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特許7039817金属複合触媒の製造方法及びこれによって製造された金属複合触媒
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  • 特許-金属複合触媒の製造方法及びこれによって製造された金属複合触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】金属複合触媒の製造方法及びこれによって製造された金属複合触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/03 20060101AFI20220315BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220315BHJP
   B01J 27/185 20060101ALI20220315BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20220315BHJP
   C07C 5/48 20060101ALI20220315BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220315BHJP
【FI】
B01J37/03 B
B01J37/08
B01J27/185 Z
C07C11/167
C07C5/48
C07B61/00 300
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020538118
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 KR2019004251
(87)【国際公開番号】W WO2019199042
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】10-2018-0041559
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ファン、スンファン
(72)【発明者】
【氏名】チャ、キョン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ドン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、イェ スル
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ジュン キュ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、サン ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンミン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭46-005064(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0036290(KR,A)
【文献】特表2010-534553(JP,A)
【文献】Prevention of Catalyst Deactivation in the Oxidative Dehydrogenation of n-Butene to 1,3-Butadiene over Zn-Ferrite Catalysts,Catalysis Letters,2009年,131, p579-586
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 11/167
C07C 5/48
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)亜鉛(Zn)前駆体、フェライト(Fe)前駆体及び水を含む金属前駆体溶液を塩基性水溶液と接触させて沈殿物を得るステップ;
(B)前記沈殿物をろ過し焼成して、亜鉛フェライト触媒を得るステップ;及び
(C)前記亜鉛フェライト触媒に酸を担持するステップ
を含み、
前記(C)ステップにおいて、前記亜鉛フェライト触媒100wt%を基準に、前記酸の含量は、0.05wt%~0.2wt%である、
金属複合触媒の製造方法。
【請求項2】
前記(A)ステップにおいて、前記金属前駆体溶液の水100wt%を基準に、前記亜鉛(Zn)前駆体の含量は、0.1wt%~5wt%である、
請求項1に記載の金属複合触媒の製造方法。
【請求項3】
前記(A)ステップにおいて、前記金属前駆体溶液の水100wt%を基準に、前記フェライト(Fe)前駆体の含量は、1wt%~10wt%である、
請求項1または2に記載の金属複合触媒の製造方法。
【請求項4】
前記(C)ステップにおいて、前記酸は、リン酸である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の金属複合触媒の製造方法。
【請求項5】
前記亜鉛(Zn)前駆体及び前記フェライト(Fe)前駆体は、それぞれ独立して、硝酸塩(nitrate)、アンモニウム塩(ammonium salt)、硫酸塩(sulfate)及び塩化物(chloride)からなる群より選択される1種以上又はこれの水和物である、
