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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】舗装管理支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20120101AFI20220315BHJP
   G06Q 50/26 20120101ALI20220315BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20220315BHJP
   E01C 23/01 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
G06Q50/26
G06Q50/08
E01C23/01
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017157761
(22)【出願日】2017-08-18
(65)【公開番号】P2019036182
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100158883
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 哲平
(72)【発明者】
【氏名】花村 嗣信
(72)【発明者】
【氏名】田島 朋樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 明
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 伸栄
【審査官】緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-089593(JP,A)
【文献】特開2008-116294(JP,A)
【文献】特開2005-182646(JP,A)
【文献】特開2007-026338(JP,A)
【文献】特開2009-015727(JP,A)
【文献】特開2016-133933(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018031(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
E01C 23/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路線を延長方向に分割して得られる区間ごとに、舗装の補修又は修繕の計画を行うための評価指標を設定する舗装管理支援システムであって、
対象区間の舗装の劣化度を示す劣化度評点を、MCIの値に基づいて決定する劣化度決定手段と、
対象区間の舗装の重要度を示す重要度評点を、必須評価項目と選択評価項目に基づいて決定する重要度決定手段と、
前記選択評価項目を取捨選択する評価項目選択手段と、
あらかじめ設定された算式に前記劣化度評点と前記重要度評点を与えて、対象区間の総合評点を算出する総合評点算出手段と、を備え、
前記必須評価項目及び前記選択評価項目にはそれぞれ2以上の区分が設定されるとともに、該区分には数値が付与され、
前記必須評価項目及び該必須評価項目に係る前記区分がユーザに提示されるととともに、該ユーザが前記評価項目選択手段を用いて選択した前記選択評価項目及び該選択評価項目に係る前記区分が該ユーザに提示され、
前記重要度決定手段は、提示された前記必須評価項目の前記区分のうち前記ユーザによって選別された該区分に対応する数値を得るとともに、提示された前記選択評価項目の前記区分のうち該ユーザによって選別された該区分に対応する数値を得たうえで、該必須評価項目及び該選択評価項目の数値を集計することで、前記重要度評点を決定する、
ことを特徴とする舗装管理支援システム。
【請求項2】
前記路線内にある前記区間の前記総合評点を集計することによって、該路線に対する優先度を設定する、
ことを特徴とする請求項1記載の舗装管理支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、道路舗装の維持管理に関するものであり、より具体的には、舗装の補修又は修繕計画の立案を支援する舗装管理支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高度経済成長期に集中的に整備されてきた建設インフラストラクチャー(以下、「建設インフラ」という。)は、既に相当な老朽化が進んでいることが指摘されている。平成26年には「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言(社会資本整備審議会)」がとりまとめられ、平成24年の笹子トンネルの例を挙げて「近い将来、橋梁の崩落など人命や社会装置に関わる致命的な事態を招くであろう」と警鐘を鳴らし、建設インフラの維持管理の重要性を強く唱えている。
【0003】
このような背景のもと、国は道路法施行規則の一部を改正する省令を公布し、具体的な建設インフラの点検方法、主な変状の着目箇所、判定事例写真などを示した定期点検要領を策定している。特に道路舗装に関しては、舗装の長寿命化・ライフサイクルコストの削減を目指し、さらに効率的に修繕を行うことを目的として、「舗装点検要領」が提示された。
【0004】
この舗装点検要領では、点検の方法、健全性の診断、措置、記録について規定しており、このうち点検方法では、「ひび割れ率」、「わだち掘れ」、「IRI(International Roughness Index:国際ラフネス指標)」の3指標を基本に管理基準を設定することとしている。そして、点検により得られた情報をこの管理基準に照らし合わせることで、対象となる舗装の健全性を診断する旨規定している。
【0005】
