IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人東京理科大学の特許一覧

特許7039800RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20220315BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220315BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/113 Z
A61K48/00
A61K31/712
A61P43/00 105
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018504598
(86)(22)【出願日】2017-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2017009566
(87)【国際公開番号】W WO2017155058
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2020-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2016046181
(32)【優先日】2016-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】和田 猛
(72)【発明者】
【氏名】吉野 怜次郎
(72)【発明者】
【氏名】原 倫太朗
(72)【発明者】
【氏名】額賀 陽平
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-044842(JP,A)
【文献】特表2015-522275(JP,A)
【文献】国際公開第2015/137121(WO,A1)
【文献】J. Am. Chem. Soc.,2008年,Vol.130,pp.16031-16037
【文献】J. Org. Chem.,2016年03月03日,Vol.81,pp.2753-2762
【文献】Science,1993年,Vol.260,pp.1510-1513
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるヌクレオチド単位及び下記一般式(2)で表されるヌクレオチド単位の少なくとも1つの単位が、3個~50個連続する構造を含み、塩基長が8塩基~50塩基であるRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー。
【化1】

(一般式(1)中、Rは、水素原子、メトキシ基、エトキシ基、フルオロ基、クロロ基又はブロモ基を表す。一般式(1)及び一般式(2)中、各Bs1は、それぞれ独立して、保護基を有していてもよいピリミジン塩基であり、前記ピリミジン塩基の5位の炭素原子に結合する水素原子は、プロピニル基で置換されている。一般式(1)及び一般式(2)中、Xは、それぞれ独立して、S又はBH を表す。Zは、カウンターカチオンを示す。R及びRは、それぞれ独立して水素原子表す。
【請求項2】
前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、Bs1は、下記一般式(3)又は一般式(4)で表される基である請求項1に記載のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー。
【化2】

(一般式(3)中、Rは、プロピニル基を表す。一般式(3)中のカルボニル基及びアミノ基は、保護基を有していてもよい。一般式(4)中、Rは、プロピニル基を表す。一般式(4)中のカルボニル基及びアミノ基は、保護基を有していてもよい。)
【請求項3】
前記塩基長が、10塩基~30塩基である請求項1又は請求項2に記載のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー。
【請求項4】
前記一般式(1)で表されるヌクレオチド単位及び前記一般式(2)で表されるヌクレオチド単位の少なくとも1つの単位が、5個~30個連続する構造を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーを含む、RNAハイブリッド形成剤。
【請求項6】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーの使用を含む、RNAハイブリッド形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーに関する。
【背景技術】
【0002】
標的核酸と相補的な塩基配列を有するアンチセンス分子は、標的核酸と相補的な二重鎖を形成し、標的核酸からのタンパク質生成を阻害することができる。標的核酸として疾病関連遺伝子を選択した場合には、アンチセンス分子は、疾病関連遺伝子に直接働きかけるため、遺伝子治療に有効な医薬として注目されている。
【0003】
アンチセンス分子(核酸オリゴマー)は、標的となるタンパク質の生成を効率よく阻害する観点から主として、細胞膜透過性、ヌクレアーゼ耐性、体内(例えば、pH7.4の環境下)での化学的安定性、及び特定の塩基配列とのみ安定な二重鎖を形成する性質を有することが求められる。アンチセンス分子としては、例えば、ホスホロチオエート化合物を用いて得られる核酸オリゴマー(以下、「ホスホロチオエート型核酸オリゴマー」と称する)やボラノホスフェート化合物を用いて得られる核酸オリゴマー(以下、「ボラノホスフェート型核酸オリゴマー」と称する)が知られており、これまでに多くの広汎な研究例があり、医薬品としても実用化されている。ホスホロチオエート型核酸オリゴマーは、非天然型の結合を有するのでヌクレアーゼ耐性が高く、かつ脂溶性が高いために細胞膜透過性が期待でき、さらに免疫応答性も低いという利点を有する。
【0004】
一方、アンチセンス分子の標的となるRNA等の核酸はキラル分子であるため、該相補鎖との結合親和性、すなわち二重鎖形成能に、アンチセンス分子のキラリティーが影響すると考えられ、実際、ホスホロチオエート型核酸オリゴマーのリン原子上の絶対立体配置がRNAとの結合親和性に影響することが報告されている(例えば、Nucleic Acids Res. 1995, Vol.23, pp.5000)。
【0005】
また、核酸オリゴマーの投与時には、標的となる核酸に到達するまでに生体内の多くのキラルな分子との相互作用を考慮する必要がある。このためには、投与する核酸オリゴマーが有するキラリティーも明確にする必要があると考えられる。
【0006】
これに対し、ホスホロチオエート型核酸オリゴマーやボラノホスフェート型核酸オリゴマーの立体選択的な合成が報告されており、立体的に高度に制御されたDNAオリゴマー及びRNAオリゴマーのうちの一部は、相補鎖との二重鎖形成能が向上することが報告されている(例えば、国際公開第2011/108682号、特開2015-093853号公報及びOrg. Lett. 2009, Vol.11, pp.967)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、例えば、Org. Lett. 2009, Vol.11, pp.967、国際公開第2011/108682号及び特開2015-093853号公報のホスホロチオエート型核酸オリゴマーは、立体を制御することで、二重鎖形成能を向上させているものの、そのレベルとしては十分とは言い難い。また、これらの文献では、核酸オリゴマー中の立体選択性に関する構造のみに着目しており、その他の構造についてはほとんど考慮されていない。このように、光学活性な核酸オリゴマーと相補鎖(RNA)との結合親和性(二重鎖形成能)については、さらに向上させる余地があるといえる。
【0008】
本発明は、上記の状況に鑑み、相補鎖との二重鎖形成能に優れたRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 下記一般式(1)で表されるヌクレオチド単位及び下記一般式(2)で表されるヌクレオチド単位の少なくとも1つの単位が、3個~50個連続する構造を含み、塩基長が8塩基~50塩基であるRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー。
【0010】
【化1】

【0011】
(一般式(1)中、Rは、水素原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、トリアルキルシリルオキシ基又はハロゲニル基を表す。一般式(1)及び一般式(2)中、各Bs1は、それぞれ独立して、保護基を有していてもよいピリミジン塩基であり、前記ピリミジン塩基の5位の炭素原子に結合する水素原子は、水素原子以外の基で置換されていてもよい。一般式(1)及び一般式(2)中、Xは、それぞれ独立して、S又はBH を表す。Zは、カウンターカチオンを示す。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。R及びRは互いに結合して環を形成してもよい。)
<2> 前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、Bs1は、下記一般式(3)又は一般式(4)で表される基である<1>に記載のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー。
【0012】
【化2】

