(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】曲面合わせガラスの製造方法およびこれにより製造された曲面合わせガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20220315BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
C03C27/12 R
B60J1/00 H
(21)【出願番号】P 2020533261
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(86)【国際出願番号】 KR2019000247
(87)【国際公開番号】W WO2019139324
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0003484
(32)【優先日】2018-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ジェ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】オ、ジュン ハク
(72)【発明者】
【氏名】カン、ホ ソン
(72)【発明者】
【氏名】リー、チャン ヒ
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-48075(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188686(WO,A1)
【文献】特表2014-527011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/12
B32B17/10
B60J1/00-1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面厚板ガラスを用意するステップと、
前記曲面厚板ガラスの厚さより薄い厚さを有する板状の薄板ガラスを用意するステップと、
軟性層および弾性層を含む支持フィルムを前記薄板ガラスの一面上に積層するステップと、
前記薄板ガラスの他面と前記曲面厚板ガラスの凹面との間に合わせフィルムまたは接着剤を位置させるステップと、
前記支持フィルムが備えられた前記薄板ガラスを弾性変形させて、前記曲面厚板ガラスの凹面と整合されるように前記薄板ガラスを接合するステップと、を含む曲面合わせガラスの製造方法。
【請求項2】
前記軟性層および前記弾性層は、前記薄板ガラスの一面上に順次に備えられたものである、請求項1に記載の曲面合わせガラスの製造方法。
【請求項3】
前記曲面厚板ガラスの凸面上に破損防止層を備えるステップをさらに含むものである、請求項1または2に記載の曲面合わせガラスの製造方法。
【請求項4】
前記曲面厚板ガラスと曲面に成形された前記薄板ガラスとが接合された曲面合わせガラスを80℃以上140℃以下の温度で熱処理するステップをさらに含むものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の曲面合わせガラスの製造方法。
【請求項5】
前記薄板ガラスの厚さは、0.3mm以上1.0mm以下である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の曲面合わせガラスの製造方法。
【請求項6】
前記軟性層の弾性係数は、1MPa以上100MPa以下である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の曲面合わせガラスの製造方法。
【請求項7】
前記弾性層の弾性係数は、60MPa以上20,000MPa以下である、請求項1から
6のいずれか一項に記載の曲面合わせガラスの製造方法。
【請求項8】
前記軟性層と前記弾性層の厚さ比は、1:0.05~1:25である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の曲面合わせガラスの製造方法。
【請求項9】
前記軟性層の厚さは、0.2mm以上20mm以下である、請求項1から
8のいずれか一項に記載の曲面合わせガラスの製造方法。
【請求項10】
前記弾性層の厚さは、1mm以上5mm以下である、請求項1から
9のいずれか一項に記載の曲面合わせガラスの製造方法。
【請求項11】
前記曲面厚板ガラスは、単曲面または複曲面を有するものである、請求項1から
10のいずれか一項に記載の曲面合わせガラスの製造方法。
【請求項12】
前記曲面厚板ガラスと前記薄板ガラスの厚さ比は、1:0.1~1:0.5である、請求項
1から11のいずれか一項に記載の曲面合わせガラス
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2018年1月10日付で韓国特許庁に出願された韓国特許出願第10-2018-0003484号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本発明に組み込まれる。
【0002】
本発明は、曲面合わせガラスの製造方法およびこれにより製造された曲面合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0003】
ガラスは特有の透明さによって多様な生活空間に適用されてきた素材である。特に、2枚のガラスが接合された合わせガラスが用いられており、ガラスが用いられる目的によって、曲面をなしつつたわむ形態の曲面合わせガラスが用いられている。また、曲面合わせガラスの体積および重量を減少させるために、厚板ガラスと薄板ガラスとを用いて、曲面合わせガラスを製造している。
【0004】
曲面合わせガラスを製造するために、自重成形、圧着成形および冷間成形方法が一般的に使用されている。自重成形は、ガラスの周縁を固定する成形型を用い、成形しようとするガラスの軟化点付近まで温度を上昇させ、ガラスの自重によってガラスが曲げ(sagging)られることを利用して成形した後、成形されたガラスを接合する方法である。また、圧着成形は、成形しようとするガラスを十分に加熱させた状態で予め設定された形状に形成された型で圧着して成形した後、成形されたガラスを接合する方法である。また、冷間成形は、曲面に成形されたガラスの凹面に他のガラスを配置し、真空技術を利用して他のガラスを弾性変形させて曲面に成形した後、成形されたガラスを接合する方法である。
【0005】
冷間成形を利用して薄板ガラスを曲面に成形する場合、薄板ガラスは、面積対比厚さが薄く、弾性変形する過程で、薄板ガラスに座屈(bucking)現象やシワが発生する問題がある。特に、薄板ガラスの幅に対する厚さの比が小さくなるほど、曲面に成形された薄板ガラスに座屈現象やシワがより一層発生する。