請求項1からのいずれか1項に記載の金属複合触媒の製造方法。
【請求項6】
前記亜鉛(Zn)前駆体は、塩化亜鉛(ZnCl)である、
請求項1からのいずれか1項に記載の金属複合触媒の製造方法。
【請求項7】
前記フェライト(Fe)前駆体は、フェリッククロライドハイドレート(FeCl・6HO)である、
請求項1からのいずれか1項に記載の金属複合触媒の製造方法。
【請求項8】
前記塩基性水溶液のpHは、7超過11以下である、
請求項1からのいずれか1項に記載の金属複合触媒の製造方法。
【請求項9】
前記塩基性水溶液は、水酸化カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、及びアンモニア水からなる群より選択された1種以上である、
請求項1からのいずれか1項に記載の金属複合触媒の製造方法。
【請求項10】
前記(B)ステップにおいて、前記沈殿物をろ過後、焼成する前に、乾燥するステップをさらに含む、
請求項1からのいずれか1項に記載の金属複合触媒の製造方法。
【請求項11】
前記(C)ステップの後に、酸が担持された亜鉛フェライト触媒を焼成するステップをさらに含む、
請求項1から10のいずれか1項に記載の金属複合触媒の製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の金属複合触媒の製造方法で製造された金属複合触媒をブテンの酸化的脱水素化反応に使用して、ブタジエンを製造するステップを含む
ブタジエンの製造方法。
【請求項13】
亜鉛フェライト触媒及び酸を含み、
前記酸は、亜鉛フェライト触媒100wt%を基準に、0.05wt%~0.2wt%である、
ブテンの酸化的脱水素化反応用の金属複合触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年4月10日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-0041559号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、金属複合触媒の製造方法及びこれによって製造された金属複合触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
1,3-ブタジエン(1,3-butadiene)は、石油化学製品の中間体として世界的にその需要と価値が次第に増加している。上記1,3-ブタジエンは、ナフタ分解、ブテンの直接脱水素化反応、ブテンの酸化的脱水素化反応などを用いて製造されている。
【0004】
しかしながら、上記ナフタ分解工程は、高い反応温度のためエネルギー消費量が多いだけでなく、1,3-ブタジエンの生産のみのための単独工程ではないから、1,3-ブタジエン以外に他の基礎留分が余剰に生産されるという問題がある。また、n-ブテンの直接脱水素化反応は、熱力学的に不利であるだけでなく、吸熱反応であって、高い収率の1,3-ブタジエンの生産のために、高温及び低圧の条件が要求されて、1,3-ブタジエンを生産する商用化工程には適していない。
【0005】
一方、ブテンの酸化的脱水素化反応は、金属酸化物触媒の存在下にブテンと酸素とが反応して、1,3-ブタジエンと水を生成する反応であって、安定した水が生成されるので、熱力学的に非常に有利であるという利点を有する。また、ブテンの直接脱水素化反応と違って、発熱反応であるので、直接脱水素化反応に比べて低い反応温度でも高い収率の1,3-ブタジエンを得ることができ、追加の熱供給を要しなくて、1,3-ブタジエンの需要を満たすことができる効果的な単独生産工程になることができる。
【0006】
上記金属酸化物触媒は、一般に、沈殿法によって合成されるが、技術及び空間的制約のため1回の生産量が小さくて、目標量を満たすためには、同一の過程を数回繰り返して触媒を製造する。このように数回にわたって製造される触媒は、製造回次によって反応物との反応性に差が生じることもあり、このような触媒の反応性の差は、生成物(ブタジエン)の収率とも直接的な関係があるので、触媒の反応性の差を減らす研究が持続的に行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書は、金属複合触媒の製造方法及びこれによって製造された金属複合触媒を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書の一実施態様は、(A)亜鉛(Zn)前駆体、フェライト(Fe)前駆体及び水を含む金属前駆体溶液を塩基性水溶液と接触させて沈殿物を得るステップ;(B)上記沈殿物をろ過し焼成して、亜鉛フェライト触媒を得るステップ;及び(C)上記亜鉛フェライト触媒に酸を担持するステップを含む金属複合触媒の製造方法を提供する。
【0009】
また、本明細書の一実施態様は、上述した金属複合触媒の製造方法によって製造された金属複合触媒をブテンの酸化的脱水素化反応に使用して、ブタジエンを製造するステップを含むブタジエンの製造方法を提供する。
【0010】