【0013】
(一般式(3)中、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基又はハロゲニル基を表す。一般式(3)中のカルボニル基及びアミノ基は、保護基を有していてもよい。一般式(4)中、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基又はハロゲニル基を表す。一般式(4)中のカルボニル基及びアミノ基は、保護基を有していてもよい。)
【0014】
<3> 前記塩基長が、10塩基~30塩基である<1>又は<2>に記載のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー。
【0015】
<4> 前記一般式(1)で表されるヌクレオチド単位及び前記一般式(2)で表されるヌクレオチド単位の少なくとも1つの単位が、5個~30個連続する構造を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、相補鎖との二重鎖形成能に優れたRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】(A)は、すべてのホスホロチオエート結合中のリン原子の絶対立体配置がSpである核酸オリゴマーと天然型相補鎖RNAとの二重鎖の融解曲線を示すグラフである。
図1B】(B)は、すべてのホスホロチオエート結合中のリン原子の絶対立体配置がRpである核酸オリゴマーと天然型相補鎖RNAとの二重鎖の融解曲線を示すグラフである。
図2A】(A)は、すべてのホスホロチオエート結合中のリン原子の絶対立体配置がSpである核酸オリゴマーと天然型相補鎖DNAとの二重鎖の融解曲線を示すグラフである。
図2B】(B)は、すべてのホスホロチオエート結合中のリン原子の絶対立体配置がRpである核酸オリゴマーと天然型相補鎖DNAとの二重鎖の融解曲線を示すグラフである。
図3A】(A)は、核酸オリゴマーd(ATA(Cs)6TAT)、(Rp)-d(ATA(Cps)6TAT)または(Sp)-d(ATA(Cps)6TAT)と、天然型相補鎖RNAとの二重鎖の融解曲線を示すグラフである。
図3B】(B)は、核酸オリゴマーd(ATA(MeCs)6TAT)、(Rp)-d(ATA(MeCps)6TAT)または(Sp)-d(ATA(MeCps)6TAT)と、天然型相補鎖RNAとの二重鎖の融解曲線を示すグラフである。
図3C】(C)は、核酸オリゴマー(Rp)-d(ATA(Cps)6TAT)または(Sp)-d(ATA(Cps)6TAT)と、天然型相補鎖RNAとの二重鎖の融解曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーは、上記一般式(1)で表されるヌクレオチド単位及び下記一般式(2)で表されるヌクレオチド単位の少なくとも1つの単位が、3個~50個連続する構造を含み、塩基長が8塩基~50塩基である。
【0019】
本発明のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーは、相補鎖であるRNAとの二重鎖形成能に優れるという特徴を有する。
ここで、相補鎖との二重鎖形成能とは、相補鎖となるRNAと、二重鎖の形成しやすさをいう。二重鎖形成能は、例えば、本発明のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーと、天然型相補鎖RNAとの二重鎖の融解温度(Tm)で表すことができる。Tmは、例えば、温度の可変が可能なセルを装備した紫外可視分光光度計を用い、260nmにおける吸光度を各温度で測定し、融解曲線を得ることによって求めることができる。
【0020】
本発明のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーが、相補鎖との二重鎖形成能に優れる理由は不明であるが、本発明者らは以下のように考えている。すなわち、RNAとDNAとの二重鎖、及びRNAとRNAとの二重鎖を形成する場合には、A型の二重らせん構造を形成する。この場合に、本発明のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー中のリン原子に結合した硫黄原子又はボラノ基が、同一分子内の核酸塩基中のピリミジン基の5位の炭素原子に結合した基と近接するようになる。この際、リン原子の絶対立体配置が一方の場合、例えば硫黄原子である場合は、絶対立体配置がRpの場合に、該ピリミジン基の5位の基と、空間的に相互作用しやすくなると考えられる。ボラノ基の場合には、絶対立体配置がSpの場合に、該ピリミジン基の5位の基と、空間的に相互作用しやすくなると考えられる。
従って、核酸塩基がピリミジンである場合には、該硫黄原子やボラノ基との強い相互作用が生じることにより、分子内の構造がより安定化する結果、さらに相補鎖との結合もより強固となり、結果としてA型のらせん構造がより安定化するものと考えられる。
【0021】
従って、このような相互作用があるほど、結果として相補鎖(RNA)との結合がより強固となると考えられるため、例えば、RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー中に、上記一般式(1)で表されるヌクレオチド単位及び下記一般式(2)で表されるヌクレオチド単位の少なくとも1つを3個以上連続している構造を存在させることにより、当該構造部分が連続しているか否かにかかわらず、該核酸オリゴマーの相補鎖との結合がより強固となり、Tm値はより上昇する。
【0022】
本明細書では、適宜「ピリミジン塩基の5位の炭素原子に結合する水素原子」を単に、“ピリミジン塩基の5位の水素原子”と称し、前記水素原子を置換した水素原子以外の基を、“ピリミジン塩基の5位の置換基”と称することがある。
本明細書において「モノマー」とは、核酸オリゴマーを製造する際に、核酸オリゴマーのヌクレオチド単位を導入するために使用される核酸をいう。
【0023】
一般式(1)で表されるヌクレオチド単位及び上記一般式(2)で表されるヌクレオチド単位を“特定ヌクレオチド単位”と称することがあり、特定ヌクレオチド単位以外のヌクレオチド単位を、単に“他のヌクレオチド単位”と称することがある。また、RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー中、特定ヌクレオチド単位が3個~50個連続している部分の構造を、“特定ヌクレオチド構造”と称することがある。
【0024】
RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーのリン原子の絶対立体配置は、例えば、合成した前記オリゴマーを、HPLC等で精製後に、酵素分解法及び31P-核磁気共鳴スペクトル(31P-NMR)によって決定することができる。また、RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーにおける立体化学的純度(ジアステレオマー的な純度)は、前記31P-核磁気共鳴スペクトル及び旋光計等を用いて測定することで得ることができる。
【0025】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
また本明細書において「~」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示すものとする。
さらに本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下、本発明について説明する。
【0026】
<RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー>
下記一般式(1)で表されるヌクレオチド単位及び下記一般式(2)で表されるヌクレオチド単位の少なくとも1つの単位が、3個~50個連続する構造を含み、塩基長が8塩基~50塩基であるRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーである。
【0027】
【化3】
【0028】
一般式(1)中、Rは、水素原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、トリアルキルシリルオキシ基又はハロゲニル基を表す。一般式(1)及び一般式(2)中、各Bs1は、それぞれ独立して、保護基を有していてもよいピリミジン塩基であり、前記ピリミジン塩基の5位の炭素原子に結合する水素原子は、水素原子以外の基で置換されていてもよい。一般式(1)及び一般式(2)中、Xは、それぞれ独立して、S又はBH を表す。Zは、カウンターカチオンを示す。一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。R及びRは互いに結合して環を形成してもよい。
【0029】
RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーの長さ(塩基長)は、8塩基~50塩基であればよく、本標的となる核酸(RNA)の種類、長さ等に応じて所望の長さを適宜選択できる。本発明のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーの長さは、特に限定されないが、アンチセンス医薬への応用の観点から、10塩基~30塩基であることが好ましく、10塩基~21塩基がより好ましい。
RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーの塩基配列は、二重鎖形成能の観点から、標的となるRNAの塩基配列に対して相補的な塩基配列となるように適宜選択されるが、場合によって、異なる塩基を1つ以上含む塩基配列であってもよい。
【0030】
一般式(1)及び一般式(2)中、Xとしては、S又はBH であればよい。Zとしては、例えば、有機アミン化合物由来のカチオン、又は無機及び金属カチオンを挙げることができる。有機アミン化合物由来のカチオンとしては、三級アルキルアンモニウムイオン、ヘテロ芳香族イミニウムイオン、ヘテロ環イミニウムイオンを挙げることができ、無機及び金属カチオンとしては、アンモニウムイオン又は一価の金属イオン等が挙げられる。具体的には、トリエチルアンモニウムイオン、N,N-ジイソプロピルエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、1,8-ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデカ-7-エニウムイオン、アンモニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオン等が挙げられる。
【0031】
RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー中の5’末端は、水酸基又は水酸基の保護基であってよく、3’末端は水素原子又は水酸基の保護基であってよい。水酸基の保護基は、例えば、アセチル基やフェノキシアセチル基(Pac)などのアセチル保護基、ベンジル基や4-メトキシベンジル基などのベンジル保護基、ベンゾイル基、ピバロイル基、4,4’-ジメトキシトリチル基(DMTr)などのトリチル保護基、トリメチルシリル基(TMS)やTert-ブチルジメチルシリル基(TBDMS)などのシリル保護基、2-(シアノエトキシ)エチル基(CEE)やシアノエトキシメチル基(CEM)などのエート保護基など適宜の保護基を用いることができる。水酸基の保護基についてはGreenら、Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,1999,John Wiley&Sons,Inc.などの成書を参照することができる。RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー中の5’末端及び/又は3’末端が保護基である場合には、合成過程においてこの保護基又は他の保護基を選択的に脱離させることができるように、該保護基は他の保護基とは異なる保護基であることが好ましい。RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー中の5’末端及び/又は3’末端の保護基としては、例えばトリチル保護基を用いることが好ましく、4,4’-ジメトキシトリチル基を用いることがより好ましい。
【0032】
RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー中の特定ヌクレオチド構造は、一般式(1)で表されるヌクレオチド単位及び一般式(2)で表されるヌクレオチド単位の少なくともいずれかが3個~50個連続している構造であればよく、例えば、一般式(1)で表されるヌクレオチド単位のみで形成される構造であってもよいし、一般式(2)で表されるヌクレオチド単位のみで形成される核酸オリゴマーであってもよい。また、一般式(1)で表されるヌクレオチド単位と一般式(2)で表されるヌクレオチド単位とが一定の繰り返しパターンで連続している構造、あるいは無秩序に連続している構造であってもよい。
【0033】
また、本発明のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーは、特定ヌクレオチド単位が3個~50個連続している構造を含んでいれば、他のヌクレオチド単位を有するもの(以下、適宜「キメラオリゴマー」と称する)であってもよい。キメラオリゴマーである場合の、他のヌクレオチド単位については特に制限はなく、例えば、特開2015-093853号公報の段落0051の(V)に記載されている天然型のモノマー及び誘導された天然型のモノマーを縮合して得られるヌクレオチド単位等が挙げられる。
【0034】
RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー中、特定ヌクレオチド構造は、キメラオリゴマーであるか否かに関わらず、5個~30個連続している構造を含むことが好ましい。5個以上であることで、RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーのRNAとの二重鎖形成能をより高めることができ、30個以下であることで、より使用性が向上する。さらに、7個~25個連続していることがより好ましい。
【0035】
キメラオリゴマーの場合、キメラオリゴマー中の特定ヌクレオチド構造の、RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー中での位置については、特に制限はなく、例えば、5’末端側や3’末端側に存在してもよく、キメラオリゴマー中に連続して存在してもよい。また、キメラオリゴマー中、特定ヌクレオチド構造それぞれを構成するヌクレオチド単位の合計数を、単に、「特定ヌクレオチド単位の総和」、と称することがある。
【0036】
RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマー中、特定ヌクレオチド単位の総和の、前記核酸オリゴマーの塩基長に対する比率は、特に限定されないが、二重鎖形成能の観点からは、40%以上であることが好ましい。40%以上であることで、よりTm値を向上させやすい。また、60%以上がさらに好ましく、70%以上が特に好ましい。
【0037】
前記一般式(1)及び前記一般式(2)中のRにおいて、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基等を挙げることができる。
アルケニルオキシ基としては、例えば、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、2-メチル-1-プロペニルオキシ基、2-メチルアリルオキシ基、2-ブテニルオキシ基等を挙げることができる。
アシルオキシ基としては、例えば、炭素数1から6のアルキル-カルボニルオキシ基(例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基等)、炭素数6から10のアリール-カルボニルオキシ(例えば、ベンゾイルオキシ基)などが挙げられる。
トリアルキルシリルオキシ基としては、例えば、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基などを挙げることができる。
ハロゲニル基としては、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基などを挙げることができる。
としては、二重鎖形成能の点から、上記の中でも、水素原子、アルコキシ基及びトリアルキルシリルオキシ基が好ましい。
また、アルコキシ基としては、炭素数1~12のアルコキシ基が好ましく、さらに炭素数1~6のアルコキシ基がより好ましい。
また、ハロゲニル基としてはフルオロ基がより好ましい。
【0038】
前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、Bs1はピリミジン塩基を表し、保護基を有していてもよい。ピリミジン塩基が保護基を有する場合、保護基の種類は特に限定されない。ピリミジン塩基として、アミノ基を有するシトシン塩基が選択される場合、シトシン塩基のアミノ基を保護する観点から、保護基として、例えば、ベンジル基、4-メトキシベンゾイル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、フェニルアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、(ジメチルアミノ)メチレン基等を挙げることができる。
【0039】
また、ピリミジン塩基の5位の炭素原子に結合する水素原子は、水素原子以外の原子で置換されていてもよい。置換されていてもよい置換基としては、特に制限されない。しかし、本発明のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーのRNAとの二重鎖形成能の観点から、前記置換基は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基、アシル基及びハロゲニル基から選ばれるいずれか1つの基であることが好ましい。また、前記核酸オリゴマー中の各ピリミジン塩基の5位の炭素原子に結合する置換基は、それぞれが同じ基であっても、異なっていてもよい。
【0040】
前記アルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~10のものを挙げることができる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基及びn-オクチル基等が挙げられる。
前記シクロアルキル基としては、シクロプロピル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
前記アルケニル基としては、炭素数2~10の直鎖、分岐鎖もしくは環状のものを挙げることができる。具体的には、例えばビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基及びアリル基などがあげられる。
前記アリール基としては、炭素数6~12のものを挙げることができる。具体的には、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニル等を挙げることができる。
前記ヘテロアリール基としては、炭素数3~10のものを挙げることができる。具体的には、1,2,3-トリアゾール、イミダゾール及びチオフェン等が挙げられる。
前記アルキニル基としては、炭素数2~10の直鎖もしくは分岐のものを挙げることができる。具体的には、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、2-メチル-3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-メチル-2-ブチニル基、2-メチル-3-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、1,1-ジメチル-2-ブチニル基等などがあげられる。
前記アシル基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~10のアルカノイルを挙げることができる。具体的には、例えば、アセチル基、n-プロピオニル基、イソプロピオニル基、n-ブチリル基及びヘキサノイル基などがあげられる。
上記の置換基のうち、二重鎖形成能の観点からは、炭素数2~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数2~5のアルキニル基及びハロゲニル基が好ましく、さらに、炭素数2~5のアルキニル基及びハロゲニル基がより好ましく、炭素数3~4のアルキニル基が特に好ましい。
【0041】
前記一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基であればよい。前記アルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~10のものを挙げることができる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基及びn-オクチル基等が挙げられる。
また、R及びRは、互いに結合して環を形成してもよい。具体的には、例えば、R、及びRが結合するR以外の炭素原子が、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロヘキサン環等の環状構造を形成してもよい。
【0042】
また、前記一般式(1)及び前記一般式(2)中のピリミジン塩基としては、二重鎖形成能の観点からは、下記一般式(3)又は一般式(4)で表される基であることが好ましい。
【0043】
【化4】