【0006】
そこで、薄板ガラスを冷間成形する場合にも、薄板ガラスに座屈現象やシワが発生することが抑制された曲面合わせガラスを製造する技術が必要なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書は、曲面合わせガラスの製造方法およびこれにより製造された曲面合わせガラスを提供しようとする。
【0008】
ただし、本発明が解決しようとする課題は上述した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施態様は、曲面厚板ガラスを用意するステップと、前記曲面厚板ガラスの厚さより薄い厚さを有する板状の薄板ガラスを用意するステップと、軟性層および弾性層を含む支持フィルムを前記薄板ガラスの一面上に積層するステップと、前記薄板ガラスの他面と前記曲面厚板ガラスの凹面との間に合わせフィルムまたは接着剤を位置させるステップと、前記支持フィルムが備えられた前記薄板ガラスを弾性変形させて、前記曲面厚板ガラスの凹面と整合されるように前記薄板ガラスを接合するステップと、を含む曲面合わせガラスの製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明の他の実施態様は、前記曲面合わせガラスの製造方法で製造される曲面合わせガラスを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施態様に係る曲面合わせガラスの製造方法は、厚さの薄い板状の薄板ガラスを弾性変形させる場合にも、曲面に成形される薄板ガラスに発生しうる座屈現象やシワを効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明の一実施態様に係る曲面合わせガラスの製造方法は、光学的品質に優れた曲面合わせガラスを提供することができる。
【0013】
本発明の一実施態様によれば、低い曲率半径を有し、軽量化および薄型化された曲面合わせガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施態様に係る曲面合わせガラスを製造する方法を示す図である。
【
図2】本発明の一実施態様に係る破損防止層を用いて曲面合わせガラスを製造する方法を示す図である。
【
図3】本発明の一実施態様に係る曲面厚板ガラスと曲面薄板ガラスの厚さ比に応じた剛性確保結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0016】
本願明細書全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0017】
本願明細書全体において、単位「wt%」は、部材の総重量に対して、部材に含まれる成分の重量比率を意味することができる。
【0018】
本願明細書全体において、ガラスの「曲率半径」は、曲面に成形されたガラス表面の微小地点からすべての方向に沿って曲面に最も近似する円弧の半径の最小値を意味することができ、3D Scanner(Faro/Focus S)などを用いて、曲面に成形されたガラス表面をスキャン、モデリングして曲率半径を測定することができる。これによって、単曲面を有するガラスまたは複曲面を有するガラスの曲率半径を測定することができる。
【0019】
本願明細書全体において、ある部材の「弾性係数」は、JIS-K6251-1規格により用意したサンプルの両末端を固定させた後、サンプルの厚さ方向に垂直な方向に力を加えて引張率(Strain)に応じた単位面積あたりの応力(Stress)を測定して得られた値をいい、この時、測定機器としては、引張強度計(Zwick/Roell Z010 UTM)などを用いることができる。
【0020】
本発明者らは、軟性層および弾性層を含む支持フィルムを用いて、厚さの薄い薄板ガラスに弾性変形を加えて曲面合わせガラスを製造する場合、薄板ガラスから成形された曲面薄板ガラスに発生しうる座屈現象やシワが抑制できることを究明して、下記のような曲面合わせガラスを製造する方法を開発した。
【0021】
以下、本明細書についてさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明の一実施態様は、曲面厚板ガラスを用意するステップと、前記曲面厚板ガラスの厚さより薄い厚さを有する板状の薄板ガラスを用意するステップと、軟性層および弾性層を含む支持フィルムを前記薄板ガラスの一面上に積層するステップと、前記薄板ガラスの他面と前記曲面厚板ガラスの凹面との間に合わせフィルムまたは接着剤を位置させるステップと、前記支持フィルムが備えられた前記薄板ガラスを弾性変形させて、前記曲面厚板ガラスの凹面と整合されるように前記薄板ガラスを接合するステップと、を含む曲面合わせガラスの製造方法を提供する。
【0023】
本発明の一実施態様に係る曲面合わせガラスの製造方法は、厚さの薄い板状の薄板ガラスを弾性変形させる場合にも、曲面に成形される薄板ガラスに発生しうる座屈現象やシワを効果的に抑制することができる。
【0024】
本発明の一実施態様によれば、前記軟性層および弾性層を含む支持フィルムを板状の前記薄板ガラスの一面上に積層することができる。前記支持フィルム上に板状の前記薄板ガラスを積層することにより、前記薄板ガラスの厚さを増加させるのと同様の効果を実現することができる。厚さの薄い板状の薄板ガラスに弾性変形を加える場合、板状の薄板ガラスは幅に対する厚さの比が小さく、曲面に成形された薄板ガラス(以下、曲面薄板ガラスという)に座屈現象やシワが発生しうる。特に、板状の薄板ガラスの厚さが小さくなるほど、製造される曲面薄板ガラスに発生する座屈現象やシワが激しくなりうる。
【0025】
これに対し、本発明の一実施態様によれば、前記支持フィルム上に板状の前記薄板ガラスを積層し弾性変形させて、板状の前記薄板ガラスを曲面に成形することができる。すなわち、前記支持フィルムが備えられた薄板ガラスに弾性変形を加える過程で、まるで厚い厚さを有する厚板ガラスに弾性変形を加える場合と類似して、前記薄板ガラスに弾性変形が加えられる。具体的には、板状の前記薄板ガラス上に前記支持フィルムを備えて、前記薄板ガラスの幅に対する厚さ比を増加させるのと同様の効果を実現することにより、薄板ガラスを弾性変形させて製造される曲面薄板ガラスに発生しうる座屈現象やシワを効果的に抑制することができる。また、前記支持フィルムが備えられた薄板ガラスを弾性変形させる過程で、前記支持フィルムが前記薄板ガラスを支持することにより、曲面に成形される薄板ガラスに座屈現象やシワが発生することをより効果的に抑制することができる。
【0026】
したがって、本発明の一実施態様によれば、従来の冷間成形方法に比べて、座屈現象やシワの発生が抑制された優れた品質を有する曲面合わせガラスを提供することができる。
