IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-光学素子の駆動方法 図1
  • 特許-光学素子の駆動方法 図2
  • 特許-光学素子の駆動方法 図3
  • 特許-光学素子の駆動方法 図4
  • 特許-光学素子の駆動方法 図5
  • 特許-光学素子の駆動方法 図6
  • 特許-光学素子の駆動方法 図7
  • 特許-光学素子の駆動方法 図8
  • 特許-光学素子の駆動方法 図9
  • 特許-光学素子の駆動方法 図10
  • 特許-光学素子の駆動方法 図11
  • 特許-光学素子の駆動方法 図12
  • 特許-光学素子の駆動方法 図13
  • 特許-光学素子の駆動方法 図14
  • 特許-光学素子の駆動方法 図15
  • 特許-光学素子の駆動方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】光学素子の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/133 20060101AFI20220315BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALI20220315BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
G02F1/133 550
G02F1/133 505
G02F1/1347
G02F1/13 505
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020506155
(86)(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 KR2018011367
(87)【国際公開番号】W WO2019066456
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-02-07
(31)【優先権主張番号】10-2017-0127823
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リム、ウン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】オー、ドン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジュン スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ホン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ナム フン
(72)【発明者】
【氏名】ジム、ミン ジュン
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-142047(JP,A)
【文献】特開平09-197429(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0070132(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0314624(US,A1)
【文献】特開2013-114030(JP,A)
【文献】特開2002-122843(JP,A)
【文献】特開2018-116274(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0015818(US,A1)
【文献】特開2007-078860(JP,A)
【文献】特開2003-167253(JP,A)
【文献】特開平11-242225(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008678(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0007804(KR,A)
【文献】特開2000-284223(JP,A)
【文献】特開2012-150380(JP,A)
【文献】特表2018-510382(JP,A)
【文献】特開昭55-166619(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0219910(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/133
G02F 1/1347
G02F 1/13
G09G 3/18
G09G 3/36
G02B 27/01 - 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶化合物を含み、光軸の配向が垂直または水平配向状態である第1状態と前記第1状態とは異なる光軸配向を有する第2状態の間をスイッチングする能動液晶層を含む光学素子の駆動方法であって、
前記能動液晶層の厚さは4μm以上であり、
第1状態電圧と第2状態電圧は下記の数式1の関係を有し、
前記第1状態電圧を印加した前記第1状態にある前記能動液晶層に前記第2状態電圧を印加して第2状態にスイッチングする段階を含み、
前記第2状態電圧を印加する前に下記の数式2を満足する中間電圧を印加する段階を含み、
中間電圧の印加電圧は交流電圧であり、
前記交流電圧の周波数が40Hz~100Hzの範囲内であり、
前記中間電圧を0.2秒~10秒の間印加する、
駆動方法:
[数式1]
<V
[数式2]
VT≦VM<VB
数式1および2において、Vは前記第1状態電圧であり、Vは前記第2状態電圧であり、VTは臨界電圧であり、VBはバックフロー電圧であり、VMは前記中間電圧であり、
前記第1状態電圧は下記の数式3を満足し、
前記臨界電圧は下記の数式4を満足し、
前記バックフロー電圧は下記の数式5を満足し、
前記中間電圧は下記の数式6を満足し、
前記中間電圧を下記の数式7を満足する維持時間の間印加し、
[数式3]
0≦V <2×VT
数式3において、V は前記第1状態電圧であり、VTは前記臨界電圧であり、
[数式4]
VT=0.05×V ~0.2×V
数式4において、VTは前記臨界電圧であり、V は前記第2状態電圧であり、
[数式5]
VB=0.3×V ~0.7×V
数式5において、VBは前記バックフロー電圧であり、V は前記第2状態電圧であり、
[数式6]
VM=0.15×V ~0.5×V
数式6において、VMは前記中間電圧であり、V は前記第2状態電圧であり、
[数式7]
0.3×T 12 ≦TM≦1.2×T 12
数式7でTMは中間電圧維持時間であり、T 12 は、前記臨界電圧で前記中間電圧を印加した時に応答速度グラフで90%の透過率変動が発生するのに要求される時間である。
【請求項2】
前記能動液晶層は二色性染料ゲストをさらに含む、請求項1に記載の駆動方法。
【請求項3】
前記臨界電圧は0.5V~3Vの範囲内である、請求項1または2に記載の駆動方法。
【請求項4】
前記第2状態電圧は10V~30Vの範囲内である、請求項1からのいずれか一項に記載の駆動方法。
【請求項5】
液晶化合物を含み、光軸の配向が垂直または水平配向状態である第1状態と前記第1状態とは異なる光軸配向を有する第2状態の間をスイッチングする能動液晶層および前記能動液晶層に電圧を印加することができる電源装置を含み、
前記能動液晶層の厚さは4μm以上であり、
前記電源装置は、少なくとも下記の数式1および2を満足する第1状態電圧印加状態、中間電圧印加状態および第2状態電圧印加状態が具現され得るように設定されていて、
中間電圧の印加電圧は交流電圧であり、
前記交流電圧の周波数が40Hz~100Hzの範囲内であり、
前記中間電圧を0.2秒~10秒の間印加する、
光学素子:
[数式1]
<V
[数式2]
VT≦VM<VB
数式1および2において、Vは第1状態電圧であり、Vは第2状態電圧であり、VTは臨界電圧であり、VBはバックフロー電圧であり、VMは中間電圧であり、
前記第1状態電圧は下記の数式3を満足し、
前記臨界電圧は下記の数式4を満足し、
前記バックフロー電圧は下記の数式5を満足し、
