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特許7039166樹脂組成物、硬化物の製造方法、及び硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物の製造方法、及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/10 20060101AFI20220314BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20220314BHJP
   C08G 73/06 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
C08L77/10
C08K5/29
C08G73/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2016195101
(22)【出願日】2016-09-30
(65)【公開番号】P2018058918
(43)【公開日】2018-04-12
【審査請求日】2019-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】引田 二郎
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-514449(JP,A)
【文献】特開2016-074915(JP,A)
【文献】特開2012-021133(JP,A)
【文献】特開2000-212279(JP,A)
【文献】特開2012-072239(JP,A)
【文献】特開平07-278298(JP,A)
【文献】特開2000-044682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(a1):
【化1】
(式(a1)中、Aは炭素原子数6~50の4価の有機基であり、Bは2価の有機基である。)
で表される構造単位を有するポリアミック酸(A)と、下記式(b1-2):
【化2】
(式(b1-2)中、Rb1及びRb2は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。Rb3、Rb4、Rb5、Rb6、及びRb7は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。Rb3、Rb4、Rb5、Rb6、及びRb7は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
表される、分子内に-CO-O-結合を有するカルボニルオキシ化合物(B1)と、を含む樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物であって、
分子内に-CO-O-結合を有さない塩基性含窒素化合物(B2)をさらに含む、樹脂組成物。
【請求項3】
請求項に記載の樹脂組成物であって、
前記塩基性含窒素化合物(B2)としてイミダゾール化合物を含む、樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物を基材上に塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程、及び、
前記塗膜を、70~550℃において加熱する加熱工程を含む、硬化物の製造方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミック酸を含む樹脂組成物と、当該樹脂組成物を用いる硬化物の製造方法と、当該樹脂組成物を硬化してなる硬化物とに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、優れた耐熱性、機械的強度、及び絶縁性や、低誘電率等の特性を有するため、種々の素子や、多層配線基板等の電子基板のような電気・電子部品において、絶縁材や保護材として広く使用されている。
【0003】
一般に、ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを極性有機溶剤中で重合させて得られるポリアミック酸を、熱処理することによって形成される。このような背景もあり、電子材料用のポリイミド製品は、ポリアミック酸のようなポリイミド前駆体の溶液として供給されることが多い。具体的に、電気・電子部品を製造する際には、ポリイミド前駆体の溶液が、絶縁材や保護材を形成する個所に、塗布や注入等の方法により供給された後、ポリイミド前駆体の溶液を熱処理して、絶縁材や保護材が形成されている。
【0004】
このようなポリイミド樹脂に関する技術開拓も鋭意なされている。
例えば、特許文献1の実施例としては、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンと、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物とを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中で反応させて、150℃でイミド化を行うポリイミド樹脂の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-021133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、本発明者らが検討したところ、ポリイミド樹脂前駆体を加熱硬化させる過程においては、適切に条件を設定しなければ、その硬化挙動が安定せず、結果として製膜等がうまくいかない場合があることがわかってきた。
このような製膜状態が不完全なポリイミド膜は外観にも劣るため、安定的に製膜を行うことのできる組成物の開拓が強く望まれていた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、製膜性に優れ、ポリイミドを含む硬化物を安定的に形成できるポリアミック酸を含有する樹脂組成物と、当該樹脂組成物を用いる硬化物の製造方法と、当該樹脂組成物を硬化してなる硬化物とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、ポリアミック酸(A)を含有する樹脂組成物に、分子内に-CO-O-結合を有するカルボニルオキシ化合物(B1)、及び分子内に-CO-O-結合を有さない塩基性含窒素化合物(B2)からなる群より選択される1種以上を配合することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、以下の式(a1):
【化1】
(式(a1)中、Aは炭素原子数6~50の4価の有機基であり、Bは2価の有機基である。)
で表される構造単位を有するポリアミック酸(A)と、
分子内に-CO-O-結合を有するカルボニルオキシ化合物(B1)、及び分子内に-CO-O-結合を有さない塩基性含窒素化合物(B2)からなる群より選択される1種以上と、を含む樹脂組成物である。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる樹脂組成物を基材上に塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜を70~550℃において加熱する加熱工程と、を含む、硬化物の製造方法である。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1の態様にかかる樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製膜性に優れ、ポリイミドを含む硬化物を安定的に形成できるポリアミック酸を含有する樹脂組成物と、当該樹脂組成物を用いる硬化物の製造方法と、当該樹脂組成物を硬化してなる硬化物とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪樹脂組成物≫
本発明の第1の態様である樹脂組成物は、以下の式(a1):
【化2】
(式(a1)中、Aは炭素原子数6~50の4価の有機基であり、Bは2価の有機基である。)
で表される構造単位を有するポリアミック酸(A)と、
分子内に-CO-O-結合を有するカルボニルオキシ化合物(B1)、及び分子内に-CO-O-結合を有さない塩基性含窒素化合物(B2)からなる群より選択される1種以上と、を含む。
ここで、分子内に-CO-O-結合を有するカルボニルオキシ化合物(B1)、及び分子内に-CO-O-結合を有さない塩基性含窒素化合物(B2)(以降、単に「カルボニルオキシ化合物(B1)」又は「塩基性含窒素化合物(B2)」と記すこともある。)が、それぞれポリアミック酸(A)のポリイミド樹脂への変換を促進させる効果を有する。
このため、樹脂組成物を加熱する際に、均一且つ速やかにポリアミック酸(A)のイミド化が進行するので、その結果、硬化物の表面に凹凸、反り、亀裂等が生じにくく、平滑な表面を有し、外観に優れる硬化物を形成することができる。
以上の通り、上記の樹脂組成物は、適切な速度で硬化し、安定的にポリイミド樹脂を含む硬化物を与える。
以下、樹脂組成物に含まれる必須又は任意の成分について説明する。
【0014】
<ポリアミック酸(A)>
樹脂組成物は、ポリアミック酸(A)を含む。ポリアミック酸(A)は、樹脂組成物を硬化させた際に生成するポリイミドの前駆体ポリマーである。
