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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 11/00 20060101AFI20220315BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
B65H11/00 A
G03G15/00 407
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018107173
(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公開番号】P2019163157
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2018051539
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】多田 薫
(72)【発明者】
【氏名】安藤 貴之
(72)【発明者】
【氏名】養田 泰信
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-172654(JP,A)
【文献】特開平10-114439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 11/00
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入端から排出端に向かって上方傾斜し直線状に延びる搬送下面と、
導入端側に回動可能に設けられ、前記導入端から導入するシート状搬送物を載置する載置台とを備え、
前記載置台を第1の位置と第2の位置とへ変位でき、
前記載置台は、前記第1の位置を占めた場合、直線状の搬送経路を形成し、前記第2の位置を占めた場合、屈曲状の搬送経路を形成し、
前記屈曲状の搬送経路では、前記載置台が水平であることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記載置台を前記第1の位置と前記第2の位置とへ変位させる変位部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記屈曲状の搬送経路は、前記導入端側に、前記搬送下面の一端を構成する搬送ガイド部材と、当該搬送ガイド部材と対向するガイド面を有することを特徴とする請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記ガイド面は、前記載置台から搬送されるシート状搬送物の搬送方向と交差する幅方向に延設されていることを特徴とする請求項記載の搬送装置。
【請求項5】
前記導入端は、前記シート状搬送物を導入する導入口を形成する請求項1乃至4の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記変位部材は、前記載置台と接触しない離間位置と前記載置台と接触する当接位置とに移動可能に設けられていて、
前記直線状の搬送経路は、前記変位部材が前記離間位置を占めることで形成され、
前記屈曲状の搬送経路は、前記変位部材が前記当接位置を占めることで形成されることを特徴とする請求項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記搬送下面の一端を構成する搬送ガイド部材に対して、前記導入端側からの前記シート状搬送物の搬送方向と異なる方向から前記シート状搬送物を案内する案内部材を有する請求項1乃至6の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の搬送装置を備えた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状搬送物には、屈曲させながら搬送可能な屈曲可能搬送物と、屈曲できない、あるいはさせない方が良い屈曲不可搬送物がある。このため、シート状搬送物を搬送する搬送装置では、シート状搬送物が通過する搬送路を直線状に形成し、屈曲可能搬送物や屈曲不可搬送物を搬送路内で搬送可能としている。搬送装置には、装置の小型化を図るために、導入端から排出他に向かって上方傾斜し直線状に延びる搬送経路を有するものがある(例えば特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