【0027】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面厚板ガラスを用意するステップは、当業界でガラスを曲面に成形する公知の方法を利用して、厚板ガラスを曲面に成形することができる。一例として、自重成形方法または圧着成形方法を利用して曲面厚板ガラスを製造することができる。
【0028】
本発明の一実施態様によれば、前記厚板ガラスとして、ソーダライムガラスを用いることができる。具体的には、前記厚板ガラスとして、運送手段の窓ガラスとして通常用いられるガラスを特別な制限なく採択して使用可能である。一例として、前記厚板ガラスとして、組成物100wt%あたり、SiO2 65wt%以上75wt%以下、Al2O3 0wt%以上10wt%以下、NaO2 10wt%以上15wt%以下、K2O 0wt%以上5wt%以下、CaO 1wt%以上12wt%以下、およびMgO 0wt%以上8wt%以下を含む組成物から形成されたソーダライムガラスを用いることができる。また、フロートバス(float bath)を用いるフロート(float)法により製造されたソーダライムガラス、ダウンドロー(down draw)方式やフュージョン方式により製造されたソーダライムガラスを前記厚板ガラスとして用いることができる。
【0029】
本発明の一実施態様によれば、板状の前記薄板ガラスとして、運送手段の窓ガラスとして通常用いられるガラスを特別な制限なく採択して使用可能である。具体的には、前記薄板ガラスとして、無アルカリガラスを用いることができる。
【0030】
一例として、前記薄板ガラスとして、組成物100wt%あたり、SiO2 46wt%以上62wt%以下、Al2O3 15wt%以上29wt%以下、MgO 3wt%以上14wt%以下、CaO 5wt%以上16wt%以下、およびSrO 0.01wt%以上5wt%以下を含み、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しない組成物から形成された無アルカリガラスを用いることができる。
【0031】
アルカリ金属酸化物を実質的に含有しないというのは、ガラス中にアルカリ金属酸化物が全く含まれていないか、一部含まれていても他の成分に比べてその含有量が極めてわずかでガラスの組成成分で無視できる程度の量を含む場合などを意味することができる。例えば、実質的とは、ガラスの製造工程において溶融ガラスと接触する耐火物やガラス原料中の不純物などから不可避にガラス中に混入する微量のアルカリ金属元素を含有する場合を意味することができる。
【0032】
本発明の一実施態様によれば、前記薄板ガラスとして使用可能な無アルカリガラスは、酸化物換算の質量百分率表示で1%未満のアルカリ金属(Li、Na、Kなど)酸化物を含有している無アルカリガラスを用いることができる。また、前記薄板ガラスとして、無アルカリホウケイ酸ガラスまたは無アルカリアルミノホウケイ酸ガラスを用いることができる。また、前記薄板ガラスとして、フロート法により製造されたガラス、ダウンドロー方式やフュージョン方式により製造されたガラスを用いることができる。
【0033】
本発明の一実施態様によれば、前記薄板ガラスの厚さは、前記厚板ガラスの厚さより薄い。すなわち、板状の前記薄板ガラスから製造される曲面薄板ガラスの厚さは、前記曲面厚板ガラスの厚さより薄い。また、前記厚板ガラスと前記薄板ガラスの厚さ比は、1:0.1~1:0.5であってもよい。具体的には、前記厚板ガラスと前記薄板ガラスの厚さ比は、1:0.15~1:0.45、1:0.25~1:0.3、1:0.15~1:0.25、または1:0.3~1:0.45であってもよい。前記厚板ガラスと前記薄板ガラスの厚さ比を前述した範囲に調節することにより、剛性の低下によって前記曲面厚板ガラスと前記曲面薄板ガラスとを含む曲面合わせガラスが破損する確率を効果的に減少させることができる。さらに、より薄い厚さを有する曲面合わせガラスを提供することができる。
【0034】
本発明の一実施態様によれば、板状の前記薄板ガラスの厚さは、0.3mm以上1.0mm以下であってもよい。したがって、本発明の一実施態様によれば、座屈現象やシワの発生が抑制され、0.3mm以上1.0mm以下の厚さを有する曲面薄板ガラスを含む曲面合わせガラスを容易に製造することができる。また、0.3mm以上1.0mm以下の厚さを有する曲面薄板ガラスを用いて、従来の曲面合わせガラスより厚さの薄い曲面合わせガラスを容易に製造することができる。
【0035】
本発明の一実施態様によれば、前記薄板ガラスを接合するステップは、前記支持フィルムが備えられた板状の前記薄板ガラスに弾性変形を加えることができる。すなわち、前記支持フィルムが備えられた板状の前記薄板ガラスを弾性変形させる過程で、前記薄板ガラスおよび前記支持フィルムが弾性変形し、前記薄板ガラスおよび前記支持フィルムが曲面に成形される。
【0036】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面厚板ガラスは、単曲面または複曲面を有するものであってもよい。具体的には、前記曲面厚板ガラスは、一軸成形されて一方向にのみ曲率を有する単曲面形態の曲面ガラスであってもよい。また、前記曲面厚板ガラスは、二軸成形されて多方向に曲率を有する複曲面形態の曲面ガラスであってもよい。一例として、複曲面形態の曲面厚板ガラスは、放物面(paraboloid)を有する曲面ガラスであってもよい。
【0037】
また、板状の前記薄板ガラスは、弾性変形する過程で、前記曲面厚板ガラスの形態に成形される。すなわち、板状の薄板ガラスは弾性変形して、単曲面を有する曲面ガラスまたは複曲面を有する曲面ガラスに成形される。一方、板状の薄板ガラスを既存の方法で弾性変形させて複曲面を有する曲面ガラスに成形する場合、成形された曲面ガラスに座屈現象および/またはシワが発生する程度が激しくなる問題がある。ただし、本発明の一実施態様に係る曲面合わせガラスの製造方法は、板状の前記薄板ガラスに支持フィルムを積層し前記薄板ガラスを弾性変形させることにより、弾性変形した曲面薄板ガラスに座屈および/またはシワが発生するのを効果的に防止することができる。
【0038】
したがって、前記曲面合わせガラスの製造方法は、単曲面形態または複曲面形態の曲面合わせガラスを容易に製造することができる。
【0039】