ポリアミック酸は、以下の式(a1)で表される構造単位を有する。
【化3】
(式(a1)中、Aは炭素原子数6~50の4価の有機基であり、Bは2価の有機基である。)
【0015】
上述したポリアミック酸(A)は、通常、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを縮合することで得られる。
以下、ポリアミック酸(A)の製造に用いられる、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物と、ポリアミック酸(A)の製造方法と、について説明する。
【0016】
〔テトラカルボン酸二無水物〕
式(a1)で表される構造単位を生成させるテトラカルボン酸二無水物は、下記式(a1-1)で表される。
式(a1-1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、後述のジアミン化合物と反応して、式(a1)で表される構造単位を有するポリアミック酸(A)を与える。かかるテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化4】
(式(a1-1)中、Aは炭素原子数6~50の4価の有機基である。)
【0017】
式(a1-1)中、Aは、炭素原子数6~50の4価の有機基であり、式(a1-1)における2個の-CO-O-CO-で表される酸無水物基の他に、1又は複数の置換基を有していてもよい。
置換基の好適な例としては、フッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のフッ素化アルキル基、炭素原子数1~6のフッ素化アルコキシ基が好ましく、また、式(a1-1)に表される酸無水物基の他にカルボキシ基、カルボン酸エステル基を含んでいてもよい。
置換基がフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基である場合、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であるのが好ましい。
以上の置換基については、後述の芳香族基が芳香環上に有していてもよい1又は複数の置換基についても同様のことがいえる。
【0018】
式(a1-1)中、Aは4価の有機基であり、その炭素原子数の下限値は6であり、上限値は50である。
Aを構成する炭素原子数は8以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。また、Aを構成する炭素原子数は40以下がより好ましく、30がさらに好ましい。Aは、脂肪族基であっても、芳香族基であっても、これらの構造を組合せた基であってもよい。Aは、炭素原子、及び水素原子の他に、ハロゲン原子、酸素原子、及び硫黄原子を含んでいてもよい。Aが酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含む場合、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子は、含窒素複素環基、-CONH-、-NH-、-N=N-、-CH=N-、-COO-、-O-、-CO-、-SO-、-SO-、-S-、及び-S-S-から選択される基として、Aに含まれてもよく、-O-、-CO-、-SO-、-SO-、-S-、及び-S-S-から選択される基として、Aに含まれるのがより好ましい。
【0019】
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であっても、芳香族テトラカルボン酸二無水物であってもよい。
【0020】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシ)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシ)メタン二無水物等が挙げられ、また、脂環式構造を含有するものであってもよい。かかる該脂環式構造は多環式であってもよく、多環式の脂環式構造としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の橋かけ脂環式構造を有するもの等が挙げられ、例えば、橋かけ脂環式構造が他の橋かけ脂環式構造及び/又は非橋かけ脂環式構造と縮合していてもよいし、橋かけ脂環式構造が他の橋かけ脂環式構造及び/又は非橋かけ脂環式構造とスピロ結合により連結していてもよい。脂肪族テトラカルボン酸二無水物を用いる場合、樹脂組成物を用いて透明性に優れる硬化物を得やすい傾向がある。
【0021】
また、式(a1-1)におけるAを構成する脂肪族基としては、例えば、以下の式(a2)で示される4価の基を採用することができる。このような基を用いた場合、透明性のあるポリイミド膜を得やすい傾向がある。
なお、式(a2)中のnは、原料化合物の精製が容易である点から、nは5以下が好ましく、3以下がより好ましい。また、式(a1)で表される構造体を与える原料化合物の化学的安定性が優れることから、nは1以上が好ましく、2以上がより好ましい。
式(a2)中のnは、2又は3が特に好ましい。
【化5】
(式(a2)中、Ra11、Ra12、及びRa13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基及びフッ素原子からなる群より選択される1種であり、nは0~12の整数である。)
【0022】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、3,3’,4,4’-オキシビスフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0023】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、また、例えば、下記一般式(a1-2)~(a1-4)で表されるものであってもよい。
【化6】
【0024】
上記式(a1-2)及び(a1-3)において、Ra1、Ra2及びRa3は、それぞれ、ハロゲンで置換されていてもよい脂肪族基、酸素原子、硫黄原子、1つ以上の2価元素を介した芳香族基のいずれかであるか、又はそれらの組み合わせによって構成される2価の置換基を示す。Ra2及びRa3は、同一であっても異なっていてもよい。
すなわち、Ra1、Ra2及びRa3は、炭素-炭素の一重結合、炭素-酸素-炭素のエーテル結合又はハロゲン元素(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を含んでいてもよく、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)プロパン二無水物や1,4-ビス(3,4-ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン二無水物、2,2’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロ-3,3’,4,4’,-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0025】
また、上記式(a1-4)において、Ra4、Ra5はハロゲンで置換されていてもよい脂肪族基、1つ以上の2価元素を介した芳香族基、ハロゲンのいずれかであるか、又はそれらの組み合わせによって構成される1価の置換基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、ジフルオロピロメリット酸二無水物、ジクロロピロメリット酸二無水物等も用いることができる。
【0026】
分子構造内にフッ素を含有する含フッ素ポリイミドを得るためのテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸二無水物、ペンタフルオロエチルピロメリット酸二無水物、ビス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ}ピロメリット酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシビフェニル二無水物、2,2’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシビフェニル二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ベンゼン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、2,2-ビス{4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ジフェニルエーテル二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、ジフルオロピロメリット酸二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル二無水物等が挙げられる。
【0027】
テトラカルボン酸二無水物としては、得られる膜又は成形体の耐熱性、引張伸度及び耐薬品性等を考慮した場合、芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましく、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物を用いることがが好ましい。
