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特許7040211インクジェット記録装置、該インクジェット記録装置の制御装置、インクジェット記録装置の検知範囲選択制御方法、検知範囲選択制御プログラム、及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置、該インクジェット記録装置の制御装置、インクジェット記録装置の検知範囲選択制御方法、検知範囲選択制御プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018061392
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019171642
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉谷 茂
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-216502(JP,A)
【文献】特開2014-079996(JP,A)
【文献】特開2004-284305(JP,A)
【文献】特開2007-223074(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0303276(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを複数有するヘッドと、
ガーメントを支持し、昇降移動及び水平移動可能なプラテンと、
印刷準備において、前記プラテンを印刷時と同じ高さにした状態で、印刷時の前記ヘッドの位置に対応する所定の高さに達するプラテン上の厚さの有無を検知する検知部と、
検知動作を制御し、前記所定の高さで干渉物が検出された場合は印刷を停止させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記プラテンの印刷時の水平の移動方向における、前記検知部による、前記所定の高さに達する前記プラテン上の厚さの有無を検知する範囲である高さ検知範囲を、画像が印刷される印刷範囲とし、印刷範囲外の少なくとも一部を検知動作の対象外とし、
前記ヘッドは水平方向である第1の方向に移動可能であり、
前記ヘッドを印刷対象領域の外に配置した状態で、前記プラテンを上昇させて前記ガーメントと前記検知部との距離を前記所定の高さに設定し、前記プラテンを前記高さ検知範囲の距離、前記第1の方向とは直交する方向であって、前記印刷時の移動方向とは逆方向に移動させることで、前記検知部は、前記所定の高さに達する前記プラテン上の厚さの有無を検知する
インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インクジェット記録装置は、接続された外部記憶媒体に格納された印刷データを読み込み、
前記制御部は、前記プラテンの印刷時の移動方向における、前記検知部による前記高さ検知範囲を、読み込まれた前記印刷データに含まれる印刷範囲に対応する範囲とし、印刷範囲外は前記検知動作の対象外とすることを設定する
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記インクジェット記録装置は、ホスト装置と接続されており、
前記ホスト装置から前記インクジェット記録装置へ印刷データを送信する際、最初に送信されるページデータに印刷範囲情報を含んでおり、
前記制御部は、前記プラテンの印刷時の移動方向における、前記検知部による前記高さ検知範囲を、受信した前記印刷範囲情報に対応する範囲とし、印刷範囲外は前記検知動作の対象外とすることを設定する
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インクジェット記録装置は、ホスト装置と接続されており、
前記ホスト装置は印刷対象となる原稿を読み取るスキャナーを備えており、該スキャナーは、スキャン毎に原稿の画像を読み取ってスキャンデータとし、
前記制御部は、前記ホスト装置から前記インクジェット記録装置へ、印刷データを送信する際のページデータの次に順に送信されるスキャンデータのうちの最初のスキャンデータに含まれる画像データを基に、印刷開始位置を取得し、
前記制御部は、前記プラテンの印刷時の移動方向における、前記検知部による前記高さ検知範囲を、前記印刷開始位置に対応づけられた検知開始位置から、前記プラテンの印刷時移動方向の下流端までに設定する
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
インクを吐出するヘッドと、ガーメントを支持し、昇降移動及び水平移動可能なプラテンと、検知部と、を備えるインクジェット記録装置の制御装置であって、
前記制御装置は、表示装置と接続可能であり、
前記制御装置は、前記表示装置に、前記検知部による、前記プラテンを印刷時と同じ高さにした状態での印刷時の前記ヘッドの位置に対応する所定の高さに達する前記プラテン上の厚さの有無を検知する範囲である高さ検知範囲を、前記プラテン上の前記ガーメントの全範囲とするか、印刷範囲とするかを、ユーザーに選択させるように表示させ、
ユーザーの選択結果に応じた前記高さ検知範囲で前記検知部に、前記プラテンを印刷時と同じ高さにした状態で、前記所定の高さに達するプラテン上の厚さの有無を検知させ、
前記所定の高さで干渉物が検出された場合に、前記表示装置に表示させる
インクジェット記録装置の制御装置。
【請求項6】
前記表示装置は、前記インクジェット記録装置に設けられたディスプレイであって、
前記ユーザーの指示は、前記ディスプレイ上から選択可能である
請求項に記載のインクジェット記録装置の制御装置。
【請求項7】
インクを吐出するヘッド、ガーメントを支持するプラテン、及び検知部を備え、表示装置を備える又は表示装置を有するホスト装置と接続可能なインクジェット記録装置の制御方法であって、
