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特許7041539光ラインセンサユニットの受光出力補正方法及び受光出力補正システム、並びに、これに用いられる光ラインセンサユニット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】光ラインセンサユニットの受光出力補正方法及び受光出力補正システム、並びに、これに用いられる光ラインセンサユニット
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20220316BHJP
   H04N 1/48 20060101ALI20220316BHJP
   H04N 1/401 20060101ALI20220316BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20220316BHJP
   H04N 1/028 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
G06T1/00 430G
H04N1/48
H04N1/401
H04N1/04 101
H04N1/028 C
H04N1/04 D
H04N1/12 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018022087
(22)【出願日】2018-02-09
(65)【公開番号】P2019139489
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】510192019
【氏名又は名称】株式会社ヴィーネックス
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 修
(72)【発明者】
【氏名】龍満 和明
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6235765(JP,B1)
【文献】特開2016-009445(JP,A)
【文献】特開2016-015031(JP,A)
【文献】特開2008-187531(JP,A)
【文献】特開2006-340172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
H04N 1/46-62
H04N 1/40
H04N 1/04
H04N 1/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光ラインセンサユニットを用いて取得した受光出力に基づいて、第2光ラインセンサユニットの受光出力を補正する受光出力補正方法であって、
前記第1光ラインセンサユニットは、
少なくとも3色以上の色光を発光させることができる第1光源部と、
前記第1光源部からの色光が照射された対象物からの反射光又は透過光を受光する第1受光部とを備え、
前記3色以上の色光が混色しないように前記色光を独立に発光させるか、又は、任意の色光のスペクトルが他の色光のスペクトルに混在しないように狭帯域のスペクトルで発光させ、予め定めた基準カラーチャートからの反射光又は透過光を前記第1受光部で受光させることにより、各色の第1基準受光出力を取得するものであり、
前記第2光ラインセンサユニットは、
前記少なくとも3色以上の色光又は白色光を発光させることができる第2光源部と、
前記第2光源部からの色光又は白色光が照射された対象物からの反射光又は透過光を受光する第2受光部とを備え、
前記3色以上の色光を同時に発光させるか、又は、前記白色光を発光させ、前記基準カラーチャートからの反射光又は透過光を前記第2受光部で受光させることにより、各色の第2基準受光出力を取得するものであって、
前記第2基準受光出力により前記第1基準受光出力が係数行列を用いた線形関数で表される場合における前記係数行列の行列要素を最小二乗法で算出するとともに、
前記第2光ラインセンサユニットで前記3色以上の色光を同時に発光させるか、又は、前記白色光を発光させ、対象物からの反射光又は透過光を前記第2受光部で受光させることにより各色の受光出力を取得し、それらの各色の受光出力に対して、前記係数行列の行列要素に基づいて算出された前記係数行列の逆行列を用いて補正を行うことを特徴とする光ラインセンサユニットの受光出力補正方法。
【請求項2】
第1光ラインセンサユニットを用いて取得した受光出力に基づいて、第2光ラインセンサユニットの受光出力を補正する受光出力補正システムであって、
前記第1光ラインセンサユニットは、
少なくとも3色以上の色光を発光させることができる第1光源部と、
前記第1光源部からの色光が照射された対象物からの反射光又は透過光を受光する第1受光部とを備え、
前記3色以上の色光が混色しないように前記色光を独立に発光させるか、又は、任意の色光のスペクトルが他の色光のスペクトルに混在しないように狭帯域のスペクトルで発光させ、予め定めた基準カラーチャートからの反射光又は透過光を前記第1受光部で受光させることにより、各色の第1基準受光出力を取得するものであり、
前記第2光ラインセンサユニットは、
前記少なくとも3色以上の色光又は白色光を発光させることができる第2光源部と、
前記第2光源部からの色光又は白色光が照射された対象物からの反射光又は透過光を受光する第2受光部とを備え、
前記3色以上の色光を同時に発光させるか、又は、前記白色光を発光させ、前記基準カラーチャートからの反射光又は透過光を前記第2受光部で受光させることにより、各色の第2基準受光出力を取得するものであって、
前記第2基準受光出力により前記第1基準受光出力が係数行列を用いた線形関数で表される場合における前記係数行列の行列要素を最小二乗法で算出するとともに、
前記第2光ラインセンサユニットで前記3色以上の色光を同時に発光させるか、又は、前記白色光を発光させ、対象物からの反射光又は透過光を前記第2受光部で受光させることにより各色の受光出力を取得し、それらの各色の受光出力に対して、前記係数行列の行列要素に基づいて算出された前記係数行列の逆行列を用いて補正を行うことを特徴とする光ラインセンサユニットの受光出力補正システム。
【請求項3】
少なくとも3色以上の色光が混色しないように前記色光を独立に発光させるか、又は、任意の色光のスペクトルが他の色光のスペクトルに混在しないように狭帯域のスペクトルで発光させ、前記色光が照射された予め定めた基準カラーチャートからの反射光又は透過光を受光させることにより取得した各色の第1基準受光出力に基づいて、受光出力を補正する光ラインセンサであって、
前記少なくとも3色以上の色光又は白色光を発光させることができる第2光源部と、
前記第2光源部からの色光又は白色光が照射された対象物からの反射光又は透過光を受光する第2受光部と、
前記3色以上の色光を同時に発光させるか、又は、前記白色光を.発光させ、前記基準カラーチャートからの反射光又は透過光を前記第2受光部で受光させることにより取得した各色の第2基準受光出力に基づいて算出された、前記第2基準受光出力により前記第1基準受光出力が係数行列を用いた線形関数で表される場合における前記係数行列の行列要素の逆行列を記憶する記憶部とを備え、
前記3色以上の色光を同時に発光させるか、又は、前記白色光を発光させ、対象物からの反射光又は透過光を前記第2受光部で受光させることにより各色の受光出力を取得し、それらの各色の受光出力に対して、前記係数行列の逆行列を用いて補正を行うことを特徴とする光ラインセンサユニット。
【請求項4】
前記第2基準受光出力により前記第1基準受光出力が区分線形関数で表される場合には、各区分ごとに係数行列の行列要素の逆行列が前記記憶部に記憶されることを特徴とする請求項3に記載の光ラインセンサユニット。
【請求項5】
前記3色以上の色光は、LEDが発する色光であることを特徴とする請求項3又は4に記載の光ラインセンサユニット。
【請求項6】
前記3色以上の色光は、LDが発する色光であることを特徴とする請求項3又は4に記載の光ラインセンサユニット。
【請求項7】
前記3色以上の色光は、LEDが発する色光とLDが発する色光を混合した色光であることを特徴とする請求項3又は4に記載の光ラインセンサユニット。
【請求項8】
前記白色光は、青色若しくは紫色のLEDと蛍光体により発せられることを特徴とする請求項3又は4に記載の光ラインセンサユニット。
【請求項9】
前記3色以上の色光を同時に発光させる場合には、RGB3色LEDを同時に点灯させるか、RGV3色LEDを同時に点灯させるか、前記RGB3色LED又は前記RGV3色LEDと白色LEDを混合した光源を同時に点灯させるか、RGB3色LDを同時に点灯させるか、RGV3色LDを同時に点灯させるか、前記RGB3色LD又は前記RGV3色LDと白色LEDを混合した光源を同時に点灯させるか、あるいは、LEDとLDと白色LEDを混合した光源を同時に点灯させることを特徴とする請求項3又は4に記載の光ラインセンサユニット。
【請求項10】
前記白色光の出力が10%から90%に立ち上がるまでの時間、及び、90%から10%に立ち下がるまでの時間のそれぞれが、2μ秒以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の光ラインセンサユニット。
【請求項11】
前記蛍光体が、YAG蛍光体であることを特徴とする請求項8に記載の光ラインセンサユニット。
【請求項12】
長尺形状を有し、長手方向に沿って出射面が形成された導光体と、
前記導光体の長手方向に沿って設けられ、前記導光体の内部に入射した光を拡散させて前記出射面から出射させる光拡散パターンと、
前記導光体の長手方向における一方の端面に対向し、当該一方の端面から前記導光体の内部に任意の色光を入射させる光源とをさらに備え、
前記光源は、前記任意の色光のスペクトルを紫外域、可視域、赤外域に区分した場合に少なくとも一つの区分の色光のスペクトルを有する光源であり、
前記第2光源部は、前記導光体の長手方向における前記一方の端面に対向し、当該一方の端面から前記導光体の内部に前記光源と異なった色光を入射させることを特徴とする請求項3~11のいずれか一項に記載の光ラインセンサユニット。
【請求項13】
長尺形状を有し、長手方向に沿って出射面が形成された導光体と、
前記導光体の長手方向に沿って設けられ、前記導光体の内部に入射した光を拡散させて前記出射面から出射させる光拡散パターンと、
前記導光体の長手方向における一方の端面に対向し、当該一方の端面から前記導光体の内部に任意の色光を入射させる光源とをさらに備え、
前記光源は、前記任意の色光のスペクトルを紫外域、可視域、赤外域に区分した場合に少なくとも一つの区分の色光のスペクトルを有する光源であり、
前記第2光源部は、前記導光体の長手方向における他方の端面に対向し、当該他方の端面から前記導光体の内部に前記光源と異なった色光を入射させることを特徴とする請求項3~11のいずれか一項に記載の光ラインセンサユニット。
【請求項14】
長尺形状を有し、長手方向に沿って出射面が形成された導光体と、
前記導光体の長手方向に沿って並べて設けられ、前記導光体の内部に任意の色光を入射させる光源とをさらに備え、
前記光源は、前記任意の色光のスペクトルを紫外域、可視域、赤外域に区分した場合に少なくとも一つの区分の色光のスペクトルを有する光源であり、
前記第2光源部は、前記導光体の長手方向に沿って前記光源と異なる配置で設けられていることを特徴とする請求項3~11のいずれか一項に記載の光ラインセンサユニット。
