(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】転写フィルムの製造方法、レジストパターンの形成方法、及び、導電性配線パターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20220314BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20220314BHJP
H05K 3/06 20060101ALI20220314BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G03F7/027 502
H05K3/06 J
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2017188475
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2019-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】漢那 慎一
(72)【発明者】
【氏名】石坂 壮二
(72)【発明者】
【氏名】篠田 克己
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-122844(JP,A)
【文献】特開2010-249927(JP,A)
【文献】特開2009-282522(JP,A)
【文献】特開2004-163532(JP,A)
【文献】特開2010-250034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/027
H05K 3/06
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体上に、感光性樹脂層を有する第一のドライフィルムを作製する工程、
前記仮支持体とは別の仮支持体上に、エチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、及び、紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層を有する第二のドライフィルムを作製する工程、並びに、
前記第一のドライフィルムの前記感光性樹脂層と、前記第二のドライフィルムの前記紫外線吸収層とを貼り合せる工程、を含み、
前記紫外線吸収層の365nmの吸光度が、0.3~5.0であり、
前記紫外線吸収剤の365nmのモル吸光係数が、5,000~100,000(L/(mol・cm))であり、
前記仮支持体と、前記感光性樹脂層と、前記紫外線吸収層と、をこの順で有する転写フィルムを製造する
転写フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記紫外線吸収層の365nmの吸光度が、0.5~2.0である請求項1に記載の転写フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記感光性樹脂層の厚みが、1.0μm以上15μm以下である請求項1又は請求項2に記載の転写フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記紫外線吸収層の厚みが、0.05μm以上2.0μm以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の転写フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記感光性樹脂層、及び、前記紫外線吸収層がともに、アクリル樹脂を含有する請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の転写フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記転写フィルムが、前記仮支持体と、前記感光性樹脂層と、前記紫外線吸収層と、前記別の仮支持体と、をこの順で有する請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の転写フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記仮支持体の厚みが、前記別の仮支持体の厚みよりも大きい請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の転写フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記仮支持体が、ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、前記別の仮支持体が、ポリプロピレンフィルムである請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の転写フィルムの製造方法。
【請求項9】
基板上に、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルムをラミネートする工程、
前記転写フィルムにおける前記感光性樹脂層をパターン露光する工程、及び、
パターン露光された前記感光性樹脂層を現像する工程を含む
レジストパターンの形成方法。
【請求項10】
表面に導電性層を有する基板上に、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルムをラミネートする工程、
前記転写フィルムにおける前記感光性樹脂層をパターン露光する工程、及び、
パターン露光された前記感光性樹脂層を現像する工程、
前記導電性層をエッチング処理する工程を含む
導電性配線パターンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写フィルムの製造方法、レジストパターンの形成方法、導電性配線パターンの製造方法、及び、転写フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型入力装置などのタッチパネルを備えた表示装置(有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置及び液晶表示装置など)では、視認部のセンサーに相当する電極パターン、周辺配線部分及び取り出し配線部分の配線などの導電性層パターンがタッチパネル内部に設けられている。
一般的にパターン化した層の形成には、必要とするパターン形状を得るための工程数が少ないといったことから、例えば、転写フィルム等の感光性転写材料を用いて任意の基板上に設けた感光性樹脂組成物の層に対して、所望のパターンを有するマスクを介して露光した後に現像する方法が広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、第一のフィルムと、上記第一のフィルム上に設けられた感光性樹脂層と、上記感光性樹脂層上に設けられた高屈折率層と、上記高屈折率層上に設けられた第二のフィルムとを備える転写形感光性屈折率調整フィルムの製造方法であって、上記第二のフィルムに高屈折率組成物を塗工し、乾燥後、保護フィルムをつけて巻き取り、第二のフィルム、高屈折率層、及び保護フィルムからなる積層体を作製し、上記第一のフィルムに感光性樹脂組成物を塗工、乾燥し感光性樹脂層を形成し、上記積層体から上記保護フィルムを剥離しながら、高屈折率層と感光性樹脂層を貼り合せる工程を含む転写形感光性屈折率調整フィルムの製造方法が開示されている。
【0004】
更に、特許文献2には、(A)アルカリ可溶性高分子30~70質量%、(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物20~60質量%、及び(C)光重合開始剤0.1~20質量%を含むレジスト材料用感光性樹脂組成物であって、上記(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として、分子内に少なくともヒドロキシル基とフェニレン基と2以上のエチレン性不飽和二重結合とを有する化合物(B-1)を含み、そしてフィルム上に50nm~2μmの厚みの銅層が形成されて成る基材のエッチングに用いられる、上記組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-9854号公報
【文献】特開2015-219336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、得られるパターンの形状に優れる転写フィルムの製造方法を提供することである。
本発明の他の一実施形態が解決しようとする課題は、上記転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルムを用いたレジストパターンの形成方法及び導電性配線パターンの製造方法を提供することである。
また、本発明の更に他の一実施形態が解決しようとする課題は、得られるパターンの形状に優れる転写フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 仮支持体上に、感光性樹脂層を有する第一のドライフィルムを作製する工程、上記仮支持体とは別の仮支持体上に、紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層を有する第二のドライフィルムを作製する工程、及び、上記第一のドライフィルムの上記感光性樹脂層と、上記第二のドライフィルムの上記紫外線吸収層とを貼り合せる工程、を含み、上記仮支持体と、上記感光性樹脂層と、上記紫外線吸収層と、をこの順で有する転写フィルムを製造する転写フィルムの製造方法。
<2> 上記紫外線吸収層の365nmの吸光度が、0.3~5.0である上記<1>に記載の転写フィルムの製造方法。
<3> 上記紫外線吸収層の365nmの吸光度が、0.5~2.0である上記<1>又は<2>に記載の転写フィルムの製造方法。
<4> 上記第一のドライフィルムにおける上記仮支持体のヘイズ値が、0.30%以下である上記<1>~<3>のいずれか1つに記載の転写フィルムの製造方法。
<5> 上記感光性樹脂層の厚みが、1.0μm以上15μm以下である上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の転写フィルムの製造方法。
<6> 上記紫外線吸収層の厚みが、0.05μm以上2.0μm以下である上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の転写フィルムの製造方法。
<7> 上記感光性樹脂層が、エチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂、及び、光重合開始剤を含有する上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の転写フィルムの製造方法。
<8> 上記紫外線吸収層が、エチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、及び、上記紫外線吸収剤を含有する上記<1>~<7>のいずれか1つに記載の転写フィルムの製造方法。
<9> 上記感光性樹脂層、及び、上記紫外線吸収層がともに、アクリル樹脂を含有する上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の転写フィルムの製造方法。
<10> 上記転写フィルムが、上記仮支持体と、上記感光性樹脂層と、上記紫外線吸収層と、上記別の仮支持体と、をこの順で有する上記<1>~<9>のいずれか1つに記載の転写フィルムの製造方法。
<11> 上記仮支持体の厚みが、上記別の仮支持体の厚みよりも大きい上記<1>~<10>のいずれか1つに記載の転写フィルムの製造方法。
<12> 上記仮支持体が、ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、上記別の仮支持体が、ポリプロピレンフィルムである上記<1>~<11>のいずれか1つに記載の転写フィルムの製造方法。
<13> 基板上に、上記<1>~<12>のいずれか1つに記載の転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルムをラミネートする工程、
上記転写フィルムにおける上記感光性樹脂層をパターン露光する工程、及び、
パターン露光された上記感光性樹脂層を現像する工程を含む
レジストパターンの形成方法。
<14> 表面に導電性層を有する基板上に、上記<1>~<12>のいずれか1つに記載の転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルムをラミネートする工程、上記転写フィルムにおける上記感光性樹脂層をパターン露光する工程、及び、パターン露光された上記感光性樹脂層を現像する工程、上記導電性層をエッチング処理する工程を含む導電性配線パターンの製造方法。
<15> 仮支持体と、感光性樹脂層と、紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層と、上記仮支持体とは別の仮支持体と、をこの順で有する転写フィルム。
<16> 上記感光性樹脂層の厚みが、1.0μm以上15μm以下である上記<15>に記載の転写フィルム。
<17> 上記紫外線吸収層の365nmの吸光度が、0.3~5.0である上記<15>又は<16>に記載の転写フィルム。
<18> 上記紫外線吸収層の厚みが、0.05μm以上2.0μm以下である上記<15>~<17>のいずれか1つに記載の転写フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、得られるパターンの形状に優れる転写フィルムの製造方法を提供することができる。
