(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】新規な架橋剤化合物およびこれを用いて製造される高吸水性樹脂
(51)【国際特許分類】
C08K 5/10 20060101AFI20220314BHJP
C08F 220/06 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
C08K5/10
C08F220/06
(21)【出願番号】P 2020541500
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(86)【国際出願番号】 KR2019013767
(87)【国際公開番号】W WO2020080894
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0124565
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0129388
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・テク・リム
(72)【発明者】
【氏名】ウォンムン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ギチュル・キム
(72)【発明者】
【氏名】キ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スル・ア・イ
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/171957(WO,A1)
【文献】特許第6024670(JP,B2)
【文献】特開2010-93065(JP,A)
【文献】特表2008-522003(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0247377(US,A1)
【文献】VAN BOXTEL et al.,Facile Synthesis of Bicyclic and Tricyclic Skeletons by Cycloisomerizations of Hept-1-en-6-ynes and 4,9-Diheteradodeca-1,11-dien-6-ynes, Followed by [4+2] Cycloadditions,Eur. J. Org. Chem.,2001年,2283-2292
【文献】CLAVIER et al.,Chemodivergent Metathesis of Dienynes Catalyzed by Ruthenium-Indenylidene Complexes: An Experimental and Computational Study,Chem. Eur. J.,2009年,10244-10254
【文献】NAKATAKE et al.,Chemoselective Transesterification of Acrylate Derivatives for Functionalized Monomer Synthesis Using a Hard Zinc Alkoxide Generation Strategy,Eur. J. Org. Chem.,2016年,3696-3699,DOI: 10.1002/ejoc.201600737
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される架橋剤化合物:
【化1】
上記化学式1中、
R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素またはメチルであり、
R
3およびR
4はそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル(alkyl)であり、
R
5およびR
6はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル(alkyl)、または炭素数3~20のシクロアルキル(cycloalkyl)であり、
R
5
およびR
6
は互いに隣接する2個以上が互いに連結されて2価の脂肪族環を形成することができ、
nは、0~10の整数である。
【請求項2】
前記R
1およびR
2は水素である、請求項1に記載の架橋剤化合物。
【請求項3】
前記R
3およびR
4はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキルであり、
前記R
5およびR
6はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~5のアルキル、または互いに隣接する2個が結合して形成されたシクロアルカンの2価基である、請求項1または2に記載の架橋剤化合物。
【請求項4】
前記R
3およびR
4はそれぞれ独立して、メチルまたはエチルであり、
前記R
5およびR
6はそれぞれ独立して、水素、メチルまたはエチルである、請求項3に記載の架橋剤化合物。
【請求項5】
nは0~5の整数である、請求項1から4のいずれか一項に記載の架橋剤化合物。