【請求項15】
長尺形状を有し、長手方向に沿って出射面が形成された導光体と、
前記導光体の長手方向における一方の端面に対向し、当該一方の端面から前記導光体の内部に任意の色光を入射させる光源とをさらに備え、
前記光源は、前記任意の色光のスペクトルを紫外域、可視域、赤外域に区分した場合に少なくとも一つの区分の色光のスペクトルを有する光源であり、
前記第2光源部は、前記導光体の長手方向に沿って前記光源と異なる配置で設けられていることを特徴とする請求項3~11のいずれか一項に記載の光ラインセンサユニット。
【請求項16】
長尺形状を有し、長手方向に沿って出射面が形成された導光体と、
前記導光体の長手方向における一方の端面に対向し、当該一方の端面から前記導光体の内部に任意の色光を入射させる光源と、
前記導光体の長手方向における他方の端面に対向し、当該他方の端面から前記導光体の内部に前記光源と異なった色光を入射させる別の光源とをさらに備え、
前記各光源は、前記任意の色光のスペクトルを紫外域、可視域、赤外域に区分した場合に少なくとも一つの区分の色光のスペクトルを有する光源であり、
前記第2光源部は、前記導光体の長手方向に沿って前記光源と異なる配置で設けられていることを特徴とする請求項3~11のいずれか一項に記載の光ラインセンサユニット。
【請求項17】
前記少なくとも3色以上の色光を発光させる複数の単色光源のうち、青色の単色光を発光させる単色光源の発光スペクトルのピーク波長が、前記白色光の青色波長領域における発光スペクトルのピーク波長よりも短波長であることを特徴とする請求項3~16のいずれか一項に記載の光ラインセンサユニット。
【請求項18】
前記第2光源部から出射され、対象物で反射又は透過した光を導くためのレンズアレイをさらに備え、
前記第2受光部は、前記レンズアレイにより収束された光を受光し、電気信号に変換することを特徴とする請求項3~17のいずれか一項に記載の光ラインセンサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙幣、有価証券などの紙葉類を読み取る光ラインセンサユニットの受光出力補正方法及び受光出力補正システム、並びに、これに用いられる光ラインセンサユニットに関し、特に紙葉類の色再現に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙葉類を読み取る光ラインセンサユニットの中には、RGB各色の単色LED光源や白色LED光源を用いて紙葉類のカラー画像を取得できるものがある。白色LED光源としては、紫外線LEDと蛍光体を組み合わせたものや、紫色又は青色などの可視光LEDと蛍光体を組み合わせたものなどが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
RGB各色の単色LED光源を用いる場合、従来は、各単色LED光源を順次(独立)に点灯させることによりカラー画像を取得していた。近年、紙葉類の読み取り速度の高速化が求められてきており、各単色LED光源を同時に点灯させるとともに、受光部側にカラーフィルタを設けることにより、従来の3倍の速度で読み取り可能な構成が提案されている。白色LED光源を用いた構成においても同様に、紙葉類の読み取り速度の高速化が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-53882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の方式では、色再現の観点において問題があった。具体的には、ディスプレイやプリンタなどの一般的な電子機器では、sRGBと呼ばれる国際電気標準会議(IEC)が定めたRGB色空間の国際標準規格が採用されている。このsRGBに則った色調整を行うことにより、入力時と出力時の色の差異を少なくすることが可能である。光ラインセンサユニットにおいても、sRGBを採用することが好ましいが、sRGBの色域を忠実に再現できるような光源が存在しないという問題、或いは、そもそもRGB単色LED光源を同時に点灯した場合や、蛍光体方式白色LED光源のみ点灯した場合では、sRGBの色域を満足しないという問題があり、また更には、かなりの種類の紙葉類については、sRGBの色域に収まるのではあるが、sRGBの色域に収まらない紙葉類も少なくはなく、しかも該紙葉類が主要な紙葉類であるという問題も浮上してきた。
【0006】
図8は、RGB各色の単色LED光源をそれぞれ個別に点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。このように、R(赤色)に対応する発光スペクトルのピーク波長は約650nm、G(緑色)に対応する発光スペクトルのピーク波長は約520nm、B(青色)に対応する発光スペクトルのピーク波長は約460nmである。
【0007】
図9は、RGB各色の単色LED光源を同時に点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。
但し、このように、RGB各色の単色LED光源を同時に点灯させたときには、各単色LED光源を個別に点灯させたときと同様に、約650nm、約520nm、約460nmをピーク波長とする3つのピークが現れる。
【0008】
sRGBの色域においては、G(緑色)に対応する発光スペクトルの主波長が約550nmとなる。そのため、上記のようにRGB各色の単色LED光源を同時に点灯させた場合のG(緑色)に対応する発光スペクトルのピーク波長(約520nm)との差異が大きく、sRGBの色域を忠実に再現することができない。
【0009】
図10は、RGB各色の単色LED光源を同時に点灯させたときの色域をsRGBの色域と比較して示したxy色度図である。sRGBの色域は実線で示されており、RGB各色の単色LED光源を同時に点灯させ、かつ、RGB色分解フィルタ、RGBセンサの分光感度その他の分光特性を考慮したときの色域を点線で示す。ここで、RGB色分解フィルタは、クロストークがあえて大きいものを選択した。図10の実線が、sRGBの色域であり、点線がRGB単色のLED光源を同時に点灯した場合の色再現域である。
【0010】
このように、RGB各色の単色LED光源を同時に点灯させたときの色域は、sRGBの色域に対して大きく相違している。そこで、RGB各色のスペクトル強度を調整することによりsRGBの色域に近付けることも考えられるが、それには限界があり、sRGBの色域に近付けることは困難である。
【0011】
図11は、白色LED光源を点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。このように、白色LED光源を点灯させたときには、約460nmをピーク波長とするシャープな発光スペクトルと、約550nmをピーク波長とするブロードな発光スペクトルとが現れる。
【0012】
ブロードな発光スペクトルのピーク波長(約550nm)は、sRGBの色域を再現する観点からは好ましい波長であるが、sRGBの色域を忠実に再現することはできない。白色LED光源における蛍光体の量を変更すれば、図11に破線で示すように各ピークの強度を調整することが可能であるが、sRGBの色域に一致させることはやはり困難である。白色LED光源の色再現域をsRGB色域と比較したものが、図12である。図12の実線が、sRGB色域、点線が、白色LED光源の色再現域である。
【0013】
前述の蛍光体方式の白色LED光源とRGB単色のLED光源を組み合わせれば、sRGBの色域にマッチングを取ることが可能であることが分かっており、白色LED光源とRGB各色の単色LED光源を同時に点灯させたときの色域をsRGBの色域と比較してその結果について図13A及び図13Bに示す。図13Aは、白色LED光源と単色のRGBLED光源を同時に点灯したときの合成スペクトルである。図13Bは、その際の色再現域をsRGBの色域と比較したものである。
【0014】
本願発明者は、以上のように、紙葉類に関しては、sRGB域へのカラーマッチングを検討してきたが、ある種の紙葉類については、彩度が低いものの、中間色において、sRGBの色域を超えるものがあることが判明しており、それに対しては、例えば、NTSC色域やAdobe(登録商標)RGB色域のような更に広い色域が必要であることを新たに見出した。
【0015】
本願発明では、前記「カラーマッチングによる色再現の良化」の観点ではなく、「色再現域の拡大による色再現の良化」ついて提案する。これによって、中間色の紙葉類の読み取り精度が向上し、その結果、紙葉類の真偽判別がより正確になることが期待される。
【0016】
更に、色再現域を拡大する手法は、印刷機器に見られるように、補色を用いた6色などの多色インクによるものがあるが、加色混合方式にこの手法を応用すると、紙葉類鑑別用の光ラインセンサユニットにおいては、可視光源だけではなく、紫外光源や赤外光源も用いるため、光源数が増え、光源を配置する基板が大きくなり、更に導光体の入光部の寸法が大きくなり、ひいては、光ラインセンサユニット全体寸法が大きくなる。そのため、市場の趨勢であるダウンサイジングに逆行することになるため、まずは、光源は4色以下に抑えることが好ましい。また、NTSC色域やAdobe(登録商標)RGB色域以上の色域が実現できるならば、3色以下の光源がより好ましい。更に、光源の経時変化に対する制御の容易性を考慮すれば、高速の蛍光体方式の白色LED光源がより好ましい。
【0017】
前述した如く、導光体の端部にLEDを配置するサイドライト方式においては、ダウンサイジングの要求を満たすには、3色の単色LED光源を用いることが好ましく、更には、蛍光体方式の白色LED光源がより好ましいのではあるが、直下型のLED配置においては、工夫をすれば、4色を超えるLED配置においてもダウンサイジングの要求を満たす可能性はある。加えて、サイドライト方式においても、サイズの制約が許される場合は、4色を超える数の光源を用いることが出来ることは言うまでもない。
【0018】
紙葉類が、sRGB色域を超えた例を図14A図14Cに示す。測定は市販の色彩色度計を用いた。
図14Aに、シアン領域と黄色領域がsRGB域をはみ出している例を示した。図14Bに、緑色領域が、sRGB域をはみ出している例を示した。図14Cに、シアン領域がsRGB域をはみ出している例を示した。
図14A図14Cの破線はNTSCの色域を示し、一点鎖線はAdobe(登録商標)RGBの色域を示し、実線はsRGBの色域を示す。いずれの紙葉類も、NTSCやAdobe(登録商標)RGBの色域に含まれている。
【0019】
以上のように、ある種の紙葉類においては、sRGB域よりも広い色再現域を必要とする。即ち、sRGBの色域よりもより広いNTSCの色域以上の色再現域が必要になる。
【0020】
前述した如く、単色RGBLED光源を順次に点灯した際には、NTSC色域やAdobe(登録商標)RGB色域を超える色再現域を満足していたのであるが、より高速化が求められるにつれ、RGB単色LED光源を同時に点灯する方式や蛍光体方式の高速の白色LED光源が必要となった。しかしながら、RGB単色LED光源を同時に点灯した場合や蛍光体方式白色LED光源の色再現域は極めて狭く、sRGBの色域でさえ満足せず、しかも、ある種の紙葉類においては、sRGB色域を超えることから、RGB単色LED光源を順次に点灯する場合と同等の色再現域の実現に向けた新たな手法の開発が必要である。
【0021】