本発明の他の一実施形態によれば、上記転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルムを用いたレジストパターンの形成方法及び導電性配線パターンの製造方法を提供することができる。
また、本発明の更に他の一実施形態によれば、得られるパターンの形状に優れる転写フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係る転写フィルムの層構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の内容について説明する。なお、添付の図面を参照しながら説明するが、符号は省略する場合がある。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの双方、又は、いずれかを表す。
更に、本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「全固形分」とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また、「固形分」とは、上述のように、溶剤を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本明細書において、特に断わりにない限り、ポリマーの具体例に記載の各構成単位の割合は、モル比である。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、「固形分」とは、溶剤を除く全ての成分をいう。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
【0011】
(転写フィルムの製造方法、及び、転写フィルム)
本開示に係る転写フィルムの製造方法は、仮支持体上に、感光性樹脂層を有する第一のドライフィルムを作製する工程、上記仮支持体とは別の仮支持体上に、紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層を有する第二のドライフィルムを作製する工程、及び、上記第一のドライフィルムの上記感光性樹脂層と、上記第二のドライフィルムの上記紫外線吸収層とを貼り合せる工程、を含み、上記仮支持体と、上記感光性樹脂層と、上記紫外線吸収層と、をこの順で有する転写フィルムを製造する。
本開示に係る転写フィルムは、仮支持体と、感光性樹脂層と、紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層と、上記仮支持体とは別の仮支持体と、をこの順で有する。
また、本開示に係る転写フィルムは、本開示に係る転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルムであることが好ましい。
更に、本開示に係る転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルムは、上記仮支持体と、上記感光性樹脂層と、上記紫外線吸収層と、上記別の仮支持体とをこの順で有することが好ましい。
なお、特に断りのない限り、本開示に係る転写フィルムにおける好ましい態様と、本開示に係る転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルムにおける好ましい態様とは、同じである。
【0012】
従来の転写、露光、及び、現像の各工程を含む方法において、転写フィルムにより形成した感光性樹脂層を画像形成すると、露光時において、露光に使用する光の反射光が生じ、入射光と反射光とによる干渉縞、いわゆる定在波による層状の構造が生じ、パターンの形状が悪化することを本発明者らは見出した。
また、単に転写フィルムに反射防止層を設けただけでは、転写性が不十分となる場合があることを本発明者らは見出した。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、上記構成の転写フィルムの製造方法により転写フィルムを製造することにより、上記紫外線吸収層を有するため、露光時において、露光に使用する光の反射光を上記紫外線吸収層が吸収することにより抑制し、更に、露光時の入射光と上記反射光とによる干渉縞、いわゆる定在波による層状の構造が生じることを抑制し、上記層状の構造に起因する基板界面のアルカリ溶解性の低下による裾引き形状の発生を抑制し、パターンの形状に優れると本発明者らは推定している。
更に、感光性樹脂層を有する第1のドライフィルムの感光性樹脂層と、紫外線吸収層を有する第2のドライフィルムの紫外線吸収層と、を貼り合わせて転写フィルムを作製することにより、感光性樹脂層と紫外線吸収層との界面が混合することが抑制され、紫外線吸収層の膜厚均一性に優れるため、パターンの形状及びパターンの形状のばらつき抑制性により優れると本発明者らは推定している。
【0013】
以下、本開示に係る転写フィルムの製造方法について、詳細に説明する。
【0014】
図1は、本開示に係る転写フィルムの製造方法により製造される転写フィルムの層構成の一例を概略的に示している。
図1に示す転写フィルム100は、仮支持体A10と、感光性樹脂層12と、紫外線吸収層14と、仮支持体D(上記仮支持体とは別の仮支持体)16とがこの順に積層されている。
感光性樹脂層12は、露光によりパターン形成可能な樹脂層であり、ネガ型感光性樹脂層であっても、ポジ型感光性樹脂層であってもよいが、ネガ型感光性樹脂層であることが好ましい。
紫外線吸収層14は、紫外線吸収剤を含有する層である。
【0015】
<第一のドライフィルムを作製する工程>
本開示に係る転写フィルムの製造方法は、仮支持体上に、感光性樹脂層を有する第一のドライフィルムを作製する工程を含む。
仮支持体、並びに、感光性樹脂層及びその組成の詳細については、後述する。
第一のドライフィルムを作製する方法としては、特に制限はなく、公知の方法により作製することができる。
具体的には例えば、感光性樹脂組成物を仮支持体に塗布し、乾燥させることにより、仮支持体上に上記感光性樹脂層を備えた第一のドライフィルムを得ることができる。
塗布方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、印刷法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法、ダイコート法(即ち、スリットコート法)等が挙げられ、ダイコート法が好ましい。
乾燥方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の方法を、単独で、又は複数組み合わせて適用することができる。
【0016】
上記感光性樹脂層を形成する感光性樹脂組成物は、感光性樹脂層の厚さ均一性、パターン形状、及び、塗布性の観点から、有機溶剤を含むことが好ましい。
有機溶剤としては、工業用に使用できるものであれば、特に制限はなく用いることができる。
有機溶剤としては、公知の有機溶剤を用いることができ、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エステル類、ケトン類、アミド類、ラクトン類等が例示できる。また、溶剤の具体例としては特開2011-221494号公報の段落0174~段落0178に記載の溶剤も挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0017】
また、既述の溶剤に、更に必要に応じて、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナール、ベンジルアルコール、アニソール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の溶剤を添加することもできる。
有機溶剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種を併用することがより好ましい。有機溶剤を2種以上使用する場合には、例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類とジアルキルエーテル類との併用、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類とジアルキルケトン類との併用、ジアセテート類とジエチレングリコールジアルキルエーテル類との併用、又は、エステル類とブチレングリコールアルキルエーテルアセテート類との併用が好ましい。
【0018】
また、有機溶剤としては、沸点130℃以上160℃未満の有機溶剤、沸点160℃以上の有機溶剤、又は、これらの混合物であることが好ましい。
沸点130℃以上160℃未満の有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点158℃)、プロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル(沸点155℃)、及び、プロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(沸点131℃)が例示できる。
沸点160℃以上の有機溶剤としては、3-エトキシプロピオン酸エチル(沸点170℃)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(沸点176℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート(沸点160℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点213℃)、3-メトキシブチルエーテルアセテート(沸点171℃)、ジエチレングリコールジエチエルエーテル(沸点189℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、プロピレングリコールジアセテート(沸点190℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点220℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点175℃)、及び、1,3-ブチレングリコールジアセテート(沸点232℃)が例示できる。
【0019】
上記感光性樹脂組成物を塗布する際における有機溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部当たり、50質量部~1,900質量部であることが好ましく、100質量部~900質量部であることがより好ましい。
また、上記感光性樹脂層における有機溶剤の含有量は、上記感光性樹脂層の全質量に対し、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0020】
また、仮支持体と後述するその他の層との積層体上に、感光性樹脂層を塗布することもできる。
更に、第一のドライフィルムは、感光性樹脂層上にカバーフィルムを有していてもよい。カバーフィルムは、後述する貼り合せる工程の前に剥離される。
【0021】
<第二のドライフィルムを作製する工程>
本開示に係る転写フィルムの製造方法は、上記仮支持体とは別の仮支持体(以下、単に「別の仮支持体」ともいう。)上に、紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層を有する第二のドライフィルムを作製する工程を含む。
別の仮支持体、並びに、紫外線吸収層及びその組成の詳細については、後述する。
第二のドライフィルムを作製する方法としては、特に制限はなく、公知の方法により作製することができる。
具体的には例えば、紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層形成用組成物を別の仮支持体に塗布し、乾燥させることにより、別の仮支持体上に上記紫外線吸収層を備えた第二のドライフィルムを得ることができる。
塗布方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、印刷法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法、ダイコート法(すなわち、スリットコート法)等が挙げられ、ダイコート法が好ましい。
乾燥方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の方法を、単独で、又は複数組み合わせて適用することができる。
なお、別の仮支持体と後述するその他の層との積層体上に、紫外線吸収層を塗布することもできる。
上記紫外線吸収層を形成する紫外線吸収層形成用組成物は、紫外線吸収層の厚さ均一性、パターン形状、及び、塗布性の観点から、有機溶剤を含むことが好ましい。
有機溶剤としては、工業用に使用できるものであれば、特に制限はなく用いることができる。また、有機溶剤として、上述した有機溶剤を好適に用いることができ、好ましい態様も同様である。
更に、第二のドライフィルムは、紫外線吸収層上にカバーフィルムを有していてもよい。カバーフィルムは、後述する貼り合せる工程の前に剥離される。
【0022】
第二のドライフィルム、及び、本開示に係る転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルムは、仮支持体及び感光性樹脂層以外の層(以下、「その他の層」と称することがある。)を有していてもよい。
その他の層としては、中間層、カバーフィルム、熱可塑性樹脂層等を挙げることができる。
【0023】
第二のドライフィルムは、例えば、別の仮支持体と、熱可塑性樹脂層と、紫外線吸収層とをこの順で有することもできる。また、上記熱可塑性樹脂層は、非感光性層であることが好ましい。更に、上記感光性転写材料は、感光性樹脂層を保護する目的でカバーフィルムを有していてもよい。