本明細書の一実施態様は、亜鉛フェライト触媒及び酸を含む金属複合触媒を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本明細書の一実施態様に係る金属複合触媒の製造方法は、亜鉛フェライト触媒にリン酸を担持して、酸化的脱水素化反応の副反応である完全酸化反応を抑制して、ブテンの転換率を向上し、ブタジエンの選択度を増加させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本明細書の一実施態様に係る金属複合触媒の製造方法を実施するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
【0014】
本明細書において、「収率(%)」は、酸化的脱水素化反応の生成物である1,3-ブタジエン(BD)の重量を、原料であるブテン(BE)の重量で割った値と定義される。例えば、収率は、下記の式で表されることができる。
【0015】
収率(%)=[(生成された1,3-ブタジエンのモル数)/(供給されたブテンのモル数)]×100
【0016】
本明細書において、「転換率(conversion,%)」は、反応物が生成物に転換される割合を言い、例えば、ブテンの転換率は、下記の式で定義されることができる。
【0017】
転換率(%)=[(反応したブテンのモル数)/(供給されたブテンのモル数)]×100
【0018】
本明細書において、「選択度(%)」は、ブタジエンの変化量をブテンの変化量で割った値と定義される。例えば、選択度は、下記の式で表されることができる。
【0019】
選択度(%)=[(生成された1,3-ブタジエン又はCOxのモル数)/(反応したブテンのモル数)]×100
【0020】
本明細書において、「COx」は、酸化的脱水素化反応時に形成される一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)などを含む化合物を意味する。
【0021】
本明細書において、「ブタジエン」は、1,3-ブタジエンを意味する。
【0022】
本明細書の一実施態様は、(A)亜鉛(Zn)前駆体、フェライト(Fe)前駆体及び水を含む金属前駆体溶液を塩基性水溶液と接触させて沈殿物を得るステップ;(B)上記沈殿物をろ過し焼成して、亜鉛フェライト触媒を得るステップ;及び(C)上記亜鉛フェライト触媒に酸を担持するステップを含む金属複合触媒の製造方法を提供する。
【0023】
酸化的脱水素化反応に使用される亜鉛フェライト触媒(ZnFe)は、一般に、共沈法で製造される。共沈法で製造された触媒は、バルク(bulk)の形態に製造されるため、α-酸化鉄(α-Fe)相を形成する。このα-酸化鉄(α-Fe)相は、ブテンの酸化的脱水素化反応で生成物である1,3-ブタジエンの選択度を減少させる原因として作用する。
【0024】
そこで、本発明者らは、共沈法で製造された亜鉛フェライト触媒にリン酸を担持して、ブテンの酸化的脱水素化反応の副反応である完全酸化反応を抑制した。完全酸化時に酸素(O)6個を消耗するようになるが、完全酸化反応を抑制すると、反応物であるブテンと共に供給する酸素の消耗を減少させて、最終的に、ブテンの転換率及びブタジエン選択度を向上することができる。これを通じて、共沈法で製造された亜鉛フェライト触媒の反応性を改善させることができた。
【0025】
また、触媒の押出成形過程で酸を添加する場合(韓国公開特許2014-0082869)、これは無機バインダーを解膠(Peptizing)するための目的であるが、この場合、押出後の熱処理過程で酸が除去されるので、酸が反応に用いられない。しかしながら、本発明のように、触媒に酸を担持する場合には、担持触媒として酸化的脱水素化反応に用いられることであるので、酸を用いる目的が異なっている。
【0026】
本明細書の一実施態様によれば、上記(A)ステップにおいて、上記金属前駆体溶液の水100wt%を基準に、上記亜鉛前駆体の含量は、0.1wt%~5wt%であってもよく、具体的には0.1wt%~3wt%であってもよい。
【0027】
本明細書の一実施態様によれば、上記(A)ステップにおいて、上記金属前駆体溶液の水100wt%を基準に、上記フェライト前駆体の含量は、1wt%~10wt%であってもよく、具体的には1wt%~7wt%であってもよい。上記亜鉛前駆体及びフェライト前駆体の含量が上記範囲を満足する場合、共沈法による沈殿物の形成時に金属複合触媒の合成が容易である。
【0028】
本明細書の一実施態様によれば、上記(C)ステップにおいて、上記酸は、リン酸であってもよい。具体的に、共沈法で製造された亜鉛フェライト触媒にリン酸を担持して触媒を製造する場合、ブテンの酸化的脱水素化反応時に副反応である完全酸化反応を抑制することができる。
【0029】
本明細書の一実施態様によれば、上記(C)ステップにおいて、上記亜鉛フェライト触媒100wt%を基準に、上記酸の含量は、0.05wt%~0.2wt%であってもよく、より具体的には、0.05wt%~0.1wt%であってもよい。上記酸の含量が0.05wt%未満の場合、リン酸が十分に担持されなくて、酸化的脱水素化反応の副反応を十分予防することができず、0.2wt%超過の場合、酸が過度に担持されて触媒の活性を抑制して、ブテンの転換率及びブタジエン選択度が減少されるおそれがある。
【0030】
本明細書の一実施態様によれば、上記亜鉛前駆体及び上記フェライト前駆体は、それぞれ独立して、硝酸塩(nitrate)、アンモニウム塩(ammonium salt)、硫酸塩(sulfate)及び塩化物(chloride)からなる群より選択される1種以上又はこれの水和物であってもよい。
