(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】ガリウムを用いたイオン注入プロセスおよび装置
(51)【国際特許分類】
H01J 27/02 20060101AFI20220315BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
H01J27/02
H01J37/08
(21)【出願番号】P 2021512885
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 US2019050656
(87)【国際公開番号】W WO2020056026
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-05-19
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー, ジョーゼフ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】デプレ, ジョセフ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】タン, イン
(72)【発明者】
【氏名】イェデイブ, シャラド エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ, エドワード エドミストン
(72)【発明者】
【氏名】バイル, オレグ
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-525438(JP,A)
【文献】特開2002-289107(JP,A)
【文献】特開2012-221629(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0326594(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/02
H01J 37/08
H01J 37/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁、底部、および頂部を含む内面によって画定された内部を含むアークチャンバと、
アークチャンバに配置された消耗可能な構造物であって、前記内部に配置され、前記内面の1つまたは複数を覆う1つまたは複数のガリウム含有シート構造物を含み、前記1つまたは複数のガリウム含有シート構造物が、窒化ガリウム、酸化ガリウム、またはこれらの組合せを含む、消耗可能な構造物と
を備える、ガリウムイオンを生成することができるイオン源装置。
【請求項2】
前記1つまたは複数のガリウム含有シート構造物が前記アークチャンバの前記内部から取外し可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記1つまたは複数のガリウム含有シート構造物が少なくとも80重量パーセントの窒化ガリウムを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記1つまたは複数のガリウム含有シート構造物が少なくとも80重量パーセントの酸化ガリウムを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記1つまたは複数のガリウム含有シート構造物が少なくとも80重量パーセントの酸化ガリウムと窒化ガリウムとの組合せを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記1つまたは複数のガリウム含有シート構造物が、前記
アークチャンバの前記内面の全面積
の5パーセント
~80パーセントを覆う、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記窒化ガリウム、酸化ガリウム、またはこれらの組合せが、前記窒化ガリウム、酸化ガリウム、またはこれらの組合せの中のガリウムの全量(原子)に基づいて60パーセントより多い
69Gaを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記窒化ガリウム、酸化ガリウム、またはこれらの組合せが、前記窒化ガリウム、酸化ガリウム、またはこれらの組合せの中のガリウムの全量(原子)に基づいて40パーセントより多い
71Gaを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
側壁、底部、および頂部を含む内面によって画定された内部を含むアークチャンバでイオン化ガリウムを生成することであって、前記アークチャンバが、内部に配置された消耗可能な構造物を有し、前記消耗可能な構造物が、前記内部に配置され、前記内面の1つまたは複数を覆う1つまたは複数のガリウム含有シート構造物を含み、前記1つまたは複数のガリウム含有シート構造物が、窒化ガリウム、酸化ガリウム、またはこれらの組合せを含む、イオン化ガリウムを生成することと、
ガリウムイオンを生成するために、前記消耗可能な構造物を反応ガスと接触させることと
を含む、ガリウムイオンを形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガリウム種がイオン注入装置のイオン源チャンバに供給され、またはその場で生成される、イオン注入システムおよび方法に関し、本システムおよび方法の例は、固体ガリウムドーパント前駆体組成物として窒化ガリウムおよび酸化ガリウム前駆体を含む。
【背景技術】
【0002】
イオン化してイオン注入のためのドーパント種を形成するためのドーパント源材料の使用において、ドーパント種を生成するための広範なドーパント源材料が開発されてきた。
【0003】
多くの場合、ドーパント源材料は、イオン注入システムのイオン源チャンバへの効率的な送達のための十分高い蒸気圧を有していない。したがって、蒸気圧の低いこのようなドーパント源材料の使用は、ドーパント源材料を十分に揮発させ、イオン注入システムの流れラインでのその凝縮および堆積を防ぐのに必要な高温での送達を可能にするために、イオン注入装置の実質的なツールの改造を必要とすることがある。したがって、このような高温動作に適応する蒸発器および流れ回路を使用しなければならない。