前記中間電圧は下記の数式6を満足し、
前記中間電圧を下記の数式7を満足する維持時間の間印加し、
[数式3]
0≦V <2×VT
数式3において、V は前記第1状態電圧であり、VTは前記臨界電圧であり、
[数式4]
VT=0.05×V ~0.2×V
数式4において、VTは前記臨界電圧であり、V は前記第2状態電圧であり、
[数式5]
VB=0.3×V ~0.7×V
数式5において、VBは前記バックフロー電圧であり、V は前記第2状態電圧であり、
[数式6]
VM=0.15×V ~0.5×V
数式6において、VMは前記中間電圧であり、V は前記第2状態電圧であり、
[数式7]
0.3×T 12 ≦TM≦1.2×T 12
数式7でTMは中間電圧維持時間であり、T 12 は、前記臨界電圧で前記中間電圧を印加した時に応答速度グラフで90%の透過率変動が発生するのに要求される時間である。
【請求項6】
請求項に記載された光学素子および前記光学素子に含まれる能動液晶層と重なり配置される第2能動液晶層または受動偏光層を含む、透過率可変装置。
【請求項7】
左目用レンズと右目用レンズおよび前記左目用レンズと前記右目用レンズを支持するフレームを含むアイウェアであって、
前記左目用レンズおよび前記右目用レンズはそれぞれ請求項に記載された光学素子を含む、アイウェア。
【請求項8】
増強現実体験用機器である、請求項に記載のアイウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、光学素子の駆動方法に関するものである。
【0002】
本出願は2017年9月29日付韓国特許出願第10-2017-0127823号に基づいた優先権利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
主に液晶化合物であるホスト(Liquid Crystal Host)と二色性染料ゲスト(dichroic dye guest)の混合物を適用した、いわゆるGHセル(Guest host cell)を使った透過率可変装置は公知である(例えば、特許文献1:ヨーロッパ公開特許第0022311号)。
【0004】
このような透過率可変装置は、サングラスなどのメガネ類(eyewear)や建物の外壁、車両のサンルーフなどを含む多様な用途に適用されている。最近ではいわゆる増強現実(AR、Augmented Reality)の体験のためのメガネ類にも前記透過率可変装置の適用が検討されている。
【0005】
このような透過率可変装置は、GHセル内の二色性染料ゲストの配向を調節して透過率を調節することになり、例えば、液晶化合物の配向を垂直配向状態と水平配向状態の間でスイッチングすることによって透過率を調節する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、光学素子の駆動方法を提供することを目的とする。一例示において、本出願は液晶層のセルギャップ(cell gap)が厚くなる場合にも、バルク液晶化合物(Bulk Liquid Crystal Compound)によるバックフロー(back flow)現象を抑制することができ、優秀な応答速度および駆動特性が確保され得る光学素子の駆動方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は光学素子の駆動方法およびそのような駆動方法が適用され得る光学素子に関するものである。本出願の前記光学素子は、その単独であるいは他の要素と組み合わせて透過率可変装置を形成することができる。本明細書で用語「透過率可変装置」は、高い透過率の状態および低い透過率の状態の間をスイッチングできるように設計された装置を意味し得る。
【0008】
本明細書で前記高い透過率の状態は透過状態と呼称され得、低い透過率の状態は遮断状態と呼称され得る。
【0009】
前記透過状態は、例えば、前記装置の透過率が40%以上である状態を意味し得、遮断状態は前記装置の透過率が10%以下である状態を意味し得る。
【0010】
前記透過状態での透過率は数値が高いほど有利であって、遮断状態での透過率は低いほど有利であるため、それぞれの上限と下限は特に制限されない。一例示において、前記透過状態での透過率の上限は約100%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%または約60%であり得る。前記透過状態での透過率は他の例示において約45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上であり得る。前記遮断状態での透過率の下限は約0%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%または約10%であり得る。
【0011】
前記透過率は直進光透過率であり得る。用語「直進光透過率」は、所定方向に透過率可変装置を入射した光対比前記入射方向と同じ方向に前記透過率可変装置を透過した光(直進光)の比率であり得る。一例示において、前記透過率は、前記透過率可変装置の表面法線と平行な方向に入射した光に対して測定した結果(法線光透過率)であるか、あるいは前記表面法線と0度を超過し、20度以内の角度をなす方向に入射した光に対して測定した結果(傾斜光透過率)であり得る。前記傾斜光透過率の測定のために入射する光の方向が前記表面法線となす角度は、他の例示において約0.5度以上、約1度以上または約1.5度以上であるか、約19.5度以下、約19度以下、約18.5度以下、約18度以下、約17.5度以下、約17度以下、約16.5度以下、約16度以下、約15.5度以下、約15度以下、約14.5度以下、約14度以下、約13.5度以下、約13度以下、約12.5度以下、約12度以下、約11.5度以下、約11度以下、約10.5度以下、約10度以下、約9.5度以下、約9度以下、約8.5度以下、約8度以下、約7.5度以下、約7度以下、約6.5度以下、約6度以下、約5.5度以下、約5度以下、約4.5度以下、約4度以下、約3.5度以下または約3度以下であり得る。
【0012】
前記透過率は可視光波長領域、すなわち400~700nmの波長範囲内のいずれか一つの波長の光に対する数値であるか、あるいは前記全波長の光に対する数値の平均値であり得る。
【0013】
また、前記言及した各透過状態での直進光透過率は前記透過率可変装置の該当透過率が最も高い状態での透過率であり、遮断状態での直進光透過率は前記透過率可変装置の該当透過率が最も低い状態での透過率である。
【0014】
本出願の前記光学素子は、能動液晶層(Active Liquid Crystal Layer)を少なくとも含み、一例示において、前記能動液晶層は能動ゲストホスト液晶層(Active Guest Host Liquid Crystal Layer、以下、能動GH層と呼称し得る。)であり得る。前記で能動液晶層は液晶化合物を少なくとも含みつつ、前記液晶の光軸の方向が外部信号、例えば、電圧などによって変更されるように形成された液晶層であり、能動GH層は、液晶化合物(液晶ホスト)および二色性染料ゲストを少なくとも含む層であって、同様にその光軸の方向を外部信号、例えば、電圧などによって変更できるように形成された液晶層を意味し得る。
【0015】
以下、本明細書では便宜上前記能動液晶層が能動GH層であるとして説明するが、前記能動GH層に関する事項は能動液晶層にも適用され得る。
【0016】
前記で光軸は、能動液晶層またはGH層の液晶化合物の光軸(Optical axis)または遅相軸(Slow axis)を意味し、液晶化合物がロッド(rod)状の場合にはその長軸の方向を意味し、ディスコチック(discotic)液晶の場合、円板平面の法線方向と平行な軸を意味し得る。
【0017】
GH層に含まれる二色性染料の配向は、いわゆるゲストホスト効果として知られている液晶化合物により決定される。
【0018】
前記能動GH層の光軸は、垂直配向状態と水平配向状態の間をスイッチングすることができる。
【0019】
