(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】水質評価装置及び水質評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/18 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
G01N33/18 Z
(21)【出願番号】P 2018032158
(22)【出願日】2018-02-26
【審査請求日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2017209683
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】藤村 侑
(72)【発明者】
【氏名】加藤 俊正
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-353750(JP,A)
【文献】特開2006-105705(JP,A)
【文献】特開2002-340751(JP,A)
【文献】特許第2772361(JP,B2)
【文献】特開平06-021186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/18
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定基板の表面に閉じた領域を区画する周壁部を形成する周壁部形成手段と、
前記被測定基板をその表面を上向きにして水平に支持する支持手段と、
前記被測定基板の
前記周壁部により区画される閉じた領域に被評価水を滴下する滴下手段と、
前記被評価水を滴下した
前記被測定基板を乾燥させた後その表面に形成されるウォーターマークを分析する分析手段と
を備える水質評価装置。
【請求項2】
前記乾燥後の被測定基板の表面状態を観察する観察手段をさらに備える請求項
1に記載の水質評価装置。
【請求項3】
前記滴下手段は、前記被測定基板の前記周壁部により区画される閉じた領域に前記被評価水を滴下するノズルを有し、
前記支持手段及び前記ノズルは、チャンバの内部に設けられている請求項1
又は請求項2に記載の水質評価装置。
【請求項4】
前記チャンバ内が不活性ガス雰囲気で満たされている請求項
3に記載の水質評価装置。
【請求項5】
被測定基板の表面に閉じた領域を区画する周壁部を形成する周壁部形成工程と、
前記被測定基板をその表面を上向きにして水平に支持する支持工程と、
前記被測定基板の
前記周壁部により区画される閉じた領域に被評価水を滴下する滴下工程と、
前記被評価水を滴下した
前記被測定基板を乾燥させる乾燥工程と、
乾燥後の
前記被測定基板の表面に形成されるウォーターマークを分析する分析工程と
を備える水質評価方法。
【請求項6】
前記乾燥後の被測定基板の表面状態を観察する観察工程をさらに備える請求項
5に記載の水質評価方法。
【請求項7】
前記支持工程及び前記滴下工程は、チャンバの内部で行われる請求項
5又は請求項6に記載の水質評価方法。
【請求項8】
前記チャンバ内が不活性ガス雰囲気で満たされている請求項
7に記載の水質評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質評価装置及び水質評価方法に関し、特に、半導体ウエハの洗浄に用いる超純水の水質評価装置及び水質評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(大規模集積回路)の製造工程においては、半導体ウエハの洗浄に超純水が用いられている。このような超純水は、洗浄工程の最後に半導体ウエハに接触する物質であるため、超純水中に含まれる不純物の濃度が半導体ウエハ表面の洗浄度合に大きく影響する。このため、近年のLSIの集積度の増加に伴い、LSIの製造工程で用いられる超純水中に存在する微粒子等の不純物の低減への要求はますます高まっており、例えばTOC、微粒子数、抵抗率等を測定することによって、超純水中の不純物の量を評価する方法が種々提案されている。
【0003】
上述のような洗浄用の超純水中に存在する微粒子等の不純物には、大きく分けて、半導体ウエハ表面に付着してその特性に悪影響を及ぼす可能性のある不純物と、半導体ウエハ表面に付着しないがその表面に形成された微細構造に留まり半導体ウエハを用いたデバイスの特性に悪影響を及ぼす可能性のある極微量の不純物とがある。洗浄によって清浄度の高い半導体ウエハを得るためには、これらの不純物すべてを正確に評価できることが望ましい。
【0004】
そこで、特許文献1及び特許文献2には、測定基板を密閉容器に保持し、そこに評価対象となる超純水を通水して測定基板と接触させ、その後、測定基板をパーティクルカウンタで測定することで測定基板表面に付着した微粒子数を評価する方法が開示されている。特許文献1及び特許文献2に開示の方法を用いれば、測定基板表面に付着した不純物を正確に評価することが可能であるとともに、大容量の超純水を評価対象とすることができるので評価精度を高めることが可能である。しかしながら、この方法では、測定基板表面に付着しないがその表面の微細化構造に取り込まれた極微量の微粒子等の不純物は評価することができない。