搬送経路を傾斜させた構成であると、シート状搬送物を導入端側にセットした場合、搬送経路から離れる方向に移動してしまい、セット性の面や搬送路との位置関係が不安定となって搬送不良の要因に成り兼ねない。
本発明は、装置の小型化を維持しつつも、シート状搬送物のセット性と安定した搬送を確保することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明に係る搬送装置は、導入端から排出端に向かって上方傾斜し直線状に延びる搬送下面と、導入端側に回動可能に設けられ、導入端から導入するシート状搬送物を載置する載置台とを備え、載置台を第1の位置と第2の位置とへ変位でき、載置台は、第1の位置を占めた場合、直線状の搬送経路を形成し、第2の位置を占めた場合、屈曲状の搬送経路を形成し、屈曲状の搬送経路では、載置台が水平であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、シート状搬送物を載置する載置台が、第1の位置を占めた場合、直線状の搬送経路を形成し、第2の位置を占めた場合、第1の位置と異なる屈曲状の搬送経路を形成するので、装置の小型化を維持しつつも、シート状搬送物のセット性と安定した搬送を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明に係る搬送装置の一実施形態を説明する図。
図2】本発明に係る搬送装置を備えた画像形成装置の一実施形態を示す概略図。
図3】搬送装置の導入側の構成と載置台が第2の位置を占めて屈曲状の搬送経路を形成した状態と、シート状搬送物のセット状態を示す拡大図。
図4】載置台が第1の位置を占めて直線状の搬送経路の構成と屈曲不可搬送物のセット状態を説明する拡大図。
図5】載置台が第1の位置を占めて直線状の搬送経路が形成された状態を示す図。
図6】載置台が第2の位置を占めて屈曲状の搬送経路が形成された状態を示す図。
図7】屈曲状と直線状の搬送経路の切替部の外観を示す図。
図8】切替部の構成を説明する図。
図9】屈曲状の搬送経路を形成する側に切替部を切り替えた状態を示す図。
図10】直線状の搬送経路を形成する側に切替部を切り替えた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて説明する。実施形態において、同一の機能や構成を有するものには同一の符号を付し、重複説明は適宜省略する。図面は一部構成の理解を助けるために、部分的に省略又は模式的に示す場合もある。
本発明に係る搬送装置は、一方の端部よりも他方の端部が上方に位置する直線状の搬送ガイド部材と、一方の端部側に回動可能に設けた載置台となる手差しトレイとを備え、手差しトレイを第1の位置と第2の位置へと変位可能とし、手差しトレイの位置を第1の位置と第2の位置とへ選択的に変位させることで、直線状の搬送ガイド部材と手差しトレイで形成される搬送経路の形態を、直線状と屈曲状とし、装置の小型化を維持しつつも、特性の異なるシート状搬送物のセット性と安定した搬送を可能としたものである。
本発明に係る搬送装置は、手差しトレイを第1の位置と第2の位置へと変位させる変位部材を備えている。手差しトレイが第1の位置を占めると直線状搬送経路を形成し、変位部材によって第2の位置に変位されると、屈曲状搬送経路を形成する。そして、シート状搬送物の特性が屈曲不可のシート状搬送物の場合には、直線状の搬送経路を形成することで搬送可能とし、屈曲を許容可能なシート状搬送物の場合には、手差しトレイをほぼ水平にして屈曲状搬送経路を構成することで、屈曲可能搬送物の位置ずれを防止しつつもセット性の向上を図っている。
【0008】
最初に画像形成装置と搬送装置の構成を説明し、次に特徴部分について説明する。
図2は、本発明に係る画像形成装置1の一形態を示す概略図である。画像形成装置1は、搬送装置となる自動原稿搬送装置100と、画像読取装置101と、画像形成部102とを備えている。
画像読取装置101は、コンタクトガラス上にシート状搬送物である原稿を載置してセットし、読取走査することで、原稿の画像を読み取る周知のものである。画像読取装置101で読み取られた画像のデータは、画像形成部102に送信され、プリントすべき画像のデータとして使用される。