【0044】
一般式(3)及び一般式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基又はハロゲニル基を表す。一般式(3)及び一般式(4)中のカルボニル基及びアミノ基は、保護基を有していてもよい。
【0045】
炭素数1~10のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のものを挙げることができる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる
炭素数2~10のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。
炭素数2~10のアルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、2-メチル-3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-メチル-2-ブチニル基、などが挙げられる。
【0046】
上記の中でも、R及びRは、炭素数2~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数2~5のアルキニル基であることがより好ましく、さらに、炭素数3~4のアルキル基、炭素数3~4のアルケニル基、炭素数3~4のアルキニル基であることが特に好ましい。
【0047】
また、保護基としては、公知のものであれば特に制限はなく、例えば、上記一般式(4)中の保護基としては、アセチル基、イソブチル基、ベンゾイル基及びジメチルアミノメチレン基等が挙げられ、標的となるRNAの塩基配列の種類や長さ等に応じて、適宜調整される。
【0048】
また、RNAとの二重鎖形成能の観点から、一般式(1)及び一般式(2)中のBs1は、上記一般式(3)及び(4)のうち、一般式(3)で表される塩基であることが好ましい。
【0049】
上記のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーは、特定ヌクレオチド単位を3個~50個連続して含むように製造することができれば、製造方法としては特に限定されない。しかし、製造し易さの点からは、特定ヌクレオチド単位を構成することができるモノマーを合成する工程(モノマー合成工程)の後、前記モノマー合成工程によって得られた前記モノマーを、順次縮合させる工程(縮合工程)によって、上記のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーを製造することが好ましい。
【0050】
上記モノマー合成工程において、上記一般式(1)で表されるヌクレオチド単位を形成するためのモノマーの合成方法としては、例えば、文献[J.Am.Chem.Soc.,Vol.130,16031-16037]及び特開2015-44842号公報に記載のモノマーの合成方法を参考に、ピリミジン塩基の5位に適宜置換基が導入されたヌクレオチドの誘導体であって、かつリン原子の絶対立体配置が制御されたヌクレオチドの誘導体を合成することで、次の縮合工程に用いることができるモノマーを得ることができる。また、上記一般式(2)で表されるヌクレオチド単位を形成するためのモノマーの合成方法としては、Locked Nucleic acid(LNA)の核酸塩基単位を合成する公知の方法、例えば、特開2015-093853号公報等に記載のモノマーの合成方法を参考に、合成することができる。
また、以下の縮合工程に用いるモノマーの立体化学的純度としては、例えば、97%以上のものを用いることが好ましい。
【0051】
縮合工程においては、例えば、和田らの文献[J.Org.Chem.Vol.77,7913(2012)]を参考にして、所望の塩基配列及び所望のヌクレオチド単位の種類になるように、モノマー合成工程で得たモノマーを、順次縮合する方法が挙げられる。すなわち、標的となるRNAの塩基配列を考慮して、上記のモノマーを縮合させることで、RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーを得ることができる。
前記文献に記載のモノマーの縮合反応では、リン原子の絶対立体配置を高度に維持して縮合することが可能であるため、上記モノマー合成工程で得られたモノマーを用いて当該縮合反応させることにより、結果として、立体化学的純度の高い本発明のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーを得ることができる。また、モノマーの縮合においては、用いるモノマー中のピリミジン塩基の5位の置換基の種類として、例えば、すべて一定の置換基が結合した塩基を有するモノマーを用いてもよく、異なる置換基が結合した塩基を有するモノマーを用いてもよい。
【0052】
RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーがキメラオリゴマーである場合には、上記モノマー合成工程によってモノマーを合成した後、上記縮合工程において、標的となるRNAの塩基配列を考慮して、例えば、上記のモノマー及び他のヌクレオチド単位を構成することができるモノマーの両方を用いて、適宜縮合させることで合成することができる。具体的には、例えば、額賀らの文献[額賀陽平; 岡夏央; 前田雄介; 和田猛, “リン原子の立体を制御したPS/POキメラオリゴヌクレオチドの固相合成”, アンチセンス・遺伝子・デリバリーシンポジウム2014 講演予稿集, p. 52]及びOkaらの文献[J.Am.Chem.Soc.,Vol.130,16031-16037]に記載の方法を参考に、上記のモノマー合成工程によって得られたモノマーに、前記モノマー及び他のヌクレオチド単位を構成することができるモノマーを適宜縮合させることで得ることができる。
【0053】
上記のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーの製造方法においては、縮合工程後に、適宜保護基脱離工程を設けてもよい。保護基脱離工程で使用し得る脱保護剤としては、例えば、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸等を挙げることができる。
【0054】
上記の方法で得られた核酸オリゴマーは、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィー(逆相HPLC)、イオン交換HPLC、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の公知の精製方法により精製することができる。
【0055】
本発明のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーは、標的とするRNAの塩基配列に相補的となるように設計することにより、標的とするRNAに対する二本鎖形成能に優れたアンチセンス分子として使用することができる。例えば、標的とするRNAが疾患関連遺伝子の部分配列に相当する場合には、本発明のRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーは、翻訳阻害能の高いアンチセンス医薬等の医薬用途に好ましく用いられる。
【実施例
【0056】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各種分析器は以下に示した機種を用いた。
H-核磁気共鳴スペクトル(H-NMR):JNM-LA 400(400MHz)
13C-核磁気共鳴スペクトル(13C-NMR):JNM-LA 400(100.5MHz)
31P-核磁気共鳴スペクトル(31P-NMR):JNM-LA 400(161.8MHz)
なお、H-NMRにはテトラメチルシラン(TMS)を、13C-NMRにはCDCl(δ77.16ppm)を内部標準として用い、31P-NMRは85%HPOを外部標準として用いた。
ESI MS: Varian 910-MS
紫外可視分光光度計:JASCO V-550 UV/VIS spectrophotometer
【0057】
なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。実施例中、HNEtはトリエチルアミンを示し、DMTrは4,4’-ジメトキシトリチルを示し、その他の略号は上記説明中のものと同義である。
【0058】
<オキサザホスホリジンモノマーの合成>
オキサザホスホリジンモノマーは、DMTr基で保護した各ヌクレオシド(化合物3a~3e)とアミノアルコールから誘導した化合物(化合物D2又は化合物L2)とを反応させて合成した。
以下、詳細について述べる。
【0059】
(2-クロロオキサザホスホリジンD2の合成)
アミノアルコールである化合物D1(1.77g、10mmol)をトルエンで繰り返し共沸乾燥し、該トルエン溶液5mLにメチルモルホリン2.20mL(20mmol)を加え混合溶液とした。該混合溶液に三塩化リン870μL(10mmol)を含むトルエン5.0mL溶液を、0℃で撹拌しつつ添加し、さらに室温で2時間撹拌して反応を行った。反応後に生じた塩をAr雰囲気下、-78℃でろ別し、アルゴン雰囲気下、減圧濃縮することで、黄色オイル状の2-クロロ-1,3,2-オキサザホスホリジン(化合物D2)2.09gを得た。得られた化合物D2はこれ以上の精製はおこなわず、次の化合物の合成に用いた。
【0060】
【化5】

