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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220316BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20220316BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220316BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220316BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220316BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20220316BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220316BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/02 C
G02F1/1335 510
B32B7/023
B32B27/36
B32B3/30
B32B27/20 Z
B32B27/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018025545
(22)【出願日】2018-02-16
(65)【公開番号】P2019144283
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 謙一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 功
(72)【発明者】
【氏名】数家 靖央
(72)【発明者】
【氏名】坂本 一成
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-148415(JP,A)
【文献】特開2008-003541(JP,A)
【文献】特開2011-227475(JP,A)
【文献】特開2013-152487(JP,A)
【文献】特開2010-231022(JP,A)
【文献】特開2007-101679(JP,A)
【文献】特許第6938126(JP,B2)
【文献】特開2009-300611(JP,A)
【文献】特開2009-063614(JP,A)
【文献】中国実用新案第201025497(CN,Y)
【文献】国際公開第2005/066663(WO,A1)
【文献】特開2005-024885(JP,A)
【文献】特開2012-078540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光素子(P)を含み、前記偏光素子(P)の一方の面に、光散乱フィルム層(DF)が接着剤層(AL1)を介して積層された偏光板を搭載した液晶表示装置であって
前記光散乱フィルム層(DF)が、ポリエステル樹脂系延伸フィルムを基材とし、光散乱層(DL)を偏光素子(P)側に有し、
前記光散乱層(DL)が、
1)内部ヘイズが50~95%であり、
2)表面凹凸形状が、JIS B0601に基づく算術平均粗さRaが0~0.30μmであり、
前記光散乱フィルム層(DF)が、前記ポリエステル樹脂系延伸フィルム基材の光散乱層(DL)を積層していない側に、表面凹凸形状を有するバック層(BL)がさらに積層されており、
前記バック層(BL)の表面凹凸形状が、JIS B0601に基づく算術平均粗さRaが0.10~1.50μmであり、
前記偏光板がバックライト側に配置され、その際、前記光散乱フィルム層(DF)がバックライトに対向するように配置されている、液晶表示装置
【請求項2】
前記偏光板において、保護フィルム層(PF2)が、接着剤層(AL2)を介して前記偏光素子(P)の他方の面にさらに積層されていることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂系延伸フィルムの面内レターデーションReが、500~3000nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置
【請求項4】
前記光散乱層(DL)が、平均粒径0.5~6μmの粒子がバインダー内に分散した層であることを特徴とする請求項1~の何れかに記載の液晶表示装置
【請求項5】
前記バインダーが、(メタ)アクリルポリオールと多官能イソシアネートを含む硬化型バインダーであることを特徴とする請求項に記載の液晶表示装置
【請求項6】
前記バック層(BL)が、平均粒径1~20μmの粒子がバインダー内に分散した層であることを特徴とする請求項2~の何れかに記載の液晶表示装置
【請求項7】
前記バック層(BL)のヘイズが3~90%であることを特徴とする請求項2~の何れかに記載の液晶表示装置
【請求項8】
前記接着剤層(AL1又はAL2)が、PVA系接着剤層又は活性エネルギー線硬化型接着剤層であることを特徴とする請求項1~の何れかに記載の液晶表示装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光散乱フィルム層を積層した偏光板及び該偏光板を搭載した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(LCD)は、薄型、軽量でかつ消費電力が小さいことから広く使用されている。液晶表示装置は、液晶セルの両側に粘着剤で偏光板を貼合した液晶パネル部材を有し、バックライト部材からの光を液晶パネル部材で制御することにより表示が行われている。ここで、偏光板は偏光素子とその両側に貼合された保護フィルムとからなり、一般的な偏光素子は延伸されたポリビニルアルコール(PVA)系フィルムをヨウ素又は二色性色素で染色することにより得られ、保護フィルムとしてはセルロースアシレートフィルムが主に用いられている。
【0003】
このようなLCDに対し、更なる薄型軽量化や、コスト削減要求も留まることはない。これらの要求に応える提案として、偏光板保護フィルムのうち、LCDに貼合された時に外側に位置するセルロースアシレートフィルムを、安価で、機械強度に優れた延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以降PETフィルムとも称す)に置き換える試みがなされている。
【0004】
しかしながら、セルロースアシレートフィルムを汎用のPETフィルムに置き換えると、斜め方向から見たときに虹状のムラ(以降、単に「斜め虹ムラ」とも称す。)が目立ち、視認性が劣る問題があることが広く知られている。(例えば特許文献1)