画像形成部102は、本実施形態においてはその作像方式は問わない。画像形成部102としては、プリントすべき画像のデータに基づき像担持体の表面に静電潜像で形成し、現像剤となるトナーで現像して可視化し、シート状の記録媒体の1つである用紙に転写し、定着部で熱と圧力を加えることでトナー像を用紙に定着させる電子写真方式のものであってもよい。あるいは、プリントすべき画像のデータに基づき、インクヘッドからインク滴を吐出することで用紙に画像を形成するインク吐出方式のものであってもよい。画像形成部102には、操作パネル105が設けられている。操作パネル105を設ける場所は、画像形成部102ではなく、自動原稿搬送装置100に設けてもよい。
【0009】
画像形成部102の下方には、用紙が積載されて収納される給紙部103が設けられていて、画像形成部102に対して用紙を供給している。画像形成部102で画像形成された用紙は、画像読取装置101と画像形成部102の間の空間内に位置する画像読取部103の上部に形成された排出トレイ104上に矢印A1で示す排紙方向に排出されてスタックされる。
自動原稿搬送装置100は、屈曲可能なシート状搬送物である原稿シートP1を積載する原稿トレイ2と、載置部となる手差しトレイ7と、排紙部となる排紙トレイ15を備えている。本実施形態において、屈曲可能なシート状搬送物とは、例えば紙や樹脂シートに文字や図柄が印刷されている原稿である。原稿トレイ2に積載される原稿シートP1は、排紙方向A1と直交する給紙方向A2へと送り出され、ほぼ180度Uターンされて原稿トレイ2の下方に位置する自動原稿搬送装置100の排紙トレイ15上に排紙される。本実施形態において、原稿シートP1及び用紙の最大サイズはA3サイズとしている。
自動原稿搬送装置100は、図1に示すように、第1の導入部となる原稿トレイ給紙口14から原稿読取部9、10に向かって延びる湾曲した搬送経路(以下「湾曲搬送経路」と記す)60を備えている。
【0010】
原稿トレイ給紙口14は、原稿トレイ2と、原稿トレイ2の上方に位置する外装部材100Aの端部100Aaの間に形成されている。原稿トレイ給紙口14には、ピックアップローラ3とフィードローラ5及び分離パット6が配置されている。本実施形態では、図2に示した操作パネル105で、例えばコピー開始ボタンが操作されると、駆動モータが作動するとともにフィードローラ5に接続された電磁クラッチ51が連結される。これにより、フィードローラ5とギヤ連結されたピックアップローラ3が駆動され、原稿トレイ2に積載されたシート状原稿束の最上部のシート状原稿P1が機内に導入されフィードローラ5と分離パット6により1枚ずつに分離されて送られる。
原稿トレイ2とピックアップローラ3の間には、第1の原稿検知手段(以下「原稿セット検知センサ」)4が配置されていて、原稿トレイ2上のシート状原稿P1の有無を検知している。原稿セット検知センサ4は、発光部から照射されてシート状原稿P1で反射された反射光を受光部で検知することでシート状原稿P1の有無を検知する光反射型の光学センサで構成されている。本実施形態において、原稿セット検知センサ4は、シート状原稿P1の上方に配置しているが、反射光を受光部で検知することができればよいので、シート状原稿P1の下方に配置する形態であってもよい。
【0011】
自動原稿搬送装置100は、手差しトレイ7から排紙トレイ15に向かって直線状に延びて上方傾斜する搬送路61を備えている。搬送路61は、上搬送ガイド部材615と上搬送ガイド板617で構成される搬送上面61aと、下搬送ガイド部材616と下搬送ガイド板614で構成される搬送下面61bとの間に形成されている。
搬送上面61a及び搬送下面61bは、手差しトレイ7から排紙部14に向かって直線状に延びるように形成されている。搬送路61は、その一端が手差しトレイ7が収納される収納部100c内に開口され、その他端が排紙トレイ15側に開口している。本実施形態において、収納部100c内の開口を手差し給紙口13とし、排紙トレイ15側の開口を、搬送路61内を搬送されるシート状原稿を排紙トレイ15へと排出する排出口12とする。
すなわち、自動原稿搬送装置100は、搬送下面61bの一端を構成する下搬送ガイド板614の端部614bを導入端とし、搬送下面61bの他端を構成する下搬送ガイド部材616の端部616aを排出端としている。