【0031】
本明細書の一実施態様によれば、上記亜鉛前駆体は、塩化亜鉛(ZnCl)であってもよい。
【0032】
本明細書の一実施態様によれば、上記フェライト前駆体は、フェリッククロライドハイドレート(FeCl・6HO)であってもよい。
【0033】
本明細書の一実施態様によれば、上記塩基性水溶液のpHは、7~11であってもよい。具体的には、上記塩基性水溶液のpHは、7超過11以下であってもよい。より具体的には、上記塩基性水溶液のpHは、8~11であってもよい。上記塩基性水溶液のpHが上記範囲を満足する場合、金属複合触媒を安定して生成する効果がある。
【0034】
本明細書の一実施態様によれば、上記塩基性水溶液は、水酸化カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、及びアンモニア水からなる群より選択された1種以上であってもよい。好ましくはアンモニア水であってもよい。
【0035】
本明細書の一実施態様によれば、上記塩基性水溶液の濃度は、20wt%~40wt%であってもよい。具体的に、上記塩基性水溶液の濃度は、25wt%~30wt%であってもよい。
【0036】
本明細書の一実施態様によれば、上記沈殿物を得るステップは、上記金属前駆体溶液を上記塩基性水溶液と接触後、撹拌するステップをさらに含むことができる。上記撹拌するステップをさらに含むことにより、金属前駆体の沈殿形成が容易になって触媒粒子の形成が有利である。
【0037】
本明細書の一実施態様によれば、上記撹拌するステップは、常温で行われることができる。
【0038】
本明細書の一実施態様によれば、上記撹拌する方法は、液状と液状を混合する方法であれば、制限なく使用されることができる。
【0039】
本明細書の一実施態様によれば、上記撹拌するステップの撹拌時間は、30分~3時間であってもよい。具体的に、撹拌時間は、1時間~2時間が好ましい。
【0040】
本明細書の一実施態様によれば、上記沈殿物をろ過後、焼成する前に、洗浄するステップをさらに含むことができる。上記洗浄するステップをさらに含むことにより、沈殿物内に残っている不要なイオン(ion)を除去することができる。
【0041】
本明細書の一実施態様によれば、上記(B)ステップにおいて、上記沈殿物をろ過後、焼成する前に、乾燥するステップをさらに含むことができる。
【0042】
本明細書の一実施態様によれば、上記乾燥するステップは、上記沈殿物をろ過してから、洗浄するステップを経た後、焼成する前に行われることができる。
【0043】
本明細書の一実施態様によれば、上記乾燥するステップは、80℃~150℃で乾燥することができる。
【0044】
本明細書の一実施態様によれば、上記沈殿物を焼成するステップは、1℃/minの速度で650℃まで昇温した後、6時間焼成過程を経るステップであってもよい。上記焼成する方法は、当該技術分野で通常使用される熱処理方法であってもよい。
【0045】
本明細書の一実施態様によれば、上記沈殿物を焼成するステップは、焼成炉に1L/minの空気を注入して行われることができる。
【0046】
本明細書の一実施態様によれば、上記(B)ステップで得られた亜鉛フェライト触媒を(C)ステップの前に粉砕するステップをさらに含むことができる。
【0047】
本明細書の一実施態様によれば、上記(C)ステップにおいて、上記亜鉛フェライト触媒に酸を担持するステップの後の金属複合触媒粒子の大きさは、0.6mm~0.85mmであってもよい。
【0048】
本明細書の一実施態様によれば、上記(C)ステップの後に、リン酸が担持された亜鉛フェライト触媒を焼成するステップをさらに含むことができる。具体的に、1℃/minの速度で500℃まで昇温した後、6時間焼成過程を経るステップであってもよい。
【0049】
本明細書の一実施態様によれば、上記金属複合触媒の製造方法は、ブテンの酸化的脱水素化反応用の金属複合触媒の製造方法であってもよい。
【0050】
本明細書の一実施態様は、上述した金属複合触媒の製造方法によって製造された金属複合触媒を提供する。
【0051】
本明細書の一実施態様は、上述した金属複合触媒の製造方法による金属複合触媒をブテンの酸化的脱水素化反応に使用して、ブタジエンを製造するステップを含むブタジエンの製造方法を提供する。
【0052】
本明細書のもう一つの実施態様は、亜鉛フェライト触媒及び酸を含む金属複合触媒を提供する。
【0053】
本明細書の一実施態様によれば、上記酸は、リン酸であってもよい。
【0054】
本明細書の一実施態様によれば、上記金属複合触媒は、亜鉛フェライト触媒に酸が担持された形態であってもよい。
【0055】
本明細書の一実施態様によれば、上記金属複合触媒粒子の大きさは、0.6mm~0.85mmであってもよい。
【0056】
本明細書の一実施態様によれば、亜鉛フェライト触媒及び酸を含む金属複合触媒を提供することができる。リン酸は焼成中に除去されないので、初期に投入した量がそのまま残っていることがある。具体的に、上記金属複合触媒の全重量を基準に、酸の含量は、0.05wt%~0.2wt%であってもよく、より具体的には、0.05wt%~0.1wt%であってもよい。また、上記金属複合触媒の全重量を基準に、亜鉛フェライト触媒は、99.8wt%~99.95wt%であってもよい。
【0057】
