IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特許7041393水性インク用樹脂エマルション、水性インクジェット用インク、記録装置、及び記録方法
<>
  • 特許-水性インク用樹脂エマルション、水性インクジェット用インク、記録装置、及び記録方法 図1
  • 特許-水性インク用樹脂エマルション、水性インクジェット用インク、記録装置、及び記録方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】水性インク用樹脂エマルション、水性インクジェット用インク、記録装置、及び記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20220316BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20220316BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20220316BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220316BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
C09D11/30
C08L75/04
C08L67/02
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018107397
(22)【出願日】2018-06-05
(65)【公開番号】P2019210374
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】宮越 亮
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 大輔
(72)【発明者】
【氏名】廣川 悠哉
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-001378(JP,A)
【文献】特開2017-082189(JP,A)
【文献】特開2012-025947(JP,A)
【文献】特開2017-222793(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103555065(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0025038(US,A1)
【文献】特開2013-010816(JP,A)
【文献】特開2015-030853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-11/54
C08L 67/02,75/04
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子を含む水性インク用樹脂エマルションであって、
前記樹脂粒子が、ポリカーボネートを構造単位に含んだポリウレタンセグメントと芳香族含有ポリエステルセグメントとを有する複合樹脂粒子であり、
前記樹脂粒子中の前記ポリエステルセグメントの含有率が50質量%以上、90質量%未満である水性インク用樹脂エマルション。
【請求項2】
前記樹脂粒子中の前記ポリエステルセグメントの含有率が50質量%以上、75質量%以下である請求項1に記載の水性インク用樹脂エマルション。
【請求項3】
前記樹脂粒子中の前記ポリエステルセグメントの含有率が55質量%以上、70質量%以下である請求項1または2に記載の水性インク用樹脂エマルション。
【請求項4】
樹脂粒子を含む水性インク用樹脂エマルションであって、
前記樹脂粒子が、ポリカーボネートを構造単位に含んだポリウレタンセグメントと芳香族含有ポリエステルセグメントとを有する複合樹脂粒子であり、
前記樹脂粒子中の前記ポリエステルセグメントの含有率が25質量%より大きく、90質量%未満であり、
前記ポリウレタンセグメントが3価以上のポリアミンにより架橋されている水性インク用樹脂エマルション。
【請求項5】
樹脂粒子を含む水性インク用樹脂エマルションであって、
前記樹脂粒子が、ポリカーボネートを構造単位に含んだポリウレタンセグメントと芳香族含有ポリエステルセグメントとを有する複合樹脂粒子であり、
前記樹脂粒子中の前記ポリエステルセグメントの含有率が25質量%より大きく、90質量%未満であり、
前記樹脂粒子のガラス転移温度が30℃以上100℃以下である水性インク用樹脂エマルション。
【請求項6】
樹脂粒子を含む水性インク用樹脂エマルションであって、
前記樹脂粒子が、ポリカーボネートを構造単位に含んだポリウレタンセグメントと芳香族含有ポリエステルセグメントとを有する複合樹脂粒子であり、
前記樹脂粒子中の前記ポリエステルセグメントの含有率が25質量%より大きく、90質量%未満であり、
前記ポリエステルセグメントのガラス転移温度が30℃以上100℃以下である水性インク用樹脂エマルション。
【請求項7】
前記ポリウレタンセグメントが脂肪族ポリカーボネートを構造単位に含んでいる請求項1~6のいずれかに記載の水性インク用樹脂エマルション。
【請求項8】
色材、界面活性剤、および樹脂エマルションを含む水性インクジェット用インクであって、前記樹脂エマルションが請求項1~7のいずれかに記載の水性インク用樹脂エマルションである水性インクジェット用インク。
【請求項9】
請求項8に記載の水性インクジェット用インクを吐出ヘッドから吐出させて記録媒体に情報又は画像を記録するインク吐出手段を有する記録装置。
【請求項10】
請求項8に記載の水性インクジェット用インクにインク吐出手段を介して刺激を印加し、吐出ヘッドから該水性インクジェット用インクを吐出させて記録媒体に情報又は画像を記録するインク吐出工程を含む記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性インク用樹脂エマルション、水性インクジェット用インク、記録装置、及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有しており、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。
また近年では、家庭用のみならず商業用途や産業用途にもインクジェット技術が利用されてきている。
【0003】
インクジェット用インクとしては、従来、その発色性の良さや信頼性の高さ等の点から染料インクが主流であったが、染料インクは耐水性や耐光性が劣るという欠点を有していることから、近年では、顔料インクが用いられることが多くなってきている。
しかしながら、顔料インクにより印刷された印刷物では、顔料インクが記録媒体の最表面に付着しているため剥がれ落ちやすく、耐擦性に劣るという問題がある。
【0004】
また近年では、商業印刷用途に用いられるインク吸収性の低い印刷用塗工紙に対しても、インクジェット記録方法により、従来のオフセット印刷並の画質を実現することが求められるようになっている。
しかしながら、前記印刷用塗工紙はインクを吸収し難いため、画像の耐擦性の低下や、印刷物を重ね合わせた際に印刷物の接触面同士が貼り付くブロッキング現象が生じる問題がある。
【0005】
このようなことから、塗工紙を用いる高速印字システムにおいては、高画質化と共に、耐擦性の飛躍的な向上が求められている。
