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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】液体吐出ユニットと画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20220315BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20220315BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20220315BHJP
   B41J 2/19 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/18
B41J2/175 121
B41J2/175 111
B41J2/19
B41J2/175 305
B41J2/175 201
B41J2/175 501
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018007083
(22)【出願日】2018-01-19
(65)【公開番号】P2019123207
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼洋平
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-184384(JP,A)
【文献】特開2007-261237(JP,A)
【文献】特開2015-100988(JP,A)
【文献】特開平10-181039(JP,A)
【文献】特開2007-105929(JP,A)
【文献】特開平05-330076(JP,A)
【文献】特開2011-168027(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0283819(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容するメインタンクと、液体を吐出する液滴吐出ヘッドと、該液滴吐出ヘッドに液体を供給するサブタンクと、前記メインタンクと前記サブタンクを接続する第1の液体供給路と、前記サブタンクと前記液滴吐出ヘッドを接続する第2の液体供給路と、該第2の液体供給路に設けられる第1の切り替え弁によって液体を前記サブタンクから前記メインタンクへ戻すことが可能なように前記第2の液体供給路と前記メインタンクを接続する液体戻り路と、前記第1の液体供給路に設けられ前記サブタンクへ液送可能な第1のポンプと、前記液体戻り路に設けられ前記メインタンクへ液送可能な第2のポンプと、を備え、前記メインタンクに両端が接続された第2の液体戻り路が設けられ、前記第2の液体戻り路は前記第1の液体供給路とは異なる経路である液体吐出ユニット。
【請求項2】
前記第1の切り替え弁よりも下流側にフィルター及び/又は脱気モジュールが設けられることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ユニット。
【請求項3】
前記メインタンク及び/又は前記サブタンクが下方に向かって狭まっており、その最下端に流出口が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ユニット。
【請求項4】
前記メインタンク及び/又は前記サブタンクに、収容する液体を攪拌する手段が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ユニット。
【請求項5】
前記サブタンクに液量を検知する検知器を備え、前記サブタンク内の液量が所定値より多ければ、前記第1の切り替え弁を切り替えて液体を前記サブタンクから前記メインタンクへ戻すことが可能とし、その状態で前記第2のポンプを駆動させ、前記サブタンク内の液量が前記所定値に達したら、前記第2のポンプの駆動を停止することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の液体吐出ユニット。
【請求項6】
前記第1の液体供給路の、前記第1のポンプの下流側に、第3の切り替え弁を設け、その2つのポートの各々に前記サブタンクを接続させ、前記サブタンクの夫々と前記メインタンクを接続する液体戻り路が形成され、前記液体戻り路の夫々に前記第2のポンプを設けるとともに、前記サブタンク間を接続しつつ夫々の前記液体戻り路とつながる経路に第4の切り替え弁を設け、前記第4の切り替え弁の1つのポートに前記液滴吐出ヘッドと接続する共通の液体供給路を設けることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の液体吐出ユニット。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の液体吐出ユニットを有する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッドを備えた液体吐出ユニットと、該液体吐出ユニットを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式を用いる画像形成装置などの出力装置は、数ピコリットルのインク(液滴)を数十ミクロンのインク吐出口(ノズル)から吐出するシビアな技術である。そのため、インクやノズルのコンディションが悪化した場合、液滴が真っ直ぐ飛ばなかったり、不吐出を引き起こしたりし易い。
