(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 25/12 20060101AFI20220314BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20220314BHJP
C08L 55/02 20060101ALI20220314BHJP
C08K 5/3472 20060101ALI20220314BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20220314BHJP
C08K 5/524 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
C08L25/12
C08L33/04
C08L55/02
C08K5/3472
C08K5/13
C08K5/524
(21)【出願番号】P 2020549542
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(86)【国際出願番号】 KR2019003197
(87)【国際公開番号】W WO2019182332
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-06-03
(31)【優先権主張番号】10-2018-0032285
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0030766
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ビュン・イル・カン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジュン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ダ・ウン・スン
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0319128(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0021631(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0074462(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0062888(KR,A)
【文献】特開平10-007854(JP,A)
【文献】特開2010-070646(JP,A)
【文献】特開2007-091809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位
のみからなる第1共重合体;
アルキル(メタ)アクリレート系単量体由来単位、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位
のみからなる第2共重合体;
平均粒径が0.25から0.35μmである共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第3共重合体;及び
平均粒径が0.05から0.15μmである共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第4共重合体を含
み、
前記第1共重合体は、屈折率が1.55から1.57であり、
前記第2共重合体から第4共重合体は、屈折率がそれぞれ独立して1.51から1.53である、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記第1共重合体60から70重量%;
前記第2共重合体10から20重量%;
前記第3共重合体15から25重量%;及び
前記第4共重合体5から15重量%を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記第2共重合体は、
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体由来単位65から80重量%;
前記芳香族ビニル系単量体由来単位3から15重量%;及び
前記ビニルシアン系単量体由来単位10から25重量%を含む、請求項1
又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記第2共重合体は、重量平均分子量が50,000から150,000g/molである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記第3共重合体は、
前記共役ジエン系重合体55から70重量%;
前記芳香族ビニル系単量体由来単位20から35重量%;及び
前記ビニルシアン系単量体由来単位5から20重量%を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記第4共重合体は、
前記共役ジエン系重合体45から60重量%;
前記芳香族ビニル系単量体由来単位30から45重量%;及び
前記ビニルシアン系単量体由来単位5から20重量%を含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
UV安定剤及び酸化防止剤からなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記添加剤は、前記第1から第4共重合体の合計100重量部に対して、0.2から1.1重量部で含まれる、請求項
7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位
のみからなる第1共重合体;
アルキル(メタ)アクリレート系単量体由来単位、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位
のみからなる第2共重合体;
平均粒径が0.25から0.35μmである共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第3共重合体;及び
平均粒径が0.05から0.15μmである共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第4共重合体を含み、