例えば、特許文献1には、耐擦性に優れた高発色の印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インク用バインダーとして、芳香族ポリエステルポリオールと、前記芳香族ポリエステルポリオール以外の親水性基含有ポリオールと、を含むポリオール及びポリイソシアネートを反応させることによって得られるポリウレタン、ならびに、水性媒体を含み、前記芳香族ポリエステルポリオールが、芳香族構造を1000mmol/kg~5000mmol/kg有するものであることを特徴とするインクジェット印刷インク用バインダーが開示されている。また、特許文献2には、変形可能な基材上にて画像の堅牢性を高めるべく、ポリエステル樹脂のエマルションと、ポリウレタンエラストマーのエマルションと、顔料分散物と、界面活性剤とを含む、伸長可能なインク組成物について記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、密着性、及び耐擦過性に優れた水性インクとして、着色剤と、ポリエステルセグメントとポリウレタンセグメントとを有する複合樹脂と、を含有し、前記複合樹脂中のポリエステルセグメント/ポリウレタンセグメントの質量比率が、20/80以上95/5以下であり、前記ポリウレタンセグメントが、ポリエーテルポリオールを含むポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応物であるポリウレタンである、水系インクが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のインクでは、インク吸収性の低いメディアを用いる高速印字システムにおいて、耐擦性と耐ブロッキング性および水性インクとしての長期に渡る高い保存安定性とが十分なレベルとは言えない場合があった。
本発明は、耐擦性と耐ブロッキング性および保存安定性に優れた水性インクを得ることができる水性インク用樹脂エマルションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としての本発明の水性インク用樹脂エマルションの一態様は、樹脂粒子を含む水性インク用樹脂エマルションであって、前記樹脂粒子が、ポリカーボネートを構造単位に含んだポリウレタンセグメントと芳香族含有ポリエステルセグメントとを有する複合樹脂粒子であり、前記樹脂粒子中の前記ポリエステルセグメントの含有率が25質量%より大きく、90質量%未満である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐擦性と耐ブロッキング性および保存安定性に優れた水性インクを得ることができる水性インク用樹脂エマルションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のインクを用いる記録装置の一例を示す図である。
図2】本発明のインクを収容するメインタンクの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、本発明は、下記(1)に示される水性インク用樹脂エマルションに係るものであるが、発明の実施形態としては下記の(2)~(10)を含むものである。
(1)樹脂粒子を含む水性インク用樹脂エマルションであって、
前記樹脂粒子が、ポリカーボネートを構造単位に含んだポリウレタンセグメントと芳香族含有ポリエステルセグメントとを有する複合樹脂粒子であり、
前記樹脂粒子中の前記ポリエステルセグメントの含有率が25質量%より大きく、90質量%未満である水性インク用樹脂エマルション。
(2)前記樹脂粒子中の前記ポリエステルセグメントの含有率が50質量%以上、75質量%以下である前記(1)に記載の水性インク用樹脂エマルション。
(3)前記樹脂粒子中の前記ポリエステルセグメントの含有率が55質量%以上、70質量%以下である前記(1)または(2)に記載の水性インク用樹脂エマルション。
(4)前記ポリウレタンセグメントが3価以上のポリアミンにより架橋されている前記(1)~(3)のいずれかに記載の水性インク用樹脂エマルション。
(5)前記樹脂粒子のガラス転移温度が30℃以上100℃以下である前記(1)~(4)のいずれかに記載の水性インク用樹脂エマルション。
(6)前記ポリエステルセグメントのガラス転移温度が30℃以上100℃以下である前記(1)~(5)のいずれかに記載の水性インク用樹脂エマルション。
(7)前記ポリウレタンセグメントが脂肪族ポリカーボネートを構造単位に含んでいる前記(1)~(6)のいずれかに記載の水性インク用樹脂エマルション。
(8)色材、界面活性剤、および樹脂エマルションを含む水性インクジェット用インクであって、前記樹脂エマルションが前記(1)~(7)のいずれかに記載の水性インク用樹脂エマルションである水性インクジェット用インク。
(9)前記(8)に記載の水性インクジェット用インクを吐出ヘッドから吐出させて記録媒体に情報又は画像を記録するインク吐出手段を有する記録装置。
(10)前記(8)に記載の水性インクジェット用インクにインク吐出手段を介して刺激を印加し、吐出ヘッドから該水性インクジェット用インクを吐出させて記録媒体に情報又は画像を記録するインク吐出工程を含む記録方法。
【0012】
本発明の水性インク用樹脂エマルションは、樹脂粒子を含む水性インク用樹脂エマルションであって、前記樹脂粒子が、ポリカーボネートを構造単位に含んだポリウレタンセグメントと芳香族含有ポリエステルセグメントとを有する複合樹脂粒子であり、前記樹脂粒子中の芳香族ポリエステルセグメントの含有率が25質量%より大きく、90質量%未満である。
前記樹脂粒子は、ポリウレタンセグメントとしてポリカーボネートを構成単位に含むことでじん性が高く、耐擦性に優れ、芳香族含有ポリエステルセグメントを構成単位に含むことで硬度が高く、高温下でのブロッキングに優れる。また、前記樹脂粒子は同一粒子中に前記ポリウレタンセグメントと前記ポリエステルセグメントが併存しており、かつ前記ポリエステルセグメントが直鎖状であり(即ち、分岐構造を有しない)、前記ポリウレタンセグメントがセミIPN構造(半相互侵入高分子網目構造:semi-interpenetrating polymer network structure)を有していることが好ましい。同一粒子中で前記セミIPN構造を有することでポリマー成分の偏在が抑制され、耐擦性と耐ブロッキング性に優れるものと考えられる。
【0013】
<樹脂エマルション>
本発明の樹脂エマルションは、樹脂粒子を含む水性インク用樹脂エマルションであって、前記樹脂粒子が、前記ポリカーボネートを構造単位に含んだポリウレタンセグメントと芳香族含有ポリエステルセグメントを有する複合樹脂であり、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
本発明において、樹脂エマルションとは、樹脂粒子が水性媒体中に分散したものを言い、樹脂粒子が固体、液体かは問わない。また、水性媒体、水性インクにおける水性とは、水もしくは親水性溶剤を主成分として含むことを言い、水と親水性溶剤を共に含んでいてもよい。
【0014】
本発明の水性インクは、色材、界面活性剤、および樹脂エマルションを含み、前記樹脂エマルションが前記複合樹脂粒子を含む。
インク中に含有する前記樹脂エマルションの添加形態としては、特に制約はないが、樹脂粒子を水性媒体中で分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂エマルションとしては、本発明の樹脂エマルションを用いることができる。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
前記樹脂粒子を水性媒体中に分散させる方法としては、分散剤を用いる強制乳化法や、樹脂にアニオン性基を含有させたものを使用する自己乳化法が挙げられる。前記強制乳化法の場合、塗膜に分散剤が残り、塗膜強度を下げるおそれがあることから、自己乳化法を用いることが好ましい。
前記アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基などが挙げられる。これらの中でも、一部又は全部、特に好ましくは全部が塩基性化合物等により中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが好ましい。
前記アニオン性基の中和に使用可能な中和剤としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン等の塩基性化合物、Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基化合物などが挙げられる。
【0016】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。尚、この場合の固形分の粒径(D50)と粒径(D90)は体積基準の粒子径のことをいう。
【0017】