前記表示装置に、前記検知部による、前記プラテンを印刷時と同じ高さにした状態で、印刷時の前記ヘッドの位置に対応する所定の高さに達する前記プラテン上の厚さの有無を検知する範囲である高さ検知範囲を、前記プラテン上の前記ガーメントの全範囲とするか、印刷範囲とするかを、ユーザーに選択させるように表示させるステップと、
前記検知部に、ユーザーの選択結果に応じた前記高さ検知範囲で、前記所定の高さに達するプラテン上の厚さの有無を検知させるステップと、
前記所定の高さで干渉物が検出された場合に、検知結果を前記表示装置に表示させるステップと、を有する
インクジェット記録装置の制御方法。
【請求項8】
インクを吐出するヘッド、ガーメントを支持するプラテン、及び検知部を備え、表示装置と接続されるインクジェット記録装置に用いる制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記表示装置に、前記検知部による、前記プラテンを印刷時と同じ高さにした状態で、印刷時の前記ヘッドの位置に対応する所定の高さに達する前記プラテン上の厚さの有無を検知する範囲である高さ検知範囲を、前記プラテン上の前記ガーメントの全範囲とするか、印刷範囲とするかを、ユーザーに選択させるように表示させる処理と、
前記検知部に、ユーザーの選択結果に応じた前記高さ検知範囲で、前記所定の高さに達するプラテン上の厚さの有無を検知させる処理と、
前記所定の高さで干渉物が検出された場合に、前記表示装置に表示させる処理と、
を実行させることを特徴とする検知範囲選択制御プログラム。
【請求項9】
請求項に記載の検知範囲選択制御プログラムを記憶したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地に対して吐出可能なインクジェット記録装置、該インクジェット記録装置の制御装置、インクジェット記録装置の検知範囲選択制御方法、検知範囲選択制御プログラム、記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衣服(ガーメント)に対して画像形成を行うインクジェット記録装置が提案されている。
【0003】
そのインクジェット記録装置の技術の一つとして、特許文献1には、Tシャツなどの布地をプラテンにセットし、プラテンを水平移動させながら印刷を行う際に、布地の印刷面にキャリッジと干渉する(接触する)干渉物が存在しているかどうかの有無を検出することが記載されている。
【0004】
具体的には、プラテンにセットされた布地の印刷面を、光学センサを用いて干渉物の有無を検出し、干渉物を検出した場合には、印刷を中止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の検出では、布地が子供用のTシャツなどである場合、袖口や襟部が見えている状態でプラテン上にセットする必要があるため、高さ検知で袖口や襟部などの凸部を検出してしまわないように、検知部とプラテンとの距離(ギャップ)を大きくする必要がある。一方、検知された凸部の高さに応じて、検知部とプラテンとのギャップを大きくすると、検知結果を基に印刷時のヘッドとプラテンとのギャップを設定するため、画像形成を行う布地の表面とヘッドのノズルとの距離が大きくなってしまい、画像形成の品質が低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、画像形成の品質を低下させずに、印刷準備での検知における、不要なエラー発生を防ぐことができる、ガーメントに対して吐出可能なインクジェット記録装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様では、
インクを吐出するノズルを複数有するヘッドと、
ガーメントを支持し、昇降移動及び水平移動可能なプラテンと、
印刷準備において、前記プラテンを印刷時と同じ高さにした状態で、印刷時の前記ヘッドの位置に対応する所定の高さに達するプラテン上の厚さの有無を検知する検知部と、
検知動作を制御し、前記所定の高さで干渉物が検出された場合は印刷を停止させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記プラテンの印刷時の水平の移動方向における、前記検知部による、前記所定の高さに達する前記プラテン上の厚さの有無を検知する範囲である高さ検知範囲を、画像が印刷される印刷範囲とし、印刷範囲外の少なくとも一部を検知動作の対象外とし、
前記ヘッドは水平方向である第1の方向に移動可能であり、
前記ヘッドを印刷対象領域の外に配置した状態で、前記プラテンを上昇させて前記ガーメントと前記検知部との距離を前記所定の高さに設定し、前記プラテンを前記高さ検知範囲の距離、前記第1の方向とは直交する方向であって、前記印刷時の移動方向とは逆方向に移動させることで、前記検知部は、前記所定の高さに達する前記プラテン上の厚さの有無を検知する
インクジェット記録装置、を提供する。
【発明の効果】
【0008】
一態様によれば、ガーメントに対して吐出可能なインクジェット記録装置において、印刷準備での検知における、不要なエラー発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の一例である布地用プリンタの画像形成部の上面図。
図2図1のプラテンの昇降機構の概略構成図。
図3】本発明の実施形態に係る布地用プリンタの制御部の概略ブロック図。
図4】本発明の実施形態に係る布地用プリンタにおける高さ検知制御に係る機能ブロック図。
図5】本発明の実施形態に係る布地用プリンタの奥行方向の側面概略図。
図6】プラテンにセットされるTシャツと、記録ヘッドを備えるキャリッジとの位置関係を例示した側面図であって、(a)幅方向の側面図と、(b)奥行方向の側面図。
図7】プラテンにセットされるTシャツの上面図。
図8】全奥行検知モードにおける、(a)Tシャツ上の高さ検知範囲と、(b)襟部の検知を示す図。
図9】画像形成範囲に限定した、本発明におけるTシャツ上の高さ検知範囲を示す図。
図10】印刷準備と印刷時のプラテンの制御フローチャート。
図11】プラテンの高さ調整から布地への印刷までの処理手順の流れを示すシーケンス図。