前記第1及び第2共重合体を含むマトリックス領域と前記第3及び第4共重合体を含む衝撃補強領域との屈折率の差が0.01から0.04であ
り、
前記マトリックス領域は、屈折率が1.53から1.55であり、
前記衝撃補強領域は、屈折率が1.51から1.52である、熱可塑性樹脂成形品。
【請求項10】
照度が80lux以上であり、
衝撃強度が15kg・cm/cm以上であり、
前記照度は、前記熱可塑性樹脂成形品を3mmの試片で製造した後、前記試片の真後ろでLED光源を照らして透過された光源の照度である、請求項
9に記載の熱可塑性樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本発明は、2018年3月20日に出願された韓国特許出願第10-2018-0032285号及び2019年3月18日に出願された韓国特許出願第10-2019-0030766号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関し、選択的透過度を具現しながら、基本物性も優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
透明熱可塑性樹脂組成物は、アルキル(メタ)アクリレート系単量体由来単位、芳香族ビニル系単量体由来単位、及びビニルシアン系単量体由来単位を含むマトリックス共重合体と;共役ジエン系重合体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体由来単位、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含むグラフト共重合体を含み、マトリックス共重合体とグラフト共重合体の屈折率を1.515から1.516に調節して透明度を確保した。このような透明熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品は、室温で常に透明であることを特徴とした。
【0004】
最近、家電トレンドでは、多様でかつユニークな外観を要求しているが、例えば、日常では不透明であるが、電源をつけると計器盤の文字が鮮明に現われる物性、すなわち視認性(選択的透過度)を要求している。
【0005】
しかし、選択的透過度を具現しながら、基本物性も優れた熱可塑性樹脂組成物の開発は、現在、充分ではないのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、選択的透過度を具現しながら、基本物性である加工性、機械的特性、色相特性及び耐久性も優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第1共重合体;アルキル(メタ)アクリレート系単量体由来単位、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第2共重合体;平均粒径が0.25から0.35μmである共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第3共重合体;及び平均粒径が0.05から0.15μmである共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第4共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第1共重合体;アルキル(メタ)アクリレート系単量体由来単位、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第2共重合体;平均粒径が0.25から0.35μmである共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第3共重合体;及び平均粒径が0.05から0.15μmである共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第4共重合体を含み、前記第1及び第2共重合体を含むマトリックス領域と前記第3及び第4共重合体を含む衝撃補強領域との屈折率の差が0.01から0.04である熱可塑性樹脂成形品を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物で成形品を製造すると、選択的透過度を具現できながら、優れた基本物性、すなわち優れた加工性、機械的特性、色相特性及び耐久性を具現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳しく説明する。
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0012】
本発明における屈折率は、物質の絶対屈折率を意味するものであって、屈折率は、自由空間での電磁輻射線の速度対物質内での輻射線の速度比として認識されるが、このとき、輻射線は、波長が450nmから680nmの可視光である。屈折率は、公知の方法、すなわち一般的にアッベ屈折計(Abbe Refractometer)を用いて測定することができる。
【0013】
本発明における共役ジエン系重合体の平均粒径は、動的光散乱(dynamic light scattering)法を用いて測定することができ、詳しくはNicomp380装備(製品名、製造社:PSS)を用いて測定することができる。
【0014】
本明細書における平均粒径は、動的光散乱法によって測定される粒度分布における算術平均粒径、すなわち散乱強度(Intensity Distribution)の平均粒径を意味することができる。
【0015】
本発明における重量平均分子量は、溶出液でTHF(テトラヒドロフラン)を用いて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography,waters breeze)を介して標準PS(ポリスチレンスタンダード;standard polystyrene)試料に対する相手値で測定することができる。
【0016】
1.熱可塑性樹脂組成物
