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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】半導体装置及びテスト方法
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/10 20060101AFI20220316BHJP
   H03L 7/107 20060101ALI20220316BHJP
   H03L 7/00 20060101ALI20220316BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20220316BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20220316BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20220316BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
H03L7/10 140
H03L7/107 120
H03L7/00 230
H01L21/66 E
G01R31/28 V
H01L27/04 T
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017252234
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019118063
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147728
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 信司
(72)【発明者】
【氏名】八木 勝義
【審査官】橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-232159(JP,A)
【文献】特開2005-260866(JP,A)
【文献】特開2003-347935(JP,A)
【文献】特開2012-129789(JP,A)
【文献】特表2008-530955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03L 7/10
H03L 7/107
H03L 7/00
H01L 21/66
G01R 31/28
H01L 21/822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準信号に同期した発振信号を生成するPLL回路を含む半導体装置であって、
第1及び第2の外部端子を含み、
前記PLL回路は、
前記基準信号と前記発振信号との位相差を検出し、前記位相差を2値で表す位相差信号を生成する位相比較部と、
前記位相差信号を受けて前記位相差信号を当該位相差信号によって表される前記位相差に対応した電圧値を有する位相差電圧に変換して位相差電圧ノードに印加する電圧変換部と、
前記位相差電圧に応じた周波数を有する信号を前記発振信号として生成する発振部と、
前記位相差電圧を補正する補正電流を前記位相差電圧ノードに供給する補正回路と、を有し
記補正回路は、前記第2の外部端子がテスト制御信号を受けた場合には前記テスト制御信号に応じた電流を生成しこれを前記補正電流として前記位相差電圧ノードに供給し、
前記補正回路が前記テスト制御信号に応じた電流を生成しこれを前記補正電流として前記位相差電圧ノードに供給している際に、前記電圧変換部が受ける前記位相差信号と同一の信号が前記第1の外部端子から出力されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記位相比較部は、前記位相差に対応したパルス幅を有するパルスを含む信号を前記位相差信号として生成し、
前記電圧変換部は、前記位相差信号に含まれるパルスのパルス幅に対応した期間に亘り前記位相差電圧ノードに電流を流すことにより前記位相差電圧ノードに前記位相差電圧を生成するチャージポンプ回路であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
通常モード又はテストモードを示す動作モード信号を受ける第3の外部端子を含み、
前記補正回路は、
第1~第n(nは2以上の整数)の電流を生成する第1~第nの電流源と、