なお、これらと同じ基本骨格を有するテトラカルボン酸の酸塩化物、エステル化物等も、用いることができる。
【0028】
本実施形態において、テトラカルボン酸二無水物は、ジカルボン酸無水物と併用してもよい。これらのカルボン酸無水物を併用すると、得られるポリイミド樹脂等のイミド環含有ポリマーの特性がさらに良好となる場合がある。ジカルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、cis-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0029】
〔ジアミン化合物〕
ジアミン化合物は、下記式(a3-1)で表されるものを典型的に用いることができる。ジアミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
N-B-NH・・・(a3-1)
(式(a3-1)中、Bは2価の有機基を表す。)
【0030】
式(a3-1)中、Bは、2価の有機基であり、式(a3-1)における2つのアミノ基の他に、1又は複数の置換基を有していてもよい。
置換基の好適な例としては、フッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のフッ素化アルキル基、炭素原子数1~6のフッ素化アルコキシ基、水酸基が好ましい。
置換基がフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基である場合、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であるのが好ましい。
【0031】
式(a3-1)中、Bとしての有機基の炭素原子数の下限値は2が好ましく、6がより好ましく、上限値として50が好ましく、30がより好ましい。
Bは、脂肪族基であってもよいが、1以上の芳香環を含む有機基であることが好ましい。
【0032】
Bが1以上の芳香環を含む有機基である場合、当該有機基は、1の芳香族基そのものであってもよく、2以上の芳香族基が、脂肪族炭化水素基及びハロゲン化脂肪族炭化水素基や、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合を介して結合された基であってもよい。Bに含まれる、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合としては、-CONH-、-NH-、-N=N-、-CH=N-、-COO-、-O-、-CO-、-SO-、-SO-、-S-、及び-S-S-等が挙げられ、-O-、-CO-、-SO-、-SO-、-S-、及び-S-S-が好ましい。
【0033】
B中のアミノ基と結合する芳香環はベンゼン環であることが好ましい。B中のアミノ基と結合する環が2以上の環を含む縮合環である場合、当該縮合環中のアミノ基と結合する環はベンゼン環であることが好ましい。
また、Bに含まれる芳香環は、芳香族複素環であってもよい。
【0034】
Bが芳香族環を含む有機基である場合、樹脂組成物を用いて形成される硬化物の耐熱性の点から、当該有機基は下記式(1)~(4)で表される基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【化7】
(式(1)~(4)中、R11は、水素原子、フッ素原子、水酸基、炭素原子数1~4のアルキル基、及び炭素原子数1~4のハロゲン化アルキル基よりなる群から選択される1種を示す。式(4)中、Qは、9,9’-フルオレニリデン基、又は、式:-C-、-CONH-C-NHCO-、-NHCO-C-CONH-、-O-C-CO-C-O-、-OCO-C-COO-、-OCO-C-C-COO-、-OCO-、-O-、-S-、-CO-、-CONH-、-SO-、-C(CF-、-C(CH-、-CH-、-O-C-C(CH-C-O-、-O-C-C(CF-C-O-、-O-C-SO-C-O-、-C(CH-C-C(CH-、-O-C10-O-、-O-C-C-O-、及び-O-C-O-で表される基よりなる群から選択される1種を示す。
Qの例示における、-C-はフェニレン基であり、m-フェニレン基、及びp-フェニレン基が好ましく、p-フェニレン基がより好ましい。また、-C10-は、ナフタレンジイル基であり、ナフタレン-1,2-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,3-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、及びナフタレン-2,7-ジイル基が好ましく、ナフタレン-1,4-ジイル基、及びナフタレン-2,6-ジイル基がより好ましい。)
【0035】
式(1)~(4)中のR11としては、形成される硬化物の耐熱性の観点から、水素原子、水酸基、フッ素原子、メチル基、エチル基、又はトリフルオロメチル基がより好ましく、水素原子、水酸基、又はトリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0036】
式(4)中のQとしては、形成される硬化物の耐熱性の点から、9,9’-フルオレニリデン基、-O-C-O-、-C(CF-、-O-、-C(CH-、-CH-、又は-O-C-C(CH-C-O-、-CONH-が好ましく、-O-C-O-、-C(CF-又は-O-が特に好ましい。
【0037】
式(a3-1)で表されるジアミン化合物として芳香族ジアミンを用いる場合、例えば、以下に示される芳香族ジアミンを好適に用いることができる。
すなわち、芳香族ジアミンとしては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、及び4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエタン-1,1-ジイル)]ジアニリン等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
【0038】
また、Bとしては、鎖状の脂肪族基及び/又は芳香族環を有していてもよいケイ素原子含有基を採用することができる。このようなケイ素原子含有基としては、典型的には、以下に示される基を用いることができる。
【化8】
【0039】
また、得られる硬化物の機械特性をさらに向上させる観点から、Bとして、以下の式(Si-1)で表される基も好ましく用いることができる。
【化9】
(式(Si-1)中、R12及びR13は、それぞれ独立に、単結合又はメチレン基、炭素原子数2~20のアルキレン基、炭素原子数3~20のシクロアルキレン基、又は炭素原子数6~20のアリーレン基等であり、R14、R15、R16、及びR17は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数20以下のアミノ基を含む基、-O-R18で表される基(R18は炭素原子数1~20の炭化水素基)、炭素原子数2~20の1以上のエポキシ基を含む有機基であり、lは、3~50の整数である。)
【0040】
式(Si-1)中のR12及びR13における、炭素原子数2~20のアルキレン基としては、耐熱性、残留応力の観点から炭素原子数2~10のアルキレン基が好ましく、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
【0041】
式(Si-1)中のR12及びR13における、炭素原子数3~20のシクロアルキレン基としては、耐熱性、残留応力の観点から炭素原子数3~10のシクロアルキレン基が好ましく、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基等が挙げられる。
式(Si-1)中のR12及びR13における、炭素原子数6~20のアリーレン基としては、耐熱性、残留応力の観点から炭素原子数6~20の芳香族基が好ましく、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0042】
式(Si-1)中のR14、R15、R16、及びR17における炭素原子数1~20のアルキル基としては、耐熱性と残留応力の観点から炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
式(Si-1)中のR13、R15、R16、及びR17における炭素原子数3~20のシクロアルキル基としては、耐熱性、残留応力の観点から炭素原子数3~10のシクロアルキル基が好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
式(Si-1)中のR14、R15、R16、及びR17における炭素原子数6~20のアリール基としては、耐熱性、残留応力の観点から炭素原子数6~12のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
式(Si-1)中のR14、R15、R16、及びR17における炭素原子数20以下のアミノ基を含む基としては、アミノ基、置換したアミノ基(例えば、ビス(トリアルキルシリル)アミノ基)等が挙げられる。
式(Si-1)中のR14、R15、R16、及びR17における-O-R18で表される基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基、プロペニルオキシ基(例えば、アリルオキシ基)、及びシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