【請求項6】
上記化学式1は、下記化学式1-1~1-3で表される化合物の中から選択される、請求項1に記載の架橋剤化合物:
【化2】
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の架橋剤化合物およびアクリル酸系単量体が重合した重合体を含む、高吸水性樹脂。
【請求項8】
前記アクリル酸系単量体は下記化学式2で表される重合体である、請求項7に記載の高吸水性樹脂:
[化学式2]
R-COOM
上記化学式2中、
Rは、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
Mは、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【請求項9】
前記重合体は180℃以上の温度で分解される、請求項7または8に記載の高吸水性樹脂。
【請求項10】
前記重合体の表面に形成された表面架橋層をさらに含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年10月18日付の韓国特許出願第10-2018-0124565号および2019年10月17日付の韓国特許出願第10-2019-0129388号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、新規な架橋剤化合物およびこれを用いて製造される高吸水性樹脂に関する。より詳しくは、優れた架橋特性および熱分解性を示す新規な構造の架橋剤化合物およびこれを用いて製造される高吸水性樹脂に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百~1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発会社ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などのそれぞれ異なる名前で名付けている。このような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始め、現在は子供用紙おむつなど衛生用品の他に園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、および湿布用などの材料として広く使用されている。
【0004】
最も多くの場合に、このような高吸水性樹脂は、おむつや生理用ナプキンなどの衛生材分野で広く利用されているが、このような用途のために水分などに対する高い吸収力を有する必要があり、外部の圧力にも吸収された水分が抜け出てはならず、これに加え、水を吸収して体積膨張(膨潤)した状態でも形態をうまく維持して優れた通液性(permeability)を有する必要がある。
【0005】
したがって、高吸水性樹脂が優れた性能を有するためには、最も重要な構成となる重合体のベース樹脂(base resin)が高い吸収能を有さなければならない。
【0006】
このようなベース樹脂を作るため、一般に内部架橋剤の存在下に、アクリル酸系単量体を重合して重合体内部の架橋密度を調整することができる。内部架橋剤は、アクリル酸系単量体が重合した重合体、すなわち、ベース樹脂の内部を架橋させるためのものであって、内部架橋剤の種類および含有量によりベース樹脂の内部架橋密度を調整することができる。ベース樹脂の架橋密度が低いと吸収能は高くなるが、強度が弱くて後続する工程で形態を維持することができない問題があり、架橋密度が高すぎると強度は高くなるが、水分吸収能が低下することがあり、ベース樹脂の強度および吸収能の観点から適切な架橋密度を調整することは非常に重要である。
【0007】
上述した理由によって、保水能および加圧下吸水能を一緒に向上させた高吸水性樹脂を提供するのに限界があった。これを解決するために、内部架橋剤や表面架橋剤の種類または使用量などを調節して、これらの物性を共に向上させるための多様な試みが行われてきたが、このような試みは限界にぶつかってきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するために、架橋特性、熱分解性、反応性などに優れて、高吸水性樹脂の製造時に架橋剤として用いられる新規な構造の架橋剤化合物およびこれを用いて製造される高吸水性樹脂を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような問題を解決するために本発明の一実施形態によれば、下記化学式1で表される架橋剤化合物を提供する。
【0010】
【0011】
上記化学式1中、
R1およびR2はそれぞれ独立して、水素またはメチルであり、
R3~R6はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル(alkyl)、または炭素数3~20のシクロアルキル(cycloalkyl)であり、R3~R6のうちの互いに隣接する2個以上が互いに連結されて2価の脂肪族環を形成することができ、
nは0~10の整数である。
【0012】