【0003】
例えば、ノズル周辺の撥水性の膜が劣化するとその部分からインクを除去しづらくなる。残ったインクが乾燥して、ノズルを塞いだりすると吐出不良の原因となる。吐出不良を招く要因は他にも多々あるが、そのうちの一つが沈降性インクの沈降や凝集によるノズル詰まりである。
【0004】
また、インクジェット装置において白インクの白さ、隠蔽性を高めるために使用される色材は比重が大きく、沈降し易い場合がある。このようなインクをインクジェット装置で使用する場合、インクジェット装置を一定時間放置すると、含有される色材が不均一に凝集し、供給経路内や供給モジュール内に沈降する。ノズルを備える記録ヘッド内では、ノズルが詰まって不吐出となる場合や、吐出できても均一な画像濃度で印字することができなくなり、スジやバンディングの原因となる。
【0005】
その対策として、供給系を加圧してノズルからインク排出することが行われ、吐出能を回復させることができるが、このようなメンテナンスに頼ると一定間隔で多量のインクを捨てることになり、インク消費コストが増加する問題があった。特にUVインクの場合はインク単価が高いため、ユーザーにとっての負担増大と商品の競争力低下につながり易い問題といえる。
【0006】
他にも、インク供給経路内で循環させることで沈降粒子を攪拌する機構も知られている。例えば特許文献1には、記録ヘッドにインクを安定供給することを目的に、ヘッドタンクであるサブタンクとインクカートリッジであるメインタンクの間でインクを循環するだけでなく、サブタンクに別のインク循環経路を形成して、このインク循環経路から記録ヘッドにインクを送ることが開示されている。
【0007】
しかしながら、このような開示技術では、サブタンク、即ち、ヘッドタンク内で沈降する粒子が記録ヘッドに流れる問題があり、全インク供給経路内全体を確実に攪拌するためには更なる工夫が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、沈降性インクを使用したインクジェット装置でも、従来技術に比べて捨てインク量の低減を図りながら、インク供給系全体を確実に攪拌することで、安定吐出と均一な画像濃度を実現することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、液滴吐出ユニットが、液体を収容するメインタンクと、液体を吐出する液滴吐出ヘッドと、該液滴吐出ヘッドに液体を供給するサブタンクと、前記メインタンクと前記サブタンクを接続する第1の液体供給路と、前記サブタンクと前記液滴吐出ヘッドを接続する第2の液体供給路と、該第2の液体供給路に設けられる第1の切り替え弁によって液体を前記サブタンクから前記メインタンクへ戻すことが可能なように前記第2の液体供給路と前記メインタンクを接続する液体戻り路と、前記第1の液体供給路に設けられ前記サブタンクへ液送可能な第1のポンプと、前記液体戻り路に設けられ前記メインタンクへ液送可能な第2のポンプと、を備え、前記メインタンクに両端が接続された第2の液体戻り路が設けられ、前記第2の液体戻り路は前記第1の液体供給路とは異なる経路であることにより、解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インク経路内のみならず、サブタンク内で沈降している粒子も積極的に流れる構成となるため、インク経路内全体を攪拌することができ、捨てインク量の低減を図りながら、安定吐出と均一な画像濃度での印字を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る液体吐出ユニットのインク供給経路とインク循環経路の構成を示す概念図である。
図2】インク循環経路とフィルターや脱気モジュールの位置関係を説明する概念図である。
図3】本発明の実施の形態に係る液体吐出ユニットにおけるタンク形状の一例を説明する概念図である。
図4】本発明の実施の形態に係る液体吐出ユニットにおける攪拌子による攪拌を説明する概念図である。
図5図4とは別のタンク攪拌機構を示す概念図である。
図6】メインタンクでのみ個別循環する構成を加えた実施の形態を示す概念図である。
図7】インク循環動作のシーケンスを説明するフロー図である。
図8図7のシーケンスに伴うインク供給/循環とサブタンク内の液面の様子を説明する図である。
図9】一色2ヘッドの構成の場合の、インク供給とインク循環を説明する概念図である。
図10】本発明に係る画像形成装置の一例であるインクジェット記録装置を斜め前方から見た斜視図である。
図11図10のインクジェット記録装置の機構部の概要を示す側面図である。
図12図10のインクジェット記録装置の機構部の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、記録ヘッドはインクジェット記録装置の各色に対応して夫々少なくとも1個存在し、各記録ヘッドに対応する色のインクを供給するためのサブタンクであるヘッドタンクが各記録ヘッドに、あるいは同色用の記録ヘッドに共通させて付設され、ヘッドタンクに相応しい色のインクを供給するためのメインタンクであるインクカートリッジが各ヘッドタンクに、あるいは同色用のヘッドタンクに共通させて備えられている。しかし、以下では理解を容易にするため、記録ヘッド、ヘッドタンク、インクカートリッジを夫々1個のものとして説明し、また図示する。