中でも、R14、R15、R16、及びR17として、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基である。
【0043】
式(Si-1)で表される基は、両末端にアミノ基を有するケイ素含有化合物を酸無水物に対して作用させることで導くことができる。このようなケイ素含有化合物の具体例としては、両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーン(例えば信越化学社製の、X-22-1660B-3(数平均分子量4,400程度)及びX-22-9409(数平均分子量1,300程度))、両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(例えば信越化学社製の、X-22-161A(数平均分子量1,600程度)、X-22-161B(数平均分子量3,000程度)及びKF8012(数平均分子量4,400程度);東レダウコーニング製のBY16-835U(数平均分子量900程度);並びにJNC社製のサイラプレーンFM3311(数平均分子量1000程度))等が挙げられる。
【0044】
〔ポリアミック酸(A)の製造方法〕
式(a1)で表される構造単位を有するポリアミック酸(A)は、典型的には、上述の式(a1-1)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、上述の式(a3-1)で表されるジアミン化合物とを溶剤中で反応させて得られるポリマーであり、ジアミン化合物及び/又はテトラカルボン酸二無水物をそれぞれ1種又は2種類以上を用いて得られるポリマーであってもよい。例えば、ジアミン化合物と2種類以上のテトラカルボン酸二無水物を含む混合物とを重縮合して得られるポリマーであってもよい。また、ポリアミック酸(A)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
ポリアミック酸(A)を合成する際の、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の使用量は特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミン化合物を0.50~1.50モル用いるのが好ましく、0.60~1.30モル用いるのがより好ましく、0.70~1.20モル用いるのが特に好ましい。
また、得られるポリミック酸(A)の重量平均分子量は、その用途にあわせて適宜設定すればよいが、例えば5000以上であり、7500以上が好ましく、10000以上がより好ましい。一方、得られるポリミック酸(A)の重量平均分子量は、例えば100000以下であり、80000以下が好ましく、75000以下がより好ましい。
この重量平均分子量は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の配合量や、溶媒や反応温度等の反応条件を調整して、上述の値とすればよい。
【0046】
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応は、通常、有機溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応に使用される有機溶剤は、テトラカルボン酸二酸無水物及びジアミン化合物を溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物と反応しないものであれば特に限定されない。有機溶剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応に用いる有機溶剤の例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’-テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、及びテトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられる。
【0048】
これらの有機溶剤の中では、生成するポリアミック酸(A)やポリイミド樹脂の溶解性から、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’-テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
【0049】
テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを反応させる際の温度は、反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物との反応温度は、-5~150℃が好ましく、0~120℃がより好ましく、0~70℃が特に好ましい。テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを反応させる時間は、反応温度によっても異なるが、典型的には、1~50時間が好ましく、2~40時間がより好ましく、5~30時間が特に好ましい。
【0050】
以上説明した方法により、ポリアミック酸(A)を含む溶液が得られる。第1の態様にかかる樹脂組成物を調製する方法は特に限定されないが、得られたポリアミック酸(A)を含む溶液に、分子内に-CO-O-結合を有するカルボニルオキシ化合物(B1)、及び分子内に-CO-O-結合を有さない塩基性含窒素化合物(B2)からなる群より選択される1種以上を配合する方法が好ましい。
上記のようにポリアミック酸(A)を含む溶液をそのまま樹脂組成物の調製に用いることもできるし、減圧下に、ポリアミック酸のポリイミド樹脂への変換が生じない程度の低温で、ポリアミック酸(A)の溶液から溶剤の少なくとも一部を除去して得られる、ポリアミック酸のペースト又は固体を樹脂組成物の調製に用いることもできる。
【0051】
<カルボニルオキシ化合物(B1)及び塩基性含窒素化合物(B2)>
樹脂組成物は、分子内に-CO-O-結合を有するカルボニルオキシ化合物(B1)、及び分子内に-CO-O-結合を有さない塩基性含窒素化合物(B2)からなる群より選択される1種以上を含む。カルボニルオキシ化合物(B1)及び塩基性含窒素化合物(B2)は、それぞれポリアミック酸(A)からのポリイミドの生成を促進させる成分である。
このため、第1の態様にかかる樹脂組成物を用いると、ポリアミック酸(A)が適切な速度でポリイミドに変換され、形状の安定した硬化物を得やすい。
【0052】
カルボニルオキシ化合物(B1)及び塩基性含窒素化合物(B2)のうちのいずれか一方のみを用いてもポリイミドの生成を促進する効果は得られるが、カルボニルオキシ化合物(B1)と、塩基性含窒素化合物(B2)とを組み合わせて樹脂組成物に配合するのが、樹脂組成物の硬化性の点で好ましい。
【0053】
以下、カルボニルオキシ化合物(B1)及び塩基性含窒素化合物(B2)について、それぞれ説明する。
【0054】
〔カルボニルオキシ化合物(B1)〕
カルボニルオキシ化合物としては、分子内に-CO-O-結合を有する化合物であれば特に限定されない。カルボニルオキシ化合物(B1)は、ポリアミック酸(A)における脱水による閉環を促進させることで、樹脂組成物の硬化を良好に進行させる。
カルボニルオキシ化合物(B1)としては、例えば、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、カーボネート等が挙げられる。
カルボニルオキシ化合物(B1)は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
(カルボン酸)
カルボン酸は、脂肪族カルボン酸であっても、芳香族カルボン酸であってもよい。また、カルボン酸は、カルボキシ基を1つ有する1価カルボン酸であってもよく、2つ以上のカルボキシ基を有する多価カルボン酸であってもよい。
また、カルボン酸の炭素原子数は特に限定されないが、1~50が好ましく、1~30がより好ましい。
【0056】
カルボン酸の好ましい具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、乳酸、アクリル酸、及びメタクリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マレイン酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、フマル酸、及びイタコン酸等の脂肪族多価カルボン酸;安息香酸、サリチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、o-クロロ安息香酸、p-クロロ安息香酸、m-クロロ安息香酸、o-メチル安息香酸、p-メチル安息香酸、m-メチル安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、及びトリメリット酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。
【0057】
また、芳香族基と、アルキレン基に結合するカルボキシ基とを有する化合物もカルボン酸として好ましい。このような化合物の具体例としては、フェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸、4-フェニルブタン酸等が挙げられる。