【0061】
また、D2のジアステレオマーであるL2については、化合物D1の代わりに化合物L1を用い、上記と同様の方法で合成した。
【0062】
【化6】

【0063】
(化合物3a~化合物3eの準備)
以下、各オキサザホスホリジンモノマーの合成に用いる、5’-O-ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)-2’-デオキシウリジン(化合物3a)、5’-O-ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)-チミジン(化合物3b)、5’-O-ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)-2’-デオキシブロモウリジン(化合物3c)、5’-O-ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)-2’-デオキシヨードウリジン(化合物3d)及び5’-O-ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)-2’-デオキシプロピニルウリジン(化合物3e)は、文献[J.Am.Chem.Soc.,Vol.104,1316-1319]に記載の方法を参考に、2’-デオキシウリジン(TCI社製)、チミジン(和光純薬工業株式会社)、2’-デオキシブロモウリジン(和光純薬工業株式会社)、2’-デオキシヨードウリジン(和光純薬工業株式会社)から合成した。5’-O-ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)-2’-デオキシプロピニルウリジン(化合物3e)は、Tetrahedron Lett.,Vol.45,2457-2461に記載の方法を参考に5’-O-ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)-2’-デオキシヨードウリジン(化合物3d)から合成した。
【0064】
(オキサザホスホリジンモノマーの合成)
<化合物(Sp)-4aの合成>
化合物3a(531mg、1.0mmol)をピリジン、トルエンで繰り返し共沸し、テトラヒドロフラン5mL溶液とし、トリエチルアミン0.97mL(7mmol)を加えて混合し-78℃に冷却し、化合物D2(725mg)を溶解したテトラヒドロフラン(THF)6mLを滴下した後、室温で2時間攪拌した。その後、クロロホルム300mL、飽和炭酸水素水溶液(100mL)を加えて分液操作を行い、有機相を飽和炭酸水素水溶液100mLで2回洗浄し、さらに、回収した洗浄液にクロロホルムを添加した後分液操作を行い、有機層を回収した。回収したすべての有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧蒸留去して残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(16gのNH-シリカゲル、富士シリシア社製)[展開溶媒:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン(70/30/0.1、v/v/v)]で分離精製後、溶媒を減圧留去することで、(Sp)-4a(313mg、0.43mmol)を収率43%で得た。
【0065】
【化7】

【0066】
1H NMR(400 Hz, CDCl3), δ7.88-7.86(d, 1H), 7.41-7.18(m, 37H), 6.85-6.83(d, 7H), 6.32-3.29(t, 1H), 5.74-5.73(d, 1H), 5.34-5.31(d, 1H), 4.94(m, 1H), 4.16(m, 1H), 3.89(m, 1H), 3.79(s, 6H), 3.59(m, 2H), 3.18(m, 1H), 2.76(br, 1H), 2.49(m, 1H), 2.34(m, 1H), 1.85(m, 2H), 1.65(m, 1H), 1.25-1.16(m, 4H), 0.99(m, 1H)
31P NMR(400 Hz, CDCl3), δ156.89
【0067】
<化合物(Sp)-4bの合成>
化合物3b(544mg、1.0mmol)をピリジン、トルエンで繰り返し共沸し、テトラヒドロフラン5mL溶液とし、トリエチルアミン0.97mL(7mmol)を加えて混合し-78℃に冷却し、化合物D2(725mg)を溶解したテトラヒドロフラン(THF)6mLを滴下した後、室温で2時間攪拌した。その後、化合物(Sp)-4aの方法と同様の方法によって残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15gのNH-シリカゲル、富士シリシア社製)[展開溶媒:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン(70/30/0.1、v/v/v)]で分離精製後、溶媒を減圧留去することで、(Sp)-4b(330mg、0.44mmol)を収率44%で得た。
【0068】
【化8】

【0069】
<化合物(Sp)-4cの合成>
化合物3c(611mg、1.0mmol)をピリジン、トルエンで繰り返し共沸し、テトラヒドロフラン5mL溶液とし、トリエチルアミン0.97mL(7mmol)を加えて混合し-78℃に冷却し、化合物D2(725mg)を溶解したテトラヒドロフラン(THF)6mLを滴下した後、室温で2時間攪拌した。その後、化合物(Sp)-4aの方法と同様の方法によって残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15gのNH-シリカゲル、富士シリシア社製)[展開溶媒:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン(80/20/0.5(v/v/v)から0/100/0.5(v/v/v))]で分離精製後、溶媒を減圧留去することで、化合物(Sp)-4c(280mg、0.44mmol)を収率30%で得た。
【0070】
【化9】

【0071】
1H NMR(400 Hz, CDCl3), δ81.2(s, 1H), δ7.44-7.23(d, 19H), 6.82-6.84(d, 4H), 6.32(t, 1H), 5.71-5.70(d, 1H), 4.91(m, 1H), 4.21(m, 1H), 3.89 (m, 1H), 3.78(s, 6H), 3.55 (m, 1H), 3.(m, 1H), 2.53(m, 1H), 2.33(m, 1H), 1.64(m, 2H), 1.28- 1.20(m, 1H), 1.01-0.96(m, 1H)
31P NMR(400 Hz, CDCl3), δ156.10
【0072】
<化合物(Sp)-4dの合成>
化合物3d(658mg、1mmol)をピリジン、トルエンで繰り返し共沸し、テトラヒドロフラン5mL溶液とし、トリエチルアミン0.97mL(7mmol)を加えて混合し-78℃に冷却し、化合物D2(725mg)を溶解したテトラヒドロフラン(THF)6mLを滴下した後、室温で2時間攪拌した。その後、化合物(Sp)-4aの方法と同様の方法によって残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(17gのNH-シリカゲル、富士シリシア社製)[展開溶媒:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン(80/20/0.1(v/v/v)から0/100/0.1(v/v/v))]で分離精製後、溶媒を減圧留去することで、化合物(Sp)-4d(420mg、0.49mmol)を収率49%で得た。
【0073】
【化10】