図12】布地用プリンタにおける印刷判断の第1の制御例のフローチャート。
図13】外部機器と接続された布地用プリンタの模式図。
図14】外部機器から印刷情報が送信されるときの印刷判断の第2の制御例のフローチャート。
図15】外部機器から送信される印刷データの説明図。
図16】外部機器から印刷情報が送信されるときの印刷判断の第3の制御例のフローチャート。
図17】第3の制御例における高さ検知範囲の位置を示す図。
図18】インクジェット装置に設けられる操作パネルにおける高さ検知範囲の選択の表示例と操作部を示す図。
図19】布地用プリンタに接続されるPCのモニターに表示される高さ検知範囲の選択の画面例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。下記、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
<全体図>
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の一例である布地用プリンタ1の画像形成部の上面図である。布地用プリンタ1は、インクを吐出することで布地(ガーメント)上に画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置である。
【0012】
布地用プリンタ1は、板金と一体となったスライドレール104でキャリッジ100を保持し、主走査モータ105によって、駆動プーリ106と従動プーリ107間に渡したタイミングベルト102を介して主走査方向に移動走査する。
【0013】
キャリッジ100には、例えばイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する4個の記録ヘッド118から成るヘッド群が設けられている。各記録ヘッド118において、複数のインク吐出口(ノズル)を形成したノズル面のノズル列を主走査方向と直行する方向(副走査方向)に配列し、インク吐出口方向を下方に向けて装着している。
【0014】
なお、ここでは、各色で独立した記録ヘッドが設けられている例を示しているが、各記録ヘッドにおいて、異なる色のインク滴を吐出する複数のノズル列を備えるような構成であってもよい。また、色の数および配列順序は、これに限るものではない。
【0015】
記録ヘッド118を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0016】
また、キャリッジ100には、主走査方向に沿って設けられ、スリットが形成されたエンコーダスケール103と、エンコーダスケール103のスリットを検出するエンコーダセンサ117とが設けられている。エンコーダスケール103及びエンコーダセンサ117が、キャリッジ100の主走査方向位置を検知するためのリニアエンコーダ120を構成している。
【0017】
また、記録ヘッド118に対向する位置には、インクの吐出対象である、布地(ガーメント)Cを搬送するための搬送手段であるプラテン2が設けられている。
【0018】
このプラテン2は、副走査モータ111によって、搬送駆動プーリ112と搬送ローラプーリ113間に渡したタイミングベルト114を介して搬送ローラ109を回転駆動することで、駆動している。
【0019】
プラテン2には、スリットを形成したエンコーダホイール115が、搬送ローラ109と同軸に設けられている。また、図示しない側板には、エンコーダホイール115のスリットを検出するエンコーダセンサ116が、設けられている。エンコーダホイール115及びエンコーダセンサ116は、プラテン2の副走査方向位置を検知するためのホイールエンコーダを構成している。
【0020】
このプラテン2は、フラットベッド方式であり、搬送ローラ109とテンションローラ110との間に掛け渡したタイミングベルト(搬送ベルト)119を介して、副走査方向に水平に搬送される。
【0021】
図2は、プラテンの昇降機構の概略構成図である。
【0022】
図2に示すように、ステッピングモータであるプラテン昇降モータ121によって、ギア122を介してプラテン2を上下に昇降させる。なお、図5に示すようにプラテンをカセットに取り付ける場合は、カセットごとプラテン2を上下に昇降させる。
【0023】
<制御部>
図3は、本発明の布地用プリンタ1における制御部とその接続対象を説明する概略ブロック図である。
【0024】
図3に示す制御部200は、CPU(Central Processing Unit)202、ROM(Read Only Memory)203、RAM(Random Access Memory)204、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)205、ASIC(Field-Programmable Gate Array)206を備えている。
【0025】
CPU202は、装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル6と接続され、装置全体の制御を司る。その他、布地Cの搬送動作及びキャリッジ100の記録ヘッド118の移動動作に関する制御を司る機能を兼ね備えている。ROM203は、CPU202が実行するプログラムやその他の固定データを格納する。RAM204は、画像データ等を一時格納する。NVRAM205は、装置電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリである。ASIC206は、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理する。
【0026】