【0004】
しかしながら、高温の使用は、イオン注入された構造物およびデバイスの生産に対する許容範囲内にイオン注入プロセスを制御することを困難にする分解および副反応をドーパント源材料が受けやすくなる可能性があるので問題がある。さらに、高温の使用は制御バルブの使用に制限を課し、その結果、蒸気流制御に悪い影響を与える。これらの要因は、1つのドーパント源材料から別のドーパント源材料への切換時間を長くし、蒸発器の設置または交換または補給中に蒸発器が周囲環境から隔離されていないとき、安全上の問題をもたらす可能性もある。
【0005】
前述の問題は、ドーパント種としてガリウムをイオン注入する際に生じ、それに対して、イオン注入システムのイオン源チャンバに効率的に送達するために十分高い蒸気圧を有する供給材料が比較的少数であることにより、許容できるドーパント源材料の選択が限定される。したがって、イオン注入技術では、新しいガリウム前駆体組成物が探し続けられている。
【0006】
ガリウムドーパント種(高蒸気圧のドーパント前駆体が比較的少ない)の場合のように、対応するドーパント種を注入するためにイオン注入用途に低蒸気圧のドーパント源材料を効率的に使用することを可能にする新しい手法を提供することは、当該技術において実質的な進歩となろう。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、固体の低蒸気圧ガリウム源材料の使用を可能にするようにガリウムドーパント種が生成される、イオン注入装置およびプロセスに関する。
【0008】
一態様では、本開示はイオン注入のためのイオン源装置に関し、本装置は、イオン源チャンバと、イオン源チャンバ内の、またはイオン源チャンバと関連付けられた消耗可能な構造物であって、窒化ガリウムまたは酸化ガリウムを含む固体ドーパント源材料を含む消耗可能な構造物とを備える。この窒化ガリウムまたは酸化ガリウムは、ガスの形態のガリウムをイオン源チャンバに放出するために、反応性ガスとの反応を受けやすい。
【0009】
別の態様では、本開示はイオン注入を実施する方法に関し、本方法は、前記イオン注入のためにイオン源チャンバでイオン化ガリウムを生成することであって、イオン源チャンバには、消耗可能な構造物が関連付けられており、消耗可能な構造物が、ガスの形態のガリウムをイオン源チャンバに放出してその中でイオン化されてドーパントとしてのイオン化ガリウムを形成するために、反応性ガスとの反応を受けやすい窒化ガリウムまたは酸化ガリウムを含む固体ドーパント源材料を含む、イオン化ガリウムを生成することを含み、前記方法は、イオン化ガリウムの前記生成のために、消耗可能な構造物を反応ガスと接触させることを含む。固体ドーパント源材料は、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、69Gaもしくは71Gaまたはこれらの組合せの天然存在量を超えるまで同位体濃縮されたガリウムを含む窒化ガリウム(GaN)または酸化ガリウム(Ga2O3)の同位体濃縮された類似物を含むことができる。
【0010】
さらなる態様では、本開示は、ビーム電流、イオン源寿命、およびそのグリッチ率特性のうちの少なくとも1つに関するイオン注入システムの性能を改善する方法に関し、前記方法は、前記イオン注入システムのイオン源チャンバでイオン化ガリウムを生成することであって、イオン源チャンバには、消耗可能な構造物が関連付けられており、消耗可能な構造物が、窒化ガリウム、酸化ガリウム、または窒化ガリウムと酸化ガリウムとの組合せを含む固体ドーパント源材料を含み、固体ドーパント源材料が、ガスの形態のガリウムをイオン源チャンバに放出してその中でイオン化されてイオン化ガリウムを形成するために、反応性ガスとの反応を受けやすい、イオン化ガリウムを生成することを含み、前記方法は、消耗可能な構造物を反応ガスと接触させることを含む。
【0011】
本開示はまた、イオン注入ならびに他の半導体製造および産業用途に有益であり、窒化ガリウム、酸化ガリウム、または両方を含み、アークチャンバの交換可能なライナとして使用することができる材料の固体シートの形態である固体ガリウム前駆体組成物に関する。
【0012】
本開示のさらなる態様はガリウムイオン注入プロセスに関し、本プロセスは、ガリウム前駆体をイオン化してガリウム注入種を形成することと、ガリウム注入種を基板に注入することとを含み、ガリウム前駆体は、69Gaもしくは71Gaまたはこれらの組合せの天然存在量を超えるまで同位体濃縮されたガリウムを含む窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、またはこれらの組合せの同位体濃縮された類似物から選択される1つまたは複数の前駆体材料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】チャンバ内でのドーパント源ガスのイオン化のために、ドーパント源ガスをアークチャンバへ供給するためのガス供給ラインを有するアークチャンバを含むイオン注入システムの概略図である。
【
図2】
図1のイオン注入システムの断面図であり、このようなシステムのアークチャンバ内でのプラズマの生成を概略的に示している。
【
図3】イオン源装置と、イオン源装置の熱管理のためのヒートシンク装置とを備えるイオン源アセンブリの断面斜視図である。
【
図4】例示のイオン注入チャンバ内の基板のイオン注入ドーピングのために供給されるガスを含む貯蔵分注容器を含むイオン注入プロセスシステムの概略図である。
【
図5】イオン注入システムのイオン源の断面図である。
【
図6】プロセス監視制御システムを備えるイオン注入システムの概略図である。
【
図7A】トリメチルガリウム前駆体を用いたビーム電流データを示す図である。
【
図8A】消耗可能な構造物として酸化ガリウムの交換可能なライナを含む、記載のイオン源チャンバを上から下に見た図である。
【
図8B】前駆体としての酸化ガリウムの交換可能なライナの使用によるガリウムイオンビーム電流データを示す図である。
【
図8C】前駆体としての酸化ガリウムの交換可能なライナの使用によるガリウムイオンビーム電流データを示す図である。
【
図8D】前駆体としての酸化ガリウムの交換可能なライナの使用によるガリウムイオンビーム電流データを示す図である。
【