【0005】
一方、特許文献3には、測定基板(サファイア基板)上に評価対象となる極少量の超純水を滴下して乾固させた後、測定基板上に形成されるウォーターマークを、三次元画像解析を行って評価する方法が開示されている。特許文献3に開示の方法を用いれば、測定基板表面の微細構造に取り込まれて留まった極微量の不純物を評価することが可能である。しかしながら、この方法では、測定基板上に保持できる超純水の量が、使用する半導体ウエハの大きさに依存し、極少量の超純水しか評価対象とすることができないため、評価精度の低下を引き起こすおそれがある。また、親水性の表面を有する測定基板を用いた場合には、超純水が測定基板の表面に非常によくなじんで薄く広がるため、評価対象となる超純水を一カ所に留めておくことができず、測定範囲が広範囲になってしまい、上記極微量の不純物を検出できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4449135号
【文献】特許第4507336号
【文献】特許第2772361号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、特許文献1及び特許文献2に開示の方法と特許文献3に開示の方法とでは不純物の評価手段が異なるため、これらの方法を組み合わせて用いることはできない。よって、従来技術では、半導体ウエハの洗浄用の超純水中に存在する不純物すべて、つまり半導体ウエハの表面に付着してその特性に悪影響を及ぼす可能性のある不純物と、半導体ウエハの表面に付着しないがその表面に形成された微細構造に留まり半導体ウエハを用いたデバイスの特性に悪影響を及ぼす可能性のある極微量の不純物とのすべてを正確に評価することはできないのが現状である。
【0008】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、半導体ウエハの洗浄用の超純水中に存在する不純物すべてを、高い検出確率をもって正確に評価することが可能な水質評価装置及び水質評価方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、被測定基板に対して特定の加工又は操作を行う処理手段と、被測定基板をその表面を上向きにして水平に支持する支持手段と、特定の加工又は操作を行った被測定基板の表面に被評価水を滴下する滴下手段と、被評価水を滴下した被測定基板を乾燥させた後その表面に形成されるウォーターマークを分析する分析手段とを備える水質評価装置を提供する(発明1)。
【0010】
かかる発明(発明1)によれば、特定の加工又は操作を行った被測定基板の表面に、被評価水を滴下した後、被評価水を滴下した被測定基板を乾燥させ、乾燥後の被測定基板の表面に形成されるウォーターマークを分析することによって、被評価水中に存在する不純物すべて、つまり被測定基板の表面に付着する不純物と、被測定基板表面に付着しないがその表面に形成された微細構造に留まる極微量の不純物とのすべてを評価することができる。
【0011】
なお、本発明において「ウォーターマーク」とは、半導体ウエハ等の基板の表面に水溶液を滴下して乾燥させた際に、水溶液中に存在していた物質が基板表面に濃化することにより形成される乾燥むらであって、いわゆる「水じみ」をいう。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記処理手段が、被測定基板の表面に閉じた領域を区画する周壁部を形成する周壁部形成手段であることが好ましい(発明2)。
【0013】
かかる発明(発明2)によれば、被測定基板の表面に形成された周壁部によって区画される閉じた領域に被評価水を滴下することで、平板状の測定基板を用いた場合に比べて、大容量の被評価水を評価対象とすることができ、評価精度を高めることができる。また、周壁部を形成する位置を調整することにより、閉じた領域のサイズ、つまり被評価水を留める範囲を任意に設定することができるので、被評価水のボリュームや性質に応じた測定が可能である。
【0014】
上記発明(発明1)においては、前記処理手段が、被測定基板の表面に閉じた領域を区画する溝部を形成する溝部形成手段であることが好ましい(発明3)。
【0015】
かかる発明(発明3)によれば、被測定基板の表面に形成された溝部によって区画される閉じた領域に被評価水を滴下することで、平板状の測定基板を用いた場合に比べて、大容量の被評価水を評価対象とすることができ、評価精度を高めることができる。また、溝部を形成する位置を調整することにより、閉じた領域のサイズ、つまり被評価水を留める範囲を任意に設定することができるので、被評価水のボリュームや性質に応じた測定が可能である。
【0016】
上記発明(発明1)においては、前記処理手段が、前記支持手段により水平に支持した被測定基板をその裏面から吸引することにより凹状に湾曲させる吸引手段であることが好ましい(発明4)。
【0017】