前記支持フィルムが備えられた板状の前記薄板ガラスを弾性変形させる方法として、当業界で通常使用される方法であれば特に制限されない。一例として、高温ローラまたは真空リング(ring)/真空バッグ(bag)工程を利用した圧着工程により、略20℃以上35℃以下の常温で前記支持フィルムが備えられた板状の前記薄板ガラスを弾性変形させることができる。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、前記薄板ガラスの他面と前記曲面厚板ガラスの凹面との間に合わせフィルムまたは接着剤を位置させることができる。具体的には、前記薄板ガラスの他面上に前記合わせフィルムまたは接着剤を備えるか、前記曲面厚板ガラスの凹面上に前記合わせフィルムまたは接着剤を備えることができる。これによって、曲面に成形される前記薄板ガラスを前記曲面厚板ガラスの凹面上に接合させることができる。具体的には、合わせフィルムまたは接着剤を介在して、曲面薄板ガラスの凸面と前記曲面厚板ガラスの凹面とが接合される。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、前記合わせフィルムは、単層または多層であってもよい。具体的には、多層合わせフィルムを用いる場合、各層の組成は同一でも異なっていてもよく、各層の厚さは同一でも異なっていてもよい。合わせフィルムは、ポリビニルアルコールとポリビニルブチラール共重合体フィルムなど、当分野で合わせガラスを接合する時に用いられる材質の(共)重合体フィルムを特別な制限なく採択して使用可能である。一例として、前記合わせフィルムは、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ジアリルフタレート樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル樹脂、アイオノマー、ポリメチルペンテン、塩化ビニリデン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、メタクリル-スチレン共重合樹脂、ポリアリーレート、ポリアリルスルホン、ポリブタジエン、ポリエーテルスルホン、およびポリエーテルエーテルケトンのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0042】
本発明の一実施態様によれば、前記合わせフィルムの厚さは、0.5mm以上1mm以下であってもよいが、これを限定するものではない。ただし、合わせフィルムの厚さを前述した範囲に調節することにより、前記曲面薄板ガラスと前記曲面厚板ガラスとの間の接着力が十分でなく、前記曲面薄板ガラスから前記曲面厚板ガラスが剥がれる問題を防止することができる。また、合わせフィルムの厚さを前述した範囲に調節することにより、薄型化された曲面合わせガラスを製造することができる。
【0043】
本発明の一実施態様によれば、前記接着剤は、OCA(Optically Clear Adhesive)、LOCA(Liquid Optically Clear Adhesive)、またはOCR(Optically Clear Resin)を含むことができる。前記曲面厚板ガラスの凹面または前記曲面薄板ガラスの凸面上に前記接着剤を0.5mm以上1.5mm以下の厚さに塗布して、前記曲面厚板ガラスと前記曲面薄板ガラスとを接合することができる。
【0044】
本発明の一実施態様によれば、前記支持フィルムが備えられた板状の前記薄板ガラスは、弾性変形して前記曲面厚板ガラスの凹面と整合されて接合される。したがって、板状の前記薄板ガラスから成形された曲面薄板ガラスの曲率と前記曲面厚板ガラスの曲率は、実質的に同一であってよい。ガラスの曲率が実質的に同一であるというのは、ガラスの曲率が互いに完全に同一である場合のみならず、製造する過程でガラスの曲率に微細な差が発生するものの、品質および光学的物性などに影響を及ぼさない程度を意味することができる。すなわち、前記曲面薄板ガラスの曲率半径と前記曲面厚板ガラスの曲率半径は、同一であってよい。
【0045】
また、板状の前記薄板ガラスは、弾性変形して複曲面厚板ガラスの凹面と整合されることにより、複曲面薄板ガラスに成形される。これによって、複曲面厚板ガラスと複曲面薄板ガラスとを含む複曲面合わせガラスを製造することができる。
【0046】
本発明の一実施態様によれば、前記軟性層および前記弾性層を含む前記支持フィルムは、弾性変形することが容易であり得、板状の薄板ガラスが弾性変形する過程で、前記支持フィルムは弾性変形する前記薄板ガラスを効果的に支持することができる。これによって、板状の前記薄板ガラスから製造される前記曲面薄板ガラスに座屈現象やシワが発生するのを効果的に防止することができる。
【0047】
図1は、本発明の一実施態様に係る曲面合わせガラスを製造する方法を示す図である。具体的には、
図1(A)は、板状の薄板ガラス200の一面上に軟性層310および弾性層320を含む支持フィルム300を積層し、板状の薄板ガラス200の他面上に合わせフィルム500を備えることを示すものである。また、
図1(B)は、支持フィルムが備えられた板状の薄板ガラス200を弾性変形させて、曲面薄板ガラス210を曲面厚板ガラス100に接合することを示すものである。さらに、
図1(C)は、曲面薄板ガラス210から支持フィルム300を除去して、最終的に曲面合わせガラス1000を製造することを示す図である。
【0048】
図1を参照すれば、板状の前記薄板ガラス200が弾性変形することにより、前記曲面薄板ガラス210の凹面に圧縮応力が形成される。前記曲面薄板ガラスの凹面に圧縮応力が形成されることにより、製造される曲面合わせガラスは、優れた耐衝撃性および破損強度を有することができる。
【0049】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面合わせガラスの製造方法は、前記曲面厚板ガラスの凸面上に破損防止層を備えるステップをさらに含んでもよい。前記曲面厚板ガラスの曲率半径と前記破損防止層の曲率半径は、同一であってよい。すなわち、前記破損防止層は、曲面に成形されたものであり、前記曲面厚板ガラスの凸面上に前記破損防止層の凹面が接合される。
【0050】
前記曲面厚板ガラスの凸面上に破損防止層を備えることにより、前記支持フィルムが備えられた板状の前記薄板ガラスを弾性変形させる過程で、前記曲面厚板ガラスが破損するのを効果的に防止することができる。具体的には、板状の薄板ガラス上に支持フィルムが備えられた積層体の厚さは、前記曲面厚板ガラスの厚さより厚い。前記積層体の厚さが前記曲面厚板ガラスの厚さより厚い場合、板状の前記薄板ガラスを弾性変形させる過程で、前記曲面厚板ガラスが破損する問題が発生しうる。これに対し、本発明の一実施態様によれば、前記曲面厚板ガラスの凸面上に破損防止層を備えることにより、板状の前記薄板ガラスを弾性変形させる過程で、前記曲面厚板ガラスが破損するのを防止することができる。
【0051】