図8E】前駆体としての酸化ガリウムの交換可能なライナの使用によるガリウムイオンビーム電流データを示す図である。
【
図9A】消耗可能な構造物として窒化ガリウムの交換可能なライナを含む、記載のイオン源チャンバを上から下に見た図である。
【
図9B】前駆体としての窒化ガリウムの交換可能なライナの使用によるガリウムイオンビーム電流データを示す図である。
【
図9C】前駆体としての窒化ガリウムの交換可能なライナの使用によるガリウムイオンビーム電流データを示す図である。
【
図9D】前駆体としての窒化ガリウムの交換可能なライナの使用によるガリウムイオンビーム電流データを示す図である。
【
図10A】消耗可能な構造物として酸化ガリウムの交換可能なライナを含み、消耗可能な構造物として窒化ガリウムの交換可能なライナも含む、記載のイオン源チャンバを上から下に見た図である。
【
図10C】前駆体としての窒化ガリウムの交換可能なライナと酸化ガリウムの交換可能なライナとの組合せの使用によるガリウムイオンビーム電流データを示す図である。
【
図10D】前駆体としての窒化ガリウムの交換可能なライナと酸化ガリウムの交換可能なライナとの組合せの使用によるガリウムイオンビーム電流データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示はイオン注入に関し、また、様々な態様において、ガリウムドーパントが、低蒸気圧ドーパント源材料を使用することを可能にするように生成される、装置および方法に関する。
【0015】
一態様では、本開示は、イオン注入のためのイオン源装置に関する。本装置は、イオン源チャンバと、イオン源チャンバ内の、またはイオン源チャンバと関連付けられた消耗可能な構造物とを含む。消耗可能な構造物は、ガスの形態のドーパントをイオン源チャンバに放出するために、反応性ガスとの反応を受けやすい固体ドーパント源材料を含む。固体ドーパント源材料は窒化ガリウム、酸化ガリウム、またはこれらの組合せを含む。任意選択で、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、またはこれらの組合せのガリウムは、69Gaもしくは71Gaまたはこれらの組合せの天然存在量を超えるまで同位体濃縮されたガリウムを含んでもよい。
【0016】
イオン源装置の消耗可能な構造物は、イオン源チャンバのライナまたは他の構造構成要素など、イオン源チャンバに配置されたシート構造物を含んでもよい。ライナは取外し可能なライナであってもよく、これは、例えば2つの対向する主面とその間に厚さを有する消耗可能な構造物の平坦な、例えば平面状の部分を意味する。ライナは、矩形、湾曲した(例えば、丸みを帯びた)形状、角張った形状、またはその他の形状であってもよい。ライナは取外し可能であってもよく、これは、ライナをイオン源チャンバの内部空間に挿入することができる、および内部空間から取り外すことができることを意味する。取外し可能なライナは、ガリウムイオンが取外し可能なライナから生成される処理の期間中使用されてもよく、ガリウムイオンを生成するために有用な量を処理した後、取外し可能なライナはイオン源装置から取り外されて別の取外し可能なライナと交換されてもよい。
【0017】
本発明の他の実施形態では、シート構造物は、アークチャンバの内側にぴったり合うように様々な大きさおよび形状にすることができる。特定の実施形態では、アークチャンバの側壁、底部、または頂部のうちの1つまたは複数のシートはシート構造物によって置き換えることができる。
【0018】
有用なまたは好ましいイオン源チャンバの特定の例によれば、イオン源のチャンバの内部は1つまたは複数のシートまたはライナを含むことができ、1つまたは複数のシートまたはライナは取外し可能であり、チャンバの全内部表面積の約5パーセント~約80パーセントを覆ってもよく、例えば、全内部表面積の10、15、20、30、50、または70パーセントを覆ってもよい。この計算では、全内部表面積は、対陰極、陰極、またはガスもしくはイオンがアークチャンバに入るもしくはアークチャンバを出ることを可能にする入口もしくは出口開口などの、望ましくは覆われなくてもよい機能部によって別に占められるまたは覆われる面積を含む内部のすべての平面状の面積を含む。
【0019】
他の例では、消耗可能な構造物は、イオン源チャンバに結合されている(が、イオン源チャンバ内部の外側にある)ガス送達管など、イオン源チャンバと他の態様で関連する構造物、または他の構造構成要素と接触する反応性ガスとの反応の結果としてガスの形態のドーパントをイオン源チャンバ内部に供給するように組み立てられた、または構成された関連する特徴部の構造構成要素であってもよい。
【0020】
イオン源チャンバは、異なるガリウム材料から作られた消耗可能な構造物を含んでもよい。単一のイオン源チャンバは、1つまたは複数の取外し可能なライナの組合せ、ガス送達管などを含んでもよく、この場合、異なる個々の取外し可能なライナまたはガス送達管は、同じイオン源チャンバ内にGaNとGa2O3との組合せを含み、単一のイオン源チャンバは、Ga2O3を含む1つまたは複数のライナと組み合わせて、GaNを含む1つまたは複数のライナを含んでもよく、すなわち、本記述の実施形態は、イオン源チャンバが2つのガリウム前駆体材料を含み、一方がGaNを含むように作られ、他方がGa2O3を含むように作られ、各前駆体材料が、取外し可能なライナまたはガス送達管などの消耗可能な構造物の一部であってもよい、イオン源チャンバ、およびこのイオン源チャンバを使用する方法を含む。
【0021】
消耗可能な構造物は、イオン源装置または付属機器の物理的完全性への悪影響なしに前駆体を形成するように反応ガスと反応することによって消耗可能となるような形状、形態、および大きさを有する、すなわち、消耗可能な構造物が完全に消費されたとしても、イオン源チャンバおよび付属機器はその物理的完全性を維持する。例えば、消耗可能な構造物は、反応ガス流路と同軸の管状部材を備えてもよく、この場合、消耗可能な管状部材の消費は、消耗可能な管状部材が配置された反応ガス流路の物理的完全性を損なわない。したがって、消耗可能な構造物は、反応性ガスに対する標的として、物理的な質量を備え、シート、棒、管、リング、円板、または他の適切な形態のものであってもよい。
【0022】
