(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】処理液および処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
H01L21/308 E
(21)【出願番号】P 2020531226
(86)(22)【出願日】2019-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2019026449
(87)【国際公開番号】W WO2020017329
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2018137001
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/129509(WO,A1)
【文献】特開2008-193100(JP,A)
【文献】特開2014-185332(JP,A)
【文献】特開2014-220300(JP,A)
【文献】特表2013-537724(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122537(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304-21/3063
H01L 21/308
H01L 21/465-21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化水素と防食剤とを含む処理液であって、
前記処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数が、100個/mL未満であり、
前記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数が、500個/mL未満であり、かつ、
前記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数に対する、前記処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数の比の値が、0.010超、1.000未満であ
り、
前記処理液が、さらに、フッ化アンモニウムを含む、処理液。
【請求項2】
フッ素原子の含有量が、前記処理液の全質量に対して、0.01質量%~15質量%の範囲内である、請求項
1に記載の処理液。
【請求項3】
標準電極電位が0V超である金属イオンおよび酸化剤からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含み、
前記金属イオンおよび前記酸化剤の合計含有量が、前記処理液の全質量に対して、10質量ppb以下である、請求項1
または2に記載の処理液。
【請求項4】
前記金属イオンおよび前記酸化剤の合計含有量に対する、フッ素原子の含有量の比の値が20000~10000000の範囲内である、請求項
3に記載の処理液。
【請求項5】
フッ化水素と、防食剤と、標準電極電位が0V超である金属イオンおよび酸化剤からなる群から選択される少なくとも1種と、を含む処理液であって、
前記処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数が、100個/mL未満であり、
前記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数が、500個/mL未満であり、
前記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数に対する、前記処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数の比の値が、0.010超、1.000未満であり、
前記金属イオンおよび前記酸化剤の合計含有量が、前記処理液の全質量に対して、10質量ppb以下であり、かつ、
前記金属イオンおよび前記酸化剤の合計含有量に対する、フッ素原子の含有量の比の値が20000~10000000の範囲内である、処理液。
【請求項6】
前記金属イオンおよび前記酸化剤の
合計含有量に対する、前記防食剤の含有量の比の値が40000~5000000の範囲内である、請求項4または5に記載の処理液。
【請求項7】
フッ化水素と、防食剤と、標準電極電位が0V超である金属イオンおよび酸化剤からなる群から選択される少なくとも1種と、を含む処理液であって、
前記処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数が、100個/mL未満であり、
前記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数が、500個/mL未満であり、
前記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数に対する、前記処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数の比の値が、0.010超、1.000未満であり、
前記金属イオンおよび前記酸化剤の合計含有量が、前記処理液の全質量に対して、10質量ppb以下であり、かつ、
前記金属イオンおよび前記酸化剤の合計含有量に対する、前記防食剤の含有量の比の値が40000~5000000の範囲内である、処理液。
【請求項8】
pHが1~5の範囲内である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項9】
前記防食剤がメルカプト基を有する化合物、アゾール誘導体、チアゾール誘導体、ヒドロキシカルボン酸、還元剤および糖類からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項10】
前記防食剤が2-メルカプトピリジン、メルカプトこはく酸、2-アミノエタンチオール、ビスムチオール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、5-メルカプト-1H-テトラゾール、2-アミノベンゾイミダゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、5-アミノテトラゾール、クエン酸、グルコン酸、DL-酒石酸、ガラクタル酸、シュウ酸、ジエチルヒドロキシルアミン、アスコルビン酸、フルクトース、グルコース、およびリボースからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項11】
前記防食剤の含有量が、前記処理液の全質量に対して、0.01質量%~1.0質量%の範囲内である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項12】
前記防食剤の含有量に対する、フッ素原子の含有量の比の値が0.01~50の範囲内である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項13】
電気伝導度が200mS/cm~1200mS/cmの範囲内である、請求項1~
12のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項14】
非フッ素系ノニオン界面活性剤をさらに含む、請求項1~
13のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項15】
前記非フッ素系ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ラウリルグルコシドおよびオクチルフェノールエトキシラートからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項
14に記載の処理液。
【請求項16】
前記非フッ素系ノニオン界面活性剤の含有量が、前記処理液の全質量に対して、1質量ppm~0.5質量%の範囲内である、請求項
14または15に記載の処理液。
【請求項17】
請求項1~
16のいずれか1項に記載の処理液を用いる、処理方法。
【請求項18】
In
xPを含むInP層と、前記InP層上に形成されたSiO
2を含むSiO
2層とを有する積層体のSiO
2層を選択的に除去する処理方法であって、
請求項1~
16のいずれか1項に記載の処理液を前記積層体に接触させる接触工程を含む、処理方法。
ただし、xは、0超、1以下の実数である。
【請求項19】
In
x
Pを含むInP層と、前記InP層上に形成されたSiO
2
を含むSiO
2
層とを有する積層体のSiO
2
層を選択的に除去する処理方法であって、
処理液を前記積層体に接触させる接触工程を含み、
前記処理液が、フッ化水素と防食剤とを含み、
前記処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数が、100個/mL未満であり、