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、1)芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第1共重合体;2)アルキル(メタ)アクリレート系単量体由来単位、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第2共重合体;3)平均粒径が0.25から0.35μmである共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第3共重合体;及び4)平均粒径が0.05から0.15μmである共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第4共重合体を含む。
【0017】
一般的に、第1共重合体と第3共重合体と第4共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物で製造された熱可塑性樹脂成形品は、これらの屈折率の差によって不透明な特性を有する。しかし、熱可塑性樹脂組成物に特定の組成を有する第2共重合体をさらに含ませると、第4共重合体とのシナジー作用が起こるので、日常、すなわち別の光源が提供されないときには不透明な特性を有するが、別の光源が提供されるときには、熱可塑性樹脂成形品の内部に存在する文字及び光などが鮮明に現われる特性、すなわち選択的透過度を具現する熱可塑性樹脂成形品が製造されるということを見出し、よって本発明を完成した。
【0018】
一方、前記第1及び第2共重合体は、マトリックス樹脂の役割を担うことができ、前記第3及び第4共重合体は、衝撃補強剤の役割を担うことができる。
【0019】
本発明の実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、5)UV安定剤及び酸化防止剤からなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含んでよい。
【0020】
以下、本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物の構成要素に対して詳しく説明する。
【0021】
1)第1共重合体
第1共重合体は、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む。
【0022】
前記第1共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の物性のバランス、すなわち、機械的特性、加工性及び耐熱性のバランスを調節するために含まれ得る。
【0023】
そして、前記第1共重合体は、熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品に選択的透過度、すなわち成形品に光源が提供されないとき、すなわち日常では、成形品が不透明になることで、成形品の内部に存在する文字などが現われない特性を付与することができる。
【0024】
前記第1共重合体は、屈折率が1.55から1.57、1.56から1.57または1.565から1.57であってよく、このうち1.565から1.57であるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、前記第3及び第4共重合体の共役ジエン系重合体と屈折率が類似するので、選択的透過度を容易に具現することができる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物の構成要素等の間の屈折率のバランスをより容易に調節することができる。
【0025】
前記芳香族ビニル系単量体由来単位は、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、及びp-メチルスチレンからなる群から選択される1種以上の由来単位であってよく、このうちスチレンの由来単位が好ましい。
【0026】
前記ビニルシアン系単量体由来単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル及びα-クロロアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上の由来単位であってよく、このうちアクリロニトリルの由来単位が好ましい。
【0027】
前記第1共重合体は、前記第1共重合体の総重量に対して、前記芳香族ビニル系単量体由来単位を75から85重量%または75から80重量%で含んでよく、このうち75から80重量%で含むのが好ましい。
【0028】
前記第1共重合体は、前記第1共重合体の総重量に対して、前記ビニルシアン系単量体由来単位を15から25重量%または20から25重量%で含んでよく、このうち20から25重量%で含むのが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の物性のバランス、すなわち、機械的特性、加工性及び耐熱性のバランスをより容易に調節することができる。
【0029】
前記第1共重合体は、重量平均分子量が90,000から180,000g/molまたは100,000から150,000g/molであってよく、このうち100,000から150,000g/molであるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の物性のバランス、すなわち機械的特性、加工性及び耐熱性のバランスをより容易に調節することができる。
【0030】
前記第1共重合体は、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を塊状重合、乳化重合及び懸濁重合からなる群から選択される1以上の方法で重合して製造してよく、このうち塊状重合で製造するのが好ましい。
【0031】
塊状重合の場合、乳化剤または懸濁剤などの添加剤が投入されないので、共重合体内の不純物の量が最小化された高純度の共重合体を製造することができる。よって、選択的透過度を具現する熱可塑性樹脂組成物には、塊状重合で製造された共重合体が含まれることが有利である。
【0032】
前記第1共重合体は、市販される物質を用いてよい。
【0033】