本発明の一実施態様によれば、前記破損防止層の厚さは、1mm以上であってもよい。具体的には、前記破損防止層の厚さは、1mm以上12mm以下、13mm以上19mm以下、または20mm以上25mm以下であってもよい。前述した厚さ範囲を有する破損防止層を用いることにより、前記曲面厚板ガラスが破損するのを効果的に防止することができる。また、前記破損防止層の材質を選択することにより、前記破損防止層の厚さを調節することができる。前記破損防止層は、金属フィルム、セラミックフィルム、および高分子フィルムのうちの少なくとも1つを含むことができるが、前記破損防止層の種類を制限するものではない。
【0052】
図2は、本発明の一実施態様に係る破損防止層を用いて曲面合わせガラスを製造する方法を示す図である。具体的には、
図2(A)は、板状の薄板ガラス200の一面上に軟性層310および弾性層320を含む支持フィルム300を積層し、板状の薄板ガラス200の他面上に合わせフィルム500を備え、曲面厚板ガラス100の凸面に曲面に成形された破損防止層400を備えたことを示すものである。
図2(B)は、支持フィルム300が備えられた板状の前記薄板ガラス200を弾性変形させ、曲面薄板ガラス210を曲面厚板ガラス100に接合することを示すものである。また、
図2(C)は、曲面薄板ガラス210から支持フィルム300を除去して、最終的に曲面合わせガラス1000を製造することを示す図である。
【0053】
本発明の一実施態様によれば、板状の前記薄板ガラスと前記支持フィルムの厚さ比は、1:1~1:50であってもよい。具体的には、板状の前記薄板ガラスと前記支持フィルムの厚さ比は、1:1~1:1.5、1:3~1:12、または1:14~1:50であってもよい。板状の前記薄板ガラスと前記支持フィルムの厚さ比を前述した範囲に調節することにより、板状の前記薄板ガラスから成形された曲面薄板ガラスに座屈現象やシワが発生するのを効果的に防止することができる。具体的には、板状の前記薄板ガラスと前記支持フィルムの厚さ比を前述した範囲に調節することにより、曲面薄板ガラスに座屈現象やシワが発生することを効果的に抑制することができる。また、支持フィルムが板状の薄板ガラスを支持し弾性変形することが容易であり得る。
【0054】
本発明の一実施態様によれば、前記軟性層および前記弾性層は、板状の前記薄板ガラスの一面上に順次に備えられる。すなわち、前記弾性層、軟性層、および板状の薄板ガラスが順次に積層される。後述のような弾性係数の範囲および厚さ範囲を有する前記軟性層上に板状の前記薄板ガラスを積層する場合、板状の前記薄板ガラスを弾性変形させる過程で、前記軟性層は弾性変形する前記薄板ガラスとより密着し、前記薄板ガラスを支持することができる。したがって、本発明の一実施態様によれば、前記弾性層、軟性層、および薄板ガラスの積層順序を設定することにより、前記曲面薄板ガラスに座屈現象やシワが発生することをより効果的に抑制することができる。
【0055】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面薄板ガラスの製造方法は、前記支持フィルムを除去するステップをさらに含んでもよい。具体的には、前記支持フィルムが備えられた板状の前記薄板ガラスを弾性変形させて曲面薄板ガラスに成形した後、前記曲面薄板ガラスから前記支持フィルムを剥離させることができる。これによって、曲面厚板ガラスと曲面薄板ガラスとが接合された曲面合わせガラスを製造することができる。
【0056】
本発明の一実施態様によれば、粘着フィルムまたは粘着剤を介在して、前記支持フィルム上に板状の前記薄板ガラスを備えることができる。具体的には、粘着フィルムまたは粘着剤を介在して、前記軟性層と板状の前記薄板ガラスとは粘着された状態であってよい。したがって、前記支持フィルムが備えられた板状の薄板ガラスを弾性変形させた後に前記軟性層を前記薄板ガラスから剥離して、前記支持フィルムを容易に除去することができる。
【0057】
また、接着フィルムまたは接着剤を介在して、前記支持フィルム上に含まれる前記軟性層と前記弾性層とは接合される。具体的には、接着フィルムまたは接着剤を用いて、前記軟性層と前記弾性層とを接着させることにより、前記支持フィルムが備えられた板状の前記薄板ガラスが弾性変形する過程で、前記軟性層と前記弾性層が分離されることを抑制することができる。
【0058】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面合わせガラスの製造方法は、前記曲面厚板ガラスと曲面に成形された前記薄板ガラスとが接合された曲面合わせガラスを80℃以上140℃以下の温度で熱処理するステップをさらに含んでもよい。具体的には、板状の薄板ガラスを常温で弾性変形させて曲面厚板ガラスに接合し、曲面薄板ガラスから支持フィルムを除去した後、前記曲面合わせガラスを前述した温度範囲で熱処理することができる。前述した温度範囲で曲面合わせガラスを熱処理することにより、曲面薄板ガラスと曲面厚板ガラスとの接合力を向上させることができ、合わせフィルムまたは接着剤が変性するのを防止することができる。
【0059】
また、前記曲面合わせガラスの製造方法は、2回以上の熱処理ステップを含むことができる。一例として、前記曲面合わせガラスを約90℃の温度で熱処理した後、約120℃の温度でさらに熱処理して、最終的に曲面合わせガラスを製造することができる。
【0060】
本発明の一実施態様によれば、前記軟性層の弾性係数は、1MPa以上100MPa以下であってもよい。具体的には、前記軟性層の弾性係数は、10MPa以上85MPa以下、20MPa以上60MPa以下、35MPa以上50MPa以下、1MPa以上15MPa以下、20MPa以上35MPa以下、40MPa以上45MPa以下、55MPa以上70MPa以下、または80MPa以上95MPa以下であってもよい。前記軟性層の弾性係数を前述した範囲に調節することにより、前記支持フィルムが備えられた板状の前記薄板ガラスを弾性変形させる過程で、前記軟性層は弾性変形する前記薄板ガラスとより密着して前記薄板ガラスを支持することができる。また、前記支持フィルムが弾性変形する過程で、前記軟性層と前記弾性層が分離されるのを防止することができる。
【0061】
本発明の一実施態様によれば、前記弾性層の弾性係数は、60MPa以上20,000MPa以下であってもよい。具体的には、前記弾性層の弾性係数は、100MPa以上18,000MPa以下、200MPa以上15,000MPa以下、500MPa以上10,000MPa以下、1,000MPa以上8,000MPa以下、2,000MPa以上6,000MPa以下、3,000MPa以上5,000MPa以下、200MPa以上1,000MPa以下、2,500MPa以上5,000MPa以下、7,000MPa以上10,000MPa以下、12,000MPa以上15,000MPa以下、または16,000MPa以上18,000MPa以下であってもよい。前記弾性層の弾性係数を前述した範囲に調節することにより、支持フィルムが備えられた板状の前記薄板ガラスが弾性変形する過程で、前記薄板ガラスを効果的に支持可能な支持フィルムを提供することができる。