また、熱可塑性樹脂層と紫外線吸収層とのミキシングを防止するため、中間層を設けてもよい。
熱可塑性樹脂層の好ましい態様については、特開2014-85643号公報の段落0189~段落0193、他の層の好ましい態様については、特開2014-85643号公報の段落0194~段落0196にそれぞれ記載があり、これらの公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0024】
第二のドライフィルムが、熱可塑性樹脂層等のその他の層を有する場合、特開2006-259138号公報の段落0094~段落0098に記載の感光性転写材料の作製方法に準じて作製することができる。
例えば、熱可塑性樹脂層及び中間層を有する第二のドライフィルムを作製する場合には、仮支持体上に、熱可塑性の有機高分子と添加剤とを溶解した溶解液(熱可塑性樹脂層用塗布液)を塗布し、乾燥させて熱可塑性樹脂層を設けた後、得られた熱可塑性樹脂層上に熱可塑性樹脂層を溶解しない溶剤に樹脂及び添加剤を加えて調製した調製液(中間層用塗布液)を塗布し、乾燥させて中間層を積層する。形成した中間層上に、更に、中間層を溶解しない溶剤を用いて調製した紫外線吸収層用塗布液を塗布し、乾燥させて紫外線吸収層を積層することによって、上記第二のドライフィルムを好適に作製することができる。
【0025】
<貼り合せる工程>
本開示に係る転写フィルムの製造方法は、上記第一のドライフィルムの上記感光性樹脂層と、上記第二のドライフィルムの上記紫外線吸収層とを貼り合せる工程を含む。
上記貼り合せる工程においては、上記第一のドライフィルムの上記感光性樹脂層と、上記第二のドライフィルムの上記紫外線吸収層とを圧着させることが好ましい。
圧着方法としては、特に制限はなく、公知の転写方法、及び、ラミネート方法を用いることができる。
具体的には例えば、上記第一のドライフィルムの上記感光性樹脂層と上記第二のドライフィルムの上記紫外線吸収層とが接触するように重ね、ロール等による加圧、又は、加圧及び加熱することに行われることが好ましい。貼り合わせには、ラミネータ、真空ラミネータ、及び、より生産性を高めることができるオートカットラミネーター等の公知のラミネータを使用することができる。
上記圧着時の圧力及び温度は、特に制限はなく、上記感光性樹脂層及び上記紫外線吸収層の材質、搬送速度、並びに、使用する圧着機等に応じ、適宜設定することができる。また、感光性転写材料の感光性樹脂層上にカバーフィルムを有する場合は、感光性樹脂層からカバーフィルムを除去した後、圧着すればよい。
中でも、上記貼り合せる工程における貼り合わせ時の温度は、0℃~50℃であることが好ましく、20℃~50℃であることが特に好ましい。
また、上記貼り合せる工程においては、ロールツーロールでの圧着を行うことも好ましい。
【0026】
また、本開示に係る転写フィルムの製造方法は、その他公知の工程を含んでいてもよい。例えば、本開示に係る転写フィルムの製造方法は、上記貼り合せる工程の後、上記別の仮支持体を剥離する工程を含んでいてもよい。剥離方法としては、特に制限はなく、公知の方法により剥離すればよい。
【0027】
以下、本開示に係る転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルム、及び、本開示に係る転写フィルムの各層構成について、詳細に説明する。
【0028】
<仮支持体、及び、別の仮支持体>
仮支持体及び上記仮支持体とは別の仮支持体は、感光性樹脂層及び紫外線吸収層を支持し、感光性樹脂層又は紫外線吸収層等の、仮支持体又は別の仮支持体と接触する層から剥離可能な支持体である。
本開示に用いられる仮支持体は、感光性樹脂層をパターン露光する際に仮支持体を介して感光性樹脂層を露光し得る観点から、光透過性を有することが好ましい。
また、本開示に用いられる仮支持体のヘイズ値は、パターン形状の観点から、0.8%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.30%以下であることが特に好ましい。なお、上記ヘイズ値の下限値は0%である。
なお、本開示におけるヘイズ値は、全光線ヘイズ値であり、スガ試験機(株)製ヘイズメーターHZ-2を用い、JIS(Japanese Industrial Standards) K 7136(2000)に準拠して仮支持体の小片の全光線ヘイズ(%)を測定するものとする。
本開示に用いられる別の仮支持体は、光透過性を有していてもよいし、有していなくともよい。
光透過性を有するとは、パターン露光に使用する光の主波長の透過率が50%以上であることを意味し、パターン露光に使用する光の主波長の透過率は、露光感度向上の観点から、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。透過率の測定方法としては、大塚電子(株)製MCPD Seriesを用いて測定する方法が挙げられる。
【0029】
仮支持体及び別の仮支持体としては、可撓性を有し、かつ、加圧下、又は、加圧及び加熱下において、著しい変形、収縮又は伸びを生じないフィルムを好適に用いることができる。
仮支持体及び別の仮支持体としては、ガラス基板、樹脂フィルム、紙等が挙げられ、強度及び可撓性等の観点から、樹脂フィルムが特に好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリオレフィンフィルム等が挙げられる。
中でも、仮支持体としては、パターン形状の観点から、ポリエステルフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましく、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
また、別の仮支持体としては、パターン形状及び剥離性の観点から、ポリオレフィンフィルムが好ましく、ポリプロピレンフィルムがより好ましい。
更に、上記仮支持体が、パターン形状及び剥離性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、上記別の仮支持体が、ポリプロピレンフィルムであることが特に好ましい。
【0030】
仮支持体及び別の仮支持体の厚みはそれぞれ独立に、特に限定されず、取扱い易さ、汎用性などの点で、2μm~200μmの範囲が好ましく、5μm~150μmの範囲がより好ましく、10μm~50μmの範囲が更に好ましい。
仮支持体及び別の仮支持体の厚みは、支持体としての強度、回路配線形成用基板との貼り合わせに求められる可撓性、最初の露光工程で要求される光透過性などの観点から、材質に応じて選択すればよい。
また、上記仮支持体の厚みが、パターン形状及び剥離性の観点から、上記別の仮支持体の厚みよりも大きいことが好ましい。
更に、仮支持体の厚みは、パターン形状、及び、密着性と剥離性とのバランスの観点から、5μm~200μmの範囲が好ましく、16μm~100μmの範囲がより好ましく、20μm~50μmの範囲が特に好ましい。
別の仮支持体の厚みは、パターン形状、及び、密着性と剥離性とのバランスの観点から、2μm~25μmの範囲が好ましく、5μm~16μmの範囲が特に好ましい。
【0031】
仮支持体及び別の仮支持体の好ましい態様については、例えば、特開2014-85643号公報の段落0017~段落0018に記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0032】
<感光性樹脂層>
本開示における感光性樹脂層は、露光によりパターン形成可能な樹脂層であり、ネガ型感光性樹脂層であっても、ポジ型感光性樹脂層であってもよいが、ネガ型感光性樹脂層であることが好ましい。
上記感光性樹脂層は、パターン形成性、パターン形状及びパターン直線性の観点から、ネガ型感光性樹脂層として、エチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂、及び、光重合開始剤を含有することが好ましい。
また、上記感光性樹脂層は、パターン形状及びパターン直線性の観点から、アクリル樹脂を含むことが好ましく、上記感光性樹脂層及び上記紫外線吸収層はともに、パターン形状及びパターン直線性の観点から、アクリル樹脂を含むことがより好ましい。
また、ポジ型感光性樹脂層としては、公知のものを用いることができる。
【0033】
<<エチレン性不飽和化合物>>
上記感光性樹脂層は、エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
エチレン性不飽和化合物は、上記感光性樹脂層の感光性(すなわち、光硬化性)及び硬化膜の強度に寄与する成分である。
また、エチレン性不飽和化合物は、1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物である。
【0034】
上記感光性樹脂層は、エチレン性不飽和化合物として、2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
ここで、2官能以上のエチレン性不飽和化合物とは、一分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物を意味する。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0035】
上記感光性樹脂層は、硬化膜の塩水付与後の湿熱耐性をより向上する観点から、2官能のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、2官能の(メタ)アクリレート化合物)と、3官能以上のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物)と、を含有することが特に好ましい。
【0036】
2官能のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
2官能のエチレン性不飽和化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2官能のエチレン性不飽和化合物としては、より具体的には、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP、新中村化学工業(株)製)、トリシクロデカンジメナノールジメタクリレート(DCP、新中村化学工業(株)製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N、新中村化学工業(株)製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N、新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0037】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート骨格の(メタ)アクリレート化合物、等が挙げられる。
【0038】
ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
【0039】
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)DPCA-20、新中村化学工業(株)製A-9300-1CL等)、(メタ)アクリレート化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業(株)製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社製 EBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製A-GLY-9E等)等も挙げられる。
【0040】
エチレン性不飽和化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(好ましくは3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物)も挙げられる。
3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル(株)製)、UA-32P(新中村化学工業(株)製)、UA-1100H(新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0041】
また、エチレン性不飽和化合物は、現像性向上及び硬化膜の塩水付与後の湿熱耐性向上の観点から、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
酸基としては、例えば、リン酸基、スルホン酸基、及び、カルボキシ基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、酸基を有する3~4官能のエチレン性不飽和化合物(ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(PETA)骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価=80mgKOH/g~120mgKOH/g))、酸基を有する5~6官能のエチレン性不飽和化合物(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(DPHA)骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価=25mgKOH/g~70mgKOH/g))、等が挙げられる。
これら酸基を有する3官能以上のエチレン性不飽和化合物は、必要に応じ、酸基を有する2官能のエチレン性不飽和化合物と併用してもよい。