【0005】
この問題に対し、例えば特許文献2では、液晶セルの背面側に貼合される偏光板の背面側保護フィルムに延伸PETフィルムを使用し、視認側偏光板の視認側保護フィルムを高ヘイズの防眩層を有する防眩フィルムにすることで、斜め虹ムラを低減する手法が開示されている。しかしながら、この手法でも斜め虹ムラの改善は十分ではない上に、視認側に高ヘイズの防眩層を有することで、室内照明光が防眩層表面で散乱反射し、表示画面全体、特に黒表示が白っぽく見える問題があり、画像品位を著しく低下させる結果となっている。黒表示の白っぽさを防止するためには、視認側に低ヘイズの防眩層やクリアーハードコート層を有する保護フィルム(以降、単に「低ヘイズフィルム」とも称す)の使用が必須である。
【0006】
特許文献3にはバックライト光源に白色発光ダイオードを用いた液晶表示装置において、入射光側に配される偏光板(「背面側偏光板」とも称す。)の入射側の偏光板保護フィルム、もしくは出射光側に配される偏光板(「視認側偏光板」とも称す。)の射出光側の保護フィルムに面内レターデーションが3000~30000nmのポリエステルフィルム用いることで、上記の斜め虹ムラが抑制できることが記載されている。
【0007】
しかしながら、このような高い面内レターデーションを有するポリエステルフィルムは上市されてはいるものの、汎用PETフィルムに比べて高価であるために、コスト削減を目的とした用途には適さない。更に、面内レターデーションは厚みに比例するため、上記のような高い面内レターデーションを得るために膜厚を薄くすることが難しく、薄型軽量化の用途にも適さない。
また、上記特許文献3ではバックライト光源に発光スペクトルがブロードな白色発光ダイオードを用いることが必要であるが、近年、色再現域を広げるために、発光スペクトルがシャープな光源を用いる試みがなされてきており(例えば特許文献4)、特許文献3の
内容はこのような用途にも適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-107892号公報
【文献】特開2009-109993号公報
【文献】国際公開WO2011/162198パンフレット
【文献】特開2012-169271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような状況に鑑みて、本発明の課題、すなわち本発明が解決しようとする課題は、汎用PETフィルムを偏光板保護フィルムとして用い、それを搭載した液晶表示装置において、特に黒表示の白っぽさの防止目的で、視認側に低ヘイズの防眩層やクリアーハードコート層を有する表面フィルムを用いても、斜め虹ムラなどの問題がなく視認性が良好であり、かつ安価に製造可能な偏光板を提供することであり、更にそのような偏光板を搭載した視認性の良好な液晶表示装置を提供することである。また、液晶表示装置の薄型化にも適した薄型偏光板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は液晶セルの両側に貼合される2枚の偏光板のうち、背面側偏光板に特化して鋭意検討を重ねた結果、従来の偏光板の製造方法を用いて、背面側保護フィルムとして、延伸ポリエステルフィルムを基材とし、特定の光散乱層を有する光散乱フィルムを用いて、その光散乱フィルムの光散乱層と偏光素子とを貼合することで、汎用の延伸PETを用いながら、視認側偏光板の視認側保護フィルムに低ヘイズフィルムを用いても斜め虹ムラがなく視認性が良好である偏光板を安価に作製できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、下記の構成の偏光板により解決することができる。すなわち、ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光素子(P)を含み、前記偏光素子(P)の一方の面に、光散乱フィルム層(DF)が接着剤層(AL1)を介して積層された偏光板であって、
前記光散乱フィルム層(DF)が、ポリエステル樹脂系延伸フィルムを基材とし、光散乱層(DL)を偏光素子(P)側に有し、
前記光散乱層(DL)が、
1)内部ヘイズが50~95%であり、
2)表面凹凸形状が、JIS B0601に基づく算術平均粗さRaが0~0.30μmであることを特徴とする偏光板。
【0012】
さらに、好ましくは、前記光散乱フィルム層(DF)の前記ポリエステル樹脂系延伸フィルム基材の光散乱層(DL)を積層していない側に、特定の表面凹凸形状を有するバック層(BL)がさらに積層されている偏光板であり、この偏光板では、液晶セルの背面側(バックライト側)に配置された時に、バックライトと前記背面側偏光板の間に配置される拡散シートが省略でき、画像表示装置の薄型化やコスト削減に一層寄与することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、汎用PETフィルムを用いながら、それを搭載した液晶表示装置で斜め虹ムラのない偏光板を安価に提供することができる。更に本発明の偏光板は汎用PETを用いながら視認性の良好な偏光板、液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[偏光素子]
本発明のポリビニルアルコール(以降PVAとも称す)系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光素子は、周知の偏光素子を用いることができる。このような偏光素子は、一般にPVA系樹脂フィルムを用い、このPVA系樹脂フィルムをヨウ素で染色し、一軸延伸することによって形成される。
【0015】
PVA系樹脂は、前述のように、一般に、ポリ酢酸ビニル系樹脂を鹸化して得られるものを用いる。鹸化度は、約85モル%以上、好ましくは約90モル%以上、より好ましくは約99モル%~100モル%である。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。PVA系樹脂の重合度としては、1000~10000、好ましくは1500~5000である。このPVA系樹脂は変性されていてもよく、たとえば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどでもよい。
【0016】
偏光素子の製造方法は特に限定されないが、予めロール状に巻かれたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを送り出して延伸、染色、架橋などを行って作製する方法と、ポリビニルアルコール系樹脂と延伸用樹脂基材の積層体を作製し、積層体の状態で延伸を行う工程を含む方法が典型的である。本発明ではこれら、何れの方法も用いることができる。