【0062】
本発明の一実施態様によれば、前記軟性層と前記弾性層の厚さ比は、1:0.05~1:25であってもよい。具体的には、前記軟性層と前記弾性層の厚さ比は、1:0.05~1:5、1:6~1:10、または1:12~1:25であってもよい。前記軟性層と前記弾性層の厚さ比を前述した範囲に調節することにより、弾性変形する前記薄板ガラスを効果的に支持することができる。また、前記支持フィルムが弾性変形する過程で、前記支持フィルムに含まれる前記軟性層と前記弾性層が分離されることを抑制することができる。
【0063】
本発明の一実施態様によれば、前記軟性層の厚さは、0.2mm以上20mm以下であってもよい。具体的には、前記軟性層の厚さは、0.5mm以上18mm以下、2mm以上15mm以下、5mm以上10mm以下、0.5mm以上2mm以下、5mm以上10mm以下、または13mm以上18mm以下であってもよい。前記軟性層の厚さを前述した範囲に調節することにより、前記支持フィルムが備えられた板状の前記薄板ガラスが弾性変形する過程で、前記軟性層は前記弾性変形する前記薄板ガラスに容易に密着することができる。また、前記支持フィルムが備えられた板状の前記薄板ガラスが弾性変形する過程で、軟性層が破損することを抑制することができる。
【0064】
本発明の一実施態様によれば、前記弾性層の厚さは、1mm以上5mm以下であってもよい。具体的には、前記弾性層の厚さは、1.5mm以上4.5mm以下、2mm以上3.5mm以下、2.5mm以上3mm以下、1.5mm以上2.5mm以下、または3mm以上4.5mm以下であってもよい。前記弾性層の厚さを前述した範囲に調節することにより、弾性変形が容易な支持フィルムを提供することができる。また、前記支持フィルムが備えられた板状の前記薄板ガラスが弾性変形する過程で、前記弾性層が破損することを抑制することができる。
【0065】
本発明の一実施態様によれば、前述した弾性係数を有するものであれば、前記軟性層および前記弾性層として、当業界で用いられる素材を特別な制限なく採択して使用可能である。一例として、前記軟性層は、ゴム、シリコーン、シリコーンゴム、バイトン、ポリ塩化ビニル、およびネオプレンのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0066】
また、前記弾性層は、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ポリスチレン(polystyrene、PS)、ポリビニリデンフッ化物(polyvinylidenefluoride、PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate、PET)、ポリメタクリル酸(polymethylmethacrylate、PMMA)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、およびアクリロニトリルブタジエンスチレン(acrylonitrile butadiene styrene、ABS)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0067】
本発明の一実施態様によれば、板状の前記薄板ガラスは、曲率半径が500R以上8,000R以下の曲面薄板ガラスに成形される。具体的には、製造される曲面薄板ガラスの曲率半径は、500R以上2,000R以下、2,500R以上6,000R以下、または6,500R以上8,000R以下であってもよい。従来の冷間成形方法で成形される曲面薄板ガラスの最小曲率半径は、略2000R水準であった。したがって、本発明の一実施態様に係る曲面合わせガラスの製造方法は、従来の冷間成形方法に比べて、曲率半径の小さい曲面薄板ガラスを含む曲面合わせガラスを容易に製造することができる。
【0068】
また、前記薄板ガラスから成形された複曲面薄板ガラスの曲率半径は、500R以上8,000R以下であってもよい。前記複曲面薄板ガラスの曲率半径は、複曲面薄板ガラスの中央から同一距離で離隔した複数の地点で測定された曲率半径の最小値であってよい。
【0069】
本発明の他の実施態様は、前記曲面合わせガラスの製造方法で製造される曲面合わせガラスを提供する。
【0070】
本発明の一実施態様によれば、低い曲率半径を有し、軽量化および薄型化された曲面合わせガラスを提供することができる。また、前記曲面合わせガラスは、座屈やシワの発生が抑制された曲面薄板ガラスを含んでいて、優れた光学的品質を有することができる。
【0071】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面合わせガラスに含まれる前記曲面厚板ガラス、曲面薄板ガラス、合わせフィルム、および接着剤それぞれは、前記曲面合わせガラスを製造する方法の曲面厚板ガラス、曲面薄板ガラス、合わせフィルム、および接着剤とそれぞれ同一であってよい。
【0072】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面厚板ガラスおよび曲面に成形された前記薄板ガラスの曲率半径は、500R以上8,000R以下であってもよい。すなわち、前記曲面合わせガラスの曲率半径は、500R以上8,000R以下であってもよい。また、前記曲面合わせガラスは、複曲面形態を有することができ、前記複曲面合わせガラスの曲率半径は、500R以上8,000R以下であってもよい。前記複曲面合わせガラスの曲率半径は、複曲面合わせガラスの中央から同一距離で離隔した複数の地点で測定された曲率半径の最小値であってよい。
【0073】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面薄板ガラスは弾性変形したもので、前記曲面薄板ガラスの凹の一面に圧縮応力が形成可能で、前記曲面合わせガラスは、耐衝撃性および耐久性などの機械的物性に優れることができる。
【0074】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面厚板ガラスと前記曲面薄板ガラスの厚さ比は、1:0.1~1:0.5であってもよい。具体的には、前記曲面厚板ガラスと前記曲面薄板ガラスの厚さ比は、1:0.2~1:0.5、1:0.2~1:0.4、1:0.25~1:0.3、または1:0.25~1:0.45であってもよい。前記曲面厚板ガラスと前記曲面薄板ガラスの厚さ比を前述した範囲に調節することにより、曲面合わせガラスの剛性の低下による破損の確率が増加するのを効果的に防止することができる。また、製造される曲面合わせガラスを効果的に軽量化、薄型化させることができる。