前記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数が、500個/mL未満であり、かつ、
前記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数に対する、前記処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数の比の値が、0.010超、1.000未満である、処理方法。
ただし、xは、0超、1以下の実数である。
【請求項20】
In
xPを含むInP層と、前記InP層上に形成された被覆層とを有し、被覆層の一部の領域がSiO
2層で形成され、他の領域がIn
zGa
(1-z)Asを含むInGaAs層で形成されている積層体のSiO
2層を選択的に除去する処理方法であって、
請求項1~
16のいずれか1項に記載の処理液を前記積層体に接触させる接触工程を含む、処理方法。
ただし、xおよびzは、それぞれ独立に、0超、1以下の実数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、赤外領域に感度を有するイメージセンサ(赤外線センサ)が商品化されている。この赤外線センサに用いられる受光素子では、例えばInGaAs(インジウムガリウムヒ素)等のIII-V族半導体を含む光電変換層が用いられ、この光電変換層において、赤外線が吸収されることで電荷が発生する(光電変換が行われる)。このような受光素子または撮像素子の素子構造については、様々な提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、化合物半導体を含むと共に、赤外領域の波長を吸収して電荷を発生する複数の光電変換層と、複数の光電変換層のそれぞれを囲んで形成された絶縁膜とを備えた受光素子が記載されている(請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された受光素子を製造する際には、InP層とInP層上に形成されたSiO2層とを有する積層体のSiO2層に対するエッチング処理が必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、InP層とInP層上に形成されたSiO2層とを有する積層体に適用した際に、SiO2を選択的に除去でき、かつ、SiO2の欠陥およびInP層の表面荒れを抑制できる処理液および処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、所定の処理液によれば、InP層とInP層上に形成されたSiO2層とを有する積層体に適用した際に、SiO2を選択的に除去でき、かつ、SiO2の欠陥およびInP層の表面荒れを抑制できることを知得し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の[1]~[18]である。
[1] フッ化水素と防食剤とを含む処理液であって、
上記処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数が、100個/mL未満であり、
上記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数が、500個/mL未満であり、かつ、
上記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数に対する、上記処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数の比の値が、0.010超、1.000未満である、処理液。
[2] 上記処理液が、さらに、フッ化アンモニウムを含む、上記[1]に記載の処理液。
[3] フッ素原子の含有量が、上記処理液の全質量に対して、0.01質量%~15質量%の範囲内である、上記[1]または[2]に記載の処理液。
[4] 標準電極電位が0V超である金属イオンおよび酸化剤からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含み、
上記金属イオンおよび上記酸化剤の合計含有量が、上記処理液の全質量に対して、10質量ppb以下である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の処理液。
[5] 上記金属イオンおよび上記酸化剤の合計含有量に対する、フッ素原子の含有量の比の値が20000~10000000の範囲内である、上記[4]に記載の処理液。
[6] 上記金属イオンおよび上記酸化剤の含有量に対する、上記防食剤の含有量の比の値が40000~5000000の範囲内である、上記[4]または[5]に記載の処理液。
[7] pHが1~5の範囲内である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の処理液。
[8] 上記防食剤がメルカプト基を有する化合物、アゾール誘導体、チアゾール誘導体、ヒドロキシカルボン酸、還元剤および糖類からなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の処理液。
[9] 上記防食剤が2-メルカプトピリジン、メルカプトこはく酸、2-アミノエタンチオール、ビスムチオール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、5-メルカプト-1H-テトラゾール、2-アミノベンゾイミダゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、5-アミノテトラゾール、クエン酸、グルコン酸、DL-酒石酸、ガラクタル酸、シュウ酸、ジエチルヒドロキシルアミン、アスコルビン酸、フルクトース、グルコース、およびリボースからなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の処理液。
[10] 上記防食剤の含有量が、上記処理液の全質量に対して、0.01質量%~1.0質量%の範囲内である、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の処理液。
[11] 上記防食剤の含有量に対する、フッ素原子の含有量の比の値が0.01~50の範囲内である、上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の処理液。
[12] 電気伝導度が200mS/cm~1200mS/cmの範囲内である、上記[1]~[11]のいずれか1つに記載の処理液。
[13] 非フッ素系ノニオン界面活性剤をさらに含む、上記[1]~[12]のいずれか1つに記載の処理液。
[14] 上記非フッ素系ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ラウリルグルコシドおよびオクチルフェノールエトキシラートからなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[13]に記載の処理液。
[15] 上記非フッ素系ノニオン界面活性剤の含有量が、上記処理液の全質量に対して、1質量ppm~0.5質量%の範囲内である、上記[13]または[14]に記載の処理液。
[16] 上記[1]~[14]のいずれか1つに記載の処理液を用いる、処理方法。
[17] InxPを含むInP層と、上記InP層上に形成されたSiO2を含むSiO2層とを有する積層体のSiO2層を選択的に除去する処理方法であって、
上記[1]~[15]のいずれか1つに記載の処理液を上記積層体に接触させる接触工程を含む、処理方法。
ただし、xは、0超、1以下の実数である。
[18] InxPを含むInP層と、上記InP層上に形成された被覆層とを有し、被覆層の一部の領域がSiO2層で形成され、他の領域がInzGa(1-z)Asを含むInGaAs層で形成されている積層体のSiO2層を選択的に除去する処理方法であって、
上記[1]~[15]のいずれか1つに記載の処理液を上記積層体に接触させる接触工程を含む、処理方法。
ただし、xおよびzは、それぞれ独立に、0超、1以下の実数である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、InP層とInP層上に形成されたSiO2層とを有する積層体に適用した際に、SiO2を選択的に除去でき、かつ、SiO2の欠陥およびInP層の表面荒れを抑制できる処理液および処理方法を提供できる。
【0010】
また、本発明によれば、InxPを含むInP層と、InP層上に形成された被覆層とを有し、被覆層の一部の領域がSiO2層で形成され、他の領域がInzGa(1-z)Asを含むInGaAs層で形成されている積層体に適用した際に、SiO2を選択的に除去でき、かつ、SiO2の欠陥およびInP層の表面荒れを抑制できる処理液および処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、受光素子の構成を表す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した受光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、「~」を用いて表される範囲は「~」の両側をその範囲に含むものとする。例えば、「A~B」は「A」および「B」をその範囲に含むものとする。