【0058】
また、本実施形態において、好ましく用いられるカルボン酸としては、例えば、下記式(b1-1)で表される化合物が挙げられる。
【化10】
(式(b1-1)中、Rb0、Rb1及びRb2は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基であり、Rb0及びRb1のいずれかは置換基を有してもよい芳香族基、又はアルキル基である。)
【0059】
式(b1-1)中の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上の有機基となり得る。
【0060】
有機基に含まれる結合は、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、有機基は、酸素原子、窒素原子、珪素原子等のヘテロ原子を含む結合を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含む結合の具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(-N=C(-R)-、-C(=NR)-:Rは水素原子又は有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。
【0061】
有機基が有してもよいヘテロ原子を含む結合としては、式(b1-1)で表される化合物の耐熱性の観点から、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(-N=C(-R)-、-C(=NR)-:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
【0062】
b0、Rb1及びRb2の具体例としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0063】
式(b1-1)中、Rb0及びRb1のいずれかは、置換基を有してもよい芳香族基、又はアルキル基である。式(b1-1)中、Rb0及びRb1のいずれかがアルキル基である場合、当該アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。当該アルキル基の炭素原子数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が特に好ましく、1~6がさらに好ましく、1~4が最も好ましい。
b2がアルキル基である場合もあり、この場合のアルキル基は、上記と同様の基が好ましい。
【0064】
式(b1-1)中、Rb0及びRb1のいずれかが置換基を有してもよい芳香族基である場合、当該芳香族基が有してもよい置換基の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。当該置換基の好適な例としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基が挙げられる。
【0065】
式(b1-1)において、Rb0及びRb1のいずれかが置換基を有してもよい芳香族基である場合、芳香族基は、芳香族炭化水素基でも、芳香族複素環基でもよく、芳香族炭化水素基が好ましい。芳香族基の好適な例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アンスリル基、及びフェナンスレニル基が挙げられる。これらの芳香族基の中では、フェニル基が好ましい。
b2が置換基を有してもよい芳香族基である場合もあり、この場合の置換基を有してもよい芳香族基は、上記と同様の基が好ましい。
【0066】
芳香族基が有してもよい置換基の具体例は、Rb0、Rb1及びRb2の具体例と同様である。
【0067】
式(b1-1)で表される化合物の中でも好適な化合物としては、下記式(b1-2)で表される化合物が挙げられる。
【化11】
(式(b1-2)中、Rb1及びRb2は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。Rb3、Rb4、Rb5、Rb6、及びRb7は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。Rb3、Rb4、Rb5、Rb6、及びRb7は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
【0068】
b1及びRb2における有機基は、式(b1-1)について説明した有機基と同様である。
【0069】
以上の中でも、式(b1-2)におけるRb1及びRb2としては、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数4~13のシクロアルキル基、炭素原子数4~13のシクロアルケニル基、炭素原子数7~16のアリールオキシアルキル基、炭素原子数7~20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素原子数2~11のアルキル基、水酸基を有する炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~11のアミド基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数1~10のアシル基、炭素原子数6~20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素原子数6~20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基であることが好ましい。より好ましくは、Rb1及びRb2の両方が水素原子であるか、又はRb1がメチル基であり、Rb2が水素原子である。
【0070】
b3、Rb4、Rb5、Rb6、及びRb7における有機基としては、Rb1及びRb2において例示したものが挙げられる。この有機基は、Rb1及びRb2の場合と同様に、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0071】
b3、Rb4、Rb5、Rb6、及びRb7は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。例えば、Rb3、Rb4、Rb5、Rb6、及びRb7は、それらの2つ以上が結合して、Rb3、Rb4、Rb5、Rb6、及びRb7が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成してもよい。
【0072】
以上の中でも、Rb3、Rb4、Rb5、Rb6、及びRb7としては、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数4~13のシクロアルキル基、炭素原子数4~13のシクロアルケニル基、炭素原子数7~16のアリールオキシアルキル基、炭素原子数7~20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素原子数2~11のアルキル基、水酸基を有する炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~11のアミド基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数1~10のアシル基、炭素原子数2~11のエステル基、炭素原子数6~20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素原子数6~20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基、ニトロ基であることが好ましい。
【0073】
また、Rb3、Rb4、Rb5、Rb6、及びRb7としては、それらの2つ以上が結合して、Rb3、Rb4、Rb5、Rb6、及びRb7が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合も好ましい。
【0074】
上記式(b1-2)で表される化合物の中では、下記式(b1-3)で表される化合物が好ましい。
【化12】
(式(b1-3)中、Rb1~Rb6は式(b1-2)と同義である。Rb8は、水素原子又は有機基を示す。Rb3及びRb4が水酸基となることはない。Rb3、Rb4、Rb5、及びRb6は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
【0075】
式(b1-3)で表される化合物は、置換基-O-Rb8を有するため、樹脂組成物中に、均一に分散又は溶解しやすい。
【0076】
式(b1-3)において、Rb8は、水素原子又は有機基である。Rb8が有機基である場合、有機基としては、Rb1及びRb2において例示したものが挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。Rb8としては、水素原子、又は炭素原子数1~12のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0077】
式(b1-1)で表される化合物のうち特に好適な化合物の具体例を以下に示す。
【化13】
【0078】
(カルボン酸エステル)
カルボン酸エステルは、エステル結合を有する化合物であれば特に限定されない。カルボン酸エステルは芳香族基を有していてもよい。
【0079】