特定の例では、消耗可能な構造物は、窒化ガリウム、酸化ガリウム、またはこれらの組合せを含み、それらから構成され、あるいは実質的にそれらから構成されてもよい。例示的な消耗可能な構造物は、少なくとも50、60、70、80、90、または95重量パーセントの窒化ガリウム、酸化ガリウム、またはこれらの組合せを含んでもよい。本記述によれば、列挙された材料または材料の組合せ「から実質的に構成された」と述べられている材料または構造物は、列挙された材料または材料の組合せを含み、いかなる他の成分または材料が実質的な量以下である材料または構造物であり、したがって、窒化ガリウム、酸化ガリウム、またはこれらの組合せから実質的に構成された消耗可能な構造物は、少なくとも97、99、または99.5重量パーセントの窒化ガリウム、酸化ガリウム、またはこれらの組合せを含み、いかなる他の材料も3、1、または0.5重量パーセント以下である。
【0023】
このような装置の動作において用いられる反応性ガスまたは混合ガスは、固体ドーパント源材料(窒化ガリウムまたは酸化ガリウム)と反応してガスの形態のガリウムをイオン源チャンバに放出するのに効果的な任意の適切なタイプのものであってもよい。このような目的に適する例示的なガスとしては、BF3、B2F4、SiF4、Si2F6、GeF4、PF3、PF5、AsF3、AsF5、XeF2、XeF4、XeF6、WF6、MoF6、CnF2n+2、CnF2n、CnF2n-2、CnHxF2n+2-x、CnHxF2n-x、CnHxF2n-2-x(n=1、2、3..、x=0、1、2...)、COF2、CO、CO2、SF6、SF4、SeF6、NF3、N2F4、HF、Xe、He、Ne、Ar、Kr、N2、H2が挙げられる。反応ガスの組合せの例としては、BF3とH2、SiF4とH2、BF3とXe、SiF4とXe、BF3およびH2とXe、ならびにSiF4およびH2とXeが挙げられる。
【0024】
本開示のさらなる態様はイオン注入を実施する方法に関する。本方法は、イオン注入のためにイオン源チャンバでイオン化ガリウムを生成することであって、イオン源チャンバには、消耗可能な構造物が関連付けられており、消耗可能な構造物が、ガスの形態のガリウムをイオン源チャンバに放出してその中でイオン化されてイオン化ガリウム種を形成するために、反応性ガスとの反応を受けやすい固体ドーパント源材料を含む、イオン化ガリウムを生成することを含む。本方法は、イオン化ドーパント種を生成するために、消耗可能な構造物を反応ガスと接触させることを含む。固体ドーパント源材料は窒化ガリウム、酸化ガリウム、またはこれらの組合せを含む。固体ドーパント源のガリウムは任意選択で同位体濃縮されていてもよい。
【0025】
このような方法では、消耗可能な構造物は、イオン源チャンバの交換可能なライナまたは他のシート構造物など、イオン源チャンバに配置されたシート構造物を含んでもよい。消耗可能な構造物は、これに代えて、またはこれに加えて、イオン源チャンバと関連付けられた構造物、例えばイオン源チャンバに結合されたガス送達管を含んでもよい。
【0026】
本開示のさらなる態様は、ビーム電流、イオン源寿命、およびそのグリッチ率特性のうちの少なくとも1つに関するイオン注入システムの性能を改善する方法に関し、前記方法は、前記イオン注入システムのイオン源チャンバでイオン化ドーパント種を生成することであって、イオン源チャンバには、消耗可能な構造物が関連付けられており、消耗可能な構造物が、ガスの形態のドーパントをイオン源チャンバに放出してその中でイオン化されて前記イオン化ドーパント種を形成するために、反応性ガスとの反応を受けやすい固体ドーパント源材料を含む、イオン化ドーパント種を生成することを含み、前記方法は、イオン化ドーパント種の前記生成のために、消耗可能な構造物を反応ガスと接触させることを含む。固体ドーパント源材料は、窒化ガリウム、酸化ガリウム、またはこれらの組合せを含む。このような方法で用いられる固体ドーパント源材料は、これらの少なくとも1つの同位体の天然存在量を超えるまで同位体濃縮されたガリウムを含む同位体濃縮されたドーパント源材料を含んでもよい。
【0027】
様々な実施形態では、プロセスシステムは、窒化ガリウムまたは酸化ガリウムを含むガリウム反応物質が消耗可能な構造物の形でイオン注入システムのアークチャンバに組み込まれた、イオン注入システムであってもよい。プロセスシステムは、半導体プロセスシステム、例えばイオン注入システム、またはソーラーパネルもしくはフラットパネルディスプレイ製品を製造するためのプロセスシステムなど、他のプロセスシステムを含んでもよい。前駆体は、窒化ガリウム(GaN)または酸化ガリウム(Ga2O3)などのガリウム反応物質からその場で生成されるガリウム前駆体を含んでもよい。このような装置の動作において用いられる反応性ガスまたは混合ガスは、固体ドーパント源材料(窒化ガリウムまたは酸化ガリウム)と反応してガスの形態のガリウムをイオン源チャンバに放出するのに効果的な任意の適切なタイプのものであってもよい。このような目的に適する例示的なガスとしては、BF3、B2F4、SiF4、Si2F6、GeF4、PF3、PF5、AsF3、AsF5、XeF2、XeF4、XeF6、WF6、MoF6、CnF2n+2、CnF2n、CnF2n-2、CnHxF2n+2-x、CnHxF2n-x、CnHxF2n-2-x(n=1、2、3..、x=0、1、2...)、COF2、CO、CO2、SF6、SF4、SeF6、NF3、N2F4、HF、Xe、He、Ne、Ar、Kr、N2、H2が挙げられる。反応ガスの組合せの例としては、BF3とH2、SiF4とH2、BF3とXe、SiF4とXe、BF3およびH2とXe、ならびにSiF4およびH2とXeが挙げられる。さらに、他の反応ガスは、上のリストの濃縮されたガスを含むことができる。例えば、限定するものではないが、eBF3、eGeF4がある。
【0028】
前述の方法では、ガス状の共反応物の流量を制御して、プロセスシステムにおいて反応生成物として生成される前駆体の流量を制御することができる。
【0029】
様々な特定の実施形態では、ガリウム反応物質は、プロセスシステムの反応器、例えば加熱される反応器に含まれてもよい。プロセスシステムは、これに対応して、反応器温度のガス状の共反応物流量が、所定のイオン注入ビーム電流を達成するように制御される、イオン注入システムを備えてもよい。