【0074】
1H NMR(400 Hz, CDCl3), δ8.17(s, 1H), δ7.46-7.25(d, 19H), 6.87-6.85(d, 4H), 6.32(t, 1H), 5.70-5.68(d, 1H), 4.89(m, 1H), 4.21(m, 1H), 3.92-3.89(m, 1H), 3.79(s, 6H), 3.55(m, 1H), 3.48(dd, 1H), 3.37(dd, 1H), 2.89(m, 1H), 2.56-2.50(m, 1H), 2.36-2.23(m, 1H), 1.67-1.56(m, 2H), 1.03-0.95(m, 1H)
31P NMR(400 Hz, CDCl3), δ155.55
【0075】
<化合物(Sp)-4eの合成>
化合物3e(612mg、1mmol)をピリジン、トルエンで繰り返し共沸し、テトラヒドロフラン5mL溶液とし、トリエチルアミン0.97mL(7mmol)を加えて混合し-78℃に冷却し、化合物D2(725mg)を溶解したテトラヒドロフラン(THF)6mLを滴下した後、室温で2時間攪拌した。その後、化合物(Sp)-4aの方法と同様の方法によって残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15gのNH-シリカゲル、富士シリシア社製)[展開溶媒:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン(80/20/0.1(v/v/v)から0/100/0.1(v/v/v))]で分離精製後、溶媒を減圧留去することで、化合物(Sp)-4e(350mg、0.49mmol)を収率49%で得た。
【0076】
【化11】

【0077】
1H NMR(400 Hz, CDCl3), δ8.04(s, 1H), δ7.47-7.23(d, 19H), 6.86-6.84(d, 4H), 6.30(t, 1H), 5.72-5.70(d, 1H), 4.91(m, 1H), 4.21(m, 1H), 3.92-3.89(m, 1H), 3.79(s, 6H), 3.56(m, 1H), 3.42(m, 2H), 3.18(m, 1H), 2.52(m, 1H), 2.33(m, 1H), 1.69-1.52(m, 5H), 1.26-1.20(m, 1H), 1.01-0.96(m, 1H)
31P NMR(400 Hz, CDCl3), δ156.01
【0078】
<化合物(Rp)-4aの合成>
化合物3a(530mg、1mmol)をピリジン、トルエンで繰り返し共沸し、テトラヒドロフラン5mL溶液とし、トリエチルアミン0.97mL(7mmol)を加えて混合し-78℃に冷却し、化合物L2(725mg)を溶解したテトラヒドロフラン(THF)6mLを滴下した後、室温で2時間攪拌した。その後、化合物(Sp)-4aの方法と同様の方法によって残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15gのNH-シリカゲル、富士シリシア社製)[展開溶媒:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン(70/30/0.1(v/v/v)]で分離精製後、溶媒を減圧留去することで、化合物(Rp)-4a(360mg、0.49mmol)を収率49%で得た。
【0079】
【化12】

【0080】
1H NMR(400 Hz, CDCl3), δ7.82-7.81(d, 1H), 7.38-7.23(m, 16H), 6.82-6.79(dd, 4H), 6.33-(t, 1H), 5.75-5.73(d, 1H), 5.31-5.29(d, 1H), 4.95(m, 1H), 4.11(m, 1H), 3.88(m, 1H), 3.77(s, 3H), 3.76(s, 3H), δ3.56(m, 1H), 3.48(dd, H), 3.44(dd, 1H), 3.19(m, 1H), 2.62(m, 1H), 2.34(m, 1H), 1.66(m, 4H), 1.32(m, 1H), 1.19(m, 1H), 0.94(m, 1H)
31P NMR(400 Hz, CDCl3), δ156.87
【0081】
<化合物(Rp)-4bの合成>
化合物3b(545mg、1mmol)をピリジン、トルエンで繰り返し共沸し、テトラヒドロフラン5mL溶液とし、トリエチルアミン0.97mL(7mmol)を加えて混合し-78℃に冷却し、化合物L2(725mg)を溶解したテトラヒドロフラン(THF)6mLを滴下した後、室温で2時間攪拌した。その後、化合物(Sp)-4aの方法と同様の方法によって残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15gのNH-シリカゲル、富士シリシア社製)[展開溶媒:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン(70/30/0.1(v/v/v)]で分離精製後、溶媒を減圧留去することで、化合物(Rp)-4b(350mg、0.35mmol)を収率47%で得た。
【0082】
【化13】

【0083】
<化合物(Rp)-4cの合成>
化合物3c(611mg、1mmol)をピリジン、トルエンで繰り返し共沸し、テトラヒドロフラン5mL溶液とし、トリエチルアミン0.97mL(7mmol)を加えて混合し-78℃に冷却し、化合物L2(725mg)を溶解したテトラヒドロフラン(THF)6mLを滴下した後、室温で2時間攪拌した。その後、化合物(Sp)-4aの方法と同様の方法によって残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15gのNH-シリカゲル、富士シリシア社製)[展開溶媒:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン(80/20/0.1(v/v/v)から0/100/0.1(v/v/v))]で分離精製後、溶媒を減圧留去することで、化合物(Rp)-4c(330mg、0.41mmol)を収率41%で得た。
【0084】
【化14】

【0085】
1H NMR(400 Hz, CDCl3), δ8.06(s, 1H), δ7.42-7.21(d, 19H), 6.83-6.80(d, 4H), 6.35(t, 1H), 5.74-5.72(d, 1H), 4.90(m, 1H), 4.15(m, 1H), 3.87-3.83(m, 1H), 3.76(s, 6H), 3.58(m, 1H), 3.39(m, 2H), 3.18(m, 1H), 2.65(m, 1H), 2.33(m, 1H), 1.64(m, 2H), 1.21-1.15(m, 1H), 0.99-0.91(m, 1H)
31P NMR(400 Hz, CDCl3), δ156.46
【0086】
<化合物(Rp)-4dの合成>
化合物3d(657mg、1mmol)をピリジン、トルエンで繰り返し共沸し、テトラヒドロフラン5mL溶液とし、トリエチルアミン0.97mL(7mmol)を加えて混合し-78℃に冷却し、化合物L2(725mg)を溶解したテトラヒドロフラン(THF)6mLを滴下した後、室温で2時間攪拌した。その後、化合物(Sp)-4aの方法と同様の方法によって残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15gのNH-シリカゲル、富士シリシア社製)[展開溶媒:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン(80/20/0.1(v/v/v)から0/100/0.5(v/v/v))]で分離精製後、溶媒を減圧留去することで、化合物(Rp)-4d(360mg、0.42mmol)を収率42%で得た。
【0087】
【化15】

【0088】
1H NMR(400 Hz, CDCl3), δ8.13 (s, 1H), δ7.43-7.16(d, 22H), 6.83-6.81(d, 4H), 6.34(t, 1H), 5.73-5.71(d, 1H), 4.89(m, 1H), 4.16(m, 1H), 3.85-3.05(m, 1H), 3.77(s, 6H), 3.61-3.55(m, 1H), 3.38(m, 2H), 3.20-3.14(m, 1H), 2.64(m, 1H), 2.32(m, 2H),1.64(m, 2H), 1.21(m, 3H), 1.19-1.15(m, 1H), 0.96-0.91(m, 1H)
31P NMR(400 Hz, CDCl3), δ156.23
【0089】
<化合物(Rp)-4eの合成>
化合物3e(531mg、1mmol)をピリジン、トルエンで繰り返し共沸し、テトラヒドロフラン5mL溶液とし、トリエチルアミン0.97mL(7mmol)を加えて混合し-78℃に冷却し、化合物L2(725mg)を溶解したテトラヒドロフラン(THF)6mLを滴下した後、室温で2時間攪拌した。その後、化合物(Sp)-4aの方法と同様の方法によって残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(17gのNH-シリカゲル、富士シリシア社製)[展開溶媒:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン(80/20/0.1(v/v/v)から0/100/0.1(v/v/v))]で分離精製後、溶媒を減圧留去することで、化合物(Rp)-4e(420mg、0.29mmol)を収率40%で得た。
【0090】
【化16】