これらの偏光素子の製造方法については特開2014-48497号公報の段落[0109]~[0128]に記載されており、本発明ではこれらの方法を用いることができる。
本発明の偏光素子の厚みは3~35μmが好ましく、4~30μmがより好ましく、5~25μmが更に好ましい。
【0017】
〔光散乱フィルム層〕
次に本発明の光散乱フィルム層について説明する。本発明の光散乱フィルム層の基材フィルムはポリエステル樹脂系延伸フィルムである。
【0018】
(ポリエステル樹脂系延伸フィルム)
本発明に用いられるポリエステル樹脂は特に構造の限定はない。芳香族系ジカルボン酸と、脂肪族系グリコールを縮合して得られる構造を有する樹脂を主成分とするものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであることがより好ましく、ポリエチレンテレフタレートであることが特に好ましい。本発明の効果を阻害しない範囲で他の共重合成分を含んでも構わない。他のポリマーがブレンドされていても構わない。
本発明のポリエステルには必要に応じて酸化防止剤や紫外線吸収剤などの添加剤を含有させることもできる。
【0019】
本発明のポリエステル樹脂系延伸フィルムは、一般的なポリエステルフィルムの製造方法に従って製造することができる。例えば、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押し出し成形された無配向ポリエステルフィルムをガラス転移温度以上の温度において、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後に、テンターにより横方向に延伸し、熱処理を施す方法が挙げられる。
【0020】
本発明のポリエステル樹脂系延伸フィルムは一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フ
ィルムであっても構わないが、一般的に二軸延伸フィルムの方が、機械強度がより強く、より好ましい。一軸延伸フィルム製造方法は上記の延伸方法に対し、縦方向の延伸または、テンターによる横方向に延伸の何れかの延伸を行なった後に熱処理を施す方法が挙げられる。
このようにして得られるポリエステル樹脂系延伸フィルムの面内レターデーションReは通常500~3000nmである。
【0021】
本発明のポリエステル樹脂系延伸フィルムの厚みは5~200μmが好ましく、10~100μmがより好ましく、20~80μmが更に好ましい。
本発明において、光散乱層との接着性改良のために本発明のポリエステル樹脂系延伸フィルムの少なくとも片面に、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリアクリル樹脂などを主成分とする易接着層を有することが好ましい。
【0022】
市販の易接着層付き延伸PETフィルムとして、東洋紡社製「コスモシャイン」(登録商標)や東レ社製「ルミラー」(登録商標)などが挙げられる。本発明ではこのようなフィルムを好ましく用いることもできる。
【0023】
(光散乱層)
光散乱層は上記ポリエステル樹脂系延伸フィルムの上に積層されている。光散乱層は光散乱剤とバインダーを有する。光散乱層は光散乱剤を分散含有することでポリエステルフィルムを通過した光を散乱させることで斜め虹ムラを防止する。
【0024】
光散乱剤は光線を散乱させる性質を有する粒子であり、無機フィラーと有機フィラーに大別される。無機フィラーとしては、例えばシリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化バリウム、マグネシウムシリケート、又はこれらの混合物が挙げられる。なかでも、シリカ粒子が屈折率の点で好ましい。
有機フィラーの具体的な材料としては、例えばアクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、シリコーン樹脂等が挙げられる。なかでも、透明性が高いアクリル樹脂が好ましく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)またはメチルメタクリレートとスチレンの共重合体が特に好ましい。
【0025】
光散乱剤の形状は、特に限定されるものではなく、例えば球状、立方状、針状、棒状、紡錘形状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられ、なかでも光散乱性に優れる球状のビーズが好ましい。
光散乱剤として有機フィラーが用いられる場合の光散乱剤の平均粒子径は、0.5~6μmが好ましく、1~6μmがより好ましく、1~5μmがさらに好ましい。光散乱剤0.5μm未満の場合、十分な光散乱効果が得られない。逆に6μmより大きい場合は表面凹凸が大きくなり偏光素子との接着性が低下する恐れがある。
【0026】
光散乱剤として有機フィラーが用いられる場合の光散乱剤の配合量(バインダーの形成材料であるポリマー組成物中のポリマー分100質量部に対する固形分換算の配合量)は5~100質量部が好ましく、10~70質量部がより好ましく、20~50質量部がさらに好ましい。光散乱剤の配合量が上記下限未満の場合、光散乱性が不十分となるおそれがある。逆に、光散乱剤の配合量が上記上限を超える場合、表面凹凸が大きくなり偏光素子との接着が上手く行かない恐れがある。また、光散乱剤として無期フィラーを用いる場合の配合量も、おおむね有機フィラーの場合と同程度である。
【0027】
バインダーは、熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化型樹脂が挙げられる。なお、バインダーを形成するための組成物は、その他に例えば平均粒子径が0.5μm未満の微小無
機充填剤、硬化剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、光安定化剤、溶剤等が適宜配合されていてもよい。
【0028】
上記熱硬化性樹脂の基材ポリマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂等が挙げられ、これらのポリマーを1種又は2種以上混合して使用することができる。特に、上記基材ポリマーとしては、加工性が高く、塗工等の手段で容易に光散乱層を形成することができるポリオールが好ましい。また、バインダーに用いられる基材ポリマー自体は、光線の透過性を高める観点から透明が好ましく、無色透明が特に好ましい。
【0029】