また、1Åは0.1nmを表す。
【0013】
[処理液]
本発明の処理液について詳細に説明する。
本発明の処理液は、フッ化水素と防食剤とを含む。
【0014】
〈粗大粒子〉
また、本発明の処理液は、処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数をA[個/mL]、処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数をB[個/mL]として、下記式(1)~(3)で表される関係を同時に満たす。
つまり、処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数が、100個/mL未満であり、処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数が、500個/mL未満であり、かつ、処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数に対する、処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数の比の値が、0.010超、1.000未満である。
A<100 (1)
B<500 (2)
0.010<A/B<1.000 (3)
【0015】
本発明においては、AおよびBが上記関係を満たすことが必須である。これらの関係を満たさない場合には、処理液の性能に悪影響を与えることとなる。
【0016】
A≧100[個/mL]であると、粒子径0.10μm以上の粗大粒子が被処理物(たてば、半導体基板)上に残存しやすく、残渣が増加する。また、SiO2の欠陥数が増大する。
【0017】
B≧500[個/mL]であると、粒子径0.05μm以上の粗大粒子が被処理物(たてば、半導体基板)上に吸着し、エッチング処理後の基板表面の表面粗さ(InP層の表面粗さ)が増大する。
【0018】
粗大粒子の数AおよびBは、単純に少なければよいというものではなく、A/B(処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数に対する、処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数の比)が0.010<A/B<1.000を満たすことが必要である。この関係を満たさなければ、SiO2の欠陥およびInP層の表面荒れが増大することとなる。
【0019】
ここで、処理液中の粗大粒子の個数は、液中パーティクルカウンタ(KS-18F,リオン社製)を用いて測定した、粒子径0.10μm以上または粒子径0.05μm以上の粒子の個数(個/mL)である。
【0020】
処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数Bに対する、処理液1mLあたりの粒子径0.1μm以上の粗大粒子の個数Aの比の値A/Bは、0.01~0.80の場合が多く、好ましくは0.05~0.80であり、より好ましくは0.08~0.50であり、さらに好ましくは0.10~0.30である。
処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数Aは、好ましくは1個/mL以上100個/mL未満であり、より好ましくは1個/mL~80個/mLであり、さらに好ましくは1個/mL~50個/mLである。
処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数Bは、好ましくは1個/mL以上500個/mL未満であり、より好ましくは1個/mL~300個/mLであり、さらに好ましくは3個/mL~200個/mLである。
【0021】
〈フッ素源〉
《フッ化水素》
フッ化水素は、本発明の処理液中において、分子状のフッ化水素で存在していてもよいし、電離して水素イオンとフッ化物イオンに解離していてもよい。
本発明の処理液を製造する際に用いるフッ化水素は特に限定されないが、取扱いの容易さから、水溶液であるフッ化水素酸を使用することが好ましい。
なお、本発明において、フッ素は、フッ素原子であればその形態はどのようなものでもよく、フッ化物イオン、分子中のフッ素、イオン中のフッ素も含む。
【0022】
《フッ化アンモニウム》
本発明の処理液は、さらに、フッ化アンモニウムを含んでもよい。
【0023】
《その他のフッ素源》
本発明の処理液は、フッ素源として、上述したフッ化水素およびフッ化アンモニウム以外のフッ素源を含んでもよい。
このようなフッ素源として、例えば、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)、テトラフルオロホウ酸(HBF4)、フッ化ナトリウム(NaF)、およびフッ化カリウム(KF)が挙げられる。
【0024】
《フッ素原子の含有量》
本発明の処理液中のフッ素原子の含有量は特に限定されないが、処理液の全質量に対して、0.001質量%~20質量%の範囲内である場合が多い。
なかでも、好ましくは0.01質量%~15質量%の範囲内であり、より好ましくは0.03質量%~10質量%の範囲内であり、さらに好ましくは0.05質量%~3質量%の範囲内である。
処理液中のフッ素原子の含有量がこの範囲内であると、SiO2の欠陥がより少なくなる。
【0025】
《フッ素原子の含有量の測定方法・測定条件》
本発明の処理液中のフッ素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー法によって、フッ化物イオンを測定して求める。
イオンクロマトグラフィー法によるフッ化物イオンの含有量の測定範囲は、通常、数質量ppm~数十質量ppmであるため、フッ化物イオンの含有量が数質量%の試料溶液の測定を行う場合は、適当な希釈倍率(通常、10~10000倍)で試料溶液を希釈して測定を行い、測定値に希釈倍率をかけて得られた値を試料溶液中のフッ化物イオンの含有量とする。
試料溶液中のフッ化物イオンの含有量がまったく未知である場合は、希釈倍率を1000倍として測定を行い、希釈した試料溶液中のフッ化物イオンの含有量が測定レンジ(数質量ppm~数十質量ppm)に入っているときは、その測定値に希釈倍率をかけて希釈前の試料溶液中のフッ化物イオンの含有量とし、測定レンジに入っていないときは、希釈倍率を変更して、測定値が測定レンジに入るまで測定を繰り返す。
【0026】
イオンクロマトグラフィー法によるフッ化物イオンの測定条件を以下に示す。
使用カラム: イオン交換樹脂(内径4.0mm、長さ25cm)
移動相: 炭酸水素ナトリウム溶液(1.7mmol/L)-炭酸ナトリウム溶液(1.8mmol/L)
流量: 1.5mL/min
試料注入量: 25μL
カラム温度: 40℃
サプレッサ: 電気透析形
検出器: 電気伝導度検出器(30℃)
【0027】
〈防食剤〉
上記防食剤は、好ましくはInP(インジウムリン)層およびInGaAs(インジウムガリウムヒ素)層に対する防食剤である。
SiO2層のフッ素によるエッチングは、フッ化物イオンの高い求核性によるケイ素原子との強い結合形成と、ケイ酸骨格へのプロトン化の相互作用により、SiO2と反応して、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6・nH2O)を生じ、これを腐食させる。防食剤は、InP層およびInGaAs層に吸着し、フッ化物イオンによる攻撃から、これらを保護することにより、これらの溶出が抑制され、InP層およびInGaAs層がエッチング処理液から保護される。
【0028】
《防食剤の種類》
上記防食剤は、好ましくは、メルカプト基を有する化合物、アゾール誘導体、チアゾール誘導体、ヒドロキシカルボン酸、還元剤および糖類からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0029】
上記メルカプト基を有する化合物としては、例えば、2-メルカプトピリジン、メルカプトこはく酸、2-アミノエタンチオール、ビスムチオール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾールおよび5-メルカプト-1H-テトラゾールが挙げられる。
【0030】
上記アゾール誘導体としては、例えば、2-アミノベンゾイミダゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、テトラゾールおよび5-アミノテトラゾールが挙げられる。
【0031】
上記チアゾール誘導体としては、例えば、2-アミノチアゾールが挙げられる。
【0032】