【0091】
1H NMR(400 Hz, CDCl3), δ7.98(s, 1H), δ7.45-7.20(d, 19H), 6.82-6.80(d, 4H), 6.34(t, 1H), 5.74-5.72(d, 1H), 4.90(m, 1H), 4.15(m, 1H), 3.88-3.84(m, 1H), 3.77(s, 6H), 3.58(m, 1H), 3.38(m, 2H), 3.19(m, 1H), 2.65(m, 1H), 2.33(m, 1H), 1.71-1.61(m, 5H), 1.26-1.16(m, 1H), 0.99-0.92(m, 1H)
31P NMR(400 Hz, CDCl3), δ156.6
【0092】
(化合物5a、化合物5b及び化合物5eの準備)
以下、各オキサザホスホリジンモノマーの合成に用いる、5’-O-ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)-2’-デオキシシチジン(化合物5a)、5’-O-ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)-メチルシチジン(化合物5b)、5’-O-ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)-2’-デオキシヨードシチジン(化合物5d)及び5’-O-ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)-2’-デオキシプロピニルシチジン(化合物5e)は、文献[J.Am.Chem.Soc.,Vol.104,1316-1319]に記載の方法を参考に、2’-デオキシシジチン(TCI社製)、5’-メチルシチジン(米国登録特許4,754,026号に記載の方法によりチミジンから合成した社)、2’-デオキシブロモシチジン(和光純薬工業株式会社)、2’-デオキシヨードシチジン(和光純薬工業株式会社)から合成した。5’-O-ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)-2’-デオキシプロピニルシチジン(化合物5e)は、Tetrahedron Lett.,Vol.45,2457-2461に記載の方法を参考に5’-O-ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)-2’-デオキシヨードシチジン(化合物5d)から合成した。
【0093】
<化合物(Sp)-6aの合成>
化合物(Sp)-6aは、化合物3aに代えて化合物5a(0.96g、1.5mmol)を用いたこと以外は、上記した化合物(Sp)-4aの合成と同様にして、化合物(Sp)-6aを合成した。また、精製においてシリカゲルカラムクロマトグラフィーの条件を[展開溶媒:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン(80/20/0.1、v/v/v)]とした以外は、化合物(Sp)-4aの精製と同様にして無色の化合物(Sp)-6a(0.70g、0.84mmol、収率56%)を得た。
【0094】
【化17】

【0095】
<化合物(Sp)-6bの合成>
化合物(Sp)-6bは、化合物3bに代えて化合物5b(0.97g、1.5mmol)を用いた以外は、上記した化合物(Sp)-4bの合成と同様にして、化合物(Sp)-6bを合成および精製した。無色の(Sp)-6bを得た(0.74g、0.87mmol、収率58%)。
【0096】
【化18】

【0097】
1H NMR (300 MHz, CHCl3) δ 8.29 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 7.87 (s, 1H), 7.51-7.26 (m, 17H), 6.85 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 6.42 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 5.70 (d, J = 6.2 Hz, 1H), 4.98-4.90 (m, 1H), 4.22-4.21 (m, 1H), 3.93-3.85 (m, 1H), 3.79 (s, 6H), 3.60-3.37 (m, 3H), 3.22-3.08 (m, 1H), 2.56-2.45 (m, 1H), 2.44-2.35 (m, 1H), 1.76-1.56 (m, 5H), 1.29-1.16 (m, 1H), 1.04-0.95 (m, 1H)
31P NMR (161 MHz, CDCl3) δ 156.18. FAB-HR MS: Calcd. for [M+H]+; 853.3361. Found; 853.3364.
【0098】
<化合物(Sp)-6eの合成>
化合物(Sp)-6eは、化合物3eに代えて化合物5e(0.67g、1mmol)を用いたこと、および化合物D2の量を483mgに変更した以外は、上記した化合物(Sp)-4eの合成と同様にして、化合物(Sp)-6eを合成した。また、精製においてシリカゲルカラムクロマトグラフィーの条件を[展開溶媒:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン(90/10/0.5、v/v/vから80/20/0.5、v/v/v)]とした以外は、化合物(Sp)-4eの精製と同様に精製を行って、無色の化合物(Sp)-6eを得た(0.40g、0.45mmol、収率45%)。
【0099】
【化19】

【0100】
1H NMR (400 MHz, CHCl3) δ 8.33-8.23 (br, 3H), 7.53-7.23 (m, 17H), 6.85 (d, J = 8.8 Hz, 4H), 6.34-6.29 (m, 1H), 5.72 (d, J= 6.3 Hz, 1H), 4.95-4.89 (m, 1H), 4.24 (m, 1H), 3.94-3.87 (m, 1H), 3.78 (s, 6H), 3.61-3.51 (m, 1H), 3.49-3.38 (m, 2H), 3.23-3.14 (m, 1H), 2.65-2.59 (m, 1H), 2.42-2.35 (m, 1H), 1.72- 1.59 (m, 5H), 1.26 -1.18 (m, 1H), 1.03-0.94 (m, 1H)
31P NMR (161 MHz, CDCl3) δ 156.50. FAB-HR MS: Calcd. for [M+H]+; 877.3361. Found; 877.3364.
【0101】
<化合物(Rp)-6aの合成>
化合物(Rp)-6aは、化合物3aに代えて化合物5a(1.27g、2mmol)を用いたこと、及び化合物L2の量を967mgに変更した以外は、上記した化合物(Rp)-4aの合成と同様にして、化合物(Rp)-6aを合成した。また、精製においてシリカゲルカラムクロマトグラフィーの条件を[展開溶媒:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン(90/10/0.1、v/v/vから80/20/0.1、v/v/v)]とした以外は、化合物(Rp)-4aの精製と同様に精製を行って、無色の(Rp)-6aを得た(0.54g、0.65mmol、収率33%)。
【0102】
【化20】
【0103】
<化合物(Rp)-6bの合成>
化合物(Rp)-6bは、化合物3bに代えて化合物5b(0.97g、1.5mmol)を用いた以外は、上記した化合物(Rp)-4bの合成と同様にして、化合物(Rp)-6bを合成した。また、精製においてシリカゲルカラムクロマトグラフィーの条件を[展開溶媒:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン(90/10/0.1、v/v/vから80/20/0.1、v/v/v)]とした以外は、化合物(Rp)-4bと同様に精製を行って、無色の(Rp)-6bを得た(0.54g、0.63mmol、42%)。
【0104】
【化21】
【0105】
1H NMR (400 MHz, CHCl3) δ 8.29 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 7.81 (s, 1H), 7.50-7.23 (m, 17H), 6.81 (dd, J = 8.9, 2.1 Hz, 4H), 6.44 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 5.72 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 4.96-4.90 (m, 1H), 4.17-4.15 (m, 1H), 3.86-3.79 (m, 1H), 3.78 (s, 6H), 3.62-3.54 (m, 1H), 3.52-3.39 (m, 2H), 3.14-3.22 (m, 1H), 2.68 -2.62 (m, 1H), 2.43-2.35 (m, 1H), 1.67-1.57 (m, 5H), 1.19 -1.15 (m, 1H), 0.98-0.90 (m, 1H)
31P NMR (161 MHz, CDCl3) δ156.55. FAB-HR MS: Calcd. for [M+H]+; 853.3361. Found; 853.3361.
【0106】
<化合物(Rp)-6eの合成>
化合物(Rp)-6eは、化合物3eに代えて化合物5e(0.68g、1mmol)を用いたこと、および化合物L2の量を483mgに変更した以外は、上記した化合物(Rp)-4eの合成と同様にして、化合物(Rp)-6eを合成した。また、精製においてシリカゲルカラムクロマトグラフィーの条件を[展開溶媒:トルエン/酢酸エチル/トリエチルアミン(80/20/0.5、v/v/v)]とした以外は、化合物(Rp)-4eの精製と同様に精製を行って、無色の(Rp)-6eを得た(0.53g、0.60mmol、収率60%)。
【0107】
【化22】

【0108】
1H NMR (400 MHz, CHCl3) δ 8.25-8.22 (m, 3H), 7.55-7.20 (m, 17H), 6.81 (d, J = 8.8 Hz, 4H), 6.34 (t, J = 6.3 Hz, 1H), 5.73 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 4.93-4.87 (m, 1H), 4.19-4.18 (m, 1H), 3.90-3.83 (m, 1H), 3.76 (s, 7H), 3.63-3.53 (m, 1H), 3.40 (d, J = 2.9 Hz, 2H), 3.23-3.14 (m, 1H), 2.77-2.73 (m, 1H), 2.42-2.35 (m, 1H), 1.75 (s, 3H), 1.67-1.61- (m, 2H), 1.22-1.14 (m, 1H), 0.99-0.90 (m, 1H)
31P NMR (161 MHz, CDCl3) δ 156.65. FAB-HR MS: Calcd. for [M+H]+; 877.3361. Found; 877.3366.
【0109】
以上によって得られたオキサザホスホリジンモノマーの収率と純度を以下の表1に示す。なお、上記で得られたそれぞれの化合物の立体化学的純度は、いずれも99%以上であった。
【0110】
【表1】