また、本発明の他の一実施形態によれば、前記架橋剤化合物とアクリル酸系単量体が重合した重合体を含む高吸水性樹脂を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の架橋剤化合物は、従来知られていない新規な構造の化合物であって、炭素-炭素三重結合を含み、本発明の架橋剤化合物とアクリル酸系単量体が重合した重合体は一定温度以上で架橋構造が分解される熱分解性を示すことができる。
【0014】
したがって、本発明の架橋剤化合物を用いて製造された重合体は、重合直後には高い架橋密度を示して強度が高く工程性に優れて、後続する高温工程で内部架橋構造が分解されて架橋密度が低くなることによって吸収能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0016】
以下、本発明の架橋剤化合物およびこれを用いて製造される高吸水性樹脂についてより詳しく説明する。
【0017】
架橋剤化合物
本発明の一実施形態による架橋剤化合物は下記化学式1で表される。
【0018】
【0019】
上記化学式1中、
R1およびR2はそれぞれ独立して、水素またはメチルであり、
R3~R6はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル(alkyl)、または炭素数3~20のシクロアルキル(cycloalkyl)であり、R3~R6のうちの互いに隣接する2個以上が互いに連結されて2価の脂肪族環を形成することができ、
nは、0~10の整数である。
【0020】
本明細書において「アルキル(alkyl)」は1~20個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~5個の炭素原子の線状または分枝状の飽和された1価の炭化水素を意味する。アルキルの例として、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
また、「シクロアルキル(cycloalkyl)」は3~20個、好ましくは4~10個、より好ましくは5~10個の飽和された脂肪族環一価炭化水素を意味する。シクロアルキルの例としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
上記化学式1の架橋剤化合物は、炭素-炭素三重結合を含むジ(メタ)アクリレート系誘導体化合物で、新規な構造を有する。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、前記R1およびR2は水素であり得る。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、前記R3~R6はそれぞれ独立して、水素、または炭素数1~5のアルキルであり得る。好ましくは、前記R3~R6は水素、メチルまたはエチルであり得る。または、R3~R6は互いに隣接する2個が結合して形成されたシクロアルカンの2価基であり得る。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、前記nは0~5、または0~3、または0~1の整数である。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、上記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-1~1-3で構成される群から選択されるいずれか一つであり得るが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
【0028】
上記化学式1で表される化合物の用途はこれらに限定されるものではないが、高吸水性樹脂の製造過程でアクリル酸系単量体と重合時に架橋剤として使用され得る。
【0029】
高吸水性樹脂が吸収能側面から優れた物性を有するためには、基本的にアクリル酸系単量体の架橋重合体、すなわち、ベース樹脂が高い吸収能を示さなければならないし、このためには、ベース樹脂の内部架橋密度を低くして空間(pore)の面積を広くする必要がある。しかし、この場合、内部構造の不安定性によりベース樹脂の形状保持が難しく、これによって粉砕、乾燥、表面架橋などの後続工程時にベース樹脂の不均一性に起因した性能の不均一性が現れる。このような不均一性は、製品の品質維持側面から悪影響を及ぼすことになる。これを解決するために、内部架橋剤の種類または使用量などを調節して物性を向上させるための多様な試みが行われたものの、内部架橋剤の量を調節して架橋密度を下げることは様々な限界が存在する。
【0030】
そこで本発明は、特定温度で分解される新規な熱分解性内部架橋剤を提供することによって、これを解決できることに着目した。
【0031】
本発明の熱分解性内部架橋剤化合物の存在下に、アクリル酸系単量体を架橋重合した架橋重合体の場合、特定の温度で前記熱分解性内部架橋剤の熱分解が起こることで内部架橋密度が減少するようになり、これによって高吸収性樹脂の吸収性が増加する。一方、本発明の熱分解性内部架橋剤化合物は炭素-炭素三重結合(alkynyl)を含んでおり、このような炭素-炭素三重結合は、架橋重合体構造にそのまま維持されるので、吸収性の増加とは別に、ベース樹脂の形状維持に寄与できる。また、ベース樹脂に対して表面架橋反応を行った後にも、保水能および加圧吸水能がいずれも高い水準に維持され得る。