【0075】
図3は、本発明の一実施態様に係る曲面厚板ガラスと曲面薄板ガラスの厚さ比に応じた剛性確保結果を示す図である。具体的には、
図3は、本発明の一実施態様に係る曲面合わせガラスの四隅を固定した状態で中央部に一定の荷重を印加して中央部の反り量を分析したことを示す図である。
図3にて、x軸は、ガラスの総厚さを示し、y軸は、ガラスの反り量、すなわちたわむ程度を示す。
【0076】
本発明の一実施態様によれば、[曲面薄板ガラスの厚さ]/[曲面厚板ガラスの厚さ]であるAR(Asymmetry ratio)は、0.1~0.5の範囲を満足することができる。ARが小さくなるほど、前記曲面薄板ガラスの厚さは薄くなり、前記曲面厚板ガラスの厚さは厚くなることを意味する。
図3を参照すれば、前記曲面薄板ガラスと曲面厚板ガラスの厚さ比を前述した範囲に調節して、曲面合わせガラスのたわむ程度を低下させて剛性を確保することができる。
【0077】
したがって、本発明の一実施態様によれば、曲面薄板ガラスおよび曲面厚板ガラスの厚さ比を前述した範囲に調節して、曲面合わせガラスの剛性増大効果、軽量化効果および薄型化効果をより向上させることができる。
【0078】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面薄板ガラスの厚さは、0.3mm以上1.0mm以下であってもよい。具体的には、前記曲面薄板ガラスの厚さは、0.3mm以上0.8mm以下、0.4mm以上0.6mm以下、0.3mm以上0.7mm以下、または0.5mm以上0.8mm以下であってもよい。前述した範囲の厚さを有する曲面薄板ガラスを含む曲面合わせガラスは、耐衝撃性に優れると同時に、効果的に薄型化、軽量化できる。
【0079】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面厚板ガラスの厚さは、2mm以上3mm以下であってもよい。具体的には、前記曲面厚板ガラスの厚さは、2.5mm以上3mm以下であってもよい。前記曲面厚板ガラスの厚さを前述した範囲に調節することにより、曲面合わせガラスを効果的に軽量化、薄型化させることができ、曲面合わせガラスの耐衝撃性が低下することを抑制することができる。
【0080】
また、前記曲面合わせガラスに含まれる曲面薄板ガラスおよび曲面厚板ガラスの厚さの上限値と下限値は、曲面合わせガラスに印加される外力、機械的な衝撃力を弾性的に吸収することなどを考慮して決定可能である。
【0081】
本発明の一実施態様によれば、前述した範囲の厚さを有する前記曲面薄板ガラスおよび曲面薄板ガラスを含む曲面合わせガラスは、既存の約2.1mmの厚さを有するソーダライムガラス2枚が接合された既存の曲面合わせガラスに比べて、50%以上80%以下の厚さを有することができ、50%以上80%以下の重量を有することができる。したがって、本発明の一実施態様によれば、既存の曲面合わせガラスに比べて、軽量化、薄型化された曲面合わせガラスを容易に実現することができる。
【0082】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面厚板ガラスと前記曲面薄板ガラスのビッカース硬度比は、1:1.1~1:1.3であってもよい。具体的には、前記曲面厚板ガラスと前記曲面薄板ガラスのビッカース硬度比は、1:1.12~1:1.27、1:1.15~1:1.25、または1:1.2~1:1.23であってもよい。前記曲面厚板ガラスより高い硬度を保有する前記曲面薄板ガラスを含む曲面合わせガラスは、耐磨耗性、耐スクラッチ性および耐久性に優れることができる。
【0083】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面薄板ガラスのビッカース硬度は、5.5GPa以上7GPa以下であってもよい。具体的には、前記曲面薄板ガラスは、5.8GPa以上6.9GPa以下、6.0GPa以上6.7GPa以下、または6.2GPa以上6.5GPa以下のビッカース硬度を有することができる。前述した範囲のビッカース硬度値を有する曲面薄板ガラスを含む曲面合わせガラスは、耐衝撃性、耐磨耗性および耐久性などに優れることができる。また、曲面合わせガラスの製造費用を節減することができる。さらに、前記曲面厚板ガラスは、5.2GPa以上5.8GPa以下のビッカース硬度を有することができる。
【0084】
前記曲面薄板ガラスおよび前記曲面厚板ガラスのビッカース硬度は、ビッカース圧子を用いてガラスを押した後、痕の大きさを測定して計算することができる。具体的には、24℃の温度、35RH%の湿度条件下、ASTM C1327-08規格に基づき、押し込み荷重を200gf、押し込み保持時間を20秒に設定して、前記曲面薄板ガラスおよび前記曲面厚板ガラスのビッカース硬度を測定することができる。
【0085】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面厚板ガラスと前記曲面薄板ガラスの破壊靭性比は、1:1.3~1:1.5であってもよい。具体的には、前記曲面厚板ガラスと前記曲面薄板ガラスの破壊靭性比は、1:1.35~1:1.49、1:1.37~1:1.45、または1:1.39~1:1.45であってもよい。前記曲面薄板ガラスは、前記曲面厚板ガラス対比で前述した範囲の破壊靭性を保有していて、曲面合わせガラスの外部衝撃に対する破壊抵抗性を向上させることができ、曲面合わせガラスの破損強度の低下を効果的に防止することができる。
【0086】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面薄板ガラスの破壊靭性値は、1.0MPa・m1/2以上1.3MPa・m1/2以下であってもよい。具体的には、前記曲面薄板ガラスの破壊靭性値は、1.1MPa・m1/2以上1.25MPa・m1/2以下、1.15MPa・m1/2以上1.25MPa・m1/2以下、または1.18MPa・m1/2以上1.21MPa・m1/2以下であってもよい。前述した範囲の破壊靭性値を有する曲面薄板ガラスを含む曲面合わせガラスは、耐衝撃性に優れることができる。
【0087】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面厚板ガラスの破壊靭性値は、0.7MPa・m1/2以上0.85MPa・m1/2以下であってもよい。具体的には、前記曲面厚板ガラスの破壊靭性値は、0.75MPa・m1/2以上0.83MPa・m1/2以下、または0.77MPa・m1/2以上0.8MPa・m1/2以下であってもよい。
【0088】