前記第1~第nの電流源のうちで前記テスト制御信号によって指定された電流源を示す第1の電流源選択情報が保持される第1のレジスタと、
前記第1~第nの電流源のうちで使用する電流源を示す第2の電流源選択情報が保持される第2のレジスタと、
前記動作モード信号が前記通常モードを示す場合には、前記第1~第nの電流源のうちで前記第2の電流源選択情報で示される電流源で生成された電流同士を合成した電流を前記補正電流として前記位相差電圧ノードに供給し、前記動作モード信号が前記テストモードを示す場合には、前記第1~第nの電流源のうちで前記第1の電流源選択情報で示される電流源で生成された電流同士を合成した電流を前記補正電流として前記位相差電圧ノードに供給する電流選択部と、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記補正回路は、
スペクトラム拡散指令に応じて、前記第1~第nの電流源のうちで使用する電流源の数を時間経過につれて増加又は減少させる第3の電流源選択情報を生成するスペクトラム拡散制御部を含み、
前記電流選択部は、前記スペクトラム拡散指令を受けた場合には、前記第1~第nの電流源のうちで前記第3の電流源選択情報で示される数の電流源で生成された電流同士を合成した電流を前記補正電流として前記位相差電圧ノードに供給することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
第1及び第2の外部端子と、
基準信号と発振信号との位相差を検出し、前記位相差を2値で表す位相差信号を生成すると共に前記位相差信号を前記第1の外部端子に供給する位相比較部と、前記位相差信号を、当該位相差信号によって表される前記位相差に対応した電圧値を有する位相差電圧に変換して位相差電圧ノードに印加する電圧変換部と、前記位相差電圧に応じた周波数を有する信号を前記発振信号として生成する発振部と、前記位相差電圧を補正する補正電流を前記位相差電圧ノードに供給し、前記第2の外部端子でテスト制御信号を受けた場合には前記テスト制御信号に応じた電流を生成しこれを前記補正電流として前記位相差電圧ノードに供給する補正回路と、を含むPLL回路と、を有する半導体装置をテストするテスト方法であって、
前記テスト制御信号を前記半導体装置の前記第2の外部端子に供給する第1のステップと、
前記半導体装置の前記第1の外部端子から出力された前記位相差信号を取り込む第2のステップと、
前記位相差信号のパルス幅が規定範囲内に含まれるか否かを判定する第3のステップと、
前記位相差信号のパルス幅が前記規定範囲内に含まれると判定された場合には前記補正回路が正常であることを表し、前記位相差信号のパルス幅が前記規定範囲内に含まれていないと判定された場合には前記補正回路が不良であることを表すテスト結果を得る第4のステップと、を有することを特徴とする半導体装置のテスト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、特にPLL(Phase-Locked Loop)回路を含む半導体装置、及びこの半導体装置のテスト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PLL回路として、基準信号と発振信号との位相差を2値で表す位相差信号を生成する位相比較器と、当該位相差信号に応じて電流をノードに供給することにより、このノード上に位相差信号に対応した位相差電圧を生成するチャージポンプと、を含むディジタル型のPLL回路が知られている。
【0003】
また、このようなディジタルPLL回路として、上記した位相差の大きさによって、チャージポンプで生成する電流の電流量を調整するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。当該ディジタルPLL回路では、かかる構成を採用することにより、周波数変化が大きくなる場合でのPLLのロックアップタイムを短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-214338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したようなPLL回路では、製造上のバラツキ等により、チャージポンプで生成された位相差電圧に誤差が生じる場合がある。
【0006】
そこで、位相差電圧が生成されるノードに、上記した誤差分をゼロにするような大きさの電流(以下、補正電流と称する)を供給する補正回路を、半導体IC内に設けることが考えられる。