【0042】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物及びそのカルボン酸無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これにより硬化膜の塩水付与後の湿熱耐性が高まる。
カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物は、特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。
カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成(株)製)、アロニックスM-520(東亞合成(株)製)、又は、アロニックスM-510(東亞合成(株)製)を好ましく用いることができる。
【0043】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物は、特開2004-239942号公報の段落0025~0030に記載の酸基を有する重合性化合物であることも好ましい。この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0044】
本開示に用いられるエチレン性不飽和化合物の重量平均分子量(Mw)としては、200~3,000が好ましく、250~2,600がより好ましく、280~2,200が更に好ましく、300~2,200が特に好ましい。
また、上記感光性樹脂層に用いられるエチレン性不飽和化合物のうち、分子量300以下のエチレン性不飽和化合物の含有量の割合は、上記感光性樹脂層に含有されるすべてのエチレン性不飽和化合物に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0045】
エチレン性不飽和化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
上記感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記感光性樹脂層の全質量に対し、1質量%~70質量%が好ましく、10質量%~70質量%がより好ましく、20質量%~60質量%が更に好ましく、20質量%~50質量%が特に好ましい。
【0046】
また、上記感光性樹脂層が2官能のエチレン性不飽和化合物と3官能以上のエチレン性不飽和化合物とを含有する場合、2官能のエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記感光性樹脂層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物に対し、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~85質量%がより好ましく、30質量%~80質量%が更に好ましい。
また、この場合、3官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記感光性樹脂層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物に対し、10質量%~90質量%が好ましく、15質量%~80質量%がより好ましく、20質量%~70質量%が更に好ましい。
また、この場合、2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、2官能のエチレン性不飽和化合物と3官能以上のエチレン性不飽和化合物との総含有量に対し、40質量%以上100質量%未満であることが好ましく、40質量%~90質量%であることがより好ましく、50質量%~80質量%であることが更に好ましく、50質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0047】
また、上記感光性樹脂層が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合、上記感光性樹脂層は、更に単官能エチレン性不飽和化合物を含有してもよい。
更に、上記感光性樹脂層が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合、上記感光性樹脂層に含有されるエチレン性不飽和化合物において、2官能以上のエチレン性不飽和化合物が主成分であることが好ましい。
具体的には、上記感光性樹脂層が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合において、2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記感光性樹脂層に含有されるエチレン性不飽和化合物の総含有量に対し、60質量%~100質量%が好ましく、80質量%~100質量%がより好ましく、90質量%~100質量%が特に好ましい。
【0048】
また、上記感光性樹脂層が、酸基を有するエチレン性不飽和化合物(好ましくは、カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物又はそのカルボン酸無水物)を含有する場合、酸基を有するエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記感光性樹脂層に対し、1質量%~50質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましく、1質量%~10質量%が更に好ましい。
【0049】
<<アルカリ可溶性樹脂>>
上記感光性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。
上記アルカリ可溶性樹脂の酸価は、特に制限はないが、アルカリ現像性の観点から、酸価60mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂であることが好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシル基含有アクリル樹脂であることが特に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂が、酸価を有することで、加熱により酸と反応可能な化合物と熱架橋し、3次元架橋密度を高めることができると推定される。また、カルボキシル基含有アクリル樹脂のカルボキシル基が無水化され、疎水化することにより湿熱耐性の改善に寄与すると推定される。
【0050】
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシル基含有アクリル樹脂(以下、特定重合体Aと称することがある。)としては、上記酸価の条件を満たす限りにおいて特に制限はなく、公知の樹脂から適宜選択して用いることができる。
例えば、特開2011-95716号公報の段落0025に記載のポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシル基含有アクリル樹脂であるアルカリ可溶性樹脂、特開2010-237589号公報の段落0033~0052に記載のポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシル基含有アクリル樹脂等が、本実施形態における特定重合体Aとして好ましく用いることができる。
ここで、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の少なくとも一方を含む樹脂を指す。
(メタ)アクリル樹脂中における(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計割合は、30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましい。
【0051】
特定重合体Aにおける、カルボキシル基を有するモノマーの共重合比の好ましい範囲は、ポリマー100質量%に対して、5質量%~50質量%であり、より好ましくは10質量%~40質量%、更に好ましくは12質量%~30質量%の範囲内である。
特定重合体Aは、反応性基を有していてもよく、反応性基を特定重合体Aに導入する手段としては、水酸基、カルボキシル基、一級、二級アミノ基、アセトアセチル基、スルホン酸などに、エポキシ化合物、ブロックイソシアネート、イソシアネ-ト、ビニルスルホン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、カルボン酸無水物などを反応させる方法が挙げられる。
特定重合体Aとしては、以下に示す化合物Aが好ましい。なお、以下に示す各構造単位の含有比率は目的に応じて適宜変更することができる。
【0052】
【0053】
本開示に用いられるアルカリ可溶性樹脂の酸価は、アルカリ現像性の観点から、60mgKOH/g~200mgKOH/gであることが好ましく、60mgKOH/g~150mgKOH/gであることがより好ましく、60mgKOH/g~110mgKOH/gであることが更に好ましい。
本明細書において、酸価は、JIS K0070(1992年)に記載の方法に従って、測定された値を意味する。
【0054】
特定重合体Aの重量平均分子量は、1万以上が好ましく、2万~10万がより好ましい。
【0055】
また、上記アルカリ可溶性樹脂は、上記特定ポリマー以外にも、任意の膜形成樹脂を目的に応じて適宜選択して用いることができる。例えば、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂などを好ましく挙げることができる。
【0056】
アルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用しても、2種以上を含有してもよい。
上記感光性樹脂層におけるアルカリ可溶性樹脂の含有量は、感光性の観点から、上記感光性樹脂層の全質量に対し、10質量%~90質量%であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0057】
<<光重合開始剤>>
上記感光性樹脂層は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤は、紫外線や可視光線等の活性光線を受けて、エチレン性不飽和化合物の重合を開始する。
光重合開始剤としては特に制限はなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤としては、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤(以下、「オキシム系光重合開始剤」ともいう。)、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤」ともいう。)、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤」ともいう。)、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤(以下、「アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤」ともいう。)、N-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤(以下、「N-フェニルグリシン系光重合開始剤」ともいう。)等が挙げられる。
【0058】
光重合開始剤は、オキシム系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤及びN-フェニルグリシン系光重合開始剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、オキシム系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びN-フェニルグリシン系光重合開始剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0059】
また、光重合開始剤としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0031~0042、特開2015-014783号公報の段落0064~0081に記載された重合開始剤を用いてもよい。
【0060】
光重合開始剤の市販品としては、1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-01、BASF社製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE-02、BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:IRGACURE 379EG、BASF社製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:IRGACURE 907、BASF社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:IRGACURE 127、BASF社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(商品名:IRGACURE 369、BASF社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:IRGACURE 1173、BASF社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:IRGACURE 184、BASF社製)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:IRGACURE 651、BASF社製)、オキシムエステル系の(商品名:Lunar 6、DKSHジャパン(株)製)などが挙げられる。