ポリカーボネートを構造単位に含んだポリウレタンセグメントと芳香族ポリエステルセグメントとを有する複合樹脂の作製手法には特に制限はないが、前記ポリウレタンセグメントとなるポリウレタンと前記ポリエステルセグメントとなるポリエステルとを混合した後に転相乳化法によって得ることが好ましい。例えば、ポリウレタンとポリエステルを無溶剤下又は有機溶剤存在下で混合し、樹脂中のアニオン性基を必要に応じて前記中和剤により中和し、その後水を入れて分散させ、最後に必要に応じて系内の有機溶剤を除去することによって得ることができる。必要に応じて、有機溶剤を除去する前に、3価以上のポリアミン(以下、多価アミンともいう)を添加することにより、ポリウレタンセグメント末端のイソシアネート基を多価アミンで架橋させることもできる。
前記ポリウレタンは末端にイソシアネート基を有することが好ましく、前記ポリエステルは末端がヒドロキシル基かカルボキシル基であることが好ましい。これによりポリウレタンがポリアミンと反応することで前記IPN構造を形成することができ、耐擦性と耐ブロッキング性が良好となる。
この際、使用可能な有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン等のアミド類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
なお、前記複合樹脂粒子中のポリエステルセグメントの含有率は25質量%より大きく、90質量%未満であることが必要であり、50質量%以上、75質量%以下であることが好ましく、55質量%以上、70質量%以下であることがより好ましい。
複合樹脂粒子中のポリエステルセグメントの含有率は、樹脂を単離し、IRやNMRにより樹脂の組成比を決定することができる。
前記樹脂粒子のガラス転移温度はエマルション溶液から分散媒を除去することで得られる乾固物のガラス転移温度を指し、前記複合樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃以上100℃以下が好ましく、40℃以上80℃以下がより好ましい。
【0019】
ポリウレタンセグメントが多価アミンにより架橋されていること、ポリウレタンセグメントが脂肪族ポリカーボネートを構造単位に含んでいることは、樹脂エマルションまたは、インクより抽出された樹脂エマルションのGC-MSおよびLC-MSにより成分解析可能であり、ポリエステルセグメントのガラス転移温度は、GC-MSおよびLC-MSによる組成解析から算出される重合度より算出することができる。
【0020】
<ポリウレタン>
前記ポリウレタンの酸価は、10mgKOH/g以上40mgKOH/g以下が好ましい。前記数値範囲とすることにより、優れた力学強度を有し、耐擦性、及び耐ブロッキング性に優れた画像を形成することができる。前記酸価が10mgKOH/g以上であると、分散安定性が良好となり、またその影響で粒子が均一に充填され、均一な膜が形成でき、力学強度に優れた画像が形成できる。また、前記酸価が40mgKOH/g以下であると、力学強度に優れた膜が形成でき、親水性が適正であり、耐水性が向上し、粒子としての安定性が良好となる。
【0021】
前記ポリウレタンの酸価の測定方法は、例えば、ポリウレタンをテトラヒドロフラン(THF)溶液に入れ、0.1Mの水酸化カリウムメタノール溶液を用いて滴定することで、ポリウレタンの酸価を測定することができる。
【0022】
前記ポリウレタンのガラス転移温度(Tg)は-40以上40℃以下であることが好ましい。前記範囲とすることにより、耐擦性、光沢性に優れた画像を形成可能なインクを得ることができる。
【0023】
ポリウレタン粒子の製造方法については、従来一般的に用いられている方法を用いることができ、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、無溶剤下又は有機溶剤存在下で、ポリマーポリオール(A)、短鎖多価アルコール(B)、アニオン性基を有する多価アルコール(C)とポリイソシアネート(D)を反応させて、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを製造する。
次いで、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー中のアニオン性基を必要に応じて前記中和剤により中和し、その後ポリアミンと反応さて鎖伸長反応を行い、更に水を入れて分散させ、最後に必要に応じて系内の有機溶剤を除去することによって得ることができる。
【0024】
この際、使用可能な有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン等のアミド類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
構成比率として、[Cのモル数/(Aのモル数+Bのモル数+Cのモル数)]は、0.15以上0.5以下が好ましく、0.2以上0.5以下が好ましく、0.25以上0.4以下がより好ましい。
前記構成比率の範囲を上回る場合、過度な親水性の影響によって、脆性の著しいインク膜となること、画像の耐水性が低下すること、粒子の過度な微細化によるインクの増粘などに繋がる。一方、前記範囲を下回る場合、分散安定性に劣る場合がある。
[Dの当量数/(Aの当量数+Bの当量数+Cの当量数)]は、1.05以上1.6以下が好ましく、1.05以上1.5以下がより好ましく、1.1以上1.25以下が特に好ましい。
前記範囲とすることにより、力学強度に優れた膜を得ることができ、耐ブロッキング性と耐擦性に優れた画像を形成することができる。
【0026】
前記ポリマーポリオール(A)としては、ポリカーボネート系ポリマーポリオールが好ましく、脂肪族ポリカーボネートからなるポリオールがより好ましい。これは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。併用可能な樹脂としては、例えば、ポリエーテル系ポリマーポリオール、ポリエステル系ポリマーポリオール、ポリカプロラクトン系ポリマーポリオールなどが挙げられる。
前記ポリマーポリオールの重量平均分子量は500以上15,000以下が好ましく、500以上10,000以下がより好ましく、1,000以上5,000以下が特に好ましい。前記数値範囲とすることで、好適なガラス転移温度(Tg)を有し、かつ優れた強度と優れた伸度を有し、好適な破断エネルギーを有するインク膜を得ることができる。
【0027】
前記短鎖多価アルコール(B)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の炭素数2~15の多価アルコール類などが挙げられる。
【0028】
前記アニオン性基を有する多価アルコール(C)としては特に限定はないが、2つ以上のヒドロキシル基を有し、アニオン性基としてカルボン酸、スルホン酸などの官能基を有する材料を使用することができる。例えばジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、トリメチロールプロパン酸、トリメチロールブタン酸などカルボン酸基類や、1,4-ブタンジオール-2-スルホン酸等のスルホン酸基類が挙げられる。
【0029】
前記ポリイソシアネート(D)としては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4‘4’‘-とリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-ジクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネーネート等の脂環式ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
これらの中でも、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物が好ましく、脂環式ポリイソシアネート化合物がより好ましく、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