前記で垂直配向状態は、前記能動液晶層またはGH層の光軸または平均光軸が前記GH層の平面の法線方向と略-10度~10度の範囲内、-8度~8度の範囲内、-6度~6度の範囲内、-4度~4度の範囲内、-2度~2度の範囲内の角度をなすか、実質的に平行な場合を意味する。また、水平配向状態は、前記能動液晶層またはGH層の光軸または平均光軸が前記液晶層またはGH層の法線方向と垂直な方向と略-10度~10度の範囲内、-8度~8度の範囲内、-6度~6度の範囲内、-4度~4度の範囲内、-2度~2度の範囲内の角度をなすか、実質的に平行な場合を意味する。
【0020】
また、前記で平均光軸は、能動液晶層またはGH層の液晶化合物の光軸のベクターの和であり得る。
【0021】
一例示において、前記光学素子の能動液晶層またはGH層は、電圧のような外部信号が印加されていない状態で前記垂直配向状態で存在していて、外部信号が印加されると水平配向状態にスイッチングされ、再び外部信号がなくなると垂直配向状態でスイッチングされるか、電圧のような外部信号が印加されていない状態で前記水平配向状態で存在していて、外部信号が印加されると垂直配向状態にスイッチングされ、再び外部信号がなくなると水平配向状態にスイッチングされるように構成されていてもよい。
【0022】
一例示において、前記光学素子の前記能動液晶層またはGH層の厚さは少なくとも4μm以上であり得る。
【0023】
前記で液晶層またはGH層の厚さは、液晶層またはGH層のセルギャップ(cell gap)と同じ意味であり、例えば、後述するように2枚の基板とその間に前記液晶層またはGH層が形成される場合にはその2枚の基板の対向する面の間の間隔を意味し得る。
【0024】
液晶層またはGH層の厚さが厚いほど広い透過率バンドの具現が可能であるが、このような場合にBulk液晶層の比率はさらに高くなる。ところが、本出願の駆動方式によると、厚いセルギャップ下でも前記Bulk液晶層の比率を最小化したり、抑制して、優秀な特性の光学素子を提供することができる。前記で透過率バンドは、光学素子が示し得る最大透過率と最小透過率の差を意味し、Bulk液晶は、配向層の配向力や、外部信号によって配向が適切に制御されない液晶層の部分を意味する。
【0025】
前記セルギャップは他の例示において、約5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、11μm以上、12μm以上、13μm以上、14μm以上または14.5μm以上であり得、30μm以下、29μm以下、28μm以下、27μm以下、26μm以下、25μm以下、24μm以下、23μm以下、22μm以下、21μm以下、20μm以下、19μm以下、18μm以下、17μm以下、16μm以下または16.5μm以下であり得る。
【0026】
能動液晶層またはGH層に含まれる液晶化合物の種類は制限されず、GHセルを構成できるものと知られている公知の液晶化合物を適用することができる。例えば、前記液晶化合物としては、ネマティック液晶化合物を使うことができる。前記液晶化合物は、非反応性液晶化合物であり得る。非反応性液晶化合物は、重合性基を有さない液晶化合物を意味し得る。前記で重合性基としては、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、ビニル基またはエポキシ基などが例示され得るが、これに制限されず、重合性基として知られている公知の官能基が含まれ得る。
【0027】
液晶層またはGH層に含まれる液晶化合物は正の誘電率異方性または負の誘電率異方性を有することができる。本出願で用語「誘電率異方性」とは、液晶化合物の異常誘電率(εe、extraordinary dielectric anisotropy、長軸方向の誘電率)と正常誘電率(εo、ordinary dielectric anisotropy、短縮方向の誘電率)の差を意味し得る。液晶化合物の誘電率異方性は、例えば±40以内、±30以内、±10以内、±7以内、±5以内または±3以内の範囲内であり得る。液晶化合物の誘電率異方性を前記範囲で調節すると液晶素子の駆動効率の側面で有利であり得る。
【0028】
液晶層またはGH層内に存在する液晶化合物の屈折率異方性は、目的とする物性、例えば、透過特性や、コントラスト比率などを考慮して適切に選択され得る。用語「屈折率異方性」とは、液晶化合物の異常屈折率(extraordinary refractive index)と正常屈折率(ordinary refractive index)の差を意味し得る。液晶化合物の屈折率異方性は、例えば0.1以上、0.12以上または0.15以上~0.23以下0.25以下または0.3以下の範囲内にあり得る。
【0029】
液晶層またはGH層は二色性染料をさらに含むことができる。前記染料はゲスト物質として含まれ得る。二色性染料は、例えば、ホスト物質の配向によって装置の透過率を制御する役割をすることができる。本出願で用語「染料」とは、可視光領域、例えば、400nm~700nm波長範囲内で少なくとも一部または全体の範囲内の光を集中的に吸収および/または変形させることができる物質を意味し得、用語「二色性染料」は前記可視光領域の少なくとも一部または全体の範囲で光の異方性吸収が可能な物質を意味し得る。
【0030】
二色性染料としては、例えば、いわゆるホストゲスト(host guest)効果によって液晶化合物の整列状態により整列され得る特性を有すると知られている公知の染料を選択して使うことができる。このような二色性染料の例としては、いわゆるアゾ染料、アントラキノン染料、メチン染料、アゾメチン染料、メロシアニン染料、ナフトキノン染料、テトラジン染料、フェニレン染料、クアテリレン染料、ベンゾチアジアゾール染料、ジケトピロロピロール染料、スクアレン染料またはピロメテン染料などがあるが、本出願で適用可能な染料は前記に制限されるものではない。二色性染料としては、例えば、黒色染料(black dye)を使うことができる。このような染料としては、例えば、アゾ染料またはアントラキノン染料などで公知とされているが、これに制限されるものではない。
【0031】
二色性染料は、二色比(dichroic ratio)、すなわち二色性染料の長軸方向に平行な偏光の吸収を、前記長軸方向に垂直な方向に平行な偏光の吸収で割り算した値が5以上、6以上または7以上である染料を使うことができる。前記染料は可視光領域の波長範囲内、例えば、約380nm~700nmまたは約400nm~700nmの波長範囲内で少なくとも一部の波長またはいずれか一つの波長で前記二色比を満足することができる。前記二色比の上限は、例えば20以下、18以下、16以下または14以下程度であり得る。
【0032】
二色性染料の液晶層またはGH層内の比率は、目的とする物性、例えば、透過率可変特性により適切に選択され得る。例えば、二色性染料は、0.01重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、または1.0重量%以上の比率で液晶層またはGH層内に含まれ得る。二色性染料の液晶層またはGH層内の比率の上限は、例えば、2重量%以下、1.9重量%以下、1.8重量%以下、1.7重量%以下、1.6重量%以下、1.5重量%以下、1.4重量%以下、1.3重量%以下、1.2重量%以下または1.1重量%以下であり得る。
【0033】
液晶層またはGH層内で前記液晶化合物と前記二色性染料の合計重量は、例えば、約60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上または95重量%以上であり得、他の例示においては約100重量%未満、98重量%以下または96重量%以下であり得る。
【0034】
前記液晶層またはGH層は、前記成分、すなわち液晶化合物、二色性染料およびキラルドーパントに追加に必要であれば、公知の液晶層またはGH層の形成に使われる任意の添加物質をさらに含むことができる。
【0035】
液晶層またはGH層は、例えば、約0.5以上の異方性度Rを有することができる。前記異方性度Rは、文献「Polarized Light in Optics and Spectroscopy」、D.S.Kliger et al.、Academic Press、1990に記載された方式で測定することができる。
【0036】