【0007】
このような補正回路をPLL回路を含む半導体IC内に設けた場合には、製品出荷前に、この補正回路が適正な補正電流を生成しているか否かを確認するテストを行う必要がある。この際、当該補正電流を半導体ICの外部で測定するために、補正回路から出力された補正電流を半導体ICの外部に導出する外部端子と、テスト時にのみオン状態となって、補正回路が生成した補正電流を当該外部端子に導出するスイッチと、を設けることになる。
【0008】
しかしながら、補正電流の電流値を測定するには、精度の高い電流測定を行う必要があり、テストが困難になるという問題があった。また、補正回路の出力端に上記したようなスイッチと外部端子とが接続される為、当該スイッチでの寄生容量やリークパスに伴い、通常動作時において補正回路の特性が悪化する虞があった。
【0009】
本願発明は、通常動作時での特性劣化を招くことなく、製品出荷前のテストを容易に行うことが可能な半導体装置及びテスト方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る半導体装置は、基準信号に同期した発振信号を生成するPLL回路を含む半導体装置であって、第1及び第2の外部端子を含み、前記PLL回路は、前記基準信号と前記発振信号との位相差を検出し、前記位相差を2値で表す位相差信号を生成する位相比較部と、前記位相差信号を、当該位相差信号によって表される前記位相差に対応した電圧値を有する位相差電圧に変換して位相差電圧ノードに印加する電圧変換部と、前記位相差電圧に応じた周波数を有する信号を前記発振信号として生成する発振部と、前記位相差電圧を補正する補正電流を前記位相差電圧ノードに供給する補正回路と、を有し、前記位相比較部は、前記位相差信号を前記第1の外部端子を介して出力し、前記補正回路は、前記第2の外部端子がテスト制御信号を受けた場合には前記テスト制御信号に応じた電流を生成しこれを前記補正電流として前記位相差電圧ノードに供給する。
【0011】
本発明に係るテスト方法は、第1及び第2の外部端子と、基準信号と発振信号との位相差を検出し、前記位相差を2値で表す位相差信号を生成すると共に前記位相差信号を前記第1の外部端子に供給する位相比較部と、前記位相差信号を、当該位相差信号によって表される前記位相差に対応した電圧値を有する位相差電圧に変換して位相差電圧ノードに印加する電圧変換部と、前記位相差電圧に応じた周波数を有する信号を前記発振信号として生成する発振部と、前記位相差電圧を補正する補正電流を前記位相差電圧ノードに供給し、前記第2の外部端子でテスト制御信号を受けた場合には前記テスト制御信号に応じた電流を生成しこれを前記補正電流として前記位相差電圧ノードに供給する補正回路と、を含むPLL回路と、を有する半導体装置をテストするテスト方法であって、前記テスト制御信号を前記半導体装置の前記第2の外部端子に供給する第1のステップと、前記半導体装置の前記第1の外部端子から出力された前記位相差信号を取り込む第2のステップと、前記位相差信号のパルス幅が規定範囲内に含まれるか否かを判定する第3のステップと、前記位相差信号のパルス幅が前記規定範囲内に含まれると判定された場合には前記補正回路が正常であることを表し、前記位相差信号のパルス幅が前記規定範囲内に含まれていないと判定された場合には前記補正回路が不良であることを表すテスト結果を得る第4のステップと、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るPLL回路を含む半導体装置には、当該PLL回路内で生成される位相差電圧に生じる誤差をゼロにする為の補正電流を生成する補正回路が設けられている。更に、かかる半導体装置には、上記した補正回路に対する製品出荷前のテスト用として、PLL回路の位相比較器で生成された2値の位相差信号を半導体装置の外部に導出する外部端子が設けられている。この半導体装置に対する製品出荷前のテストでは、テスタが、位相比較器で生成された2値の位相差信号を上記した外部端子を介して取り込み、当該位相差信号のパルス幅が規定範囲に含まれるか否かによって、当該補正回路の良否をテストする。
【0013】
かかる構成によれば、補正回路から出力された補正電流の電流値を測定することで補正回路の良否をテストする場合に比べて、安価なテスタを用いることが可能となる。更に、補正回路が生成した補正電流をテスト時にだけ半導体装置の外部端子に導出するスイッチ素子が不要となるので、当該スイッチ素子で生じる余分な寄生容量やリークパスが形成されることはない。