【0013】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る液体吐出ユニットであるインクジェット記録装置用の液滴吐出ユニットでは、液体であるインクを収容するメインタンクであるインクカートリッジ110とサブタンクであるヘッドタンク135の間には、所定の色のインクを一時的に貯留するヘッドタンク135に該インクを供給するための第1のインク供給路10が設けられ、ヘッドタンク135と液滴吐出ヘッドである記録ヘッド134の間には、記録ヘッド134にインクを供給するための第2のインク供給路12が設けられている。第2のインク供給路12の途中には、第1の切り替え弁である三方弁(3ポートタイプの電磁弁)14が備えられ、その1つのポートを用いて第2のインク供給路12から分岐してインクカートリッジ110に接続するインク戻り路16が形成されている。三方弁14はヘッドタンク135の出口ポートの直後に設けることも可能である。第1のインク供給路10にはインクカートリッジ110からヘッドタンク135に向かって送液可能な第1のポンプである供給ポンプ18が備えられ、インク戻り路16にはヘッドタンク135からインクカートリッジ110に向かって送液可能な第2のポンプである循環ポンプ20が備えられている。この循環ポンプは、ヘッドタンクと記録ヘッドの間隔に余裕があれば、インク戻り路ではなく、三方弁14の上流側の第2のインク供給路に設置することも可能である。
【0014】
インクジェット装置の形式は問わず、フラットベッド、デスクトップ、ワイドフォーマットなどのシリアル機(記録材を搬送しながら記録ヘッドを往復運動させて1ラインずつ印字を行う印字機)でもライン機(紙幅の記録ヘッドを用いて主走査方向には非走査で印字を行う印字機)でも本供給系の構成は適用可能である。
【0015】
このようにインク戻り路を第2のインク供給路から分岐するように構成することで、インクカートリッジからヘッドタンクへ、そしてヘッドタンクから記録ヘッドへとインクが供給される過程において、インクの沈降又は凝集粒子を攪拌でき、つまり、インクとしての濃度変動が小さくなるようにインク供給系全体を攪拌でき、これら沈降又は凝集粒子が記録ヘッドに供給されることを防止できる。また、インク戻り路をヘッドタンクと記録ヘッドを結ぶ第2のインク供給路と独立した経路とする構成(言い換えれば、インクカートリッジとヘッドタンクの間でインク戻り路を形成する構成)に比べて、第2のインク供給路内のインクも攪拌することとなる。
【0016】
インクジェット装置では、インクに不純物が混じると吐出不良を引き起こす。ただ、記録ヘッドにフロースルー機能を備える場合、ヘッド内部の共通液室と個別液室をインクが循環するようになっており、循環するインク対流によりインク内の気泡を排出することができるので、インク内の気泡を原因とする吐出不良が発生しにくく、インク内の気泡やごみ、ノズル(インク吐出口)からの気泡巻き込みに対して比較的寛容な構成である。しかしながら、フロースルー機能を備えない場合、ヘッド内部でインクを循環できないので、記録ヘッドの上流側に、インク内の気泡を取り除くための脱気モジュール(脱気Md)やインク内のごみを取り除くためのフィルターを設ける必要がある。
【0017】
そのようなフィルターや脱気Mdを備えたインク供給系における本発明の実施の形態を図2に示す。なお、図1に示す実施の形態と共通の構成については、同じ参照符号を付すことで、その説明を省略する。
【0018】
インク戻り路16を生み出す三方弁14は、沈降又は凝集粒子によるフィルター22や脱気Md24の目詰まりの発生を防止するために、フィルター22や脱気Md24よりも上流側に配置される。つまり、フィルター22や脱気Md24は三方弁14よりも記録ヘッド側、即ち、下流側にある。このような構成により沈降又は凝集粒子がフィルター22や脱気Md24へ運ばれることを抑制できる。一方、インク戻り路16、循環ポンプ20を用いる構成では、攪拌プロセスのポンプ流量や循環経路によっては気泡を巻き込み易くなるので、フィルター22や脱気Md24を記録ヘッド134の流入ポート直前に設置することで得られる効果も大きい。
【0019】
次に、供給系内にあるインク全体を積極的に動かし、攪拌するための実施形態を説明する。これは、流れが発生しない場所(淀み)ができない構成として、カートリッジ/タンク内インクの沈降粒子を積極的に流出し易いようにするものである。最も淀み易いと考えられるのはインクカートリッジの隅、ヘッドタンクの隅であり、更にカートリッジ/タンク内の底にはインクの沈降粒子が集まり易い。
【0020】
そこでインクカートリッジやヘッドタンクの形状やインク供給経路の接続位置に関して特定する本発明の実施の形態を図3に示す。なお、図1に示す実施形態と共通の構成については、同じ参照符号を付すことで、その説明を省略し、また三方弁以降のインク供給路、記録ヘッドについては図示を省略する。
【0021】
インクカートリッジ110やヘッドタンク135は下方に向かって狭まっており、夫々の最下端に流出口が設けられている。図3の左側描写はインクを循環する状態を示す。図3の中央描写は循環を停止して、記録ヘッド134へインクを送液して一定時間経過した状態を示す。インクカートリッジ110、ヘッドタンク135夫々の下部に沈降粒子が集まっている。図3の右側描写は、中央描写の沈降粒子が集まった状態を解消するためにインクを再循環する初期の状態を示す。インクカートリッジ110にはヘッドタンク135の沈降粒子が流れて拡散し、ヘッドタンク135にはインクカートリッジ110の沈降粒子が流れて拡散している。このような構成によってカートリッジ/タンク内の沈降インクをカートリッジ/タンク外へ流し出し易くなり、攪拌状態を作り易くすることが可能となる。
