂の含有量は5重量部であった。
【0065】
【0066】
【0067】
前記表2中、シリコーン系架橋剤、シランカップリング剤、および白金系触媒の含有量は、フェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対するものである。
【0068】
比較例1~比較例6
下記表3のようなフェニル基を含有せずビニル基を含有するシリコーン系樹脂を用意し、下記表4のようにフェニル基を含有せずビニル基を含有するシリコーン系樹脂、シリコーン系架橋剤、シランカップリング剤、白金系触媒を含む離型層用組成物を製造したことを除き、前記実施例1と同様の方法で離型フィルムを製造した。
【0069】
この時、比較例1~比較例6で、トルエン100重量部に対してフェニル基を含有せずビニル基を含有するシリコーン系樹脂の含有量は10重量部であった。
【0070】
【0071】
【0072】
前記表4中、シリコーン系架橋剤、シランカップリング剤、および白金系触媒の含有量は、フェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対するものである。
【0073】
比較例7~比較例16
比較例7~比較例16では、実施例1で用意したフェニル基を含有するシリコーン系樹脂を使用した。下記表5のようにフェニル基を含有するシリコーン系樹脂、シリコーン系架橋剤、シランカップリング剤、白金系触媒を含む離型層用組成物を製造したことを除き、前記実施例1と同様の方法で離型フィルムを製造した。
【0074】
この時、比較例7~比較例16で、トルエン100重量部に対してフェニル基を含有するシリコーン系樹脂の含有量は10重量部であった。
【0075】
【0076】
離型フィルムの物性評価
表面エネルギーの測定
前記実施例1~実施例3、および比較例1~比較例16で製造した離型フィルムの表面エネルギーを下記のように測定した。表面エネルギー測定用溶剤である脱イオン水1mLを離型フィルムに1μL/sの速度で落とし、測定機器(OCA20、Dataphysics社)を用いて測定用溶剤の接触角を測定し、これを用いて離型フィルムの表面エネルギーを計算した。前記方法で測定した表面エネルギー値を下記表6に記載した。
【0077】
離型剥離力の測定
前記実施例1~実施例3、および比較例1~比較例16で製造した離型フィルムの離型剥離力を下記のように測定した。
【0078】
離型フィルムの離型層をTesa7475標準粘着テープに2Kgの荷重で3回往復圧着して付着し、25℃および50RH%雰囲気下、1日間保管した後、25℃および50RH%雰囲気下、測定機器(AR-1000、ケムインストルメント社)を用いて、離型剥離力を測定した。サンプルの大きさ50mm×1,500mmおよび剥離力の測定大きさ250mm×1,500mmに対して、180゜の剥離角度下で行い、5回繰り返し測定値の平均値を求めて、離型剥離力(gf/in)を求めた。
【0079】
また、離型フィルムの離型層をTesa7475標準粘着テープに2Kgの荷重で3回往復圧着して付着し、60℃および50RH%雰囲気下、7日間保管した後、25℃および50RH%雰囲気下、測定機器(AR-1000、ケムインストルメント社)を用いて、離型剥離力を測定した。サンプルの大きさ50mm×1,500mmおよび剥離力の測定大きさ250mm×1,500mmに対して、180゜の剥離角度下で行い、5回繰り返した測定値の平均値を求めて、離型剥離力(gf/in)を求めた。
【0080】
前述した方法により測定した25℃で1日保管した後の離型層の離型剥離力(初期離型剥離力)と、60℃で7日保管した後の離型層の離型剥離力(熱処理後の離型剥離力)、および初期離型剥離力に対する熱処理後の離型剥離力の変化量を下記表6に示した。
【0081】
離型層と基材との密着性の測定(Rub-off test)
前記実施例1~実施例3、および比較例1~比較例16で製造した離型フィルムの離型層と基材との密着性を下記のように測定した。
【0082】
離型フィルムの離型層を水気を除去した指で1回、3回、5回、10回、10回以上擦った後、油性ペンで離型層を塗る。この時、離型層に油性ペンのインクが滲み出ると、離型層と基材との密着性に劣ることを意味する。具体的には、1回で油性ペンのインクが滲み出るとX、3回で油性ペンのインクが滲み出ると△~X、5回で油性ペンのインクが滲み出ると△、10回で油性ペンのインクが滲み出ると○~△、10回を超えた場合にも油性ペンのインクが滲み出なければ○と判断し、下記表6に示した。
【0083】
トンネリングの測定
前記実施例1~実施例3、および比較例1~比較例16で製造した離型フィルムの離型層のトンネリング現象を下記のように測定した。
【0084】