【0014】
したがって、本発明によれば、当該補正回路に対して通常動作時での特性劣化を招くことなく、製品出荷前のテストを容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る半導体装置に含まれるPLL回路100の構成を示すブロック図である。
図2】位相比較器11の動作を表すタイムチャートである。
図3】位相比較器11の動作を表すタイムチャートである。
図4】位相誤差補正回路20の内部構成を示す回路図である。
図5】テストシステム300の構成を示すブロック図である。
図6】位相誤差補正回路20のテスト方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係る半導体装置としての半導体IC(Integrated Circuit)チップに含まれるPLL(Phase-Locked Loop)回路100の構成を示すブロック図である。
【0017】
PLL回路100は、入力された基準信号REFに位相同期した発振信号FQを生成する。尚、PLL回路100は、特定周波数に対するエネルギー集中を抑える為に当該発振信号FQにジッタを加える、いわゆるスペクトル拡散機能を備えている。
【0018】
図1に示すように、PLL回路100は、位相比較器11、チャージポンプ回路12、ループフィルタ(LPF)13、VCO(Voltage-controlled oscillator)14、分周器15、及び位相誤差補正回路20を含む。
【0019】
位相比較器11は、所定周波数を有する基準信号REFと、分周器15から供給された分周発振信号FVとの立ち上がりエッジ部同士の位相差を検出する。
【0020】
位相比較器11は、図2に示すように、検出した位相差dが基準信号REFの立ち上がりエッジ部に対して分周発振信号FVの立ち上がりエッジ部が遅れる、遅れ位相を表す場合には、位相差dに対応したパルス幅を有する論理レベル1の位相差信号UPを生成する。すなわち、位相比較器11は、論理レベル0の状態から論理レベル1の状態に遷移し、その状態を位相差dに対応した時間だけ維持してから論理レベル0の状態に戻るというパルスを含む2値の位相差信号UPを生成する。
【0021】
また、位相比較器11は、図3に示すように、位相差dが基準信号REFの立ち上がりエッジ部に対して分周発振信号FVの立ち上がりエッジ部が進む、進み位相を表す場合には、位相差dに対応したパルス幅を有する論理レベル1の位相差信号DNを生成する。すなわち、位相比較器11は、論理レベル0の状態から論理レベル1の状態に遷移し、その状態を位相差dに対応した時間だけ維持してから論理レベル0の状態に戻るというパルスを含む2値の位相差信号DNを生成する。
【0022】
このように、位相比較器11は、基準信号REFと分周発振信号FVとの位相差dを検出し、当該位相差dを2値で表す位相差信号UP及びDNを、チャージポンプ回路12に供給する。尚、位相差信号UPは、PLL回路100を含む半導体ICチップの外部端子T1に供給されており、当該外部端子T1を介して半導体ICチップの外部に出力される。
【0023】
チャージポンプ回路12は、位相差信号UPが論理レベル1の状態にある間に亘り、所定の電流値を有するチャージポンプ電流を、ノードL1に供給する。また、チャージポンプ回路12は、位相差信号DNが論理レベル1の状態にある間に亘り、チャージポンプ電流をノードL1から引き抜く。ここで、チャージポンプ電流がノードL1に供給されるとノードL1の電圧値が増加し、当該ノードL1からチャージポンプ電流が引き抜かれると、ノードL1の電圧値が低下する。
【0024】
かかる動作により、チャージポンプ回路12は、位相差信号(UP、DN)に含まれるパルスのパルス幅に対応した電圧値を有する位相差電圧PVを、位相差電圧ノードとしてのノードL1に生成する。
【0025】
ループフィルタ13は、ノードL1の電圧、つまり位相差電圧PVを平滑化した電圧を制御電圧CVとして生成し、これをVCO14に供給する。VCO14は、制御電圧CVの電圧値に対応した周波数を有する信号を発振信号FQとして生成し、これを出力する。更に、VCO14は、生成した発振信号FQを分周器15に供給する。分周器15は、所定の分周比又は指定された分周比に応じて、上記した発振信号FQを分周した分周発振信号FVを生成し、これを位相比較器11に供給する。
【0026】