【0031】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類;ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン類;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類などが挙げられる。
【0032】
本発明におけるインクは、該インクに含まれる樹脂粒子のポリウレタンセグメントのウレタン基含有量を高めることで、ウレタン基の水素結合による高い凝集力により、強度と伸度の両方に優れた強靭な膜を得ることができ、耐ブロッキング性と耐擦性に優れた画像を形成することができる。
【0033】
前記ウレタン基の含有量は、例えば、次式のようにして計算することができる。
100×水酸基を含む化合物のモル数の総計×ウレタン基分子量
/ポリウレタン固形分総質量
【0034】
前記ポリウレタン粒子は、元来の特色の一つである水素結合に加えて、その分子構造内に、共有結合に由来する化学架橋を有することが好ましい。前記共有結合に由来する化学架橋を有することにより、前記ポリウレタン粒子の力学強度が優れたものとなり、最終的な画像として非常に耐擦性、及び耐ブロッキング性に優れたものを得ることができる。
【0035】
前記化学架橋を導入する方法としては、例えば、ポリマーポリオールの官能基数を2より大きくすること、3官能以上の短鎖多価アルコール、ポリイソシアネートを用いることなどが挙げられる。
前記の化学架橋を導入する方法は、何れか一つを単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
前記の化学架橋を導入する方法は、何れも好適に用いることができるが、架橋密度の観点からポリマーポリオールの官能基数を2より大きくする方法が特に好ましい。
【0036】
前記ポリマーポリオールの官能基数は、2より大きく2.5以下であることが好ましく、2.02以上2.15以下であることがより好ましい。
前記範囲とすることにより、力学強度に優れたポリウレタン粒子を得ることができ、耐擦性、及び耐ブロッキング性に優れた画像を形成することができる。
【0037】
前記ポリマーポリオールの官能基数を2より大きくすることは、官能基数が2であるポリマーポリオールと、官能基数が3以上であるポリマーポリオールの併用により達成することができる。
官能基数が2であるポリマーポリオールと、官能基数が3以上であるポリマーポリオールを併用したときの、ポリマーポリオール全体での官能基数は下記数式2により計算することができる。
<数式2>
ポリマーポリオール全体での官能基数=2×a+b×(1-a)
ただし、前記数式2中、aは下記数式3で表されるポリマーポリオール全体に対する官能基数が2であるポリマーポリオールの質量比であり、bは官能基数が3以上であるポリマーポリオールの官能基数であり、2とは官能基数が2であるポリマーポリオールの官能基数のことである。
<数式3>
a=c/(c+d)
ただし、前記数式3中、cは官能基数が2であるポリマーポリオールの質量であり、dは官能基数が3以上であるポリマーポリオールの質量である。
前記官能基数が3以上であるポリマーポリオールとしては、官能基数が3のポリマーポリオールであることが好ましい。
【0038】
<ポリエステル>
前記ポリエステルは、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸及び/又はその誘導体とを重縮合させて得られ、組成の一部あるいは全てに芳香族ユニットを有する。即ち、前記芳香族含有ポリエステルは、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸及び/又はその誘導体とを、構成成分として有する。
【0039】
-多価アルコール成分-
前記多価アルコール成分としては、2価のアルコール(ジオール)、具体的には、炭素数2~36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなど);炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなど);炭素数6~36の脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);前記脂環式ジオールの炭素数2~4のアルキレンオキシド〔エチレンオキシド(以下EOと略記する)、プロピレンオキシド(以下POと略記する)、ブチレンオキシド(以下BOと略記する)など〕付加物(付加モル数1~30);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30)などが挙げられる。
【0040】
また、前記の2価のジオールに加えて3価以上(3~8価またはそれ以上)のアルコール成分を含有してもよく、具体的には、炭素数3~36の3~8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオール及びその分子内若しくは分子間脱水物、例えば、グリセリン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、ジペンタエリスリトール;糖類及びその誘導体、例えば庶糖及びメチルグルコシド;など);前記脂肪族多価アルコールの炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数1~30);トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30);ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど:平均重合度3~60)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
-多価カルボン酸成分-
前記多価カルボン酸成分としては、2価のカルボン酸(ジカルボン酸)、具体的には、炭素数4~36のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アピジン酸、セバシン酸など)、アルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸など);炭素数4~36の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)など〕;炭素数4~36のアルケンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸など);炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの誘導体、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらの中でも、炭素数4~20のアルカンジカルボン酸、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。なお、前記多価カルボン酸成分としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)も挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このほか、ポリ乳酸やポリカーボネートジオールの如き開環重合系も好適に使用しうる。
【0042】
前記芳香族含有ポリエステルの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)500~15,000が好ましく、1,000~10,000がより好ましく、1,000~5,000が特に好ましい。
前記芳香族含有ポリエステルのガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃以上100℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。
前記芳香族含有ポリエステルの軟化温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上150℃以下が好ましい。
前記芳香族含有ポリステルの分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。