【0030】
前述の方法は、その場でのガリウム前駆体の形成が、次のうちの少なくとも1つを含む制御プロセスによって制御されるように実行されてもよい。(i)ガス状の共反応物とガリウム反応物質との接触によって形成された前駆体の量の測定、(ii)ガス状の共反応物とガリウム反応物質との接触の反応生成物の特定と定量化、(iii)前記接触後の未反応のガス状の共反応物の量の検出、および(iv)ビーム電流の検出、ここで、プロセスシステムはイオン注入システムを含む。
【0031】
専用の反応器が用いられる他の実施形態では、反応器は、ガリウム反応物質が消耗する終了状態に達したときに、複数の反応器床の1つから、ガリウム反応物質を含む前記複数の反応器床のうちの別の反応器床に反応ガス流を切り替えるように構成された前記複数の反応器床を含むことができる。
【0032】
このような複数床の反応器構成体では、切り替えるための終了状態を、ガス状の共反応物のトータル流量の予め決められた検出を行う、ビーム電流が少なくなることを検出する、および複数の反応器床のうちの使用中の床から出るガスを分析する、のうちの1つまたは複数によって決定することができる。
【0033】
上記の方法は、少なくとも1つの同位体の天然存在量を超えるまで濃縮された前駆体ガリウム反応物質をさらに用いてもよい。
【0034】
他の実施形態では、所望のように、例えば希釈剤、平衡指向(equilibrium-directing)ガス、洗浄ガスなど、共に流されるガスがプロセスシステムへ流されるまたはプロセスシステムを通って流される、上記の方法を実行することができる。
【0035】
次に図を参照すると、
図1は、チャンバ内でのドーパント源ガスのイオン化のために、ドーパント源ガスをアークチャンバへ供給するためのガス供給ライン14を有するアークチャンバ12を含むイオン注入システム10の概略図である。したがって、アークチャンバ12はイオン源チャンバを提供し、イオン源チャンバ内にまたはイオン源チャンバと関連して、ガスの形態のガリウムをチャンバに放出するために、反応性ガスとの反応を受けやすい窒化ガリウムまたは酸化ガリウムを含む固体ドーパント源材料を含む消耗可能な構造物を設けることができる。
【0036】
図2は、
図1のイオン注入システム10の断面図であり、このようなシステムのアークチャンバ12内でのプラズマ16の生成を概略的に示している。ドーパントガスは、矢印Aによって示される方向にドーパントガス供給ライン14内へ流され、ドーパントガス供給ライン14は、供給ライン、およびアークチャンバに入るガスの熱的状態の質を判定するために監視するという関係でドーパントガス供給ライン14に監視熱電対TC1およびTC2が固定されており、これは、イオン注入システムのための熱管理システムの使用に関連して望ましいものとなり得る。ドーパントガス供給ライン14は、ガスの形態のドーパントをイオン源チャンバに放出するために、反応性ガスとの反応を受けやすい固体ドーパント源材料から形成された内層を有するパイプまたは導管を備えてもよい。このように、反応性キャリアガスをドーパントガス供給ラインに流して、ドーパント種(すなわちガリウム)を反応的に生成することができる。ドーパント種は、反応性キャリアガスによってイオン注入システムのイオン源チャンバ内に運ばれる。
【0037】
図3は、イオン源装置70と、システムの熱管理のための任意選択のヒートシンク装置50とを備えるイオン源アセンブリの断面斜視図である。この断面図は、ガス供給プラグのガス流路84に接続して、イオン源と関連付けられたガスブッシングのガス流路86に接続しているドーパント源ガス供給ライン72を示す。
【0038】
図3に示すイオン源装置は、ドーパントをイオン源チャンバに供給するその場生成手法として、ガスの形態のドーパントをイオン源チャンバに放出するために反応性ガスとの反応を受けやすい固体ドーパント源材料(例えば窒化ガリウムまたは酸化ガリウム)から形成することができるベースライナ80を含む。ライナ80は開口82を含むように修正されて、分解しやすいドーパント源ガスが使用されるとき、イオン源の動作寿命をさらに改善することができる。
【0039】
前述の構成は、ガスの形態のドーパントをイオン源チャンバに放出するために、反応性ガスとの反応を受けやすい固体ドーパント源材料(例えば窒化ガリウムまたは酸化ガリウム)を含む、イオン源チャンバ内にまたはイオン源チャンバと関連して消耗可能な構造物を備えることを示している。消耗可能な構造物は、イオン注入システムの消耗可能な構成要素として、動作寿命のために監視され、進行中のメンテナンススケジュールに従って交換されてもよい。
【0040】
図4は、例示のイオン注入チャンバ301内の基板328のイオン注入ドーピングのために、イオン源チャンバ内でのドーパント源反応物質(すなわち窒化ガリウムまたは酸化ガリウム)とその場反応してドーパント種(ガリウム)を生成するために供給される反応ガスを保持する貯蔵分注容器302を含むイオン注入プロセスシステム300の概略図である。
【0041】
貯蔵分注容器302は、反応ガスを保持する内部容積を取り囲む容器壁306を備える。
【0042】
容器は、ガスのみを保持するように構成された内部容積を有する従来のタイプのガスボンベであってもよいし、または、これに代えて、容器は、反応ガスに対し吸着親和性を有する吸着材料を含んでもよく、共反応源ガスは、分注状態の下で容器から排出するために吸着材料から脱着可能である。
【0043】
貯蔵分注容器302は、排出ライン312とガス流連通状態で結合されたバルブヘッド308を含む。圧力センサ310は、質量流量コントローラ314とともにライン312に配置される。他の監視および検知構成要素はラインと結合されてもよく、アクチュエータ、フィードバックおよびコンピュータ制御システム、サイクルタイマなどの制御手段とインターフェースされてもよい。
【0044】
イオン注入チャンバ301は、ライン312から分注された反応ガスを受けとるイオナイザ316を含み、反応ガスは、イオナイザチャンバ内にまたはイオナイザチャンバと関連して供給されるドーパント源反応物質と反応して、イオナイザチャンバ内のイオン化状態の下でイオンビーム305を生じるドーパント種(ガリウム)を生成する。イオンビーム305は、必要なイオンを選択し、選択されないイオンを排除する質量分析ユニット322を通過する。
