(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220316BHJP
H01L 33/02 20100101ALI20220316BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220316BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20220316BHJP
C09J 7/20 20180101ALI20220316BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220316BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L33/02
H01L21/78 B
H01L21/304 631
B23K26/53
C09J7/20
C09J201/00
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2017192030
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 修一
(72)【発明者】
【氏名】貞本 翔平
(72)【発明者】
【氏名】三橋 慎也
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-132710(JP,A)
【文献】特開2010-251661(JP,A)
【文献】特開2010-056562(JP,A)
【文献】特開2016-047628(JP,A)
【文献】特開昭56-061133(JP,A)
【文献】特開2006-144022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 33/02
H01L 21/304
B23K 26/53
C09J 7/20
C09J 201/00
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と半導体層とを備えるウエハの前記半導体層側を常温からの加熱により損失正接が大きくなる両面テープによって支持基板に仮固定する工程と、
前記ウエハに、常温で複数の発光素子に分割するための割断起点部を形成する工程と、
前記両面テープを加熱
し、前記支持基板上で
ブレードを用いて前記ウエハを複数の発光素子に個片化する工程と、を含む発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記支持基板に仮固定する工程の後であって、前記ウエハに割断起点部を形成する工程の前に、前記基板を研削によって薄層化する工程を含む請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記基板を薄層化する工程は、前記両面テープを冷却しながら前記基板を研削することを特徴とする請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記ウエハに割断起点部を形成する工程において、前記支持基板に仮固定されたウエハにレーザ光を照射することで前記ウエハの内部に前記割断起点部を形成する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記複数の発光素子に個片化する工程の後に、前記複数の発光素子と前記両面テープとを前記支持基板から剥離する工程と、
前記支持基板から剥離する工程の後に、前記複数の発光素子を前記両面テープから剥離する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記複数の発光素子に個片化する工程の後であって、前記複数の発光素子と前記両面テープとを前記支持基板から剥離する工程の前に、前記支持基板上で前記個片化されたウエハから不良の発光素子を選別する工程を有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記支持基板上で前記ウエハを複数の発光素子に個片化する工程における損失正接が0.3以上である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記支持基板はステンレス基板である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子の製造方法において、一枚のウエハから複数のチップを得るため、割断起点部を形成する割断準備工程と、割断起点部を押圧部材で押圧しウエハを割断する割断工程と、が行われている。
また、従来の割断準備工程および割断工程において、ウエハは、ダイシングシートに支持されている(下記特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法は、製造過程において、意図しない欠けや割れが発生した場合、対処する手間がかかってしまい、作業性の改善が望まれていた。
【0005】