【0061】
光重合開始剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
上記感光性樹脂層における光重合開始剤の含有量は、特に制限はないが、上記感光性樹脂層の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。
また、光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0062】
<<界面活性剤>>
上記感光性樹脂層は、界面活性剤を少なくとも1種含有してもよい。
界面活性剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0017及び特開2009-237362号公報の段落0060~0071に記載の界面活性剤、公知のフッ素系界面活性剤等を用いることができる。
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤の市販品としては、メガファック(登録商標)F551(DIC(株)製)が挙げられる。
【0063】
上記感光性樹脂層が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、上記感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.05質量%~1質量%がより好ましく、0.1質量%~0.8質量%が更に好ましい。
【0064】
<<重合禁止剤>>
上記感光性樹脂層は、重合禁止剤を少なくとも1種含有してもよい。
重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載された熱重合防止剤を用いることができる。
中でも、フェノチアジン、フェノキサジン又は4-メトキシフェノールを好適に用いることができる。
【0065】
上記感光性樹脂層が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、上記感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましく、0.01質量%~0.8質量%が更に好ましい。
【0066】
<<その他の成分>>
上記感光性樹脂層は、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載の熱重合防止剤、特開2000-310706号公報の段落0058~0071に記載のその他の添加剤、等が挙げられる。
【0067】
また、上記感光性樹脂層は、その他の成分として、着色剤(顔料、染料等)を含有してもよい。
着色剤としては、染料及び顔料が挙げられ、例えば、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、カルコキシドグリーンS,パラマジエンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン(保土ヶ谷化学(株)製、アイゼン(登録商標) MALACHITE GREEN)、ベイシックブルー20、ダイアモンドグリーン(保土ヶ谷化学(株)製、アイゼン(登録商標) DIAMOND GREEN GH)等が挙げられる。
感光性樹脂層が、着色剤を含有する場合、着色剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対し、0.005質量%~10質量%の範囲であることが好ましく、0.01質量%~1質量%の範囲であることがより好ましい。
【0068】
また、感光性樹脂層は、発色系染料を含有していてもよい。
発色系染料とは、光照射によって発色する機能を有する化合物である。例えばロイコ染料及びフルオラン染料が挙げられる。これらのうちロイコ染料が好ましい。具体的には例えば、トリス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、トリス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)メタン[ロイコマラカイトグリーン]等が挙げられる。
また、ロイコ染料は、ハロゲン化合物と組み合わせて用いることが好ましい。
ハロゲン化合物としては、例えば、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンザル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルフォン、四臭化炭素、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェ-ト、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1、1、1-トリクロロ-2、2-ビス(p-クロロフェニル)エタン、ヘキサクロロエタン、ハロゲン化トリアジン化合物等が挙げられる。
ハロゲン化トリアジン化合物としては、例えば、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジンが挙げられる。
中でも、ハロゲン化合物としては、トリブロモメチルフェニルスルフォン、及び、トリアジン化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0069】
上記感光性樹脂層の厚さは、転写性(ラミネート性)の観点から、1.0μm以上が好ましく、2.0μm以上がより好ましく、5.0μm以上が更に好ましい。また、上記感光性樹脂層の厚さは、製造適性の観点から、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。
【0070】
<紫外線吸収層>
本開示における紫外線吸収層は、紫外線吸収剤を含有する層である。
紫外線吸収層は、紫外線を吸収可能な層であればよく、本開示における紫外線吸収の波長領域は、波長450nm以下の紫外線であり、例えば、高圧水銀灯が発光するg線(435nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、更に、j線(313nm)、等の紫外線、KrF露光装置での露光波長である248nm、ArF露光装置での露光波長である193nm等の波長の紫外線が挙げられる。
【0071】
紫外線吸収層の露光波長における25℃の吸光度は、0.1以上が好ましい。紫外線吸収層の吸光度が0.1以上であると、十分な紫外線吸収が可能となり、基板からの反射光を抑制することで、レジストパターンの解像度が良好となり、パターン直線性の観点から好ましい。
また、紫外線吸収層の365nmにおける25℃の吸光度としては、0.3~5.0がより好ましく、0.4~3.0が更に好ましく、0.5~2.0が特に好ましい。上記範囲とすることで、紫外線吸収剤の拡散による感度の低下や、ブリードアウトによる画質の低下を抑制することができる。
本開示における吸光度の測定方法は、分光光度計(V-7000(日本分光(株)製)を用いて、25℃において365nmの吸光度を測定するものとする。
また、紫外線吸収層の上記吸光度は、感光性樹脂層やその他の層と紫外線吸収層とを重層化したもの(例えば、本開示に係る転写フィルムや、本開示に係る転写フィルムから仮支持体を除去したもの)全体の紫外線吸収スペクトルを測定し、全体の吸光度を求めたのちに、感光性樹脂層やその他の層の吸光度を差し引くことでも求めることができる。
【0072】
紫外線吸収層は、パターン形成性、パターン形状及びパターン直線性の観点から、エチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、及び、上記紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
紫外線吸収層におけるエチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂及び光重合開始剤の好ましい態様は、上記感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂及び光重合開始剤の好ましい態様とそれぞれ同様である。
紫外線吸収層におけるエチレン性不飽和化合物の含有量は、硬化膜の強度の観点から、上記紫外線吸収層の全質量に対し、1質量%~70質量%が好ましく、10質量%~70質量%がより好ましく、20質量%~60質量%が更に好ましく、20質量%~50質量%が特に好ましい。
紫外線吸収層におけるアルカリ可溶性樹脂の含有量は、現像性及び硬化膜の強度の観点から、上記紫外線吸収層の全質量に対し、10質量%~90質量%であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
紫外線吸収層における光重合開始剤の含有量は、特に制限はないが、硬化膜の強度の観点から、上記紫外線吸収層の全質量に対し、0.1質量%~10質量%が好ましく、0.5質量%~10質量%がより好ましく、1.0質量%~5質量%が更に好ましい。
【0073】
また、紫外線吸収層は、界面活性剤を含有してもよい。
更に、紫外線吸収層は、重合禁止剤を含有してもよい。
紫外線吸収層における界面活性剤及び重合禁止剤の好ましい態様は、上記感光性樹脂層における界面活性剤及び重合禁止剤の好ましい態様とそれぞれ同様である。
紫外線吸収層が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、上記紫外線吸収層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.05質量%~1質量%がより好ましく、0.1質量%~0.8質量%が更に好ましい。
紫外線吸収層が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、上記紫外線吸収層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましく、0.01質量%~0.8質量%が更に好ましい。
【0074】
<<紫外線吸収剤>>
紫外線吸収剤としては、紫外線を吸収可能な化合物であり、感光性樹脂層に含有される光重合開始剤の感光波長の少なくとも一部の波長を光吸収可能な紫外線吸収特性を有することが好ましい。なお、紫外線を吸収可能な化合物のうち、紫外線や可視光線等の活性光線を受けて、エチレン性不飽和化合物の重合を開始するものは、光重合開始剤とする。
したがって、使用する紫外線吸収剤は、使用する光重合開始剤の種類によって適宜選択することが好ましい。
紫外線吸収剤としては、波長365nmの光に対して大きなモル吸光係数を有する化合物であることが好ましい。上記モル吸光係数としては、5,000(L/(mol・cm))~100,000(L/(mol・cm))であることが好ましく、10,000(L/(mol・cm))~80,000(L/(mol・cm))であることがより好ましく、15,000(L/(mol・cm))~50,000(L/(mol・cm))であることが更に好ましい。
本開示における化合物のモル吸光係数は、以下の方法により測定するものとする。
測定する化合物をN,N-ジメチルホルムアミドを用いて4×10-6(g/mL)の溶液とする。この溶液を、(株)島津製作所製UV測定装置UV2550を用いて365nmでの吸光度を測定する。得られた吸光度等より、式:[モル吸光係数]=[吸光度]/[溶液の質量濃度/吸光性化合物の分子量]によりモル吸光係数を算出する。
【0075】
紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、トリアジン系の紫外線吸収剤を好適に使用することができる。
サリシレート系紫外線吸収剤の例としては、フェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート、p-t-ブチルフェニルサリシレートなどが挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例としては、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-アミル-5’-イソブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-イソブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-イソブチル-5’-プロピルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(1,1,3,3-テトラメチル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
置換アクリロニトリル系紫外線吸収剤の例としては、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシルなどが挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤の例としては、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンなどのモノ(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物;2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-プロピルオキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-プロピルオキシフェニル)-6-(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ヘキシルオキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンなどのビス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物;2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス[2-ヒドロキシ-4-(3-ブトキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]-1,3,5-トリアジンなどのトリス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物等が挙げられる。