かかる発明(発明4)によれば、吸引することにより凹状に湾曲させた被測定基板の表面に被評価水を滴下しているので、平板状の測定基板を用いた場合に比べて、大容量の被評価水を評価対象とすることができ、評価精度を高めることができる。また、凹状に湾曲した被測定基板の形状のせいで、滴下された被評価水が被測定基板表面の一カ所に留まり、ウォーターマークが被測定基板表面の狭い範囲に形成されるため、親水性の表面を有する測定基板を用いた場合であっても、測定範囲が広範囲にならず、被測定基板の表面に形成された微細構造に留まった極微量の不純物の検出確率を高めることができる。
【0018】
上記発明(発明4)においては、前記吸引手段が吸盤状のサクションリフタ又は吸引ポンプを有することが好ましい(発明5)。
【0019】
上記発明(発明1-5)においては、前記乾燥後の被測定基板の表面状態を観察する観察手段をさらに備えることが好ましい(発明6)。
【0020】
通常、洗浄・乾燥後の半導体ウエハの表面状態の観察は、洗浄に用いる超純水中に存在する不純物の評価とは別途行われる。かかる発明(発明6)によれば、超純水中に存在する不純物の評価の際に、併せて洗浄・乾燥後の被測定基板の表面の状態を観察することができ、効率的である。
【0021】
上記発明(発明1-6)においては、評価環境がチャンバ内であることが好ましい(発明7)。
【0022】
かかる発明(発明7)によれば、被評価水の水質評価をチャンバ内で行うことにより、評価中に外気から微粒子等の不純物が混入するのを防止することができる。
【0023】
上記発明(発明7)においては、前記チャンバ内が不活性ガス雰囲気で満たされていることが好ましい(発明8)。
【0024】
かかる発明(発明8)によれば、予めチャンバ内を不活性ガス雰囲気で満たした上で被評価水の水質評価を行うことにより、大気中に含まれる酸素が被評価水に溶け込むのを防止することができる。
【0025】
第二に本発明は、被測定基板に対して特定の加工又は操作を行う処理工程と、被測定基板をその表面を上向きにして水平に支持する支持工程と、特定の加工又は操作を行った被測定基板の表面に被評価水を滴下する滴下工程と、被評価水を滴下した被測定基板を乾燥させる乾燥工程と、乾燥後の被測定基板の表面に形成されるウォーターマークを分析する分析工程とを備える水質評価方法を提供する(発明9)。
【0026】
上記発明(発明9)においては、前記処理工程が、被測定基板の表面に閉じた領域を区画する周壁部を形成する周壁部形成工程であることが好ましい(発明10)。
【0027】
上記発明(発明9)においては、前記処理工程が、被測定基板の表面に閉じた領域を区画する溝部を形成する溝部形成工程であることが好ましい(発明11)。
【0028】
上記発明(発明9)においては、前記処理工程が、前記支持工程により水平に支持した被測定基板をその裏面から吸引することにより凹状に湾曲させる吸引工程であることが好ましい(発明12)。
【0029】
上記発明(発明12)においては、前記吸引工程を吸盤状のサクションリフタまたは吸引ポンプを用いて行うことが好ましい(発明13)。
【0030】
上記発明(発明9-13)においては、前記乾燥後の被測定基板の表面状態を観察する観察工程をさらに備えることが好ましい(発明14)。
【0031】
上記発明(発明9-14)においては、評価環境がチャンバ内であることが好ましい(発明15)。
【0032】
上記発明(発明15)においては、前記チャンバ内が不活性ガス雰囲気で満たされていることが好ましい(発明16)。
【発明の効果】
【0033】
本発明の水質評価装置及び水質評価方法によれば、特定の加工又は操作を行った被測定基板の表面に、被評価水を滴下した後、被評価水を滴下した被測定基板を乾燥させ、乾燥後の被測定基板の表面に形成されるウォーターマークを分析することによって、被評価水中に存在する不純物すべて、つまり被測定基板の表面に付着する不純物と、被測定基板表面に付着しないがその表面に形成された微細構造に留まる極微量の不純物とのすべてを評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の水質評価装置が備える処理手段により特定の加工又は操作を行った被測定基板の表面に被評価水を滴下した状態を示す模式的断面図であって、(a)は第一実施形態、(b)は第二実施形態、(c)は第三実施形態を示している。
【
図2】本発明の水質評価装置を示す模式図であって、(a)は第一実施形態、(b)は第三実施形態を示している。
【
図3】本発明の第一実施形態の水質評価装置を用いた水質評価方法の手順を示す説明図である。
【
図4】本発明の第三実施形態の水質評価装置を用いた水質評価方法の手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の水質評価装置及び水質評価方法の実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであって、何ら本発明を限定するものではない。
【0036】
[水質評価装置]
<第一実施形態>
