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特許7041485ライン光源及びこれを備えた光ラインセンサユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】ライン光源及びこれを備えた光ラインセンサユニット
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20220316BHJP
   H04N 1/028 20060101ALI20220316BHJP
   G03B 27/54 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
H04N1/04 101
H04N1/028 C
G03B27/54 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017195339
(22)【出願日】2017-10-05
(65)【公開番号】P2019068388
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】510192019
【氏名又は名称】株式会社ヴィーネックス
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 修
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-236045(JP,A)
【文献】登録実用新案第3170916(JP,U)
【文献】特開2016-005093(JP,A)
【文献】特開2005-234134(JP,A)
【文献】特開2000-199830(JP,A)
【文献】特開2008-198381(JP,A)
【文献】特開2009-005168(JP,A)
【文献】特開2010-266931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/024- 1/207
H04N 1/46 - 1/64
G06T 1/00
G03B 27/50 -27/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を読み取る光ラインセンサユニットの照明光源として用いられるライン光源であって、
蛍光体を蛍光させることにより白色光を発生させる白色LED光源と、
赤色及び緑色の2色の単色光を発生させる複数の単色LED光源とを備え、
前記白色LED光源及び前記複数の単色LED光源を同時点灯させて前記紙葉類を照明することによりsRGBの色域との差異を小さくするように構成され、
前記白色LED光源及び前記複数の単色LED光源を同時点灯させたときの発光スペクトルにおける赤色、緑色、青色の各色に対応するピーク強度をIr、Ig、Ibで表したとき、
Ig<Ib<Ir
を満足するとともに、
前記発光スペクトルが、Igに対応するピークとIbに対応するピークとの間における460nm以上かつ520nm以下の波長に極小値を有することを特徴とするライン光源。
【請求項2】
紙葉類を読み取る光ラインセンサユニットの照明光源として用いられるライン光源であって、
蛍光体を蛍光させることにより白色光を発生させる白色LED光源と、
赤色、緑色及び青色の3色の単色光を発生させる複数の単色LED光源とを備え、
前記白色LED光源及び前記複数の単色LED光源を同時点灯させて前記紙葉類を照明することによりsRGBの色域との差異を小さくするように構成され、
前記白色LED光源及び前記複数の単色LED光源を同時点灯させたときの発光スペクトルにおける赤色、緑色、青色の各色に対応するピーク強度をIr、Ig、Ibで表したとき、
Igに対応するピークが、Ir及びIbに対応するピークに比べてブロードな特性を有し、
Ig<Ir<Ib
を満足するとともに、
前記発光スペクトルが、Igに対応するピークとIbに対応するピークとの間における460nm以上かつ520nm以下の波長に極小値を有することを特徴とするライン光源。
【請求項3】
紙葉類を読み取る光ラインセンサユニットの照明光源として用いられるライン光源であって、
蛍光体を蛍光させることにより白色光を発生させる白色LED光源と、
赤色、緑色、青色及び紫色の4色の単色光を発生させる複数の単色LED光源とを備え、
前記白色LED光源及び前記複数の単色LED光源を同時点灯させて前記紙葉類を照明することによりsRGBの色域との差異を小さくするように構成され、
前記白色LED光源及び前記複数の単色LED光源を同時点灯させたときの発光スペクトルにおける赤色、緑色、青色、紫色の各色に対応するピーク強度をIr、Ig、Ib、Ivで表したとき、
Igに対応するピークが、Ir、Ib及びIvに対応するピークに比べてブロードな特性を有し、
Ig<Ir<Ib<Iv
を満足するとともに、
前記発光スペクトルが、Igに対応するピークとIbに対応するピークとの間における460nm以上かつ520nm以下の波長に極小値を有することを特徴とするライン光源。
【請求項4】
前記白色LED光源から発生する白色光の強度が、前記複数の単色LED光源から発生する各単色光の強度よりも大きいことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のライン光源。
【請求項5】
前記白色LED光源から発生する白色光の発光スペクトルは、前記複数の単色LED光源から発生する各単色光の発光スペクトルよりもブロードな発光スペクトルを有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のライン光源。
【請求項6】
前記白色LED光源の出力が10%から90%に立ち上がるまでの時間、及び、90%から10%に立ち下がるまでの時間のそれぞれが、2μ秒以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のライン光源。
【請求項7】
前記蛍光体が、YAG蛍光体であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のライン光源。
【請求項8】
長尺形状を有し、長手方向に沿って出射面が形成された導光体と、
前記導光体の長手方向に沿って設けられ、前記導光体の内部に入射した光を拡散させて前記出射面から出射させる光拡散パターンと、
前記導光体の長手方向における一方の端面に対向し、当該一方の端面から前記導光体の内部に紫外光を入射させる紫外光源とをさらに備え、
前記白色LED光源及び前記複数の単色LED光源は、前記導光体の長手方向における他方の端面に対向し、当該他方の端面から前記導光体の内部に光を入射させることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のライン光源。
【請求項9】
長尺形状を有し、長手方向に沿って出射面が形成された導光体と、
前記導光体の長手方向に沿って並べて設けられ、前記導光体の内部に紫外光を入射させる複数の紫外光源と、