図15にRGB単色LED光源を順次に点灯する方式の色再現域を示す。RGB単色LED光源を順次に点灯する方式の色再現域はNTSC比で120%以上であることを確認している。Adobe(登録商標)RGB色域に対しても同様である。図15の破線はNTSCの色域を示し、一点鎖線はAdobe(登録商標)RGBの色域を示し、細実線はsRGBの色域を示し、太実線はRGB単色LED光源を順次に点灯する方式の色域を示す。
【0022】
ところで、印刷分野においては、sRGB色域を超える色再現域を有している。図16にJapan Color(登録商標)2001の色再現域を点線で示す。Japan Color(登録商標)2001色再現域は、sRGB色域をかなり超えており、前記のある種の紙葉類と同様にNTSC色域やAdobe(登録商標)RGB色域等の色域を満足する色再現域を獲得する必要があり、そうしなければ、ある種の中間色の色域において、色再現が不正確になり、ひいては真偽判定も不正確になる。
【0023】
また、前記ある種の紙葉類の色再現域とJapan Color(登録商標)2001と比較したものが、図17A図17Cである。前記のある種の紙葉類の色域もJapan Color(登録商標)2001に包含されている。即ち、Japan Color(登録商標)2001を包含する色再現域を実現できれば、ほぼすべての紙葉類の読み取り精度が向上し、真偽判定もより正確になる。
【0024】
本願発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、RGB色分解フィルタの透過スペクトルの裾野の切れが悪く、RGB間のクロストークが大きい場合であっても、sRGBの色域を超えるNTSC以上の色域を満足することが可能であり、しかも、安価、かつ、処理速度が単色LED光源を順次に点灯する方式よりも高速であるライン光源及びこれを備えた光ラインセンサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本願発明に係る主たるライン光源は、紙葉類を読み取る光ラインセンサユニットの照明光源として用いられるライン光源であって、白色LED光源、或いは、3色以上の複数の単色LED光源とを備える。前記白色LED光源は、蛍光体を蛍光させることにより白色光を発生させる。前記複数の単色LED光源は、異なる発光スペクトルのピーク波長を有する3色以上の単色光を発生させる。
前記ライン光源は、前記白色LED光源を点灯させるか、或いは、前記複数の単色LED光源を同時に点灯させて前記紙葉類を照明する。前記複数の単色LED光源を同時に点灯する目的は、高速化にある。しかし、前述した如く、このままでは、色再現域が非常に狭くなり、sRGBの色域でさえ満足せず、NTSCやAdobe(登録商標)RGBの色域については、言うまでもない。RGB単色LED光源を同時に点灯させた場合や蛍光体方式の白色LED光源の色再現域、RGB単色LEDを順次(独立)に点灯した際の色再現域の比較を各種色域を含め図18に示す。図18の破線はNTSCの色域を示し、一点鎖線はAdobe(登録商標)RGBの色域を示し、点線は白色LED光源の色域を示し、細実線はsRGBの色域を示し、太実線はRGB単色LED光源を順次に点灯する方式の色域を示し、二点鎖線はRGB単色LED光源を同時に点灯する方式の色域を示す。
【0026】
そこで、例えば、予め、基準となる光ラインセンサユニットを設定しておき、前記光ラインセンサユニットについて、マクベスチャートのような基準カラーチャートに対し、3色のRGBの単色LED光源を順次に(独立に)点灯した際の各色に対応した受光センサ出力を求める。或いは、RGV(紫色)LED光源やRY(黄色)GBの単色LEDを順次(独立)に点灯した際の各色に対応した受光センサ出力を求めてもよい。或いは、RGB単色LED光源と白色LED光源の組み合わせやRGV単色LED光源と白色LED光源の組み合わせに3色或いは4色の切り替え可能な狭帯域の光学フィルタを組み合わせてもよい。要は、まず、基準とする3色或いは、4色の色光を順次に点灯させ、各RGB光学フィルタを有するRGB受光センサ出力を求め、或いは、RYGB光学フィルタを有するRYGB受光センサ出力を求めることで、受光センサが受光する光が、受光センサが有するRGB色分解フィルタやRYGBフィルタを透過した際にクロストーク成分の無い信号を得ておく。ただし、3色又は4色に限らず、少なくとも3色以上の色光を発光させることができればよい。
【0027】
次に、RGB単色LED光源を同時に点灯した場合や、RGV単色LED光源を同時に点灯した場合、或いは、白色LED光源を点灯した場合について、受光センサが有するRGB色分解フィルタを透過して該受光センサに到達した光により得られた各RGBに対応する受光センサ出力、或いは、4色の単色LEDを同時に点灯した際に、4色に対応した4色の色分解フィルタを透過して受光センサに到達した光により得られた受光センサ出力を求める。4色を超える場合は、その色光に対応する数の受光センサ出力を求めればよい。
また、更には、RGB単色LED光源を同時に点灯する代わりに、色再現域の良好なRGB単色LED光源と白色LED光源を組み合わせて同時に点灯してもよく、また、RGV単色LED光源と白色LED光源の組み合わせで同時に点灯してもよい。
【0028】
本発明に係る受光出力補正システムでは、2つの光ラインセンサユニット(第1光ラインセンサユニット及び第2光ラインセンサユニット)を用いて、一方の光ラインセンサユニット(第1光ラインセンサユニット)を用いて取得した受光出力に基づいて、他方の光ラインセンサユニット(第2光ラインセンサユニット)の受光出力を補正する。
【0029】
上述の通り、前記第1光ラインセンサユニット(基準となる光ラインセンサユニット)は、少なくとも3色以上の色光を発光させることができる第1光源部(例えば3色のRGBの単色LED光源)を備える。また、前記第1光ラインセンサユニットは、前記第1光源部からの色光が照射された対象物からの反射光又は透過光を受光する第1受光部を備える。前記第1光ラインセンサユニットは、前記3色以上の色光が混色しないように前記色光を独立に発光させるか、又は、任意の色光のスペクトルが他の色光のスペクトルに混在しないように狭帯域のスペクトルで発光させ、予め定めた基準カラーチャートからの反射光又は透過光を前記第1受光部で受光させることにより、各色の第1基準受光出力を取得する。
【0030】
一方、前記第2光ラインセンサユニットは、前記少なくとも3色以上の色光又は白色光を発光させることができる第2光源部を備える。また、前記第2光ラインセンサユニットは、前記第2光源部からの色光又は白色光が照射された対象物からの反射光又は透過光を受光する第2受光部を備える。前記第2光ラインセンサユニットは、前記3色以上の色光を同時に発光させるか、又は、前記白色光を発光させ、前記基準カラーチャートからの反射光又は透過光を前記第2受光部で受光させることにより、各色の第2基準受光出力を取得する。
【0031】
前記3色以上の色光は、LEDが発する色光であってもよいし、LDが発する色光であってもよいし、LEDが発する色光とLDが発する色光を混合した色光であってもよい。前記白色光は、青色若しくは紫色のLEDと蛍光体により発せられてもよい。
前記3色以上の色光を同時に発光させる場合には、RGB3色LEDを同時に点灯させるか、RGV3色LEDを同時に点灯させるか、前記3色LEDと白色LEDを混合した光源を同時に点灯させるか、RGB3色LDを同時に点灯させるか、RGV3色LDを同時に点灯させるか、前記3色LDと白色LEDを混合した光源を同時に点灯させるか、あるいは、LEDとLDと白色LEDを混合した光源を同時に点灯させてもよい。
【0032】
以下においては、特に3色のLED光源の場合の一例について詳述する。
【0033】
紙葉類用途の光ランセンサユニットにおいても、フラットベットスキャナ、デジタルカメラ、スマートフォン用のカメラ等においてもRGB色分解カラーフィルタを用いる機器は、多々あるが、何れもが、多かれ少なかれ、RGB各色へのクロストーク成分を有する。
【0034】
即ち、R受光センサ出力には、青色LED光源と緑色LED光源の発光スペクトルのR領域成分が含まれ、同様にG受光センサ出力には、赤色LED光源と青色LED光源の発光スペクトルのG領域成分が含まれ、B受光センサ出力には、赤色LED光源と緑色LED光源の発光スペクトルのB領域成分が含まれる。
【0035】
或いは、RGB色分解フィルタのクロストーク成分を無くするために、受光センサのRGB色分解フィルタの透過スペクトルを狭帯域にする方法が考えられるが、RGB色分解フィルタの各色に対する透過率が極めて低くなり、それに伴い、RGB色分解フィルタの透過光量が減少し、RGBセンサの出力が極めて小さくなる結果、信号のSNR(Signal to Noise Ratio)が劣化するため現実的ではない。また、仮に、SNRの問題は抜きにしても、RGB色分解フィルタの層構造が複雑になり、製造コストが各段に上昇してしまうため、同じく現実的ではない。
但し、色分解フィルタのクロストーク成分を極力少なくした基準となる光ラインセンサユニットを用いることは可能である。
【0036】
更には、SNRを向上させようとすると多重サンプリングをする必要に迫られ、その結果、処理速度が低下する。処理速度を高速化しつつ、SNRを確保するには、サンプリング回数を少なくすることが重要であり、紙葉類用途の光ラインセンサユニットにおいては、多重サンプリングを避けるべきである。
【0037】
即ち、クロストーク成分を有する場合において、RGB受光センサの出力を維持しつつ、しかも、クロストーク成分を極めて少なくするためには、前述した以外の手段を開発することを目指すべきである。
【0038】
そして、RGB色分解フィルタがクロストークを生じていても、別手段により、前記クロストーク成分を極めて少なく出来れば、RGBの単色LED光源を順次に(独立に)点灯した場合と同等の色再現域の広いRGB受光センサ出力が得られる。以下において、本願発明者は、前述の別手段について詳述する。
【0039】
具体的には、前記第2基準受光出力により前記第1基準受光出力が係数行列を用いた線形関数で表される場合における前記係数行列の行列要素を最小二乗法で算出する。そして、前記第2光ラインセンサユニットで前記3色以上の色光を同時に発光させるか、又は、前記白色光を発光させ、対象物からの反射光又は透過光を前記第2受光部で受光させることにより各色の受光出力を取得し、それらの各色の受光出力に対して、前記係数行列の行列要素に基づいて算出された前記係数行列の逆行列を用いて補正を行う。前記係数行列の行列要素の逆行列は、前記第2光ラインセンサユニットの記憶部に記憶される。前記第2基準受光出力により前記第1基準受光出力が区分線形関数で表される場合には、各区分ごとに係数行列の行列要素の逆行列が前記記憶部に記憶される。
【0040】
例えば、任意の媒体に対するRGB単色LEDの順次(独立)に点灯した時の各RGBセンサの出力をGn(R)、Gn(G)、Gn(B)とし、RGB単色LEDの同時に点灯した時、或いは白色LEDの点灯時のセンサ出力をGm(R)、Gm(G)、Gm(B)とすると、各パラメータにおいて線形関係が成り立つ場合、(式1)の関係に表される。前記線形関係は、紙葉類においては、ハイライトや黒つぶれの画像がほとんど無いという前提をおく。