すなわち舗装点検要領では「ひび割れ率」と「わだち掘れ」、「IRI」の結果に基づいて舗装の健全性を診断することしているが、これまで舗装の損傷の程度(以下、「劣化度」という。)は、「ひび割れ率」と「わだち掘れ」、「平たん性」によって算出されるMCI(Maintenance Control Index:舗装の維持管理指数)をもとに評価するのが主流であった。例えば特許文献1でもMCIを算出することを前提として、「ひび割れ率」と「わだち掘れ」、「平たん性」を計測する手法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-116294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
点検や計測によって舗装の劣化度が把握されると、必要に応じて舗装の補修や修繕が行われる。例えば舗装点検要領では、点検結果と管理基準を比較することで、舗装の劣化度を「レベル小」、「レベル中」、「レベル大」のいずれかで評価し、レベル小であればその状態は「健全」、レベル中であればその状態は「表層機能保持段階」、レベル大であればその状態は「修繕段階」と位置づけている。一方、MCIに基づいて評価するケースでは、MCIの値に応じて舗装の劣化度を判断し、その値が所定の基準を下回るものを補修又は修繕対象としていた。
【0008】
ところで、点検や計測を行うと通常は数多くの要補修箇所や要修繕箇所が検出される。この場合、全ての箇所を同時に補修し修繕することは現実的でないため、優先度を設定したうえで順次対策が行われる。従来、要補修箇所や要修繕箇所の優先度を決定するにあたっては、舗装の劣化度のみを判断材料とする傾向にあった。具体的には、MCIの値が小さいほど優先的に対策を行うこととしていたわけである。また、先の舗装点検要領でも、劣化度の著しい「修繕段階」にある区間から優先的に対策が行われることになる。
【0009】
しかしながら道路は、交通量が多いもの、バス路線となっているもの、あるいはその沿線に病院や教育施設があるものといったようにそれぞれ重要度が異なる。したがって、劣化度のみをもって、対策を行う優先度を決定することは必ずしも適切ではない。本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち舗装の劣化度に加え道路の重要性も考慮したうえで、対策の優先度を決定することができる舗装管理支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、舗装の劣化度に加え道路の重要性も考慮したうえで対策の優先度を決定するという点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0011】
本願発明の舗装管理支援システムは、区間(路線を延長方向に分割して得られる小領域)ごとに舗装の修繕(又は補修)計画を行うための評価指標を設定するものであり、劣化度決定手段と、重要度決定手段、総合評点算出手段を備えたシステムである。このうち劣化度決定手段は、対象区間の舗装の劣化度を示す「劣化度評点」をMCIの値に基づいて決定する手段であり、重要度決定手段は、対象区間の舗装の重要度を示す「重要度評点」を2以上の「評価項目」に基づいて決定する手段であり、総合評点算出手段は、あらかじめ設定された算式に劣化度評点と重要度評点を与えて対象区間の「総合評点」を算出する手段である。なお、各評価項目にはそれぞれ2以上の「区分」が設定され、さらにこの区分には数値が付与されており、重要度決定手段は、評価項目ごとに対象区間に相当する区分を選出し、その区分に対応する数値を集計することで重要度評点を決定する。
【0012】
本願発明の舗装管理支援システムは、さらに評価項目選択手段を備えたものとすることもできる。この場合、2以上用意された評価項目は「必須評価項目」と「選択評価項目」で構成される。そして重要度決定手段は、必須評価項目と、評価項目選択手段で選出された選択評価項目に基づいて重要度評点を決定する。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の舗装管理支援システムには、次のような効果がある。
(1)舗装の劣化度に加え路線の重要度も考慮するため、より合理的に対策の優先度を決定できるうえ、社会的な要求に応えることができる。
(2)評価項目を必須評価項目と選択評価項目で構成することによって、選択評価項目の取捨が可能となり、その結果その地域に応じた優先度を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願発明の舗装管理支援システムを示すブロック図。
図2】劣化度評点テーブルの例を示すモデル図。
図3】選択評価項目の重要度評点テーブルを示すモデル図。
図4】必須評価項目の重要度評点テーブルを示すモデル図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願発明の舗装管理支援システムの実施形態の例を図に基づいて説明する。
【0016】
(全体概要)
本願発明の舗装管理支援システムは、道路舗装の補修又は修繕の実施計画を支援するものであり、より具体的には、路線を延長方向に分割した小領域(以下、「区間」という。)ごとに評点を与えることで、優先的に実施すべき対象の決定を支援するものである。なお、「補修」とは、現状の舗装の機能を維持するための比較的簡易な措置であって原則として表層は更新しない対策であるのに対して、一方の「修繕」は、切削オーバーレイや打換など当初の機能まで回復させる措置であって原則として表層を更新する対策である。ここでは便宜上、補修と修繕を合わせて「修繕等」ということとする。
【0017】
上記のとおり、舗装管理支援システムでは区間ごとに評点を与える。この評点に基づいて、補修等を実施する優先性の度合い(以下、「優先度」という。)を設定するわけであるが、このとき区間そのものに対して優先度を設定してもよいし、路線内の区間の評点を集計することで路線に対して優先度を設定することもできる。以下、図1を参照しながら、本願発明の舗装管理支援システム100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。図1は、舗装管理支援システム100を示すブロック図である。
【0018】
(劣化度決定手段)