また、この制御部(制御装置)200は、ホストインターフェース(I/F)201、印刷制御部208、主走査モータ駆動部209、ギャップ調整部210、副走査モータ駆動部211、LED駆動部212、入出力(I/0)部207、及び媒体I/F213を備えている。ホストインターフェース(I/F)201は、プリンタドライバ31等のホスト30側とのデータ、信号の送受を行う役割を担う。印刷制御部208は、記録ヘッド118を駆動するための駆動波形を生成すると共に、記録ヘッド118の圧力発生手段を選択的に駆動させる画像データ及びそれに伴う各種データをヘッドドライバ130に出力する。主走査モータ駆動部209は、主走査モータ105を駆動する。ギャップ調整部210は、プラテン2を昇降するプラテン昇降モータ121へギャップ調整を指示する。副走査モータ駆動部211は、タイミングベルト114を駆動する副走査モータ111を駆動する役割を担う。入出力(I/0)部207は、リニアエンコーダ120、エンコーダホイール115からの検出パルス、及びその他の各種センサからの検知信号を入力する。
【0027】
この制御部200では、印刷データ等をケーブルやネットワークを介してホストインターフェース(I/F)201で受信し、受信バッファで一旦記憶する。印刷データは、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等の情報処理装置、イメージスキャナ等の画像読み取り装置、デジタルカメラ等の撮像装置のホスト機能のプリンタドライバ31により生成される。制御部200では、CPU202がホストインターフェース(I/F)201に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析する。
【0028】
あるいは制御部200では、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SDカード、miniSDカード、又はmicroSDカードなどの外部記憶媒体9を、媒体I/F213(メモリ差し込み口)に差し込むことで、記憶された印刷データを読み出して取得し、解析してもよい。
【0029】
また、その解析結果に応じてASIC206によって必要な画像処理、データの並び替え処理等を行って印刷制御部208に転送する。そこで、印刷制御部208は所要のタイミングでヘッドドライバ130に画像データや駆動波形を出力する。尚、画像出力するためのドットパターンデータの生成は、例えばROM203にフォントデータを格納して行っても良いし、ホスト装置30側の制御部であるプリンタドライバ31で画像データをビットマップデータに展開して装置へ転送するようにしても良い。ここでは、例えばプリンタドライバ31で行うものとする。
【0030】
印刷制御部208の駆動波形生成部は、ROM203に格納されてCPU202で読み出される駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び増幅器等で構成される。そして、1つの駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動波形をヘッドドライバ130に対して出力する。
【0031】
ヘッドドライバ130は、シリアルに入力される記録ヘッド118の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)に基づいて記録ヘッド118を駆動する。ヘッドドライバ130は、印刷制御部208の駆動波形生成部から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド118の圧力発生手段に対して印加する。
【0032】
尚、このヘッドドライバ130は、例えばクロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタ、シフトレジスタのレジスト値をラッチ信号でラッチするラッチ回路、を含む。その他、ヘッドドライバ130は、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含む。機能上では、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動パルスを選択的に記録ヘッド118の圧力発生手段に印加する場合を例示できる。
【0033】
キャリッジ100に搭載したレジストセンサ123は、布地Cのセンシングを行う。そして、キャリッジ100における幅方向の布地Cの有無を検出し、幅方向のインクの吐出位置の位置決めに用いる。
【0034】
ギャップ調整部210は、プラテン昇降モータ121でプラテン2を上下駆動する。
【0035】
LED駆動部212は、LED(Light Emitting Diode)で構成される発光素子3を駆動して発光させる。発光素子3及び受光素子4は、高さ検知部140(検知部)として機能する。
【0036】
布地用プリンタ1に接続されるホスト装置30は、プリンタドライバ31に加えて、入力部32と、表示部33を有している。
【0037】
図4は、本発明の布地用プリンタ1の高さ検知制御の機能ブロック図である。図4の高さ検知制御に係る機能として、検知制御部401、LED制御部402、プラテン水平位置設定部403、プラテン高さ設定部404、エラー判定部405、及び表示制御部406を有しており、これらは、図3のCPU202又はASIC206によって実現される。
【0038】
検知制御部401には、印刷データと、検知範囲の対象の選択情報とが入力されている。検知制御部401は、プラテン2の印刷時の水平の搬送方向(移動方向)に対して高さ検知部140による高さ検知範囲の対象を、画像が印刷される印刷範囲が含まれるように限定し、印刷範囲外の少なくとも一部を検知動作の対象外とするように設定する。
【0039】
検知制御部401は、LED制御部402と、プラテン水平位置設定部403と、プラテン高さ設定部404と、印刷制御部208に、設定された高さ検知範囲を送信する。
【0040】
LED制御部402は、設定された高さ検知範囲を検知するための、高さ検知部140の検知時間に相当する発光素子3の発光時間を設定し、LED駆動部212を制御する。
【0041】
プラテン水平位置設定部403は、高さ検知範囲や、印刷範囲に基づいて、副走査モータ111を介してタイミングベルト114を回転させて、プラテン2の位置を、手前方向又は奥方向に相当する副走査方向に移動させるように、副走査モータ駆動部211を駆動制御する。