紙葉類においても非線形性を考慮する必要の生じた場合は、区分線形関数で近似する等の手段を用いればよい。その際には、各RGB受光センサの出力値に対応した行列要素を用い、任意のRGB受光センサ出力に対する行列要素を割り当てるルックアップテーブルを作成しておけばよい。そのためには、各RGB受光センサ出力においてGn(R)、Gn(G)とGm(R)、Gm(G)、Gm(B)の関係を(式1)に対して多数求めることになる。例えば、3段階の階調に対するGn(R)、Gn(G)とGm(R)、Gm(G)、Gm(B)の関係を求めるためには27通り、4段階の場合は、64通りの組み合わせ、5段階の場合は125通りの組み合わせを求めればよい。即ち、(式1)が27個、64個、125個の方程式となる。
【数1】
(式1)においては、Gn(R)、Gn(G)、Gn(B)並びにGm(R)、Gm(G)、Gm(B)は各々のホワイトバランス補正していることが前提となる。
【0041】
次に、基準カラーチャートを読ませた場合の各色に対する関係をサフィックス“k”として(式2)で表す。
【数2】
但し、k>9である。
例えば、マクベスチャートを用いる場合は、通常24色あるので、各RGBセンサ出力について24個の方程式(RGB各色では、3×24=72個の方程式)が得られ、最小二乗法により、行列要素を求めることが出来る。
【0042】
(式2)から求めた3×3行列要素は、クロストークのある場合とクロストークの無い場合の関係を表しており、(式3)で示すように(式2)の逆行列を求めれば、白色LED光源の点灯時、或いは、RGB単色LED光源を同時に点灯した時などのRGB受光センサ出力から順次(独立)に点灯した際のRGB受光センサ出力を求めることが出来る。その結果、RGB単色LEDを順次(独立)に点灯した場合と同等の広い色再現域が得られる。(式2)の逆行列を(式3)に示す。
【数3】
【0043】
但し、前記のマクベスチャートを必ずしも用いる必要は無く、他の任意のチャートを用いても良い。
例えば、16色の基準カラーチャートや多色であるがRAL基本色など各種の色見本を用いても良い。また、中間色の豊富な折り紙などを使った自作のカラーチャートでもよい。
【0044】
このような方法によれば、安価なRGB色分解フィルタを用いた場合に生ずるRGB色分解フィルタのクロストーク成分を極めて少なくすることが出来る。
また、更には、所望の色再現域を「基準となるLED光源以外に改めて別の基準となるRGB光源等のカラーチャートによるRGB受光センサ出力」を求めておけば、その色再現域に極めて近い色再現域を獲得することが出来る。
【0045】
更に、4色の光源を用いた場合には、(式2)の行列要素が4×4の行列要素になるだけであり、(式4)にY(黄色)の光源を加えた場合を例示する。また仮に、更に光源が増えた場合でも行列要素や光源の色光に対応したセンサ出力などを追加すればよい。
【数4】
【0046】
更に、色分解のパラメータ数に対応した一般的な変換式を(式5)に示す。
【数5】
ここで、p=kである。
【0047】
以上より、所望の色再現域を実現するためには、主波長への白色点からの延長線上に色再現域の各点がプロットされることを考慮し、光源の主波長を決め、その光源(例えば、RGBLED光源)を順次(独立)に点灯し、ホワイトバランスを取った上で、基準カラーチャートを照明し、各RGB受光センサ出力を求め、かつ、単色RGBLED光源を同時に点灯した際の基準カラーチャートに対する各RGB受光センサ出力を求め、或いは、蛍光体方式の白色LED光源を点灯した際の基準カラーチャートに対する各RGB受光センサ出力を求め、或いは、単色RGBLED光源と白色LED光源を組み合わせて同時に点灯させ、基準カラーチャートを照明し、各RGB受光センサ出力を求め、順次(独立)に点灯した場合と同時に点灯した場合の関係を(式3)や(式4)で求めておけば、RGB色分解フィルタにクロストークがある場合においても、色再現域を各段に広くすることが可能になり、紙葉類の豊富な中間色を精度よく読み取ることが可能になり、その結果、紙葉類の真偽判定も正確になる。
【0048】
本願発明において用いる白色LED光源は、出力が10%から90%に立ち上がるまでの時間、及び、90%から10%に立ち下がるまでの時間のそれぞれは、2μ秒以下であることが好ましい。
【0049】
このような構成によれば、応答性の高い白色LED光源を用いることにより、紙葉類を高速、かつ正確に判別することができる。
【0050】
前記蛍光体は、YAG蛍光体であることが好ましい。
【0051】
以上のような方法によれば、応答性の高いYAG蛍光体を用いた白色LED光源、或いは、RGB単色LED光源を同時に点灯させることにより、紙葉類をより高速かつ精度よく読み取ることができる。更には、4色以上の単色LED光源や蛍光体を用いた白色LEDと光源と単色LED光源の組み合わせにおいては、紙葉類を更に精度よく読み取ることが可能になる。
【0052】
本願発明においては、以上のように、基準光源を設定しておき、前記光源を同時に点灯した際に、該基準光源の色再現域に極めて近づける手法を主として提案してきたが、基準光源を任意として、理想的なクロストークの無い(極めて少ない)RGB色分解フィルタにより、各色光に対応したデータを取得し、その色再現域を確認後、(式1)から(式5)にある行列要素を求め、実際に使用する光源を点灯した場合にも、前記基準光源の場合と同様に、適用可能である。例えば、単色RGBLED光源と白色LED光源を透過スペクトルがシャープでクロストークの無いRGB色分解フィルタと組み合わせたRGB色光を順次(独立)に点灯し、基準とするカラーチャートに対するセンサ出力を用いてもよい。
【0053】
要は、基準とするRGB光源の作り方の違いが存在するだけである。
【0054】
本願発明を光ラインセンサユニットに応用する際には、例えば、RGB3色について言えば、予め、前記光ラインセンサユニットを順次に点灯した際の基準光ラインセンサユニットを設け、独立した色光により前記基準カラーチャートに対するRGB受光センサ出力Gn(R)_k,Gn(G)_k,Gn(B)_kを求めておき、或いは、多重サンプリングなどのSNRを維持する別手段を設けたクロストークの無い同時に点灯する基準光ラインセンサユニットにより前記基準カラーチャートに対するRGB受光センサ出力Gn(R)_k,Gn(G)_k,Gn(B)_kを求めておき(この場合は、製品ではないため、読み取り速度に制限を設けずともよい)、次いで、実際の製品である同時に点灯する光ラインセンサユニット毎の基準カラーチャート対するRGB受光センサ出力Gm(R)_k,Gm(G)_k,Gm(B)_kを(式3)により補正をすれば、前記光ラインセンサユニットを同時に点灯した場合においても該光ラインセンサユニットを前記順次に点灯する基準光ラインセンサユニットに極めて近い色再現域が実現可能になる。4色以上の光源についても(式4)や(式5)を前述した方法について適用すればよい。
【0055】
(式3)、(式4)或いは、より一般的には、(式5)の補正マトリクスをフラッシュメモリなどの書き換え可能な記憶デバイスが備わったFPGA(field-programmable gate array)のなどのプログラマブルロジックデバイスに固定係数と伴に演算回路として内蔵させておけば、全ての製造品に対応可能である。製造が安定していれば前記光ラインセンサユニット毎の前記基準カラーチャートでの補正は必ずしも必要ではなく、製造期間毎、ロット毎に前記基準カラーチャートを用いて代表的な製造品を補正し、同じ行列要素を同ロットの製品に用いるなどの選択肢はある。また、或いはニーズに応じて、(式3)、(式4)より一般的には、(式5)などの変換式を基礎として行列要素を適宜変更することで色再現域を変更することも可能である。その場合は前記FPGA内臓メモリの行列要素を書き直せばよい。更には、基準カラーチャートを変更することにより、色再現域の変更が可能である。その際には、基準RGB単色光源を順次(独立)に点灯し、RGB受光センサにてGn(R)_k,Gn(G)_k,Gn(B)_kを得ておき、または、前記光源(LEDやLD(laser diode)のRGB色光を順次にRGB受光センサにてGn(R)_k,Gn(G)_k,Gn(B)_kを得ておき、RGB光源を同時に点灯した際に得たGm(R)_k,Gm(G)_k,Gm(B)_kを(式3)により変換すればよい。
【0056】
また或いは、何種類かの色域の異なる基準カラーチャートについてRGB受光センサにてGn(R)_k,Gn(G)_k,Gn(B)_kを得ておき、同じ基準カラーチャートによるRGB光源を同時に点灯した際に得たGm(R)_k,Gm(G)_k,Gm(B)_kを求め、異なる基準カラーチャートの変換テーブルを設けておき、例えば、(国別に)色域の特徴が異なる紙葉類等に適宜適用してもよい。
【0057】
本願発明は、サイドライト片側入射型、サイドライト両側入射型、直下型、直下型とサイドライト型(片側入射)の混合方式、又は、直下型とサイドライト型(両側入射)の混合方式などの光ラインセンサユニットに適用することができる。
【0058】
サイドライト片側入射型の光ラインセンサユニットは、導光体と、光拡散パターンと、光源とを備える。前記導光体は、長尺形状を有し、長手方向に沿って出射面が形成されている。前記光拡散パターンは、前記導光体の長手方向に沿って設けられ、前記導光体の内部に入射した光を拡散させて前記出射面から出射させる。前記光源は、前記導光体の長手方向における一方の端面に対向し、当該一方の端面から前記導光体の内部に任意の色光を入射させる。前記光源は、前記任意の色光のスペクトルを紫外域、可視域、赤外域に区分した場合に少なくとも一つの区分の色光のスペクトルを有する光源である。前記第2光源部は、前記導光体の長手方向における前記一方の端面に対向し、当該一方の端面から前記導光体の内部に前記光源と異なった色光を入射させる。
【0059】
サイドライト両側入射型の光ラインセンサユニットは、導光体と、光拡散パターンと、光源とを備える。前記導光体は、長尺形状を有し、長手方向に沿って出射面が形成されている。前記光拡散パターンは、前記導光体の長手方向に沿って設けられ、前記導光体の内部に入射した光を拡散させて前記出射面から出射させる。前記光源は、前記導光体の長手方向における一方の端面に対向し、当該一方の端面から前記導光体の内部に任意の色光を入射させる。前記光源は、前記任意の色光のスペクトルを紫外域、可視域、赤外域に区分した場合に少なくとも一つの区分の色光のスペクトルを有する光源である。前記第2光源部は、前記導光体の長手方向における他方の端面に対向し、当該他方の端面から前記導光体の内部に前記光源と異なった色光を入射させる。
【0060】
直下型の光ラインセンサユニットは、導光体と、光源とを備える。前記導光体は、長尺形状を有し、長手方向に沿って出射面が形成されている。前記光源は、前記導光体の長手方向に沿って並べて設けられ、前記導光体の内部に任意の色光を入射させる。前記光源は、前記任意の色光のスペクトルを紫外域、可視域、赤外域に区分した場合に少なくとも一つの区分の色光のスペクトルを有する光源である。前記第2光源部は、前記導光体の長手方向に沿って前記光源と異なる配置で設けられている。
【0061】
直下型とサイドライト型(片側入射)の混合方式の光ラインセンサユニットは、導光体と、光源とを備える。前記導光体は、長尺形状を有し、長手方向に沿って出射面が形成されている。前記光源は、前記導光体の長手方向における一方の端面に対向し、当該一方の端面から前記導光体の内部に任意の色光を入射させる。前記光源は、前記任意の色光のスペクトルを紫外域、可視域、赤外域に区分した場合に少なくとも一つの区分の色光のスペクトルを有する光源である。前記第2光源部は、前記導光体の長手方向に沿って前記光源と異なる配置で設けられている。