図1(a)は、本発明の第一実施形態に係る水質評価装置10が備える処理手段としての周壁部形成手段によって被測定基板Wの表面に形成された周壁部w1により区画される閉じた領域に、被評価水Eを滴下した状態を示す模式的断面図である。第一実施形態に係る水質評価装置10は、
図2(a)に示すように、周壁部形成手段(不図示)、支持手段1、滴下手段3、分析手段4を主に備える。周壁部形成手段は、被測定基板Wの表面に閉じた領域を区画する周壁部w1を形成するものである。支持手段1は、被測定基板Wをその表面を上向きにして水平に支持するものである。滴下手段3は、被測定基板Wの表面に形成された周壁部w1により区画される閉じた領域に被評価水Eを滴下するものである。分析手段4は、被評価水Eを滴下した被測定基板Wを乾燥させた後その表面に形成されるウォーターマークMを分析するものである。なお、本実施形態において、支持手段1、滴下手段3は、被評価水Eの評価環境がチャンバ内となるように、チャンバ5と一体的に設けられており、周壁部形成手段及び分析手段4はチャンバ5の外部に設けられている。
【0037】
〔周壁部形成手段〕
周壁部形成手段は、被測定基板Wの表面に閉じた領域を区画する周壁部w1を形成するものであって、本実施形態においては、チャンバ5の外部に設けられている。周壁部形成手段による被測定基板Wの表面への周壁部w1の形成は、必要に応じて、手動又は自動装置によって行うことができる。周壁部形成手段により被測定基板Wの表面に形成される周壁部w1の材質としては、特に制限はないが、被評価水Eを一か所に留めるためのものであることから、その表面は撥水性が高く、被測定基板Wとの密着性がよく、かつ溶出等が生じないものが好ましく、例えばテフロン(登録商標)テープ等が挙げられる。また、周壁部w1の高さは、被測定基板Wの厚さに対して50%程度であることが好ましい。
【0038】
なお、本実施形態において、周壁部形成手段は、測定基板Wに対して別体に成形された周壁部w1を接着等によって接合するものであるが、これに限定されず、例えば、測定基板Wと周壁部w1とを一体成形するものであってもよい。
【0039】
周壁部形成手段を備えることにより、被測定基板Wの表面に形成された周壁部w1によって区画される閉じた領域に被評価水Eを滴下することで、平板状の測定基板を用いた場合に比べて、大容量の被評価水Eを評価対象とすることができ、評価精度を高めることができる。また、周壁部w1を形成する位置を調整することにより、閉じた領域のサイズ、つまり被評価水Eを留める範囲を任意に設定することができるので、被評価水Eのボリュームや性質に応じた測定が可能である。
【0040】
〔支持手段〕
支持手段1は、被測定基板Wをその表面を上向きにして水平に支持するものであって、本実施形態においては、チャンバ5の内底面に対して水平に設置された支持台11により構成されている。なお、支持手段1としては、被測定基板Wをその表面を上向きにして水平に支持できるものであれば特に制限はない。支持手段1を備えることにより、被測定基板Wがその表面を上向きにして水平に支持されるので、滴下した被評価水Eがこぼれ落ちることなく安定的に保持される。
【0041】
〔滴下手段〕
滴下手段3は、被測定基板Wの表面に形成された周壁部w1により区画される閉じた領域に被評価水Eを滴下するものであって、本実施形態においては、チャンバ5の外側面に設けられる制御機構31と制御機構31からチャンバ5内部へ延出するノズル32とを有する構成である。被評価水Eは、ノズル32を通じて被測定基板Wの表面に形成された周壁部w1により区画される閉じた領域に滴下される。滴下する被評価水Eの量は、予め測定した被測定基板Wのサイズに応じて制御機構31により制御される。滴下手段3は、ノズル32の先端の位置を調整可能な調整機構をさらに有していてもよい。なお、滴下手段3としては、被測定基板Wの表面に被評価水Eを滴下できるものであれば特に制限はなく、例えば、被評価水Eを充填させたピペット等を用いて手作業により行うものであってもよい。滴下手段3を備えることにより、被測定基板Wの表面に形成された周壁部w1により区画される閉じた領域に、適切にかつ適量の被評価水Eを滴下することができる。
【0042】
〔分析手段〕
分析手段4は、被評価水Eを滴下した被測定基板Wを自然乾燥させた後その表面に形成されるウォーターマークMを分析するものであって、本実施形態においてはチャンバ5の外部に設けられているが、チャンバ5の内部に設けられていてもよい。また、例えば、分析手段4は、図示せぬネットワーク上に配置されており、このネットワークを介してチャンバ5内の乾燥後の被測定基板Wの表面に形成されるウォーターマークMを分析するように構成されていてもよい。分析手段4としては、乾燥後の被測定基板Wの表面に形成されるウォーターマークMを分析することにより、被評価水E中に存在する不純物を評価できるものであれば特に制限はなく、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)やエネルギー分散型X線分析装置(EDX)を好適に用いることができる。分析手段4を備えることにより、被評価水E中に存在する不純物すべて、つまり被測定基板Wの表面に付着した不純物と、被測定基板Wの表面に付着しないがその表面に形成された微細構造に留まった極微量の不純物とのすべてを評価することができる。