搬送路61には、搬送ローラ対となる読取前ローラ対611が配置されている。原稿読取部9と排出口12の間の搬送路61には、搬送ローラ対となる読取後ローラ対612と排出ローラ対613が配置されている。
【0012】
湾曲搬送経路60の先端は、手差し給紙口13と読取前ローラ対611との間において、搬送路61と接続されている。すなわち、湾曲搬送経路60は、互いに対向配置された案内部材602,603によって形成された空間で構成されている。案内部材602,603は、搬送路61を形成する下搬送ガイド部材616と上搬送ガイド部材615に対して、導入口13からのシート状搬送物の搬送方向と異なる方向からシート状搬送物を案内するように配置、構成されている。つまり、湾曲搬送経路60は、搬送路61に対して原稿シートP1を別な方向から搬送する搬送経路を構成している。原稿読取部9、10は、例えば、光源と受光素子とレンズを一体化したイメージセンサである密着センサ(CIS)で構成されている。原稿読取部9はシート状搬送物P1の表面を検知し、原稿読取部10はシート状搬送物P1の裏面を検知する。
湾曲搬送経路60には、搬送ローラ対であるプルアウトローラ対601が配置されていて、原稿トレイ2から送り出されたシート状原稿P1は、このプルアウトローラ対601によって搬送路61に向かって搬送される。
【0013】
手差し給紙口13と読取前ローラ対611の間に配置された下搬送ガイド板614は、手差するシート状原稿の壁面となるものである。また、下搬送ガイド板614と対向配置された上搬送ガイド部材617のガイド面617aは、手差するシート状原稿の壁面となるものである。これら下搬送ガイド板614と上搬送ガイド部材617は、手差し給紙口13から導入されるシート状原稿を、矢印Bで示す搬送方向と交差する幅方向W(図8参照)に延びていて、手差し給紙口13から読取前ローラ対611までの間でシート状原稿をガイドしている。
【0014】
湾曲搬送経路60を搬送されたシート状原稿P1は、読取前ローラ対611よりシート状原稿P1の搬送方向上流側から搬送路61内に導入され、読取前ローラ対611を経て、片面読取りモードの場合は原稿読取部9で、両面読取りモードの場合は原稿読取部9と原稿読取部10の両方によりの原稿の表面あるいは両面の画像が読み取られる。画像が読み取れられたシート状原稿P1は、読取後ローラ対612と排出ローラ対613によって排出口12から装置外部へと搬送され、排出トレイ14へと排出されてスタックされる。
【0015】
自動原稿搬送装置100は、手差し給紙口13よりも搬送方向上流側に手差しトレイ7が収納部100cに収納可能に配置されている。手差しトレイ7は、自動原稿搬送装置100の基部となるケーシング100Bに回動可能に支持されていて、図1に一点破線で示す手差しトレイ7が収納部100cに収納された位置で手差し給紙口13を塞ぎ、シート状原稿の手差し給紙口13への挿入を塞ぐ収納位置と、実線、二点鎖線で示す手差し給紙口13を開放して手差しトレイ7のシート状原稿と手差し給紙口13とが連通する作動位置を占めように構成されている。
本実施形態において、手差しトレイ7は、作動位置において、実線で示す搬送路61に対して直線的な位置と、二点鎖線で示す搬送路61に対して屈曲した位置の異なる位置を占めるように構成されている。本実施形態において、手差しトレイ7には、シート状搬送物のうち、図3図4に示すように、原稿トレイ2から湾曲搬送経路60を通して搬送不可なシート状原稿(屈曲不可搬送物)P2、P3が、その載置面7bに載置されてセットされる。
【0016】
つまり、搬送不可なシート状原稿(屈曲不可搬送物)P2、P3は、物理的に屈曲しないあるいは屈曲させることが好ましくないシート状搬送物である。搬送不可なシート状媒体(屈曲不可搬送物)としては、例えば名刺などのカード状の紙媒体、はがき、キャッシュカードや各種クレジットカード等のような樹脂カード類が挙げられる。また、手差しトレイ7にセットされるシート状搬送物には、屈曲性を有しているが、その形状が矩形でないものや不定形なサイズのもの、和紙のような表面凹凸が普通紙に比べて深いものをシート状搬送物が含まれている。
本実施形態において、符号P2は屈曲性を有する不定性サイズのシート状原稿、符号P3は樹脂製で名刺大のカードであるシート状原稿を示す。