すなわち、発振部としてのループフィルタ13、VCO14及び分周器15は、位相差電圧PVに応じた周波数を有する発振信号(FV)を位相比較器11に供給する。
【0027】
位相誤差補正回路20は、製造バラツキ等に伴い上記した位相差電圧PVに生じている誤差をゼロにする為の補正電流IcrをノードL1に供給する。尚、補正電流Icrは、正極性の電流のみならず、負極性の電流であっても良い。つまり、補正電流Icrが正極性である場合には位相差電圧PVの電圧値が当該補正電流Icrの大きさに対応した分だけ増加し、補正電流Icrが負極性である場合には位相差電圧PVの電圧値が当該補正電流Icrの大きさに対応した分だけ低下する。
【0028】
図4は、位相誤差補正回路20の内部構成の一例を示す回路図である。図4に示す一例では、位相誤差補正回路20は、レジスタ201、202、スペクトラム拡散制御部203、セレクタ204、電流源GC1~GCn(nは2以上の整数)、及びスイッチ素子SW1~SWnを有する。
【0029】
レジスタ201は、半導体ICチップの外部端子T2と接続されており、当該外部端子T2でテスト制御信号TSTを受けた場合に、当該テスト制御信号TSTによって指定された電流源を示す第1の電流源選択情報としてのスイッチ信号A1~Anを保持する。尚、第1の電流源選択情報は、電流源GC1~GCnのうちでテスト対象とする電流源を指定する情報である。また、スイッチ信号A1~Anは、スイッチ素子SW1~SWnを夫々個別にオン状態及びオフ状態のうちの一方の状態に設定する信号である。各スイッチ素子SWは、オン状態時にのみ自身に接続されている電流源GCで生成された電流をノードL1に供給する。また、外部端子T1及びT2は、位相誤差補正回路20をテストする際にテスタと接続されるテスト用の外部端子である。
【0030】
レジスタ201は、保持した第1の電流源選択情報(A1~An)をセレクタ204に供給する。
【0031】
レジスタ202には、電流源GC1~GCnのうちで、位相差電圧PVに生じている誤差をゼロにする電流値を有する補正電流Icrを生成する為に用いる電流源を示す第2の電流源選択情報としてのスイッチ信号B1~Bnが保持される。尚、スイッチ信号B1~Bnもスイッチ信号A1~Anと同様に、スイッチ素子SW1~SWnを夫々個別にオン状態及びオフ状態のうちの一方の状態に設定する信号である。
【0032】
レジスタ202は、保持した第2の電流源選択情報(B1~Bn)をセレクタ204に供給する。
【0033】
スペクトラム拡散制御部203は、当該半導体ICチップに含まれている例えば制御部(図示せず)から送出されたスペクトラム拡散指令信号SSIに応じて、第3の電流源選択情報としてのスイッチ信号C1~Cnを生成してセレクタ204に供給する。この際、スペクトラム拡散制御部203は、第3の電流源選択情報として、時間経過に伴い有効となる電流源の数が増加又は低下するようなスイッチ信号C1~Cnを生成し、セレクタ204に供給する。尚、スイッチ信号C1~Cnも、スイッチ信号A1~An及びB1~Bnと同様に、スイッチ素子SW1~SWnを夫々個別にオン状態及びオフ状態のうちの一方の状態に設定する為の信号である。
【0034】
セレクタ204は、半導体ICチップの外部端子T3で受けた動作モード信号MOD、及びスペクトラム拡散指令信号SSIに基づき、第1~第3の電流源選択情報(A1~An、B1~Bn、C1~Cn)のうちから1つを選択する。
【0035】
例えば動作モード信号MODが通常モードを表す場合には、セレクタ204は、レジスタ202に保持されている第2の電流源選択情報(B1~Bn)を選択する。また、動作モード信号MODがテストモードを表す場合には、セレクタ204は、テスト制御信号TSTによって表される第1の電流源選択情報(A1~An)を選択する。尚、セレクタ204は、スペクトラム拡散指令信号SSIを受けた場合には、動作モード信号MODの内容に拘わらず、第3の電流源選択情報(C1~Cn)を選択する。
【0036】
セレクタ204は、上記のように選択した電流源選択情報によって示されるスイッチ信号群を、スイッチ信号S1~Snとしてスイッチ素子SW1~SWnに供給する。すなわち、セレクタ204は、図4に示すように、スイッチ信号S(k)(kは1~nの整数)をスイッチ素子SW(k)に供給する。
【0037】
電流源GC1~GCnは、電源電位VDDに基づき電流I1~Inを個別に生成し、スイッチ素子SW1~SWnに供給する。すなわち、電流源GC(k)は、電源電位VDDに基づき電流I(k)を生成し、これをスイッチ素子SW(k)に供給する。