異方性度Rは他の例示において、約0.55以上、0.6以上または0.65以上であり得る。前記異方性度Rは例えば、約0.9以下、約0.85以下、約0.8以下、約0.75以下または約0.7以下であり得る。
【0037】
異方性度Rは例えば、液晶化合物(ホスト)の種類および/または比率、異方性染料の種類および/または比率や前記セルギャップなどを制御して達成することができる。
【0038】
前記液晶層またはGH層は、前記垂直配向状態で所定範囲のプレチルト(pre-tilte)角を有するように設計され得る。
【0039】
前記プレチルト角は、前述した液晶化合物の方向子の方向が前記液晶層またはGH層の平面となす角度を意味し得る。
【0040】
このような液晶化合物のプレチルト角を制御する方式は特に制限されず、公知の方式で調節することができる。
【0041】
前記プレチルト角は例えば、70度以上であり、かつ90度未満であり得る。このようなプレチルト角の設定を通じてより透過率バンドが広く、かつ応答速度と駆動特性が優秀な光学素子を提供することができる。
【0042】
前記プレチルト角は一例示において、約71度以上、72度以上、約73度以上、約74度以上、約75、約76、約77、約78度以上、約79度以上、約80度以上、約81度以上、約82度以上、約83度以上、約84度以上、約85度以上、約86度以上または約87度以上であり得、約89度以下、約88.5度以下または約88度以下であり得る。
【0043】
前記光学素子は、前記液晶層またはGH層を少なくとも含みつつ多様な他の要素をさらに含むことができる。
【0044】
一例示において、前記光学素子は互いに対向配置されている第1および第2基板を含むことができ、このとき前記液晶層またはGH層は前記第1および第2基板の間に位置することができる。
【0045】
前記基板としては、特に制限なく公知の素材が使われ得る。例えば、基板としてはガラスフィルム、結晶性または非結晶性シリコンフィルム、石英またはITO(Indium Tin Oxide)フィルムなどの無機フィルムやプラスチックフィルムなどを使うことができる。
【0046】
プラスチック基板としては、TAC(triacetyl cellulose)基板;ノルボルネン誘導体基板などのCOP(cyclo olefin copolymer)基板;PMMA(poly(methyl methacrylate)基板;PC(polycarbonate)基板;PE(polyethylene)基板;PP(polypropylene)基板;PVA(polyvinyl alcohol)基板;DAC(diacetyl cellulose)基板;Pac(Polyacrylate)基板;PES(poly ether sulfone)基板;PEEK(polyetheretherketon)基板;PPS(polyphenylsulfone)、PEI(polyetherimide)基板;PEN(polyethylenemaphthatlate)基板;PET(polyethyleneterephtalate)基板;PI(polyimide)基板;PSF(polysulfone)基板;PAR(polyarylate)基板または非晶質フッ素樹脂などを含む基板を使用できるが、これに制限されるものではない。このような基板の厚さは特に制限されず、適切な範囲で選択され得る。
【0047】
前記基板には電極層が存在することができる。例えば、基板の表面の中で前記液晶層またはGH層に向かう表面のうち、少なくとも一表面または両表面のすべてに電極層が存在することができる。この電極層は、液晶層またはGH層の光軸をスイッチングできる外部信号を印加する要素であり得る。本出願で用語「基板の内側表面」は、基板の両表面のうち、液晶層またはGH層と近い表面を意味する。
【0048】
電極層は、公知の素材を使って形成することができ、例えば、前記電極層は、伝導性高分子、伝導性金属、伝導性ナノワイヤーまたはITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化物などを含むことができる。電極層は、透明性を有するように形成され得る。この分野では、透明電極層を形成できる多様な素材および形成方法が公知とされており、このような方法はすべて適用することができる。必要な場合に、基板の表面に形成される電極層は、適切にパターン化されていてもよい。
【0049】
前記基板には液晶配向層が存在することができる。前記液晶配向層も前記基板の内側表面、すなわち液晶層またはGH層に向かう表面に形成されていてもよい。基板に前述した電極層が存在する場合には、前記液晶配向層は前記電極層の表面に形成されるか、あるいは電極層と基板の間に形成されてもよい。例えば、透過率可変装置に含まれる基板の内側表面のうち、少なくとも一表面または両表面に液晶配向層が存在することができる。
【0050】
前記配向層としては、特に制限なくこの分野で公知とされている多様なラビング配向層または光配向層などが使われ得る。前記配向層は、水平配向層または垂直配向層であり得、一例示では垂直配向層であり得る。
【0051】
光学素子は前記構成にさらに反射防止層やハードコーティング層などの公知の要素を含むことができる。
【0052】
本出願は前記のような光学素子の駆動方法に関するものである。前記駆動方法は、液晶化合物を含み、光軸の配向が垂直または水平配向状態である第1状態と前記第1状態とは異なる光軸配向を有する第2状態の間をスイッチングする能動液晶層を含む光学素子の駆動方法であり得る。前記第1状態は例えば垂直配向状態であり得、前記第2状態は例えば水平配向状態であり得る。前記駆動方法は、少なくとも前記第1状態にある能動液晶層またはGH層に電圧を印加して、前記第2状態にスイッチングさせる段階を含むことができる。
【0053】
前記スイッチングのために第1状態電圧(V)が印加されている能動液晶層またはGH層に第2状態電圧(V)を印加することができる。
【0054】
前記で第1状態電圧は、前記第1状態を維持するために要求される印加電圧であり、第2状態電圧は前記第2状態を維持するために要求される印加電圧である。
【0055】
このような第1および2状態電圧は下記の数式1の関係を有することができる。すなわち、第1状態電圧に比べて第2状態電圧が大きくてもよい。
【0056】
[数式1]
<V
数式1において、Vは第1状態電圧であり、Vは第2状態電圧である。
【0057】
本出願の駆動方法では、前記第1状態にある能動液晶層またはGH層に第2状態の電圧を印加する前に下記の数式2を満足する中間電圧を印加する段階を含むことができる。
【0058】
[数式2]
VT≦VM<VB
数式2において、VTは臨界電圧であり、VBはバックフロー電圧であり、VMは中間電圧である。
【0059】
このような中間電圧印加段階を追加することによって、前述した通り厚いセルギャップ下でもスイッチング過程で発生し得るバックフロー現象などを抑制することができる。
【0060】
前記で臨界電圧は、前記能動液晶層またはGH層の液晶の駆動のしきい電圧(threshold voltage)を意味し、一例示では電圧などの外部信号による液晶の挙動により透過率の変動が発生する最小電圧を意味し得る。例えば、液晶層やGH層に対して、電圧対透過率変化グラフを図13に示したように図示(黒色点線)し、そのグラフを微分したグラフ(灰色点線)を図示した時に、該当微分グラフの変曲点(Max Point、矢印表示)が確認される時点での電圧が前記臨界電圧と定義され得る。
【0061】
一方、バックフロー電圧は、一般的に能動液晶層またはGH層に低い電圧で高電圧の信号が印加される時に、逆方向に整列されてから戻ってくる液晶ドメインが多数発生して、5%以上の透過率変動が発生する2次挙動特性と関連した電圧を意味する。
【0062】
このようなバックフロー電圧は例えば、図14で点線で表示した通り、低電圧から高電圧に転移時に応答速度グラフ(X軸、応答速度、Y軸相対透過率)で5%以上の再配列区間(shoulder)が発生する電圧の高電圧に該当する電圧と定義され得る。
【0063】