前記導光体の長手方向における一方の端面に対向し、当該一方の端面から前記導光体の内部に赤外光を入射させる赤外光源とをさらに備え、
前記白色LED光源及び前記複数の単色LED光源は、前記導光体の長手方向における他方の端面に対向し、当該他方の端面から前記導光体の内部に光を入射させることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のライン光源。
【請求項10】
前記複数の単色LED光源のうち、青色の単色光を発生させる単色LED光源の発光スペクトルのピーク波長が、前記白色LED光源の青色波長領域における発光スペクトルのピーク波長よりも短波長であることを特徴とする請求項2又は3に記載のライン光源。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のライン光源と、
前記ライン光源から出射され、前記紙葉類で反射又は透過した光を導くためのレンズアレイと、
前記レンズアレイにより収束された光を受光し、電気信号に変換する受光部とを備えることを特徴とする光ラインセンサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙幣、有価証券などの紙葉類を読み取る光ラインセンサユニットの照明光源として用いられるライン光源、及び、これを備えた光ラインセンサユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙葉類を読み取る光ラインセンサユニットの中には、RGB各色の単色LED光源や白色LED光源を用いて紙葉類のカラー画像を取得できるものがある。白色LED光源としては、紫外線LEDと蛍光体を組み合わせたものや、紫色又は青色などの可視光LEDと蛍光体を組み合わせたものなどが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
RGB各色の単色LED光源を用いる場合、従来は、各単色LED光源を順次点灯させることによりカラー画像を取得していた。紙葉類の読み取り速度の高速化が求められている近年においては、各単色LED光源を同時点灯させるとともに、受光部側にカラーフィルタを設けることにより、従来の3倍の速度で読み取り可能な構成が提案されている。白色LED光源を用いた構成においても同様に、紙葉類の読み取り速度の高速化が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-53882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の方式では、色再現の観点において問題があった。具体的には、ディスプレイやプリンタなどの一般的な電子機器では、sRGBと呼ばれる国際電気標準会議(IEC)が定めたRGB色空間の国際標準規格が採用されている。このsRGBに則った色調整を行うことにより、入力時と出力時の色の差異を少なくすることが可能である。光ラインセンサユニットにおいても、sRGBを採用することが好ましいが、sRGBの色域を忠実に再現できるような光源が存在しないという問題があった。
【0006】
図14は、RGB各色の単色LED光源をそれぞれ個別に点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。このように、R(赤色)に対応する発光スペクトルのピーク波長は約650nm、G(緑色)に対応する発光スペクトルのピーク波長は約520nm、B(青色)に対応する発光スペクトルのピーク波長は約460nmである。
【0007】
図15は、RGB各色の単色LED光源を同時点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。このように、RGB各色の単色LED光源を同時点灯させたときには、各単色LED光源を個別に点灯させたときと同様に、約650nm、約520nm、約460nmをピーク波長とする3つのピークが現れる。
【0008】
sRGBの色域においては、G(緑色)に対応する発光スペクトルの主波長が約550nmとなる。そのため、上記のようにRGB各色の単色LED光源を同時点灯させた場合のG(緑色)に対応する発光スペクトルのピーク波長(約520nm)との差異が大きく、sRGBの色域を忠実に再現することができない。
【0009】
図16は、RGB各色の単色LED光源を同時点灯させたときの色域をsRGBの色域と比較して示したxy色度図である。sRGBの色域は実線で示されており、RGB各色の単色LED光源を同時点灯させたときの色域は一点鎖線で示されている。
【0010】
このように、RGB各色の単色LED光源を同時点灯させたときの色域は、sRGBの色域に対して大きく相違している。そこで、RGB各色のスペクトル強度を調整することによりsRGBの色域に近付けることも考えられるが、それには限界があり、sRGBの色域に近付けることは困難である。
【0011】
図17は、白色LED光源を点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。このように、白色LED光源を点灯させたときには、約460nmをピーク波長とするシャープな発光スペクトルと、約550nmをピーク波長とするブロードな発光スペクトルとが現れる。
【0012】
ブロードな発光スペクトルのピーク波長(約550nm)は、sRGBの色域を再現する観点からは好ましい波長であるが、sRGBの色域を忠実に再現することはできない。白色LED光源における蛍光体の量を変更すれば、図17に破線で示すように各ピークの強度を調整することが可能であるが、sRGBの色域に一致させることはやはり困難である。
【0013】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、sRGBの色域をより忠実に再現することができるライン光源及びこれを備えた光ラインセンサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るライン光源は、紙葉類を読み取る光ラインセンサユニットの照明光源として用いられるライン光源であって、白色LED光源と、複数の単色LED光源とを備える。前記白色LED光源は、蛍光体を蛍光させることにより白色光を発生させる。前記複数の単色LED光源は、赤色、緑色及び青色のうち前記白色LED光源の青色の発光領域における発光スペクトルのピーク波長と異なるピーク波長を有する少なくとも2色の単色光を発生させる。前記ライン光源は、前記白色LED光源及び前記複数の単色LED光源を同時点灯させて前記紙葉類を照明する。
【0015】
このような構成によれば、白色LED光源及び複数の単色LED光源を同時点灯させて紙葉類を照明することにより、sRGBの色域との差異を小さくすることができる。したがって、白色LED光源から発生する白色光の強度と、複数の単色LED光源から発生する各単色光の強度とを適切に設定すれば、sRGBの色域をより忠実に再現することができる。