【0038】
スイッチ素子SW1~SWnは、スイッチ信号S1~Snに応じて個別にオン状態及びオフ状態のうちの一方の状態に設定され、オン状態に設定された場合にだけ、夫々に供給された電流をノードL1に送出する。すなわち、スイッチ素子SW(k)は、スイッチ信号S(k)がオン状態を表す場合にオン状態となり、電流源GC(k)から供給された電流I(k)をノードL1に送出する。尚、スイッチ素子SW(k)は、スイッチ信号S(k)がオフ状態を表す場合にはオフ状態となり、電流I(k)のノードL1への送出を停止する。
【0039】
上記した構成により、セレクタ204及びスイッチ素子SW1~SWnを含む電流選択部は、動作モード信号MODに基づき、以下のように選択して合成した電流を補正電流IcrとしてノードL1に供給する。
【0040】
すなわち、電流選択部(204、SW1~SWn)は、動作モード信号MODが通常モードを示す場合には、電流源GC1~GCnのうちで第2の電流源選択情報(B1~Bn)で示される電流源GCで生成された電流同士を合成した電流を補正電流IcrとしてノードL1に供給する。また、電流選択部は、動作モード信号MODがテストモードを示す場合には、テスト制御信号TSTで表される第1の電流源選択情報(B1~Bn)によって示される電流源GCで生成された電流同士を合成した電流を補正電流IcrとしてノードL1に供給する。
【0041】
また、電流選択部は、スペクトラム拡散指令信号SSIを受けた場合には、スペクトラム拡散制御部203で生成された第3の電流源選択情報(C1~Cn)にて示される数の電流源GCで生成された電流同士を合成したものを補正電流IcrとしてノードL1に供給する。
【0042】
以下に、位相誤差補正回路20の動作について、製品出荷後の通常動作(スペクトラム拡散有り、スペクトラム拡散無し)と、製品出荷前に実施するテストに分けて説明する。
[通常動作:スペクトラム拡散無し]
先ず、位相誤差補正回路20のレジスタ202には、製造バラツキ等に伴い位相差電圧PVに生じる誤差を無くす為にノードL1に供給する補正電流Icrを生成する為の第2の電流源選択情報(B1~Bn)が、電源投入に応じて保持される。尚、通常動作時には、通常モードを指定する例えば接地電位を有する動作モード信号MODが外部端子T3に供給される。
【0043】
これにより、位相誤差補正回路20のセレクタ204は、レジスタ202に保持されている第2の電流源選択情報としてのスイッチ信号B1~Bnをスイッチ信号S1~Snとしてスイッチ素子SW1~SWnに供給する。よって、位相誤差補正回路20は、電流源GC1~GCnで生成された電流I1~Inのうちで、スイッチ信号B1~Bnによってオン状態に設定された各スイッチ素子SWから送出された電流を合成した電流を、補正電流IcrとしてノードL1に供給する。
[通常動作:スペクトラム拡散有り]
上記した通常動作時において、半導体ICチップに含まれる制御部からスペクトラム拡散の実行を促すスペクトラム拡散指令信号SSIが供給されると、位相誤差補正回路20は、以下の処理を行う。
【0044】
すなわち、位相誤差補正回路20のセレクタ204は、スペクトラム拡散制御部203で生成された第3の電流源選択情報としてのスイッチ信号C1~Cnをスイッチ信号S1~Snとしてスイッチ素子SW1~SWnに供給する。かかるスイッチ信号C1~Cnによれば、スイッチ素子SW1~SWnのうちでオン状態に設定されるスイッチ素子SWの数が時間経過につれて増加又は低下する。それに伴いノードL1に供給される補正電流Icrの大きさも時間経過に伴い増加又は低下する。これにより、PLL回路100で生成される発振信号FQの周波数が時間経過につれて変動するという、いわゆるスペクトラム拡散処理がPLL回路100に施される。
[位相誤差補正回路20のテスト]
図5は、PLL回路100を含む半導体ICチップ200に対して製品出荷前のテストを行う為のテストシステム300の構成を示すブロック図である。
【0045】
図5に示すテストシステム300では、テスタ250が、テスト対象となる半導体ICチップ200の外部端子T1及びT2に接続される。尚、半導体ICチップ200の外部端子T3には、テストモードを指定する為に、電源電位VDDを有する動作モード信号MODが供給される。これにより、位相誤差補正回路20のセレクタ204は、テスタ250から送出されたテスト制御信号TSTによって表される第1の電流源選択情報としてのスイッチ信号A1~Anをスイッチ信号S1~Snとしてスイッチ素子SW1~SWnに供給する。