【0043】
〔チャンバ〕
チャンバ5は、外気から微粒子等の不純物が混入するのを防止するものであって、少なくとも作業空間を画成する枠体51を有する。枠体51の内底面には支持台11が設けられている。枠体51の一方の外側面上部には、制御機構31が設けられており、制御機構31からチャンバ5内部へノズル32が延出している。チャンバ5としては、外気から微粒子等の不純物が混入するのを防止できるものであれば特に制限はないが、圧力の設定や不活性ガスの導入が可能なグローブボックスを好適に用いることができる。なお、チャンバ5内は、予め不活性ガス雰囲気で満たされていてもよい。不活性ガス雰囲気で満たされたチャンバ5内で被評価水Eの水質評価を行うことにより、大気中に含まれる酸素が被評価水Eに溶け込むのを防止できるので、評価誤差を減少させることが可能となる。
【0044】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態に係る水質評価装置について説明する。なお、第二実施形態は、上述の第一実施形態と処理手段が異なるだけであるため、以下では第一実施形態との相違点のみ説明し、その他の説明は省略する。
【0045】
図1(b)は、本発明の第二実施形態に係る水質評価装置が備える処理手段としての溝部形成手段によって被測定基板Wの表面に形成された溝部w2により区画される閉じた領域に、被評価水Eを滴下した状態を示す模式的断面図である。第二実施形態に係る水質評価装置の構成は、
図2(a)に示す第一実施形態に係る水質評価装置10の構成と、処理手段のみが異なるものであって、溝部形成手段(不図示)、支持手段1、滴下手段3、分析手段4を主に備える。
【0046】
〔溝部形成手段〕
溝部形成手段は、被測定基板Wの表面に閉じた領域を区画する溝部w2を形成するものであって、本実施形態においては、チャンバ5の外部に設けられている。溝部形成手段による被測定基板Wの表面への溝部w2の形成は、必要に応じて、手動又は自動装置によって行うことができる。また、溝部w2の深さは、被測定基板Wの厚さに対して50%未満であることが好ましい。
【0047】
なお、本実施形態において、溝部形成手段は、測定基板Wの表面を、剃刃等を用いて傷付けることにより溝部w2を形成するものであるが、これに限定されず、例えば、溝部w2を設けた測定基板Wを成形するものであってもよい。
【0048】
溝部形成手段を備えることにより、被測定基板Wの表面に形成された溝部w2によって区画される閉じた領域に被評価水Eを滴下することで、平板状の測定基板を用いた場合に比べて、大容量の被評価水Eを評価対象とすることができ、評価精度を高めることができる。また、溝部w2を形成する位置を調整することにより、閉じた領域のサイズ、つまり被評価水Eを留める範囲を任意に設定することができるので、被評価水Eのボリュームや性質に応じた測定が可能である。
【0049】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態に係る水質評価装置10’について説明する。なお、第三実施形態は、上述の第一実施形態及び第二実施形態と支持手段及び処理手段が異なるだけであるため、以下では第一実施形態及び第二実施形態との相違点のみ説明し、その他の説明は省略する。また、
図2(b)において
図2(a)と同一の構成要素については、同一の符号を用いている。
【0050】
図1(c)は、本発明の第三実施形態に係る水質評価装置10’が備える処理手段としての吸引手段2によって凹状に湾曲させた被測定基板Wの表面に、被評価水Eを滴下した状態を示す模式的断面図である。第三実施形態に係る水質評価装置10’は、
図2(b)に示すように、支持手段1’、吸引手段2、滴下手段3、分析手段4を主に備える。支持手段1’は、被測定基板Wをその表面を上向きにして水平に支持するものである。吸引手段2は、水平に支持した被測定基板Wをその裏面から吸引することにより凹状に湾曲させるものである。滴下手段3は、凹状に湾曲させた被測定基板Wの表面に被評価水Eを滴下するものである。分析手段4は、被評価水Eを滴下した被測定基板Wを乾燥させた後その表面に形成されるウォーターマークMを分析するものである。なお、本実施形態において、支持手段1’、吸引手段2、滴下手段3は、被評価水の評価環境がチャンバ内となるように、チャンバ5と一体的に設けられており、分析手段4はチャンバ5の外部に設けられている。
【0051】
〔支持手段〕
支持手段1’は、被測定基板Wをその表面を上向きにして水平に支持するものであって、本実施形態においては、チャンバ5の内底面に対して水平に設置された支持台11’と、支持台11’の表面に対して水平に固定された後述する吸引手段2としてのサクションリフタ21とを有する構成である。なお、支持手段1’としては、被測定基板Wをその表面を上向きにして水平に支持できるものであれば特に制限はなく、例えば、支持台11’を有せず吸引手段2自体が支持手段1’としても機能するもの等であってもよい。支持手段1’を備えることにより、被測定基板Wがその表面を上向きにして水平に支持されるので、滴下した被評価水がこぼれ落ちることなく安定的に保持される。