本発明に係る一実施形態は、前記の点に鑑みてなされたものであり、作業性を向上できる発光素子の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る発光素子の製造方法は、基板と半導体層とを備えるウエハの前記半導体層側を常温からの加熱により損失正接が大きくなる両面テープによって支持基板に仮固定する工程と、前記ウエハに、常温で複数の発光素子に分割するための割断起点部を形成する工程と、前記両面テープを加熱して、前記支持基板上で前記ウエハを複数の発光素子に個片化する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態に係る発光素子の製造方法は、作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】実施形態に係る発光素子の製造方法において、ウエハを支持基板に仮固定する工程を示す斜視図である。
【
図1B】実施形態に係る発光素子の製造方法において、ウエハを支持基板に仮固定する工程を示す斜視図である。
【
図2A】実施形態に係る発光素子の製造方法において、ウエハに割断起点部を形成する工程を示す斜視図である。
【
図2B】実施形態に係る発光素子の製造方法において、ウエハに割断起点部を形成する工程を示す断面図であり、
図2AのIIB-IIB線における断面に相当する。
【
図3A】実施形態に係る発光素子の製造方法において、ウエハを個片化する工程を示す斜視図である。
【
図3C】実施形態に係る発光素子の製造方法において、複数の発光素子と両面テープとからなる発光素子載置テープを支持基板から剥離する工程を示す斜視図である。
【
図4A】実施形態に係る発光素子の製造方法において、複数の発光素子を両面テープから剥離する工程における、発光素子載置テープを検査・分類工程用のシートに貼り替える工程を示す斜視図である。
【
図4B】実施形態に係る発光素子の製造方法において、複数の発光素子を両面テープから剥離する工程を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る発光素子の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】実施形態に用いる両面テープの状態を示す断面模式図である。
【
図7】実施形態に係る発光素子の製造方法において、ウエハの基板を研削によって薄層化する工程を示す斜視図である。
【
図8】第2実施形態に係る発光素子の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図9】他の実施形態に係る発光素子の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
本発明の一実施形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具現化するための発光素子の製造方法を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置などは、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさ、位置関係などは、説明を明確にするため誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており詳細説明を適宜省略する。
【0010】
≪発光素子の製造方法≫
[第1実施形態]
図1A~5に示すように、発光素子の製造方法は、ウエハ1を支持基板3に仮固定する工程(仮固定工程S101)と、ウエハ1に割断起点部11を形成する工程(割断起点部形成工程S102)と、ウエハ1を複数の発光素子4に個片化する工程(個片化工程S103)と、複数の発光素子4と両面テープ2とを支持基板3から剥離する工程(支持基板分離工程S104)と、複数の発光素子4を両面テープ2から剥離する工程(発光素子剥離工程S105)と、を含む。
以下、各工程について説明する。
【0011】
<仮固定工程>
仮固定工程S101は、
図1Aおよび
図1Bに示すように、基板と半導体層とを備えるウエハ1の半導体層側を常温からの加熱により損失正接が大きくなる両面テープ2によって支持基板3に仮固定する工程である。
【0012】
ウエハ1としては特に限定されるものではなく、従来公知のウエハ1を用いることができる。ウエハ1としては、例えば、サファイア基板上にGaN系半導体を積層して、サファイア基板の縦横方向に複数個の発光素子部を整列配置したものが挙げられる。
【0013】
両面テープ2としては、常温からの加熱により損失正接が大きくなるものを用いる。ここで、常温からの加熱により損失正接が大きくなるとは、加熱により(高分子材料である)テープが、弾性よりも粘性が支配的な変形挙動をすることを意味する。また、ここでいう損失正接が大きくなるとは、具体的には、例えば、損失正接が0.3以上になることである。また、加熱の際の温度は、例えば、40~80℃である。
【0014】
ウエハ1を割断する際、両面テープ2に十分な変位が与えられない場合(両面テープ2が弾性変形の挙動が支配的な場合)は割断しにくくなり、割断歩留りが悪くなる(割断不良となる)。一方、両面テープ2に十分な変位が与えられる場合(両面テープ2が粘性変形の挙動が支配的な場合)はウエハ1を割断しやすくなるが、ウエハ1の反りの力に負けてウエハ1がフラットな状態を維持できない。そのため、割断起点部11を形成する工程で割断起点部11を所定の深さに形成しにくくなる。