前記第1共重合体は、前記熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して、60から70重量%または65から70重量%で含まれてよく、このうち65から70重量%が好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の物性のバランス、すなわち機械的特性、加工性及び耐熱性のバランスをより容易に調節しながら、目標物性を容易に確保することができる。
【0034】
2)第2共重合体
第2共重合体は、アルキル(メタ)アクリレート系単量体由来単位、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む。
【0035】
前記第2共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に優れた剛性、耐スクラッチ性及び着色性を付与することができる。
【0036】
そして、前記第2共重合体は、前記第4共重合体とのシナジー作用により熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品に選択的透過度、すなわち成形品に光源が提供されるとき光が成形品を通過して、成形品の内部に存在する文字及び光などが鮮明に現われる特性を付与することができる。
【0037】
前記第2共重合体は、屈折率が1.51から1.53、1.515から1.53、1.515から1.525または1.515から1.52であってよく、このうち1.515から1.52であるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品の選択的透過度の調節が容易であり得る。
【0038】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体由来単位は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート及びラウリル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上の由来単位であってよく、このうちメチルメタクリレート由来単位が好ましい。
【0039】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体由来単位は、前記第2共重合体の総重量に対して、65から80重量%または70から75重量%であってよく、このうち70から75重量%であるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、第2共重合体の選択的透過度、剛性及び耐スクラッチ性がより改善され得る。
【0040】
前記芳香族ビニル系単量体由来単位の種類は、前記第1共重合体に対する説明に記載した通りである。
【0041】
前記芳香族ビニル系単量体由来単位は、前記第2共重合体の総重量に対して、3から15重量%または5から10重量%で含まれてよく、このうち5から10重量%で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、第2共重合体の剛性及び加工性がより改善され得る。
【0042】
前記ビニルシアン系単量体由来単位の種類は、第1共重合体に対する説明に記載した通りである。
【0043】
前記ビニルシアン系単量体由来単位は、第2共重合体の総重量に対して、10から25重量%または15から20重量%であってよく、このうち15から20重量%が好ましい。前述した範囲を満たすと、第2共重合体の耐化学性、剛性及び機械的特性がより改善され得る。
【0044】
前記第2共重合体は、重量平均分子量が50,000から150,000g/molまたは70,000から130,000g/molであってよく、このうち70,000から130,000g/molが好ましい。前述した範囲を満たすと、第2共重合体の物性のバランスを容易に調節することができる。
【0045】
前記第2共重合体は、アルキル(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を塊状重合、乳化重合及び懸濁重合からなる群から選択される1以上の方法で重合して製造してよく、このうち塊状重合で製造するのが好ましい。
【0046】
塊状重合の場合、乳化剤または懸濁剤などの添加剤が投入されないので、共重合体内の不純物の量が最小化された高純度の共重合体を製造することができる。よって、選択的透過度を具現する熱可塑性樹脂組成物には、塊状重合で製造された共重合体が含まれることが有利である。
【0047】
前記第2共重合体は、市販される物質を用いてよい。
【0048】
前記第2共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して、10から20重量%または10から15重量%で含まれてよく、このうち10から15重量%が好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の剛性、耐スクラッチ性及び選択的透過度をより改善させながら、光源が提供されるときには、透明な特性をより容易に維持することができる。
【0049】
3)第3共重合体
第3共重合体は、平均粒径が0.25から0.35μmである共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む。
【0050】
前記第3共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に優れた耐化学性、機械的特性、加工性及び表面光沢特性を付与することができる。そして、前記第3共重合体は、熱可塑性樹脂成形品内で衝撃補強剤の役割を行うことができる。
【0051】
前記第3共重合体は、屈折率が1.51から1.53、1.515から1.53、1.515から1.525または1.515から1.52であってよく、このうち1.515から1.52であるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の構成要素等の間の屈折率のバランスをより容易に調節することができる。
【0052】