前記段階で印加される電圧、すなわち第1状態電圧、第2状態電圧、臨界電圧、中間電圧およびバックフロー電圧のうち、いずれか一つまたはすべては交流電圧であり得る。このような場合には単に電圧と呼称されるが、該当用語は前記交流電圧の振幅を意味し得る。交流電圧である場合、印加周波数は40Hz~1kHzの範囲内であり得る。前記周波数は具体的には、40Hz~750Hz、40Hz~500Hzまたは40Hz~100Hzであり得る。
【0064】
前記で第1状態電圧は下記の数式3を満足することができる。
【0065】
[数式3]
0≦V<2×VT
数式3において、Vは第1状態電圧であり、VTは臨界電圧である。
【0066】
すなわち、一つの例示において、前記第1状態は電圧が印加されないか、弱く印加された状態、すなわち初期状態であり得る。
【0067】
前記のような状態で臨界電圧VTは下記の数式4を満足することができる。
【0068】
[数式4]
VT=0.05×V~0.2×V
数式4において、VTは臨界電圧であり、Vは第2状態電圧である。
【0069】
前記臨界電圧VTは、他の例示において約0.07V以上、0.09V以上、0.1V以上または0.15V以上であるか、約0.19V以下であり得る。
【0070】
他の例示において前記臨界電圧は、約0.5V~3Vの範囲内であり得るが、これに制限されるものではない。
【0071】
また、前記のような状態でバックフロー電圧VBは下記の数式5を満足することができる。
【0072】
[数式5]
VB=0.3×V~0.7×V
数式5において、VBはバックフロー電圧であり、Vは第2状態電圧である。
【0073】
前記バックフロー電圧VBは、他の例示において約0.35V以上または0.4V以上であるか、約0.65V以下、0.6V以下、0.55V以下または0.5V以下であり得る。
【0074】
前記言及された具体的な臨界電圧やバックフロー電圧の値は、具体的な光学素子の状態によって変わり得る。
【0075】
一方、前記印加される中間電圧は前記数式2を満足することができ、必要であれば、下記の数式6を満足することもできる。
【0076】
[数式6]
VM=0.15×V~0.5×V
数式6において、VMは中間電圧であり、Vは第2状態電圧である。
【0077】
前記中間電圧VMは、他の例示において約0.2V以上または0.25V以上であるか、約0.45V以下または0.35V以下であり得る。
【0078】
本出願では、前記のような関係を満足する中間電圧を第2状態電圧の印加前に印加する方式によって目的を達成することが可能である。
【0079】
一方、本出願で前記第2状態電圧の具体的な大きさは特に制限されず、例えば、光学素子の構成状態を考慮して適正範囲を選択することができる。一例示において、前記第2状態電圧は、約10V~30Vの範囲内であり得る。
【0080】
本出願の駆動方法で前記中間電圧を印加する時間は特に制限されないが、例えば、下記の数式7を満足する維持時間TMの間印加することができる。
【0081】
[数式7]
0.3×T12≦TM≦1.2×T12
数式7において、TMは中間電圧の維持時間であり、T12は、臨界電圧で前記中間電圧を印加した時に応答速度グラフで90%の透過率変動が発生するのに要求される時間である。
【0082】
前記で90%の透過率変動が発生するのに要求される時間は、例えば、95%の透過率から5%の透過率まで変化するのに要求される時間または5%の透過率から95%の透過率まで変化するのに要求される時間であり得る。また、前記で変動する透過率は一般的な透過率であるか相対透過率であり得る。
【0083】
前記T12を測定する一例示が図15に示されている。
【0084】
前記中間電圧印加時間は前記数式7を満足するのであれば、具体的に特に制限されるものではないが、前記中間電圧は、約0.1秒~10秒の間印加され得る。前記印加時間は、他の例示において約0.15秒以上または約0.2秒以上であるか、約9秒以下、約8秒以下、駅7秒以下、約6秒以下、約5秒以下、約4秒以下、約3秒以下、約2秒以下または約1秒以下程度であり得る。
【0085】
本出願では、前記のような関係を満足する中間電圧を前記印加時間の間第2状態電圧の印加前に印加する方式によって、目的を達成することが可能である。
【0086】
本出願はまた、前記のような駆動ができるように設定(Setting)された光学素子に関するものである。
【0087】
前記光学素子は少なくとも前述した能動液晶層またはGH層と電源装置を含むことができる。
【0088】
前記能動液晶層またはGH層に対する具体的な事項は、前述した内容が同様に適用され得る。
【0089】
また、前記電源装置は、前述したような第1状態電圧(V)印加状態、中間電圧印加状態および第2状態電圧(V)印加状態が具現され得るように設定されていてもよい。
【0090】
前記電源装置が印加する第1および第2状態電圧と中間電圧、そして中間電圧の印加時間は前述した内容が同様に適用され得る。
【0091】
本出願はまた、透過率可変装置に関するものである。用語「透過率可変装置」は前述したように、透過状態と遮断状態の間をスイッチングできるように設計された装置を意味し得る。
【0092】
前記透過率可変装置は、前述した光学素子単独で構成されるか、他の要素を含むこともできる。前記他の要素の種類は特に制限されず、例えば、手動偏光層または能動液晶層またはGH層(以下、光学素子の能動液晶層またはGH層と区別するために、便宜上第2能動液晶層またはGH層と呼称し得る。)が例示され得る。前記で手動偏光層としては、例えば、PVA(polyvinyl alcohol)偏光子などの公知の直線偏光子を使うことができる。前記手動偏光層または能動液晶層またはGH層は、前記光学素子と重なって配置され得る。例えば、透過状態では、本出願の光学素子の能動液晶層またはGH層の光軸を前記手動偏光層の吸収軸と平行に維持したり、あるいは前記能動液晶層またはGH層を垂直配向させることができ、遮断状態では前記能動液晶層またはGH層の光軸を前記手動偏光層の吸収軸と垂直配向させて透過および遮断状態を維持することができる。
【0093】
光学素子と第2能動液晶層またはGH層が含まれる場合に、透過状態では光学素子の能動液晶層またはGH層の光軸と第2能動液晶層またはGH層を相互に垂直配向状態で維持したり、いずれか一つは垂直配向状態、他の一つは水平配向状態を維持したり、互いの光軸が平行するように水平配向させることができ、遮断状態では前記2個の液晶層またはGH層の光軸を互いに垂直に配向させることができる。
【0094】
前記で第2能動液晶層またはGH層としては、前述した光学素子に含まれるものと同一種類の液晶層またはGH層を使ったり、あるいは公知の他の能動液晶層またはGH層を使うこともできる。このような第2能動液晶層またはGH層も垂直配向状態と水平配向状態の間をスイッチングすることができる。
【0095】
以下、透過率可変装置が前記光学素子と前記第2能動液晶層またはGH層を含む場合を例示的に説明する。この場合、便宜上前記光学素子に含まれる液晶層またはGH層は第1能動液晶層またはGH層と呼称し得る。
【0096】
前記のように、2個の能動液晶層またはGH層を含む構造で前記各能動液晶層またはGH層内の二色性染料の配向を調節することによって、前記透過および遮断状態間のスイッチングが可能となり得る。
【0097】
前記第1および第2能動液晶層またはGH層は互いに重なって含まれてもよい。これに伴い、前記第1能動液晶層またはGH層を透過した光は第2能動液晶層またはGH層に入射され得、その反対に第2能動液晶層またはGH層を透過した光も第1能動液晶層またはGH層に入射され得る。
【0098】
図1は、前記のように互いに重なっている第1能動液晶層またはGH層10および第2能動液晶層またはGH層20の状態を模式的に示した図面である。
【0099】
このような構造は、本明細書でダブルセル(double cell)構造と呼称され得る。
【0100】
前記第1および第2能動液晶層またはGH層は、それぞれ垂直配向および水平配向状態間をスイッチングすることができる。一つの例示において、前記垂直配向および水平配向状態間のスイッチングは電圧印加の有無によって遂行され得る。例えば、電圧非印加状態で垂直配向状態である能動液晶層またはGH層に電圧を印加して水平配向状態に転換させたり、その反対に水平配向状態である能動液晶層またはGH層に電圧を印加して垂直配向状態に転換させることができる。