【0045】
選択されたイオンは加速電極アレイ324を、次いで偏向電極326を通過する。結果として得られる集束イオンビームは、スピンドル332に取り付けられた回転可能なホルダ330に配置された基板素子328に衝突して、イオン注入製品としてドープされた(ガリウムをドープされた)基板を形成する。
【0046】
イオン注入チャンバ301のそれぞれの部分は、それぞれ、ポンプ320、342、および346によってライン318、340、および344を通して排気される。
【0047】
図5は、
図4に示されたタイプのイオン注入システムに有用に使用することができるようなイオン源で、2000年10月24日にM.A.Grafらに交付された米国特許第6,135,128号に、より完全に記述されているイオン源の断面図である。
【0048】
イオン源112は、プラズマチャンバ122を画定するハウジングとイオン抽出アセンブリを備える。ドーパント源反応物質と反応ガスとによって形成されるイオン化可能なドーパントガスにエネルギーが付与されてプラズマチャンバ122内でイオンを生成する。通常は陽イオンが生成されるが、その代わりに、システムは陰イオンを生成するように構成されてもよい。陽イオンは、プラズマチャンバ122のスリットを通って複数の電極142を備えるイオン抽出アセンブリ124によって抽出される。したがって、イオン抽出アセンブリは、プラズマチャンバから抽出アパーチャプレート146を介して陽イオンのビームを抽出し、抽出したイオンを質量分析磁石(
図5に図示せず)に向けて加速するよう機能する。
【0049】
反応ガスは、このようなガスの供給源166から流され、質量流量コントローラ168を中に含む導管170を通って、ドーパント源反応物質を含むプラズマチャンバ122内に、またはプラズマチャンバ122と関連付けられたドーパント源反応物質を有するプラズマチャンバ内に注入することができる。供給源166は、吸着剤ベースのガス貯蔵供給容器、例えば、SDSの商標の下でEntegris,Inc.(Billerica、Massachusetts、USA)から市販されているタイプのもの、内部のガス圧調整器を含む圧力調整容器、例えば、VACの商標の下でEntegris,Inc.(Billerica、Massachusetts、USA)から市販されているタイプのものを含んでもよく、または、固体共反応材料を用いる場合、供給源166は固体源容器、例えば、ProE-Vapの商標の下でEntegris,Inc.(Billerica、Massachusetts、USA)から市販されているタイプのものを含んでもよい。プラズマチャンバ122は、ドーパント源反応物質と反応ガスとの反応生成物のイオン化のためのチャンバ内部のイオン化ゾーン420の境界となる導電チャンバ壁412、414、416を有する。側壁414は、プラズマチャンバ122の中心軸線415に対して円対称である。分析マグネットに面する導電壁416は、プラズマチャンバ支持体422に接続される。壁416は複数の開口を有するアパーチャプレート146を支持し、アパーチャプレート146は、イオンがプラズマチャンバ122を出て、次いで、間隔をおいて配置され電気的に絶縁された複数の抽出電極124の下流の位置でイオンビームを形成するように結合することを可能にする。アパーチャプレート146は特定のパターンで配置された多数の開口を含み、これらの開口は、間隔をおいて配置された抽出電極142に同様に構成された複数のアパーチャと位置が合っている。
図5には、このようなアパーチャが1つだけ示されている。
【0050】
金属アンテナ430は、プラズマチャンバ122内にエネルギーを放射するためにチャンバ内部に露出された金属面432を有する。プラズマチャンバ122の外部にある電源434は、適切な特性の無線周波数(RF:radio frequency)信号、例えば、およそ13.56メガヘルツ(MHz)のRF信号で金属アンテナ430にエネルギーを与えて、金属アンテナ内に交流電流を発生させて、プラズマチャンバ122内にイオン化電界を引き起こす。アンテナの電力は、特定のイオン化動作に適した任意の大きさでもあってよく、例えば500~3000ワット(W)程度の電力である。イオン源チャンバ内の圧力は、例えば1~10ミリトール(millitorr)程度とすることができ、その結果、イオン源112は低圧力、高密度の誘導源として機能する。プラズマチャンバ122はまた、アンテナ430とアパーチャプレート146との間のチャンバ内部の領域の中を延在する磁気フィルタアセンブリ440を含んでもよい。
【0051】
アンテナ430は、取外し可能な支持プレート450によってプラズマチャンバ122内に配置することができる。支持プレート450は、アンテナが通り抜けて延在する円形の切抜部452を有する位置で側壁414によって支持される。アンテナ430のための支持プレート450は、アンテナ430の露出されたU字形金属部432をイオン化ゾーン420内に配置しながら、チャンバ壁414の切抜部452に嵌まり込むような大きさである。
【0052】
支持プレート450は、2つの真空圧フィッティング456を収める2つの貫通通路を画定する。アンテナ430の細長い脚部457がフィッティングに押し込まれた後、エンドキャップ458がフィッティングにねじ込まれてフィッティング456と脚部457との間の接触領域を封止する。アンテナ430は、放射放出領域ではU字形が好ましく、例えば、アルミニウムから構築されてもよい。管の外径は、圧力フィッティング456の中を通るような寸法である。使用中、アンテナはその周囲から熱を吸収する。この熱を放散させるために、冷却剤が管の中心を通る。
【0053】
プレート450は、プラズマチャンバの内部に露出された概ね平面状の表面460を有し、チャンバ内部とは反対側を向く平行な外面462を含む。プレート450のフランジ部464は、壁414の切抜部を取り囲みコネクタ472によって壁414に取り付けられたリング磁石470に被さる。プレート450が切抜部452内に配置されると、強磁性インサート474と磁石470とが互いに引き合って、アンテナ430がチャンバ内部に延在した状態でプレート450を定位置に固定するように、支持プレート450に取り付けられた強磁性インサート474は磁石470を覆って嵌合する。