【0032】
上記化学式1の架橋剤化合物は公知の有機合成方法により製造することができ、例えば、下記反応式1のような方法で製造することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
【0034】
上記反応式1中、R1~R6およびnは上記化学式1で定義したとおりである。
【0035】
本発明の他の一実施形態によれば、上記化学式1で表される架橋剤化合物とアクリル酸系単量体が架橋重合した重合体を含む高吸水性樹脂を提供する。
【0036】
前記アクリル酸系単量体は、下記化学式2で表される化合物である:
【0037】
[化学式2]
R-COOM
【0038】
上記化学式2中、
Rは、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
Mは、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0039】
好ましくは、前記アクリル酸系単量体はアクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群から選択される1種以上を含む。
【0040】
ここで、前記アクリル酸系単量体は酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであり得る。
【0041】
参照として、本明細書において「重合体」、または「架橋重合体」は、アクリル酸系単量体が上記化学式1の架橋剤化合物の存在下で重合された状態であることを意味し、すべての水分含有量範囲または粒径範囲を包括することができる。前記重合体のうち、重合後乾燥前の状態のもので含水率(水分含有量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル重合体と称することができる。
【0042】
また、「ベース樹脂」または「ベース樹脂粉末」は、前記重合体を乾燥および粉砕してパウダー(powder)形態にしたものであって、表面架橋段階を行う以前の重合体で重合体表面に架橋構造が形成されない状態の重合体を意味する。
【0043】
上記化学式1で表される架橋剤化合物は熱分解性内部架橋剤であって、上記化学式1の化合物とアクリル酸系単量体が架橋重合した重合体の内部架橋構造は熱によって(例えば、180℃以上)分解されることができる。これにより、アクリル酸系単量体を上記化学式1の架橋剤化合物の存在下で架橋重合すれば、熱分解性内部架橋構造が導入された架橋重合体を提供することができる。
【0044】
以降、このような架橋重合体を表面架橋工程のように高温の後続工程に導入すれば、架橋重合体内の上記化学式1の化合物由来の架橋構造は少なくとも一部が分解される。これにより、架橋重合体内の内部架橋密度は減少することになる。これに対し、架橋重合体表面は表面架橋剤によって追加架橋されて外部架橋密度は増加する。したがって、上記化学式1で表される架橋剤化合物の存在下でアクリル酸単量体の架橋重合を進行してベース樹脂を製造し、該ベース樹脂に対して表面架橋のような後続工程を経ると、架橋重合体内の内部架橋構造は分解され、架橋重合体の表面は追加架橋されて樹脂の内部から外部に行くほど架橋密度が増加する高吸水性樹脂が得られる。
【0045】
このように製造された高吸水性樹脂は、既存の高吸水性樹脂のベース樹脂よりさらに減少した内部架橋密度を有することができる。これにより、前記高吸水性樹脂は、既存の高吸水性樹脂に比べて相対的に向上した保水能を示すことができる。
【0046】
また、前記高吸水性樹脂は内部架橋結合が分解された後、あるいは分解されながら表面架橋が進行して既存の高吸水性樹脂に比べてより厚い表面架橋層を有することができる。これにより、前記高吸水性樹脂は優れた加圧下吸水能を示すことができる。したがって、一実施形態の高吸水性樹脂は、内部から外部に行くほど架橋密度が増加することによって、保水能および加圧吸水能が互いに反比例の関係にあるという既存の常識とは異なり、保水能および加圧吸水能などの諸般物性が共に向上して、いずれも優れた特性を示すことができる。
【0047】
一方、炭素-炭素三重結合を含まない既存のジアクリレート系化合物を内部架橋剤として使用する場合、高吸水性樹脂の保水能は向上するが、加圧吸水能が低下して最終製品に適用するには適当でない物性を示す。このような現象は、熱分解後に増えた空間により構造が緩くなったためと考えられ、これに対し、本発明の架橋剤化合物は炭素-炭素三重結合の硬い構造であるため、高吸水性樹脂の加圧吸水能は維持されながら保水能が向上する効果を奏する。
【0048】
そこで、本発明の一実施形態により上記化学式1で表される架橋剤化合物とアクリル酸系単量体が架橋重合した重合体は、表面架橋前180℃以上の温度、例えば185℃の温度で40分間露出した後、遠心分離保水能(CRC)が露出前より5%以上、例えば5%~30%、または5%~25%増加することができる。
【0049】
また、前記重合体は、上記化学式1の架橋剤化合物以外に、従来公知の内部架橋剤がさらに架橋されたものであり得る。
【0050】