前記共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体が重合されて製造された共役ジエン系重合体に、芳香族ビニル系単量体とビニルシアン系単量体がグラフト重合されることで、変性された共役ジエン系重合体を含むことができる。ここで、前記共役ジエン系重合体は、共役ジエン系ゴム質重合体であってよい。
【0053】
前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン及びピペリレンからなる群から選択された1種以上であってよく、このうち1,3-ブタジエンが好ましい。
【0054】
前記共役ジエン系重合体は、平均粒径が0.25から0.35μmであり、好ましくは0.27から0.33μmである。平均粒径が前述した範囲未満であれば、熱可塑性樹脂組成物の機械的特性が低下し、前述した範囲を超過すれば、熱可塑性樹脂組成物の表面光沢及び強度が低下する。
【0055】
前記共役ジエン系重合体は、前記第3共重合体の総重量に対して、55から70重量%または60から65重量%で含まれてよく、このうち60から65重量%で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、第3共重合体の剛性、機械的特性、加工性及び表面光沢がより改善され得る。
【0056】
前記芳香族ビニル系単量体由来単位の種類は、前記第1共重合体に対する説明に記載した通りである。
【0057】
前記芳香族ビニル系単量体由来単位は、前記第3共重合体の総重量に対して、20から35重量%または25から30重量%で含まれてよく、このうち25から30重量%で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性、剛性、機械的特性、加工性及び表面光沢がより改善され得る。
【0058】
前記ビニルシアン系単量体由来単位の種類は、第1共重合体に対する説明に記載した通りである。
【0059】
前記ビニルシアン系単量体由来単位は、第3共重合体の総重量に対して、5から20重量%または10から15重量%であってよく、このうち10から15重量%が好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性、剛性、機械的特性、加工性及び表面光沢がより改善され得る。
【0060】
前記第3共重合体は、共役ジエン系単量体を塊状重合、乳化重合及び懸濁重合からなる群から選択される1以上の方法で重合して共役ジエン系重合体を製造し、前記共役ジエン系重合体の存在下に、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を塊状重合、乳化重合及び懸濁重合からなる群から選択される1以上の方法で重合して製造してよい。このうち、共役ジエン系重合体及び第3共重合体は、乳化重合で製造するのが好ましい。
【0061】
乳化重合で共役ジエン系重合体を製造すると、前述した平均粒径を有する共役ジエン系重合体を容易に製造することができ、このような共役ジエン系重合体の存在下に、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を乳化重合して第3共重合体を製造すると、機械的特性及び表面光沢特性がより改善されたグラフト共重合体を製造することができる。
【0062】
前記第3共重合体は、市販される物質を用いてよい。
【0063】
前記第3共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して、15から25重量%または15から20重量%で含まれてよく、このうち15から20重量%が好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の機械的特性をより改善させ得る。
【0064】
4)第4共重合体
第4共重合体は、平均粒径が0.05から0.15μmである共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む。
【0065】
前記第4共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に優れた加工性及び表面光沢特性を付与するだけでなく、前記第3共重合体とのシナジー作用により熱可塑性樹脂成形品内で衝撃補強剤の役割も行うことができる。
【0066】
そして、前記第4共重合体は、前記第2共重合体とのシナジー作用により熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品に選択的透過度、すなわち成形品に光源が提供されるとき光が成形品を通過して、成形品の内部に存在する文字及び光などが鮮明に現われる特性を付与することができる。
【0067】
前記第4共重合体は、屈折率が1.51から1.53、1.515から1.53、1.515から1.525または1.515から1.52であってよく、このうち1.515から1.52であるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、前記第1共重合体から第4共重合体の間の屈折率がより容易に調節され、選択的透過度を有する熱可塑性樹脂成形品を製造することができる。
【0068】
前記共役ジエン系重合体に対する説明は、第3共重合体に対する説明に記載した通りである。
【0069】
前記共役ジエン系重合体は、平均粒径が0.05から0.15μmであり、好ましくは0.07から0.13μmである。前述した範囲未満であれば、熱可塑性樹脂組成物の機械的特性が顕著に低下され、前述した範囲を超過すれば、光が共役ジエン系重合体の界面で屈折されるので、熱可塑性樹脂組成物が選択的透過度を具現することができない。
【0070】
前記共役ジエン系重合体は、前記第4共重合体の総重量に対して、45から60重量%または50から55重量%で含まれてよく、このうち50から55重量%で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、第4共重合体の耐化学性、剛性、機械的特性、加工性及び表面光沢がより改善され得る。
【0071】
前記芳香族ビニル系単量体由来単位の種類は、前記第1共重合体に対する説明に記載した通りである。
【0072】