カルボン酸エステルとしては、例えば、前述のカルボン酸の、C-C10アルキルエステル、C-C10シクロアルキルエステル、フェニルエステル、C-C10のアルキルフェニルエステル、C-C10のアルコキシフェニルエステル、ナフチルエステル、C-C10のアラルキルエステル等が挙げられる。
カルボン酸エステルが、多価カルボン酸のエステルである場合、カルボン酸エステルはエステル結合とともにカルボキシ基を有していてもよい。例えば、テレフタル酸モノメチルエステル等もカルボン酸エステルである。
【0080】
カルボン酸エステルの好ましい具体例としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸n-プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸n-ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸sec-ブチル、ギ酸tert-ブチル、ギ酸n-ペンチル、ギ酸n-ヘキシル、ギ酸n-ヘプチル、ギ酸n-オクチル、ギ酸シクロプロピル、ギ酸シクロブチル、ギ酸シクロペンチル、ギ酸シクロヘキシル、ギ酸シクロへプチル、ギ酸シクロオクチル、ギ酸フェニル、ギ酸o-トリル、ギ酸m-トリル、ギ酸p-トリル、ギ酸α-ナフチル、ギ酸β-ナフチル、ギ酸ベンジル、及びギ酸フェネチル等のギ酸エステル;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸n-ヘキシル、酢酸n-ヘプチル、酢酸n-オクチル、酢酸シクロプロピル、酢酸シクロブチル、酢酸シクロペンチル、酢酸シクロヘキシル、酢酸シクロへプチル、酢酸シクロオクチル、酢酸フェニル、酢酸o-トリル、酢酸m-トリル、酢酸p-トリル、酢酸α-ナフチル、酢酸β-ナフチル、酢酸ベンジル、及び酢酸フェネチル等の酢酸エステル;
プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸sec-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピオン酸n-ペンチル、プロピオン酸n-ヘキシル、プロピオン酸n-ヘプチル、プロピオン酸n-オクチル、プロピオン酸シクロプロピル、プロピオン酸シクロブチル、プロピオン酸シクロペンチル、プロピオン酸シクロヘキシル、プロピオン酸シクロへプチル、プロピオン酸シクロオクチル、プロピオン酸フェニル、プロピオン酸o-トリル、プロピオン酸m-トリル、プロピオン酸p-トリル、プロピオン酸α-ナフチル、プロピオン酸β-ナフチル、プロピオン酸ベンジル、及びプロピオン酸フェネチル等のプロピオン酸エステル;
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリルn-ヘプチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸シクロプロピル、アクリル酸シクロブチル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロへプチル、アクリル酸シクロオクチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸o-トリル、アクリル酸m-トリル、アクリル酸p-トリル、アクリル酸α-ナフチル、アクリル酸β-ナフチル、アクリル酸ベンジル、及びアクリル酸フェネチル等のアクリル酸エステル;
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリルn-ヘプチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸シクロプロピル、メタクリル酸シクロブチル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロへプチル、メタクリル酸シクロオクチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸o-トリル、メタクリル酸m-トリル、メタクリル酸p-トリル、メタクリル酸α-ナフチル、メタクリル酸β-ナフチル、メタクリル酸ベンジル、及びメタクリル酸フェネチル等のメタクリル酸エステル;
安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n-プロピル、安息香酸イソプロピル、安息香酸n-ブチル、安息香酸イソブチル、安息香酸sec-ブチル、安息香酸tert-ブチル、安息香酸n-ペンチル、安息香酸n-ヘキシル、安息香酸n-ヘプチル、安息香酸n-オクチル、安息香酸シクロプロピル、安息香酸シクロブチル、安息香酸シクロペンチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸シクロへプチル、安息香酸シクロオクチル、安息香酸フェニル、安息香酸o-トリル、安息香酸m-トリル、安息香酸p-トリル、安息香酸α-ナフチル、安息香酸β-ナフチル、安息香酸ベンジル、及び安息香酸フェネチル等の安息香酸エステル;
テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジn-プロピル、テレフタル酸ジイソプロピル、テレフタル酸ジn-ブチル、テレフタル酸ジイソブチル、テレフタル酸ジsec-ブチル、テレフタル酸ジtert-ブチル、テレフタル酸ジn-ペンチル、テレフタル酸ジn-ヘキシル、テレフタル酸ジn-ヘプチル、テレフタル酸ジn-オクチル、テレフタル酸ジシクロプロピル、テレフタル酸ジシクロブチル、テレフタル酸ジシクロペンチル、テレフタル酸ジシクロヘキシル、テレフタル酸ジシクロへプチル、テレフタル酸ジシクロオクチル、テレフタル酸ジフェニル、テレフタル酸ジo-トリル、テレフタル酸ジm-トリル、テレフタル酸ジp-トリル、テレフタル酸ジα-ナフチル、テレフタル酸ジβ-ナフチル、テレフタル酸ジベンジル、及びテレフタル酸ジフェネチル等のテレフタル酸ジエステル;
エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノプロピオネート、エチレングリコールモノブタノエート、エチレングリコールモノペンタノエート、エチレングリコールモノベンゾエート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジプロピオネート、エチレングリコールジブタノエート、エチレングリコールジペンタノエート、及びエチレングリコールジベンゾエート等のエチレングリコールエステル;
ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノプロピオネート、ジエチレングリコールモノブタノエート、ジエチレングリコールモノペンタノエート、ジエチレングリコールモノベンゾエート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールジブタノエート、ジエチレングリコールジペンタノエート、及びジエチレングリコールジベンゾエート等のエジチレングリコールエステル;
プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノプロピオネート、プロピレングリコールモノブタノエート、プロピレングリコールモノペンタノエート、プロピレングリコールモノベンゾエート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジプロピオネート、プロピレングリコールジブタノエート、プロピレングリコールジペンタノエート、及びプロピレングリコールジベンゾエート等のプロピレングリコールエステル;
ジプロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピオネート、ジプロピレングリコールモノブタノエート、ジプロピレングリコールモノペンタノエート、ジプロピレングリコールモノベンゾエート、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジプロピオネート、ジプロピレングリコールジブタノエート、ジプロピレングリコールジペンタノエート、及びジプロピレングリコールジベンゾエート等のジプロピレングリコールエステル;
が挙げられる。
【0081】
また、前述の式(b1-1)で表されるカルボン酸の、メチルエステル、エチルエステル、n-プロピルエステル、イソプロピルエステル、n-ブチルエステル、イソブチルエステル、sec-ブチルエステル、tert-ブチルエステル、n-ペンチルエステル、n-ヘキシルエステル、n-ヘプチルエステル、n-オクチルエステル、シクロプロピルエステル、シクロブチルエステル、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル、シクロへプチルエステル、シクロオクチルエステル、フェニルエステル、o-トリルエステル、m-トリルエステル、p-トリルエステル、α-ナフチルエステル、β-ナフチルエステル、ベンジルエステル、及びフェネチルエステルも、カルボン酸エステルとして好適である。
【0082】
(カルボン酸無水物)
カルボン酸無水物は、カルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)を有する化合物であれば特に限定されない。