【0111】
以上の結果から、すべてのモノマーが高い純度でかつ高い立体化学的純度で得られた。
【0112】
<RNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーの合成>
額賀らの文献[額賀陽平; 岡夏央; 前田雄介; 和田猛, リン原子の立体を制御したPS/POキメラオリゴヌクレオチドの固相合成, アンチセンス・遺伝子・デリバリーシンポジウム2014 講演予稿集, p. 52]及びOkaらの文献[J.Am.Chem.Soc.130,16031-16037]に記載の方法に従って、5’末端及び3’末端に天然型のCGの塩基配列を有するキメラオリゴマーであるホスホロチオエート型核酸オリゴマー(5’-CGTTTTTTTTCG-3’、12mer)、末端に天然型のATA及びTATの塩基配列を有するキメラオリゴマーであるホスホロチオエート型核酸オリゴマー(5’-ATACCCCCCTAT-3’、12mer)又はホスホロチオエート結合に代えてリン酸結合により結合する核酸オリゴマーを、上記で得られた各種オキサザホスホリジンモノマー等を用いて合成した。なお、ハロゲン修飾体であるモノマー((SP)-4C、(RP)-4C、(SP)-4d及び(RP)-4d)を用いる場合には、上記文献に記載の“ウルトラマイルド”の条件に従って合成を行った。
具体的な条件の一部を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
また、上記の合成方法によって得られた核酸オリゴマー(12量体)のうち全ては、次の逆相HPLC(RP-HPLC)にて分離精製した。RP-HPLC及び分離精製は、GE-Healthcare社製のHPLC装置(Box-900)に接続した逆相カラム(SOUCETM5RPC ST 5μm column(5μm,4.6mm×150mm))を用いて、室温、直線勾配5~26%アセトニトリルの0.1Mのトリエチルアンモニウム炭酸緩衝溶液(pH7.0)を溶離液とし用い、流速1.0ml/分の条件で行われた。
【0115】
以下、表3-1及び表3-2に、得られた核酸オリゴマー及びESI MSによる測定結果を示す。なお、表3-1及び表3-2のオリゴマーの名称中、「(Sp)」及び「(Rp)」は、オリゴマー中のホスホロチオエート結合の絶対立体配置がSp又はRpのどちらか一方であることを示す。
また、「ps」は、5-メチルウラシル基を有するヌクレオチド残基(T)同士、ウラシル基を有するヌクレオチド残基(U)同士、シチジル基を有するヌクレオチド残基(C)同士又は5位が修飾されたウラシル基を有するヌクレオチド残基同士もしくは5位が修飾されたシチジル基を有するヌクレオチド残基同士、がホスホロチオエート結合していることを示し、例えば、「(Ups)8」は、連続した8個のウラシル基を有するヌクレオチド残基同士が、ホスホロチオエート結合していることを示す。また、(Tps)8は、8個の連続した5-メチルウラシル基を有するヌクレオチド残基同士が、ホスホロチオエート結合していることを示し、(Cps)6は、6個の連続したシチジル基を有するヌクレオチド残基同士が、ホスホロチオエート結合していることを示し、(Cps)2は、2個の連続したシチジル基を有するヌクレオチド残基同士が、ホスホロチオエート結合していることを示す。(BrUps)8は、5位に臭素原子(Br)が結合した8個のウラシル基を有するヌクレオチド残基同士が、ホスホロチオエート結合していることを示し、(Ups)8は、5位にヨウ素原子(I)が結合した8個のウラシル基を有するヌクレオチド残基同士が、ホスホロチオエート結合していることを示し、(Ups)8は、5位にプロピニル基が結合した8個のウラシル基を有するヌクレオチド残基同士が、ホスホロチオエート結合していることを示し、(MeCps)6は、5位にメチル基(Me)が結合した6個のシチジル基を有するヌクレオチド残基同士が、ホスホロチオエート結合していることを示す。(Cps)2(Cps)2(Cps)2は、2個のシチジル基を有するヌクレオチド残基と、5位にプロピニル基が結合した2個のシチジル基を有するヌクレオチド残基と、2個のシチジル基を有するヌクレオチド残基とが、この順でホスホロチオエート結合していることを示す。
また、表3-1及び3-2中のすべてのオリゴマー中、CGはオリゴマーの5’位及び3’位に、シトシン(C)及びグアニン(G)の2残基が天然型で結合していることを示し、ATAまたはTATは、オリゴマーの5’位及び3’位に、アデニン(A)及びチミン(T)の3残基が天然型で結合していることを示す。
【0116】
【表3-1】
【0117】
【表3-2】
【0118】
ESI MSによる測定結果から、上記の番号1~18の核酸オリゴマー(以下、核酸オリゴマー1~18と称することがある)が得られたことが示された。得られた核酸オリゴマー1~18を、以下の実施例及び比較例(RNA又はDNAとの二重鎖の融解温度測定)等に供した。
【0119】
(mix-d(CG(Tps)8CG)の調製)
mix-d(CG(Tps)8CG)は、5’-O-ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)-2’-デオキシチミジンのホスホロアミダイトモノマー(Rp体及びSp体の1:1混合物、GlenRsearch社製)を用い、上記と同様の方法でホスホロチオエート型核酸オリゴマーを合成した。mix-d(CG(Tps)8CGにおいては、(Tps)8のTがランダムにRp体またはSp体である。
【0120】
(mix-d(CG(Ups)8CG)の調製)
mix-d(CG(Ups)8CG)は、5-プロピニル - 5’-O-ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)-2’-デオキシチミジンのホスホロアミダイトモノマー(Rp体及びSp体の1:1混合物、GlenRsearch社製)を用い、上記と同様の方法でホスホロチオエート型核酸オリゴマーを合成した。mix-d(CG(Ups)8CG)においては、(Ups)8のUがランダムにRp体またはSp体である。
【0121】
(リン酸結合型核酸オリゴマーの調製)
以下に示すリン酸結合型核酸オリゴマーを調製した。
・d(CG(U)8CG)
・d(CG(T)8CG)
・d(CG(BrU)8CG)
・d(CG(U)8CG)
・d(CG(U)8CG)
・d(ATA(C)6TAT)
・d(ATA(MeC)6TAT)
塩基に「ps」が付されていないことは、5-メチルウラシル基を有するヌクレオチド残基(T)同士、ウラシル基を有するヌクレオチド残基(U)同士、シチジル基を有するヌクレオチド残基(C)同士又は5位が修飾されたウラシル基を有するヌクレオチド残基同士もしくは5位が修飾されたシチジル基を有するヌクレオチド残基同士がリン酸結合していることを示し、例えば、「(U)8」は、連続した8個のウラシル基同士が、天然型であるリン酸結合で結合していることを示す。(T)8は、8個の連続した5-メチルウラシル基同士が、リン酸結合していることを示す。(C)6は、6個の連続したシチジル基同士が、リン酸結合していることを示す。(BrU)8は、5位に臭素原子(Br)が結合した8個のウラシル基同士がリン酸結合していることを示し、(U)8は、5位にヨウ素原子(I)が結合した8個のウラシル基同士がリン酸結合していることを示し、(U)8は、5位にプロピニル基が結合した8個のウラシル基同士がリン酸結合していることを示し、(MeC)6は、5位にメチル基が結合した6個のシチジル基同士がリン酸結合していることを示す。
【0122】
(標的核酸の調製)
標的核酸となる天然型のRNA及びDNAは、配列番号1~2に示す塩基配列のRNAオリゴマー(配列番号1)及びDNAオリゴマー(配列番号2)を、日本バイオサービス社の受託合成(HPLCグレード)により入手した。
【0123】
<評価>
<実施例1~5及び比較例1-1~5-3:各核酸オリゴマーとRNAの二重鎖、参考例1~8:各核酸オリゴマーとDNAの二重鎖における融解温度測定>
〔実施例1~5〕
以下の表3の実施例1~5に示す核酸オリゴマーのRp体(核酸オリゴマー2、4、6、9、10)の各々0.4nmolと、標的核酸(天然型相補鎖RNA)(配列番号1)の0.4nmolを10mM NaHPO-NaHPO、100mM NaCl 緩衝液(pH 7.0)160μLに溶かし、それぞれ、8連セルに140μL分を分注した。紫外可視分光光度計のセル温度を室温から5℃/minの速度で95℃まで上昇させた後、95℃の状態を5分間保持し、-0.5℃/分の速度で0℃になるまで温度を下降させ、アニーリングを行なった。オリゴマー溶液をそのまま0℃で30間分静置した後、核酸オリゴマー溶液をセルに入れ、窒素雰囲気下、0.5℃/minの速度で95℃まで温度を上昇させながら、0.25℃間隔で260nmにおける吸光度を測定し、融解曲線を得た。得られた二重鎖融解曲線から中線法により、Tm値を算出した。
【0124】
〔比較例1-1~5-3〕
核酸オリゴマーのRp体(核酸オリゴマー2、4、6、9、10)を核酸オリゴマーのSp体(核酸オリゴマー1、3、5、7、8)又はリン酸結合型核酸オリゴマーに変更した以外は、実施例1~5と同様にして測定を行い、表3の比較例1-1~5-3に示す通り、二重鎖融解温度(Tm)を得た。
【0125】
測定結果を図1に示す。図1(A)は、核酸オリゴマーのSp体(核酸オリゴマー1、3、5、7、8)と天然型相補鎖RNAとの二重鎖の融解曲線を示し、図1(B)は、核酸オリゴマーのRp体(核酸オリゴマー2、4、6、9)と天然型相補鎖RNAとの二重鎖の融解曲線を示す。これらの融解曲線から、二重鎖融解温度(Tm)を得た。なお、融解温度(Tm)は、中線法で求めた。具体的には、得られた融解曲線の前遷移領域及び後遷移領域にそれぞれにおいて2点を指定し、回帰計算によりベースラインを求め、2つのベースラインの中線と融解曲線との交点を融解温度とした。その結果を表3に示す。また、ΔTm(Rp-Sp)とは、Rp体である核酸オリゴマーのTmと、Sp体である核酸オリゴマーのTmとの温度差を示す。ΔTm(ps-po)は、Rp体またはSp体であるホスホロチオエート結合オリゴマーのTmと、リン酸結合オリゴマーのTmとの温度差を示す。なお、ランダム核酸オリゴマー10(mix-PS-dT)、mix-d(CG(Tps)8CG及びmix-d(CG(Ups)8CGについても上記同様に二重鎖融解温度(Tm)を得た。
【0126】
〔参考例1~8〕
参考例1~4及び参考例6~8は、実施例1~5において、核酸オリゴマーのRp体(核酸オリゴマー2、4、6)を、核酸オリゴマーのSp体(核酸オリゴマー1、3、5、7)に変更し、さらに標的核酸である天然型相補鎖RNAを、天然型相補鎖DNA(配列番号2)に変更した以外は実施例1~5と同じにして、実施例1~5と同様に測定を行い、表3の参考例1~4及び参考例6~8にあるように、二重鎖融解温度(Tm)を得た。また、参考例5については、上記で合成したmix-d(CG(Tps)8CG)を用いて、上記参考例1~4等と同様に、測定を行い、表3の参考例5にあるように、二重鎖融解温度(Tm)を得た。また、参考例1~4及び参考例6~8のTm値の算出に用いた融解曲線の結果を図2に示す。図2(A)は、核酸オリゴマーのSp体(核酸オリゴマー1、3、5、7、8)と天然型相補鎖DNAとの二重鎖の融解曲線を示し、図2(B)は、核酸オリゴマーのRp体(核酸オリゴマー2、4、6、9)と天然型相補鎖DNAとの二重鎖の融解曲線を示す。
【0127】
【表4】