上記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、グルコン酸、DL-酒石酸およびガラクタル酸が挙げられる。
【0033】
上記還元剤としては、例えば、シュウ酸、ジエチルヒドロキシルアミンおよびアスコルビン酸が挙げられる。
【0034】
上記糖類としては、例えば、フルクトース、グルコースおよびリボースが挙げられる。
【0035】
《防食剤の含有量》
本発明の処理液において、上記防食剤の含有量は特に限定されないが、処理液の全質量に対して、0.005質量%~2.0質量%の場合が多い。
なかでも、好ましくは0.01質量%~1.0質量%の範囲内であり、より好ましくは0.01質量%~0.8質量%であり、さらに好ましくは0.01質量%~0.5質量%であり、いっそう好ましくは0.05質量%~0.5質量%である。
本発明の処理液において、防食剤の含有量がこの範囲内であると、InP層の表面荒れとSiO2の欠陥とをより高い水準で抑制することができる。
【0036】
(防食剤の含有量の測定方法・測定条件)
本発明の処理液中の防食剤の含有量は、ガスクロマトグラフィー-質量分析GC/MS)法によって測定することができる。
【0037】
GC/MS法による防食剤の含有量の測定条件を以下に示す。
ガスクロマトグラフ質量分析装置:GCMS-2020(島津製作所社製)
キャピラリーカラム:InertCap 5MS/NP 0.25mmI.D.×30m df=0.25μm
試料導入法:スプリット 75kPa 圧力一定
気化室温度:250℃
カラムオーブン温度:80℃(2min)-500℃(13min)昇温速度15℃/min
キャリアガス:ヘリウム
セプタムパージ流量:5mL/min
スプリット比:25:1
インターフェイス温度:250℃
イオン源温度:200℃
測定モード:Scan m/z=85~500
試料導入量:1μL
得られた測定結果から、防食剤を分類し、標品と比較して含有量を求める。
【0038】
〈フッ素と防食剤の含有量比〉
本発明の処理液において、上記防食剤の含有量(Y[質量%]とする)に対する、上記フッ素原子の含有量(X[質量%]とする)の比の値(X/Y)は特に限定されないが、好ましくは0.01~50であり、より好ましくは0.01~30であり、さらに好ましくは0.01~20であり、いっそう好ましくは0.01~10である。
本発明の処理液において、X/Yがこの範囲内であると、SiO2 ER(SiO2層のエッチングレート)/InP ER(InP層のエッチングレート)の値がより大きくなり、SiO2選択性がより高くなる。
【0039】
〈金属イオン・酸化剤〉
本発明の処理液は、標準電極電位が0V超である金属イオンおよび酸化剤からなる群から選択される少なくとも1種(以下「酸化剤等」という場合がある。)をさらに含んでもよい。
本発明の処理液が酸化剤等をさらに含む場合の酸化剤等の合計含有量は、処理液の全質量に対して、好ましくは10質量ppb以下であり、より好ましくは検出されないことである。酸化剤等が検出されない場合、処理液は酸化剤等を実質的に含まないということができ、酸化剤等の含有量を0質量pptとみなすことができる。
本発明の処理液において、酸化剤および標準電極電位が0V超である金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種の含有量がこの範囲内であると、InP層およびInGaAs層の表面荒れをより抑えることができる。
【0040】
《標準電極電位が0V超である金属イオン》
標準電極電位は、ある電気化学反応(電極反応)について、標準状態(反応に関与する全ての化学種の活量が1かつ平衡状態となっている時)の電極電位であり、標準水素電極の電位を基準(0V)として表したものである。
標準電極電位が0V超である金属イオンの例は、ビスマスイオン(Bi3+,0.3172V)、銅イオン(Cu2+,0.340V)、水銀イオン(Hg2
2+,0.796V)、銀イオン(Ag+,0.7991V),パラジウムイオン(Pd2+,0.915V)、イリジウムイオン(Ir3+,1.156V)、白金イオン(Pt2+,1.188V)および金イオン(Au3+,1.52V)であるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
(金属イオンの含有量の測定方法・測定条件)
本発明の処理液中の標準電極電位が0V超である金属イオンの含有量は、ICP/MS(誘導結合プラズマ/質量分析)法によって測定することができる。
【0042】
ICP/MS法による金属イオンの含有量の測定条件を以下に示す。
ICP-MS分析装置:Agillent8800(Agillent社製)
RF出力(W):600
キャリアガス流量(L/min):0.7
メークアップガス流量(L/min):1
サンプリング位置(mm):18
【0043】
《酸化剤》
酸化剤は、本発明においては、InP層またはInGaAs層を腐食させ、処理液中に溶出させ得る化合物を意味する。
酸化剤の例は、硝酸、過酸化水素および過ヨウ素酸であるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明の処理液が酸化剤を含む場合の酸化剤の含有量は、特に限定されないが、処理液の全質量に対して、好ましくは0.5質量ppb以下であり、より好ましくは検出されないこと(好ましくは、0質量%)である。
【0045】
(酸化剤の含有量の測定方法・測定条件)
なお、本発明の処理液中の酸化剤の含有量は、イオンクロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー、分光光度計、マイクロプレートリーダーまたは滴定など、酸化剤の種類に応じた測定方法によって、測定することができる。
【0046】
((硝酸の含有量の測定方法・測定条件))
本発明の処理液中の硝酸の含有量は、イオンクロマトグラフィー法によって、アニオン成分である硝酸イオンを測定して求める。
イオンクロマトグラフィー法による硝酸イオンの含有量の測定範囲は、通常、数質量ppm~数十質量ppmであるため、硝酸イオンの含有量が数質量%の試料溶液の測定を行う場合には、適当な希釈倍率(通常、10~10000倍)で試料溶液を希釈して測定を行い、測定値に希釈倍率をかけて得られた値を試料溶液中の硝酸イオンの含有量とする。
試料溶液中の硝酸イオンの含有量がまったく未知である場合は、希釈倍率を1000倍として測定を行い、希釈した試料溶液中の硝酸イオンの含有量が測定レンジ(数質量ppm~数十質量ppm)に入っているときは、その測定値に希釈倍率をかけて希釈前の試料溶液中の硝酸イオンの含有量とし、測定レンジに入っていないときは、希釈倍率を変更して、測定値が測定レンジに入るまで測定を繰り返す。
【0047】
イオンクロマトグラフィー法による硝酸イオンの測定条件を以下に示す。
使用カラム: イオン交換樹脂(内径4.0mm、長さ25cm)
移動相: 炭酸水素ナトリウム溶液(1.7mmol/L)-炭酸ナトリウム溶液(1.8mmol/L)
流量: 1.5mL/min
試料注入量: 25μL
カラム温度: 40℃
サプレッサ: 電気透析形
検出器: 電気伝導度検出器(30℃)
【0048】
((過酸化水素の含有量の測定方法・測定条件))
本発明の処理液中の過酸化水素の含有量は、平沼過酸化水素カウンタ(HP-300,日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定する。
通常、一般的な測定濃度範囲は数質量ppm~数十質量ppmであるため、数質量%の試料の測定を行う場合には、適当な範囲に希釈(10~10000倍)して測定する。
測定して得られた値に希釈倍率を掛け、その値を実液の濃度とする。
濃度が未知の場合には、1000倍に濃縮して測定し、そのピークが数質量ppm~数十質量ppmに入っている場合は、その値を採用する。入っていない場合には、希釈倍率を変更し、最適化を行って濃度を求める。
【0049】
《フッ素と酸化剤等の含有量比》
本発明の処理液において、上記標準電極電位が0V超である金属イオンおよび酸化剤の合計含有量(C+D[質量%])に対する、上記フッ素原子の含有量(X[質量%])の比の値〔X/(C+D)〕は、特に限定されないが、300~30000000の範囲内である場合が多い。
なかでも、好ましくは20000~10000000の範囲内であり、より好ましくは30000~8000000の範囲内であり、さらに好ましくは50000~5000000の範囲内である。ただし、フッ素原子の含有量をX[質量%]、酸化剤の含有量をC[質量%]、標準電極電位が0V超である金属イオンの含有量をD[質量%]とする。
本発明の処理液において、X/(C+D)がこの範囲内であると、InP層の表面荒れをより抑えることができ、かつ、SiO2の欠陥をより抑えることができる。
【0050】
《防食剤と酸化剤等の含有量比》
また、本発明の処理液において、上記標準電極電位が0V超である金属イオンおよび酸化剤の合計含有量(C+D[質量%])に対する、上記防食剤の含有量(Y[質量%])の比の値〔Y/(C+D)〕は、特に限定されないが、5000~6500000の範囲内である場合が多い。