このような従来の内部架橋剤としては分子内に2個以上の架橋性官能基を含む化合物を使用することができる。前記従来の内部架橋剤の具体的な例としては、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、およびエチレンカーボネートからなる群から選択される1種以上を使用することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
本発明の高吸水性樹脂は、前記重合体の表面に形成された表面架橋層をさらに含むことができる。
【0052】
表面架橋は、前記重合体粒子表面の架橋結合密度を増加させる通常の方法で行うことができ、例えば、表面架橋剤を含む溶液と前記重合体を混合して架橋反応させる方法で行われ得る。また、前記表面架橋剤としては、重合体が有する官能基と反応可能な化合物であればその構成の限定なしに使用することができる。
【0053】
本発明の一実施形態により前記重合体、および前記重合体の表面に形成された表面架橋層を含む高吸水性樹脂は、EDANA法NWSP 241.0.R2により測定した遠心分離保水能(CRC)が33g/g以上、または34g/g以上であり、かつ50g/g以下、または45g/g以下であり得る。
【0054】
また、本発明の一実施形態により前記重合体、および前記重合体の表面に形成された表面架橋層を含む高吸水性樹脂は、EDANA法NWSP 242.0.R2により測定した0.7psiの加圧吸水能(AUP)が21g/g以上、または22g/g以上であり、かつ30g/g以下、または28g/g以下であり得る。
【0055】
上述したように、本発明の重合体は、上記化学式1の新規な架橋剤化合物の特性により熱分解性内部架橋構造の一部が重合工程後の高温の後続工程で一部が分解されて内部から外部に行くほど架橋密度が増加する形態を有することによって、保水能と加圧吸水能などの諸般物性が共に向上した非常に優れた特性を示すことができる。
【0056】
これにより、前記高吸水性樹脂は高温の生産工程を経ても、優れた吸収の諸般物性を有するおむつなどの衛生用品を提供することができる。
【0057】
以下、本発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は発明を例示したものに過ぎず、発明の権利範囲がこれによって定まるものではない。
【0058】
<実施例>
<架橋剤化合物の合成実施例>
実施例1:4-メチルペンタ-2-イン-1,4-ジイルジアクリレート(4-methylpent-2-yne-1,4-diyl diacrylate)の合成
【0059】
【0060】
tBuOK(カリウムtert-ブトキシド、potassium tert-butoxide)123.4g(1.1当量)をTHFに溶かした後、攪拌しながら温度を0℃で冷却した。この反応溶液にプロパルギルアルコール(propargyl alcohol)56.1g(基準物質、1当量)をTHFに溶かして温度上昇に留意しながら、ゆっくり滴下(dropwise)で投入した。約30分間攪拌後、アセトン81.5g(1.1当量)を反応溶液にゆっくり滴下(dropwise)で投入した。投入が完了した後、反応温度を常温で上昇させながら約12時間攪拌した。TLCを用いて反応終了の可否を判断した後、減圧してTHFと未反応アセトンを除去した。残った有機オイルに水とヘキサンを添加して非極性副反応物をヘキサン層で除去した。
【0061】
水溶液層に塩を添加して飽和させ、EAを用いて3~4回抽出して生成された4-メチルペンタ-2-イン-1,4-ジオール(4-methylpent-2-yne-1,4-diol)を有機層に抽出し、有機物層に残った水分はNa2SO4を用いて除去した。固相をフィルターで除去し、残った有機溶媒を真空状態で除去して、所望の4-メチルペンタ-2-イン-1,4-ジオール(4-methylpent-2-yne-1,4-diol)を約95%の収率で得た。
【0062】
【0063】
(1)で合成した4-メチルペンタ-2-イン-1,4-ジオール(4-methylpent-2-yne-1,4-diol)5.7gをCH2Cl2 50ml(1.0M)に溶かして攪拌しながら0℃に温度を下げた。トリエチルアミン12.6g(2.5当量)とDMAP 610mg(0.1当量)を入れた後、塩化アクリロイル(acryloyl chloride)9.5g(2.1当量)をゆっくり添加した。
【0064】
添加が完了した後、反応温度を常温で上昇させ、約12時間攪拌した。反応が終了した後、反応溶媒をセライトパッドを通してろ過し、溶媒を真空条件で除去した。残った有機物を水とEAを用いて抽出し、有機物層に残った水分はNa2SO4を用いて除去した。固相をフィルターで除去し、残った有機溶媒を真空状態で除去して、表題の架橋剤化合物を77%の収率で得た。
【0065】
1H NMR(500MHz、CDCl3):δ6.45(dd、J=17.4、1.2Hz、1H)、6.37(dd、J=17.4、1.2Hz、1H)、6.15(dd、J=17.4、10.5Hz、1H)、6.06(dd、J=17.5、10.5Hz、1H)、5.87(dd、J=10.5、1.2Hz、1H)、5.80(dd、J=10.5、1.2Hz、1H)、4.81、(s、2H)、1.71(s、6H)