【0101】
水平配向状態で、第1能動液晶層またはGH層と第2能動液晶層またはGH層の光軸は約85度~95度範囲内の角度をなすか、直交することができる。一つの例示で、図2に示した通り、水平配向状態で前記第1および第2能動液晶層またはGH層10、20のうちいずれか一つ、例えば、第1能動液晶層またはGH層10は、能動液晶層またはGH層の横軸WAを基準として時計回り方向に40度~50度の範囲内の光軸OAを有し、他の一つ、例えば、第2能動液晶層またはGH層20は前記能動液晶層またはGH層の横軸WAを基準として時計回り方向に130度~140度の範囲内の光軸OAを有することができる。このような第1能動液晶層またはGH層と第2能動液晶層またはGH層の光軸関係を通じて左右視野角でのコントラスト比の差を減少させることによって、左右対称性が優秀な透過率可変装置を提供することができる。
【0102】
本明細書で前記能動液晶層またはGH層の横軸WAは、能動液晶層またはGH層の長軸方向と平行な方向またはアイウェアまたはTVなどのディスプレイ装置に適用された時に、そのアイウェアを着用した観察者またはディスプレイ装置を観察する観察者の両目を連結する線と平行な方向を意味し得る。
【0103】
前述したように用語「能動GH層」は、液晶化合物の配列にしたがって異方性染料が共に配列されて、異方性染料の整列方向と前記整列方向の垂直な方向に対してそれぞれ非等方性光吸収特性を示す機能性層を意味し得る。例えば、異方性染料は光の吸収率が偏光方向によって変わる物質であって、長軸方向に偏光された光の吸収率が大きいとp型染料と呼称し、短縮方向に偏光された光の吸収率が大きいとn型染料と呼称し得る。一つの例示で、p型染料が使われる場合、染料の長軸方向に振動する偏光は吸収され、染料の短縮方向に振動する偏光は吸収が少ないため透過させることができる。以下、特に言及しない限り、異方性染料はp型染料であると仮定する。
【0104】
能動液晶層またはGH層は、能動型偏光子(Active Polarizer)として機能することができる。本明細書で用語「能動型偏光子(Active Polarizer)」は、外部作用の印加により非等方性光吸収を調節できる機能性素子を意味し得る。例えば能動液晶層またはGH層は、液晶化合物および異方性染料の配列を調節することによって、前記異方性染料の配列方向と平行な方向の偏光および垂直な方向の偏光に対する非等方性光吸収を調節することができる。液晶および異方性染料の配列は、磁場または電場のような外部作用の印加によって調節され得るため、能動液晶層またはGH層は外部作用の印加により非等方性光吸収を調節することができる。
【0105】
透過率可変装置は、それぞれ前記第1能動液晶層またはGH層および第2能動液晶層またはGH層の両側に配置された2層の配向層をさらに含むことができる。一つの例示で、前記透過率可変装置は、第1垂直配向層、第1能動液晶層またはGH層および第2垂直配向層を順に含む第1光学素子と第3垂直配向層、第2能動液晶層またはGH層および第4垂直配向層を順に含む第2光学素子を含む構造であり、前記で第1光学素子は前述した光学素子であり得る。
【0106】
本出願の透過率可変装置は、前記第1能動液晶層またはGH層および第2能動液晶層またはGH層の電圧非印加時および/または電圧印加時の配向方向を調節することによって透過率を調節することができる。前記配向方向は前記第1~第4垂直配向層のプレチルト角およびプレチルト方向を調節することによって調節することができる。
【0107】
本明細書でプレチルトは角度(angle)と方向(direction)を有することができる。前記プレチルト角度は、極角(Polar angle)と呼称され得、前記プレチルト方向は方位角(Azimuthal angle)と呼称され得る。
【0108】
前記プレチルト角度は前記光学素子の項目で記述したプレチルト角と同じ意味である。
【0109】
一つの例示で、前記第1~第4垂直配向層はプレチルト角が前述した範囲内、すなわち70度以上であり、かつ90度未満であるか、あるいは前記光学素子の項目で言及した多様な例示のプレチルト角を有することができる。このような範囲で初期透過率が優秀な透過率可変装置を提供することができる。
【0110】
一つの例示において、前記第1垂直配向層のプレチルト角度は、前記配向層と水平な面を基準として時計回り方向または反時計回り方向に測定した角度であり、第2垂直配向層のプレチルト角度はそれとは逆方向、すなわち第1垂直配向層のプレチルト角度が時計回り方向に測定された場合に反時計回り方向または第1垂直配向層のプレチルト角度が反時計回り方向に測定された場合に時計回り方向に測定された角度であり得る。
【0111】
前記第3垂直配向層のプレチルト角度は、前記配向層と水平な面を基準として時計回り方向または反時計回り方向に測定した角度であり、第4垂直配向層のプレチルト角度はそれとは逆方向、すなわち第3垂直配向層のプレチルト角度が時計回り方向に測定された場合に反時計回り方向または第3垂直配向層のプレチルト角度が反時計回り方向に測定された場合に時計回り方向に測定された角度であり得る。
【0112】
前記プレチルト方向は、液晶分子の方向子が配向層の水平な面に射影された方向を意味し得る。一例示において、前記プレチルト方向は前記射影された方向と前記横軸WAがなす角度であり得る。前記垂直配向層のプレチルト方向は液晶セルに電圧印加時に水平配向状態の配向方向を誘導することができる。
【0113】
前記第1および第2垂直配向層のプレチルト方向と第3および第4垂直配向層のプレチルト方向は、互いに交差することができる。一つの例示で、第1および第2垂直配向層のプレチルト方向と第3および第4垂直配向層のプレチルト方向は、互いに直交を、例えば、85度~95度または約90度をなすことができる。プレチルト方向が前記条件を満足する場合、電圧印加時に遮光率が優秀な透過率可変装置を提供することができる。
【0114】
一例示において、前記第1および第2垂直配向層のプレチルト方向と前記第3および第4垂直配向層のプレチルト方向のうちいずれか一つの方向、例えば、前記第1および第2垂直配向層のプレチルト方向は、能動液晶層またはGH層の横軸WAを基準として時計回り方向に40度~50度の範囲内の光軸OAを有し、他の一つの方向、例えば、前記第3および第4垂直配向層のプレチルト方向は、前記能動液晶層またはGH層の横軸WAを基準として時計回り方向に130度~140度の範囲内の光軸OAを有することができる。このような関係を通じて左右視野角でのコントラスト比の差を減少させて、左右対称性が優秀な透過率可変装置を提供することができる。
【0115】
前記言及したプレチルト角度および方向は、一例示において、前記各能動液晶層またはGH層の能動液晶層またはGH層が垂直配向状態である場合に各能動液晶層またはGH層で測定されるプレチルト角および方向であり得る。
【0116】
前記第1~第4垂直配向層はラビング配向層または光配向層であり得る。ラビング配向層の場合、配向方向はラビング方向によって決定され、光配向層の場合は、照射される光の偏光方向などによって決定される。前記垂直配向層のプレチルト角度およびプレチルト方向は、配向条件、例えばラビング配向時のラビング条件や圧力条件、あるいは光配向条件、例えば、光の偏光状態、光の照射角度、光の照射強度などを適切に調節して具現することができる。
【0117】
例えば、垂直配向層がラビング配向層である場合に、前記プレチルト角度は前記ラビング配向層のラビング強度などを制御して達成することができ、プレチルト方向は前記ラビング配向層のラビング方向を制御して達成することができ、このような達成方式は公知の方式である。また、光配向層の場合、配向層材料、配向に適用される偏光の方向、状態または強度などによって達成され得る。
【0118】
一つの例示で、前記第1~第4垂直配向層はラビング配向層であり得る。前記第1~第4垂直配向層はそれぞれ特有の配向方向を有することができる。
【0119】