【0062】
直下型とサイドライト型(両側入射)の混合方式の光ラインセンサユニットは、導光体と、光源と、別の光源とを備える。前記導光体は、長尺形状を有し、長手方向に沿って出射面が形成されている。前記光源は、前記導光体の長手方向における一方の端面に対向し、当該一方の端面から前記導光体の内部に任意の色光を入射させる。前記別の光源は、前記導光体の長手方向における他方の端面に対向し、当該他方の端面から前記導光体の内部に前記光源と異なった色光を入射させる。前記各光源は、前記任意の色光のスペクトルを紫外域、可視域、赤外域に区分した場合に少なくとも一つの区分の色光のスペクトルを有する光源である。前記第2光源部は、前記導光体の長手方向に沿って前記光源と異なる配置で設けられている。
【発明の効果】
【0063】
本願発明によれば、白色LED光源及び複数の単色LED光源を同時に点灯させて紙葉類を照明することにより、sRGBの色域を超えた紙葉類の色再現域も精度よく読み取ることが出来、その結果、紙葉類の真偽判定が正確になる。同時に、今後、紙葉類のインクが進歩し、偽造紙幣に対抗するために中間色の色再現を豊にした際にも本願発明を用いれば、精度良く読み取ることが可能になり、真偽判定が正確に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明の実施の形態における光ラインセンサユニットの構成を概略的に示す断面図である。
図2】光ラインセンサユニットの付加的な構成を概略的に示す断面図である。
図3】ライン光源の斜視図である。
図4】ライン光源の各構成部材を示す分解斜視図である。
図5】ライン光源の側面図である。
図6】受光部の素子配列を示す模式図である。
図7】受光部における受光素子と各色フィルタの配列例を示す図である。
図8】RGB各色の単色LED光源をそれぞれ個別に点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。
図9】RGB各色の単色LED光源を同時に点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。
図10】RGB各色の単色LED光源を同時に点灯させたときの色域をsRGBの色域と比較して示したxy色度図である。
図11】白色LED光源を点灯させたときの発光スペクトルを示した図である。
図12】白色LED光源の色再現域をsRGB色域と比較した図である。
図13A】白色LEDと単色のRGBLEDを同時に点灯したときの合成スペクトルを示した図である。
図13B図13-Aの色再現域をsRGBの色域と比較した図である。
図14A】シアン領域とイエロー領域がsRGB域からはみ出していることを示した図である
図14B】緑色領域が、sRGB域からはみ出していることを示した図である。
図14C】シアン領域がsRGB域からはみ出していることを示した図である。
図15】RGB単色LEDを順次に点灯したときの色再現域を示した図である。
図16】Japan Color(登録商標)2001の色再現域を示した図である。
図17A】紙葉類が、sRGB色域を超えた例を示した図である。
図17B】紙葉類が、sRGB色域を超えた例を示した図である。
図17C】紙葉類が、sRGB色域を超えた例を示した図である。
図18】RGB単色LEDを同時に点灯させた場合や蛍光体方式の白色LEDの色再現域、RGB単色LEDを順次(独立)に点灯した場合の色再現域の比較を各種色域を含めて示した図である。
図19A】基準カラーチャートに対する単色RGBLEDを順次(独立)に点灯した場合の色度と単色RGBLEDを同時に点灯した場合の補正前の色度を比較した図である。
図19B】基準カラーチャートに対する単色RGBLEDを順次(独立)に点灯した場合の色度と単色RGBLEDを同時に点灯した場合の補正後の色度を比較した図である。
図20A】基準カラーチャートに対する単色RGBLEDを順次(独立)に点灯した場合の色度と白色LEDを点灯した場合の補正前の色度を比較した図である。
図20B】基準カラーチャートに対する単色RGBLEDを順次(独立)に点灯した場合の色度と白色LEDを点灯した場合の補正前の色度を比較した図である。
図21】紙葉類1について、単色RGBLEDを順次(独立)に点灯した場合の色度である。
図21A】紙葉類1について、単色RGBLEDを同時に点灯した場合の色度である。
図21B】紙葉類1について、単色RGBLEDを同時に点灯した場合の補正後の色度である。
図21C】紙葉類1について、白色LEDを点灯した場合の色度である。
図21D】紙葉類1について、白色LEDを点灯した場合の補正後の色度である。
図22】紙葉類2について、単色RGBLEDを順次(独立)に点灯した場合の色度である。
図22A】紙葉類2について、単色RGBLEDを同時に点灯した場合の色度である。
図22B】紙葉類2について、単色RGBLEDを同時に点灯した場合の補正後の色度である。
図22C】紙葉類2について、白色LEDを点灯した場合の色度である。
図22D】紙葉類2について、白色LEDを点灯した場合の補正後の色度である。
図23】紙葉類3について、単色RGBLEDを順次(独立)に点灯した場合の色度である。
図23A】紙葉類3について、単色RGBLEDを同時に点灯した場合の色度である。
図23B】紙葉類3について、単色RGBLEDを同時に点灯した場合の補正後の色度である。
図23C】紙葉類3について、白色LEDを点灯した場合の色度である。
図23D】紙葉類3について、白色LEDを点灯した場合の補正後の色度である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
<光ラインセンサユニット>
図1は、本発明の実施の形態における光ラインセンサユニットの構成を示す概略断面図である。
【0066】
この光ラインセンサユニットは、筐体16と、紙葉類を照明するためのライン光源10と、そのライン光源10から焦点面20に向けて出射され紙葉類で反射した光を導くためのレンズアレイ11と、基板13に実装されレンズアレイ11により導かれた透過光を受光する受光部12とを備えている。紙葉類は焦点面20に沿って一方向x(副走査方向)に搬送される。
これらの筐体16、ライン光源10、受光部12、レンズアレイ11は、y方向(主走査方向)、すなわち図1における紙面に対して垂直な方向に延びていて、図1はその断面を示している。
【0067】
ライン光源10は、焦点面20にある紙葉類に向けて光を出射するユニットである。出射される光の種類は可視光、白色光及び紫外光であり、さらに赤外光が出射されることもある。
この紫外光は300nm~400nmのピーク波長を有するもので、赤外光は1500nmまでのピーク波長を有するものである。
これらの光のうち少なくとも紫外光は、他の光と時間的に重ならないようにして(すなわち時間的にスイッチングされながら)発光される。赤外光は、可視光と時間的に重なって発光されることもあり、時間的に重ならないようにして発光されることもある。
【0068】
ライン光源10から出射された光は、保護ガラス14を透過して焦点面20に集光される。保護ガラス14は、必ずしも必要ではなく省略することもできるが、使用中(使用時)のごみ(紙葉類の搬送時に発生する紙粉等のダスト)の飛散や傷つきからライン光源10やレンズアレイ11を保護するために設置することが望ましい。
保護ガラス14の材質はライン光源10から出射される光を透過させるものであれば良く、例えばアクリル樹脂やシクロオレフィン系樹脂などといった透明の樹脂であってもよい。ただし、本発明の実施の形態では、白板ガラス、ホウケイ酸ガラスなど特に紫外光を透過させるものを使用するのが好ましい。
【0069】
ライン光源10の底面に対向して、ライン光源10の両端に設置された光源部3、光源部4(図4図5参照)を固定するための基板5が設置されている。この基板5はフェノール、ガラスエポキシなどで形成された薄い絶縁板であり、その裏面に銅箔からなる配線パターンが形成されている。光源部3,4の端子を基板5の各所に形成された孔に挿入し、基板の裏面において半田などで配線パターンと接合することにより、光源部3,4を基板5に搭載し固定することができるとともに、所定の駆動電源(図示せず)から基板裏面の配線パターンを通して光源部3,4に電力を供給してその発光を駆動・制御することができる。
【0070】
レンズアレイ11は、紙葉類で反射された光を受光部12に結像する光学素子であり、セルフォックレンズアレイ(登録商標:日本板硝子製)などのロッドレンズアレイを用いることができる。本発明の実施の形態では、レンズアレイ11の倍率は1(正立)に設定されている。
焦点面20から受光部12までの任意の位置に、受光部12に紫外光が入らないように、紫外光を反射又は吸収することにより遮断する紫外光遮断フィルタ15を設けることが好ましい。本発明の実施の形態では、レンズアレイ11の表面に紫外光遮断フィルタ15を取り付け、紫外光を遮断する機能を持たせている。本明細書で「光を遮断する」とは、光を反射又は吸収して、透過させないことをいう。
【0071】
この紫外光遮断フィルタ15は、特に限定されるものではなく、紫外光が、受光部12へ入るのを防止することができれば、材質・構造を問わない。例えば有機系の紫外光吸収剤を透明フィルムに混入あるいはコーティングした紫外光吸収フィルム、ガラス表面に酸化チタン、酸化珪素など透過率や屈折率の異なる金属酸化物もしくは誘電体の薄膜を多層蒸着することで得られる干渉フィルタ(バンドパスフィルタ)などが好ましい。
【0072】
なお、紫外光遮断フィルタ15はレンズアレイ11の出射面に取り付けていたが、レンズアレイ11の入射面又は中間部に取り付けてもよく、保護ガラス14の内面に直接蒸着又は塗布して用いてもよい。要するに、紙葉類で反射された紫外光が、受光部12へ入るのを防止することができればよい。
受光部12は基板13に実装され、反射光を受けて光電変換により電気出力として画像を読み取る受光素子を含んで構成されている。受光素子の材質・構造は特に規定されるものではなく、アモルファスシリコン、結晶シリコン、CdS、CdSeなどを用いたフォトダイオードやフォトトランジスタを配置したものであってもよい。またCCD(Charge Coupled Device)リニアイメージセンサであってもよい。さらに受光部12として、フォトダイオードやフォトトランジスタ、駆動回路及び増幅回路を一体としたIC(Integrated Circuit)を複数個並べた、いわゆるマルチチップ方式のリニアイメージセンサを用いることもできる。また、必要に応じて基板13上に駆動回路、増幅回路などの電気回路、あるいは信号を外部に取り出すためのコネクタなどを実装することもできる。さらに基板13上にA/Dコンバータ、各種補正回路、画像処理回路、ラインメモリ、I/O制御回路などを同時に実装してデジタル信号として外部に取り出すこともできる。
【0073】
なお、前述した光ラインセンサユニットは、ライン光源10から紙葉類に向けて出射され紙葉類で反射した光を受光する反射型の光ラインセンサユニットであったが、図2に示すように、焦点面20を基準にして、ライン光源10を受光部12と反対の位置に置いて、ライン光源10から紙葉類に向けて出射され紙葉類を透過した光を受光する、透過型の光ラインセンサユニットであってもよい。この場合、ライン光源10の位置が焦点面20の下側になるところが図1の配置と異なるのみで、ライン光源10自体の構造は、今まで説明したものと異なるところはない。また反射型の光ラインセンサユニットと透過型の光ラインセンサユニットを両方含んでいてもよい。