上記酸の含量が0.05wt%未満の場合、リン酸が十分に担持されなくて、酸化的脱水素化反応の副反応を十分予防することができず、0.2wt%超過の場合、リン酸が過度に担持されて触媒の活性を抑制して、ブテンの転換率及びブタジエン選択度が減少されるおそれがある。
【0058】
また、本明細書の一実施態様は、上述した金属複合触媒をブテンの酸化的脱水素化反応に使用して、ブタジエンを製造するステップを含むブタジエンの製造方法を提供する。
【0059】
本明細書の一実施態様によれば、上記ブタジエンを製造するステップは、C4混合物を含む反応物を用いることができる。上記C4混合物は、一例として、2-ブテン(trans-2-Butene、cis-2-Butene)及び1-ブテン(1-Butene)の中から選択された1種以上のノルマルブテンを含み、選択的にノルマルブタンやC4ラフィネート-3をさらに含むことができる。上記反応物は、一例として、空気、窒素、スチーム及び二酸化炭素の中から選択された1種以上をさらに含むことができ、好ましくは、窒素及びスチームをさらに含むものである。具体的な一例として、上記反応物は、C4混合物、酸素、スチーム及び窒素を1:0.1~1.5:1~15:0.5~10又は1:0.5~1.2:5~12:0.5~5のモル比で含むことができる。また、本明細書の一実施態様に係るブタジエンの製造方法は、C4混合物1モルに対し1モル~10モル又は5モル~10モルといった少量のスチームを使用しても、反応効率に優れ、廃水発生が少ないという利点があり、最終的には、廃水処理コストはもちろん、工程に消耗されるエネルギーを節減する効果を提供する。上記酸化的脱水素化反応は、一例として、250℃~500℃、300℃~450℃、320℃~400℃、330℃~380℃又は350℃~370℃の反応温度で行うことができ、この範囲内でエネルギー費用を大きく増加させることなく反応効率に優れていて、1,3-ブタジエンを生産性良く提供することができる。
【0060】
本明細書の一実施態様によれば、上記ブタジエンを製造するステップは、単一の反応器で360℃の反応温度、GHSV(Gas Hourly Space Velocity)120h-1の条件で行われ、上記反応物は、C4混合物:酸素:スチーム:窒素を1:0.67:5:2.67のモル比で含むことができる。
【0061】
また、本明細書の一実施態様によれば、上記ブタジエンを製造するステップは、二段反応器(酸素未分割のケースで360℃の反応温度、GHSV(Gas Hourly Space Velocity)120h-1の条件で行われ、上記反応物は、C4混合物:酸素:スチーム:窒素を1:0.67:5:2.67のモル比で含むことができる。
【0062】
図1は、本明細書の一実施態様に係る金属複合触媒の製造方法を実施するための例示的な工程図である。
【0063】
本明細書の一実施態様によれば、ブテンの酸化的脱水素化反応用触媒を共沈法で製造時に形成されるα-酸化鉄(α-Fe)相のブタジエン選択度を減少させる現象を防止するために、製造した触媒にリン酸を担持して、ブテンの酸化的脱水素化反応の副反応である完全酸化反応を抑制することができる。これを通じて、共沈法で製造された亜鉛フェライト触媒の反応性を改善させることができる。
【0064】
上記の通り、本明細書の一実施態様に係る金属複合触媒は、ブテンの酸化的脱水素化反応時にブテンの転換率及びブタジエンの選択度を増加させて、最終的に、高い収率のブタジエンを製造することができる。
【実施例
【0065】
以下、本明細書を具体的に説明するために、実施例を挙げて詳細に説明する。ところが、本明細書に係る実施例は、種々の異なる形態に変形されることができ、本明細書の範囲が以下に述べる実施例に限定されるものとは解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0066】
<実施例1>
【0067】
塩化亜鉛(ZnCl)12.019g及び塩化第二鉄(FeCl)37.662gを404.59gの蒸留水に溶解させて金属前駆体溶液を準備した。このとき、上記金属前駆体溶液に含まれた金属成分のモル比は、Zn:Fe=1:2であった。上記準備した金属前駆体水溶液にpH9となるようにアンモニア水溶液を滴加し、1時間撹拌して、共沈させた。その後、共沈液を減圧ろ過して、共沈物を得て、これを90℃で16時間乾燥した後、空気雰囲気下に、80℃で1℃/minの昇温速度で650℃まで昇温した後、6時間維持して、スピネル構造を持つ亜鉛-鉄酸化物(ZnFe)粉末を製造した。リン酸は、0.05wt%担持した。
【0068】
<実施例2>
【0069】
実施例1において、リン酸0.05wt%の代わりにリン酸0.1wt%を担持すること以外には、実施例1と同様の方法で金属複合触媒を製造した。
【0070】
<実施例3>
【0071】
実施例1において、リン酸0.05wt%の代わりにリン酸0.2wt%を担持すること以外には、実施例1と同様の方法で金属複合触媒を製造した。
【0072】
<比較例1>
【0073】
DI water1,500gに20.865gのZnCl及び81.909gのFeCl・6HOを入れて完全に溶解させて、金属前駆体溶液を製造した。DI water1,500gを反応器に入れ、上記金属前駆体溶液と28~30wt%のアンモニア水を反応器に同時に入れて、pHは8を維持して触媒沈殿物を形成した。
【0074】