例えば、前記第1および第2垂直配向層のラビング方向は互いに逆方向であって、約170度~190度をなすことができ、同様に第3および第4垂直配向層のラビング方向は互いに逆方向であって、約170度~190度をなすことができる。
【0120】
前記ラビング方向はプレチルト角の測定を通じて確認することができるが、一般的に液晶はラビング方向に沿って横になりながらプレチルト角を発生させるため、下記の実施例で記載された方式でプレチルト角を測定することによって、前記ラビング方向の測定が可能となり得る。
【0121】
一つの例示で、図3に示した通り、前記第1垂直配向層12のラビング配向の方向RAは40度~50度であり、前記第2垂直配向層14のラビング配向の方向RAは220度~230度、前記第3垂直配向層22のラビング配向の方向RAは130度~140度、前記第4垂直配向層24のラビング配向の方向RAは310度~320度であり得る。このような第1~第4垂直配向層のラビング配向方向の関係を通じて、垂直配向状態と水平配向状態間のスイッチングが効果的に行われ得る透過率可変装置を提供することができる。前記各ラビング配向の方向RAは、前記横軸WAを基準として時計回り方向または反時計回り方向に測定された角度である。ただし、前記各ラビング配向の方向RAを測定する方向は、前記時計回りまたは反時計回り方向のうちいずれか一つの方向のみを選択して測定する。
【0122】
図3に示した通り、前記第1垂直配向層12のラビング配向の方向RAと前記横軸WAがなす角度と第2垂直配向層14のラビング方向RAと前記横軸WAがなす角度は、いずれも前記横軸WAを基準として時計回り方向に測定した時に40度~50度の範囲内であり、前記第1垂直配向層12のラビング配向の方向RAと第2垂直配向層14のラビング方向RAは互いに逆方向であり得る。
【0123】
図3に示した通り、前記第3垂直配向層22のラビング配向の方向RAと前記横軸WAがなす角度と第4垂直配向層24のラビング方向RAと前記横軸WAがなす角度は、いずれも前記横軸WAを基準として時計回り方向に測定した時に130度~140度の範囲内であり、前記第3垂直配向層22のラビング配向の方向RAと第4垂直配向層24のラビング方向RAは互いに逆方向であり得る。
【0124】
第1~第4垂直配向層として光配向層が使われる場合にも、前記言及したプレチルト角度および方向が達成されるように条件が制御され得る。
【0125】
例示的な透過率可変装置は、前記第1~第4垂直配向層の外側に配置された電極層をさらに含むことができ、このとき電極層の具体的な種類は前記光学素子の技術項目で言及した内容と同じである。
【0126】
図4は、能動液晶層またはGH層、電極層および垂直配向層を含む第1光学素子を例示的に示した図面である。図4に示した通り、第1光学素子10は、第1電極層11、第1垂直配向層12、第1能動液晶層またはGH層13、第2垂直配向層14および第2電極層15を順に含むことができる。前記第1および第2電極層と第1および第2垂直配向層の厚さは本出願の目的を考慮して適切に選択され得る。
【0127】
図5は、能動液晶層またはGH層、電極層および垂直配向層を含む第2光学素子を例示的に示した図面である。図5に示した通り、第2光学素子20は、第3電極層21、第3垂直配向層22、第2能動液晶層またはGH層23、第4垂直配向層24および第4電極層25を順に含むことができる。前記第3および第4電極層と第3および第4垂直配向層の厚さは本出願の目的を考慮して適切に選択され得る。
【0128】
本出願の透過率可変装置は粘着剤をさらに含むことができる。前記第1および第2光学素子は前記粘着剤によって合着された状態で存在することができる。前記粘着剤としては、光学フィルムの付着に使われる粘着剤層を適切に選択して使うことができる。前記粘着剤の厚さは本出願の目的を考慮して適切に選択され得る。
【0129】
本出願の透過率可変装置は、ハードコーティングフィルムをさらに含むことができる。前記ハードコーティングフィルムは基材フィルムおよび前記基材フィルム上にハードコーティング層を含むことができる。ハードコーティングフィルムは本出願の目的を考慮して公知のハードコーティングフィルムを適切に選択して使うことができる。前記ハードコーティングフィルムの厚さは本出願の目的を考慮して適切に選択され得る。
【0130】
前記ハードコーティングフィルムは第1および/または第2光学素子の外側に粘着剤を通じて形成され得る。例えば、ハードコーティングフィルムは第1および/または第4電極層が形成されている基板の外側に粘着剤を通じて付着され得る。前記粘着剤としては、光学フィルムの付着に使われる粘着剤を適切に選択して使うことができる。
【0131】
本出願の透過率可変装置は反射防止フィルムをさらに含むことができる。前記反射防止フィルムは基材フィルムおよび前記基材フィルム上に反射防止層を含むことができる。反射防止フィルムは本出願の目的を考慮して公知の反射防止フィルムを適切に選択して使うことができる。前記反射防止フィルムの厚さは本出願の目的を考慮して適切に選択され得る。
【0132】
前記反射防止フィルムは第1および/または第2光学素子の外側に粘着剤を通じて形成され得る。例えば、反射防止フィルムは第1電極層および/または第4電極層が存在する基板の外側に粘着剤を通じて付着され得る。前記粘着剤としては、光学フィルムの付着に使用される粘着剤を適切に選択して使用することができる。
【0133】
前述した通り、本出願の透過率可変装置は第1および第2能動液晶層またはGH層に電圧非印加時および電圧印加時の配向状態を調節することによって、電圧印加の有無により透過率を調節することができる。液晶および異方性染料は前記配向方向に沿って整列され得る。したがって、配向方向は液晶の光軸方向および/または異方性染料の吸収軸方向と平行することができる。
【0134】
一つの例示で、前記透過率可変装置は第1および第2光学素子がそれぞれ垂直配向状態である場合、透過状態を具現することができ、水平配向状態である場合、遮断状態を具現することができる。
【0135】
前述した通り、前記水平配向状態で前記第1能動液晶層またはGH層は前記能動液晶層またはGH層の横軸を基準として時計回り方向に40度~50度の範囲内の光軸を有し、前記第2能動液晶層またはGH層は前記能動液晶層またはGH層の横軸を基準として時計回り方向に130度~140度の範囲内の光軸を有することができる。このような第1能動液晶層またはGH層と第2能動液晶層またはGH層の光軸関係を通じて左右視野角でのコントラスト比の差を減少させて左右対称性が優秀な透過率可変装置を提供することができる。
【0136】
前記のような透過率可変装置は多様な用途に適用され得る。透過率可変装置が適用され得る用途には、ウィンドウまたはサンルーフなどのような建物、容器または車両などを含む密閉された空間の開口部やアイウェア(eyewear)等が例示され得る。前記でアイウェアの範囲には、一般的なメガネ、サングラス、スポーツ用ゴーグルまたはヘルメットまたは増強現実体験用機器などのように、観察者がレンズを通じて外部を観察できるように形成されたすべてのアイウェアが含まれ得る。
【0137】
本出願の透過率可変装置が適用され得る代表的な用途にはアイウェアがある。最近サングラス、スポーツ用ゴーグルや増強現実体験用機器などは、観察者の正面視線とは傾斜するようにレンズが装着される形態のアイウェアが市販されている。本出願の透過率可変装置の場合、前述した通り、傾斜した方向から観察するようになる時に左右傾斜角でのコントラスト比の差を減少させることによって、優秀な左右対称性を確保することができるため、前記のような構造のアイウェアにも効果的に適用され得る。
【0138】
本出願の透過率可変装置がアイウェアに適用される場合にそのアイウェアの構造は特に制限されない。すなわち、公知のアイウェア構造の左目用および/または右目用レンズ内に前記透過率可変装置が装着されて適用され得る。
【0139】
例えば、前記アイウェアは、左目用レンズと右目用レンズ;および前記左目用レンズと右目用レンズを支持するフレームを含むことができる。
【0140】
図6は、前記アイウェアの例示的な模式図であって、前記フレーム120および左目用と右目用レンズ140を含むアイウェアの模式図であるが、本出願の透過率可変装置が適用され得るアイウェアの構造は図6に制限されるものではない。