【0022】
次に沈降又は凝集粒子を攪拌するための別の構成を説明する。これは、先に説明したタンク形状によるものとの併用でも、あるいは単独での使用も想定され得るものである。タンク攪拌機構としては、図4に示すように、メカニカルなものが想定される。単純にインクカートリッジ(メインタンク)110内に、攪拌する手段たる攪拌子26を設置して、常時又は一定時間おきに動力源28により攪拌子26を動かし、攪拌動作を行い、カートリッジ内の沈降粒子を攪拌して、沈降後の凝集やカートリッジ内壁への凝着を抑制する。このようにすることで、インク循環の循環時間を短縮化する。つまり、印刷装置のダウンタイムを少なくできるので生産性の向上につながる。記録ヘッドでインクを吐出中でもインクカートリッジ110内を攪拌することは可能である(図4の左側描写)。しかしながら、ヘッドタンク135内では粒子が徐々に沈降していく。そこで一定時間経過後には、インクカートリッジ110とヘッドタンク135の間で循環動作を行う(図4の右側描写)。その際、カートリッジ内の攪拌動作を停止してもよい。このように循環動作を行うことで、インクカートリッジ110内の攪拌されたインクがヘッドタンク135に流れ込むので、循環を何度も繰り返さなくとも、分散させることが可能である。
【0023】
なお、図4では図1に示す実施形態と共通の構成については、同じ参照符号を付すことで、その説明を省略し、また三方弁以降のインク供給路、記録ヘッドについては図示を省略している。図示例はインクカートリッジにのみ攪拌子を配置しているが、サイズ的に可能であればヘッドタンクにも攪拌子を配置してもよい。
【0024】
別の攪拌する手段たるタンク攪拌機構を図5に示す。これは、インクカートリッジ110が揺動機構30を備えたホルダー32に固定されるもので、インクカートリッジ110ごと揺動され、内部のインクを攪拌するものである。図5でも図1に示す実施形態と共通の構成については、同じ参照符号を付し、三方弁以降のインク供給路、記録ヘッドについて図示を省略している。
【0025】
例えばホワイトインクが複数の記録ヘッドで使用される場合、インクカートリッジは共通でヘッドタンク以下が記録ヘッドごとに必要とされる構成であることが殆どであるので、沈降系インクのみに循環機構やタンク内の攪拌機構を設置するのであれば、攪拌機構によるスペース増、コスト増は小さい。
【0026】
続いて、インクカートリッジ内の沈降又は凝集粒子に着目して攪拌するための構成を説明する。これは、図6に示すように、インクカートリッジ110からヘッドタンク135にインクを供給するための第1のインク供給路10の供給ポンプ18の下流側に第2の切り替え弁である三方弁(3ポートタイプの電磁弁)34を備えて、その1つのポートを用いて第1のインク供給路10から分岐してインクカートリッジ110に接続する第2の戻り路であるカートリッジ専用インク戻り路36を形成するものである。これによりメインタンクであるインクカートリッジにおいてのみ個別循環経路を構築できる。インクカートリッジについて十分攪拌した上で、インクカートリッジとヘッドタンクを通る循環経路で循環攪拌することで、循環経路全体での循環時間を短縮することが可能となる。なお、図6でも図1に示す実施形態と共通の構成については、同じ参照符号を付し、第2のインク供給路中の三方弁以降のインク供給路、記録ヘッドについては図示を省略している。
【0027】
第1のインク供給路から分岐するのではなく、カートリッジ専用インク戻り路の両端をインクカートリッジに接続する経路とすることも想定できるが、ヘッドタンク内の沈降又は凝集粒子も攪拌する構成と併用する方がインク供給経路における沈降又は凝集粒子の攪拌を確実に確保できるし、部品点数の低減にもつながって好ましい。
【0028】
ここで循環経路を使用した沈降粒子の攪拌動作に関する具体的な動作シーケンスを図1に示すインク経路の場合において説明する(図7図8)。
インク量(液量)を検知する例えばフロートセンサ(液面センサ)の形態をした検知器38がインクカートリッジ110内とヘッドタンク135内に夫々、備えられる。そして、メインタンクであるインクカートリッジ110内のインク量(液面)がLowレベルか否かが検知される(S1)。Lowレベルであれば「インクなし警告」が報知され、「機械停止」状態に遷移する。この状態では、機種に応じて、インクカートリッジを交換したり、インクカートリッジにインク補給したりする。
【0029】
インクカートリッジ110内のインク量がLowレベルまで減っておらず、サブタンクであるヘッドタンク135内のインク量がLowレベル/Emptyレベル(所定値)であれば(S2)、供給ポンプ18をオンにして第1のインク供給路10を介してヘッドタンク135にインクを充填する(S3、図8a)。ヘッドタンク135内のインク量がHighレベル/Fullレベルに達するまで供給ポンプ18の駆動が続けられる(図8b)。インク充填がスムーズに行くよう、ヘッドタンク135にはエア経路40が付設され、減圧が図られる。
【0030】
ヘッドタンク135内のインク量がHighレベル/Fullレベルに達すると(S4)、供給ポンプ18をオフして(S5)、即ち、インクカートリッジ110からのインク供給を停止する。そして第2のインク供給路12に設置された三方弁14を循環モードに切り替えて(S6)、インク戻り路16に設置された循環ポンプ20をオンにして(S7、図8c)、ヘッドタンク135からインクカートリッジ110に循環送液し、ヘッドタンク135内のインク量がLowレベル/Emptyレベルに達するまで循環ポンプ20の駆動が続けられる(図8d)。