形成された沈殿物は、ろ紙を用いてろ別した後、90℃のオーブンで乾燥した。その後、1℃/minの速度で650℃まで昇温した後、650℃で6時間焼成過程を経た。このとき、1L/minの空気を焼成炉に注入しながら焼成を進行して、金属複合触媒を製造した。
【0075】
<比較例2>
【0076】
実施例1において、リン酸0.05wt%の代わりにリン酸0.3wt%を担持すること以外には、実施例1と同様の方法で金属複合触媒を製造した。
【0077】
<比較例3>
【0078】
実施例1において、リン酸0.05wt%の代わりにリン酸0.4wt%を担持すること以外には、実施例1と同様の方法で金属複合触媒を製造した。
【0079】
<比較例4>
【0080】
実施例1において、リン酸0.05wt%の代わりにリン酸0.6wt%を担持すること以外には、実施例1と同様の方法で金属複合触媒を製造した。
【0081】
<比較例5>
【0082】
マンガンフェライト触媒(MnFe)を粉砕した後、1℃/minの速度で500℃まで昇温した後、500℃で6時間焼成過程を経て、金属複合触媒を製造した。
【0083】
<実験例1-1>
【0084】
40wt%のシス-2-ブテン(cis-2-butene)及び60wt%のトランス-2-ブテン(trans-2-butene)組成の2-ブテン(2-butene)反応物、実施例1で製造した金属複合触媒0.1g、GHSV=262h-1、OBR=1、SBR=5、NBR=4、反応温度380℃の条件で、ブテンの酸化的脱水素化反応によってブタジエンを製造した。
【0085】
(GHSV=Gas hourly space velocity、OBR=Oxygen/total 2-butene ratio、SBR=Steam/total 2-butene ratio、NBR=Nitrogen/total 2-butene ratio)
【0086】
<実験例1-2>
【0087】
実験例1-1において、反応温度380℃の代わりに反応温度400℃であること以外には、実験例1-1と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0088】
<実験例1-3>
【0089】
実験例1-1において、反応温度380℃の代わりに反応温度440℃であること以外には、実験例1-1と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0090】
<実験例1-4>
【0091】
実験例1-1において、実施例1で製造した金属複合触媒の代わりに実施例2で製造した金属複合触媒を使用したこと以外には、実験例1-1と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0092】
<実験例1-5>
【0093】
実験例1-4において、反応温度380℃の代わりに反応温度400℃であること以外には、実験例1-4と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0094】
<実験例1-6>
【0095】
実験例1-4において、反応温度380℃の代わりに反応温度440℃であること以外には、実験例1-4と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0096】
<実験例1-7>
【0097】
実験例1-1において、実施例1で製造した金属複合触媒の代わりに実施例3で製造した金属複合触媒を使用したこと以外には、実験例1-1と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0098】
<実験例1-8>
【0099】
実験例1-7において、反応温度380℃の代わりに反応温度400℃であること以外には、実験例1-4と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0100】
<実験例1-9>
【0101】
実験例1-7において、反応温度380℃の代わりに反応温度440℃であること以外には、実験例1-4と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0102】
<比較例1-1>
【0103】
実験例1-1において、実施例1で製造した金属複合触媒の代わりに比較例1で製造した金属複合触媒を使用したこと以外には、実験例1-1と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0104】
<比較例1-2>
【0105】
比較例1-1において、反応温度380℃の代わりに反応温度400℃であること以外には、比較例1-1と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0106】
<比較例1-3>
【0107】
比較例1-1において、反応温度380℃の代わりに反応温度440℃であること以外には、比較例1-1と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0108】
<比較例1-4>
【0109】
実験例1-1において、実施例1で製造した金属複合触媒の代わりに比較例2で製造した金属複合触媒を使用したこと以外には、実験例1-1と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0110】