前記曲面薄板ガラスおよび曲面厚板ガラスの破壊靭性値は、ビッカース圧子でガラスに亀裂が生じるまで押した後、亀裂長さ、圧子痕、荷重などを用いて計算する方法であるindentation fracture toughness測定法を利用して測定することができる。具体的には、24℃の温度、35RH%の湿度条件下、KS L 1600:2010規格に基づき、押し込み荷重は2Kgfに設定して、前記曲面薄板ガラスおよび前記曲面厚板ガラスの破壊靭性値を測定することができる。
【0089】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面厚板ガラスと前記曲面薄板ガラスの弾性係数比は、1:1.01~1:1.2であってもよい。具体的には、前記曲面厚板ガラスと前記曲面薄板ガラスの弾性係数比は、1:1.04~1:1.17、1:1.06~1:1.15、1:1.08~1:1.12、または1:1.08~1:1.15であってもよい。前記曲面薄板ガラスは、前記曲面厚板ガラス対比で前述した範囲の弾性係数を保有していて、前記曲面合わせガラスは、前記曲面厚板ガラスより軽量、薄型である曲面薄板ガラスを含む場合にも剛健な構造を有することができる。
【0090】
本発明の一実施態様によれば、前記曲面薄板ガラスの弾性係数は、70GPa以上90GPa以下であってもよい。具体的には、前記曲面薄板ガラスは、73GPa以上87GPa以下、75GPa以上85GPa以下、78GPa以上80GPa以下、75GPa以上80GPa以下、または80GPa以上90GPa以下の弾性係数を有することができる。また、前記曲面厚板ガラスは、65GPa以上75GPa以下の弾性係数を有することができる。
【0091】
前記曲面薄板ガラスおよび前記曲面厚板ガラスの弾性係数は、3点曲げ試験で測定することができる。具体的には、24℃の温度、35RH%の湿度条件下、UTM(universal testing machine)装置を用いた3点曲げ(3point bending)試験により前記曲面薄板ガラスおよび前記曲面厚板ガラスの弾性係数を測定することができる。より具体的には、サンプルの幅(width)は20mm、支持間隔(support span)を50mmに設定し、UTM装置により測定された変位(displacement)と荷重(load)を変形量(strain)と応力(stress)に変換してS-S(strain-stress)曲線(curve)を導出した後、S-S曲線をリニアフィッティング(liner fitting)して算出した傾きにより弾性係数を導出することができる。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0093】
実施例1
ガラス100wt%あたり、SiO2 61wt%、Al2O3 16wt%、MgO 3wt%、CaO 8wt%以下、およびSrO 0.05wt%を含み、0.5mmの厚さを有する無アルカリガラスを薄板ガラスとして用意し、ガラス100wt%あたり、SiO2 72wt%、Al2O3 0.15wt%、Na2O 14wt%、K2O 0.03wt%、およびCaO 9wt%、およびMgO 4wt%を含み、2.0mmの厚さを有するソーダライムガラスを厚板ガラスとして用意した。また、合わせフィルムとして0.5mmの厚さを有するポリビニルブチラールフィルムを用意した。前記無アルカリガラスの弾性係数は78GPa、ビッカース硬度は6.3GPa、破壊靭性は1.20MPa・m1/2であり、前記ソーダライムガラスの弾性係数は72GPa、ビッカース硬度は5.6GPa、破壊靭性は0.85MPa・m1/2であった。さらに、軟性層として3mmの厚さを有しかつ弾性係数が50MPaであるシリコーンゴム板を用意し、弾性層として3mmの厚さを有しかつ弾性係数が230MPaであるポリカーボネート板を用意した。弾性層上に軟性層を積層して、支持フィルムを製造した。
【0094】
まず、厚板ガラスを600℃で60秒間加熱し、自重を利用して、曲面厚板ガラスを製造した。曲面に成形された曲面厚板ガラスの曲率半径は約1200Rであった。この後、支持フィルムの軟性層上に薄板ガラスを付着させ、薄板ガラス上に合わせフィルムを付着させた。この後、曲面厚板ガラスの凹面に合わせフィルムが隣接するように位置させ、約20℃の温度、約10torrの圧力条件で真空リングで圧着して、曲面に成形された薄板ガラスを曲面厚板ガラスに接合した。この後、曲面薄板ガラスから支持フィルムを除去し、曲面合わせガラスを約90℃の温度、160torrの圧力条件で30分間1次熱処理し、約130℃の温度、9,800torrの圧力条件で60分間2次熱処理して、最終的に曲面合わせガラスを製造した。製造された曲面合わせガラスの曲率半径は約1200Rであり、曲面合わせガラスに含まれた曲面薄板ガラスに座屈現象およびシワが発生しないことを確認した。
【0095】
実施例2
30mmの厚さを有し、曲率半径が約1200Rである二酸化ケイ素板を破損防止層として用意し、破損防止層を曲率半径が約1200Rである曲面厚板ガラスの凸面上に備えたことを除き、実施例1と同様の方法で曲面合わせガラスを製造した。製造された曲面合わせガラスの曲率半径は約1200Rであり、曲面合わせガラスに含まれた曲面薄板ガラスに座屈現象およびシワが発生しないことを確認した。
【0096】
実施例3
軟性層として5mmの厚さを有しかつ弾性係数が30MPaであるシリコーンゴム板を用意し、弾性層として5mmの厚さを有しかつ弾性係数が3000MPaであるアクリロニトリルブタジエンスチレン板を用意したことを除き、前記実施例1と同様の方法で曲面合わせガラスを製造した。製造された曲面合わせガラスの曲率半径は約1200Rであり、曲面合わせガラスに含まれた曲面薄板ガラスに座屈現象およびシワが発生しないことを確認した。
【0097】
比較例1
前記実施例1と同様である薄板ガラス、厚板ガラスを用意した。この後、厚板ガラスを600℃で60秒間加熱し、自重を利用して曲面に成形して、曲面厚板ガラスを製造した。曲面に加工された曲面厚板ガラスの曲率半径は約1200Rであった。この後、薄板ガラス上に合わせフィルムを付着させ、曲面厚板ガラスの凹面に合わせフィルムが隣接するように位置させ、20℃、300torrの圧力条件で真空リングで圧着した。この時、板状の薄板ガラスから成形された曲面薄板ガラスにヒビが発生することを確認し、曲面薄板ガラスの表面に座屈現象およびシワが発生することを確認した。
【0098】
したがって、本発明の一実施態様に係る曲面合わせガラスの製造方法は、座屈現象およびシワの発生が抑制された曲面薄板ガラスを含む曲面合わせガラスを製造することができる。
【符号の説明】
【0099】
100:曲面厚板ガラス
200:薄板ガラス
210:曲面薄板ガラス
300:支持フィルム
310:軟性層
320:弾性層
400:破損防止層
500:合わせフィルム
1000:曲面合わせガラス