【0017】
手差し給紙口13と読取前ローラ611の間には、図1に示すように、第2の原稿検知手段(以下「手差しセット検知センサ」)8が配置されていて、手差しトレイ7に載置したシート状原稿の有無を検知する。自動原稿搬送装置100は、手差しセット検知センサ8による検知後、所定の時間が経過すると読取前ローラ対611が微小量回転し、シート状原稿が読取前ローラ対611のニップ部で挟持されることでプレフィード可能に構成されている。シート状原稿は、ニップ部に突き当たるまで挿入することで読取前ローラ対611に挟持される。
そして、操作パネル105(図1参照)でコピー開始ボタンが操作されると、駆動モータが回転して読取前ローラ対611が回転してシート状原稿を搬送路61の奥へと送り出す。シート状原稿は読取前ローラ611により搬送経61を搬送され、原稿読取部9又は原稿読取部9と原稿読取部10とによりの画像が読み取られる。画像が読み取れられたシート状原稿は、読取後ローラ対612と排出ローラ対613によって排出口12から装置外部へと搬送され、排出トレイ14へと排出される。
【0018】
次に、手差しトレイ7の位置(姿勢)の切替えについて図3図6を用いて説明する。自動原稿搬送装置1は、手差しトレイ7の下方に、手差しトレイ7の下部面7aに当接可能に設けられた変位部材としての突起80を備えている。突起80は、図3に示すように、自動原稿搬送装置100の例えばケーシング100Bと下搬送ガイド板614の端部で形成された収納空間1Bに収納されている。突起80は、収納空間1Bから突出して手差しトレイ7の下部面7aに当接する当接位置(図3参照)と、収納空間1B内に収納されて手差しトレイ7の下部面7aと接触しない離間位置(図4参照)とに移動可能に設けられている。図中符号Dは突起80の進退方向を示す。
手差しトレイ7は、図3に示すように、突起80と当接した第1の位置と、図4に示すように突起80と離間した第2の位置を占める。これら第1の位置と第2の位置は、手差しトレイ7が収納位置から作動位置に移動した際にとられる位置である。
本実施形態において、手差しトレイ7が第1の位置を占めた場合、図5に示すように、搬送路61の搬送下面61bに対して手差しトレイ7の載置面7bがほぼ平行となり、搬送路61の搬送下面61bと手差しトレイ7の載置面7bとが直線状に配置される直線状の搬送経路K1が形成される。すなわち、直線状の搬送経路K1は載置面7bと搬送路61の搬送下面61bによって形成される。また、手差しトレイ7が第2の位置を占めた場合、図6に示すように、手差しトレイ7の載置面7bがほぼ水平となって、搬送路61の搬送下面61bと手差しトレイ7の載置面7bとが角度を持って配置される第1の位置と異なる屈曲状の搬送経路K2が形成される。
図3および図6の屈曲状の搬送経路K1では、手差しトレイ7は水平状態となるように、収納空間1Bから上方に突出して当接位置を占める突起80によって手差しトレイ7の下方面7aが支持される。つまり、突起80は手差しトレイ7の回動範囲を規制するストッパでもある。
【0019】
図4および図5の直線状の搬送経路K2では、手差しトレイ7は第1の位置を占め、手差し給紙口13に向かって斜上方向へ延びた状態で搬送路61と平行となり、搬送路61の搬送下面61bの一部を構成する下搬送ガイド614板の搬送面614aとほぼ同一直線上に、その載置面7bが位置される。より詳細には、図4のように手差しトレイ7の載置面7bと搬送面614aとは、若干の角度を持たせている。これは屈曲状の搬送経路K1と同様、搬送方向下流の読取前ローラ対611のニップ部に確実にシート状原稿を送り出せるようにするためである。なお、この時、突起80は収納空間1B内に収納された状態のままである。
つまり、手差しトレイ7は、図1で説明したように、収納位置から直線状の搬送経路K1を形成する第1の位置までの間を回動可能とされていてる。そして、突起80が収納空間1Bから突出して当接位置を占めることで、その回動範囲が狭められて第2の位置に保持される(図3参照)。すわわち、手差しトレイ7は、第1の位置を占めた状態(図4参照)で突起80が収納空間1Bから突出することで下方から上方に向かって移動し、押し上げられることで第2の位置に保持される。