これに対し、常温からの加熱により損失正接が大きくなる両面テープ2を用いると、割断起点部11を形成する際には、加熱される前なので両面テープ2が損失正接が小さい(弾性変形の挙動が支配的な)状態となるため割断起点部11を所定の深さに形成しやすい。一方、ウエハ1を割断する際には、加熱することによって両面テープ2が損失正接が大きい(粘性変形の挙動が支配的な)状態となるため、割断しやすくなる。
【0015】
ここで損失正接とは、材料の力学特性に対する粘性の寄与を、弾性の寄与で割ったものである。具体的には、損失正接=損失弾性率/貯蔵弾性率であり、損失弾性率が粘性に対する指標であり、貯蔵弾性率が弾性に対する指標である。損失正接は、粘弾性測定装置で測定することができ、その装置には、例えば日立ハイテクサイエンス製 DMS6100が挙げられる。本明細書の損失正接の数値はこの装置を用いて、周波数10Hzの条件で測定したものである。
【0016】
両面テープ2としては、常温からの加熱により損失正接が大きくなるものであれば特に限定されるものではない。しかしながら、
図6に示すように、両面テープ2は、基材フィルム22の一方の面に形成されたアクリル系粘着層21と、基材フィルム22の他方の面に形成された熱発泡剤含有粘着層23と、を含むものが好ましい。この両面テープ2は、アクリル系粘着層21をウエハ1に接着し、熱発泡剤含有粘着層23を支持基板3に接着する。両面テープ2のウエハ1と接着する面の面積は、ウエハ1の両面テープ2と接着する面の面積よりも大きく形成されている。
アクリル系粘着層21は、ウエハ1の半導体層に接着しやすく、また、耐衝撃性、耐水性、耐湿性などに優れる。熱発泡剤含有粘着層23は、加熱前(発泡前)は耐剥離性に優れ、加熱後(発泡後)は剥離が容易になるので、ウエハ1を支持基板3に仮固定しやすく、また、個片化後に、複数の発光素子4と両面テープ2とからなる発光素子載置テープ5(
図3B参照)を支持基板3から剥離しやすい。
両面テープ2としては、例えば、ニッタ株式会社製のインテリマー(登録商標)テープが挙げられる。
【0017】
支持基板3としては特に限定されるものではなく、例えば、ステンレス基板が挙げられる。また、支持基板3の厚みは、例えば、0.1~2mmである。
【0018】
ウエハ1を支持基板3に仮固定する際には、ウエハ1の半導体層側に両面テープ2の一方の面を貼り付けてから、両面テープ2の他方の面を支持基板3に貼り付けてもよいし、両面テープ2の他方の面を支持基板3に貼り付けてから、両面テープ2の一方の面にウエハ1の半導体層側を貼り付けてもよい。
【0019】
ここで、仮固定とは、複数の発光素子4と両面テープ2とからなる発光素子載置テープ5を支持基板3から剥離できる状態で支持基板3に固定されていることを意味する。発光素子載置テープ5は、ウエハ1の個片化後には、支持基板3から剥離しやすくなる状態で支持基板3に固定されている。なお、ウエハ1も、両面テープ2から剥離することができるように、両面テープ2の一方の面に仮固定されている。
【0020】
<割断起点部形成工程>
割断起点部形成工程S102は、
図2A、2Bに示すように、ウエハ1に、常温で複数の発光素子4に分割するための割断起点部11を形成する工程である。
割断起点部形成工程S102では、両面テープ2の損失正接が大きくならない温度(第1の温度)で割断起点部11を形成する。ここで第1の温度は、常温で、例えば、20℃であり、15~25℃であればよい。第1の温度で割断起点部11を形成することで、前記したとおり、割断起点部11を所定の深さに形成しやすくなる。損失正接の具体的な数値としては、0.2以下である。
【0021】
割断起点部11は、例えば、支持基板3に仮固定されたウエハ1にレーザ光40を照射することでウエハ1の内部に形成することができる。なお、
図2Aでは、割断起点部11を形成する工程をわかりやすくするため、便宜上、ウエハ1の上面に割断起点部11を連続する線として図示している。また、
図2Bでは、割断起点部11の状態をわかりやすくするため、模式的に厚み方向に線として図示している。
【0022】
具体的には、まず、ウエハ1が仮固定された支持基板3を真空吸着テーブルに固定する。次に、チップ化する際のウエハ1を割断する部位(割断領域部)において基板の内部を焦点とするように、レーザ光40を基板側から照射する。これにより、基板の内部に変質部(内部加工層)を形成する。この変質部は基板の厚み方向、つまり基板の主面に対して略垂直な方向に延伸する割断溝である。割断起点部形成工程S102においてレーザ光40を用いることで、割断起点部11を容易に形成することができる。
【0023】
レーザ光40は、パルスレーザを発生するレーザ、多光子吸収を起こさせることができる連続波レーザなど、種々のものを用いることができる。中でも、フェムト秒レーザ、ピコ秒レーザ、ナノ秒レーザ等のパルスレーザを発生させるものが好ましい。また、その波長は特に限定されるものではなく、例えば、Nd:YAGレーザ、Nd:YVO4レーザ、Nd:YLFレーザ、チタンサファイアレーザなどによる種々のものを利用することができる。
【0024】