上記ポリオールとしては、例えば水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールや、水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールなどが挙げられ、これらを単体で又は2種以上混合して使用することができる。本発明では水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールを主成分とすることが好ましく、不飽和単量体としては(メタ)アクリル系単量体が好ましく、このような単量体から得られる、(メタ)アクリルポリオールが特に好ましい。ポリオールの具体例、及び好ましい態様などは、特開2013-117695号公報段落[0050]~[0057]に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。
【0030】
バインダーにポリオールを用いる場合、ポリオールの水酸基と反応するような官能基を2個以上有する化合物のうち、多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物およびアミノプラスト樹脂から選ばれる少なくとも1種のものを含有するとよい。これにより、バインダーのマトリックス樹脂のポリオールが架橋構造で結合され、保存安定性、耐汚染性、可撓性、耐候性、保存安定性等が良好になる。
本発明では上記の化合物の中でも多官能イソシアネートが特に好ましい。また、基材ポリマーとの組み合わせとしては、(メタ)アクリルポリオールと多官能イソシアネートの組み合わせが特に好ましい。
ポリオールの水酸基と反応するような官能基を2個以上有する化合物の具体例、及び好ましい態様などは、特開2013-117695号公報段落[0071]~[0078]に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。
【0031】
上記活性エネルギー線硬化型樹脂としては、紫外線を照射することによって架橋、硬化する紫外線硬化型樹脂や、電子線を照射することによって架橋、硬化する電子線硬化型樹脂等が挙げられ、重合性モノマー及び重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることが可能である。なかでも、上記活性エネルギー線硬化型樹脂としては、(メタ)アクリル系、ウレタン系又は(メタ)アクリルウレタン系紫外線硬化型樹脂が好ましい。
【0032】
上記重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適に用いられ、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートの具体例、及び好ましい態様などは、特開2013-228720号公報段落[0026]~[0032]に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。
【0033】
上記活性エネルギー線硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いる場合、光重合用開始剤を樹脂100質量部に対して、0.1~5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、特に限定されるものではなく、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、例えばベンゾフェノン、ベンジルミヒラーズケトン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンゾ
インエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパノン-1、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(ピロール-1-イル)フェニル]チタン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。なお、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
光重合開始剤の具体例、好ましい態様、市販品などは特開2014-170130号公報段落[0064]~[0067]の記載を参考にすることができる。
【0034】
<光散乱層の光学特性>
本発明における光散乱層の内部に起因するヘイズ値(内部ヘイズ値)は50~95%であり、55~92%が好ましく、60~90%が特に好ましい。この範囲であれば斜め虹ムラを防止することができる。
【0035】
<光散乱層の表面形状>
本発明における光散乱層の表面形状はJIS-B0601による粗さパラメーター(算術平均粗さRa)は0~0.30μmであり、0~0.25μmであることが好ましく、0.05~0.22μmであることが特に好ましい。この範囲に制御することで偏光素子と良好な接着性をえることができる。
【0036】
<光散乱層の厚み>
本発明における光散乱層の厚みは3~30μmが好ましく、5~20μmがより好ましく、6~15μmが特に好ましい。この範囲に制御することで下記の光散乱層の光学特性と表面形状を適切に制御することができる。
【0037】
光散乱層の積層手段としては、特に限定されるものではなく種々の公知の方法が採用される。具体的な積層手段としては、例えばグラビアコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、スプレーコート法等を用いたコーティング等が採用される。中でも、ビーズを含むポリマー組成物を薄くかつムラなくコーティングできるグラビアコート法が最も好ましい。かかるグラビアコート法において、光散乱層の形成性等を考慮すると、グラビア線数としては70以上100以下、回転数としては80以上120以下が好ましい。
【0038】
(光散乱フィルム層の裏面)
光散乱フィルム層の裏面(基材の上記光散乱層が積層されていない面)は、スティッキング防止層または、表面凹凸を有し、ヘイズが10%以上の光拡散層(本願では「バック層」とも称す。)が積層されるのも好ましい態様である。
背面側偏光板の下に集光を目的としてプリズムシートがしばしば設置される。このプリズムシートは画素と干渉してモアレを発生させることがある。上記のように光散乱フィルム層の裏面に表面凹凸形状を有するバック層をさらに積層することで、モアレ防止効果を付与することができ好ましい。また、プリズムシート起因のモアレを防止するために背面側偏光板と対向して、拡散シートが設置される場合があるが、光散乱フィルム層の裏面に表面凹凸形状を有するバック層をさらに積層することで上記拡散シートが省略でき、画像