なかでも、好ましくは40000~5000000の範囲内であり、より好ましくは40000~3000000であり、さらに好ましくは50000~1000000である。ただし、防食剤の含有量をY[質量%]、酸化剤の含有量をC[質量%]、標準電極電位が0V超である金属イオンの含有量をD[質量%]とする。
本発明の処理液において、Y/(C+D)がこの範囲内であると、InP層の表面荒れおよびInGaAs層の表面荒れがより抑制される。
【0051】
〈非フッ素系ノニオン界面活性剤〉
本発明の処理液は、さらに、非フッ素系ノニオン界面活性剤を含んでもよい。
【0052】
《非フッ素系ノニオン界面活性剤の種類》
上記非フッ素系ノニオン界面活性剤の例は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ラウリルグルコシドおよびオクチルフェノールエトキシラートである。本発明の処理液は、これらの非フッ素系ノニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0053】
《非フッ素系ノニオン界面活性剤の含有量》
本発明の処理液における非フッ素系ノニオン界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、処理液の全質量に対して、1質量ppm以上である場合が多い。
なかでも、好ましくは、処理液の全質量に対して、好ましくは1質量ppm~0.5質量%の範囲内であり、より好ましくは10質量ppm~0.3質量%であり、さらに好ましくは50質量ppm~0.1質量%(1000質量ppm)である。
本発明の処理液において、非フッ素系ノニオン界面活性剤の含有量がこの範囲内であると、SiO2層に対するエッチングレートを損なうことなく、InP層およびInGaAs層に対するエッチングレートをより小さくすることができる。
【0054】
(非フッ素系ノニオン界面活性剤の含有量の測定方法・測定条件)
本発明の処理液中の非フッ素系ノニオン界面活性剤の含有量は、IC法(イオン交換クロマトグラフィー法)、GC/MS法(ガスクロマトグラフィー-質量分析法)、またはLC/MS(液体クロマトグラフィー-質量分析法)によって測定することができる。
【0055】
液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)法により本発明の処理液中の非フッ素系ノニオン界面活性剤の含有量を測定する場合の測定条件を以下に示す。
液体クロマトグラフ質量分析装置:UPLC-H-Class, Xevo G2-XS QTof(サーモフィーシャーズ社製)
・LC条件
装置: UPLC H-Class
カラム: ACQUITY UPLC C8 1.7μm,2.1×100mm
カラム温度: 40°C
移動相: A:0.1%ギ酸、B:0.1%ギ酸含有MeOH
流速: 0.5mL/min
注入量: 2μL
・MS条件
装置: Xevo G2-XS Q-Tof
イオン化モード: ESI ポジティブ/ネガティブ
キャピラリー電圧: 1.0kV/2.5kV
脱溶媒ガス: 1000L/hr,500°C
コーンガス: 50L/hr
コーン電圧: 40V(オフセット 80V)
コリジョンエナジー: 2eV
測定範囲: m/z 100-1000
測定モード: MS Sensitivity Mode(分解能/30,000)
・MS/MS条件
コリジョンエネルギー
Low Energy: 6eV
High Energy: 30eV to 50eV(ramp start to end)
得られた測定結果から、有機不純物中のm/Zが300~1000である帰属不明成分有機不純物を分類し、その含有量(相対量)もあわせて求める。
【0056】
〈添加剤〉
本発明の処理液の特性を損なわない範囲で、処理液は添加剤を含んでもよい。このような添加剤の例は、塩化テトラメチルアンモニウム(TMACl)およびポリアクリル酸アンモニウム(PAA)であるが、これらに限定されるものではない。
本発明の処理液がこれらの添加剤を含むと、SiO2 ER/InP ERの値がより大きく、SiO2選択性がより良好なものとなる。
【0057】
〈pH調整剤〉
本発明の処理液の特性を損なわない範囲で、処理液はpH調整剤を含んでもよい。pH調整剤は、フッ化水素およびその水溶液(フッ化水素酸)、フッ化アンモニウムおよびその水溶液、防食剤、界面活性剤、酸化剤並びに上記添加剤ではない。このようなpH調整剤の例は、メタンスルホン酸(MSA)およびジアザビシクロウンデセン(DBU)であるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
〈溶媒〉
本発明の処理液は溶媒を含んでもよい。
溶媒はフッ素源化合物および防食剤を溶解できるものであれば特に限定されない。溶媒としては、水が好ましい。
本発明の処理液の溶媒として使用することができる水は、特に限定されないが、高純度であることが好ましい。なかでも、蒸留水、ミリQ水またはRO(逆浸透)水が好ましい。
【0059】
〈電気伝導度〉
本発明の処理液の電気伝導度は、特に限定されないが、好ましくは200mS/cm~1200mS/cmであり、より好ましくは500mS/cm~1000mS/cmである。
本発明の処理液において、電気伝導度がこの範囲内であると、SiO2の欠陥をより少なくできる。
【0060】
本発明の処理液の電気伝導度は、電気伝導率計(導電率計(電気伝導率計):ポータブル型D-70/ES-70シリーズ,堀場製作所社製)を用いて測定した電気伝導度(mS/cm)である。
【0061】
〈pH〉
本発明の処理液のpHは、特に限定されないが、好ましくは1~5の範囲内であり、より好ましくは2~5の範囲内であり、さらに好ましくは2~4.5の範囲内である。
本発明の処理液において、pHがこの範囲内であると、SiO2層に対するエッチングレートをより大きくでき、かつ、InP層およびInGaAs層の表面荒れをより抑えることができる。
【0062】
本発明の処理液のpHは、23℃でpHメーター(pH計:ポータブル型D-70シリーズ,堀場製作所社製)を用いて測定したpHである。
【0063】
[処理液の製造方法]
本発明の処理液は、例えば、上記成分を混合し、精製することにより製造できる。
精製は、フィルターを用いて処理液をろ過することが望ましい。
【0064】
〈ろ過処理〉
本発明の処理液の製造方法は、フィルターを用いて被精製物である処理液をろ過することが望ましい。フィルターを用いて被精製物をろ過する方法は特に制限されないが、ハウジングと、ハウジングに収納されたフィルターカートリッジと、を有するフィルターユニットに、被精製物を加圧または無加圧で通過させる(通液する)のが好ましい。
【0065】
《フィルターの細孔径》
フィルターの細孔径は特に制限されず、被精製物のろ過用として通常使用される細孔径のフィルターが使用できる。中でも、フィルターの細孔径は、処理液に含まれる粗大粒子の個数を低減しやすい点で、200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましく、20nm以下が特に好ましく、10nm以下が最も好ましい。下限値としては特に制限されないが、一般に1nm以上が、生産性の観点から好ましい。
なお、本明細書において、フィルターの細孔径、および、細孔径分布とは、イソプロパノール(IPA)、または、HFE-7200(「ノベック7200」、3M社製、ハイドロフロオロエーテル、C4F9OC2H5)のバブルポイントによって決定される細孔径および細孔径分布を意味する。
【0066】
なお、フィルターは単独で用いてもよいし、他の細孔径を有するフィルターとともに使用してもよい。中でも、生産性により優れる観点から、細孔径の異なる2種以上のフィルターを使用するのが好ましい。この場合、予め細孔径のより大きなフィルターによってろ過した被精製物を、細孔径のより小さなフィルターに通液させれば、細孔径のより小さなフィルターの目詰まりを防げる。
【0067】
細孔径の異なる2種以上のフィルターを順次使用する形態としては特に制限されないが、被精製物が移送される管路に沿って、フィルターユニットを順に配置する方法が挙げられる。このとき、管路全体として被精製物の単位時間当たりの流量を一定にしようとすると、細孔径のより小さいフィルターユニットには、細孔径のより大きいフィルターユニットと比較してより大きな圧力がかかる場合がある。この場合、フィルターユニットの間に圧力調整弁、および、ダンパ等を配置して、小さい細孔径を有するフィルターユニットにかかる圧力を一定にしたり、また、同一のフィルターが収納されたフィルターユニットを管路に沿って並列に配置したりして、ろ過面積を大きくするのが好ましい。このようにすれば、より安定して、薬液中における粒子の数を制御できる。
【0068】
《フィルターの材料》