【0054】
イオン源の動作中、熱が発生し、この熱は壁412、414、416、418によって吸収される。壁の中の通路に水を導くためのフィッティング476によって導入され、第2の出口フィッティング(図示せず)によってチャンバから出ていく冷却剤によって、吸収された熱をチャンバ122から取り除くことができる。この構成によって、壁の温度は100℃より低い温度に維持することができ、その結果、イオン源112は冷温壁イオン源として機能する。
【0055】
支持プレート450近くのアンテナ430の領域は特に、イオン注入器の動作中にスパッタされた材料で被覆されやすい。このようなスパッタリングの影響を最小限にするために、アンテナを支持プレート450に挿入する前にアルミニウムのアンテナに2つのシールド480を被せることができる。これらのシールドはアルミニウムから構築されることが好ましく、シールドとアンテナ430の露出したアルミニウムの外面との間の摩擦嵌めによって定位置に維持される。
【0056】
イオン源112の動作中、ドーパント要素の堆積物が、イオン化ゾーン420の境界となる内壁412、414、および416に形成されることがある。通常の動作状態の下でイオン源112を動作させている間、反応ガスと同時に洗浄ガスを流してもよい。洗浄ガス源482および対応する質量流量コントローラ484が設けられてもよく、質量流量コントローラ484の洗浄ガス出力は、プラズマチャンバ122に送達される前に導管170の質量流量コントローラ168の反応ガス出力と結合される。これに代えて、反応ガスおよび洗浄ガスは、プラズマチャンバに別々に送達されてもよい。さらなる代替として、洗浄ガスは、その有効なイオン注入動作後にプラズマチャンバに流されてもよい。
【0057】
反応ガス源166は、洗浄材料および/または希釈剤、平衡指向材料、冷却剤などの他の材料と組み合わせた反応ガスを含んでもよいことは理解されよう。
【0058】
図6は、イオン源チャンバ544およびプロセス監視制御システムを備えるイオン注入システム500の概略図である。
【0059】
図示のように、イオン注入システム500は、流量制御バルブ524を有する分注ライン518に結合された反応ガスボンベ512と、流量制御バルブ526を有する分注ライン520に結合された洗浄流体ボンベ514と、流量制御バルブ528を有する分注ライン522に結合された希釈流体ボンベ516とを含むガス供給ボンベが配置されたガスボックス510を含む。ボンベ512内の反応ガスは、イオン源チャンバ544内にまたはイオン源チャンバ544と関連して供給されるドーパント源反応物質(
図6に図示せず)と反応するように配置される。
【0060】
バルブ524、526、および528は、それぞれ信号伝送ライン530、536、および534によって中央処理装置(CPU:central processing unit)に接続されており、それによって、CPUは、サイクルタイムプログラムに応答して、またはCPUによって監視されるプロセス状況および/または構成要素に応じてバルブを調節するCPUの他の信号生成能力に応答して、それぞれのバルブを特定の範囲に開閉するよう動作することができる。
【0061】
それぞれのボンベに結合された分注ライン518、520、および522は、混合チャンバ532で終端となり、その結果、それぞれの反応ガス、洗浄流体、および希釈流体のうちの複数の流体は、所望のように選択的に互いと混合することができる。これに代えて、単一のボンベ、すなわち反応ガスボンベ512は、その内容物をチャンバ532に分注し、そこから、圧力トランスデューサ540および質量流量コントローラ(MFC:mass flow controller)542を含む供給ラインへ、それからイオン源チャンバ544へ流れるように構成することができる。イオン源チャンバ544はイオン化動作するように構成され、反応ガスとドーパント源反応物質との反応によって生成されるドーパント源をイオン化する。イオン化動作は、イオン注入器チャンバ546に伝送されるイオンビームを生成するように行われる。イオン注入器チャンバ546にはその中に半導体または他のマイクロ電子デバイスの基板が取り付けられ、選択されたイオン化ドーパント種が基板に注入される。
【0062】
図6のこの例示的なシステムでは、イオン源への供給ラインの圧力トランスデューサ540は、信号伝送ライン538によって信号伝送関係でCPUに結合される。質量流量コントローラも、信号伝送ラインによって信号伝送関係でCPUに結合される。圧力トランスデューサのこの配置により、供給ラインの圧力と相関性のある信号が生成され、監視目的のためにライン538内をCPUに伝送される。
【0063】
反応ガスがイオン源に流れている間、供給ラインの圧力は圧力トランスデューサ540によって検知され、信号伝送ライン538内をCPUに伝送される。
【0064】
次いで、CPUはそれに応答して、イオン源チャンバへの反応ガスの流れを調節することができる。CPUはまた、信号伝送ライン536内をバルブに送られる制御信号によって流量制御バルブ526を開けることによって、ボンベ514から供給ラインへの洗浄流体の流れを制御することができる。これに代えて、イオン源へのアーク電力を下げることができる。さらなる代替として、信号伝送ライン530内をバルブ524に伝送される制御信号によってバルブを開けることによって反応ガスの流量を増大させることによって、ならびに/または、体積流量の全体的な増大によって流れ回路およびイオン源チャンバ内での反応ガスの滞留時間を短くするように洗浄流体および/もしくは希釈流体を加えることによって、反応性ガスの滞留時間を短くすることができる。このように、イオン注入システムが適切に動作するように、反応ガスとドーパント源反応物質との反応を制御可能に調節することができる。
【0065】
別の態様では、本開示は、ガリウム前駆体をイオン化してガリウム注入種を形成することと、ガリウム注入種を基板に注入することとを含むガリウムイオン注入プロセスに関する。ガリウム前駆体は、窒化ガリウム、酸化ガリウム、または69Gaまたは71Gaの天然存在量を超えるまで同位体濃縮されたガリウムを含む窒化ガリウムまたは酸化ガリウムの同位体濃縮された類似物を含み、任意選択で消耗可能な構造物の形態とすることができる。
【0066】