表示装置の薄型化やコスト削減の観点で好ましい。
【0039】
(表面凹凸形状を有するバック層)
次に本発明で好ましく用いることのできる、「表面凹凸形状を有するバック層」について、説明する。(以下「表面凹凸形状を有するバック層」のことを単に「バック層」とも称す。)
バック層は光散乱フィルム層の裏面(基材の上記光散乱層が積層されていない面)に積層される。
【0040】
バック層はバインダーを有する。バック層はバインダーのみで形成しても構わないが、適切な表面凹凸形状を得るために、フィラーを含有することが好ましい。フィラーは前記光散乱層の光散乱剤として例示したものを用いることができる。
中でも、表面形状の制御し易さから、球状粒子が好ましく、プリズムシートに対する傷防止性の観点から、球状の有機フィラーがより好ましい。
有機フィラーの中では、透明性が高いアクリル樹脂が好ましく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)またはメチルメタクリレートとスチレンの共重合体が特に好ましい。
【0041】
バック層に有機フィラーが用いられる場合の平均粒径は1~20μmが好ましく、2~15μmがより好ましく、3~12μmがさらに好ましい。粒径が1μm未満の場合、充分な表面凹凸を得ることが難しく、逆に20μmより大きい場合はバック層が厚くなってしまう。
【0042】
バック層のバインダーは前記の光散乱層に記載のものを好ましく用いることができる。また、有機フィラーの配合量(バインダーの形成材料であるポリマー組成物中のポリマー分100質量部に対する固形分換算の配合量)は5~100質量部が好ましく、10~70質量部がより好ましく、20~50質量部がさらに好ましい。
有機フィラーの配合量が上記下限未満の場合、表面凹凸が不十分となるおそれがある。逆に、有機フィラーの配合量が上記上限を超える場合、有機フィラーの固定が不充分になりフィラーが脱落する恐れがある。
【0043】
<バック層の光学特性>
本発明におけるバック層のヘイズ値は3~90%であり、10~80%が好ましく、15~70%が特に好ましい。この範囲であればプリズム起因のモアレを防止することができる。
なお、ここで言うバック層のヘイズとは、前記の光散乱層を積層せずに、PETフィルム基材にバック層のみを積層した時のヘイズ値を意味する。
【0044】
バック層の内部ヘイズ値はバック層のバインダーとフィラーの屈折率差で制御することができる。バック層の内部ヘイズは実質的にないことが好ましい、具体的には-1~1%であることが好ましい。バック層を通過した光の色付きを抑制することができる。
なお、ここで言うバック層の内部ヘイズとは、前記の光散乱層を積層せずに、PETフィルム基材にバック層のみを積層し、更にバック層の表面にバインダー液を塗布硬化する方法などで平滑化した後のバック層のヘイズ値を意味する。
具体的な内部ヘイズ値の測定法は後述の実施例に記載する。
【0045】
<バック層の表面形状>
本発明におけるバック層の表面形状はJIS-B0601による粗さパラメーター(算術平均粗さRa)は0.05~1.50μmが好ましく、0.08~1.20μmがより好ましく、0.10~0.90μmが更に好ましく、0.10~0.60μmが特に好ましい。この範囲に制御することでモアレ防止と正面輝度を両立できる。
【0046】
<バック層の厚み>
本発明におけるバック層の厚みは3~20μmが好ましく、5~17μmがより好ましく、6~15μmが特に好ましい。この範囲に制御することで下記のバック層の光学特性と表面形状を適切に制御することができる。
バック層の積層手段としては、特に限定されるものではなく、光散乱層同様、種々の公知の方法が採用される。また、光散乱層とバック層は2回に分けて順次積層しても構わないし、2層を同時に積層しても構わない。
2回に分けて積層する場合、積層順に制限はない。
【0047】
[偏光板の層構成]
本発明の偏光板は偏光素子の一方の面にのみ保護フィルムを有する偏光板であっても、偏光素子の両方の面に保護フィルムを有する偏光板であっても構わない。
本発明において、好ましい偏光板の層構成を以下に示す。
ポリエステルフィルム/光散乱層/接着剤層/偏光素子
表面凹凸を有するバック層/ポリエステルフィルム/光散乱層/接着剤層/偏光素子
ポリエステルフィルム/光散乱層/接着剤層/偏光素子/接着剤層/保護フィルム
表面凹凸を有するバック層/ポリエステルフィルム/光散乱層/接着剤層/偏光素子/接着剤層/保護フィルム
【0048】
[もう一方の保護フィルム]
本発明の偏光板が両方の面に保護フィルムを有する構成の場合、もう一方の保護フィルムは、セルロースアシレート系フィルム、ポリカーボネート系樹脂からなるフィルム、ノルボルネンなどシクロオレフィン系樹脂からなるフィルム、(メタ)アクリル系重合体フィルムなどのフィルムを用いることができるが、PVA接着剤などの水系接着剤を用いて貼合する場合は透湿度の点でセルロースアシレート系フィルムまたは(メタ)アクリル系重合体フィルムの何れかであることが好ましく、中でもセルロースアシレートフィルムが好ましい。
【0049】
この時の保護フィルムの膜厚は光学特性の観点から薄いものが好ましいが、薄すぎると強度が低下し加工性に劣るものとなる。適切な膜厚としては、5~100μmであり、好ましくは10~80μm、より好ましくは15~70μmである。
また、本発明の偏光板は後述のように、様々な表示モードの液晶セルに用いることができるが、液晶セルがIPSモードの場合、光学補償の観点から、余分な複屈折性のないことも好ましい。このような条件を満たすセルロースアシレートフィルムの例として、フジタックZRD(富士フィルム(株)製)などが挙げられ、本発明では好ましく用いることができる。
【0050】
[偏光板の作製方法]
次に本発明の偏光板の作成方法について説明する。
(偏光素子(P)と光散乱フィルム層(DF)の貼合)
本発明の偏光板は偏光素子(P)の一方の面と光散乱フィルム層(DF)の光散乱層(DL)面とを接着剤層(AL1)を介して貼合することで作製できる。本発明で用いられる接着剤は、任意の適切な接着剤を用いることができる。具体的には、接着剤としては、水系接着剤、溶剤系接着剤、活性エネルギー線硬化型などを用いることができる。
また、偏光素子(P)の他方の面と保護フィルム層(PF2)との接着にも、光散乱フィルム層(DF)の接着に用いる上記接着剤を同様に使用することができる。
【0051】
上記活性エネルギー線硬化型接着剤としては、活性エネルギー線の照射によって硬化し得る接着剤であれば、任意の適切な接着剤が用いられ得る。活性エネルギー線硬化型接着