【0066】
実施例2:2,5-ジメチルヘキサ-3-イン-2,5-ジイルジアクリレート(2,5-dimethylhex-3-yne-2,5-diyl diacrylate)の合成
【0067】
【0068】
tBuOK(カリウムtert-ブトキシド、potassium tert-butoxide)1.12g(0.1当量)をTHFに溶かした後、攪拌しながら温度を0℃で冷却した。この反応溶液に2-メチルブタ-3-イン-2-オール(2-methylbut-3-yn-2-ol)8.4g(基準物質、1当量)をTHFに溶かして温度上昇に留意しながらゆっくり滴下(dropwise)で投入した。約30分間攪拌後、アセトン5.8g(1.1当量)を反応溶液にゆっくり滴下(dropwise)で投入した。投入が完了した後、反応温度を常温で上昇させ、約12時間攪拌した。TLCを用いて反応終了の可否を判断した後、減圧してTHFと未反応アセトンを除去した。残った有機オイルに水とヘキサンを添加して非極性副反応物をヘキサン層で除去した。
【0069】
水溶液層に塩を添加して飽和させ、EAを用いて3~4回抽出して生成された2,5-ジメチルヘキサ-3-イン-2,5-ジオール(2,5-dimethylhex-3-yne-2,5-diol)を有機層に抽出し、有機物層に残った水分はNa2SO4を用いて除去した。固相をフィルターで除去し、残った有機溶媒を真空状態で除去して、所望の2,5-ジメチルヘキサ-3-イン-2,5-ジオール(2,5-dimethylhex-3-yne-2,5-diol)を約95%の収率で得た。
【0070】
【0071】
(1)で合成した2,5-ジメチルヘキサ-3-イン-2,5-ジオール(2,5-dimethylhex-3-yne-2,5-diol)5.7gをCH2Cl2(1.0M)に溶かして攪拌しながら0℃に温度を下げた。トリエチルアミン12.6g(2.5当量)とDMAP 610mg(0.1当量)を入れた後、塩化アクリロイル(acryloyl chloride)9.5g(2.1当量)をゆっくり添加した。
【0072】
添加が完了した後、反応温度を常温で上昇させ、約12時間攪拌した。反応が終了した後、反応溶媒をセライトパッドを通してろ過し、溶媒を真空条件で除去した。残った有機物を水とEAを用いて抽出し、有機物層に残った水分はNa2SO4を用いて除去した。固相をフィルターで除去し、残った有機溶媒を真空状態で除去して表題の架橋剤化合物を91%の収率で得た。
【0073】
1H NMR(500MHz、CDCl3):δ6.34(dd、J=17.4、1.2Hz、2H)、6.06(dd、J=17.5、10.5Hz、2H)、5.77(dd、J=10.5、1.2Hz、2H)、1.67(s、12H)
【0074】
実施例3:1-(3-(アクリロイルオキシ)-3-メチルブタ-1-イン-1-イル)シクロヘキシルアクリレート(1-(3-(acryloyloxy)-3-methylbut-1-yn-1-yl)cyclohexyl acrylate)の合成
【0075】
【0076】
tBuOK(カリウムtert-ブトキシド、potassium tert-butoxide)611mg(0.1当量)をTHFに溶かした後、攪拌しながら温度を0℃で冷却した。この反応溶液に2-メチルブタ-3-イン-2-オール(2-methylbut-3-yn-2-ol)4.2g(基準物質、1当量)をTHFに溶かして温度上昇に留意しながらゆっくり滴下(dropwise)で投入した。約30分間攪拌後、シクロヘキサノン4.9g(1当量)を反応溶液にゆっくり滴下(dropwise)で投入した。投入が完了した後、反応温度を常温で上昇させ、約12時間攪拌した。TLCを用いて反応終了の可否を判断した後、減圧してTHFを除去した。残った有機オイルに水とヘキサンを添加して非極性副反応物をヘキサン層で除去した。
【0077】
水溶液層に塩を添加して飽和させ、EAを用いて3~4回抽出して生成された1-(3-ヒドロキシ-3-メチルブタ-1-イン-1-イル)シクロヘキサン-1-オール(1-(3-hydroxy-3-methylbut-1-yn-1-yl)cyclohexan-1-ol)を有機層に抽出し、有機物層に残った水分はNa2SO4を用いて除去した。固相をフィルターで除去し、残った有機溶媒を真空状態で除去して、所望の1-(3-ヒドロキシ-3-メチルブタ-1-イン-1-イル)シクロヘキサン-1-オール(1-(3-hydroxy-3-methylbut-1-yn-1-yl)cyclohexan-1-ol)を約67%の収率で得た。
【0078】
【0079】
(1)で合成した1-(3-ヒドロキシ-3-メチルブタ-1-イン-1-イル)シクロヘキサン-1-オール(1-(3-hydroxy-3-methylbut-1-yn-1-yl)cyclohexan-1-ol)1.4gをCH2Cl2(1.0M)に溶かして攪拌しながら0℃に温度を下げた。トリエチルアミン1.3g(2.5当量)とDMAP 61mg(0.1当量)を入れた後、塩化アクリロイル(acryloyl chloride)950mg(2.1当量)をゆっくり添加した。