特定の実施形態は、ガリウム前駆体が69Gaの天然存在量を超えるまで同位体濃縮されるプロセス、およびガリウム前駆体が71Gaの天然存在量を超えるまで同位体濃縮されるプロセスを含む。
【0067】
さらなる態様において、上で概説したイオン注入プロセスは、60%を超える69Gaの同位体濃縮されたガリウム前駆体を含む前駆体材料を用いて実施されてもよい。例えば、前駆体のガリウムの全量の中の69Gaの量は、65%、70%、75%、80%、85%、90%、および95%の中から選択される下限と、下限より多く、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%、および100%の中から選択される上限とを有する範囲にあってもよい。様々な実施形態では、前駆体のガリウムの全量の中の69Gaの量は65%~100%の範囲にあってもよい。
【0068】
これに代えて、上で概説したイオン注入プロセスは、40%を超える71Gaの同位体濃縮されたガリウム前駆体を含む前駆体材料を用いて実施されてもよい。このような前駆体のガリウムの全量の中の71Gaの量は、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、および95%の中から選択される下限と、下限より多く、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%、および100%の中から選択される上限とを有する範囲にあってもよい。特定の実施態様では、前駆体のガリウムの全量の中の71Gaの量は45%~100%の範囲にあってもよい。
【実施例】
【0069】
本発明によれば、窒化ガリウム(GaN)を含む、または酸化ガリウム(Ga2O3)、またはこれらの混合物を含む固体前駆体は、例えば交換可能なライナの形態でアークチャンバに使用されるとき、有用なまたは比較的長期間のイオン源寿命にもなりながら有用または有利なビーム電流を生成することができる。特に、前駆体としてガス状のトリメチルガリウムGa(CH3)3を使用するのに比べると、イオン源チャンバにおいて、例えば、交換可能なイオン源チャンバライナとして形成された、本書に記載の窒化ガリウムまたは酸化ガリウムからなる固体前駆体は、有用または有利な高ビーム電流を生成することができ、ガス状のトリメチルガリウムによって供給される場合より実質的に長時間にわたって連続的に供給することができるガリウムイオン源を提供することができる。
【0070】
1.ガス状のトリメチルガリウム前駆体(比較)
図7Aは、以下の試験反応器条件を用いて、様々な流量レベルのトリメチルガリウムを前駆体として用いて得られたGa+ビーム電流の例を示す。
アーク電圧=60V
ソースビーム=20mA
【0071】
図7Aに示すように、1sccm、アーク電圧60V、およびソースビーム20mAにおいて、最高4.728mAのGa+ビーム電流が得られた。1.25sccmでは、4.818mAのビーム電流が得られた。しかし、このとき、ビームは安定していなかった。
【0072】
ソースは、ビームが不安定になる前、最長約2時間だけ動作することができた。ビームの不安定さは、内部に形成された、トリメチルガリウム由来の炭素/ガリウムの形態のイオンチャンバの汚染によるものと考えられた。
【0073】
2.酸化ガリウム前駆体
図8A~
図8Eは、共反応物のタイプと量を変え、以下の概略的な試験条件を用いて、交換可能なチャンバライナとして固体の酸化ガリウムを使用することによって得られたGa+ビーム電流の実験的な例を示す。
アーク電圧=変数(60V、90V、120V)
ソースビーム=20mA
共反応物=変数
【0074】
図8Aは、対陰極(図では、チャンバの左端)に隣接する内部の底面に酸化ガリウムの交換可能なシートを含むイオン源チャンバの内部を上から下に見た図である。イオン源チャンバの他の内面のすべて(底部の残りの部分、側部、および頂部)はタングステンである。
【0075】
図8Bは、異なるBF
3流量およびアーク電圧で有用なビーム電流が得られたことを示す。
【0076】
図8C、
図8D、および
図8Eは、共反応物としてキセノン、異なるレベルの水素を有するBF
3、および共反応物としてSiF
4に対するビーム電流値を示す。
【0077】
3.窒化ガリウム
図9A~
図9Dは、窒化ガリウムを使用し、共反応物を変え、以下の概略的な試験条件を用いて得られたビームGa+電流の例を示す。
アーク電圧=変数(60V、90V、120V)
ソースビーム=20mA
共反応物=変数
【0078】
図9Aは、対陰極(図では、チャンバの左端)に隣接する内部の底面に酸化ガリウムの交換可能なシートを含むイオン源チャンバの内部を上から下に見た図である。イオン源チャンバの他の内面のすべてはタングステンである。
【0079】
図9Bは、異なるBF
3流量およびアーク電圧で有用なビーム電流が得られたことを示す。
【0080】
図9Cおよび
図9Dは、共反応物としてキセノンおよびSiF
4に対するビーム電流値を示す。
【0081】
4.イオン源チャンバ内で別個の酸化ガリウムの消耗可能な構造物と組み合わせた窒化ガリウム消耗品
図10A~
図10Dは、単一のイオン源チャンバ内で別個の酸化ガリウムの消耗可能な構造物(交換可能なライナ)と組み合わせた消耗可能な構造物(交換可能なライナ)として窒化ガリウムを使用し、共反応物を変え、以下の概略的な試験条件を用いて得られたGa+ビーム電流の例を示す。
アーク電圧=変数(60V、90V、120V)
ソースビーム=20mA
共反応物=変数
【0082】
図10Aは、対陰極(図では、チャンバの左端)に隣接する内部の底面に酸化ガリウムの交換可能なシート、および陰極(図では、チャンバの右端)に隣接する内部の底面に第2の交換可能なシートある窒化ガリウムを含むイオン源チャンバの内部を上から下に見た図である。
図10Bは、内部の底面に酸化ガリウムおよび窒化ガリウムの交換可能なシートを有する内部の側面斜視図である。
【0083】
イオン源チャンバの他の内面のすべてはタングステンである。
【0084】
図10Cは、異なるBF
3流量で有用なビーム電流が得られ、ビーム電流はBF
3の流量が増大してもビーム電流低下がなかったことを示す。
【0085】
図10Dは、共反応ガスとしてキセノンが使用されたときの有用なビーム電流値を示す。