【0074】
<ライン光源>
図3は、図1に示される光ラインセンサユニットにおけるライン光源10の外観を概略的に示す斜視図である。図4はライン光源10の各構成部材の分解斜視図、図5はライン光源10の側面図である。なお、図5ではカバー部材2の図示は省略している。
ライン光源10は、長手方向Lに沿って延びる透明な導光体1と、長手方向Lの一方の端面付近に設けられた光源部3と、長手方向Lの他方の端面付近に設けられた光源部4と、導光体1の各側面(底側面1a及び左右側面1b,1c)を保持するためのカバー部材2と、底側面1aと左右側面1bとの間に斜めに形成された光拡散パターン形成面1gに形成され、光源部3及び光源部4から導光体1の端面1e,1fに入射され導光体1の中を進む光を拡散・屈折させて、導光体1の光出射側面1dから出射させるための光拡散パターンPとを有している。また好ましくは、導光体1の端面1e,1fにそれぞれ形成された第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7を有している。
【0075】
導光体1は、アクリル樹脂などの光透過性の高い樹脂、あるいは光学ガラスで形成してもよいが、本発明の実施の形態では、紫外光を発光する光源部4を用いるので、導光体1の材料として、紫外光に対する減衰が比較的少ないフッ素系樹脂あるいはシクロオレフィン系樹脂が好ましい。
導光体1は、細長い柱状であり、その長手方向Lに直交する断面は、長手方向Lのどの切り口においても、実質的に同じ形状、同じ寸法をしている。また導光体1のプロポーション、すなわち導光体1の長手方向Lの長さと、その長手方向Lに直交する断面の高さHとの比率は10よりも大きく、好ましくは30よりも大きい。例えば導光体1の長さが200mmであれば、その長手方向Lに直交する断面の高さHは5mm程度である。
【0076】
導光体1の側面は、光拡散パターン形成面1g(図4において導光体1の斜めカット面に相当)、底側面1a、左右側面1b,1c、光出射側面1d(図4において導光体1の上面に相当)の5つの側面からなる。底側面1a、左右側面1b,1cは平面形状であり、光出射側面1dはレンズの集光効果を持たせるために外向きに滑らかな凸の曲線状に形成されている。しかし光出射側面1dは必ずしも凸状に形成されていなくてもよく、平面形状であってもよい。この場合、光出射側面1dに対向するように、導光体1から出射した光を集光するレンズを配置するとよい。
【0077】
光拡散パターン形成面1g上の光拡散パターンPは、一定の幅を維持して、導光体1の長手方向Lに沿って一直線状に延びている。この光拡散パターンPの長手方向Lに沿った寸法は、イメージセンサの読取長(つまり受光部12の読取領域の幅)よりも長くなるように形成されている。
この光拡散パターンPは、導光体1の光拡散パターン形成面1gに彫刻された複数のV字状の溝により構成されている。この複数のV字状の溝の各々は、導光体1の長手方向Lに直交する方向に延びるよう形成されており、互いに同じ長さを有している。複数のV字状の溝は、断面が例えば二等辺三角形状を有していてもよい。
【0078】
この光拡散パターンPにより、導光体1の端面1e,1fから入射され、導光体1の内部を長手方向Lに伝搬する光を屈折・拡散させ、長手方向Lに沿ってほぼ一様の明るさで光出射側面1dから照射することができる。これにより、導光体1の長手方向Lの全体において紙葉類に照射される光をほぼ一定とすることができ、照度むらを無くすことができる。
【0079】
なお、光拡散パターンPの溝のV字形状は一例であり、照度むらが顕著にならない限り、V字形に代えてU字形にするなど任意に変更することができる。光拡散パターンPの幅も一定の幅を維持する必要はなく、導光体1の長手方向Lに沿って幅が変化するものであってもよい。溝の深さや溝の開口幅についても、適宜変更することができる。
カバー部材2は、導光体1の長手方向Lに沿った細長い形状であり、導光体1の底側面1a及び左右側面1b,1cを覆うことができるように、導光体1の光拡散パターン形成面1gに対向する底面2a、導光体1の右側面1bに対向する右側面2b、及び導光体1の左側面に対向する左側面2cを有している。これらの3つの側面はそれぞれ平面をなしており、これらの3つの内面で断面がほぼU字状の凹部を形成するので、導光体1をこの凹部の中に挿入することができる。この覆った状態で、カバー部材2の底面2aが導光体1の底側面1aに密着し、カバー部材2の右側面2bが導光体1の右側面1bに密着し、左側面2cが導光体1の左側面1cに密着する。このため、カバー部材2で導光体1を保護することができる。
【0080】
なお、カバー部材2は透明なカバーに限定されず、半透明、又は不透明なものであってもよい。例えばカバー部材2は、導光体1の光出射側面以外の側面より漏れ出す光を再び導光体1内に反射させるために、反射率の高い白色樹脂の成形品、又はその白色樹脂を塗布した樹脂の成形品であってもよい。または、カバー部材2をステンレスやアルミニウムなどの金属体で形成してもよい。
【0081】
光源部3は、白色光(W)を発生させる白色LED光源3Wと、赤色(R)の単色光を発生させる単色LED光源3Rと、緑色(G)の単色光を発生させる単色LED光源3Gと、青色(B)の単色光を発生させる単色LED光源3Bと、紫色(V)の単色光を発生させる単色LED光源3Vとを含む。ただし、光源部3には、赤外光を発生させる赤外光源が含まれていてもよい。白色LED光源3Wは、蛍光体を蛍光させることにより白色光を発生させる光源であり、例えば青色又は紫色のLEDで蛍光体を蛍光させて白色光を発生させる白色LED光源や、紫外域LEDで蛍光体を蛍光させて白色光を発生させる白色LED光源などが用いられる。蛍光体は、LED素子上にコーティング又は封止剤に混入され、LEDからの光に蛍光体の発光を付加させることにより、可視光域全てに出力がある白色LED光源となる。
【0082】
白色LED光源3Wは、応答性が高いことが好ましく、例えば出力(相対発光強度)が10%から90%に立ち上がるまでの応答時間、及び、90%から10%に立ち下がるまでの応答時間が、2μ秒以下、特に好ましくは0.5μ秒以下である。蛍光体を蛍光させて白色光を発生させる白色LED光源は、蛍光体を使用していることに起因して応答性が阻害されているため、特定の蛍光体を採用することが好ましい。例えば、白色LED光源3WのLED素子(図示せず)が紫又は青色であり、素子上に蛍光体が覆われた構造を有する。前記蛍光体として黄色発光するYAG蛍光体(YAG:Ce(セリウムドープ酸化イットリウム、アルミニウムガーネット焼結体))を用いれば、応答速度が速い白色LED光源3Wとすることができる。
【0083】
光源部4は、導光体1に対して紫外光を発光する紫外光源であり、300nm~400nmの紫外光LED光源等が使用可能である。好ましくは330nm~380nmの範囲にピーク発光波長を有する紫外発光ダイオードが用いられる。
【0084】
光源部3と光源部4には、基板5に実装されるための端子31が形成されていて、この端子31を基板5に差込み、半田付けなどで接合することにより、それぞれ駆動電源(図示せず)に電気的に接続される。駆動電源は、光源部3に電圧を印加する電極端子と光源部4に電圧を印加する電極端子とを選択することにより、光源部3及び光源部4を同時に、若しくは時間的に切り替えて発光させることができる回路構成となっている。また光源部3に内蔵された複数のLEDのうち任意のLEDを選択して同時に、若しくは時間的に切り替えて発光させることもできる。
【0085】
以上の構成により、コンパクトな構成で、光源部3が設置される端面1eから白色光及び複数色の単色光を導光体1に入射することができ、光源部4が設置される端面1fから紫外光を導光体1に入射することができる。これにより、前記光源部3から発光される光、又は前記光源部4から発光される光を、前記導光体1の光出射側面1dから出射することができる。
【0086】
好ましくは、導光体1の光源部3が設置される端面1eには、420nm以上の可視光を透過させ、400nm未満の紫外光を反射又は吸収することにより遮断する第2の光学フィルタ6が設けられている。また導光体1の光源部4が設置される端面1fには、400nm未満の紫外光を透過させ、420nm以上の可視光を反射又は吸収することにより遮断する第1の光学フィルタ7が設けられている。
【0087】
第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7は、特に限定するものではなく、目的とする波長域を遮断するものであれば材質・構造を問わない。例えば反射させる光学フィルタであれば、ガラス表面に透過率や屈折率の異なる金属酸化物もしくは誘電体の薄膜を多層蒸着することで得られる干渉フィルタ(バンドパスフィルタ)が好ましい。
反射させる干渉フィルタとしては、例えば、酸化珪素と五酸化タンタルなどを採用し、それぞれの透過率や屈折率及び膜厚を調整して多層蒸着することにより所望のバンドパスフィルタ特性を確保することで得られる。なお、当然ながら通常の光学関連産業用に従来から生産されているバンドパスフィルタで、要求性能を満足するものであれば、採用に際して特に制限はない。
【0088】
第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7に干渉フィルタを用いる場合、前記干渉フィルタのみでは目的とする透過域を調整出来ない場合は、さらにその上に金属又はその酸化物、窒化物、フッ化物の薄膜を用いたフィルムを重ねることで所望の波長特性を確保することが可能である。
第2の光学フィルタ6が紫外光を吸収する光学フィルタであれば、有機系の紫外光吸収剤を透明フィルムに混入あるいはコーティングした紫外光吸収フィルムであってもよい。また、干渉フィルタで、例えば、酸化珪素と酸化チタンなどを採用し、それぞれの透過率や屈折率及び膜厚を調整して多層蒸着することにより紫外光を反射、吸収両機能により遮断することで所望波長特性を確保してもよい。
【0089】
また第1の光学フィルタ7が可視光を吸収する光学フィルタであれば、紫外光を通過させ可視光をカットする物質をフィルムの中に添加してもよい。
なお、第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7の導光体1への設置方法は任意であり、導光体1の端面1e,1fに塗布又は蒸着により被覆してもよい。またフィルム状もしくは板状の第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7を用意し、導光体1の端面1e,1fに密着させて、もしくは端面1e,1fから一定の距離をおいて取り付けてもよい。
また、第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7を導光体1の端面1e,1fに設けるのではなく、光源部3,4に設けることも可能である。この場合、各光源部3,4に光学フィルタ6,7を塗布又は蒸着により被覆してもよいし、フィルム状もしくは板状の光学フィルタ6,7を用意し、各光源部3,4に密着させて取り付けてもよい。あるいは、光源部3の封止剤に、可視光を透過させ、紫外光を遮断する物質を添加することにより、第2の光学フィルタ6を構成してもよい。同様に、光源部4の封止剤に、紫外光を透過させ、可視光を遮断する物質を添加することにより、第1の光学フィルタ7を構成してもよい。
【0090】