【0052】
〔吸引手段〕
吸引手段2は、水平に支持した被測定基板Wをその裏面から吸引することにより凹状に湾曲させるものである。本実施形態においては、吸引手段2として吸盤状のサクションリフタ21を用いている。サクションリフタとは、ガラス板や金属板等の移動や運搬がしにくい対象物に吸着させて使用する調整自在な吸引作用を有する機器であって、対象物の裏面に着脱自在に取り付けられるゴム製の吸盤部材を有し、この吸盤部材が吸引状態と非吸引状態とに切替可能であるように構成されている。なお、吸引手段2としては、水平に支持した被測定基板Wをその裏面から吸引できるものであれば特に制限はなく、例えば、被測定基板Wをその裏面で保持するためのすり鉢状の保持部材とこの保持部材の底部から吸引するためのポンプとにより構成されるもの等であってもよい。被測定基板Wの湾曲度合の制御は、目視により行ってもよいし、例えば、吸引手段2に被測定基板Wの湾曲度合を制御可能な制御機構を設けることにより行ってもよい。このとき、吸引手段2の吸引が強すぎると、被測定基板Wが割れてしまうおそれがあるので、目視の場合には特に徐々に吸引を行うのが好ましい。
【0053】
吸引手段2を備えることにより、被測定基板Wを凹状に湾曲させることができるので、平板状の測定基板を用いた場合に比べて、大容量の被評価水Eを評価対象とすることができ、評価精度を高めることができる。さらに、凹状に湾曲した被測定基板Wの形状のせいで、滴下された被評価水Eが被測定基板Wの表面の一カ所に留まり、ウォーターマークMが被測定基板Wの表面の狭い範囲に形成されるため、親水性の表面を有する測定基板Wを用いた場合であっても、測定範囲が広範囲にならず、被測定基板Wの表面に形成された微細構造に留まった極微量の不純物の検出確率を高めることができる。
【0054】
なお、本発明に係る水質評価装置は、乾燥後の被測定基板Wの表面状態を観察する観察手段をさらに備えていてもよい。観察手段としては、イメージング解析によるものが好ましく、全反射フーリエ変換赤外分光法(FTIR-ATR法)によるものが特に好ましい。FTIR-ATR法とは、物質の化学的な面情報を得ることができるイメージング解析機能を備えたFTIR-ATR装置を用いた解析方法であって、物質の構造、特に化学物質の化学構造を高精度で画像解析することができるため、一度の測定でFTIRスペクトルを多数取得することが可能であり、測定されたスペクトルから、乾燥後の被測定基板Wの表面状態を観察することができる。観察手段を備えることにより、従来は洗浄に用いる超純水中に存在する不純物の評価とは別途行われていた洗浄・乾燥後の半導体ウエハ(被測定基板W)の表面状態の観察を、不純物の評価と併せて行うことができる。
【0055】
また、本発明に係る水質評価装置は、被評価水Eを滴下した被測定基板Wを乾燥させる乾燥手段をさらに備えていてもよい。乾燥手段としては、被評価水Eを滴下した被測定基板Wを乾燥できるものであれば特に制限はなく、例えば、チャンバ5の天井面に設けた赤外線ランプやチャンバ5の内部に設けたヒーター等であってもよく、又はチャンバ5の外部に設けたスピン乾燥機等であってもよい。乾燥手段が赤外線ランプの場合には、その光を効果的にチャンバ5内部に照射させるための反射板を有していてもよい。乾燥手段を備えることにより、被測定基板Wの表面に、分析手段4の分析対象となるウォーターマークを、短時間で形成させることができる。
【0056】
[水質評価方法]
次に、上述した第一実施形態から第三実施形態の水質評価装置を用いた水質評価方法について
図3及び
図4を参照しつつ詳説する。なお、
図3及び
図4において
図2と同一の構成要素については、適宜符号を省略する。
【0057】
<第一実施形態>
第一実施形態の水質評価装置10を用いた水質評価方法は、
図3に示すように、処理工程(STP1)、支持工程(STP2)、滴下工程(STP3)、乾燥工程(STP4)、分析工程(STP5)を主に備える。
【0058】
〔処理工程〕
第一実施形態では、処理工程において、チャンバ5の外部に設けられた処理手段としての周壁部形成手段(不図示)によって、被測定基板Wの表面に閉じた領域を区画する周壁部w1が形成される(STP1)。
【0059】
〔支持工程〕
支持工程においては、チャンバ5内の支持手段1としての支持台11に対して、被測定基板Wをその表面を上向きにして水平に支持する(STP2)。
【0060】
〔滴下工程〕
滴下工程においては、被測定基板Wの表面に形成された周壁部w1により区画される閉じた領域に、ノズル32を通じて被評価水Eを滴下する(STP3)。滴下する被評価水Eの量は、予め測定した被測定基板Wのサイズに応じて、制御機構31により制御される。滴下工程は、被測定基板Wの表面に形成された周壁部w1により区画される閉じた領域に所定の被評価水Eが滴下された時点を終了点とすればよい。
【0061】
〔乾燥工程〕