フィルターの材料としては特に制限されず、フィルターの材料として公知の材料が使用できる。具体的には、樹脂である場合、ナイロン(例えば、6-ナイロンおよび6,6-ナイロン)等のポリアミド;ポリエチレン、および、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリスチレン;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリ(メタ)アクリレート;ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン-クロロトリフロオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、および、ポリフッ化ビニル等のポリフルオロカーボン;ポリビニルアルコール;ポリエステル;セルロース;セルロースアセテート等が挙げられる。中でも、より優れた耐溶剤性を有し、得られる薬液がより優れた欠陥抑制性能を有する点で、ナイロン(中でも、6,6-ナイロンが好ましい)、ポリオレフィン(中でも、ポリエチレンが好ましい)、ポリ(メタ)アクリレート、および、ポリフルオロカーボン(中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)が好ましい。)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。これらの重合体は単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
また、樹脂以外にも、ケイソウ土、および、ガラス等であってもよい。
他にも、ポリオレフィン(後述するUPE等)にポリアミド(例えば、ナイロン-6およびナイロン-6,6等のナイロン)をグラフト共重合させたポリマー(ナイロングラフトUPE等)をフィルターの材料としてもよい。
【0069】
また、フィルターは表面処理されたフィルターであってもよい。表面処理の方法としては特に制限されず、公知の方法が使用できる。表面処理の方法としては、例えば、化学修飾処理、プラズマ処理、疎水処理、コーティング、ガス処理、および、焼結等が挙げられる。
【0070】
プラズマ処理は、フィルターの表面が親水化されるために好ましい。プラズマ処理して親水化されたろ過材の表面における水接触角としては特に制限されないが、接触角計で測定した25℃における静的接触角が、60°以下が好ましく、50°以下がより好ましく、30°以下が更に好ましい。
【0071】
化学修飾処理としては、基材にイオン交換基を導入する方法が好ましい。
すなわち、フィルターとしては、上記で挙げた各材料を基材として、上記基材にイオン交換基を導入したフィルターが好ましい。典型的には、上記基材の表面にイオン交換基を含有する基材を含む層を含むフィルターが好ましい。表面修飾された基材としては特に制限されず、製造がより容易な点で、上記重合体にイオン交換基を導入したフィルターが好ましい。
【0072】
[処理方法]
本発明の処理方法は、本発明の処理液を用いる処理方法である。
【0073】
本発明の処理方法は、また、InxPを含むInP層と、InP層上に形成されたSiO2を含むSiO2層とを有する積層体のSiO2層を選択的に除去する処理方法であって、本発明の処理液を積層体に接触させる接触工程を含む。ただし、xは、0超、1以下の実数である。
【0074】
本発明の処理方法は、また、InxPを含むInP層と、InP層上に形成された被覆層とを有し、被覆層の一部の領域がSiO2層で形成され、他の領域がInzGa(1-z)Asを含むInGaAs層で形成されている積層体のSiO2層を選択的に除去する処理方法であって、本発明の処理液を積層体に接触させる接触工程を含む。ただし、xおよびzは、それぞれ独立に、0超、1以下の実数である。
【0075】
以下では、
図1~8を参照しながら、より詳細に説明する。
【0076】
〈受光素子〉
図1は、受光素子(受光素子1)の断面構成を表したものである。受光素子1は、例えば化合物半導体(III-V族半導体)を用いた赤外線センサ等に適用されるものであり、例えば2次元配置された複数の受光単位領域(画素Pとする)を含んでいる。なお、
図1では、2つの画素Pに相当する部分の断面構成について示している。
【0077】
《受光素子の構造》
受光素子1は、化合物半導体(III-V族半導体)を含む光電変換層12を備えたものである。この受光素子1では、例えば、基板11の一面(面S1)に、複数の光電変換層12が形成され、各光電変換層12には電極13が電気的に接続されている。基板11の光入射側の面(面S2)には、画素P毎にオンチップレンズ17が形成されている。受光素子1の電極13側(光入射側と反対側)には、保護膜16が形成されている。
【0078】
この受光素子1では、複数の光電変換層12が平面視的に互いに離散して(それぞれが島状に)配置されている。これらの複数の光電変換層12のそれぞれを囲むように、絶縁膜15が形成されている。各光電変換層12の少なくとも一部、例えば側面12bを覆って、パッシベーション膜14が形成されている。絶縁膜15は、パッシベーション膜14によって覆われた複数の光電変換層12同士の間の領域(画素間の領域)を埋め込むように、形成されている。
【0079】
なお、電極13には、各画素Pから信号読み出しを行うための画素回路および各種配線等が形成されたシリコン半導体基板が積層されている。電極13は、例えば、バンプまたはビア等を通じてシリコン半導体基板に形成された各種回路と電気的に接続されている。以下、各部の構成について説明する。
【0080】
基板11は、例えばp型またはn型の化合物半導体、例えばInP(インジウムリン)から構成されている。ここでは、基板11の面S1上に、基板11に接して光電変換層12が形成されているが、基板11と光電変換層12との間に介在する層の材料としては、例えば、InAlAs、Ge、Si、GaAs、および、InP等の半導体材料が挙げられるが、基板11および光電変換層12との間で格子整合するものが選択されることが望ましい。
【0081】
光電変換層12は、例えば、赤外領域の波長(赤外線IR)を吸収して、電荷(電子および正孔)を発生させる、化合物半導体(例えばp型またはn型の化合物半導体)を含むものである。本実施の形態では、この光電変換層12が画素P毎に分離して設けられている。
【0082】
光電変換層12に用いられる化合物半導体は、例えばInGaAs(インジウムガリウムヒ素)である。組成は、例えばInxGa(1-x)As(x:0<x≦1)である。ただし、赤外領域でより感度を得るたmには、x≧0.4であることが望ましい。InPよりなる基板11と格子整合する光電変換層12の組成の一例としては、In0.53Ga0.47Asが挙げられる。光電変換層12に含まれる不純物元素としては、例えば亜鉛(Zn)またはケイ素(Si)等が挙げられる。
【0083】
電極13は、光電変換層12において発生した電荷(正孔または電子)を読み出すための電圧が供給される電極であり、画素P毎に形成されている。この電極13の構成材料としては、例えばチタン(Ti)、タングステン(W)、窒化チタン(TiN)、白金(Pt)、金(Au)、ゲルマニウム(Ge)、ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)のうちのいずれかの単体、またはそれらのうちの少なくとも1種を含む合金が挙げられる。
【0084】
この電極13は、例えば、光電変換層12の上面(面12a)のうちの選択的な領域に接続されている。ここでは、電極13は、画素P毎に設けられると共に、パッシベーション膜14および保護膜16に設けられた開口h1(第1開口)内に形成され、この開口h1を通じて光電変換層12の面12aに接している。ただし、1つの画素Pに対して複数の電極13が配置されていてもよい。また、1つの画素Pに複数の電極13が配置される場合には、それらのうちの一部に実際には電荷取出しに寄与しない電極(ダミー電極)が含まれていても構わない。
【0085】
パッシベーション膜14は、光電変換層12の表面のうちの少なくとも一部、例えば側面12bを覆って形成されている。ここで説明する例では、光電変換層12の表面のうち、基板11と対向する部分(具体的には、基板11の面S1に接する面12c)と、電極13との接続部分(具体的には、面12aのうちの電極13との接触部分)とを除く部分を覆って形成されている。
【0086】
このパッシベーション膜14は、光電変換層12に含まれる化合物半導体との界面において欠陥を形成しにくい絶縁体または半導体を含んで構成されている。そのような絶縁体の一例としては、酸化アルミニウム(Al2O3)等の高誘電率材料または窒化シリコン(SiN)が挙げられる。パッシベーション膜14に半導体が用いられる場合には、光電変換層12よりもバンドギャップが大きい材料が選択されることが望ましい。一例としては、光電変換層12がIn0.53Ga0.47As(バンドギャップ0.74eV)を含む場合には、パッシベーション膜14は、InP(バンドギャップ1.34eV)、InAlAsまたはSiであることが望ましい。