【0076】
また、市販の化合物で、ベンゾトリアゾール系紫外線(UV)吸収剤として、(株)ADEKA製アデカスタブLA-24、LA-29、LA-31、LA-31RG、LA-31G、LA-32、LA-36、LA-36G、トリアジン系UV吸収剤として、(株)ADEKA製LA-46、LA-F70、ベンゾフェノン系UV吸収材として、(株)ADEKA製1413を用いてもよい。
【0077】
更に、波長365nmの光に対して大きなモル吸光係数をもつ化合物としては、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、2-(4-ジブチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ウスニックアシッド、フェニルフルオロン、ロゾリックアシッド、1,8,9-トリヒドロキシアントラセン、2-(4-ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸、メチルレッド、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)、3,4-ジアミノベンゾフェノン、クルクミン、α-シアノ-4-ヒドロキシシンナミックアシッド、メトキシケイヒ酸オクチル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクチルトリアゾン、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル等を挙げることができる。
【0078】
紫外線吸収層は、紫外線吸収剤を、紫外線吸収剤を含むポリマーとして含んでいてもよい。紫外線吸収剤を含むポリマーとしては、例えば、紫外線吸収剤を含むポリマー粒子が挙げられる。
上記ポリマーとしては、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、シロキサン樹脂、フッ素ポリマーなどが挙げられ、アクリル樹脂が好ましい。
アクリル樹脂を形成するためのモノマーとしては、上述のアルカリ可溶性樹脂におけるアクリル樹脂を形成するためのモノマーが挙げられる。
紫紫外線吸収剤を含むポリマー粒子における紫外線吸収剤の含有量は、ポリマー粒子の全量に対し、20質量%~80質量%が好ましく、30質量%~70質量%がより好ましく、40質量%~60質量%が特に好ましい。
紫外線吸収剤を含むポリマー粒子におけるポリマーの含有量は、複合粒子の全量に対し、20質量%~80質量%が好ましく、30質量%~70質量%がより好ましく、40質量%~60質量%が特に好ましい。
【0079】
上記ポリマー(例えばアクリル樹脂)の重量平均分子量は、長期間の耐候性をより向上する観点から、5,000~200,000が好ましく、7,000~150,000がより好ましく、10,000~100,000が更に好ましい。
紫外線吸収剤を含むポリマー粒子のメジアン径(D50)は、500nm未満が好ましく、400nm未満がより好ましく、150nm未満が特に好ましい。
メジアン径の下限は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。
上記メジアン径は、動的光散乱測定による粒度分布から算出される。
【0080】
また、本開示に用いられる紫外線吸収剤は、紫外線吸収構造を有するポリマーであってもよい。
紫外線吸収構造を有するポリマーとしては、紫外線吸収構造を有する単量体単位を含むポリマーが好ましく挙げられる。
紫外線吸収構造としては、トリアジン構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造、又は、サリチル酸構造が好ましく、トリアジン構造がより好ましい。
また、紫外線吸収構造を有する単量体単位を含むポリマーはアクリル樹脂であることが好ましい。
また、上記アクリル樹脂は、上述の複合粒子におけるアクリル樹脂を形成するためのモノマーと同様のモノマーに由来する単量体単位を更に含む共重合体であってもよい。
紫外線吸収構造を有する単量体単位の含有量は、紫外線吸収構造を有する単量体単位を含むポリマーの全質量に対し、10質量%~80質量%であることが好ましく、30質量%~70質量%であることがより好ましい。
【0081】
紫外線吸収構造を有する単量体単位を含むポリマーの重量平均分子量は、長期間の耐候性をより向上する観点から、5,000~200,000が好ましく、7,000~150,000がより好ましく、10,000~100,000が更に好ましい。
紫外線吸収層における、アルカリ可溶性樹脂の含有量に対する紫外線吸収構造を有する単量体単位を含むポリマーの含有量の比(アルカリ可溶性樹脂:紫外線吸収構造を有する単量体単位を含むポリマー)は、質量基準で、0.05~0.60であることが好ましい。
【0082】
紫外線吸収構造を有するポリマーとしては、市販品を用いてもよい。
市販品としては、例えば、Tinuvin(登録商標)99-DW、400-DW、477-DW、479-DW(ともにBASF社製)、ニューコート(登録商標)UVA-204W、UVA-101、UVA-102、UVA-103、UVA-104、バナレジン(登録商標)UVA-5080、UVA-5080(OHV20)、UVA-55T、UVA-55MHB、UVA-7075、UVA-7075(OHV20)、UVA-73T(ともに新中村化学工業(株)製)RUVA-93(大塚化学(株)製)などが挙げられる。
【0083】
紫外線吸収剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
紫外線吸収剤の含有量は、パターン形成性、パターン形状及びパターンの直線性の観点から、紫外線吸収層の全質量に対して、0.001質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。
【0084】
-その他の添加剤-
上記紫外線吸収層は、必要に応じて公知の添加剤を含むことができる。
上記紫外線吸収層は、例えば、金属酸化物粒子、ヘテロ環状化合物以外の架橋剤、アルコキシシラン化合物、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、着色剤、熱ラジカル発生剤、熱酸発生剤、増粘剤、及び、有機又は無機の沈殿防止剤などの公知の添加剤を更に含んでいてもよい。
その他の成分の好ましい態様については、特開2014-85643号公報の段落0165~段落0184にそれぞれ記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0085】
上記紫外線吸収層の厚さは、0.05μm~2.0μmが好ましく、0.1μm~1.0μmがより好ましく、0.4μm~1.0μmが特に好ましい。紫外線吸収層の厚みが2.0μm以下であると、現像時に発生する紫外線吸収層の過剰な溶解を抑制することが可能となり、0.05μm以上であると、十分な紫外線吸収が可能となり、また、転写性も良好となり、レジストパターンの解像度が良好となり、パターン形状及びパターン直線性の観点から好ましい。
【0086】
<その他の層>
本開示に係る転写フィルムは、仮支持体、別の仮支持体、並びに、上記感光性樹脂層及び紫外線吸収層以外の層を有していてもよい。その他の層としては、上述したように、コントラストエンハンスメント層、中間層、熱可塑性樹脂層等を挙げることができる。
【0087】
(レジストパターンの形成方法)
本開示に係るレジストパターンの形成方法は、本開示に係る転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルム又は本開示に係る転写フィルムを用いる方法であれば特に制限はないが、基板上に、本開示に係る転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルムをラミネートする工程、上記転写フィルムにおける上記感光性樹脂層をパターン露光する工程、及び、パターン露光された上記感光性樹脂層を現像する工程を含むことが好ましい。
また、上記ラミネートする工程においては、本開示に係る転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルムを本開示に係る転写フィルムに置き換えた態様も好ましい。
【0088】
<ラミネートする工程>
本開示に係るレジストパターンの形成方法は、基板上に、本開示に係る転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルムをラミネートする工程を含むことが好ましい。
本開示に用いられる基板としては、基材上に導電性層が1層以上積層された基板であることが好ましい。
本開示に用いられる基材は、ガラス基材又は樹脂フィルム基材であることが好ましく、樹脂フィルム基材であることがより好ましい。また、得られるレジストパターンにより、タッチパネル用の回路配線を形成する場合は、基材が樹脂フィルム基材であることが特に好ましい。
上記基材の屈折率は、1.50~1.52であることが好ましい。
上記基材は、ガラス基材等の透光性基材(透明基材)で構成されていてもよい。上記基材としては、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスなどを用いることができる。また、上記透明基材としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報及び特開2010-257492号公報に用いられている材料を好ましく用いることができる。
本開示における透明とは、全可視光線の透過率が85%以上であることを意図し、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
基材としてフィルム基材を用いる場合は、光学的に歪みがなく、かつ透明度が高い基材を用いることが好ましい。具体的な素材には、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、及び、シクロオレフィンポリマーを挙げることができる。
【0089】
本開示に用いられる基板は、基材上に導電性層を有する基板であることが好ましい。
なお、本開示における導電性とは、体積抵抗率が1×107Ω・cm未満であることをいう。
また、上記ラミネートする工程においては、上記導電性層と上記転写フィルムの紫外線吸収層又は紫外線吸収層側の最外層とが接触するように圧着することが好ましい。
上記導電性層としては、一般的な回路配線又はタッチパネル配線に用いられる任意の導電性層を挙げることができる。
導電性層の材料としては、金属及び金属酸化物などを挙げることができる。
金属としては、Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Au、Ag、Ti、W、Si、及び、Mo等を挙げることができる。金属酸化物としては、ITO(Indium Tin Oxide)、及び、IZO(Indium Zinc Oxide)等を挙げることができる。
【0090】
上記導電性層は、金属酸化物を含むものであることが好ましい。
上記導電性層は、1層より形成されていても、2以上の層より形成されていてもよく、また、上記基材表面における導電性層が異なる材質により形成されていてもよい。例えば、上記基材の一方の面に異なる材質で形成された導電性層を2層以上有する態様、上記基材の一方の面の一部に金属層が形成され、他の一部に上記金属層とは異なる金属の層が形成されている態様、及び、上記基材における1つの面の一部に金属層が形成され、上記1つの面の他の一部に金属酸化物層が形成されている態様などが例示できる。
また、上記基材及び上記導電性層の形状並びに厚さは、特に制限はなく、所望のパターン付き基材や回路基板に応じて、適宜設定すればよい。
【0091】
上記ラミネートする工程では、上記基板に上記転写フィルムを圧着させることが好ましい。
圧着方法としては、特に制限はなく、公知の転写方法、及び、ラミネート方法を用いることができる。
具体的には例えば、上記導電性層と上記転写フィルムの紫外線吸収層又は紫外線吸収層側の最外層とが接触するように重ね、ロール等による加圧、又は、加圧及び加熱することに行われることが好ましい。貼り合わせには、ラミネータ、真空ラミネータ、及び、より生産性を高めることができるオートカットラミネーター等の公知のラミネータを使用することができる。
上記ラミネートする工程における圧着圧力及び温度は、特に制限はなく、導電性層及び感光性樹脂層の材質、搬送速度、並びに、使用する圧着機等に応じ、適宜設定することができる。また、上記転写フィルムが上記別の仮支持体を有する場合は、上記転写フィルムから上記別の仮支持体を除去した後、圧着すればよい。
上記ラミネートする工程におけるラミネート温度(圧着温度)は、特に制限はないが、10℃~120℃であることが好ましく、60℃~100℃であることがより好ましい。
上記基板における基材が樹脂フィルムである場合、ロールツーロールでの圧着を行ってもよい。
【0092】
<パターン露光する工程>
本開示に係るレジストパターンの形成方法は、上記転写フィルムにおける上記感光性樹脂層をパターン露光する工程を含むことが好ましい。