前記芳香族ビニル系単量体由来単位は、前記第4共重合体の総重量に対して、30から45重量%または35から40重量%で含まれてよく、このうち35から40重量%で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性、剛性、機械的特性、加工性及び表面光沢がより改善され得る。
【0073】
前記ビニルシアン系単量体由来単位の種類は、第1共重合体に対する説明に記載した通りである。
【0074】
前記ビニルシアン系単量体由来単位は、第4共重合体の総重量に対して、5から20重量%または10から15重量%であってよく、このうち10から15重量%が好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性、剛性、機械的特性、加工性及び表面光沢がより改善され得る。
【0075】
前記第4共重合体は、共役ジエン系単量体を塊状重合、乳化重合及び懸濁重合からなる群から選択される1以上の方法で重合して共役ジエン系重合体を製造し、前記共役ジエン系重合体の存在下に、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を塊状重合、乳化重合及び懸濁重合からなる群から選択される1以上の方法で重合して製造してよい。このうち、共役ジエン系重合体及び第4共重合体は、乳化重合で製造するのが好ましい。乳化重合で共役ジエン系重合体を製造すると、前述した平均粒径を有する共役ジエン系重合体を容易に製造することができ、このような共役ジエン系重合体の存在下に、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を乳化重合して第4共重合体を製造すると、表面光沢特性及び機械的特性がより改善されたグラフト共重合体を製造することができる。
【0076】
前記第4共重合体は、市販される物質を用いてよい。
【0077】
前記第4共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して、5から15重量%または5から10重量%で含まれてよく、このうち5から10重量%が好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物に選択的透過度を付与することができる。
【0078】
5)添加剤
添加剤は、UV安定剤及び酸化防止剤からなる群から選択される1種以上を含んでよい。
【0079】
前記添加剤は、前記熱可塑性樹脂組成物100重量部、すなわち、前記第1から第4共重合体の合計100重量部に対して、0.2から1.1重量部または0.3から0.9重量部で含まれてよく、このうち0.3から0.9重量部で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の変性及び分解を防止することができる。
【0080】
一方、前記UV安定剤は、環境的な要因によるUV及びラジカルによる熱可塑性樹脂組成物の変性を防止することができる。
【0081】
前記酸化防止剤は、熱可塑性樹脂組成物の加工時に発生し得る熱変色などを防止することができる。そして、環境的な要因によるラジカルの形成により、熱可塑性樹脂組成物の分解を防止することができる。
【0082】
前記UV安定剤は、アミン系化合物であってよく、前記アミン系化合物は、2-(2’-ヒドロキシ-5’-ターシャリー-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2-(2’-Hydroxy-5’-tert-octylphenyl)benzotriazole)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(Bis(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidyl)sebacate)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(2-(2H-Benzotriazol-2-yl)-4,6-bis(1-methyl-1-phenylethyl)phenol)、及び2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(2-(2H-Benzotriazol-2-yl)-p-cresol)からなる群から選択される1種以上であってよい。このうち、2-(2’-ヒドロキシ-5’-ターシャリー-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6、-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートからなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0083】
前記UV安定剤は、前記第1から第4共重合体の合計100重量部に対して、0.2から0.5重量部または0.3から0.4重量部で含まれてよく、このうち0.3から0.4重量部で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、優れた耐候性を確保することができる。
【0084】
前記酸化防止剤は、オクタデシル3-(3,5-ジ-ターシャリー-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Octadecyl 3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate)、及び3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(3,9-Bis(octadecyloxy)-2,4,8,10-tetraoxa-3,9-diphosphaspiro[5.5]undecane)からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0085】
前記酸化防止剤は、前記第1から第4共重合体の合計100重量部に対して、0.2から0.6重量部または0.3から0.5重量部で含まれてよく、このうち0.3から0.5重量部で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、色相特性、選択的透過度がより改善され得る。
