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特許7040266固体表面からの原子の脱離プロセスの評価方法
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  • 特許-固体表面からの原子の脱離プロセスの評価方法 図1
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  • 特許-固体表面からの原子の脱離プロセスの評価方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】固体表面からの原子の脱離プロセスの評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 13/00 20060101AFI20220315BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
G01N13/00
G01N17/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018086747
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019191088
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉尾 里司
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-316976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 13/00
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価に供する固体表面を選択する評価面選択工程と、
前記固体表面を曝露する曝露雰囲気を選択する曝露雰囲気選択工程と、
前記固体表面と、前記曝露雰囲気との界面の初期の構造状態である初期界面構造を規定する界面状態規定工程と、
分子動力学法により、前記初期界面構造からの界面の構造状態の変化を追跡し、前記固体表面から、前記曝露雰囲気への、前記固体表面を構成していた原子の脱離過程を評価する追跡・評価工程とを有する固体表面からの原子の脱離プロセスの評価方法。
【請求項2】
前記追跡・評価工程において、前記分子動力学法として加速分子動力学法を用いる請求項1に記載の固体表面からの原子の脱離プロセスの評価方法。
【請求項3】
前記評価面選択工程、及び前記曝露雰囲気選択工程のいずれか一方と、
前記界面状態規定工程と、前記追跡・評価工程とを繰り返し実施する繰り返し工程をさらに有する請求項1または請求項2に記載の固体表面からの原子の脱離プロセスの評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体表面からの原子の脱離プロセスの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性材料等の固体材料にとって大気中、高温多湿下などでの劣化現象は重大な課題である。このため、各種固体材料について、劣化現象の発生を抑制する方法が検討されてきた。
【0003】
例えば赤外線遮蔽材料として、従来から複合タングステン酸化物が知られているが、複合タングステン酸化物は、高湿下で太陽光に長期間曝されると変色するという課題がある。
【0004】
そこで、係る課題解決のために各種検討がなされてきた。例えば特許文献1には基材と、前記基材の一方の面上に配置された、赤外線吸収剤、樹脂、および酸化防止剤を含有する赤外線吸収層と、を有し、前記赤外線吸収層の基材と反対側の表面の膜面pHが6.5以上である、積層フィルムが提案されており、赤外線吸収剤としてセシウム含有複合酸化タングステンを用いた例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/088850号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固体材料の劣化現象は、例えば固体表面が大気等の雰囲気に曝露され、固体表面に含まれていた原子が脱離すること等で生じると考えられる。しかし、劣化現象における原子の脱離プロセスの発現には長い時間を要するケースがほとんどであり、実験的に劣化現象を定量的に把握し、劣化現象の発生を抑制する材料や、方法を決定するということは非常に時間とコストがかかる手法である。
【0007】
そこで、予めシミュレーションや理論予測により、対象とする固体表面がどのような環境下で劣化しやすいかを明らかにし、劣化現象の発生を抑制できる材料や手法を決定するということが強く求められていた。
【0008】
上述のように固体材料の劣化現象は、固体表面に含まれていた原子が脱離等することで生じると考えられるため、劣化現象の発生を抑制できる材料や手法であるかを判断するためには、固体表面での原子の脱離プロセスを考慮した評価方法が求められる。