上記パターン露光する工程では、塗膜を設けた基板に所定のパターンを有するマスクを介して、活性光線を照射することが好ましい。この工程では、ネガ型感光性樹脂層であれば、露光部分において現像液への溶解性が低下し、ポジ型感光性樹脂層であれば、露光部分において現像液への溶解性が向上する。
本開示において、パターンの詳細な配置及び具体的サイズは、特に限定されない。本開示において製造される回路基板を有する入力装置を備えた表示装置(例えば、タッチパネル)の表示品質を高め、また、取り出し配線の占める面積をできるだけ小さくしたいことから、パターンの少なくとも一部(特にタッチパネルの電極パターン及び取り出し配線の部分)は、100μm以下の細線であることが好ましく、70μm以下の細線であることがより好ましい。
また、上記パターン露光する工程における露光は、マスクを介した露光でもよいし、レーザー等を用いたデジタル露光でもよいが、露光用マスクを介した露光であることが好ましい。
上記パターン露光する工程において、上記転写フィルムと露光用マスクとが接触していることが好ましい。上記態様であると、得られるパターンの解像度により優れる。
【0093】
露光に用いられる活性光線としては、可視光、紫外光、及び、電子線が挙げられるが、可視光又は紫外光が好ましく、紫外線が特に好ましい。
活性光線による露光光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、発光ダイオード(LED)光源、エキシマレーザー発生装置などを用いることができ、g線(436nm)、i線(365nm)、h線(405nm)などの波長300nm以上450nm以下の波長を有する活性光線が好ましく使用できる。また、必要に応じて長波長カットフィルター、短波長カットフィルター、バンドパスフィルターのような分光フィルターを通して照射光を調整することもできる。
露光装置としては、ミラープロジェクションアライナー、ステッパー、スキャナー、プロキシミティ、コンタクト、マイクロレンズアレイ、レーザー露光など各種方式の露光機を用いることができる。
露光量は、使用する感光性樹脂層に応じ、適宜選択すればよいが、5mJ/cm2~200mJ/cm2であることが好ましく、10mJ/cm2~100mJ/cm2であることがより好ましい。
【0094】
上記パターン露光する工程においては、仮支持体を有したまま上記感光性樹脂層を露光してもよいし、仮支持体を剥離して上記感光性樹脂層を露光してもよいが、仮支持体を剥離して上記感光性樹脂層を露光することが好ましい。上記態様であると、得られるパターンの解像度により優れる。
【0095】
<現像する工程>
本開示に係るレジストパターンの形成方法は、パターン露光された上記感光性樹脂層を現像する工程を含むことが好ましい。
上記現像する工程におけるパターン露光された上記感光性樹脂層の現像は、現像液を用いて行うことができる。
現像液としては、上記感光性樹脂層の露光部分を除去することができれば特に制限はなく、塩基性化合物の水溶液であることが好ましい。塩基性化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩類;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムなどのアルカリ金属重炭酸塩類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類:コリン等の(ヒドロキシアルキル)トリアルキルアンモニウムヒドロキシド類;ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどのケイ酸塩類;エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等の脂環式アミン類を挙げることができる。
これらのうち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。現像液としてはその他に例えば、特開平5-72724号公報に記載の現像液など、公知の現像液を使用することができる。なお、現像液は上記感光性樹脂層の露光部分が溶解型の現像挙動をする現像液が好ましい。現像液としては、アルカリ水溶液が好ましく、例えば、pKa=7~13の化合物を0.05mol/L(リットル)~5mol/Lの濃度で含むアルカリ水溶液がより好ましい。現像液は、更に、水と混和性を有する有機溶剤、界面活性剤等を含有してもよい。本開示において好適に用いられる現像液としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落0194に記載の現像液が挙げられる。
【0096】
現像方式としては、特に制限はなくパドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、並びに、ディップ現像等のいずれでもよい。ここで、シャワー現像について説明すると、露光後の上記感光性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、露光部分を除去することができる。また、現像の後に、洗浄剤などをシャワーにより吹き付け、ブラシなどで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。現像液の液温度は20℃~40℃が好ましい。
【0097】
また、本開示に係るレジストパターンの形成方法は、現像後、水等により洗浄する工程や、得られたレジストパターンを有する基板を乾燥する工程等、その他の公知の工程を含んでいてもよい。
【0098】
(エッチング方法、及び、導電性配線パターンの製造方法)
本開示に係るエッチング方法は、本開示に係るレジストパターンの形成方法により得られたレジストパターンを用いる方法であれば、特に制限はないが、本開示に係るレジストパターンの形成方法により得られたレジストパターンを有する上記基板における導電性層、好ましくは金属をエッチング処理する工程を含むことが好ましい。
また、本開示に係る導電性配線パターンの製造方法は、表面に導電性層を有する基板上に、本開示に係る転写フィルムの製造方法により製造された転写フィルムをラミネートする工程、上記転写フィルムにおける上記感光性樹脂層をパターン露光する工程、及び、パターン露光された上記感光性樹脂層を現像する工程、上記導電性層をエッチング処理する工程を含むことが好ましい。
更に、本開示に係る導電性配線パターンの製造方法は、本開示に係るレジストパターンの形成方法により得られたレジストパターンを有する上記基板における導電性層、好ましくは金属をエッチング処理する工程を含むことが好ましい。
本開示に係る導電性配線パターンの製造方法における上記ラミネートする工程、上記パターン露光する工程、及び、上記を現像する工程は、本開示に係るレジストパターンの形成方法における上記ラミネートする工程、上記パターン露光する工程、及び、上記を現像する工程と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0099】
<エッチング処理する工程>
上記導電性層、好ましくは金属のエッチングは、特開2010-152155号公報の段落0048~段落0054等に記載の方法など、公知の方法でエッチングを適用することができる。
上記導電性層としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。中でも、導電性層としては、金属層が好ましい。
例えば、エッチングの方法としては、一般的に行われている、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法が挙げられる。ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性タイプ又はアルカリ性タイプのエッチング液を適宜選択すればよい。
酸性タイプのエッチング液としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸、シュウ酸、リン酸等の酸性成分単独の水溶液、酸性成分と塩化第2鉄、フッ化アンモニウム、過マンガン酸カリウム等の塩の混合水溶液等が例示される。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
アルカリ性タイプのエッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、又は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドのような有機アミンの塩等のアルカリ成分単独の水溶液、アルカリ成分と過マンガン酸カリウム等の塩の混合水溶液等が例示される。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
【0100】
エッチング液の温度は特に限定されないが、45℃以下であることが好ましい。本開示において、エッチングマスク(エッチングパターン)として使用される上記レジストパターンは、45℃以下の温度域における酸性及びアルカリ性のエッチング液に対して特に優れた耐性を発揮することが好ましい。したがって、上記エッチング処理する工程中に上記レジストパターンにおける感光性樹脂層が剥離することが防止され、感光性樹脂層の存在しない部分が選択的にエッチングされることになる。
【0101】
上記エッチング処理する工程の後、工程ラインの汚染を防ぐために、必要に応じて、上記基板を洗浄する工程(洗浄工程)及び上記基板を乾燥する工程(乾燥工程)を行ってもよい。洗浄工程については、例えば常温(10℃~35℃)で純水により10秒~300秒間基板を洗浄することが挙げられる。乾燥工程については、例えばエアブローを使用し、エアブロー圧(0.1kg/cm2~5kg/cm2程度)を適宜調整して乾燥を行えばよい。
【0102】
<剥離する工程>
本開示に係るエッチング方法又は本開示に係る導電性配線パターンの製造方法は、上記エッチング処理する工程の後に、上記レジストパターンにおける感光性樹脂層を剥離液を用いて剥離する工程を含むことが好ましい。
上記エッチング処理する工程の終了後、パターン形成された上記感光性樹脂層が残存している。上記感光性樹脂層が不要であれば、残存する全ての上記感光性樹脂層を除去すればよい。
剥離液を用いて剥離する方法としては、例えば、好ましくは30℃~80℃、より好ましくは50℃~80℃にて撹拌中の剥離液に上記感光性樹脂層などを有する基材を5分~30分間浸漬する方法が挙げられる。
剥離液としては、例えば、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム等の無機アルカリ成分、又は、第三級アミン若しくは第四級アンモニウム塩等の有機アルカリ成分を、水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、又は、これらの混合溶液に溶解させた剥離液が挙げられる。剥離液を使用し、スプレー法、シャワー法、又は、パドル法等により剥離してもよい。
【0103】
本開示に係るエッチング方法又は本開示に係る導電性配線パターンの製造方法は、他の任意の工程を含んでもよい。例えば、以下のような工程が挙げられるが、これらの工程に限定されない。また、これら工程は、回路基板の製造に好適な工程である。
【0104】
<可視光線反射率を低下させる工程>
本開示に係るエッチング方法又は本開示に係る導電性配線パターンの製造方法は、上記基板上の導電性層、好ましくは金属の一部又は全ての可視光線反射率を低下させる処理をする工程を含んでいてもよい。
可視光線反射率を低下させる処理としては、酸化処理などを挙げることができる。例えば、銅を酸化処理して酸化銅とすることで、黒化することにより、可視光線反射率を低下させることができる。
可視光線反射率を低下させる処理の好ましい態様については、特開2014-150118号公報の段落0017~段落0025、並びに、特開2013-206315号公報の段落0041、段落0042、段落0048及び段落0058に記載があり、これらの公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0105】
<エッチングされた上記導電性層上に絶縁膜を形成する工程、及び、絶縁膜上に新たな導電性層を形成する工程>
本開示に係るエッチング方法又は本開示に係る導電性配線パターンの製造方法は、エッチングされた上記導電性層、好ましくは金属上に絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜上に新たな導電性層(例えば、金属層)を形成する工程とを含むことも好ましい。
絶縁膜を形成する工程については、特に制限はなく、公知の永久膜を形成する方法を挙げることができる。また、絶縁性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの絶縁膜を形成してもよい。
絶縁膜上に新たな導電性層を形成する工程については、特に制限はない。導電性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの新たな導電性層を形成してもよい。
【0106】
また、本開示に係るエッチング方法は、上記新たな導電性層を、上記と同様な方法によりエッチングレジストを形成してエッチングしてもよいし、別途、公知の方法によりエッチングしてもよい。
本開示に係るエッチング方法又は本開示に係る導電性配線パターンの製造方法により得られる回路基板は、上記導電性層から形成された1層のみの回路配線を有していても、上記導電性層から形成された2層以上の回路配線を有していてもよい。
【0107】