【0042】
プラテン高さ設定部404は、プラテン昇降モータ121を駆動させることで、高さ検知範囲に対応する高さ検知の時間において、プラテン2の高さが、プラテン2を印刷時と同じ高さにした状態になるように、適宜プラテン2を上昇又は下降させるために、ギャップ調整部210を制御する。
【0043】
プラテン水平位置設定部403と、プラテン高さ設定部404による設定及び制御により、高さ検知部140の通過光Lの所定距離の下を、高さ検知範囲の期間、布地Cを保持したプラテン2が移動する。なお、副走査モータ駆動部211及びギャップ調整部210によるプラテン2の位置制御については、図10図11とともに詳述する。
【0044】
LED制御部402によって点灯・消灯が制御された、高さ検知部140における発光素子3から受光素子4への通過光を、干渉物が検出されたかどうかにより、エラー判定部405がエラーの有無を判断する。
【0045】
表示制御部406は、エラーであると判断された場合、操作パネル6のディスプレイ60、またはホスト装置30の表示部33に対して、エラーであることのメッセージを表示させる。
【0046】
このような検知制御により、高さ検知部140の通過光Lの所定距離の下を、布地Cを保持したプラテン2を搬送させる期間に、高さ検知部140で干渉物(凸部)を検出したらエラーと判定してエラーメッセージを操作パネル6のディスプレイ60、あるいはホスト装置30の表示部33に表示する。
【0047】
<プリンタ内のプラテン>
図5は、布地用プリンタ1の奥行方向の側面概略図である。
【0048】
布地用プリンタ1は、筐体7と、プラテン2と、プラテン2を保持するカセット5と、ガイド板8とを有している。図5中の、〇で示すLは、高さ検知部140における、発光素子3と受光素子4との間を通過する光Lの、側面視における位置を示している。
【0049】
筐体7の手前側には開口部7Oが形成されている。プラテン2は、布地Cのプリント面に張力を与えるように、カセット5に支持されており、カセット5ごと装置本体である筐体7に対して、開口部7Oから、手前側に飛び出るように移動可能である。カセット5は、筐体7に対して波線で示すように、取り外すことができる。
【0050】
ユーザーは、カセット5を外に取り出して、Tシャツ等の布地Cをプラテン2の上にセットした状態で、プラテン2の縁部の四辺を、カセット5の枠部によって取り囲むことで固定する。そして、布地Cが固定されたカセット5を、開口部7Oから、筐体7に挿入してセットする。なお、下記以降の図面及びその説明では、位置を明確にするため、カセット5を省略して示している。
【0051】
また、筐体7の手前側の上部には、操作パネル6が設けられている。操作パネル6の少なくとも一部に、LCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイ60を含み、情報を表示する機能を有している。
【0052】
図6(a)は、高さ検知部140の通過光Lと、キャリッジ100と、プラテン2の位置関係を示す幅方向の側面図であり、図6(b)は、プラテンにセットされたTシャツと、キャリッジと、高さ検知部140との位置関係を例示した奥行方向の側面図である。
【0053】
図6(a)に示すように、プラテン2の位置を、プラテン昇降モータ121によって昇降させることで、布地Cの表面と、高さ検知部140の通過光Lとの距離Δhを調整することができる。
【0054】
高さ検知部140の通過光Lを用いて検知する際、布地Cを一旦高さ検知部140の通過光Lまで衝突させる位置まで上昇することで、布地Cの厚さを検知する。
【0055】
その後、プラテン2を印刷時の適正なギャップ(距離)に離間させて、プラテン2を副走査方向(図6(b)の-X方向)に、検知範囲の距離、移動させることで検知を行う。即ち、印刷準備において、プラテン2を印刷時と同じ高さにした状態で、印刷時の記録ヘッド118の位置に対応する所定の高さに達するプラテン2上の厚さの有無を検知する。
【0056】
ここで、所定の高さに到達するプラテン2上の厚さの検知動作によって、干渉物を検知する場合とは、布地C本体の状態又は異物によって、布地C上に凸部がある状態や、布地の面全体の厚さが厚すぎる状態を示す。例えば、凸部がある状態とは、布地Cのシワや折れ曲がり、布地Cが一部重なっていることによる厚さ超過や、布地Cの一部に付箋やゴミ等の異物が付着している状態を指す。
【0057】
また、布地の面全体の厚さが厚すぎる場合とは、例えば、Tシャツ等の薄手の布地の設定条件に対して、複数枚布地全体が重なっている場合や、スウェット生地やジーンズ生地等の厚手の布地をセットした場合などが想定され、これらの場合も、干渉物ありと検知される。
【0058】
検知動作において、高さ検知部140は、発光素子3が発したLED光Lを受光素子4が受光できるかどうかで、発光素子3と受光素子4との間である所定の高さに、プラテン2上の布地C上の凸物が有るかどうかを検出する。
【0059】
また、図6(a)に示すように、印刷時を除く待機時では、キャリッジ100は、幅方向の印刷領域からは外れた位置で待機している。そのため、高さ検知時は、キャリッジ100が高さ検知部140の通過光Lを妨害することはない。
【0060】
また、図6に示すように、布地の一例としてTシャツを用いた場合、他の部分より分厚い部分である襟部を、検知対象に含めると、襟部Nが、高さ検知部140の通過光Lによって検知されてしまうことがわかる。
【0061】
図7は、プラテンにセットされるTシャツの上面図を示す。下記、布地CがTシャツである例について説明する。
【0062】
図7に示すように、プラテン2を包むようにTシャツCがセットされるため、袖部Sはプラテン2の外に位置しており、前身頃あるいは後身頃の一枚のみが、プラテン2の上に広げられる。図7は、TシャツCの前身頃Fをプラテン2にセットし、前身頃Fに模様(PA)をプリントした例を示している。
【0063】