あるいは、手差しトレイ7は、収納位置を占めた状態で突起80が収納空間1Bから突出して当接位置にある場合には、手差しトレイ7は第1の位置へは回動移動できず、その回動範囲が規制されて第2の位置に保持される。
【0020】
このように本実施形態では、図3に示すように、手差しトレイ7へ突起80を当接させることにより手差しトレイ7が第2の姿勢となる。第2の姿勢の場合、手差し用トレイ7は水平であり、手差しトレイ7へシート状原稿P2をセットし、プレフィード前にシート状原稿P2から手を放しても手差し用トレイ7の上にシート状原稿P2が載ったままとなり、落下することがなくなりセット性が向上する。なお、このときに手差し用トレイ7が手差し用トレイ7端の回転軌道より外側に載置面を延長できれば更に載置のセット性が向上する。また、シート状原稿P2は屈曲状の搬送経路K2を通過することになるため、原稿先端P2aは屈曲した搬送経路K2の上下方向における下片側となる下搬送ガイド板614に接しながら読取前ローラ対611に向かう。
特に、シート状原稿P2の搬送方向での原稿幅の両端部が上方に反ったカール原稿の場合は、原稿中央部が先に屈曲した下搬送ガイド板614に接触するので、下搬送ガイド板614が原稿反りを補正し、読取前ローラ対611のニップ部に確実にシート状原稿を送り出せる。
【0021】
また両端部が下方のカール原稿の場合は、下搬送ガイド板614と下搬送ガイド板614に対向する上側の上搬送ガイド板617のガイド面617aを、搬送方向に向かって狭まるテーパー形状にしておくことで、ガイド面617aが原稿反りを補正し、読取前ローラ対611のニップ部に確実にシート状原稿P2を送り出せる。なお、原稿の中央押さえの表示図を手差し用トレイ7の原稿載置面側に更に行っておくことで、ユーザーが手差し用トレイ7上の原稿の中央を押さえ送り出すことを促せば、下搬送ガイド板614にシート状原稿P2の両端及び中央が押しつけられ読取前ローラ対611に向かうのでニップ部に更に確実に原稿を送り出すこともできる。
このため、原稿先端位置の読取前ローラ対611のニップへの進入位置・角度が安定するので、先端ダメージの発生の低減や読取前ローラ対611の挟持不良を回避することができる。
【0022】
また、手差しトレイ7は、突起80が収納空間1Bから突出していない場合には、図4図5に示すように、第2の位置よりも下方に位置して搬送路61と平行になる第1の位置まで回動してケーシング100Bに当接して第2の位置に保持される。このため、例えば図4に示すように、カードなどのシート状原稿P3のような屈曲不可のシート状原稿を通過するときは、手差し用トレイ7を第1の位置(第1の姿勢)とすることにより、載置面7bと搬送路61で形成される搬送経路は、直線状の搬送経路K1となり、屈曲不可原稿を搬送することができる。
【0023】
本実施形態の構成によると、シート状搬送物であるシート状原稿を載置する載置台としての手差しトレイ7が、突起80と離間した第1の位置と突起80と当接した第2の位置とを占め、第1の位置を占めた場合には直線状の搬送経路K1が形成され、第2の位置を占めた場合には第1の位置と異なる屈曲状の搬送経路K2が形成される。このため、シート状原稿P2~P3の屈曲性の有無に関わらず、手差しトレイ7上でのシート状原稿P2のセット性とシート状原稿P3の搬送性の向上を図ることができる。
また、第2の位置を占めて水平な手差しトレイ7にシート状原稿P1をセットすることで、シート状原稿P1が手差しトレイ7から落下したり、読取前ローラ対611から離間する方向にずり落ちることがなくなる。このため、原稿先端P1aと読取前ローラ対611のニップ部との位置関係が安定するので、原稿先端P1aのダメージも低減することができる。
さらに、手差しトレイ7が図4図5に示す第1の位置から図3図6に示す第2の位置へと移動すると、手差しトレイ7から手差し給紙口13までが水平に保持される屈曲状の搬送経路K2へと切り替わるので、シート状原稿P1は、屈曲した搬送経路K1の壁面となる搬送ガイド板614に押し付けられながらセットされる。このため、読取前ローラ対611のニップとの位置関係がより安定して原稿先端P1aのダメージをより低減することができる。
【0024】
次に、図7図10を用いて、手差しトレイ7を第1の位置と第2の位置へと切り替える突起80(図3参照)を移動する切替部の構成について説明する。