また、本開示に係るエッチング方法又は本開示に係る導電性配線パターンの製造方法は、基材が両方の表面にそれぞれ複数の導電性層を有し、基材の両方の表面に形成された導電性層に対して逐次又は同時に回路形成することも好ましい。このような構成により、基材の一方の表面に第一の導電パターン、もう一方の表面に第二の導電パターンを形成した回路配線、好ましくはタッチパネル用回路配線を形成することができる。
【0108】
(回路基板)
本開示に係る回路基板は、本開示に係るエッチング方法又は本開示に係る導電性配線パターンの製造方法により製造された回路基板である。
本開示に係るエッチング方法により製造された回路基板の用途は限定されないが、例えば、タッチパネル用回路基板であることが好ましい。タッチパネル用回路基板の好ましい態様については、静電容量型入力装置の説明で後述する。
【0109】
(入力装置及び表示装置)
本開示に係るエッチング方法又は本開示に係る導電性配線パターンの製造方法により製造される回路基板を備えた装置として、入力装置が挙げられる。
本開示における入力装置は、静電容量型タッチパネルであることが好ましい。
本開示おける表示装置は、本開示における入力装置を備えることが好ましい。本開示における表示装置は、有機EL表示装置、及び、液晶表示装置等の画像表示装置であることが好ましい。
【0110】
(タッチパネル、及び、タッチパネル表示装置)
本開示に係るタッチパネルは、本開示に係るエッチング方法又は本開示に係る導電性配線パターンの製造方法により製造された回路基板を少なくとも有するタッチパネルである。また、本開示に係るタッチパネルは、透明基板と、電極と、絶縁層又は保護層とを少なくとも有することが好ましい。
本開示に係るタッチパネル表示装置は、本開示に係るエッチング方法又は本開示に係る導電性配線パターンの製造方法により製造された回路基板を少なくとも有するタッチパネル表示装置であり、本開示のタッチパネルを有するタッチパネル表示装置であることが好ましい。
本開示に係るタッチパネル及び本開示に係るタッチパネル表示装置のおける検出方法としては、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、及び、光学方式など公知の方式いずれでもよい。中でも、静電容量方式が好ましい。
タッチパネル型としては、いわゆる、インセル型(例えば、特表2012-517051号公報の
図5、
図6、
図7、
図8に記載のもの)、いわゆる、オンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の
図19に記載のもの、特開2012-89102号公報の
図1や
図5に記載のもの)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-54727号公報の
図2に記載のもの)、その他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の
図6に記載のもの)、各種アウトセル型(いわゆる、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1、G1Fなど)を挙げることができる。
本開示に係るタッチパネル及び本開示に係るタッチパネル表示装置としては、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日、(株)テクノタイムズ社発行)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004,12)、FPD International 2009 Forum T-11講演テキストブック、Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292等に開示されている構成を適用することができる。
【実施例】
【0111】
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の実施形態の範囲は以下に示す具体例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
なお、ヘイズ値、及び、吸光度は、上述した方法により測定した。
【0112】
<仮支持体及び別の仮支持体>
実施例及び比較例で使用した仮支持体及び別の仮支持体を、以下に示す。
A:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ25μm、ヘイズ値0.25%)
A’:PETフィルム(厚さ16μm、ヘイズ値0.12%)
B:PETフィルム(厚さ25μm、ヘイズ値0.35%)
C:PETフィルム(厚さ38μm、ヘイズ値0.48%)
D:ポリプロピレン(PP)フィルム(厚さ12μm、ヘイズ値0.30%)
D’:PPフィルム(厚さ30μm、ヘイズ値0.30%)
【0113】
<感光性樹脂組成物の調製>
下記表1に記載の組成となるように、各感光性樹脂組成物を調製した。
【0114】
【0115】
【0116】
なお、化合物Aの各構成単位を表す括弧の右下の数値は、モル比を表す。
【0117】
<紫外線吸収層形成用組成物の調製>
下記表2に記載の組成となるように、各紫外線吸収層形成用組成物を調製した。
【0118】
【0119】
(実施例1~17、並びに、比較例1及び2)
<第一のドライフィルムの作製>
表3に記載の仮支持体上に、表3に記載の感光性樹脂組成物を、スリット状ノズルを用いて均一に塗布し、その後、100℃のコンベクションオーブンで2分間乾燥させ有機溶剤を除去し、表3に記載の膜厚の感光性樹脂層を形成し、第一のドライフィルムを作製した。
【0120】
<第二のドライフィルムの作製>
表3に記載の別の仮支持体上に、表3に記載の紫外線吸収層形成用組成物を塗布し、100℃のコンベクションオーブンで2分間乾燥させ有機溶剤を除去し、表3に記載の膜厚の紫外線吸収層を形成し、第二のドライフィルムを作製した。
【0121】
<転写フィルムの作製>
得られた紫外線吸収層を有する第二のドライフィルムと、得られた感光性樹脂層を有する第一のドライフィルムとを、上記紫外線吸収層と上記感光性樹脂層とが接するように、ラミネータを用いて23℃で貼り合せて、転写フィルムを作製した。
【0122】
(実施例18)
表3に記載の仮支持体上に、表3に記載の感光性樹脂組成物を、スリット状ノズルを用いて均一に塗布し、その後、100℃のコンベクションオーブンで2分間乾燥させ有機溶剤を除去し、表3に記載の膜厚の感光性樹脂層を形成した。その後、感光性樹脂層上に、表3に記載の紫外線吸収層形成用組成物を塗布し、100℃のコンベクションオーブンで2分間乾燥させ有機溶剤を除去し、表3に記載の膜厚の紫外線吸収層を形成したドライフィルムを作製した。その後、ラミネータを用いて別の仮支持体を、23℃で貼り合せて、転写フィルムを作製した。
【0123】
-評価-
<カバーフィルム剥離性>
得られた転写フィルムから、別の仮支持体を剥離し、剥がれ方を観察し、以下の評価基準で評価した。
A:別の仮支持体のみを剥離できる。
B:別の仮支持体に紫外線吸収層が残るが、残った面積が剥離した領域の10%未満である。
C:別の仮支持体に紫外線吸収層が残り、残った面積が剥離した領域の10%以上である。
【0124】
<パターン直線性(LWR)>
厚さ188μmのPETフィルム上に厚さ500nmでスパッタ法にて銅層を作製した銅層付きPET基板を使用した
作製した転写フィルムを50cm角にカットし、別の仮支持体を剥がして、上記紫外線吸収層がPET基板表面の銅層に接するように、ロール温度90℃、線圧0.8MPa、線速度3.0m/min.のラミネート条件で銅層付きPET基板にラミネートした。
仮支持体を剥離せずに線幅10μmのラインアンドスペースパターンマスク(Duty比 1:1)を介して超高圧水銀灯で感光性樹脂層を露光後、1時間放置した後に仮支持体を剥離して現像した。
現像は28℃の1.0%炭酸ナトリウム水溶液を用い、浸漬現像15秒後、AirKnife(エアナイフ)処理をした後、更に、浸漬現像15秒処理をし、AirKnife処理で現像液を切った後、純水に30秒間浸漬処理をして、更にAirKnife処理を行った。
上記方法にてラインアンドスペースパターンを形成し、10μmのライン幅とスペース幅との比が1:1になる露光量を求めた。
次に、銅層を作製した銅層付きPET基板に作製した転写フィルムを上記と同様にラミネートして、上記で求めた露光量で同様に露光し、上記と同様に現像することで、10μm幅のラインアンドスペース形状のレジストパターンを得た。
10μm幅のラインアンドスペース形状のレジストパターンが形成された基板を銅エッチング液(Cu-02:関東化学(株)製)により23℃で30秒エッチングし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いてレジスト剥離して銅がパターンニングされた基板を得た。
ラインアンドスペース形状にパターニングされた銅配線からアトランダムに選んだ箇所の線幅を20箇所測定した。得られた線幅データから標準偏差σを求め、標準偏差σを3倍した値をLWR(Line Width Roughness)と定義し、パターン直線性の指標とした。
LWRは定義上、小さいほど線幅変動が小さいこととなり好ましい。10μm線幅のパターンに対しては、LWRの値によって以下のように評価される。
D:1.0≦LWR:線幅変動が大きく回路不良に繋がり、回路配線基板として使用不可能。
C:0.5≦LWR<1.0:回路配線基板として使用可能だが、不良発生の可能性が有り好ましくないが、使用可能なレベルである。
B:0.3≦LWR<0.5:回路配線基板として好ましい。
A:LWR<0.3:回路配線基板として非常に好ましい。
上記評価のうち、評価A及び評価Bであることが良好な性能を持つ回路配線基板を得るために実用上好ましく、評価Aであることが特に好ましい。
【0125】
<パターン形状(アンダーカット又は裾引きの評価)>
上記パターン直線性評価において形成した10μmのレジストパターンの断面形状を観察した。
レジストパターンの裾(基板近傍の部分)の様子を観察し、裾引き形状やアンダーカット形状ないものを「A」とした。0.5μm未満の裾引きやアンダーカットが見られるものを「B」、0.5μm以上の裾引きやアンダーカット形状が生じているものを「C」と評価した。
【0126】
<転写性>
作製した転写フィルムを50cm角にカットし、別の仮支持体を剥がして、上記紫外線吸収層が基板表面に接するように、ロール温度90℃、線圧0.8MPa、線速度3.0m/min.のラミネート条件で銅層付きPET基板にラミネートした。
紫外線吸収層が銅層に泡や浮きがなく密着している面積を目視評価し、紫外線吸収層が密着した面積/カットした転写材料の面積(%)により密着した面積割合を求め、以下の基準で評価した。面積(%)が大きいほど転写性に優れるといえる。
A:面積(%)が90%以上
B:面積(%)が80%以上90%未満
C:面積(%)が80%未満
【0127】
<パターン形状ばらつき(パターン形状のばらつき抑制性)>
パターン直線性評価と同様の方法に従って、10μm幅のラインアンドスペース形状のレジストパターンを形成し、パターン長手方向10cmの領域中の2.5cm毎の5箇所において、そのアンダーカット又は裾引きを観察した。パターン形状評価における評価基準に従って、5箇所の形状の評価をし、そのバラつきを下記の基準で評価した。
A:5箇所の評価結果が全て同一。
B:5箇所の評価結果のうち4箇所が同一で、1箇所の結果が異なる。
C:5箇所の評価結果のうち同一のものが3ヶ所以下。
【0128】
評価結果をまとめて表3に示す。
【0129】
【0130】
表3に記載の結果から、実施例に示す本開示に係る転写フィルムの製造方法により得られた転写フィルムは、比較例のものに比べて、パターン形状に優れることが明らかである。また、本開示に係る転写フィルムの製造方法により得られた転写フィルムは、パターン直線性、及び、パターン形状のばらつき抑制性にも優れる。
【0131】
(実施例101)
100μm厚PET基材上に、第2層の導電性層として酸化インジウムスズ(ITO)をスパッタリングで150nm厚にて成膜し、その上に第1層の導電性層として銅を真空蒸着法で200nm厚にて成膜して、回路形成基板とした。
銅層上に実施例1で得た転写フィルムの別の仮支持体を剥離し、ラミネートした(線圧0.8MPa、線速度3.0m/min、ロール温度90℃)。仮支持体を剥離せずに一方向に導電性層パッドが連結された構成を持つ
図2に示すパターン(以下、「パターンA」とも称する。)を設けたフォトマスクを用いてコンタクトパターン露光した。
なお、
図2に示すパターンAは、実線部SL及びグレー部Gが露光部であり、それ以外は遮光部であり、点線部DLはアライメント合わせの枠を仮想的に示したものである。
その後仮支持体を剥離し、現像、水洗を行ってパターンAを得た。次いで銅エッチング液(関東化学(株)製Cu-02)を用いて銅層をエッチングした後、ITOエッチング液(関東化学(株)製ITO-02)を用いてITO層をエッチングすることで、銅(実線部SL)とITO(グレー部G)とが共にパターンAで描画された基板を得た。
【0132】
次いで、アライメントを合わせた状態で
図3に示すパターン(以下、「パターンB」とも称する。)の開口部を設けたフォトマスクを用いてパターン露光し、現像、水洗を行った。
なお、
図3に示すパターンBは、グレー部Gが露光部であり、それ以外は遮光部であり、点線部DLはアライメント合わせの枠を仮想的に示したものである。
その後、Cu-02を用いて銅層をエッチングし、残った感光性樹脂層を剥離液(10質量%水酸化ナトリウム水溶液)を用いて剥離し、回路配線基板を得た。
これにより、回路配線基板を得た。顕微鏡で観察したところ、剥がれや欠けなどは無く、きれいなパターンであった。
【符号の説明】
【0133】
10:仮支持体A、12:感光性樹脂層、14:紫外線吸収層、16:仮支持体D(別の仮支持体)、SL:実線部、G:グレー部、DL:点線部