【0009】
しかしながら、固体表面と、該固体表面を曝露する曝露雰囲気との界面における原子の脱離プロセスを考慮した評価方法はこれまで提案されていなかった。
【0010】
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、固体表面と、該固体表面を曝露する曝露雰囲気との界面における原子の脱離プロセスを評価できる、固体表面からの原子の脱離プロセスの評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
評価に供する固体表面を選択する評価面選択工程と、
前記固体表面を曝露する曝露雰囲気を選択する曝露雰囲気選択工程と、
前記固体表面と、前記曝露雰囲気との界面の初期の構造状態である初期界面構造を規定する界面状態規定工程と、
分子動力学法により、前記初期界面構造からの界面の構造状態の変化を追跡し、前記固体表面から、前記曝露雰囲気への、前記固体表面を構成していた原子の脱離過程を評価する追跡・評価工程とを有する固体表面からの原子の脱離プロセスの評価方法を提供する。

【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、固体表面と、該固体表面を曝露する曝露雰囲気との界面における原子の脱離プロセスを評価できる、固体表面からの原子の脱離プロセスの評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1における曝露雰囲気が水雰囲気の場合の初期界面構造の模式図。
図2図1の初期界面構造から、加速分子動力学法により計算した600step後の結果を示す模式図。
図3】実施例1における曝露雰囲気が酸素雰囲気の場合の初期界面構造から、加速分子動力学法により計算した1000step後の結果を示す模式図。
図4】実施例1における曝露雰囲気が窒素雰囲気の場合の初期界面構造から、加速分子動力学法により計算した3200step後の結果を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0015】
本発明の発明者は固体表面と、該固体表面を曝露する曝露雰囲気との界面における原子の脱離プロセスを評価できる、固体表面からの原子の脱離プロセスのシミュレーション方法について鋭意検討した。その結果、密度汎関数理論に基づく第一原理計算により界面からの原子脱離プロセスを追跡する方法が最も効率的であるとの考えに至った。
【0016】
通常の第一原理計算での反応の解析にはNEB(Nudged Elastic Band)法などが用いられるが、この方法では始状態の原子配置と終状態の原子配置を仮定する必要がある。しかしながら、界面では複数の分子が反応に関与するため、終状態の原子配置を妥当な形で仮定することは困難である。そのため、複数の原子配置を比較し、最安定なパスをステップ毎に求めていく必要があり、結果として非常に高コストな計算となる。従って、界面における原子の脱離プロセスの評価を行うことが困難になる恐れがある。
【0017】
そこで、本発明の発明者は分子動力学法により脱離パスを追跡する方法を発明するに至った。分子動力学法は原子に働くポテンシャルから原子が受ける力を求め、その力に基づき原子の位置を時々刻々と変化させていく手法である。分子動力学法によれば、終状態を仮定することなく脱離パスを追跡することが可能になる。このため、固体表面と、該固体表面を曝露する曝露雰囲気との界面における原子の脱離プロセスを簡便に評価することが可能になる。
【0018】
そこで、本実施形態の固体表面からの原子の脱離プロセスの評価方法は分子動力学法を用いることができ、以下の工程を有することができる。
評価に供する固体表面を選択する評価面選択工程。
選択した固体表面を曝露する曝露雰囲気を選択する曝露雰囲気選択工程。
選択した固体表面と、曝露雰囲気との界面の初期の構造状態である初期界面構造を規定する界面状態規定工程。
分子動力学法により、初期界面構造からの界面の構造状態の変化を追跡し、選択した固体表面から、曝露雰囲気への原子の脱離過程を評価する追跡・評価工程。
(評価面選択工程)
評価面選択工程では、評価に供する固体材料の表面、すなわち固体表面を選択することができる。具体的な操作は特に限定されず、評価に供する固体材料を選択し、原子の離脱プロセスの評価を要する面、例えば結晶面を選択することができる。
(曝露雰囲気選択工程)
評価面選択工程で選択した固体材料の固体表面を曝露する曝露雰囲気を選択することができる。このため、曝露雰囲気は、評価に供する固体材料の実使用環境等に応じて任意に選択することができる。
(界面状態規定工程)
評価面選択工程で選択した固体材料の固体表面と、曝露雰囲気選択工程で選択した曝露雰囲気との界面の初期の構造状態である初期界面構造を規定することができる。
【0019】