【0043】
前記芳香族含有ポリエステルの酸価は、5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下が好ましい。前期酸価が5mgKOH/g以上であると、分散安定性が良好となり、またその影響で粒子が均一に充填され、均一な膜が形成でき、力学強度に優れた画像が形成できる。また、前記酸価が30mgKOH/g以下であると、力学強度に優れた膜が形成でき、親水性が適正であり、耐水性が向上し、粒子としての安定性が良好となる。
前記芳香族含有ポリエステルの酸価の測定方法は、例えば、ポリエステルをテトラヒドロフラン(THF)溶液に入れ、0.1Mの水酸化カリウムメタノール溶液を用いて滴定することで、ポリエステルの酸価を測定することができる。
【0044】
芳香族含有ポリエステル粒子の製造方法については、従来一般的に用いられている方法を用いることができ、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、無溶剤下又は有機溶剤存在下で、前記多価アルコールと前記多価カルボン酸の重縮合により製造する。
また、前記芳香族含有ポリエステルの酸価は任意の方法で調整可能であり、例えば、得られた結晶性ポリエステルと多価カルボン酸、カルボン酸無水物を反応させることで酸価を付与することが可能である。
【0045】
<水性インクジェット用インク>
本発明の水性インクジェット用インク(以下、インクとも称す)は、色材、界面活性剤、および樹脂エマルションを含む水性インクであって、前記樹脂エマルションが樹脂粒子を含み、前記樹脂粒子がポリカーボネートを構造単位に含んだポリウレタンセグメントと芳香族含有ポリエステルセグメントとを有する複合樹脂粒子であり、前記樹脂粒子中の前記ポリエステルセグメントの含有率が25質量%より大きく、90質量%未満である。
【0046】
インクにおける前記複合樹脂粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
インクに含まれる全ての樹脂の合計量に対する前記複合樹脂粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、耐擦性の点から、25質量%以上95質量%以下が好ましい。
【0047】
本発明のインクは、色材、界面活性剤、樹脂エマルション以外に、有機溶剤、添加剤を含有してもよい。
以下、インクに用いる有機溶剤、水、色材、添加剤等について説明する。
【0048】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0049】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0050】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0051】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0052】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0053】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0054】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0055】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0056】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0057】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0058】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0059】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0060】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化1】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0061】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化2】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
一般式(F-2)
n2n+1-CH2CH(OH)CH2-O-(CH2CH2O)-Y
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCm2m+1でmは1~6の整数、又はCH2CH(OH)CH2-Cm2m+1でmは4~6の整数、又はCp2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0062】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0063】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0064】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0065】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0066】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0067】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0068】
<記録媒体>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である基材をいう。
前記非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
【0069】
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
【0070】
<記録物>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【0071】
<記録装置、記録方法>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について図1乃至図2を参照して説明する。図1は同装置の斜視説明図である。図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0072】
この記録装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0073】
なお、インクの使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
【0074】
本発明のインクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。さらに、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0075】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
【0076】
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例
【0077】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。「部」は、特に明示しない限り「質量部」を表す。「%」は、特に明示しない限り「質量%」を表す。
【0078】
以下の合成例、実施例、比較例における各種物性の測定方法を以下に示した。
<分子量>
装置:GPC(東ソー(株)製)、検出器:RI、測定温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン、流量:0.45mL/min.