図1に示す劣化度決定手段101は、MCIの値に基づいて、対象とする区間(以下、単に「対象区間」という。)の「劣化度評点」を決定する手段である。既述したとおりMCIは「ひび割れ率」と「わだち掘れ」、「平たん性」によって算出される値であり、劣化度評点は対象区間の舗装の劣化度を示す値であって、MCIと劣化度評点は劣化度評点テーブルによって関連付けられている。この劣化度評点テーブルは、MCIを複数のレンジ(範囲)に分けるとともに、各レンジに対して劣化度評点を与えたものであり、例えば図2に示す劣化度評点テーブルでは、3つのレンジに分けたMCIに対してそれぞれ劣化度評点を付与している。
【0019】
対象区間のMCIが入力されると、劣化度決定手段101は重要度評点記憶手段102に記憶された劣化度評点テーブルに照会し、当該MCIに対応する劣化度評点を取得する。そして、ここで取得された対象区間の劣化度評点は、後述する総合評点算出手段107に渡される。
【0020】
(重要度決定手段)
重要度決定手段105は、2以上の評価項目に基づいて、対象区間の「重要度評点」を決定する手段である。評価項目には2以上の区分が設定されており、また各区分にはそれぞれ基礎点(数値)が与えられている。2以上の評価項目それぞれに対して対象区間に合致する区分を選択し、選択された区分に対応する基礎点を集計して総得点を算出し、そしてこの総得点に基づいて重要度評点が決定される。ここで決定された対象区間の重要度評点は、後述する総合評点算出手段107に渡される。
【0021】
2以上の評価項目は、必須評価項目と選択評価項目の2種類で構成することもできる。必須評価項目は必ず評価される(その区分が選択される)項目であって、一方の選択評価項目はユーザによって評価すべきか否か取捨選択される項目である。したがってこの場合の舗装管理支援システム100は、選択評価項目を取捨する評価項目選択手段103を備えている。具体的には、選択評価項目記憶手段104に記憶されている選択評価項目から、評価項目選択手段103を用いてユーザが所望する選択評価項目を抽出する。このとき、1又は2以上の選択評価項目を抽出することもできるし、全てを選択しない(つまり選択評価項目を0とする)こともできる。
【0022】
所望の選択評価項目が選択されると重要度決定手段105は、重要度評点記憶手段106が記憶している重要度評点テーブルに照会する。図3は選択評価項目の重要度評点テーブルを示すモデル図であり、図4は必須評価項目の重要度評点テーブルを示すモデル図である。なお図3図4に示す項目はあくまで例示であり、その項目が適宜設定できることはいうまでもない。以下、選択評価項目の選択から重要度評点の決定まで、一連の処理の流れについて具体的に説明する。
【0023】
例えば、選択評価項目記憶手段104には図3に示す選択評価項目(将来道路網、用途地域、接続道路、駅周辺)が記憶されており、評価項目選択手段103を用いて「将来道路網」と「接続道路」を選択したとする。重要度決定手段105は、「将来道路網」と「接続道路」をもって重要度評点記憶手段106が記憶している選択評価項目の重要度評点テーブル(図3)に照会するとともに、同じく重要度評点記憶手段106が記憶している必須評価項目の重要度評点テーブル(図4)に照会する。そして、図3に示す選択評価項目のうちユーザによって選択された「将来道路網」の各区分(骨格幹線道路に該当/都市幹線道路に該当/補助幹線道路に該当)と、「接続道路」の各区分(有り/なし)がユーザに提示される。同様に、図4に示す全ての必須評価項目の区分もユーザに提示される。ここでは、必須評価項目「道路」の各区分(3種(1~2級)/3種(3~5級)/4種(1~2級)/4種(3~4級))と、「バス路線」の各区分(該当/非該当)、「病院」の各区分(有り/なし)、「教育施設」の各区分(有り/なし)、「苦情・要望」の各区分(有り/なし)が提示されるわけである。
【0024】
選択評価項目と区分、必須評価項目と区分が提示されると、ユーザは対象区間に合致する区分をそれぞれ選別していく。そして重要度決定手段105は、選別された区分に対応する基礎点を取得し、選択評価項目と必須評価項目すべての基礎点を集計して重要度評点を決定する。なお、重要度評点の算出は、すべての基礎点を単に合計してもよいし、あらかじめ評価項目ごとに設定した「重み」を乗じたうえで合計してもよい。
【0025】
劣化度評点と重要度評点が得られると、総合評点算出手段107が総合評点を算出する。この総合評点は、劣化度評点と重要度評点の合計としてもよいし、それぞれに係数(重み)を乗じたうえで劣化度評点と重要度評点の合計としてもよい。係数を乗じて合計する場合、重要度評点よりも劣化度評点の係数を大きな値とすることもできるし、もちろんその逆とすることもできる。また、劣化度評点が0である場合は、そもそも修繕等を行う必要がなく優先度は低く設定すべきと考えることもできるため、重要度評点にかかわらず総合評点を0とすることとしてもよい。
【0026】
総合評点算出手段107で算出された総合評点は、総合評点記憶手段108に記憶される。そして優先度決定手段109が、総合評点記憶手段108から各区間の総合評点を読み出して、優先度を決定する。既述したとおり優先度の決定にあたっては、区間の総合評点に基づいて区間ごとに優先度を決定してもよいし、その路線にあるすべての区間の総合評点に基づいて路線ごとに優先度を決定してもよい。ここで決定された優先度は、ディスプレイやプリンタなどの出力手段110で出力することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本願発明の舗装管理支援システムは、国や地方自治体をはじめとする道路管理者にとって特に有用である。本願発明が、利用者にとって好適な道路状態(路面性状)を提供するだけでなく、舗装の長寿命化やライフサイクルコストの削減につながることを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献が期待できる発明といえる。
【符号の説明】
【0028】
100 舗装管理支援システム
101 劣化度決定手段
102 重要度評点記憶手段
103 評価項目選択手段
104 選択評価項目記憶手段
105 重要度決定手段
106 重要度評点記憶手段
107 総合評点算出手段
108 総合評点記憶手段
109 優先度決定手段
110 出力手段
図1
図2
図3
図4