【0080】
添加が完了した後、反応温度を常温で上昇させ、約12時間攪拌した。反応が終了した後、反応溶媒をセライトパッドを通してろ過し、溶媒を真空条件で除去した。残った有機物を水とEAを用いて抽出し、有機物層に残った水分はNa2SO4を用いて除去した。固相をフィルターで除去し、残った有機溶媒を真空状態で除去して、表題の架橋剤化合物を62%の収率で得た。
【0081】
1H NMR(500MHz、CDCl3):δ6.37-6.32(m、2H)、6.10-6.03(m、2H)、5.80-5.76(m、2H)、1.80-1.50(m、10H)、1.70(s、6H)
【0082】
比較例1
【0083】
【0084】
2-メチルプロパン-1,2-ジオール(2-methylpropane-1,2-diol)2.7g(1当量、基準物質)をCH2Cl2(2.0M)に溶かして攪拌しながら0℃に温度を下げた。TEA 7.6g(2.5当量)とDMAP 366mg(0.1当量)を入れた後、塩化アクリロイル(acryloyl chloride)5.7g(2.1当量)をゆっくり添加した。添加が完了した後、反応温度を常温で上昇させ、約12時間攪拌した。反応が終了した後、反応溶媒を減圧して除去した。この時、CH2Cl2がある程度除去されると固体が析出することを確認した。この固体を水に溶かしてEAで3回抽出し、集めた有機層に残っている水分をNa2SO4を用いて除去した。
【0085】
有機溶媒を減圧して除去し得られた茶色オイルにヘキサンを添加し、生成された固相をセライトパッドを通して除去し得られた明るい黄色溶液を減圧して濃縮すれば、透明な色のオイル状の2-メチルプロパン-1,2-ジイルジアクリレート(2-methylpropane-1,2-diyl diacrylate)を81%の収率で得た。
【0086】
1H NMR(500MHz、CDCl3):δ6.42(dd、J=17.2、1.2Hz、1H)、6.31(dd、J=17.3、1.2Hz、1H)、6.17(dd、J=17.4、10.3Hz、1H)、6.06(dd、J=17.5、10.5Hz、1H)、5.86(dd、J=10.2、1.2Hz、1H)、5.76(dd、J=10.5、1.1Hz、1H)、4.36、(s、2H)、1.54(s、6H)
【0087】
<高吸水性樹脂の製造実施例>
実施例4
ガラス反応器にアクリル酸100g、内部架橋剤として実施例1の架橋剤0.6g、Irgacure TPO(ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)0.008g、ラポナイト0.18gおよび水55gを注入した。そして、前記ガラス反応器に、32重量%苛性ソーダ溶液123.5gを徐々に滴下して混合した。
【0088】
前記苛性ソーダ溶液の滴下時には中和熱によって混合溶液の温度が上昇して混合溶液が冷却されるのを待った。前記混合溶液の温度が約40℃で冷却されると、混合溶液に過硫酸ナトリウム0.2gを添加して単量体混合物を製造した。
【0089】
幅10cm、長さ2mのベルトが50cm/minの速度で回転するコンベヤーベルト上に単量体混合物を500~2000mL/minの速度で供給した。そして、単量体混合物の供給と同時に10mW/cm2の強さを有する紫外線を照射して60秒間重合反応を進行した。
【0090】
そして、前記重合反応により得られた重合体をミートチョッパー(meat chopper)を用いて直径が10mmのホールを通過させて粉(crump)で製造した。次いで、上下に風量転移が可能なオーブンを用いて185℃のホットエアー(hot air)を20分間下方から上方に流れるようにし、再び20分間上方から下方に流れるようにして前記粉(crump)を均一に乾燥させた。乾燥された粉を粉砕機で粉砕した後、分級して150~850μm大きさのベース樹脂を得た。
【0091】
上記で製造したベース樹脂粉末100gに超純水3.2g、メタノール4.0g、エチレンカーボネート0.088g、シリカ(商品名:REOLOSIL DM30S、製造会社:Tokuyama Corporation)0.01gを混合した溶液を投与し1分間混合した後、185℃で90分間表面架橋反応を行った。
【0092】
そして、得られた生成物を粉砕し分級して、粒径が150~850μmの高吸水性樹脂を得た。
【0093】
実施例5
内部架橋剤として実施例1の架橋剤の代わりに実施例2の架橋剤0.6gを使用したことを除いては実施例4と同様の方法で、高吸水性樹脂を製造した。
【0094】
実施例6
内部架橋剤として実施例1の架橋剤の代わりに実施例3の架橋剤0.6gを使用したことを除いては実施例4と同様の方法で、高吸水性樹脂を製造した。
【0095】
比較例2
内部架橋剤として実施例1の架橋剤の代わりにポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)0.26gを使用したことを除いては実施例1と同様の方法で、高吸水性樹脂を製造した。
【0096】
比較例3
内部架橋剤として実施例1の架橋剤の代わりに比較例1の架橋剤0.6gを使用したことを除いては実施例4と同様の方法で、ベース樹脂を製造した。
【0097】