実施例1~実施例3、および比較例1~比較例16で製造した離型フィルムを横50mm、縦1,500mmに裁断した後、離型フィルムの離型層をTesa7475標準粘着テープに2Kgの荷重で3回往復圧着して付着してサンプルを製造し、25℃および50RH%雰囲気下、1日間保管した。この後、サンプルが約5R水準の曲率半径を有するようにサンプルを変形させた後、離型フィルムの離型層が浮き上がるか否かを確認した。
【0085】
この時、離型層がすぐに浮き上がる場合をX、離型層が10秒以内に浮き上がらない場合を△~X、離型層が60分以内に浮き上がらない場合を△、離型層が3日以内に浮き上がらない場合を○~△、離型層が7日を超えた場合にも浮き上がらない場合を○と判断し、下記表6に示した。
【0086】
未剥離の測定
前記実施例1~実施例3、および比較例1~比較例16で製造した離型フィルムの離型層の未剥離現象を下記のように測定した。
【0087】
実施例1~実施例3、および比較例1~比較例16で製造した離型フィルムを横50mm、縦1,500mmに裁断した後、離型フィルムの離型層をTesa7475標準粘着テープに2Kgの荷重で3回往復圧着して付着してサンプルを製造し、25℃および50RH%雰囲気下、1日間保管した。この後、測定機器(AR-1000、ケムインストルメント社)を用いて、剥離力の測定大きさ250mm×1,500mmに対して、180゜の剥離角度下で離型層をTesa7475標準粘着テープから剥離する実験を進行させた。
【0088】
この時、作製されたサンプルから離型フィルムの離型層を剥離する過程により離型層の剥離特性を確認することができ、離型層がすぐに剥離される場合を○、ピンセットなどのツールを用いてやや無理に剥離される場合を△、前記方法によっても離型層が剥離されない場合をXと判断し、下記表6に示した。
【0089】
【0090】
前記表1、表2および表6を参照すれば、フェニル基を含有するシリコーン系樹脂を用い、シリコーン系架橋剤の含有量がフェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、1.5重量部以上4.5重量部以下である実施例1~実施例3による離型層用組成物から形成された離型層は、適切な表面エネルギーを有し、初期離型剥離力対比で熱処理後の離型剥離力の変化量が20%~35%を満足し、Rub-offテスト、トンネリングおよび未剥離テストの結果、優れた品質を有することを確認した。これに対し、フェニル基を含有せずビニル基を含有するシリコーン系樹脂を用いた比較例1~比較例6の離型層の場合、初期離型剥離力対比で熱処理後の離型剥離力の変化量が20%~35%を満足できず、トンネリングテストの結果、非常に劣る品質を有することを確認した。また、シリコーン系架橋剤の含有量がフェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、1.5重量部以上4.5重量部以下の範囲を満足できない比較例7および比較例8の離型層の場合、初期離型剥離力対比で熱処理後の離型剥離力の変化量が20%~35%を満足できず、未剥離テストの結果、本発明の実施例1~実施例3の離型層よりその品質が劣ることを確認した。
【0091】
また、シランカップリング剤の含有量がフェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、1.5重量部以上4.5重量部以下の範囲を満足できない比較例9および比較例10の離型層の場合、初期離型剥離力対比で熱処理後の離型剥離力の変化量が20%~35%を満足できず、Rub-offテストおよび未剥離テストの結果、本発明の実施例1~実施例3の離型層よりその品質が劣ることを確認した。
【0092】
また、白金系触媒の含有量がフェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、3重量部以上9.5重量部以下の範囲を満足できない比較例11および比較例12の離型層の場合、初期離型剥離力対比で熱処理後の離型剥離力の変化量が20%~35%を満足できず、Rub-offテスト、トンネリングテストおよび未剥離テストの結果、本発明の実施例1~実施例3の離型層よりその品質が劣ることを確認した。
【0093】
さらに、シリコーン系架橋剤およびシランカップリング剤の含有量がそれぞれフェニル基を含有するシリコーン系樹脂100重量部に対して、1.5重量部以上4.5重量部以下の範囲を満足できない比較例13~比較例16の離型層の場合、初期離型剥離力対比で熱処理後の離型剥離力の変化量が20%~35%を満足できず、Rub-offテスト、トンネリングテストおよび未剥離テストの結果、本発明の実施例1~実施例3の離型層よりその品質が劣ることを確認した。
【0094】
したがって、本発明の一実施態様に係る離型層用組成物は、適切な離型剥離力を保有し、多様な分野で使用されるフィルムの製造に適した離型フィルムを提供できることが分かる。