第1の光学フィルタ7が、紫外光を透過させ、可視光を反射又は吸収する光学フィルタであれば、次のような利点がある。光源部4が酸化アルミニウム・セラミックス焼結体など、紫外光が当たった時に波長690nm付近の蛍光を発する実装基体を採用している場合を想定する。紫外光が光源部4から照射されるときに、その照射光が光源部4の実装基体に当たり690nm付近の蛍光が二次照射されて導光体1の中に入ることを防止する必要がある。そこで、第1の光学フィルタ7を、可視光を反射又は吸収するように設計することにより、二次照射された蛍光が導光体1の中に入らないようにすれば、導光体1の光出射側面1dからの不要な蛍光の出射を防止することができ、紙葉類の紫外蛍光のコントラストを良くすることができる。なお、紫外光が蛍光するものは酸化アルミニウム・セラミックス焼結体だけでなく、封止樹脂が蛍光する場合についても同様に二次照射を防ぐことができる。
【0091】
第2の光学フィルタ6が、可視光を透過させ、紫外光を反射又は吸収する光学フィルタであれば、次のような利点がある。光源部3が酸化アルミニウム・セラミックス焼結体など、紫外光が当たった時に波長690nm付近の蛍光を発する実装基体を採用している場合を想定する。光源部4から照射された紫外光が導光体1の端面1eを通過して光源部3に当たると、690nm付近の蛍光が光源部3から二次照射されて導光体1の中に入って来るので、これを防止する必要がある。そこで、第2の光学フィルタ6を、紫外光を反射又は吸収するように設計することにより、紫外光が導光体1の端面1eから外に出ないようにすれば光源部3に当たることがない。したがって、導光体1の光出射側面1dからの不要な蛍光の出射を防止することができる。その結果、紙葉類の紫外蛍光のコントラストを良くすることができる。
【0092】
本発明の実施の形態では、第2の光学フィルタ6が可視光を透過させ、紫外光を反射する光学フィルタの方が好ましく、次のような利点がある。光源部4から導光体1に入射され第2の光学フィルタ6で反射し導光体1に戻る紫外光の光量が増加するので、結果として、導光体1の光出射側面1dからの紫外光の出射光量が増大するという効果が得られる。この場合、第2の光学フィルタ6は光源部3から照射される可視光を透過させるので、光源部3からの可視光が導光体1に入るのを妨げることもない。
【0093】
また第1の光学フィルタ7が紫外光を透過させ、可視光を反射する光学フィルタであれば、光源部3から照射され、導光体1に入射され第1の光学フィルタ7で反射し導光体1に戻る可視光の光量が増加するので、結果として、導光体1の光出射側面1dからの可視光の出射光量が増大するという効果が得られる。また第1の光学フィルタ7は光源部4から照射される紫外光を透過させるので、導光体1の光出射側面1dからの紫外光の出射も可能になる。
【0094】
光源部4から発光される紫外光は、第1の光学フィルタ7を介して導光体1に入射し、光拡散パターン形成面1gにより拡散・屈折して、光出射側面1dから焦点面20にある紙葉類(媒体)に照射される。これにより、紙葉類から蛍光が生じ、その蛍光色発光が受光部12で検出されることにより、紫外光を用いた紙葉類の識別を行うことができる。
光源部3の白色LED光源から発光される白色光、単色LED光源3R,3G,3B,3Vから発光される複数色の単色光は、第2の光学フィルタ6を介して導光体1に入射し、光拡散パターン形成面1gにより拡散・屈折して、光出射側面1dから焦点面20にある紙葉類(媒体)に照射される。これにより、可視光を用いた紙葉類の識別を行うことができる。
【0095】
<受光部>
図6は、受光部12の素子配列を示す模式図である。受光部12は、y方向に直線状に並べられた複数の受光素子(それぞれフォトダイオード、フォトトランジスタなどで構成される)と信号処理部21とドライバ22とを一体化させたセンサICチップを配列し、各受光素子をカラーフィルタで覆い、これを基板上に実装したものである。ドライバ22は受光素子を駆動するためのバイアス電流を作成し供給する回路部分であり、信号処理部21は受光素子の光検出信号を読み取り処理する回路部分である。受光素子の種類は、限定されないが、例えばシリコンPNダイオード若しくはPINダイオードが用いられる。
【0096】
紙葉類がx方向(副走査方向)に移動する間に、一列に並べられた受光素子を露光することによって、紙葉類の面上にy方向(主走査方向)に沿った所定幅の観測ラインを設定することができる。紙葉類のライン情報を読み取る露光時間(光学読取時間という)は、光源の強度、センサの波長感度などに応じて任意に設定できる。例えば紙葉類のx方向の移動速度はATMや紙幣処理機などでは1500~2000mm/秒であり、光学読取時間として0.5~1.0ミリ秒を採用すれば、観測ラインのx方向の幅は0.75~2mmとなる。
【0097】
本発明の実施の形態では、図6に示すように、受光部12の一画素(画素とは、画像データを読み取り処理する空間的単位を言う)あたり複数、例えば4つの受光素子が直線状に並んで構成されている。図6では、4つの受光素子のうち、1番目の受光素子が赤(R)のカラーフィルタで覆われ、2番目の受光素子が緑(G)のカラーフィルタで覆われ、3番目の受光素子が青(B)のカラーフィルタで覆われている。そして、4番目の受光素子は透明フィルタ(W)で覆われているか、若しくは各色フィルタで覆われていない。なお前記カラーフィルタ(R,G,B)は通常、300~400nmの紫外光に対しては不透明であり、波長800nm以上の赤外光に対しては透過性を有する。
このように、受光部12には、各画素に対応付けて可視光カラーフィルタ(R,G,B)が設けられ、このカラーフィルタを透過した光が各受光素子に入射する。ただし、カラーフィルタは、各画素につき3色に限らない。
なお、図6では1素子のみが同一色のカラーフィルタで覆われていたが、2つ以上の受光素子が同一色のカラーフィルタで覆われていてもよい。
【0098】
透明(W)フィルタは、いかなる着色もない「透明な」フィルタである。若しくは全てのカラーフィルタの光透過スペクトルを重ね合わせた光透過スペクトルであってもよい。例えばRフィルタの光透過スペクトルと、Gフィルタの光透過スペクトルと、Bフィルタの光透スペクトルを重ね合わせて出来た輪郭を有する光透過スペクトルであってもよい。透過帯域をつないで包絡線を作ったときの、この包絡線と同様の光透過率を有しても良い。このような「透明フィルタ」を形成する光学フィルタの材料は、有機材料では透明なアクリル樹脂、シクロオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂の中から選ばれ、また無機系では窒化シリコン、酸化シリコンの中から選ばれる。
【0099】
これらの各色フィルタ材料は、300~400nmの紫外光に対しても透明である。
なお、有機材料においては、液晶用途に用いられる紫外光吸収剤を含んだ透明材料は、紫外光に対して透明でないので、採用することは好ましくない。
このように、受光部12は、一画素に複数の受光素子とそれらを覆う各色のカラーフィルタが搭載されているため、光源の波長を切り替えないで、それぞれが所望の波長領域の光を単独で照射できる複数の発光素子を同時に点灯させて、紙葉類の色情報を1本の観測ラインで一度に出力することが可能となる。
【0100】
このような構成の受光部12の光検出信号は、各受光素子の光検出信号を同時に取得した信号であり、これらは信号処理部21に入力される。信号処理部21は、受光部12のR,G,Bの各カラーフィルタを透過した受光素子の信号強度に基づいて、紙葉類の色情報を判別するとともに、透明(W)フィルタを透過し、若しくは、前記各色フィルタを透過しない信号強度に基づいて、当該画素に入ってくる全体光量を算出する。これにより、全体光量を分母(リファレンス)とした、各色信号の正確な光量に基づく画像データを得ることができる。
【0101】
ただし、受光部12の素子配列は前記の形態に限定されるものではない。例えば、受光部12の受光素子は図7(a)に示したように、RGBWRGBW・・・というように一列に配列されているとは限らず、二列以上に配列されたものであってもよい。図7(b)は、前記受光素子が一画素あたり2×2に配列されたものであり、2列のうち1つの列(例えば下の列)の一隅に、透明(W)フィルタ又は各色フィルタ無の第二の受光素子が配列されている例を示す。図7(c)は前記受光素子が一画素あたり4列に配列されたものであり、それらの4列のうち1つの列(例えば最も下の列)に、透明(W)フィルタ又は各色フィルタ無の第二の受光素子が配列されている例を示す。これらの場合でも、一画素内において、透明(W)フィルタを通して又は各色フィルタ無の受光素子で検出された光信号を記録するとともに、各カラーフィルタ(R,G,B)を透過した各受光素子の信号強度を検出することができる。
また、透明(W)フィルタの代わりに、緑(G)のカラーフィルタを設けることにより、RGBGRGBG・・・というような配列にしてもよい。
【0102】
前述したように、RGB単色光源を順次(独立)に点灯することによりRGB受光センサ出力をまず求めておき、RGB単色光源を同時に点灯するか、或いは、蛍光体方式白色LED光源で得られたRGB色分解フィルタのクロストーク成分を含むRGB受光センサ出力を求めておき、更には、前記単色RGB光源と白色LED光源を組み合わせて同時に点灯し、RGB受光センサからの出力を求めておき、変換式(式1)乃至(式3)及び(式4)を用いて、クロストーク成分の無いRGB単色光源を順次(独立)に点灯した際に極めて近いRGB受光センサ出力を求めることができ、その結果、RGB単色光源を順次(独立)に点灯した際の色再現域に極めて近く、各段に広い色再現域が得られることが確認できたのであるが、本願発明の実施形態では、前述した各種の実施形態の中で代表的な単色RGBLED光源を順次(独立)に点灯した場合を基準の光ラインセンサユニット(第1光ラインセンサユニット)とし、補正される側の単色RGBLED光源を同時に点灯した場合を第2光ラインセンサユニットA、並びに、白色LED光源を点灯した場合を第2光ラインセンサユニットBとして以下に例示する。
【0103】
基準の光ラインセンサユニット(第1光ラインセンサユニット)、及び、補正される側の光ラインセンサユニット(第2光ラインセンサユニットA又は第2光ラインセンサユニットB)としては、例えば図1図7に示したような光ラインセンサユニットをそれぞれ用いることができる。ただし、基準の光ラインセンサユニット(第1光ラインセンサユニット)と、補正される側の光ラインセンサユニット(第2光ラインセンサユニットA又は第2光ラインセンサユニットB)とで、それぞれ異なる構成を有していてもよい。
【0104】
基準の光ラインセンサユニット(第1光ラインセンサユニット)は、少なくとも3色以上の色光を発光させることができる光源部(第1光源部)を備えていればよい。当該光源部は、上述の光ラインセンサユニットの光源部3と同一であってもよいが、光源部3における白色LED光源3Wが省略された構成などであってもよい。また、当該光源部は、赤色、緑色、青色及び紫色の4色の色光を発光させる構成に限らず、少なくとも3色以上の色光を発光させることができればよい。また、当該光源部は、LEDに限らず、LDなどの他の光源やそれらの組み合わせにより構成されていてもよいし、各色の組み合わせも任意である。基準の光ラインセンサユニット(第1光ラインセンサユニット)では、前記3色以上の色光が混色しないように色光を独立に発光させるか、又は、任意の色光のスペクトルが他の色光のスペクトルに混在しないように狭帯域のスペクトルで発光させる。そして、その光が予め定めた基準カラーチャートに照射され、当該基準カラーチャートからの反射光又は透過光が受光部12(第1受光部)で受光される。これにより、各色の第1基準受光出力が取得される。