図7は、自動原稿搬送装置100の外観を示す図である。この切替部90は、操作部91を操作することで、突起80を進退方向Dに移動するものである。切替部90は、図8図9図10に示すよう、ケーシング100B(図8参照)の外部に露呈していて外部から操作可能に設けられた操作部91と、突起80が形成されたリンクレバー92を備えている。リンクレバー92は、ケーシング100B内に形成された長溝1C内に摺動可能に支持されている。長溝1Cの上部1Caには、矢印Cで示すリンクレバー92の摺動方向範囲に幅を有する収納空間1Bが形成されている。長溝1Cの底部1Cbには、図中下方(突起80の退避方向)に窪んだ溝1Eが形成されている。
【0025】
リンクレバー92は、長溝1Cと同方向に延びていて、その一端92Aで操作部91とあそびをもって係合しており、操作部91の操作と連動して摺動方向Cに移動可能に構成されている。リンクレバー92の上面92bには突起80が形成されている。リンクレバー92の下面92cには、図中下方(突起80の退避方向)に向かって突出し、底部1Cbに係合する凸部92Eが形成されている。
この凸部92Eは、操作部91が摺動方向Cに操作されることで底部1Cbから底部1Cbに設けたテーパー状の傾斜1Fを有する溝1E内へと落ち込んだり、溝1Eから底部1Cbへと持ち上げられる。なお、溝1Eのテーパー状の傾斜1Fの反対側は、矩形で、凸部92Eに対応する収納空間1Bとで、リンクレバー92の移動を規制している。
【0026】
図10に示すように、凸部92Eが溝1Eに落ち込んでいる場合に、突起80は収納空間1B内に位置した離間位置に置かれ、図9に示すように、凸部92Eが溝1Eに案内されて底部1Cまで移動すると収納空間1Bからその端部80aが突出して手差しトレイ7の底部7bに当接する当接位置を占める。
【0027】
このように、手差しトレイ7の位置を第1の位置と第2の位置へと移動させる切替部90を備えることで、ユーザーは、使用するシート状原稿P2~P3の種類に応じて切替部90の操作部91をスライド操作することで、突起80が手差しトレイ7の下部7aに当接したり、離間するため、手差しトレイ7の位置(姿勢)を容易に変更することができ、操作性が向上する。
【0028】
本実施形態では、手差しトレイ7の位置を第1の位置と第2の位置とへ変位させる変位部材となる突起80とその操作部90を自動原稿搬送装置100側に配置したが、このような形態に限定されるものでない。例えば、突起80とその操作部90を手差しトレイ7側に設け、手差しトレイ7の下部7aから突起80を突出させてケーシング100Bと当接させることで、手差しトレイ7が第2の位置をとり、突起80を手差しトレイ7の下部7a側に収納することで、第1の位置をとるようにしてもよい。
【0029】
本実施形態に係る搬送装置は、画像形成装置1に搭載された自動原稿搬送装置100として説明したが、適用され分野としては、画像形成装置に限定されるものでなく、屈曲可能なシート状搬送物と、屈曲不可のシート状搬送物を搬送する用途であれば、何れの分野であっても適用することができる。
また、本実施形態に係る自動原稿搬送装置100は、画像読取部9,10を備えているが、画像読取部9,10を搭載せず、画像読み取り機能を搭載していない原稿搬送装置であってもよい。
実施形態において、画像が形成されるシート状媒体である屈曲可能なシート状搬送物としては、実施形態で述べた用紙(紙)以外に、コート紙、樹脂フィルム(OHP)、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔などがあげられる。
【0030】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 画像形成装置
7 載置台
13 導入口
60 搬送経路
61 搬送路
80 変位部材
100 搬送装置
602,603 案内部材
614b 導入端
615 上搬送ガイド部材
616 下搬送ガイド部材
616a 排出端
617a ガイド面
B 搬送方向
K1 屈曲状の搬送経路
K2 直線状の搬送経路
P2、P3 シート状搬送物
W 幅方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【文献】2015-164292号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10