カルボン酸無水物の好適な例としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、ブタン酸無水物、安息香酸無水物、フタル酸無水物、ナフタル酸無水物、コハク酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドラフタル酸無水物、テトラブロモフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7-ナフタリンテトラカルボン酸二無水物、及び5-(2,5-オキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、及びスチレン無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0083】
(カーボネート)
カーボネートは、カーボネート結合(-O-CO-O-)を有する化合物であれば特に限定されない。カーボネートは、ジメチルカーボネートのような鎖状カーボネートであっても、エチレンカーボネートのように環状カーボネートであってもよい。
カーボネート化合物の好適な具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジn-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0084】
以上説明したカルボニルオキシ化合物(B1)の中では、下記式(b1):
【化14】
(式(b1)中、Rb0は、アルキル基、又は置換基を有してもよい芳香族基であり、Rb9は、水素原子、又はアルキル基である。)
で表される化合物が特に好ましい。
b9がアルキル基である場合、当該アルキル基は、上述した式(b1-1)におけるRb0のアルキル基と同様である。
また、本実施形態においては、ポリアミック酸(A)を適切な速度でポリイミドに導くことができる点から、Rb9が水素原子であることがとりわけ好ましい。
【0085】
〔塩基性含窒素化合物(B2)〕
塩基性含窒素化合物(B2)は、窒素原子を含み、ブレンステッドの定義における塩基性を示す化合物であれば特に限定されない。
【0086】
塩基性含窒素化合物(B2)としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジn-ブチルアミン、ジn-ペンチルアミン、ジn-ヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリn-ブチルアミン、トリn-ペンチルアミン、トリn-ヘキシルアミン、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、α-ナフチルアミン、β-ナフチルアミン、及びo-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン等の非環式アミン類が挙げられる。
【0087】
また、グアニジン、アミノピリジン、アミノアルキルピリジン、アミノピロリジン、インダゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、プリン、イミダゾリン、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルフォリン、及びアミノアルキルモルフォリン等も、塩基性含窒素化合物(B2)として好ましい。
これらは置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、アミノアリール基、アリールアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、水酸基、シアノ基等が挙げられる。
【0088】
特に好ましい有機塩基性化合物(B2)として、グアニジン、1,1-ジメチルグアニジン、1,1,3,3,-テトラメチルグアニジン、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、N-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4,5-ジフェニルイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、2-アミノピリジン、3-アミノピリジン、4-アミノピリジン、2-ジメチルアミノピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、2-ジエチルアミノピリジン、2-(アミノメチル)ピリジン、2-アミノ-3-メチルピリジン、2-アミノ-4-メチルピリジン、2-アミノ-5-メチルピリジン、2-アミノ-6-メチルピリジン、3-アミノエチルピリジン、4-アミノエチルピリジン、3-アミノピロリジン、ピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペリジン、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ピペリジノピペリジン、2-イミノピペリジン、1-(2-アミノエチル)ピロリジン、ピラゾール、3-アミノ-5-メチルピラゾール、5-アミノ-3-メチル-1-p-トリルピラゾール、ピラジン、2-(アミノメチル)-5-メチルピラジン、ピリミジン、2,4-ジアミノピリミジン、4,6-ジヒドロキシピリミジン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、N-アミノモルフォリン、N-(2-アミノエチル)モルフォリン、及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等が挙げられる。
【0089】
以上、塩基性含窒素化合物(B2)について説明したが、塩基性含窒素化合物(B2)の中ではポリアミック酸(A)の硬化を促進する効果が高いことから、イミダゾール環を含むイミダゾール化合物が好ましい。このようなイミダゾール化合物は、典型的には下記式(b2-1)で表される。
【化15】
(式(b2-1)中、Rb10、Rb11、及びRb12は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基である。)
【0090】
式(b2-1)中のRb10、Rb11、及びRb12における有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上の有機基となり得る。
式(b2-1)中のRb10、Rb11、及びRb12における有機基は、式(b1-1)における有機基と同様である。
b10、Rb11、及びRb12としては、水素原子、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアリール基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、及びハロゲン原子が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0091】
樹脂組成物における、カルボニルオキシ化合物(B1)の含有量と、塩基性含窒素化合物(B2)の含有量との総量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、ポリアミック酸(A)100質量部に対して、0.01~30質量部が好ましく、0.05~25質量部がより好ましく、0.2~20質量部が特に好ましい。
また、カルボニルオキシ化合物(B1)と、塩基性含窒素化合物(B2)とを併用する場合、カルボニルオキシ化合物(B1)の質量WB1と、塩基性含窒素化合物(B2)の質量WB2との比率WB1/WB2は、1/99~99/1が好ましく、5/95~95/5がより好ましく、15/85~85/15が特に好ましい。
【0092】
<溶剤(S)>
樹脂組成物は、塗布性の点で溶剤(S)を含有するのが好ましい。樹脂組成物は、固体を含むペーストであってもよく、溶液であってもよいが、溶液であるのが好ましい。溶剤(S)は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
溶剤(S)の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で、特に限定されない。好適な溶剤(S)の例は、上述のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応に用いられる溶剤の例と同様である。
また、溶剤(S)は、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコール等のアルコール系溶剤を含んでいてもよい。溶剤(S)が、アルコール系溶剤を含む場合、耐熱性に優れる硬化物を形成しやすい。
【0093】
溶剤(S)は、また、下式(5)で表される化合物(S1)を含む溶剤を用いてもよい。
【化16】
(式(5)中、RS1及びRS2は、それぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基であり、RS3は下式(5-1)又は下式(5-2):
【化17】
で表される基である。式(5-1)中、RS4は、水素原子又は水酸基であり、RS5及びRS6は、それぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基である。式(5-2)中、RS7及びRS8は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1~3のアルキル基である。)