【0016】
前記白色LED光源から発生する白色光の強度は、前記複数の単色LED光源から発生する各単色光の強度よりも大きいことが好ましい。
ここで、強度とは、可視域において、受光センサがフラットな分光感度特性を有していると仮定し、その受光センサの分光感度スペクトルに前記LED光源の発光スペクトルを掛け合わせた場合の可視域における積分値をいう。
【0017】
このような構成によれば、白色LED光源から発生する白色光の強度と、複数の単色LED光源から発生する各単色光の強度とをより適切に設定することができるため、sRGBの色域をより忠実に再現することができる。
【0018】
前記複数の単色LED光源は、赤色、緑色、青色及び紫色の4色の単色光を発生させてもよい。
【0019】
このような構成によれば、赤色、緑色及び青色に加えて、紫色の単色光を同時点灯させて紙葉類を照明することにより、sRGBの色域との差異をさらに小さくすることができるため、sRGBの色域をより忠実に再現することができる。
【0020】
前記白色LED光源から発生する白色光の発光スペクトルは、前記複数の単色LED光源から発生する各単色光の発光スペクトルよりもブロードな発光スペクトルを有することが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、ブロードな発光スペクトルを有する白色光を発生する白色LED光源が、複数の単色LED光源と同時点灯されることにより、sRGBの色域との差異をさらに小さくすることができるため、sRGBの色域をより忠実に再現することができる。
【0022】
前記白色LED光源の出力が10%から90%に立ち上がるまでの時間、及び、90%から10%に立ち下がるまでの時間のそれぞれは、2μ秒以下であることが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、応答性の高い白色LED光源を用いることにより、紙葉類を高速で読み取ることができる。
【0024】
前記蛍光体は、YAG蛍光体であることが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、応答性の高いYAG蛍光体を用いた白色LED光源を複数の単色LED光源と同時点灯させることにより、紙葉類をより高速で読み取ることができる。
【0026】
前記ライン光源は、導光体と、光拡散パターンと、紫外光源とをさらに備えていてもよい。前記導光体は、長尺形状を有し、長手方向に沿って出射面が形成されている。前記光拡散パターンは、前記導光体の長手方向に沿って設けられ 、前記導光体の内部に入射した光を拡散させて前記出射面から出射させる。前記紫外光源は、前記導光体の長手方向における一方の端面に対向し、当該一方の端面から前記導光体の内部に紫外光を入射させる。この場合、前記白色LED光源及び前記複数の単色LED光源は、前記導光体の長手方向における他方の端面に対向し、当該他方の端面から前記導光体の内部に光を入射させることが好ましい。
【0027】
あるいは、前記ライン光源は、導光体と、複数の紫外光源と、赤外光源とをさらに備えていてもよい。前記導光体は、長尺形状を有し、長手方向に沿って出射面が形成されている。前記複数の紫外光源は、前記導光体の長手方向に沿って並べて設けられ、前記導光体の内部に紫外光を入射させる。前記赤外光源は、前記導光体の長手方向における一方の端面に対向し、当該一方の端面から前記導光体の内部に赤外光を入射させる。この場合、前記白色LED光源及び前記複数の単色LED光源は、前記導光体の長手方向における他方の端面に対向し、当該他方の端面から前記導光体の内部に光を入射させることが好ましい。
【0028】
本発明に係る光ラインセンサユニットは、前記ライン光源と、レンズアレイと、受光部とを備える。前記レンズアレイは、前記ライン光源から出射され、前記紙葉類で反射又は透過した光を導く。前記受光部は、前記レンズアレイにより収束された光を受光し、電気信号に変換する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、白色LED光源及び複数の単色LED光源を同時点灯させて紙葉類を照明することにより、sRGBの色域との差異を小さくすることができるため、sRGBの色域をより忠実に再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施の形態における光ラインセンサユニットの構成を概略的に示す断面図である。
図2】光ラインセンサユニットの付加的な構成を概略的に示す断面図である。
図3】ライン光源の斜視図である。
図4】ライン光源の各構成部材を示す分解斜視図である。
図5】ライン光源の側面図である。
図6】受光部の素子配列を示す模式図である。
図7】受光部における受光素子と各色フィルタの配列例を示す図である。
図8】白色LED光源とRGB各色の単色LED光源を同時点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。
図9】白色LED光源とRGB各色の単色LED光源を同時点灯させたときの色域をsRGBの色域と比較して示したxy色度図である。
図10】白色LED光源とRGBV各色の単色LED光源を同時点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。
図11】白色LED光源とRGBV各色の単色LED光源を同時点灯させたときの色域をsRGBの色域と比較して示したxy色度図である。
図12】白色LED光源とRG各色の単色LED光源を同時点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。
図13】白色LED光源とRG各色の単色LED光源を同時点灯させたときの色域をsRGBの色域と比較して示したxy色度図である。
図14】RGB各色の単色LED光源をそれぞれ個別に点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。
図15】RGB各色の単色LED光源を同時点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。
図16】RGB各色の単色LED光源を同時点灯させたときの色域をsRGBの色域と比較して示したxy色度図である。
図17】白色LED光源を点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<光ラインセンサユニット>
図1は、本発明の実施の形態における光ラインセンサユニットの構成を示す概略断面図である。
【0032】
この光ラインセンサユニットは、筐体16と、紙葉類を照明するためのライン光源10と、そのライン光源10から焦点面20に向けて出射され紙葉類で反射した光を導くためのレンズアレイ11と、基板13に実装されレンズアレイ11により導かれた透過光を受光する受光部12とを備えている。紙葉類は焦点面20に沿って一方向x(副走査方向)に搬送される。