【0105】
一方、補正される側の光ラインセンサユニット(第2光ラインセンサユニットA又は第2光ラインセンサユニットB)は、少なくとも3色以上の色光又は白色光を発光させることができる光源部(第2光源部)を備えていればよい。当該光源部は、上述の光ラインセンサユニットの光源部3と同一であってもよいが、光源部3における白色LED光源3Wが省略された構成、又は、各単色LED光源3R,3G,3B,3Vが省略された構成などであってもよい。また、当該光源部は、赤色、緑色、青色及び紫色の4色の色光を発光させる構成に限らず、少なくとも3色以上の色光を発光させることができればよい。また、当該光源部は、LEDに限らず、LDなどの他の光源やそれらの組み合わせにより構成されていてもよいし、各色の組み合わせも任意である。補正される側の光ラインセンサユニット(第2光ラインセンサユニットA又は第2光ラインセンサユニットB)では、前記3色以上の色光を同時に発光させるか、又は、白色LED光源3Wから白色光を発光させる。そして、その光が前記基準カラーチャートに照射され、当該基準カラーチャートからの反射光又は透過光が受光部12(第2受光部)で受光される。これにより、各色の第2基準受光出力が取得される。
【0106】
そして、基準の光ラインセンサユニット(第1光ラインセンサユニット)により取得した第1基準受光出力と、補正される側の光ラインセンサユニット(第2光ラインセンサユニットA又は第2光ラインセンサユニットB)により取得した第2基準受光出力とを用いて、上述の式(1)や式(2)に例示されるような複数の行列要素からなる係数行列が、最小二乗法により算出される。この係数行列の行列要素に基づいて、当該係数行列の逆行列が算出され、光ラインセンサユニット(第2光ラインセンサユニットA又は第2光ラインセンサユニットB)の記憶部に記憶される。補正される側の光ラインセンサユニット(第2光ラインセンサユニットA又は第2光ラインセンサユニットB)において、紙葉類などの対象物が読み取られたときには、対象物からの反射光又は透過光が受光部12(第2受光部)で受光され、各色の受光出力が取得される。そして、各色の受光出力に対して、係数行列の逆行列を用いて上述の式(3)~式(5)に例示されるような演算を行うことにより、各色の受光出力が補正される。
【0107】
<RGB単色LED光源を同時に点灯した場合:(第2光ラインセンサユニットA>
RGB単色LED光源を順次(独立)に点灯(第1光ラインセンサユニット)したとき、及び、RGB単色LED光源を同時に点灯(第2光ラインセンサユニットA)したときに、それぞれ基準カラーチャートを読ませてRGB受光センサ出力を得、次に、A/D(8ビット)変換して求めたRGB値をCIE1931の3×3マトリクスにより、(X,Y,Z)値に変換し、(x,y)色度値を求め、更にその差分である(Δx、Δy)を基準カラーチャートのC1からC24の各色について、Δx+Δyの平方根を本願発明における色差とし、グラフ化し、図19A及び図19Bに示す。図19A及び図19Bにおける線分の長さが前記色差である。
【0108】
図19Aに、RGB単色LED光源を順次に点灯(第1光ラインセンサユニット)した場合と補正前の単色RGBLED光源を同時に点灯(第2光ラインセンサユニットA)した際の色差を示し、図19BにRGB単色LED光源を順次に点灯(第1光ラインセンサユニット)した場合と単色RGBLED光源を同時に点灯(第2光ラインセンサユニットA)した際の補正後の色差を示す。図19A及び図19Bによれば、補正前の第2光ラインセンサユニットAと第1光ラインセンサユニットの色差(線分の長さが長い)が、補正後には、小さく(線分の長さが短い)なっていることが分かる。図19A及び図19Bにおける四角のマークがRGB単色LED光源を順次に点灯(第1光ラインセンサユニット)した際の色度を示し、丸のマークが単色RGBLED光源を同時に点灯(第2光ラインセンサユニットA)した際の色度を表している。
【0109】
<蛍光体方式白色LEDの場合:第2光ラインセンサユニットB>
RGB単色LED光源を順次(独立)に点灯(第1光ラインセンサユニット)したときと、蛍光体方式白色LED光源を点灯(第2光ラインセンサユニットB)したときに、それぞれ基準カラーチャートを読ませて、RGB受光センサ出力を得、次にA/D変換(8ビット)して求めたRGB値をCIE1931の3×3マトリクスにより、(X,Y,Z)値に変換し、(x,y)色度値を求め、更にその差分である(Δx、Δy)を基準カラーチャートのC1からC24の各色について、図20A及び図20Bに示す。
【0110】
図20Aに、補正前の蛍光体方式白色LED光源の点灯(第2光ラインセンサユニットB)とRGB単色LED光源を順次に点灯(第1光ラインセンサユニット)したときの色差を示し、図20BにRGB単色LED光源を順次に点灯したときと蛍光体方式白色LED光源を点灯し補正を加えたときの色差を示す。図20A及び図20Bにおける四角のマークがRGB単色LED光源を順次に点灯(第1光ラインセンサユニット)したときの色度を示し、丸のマークが補正前の蛍光体方式白色LED光源を点灯(第2光ラインセンサユニットB)したときの色度を表している。図20A及び図20Bによれば、蛍光体方式白色LED光源を点灯したときと単色RGBLED光源を順次に点灯したときの色差(線分の長さ長い)が、補正後には、小さく(線分の長さが短い)なっていることが分かる。
【0111】
<紙葉類の色再現性>
紙葉類の色再現域について、基準の光源であるRGB単色LED光源を順次(独立)に点灯(第1光ラインセンサユニット)したときと、RGB単色LED光源を同時に点灯(第2光ラインセンサユニットA)したとき、更には、蛍光体方式白色LED光源を点灯(第2光ラインセンサユニットB)したときの色再現域を図21図23に示す。また、RGB単色LED光源を同時に点灯(第2光ラインセンサユニットA)したときと蛍光体方式白色LED光源を点灯(第2光ラインセンサユニットB)したときの色再現域をそれぞれ補正した色再現域も合わせて図21図23に示す。
【0112】
図21A図21B図22A図22B図23A図23Bによれば、RGB単色LED光源を同時に点灯(第2光ラインセンサユニットA)について、補正前よりも補正後の色再現域が広く、かつ、sRGBの色域を超えた領域も再現出来ており、また、単色RGBLED光源を順次(独立)に点灯(第1光ラインセンサユニット)したときの色再現域に近づいていることが分かる。
また、図21C図21D図22C図22D図23C図23Dによれば、白色LED光源(第2光ラインセンサユニットB)について、補正前よりも補正後の色再現域が広く、かつ、sRGBの色域を超えた領域も再現出来ており、また、単色RGBLED光源を順次(独立)に点灯(第1光ラインセンサユニット)したときの色再現域に近づいていることが分かる。
【0113】
本願発明においては、白色LED光源3Wの出力が10%から90%に立ち上がるまでの時間、及び、90%から10%に立ち下がるまでの時間のそれぞれが、2μ秒以下であるため、応答性の高い白色LED光源3Wを用いて紙葉類を高速で読み取ることができる。
【0114】
特に、白色LED光源3Wが、蛍光体として応答性の高いYAG蛍光体を用いるものであるため、紙葉類をより高速で読み取ることができる。
【0115】
また、RGB単色LED光源を同時に点灯したときには、前記白色LED光源同等以上に高速の読み取りが可能になる。
【0116】
<作用効果>
以上のように、例えば、「色再現域の広いRGB単色光源を順次(独立)に点灯(第1光ラインセンサユニット)した場合を基準として、基準とするカラーチャートを用いて得た、各RGB受光センサのゲイン値」と、「RGB単色光源を同時に点灯(第2光ラインセンサユニットA)した場合や白色LED光源を点灯(第2光ラインセンサユニットB)した場合に、基準カラーチャートを用いて得た、各RGBセンサのゲイン値」との関係を(式1)から(式3)を介して求めることにより、色再現域の広いRGB単色LED光源を順次(独立)に点灯(第1光ラインセンサユニット)した場合に極めて近い色再現域を獲得することが可能になる。
【0117】
ここまで、広い色再現域を実現し、中間色の色再現を正確にし、ひいては、真偽判定を正確にするために、主として、RGB単色LED光源を順次(独立)に点灯させた場合を基準光源とすることを述べてきたが、前述したようにRGB単色光源は、LEDに限らず、光学フィルタを用いてシャープな透過スペクトル特性を有するRGB光を作り(第1光ラインセンサユニット)、基準カラーチャートを用いてRGB単色LED光源を同時に点灯(第2光ラインセンサユニットA)した場合や白色LED光源を点灯(第2光ラインセンサユニットB)してRGB光学フィルタを介して得たRGB受光センサのゲイン値を、(式1)から(式3)を用いて、(式3)の逆行列要素を求め、前記光学フィルタを用いた場合(第1光ラインセンサユニット)のRGB受光センサゲイン値に換算してもよい。更には、基準光源としてRGB単色LED光源の代わりにRGBLD(Laser Diode)光源を用いて、(式1)から(式2)を用いて、(式3)の逆行列要素を求め、RGBLDのRGBセンサのゲイン値に換算してもよい。その他各種色光を有する3色以上の光源を基準光源として用いてもよい。但し基準光ラインセンサユニットの色光の数と補正される側の光ラインセンサユニットの色光の数は同じである。
【0118】
ライン光源10は、導光体1に対して長手方向Lの一方又は両方の端面から光を入射させ、光拡散パターンPで光を拡散・屈折させるような構成に限らず、導光体1の底側面1a側から光出射側面1dを介して焦点面20に光を直接照射するような構成(いわゆる直下型)であってもよい。この場合、紫外光源が、導光体の長手方向に沿って並べて複数設けられ、導光体の内部に紫外光を入射させるような構成であってもよい。また、赤外光源が、導光体の長手方向における一方の端面に対向し、当該一方の端面から導光体の内部に赤外光を入射させてもよい。さらに、白色LED光源及び複数の単色LED光源(RGB各色の単色LED光源3R,3G,3Bの少なくとも2つ)が、導光体の長手方向における他方の端面に対向し、当該他方の端面から導光体の内部に光を入射させてもよい。
【0119】
以上の実施形態では、サイドライト両側入射型の光ラインセンサユニットに本発明が適用された構成について説明した。しかし、本発明は、サイドライト両側入射型に限らず、例えばサイドライト片側入射型、直下型、直下型とサイドライト型(片側入射)の混合方式、又は、直下型とサイドライト型(両側入射)の混合方式などの他の各種方式の光ラインセンサユニットに適用することができる。
【符号の説明】
【0120】
1 導光体
3 光源部
3W 白色LED光源
3R,3G,3B,3V 単色LED光源
4 光源部
10 ライン光源
11 レンズアレイ
12 受光部
P 光拡散パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19A
図19B
図20A
図20B
図21
図21A
図21B
図21C
図21D
図22
図22A
図22B
図22C
図22D
図23
図23A
図23B
図23C
図23D