<比較例1-5>
【0111】
比較例1-4において、反応温度380℃の代わりに反応温度400℃であること以外には、比較例1-4と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0112】
<比較例1-6>
【0113】
比較例1-4において、反応温度380℃の代わりに反応温度440℃であること以外には、比較例1-4と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0114】
<比較例1-7>
【0115】
実験例1-1において、実施例1で製造した金属複合触媒の代わりに比較例3で製造した金属複合触媒を使用したこと以外には、実験例1-1と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0116】
<比較例1-8>
【0117】
比較例1-7において、反応温度380℃の代わりに反応温度400℃であること以外には、比較例1-7と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0118】
<比較例1-9>
【0119】
比較例1-7において、反応温度380℃の代わりに反応温度440℃であること以外には、比較例1-7と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0120】
<比較例1-10>
【0121】
実験例1-1において、実施例1で製造した金属複合触媒の代わりに比較例4で製造した金属複合触媒を使用したこと以外には、実験例1-1と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0122】
<比較例1-11>
【0123】
比較例1-10において、反応温度380℃の代わりに反応温度400℃であること以外には、比較例1-10と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0124】
<比較例1-12>
【0125】
比較例1-10において、反応温度380℃の代わりに反応温度440℃であること以外には、比較例1-10と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0126】
<比較例1-13>
【0127】
実験例1-1において、実施例1で製造した金属複合触媒の代わりに比較例5で製造した金属複合触媒を使用したこと以外には、実験例1-1と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0128】
<比較例1-14>
【0129】
比較例1-13において、反応温度380℃の代わりに反応温度400℃であること以外には、比較例1-13と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0130】
<比較例1-15>
【0131】
比較例1-13において、反応温度380℃の代わりに反応温度440℃であること以外には、比較例1-13と同様の方法でブタジエンを製造した。
【0132】
上記実験例1-1~1-9及び比較例1-1~1-15のブテンの酸化的脱水素化反応で、ブテン転換率及びブタジエン選択度を測定した結果を、下記表1に示す。
【0133】
[表1]
【表1】
【0134】
上記表1によれば、実施例1~3によって製造された金属複合触媒は、既存の共沈法によって形成された亜鉛フェライト触媒にリン酸を担持して、ブテンの転換率及びブタジエン選択度を向上することができる。これは、ブテンの酸化的脱水素化反応の副反応である完全酸化反応を抑制できるからである。
【0135】
実験例1-1~1-9と比較例1-1~1-3とを比較すると、既存の共沈法によって形成された亜鉛フェライト触媒で酸化的脱水素化反応を行った比較例1-1~1-3に比べて、リン酸を担持した亜鉛フェライト触媒を使用した実験例1-1~1-9が、反応温度380℃、400℃、440℃の全領域でブテン転換率及びブタジエン選択度が高いことを確認することができる。
【0136】
実験例1-1~1-9と比較例1-4~1-12とを比較すると、亜鉛フェライト触媒に0.3wt%以上のリン酸を担持した比較例1-4~1-12に比べて、リン酸0.05wt%~0.2wt%を担持した実験例1-1~1-9が、反応温度380℃、400℃、440℃の全領域でブテン転換率及びブタジエン選択度が高いことを確認することができる。
【0137】
特に、比較例1-7~1-12のリン酸0.4wt%以上を担持した場合、ブテン転換率及びブタジエン選択度が顕著に低下することを確認することができる。
【0138】
実験例1-1~1-6と比較例1-13~1-15とを比較すると、ブテンの酸化的脱水素化反応時にマンガンフェライト触媒にリン酸を担持した比較例1-13~1-15に比べて、亜鉛フェライト触媒にリン酸を担持した実験例1-1~1-6のブテン転換率及びブタジエン選択度が顕著に優れていることを確認することができた。
【0139】
以上の通り、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の範囲内で様々に変形して実施することが可能であり、これも発明の範疇に属する。
図1