これらの筐体16、ライン光源10、受光部12、レンズアレイ11は、y方向(主走査方向)、すなわち図1における紙面に対して垂直な方向に延びていて、図1はその断面を示している。
【0033】
ライン光源10は、焦点面20にある紙葉類に向けて光を出射するユニットである。出射される光の種類は可視光、白色光及び紫外光であり、さらに赤外光が出射されることもある。
この紫外光は300nm~400nmのピーク波長を有するもので、赤外光は1500nmまでのピーク波長を有するものである。
これらの光のうち少なくとも紫外光は、他の光と時間的に重ならないようにして(すなわち時間的にスイッチングされながら)発光される。赤外光は、可視光と時間的に重なって発光されることもあり、時間的に重ならないようにして発光されることもある。
【0034】
ライン光源10から出射された光は、保護ガラス14を透過して焦点面20に集光される。保護ガラス14は、必ずしも必要ではなく省略することもできるが、使用中(使用時)のごみ(紙葉類の搬送時に発生する紙粉等のダスト)の飛散や傷つきからライン光源10やレンズアレイ11を保護するために設置することが望ましい。
保護ガラス14の材質はライン光源10から出射される光を透過させるものであれば良く、例えばアクリル樹脂やシクロオレフィン系樹脂などといった透明の樹脂であってもよい。ただし、本発明の実施の形態では、白板ガラス、ホウケイ酸ガラスなど特に紫外光を透過させるものを使用するのが好ましい。
【0035】
ライン光源10の底面に対向して、ライン光源10の両端に設置された第1の光源部4、第2の光源部3(図4図5参照)を固定するための基板5が設置されている。この基板5はフェノール、ガラスエポキシなどで形成された薄い絶縁板であり、その裏面に銅箔からなる配線パターンが形成されている。第1の光源部4、第2の光源部3の端子を基板5の各所に形成された孔に挿入し、基板の裏面において半田などで配線パターンと接合することにより、第1の光源部4及び第2の光源部3を基板5に搭載し固定することができるとともに、所定の駆動電源(図示せず)から基板裏面の配線パターンを通して第1の光源部4及び第2の光源部3に電力を供給してその発光を駆動・制御することができる。
【0036】
レンズアレイ11は、紙葉類で反射された光を受光部12に結像する光学素子であり、セルフォックレンズアレイ(登録商標:日本板硝子製)などのロッドレンズアレイを用いることができる。本発明の実施の形態では、レンズアレイ11の倍率は1(正立)に設定されている。
焦点面20から受光部12までの任意の位置に、受光部12に紫外光が入らないように、紫外光を反射又は吸収することにより遮断する紫外光遮断フィルタ15を設けることが好ましい。本発明の実施の形態では、レンズアレイ11の表面に紫外光遮断フィルタ15を取り付け、紫外光を遮断する機能を持たせている。本明細書で「光を遮断する」とは、光を反射又は吸収して、透過させないことをいう。
【0037】
この紫外光遮断フィルタ15は、特に限定されるものではなく、紫外光が、受光部12へ入るのを防止することができれば、材質・構造を問わない。例えば有機系の紫外光吸収剤を透明フィルムに混入あるいはコーティングした紫外光吸収フィルム、ガラス表面に酸化チタン、酸化珪素など透過率や屈折率の異なる金属酸化物もしくは誘電体の薄膜を多層蒸着することで得られる干渉フィルタ(バンドパスフィルタ)などが好ましい。
【0038】
なお、紫外光遮断フィルタ15はレンズアレイ11の出射面に取り付けていたが、レンズアレイ11の入射面又は中間部に取り付けてもよく、保護ガラス14の内面に直接蒸着又は塗布して用いてもよい。要するに、紙葉類で反射された紫外光が、受光部12へ入るのを防止することができればよい。
受光部12は基板13に実装され、反射光を受けて光電変換により電気出力として画像を読み取る受光素子を含んで構成されている。受光素子の材質・構造は特に規定されるものではなく、アモルファスシリコン、結晶シリコン、CdS、CdSeなどを用いたフォトダイオードやフォトトランジスタを配置したものであってもよい。またCCD(Charge Coupled Device)リニアイメージセンサであってもよい。さらに受光部12として、フォトダイオードやフォトトランジスタ、駆動回路及び増幅回路を一体としたIC(Integrated Circuit)を複数個並べた、いわゆるマルチチップ方式のリニアイメージセンサを用いることもできる。また、必要に応じて基板13上に駆動回路、増幅回路などの電気回路、あるいは信号を外部に取り出すためのコネクタなどを実装することもできる。さらに基板13上にA/Dコンバータ、各種補正回路、画像処理回路、ラインメモリ、I/O制御回路などを同時に実装してデジタル信号として外部に取り出すこともできる。
【0039】
なお、前述した光ラインセンサユニットは、ライン光源10から紙葉類に向けて出射され紙葉類で反射した光を受光する反射型の光ラインセンサユニットであったが、図2に示すように、焦点面20を基準にして、ライン光源10を受光部12と反対の位置に置いて、ライン光源10から紙葉類に向けて出射され紙葉類を透過した光を受光する、透過型の光ラインセンサユニットであってもよい。この場合、ライン光源10の位置が焦点面20の下側になるところが図1の配置と異なるのみで、ライン光源10自体の構造は、今まで説明したものと異なるところはない。また反射型の光ラインセンサユニットと透過型の光ラインセンサユニットを両方含んでいてもよい。
【0040】
<ライン光源>
図3は、図1に示される光ラインセンサユニットにおけるライン光源10の外観を概略的に示す斜視図である。図4はライン光源10の各構成部材の分解斜視図、図5はライン光源10の側面図である。なお、図5ではカバー部材2の図示は省略している。
ライン光源10は、長手方向Lに沿って延びる透明な導光体1と、長手方向Lの一方の端面付近に設けられた第2の光源部3と、長手方向Lの他方の端面付近に設けられた第1の光源部4と、導光体1の各側面(底側面1a及び左右側面1b,1c)を保持するためのカバー部材2と、底側面1aと左右側面1bとの間に斜めに形成された光拡散パターン形成面1gに形成され、第2の光源部3及び第1の光源部4から導光体1の端面1e,1fに入射され導光体1の中を進む光を拡散・屈折させて、導光体1の光出射側面1dから出射させるための光拡散パターンPとを有している。また好ましくは、導光体1の端面1e,1fにそれぞれ形成された第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7を有している。
【0041】
導光体1は、アクリル樹脂などの光透過性の高い樹脂、あるいは光学ガラスで形成してもよいが、本発明の実施の形態では、紫外光を発光する第1の光源部4を用いるので、導光体1の材料として、紫外光に対する減衰が比較的少ないフッ素系樹脂あるいはシクロオレフィン系樹脂が好ましい。