乾燥工程においては、自然乾燥により、被評価水Eを滴下した被測定基板Wを乾燥させる(STP4)。乾燥工程は、被測定基板Wの表面にウォーターマークMが形成された時点を終了点とすればよい。
【0062】
なお、本実施形態において乾燥工程は自然乾燥により行っているが、乾燥手段を用いて行ってもよい。乾燥手段としては、被評価水Eを滴下した被測定基板Wを乾燥できるものであれば特に制限はなく、例えば、チャンバ5の天井面に設けた赤外線ランプやチャンバ5の内部に設けたヒーター等であってもよく、又はチャンバ5の外部に設けたスピン乾燥機等であってもよい。乾燥手段が赤外線ランプの場合には、その光を効果的にチャンバ5内部に照射させるための反射板を有していてもよい。乾燥手段を備えることにより、被測定基板Wの表面に、分析手段4の分析対象となるウォーターマークMを、短時間で形成させることができる。
【0063】
〔分析工程〕
分析工程においては、チャンバ5の外部に設けられた分析手段4により、被測定基板Wの表面に形成されたウォーターマークMを分析する(STP5)。より具体的には、被測定基板Wの表面に形成されたウォーターマークMを分析することにより、被評価水E中に存在する不純物を評価する。分析工程によって、被評価水E中に存在する不純物すべて、つまり被測定基板Wの表面に付着した不純物と、被測定基板Wの表面に付着しないがその表面に形成された微細構造に留まった極微量の不純物とのすべてを評価することができる。
【0064】
なお、当該水質評価方法は、乾燥後の被測定基板Wの表面状態を観察する観察工程をさらに備えていてもよい。観察工程においては、観察手段としてのFTIR-ATR装置で測定されたスペクトルに基づき、乾燥後の被測定基板Wの表面状態を観察することができる。観察工程を備えることにより、従来は洗浄に用いる超純水中に存在する不純物の評価とは別途行われていた洗浄・乾燥後の半導体ウエハ(被測定基板W)の表面状態の観察を、不純物の評価と併せて行うことができる。
【0065】
また、チャンバ5内は、予め不活性ガス雰囲気で満たされていてもよい。不活性ガス雰囲気で満たされたチャンバ5内で被評価水Eの水質評価を行うことにより、大気中に含まれる酸素が被評価水Eに溶け込むのを防止することができるので、評価誤差を減少させることが可能となる。
【0066】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態に係る水質評価装置を用いた水質評価方法について説明する。なお、第二実施形態は、上述の第一実施形態と処理工程の内容が異なるだけであるため、以下では第一実施形態との相違点のみ説明し、その他の説明は省略する。
【0067】
〔処理工程〕
第二実施形態では、処理工程において、チャンバ5の外部に設けられた処理手段としての溝部形成手段(不図示)によって、被測定基板Wの表面に閉じた領域を区画する溝部w2が形成される(STP1)。
【0068】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態に係る水質評価装置10’を用いた水質評価方法について説明する。なお、第三実施形態は、上述の第一実施形態及び第二実施形態と支持工程と処理工程の順序及び内容が異なるだけであるため、以下では第一実施形態との相違点のみ説明し、その他の説明は省略する。
【0069】
第三実施形態に係る水質評価装置10’を用いた水質評価方法は、
図4に示すように、支持工程(STP1’)、処理工程(STP2’)、滴下工程(STP3)、乾燥工程(STP4)、分析工程(STP5)を主に備える。
【0070】
〔支持工程〕
支持工程においては、チャンバ5内の支持台11’に載置されたサクションリフタ21の吸盤部材に対して、被測定基板Wをその表面を上向きにして水平に支持する(STP1’)。このとき、サクションリフタ21の吸盤部材は非吸着状態にある。
【0071】
〔処理工程〕
第三実施形態では、処理工程において、処理手段としての吸引手段2として用いられるサクションリフタ21を吸引状態に切り替えて、被測定基板Wをその裏面から吸引することによって、被測定基板Wを所定の湾曲度合いで凹状に湾曲させる(STP2’)。被測定基板Wの湾曲度合の制御は、目視により行ってもよいし、例えば、吸引手段2に被測定基板Wの湾曲度合を制御可能な制御機構を設けることにより行ってもよい。なお、処理工程、つまりサクションリフタ21による被測定基板Wの吸引は、評価試験の終了点まで継続させることが好ましい。
【0072】
以上のように、本発明の水質評価装置及び水質評価方法によれば、周壁部の形成、溝部の形成又は吸引といった、特定の加工又は操作を行った被測定基板の表面に、被評価水を滴下した後、被評価水を滴下した被測定基板を乾燥させ、乾燥後の被測定基板の表面に形成されるウォーターマークを分析することによって、被評価水中に存在する不純物すべて、つまり被測定基板の表面に付着する不純物と、被測定基板表面に付着しないがその表面に形成された微細構造に留まる極微量の不純物とのすべてを評価することができる。特定の加工又は操作が周壁部の形成又は溝部の形成である場合には、被測定基板の表面に形成された周壁部又は溝部によって区画される閉じた領域に被評価水を滴下することで、平板状の測定基板を用いた場合に比べて、大容量の被評価水を評価対象とすることができ、評価精度を高めることができる。特定の加工又は操作が吸引である場合には、吸引することにより凹状に湾曲させた被測定基板の表面に被評価水を滴下しているので、平板状の測定基板を用いた場合に比べて、大容量の被評価水を評価対象とすることができ、評価精度を高めることができる。