剤としては、例えば、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が挙げられる。活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化型の具体例としては、ラジカル硬化型、カチオン硬化型、アニオン硬化型、これらの組み合わせ(例えば、ラジカル硬化型とカチオン硬化型のハイブリッド)が挙げられる。
【0052】
上記活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、硬化成分として(メタ)アクリレート基や(メタ)アクリルアミド基などのラジカル重合性基を有する化合物(例えば、モノマーおよび/またはオリゴマー)を含有する接着剤が挙げられる。
上記活性エネルギー線硬化型接着剤およびその硬化方法の具体例は、例えば、特開2012-144690号公報に記載されている。
【0053】
また、上記水系接着剤としては、任意の適切な水系接着剤が採用され得る。中でも、PVA系樹脂を含む水系接着剤(PVA系接着剤)が好ましく用いられる。水系接着剤に含まれるPVA系樹脂の平均重合度は、接着性の点から、好ましくは100~5500程度、さらに好ましくは1000~4500である。平均ケン化度は、接着性の点から、好ましくは85モル%~100モル%程度であり、さらに好ましくは90モル%~100モル%である。
【0054】
上記水系接着剤に含まれるPVA系樹脂は、好ましくは、アセトアセチル基を含有するものが好ましい。PVA系樹脂層と保護フィルムとの密着性に優れ、耐久性に優れ得るからである。アセトアセチル基含有PVA系樹脂は、例えば、PVA系樹脂とジケテンとを任意の方法で反応させることにより得られる。アセトアセチル基含有PVA系樹脂のアセトアセチル基変性度は、代表的には0.1モル%以上であり、好ましくは0.1モル%~20モル%程度である。
【0055】
上記水系接着剤の樹脂濃度は、好ましくは0.1重量%~15重量%であり、さらに好ましくは0.5重量%~10重量%である。
上記接着剤の塗布時の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。例えば、硬化後または加熱(乾燥)後に、所望の厚みを有する接着剤層が得られるように設定する。接着剤層の厚みは、好ましくは0.01μm~7μmであり、より好ましくは0.01μm~5μmであり、さらに好ましくは0.01μm~2μmであり、最も好ましくは0.01μm~1μmである。
【0056】
尚、本発明ではPVA系接着剤で形成された層をPVA系接着剤層、活性エネルギー線硬化型接着剤で形成された層を活性エネルギー線硬化型接着剤層と称す。
偏光素子と光散乱フィルム層との接着の際には、偏光素子と接着剤、光散乱層と接着剤との接着性を向上させるために、偏光素子と光散乱層の一方または両方に、あらかじめコロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射、プライマー塗布処理などの表面処理を施してもよい。
【0057】
本発明の偏光板が偏光素子の両面に保護フィルムを有する態様の場合、保護フィルムの片面ずつ貼合しても両面を同時に貼合しても構わないが、両面同時に貼合することが好ましい。
また、ポリエステル樹脂系延伸フィルムの遅相軸方向(面内の屈折率が最大となる方向)と、偏光素子の吸収軸方向が略平行または略垂直に配置することが好ましい。前記からずれると液晶表示装置に搭載した場合に正面から虹ムラが観察される場合がある。
【0058】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、該液晶セルのバックライト側に配置された本発明の偏光板(背面側偏光板)と視認側に配置された偏光板(視認側偏光板)を含むことを
特徴とする。本発明の液晶表示装置は視認側偏光板に特に制約はないが、視認側偏光板の視認側保護フィルムのヘイズは0~10%であることが好ましく0~8%であることがより好ましく、0~5%であることが特に好ましい。視認側保護フィルムのヘイズをこの範囲に制御することで、斜め虹ムラ防止と黒しまりを両立することができる。
【0059】
(一般的な液晶表示装置の構成)
液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光板、及び必要に応じて該液晶セルと該偏光板との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。本発明の偏光板は二枚の偏光板のうち背面側偏光板として用いることができる。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、更にガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm~2mmの厚さを有する。
【0060】
(液晶表示装置の種類)
本発明のフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の偏光板は、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置でも使用することができる。
【0061】
本発明の偏光板は上記IPSモードの液晶セルの背面に貼合されると、黒表示時の斜め方向から見た時の光漏れが抑制され、特に好ましい。
【実施例
【0062】
以下実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明は以下の実施例に限定され制限されるものではない。
【0063】
〔光散乱フィルムの作製〕
(ポリエステル樹脂系延伸フィルム基材の作製)
WO2011/162198[0076](比較例1)と同様の方法でフィルム厚み約38μmの両面易接着層付き長尺ロール状の二軸延伸PETフィルムを得た。このフィルムの面内レターデーションReは1178nmで遅相軸は幅方向(長手方向に垂直)、ヘイズは0.2%であった。
【0064】
(光散乱層の積層)
光散乱剤とバインダーを含む光散乱用ポリマー組成物として、アクリルポリオール(基材ポリマー)43部、平均粒径3μmのメチルメタクリレート-スチレン共重合体(屈折率:1.52)粒子21部、イソシアネート系硬化剤6部及び溶剤からなるポリマー組成物を用いた。各組成の配合量を示す部数は固形分換算の質量比である。この基材層表面に光散乱層用ポリマー組成物をグラビアコート法により15g/m(固形分換算)積層す
ることで光散乱フィルム1を得た。この時、バインダーの屈折率は1.50だった。
【0065】
下記の〔光散乱層の評価法〕に従って光散乱層を評価した。光散乱層の内部ヘイズは80%、算術平均粗さRaは0.05μmであった。