導光体1は、細長い柱状であり、その長手方向Lに直交する断面は、長手方向Lのどの切り口においても、実質的に同じ形状、同じ寸法をしている。また導光体1のプロポーション、すなわち導光体1の長手方向Lの長さと、その長手方向Lに直交する断面の高さHとの比率は10よりも大きく、好ましくは30よりも大きい。例えば導光体1の長さが200mmであれば、その長手方向Lに直交する断面の高さHは5mm程度である。
【0042】
導光体1の側面は、光拡散パターン形成面1g(図4において導光体1の斜めカット面に相当)、底側面1a、左右側面1b,1c、光出射側面1d(図4において導光体1の上面に相当)の5つの側面からなる。底側面1a、左右側面1b,1cは平面形状であり、光出射側面1dはレンズの集光効果を持たせるために外向きに滑らかな凸の曲線状に形成されている。しかし光出射側面1dは必ずしも凸状に形成されていなくてもよく、平面形状であってもよい。この場合、光出射側面1dに対向するように、導光体1から出射した光を集光するレンズを配置するとよい。
【0043】
光拡散パターン形成面1g上の光拡散パターンPは、一定の幅を維持して、導光体1の長手方向Lに沿って一直線状に延びている。この光拡散パターンPの長手方向Lに沿った寸法は、イメージセンサの読取長(つまり受光部12の読取領域の幅)よりも長くなるように形成されている。
この光拡散パターンPは、導光体1の光拡散パターン形成面1gに彫刻された複数のV字状の溝により構成されている。この複数のV字状の溝の各々は、導光体1の長手方向Lに直交する方向に延びるよう形成されており、互いに同じ長さを有している。複数のV字状の溝は、断面が例えば二等辺三角形状を有していてもよい。
【0044】
この光拡散パターンPにより、導光体1の端面1e,1fから入射され、導光体1の内部を長手方向Lに伝搬する光を屈折・拡散させ、長手方向Lに沿ってほぼ一様の明るさで光出射側面1dから照射することができる。これにより、導光体1の長手方向Lの全体において紙葉類に照射される光をほぼ一定とすることができ、照度むらを無くすことができる。
【0045】
なお、光拡散パターンPの溝のV字形状は一例であり、照度むらが顕著にならない限り、V字形に代えてU字形にするなど任意に変更することができる。光拡散パターンPの幅も一定の幅を維持する必要はなく、導光体1の長手方向Lに沿って幅が変化するものであってもよい。溝の深さや溝の開口幅についても、適宜変更することができる。
カバー部材2は、導光体1の長手方向Lに沿った細長い形状であり、導光体1の底側面1a及び左右側面1b,1cを覆うことができるように、導光体1の光拡散パターン形成面1gに対向する底面2a、導光体1の右側面1bに対向する右側面2b、及び導光体1の左側面に対向する左側面2cを有している。これらの3つの側面はそれぞれ平面をなしており、これらの3つの内面で断面がほぼU字状の凹部を形成するので、導光体1をこの凹部の中に挿入することができる。この覆った状態で、カバー部材2の底面2aが導光体1の底側面1aに密着し、カバー部材2の右側面2bが導光体1の右側面1bに密着し、左側面2cが導光体1の左側面1cに密着する。このため、カバー部材2で導光体1を保護することができる。
【0046】
なお、カバー部材2は透明なカバーに限定されず、半透明、又は不透明なものであってもよい。例えばカバー部材2は、導光体1の光出射側面以外の側面より漏れ出す光を再び導光体1内に反射させるために、反射率の高い白色樹脂の成形品、又はその白色樹脂を塗布した樹脂の成形品であってもよい。または、カバー部材2をステンレスやアルミニウムなどの金属体で形成してもよい。
【0047】
第2の光源部3は、白色光(W)を発生させる白色LED光源3Wと、赤色(R)の単色光を発生させる単色LED光源3Rと、緑色(G)の単色光を発生させる単色LED光源3Gと、青色(B)の単色光を発生させる単色LED光源3Bと、紫色(V)の単色光を発生させる単色LED光源3Vとを含む。ただし、第2の光源部3には、赤外光を発生させる赤外光源が含まれていてもよい。白色LED光源3Wは、蛍光体を蛍光させることにより白色光を発生させる光源であり、例えば青色又は紫色のLEDで蛍光体を蛍光させて白色光を発生させる白色LED光源や、紫外域LEDで蛍光体を蛍光させて白色光を発生させる白色LED光源などが用いられる。蛍光体は、LED素子上にコーティング又は封止剤に混入され、LEDからの光に蛍光体の発光を付加させることにより、可視光域全てに出力がある白色LED光源となる。
【0048】
白色LED光源3Wは、応答性が高いことが好ましく、例えば出力(相対発光強度)が10%から90%に立ち上がるまでの応答時間、及び、90%から10%に立ち下がるまでの応答時間が、2μ秒以下、特に好ましくは0.5μ秒以下である。蛍光体を蛍光させて白色光を発生させる白色LED光源は、蛍光体を使用していることに起因して応答性が阻害されているため、特定の蛍光体を採用することが好ましい。例えば、白色LED光源3WのLED素子(図示せず)が紫又は青色であり、素子上に蛍光体が覆われた構造を有する。前記蛍光体として黄色発光するYAG蛍光体(YAG:Ce(セリウムドープ酸化イットリウム、アルミニウムガーネット焼結体))を用いれば、応答速度が速い白色LED光源3Wとすることができる。
【0049】
第1の光源部4は、導光体1に対して紫外光を発光する紫外光源であり、300nm~400nmの紫外光LED光源等が使用可能である。好ましくは330nm~380nmの範囲にピーク発光波長を有する紫外発光ダイオードが用いられる。
【0050】
第2の光源部3と第1の光源部4には、基板5に実装されるための端子31が形成されていて、この端子31を基板5に差込み、半田付けなどで接合することにより、それぞれ駆動電源(図示せず)に電気的に接続される。駆動電源は、第2の光源部3に電圧を印加する電極端子と第1の光源部4に電圧を印加する電極端子とを選択することにより、第2の光源部3及び第1の光源部4を同時に、若しくは時間的に切り替えて発光させることができる回路構成となっている。また第2の光源部3に内蔵された複数のLEDのうち任意のLEDを選択して同時に、若しくは時間的に切り替えて発光させることもできる。
【0051】
以上の構成により、コンパクトな構成で、第2の光源部3が設置される端面1eから白色光及び複数色の単色光を導光体1に入射することができ、第1の光源部4が設置される端面1fから紫外光を導光体1に入射することができる。これにより、前記第1の光源部4から発光される光、又は前記第2の光源部3から発光される光を、前記導光体1の光出射側面1dから出射することができる。
【0052】
好ましくは、導光体1の第2の光源部3が設置される端面1eには、420nm以上の可視光を透過させ、400nm未満の紫外光を反射又は吸収することにより遮断する第2の光学フィルタ6が設けられている。また導光体1の第1の光源部4が設置される端面1fには、400nm未満の紫外光を透過させ、420nm以上の可視光を反射又は吸収することにより遮断する第1の光学フィルタ7が設けられている。
【0053】