また、Tシャツのネックラインである襟部Nは、一般的に、フライス(ゴム編み、リブ編み)や、共布などによる、二重構造になっているため、前身頃Fにおける、他の部分と比較して分厚い。
【0064】
そのため、本発明による布地用プリンタ1によって、模様(PA)を形成する部分は、縫製による凹凸部の少ない、前身頃あるいは後身頃であると好適である。
【0065】
<検知モード>
次に、図8図9を用いて、高さ検知範囲について説明する。
【0066】
図8(a)は、全奥行検知モードにおけるTシャツ上の高さ検知範囲(厚さ検知範囲)を示し、図8(b)は、全奥行検知モードによって襟部がエラーとして検知された例を示す図である。
【0067】
全奥行検知モードでは、印刷範囲に関わらず全奥行(布地の全域)のチェックを行う。全奥行のチェックを行うことで、画像データによらず、またキャリッジ(主走査)が如何なる動作をしようとも布地と衝突しないことが保証できるので簡易なシステムとなる。
【0068】
しかしながら、全奥行のチェックを行った場合、印刷範囲外であっても襟部などの凸部分が存在すると、エラーが発生してしまう。詳しくは、図8(a)で全奥行検知モードとして、高さ検知部140の通過光Lとプラテン2とを、所定のギャップで近づけた状態のまま、プラテン2が移動すると、図8(b)に示すように、高さ検知部140の通過光Lが、襟部Nを干渉物として検知する。
【0069】
一方、検知エラーの発生を避けるために布地Cと高さ検知部140とのギャップを大きくすると、検知したギャップを、印字の際のギャップに用いるため、印字の際に記録ヘッド118のノズルと被印刷物である布地Cとのギャップが大きくなり、印字品質が劣化するという問題もある。
【0070】
図9は、本発明の第1制御例におけるTシャツ上の高さ検知範囲を示す図である。
【0071】
本発明の第1制御例では、奥行き方向における、高さ検知範囲を、印字時にキャリッジが走査する範囲である印字範囲に限定することで、Tシャツの襟部のような凸部を検知してエラーで停止することを回避できる。
【0072】
<プラテン位置制御>
次に、図10及び図11を用いて、印刷準備及び印刷中における、プラテン2の位置制御について説明する。
【0073】
図10は、印刷準備と印刷時のプラテン2の制御フローチャートである。図11は、プラテンの高さ調整から布地への印刷までの処理手順の流れを示すシーケンス図である。なお、図11では、布地用プリンタ1内でのプラテン2の相対位置を示すため、カセット5や布地Cの図示は省略している。
【0074】
S101で、制御部200(検知制御部401)で、高さ検知範囲を設定する。
【0075】
S102で、副走査モータ駆動部211によって、副走査モータ111及びタイミングベルト114を介して、プラテン2の位置が奥方向に移動される(図11(a)⇒図11(b))。
【0076】
S103で、プラテン2上の布地Cの高さ検知範囲の始点が、高さ検知部140の通過光Lの下に到達したら、S104で、プラテン2の奥方向の移動を停止し、プラテン2を上昇させる(図11(b)⇒図11(c))。
【0077】
S105で、布地Cが、高さ検知部140の通過光Lにぶつかると、S106で、プラテン2が少し降下して、印刷時と同じ高さに設定される(図11(c)⇒図11(d))。
【0078】
S107において、高さ検知範囲の分、副走査モータ111によって、プラテン2の位置が、奥方向に移動する(図11(d)⇒図11(e))。
【0079】
S10で、プラテン2が、高さ検知範囲の分、奥方向に移動する期間中に、凸部が高さ検知部140の通過光Lを遮った場合(S108でYes)、S109で干渉物検知あり(異常)と送信する。
【0080】
S10でNoの場合、印刷開始動作に移行する。S110で印刷が開始され、印刷範囲の分、検知時と同じ高さで、プラテンCが手前方向に移動されることで、布地Cが記録ヘッド118の下で搬送される。
【0081】
S111で予定された画像の形成が終了し、印刷が完了すると、S112でプラテン2の手前方向の移動が停止した後、プラテン2が印刷時の高さから、一番下まで下降する(図11(f)⇒図11(g))。
【0082】
そして、S113でプラテン2が最も手前側まで、手前方向に移動する(図11(g)⇒図11(h))。
【0083】
印刷終了時には、布地Cがセットされたプラテン2を保持するカセット5は、ユーザーが取り出しやすいように、筐体7の開口部7Oから飛び出した位置まで移動している。
【0084】
<第1の制御例>
図12は、外部記憶媒体から布地用プリンタ1に印刷情報が読み込まれる印刷判断の第1の制御例のフローチャートである。
【0085】
S11で印刷ジョブが投入される。本制御例では、布地用プリンタ1に差し込まれた外部記憶媒体9によって記憶された印刷情報を、布地用プリンタ1の制御部200が読み込むことで、印刷動作が開始される。
【0086】
S12で、検知制御部401は、印刷情報から印刷範囲を解析して判断し、印刷範囲を、検知範囲に設定する。そして、S13で、高さ検知部140が、印刷範囲を高さ検知範囲として、検知動作を行う。
【0087】
S14で、高さ検知範囲において、高さ検知部140の通過光Lに凸物が干渉したことを検出したら(Yes)、S15でエラーと判断し、S16で、エラーであることを通知するメッセージを表示する。
【0088】
一方、S14で、高さ検知範囲において、高さ検知部140が干渉物を検出しなかったら(No)、S17で、印刷を実行する。
【0089】
本制御例において、高さ検知範囲を印刷範囲に設定しているため、衣服における襟部、飾り、ポケット、縫合部等の立体的な部位を除外して、検知範囲を設定することができるため、画像形成の品質を低下させずに、印刷準備での検知における、不要なエラー発生を防ぐことができる。
【0090】
<外部機器との接続>
図13は、外部機器と接続可能な本発明の布地用プリンタの模式図である。
【0091】
布地用プリンタ1は、USBメモリ等の外部記憶媒体9が接続されることで、印刷情報を取得することができる。この場合、図12に示した制御フローを実施可能である。また、布地用プリンタ1には、操作パネル6の一部に、表示装置であるディスプレイ60(パネルUI)が設けられている。