光散乱フィルム1に対し、光散乱剤粒子の配合量、光散乱層の厚みを変えて光散乱フィルム2~6を作製し、光散乱フィルム1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0066】
〔光散乱層の評価法〕
(1-1)ヘイズ
[1]JIS-K7136に準じて、得られた光散乱フィルムの全ヘイズ値(H)を測定する:日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH2000を用いた。
[2]光散乱層表面に上記光散乱用ポリマー組成物から光散乱剤を除去したものをバーコーターで約2g/m(固形分換算)で表面を平滑にし、表面ヘイズを除去したフィルムを作製した。このフィルムを上記と同様の方法で測定し、基材フィルムのヘイズ値との差から内部ヘイズ値(Hin)を得た。
【0067】
(1-2)光散乱層の表面形状(算術平均粗さRa)
JIS-B0601(1994、2001)に準じ、小坂研究所(株)製、サーフコーダーMODEL SE-3500を用いて測定した。
【0068】
(バック層のみを有する光散乱フィルムの作製)
有機フィラーとバインダーを含むバック層用ポリマー組成物として、アクリルポリオール(基材ポリマー)43部、平均粒径10μmのPMMA粒子(屈折率:1.50)、イソシアネート系硬化剤6部及び溶剤からなるポリマー組成物を用いた。各組成の配合量を示す部数は固形分換算の質量比である。なお、PMMA粒子の添加量は積層後のRa(算術平均粗さ)が表1に示す値になるように適宜調整した。
【0069】
前記の光散乱層を積層していない易接着層付き二軸延伸PETフィルムに対し、バック層用ポリマー組成物をグラビアコート法により7g/m(固形分換算)積層することでバック層のみを有する光散乱フィルム21を得た。
フィラーの配合量、バック層の厚みを変えて、光散乱フィルム21と同様に、光散乱フィルム22~25を作製した。
【0070】
(光散乱層とバック層を有する光散乱フィルムの作製)
前記光散乱フィルム2の光散乱層を積層していない面に、バック層のみを有する光散乱フィルム21~24のバック層を積層した以外は同様にして光散乱フィルム11~14を作製した。
同様に、光散乱フィルム4,3,1の光散乱層を積層していない面に、バック層のみを有する光散乱フィルム22のバック層を積層した以外は同様にして光散乱フィルム15~17を作製した。
【0071】
〔バック層の評価法〕
(2-1)ヘイズ
[1]JIS-K7136に準じて、得られた光散乱フィルム層の全ヘイズ値(H)を測定する:日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH2000を用いた。
バック層のみを有する光散乱フィルム21~25のヘイズを測定し、バック層のヘイズとした。光散乱層とバック層を有する光散乱フィルム層のバック層のヘイズは同一処方で作製した光散乱フィルム21~25の値をバック層のヘイズとした。
[2]バック層のみを有する光散乱フィルム21~25のバック層に上記バック層用ポリマー組成物から光散乱剤を除去したものをバーコーターで約2g/m(固形分換算)
で表面を平滑にし、表面ヘイズを除去したフィルムを作製した。このフィルムを上記と同様の方法で測定し、基材フィルムのヘイズ値との差からバック層の内部ヘイズ値(Hin)を得た。光散乱層とバック層を有する光散乱フィルム層のバック層の内部ヘイズは同一処方で作製した光散乱フィルム21~25の内部値をバック層の内部ヘイズとした。
【0072】
(2-2)バック層の表面形状(算術平均粗さRa)
JIS-B0601(1994、2001)に準じ、小坂研究所(株)製、サーフコーダーMODEL SE-3500を用いて測定した。
【0073】
【表1】
【0074】
なお、表1において光散乱フィルム1~6はポリエステル樹脂系延伸フィルム基材の一方の面に光散乱層のみを有し、バック層を有さない構成である。
光散乱フィルム11~17はポリエステル樹脂系延伸フィルム基材の一方の面に光散乱層を有し、他方の面にバック層を有す構成である。
また、光散乱フィルム21~25はポリエステル樹脂系延伸フィルム基材の一方の面にバック層のみを有し、光散乱層を有さない構成である。
また、光散乱フィルム21~25のバック層の内部ヘイズはいずれも0%だった。
【0075】
〔偏光板の作製〕
次に上記で作製した光散乱フィルム1~6、11~17,22,25と光散乱層を積層していない二軸延伸PETフィルムを用いて偏光板を作製する。
【0076】
(偏光素子の作製)
平均重合度2400、鹸化度99.9モル%の膜厚40μmのPVAフィルムを、25℃の温水中に120秒間浸漬し膨潤させた。次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=2/3)の濃度0.6重量%の水溶液に浸漬し、2.1倍に延伸させながらPVAフィルムを染色した。その後、60℃のホウ酸とヨウ化カリウム含有の酸性浴中で延伸を行い、水洗、乾燥を施し、膜厚15μmの偏光素子を作製した。
【0077】
(偏光板用接着剤の作製)
アセトアセチル基を含有する変性PVA系樹脂(日本合成化学社製:ゴーセネックスZ-410)を水に溶解し、固形分濃度3%に調整した水溶液Aを調製した。次いで、前記水溶液Aに対して0.5重量%となるようにマレイン酸を添加し、その後、架橋剤としてグリオキサールを添加した。グリオキサールの添加量は、Z-410の重量を100とした場合に、重量で5となるようにした。この水溶液に水酸化ナトリウムを加えてpHを2.5に調整して、偏光板用接着剤を得た。
【0078】
(セルロースアシレートフィルムの鹸化)
市販のセルロースアシレートフィルム(フジタックZRD40、富士フイルム(株)製:膜厚40μm)、を、55℃に保った1.5mol/LのNaOH水溶液(鹸化液)に2分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、25℃の0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を30秒流水下に通して、フィルムを中性の状態にした。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムを作製した。
【0079】
(偏光板の作製)
上記で作製した光散乱フィルムの光散乱層表面をコロナ処理した後に、上記の接着剤を乾燥後の接着剤層の厚みが150nmとなるように塗布した。鹸化処理したセルロースアシレートフィルムの片面に、上記の接着剤を乾燥後の接着剤層の厚みが150nmとなるように塗布した。