第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7は、特に限定するものではなく、目的とする波長域を遮断するものであれば材質・構造を問わない。例えば反射させる光学フィルタであれば、ガラス表面に透過率や屈折率の異なる金属酸化物もしくは誘電体の薄膜を多層蒸着することで得られる干渉フィルタ(バンドパスフィルタ)が好ましい。
反射させる干渉フィルタとしては、例えば、酸化珪素と五酸化タンタルなどを採用し、それぞれの透過率や屈折率及び膜厚を調整して多層蒸着することにより所望のバンドパスフィルタ特性を確保することで得られる。なお、当然ながら通常の光学関連産業用に従来から生産されているバンドパスフィルタで、要求性能を満足するものであれば、採用に際して特に制限はない。
【0054】
第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7に干渉フィルタを用いる場合、前記干渉フィルタのみでは目的とする透過域を調整出来ない場合は、さらにその上に金属又はその酸化物、窒化物、フッ化物の薄膜を用いたフィルムを重ねることで所望の波長特性を確保することが可能である。
第2の光学フィルタ6が紫外光を吸収する光学フィルタであれば、有機系の紫外光吸収剤を透明フィルムに混入あるいはコーティングした紫外光吸収フィルムであってもよい。また、干渉フィルタで、例えば、酸化珪素と酸化チタンなどを採用し、それぞれの透過率や屈折率及び膜厚を調整して多層蒸着することにより紫外光を反射、吸収両機能により遮断することで所望波長特性を確保してもよい。
【0055】
また第1の光学フィルタ7が可視光を吸収する光学フィルタであれば、紫外光を通過させ可視光をカットする物質をフィルムの中に添加してもよい。
なお、第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7の導光体1への設置方法は任意であり、導光体1の端面1e,1fに塗布又は蒸着により被覆してもよい。またフィルム状もしくは板状の第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7を用意し、導光体1の端面1e,1fに密着させて、もしくは端面1e,1fから一定の距離をおいて取り付けてもよい。
また、第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7を導光体1の端面1e,1fに設けるのではなく、第2の光源部3、第1の光源部4に設けることも可能である。この場合、各光源部3,4に光学フィルタ6,7を塗布又は蒸着により被覆してもよいし、フィルム状もしくは板状の光学フィルタ6,7を用意し、各光源部3,4に密着させて取り付けてもよい。あるいは、第2の光源部3の封止剤に、可視光を透過させ、紫外光を遮断する物質を添加することにより、第2の光学フィルタ6を構成してもよい。同様に、第1の光源部4の封止剤に、紫外光を透過させ、可視光を遮断する物質を添加することにより、第1の光学フィルタ7を構成してもよい。
【0056】
第1の光学フィルタ7が、紫外光を透過させ、可視光を反射又は吸収する光学フィルタであれば、次のような利点がある。第1の光源部4が酸化アルミニウム・セラミックス焼結体など、紫外光が当たった時に波長690nm付近の蛍光を発する実装基体を採用している場合を想定する。紫外光が第1の光源部4から照射されるときに、その照射光が第1の光源部4の実装基体に当たり690nm付近の蛍光が二次照射されて導光体1の中に入ることを防止する必要がある。そこで、第1の光学フィルタ7を、可視光を反射又は吸収するように設計することにより、二次照射された蛍光が導光体1の中に入らないようにすれば、導光体1の光出射側面1dからの不要な蛍光の出射を防止することができ、紙葉類の紫外蛍光のコントラストを良くすることができる。なお、紫外光が蛍光するものは酸化アルミニウム・セラミックス焼結体だけでなく、封止樹脂が蛍光する場合についても同様に二次照射を防ぐことができる。
【0057】
第2の光学フィルタ6が、可視光を透過させ、紫外光を反射又は吸収する光学フィルタであれば、次のような利点がある。第2の光源部3が酸化アルミニウム・セラミックス焼結体など、紫外光が当たった時に波長690nm付近の蛍光を発する実装基体を採用している場合を想定する。第1の光源部4から照射された紫外光が導光体1の端面1eを通過して第2の光源部3に当たると、690nm付近の蛍光が第2の光源部3から二次照射されて導光体1の中に入って来るので、これを防止する必要がある。そこで、第2の光学フィルタ6を、紫外光を反射又は吸収するように設計することにより、紫外光が導光体1の端面1eから外に出ないようにすれば第2の光源部3に当たることがない。したがって、導光体1の光出射側面1dからの不要な蛍光の出射を防止することができる。その結果、紙葉類の紫外蛍光のコントラストを良くすることができる。
【0058】
本発明の実施の形態では、第2の光学フィルタ6が可視光を透過させ、紫外光を反射する光学フィルタの方が好ましく、次のような利点がある。第1の光源部4から導光体1に入射され第2の光学フィルタ6で反射し導光体1に戻る紫外光の光量が増加するので、結果として、導光体1の光出射側面1dからの紫外光の出射光量が増大するという効果が得られる。この場合、第2の光学フィルタ6は第2の光源部3から照射される可視光を透過させるので、第2の光源部3からの可視光が導光体1に入るのを妨げることもない。
【0059】
また第1の光学フィルタ7が紫外光を透過させ、可視光を反射する光学フィルタであれば、第2の光源部3から照射され、導光体1に入射され第1の光学フィルタ7で反射し導光体1に戻る可視光の光量が増加するので、結果として、導光体1の光出射側面1dからの可視光の出射光量が増大するという効果が得られる。また第1の光学フィルタ7は第1の光源部4から照射される紫外光を透過させるので、導光体1の光出射側面1dからの紫外光の出射も可能になる。
【0060】
第1の光源部4から発光される紫外光は、第1の光学フィルタ7を介して導光体1に入射し、光拡散パターン形成面1gにより拡散・屈折して、光出射側面1dから焦点面20にある紙葉類(媒体)に照射される。これにより、紙葉類から蛍光が生じ、その蛍光色発光が受光部12で検出されることにより、紫外光を用いた紙葉類の識別を行うことができる。
第2の光源部3の白色LED光源から発光される白色光、単色LED光源3R,3G,3B,3Vから発光される複数色の単色光は、第2の光学フィルタ6を介して導光体1に入射し、光拡散パターン形成面1gにより拡散・屈折して、光出射側面1dから焦点面20にある紙葉類(媒体)に照射される。これにより、可視光を用いた紙葉類の識別を行うことができる。
【0061】
<受光部>
図6は、受光部12の素子配列を示す模式図である。受光部12は、y方向に直線状に並べられた複数の受光素子(それぞれフォトダイオード、フォトトランジスタなどで構成される)と信号処理部21とドライバ22とを一体化させたセンサICチップを配列し、各受光素子をカラーフィルタで覆い、これを基板上に実装したものである。ドライバ22は受光素子を駆動するためのバイアス電流を作成し供給する回路部分であり、信号処理部21は受光素子の光検出信号を読み取り処理する回路部分である。受光素子の種類は、限定されないが、例えばシリコンPNダイオード若しくはPINダイオードが用いられる。