【0087】
絶縁膜15は、例えば酸化シリコン(SiOx)等の酸化物を含んで構成されている。この絶縁膜15は、複数の光電変換層12のそれぞれを囲んで形成されており、光電変換層12を画素P毎に電気的に分離するためのものである。ここで説明する例では、上述のように、パッシベーション膜14により覆われた光電変換層12同士の間の領域を埋めるように絶縁膜15が形成されている。換言すると、絶縁膜15と光電変換層12との間にはパッシベーション膜14が介在しており、絶縁膜15は、光電変換層12と直に接しない構造となっている。
【0088】
保護膜16は、無機絶縁材料(例えば、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)および酸化ハフニウム(HfO2)のうちの少なくとも1種)を含んで構成されている。保護膜16は単層膜であってもよいし、積層膜であってもよい。
【0089】
オンチップレンズ17は、入射光(赤外線)を光電変換層12に向けて集光するためのものである。このオンチップレンズ17は必要に応じて設けられていればよい。また、オンチップレンズ17の形状も図示したものに限定されない。なお、受光素子1が、赤外線だけでなく可視光についても検出する用途に用いられる場合には、例えば基板11とオンチップレンズ17との間に、さらに、カラーフィルタが配置されていてもよい。
【0090】
《受光素子の製造方法》
受光素子1は、例えば次のようにして製造することができる。
図2~
図8は、受光素子1の製造工程を工程順に示したものである。なお、
図2~
図8では、簡便化のため1つの画素Pに対応する領域についてのみ示している。
【0091】
まず、例えばInPよりなる基板11(第1基板)上の選択的な領域に、上述した材料を含む光電変換層12を形成する。この際、まず、
図2に示したように、基板11の面S1上に、酸化膜51をパターン形成する。具体的には、例えば酸化シリコンより成る酸化膜51を、基板11の面S1上に成膜した後、例えばフォトリソグラフィおよびドライエッチングを用いて、開口51a(第2開口)を形成する。開口51aは、画素P毎に、複数形成される。
【0092】
続いて、
図3に示したように、例えばInGaAsを含む光電変換層12を、開口51a内に選択エピタキシャル成長により形成する。InPよりなる基板11上に、InGaAsを成長させることで、InPとInGaAsとが格子整合し易く、光電変換層12における結晶欠陥を最小限に抑えることができる。
【0093】
この後、
図4に示したように、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)により、光電変換層12のうち、酸化膜51の上面を超えて成長した部分を除去すると共に、上面(面12a)を平坦化する。
【0094】
続いて、
図5に示したように、酸化膜51を、例えばエッチングにより選択的に除去する。この際、基板11(InP)および光電変換層12(InGaAs)と、酸化膜51との間でエッチング選択比を確保することが可能な薬液を用いる。このような薬液としては、例えばフッ酸系の薬液が挙げられる。このようにして、基板11上の選択的な領域に光電変換層12を形成できる。即ち、基板11上に、複数の光電変換層12をそれぞれ島状に形成できる。
【0095】
次いで、
図6に示したように、上述した材料を含むパッシベーション膜14を、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)またはALD(Atomic Layer Deposition)等により形成する。これにより、光電変換層12の面12aと側面12bとを覆って、パッシベーション膜14が形成される。
【0096】
この後、
図7に示したように、上述した材料よりなる絶縁膜15を形成する。具体的には、パッシベーション膜14で覆われた光電変換層12同士の間隙を埋めるように、絶縁膜15を例えばCVD等を用いて成膜した後、例えばCMPを用いて表面を平坦化する。
【0097】
続いて、
図8に示したように、上述した材料よりなる電極13を形成する。具体的には、まず、パッシベーション膜14および絶縁膜15上の全面にわたって、上述した材料よりなる保護膜16を、例えばCVDまたはスパッタ等を用いて成膜する。次いで、パッシベーション膜14および保護膜16のうちの光電変換層12の面12aに対応する一部を開口し(開口h1を形成し)、この開口h1内に電極13を形成する。詳細には、開口h1を埋め込むように、上述した材料よりなる電極13を例えばCVD、プラズマCVD、熱CVD、ALDまたは蒸着法等を用いて成膜した後、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いてパターニングする。これにより、光電変換層12の表面のうち、基板11に対向する部分と、電極13との接続部分とを除く部分が、パッシベーション膜14によって覆われる。
【0098】
最後に、基板11の面S2の側にオンチップレンズ17を形成する、または貼り合せることで、
図1に示した受光素子1を完成する。
【0099】
《本発明の処置液の使用方法》
本発明の処理液は、
図4に示すように、InPを含む基板11上に光電変換層12と酸化膜51が形成された状態から、酸化膜51を選択的に除去して
図5に示す状態にするために、SiO
2を含む酸化膜51を選択的に除去する際のエッチング処理液として使用することができる。
【0100】
本発明の処理液は、InPを含む基板11(InxPを含むInP層に相当する)およびInGaAsを含む光電変換層12(InzGa(1-z)Asを含むInGaAs層に相当する)の表面荒れを抑制することでき、かつ、SiO2の欠陥の発生も抑制することができるため、不良品の発生が少ない。
本発明の処理液が非フッ素系ノニオン界面活性剤を含む場合、非フッ素系ノニオン界面活性剤はInPおよびInGaAsの溶解をさらに抑制するため、InPを含む基板11(InxPを含むInP層に相当する)およびInGaAsを含む光電変換層12(InzGa(1-z)Asを含むInGaAs層に相当する)を溶解せず、絶縁膜51(SiO2を含むSiO2層に相当する)を選択的に除去することができる。
【実施例】
【0101】
[実施例1~46,比較例1~5]
〈処理液の製造〉
表1に示す組成で各成分を混合し、表2に示す細孔径を有するHDPE(高密度ポリエチレン)製フィルターで1回または2回のろ過を行って、処理液を製造した。
【0102】
〈pH、電気伝導度〉
実施例1~46および比較例1~5の処理液について、pHおよび電気伝導度を測定した。
【0103】
《pHの測定》
pHは、pHメーター(pH計:ポータブル型D-70シリーズ,堀場製作所社製)を用いて、23℃で測定した。
表1の「pH」の欄に、測定により得られた各処理液のpHを示す。
【0104】
《電気伝導度の測定》
電気伝導度は、電気伝導率計(導電率計(電気伝導率計):ポータブル型D-70/ES-70シリーズ,堀場製作所社製)を用いて測定した。
表1の「電気伝導度」の欄に、測定により得られた各処理液の電気伝導度を示す。なお、表中、「<1」は、1未満を表す。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
表1中、TMACl、MSAおよびDBUは、それぞれ、以下に示す意味である。
TMACl・・・塩化テトラメチルアンモニウム
MSA・・・メタンスルホン酸
DBU・・・ジアザビシクロウンデセン
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
〈粗大粒子数の測定〉
実施例1~46および比較例1~5の処理液について、液中パーティクルカウンタ(KS-18F,リオン社製)を用いて、処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粒子数A(個/mL)および処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粒子数B(個/mL)を測定した。
次に、測定により得られたAおよびBから、A/Bを算出した。
表3の「粗大粒子」の欄に、処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粒子数A(個/mL)、処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粒子数B(個/mL)、および処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粒子数A(個/mL)と処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粒子数B(個/mL)の比の値A/Bを示す。なお、A/Bは小数点以下4桁目を四捨五入し、小数点以下3桁まで求めた。
【0113】
〈酸化剤および金属イオンの含有量の測定〉