【0086】
2.熱可塑性樹脂成形品
本発明の他の一実施形態による熱可塑性樹脂成形品は、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第1共重合体;アルキル(メタ)アクリレート系単量体由来単位、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第2共重合体;平均粒径が0.25から0.35μmである共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第3共重合体;及び平均粒径が0.05から0.15μmである共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体由来単位及びビニルシアン系単量体由来単位を含む第4共重合体を含み、前記第1及び第2共重合体を含むマトリックス領域と前記第3及び第4共重合体を含む衝撃補強領域との屈折率の差が0.01から0.04である。
【0087】
前記熱可塑性樹脂成形品は、前記第1から第4共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を押出及び射出することで製造されてよい。そして、前記熱可塑性樹脂組成物に対する説明は、前述した通りである。
【0088】
前記マトリックス領域と前記衝撃補強領域との屈折率の差は、0.015から0.03であるのが好ましい。前記マトリックス領域と前記衝撃補強領域との屈折率が前述した範囲を満たすと、選択的透過度を具現することができる。詳しくは、熱可塑性樹脂成形品に光源が提供されるとき光が成形品を通過して、成形品の内部に存在する文字及び光などが鮮明に現われ、光源が提供されないときは成形品が不透明になるため、成形品の内部に存在する文字などが現われない。しかし、屈折率の差が前述した範囲未満である場合、光源が提供されなくても成形品が常に透明であり、前述した範囲を超過する場合、光源が提供されても成形品が常に不透明である。
【0089】
前記マトリックス領域は、前記第1及び第2共重合体が押出及び射出されることで形成された領域であって、屈折率が1.53から1.55または1.53から1.54であってよく、このうち、1.53から1.54であるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、成形品が選択的透過度を具現することができる。
【0090】
前記衝撃補強領域は、前記第3及び第4共重合体が押出及び射出されることで形成された領域であって、屈折率が1.51から1.52または1.51から1.515であってよく、このうち1.51から1.515であるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、成形品が選択的透過度を具現することができる。
【0091】
前記熱可塑性樹脂成形品は、照度が80lux以上、衝撃強度が15kg・cm/cm以上であってよい。好ましくは、前記熱可塑性樹脂成形品は、照度が86lux以上、衝撃強度が18kg・cm/cm以上であってよい。前述した条件を満たすと、選択的透過度及び機械的特性が全て優れた熱可塑性樹脂成形品を提供することができる。
【0092】
前記照度は、前記熱可塑性樹脂成形品を3mmの試片で製造した後、前記試片の真後ろでLED光源を照らして透過された光源の照度であってよく、前記照度は、照度測定装備(商品名:CL-500A、製造社:コニカミノルタ)を用いて測定することができる。前記透過度は、初期に発射されるビーム(beam)に対して、試料を通過した光の百分率で定義され、Haze-gard plus(モデル、製造社:BYK-Gardner)を用いて測定することができる。前記衝撃強度は、アイゾッド衝撃強度であって、ASTM D256に基づいて測定することができる。
【0093】
そして、前記熱可塑性樹脂成形品は、黄色指数、すなわちCIEカラーメーターを用いて測定したb値が1以下、好ましくは0.8以下であってよい。前述した条件を満たすと、色相特性に優れた熱可塑性樹脂成形品を製造することができる。
【0094】
そして、前記熱可塑性樹脂成形品は、色相の経時変化(△E)が0.1、好ましくは0.09以下であってよい。前述した条件を満たすと、耐候性に優れた熱可塑性樹脂成形品を製造することができる。
【0095】
前記経時変化(△E)は、UV2000(商品名、製造社:ATLAS(USA)社)、蛍光UVランプ(340nm)を用いて試片を100時間露光させた後、色相変化を測定し、下記式に代入して算出することができる。
【数1】
前記式において、L’、a’及びb’は、UV2000(商品名、製造社:ATLAS(USA)社)、蛍光UVランプ(340nm)を用いて試片を100時間露光させた後、CIE LAB色座標計で測定したL、a及びb値であり、L
0、a
0及びb
0はUV2000(商品名、製造社:ATLAS(USA)社)、蛍光UVランプ(340nm)に露光する前の試片をCIE LAB色座標計で測定したL、a及びb値である。
【0096】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施形態に対して詳しく説明する。しかし、本発明は、いくつか異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【実施例】
【0097】
下記実施例及び比較例で用いられた成分の仕様は、次の通りである。
【0098】
(A)SAN共重合体:LG化学社の81HF(屈折率:1.57、構成成分:スチレン単位77重量%、アクリロニトリル単位23重量%)を用いた。
【0099】
(B)MSAN共重合体
(B-1):LG化学社のXT500(屈折率:1.52、構成成分:メチルメタクリレート単位72重量%、スチレン単位9重量%、アクリロニトリル単位19重量%、重量平均分子量:80,000g/mol)を用いた。
(B-2)Crompton’s社のBledex866(屈折率:1.59、メチルメタクリレート単位5重量%、スチレン単位70重量%、アクリロニトリル単位25重量%、重量平均分子量:3,000,000g/mol)を用いた。