<実験例>
ベース樹脂の熱分解性評価
本発明の架橋剤化合物とアクリル酸系単量体が重合した重合体にあたって、高温での熱分解性とこれに伴う吸収能変化を評価するために実施例および比較例でのベース樹脂(表面架橋処理前)に対して185℃で熱処理し、時間に応じた遠心分離保水能の変化を測定して下記表1に記載した。
【0098】
(1)遠心分離保水能(CRC、Centrifuge Retention Capacity)
前記高吸水性樹脂の生理食塩水に対する無荷重下の吸水倍率による保水能をEDANA法NWSP 241.0.R2により測定した。
【0099】
具体的には、遠心分離保水能を測定しようとする高吸水性樹脂のうち、米国標準20メッシュスクリーンは通過し、米国標準100メッシュスクリーン上には維持される粒径が150~850μmのサンプルを準備した。
【0100】
そして、粒径が150~850μmのサンプルW0(g、約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した。そして、常温で0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)に前記封筒を浸水させた。30分後に封筒を遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に封筒の重量W2(g)を測定した。一方、サンプルを入れない空封筒を用いて同じ操作をした後、その時の重量W1(g)を測定した。
【0101】
このようにして得られた各重量を用いて次の計算式1によって遠心分離保水能を確認した。
【0102】
[計算式1]
CRC(g/g)={[W2(g)-W1(g)]/W0(g)}-1
【0103】
上記計算式1中、
W0(g)は、粒径が150~850μmのサンプルの初期重量(g)であり、
W1(g)は、常温で生理食塩水にサンプルを入れない不織布製の空封筒を30分間浸水させた後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に測定した不織布製の空封筒の重量であり、
W2(g)は、常温で生理食塩水にサンプルが入っている不織布製の封筒を30分間浸水して吸収させた後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後、サンプルを含めて測定した不織布製の封筒の重量である。
【0104】
【0105】
表1を参照すると、化学式1の新規架橋剤化合物の存在下で、アクリル酸単量体を架橋重合した実施例4~6の場合、高温(185℃)で熱処理したとき、時間に応じて保水能が増加した。これは、高温によって重合体の内部架橋構造が分解されて架橋密度が低くなったためと考えられる。
【0106】
これに対し、従来の架橋剤を用いた比較例2では、熱処理時間が経過しても保水能の有意な増加を示さなかった。比較例3では熱処理時間に応じた保水能の増加傾向を示したが、初期保水能が低かった。
【0107】
高吸水性樹脂の物性評価
表面架橋処理された実施例4、5、6および比較例2、3の高吸水性樹脂に対して次のような方法で物性を評価した。
【0108】
(1)遠心分離保水能(CRC、Centrifuge Retention Capacity)
EDANA法NWSP 241.0.R2により遠心分離保水能を測定した。具体的な実験方法は、前記ベース樹脂の遠心分離保水能の測定法と同様である。
【0109】
(2)加圧吸水能(AUP)
各高吸水性樹脂の0.7psiの加圧吸水能を、EDANA法NWSP 242.0.R2により測定した。
【0110】
具体的には、内径25mmのプラスチックの円筒底にステンレス製400メッシュ金網を取り付けた。常温および湿度50%の条件下で金網上に高吸水性樹脂W0(g)(0.9g)を均一に散布し、その上に0.7psiの荷重を均一にさらに付与できるピストンは外径25mmより若干小さく円筒の内壁との隙間がなく、上下動きに妨害されないようにした。この時、前記装置の重量W3(g)を測定した。
【0111】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルターを置いて、0.9重量%塩化ナトリウムで構成された生理食塩水をガラスフィルターの上面と同一レベルになるようにした。その上に直径90mmのろ過紙1枚を載せた。ろ過紙の上に前記測定装置を載せて、液を荷重下で1時間吸収させた。1時間後に測定装置を持ち上げて、その重量W4(g)を測定した。
【0112】
得られた各質量を用いて次の式により加圧吸水能(g/g)を算出した。
【0113】
[計算式2]
AUP(g/g)=[W4(g)-W3(g)]/W0(g)
【0114】
【0115】
上記表2を参照すると、類似の程度の保水能を有する実施例4と比較例2または3を比べると、本発明の実施例による高吸水性樹脂がさらに向上した加圧吸水能を示すことを確認できた。また、実施例5および6では比較例より高い保水能を示しながらも加圧吸水能は同等の水準を維持した。
【0116】
実施例同士を比較すると、保水能および加圧吸水能をいずれも向上させる効果面において、実施例4および5の方が実施例6より多少優れていることが確認された。