従来の技術では、ダイシングシートにウエハを貼り付け、このダイシングシートを真空吸着テーブルに固定してウエハに割断起点部を形成する方法が用いられている。しかし、割断起点部を形成する際に割断溝に沿ってウエハに割れが生じた場合、ダイシングシートにはテンションがかかっているため、割れが生じた部位(以下、適宜、割れ部という)が広がりやすく、また、基板を薄く加工するほど、ウエハが反り上がるので、割れ部が広がりやすい。これにより、ウエハを個片化する前に取得したダイス位置情報がずれて、本来狙った位置に割断起点部を形成できずに、電極層にダメージを与える場合がある。さらに、真空吸着を解放した時に割れ部がさらに広がり、この部位が開口してしまう(割れ部の幅が大きくなる)。また、ウエハを個片化する工程で、所定の位置でブレードによる適切な荷重と変位を与えられないために、割断不良が発生する。
【0025】
これに対し、本実施形態では、ウエハ1を支持基板3に仮固定しているため、割断起点部11を形成する際に仮にウエハ1に割れが生じた場合、真空吸着を解放した時に割れ口が広がることがない。そのため、ウエハ1の割断が行いやすく、上記不具合の発生を防止することができる。
【0026】
<個片化工程>
個片化工程S103は、
図3Aおよび
図3Bに示すように、両面テープ2を常温から加熱して、支持基板3上でウエハ1を複数の発光素子4に個片化する工程である。
個片化工程S103では、両面テープ2の損失正接が大きくなる温度(第2の温度)でウエハ1を複数の発光素子4に個片化する。ここで、第2の温度は、第1の温度よりも高い温度であり、例えば、40~80℃である。第2の温度でウエハ1を個片化することで、前記したとおり、両面テープ2が粘性変形が支配的な状態となっているため、ブレードによる切断時の降下移動ができやすく、割断ブレードからの衝撃が緩和され割断起点部11に適度な力が与えられ、クラックの伸展を促して、ウエハ1を割断しやすくなる。
【0027】
加熱は、例えば、加熱機能を有するプレート上に、ウエハ1が仮固定された支持基板3を載置し、プレートを加熱してプレートからの熱を支持基板3を通して間接的に両面テープ2に伝えることで行うことができる。
【0028】
そして、個々の発光素子4となるように割断領域部でウエハ1を割断し、チップ状に分割する。ウエハ1の割断は、例えば、スクライブやダイシングにより行うことができる。なお、
図3Aでは、一例としてブレード50を用いたダイシングによりウエハ1を割断している状態を図示しており、便宜上、ウエハ1の上面の一部に割断起点部11を連続する線として図示している。なお、ウエハ1の割断は、CO
2レーザにより行ってもよい。
【0029】
<支持基板分離工程>
支持基板分離工程S104は、
図3Cに示すように、複数の発光素子4と両面テープ2とからなる発光素子載置テープ5を支持基板3から剥離する工程である。
発光素子載置テープ5は支持基板3に仮固定された状態であるため、支持基板分離工程S104では、発光素子載置テープ5を支持基板3から容易に分離することができる。なお、前記したように、熱発泡剤含有粘着層23が支持基板3に接着された両面テープ2を用いることで、両面テープ2を加熱した後の支持基板分離工程S104において、発光素子載置テープ5を支持基板3から剥離しやすくなる。
【0030】
<発光素子剥離工程>
発光素子剥離工程S105は、複数の発光素子4を両面テープ2から剥離する工程である。
発光素子剥離工程S105では、まず、
図4Aに示すように、支持基板3から剥離した発光素子載置テープ5を検査・分類工程用のシート60に貼り替える。この際、発光素子4側を検査・分類工程用のシート60に仮固定する。次に、
図4Bに示すように、両面テープ2を剥がすことで、複数の発光素子4を両面テープ2から剥離する。
検査・分類工程用のシート60は、基材上に設けられた粘着層61と、粘着層61の周縁に設けられたフレーム62とを備える。
【0031】
そして、複数の発光素子4が仮固定された検査・分類工程用のシート60は、次工程に送られ、不良の発光素子4が選別されて除去される。
なお、発光素子の製造方法は、ウエハ1の基板を研削することを含むようにしてもよい。以下、第2実施形態について説明する。
【0032】
[第2実施形態]
第2実施形態は、
図7および
図8に示すように、仮固定工程S101の後であって、割断起点部形成工程S102の前に、ウエハ1の基板を研削によって薄層化する工程(研削工程S201)を含む。基板の研削は、研削機70を用いて行うことができる。なお、研削の後に、さらに基板を研磨する工程を行ってもよい。
【0033】
基板を研削することによって基板を薄層化することができるため、ウエハ1を割断しやすくなる。
また、従来の技術では、ダイシングシートにウエハを貼り付け、このダイシングシートを真空吸着テーブルに固定して研削・研磨を行う方法が用いられている。しかし、この方法では、加工負荷が大きくウエハが変形しやすいため、基板を薄層化するすると割れが生じやすくなる。また、研削・研磨の際にウエハに割れが生じた場合、真空吸着を解放した時に割れが生じた部位(割れ部)が広がり、この部位が開口してしまう(割れ部の幅が大きくなる)。これにより、ウエハを新しいダイシングシートに貼り替える必要が生じる。また、この際、ウエハの分割処理が必要となり、場合によっては、ウエハの多くの部分を廃棄する必要がある。
【0034】
これに対し、本実施形態では、ウエハ1を支持基板3に仮固定しているため、ウエハ1が支持基板3にしっかりと固定され、基板を薄層化しても割れが生じにくい。また、研削・研磨の際にウエハ1に割れが生じた場合、真空吸着を解放した時に割れ口が広がることがない。また、割れが生じたウエハ1をそのまま次工程へ送ることができるため、割れたウエハ1を処理する工程を簡略化でき、量産性が向上する。また、割れにより不良となった発光素子4のみを除去すればよいため、ウエハ1の廃棄面積が減少して歩留りが向上する。