【0100】
(C)グラフト共重合体
(C-1):LG化学社のDP270M(屈折率:1.52、平均粒径が0.3μmであるブタジエンゴム質重合体60重量%に、スチレン30重量%、及びアクリロニトリル10重量%をグラフト共重合したグラフト共重合体)を用いた。
(C-2):LG化学社のDP229M(屈折率:1.52、平均粒径が0.1μmであるブタジエンゴム質重合体50重量%に、スチレン36重量%及びアクリロニトリル14重量%をグラフト共重合したグラフト共重合体)を用いた。
(C-3):LG化学社のSA180(屈折率:1.52、平均粒径が0.1μmであるブタジエンゴム質重合体及び平均粒径が0.3μmであるブタジエンゴム質重合体に、スチレン及びアクリロニトリルをグラフト共重合したグラフト共重合体、平均粒径が0.1μmであるブタジエンゴム質重合体:平均粒径が0.3μmであるブタジエンゴム質重合体の重量比:3:7)を用いた。
【0101】
(D)UV安定剤
(D-1):BASF AG社のTinuvin(登録商標) 329を用いた。
(D-2):BASF AG社のTinuvin(登録商標) 770を用いた。
【0102】
(E)酸化防止剤
(E-1):CIBA社のIR1076を用いた。
(E-2):ADEKA社のPEP-8を用いた。
【0103】
成分(A)から(E)を、下記[表1]から[表3]に記載された含量通り混合し撹拌して熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0104】
実験例1
実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物を230℃に設定された二軸押出機に投入し押出してペレットを製造した。前記ペレットを下記に記載された方法で物性を測定し、その結果を下記[表1]から[表3]に記載した。
【0105】
(1)流動指数(g/10分):ASTM D1238に基づいてF-B01(商品名、製造社:TOYOSEIKI)を用いて220℃、10kgの下で測定した。
【0106】
実験例2
実験例1で製造したペレットを220℃で射出して試片を製造した。製造された試片を下記に記載された方法で物性を測定し、その結果を下記[表1]から[表3]に記載した。
【0107】
(1)屈折率:試片のマトリックス領域と衝撃補強領域との屈折率をアッベ屈折器で測定した。
(2)アイゾッド衝撃強度(kg・cm/cm、1/4 In):ASTM D256に基づいて衝撃強度テスター(商品名、製造社:Tinius Olsen)を用いて測定した。
(3)経時変化(△E):UV2000(商品名、製造社:ATLAS(USA)社)、蛍光UVランプ(340nm)を用いて試片を100時間露光させた後、色相変化を測定し、下記式に代入して△E値を算出した。
【数2】
前記式において、L’、a’及びb’は、UV2000(商品名、製造社:ATLAS(USA)社)、蛍光UVランプ(340nm)を用いて試片を100時間露光させた後、CIE LAB色座標計で測定したL、a及びb値であり、L
0、a
0及びb
0は、UV2000(商品名、製造社:ATLAS(USA)社)、蛍光UVランプ(340nm)に露光する前の試片をCIE LAB色座標計で測定したL、a及びb値である。
(4)色相:CIEカラーメーターを用いてb値を測定した。
(5)照度(Lux):厚さ3mmの試片の真後ろでLED光源を照らして透過された光源の照度を照度測定装備(商品名:CL-500A、製造社:コニカミノルタ)を用いて測定した。
(6)鮮明性:厚さ3mmの試片の真後ろでLED光源を照らして透過された文字の色相及び形態を肉眼で確認した。
○:鮮明、△:普通、×:不鮮明
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
表1から表3を参照すれば、実施例1から実施例7の場合、第1から第4共重合体を最適の比率で含む熱可塑性樹脂組成物で製造されたため、流動指数が42g/10分以上であり、衝撃強度が18kg・cm/cm以上であり、経時変化が0.09以下であり、b値が0.9以下であり、照度が82lux以上であり、鮮明性も優れることが確認できた。このような結果から本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いると、選択的透過度を具現することができ、加工性、機械的特性、色相特性及び耐久性に優れた成形品を製造することができるということが予測できた。実施例8の場合、照度及び鮮明性は普通以上であったので、選択的透過度は具現することができるが、最適の比率で構成要素等を含んでいないため、実施例1から実施例7に比べて衝撃強度が低下することが確認できた。
【0112】
実施例9の場合、照度及び鮮明性は優れるため、選択的透過度は具現することができるが、最適の比率で構成要素等を含んでいないため、実施例1から実施例7に比べて衝撃強度が低下して、経時変化が激しいため、機械的特性及び耐候性が低下することが確認できた。
【0113】
第2共重合体を含まない比較例1は、マトリックス領域の屈折率が高く、これによりマトリックス領域と衝撃補強領域との屈折率の差が大きくなり、照度が低く、鮮明性が低下したことが確認できた。このような結果から比較例1は、常に不透明であることが予測できた。
【0114】
第4共重合体を含まない比較例2は、衝撃補強領域で光が散乱するので、照度が低く、鮮明性が低下したことが確認できた。このような結果から比較例2は、常に不透明であることが予測できた。
【0115】
第3共重合体を含まない比較例3は、衝撃強度が顕著に低下したことが確認できた。
【0116】
そして、第3及び第4共重合体の代わりに、バイモーダルABSグラフト共重合体を含む比較例4は、衝撃強度、色相特性、鮮明性が全て低下して、照度が低いことが確認できた。このような結果から比較例4は、常に不透明であることが予測できた。
【0117】
屈折率の高いMSAN共重合体を含み、第3または第4共重合体を含まない比較例5及び6は、流動指数及び照度が非常に低く、鮮明性が低下することが確認できた。このような結果から比較例6及び7は、加工性が顕著に低下して、常に不透明であることが予測できた。