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、夫々、分子量既知のポリスチレン試料によって作成した検量線を標準としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定される数平均分子量、重量平均分子量、分子量分布である。なお、カラムは排除限界6万のもの、2万のもの、1万のものを直列に繋いだものを使用した。
【0079】
<ガラス転移温度(Tg)>
樹脂エマルションもしくはインク4gを均一に広がるように容器に入れ、70℃で1週間乾燥後、固形物を得た。
測定サンプルについて、各々熱特性を示差走査熱量計(DSC)(TAインスツルメンツ社製Q2000)を用いて、以下の条件にて測定した。具体的には以下のようにして、測定した。
(測定条件)
サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(蓋有り)
サンプル量:5mg
リファレンスアルミニウム製サンプルパン(空の容器)
雰囲気:窒素(流量50mL/min)
開始温度:-20℃
昇温速度:10℃/min
終了温度:130℃
保持時間:1min
降温速度:10℃/min
終了温度:-50℃
保持時間:5min
昇温速度:10℃/min
終了温度:130℃
以上の測定条件にて、測定を行い、「吸発熱量」と「温度」とのグラフを作成した。
第一昇温過程にて観測される特徴的な変曲を、ガラス転移温度(Tg)とした。なお、Tgは、DSC曲線からミッドポイント法によって得た値を使用した。
【0080】
<インク中の固形分の体積平均粒径>
インク中の固形分の体積平均粒径は、ゼータ電位・粒径測定システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用いて、動的光散乱法により測定した。
まず、インク0.2gを取り、次に、イオン交換水を加えて20倍に希釈し、得られた溶液の一部を石英セルに入れ、サンプルホルダーにセットした。そして、温度:25℃、ダストカット(回数:5、Upper:5、Lower:100)、積算回数:70の条件で測定し、インク中の固形分の体積平均粒径を得た。
【0081】
<ポリエステル樹脂溶液Aの作製>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した2Lの四つ口フラスコに、ジオールとしてプロピレングリコール、並びに、ジカルボン酸としてテレフタル酸及びコハク酸を、モル比(テレフタル酸/コハク酸)=80/20、OH/COOH=0.8となるように仕込んだ。そして、反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、300ppm(モノマーに対して)のチタンテトライソプロポキシド添加し、窒素ガス気流下にて4時間程度で200℃まで昇温し、ついで、2時間かけて230℃に昇温し、流出物がなくなるまで反応を行った。その後、10mmHg~30mmHgの減圧下、4時間反応させて芳香族含有ポリエステルを得た。
得られた樹脂は、酸価(AV)14.9mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)61.0℃、重量平均分子量(Mw)7,600であった。
上記で得られた芳香族含有ポリエステルにアセトンを加え、攪拌することで固形量65%の芳香族含有ポリエステル樹脂溶液Aを得た。
【0082】
<ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂溶液Bの作製>
攪拌機、温度計、及び還流管を備えた1Lのセパラブルフラスコに、ポリカーボネートポリオールとしてT-5651(旭化成ケミカルズ株式会社製、カーボネート骨格を有し、両末端に水酸基を持った長鎖ジオール)100g、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸4.2g、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート42g、トリエチルアミン3.2g、及び有機溶剤としてアセトン79gを、窒素を導入しながら仕込み、触媒(ジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴加え、その後60℃に昇温して2時間還流させて、固形量65%にてNCO%が1.1%のポリカーボネート系ウレタン樹脂溶液Bを得た。
樹脂溶液を乾燥した後に得られた樹脂は、ガラス転移温度(Tg)-25.0℃、重量平均分子量(Mw)7,400であった。
【0083】
<ポリエーテル系ポリウレタン樹脂溶液Cの作製>
攪拌機、温度計、及び還流管を備えた1Lのセパラブルフラスコに、ポリエーテルポリオールとしてPTMG1000(和光純薬工業株式会社製)100g、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸4.2g、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート44g、トリエチルアミン3.2g、及び有機溶剤としてアセトン80gを、窒素を導入しながら仕込み、触媒(ジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴加え、その後60℃に昇温して2時間還流させて、固形量65%にてNCO%が1.2%のポリエーテル系ウレタン樹脂溶液Cを得た。
樹脂溶液を乾燥した後に得られた樹脂は、ガラス転移温度(Tg)-57.0℃、重量平均分子量(Mw)6,300であった。
【0084】
(実施例1)
<樹脂エマルション1の合成>