【0031】
ヘッドタンク135内のインク量がLowレベル/Emptyレベルに達すると(S8)、循環ポンプ20をオフして(S9)、第2のインク供給路12に設置された三方弁14を通常モードに切り替える(S10、図8e)。ヘッドタンク135内のインク量がLowレベル/Emptyレベルに達した後、例えばユーサーインターフェイスを通してユーザーにより決定された所定時間が経過するまで、循環ポンプをオンしたままとし、しかる後にポンプオフしてもよい。
【0032】
そしてS2からS10までの供給ポンプのオン/オフ、三方弁(電磁弁)の切り替え、循環ポンプのオン/オフの循環動作の累積回数が所定の回数(閾値)に達したならば(S11)、インク循環シーケンスを終了する。これにより、インクカートリッジ110内とヘッドタンク135内に蓄えられたインクの沈降部分が攪拌される。
【0033】
なお、インクカートリッジ110とヘッドタンク135を一体的にインク循環するとともに、インクカートリッジ110のインクのみを循環する構成(図6の例)の場合には、図7のインク循環シーケンスにおいてインクカートリッジ110とヘッドタンク135とでインク循環するタイミングとは別に、ヘッドタンク135から記録ヘッド134へのインクを供給する通常モードの際に、第1のインク供給路10に設置された三方弁34を循環モードとして供給ポンプ18を駆動することで効率よくインクカートリッジ110内のインクを攪拌循環することができる。
【0034】
中型以上のインクジェット装置になると、吹き付け対象が大きくなるにつれて記録ヘッドの個数も増加傾向にある。最低でもインク種類の数以上のヘッドタンクが必要になる。本項の冒頭にも述べたが、上記の各実施の形態は、理解の容易化のために、記録ヘッド、ヘッドタンク、インクカートリッジを夫々1個のものとして説明し、また図示した。しかし、例えば、一色2ヘッドの構成で記録ヘッドごとにヘッドタンクが備えられる場合には、図9に示すように、第1のインク供給路10の供給ポンプ18の下流側に第3の切り替え弁である三方弁(3ポートタイプの電磁弁)42を設置し、その2つのポートを夫々ヘッドタンク135,135’に接続する。そして、各ヘッドタンク135,135’に対してインク戻り路16,16’を形成すると共に、ヘッドタンク間を接続しつつ各インク戻り路16,16’とつながる経路(共通経路)に三方弁44を設置し、1つのポートを2つの記録ヘッドにつなげるようにすれば、吐出と循環を平行して行うことが可能となる。このようにすれば、片方のヘッドタンクが2つの記録ヘッドに接続されて吐出状態を確保しながら、他方のヘッドタンクがインク循環状態となり、インク循環によるダウンタイムを発生させないことが可能となる。
【0035】
次に、上記した液体吐出ユニットを搭載する本発明に係る画像形成装置の一例としてインクジェット記録装置の一実施形態を説明する。図10は、該インクジェット記録装置を斜め前方から見た斜視図である。この図に示すインクジェット記録装置100は、装置本体101と、装置本体101に装着された用紙装填用の給紙トレイ102と、装置本体101に着脱自在に装着されて画像形成された記録紙をストックするための排紙トレイ103とを備えている。また、装置本体101の前面の一方側には、給排紙トレイ部に隣接するように、インクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部104が設けられている。このカートリッジ装填部104の上面には、操作ボタンや表示器などを配置した操作/表示部105が設けられている。
【0036】
カートリッジ装填部104には4つのインクカートリッジ110がセットされる。各インクカートリッジ110には、色の異なる色材である記録液(インク)、例えば黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色インクが収容される。これらのインクカートリッジ110は、装置本体101の前面側から後方側に向って挿入して装填可能で、縦置き状態で横方向に各インクカートリッジ110を並べて装填する構成となっている。カートリッジ装填部104の前面側には、インクカートリッジ110を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)106が開閉可能に設けられている。
【0037】
操作/表示部105には、各色のインクカートリッジ110の装着位置(配列順)に対応する配置で、各色インクカートリッジの残量がニアーエンド及びエンドになったことを表示するための4つの残量表示部111が配置されている。更に、操作/表示部105には、電源ボタン112、用紙送り/印刷再開ボタン113、キャンセルボタン114が配置されている。
【0038】
次に、このインクジェット記録装置の機構部について図11及び図12を参照して説明する。なお、図11は同機構部の概要を示す側面図、図12は同じく要部平面図である。
インクジェット記録装置の機構部において、フレーム121を構成する左右の側板121A、121Bに横架したガイド部材であるガイドロッド131とステー132とでキャリッジ133を主走査方向に摺動自在に保持し、ここでは図示しないが周知の主走査モータによってタイミングベルトを介して図12で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。本実施形態のインクジェット記録装置は、記録ヘッドが主走査方向に移動しながらインクを吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置である。