【0062】
紙葉類がx方向(副走査方向)に移動する間に、一列に並べられた受光素子を露光することによって、紙葉類の面上にy方向(主走査方向)に沿った所定幅の観測ラインを設定することができる。紙葉類のライン情報を読み取る露光時間(光学読取時間という)は、光源の強度、センサの波長感度などに応じて任意に設定できる。例えば紙葉類のx方向の移動速度はATMや紙幣処理機などでは1500~2000mm/秒であり、光学読取時間として0.5~1.0ミリ秒を採用すれば、観測ラインのx方向の幅は0.75~2mmとなる。
【0063】
本発明の実施の形態では、図6に示すように、受光部12の一画素(画素とは、画像データを読み取り処理する空間的単位を言う)あたり複数、例えば4つの受光素子が直線状に並んで構成されている。図6では、4つの受光素子のうち、1番目の受光素子が赤(R)のカラーフィルタで覆われ、2番目の受光素子が緑(G)のカラーフィルタで覆われ、3番目の受光素子が青(B)のカラーフィルタで覆われている。そして、4番目の受光素子は透明フィルタ(W)で覆われているか、若しくは各色フィルタで覆われていない。なお前記カラーフィルタ(R,G,B)は通常、300~400nmの紫外光に対しては不透明であり、波長800nm以上の赤外光に対しては透過性を有する。
このように、受光部12には、各画素に対応付けて可視光カラーフィルタ(R,G,B)が設けられ、このカラーフィルタを透過した光が各受光素子に入射する。ただし、カラーフィルタは、各画素につき3色に限らない。
なお、図6では1素子のみが同一色のカラーフィルタで覆われていたが、2つ以上の受光素子が同一色のカラーフィルタで覆われていてもよい。
【0064】
透明(W)フィルタは、いかなる着色もない「透明な」フィルタである。若しくは全てのカラーフィルタの光透過スペクトルを重ね合わせた光透過スペクトルであってもよい。例えばRフィルタの光透過スペクトルと、Gフィルタの光透過スペクトルと、Bフィルタの光透スペクトルを重ね合わせて出来た輪郭を有する光透過スペクトルであってもよい。透過帯域をつないで包絡線を作ったときの、この包絡線と同様の光透過率を有しても良い。このような「透明フィルタ」を形成する光学フィルタの材料は、有機材料では透明なアクリル樹脂、シクロオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂の中から選ばれ、また無機系では窒化シリコン、酸化シリコンの中から選ばれる。
【0065】
これらの各色フィルタ材料は、300~400nmの紫外光に対しても透明である。
なお、有機材料においては、液晶用途に用いられる紫外光吸収剤を含んだ透明材料は、紫外光に対して透明でないので、採用することは好ましくない。
このように、受光部12は、一画素に複数の受光素子とそれらを覆う各色のカラーフィルタが搭載されているため、光源の波長を切り替えないで、それぞれが所望の波長領域の光を単独で照射できる複数の発光素子を同時に点灯させて、紙葉類の色情報を1本の観測ラインで一度に出力することが可能となる。
【0066】
このような構成の受光部12の光検出信号は、各受光素子の光検出信号を同時に取得した信号であり、これらは信号処理部21に入力される。信号処理部21は、受光部12のR,G,Bの各カラーフィルタを透過した受光素子の信号強度に基づいて、紙葉類の色情報を判別するとともに、透明(W)フィルタを透過し、若しくは、前記各色フィルタを透過しない信号強度に基づいて、当該画素に入ってくる全体光量を算出する。これにより、全体光量を分母(リファレンス)とした、各色信号の正確な光量に基づく画像データを得ることができる。
【0067】
ただし、受光部12の素子配列は前記の形態に限定されるものではない。例えば、受光部12の受光素子は図7(a)に示したように、RGBWRGBW・・・というように一列に配列されているとは限らず、二列以上に配列されたものであってもよい。図7(b)は、前記受光素子が一画素あたり2×2に配列されたものであり、2列のうち1つの列(例えば下の列)の一隅に、透明(W)フィルタ又は各色フィルタ無の第二の受光素子が配列されている例を示す。図7(c)は前記受光素子が一画素あたり4列に配列されたものであり、それらの4列のうち1つの列(例えば最も下の列)に、透明(W)フィルタ又は各色フィルタ無の第二の受光素子が配列されている例を示す。これらの場合でも、一画素内において、透明(W)フィルタを通して又は各色フィルタ無の受光素子で検出された光信号を記録するとともに、各カラーフィルタ(R,G,B)を透過した各受光素子の信号強度を検出することができる。
また、透明(W)フィルタの代わりに、緑(G)のカラーフィルタを設けることにより、RGBGRGBG・・・というような配列にしてもよい。
【0068】
本実施形態では、以下で説明するように、白色LED光源と複数の単色LED光源を同時点灯させて紙葉類を照明することにより、得られるカラー画像データにおいてsRGBの色域を再現することができる。
【0069】
<白色LED光源とRGB各色の単色LED光源の同時点灯>
図8は、白色LED光源3WとRGB各色の単色LED光源3R,3G,3Bを同時点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。
【0070】
RGB各色の単色LED光源3R,3G,3Bのみを同時点灯させたときの発光スペクトルは、図15に示すように、R、G、Bの各波長に対応するシャープな発光スペクトル(波長域が狭い発光スペクトル)を有している。これに対して、白色LED光源3Wから発生する白色光の発光スペクトルは、図17に示すように、RGB各色の単色LED光源3R,3G,3Bから発生する各単色光の発光スペクトルよりもブロードな発光スペクトルを有している。
【0071】
このような白色LED光源3WとRGB各色の単色LED光源3R,3G,3Bとが同時点灯されることにより、図8に示すように、ブロードな発光スペクトルの一部にシャープな発光スペクトルが現れる発光スペクトルが得られる。なお、白色LED光源3Wから発生する白色光の強度は、複数の単色LED光源3R,3G,3Bから発生するRGB各色の単色光の強度よりも大きい。
【0072】
図9は、白色LED光源3WとRGB各色の単色LED光源3R,3G,3Bを同時点灯させたときの色域をsRGBの色域と比較して示したxy色度図である。sRGBの色域は実線で示されており、白色LED光源3WとRGB各色の単色LED光源3R,3G,3Bを同時点灯させたときの色域は二点鎖線で示されている。このように、白色LED光源3WとRGB各色(3色)の単色LED光源3R,3G,3Bを同時点灯させたときの色域は、sRGBの色域に近くなる。
【0073】