【0035】
また、従来の技術として、ワックス状の粘着剤でウエハを台座に固定し、基板を研削・研磨した後にウエハを台座から剥離する方法もある。しかし、この方法では、厚いウエハを良好に研削・研磨することが難しく、また、ウエハの鏡面研磨を良好に行いにくいといった問題があった。
これに対し、本実施形態では、ウエハ1を支持基板3に仮固定しているため、厚いウエハ1を良好に研削・研磨することができ、また、ウエハ1の鏡面研磨を行いやすく、量産性が向上する。
【0036】
研削工程S201は、両面テープ2を冷却しながらウエハ1の基板を研削することが好ましい。
従来のダイシングシートを用いた技術では、研削を行う際の加工熱の影響でダイシングシートの温度が高くなり損失正接が大きくなる。そのため、ウエハの割れを生じることなく、基板を薄層化することが難しい。これに対し、本実施形態では、両面テープ2を冷却しながら基板を研削することで、両面テープ2の損失正接が大きくならない。そのため、両面テープ2が研削に適した硬さであるので、安定して研削しやすくなり、ウエハ1の割れの発生を抑制することができる。
【0037】
冷却温度は、例えば、0~15℃である。
両面テープ2の冷却は、例えば、冷気を発生することができる冷却機構に支持基板3を接続したり、冷却機構からの冷気を支持基板3に吹き付けたりすることで支持基板3を冷却することで行うことができる。このようにして支持基板3を冷却することで、支持基板3からの冷気を支持基板3を通して間接的に両面テープ2に伝え、両面テープ2を冷却することができる。
また、例えば、冷却機能を有する真空吸着テーブルを使用し、真空吸着テーブルを冷却して真空吸着テーブルからの冷気を支持基板3を通して間接的に両面テープ2に伝えることで、両面テープ2を冷却することができる。
【0038】
[他の実施形態]
前記した実施形態では、ウエハ1を複数の発光素子4に個片化した後、発光素子載置テープ5を支持基板3から剥離し、検査・分類工程用のシート60に貼り替えてから、不良の発光素子4を選別して除去することとした。しかしながら、不良の発光素子4を選別する工程は、支持基板3上で行うこととしてもよい。すなわち、
図9に示すように、個片化工程S103の後、支持基板分離工程S104の前に、選別工程S202を行ってもよい。
選別工程S202では、予め不良の発光素子4を支持基板3上で選別して、不良の発光素子4を確認しておく。そして、発光素子載置テープ5を支持基板3から剥離した後、予め選別して確認しておいた不良の発光素子4を使用しないようにすることで、結果的に不良の発光素子4を除去することとなる。そのため、検査・分類工程用のシート60に貼り替える必要がなく、工程を簡略化することができる。なお、不良の発光素子4の選別は、発光素子4の映像から画像処理により行うことや、目視により行うなど、従来と同じ方法により行うことができる。
【0039】
また、発光素子の製造方法は、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間、あるいは前後に、他の工程を含めてもよい。例えば、製造途中に混入した異物を除去する異物除去工程などを含めてもよい。
【0040】
以上説明したとおり、本実施形態の発光素子の製造方法は、作業性に優れている。
また、ウエハの反りが大きい場合、ダイシングシートにウエハを貼り付ける従来の技術では、製造途中に割れが生じた場合、割れ部が広がりやすい。割れ部が広がると、前記したとおり、種々の問題を生じる。すなわち、ウエハの貼り替えが必要となったり、ウエハの廃棄面積が大きくなったり、ウエハを個片化する際にダイスエッジの傷やブレードの欠けが生じるなどの不具合が生じたりする。その他、ウエハに割断起点部を形成する前に割れ部が広がると、割断起点部の形成が行えなくなる場合がある。特に、CMP(Chemical Mechanical Polishing(化学的機械的研磨))処理や、成膜処理を施したウエハは、反りが大きくなり、割れ部が広がりやすい。
【0041】
これに対し、本実施形態では、ウエハを支持基板に仮固定しているため、ウエハに割れが生じても、割れ部が広がることがなく、前記した問題が生じない。
【0042】
また、本実施形態の発光素子の製造方法は、支持基板に両面テープを貼り付けているため、支持基板を介して安定した両面テープの加熱および冷却が行いやすい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本実施形態の発光素子の製造方法で製造された発光素子は、液晶ディスプレイのバックライト光源、各種照明器具、大型ディスプレイなど、種々の光源に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ウエハ
2 両面テープ
3 支持基板
4 発光素子
5 発光素子載置テープ
11 割断起点部
21 アクリル系粘着層
22 基材フィルム
23 熱発泡剤含有粘着層
40 レーザ光
50 ブレード
60 検査・分類工程用のシート
61 粘着層
62 フレーム
70 研削機
A 割断したウエハの一部