【0039】
キャリッジ133には、前述したようにイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴(液滴)を吐出する4個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド134が複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着されている。
【0040】
記録ヘッド134としては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0041】
この記録ヘッド134にはドライバICが搭載され、ここでは図示しないが周知の制御部との間でハーネス(フレキシブルプリントケーブル)122を介して接続している。また、キャリッジ133には、記録ヘッド134に各色のインクを供給するための各色のヘッドタンク135が搭載されている。この各色のヘッドタンク135には各色のインク供給チューブ136を介して、前述したように、カートリッジ装填部104に装着された各色のインクカートリッジ110から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填部104にはインクカートリッジ110内のインクを送液するための供給ポンプユニット124が設けられ、またインク供給チューブ136は這い回しの途中でフレーム121を構成する後板121Cに係止部材125にて保持されている。
【0042】
一方、給紙トレイ102の用紙積載部(圧板)141上に積載した記録紙(記録材)142を給紙するための給紙部として、用紙積載部141から記録紙142を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)143、及び給紙コロ143に対向し摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド144が備えられ、分離パッド144は給紙コロ143側に付勢されている。
【0043】
そして、この給紙部から給紙された記録紙142を記録ヘッド134の下方側に送り込むために、記録紙142を案内するガイド部材145と、カウンタローラ146と、搬送ガイド147と、先端加圧コロ149を有する押さえ部材148とが備えられるとともに、給送された記録紙142を静電吸着して記録ヘッド134に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト151が備えられている。
【0044】
この搬送ベルト151は、無端状ベルトであり、搬送ローラ152とテンションローラ153との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成されている。また、この搬送ベルト151の表面を帯電させるための帯電ローラ156が備えられている。この帯電ローラ156は、搬送ベルト151の表層に接触し、搬送ベルト151の回動に従動して回転するように配置されている。更に、搬送ベルト151の裏側には、記録ヘッド134による印写領域に対応してガイド部材157が配置されている。
【0045】
搬送ベルト151は、ここでは図示しないが周知の副走査モータによってタイミングベルトを介して搬送ローラ152が回転駆動されることによって図12のベルト搬送方向に周回移動する。
【0046】
更に、記録ヘッド134で記録された記録紙142を排紙するための排紙部として、搬送ベルト151から記録紙142を分離するための分離爪161と、排紙ローラ162及び排紙コロ163が備えられ、排紙ローラ162の下方に排紙トレイ103が備えられている。
【0047】
また、装置本体101の背面部には両面ユニット171が着脱自在に装着されている。この両面ユニット171は搬送ベルト151の逆方向回転で戻される記録紙142を取り込んで反転させて再度カウンタローラ146と搬送ベルト151の間に給紙する。また、この両面ユニット171の上面は手差しトレイ172としている。
【0048】
更に、図12に示すように、キャリッジ133の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド134のノズル(インク吐出口)の状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構181が配置されている。
【0049】
この維持回復機構181には、記録ヘッド134の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(キャップ)182と、ノズル面をワイピングするためのワイパーブレード183と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け184などが備えられている。ここでは、図12における左端の1つのキャップ182を吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ182を保湿用キャップとしている。
【0050】
そして、この維持回復機構181による維持回復動作で生じる記録液の廃液、キャップ182に排出されたインク、あるいはワイパーブレード183に付着してワイパークリーナ185で除去されたインク、空吐出受け184に空吐出されたインクは、ここでは図示しないが周知の廃液タンクに排出されて収容される。