なお、白色LED光源3WとRGB各色の単色LED光源3R,3G,3Bを同時点灯させる場合、紫色の単色光を発生させる単色LED光源3Vは省略されてもよい。或いは、単色LED光源3Vの代わりに単色LED光源3Bを省略し、単色LED光源3Vを点灯させても良い。
【0074】
<白色LED光源とRGBV各色の単色LED光源の同時点灯>
図10は、白色LED光源3WとRGBV各色の単色LED光源3R,3G,3B,3Vを同時点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。
【0075】
白色LED光源3WとRGBV各色の単色LED光源3R,3G,3B,3Vを同時点灯させた場合にも、図10に示すように、ブロードな発光スペクトルの一部にシャープな発光スペクトルが現れる発光スペクトルが得られる。なお、白色LED光源3Wから発生する白色光の強度は、複数の単色LED光源3R,3G,3B,3Vから発生するRGBV各色の単色光の強度よりも大きい。
【0076】
図11は、白色LED光源3WとRGBV各色の単色LED光源3R,3G,3B,3Vを同時点灯させたときの色域をsRGBの色域と比較して示したxy色度図である。sRGBの色域は実線で示されており、白色LED光源3WとRGBV各色の単色LED光源3R,3G,3B,3Vを同時点灯させたときの色域は破線で示されている。このように、白色LED光源3WとRGBV各色(4色)の単色LED光源3R,3G,3B,3Vを同時点灯させたときの色域は、sRGBの色域により近くなる。
【0077】
<白色LED光源とRG各色の単色LED光源の同時点灯>
図12は、白色LED光源3WとRG各色の単色LED光源3R,3Gを同時点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。
【0078】
白色LED光源3WとRG各色の単色LED光源3R,3Gを同時点灯させた場合にも、図12に示すように、ブロードな発光スペクトルの一部にシャープな発光スペクトルが現れる発光スペクトルが得られる。なお、白色LED光源3Wから発生する白色光の強度は、複数の単色LED光源3R,3Gから発生するRG各色の単色光の強度よりも大きい。
【0079】
図13は、白色LED光源3WとRG各色の単色LED光源3R,3Gを同時点灯させたときの色域をsRGBの色域と比較して示したxy色度図である。sRGBの色域は実線で示されており、白色LED光源3WとRG各色の単色LED光源3R,3Gを同時点灯させたときの色域は点線で示されている。このように、白色LED光源3WとRG各色(2色)の単色LED光源3R,3Gを同時点灯させたときの色域は、図16と比較するとsRGBの色域に近い。
【0080】
なお、白色LED光源3WとRG各色の単色LED光源3R,3Gを同時点灯させる場合、青色及び紫色の単色光を発生させる単色LED光源3B,3Vは省略されてもよい。また、RGの2色ではなく、RBの2色の単色LED光源3R,3B、又は、GBの2色の単色LED光源3G,3Bを白色LED光源3Wと同時点灯させてもよい。この場合には、緑色の単色光を発生させる単色LED光源3G、又は、赤色の単色光を発生させる単色LED光源3Rが省略されてもよい。
【0081】
<作用効果>
本実施形態では、白色LED光源3W及び複数の単色LED光源(RGB各色の単色LED光源3R,3G,3Bの少なくとも2つ)を同時点灯させて紙葉類を照明することにより、sRGBの色域との差異を小さくすることができる。したがって、白色LED光源3Wから発生する白色光の強度と、複数の単色LED光源(RGB各色の単色LED光源3R,3G,3Bの少なくとも2つ)から発生する各単色光の強度とを適切に設定すれば、sRGBの色域をより忠実に再現することができる。
【0082】
特に、白色LED光源3Wから発生する白色光の強度が、複数の単色LED光源(RGB各色の単色LED光源3R,3G,3Bの少なくとも2つ)から発生する各単色光の強度よりも大きいため、sRGBの色域をより忠実に再現することができる。
この場合、白色LED光源3Wと複数の単色LED光源(RGB各色の単色LED光源3R,3G,3Bの少なくとも2つ)を同時に用いたときに、各単色光のピーク波長が白色LED光源3Wの青色波長領域における発光スペクトルのピーク波長と異なっていることがより望ましい。特に、白色LED光源3Wの青色波長領域における発光スペクトルのピーク波長よりも短波長側に、単色LED光源3Bの発光スペクトルのピーク波長があれば、3色光源で4色光源効果が得られるため更に一層好ましい。
【0083】
また、図10及び図11に示すように、複数の単色LED光源3R,3G,3B,3Vが、赤色、緑色、青色及び紫色の4色の単色光を発生させる場合には、sRGBの色域との差異をさらに小さくすることができるため、sRGBの色域をより忠実に再現することができる。
【0084】
さらに、白色LED光源3Wから発生する白色光の発光スペクトルが、複数の単色LED光源(RGB各色の単色LED光源3R,3G,3Bの少なくとも2つ)から発生する各単色光の発光スペクトルよりもブロードな発光スペクトルを有することにより、sRGBの色域との差異をさらに小さくすることができるため、sRGBの色域をより忠実に再現することができる。
【0085】
また、白色LED光源3Wの出力が10%から90%に立ち上がるまでの時間、及び、90%から10%に立ち下がるまでの時間のそれぞれが、2μ秒以下であるため、応答性の高い白色LED光源3Wを用いて紙葉類を高速で読み取ることができる。
【0086】
特に、白色LED光源3Wが、蛍光体として応答性の高いYAG蛍光体を用いるものであるため、紙葉類をより高速で読み取ることができる。
【0087】
<変形例>
ライン光源10は、導光体1に対して長手方向Lの一方又は両方の端面から光を入射させ、光拡散パターンPで光を拡散・屈折させるような構成に限らず、導光体1の底側面1a側から光出射側面1dを介して焦点面20に光を直接照射するような構成(いわゆる直下型)であってもよい。この場合、紫外光源が、導光体の長手方向に沿って並べて複数設けられ、導光体の内部に紫外光を入射させるような構成であってもよい。また、赤外光源が、導光体の長手方向における一方の端面に対向し、当該一方の端面から導光体の内部に赤外光を入射させてもよい。さらに、白色LED光源及び複数の単色LED光源(RGB各色の単色LED光源3R,3G,3Bの少なくとも2つ)が、導光体の長手方向における他方の端面に対向し、当該他方の端面から導光体の内部に光を入射させてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 導光体
3 第2の光源部
3W 白色LED光源
3R,3G,3B,3V 単色LED光源
4 第1の光源部
10 ライン光源
11 レンズアレイ
12 受光部
P 光拡散パターン
図1
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