【0092】
さらに、布地用プリンタ1は、PC10、スマートフォン20等の携帯端末、カメラ40、又はスキャナー50と、USBケーブル12(有線)、あるいは、ネットワーク22(無線)を介して接続可能である。布地用プリンタ1に接続される外部機器である、PC10、スマートフォン20、カメラ40、又はスキャナー50は、ホスト装置30として機能し、布地用プリンタ1に印刷情報を送信することができる。
【0093】
なお、図13では、PC10及びスキャナー50を有線接続、スマートフォン20及びカメラ40をネットワークを介して無線接続する例を示しているが、PC10をネットワークを介して無線接続、スマートフォン20やカメラ40を有線接続してもよい。
【0094】
さらに、PC10には、モニター11が設けられ、スマートフォン20にはディスプレイ21が設けられている。布地用プリンタ1と有線接続された、PC10のモニター11、又はスマートフォン20のディスプレイ21は、プリンタドライバ31によって制御されるプリンタドライバUI(表示部33)として機能する。
【0095】
布地用プリンタ1とネットワーク22を介して接続された、PC10のモニター11、又はスマートフォン20のディスプレイ21は、WebドライバUIとして機能する。
【0096】
また、PC10に対して、後述する検知範囲選択プログラムが記憶された記憶媒体であるCD-ROM70が挿入されてもよい。
【0097】
<第2の制御例>
図14は外部機器から印刷情報が送信されるときの印刷判断の第2の制御例のフローチャートである。図12のフローとの違いは、ステップS21、S22である。相違点のみ説明する。
【0098】
S21において、印刷データ内のページデータに印刷範囲情報を含めて、ホスト装置30から布地用プリンタ1へ印刷データを送信する。
【0099】
S22において、布地用プリンタ1は、送信されたページデータから、印刷範囲情報を得る。
【0100】
図15は、外部機器から送信される印刷データの説明図である。図15に示すように、印刷データは、ページの基本情報(サイズ、印字モード、解像度など)を印したページデータを最初に送信し、その後スキャンデータを順次送信する。そして、布地用プリンタ1では、スキャンデータを受信しながら、1stスキャンからendスキャンまでキャリッジ100を走査させて画像形成動作を行う。スキャンデータには印字位置情報(搬送位置、主走査方向印字位置)が埋め込まれている。
【0101】
本制御例では、ステップS21での印刷データの送信の際に、最初に送信するページデータ内に印刷範囲情報を含めている。ホスト装置30がPC10、スマートフォン20、又は、カメラ40の場合は、外部機器の内部に印刷データの元となる画像のデータが予め存在するため、ホスト装置30側で所有する印刷データのページデータには、印刷範囲情報が予め含まれている。
【0102】
しかし、ホスト装置30が、スキャナー50の場合は、原稿を読み込んで、送信する。詳しくはスキャナー50による原稿の読み込みでは、読取キャリッジの移動による読み取り、あるいは、搬送+読取キャリッジの移動により、キャリッジの走査毎に、スキャンデータを作成する。
【0103】
この際、ホスト装置30であるスキャナー50側では、スキャナー50からの印刷データにおいて、どこに印刷範囲があるかどうか(印刷情報)は、スキャナー50側で画像データからスキャンデータを1stスキャンからendスキャンまで生成することで判断することができる。
【0104】
よって、このように印刷範囲情報(印刷開始位置~印刷終了位置)を、最初に送信するページデータに含めて送信する場合、画像データが大きいと、ホスト装置30であるスキャナー50側で印刷範囲情報の印刷終了位置を得るまでに時間を要する場合がある。そうすると、スキャナー50では、読み込みを全て待ってから送信を行うため、生産性が悪くなってしまう可能性がある。その場合は、下記の制御例を実施すると好適である。
【0105】
<第3の制御例>
図16は、外部機器から印刷情報が送信されるときの印刷判断の第3の制御例のフローチャートである。図14のフローとの違いは、ステップS31とステップS32である。
【0106】
S31にて、ホスト装置30から布地用プリンタ1へ印刷データを送信する。このとき最初に送信されるページデータには、印刷範囲情報が付加されていないものとする。
【0107】
S32にて、布地用プリンタ1は、送信された最初のスキャンデータから、印刷開始位置情報を得る。そして、その印刷開始位置を始点、印刷可能範囲の終端、即ち、プラテン2の印刷時搬送方向(移動方向)の下流端を終点として、高さ検知範囲を設定する。
【0108】
S33にて、印刷開始位置から、印刷可能範囲の終端まで、高さ検知動作を実行する。ここで、S33で実行する高さ検知範囲について説明する。図17は、第3の制御例における高さ検知範囲を示す図である。
【0109】
図17に示すように、本制御例では、高さ検知範囲は、印刷開始位置から、プラテン2の印刷時搬送方向(移動方向)の下流端までに設定されている。
【0110】
本制御例では、第2制御例と比較して、1stスキャンデータから印刷開始位置のみを取得し、検知範囲を、先端部のみ除いて設定するため、データの待ち時間に起因する、生産性の悪化を発生させない。
【0111】
したがって、本制御例において、ホスト装置30がスキャナー50であっても、原稿を読み込みながら送信することができるため、待ち時間が短縮できる。
【0112】
本制御においても、印刷開始位置を取得して先端部のみ高さ検知範囲から除くことで、高さ検知範囲を絞ることができる。そのため、他の制御例と同様に、衣服における襟部、飾り、ポケット、縫合部等の立体的な部位を除外して、検知範囲を設定することができる。
【0113】
<第4の制御例>
上述の制御例では、高さ検知範囲を印刷範囲や印刷範囲近傍に限定する例について説明したが、本発明では、上述の図9図11に示した高さ検知範囲を限定するモードと、図8で示したように全奥行を検知するモードとを切り替える機能を有していてもよい。