【0128】
表4に示すように、標的核酸をRNAとした実施例1~5は、比較例1-1~5に比べてそれぞれ高いTm値を示した。特に、Rp体である実施例5では、Sp体である比較例5-1に比べて顕著にTm値が高いことが示された。また、実施例5は、リン酸結核酸オリゴマーである比較例5-2、及び、ホスホロチオエート型核酸オリゴマーとして通常使用されているRp体のヌクレオチドとSp体のヌクレオチドとが混合した核酸オリゴマーよりもTm値が高いことも示された。従って、プロピニル基が結合したピリミジン塩基を含むホスホロチオエート型核酸オリゴマー(Rp体)がより二重鎖形成能が高いことが示された。また、実施例1~4は天然型の核酸オリゴマーよりTm値は低いが、従来型のホスホロチオエート型核酸オリゴマーより二重鎖形成能が高く、かつ、天然型の核酸オリゴマーより顕著に高い安定性を有しており、核酸医薬として優れた特性を有している。
これに対して、標的核酸をDNAとした参考例1~8では、Rp体のTm値とSpのTm値が同程度であり、さらに、参考例1~4及び6~7では、むしろRp体のTm値がSpのTm値よりも若干低下していることが示された。
【0129】
〔実施例6~9〕
表3に示した、以下のRp体のホスホロチオエート型核酸オリゴマーのESI MSによる測定結果を示す。
・(Rp)-d(ATA(Cps)6TAT)(核酸オリゴマー11、実施例6)
ESI-HR MS: Calcd. for [M]3-; 1205.49151. Found; 1205.49124.
・(Rp)-d(ATA(MeCps)6TAT)(核酸オリゴマー13、実施例7)
ESI-HR MS: Calcd. for [M]3-; 1233.52281. Found; 1233.52511.
・(Rp)-d(ATA(Cps)6TAT)(核酸オリゴマー15、実施例8)
ESI-HR MS: Calcd. for [M]4-; 960.89029. Found; 960.89180.
・(Rp)-d(ATA(Cps)2(Cps)2(Cps)2TAT)(核酸オリゴマー17、実施例9)
ESI-HR MS: Calcd. for [M]3-; 1230.83527. Found; 1230.83978.
【0130】
実施例1~5に用いられた核酸オリゴマー(核酸オリゴマー2、4、6、9、10)に代えて実施例6、7または9の核酸オリゴマー(核酸オリゴマー11、13、17)に変更したこと、およびTm値測定の際に、0.5℃/minの速度で95℃まで温度を上昇させるのではなく0.2℃/minの速度で95℃まで温度を上昇させたこと以外は実施例1~5と同様にして測定を行い、二重鎖融解温度(Tm)を得た。
【0131】
〔比較例6-1~9-1〕
上述に記載した、以下に示すSp体のホスホロチオエート型核酸オリゴマーのESI MSによる測定結果を示す。
・(Sp)-d(ATA(Cps)6TAT)(核酸オリゴマー12、比較例6-1)
ESI-HR MS:Calcd.for[M]3-;1205.49151.Found;1205.49371.
・(Sp)-d(ATA(MeCps)6TAT)(核酸オリゴマー14、比較例7-1)
ESI-HR MS:Calcd.for[M]3-;1233.52281.Found;1233.52225.
・(Sp)-d(ATA(pCps)6TAT)(核酸オリゴマー16、比較例8-1)
ESI-HR MS:Calcd.for[M]3-;1281.52281.Found;1281.52197.
・(Sp)-d(ATA(Cps)2(pCps)2(Cps)2TAT)(核酸オリゴマー18、比較例9-1)
ESI-HR MS:Calcd.for[M]3-;1230.83527.Found;1230.83793.
【0132】
実施例1~5に用いられた核酸オリゴマー(核酸オリゴマー2、4、6、9、10)に代えて比較例6-1、7-1または9-1の核酸オリゴマー(核酸オリゴマー12、14、18)に変更した以外は実施例1~5と同様にして測定を行い二重鎖融解温度(Tm)を得た。結果を表5に示す。
【0133】
〔比較例6-2及び7-2〕
(リン酸型核酸オリゴマーのTm測定)
実施例1~5に用いられた核酸オリゴマー(核酸オリゴマー2、4、6、9、10)に代えてリン酸型核酸オリゴマーであるd(ATA(C)6TAT)又はd(ATA(MeC)6TAT)に変更した以外は実施例1~5と同様にして測定を行い、二重鎖融解温度(Tm)を得た。結果を表5に示す。
【0134】
【表5】
【0135】
実施例6、7および9のRp体のホスホロチエート型核酸オリゴマーでは、Sp体のホスホロチエート型核酸オリゴマー(比較例6-1、7-1および9-1)より二重鎖形成能が顕著に高かった。また、実施例6および7のRp体のホスホロチエート型核酸オリゴマーは、天然型のリン酸結合核酸オリゴマーと比較して、同等かそれ以上の二重鎖形成能を有していた。
実施例6、比較例6-1および比較例6-2の二重鎖融解曲線を図3Aに示す。実施例7、比較例7-1および比較例7-2の二重鎖融解曲線を図3Bに示す。実施例9および比較例9-1の二重鎖融解曲線を図3BC示す。
【0136】
このように、RNAハイブリッド形成用のホスホロチオエート型核酸オリゴマーにおいては、絶対立体配置がRpであることで有意に高いTm値、すなわち二重鎖形成能の向上をもたらすことが示された。すなわち、二重鎖形成能に優れたRNAハイブリッド形成用核酸オリゴマーを提供できることが示された。
【0137】
2016年3月9日に出願された日本国特許出願2016ー046181の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
本発明の例示的実施形態についての以上の記載は例示および説明の目的でされたものであり、網羅的であることあるいは発明を開示されている形態そのものに限定することを意図するものではない。明らかなことではあるが、多くの改変あるいは変更が当業者には自明である。上記実施形態は発明の原理及び実用的応用を最もうまく説明し、想定される特定の用途に適するような種々の実施形態や種々の改変と共に他の当業者が発明を理解できるようにするために選択され、記載された。本発明の範囲の範囲は以下の請求項およびその均等物によって規定されることが意図されている。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
【配列表】
0007039800000001.app