【0073】
以上、本発明について図面を参照にして説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。本発明においては、被測定基板へ被評価水を滴下する前に特定の加工又は操作を行っているが、例えば、試験用基板に滴下した被評価水の水滴上に被測定基板を被せて接触させた状態で被測定基板を乾燥させた後、その表面に形成されるウォーターマークを分析することにより被評価水の評価を行ってもよい。
【実施例】
【0074】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳説するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
図2(a)に示す水質評価装置10を用いて、被評価水の評価試験を以下の通り行った。
【0076】
[実施例1:ウォーターマークの分析]
(1)確認した微粒子数
特許文献1及び特許文献2に開示の方法(以下、比較例1という。)では、測定基板に60mm3の超純水を通水させた後、残存する0.2μm以上の微粒子数を、パーティクルカウンタで測定している。一方、実施例1では、測定基板上に10μLの超純水を滴下させ、乾燥させた後、測定基板表面に形成されたウォーターマークを分析することにより、残存する10nm以上の微粒子数を走査型電子顕微鏡(SEM)で確認した。また、その微粒子をエネルギー分散型X線分析(EDX)で測定することで、炭素系の微粒子やシリカ系の微粒子、金属系の微粒子が混在していることが分かった。
(2)評価可能な超純水のボリューム
特許文献3に開示の方法(以下、比較例2という。)では、測定基板(サファイア基板)上に、1mLの超純水を滴下している。一方、実施例1では、測定基板の表面に閉じた領域を区画する周壁部を形成しているため、平板状の測定基板を用いた場合に比べて、大容量の超純水を留めることが可能であり、6インチの測定基板においては、最大で30mLまで超純水を滴下することができた。
(3)分析範囲
特許文献3(比較例2)には、三次元画像解析を行った範囲について明記がされていないが、滴下した超純水が1mLなので、最低でも1cm2程度は測定する必要があると考えられる。一方、実施例1では、周壁部を形成する位置を調整することにより、閉じた領域のサイズ、つまり被評価水を留める範囲を任意に設定することができるので、超純水のボリュームに応じた測定が可能である。
【0077】
上記(1)-(3)について、実施例1、比較例1及び比較例2の比較結果を表1に示す。
【表1】
【0078】
[実施例2:基板の表面状態の観察]
以下の試験手順により、洗浄・乾燥後の被測定基板の表面状態の観察を行った。
(1)前処理として、Siウエハを0.5wt%のDHFで2分間洗浄後、超純水で2分間洗浄した。
(2)前処理を施したSiウエハの表面に、テフロン(登録商標)テープを用いて周壁部を形成し、評価対象の超純水を滴下するための閉じた領域を作製した。
(3)水質評価装置10の支持台に、Siウエハをその表面を上向きにして水平に支持した後、Siウエハの表面に形成された周壁部により区画される閉じた領域に、被評価水としての超純水を1mL-20mL滴下して、10分-180分静置した。
(4)自然乾燥によって、超純水を滴下したSiウエハを乾燥させた。
(5)FTIR-ATR装置を用いて、乾燥後のSiウエハの最表面のスペクトルを測定した。
【0079】
上記試験手順によって、超純水(以下、超純水1という。)と、Siウエハ表面を粗らす有機物を0.1ppt程度添加した超純水(以下、超純水2という。)とを用いて洗浄・乾燥後のSiウエハ表面の比較を行ったところ、超純水1を滴下したSiウエハに比べて、超純水2を滴下したSiウエハは、測定されたスペクトルにおいて、最表面の水素終端を示す領域で明らかに変化が見られ、Siウエハの表面が粗れていること又は変質していることが確認できた。
【0080】
以上説明したように、本発明の水質評価装置及び水質評価方法によれば、半導体ウエハの洗浄用の超純水中に存在する不純物すべてを、高い検出確率をもって正確に評価することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、LSI(大規模集積回路)の製造工程において、半導体ウエハの洗浄に用いる超純水の水質評価装置及び水質評価方法として有用である。
【符号の説明】
【0082】
10,10’ 水質評価装置
1,1’ 支持手段
11,11’ 支持台
2 吸引手段
21 サクションリフタ
3 滴下手段
31 制御機構
32 ノズル
4 分析手段
5 チャンバ
51 枠体
W 被測定基板
w1 周壁部
w2 溝部
E 被評価水
M ウォーターマーク