0.3Lのセパラブルフラスコに、芳香族ポリエステル樹脂とポリカーボネート系ウレタン樹脂の質量比が50/50になるように、芳香族含有ポリエステル樹脂溶液A60g、トリエチルアミン1.1g、ポリカーボネート系ウレタン樹脂溶液B60g、を加え、40℃に昇温した後に500rpmの速度で攪拌しながら水145gをゆっくり加えて微粒子化し、30分間加熱攪拌した後、ジエチレントリアミン0.54gを加え、2時間加熱攪拌した。最後にアセトンを除去することで、固形量35%で体積平均粒径(D50)が63nm、の樹脂粒子1を含む樹脂エマルション1を得た。乾燥後に得られた樹脂のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
【0085】
(実施例2)
<樹脂エマルション2の合成>
0.3Lのセパラブルフラスコに、芳香族ポリエステル樹脂とポリカーボネート系ウレタン樹脂の質量比が55/45になるように、芳香族含有ポリエステル樹脂溶液A66g、トリエチルアミン1.2g、ポリカーボネート系ウレタン樹脂溶液B54g、を加え、40℃に昇温した後に500rpmの速度で攪拌しながら水145gをゆっくり加えて微粒子化し、30分間加熱攪拌した後、ジエチレントリアミン0.49gを加え、2時間加熱攪拌した。最後にアセトンを除去することで、固形量35%で体積平均粒径(D50)が70nm、の樹脂粒子2を含む樹脂エマルション2を得た。乾燥後に得られた樹脂のガラス転移温度(Tg)は47℃であった。
【0086】
(実施例3)
<樹脂エマルション3の合成>
0.3Lのセパラブルフラスコに、芳香族ポリエステル樹脂とポリカーボネート系ウレタン樹脂の質量比が60/40になるように、芳香族含有ポリエステル樹脂溶液A72g、トリエチルアミン1.3g、ポリカーボネート系ウレタン樹脂溶液B48g、を加え、40℃に昇温した後に500rpmの速度で攪拌しながら水145gをゆっくり加えて微粒子化し、30分間加熱攪拌した後、ジエチレントリアミン0.43gを加え、2時間加熱攪拌した。最後にアセトンを除去することで、固形量35%で体積平均粒径(D50)が70nm、の樹脂粒子3を含む樹脂エマルション3を得た。乾燥後に得られた樹脂のガラス転移温度(Tg)は47℃であった。
【0087】
(実施例4)
<樹脂エマルション4の合成>
0.3Lのセパラブルフラスコに、芳香族ポリエステル樹脂とポリカーボネート系ウレタン樹脂の質量比が70/30になるように、芳香族含有ポリエステル樹脂溶液A84g、トリエチルアミン1.5g、ポリカーボネート系ウレタン樹脂溶液B36g、を加え、40℃に昇温した後に500rpmの速度で攪拌しながら水145gをゆっくり加えて微粒子化し、30分間加熱攪拌した後、ジエチレントリアミン0.32gを加え、2時間加熱攪拌した。最後にアセトンを除去することで、固形量35%で体積平均粒径(D50)が78nm、の樹脂粒子4を含む樹脂エマルション4を得た。乾燥後に得られた樹脂のガラス転移温度(Tg)は48℃であった。
【0088】
(実施例5)
<樹脂エマルション5の合成>
0.3Lのセパラブルフラスコに、芳香族ポリエステル樹脂とポリカーボネート系ウレタン樹脂の質量比が75/25になるように、芳香族含有ポリエステル樹脂溶液A90g、トリエチルアミン1.6g、ポリカーボネート系ウレタン樹脂溶液B30g、を加え、40℃に昇温した後に500rpmの速度で攪拌しながら水145gをゆっくり加えて微粒子化し、30分間加熱攪拌した後、ジエチレントリアミン0.27gを加え、2時間加熱攪拌した。最後にアセトンを除去することで、固形量35%で体積平均粒径(D50)が78nm、の樹脂粒子5を含む樹脂エマルション5を得た。乾燥後に得られた樹脂のガラス転移温度(Tg)は49℃であった。
【0089】
(比較例1)
<樹脂エマルション6の合成>
0.3Lのセパラブルフラスコに、芳香族ポリエステル樹脂とポリカーボネート系ウレタン樹脂の質量比が25/75になるように、芳香族含有ポリエステル樹脂溶液A30g、トリエチルアミン0.52g、ポリカーボネート系ウレタン樹脂溶液B90g、を加え、40℃に昇温した後に500rpmの速度で攪拌しながら水145gをゆっくり加えて微粒子化し、30分間加熱攪拌した後、ジエチレントリアミン0.81gを加え、2時間加熱攪拌した。最後にアセトンを除去することで、固形量35%で体積平均粒径(D50)が63nm、の樹脂粒子6を含む樹脂エマルション6を得た。乾燥後に得られた樹脂のガラス転移温度(Tg)は39℃であった。
【0090】
(比較例2)
<樹脂エマルション7の合成>
0.3Lのセパラブルフラスコに、芳香族ポリエステル樹脂とポリエーテル系ウレタン樹脂の質量比が60/40になるように、芳香族含有ポリエステル樹脂溶液A72g、トリエチルアミン1.3g、ポリエーテル系ウレタン樹脂溶液C48g、を加え、40℃に昇温した後に500rpmの速度で攪拌しながら水145gをゆっくり加えて微粒子化し、30分間加熱攪拌した後、ジエチレントリアミン0.47gを加え、2時間加熱攪拌した。最後にアセトンを除去することで、固形量35%で体積平均粒径(D50)が75nm、の樹脂粒子7を含む樹脂エマルション7を得た。乾燥後に得られた樹脂のガラス転移温度(Tg)は20℃であった。
【0091】
(比較例3)
<樹脂エマルション8の合成>
0.3Lのセパラブルフラスコに、芳香族ポリエステル樹脂とポリカーボネート系ウレタン樹脂の質量比が90/10になるように、芳香族含有ポリエステル樹脂溶液A108g、トリエチルアミン1.9g、ポリカーボネート系ウレタン樹脂溶液B12g、を加え、40℃に昇温した後に500rpmの速度で攪拌しながら水145gをゆっくり加えて微粒子化し、30分間加熱攪拌した後、ジエチレントリアミン0.11gを加え、2時間加熱攪拌した。最後にアセトンを除去することで、固形量35%で体積平均粒径(D50)が67nm、の樹脂粒子8を含む樹脂エマルション8を得た。乾燥後に得られた樹脂のガラス転移温度(Tg)は56℃であった。
【0092】
(比較例4)