【0114】
図18は、布地用プリンタ1に設けられる操作パネル6における高さ検知範囲の選択の表示例と操作部を示す図である。
【0115】
図18に示すように、操作パネル6のディスプレイ60(表示装置)には機能を切り替えるためのモードが示される。この当該モードへ移行することで、機能を選択することが可能である。例えば、図18の例では、下記のボタン操作により機能が選択できる。
(1)Kボタンを押下すると、高さ検知範囲が限定的になる。
(2)CAボタンを押下すると、高さ検知範囲が全範囲になる。
【0116】
上記、(1)又は(2)の選択を行い、表示パネル6上から制御部200へ印刷指令を送ると、選択に応じた制御を布地用プリンタ1の制御部200において実施する。
【0117】
本制御例のように、検知範囲のモードを切り替えることで、例えば、子供用の場合や、襟のすぐそばに画像を形成する場合などでプラテン上に襟が見えている場合は、高さ検知範囲を限定するモードを使用する。
【0118】
一方、大人や、大きめのサイズの服であって、襟部から離れている部分に画像を形成する場合などはプラテン2上に襟部が配置されず、襟部がカセット5内にしまいこまれる場合は、明らかに布地由来の遮蔽物は、存在しないため、全範囲(全奥行)を検知するモードを使用する。
【0119】
このように検知モードを切り替えることで、不要なエラーを減らすとともに、凸部の検知漏れを防ぐことができる。
【0120】
なお、本制御例の検知範囲のモードを、プラテン2上のガーメントCの全範囲とするか、印刷範囲とするかを切り替える機能は、布地用プリンタ1上の走査パネル(パネルUI)に限られず、外部機器であるプリンタドライバUI、WebUIのいずれかを用いて、ユーザーによって選択可能であるとする。
【0121】
<第5の制御例>
第4の制御例では、布地用プリンタ1に搭載される操作パネル6で、高さ検知範囲を限定する例を示したが、図13に示すように、外部機器と接続される場合、外部機器のモニター11又はディスプレイ21に選択画面を表示させて、ユーザーによって高さ検知範囲を指定されてもよい。図19は、布地用プリンタ1に接続されるPC10のモニター11に表示される高さ検知範囲の選択の画面例を示す図である。
【0122】
図18同様に、高さ検知範囲を限定するモードと、図8で示したように全奥行を検知するモードとを切り替える機能を、本制御例では、PC10のモニター11へのタッチ入力あるいは、マウスやキーボードを用いた入力により、ON/OFFできる。
【0123】
図19の矢印で示すように、プリンタドライバには機能を有効または無効にするためのチェックボックスがある。チェックボックスにチェックするか否かで、機能の有効無効を選択することが可能である。
矢印で示す項目に、チェックを入れると、高さ検知範囲が限定的になる。
【0124】
一方、チェックを入れないと、高さ検知範囲が全範囲となる。
【0125】
(1)又は(2)の選択を行い、ホスト装置30のプリンタドライバ31から布地用プリンタ1の制御部200へ印刷指令を送ると、選択に応じた制御を布地用プリンタ1において実施する。
【0126】
この検知範囲のモードを切り替える機能は、有線で接続されるプリンタドライバUIに限られず、ネットワークで接続されるホスト装置のWebUIを用いても、ユーザーによって選択可能である。
【0127】
さらに、本発明の高さ検知範囲選択制御方法を実行させるための検知範囲選択制御プログラムを、CD-ROM70やUSBメモリなど記憶媒体へ記憶させて頒布(配布、販売)してもよい。この場合、図9に示す、CD-ROM70やUSBメモリなどの記憶媒体は、本発明の高さ検知範囲制御方法をコンピュータ(PC10)に実行させるための高さ検知範囲制御プログラムを記憶した、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体として機能する。
【0128】
なお、本発明の検知範囲選択制御プログラムを、インターネット(ネットワーク)を介してダウンロードさせることで、コンピュータ(PCや、スマートフォン20)へ頒布してもよい。
【0129】
上述のいずれの実施形態においても、布地(ガーメント)に対して吐出可能なインクジェット記録装置において、画像形成の品質を低下させずに、印刷準備における、不要なエラー発生を防ぐことができる。
【0130】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0131】
例えば、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等は何れも同義語とする。
【0132】
また、上述した各実施形態では、布地としてTシャツを適用させる想定で説明したが、それ以外の対象についても適用させることが可能である。例えば、シャツ、トレーナー、ズボン、スカート等の衣服に加えて、帽子、旗、各種ケース、ミニカーテン、装飾品等を、布地(ガーメント)として想定されうる。
【符号の説明】
【0133】
1 布地用プリンタ(インクジェット記録装置)
2 プラテン
6 操作パネル
9 USBメモリ(外部記憶媒体)
10 PC(情報処理装置、ホスト装置)
11 モニター(表示装置、表示部)
20 スマートフォン(情報処理装置、ホスト装置)
21 ディスプレイ(表示装置、表示部)
30 ホスト装置
40 カメラ(ホスト装置)
50 スキャナー(ホスト装置)
60 ディスプレイ(表示装置、パネルUI)
70 CD-ROM(記憶媒体)
118 記録ヘッド(ヘッド)
140 高さ検知部(検知部)
200 制御部(制御装置)
C 布地(Tシャツ,ガーメント)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0134】
【文献】特開2003-311938号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19