【0141】
前記アイウェアで左目用レンズおよび右目用レンズはそれぞれ前記透過率可変装置を含むことができる。このようなレンズは、前記透過率可変装置のみを含むか、その他の構成を含むこともできる。
【0142】
前記アイウェアは多様なデザインを有することができ、例えば、前記フレームは前記アイウェアを観察者が装着した時に、前記観察者の正面視線方向と前記透過率可変装置の表面の法線がなす角度が15度~40度の範囲内となるように、傾斜して形成されていてもよい。このようなアイウェアとしては、スポーツ用ゴーグルや増強現実体験用機器などが例示され得る。透過率可変装置がアイウェアに傾斜して形成される場合、第1~第4垂直配向層のプレチルト角の調節を通じて傾斜角でのコントラスト比を改善することもできる。
【発明の効果】
【0143】
一例示において、本出願は、GHセルのセルギャップ(cell gap)が厚くなる場合にもバルク液晶化合物(Bulk Liquid Crystal Host)によるバックフロー(back flow)現象を抑制し、迅速な応答速度と優秀な駆動特性が確保される駆動方式とそのような駆動方式が適用され得る光学素子が提供され得る。このような本出願の光学素子および透過率可変装置は、透過率の調節が必要な多様な建築用または車両用素材や、増強現実体験用またはスポーツ用ゴーグル、サングラスまたはヘルメットなどのアイウェイ(eyewear)を含む多様な用途に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0144】
図1】本出願の透過率可変装置を例示的に示した図面。
図2】第1~第2光学素子の水平配向状態で光軸を示した図面。
図3】第1~第4垂直配光膜のプレチルト方向を示した図面。
図4】第1光学素子を例示的に示した図面。
図5】第2光学素子を例示的に示した図面。
図6】アイウェアを例示的に示した図面。
図7】本出願の実施例1で印加される電圧の状態およびそれによる透過率変化状態を示した図面。
図8】本出願の実施例2で印加される電圧の状態およびそれによる透過率変化状態を示した図面。
図9】本出願の実施例3で印加される電圧の状態およびそれによる透過率変化状態を示した図面。
図10】本出願の実施例4で印加される電圧の状態およびそれによる透過率変化状態を示した図面。
図11】本出願の実施例5で印加される電圧の状態およびそれによる透過率変化状態を示した図面。
図12】比較例1での透過率と電圧印加時間の関係を示した図面。
図13】臨界電圧を説明するための電圧対透過率変化グラフ。
図14】バックフロー電圧を説明するための応答速度グラフ。
図15】T12時間を説明するための応答速度グラフ。
図16】比較例2で印加される電圧の状態およびそれによる透過率変化状態を示した図面。
【発明を実施するための形態】
【0145】
以下、実施例および比較例を通じて本出願の光学素子を具体的に説明するが、本出願の光学素子の範囲は下記の実施例によって制限されるものではない。
【0146】
製造例1.光学素子の製造
表面にITO(Indium Tin Oxide)電極層と垂直配向層が順次形成された2枚のCOP(cycloolefin polymer)フィルムの間にGH層を形成して光学素子を製造した。前記でGH層の厚さ、すなわちセルギャップは約12μmにした。前記で垂直配向層はプレチルト角が約88度である配向層を使った。配向層は、ポリイミド系列の垂直配向層を前記ITO電極層上にバーコーティングでコーティングし、130℃で約30分の間維持し、ラビング布でラビング処理して約200nmの厚さに形成したし、前記2枚のCOPフィルムは前記ラビング方向が互いに同じであるように積層した。また、前記GH層は、液晶化合物として、誘電率異方性が約-4.9であり、屈折率異方性が約0.132程度であるネマティック液晶および二色性染料として、二色比が約6.5~8程度である黒色染料を97:3の重量比率(ネマティック液晶:二色性染料)で混合させたGH混合物を適用して形成した。
【0147】
前記のような光学素子を使って初期状態(第1状態)、すなわち外部電圧の印加がない状態でGH層が垂直配向状態であり、直進光透過率が95%であり、周波数が約60Hzであり、振幅が約11Vである電圧が印加されると、直進光透過率が最大5%である遮断状態(第2状態)が具現され得る装置を構成した。前記装置は前記製造されたGH層を二つを互いに重ねて構成したし、これに伴い、初期状態ではGH層がすべて垂直配向状態であるため透過状態となり、第2状態になると、GH層が互いに光軸が垂直となるように水平配向されて遮断状態が構成され得る。
【0148】
前記装置について前記で説明した方式で確認した臨界電圧は、約2V(周波数60Hzの交流電圧)であったし、バックフロー電圧は、約5V(周波数60Hzの交流電圧)であった。
【0149】
実施例1
前記製造された光学素子を含む装置に第2状態を確保するための第2状態電圧(振幅が約11Vであり、周波数が約60Hzである交流電圧)を印加する前に、中間電圧として振幅が約4Vであり、周波数が約60Hzである交流電圧を約0.21秒の間印加してから、前記第2状態電圧を印加した。図7は、前記過程を整理した図面であり、図面のように、図12(比較例1)の場合と比較して、バックフロー現象が緩和することを確認することができる。
【0150】
実施例2
中間電圧を約0.28秒の間印加してから、第2状態電圧を印加したことを除いては実施例1と同じ方式で光学素子を駆動させた。図8は、前記過程を整理した図面であり、図面のように、図12(比較例1)の場合と比較して、バックフロー現象が緩和することを確認することができる。
【0151】
実施例3
中間電圧を約0.35秒の間印加してから、第2状態電圧を印加したことを除いては実施例1と同じ方式で光学素子を駆動させた。図9は、前記過程を整理した図面であり、図面のように、図12(比較例1)の場合と比較して、バックフロー現象が緩和することを確認することができる。
【0152】
実施例4
前記製造された光学素子を含む装置に第2状態を確保するための第2状態電圧(振幅が約11Vであり、周波数が約60Hzである交流電圧)を印加する前に、中間電圧として振幅が約3Vであり、周波数が約60Hzである交流電圧を約0.49秒の間印加してから、前記第2状態電圧を印加した。図10は、前記過程を整理した図面であり、図面のように、図12(比較例1)の場合と比較して、バックフロー現象が緩和することを確認することができる。
【0153】
実施例5
中間電圧を約0.9秒の間印加してから、第2状態電圧を印加したことを除いては実施例4と同じ方式で光学素子を駆動させた。図11は、前記過程を整理した図面であり、図面のように、図12(比較例1)の場合と比較して、バックフロー現象が緩和することを確認することができる。
【0154】
比較例1
中間電圧印加段階なしにすぐに第2状態電圧を印加したことを除いては実施例1と同様にして光学素子を駆動させたし、その結果を図12に記載した。
【0155】
比較例2.
前記製造された光学素子を含む装置に第2状態を確保するための第2状態電圧(振幅が約11Vであり、周波数が約60Hzである交流電圧)を印加する前に、中間電圧として振幅が約1.5Vであり、周波数が約60Hzである交流電圧を約0.21秒の間印加してから、前記第2状態電圧を印加した。図16は、前記過程を整理した図面であり、図面のように、図7~11(実施例1~5)の場合と比較して、比較例2はバックフロー現象が緩和しないことを確認することができる。
【符号の説明】
【0156】
10:第1能動液晶層またはGH層
20:第2能動液晶層またはGH層 11:第1電極層
12:第1垂直配向層
13:第1能動液晶層またはGH層
14:第2垂直配向層
15:第2電極層
21:第3電極層
22:第3垂直配向層
23:第2能動液晶層またはGH層
24:第4垂直配向層
25:第4電極層
120:フレーム
140:左目用と右目用レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16