【0046】
テスタ250は、図6に示す位相誤差補正回路のテスト方法に従った手順で、半導体ICチップ200に含まれるPLL回路200の位相誤差補正回路20をテストする。
【0047】
図6において、テスタ250は、先ず、オン状態に設定するスイッチ素子を示す符号kとして、初期値の「1」を内蔵レジスタ(図示せず)に記憶する(ステップS11)。
【0048】
次に、テスタ250は、位相誤差補正回路20のスイッチ素子SW1~SWnのうちのSW(k)のみをオン状態に設定する第1の電流源選択情報(A1~An)を表すテスト制御信号TSTを半導体ICチップ200の外部端子T2に供給する(ステップS12)。
【0049】
ステップS12の実行により、位相誤差補正回路20の電流源GC1~GCnのうちでGC(k)が生成した電流I(k)のみがスイッチ素子SW(k)を介して、PLL回路100のノードL1に送出される。つまり、電流源GC(k)で生成された電流I(k)がそのまま補正電流IcrとしてノードL1に供給される。
【0050】
これにより、位相差電圧PVの電圧値が補正電流Icrの大きさに対応した分だけ増加し、その分だけVCO14で生成される発振信号FQの周波数が高くなる。ここで、図2に示すように、基準信号REFの立ち上がりエッジに対して分周発振信号FVの立ち上がりエッジの位相が遅れている場合には、位相比較器11は、その位相差dに対応したパルス幅を有する2値の位相差信号UPを出力する。尚、図2に示す位相差信号UPのパルス幅は、補正電流Icrの大きさに依存している。よって、補正電流Icrとしての電流I(k)の電流値が所望値であれば、位相差信号UPに含まれるパルスのパルス幅は所定のパルス幅と等しくなる。したがって、位相差信号UPのパルス幅を測定することにより、電流源GC(k)が適正な電流値を有する電流I(k)を生成しているか否かを判断することができる。
【0051】
そこで、テスタ250は、ステップS12の実行後、先ず、半導体ICチップ200の外部端子T1から送出された位相差信号UPを取り込む(ステップS13)。そして、テスタ250は、取り込んだ位相差信号UPのパルス幅を測定し、このパルス幅が所定の規定範囲内に含まれるか否かを判定する(ステップS14)。位相差信号UPのパルス幅が所定の規定範囲内に含まれる場合には、電流源GC(k)が適正な電流値を有する電流I(k)を生成していることになる。
【0052】
ステップS14において、位相差信号UPのパルス幅が規定範囲内に含まれると判定された場合、テスタ250は、符号kがスイッチ素子SWの総数である「n」と一致しているか否かを判定する(ステップS15)。
【0053】
ステップS15において、符号kが「n」と一致していないと判定された場合、テスタ250は、内蔵レジスタに記憶されている符号kに1を加算したものを新たな符号kとして内蔵レジスタに上書きする(ステップS16)。ステップS16の実行後、テスタ250は、上記したステップS12の実行に戻り、前述したステップS12~S15の一連の動作を実行する。
【0054】
この間、ステップS15において符号kが「n」と一致していると判定された場合、テスタ250は、位相誤差補正回路20が正常であることを表すテスト結果を例えば表示装置(図示せず)に表示させる(ステップS17)。また、ステップS14において位相差信号UPのパルス幅が規定範囲に含まれていないと判定された場合、テスタ250は、位相誤差補正回路20が不良であることを表すテスト結果を表示装置に表示させる(ステップS18)。
【0055】
このように、図6に示す位相誤差補正回路20のテストでは、テスタ250が、上記したステップS12~S16をn回に亘り繰り返し実行することにより、電流源GC1~GCnを1つずつテスト対象として、以下のように良否の判定を行う。
【0056】
すなわち、先ず、テスタ250は、テスト対象となる1つの電流源GC(k)(kは1~nの整数)で生成された電流I(k)を補正電流IcrとしてノードL1に供給(S12)する。次に、テスタ250は、位相比較器11から出力された位相差信号UPを取り込む(S13)。次に、テスタ250は、取り込んだ位相差信号UPに表れるパルスのパルス幅を測定し、このパルス幅が規定範囲内に含まれるか否かを判定する(S14)。
【0057】