これは、後述する追跡・評価工程に供する始状態の各原子位置を規定するための工程であり、固体材料の固体表面側については、評価面選択工程で選択した面が最表面に位置するように、例えば該固体材料の結晶構造等に応じて各原子位置を規定できる。また、曝露雰囲気側については、曝露雰囲気の気体原子(分子)をランダムに配置させることができる。
【0020】
例えば、上述のように各原子位置を決定した後、さらに分子動力学法により一定時間の計算を行い、各原子の安定位置を求め、初期界面構造とすることもできる。
(追跡・評価工程)
追跡・評価工程では、分子動力学法により、界面状態規定工程で規定した初期界面構造からの界面の構造状態の変化を追跡し、選択した固体表面から、曝露雰囲気への原子の脱離過程を評価することができる。
【0021】
追跡・評価工程において全ての原子の動きを追跡、評価すると、計算に多くの時間を要することになるため、例えば脱離し易い1つの原子を選択し、係る原子の座標を反応座標として追跡することが好ましい。
【0022】
また、追跡・評価工程での評価の内容は特に限定されないが、例えば選択した1つの原子の座標の移動量や、移動速度、移動に要するエネルギー等を計算することができる。
【0023】
ところで、分子動力学法(第一原理分子動力学法)は量子力学的な計算を行うため、その計算コストが非常に高い。そのため、長時間の現象を計算することは非現実的である。一般に反応速度は以下の式(1)に示したアレニウスの式で表される。
【0024】
【数1】
式(1)中、Aは頻度因子、kはボルツマン定数、ΔEは反応の障壁エネルギー、Tは温度をそれぞれ表している。
【0025】
このため、一般に系の温度が低く、かつ反応の障壁エネルギーが高い場合は反応の進行には長時間を要する。分子動力学法の計算で扱える計算時間はピコセカンド(ps)程度であるため、固体表面から曝露雰囲気への原子の脱離過程にpsよりも長い反応時間を要する場合には、分子動力学法では反応が発生せず、脱離過程を十分に追跡できない恐れがある。
【0026】
そこで、固体表面から曝露雰囲気への原子の脱離過程に長い反応時間を要する場合や、計算に要する時間を短縮する必要がある場合には、追跡・評価工程において、分子動力学法として加速分子動力学法を用いることが好ましい。
【0027】
このように加速分子動力学法を用いることで、固体表面から曝露雰囲気への原子の脱離過程をより短い時間で、例えば少なくともpsオーダーで発生させることが可能になる。
【0028】
用いる加速分子動力学法としては特に限定されないが、予めブーストポテンシャルを加えておくハイパーダイナミクスや、原子に外場を加えて反応が進むようにするSteered Molecular Dynamics、時間とともにバイアスポテンシャルを付加するmetadynamics等を用いることができる。特に、metadynamicsは徐々にポテンシャルを加えていくことができ、少ない仮定で計算できるため好ましく用いることができる。
【0029】
加速分子動力学法として、metadynamicsを用いる場合、反応の付加的なポテンシャルは時間と履歴に依存し、原子が同じ場所に留まらないようなポテンシャルが望ましく、例えば、以下の式(2)の形のポテンシャルを追加することが望ましい。
【0030】
【数2】
ここで、式(2)中のhは付加するポテンシャルの高さ、ξは反応座標、ξ(t')は時刻tまでに既に到達した反応座標、ωは付加するポテンシャルの幅にそれぞれ相当にする。ξは脱離プロセスの進行方向を表すように選択することが望ましく、例えば、固体表面をXY表面とした場合に、固体表面に対して垂直な方向であるZ軸方向に当たるZ座標にとることが望ましい。
【0031】
上述のポテンシャルの追加により、原子の反応座標は同じところに留まり難くなり、結果として、脱離プロセスを短時間で発生させることができる。
【0032】
本実施形態の固体表面からの原子の脱離プロセスの評価方法はさらに任意の工程を有することもできる。
【0033】
例えば繰り返し工程を有することができ、繰り返し工程では、評価面選択工程、及び曝露雰囲気選択工程のいずれか一方と、界面状態規定工程と、追跡・評価工程とを繰り返し実施することができる。
【0034】
繰り返し工程では、評価に供する固体表面、または曝露雰囲気を替え、変更後の固体表面、または曝露雰囲気を用いる点以外は、先に実施した界面状態規定工程、及び追跡・評価工程と同様にして、これらの工程を繰り返し実施することができる。なお、固体表面を替えるとは、例えば先に評価を行った固体材料とは異なる材料の固体表面にする場合や、先に計算を行った固体材料と同じ材料について異なる表面、すなわち異なる結晶面にする場合を含む。
【0035】
このように、繰り返し実施することで、固体表面や、曝露雰囲気による原子の脱離プロセスの違いを評価することができる。
【0036】
繰り返し工程を実施した場合には、さらに選択工程を有することもでき、繰り返し工程で得られた固体表面、または曝露雰囲気の違いによる、固体表面からの原子の脱離プロセスを比較し、劣化現象の発生を特に抑制できる固体表面、もしくは曝露雰囲気を選択することができる。