【0051】
また、図12に示すように、維持回復機構181と反対側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け188が配置され、この空吐出受け188には記録ヘッド134のノズル列方向に沿った開口189などが備えられている。
【0052】
このように構成された本実施形態のインクジェット記録装置においては、給紙トレイ102から記録紙142が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された記録紙142はガイド部材145で案内され、搬送ベルト151とカウンタローラ146との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド147で案内されて先端加圧コロ149で搬送ベルト151に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0053】
このとき、制御部のACバイアス供給部から帯電ローラ156に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト151が交番する帯電電圧パターン、即ち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト151上に記録紙142が給送されると、記録紙142が搬送ベルト151に吸着され、搬送ベルト151の周回移動によって記録紙142が副走査方向に搬送される。
【0054】
そして、リニアエンコーダ137(図11)による主走査位置情報に基づいてキャリッジ133を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド134を駆動することにより、停止している記録紙142にインク滴を吐出して1行分を記録し、記録紙142を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は記録紙142の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、記録紙142を排紙トレイ103に排紙する。
【0055】
また印字(記録)待機中、キャリッジ133は維持回復機構181側に移動され、キャップ182で記録ヘッド134がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良が防止される。また、キャップ182で記録ヘッド134をキャッピングした状態で、ここでは図示しないが周知の吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(ノズル吸引/ヘッド吸引)、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド134の安定した吐出性能を維持する。
【0056】
なお、画像形成装置は、記録ヘッドのノズルからインク滴を記録材に吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義であり、文字や図形などの意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を媒体に付与する行為(単に液滴を媒体に着弾させる液滴吐出ないし液体吐出と称されるもの)を含む)を行うものである。本発明は、このような画像形成装置のほかに、立体造形装置、処理液塗布装置、噴射造粒装置などにも適用可能なものである。
【0057】
また、記録材の材質は紙に限定されず、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなども含み、液滴が付着され得るものである。液体吐出ヘッドから吐出される液体は、所謂インクに限らず、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下になるものであることが好ましく、より具体的には、水や有機溶媒などの溶媒、染料や顔料などの着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤などの機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウムなどの生体適合材料、天然色素などの可食材料、などを含む溶液、懸濁液、乳濁液などである。これらは例えばインクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液などの用途で用いることができる。液体吐出ユニットは、液体吐出ヘッドに他の機能部品、機構が一体化した液体吐出に関連する部品の集合体であり、例えばキャリッジ、ヘッドタンク、液体供給機構、維持回復機構の少なくとも一つを含んで構成される。
【符号の説明】
【0058】
10 第1のインク供給路(第1の液体供給路)
12 第2のインク供給路(第2の液体供給路)
14 三方弁
16 インク戻り路(液体戻り路)
18 供給ポンプ
20 循環ポンプ
110 インクカートリッジ(メインタンク)
134 記録ヘッド
135 ヘッドタンク(サブタンク)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【文献】特開2005-28675号公報
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