実施例1~46および比較例1~5の処理液について、トリプル四重極ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)(Agilent 8800シリーズ,アジレントテクノロジーズ社製)を用いて標準電極電位が0V超である金属イオンの含有量C(質量ppt)を測定した。また、これらの処理液について、上述した測定方法によって、酸化剤の含有量D(質量ppt)を測定した。
表3の「金属イオン」の欄に標準電極電位が0V超である金属イオンの含有量C(質量ppt)を、「酸化剤」の欄に、酸化剤の含有量D(質量ppt)を、それぞれ示す。
【0114】
〈含有量比の算出〉
実施例1~46および比較例1~5の処理液について、フッ素原子の含有量X(質量%)、防食剤の含有量Y(質量%)、標準電極電位が0V超である金属イオンの含有量C(質量ppt)および酸化剤の含有量D(質量ppt)から、以下の含有量比を算出した。
・フッ素原子の含有量Xと標準電極電位が0V超である金属イオンおよび酸化剤の合計含有量C+Dの比の値 X/(C+D)
・防食剤の含有量Yと標準電極電位が0V超である金属イオンおよび酸化剤の合計含有量C+Dの比の値 Y/(C+D)
・フッ素原子の含有量Xと防食剤の含有量Yの比の値 X/Y
表3の「含有量比」の欄に、X/(C+D)、Y/(C+D)、およびX/Yを、それぞれ示す。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
表3中、A、B、C、D、X、およびYは、それぞれ、以下に示す意味である。
A・・・処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粒子数(個/mL)
B・・・処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粒子数(個/mL)
C・・・標準電極電位が0V超である金属イオンの含有量(質量ppt)
D・・・酸化剤の含有量(質量ppt)
X・・・フッ素原子の含有量(質量%)
Y・・・防食剤の含有量(質量%)
【0119】
〈評価試験〉
《エッチングレート》
(試験基板の作製)
市販のシリコン基板(直径:8インチ)上にInP、InGaAs、またはSiO2を蒸着して厚さ100Åに成膜した。
エッチング速度(ER)(Å/min)については、エリプソメトリー(分光エリプソメーター、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン株式会社 Vaseを使用した)を用いてエッチング処理前後の膜厚を測定することにより算出した。5点の平均値を採用した(測定条件 測定範囲:1.2-2.5eV、測定角:70,75度)。
【0120】
《InGaAs層の表面荒れ》
市販のシリコン基板(直径:8インチ)上に100ÅのInGaAs層を成膜した基板を、InGaAs層の10Å相当が除去される時間だけ、実施例1~46および比較例1~5の処理液を用いてエッチング処理した。
処理後のシリコン基板を原子間力顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製)を用いて観察し、表面粗さ(Ra)を評価した。
評価は以下の基準に従って行った。
A 1.0μm□の測定領域においてRaが0.2Å未満である
B 1.0μm□の測定領域においてRaが0.2Å以上0.5Å未満である
C 1.0μm□の測定領域においてRaが0.5Å以上1.0Å未満である
D 1.0μm□の測定領域においてRaが1.0Å以上である
【0121】
《InP層の表面荒れ》
市販のシリコン基板(直径:8インチ)上に100ÅのInP層を成膜した基板を、InP層の10Å相当が除去される時間だけ、実施例1~46および比較例1~5の処理液を用いてエッチング処理した。
処理後のシリコン基板を原子間力顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製)を用いて観察し、表面粗さ(Ra)を評価した。
評価は以下の基準に従って行った。
A 1.0μm□の測定領域においてRaが0.2Å未満である
B 1.0μm□の測定領域においてRaが0.2Å以上0.5Å未満である
C 1.0μm□の測定領域においてRaが0.5Å以上1.0Å未満である
D 1.0μm□の測定領域においてRaが1.0Å以上である
【0122】
《SiO2の欠陥》
市販のシリコン基板(直径:8インチ)上に100ÅのInP層を成膜し、さらに、その上に50ÅのSiO2層を成膜した基板を、実施例1~46および比較例1~5の処理液を用いてエッチング処理し、SiO2層を除去した。
処理後のシリコン基板を欠陥検査装置(Surfscan XP2,KLA-Tencor社製)を用いて検査し、基板上に残る残渣の数から欠陥性能を評価した。
評価は以下の基準に従って行った。
A 欠陥数が50未満である
B 欠陥数が50以上100未満である
C 欠陥数が100以上200未満である
D 欠陥数が200以上である
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
表4中、エッチングレートの欄に記載した記号は以下の意味である。
SiO2 ER ・・・ SiO2層のエッチングレート
InP ER ・・・ InP層のエッチングレート
InGaAs ER ・・・ InGaAs層のエッチングレート
【0127】
[結果の説明]
実施例1~46および比較例1~5の処理液について、SiO2層、InP層、および、InGaAs層に対するエッチングレート、ならびに、InP層、およびInGaAs層の表面荒れ、およびSiO2の欠陥を評価した。
実施例1~46の処理液は、いずれも、SiO2を選択的に除去でき、かつ、SiO2の欠陥およびInP層の表面荒れが抑制されていた。
さらに、実施例1~46の処理液は、いずれも、InP層の表面荒れ、InGaAs層の表面荒れ、SiO2の欠陥がいずれも低い水準であり、SiO2層を除去した後の工程に悪影響を与えないと考えられた。
【0128】
[実施例3、5~9]
実施例3および6~8は、SiO2の欠陥の評価がAまたはBであるのに対して、実施例5および9は、SiO2の欠陥の評価がCである。フッ素原子の含有量が0.01質量%~15質量%の範囲内である実施例3および6~8は、範囲外である実施例5および9と比較して、SiO2の欠陥がよりよく抑制されていた。
【0129】
実施例6および7は、SiO2の欠陥の評価がAであるのに対して、実施例3、5、8および9は、SiO2の欠陥の評価がBまたはCである。金属イオンおよび酸化剤の合計含有量(C+D)に対するフッ素原子の含有量Xの比の値が20000~10000000の範囲内である実施例6および7は、範囲外である実施例3、5、8および9と比較して、SiO2の欠陥がよりよく抑制されていた。
【0130】
[実施例3、10~14]
実施例3および11~13は、InP層の表面荒れおよびInGaAs層の表面荒れの評価がAまたはBであるのに対して、実施例10は、InP層の表面荒れおよびInGaAs層の表面荒れの評価がCである。また、実施例3および11~13は、SiO2の欠陥の評価がAまたはBであるのに対して、実施例14は、SiO2の欠陥の評価がCである。防食剤の含有量が0.01質量%~1質量%の範囲内である実施例3および11~13は、範囲外である実施例10よりもInP層の表面荒れおよびInGaAs層の表面荒れがよりよく抑制され、実施例14よりもSiO2の欠陥がよりよく抑制されていた。
【0131】
実施例11、12および14は、InP層の表面荒れおよびInGaAs層の表面荒れの評価がいずれもAであるのに対して、実施例3、10および13は、InP層の表面荒れおよびInGaAs層の表面荒れの評価が、BまたはCである。金属イオンおよび酸化剤の合計含有量(C+D)に対する防食剤の含有量Yの比の値が40000~5000000の範囲内である実施例11、12および14は、範囲外である実施例3、10および13と比較して、InP層の表面荒れおよびInGaAs層の表面荒れがよりよく抑制されていた。
【0132】
[実施例3、5~14]
防食剤の含有量Yに対するフッ素原子の含有量Xの比の値X/Yが0.01~50の範囲内である実施例3、6~9および12~14は、範囲外である実施例5,10および11と比較して、SiO2 ER/InP ERの値がより大きく、SiO2選択性がより高くなっていた。
【0133】
[実施例3、43~46]
実施例43~46は、実施例3に比べて、SiO2の選択性が優れ、かつ、InP層の表面荒れおよびInGaAs層の表面荒れもよりよく抑制されていた。
【符号の説明】
【0134】
1…受光素子
11…基板
12…光電変換層
12a…面(光電変換層12の上面)
12b…側面(光電変換層12の側面)
12c…面(基板11の面S1に接する面)
13…電極
14…パッシベーション膜
15…絶縁膜
16…保護膜
17…オンチップレンズ
51…酸化膜
51a…開口
P…画素
S1…面(基板11の一面)
S2…面(基板11の光入射側の面)
h1…開口