【0094】
式(5)で表される化合物(S1)のうち、RS3が式(5-1)で表される基である場合の具体例としては、N,N,2-トリメチルプロピオン酸アミド、N-エチル-N,2-ジメチルプロピオン酸アミド、N,N-ジエチル-2-メチルプロピオン酸アミド、N,N,2-トリメチル-2-ヒドロキシプロピオン酸アミド、N-エチル-N,2-ジメチル-2-ヒドロキシプロピオン酸アミド、及びN,N-ジエチル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸アミド等が挙げられる。
【0095】
式(5)で表される化合物(S1)のうち、RS3が式(5-2)で表される基である場合の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、N,N,N’,N’-テトラエチルウレア等が挙げられる。
【0096】
上記の化合物(S1)の例のうち、特に好ましいものとしては、N,N,2-トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’-テトラメチルウレアが好ましい。
【0097】
樹脂組成物が溶剤(S)を含む場合、溶剤(S)中の、前述の化合物(S1)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。溶剤の質量に対する化合物(S1)の比率は、典型的には、溶剤(S)全量に対して70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であるのが最も好ましい。
【0098】
化合物(S1)とともに使用することができる有機溶剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の含窒素極性溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及びイソホロン等のケトン類;ジオキサン、及びテトラヒドロフラン等の環状エーテル類;トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。
【0099】
樹脂組成物中の溶剤(S)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。樹脂組成物中の溶剤(S)の含有量は、樹脂組成物中の固形分含有量に応じて適宜調整される。樹脂組成物中の固形分含有量は、5~70質量%が好ましく、10~60質量%がより好ましい。
【0100】
<その他の成分>
樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記成分以外にその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例としては、界面活性剤、可塑剤、粘度調整剤、消泡剤、及び着色剤等が挙げられる。
【0101】
≪硬化物の製造方法≫
第2の態様にかかる硬化物の製造方法は、
第1の態様にかかる樹脂組成物を基材上に塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程、及び、
塗膜を、70~550℃において加熱する加熱工程を含む。
かかる方法においては、第1の態様にかかる樹脂組成物を用いて塗膜を形成しているため、ポリイミドを含む硬化物が安定的に生成する。
その結果、凹凸や反りや亀裂の少ない平滑な表面を有し、外観に優れる硬化物が得られる。
【0102】
<塗膜形成工程>
形成工程では、第1の態様にかかる樹脂組成物を基材の表面に塗布して、塗膜を形成する。塗布方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
塗布後には、塗膜からの脱気や、溶剤(S)の除去を促す目的で、塗膜を減圧雰囲気においてもよい。減圧雰囲気の真空度は特に限定されないが、300Pa以下が好ましく、150Pa以下がより好ましく、100Pa以下がさらに好ましい。
塗膜の厚さは、特に限定されない。典型的には、塗膜の厚さは、2~100μmが好ましく、3~50μmがより好ましい。塗膜の厚さは、塗布方法や樹脂組成物の固形分濃度や粘度を調節することにより、適宜制御することができる。
【0103】
基材の材質は、塗布膜を加熱する際に、熱劣化や変形が生じないものであれば特に限定されない。基材の形状も、樹脂組成物を塗布可能であれば特に限定されない。基材の例としては、絶縁されるべき電極や配線が形成された、半導体素子等の電子素子や多層配線基板等の中間製品や、種々の基板が挙げられる。基体が基板である場合の、好適な基板の材質としては、ガラス;シリコン;アルミニウム(Al);アルミニウム-ケイ素(Al-Si)、アルミニウム-銅(Al-Cu)、アルミニウム-ケイ素-銅(Al-Si-Cu)等のアルミニウム合金;チタン(Ti);チタン-タングステン(Ti-W)等のチタン合金;窒化チタン(TiN);タンタル(Ta);窒化タンタル(TaN);タングステン(W);窒化タングステン(WN);銅が挙げられる。
また、塗膜の加熱を低温で行う場合には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等の樹脂からなる耐熱性の低い基材を用いることもできる。
【0104】
<加熱工程>
塗膜形成工程において形成された塗膜は、加熱工程において70~550℃で加熱される。
【0105】
上記塗膜を加熱する場合、加熱温度は、例えば、120~500℃、好ましくは150~450℃に設定される。このような範囲の温度で塗膜を加熱することにより、生成するポリイミドの熱劣化や熱分解を抑制しつつ、安定的に硬化物を生成させることができる。
また、塗膜の加熱を高温で行う場合、多量のエネルギーの消費や、高温での処理設備の経時劣化が促進される場合があるため、塗膜の加熱をこれより低い温度で行うことも好ましい態様である。
【0106】
加熱時間は、樹脂組成物の組成や、塗膜の厚さ等にもよるが、下限値として、例えば5分間、好ましくは10分間、より好ましくは20分間、上限値として、例えば4時間、好ましくは3時間、より好ましくは2.5時間とすることができる。
また、ポリイミドの黄色度を低減させる観点や、より円滑にポリアミック酸(A)からポリイミドに変換する観点から、加熱時の雰囲気(酸素濃度等のガス組成)を調整したり、加熱時あるいは加熱前後に減圧工程を組み合わせることもできる。
【実施例
【0107】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例3は、参考例3と読み替えるものとする。
【0108】
[ポリアミック酸(A)の調製]
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却機、窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、以下に示される構造のテトラカルボン酸二無水物と、N-メチル-2-ピロリドンとを仕込み、窒素ガス導入管よりフラスコ内に窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気とした。次いで、フラスコを氷浴に浸し、内容物を撹拌しながら、p-フェニレンジアミンのN-メチル-2-ピロリドン溶液を、テトラカルボン酸二無水物に対して1.0モル量、徐々に滴下した。
滴下終了後、50℃で20時間、反応させてポリアミック酸(A)を含む溶液を得た。なお、以下に示される構造のテトラカルボン酸二無水物は、国際公開第2011/099518号の合成例1、実施例1及び実施例2に記載された方法に従って調製しており、また、ここでの溶液の調製は得られるポリアミック酸(A)の固形分濃度が、15質量%となるように調整した。
【0109】
【化18】
【0110】
[実施例1-3、比較例1]
このようにして得られたポリアミック酸(A)の溶液に対して、実施例1-3では、表1に示される添加剤を加えて樹脂組成物とした。表1において括弧内に示される値(質量%)はポリアミック酸(A)量に対する、添加剤の割合である。
一方、比較例1では、上で得られたポリアミック酸(A)の溶液に対し、何も添加剤を加えなかった。
なお、p-メトキシ桂皮酸は東京化成工業株式会社製、イミダゾールはキシダ化学株式会社製のものを用いた。
【0111】
[製膜性評価]
このようにして得られた各種樹脂組成物について、以下に従い、製膜性の評価を行った。すなわち、まず、各樹脂組成物をガラス基材上に塗布し、13Paまで減圧した。いったん常圧に戻した後、Air条件下80℃において10分間加熱し、次いで、酸素濃度100ppmの条件下360℃において30分間加熱して膜厚15μmの硬化物を得た。
このようにして得られた硬化物について、目視にて、形状よく製膜されているか観察した。なお、評価は以下の基準に基づいて行った。
◎:目視で確認して、荒れが観察されない。
○:概ね平滑な膜となったが、縁の部分に反りが観察された。
△:膜の一部に亀裂が入っていることが観察された。
×:膜のいたるところに亀裂が入っていることが観察された。
【0112】
【表1】
【0113】
表1から、ポリアミック酸(A)に対して、特定の添加剤を加えることで、製膜性に優れ、ポリイミドを含む硬化物を安定的に形成できる樹脂組成物が得られることがわかる。