以下のようにして、樹脂粒子9を含む樹脂エマルション9と樹脂粒子10を含む樹脂エマルション10を作製し、60質量部の樹脂エマルション9と、40質量部の樹脂エマルション10を混合し、樹脂粒子9と樹脂粒子10を含む樹脂エマルションを得た。
<樹脂エマルション9の合成>
0.5Lのセパラブルフラスコに、芳香族含有ポリエステル樹脂溶液A120g、トリエチルアミン2.1gを加え、40℃に昇温した後に500rpmの速度で攪拌しながら水145gをゆっくり加えて微粒子化し、30分間加熱攪拌した。最後にアセトンを除去することで、固形量35%で体積平均粒径(D50)が110nm、の樹脂粒子9を含む樹脂エマルション9を得た。乾燥後に得られた樹脂のガラス転移温度(Tg)は61℃であった。
<樹脂エマルション10の合成>
0.5Lのセパラブルフラスコに、ポリカーボネート系ウレタン樹脂溶液B120gを加え、40℃に昇温した後に500rpmの速度で攪拌しながら水145gをゆっくり加えて微粒子化し、30分間加熱攪拌した後、ジエチレントリアミン1.1gを加え、2時間加熱攪拌した。最後にアセトンを除去することで、固形量35%で体積平均粒径(D50)が60nm、の樹脂粒子10を含む樹脂エマルション10を得た。乾燥後に得られた樹脂のガラス転移温度(Tg)は-19℃であった。
【0093】
実施例1で得られた樹脂エマルション1を用い、下記処方のインクを調製し、pHを調整した後、平均孔径5μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インク1を作製した。
<インク処方>
・ブラック顔料分散体「顔料濃度:15%」(P-AK-512、花王社製)
・・・23.33質量%
・樹脂エマルション1 ・・・31.50質量%
・有機溶剤としてのジエチレングリコールモノメチルエーテル・・・15.0質量%
・有機溶剤としてのプロピレングリコール ・・・14.0質量%
・有機溶剤としての3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド
・・・5質量%
・有機溶剤としての2-エチル-1,3-ヘキサンジオール ・・・2質量%
・シリコーン系界面活性剤(L-7002、東レ・ダウコーニング株式会社製)
・・・1.0質量%
・フッ素系界面活性剤(メガファックF-444、DIC株式会社製)
・・・1.0質量%
・防腐防カビ剤(プロキセルLV、アベシア社製) ・・・0.05質量%
・pH調整剤(トリエタノールアミン) ・・・0.3質量%
・水 ・・・残量(合計:100質量%)
【0094】
樹脂エマルション1の代わりに樹脂エマルション2~樹脂エマルション8を使用したことを除き、インク1と同じ手順でインク2~8を調製した。
【0095】
樹脂エマルション1の代わりに樹脂粒子9と樹脂粒子10を含む樹脂エマルションを使用したことを除き、インク1と同じ手順でインク9を調製した。
【0096】
次に、作製した各インクについて、以下のようにして、耐擦性I、耐擦性II、耐ブロッキング性、保存安定性を評価した。結果を表1に示した。
【0097】
<耐擦性I>
23℃、50%RHに調整された環境下で、記録媒体(ルミアートグロス 90gsm、STORA ENSO社製)に、インクジェットプリンタ(IPSiO GXe-5500、株式会社リコー製)を用いて、ベタ画像を形成した。次いで温度100±2℃、湿度50±15%RHで1分間乾燥させ、CM-1型クロックメータに両面テープで取り付けた定量ろ紙(No.5A、アドバンテック東洋株式会社製)を印字部位に当てるように10往復させた後、定量ろ紙に付着したインクの反射濃度をX-Rite939(X-Rite社製)で測定し、定量ろ紙の地肌色を差し引いて、汚れ部の反射濃度を下記評価基準により判定した。
〔評価基準〕
◎:0.1未満
○:0.1以上、0.2未満
×:0.2以上
【0098】
<耐擦性II>
23℃、50%RHに調整された環境下で、記録媒体(ルミアートグロス 90gsm、STORA ENSO社製)に、インクジェットプリンタ(IPSiO GXe-5500、株式会社リコー製)を用いて、ベタ画像を形成した。次いで温度100±2℃、湿度50±15%RHで1分間乾燥させ、CM-1型クロックメータに両面テープで取り付けた記録媒体(ルミアートグロス 90gsm、STORA ENSO社製)を印字部位に当てるように10往復させた後、記録媒体に付着したインクの反射濃度をX-Rite939(X-Rite社製)で測定し、記録媒体の地肌色を差し引いて、汚れ部の反射濃度を下記評価基準により判定した。
〔評価基準〕
◎:0.1未満
○:0.1以上、0.2未満
×:0.2以上
【0099】
<耐ブロッキング性>
プリンター(リコー社製GXe5500)を用いて、記録媒体(ルミアートグロス 90gsm、STORA ENSO社製)に6cm四方のベタ部を印字し、100℃で180秒乾燥させた後、印字面に印刷していない記録媒体(合紙)を重ねた。これを10×10cm四方のガラス板2枚の間に挟み、その上から、加重0.5kg/cm2をかけた状態で60℃70%の環境下に24時間放置した後、次の基準でブロッキングの程度を評価した。
◎:ブロッキングなし。
○:わずかにブロッキング(合紙にわずかに転写)
×:完全にブロッキング(合紙にはっきりと転写部が分かる)
【0100】
<保存安定性>
各インクを、密封状態にして70℃で2週間保管し、保管前と保管後の粘度を測定し、下記式により粘度変化率を計算した。
粘度変化率(%)=(保管後粘度-保管前粘度)×100/保管前粘度
◎…粘度変化率が3%未満
○…粘度変化率が3%以上10%未満
×…粘度変化率が10%以上
【0101】
【表1】
【符号の説明】
【0102】
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【文献】特開2013-10816号公報
【文献】特開2015-30853号公報
【文献】特開2017-82189号公報
図1
図2