【0037】
選択工程において、劣化現象の発生を特に抑制できる固体表面、もしくは曝露雰囲気の選択方法は特に限定されない。例えば脱離した原子の、評価に供した固体表面と垂直方向への移動速度や、移動に要するエネルギー等を比較して選択することができる。移動速度により比較する場合には移動速度の遅いものを、移動に要するエネルギーを比較する場合には移動に要するエネルギーが大きいものを劣化現象の発生を特に抑制できる固体表面、もしくは曝露雰囲気として選択できる。
【0038】
以上に説明した本実施形態の固体表面からの原子の脱離プロセスの評価方法によれば、分子動力学法を採用することで、終状態の原子配置等界面の反応パスの詳細を規定することなく、簡便に固体表面からの原子の脱離プロセスを評価することができる。このため、固体材料の劣化のプロセスを簡便に評価し、最適な材料、雰囲気を選択することが可能になる。
【実施例
【0039】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
以下の手順により、Cs0.33WO3の固体表面からの原子の脱離プロセスについて評価した。
【0040】
まず、評価に供する固体表面として、Cs0.33WO3の(001)表面を選択した(評価面選択工程)。
【0041】
次いで、選択した固体表面を曝露する曝露雰囲気として水雰囲気を選択した(曝露雰囲気選択工程)。
【0042】
そして、図1に示すように、選択した固体表面であるCs原子11が10原子と、W原子12が24原子と、O原子13が78原子とからなる(001)表面、及び曝露雰囲気である水分子14が10分子の界面の初期界面構造を規定した(界面状態規定工程)。Cs0.33WO3の固体表面については、結晶構造から規定し、水分子についてはランダムに配置して初期界面構造を規定した。
【0043】
なお、図1中、周期境界条件を用いて計算を行っていることから、セルの上端と、下端とはつながっているため、Cs原子11が上端部にも位置している。また、図1中、固体表面はXY平面となっており、固体表面と垂直な方向がZ軸方向となる。以下の図2図4においても同様であり、図2図3においても図1と同じ原子には同じ番号を付けている。
【0044】
固体表面中央のCs原子11AのZ座標を反応座標として選択し、時間刻みを2.0fsとして加速分子動力学法により、初期界面構造からの界面の構造状態の変化を追跡し、選択した固体表面から、曝露雰囲気への原子の脱離過程を計算した(追跡・評価工程)。
【0045】
なお、計算に当たって第一原理計算のソフトとしては平面波基底第一原理計算ソフトVASP(Vienna Ab initio Simulation Package)を用い、平面化のカットオフは400eV、k点は2×2×1とした。加速分子動力学法としてはmetadynamicsを用いた。
【0046】
図2に記載のように600step後(1.2ps後)にはCs原子11AがZ軸方向に、すなわち固体表面から垂直方向に高い位置まで到達し、この間の脱離パスを得ることができた。
【0047】
次に、曝露雰囲気選択工程と、界面状態規定工程と、追跡・評価工程とを繰り返し実施する繰り返し工程を実施した。
【0048】
具体的には曝露雰囲気選択工程で、曝露雰囲気として、酸素雰囲気、窒素雰囲気を選択し、曝露雰囲気を変更した点以外は、上述の曝露雰囲気が水雰囲気の場合と同様に計算して、それぞれの雰囲気について界面状態規定工程と、追跡・評価工程とを実施した。
【0049】
酸素雰囲気を選択した場合には、界面状態規定工程では、図1の場合と同様のCs0.33WOの(001)表面と、酸素分子が10分子からなる初期界面構造を規定した。そして、加速分子動力学法により計算したところ1000step後(2.0ps後)には、図3に記載の様にCs原子11Aが固体表面から、曝露雰囲気の酸素分子31側に、Z軸方向に沿って高い位置まで到達し、この間の脱離パスを得ることができた。
【0050】
窒素雰囲気を選択した場合には、界面状態規定工程では、図1の場合と同様のCs0.33WOの(001)表面と、窒素分子が10分子からなる初期界面構造を規定した。そして、加速分子動力学法により計算したが、図4に示すように、3200step後(6.4ps後)においても、Cs原子11Aは、固体表面から曝露雰囲気の窒素分子41側にほとんど浮き上がらなかった。その後、加速するポテンシャルの高さを高くしたところ浮かび上がり、反応パスを得ることができた。
【0051】
以上の結果から、固体表面からの、Cs原子11Aの、固体表面と垂直方向への移動速度を比較したところ、Cs0.33WOの(001)表面は水雰囲気 > 酸素雰囲気 > 窒素雰囲気の順に劣化しやすいことが確認できた(選択工程)。この結果は実験的な傾向と一致しており、シミュレーションにより簡便にCs脱離を評価できることを確認できた。
図1
図2
図3
図4