ここで、位相差信号UPに表れるパルスのパルス幅が規定範囲内に含まれる場合、テスタ250は、テスト対象の電流源GC(k)が生成した電流I(k)が適正な電流値を有すると判定し、次の電流源GCをテスト対象(S16)とし、引き続き上記した一連の動作を行う(S12~S14)。
【0058】
この間、位相差信号UPに表れるパルスのパルス幅が規定範囲外であると判定された場合には、テスタ250は、位相誤差補正回路20が不良であることを表すテスト結果を得る(S18)。また、テスト対象としたn個の電流源GC1~GCnの全てで、位相差信号UP中のパルスのパルス幅が規定範囲内に含まれると判定された場合には、テスタ250は、位相誤差補正回路20が正常であることを表すテスト結果を得る(S17)。
【0059】
以上のように、位相誤差補正回路20のテストでは、テスタ250が、PLL回路100の位相比較器11から出力された2値の位相差信号UPのパルス幅を測定することにより、位相誤差補正回路20の良否を判定している。
【0060】
よって、位相誤差補正回路20から出力された補正電流Icrの電流値自体を測定することによって位相誤差補正回路20の良否を判定する場合に比べて、安価なテスタを用いることが可能となる。更に、位相誤差補正回路20から出力された補正電流Icrをテスト時にのみ半導体ICチップの外部端子に導出する為のスイッチ素子等が不要となるので、当該スイッチ素子で生じる余分な寄生容量やリークパスが形成されることはない。したがって、通常動作時における位相誤差補正回路20の特性劣化を防ぐことが可能となる。
【0061】
尚、図4に示す位相誤差補正回路20では、電源投入に応じて、通常モードで使用する第2の電流源選択情報(B1~Bn)をレジスタ202に保持させている。しかしながら、当該レジスタ202に代えてヒューズ素子等を用いて、第2の電流源選択情報にて表されるスイッチ信号B1~Bnの値を固定設定しても良い。
【0062】
また、上記実施例におけるPLL回路100では、チャージポンプ回路12により、2値の位相差信号(UP、DN)に含まれるパルスのパルス幅に対応した期間に亘り、ノードL1に電流を流すことにより、ノードL1に位相差電圧PVを生成している。しかしながら、このように2値の位相差信号(UP、DN)をアナログの電圧値を有する位相差電圧PVに変換する手段としては、チャージポンプ回路に限定されない。
【0063】
要するに、2値の位相差信号(UP、DN)を、当該位相差信号によって表される位相差に対応した電圧値を有する位相差電圧PVに変換し、これを位相差電圧ノードとしてのノードL1に印加する電圧変換部を位相比較器11及びループフィルタ13間に設ければ良い。
【0064】
また、図1に示すPLL回路100では、位相比較器11で生成された位相差信号(UP、DN)のパルス幅をテスタ250で測定する為に、位相差信号UPを半導体ICチップ200の外部端子T1を介して外部出力している。しかしながら、位相差信号UPに代えて位相差信号DNを外部端子T1を介して外部出力するようにしても良い。
【0065】
要するに、PLL回路100としては、以下の位相比較部、電圧変換部、発振部及び補正回路を含むもので有れば良い。また、このPLL回路100を含む半導体ICチップ200としては、補正回路テスト用の第1及び第2の外部端子(T1、T2)を含むものであれば良い。
【0066】
すなわち、位相比較部(11)は、基準信号(REF)と発振信号(FQ)との位相差を検出し、この位相差を2値で表す位相差信号(UP、DN)を生成し、位相差信号を第1の外部端子(T1)を介して半導体ICチップ200の外部に出力する。電圧変換部(12)は、位相差信号(UP、DN)を、当該位相差信号によって表される位相差に対応した電圧値を有する位相差電圧(PV)に変換して位相差電圧ノード(L1)に印加する。発振部(13~15)は、位相差電圧(PV)に応じた周波数を有する信号を発振信号(FQ、FV)として生成する。補正回路(20)は、補正電流(Icr)を位相差電圧ノード(L1)に供給する。ここで、第2の外部端子(T2)がテスト制御信号(TST)を受けた場合には、補正回路(20)は、当該テスト制御信号に応じた電流を生成しこれを補正電流として位相差電圧ノードに供給する。
【符号の説明】
【0067】
11 位相比較器
12 チャージポンプ回路
13 ループフィルタ
14 VCO
20 位相誤差補正回路
200 半導体ICチップ
204 セレクタ
250 テスタ
GC1~GCn 電流源
SW1~SWn スイッチ素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6