次いで、偏光素子の両面に上述の接着剤が塗布された光散乱フィルムとセルロースアシレートフィルムをロール貼合機で光散乱フィルム基材の前記二軸延伸PETフィルムの遅相軸と偏光素子の吸収軸が垂直になるように貼り合せた後、60℃で10分間乾燥して本発明に係る偏光板1を得た。
【0080】
偏光板1に対して光散乱フィルム層の種類と偏光素子との貼合面を表2に示したように変更して、偏光板2~6、11~17,21~27を作製した。
なお、偏光板21は光散乱フィルム1を光散乱層積層面とは反対面で偏光素子と貼合した。偏光板22と23はバック層のみを有し、光拡散層を有さない光拡散フィルムであり、バック層とは反対面のPET基材の易接着層と偏光素子と貼合した。偏光板25~27は外側保護フィルムのみを有し、内側保護フィルムのない構成である。また、偏光板24と27は光散乱フィルム層の代わりに、光散乱層を積層していない二軸延伸PETを外側保護フィルムとして用いた。
【0081】
〔液晶表示装置の作製〕
LG Display社製モニター(32MP58HQ:白色LEDエッジライト型バックライト搭載、IPSモード液晶セル:下から導光板、拡散シート、プリズムシート2枚、拡散シートの構成)を分解し、液晶セルに貼られたバックライト側偏光板を剥がして、代わりに偏光板1~6、11~17,21~27を、光散乱フィルムを貼合していない側を、粘着剤を介して液晶セルに貼合し、一番上の背面側偏光板に対向して配置されていた拡散シートを取り除き、再度組み立て、画像表示装置1~6、11~17,21~27を作製した。以下の〔画像表示装置の評価法〕に従って評価した。結果を表2に示す。
【0082】
〔画像表示装置の評価法〕
(3-1)斜め虹ムラ
モニターを白表示にし、画面を斜め方向、極角60度と45度で全方向観察し、虹ムラを以下の基準に従って6段階で評価した。
◎:極角60度でも極角45度でも虹ムラが全く見えない。
○:極角60度で虹ムラが何とか認識できるが殆ど見えない。極角45度で虹ムラが全
く見えない。
△:極角60度で虹ムラが認識できるが気にならない。極角45度で虹ムラが全く見え
ない。
×:極角60度で虹ムラが薄く見える。極角が45度では虹ムラが見えない。
××:虹ムラがはっきり見える。極角が45度で虹ムラが認識できる。
×××:虹ムラがはっきり見える。極角が45度でもはっきり見える。
【0083】
(3-2)モアレ
モニターを白表示にし、極角0~60度で全方向観察し以下の判断基準に従って、モアレを6段階で評価した。
◎:全方向でモアレが全く見えない。
○:全方向でモアレが殆ど見えない。
△:モアレ認識できるところがあるが気にならない。
×:モアレが薄く見えるところがある。
××:モアレがはっきり見えるところがある。
×××:全体にモアレがはっきり見える。
【0084】
(3-3)正面輝度
分解前および、本発明の実施例、比較例の偏光板貼合後のモニターを白表示にし、正面輝度を測定し、以下の判断基準に従って、正面輝度を3段階で評価した。
○:分解前の輝度に対し輝度が95%以上。
△:分解前の輝度に対し輝度が90%以上95%未満。
×:分解前の輝度に対し輝度が90%未満。
【0085】
【表2】
※偏光板21は光散乱フィルムを反対面で偏光素子と貼合。以下の構成となる。
光散乱層/ポリエステルフィルム/接着剤層/偏光素子/接着剤層/保護フィルム
【0086】
表1示した画像表示装置を前期の(3-1)斜め虹ムラに準じ、画面を正面から観察し
たところ(「正面虹ムラ」の観察)、全ての画像表示で正面虹ムラは観察されなかった。
【0087】
表2に示した結果から以下のことが明らかである。
1.偏光板保護フィルムに汎用の延伸PETフィルムを用いると斜め虹ムラが発生する。2.延伸PETと偏光素子の間に内部ヘイズが50~95%の光散乱層を設けることで斜め虹ムラを防止することができる。
3、内側保護フィルムの有無に関わらず同様の斜め虹ムラ防止効果が得られる。
4.光散乱層を偏光板の外側に設けたものは虹ムラ防止効果がない。
5.光散乱層と凹凸形状を有するバック層を有したものはモアレ改良効果が高い。
6.特に算術平均粗さRaが0.10~0.90μmの凹凸形状を有するバック層を設けたものはモアレ改良効果が高い。
7.光散乱層がなく、凹凸形状を有するバック層のみを設けたものは虹ムラ防止効果が殆どない。
【0088】
次に従来技術である高ヘイズ防眩フィルムを用いた場合の白ボケ(黒表示時の白っぽさ)と斜め虹ムラ防止の関係と本発明の優位性を示す。
【0089】
(低ヘイズ防眩フィルムの作製)
特開2013-228720号公報段落[0120]~[0141]および[0156]に記載の実施例1に準じて、低ヘイズ防眩フィルムを得た。低ヘイズ防眩フィルムのヘイズは3%だった。
【0090】
(高ヘイズ防眩フィルムの作製)
特開2009-109993号公報段落[0074]~[0079]に記載の防眩性保護フィルム(C)に準じて高ヘイズ防眩フィルムを得た。高ヘイズ防眩フィルムのヘイズは44%だった。
【0091】
(視認側偏光板の作製)
前記(セルロースアシレートフィルムの鹸化)に準じて低ヘイズ防眩フィルムと高ヘイズ防眩フィルムを鹸化処理した。次に偏光板1に対し、光散乱フィルム層を鹸化処理済みの低ヘイズ防眩フィルムに代えて偏光板31を、高ヘイズ防眩フィルムに代えて偏光板32を作製した。何れの偏光板も、防眩フィルムの偏光素子との貼合面は防眩層を積層していない面である。
【0092】
〔液晶表示装置の作製〕
LG Display社製モニター(32MP58HQ:白色LEDサイドライト型バックライト搭載、IPSモード液晶セル)を分解し、液晶セルに貼られたバックライト側偏光板を剥がして、代わりに表3に従って、偏光板12または偏光板13を、内側保護フィルム側を、粘着剤を介して液晶セルに貼合し、視認側偏光板を剥がして、代わりに偏光板31または偏光板32を、防眩フィルムを積層していない側を貼合し、一番上の背面側偏光板に対応して配置されていた拡散シートを取り除き、再度組み立て、画像表示装置31~33を作製した。以下の評価法に黒しまり感を、画像表示装置1と同様の方法に従って斜め虹ムラを評価した。結果を表3に示す。
【0093】
(3-4)黒しまり感
一般的にTVを用いる一般家庭環境下(約200Lx)にてパネルを黒表示にて駆動させて、漆黒感を目視にて以下の判定基準にて確認した。
A:黒の程度が非常に良好である。
B:黒の程度が良好である。
C:若干白っぽさを感じるが許容範囲内である。
D:白っぽさが目立つ。
【0094】
【表3】
【0095】
表3に示した結果から以下のことが明らかである。
1.汎用の延伸PETフィルムを保護フィルムに用いた背面側偏光板と視認側に高ヘイズ防眩フィルムを組み合わせると斜め虹ムラは低減できるものの十分ではない、また、新たに黒表示が白っぽくなる問題が生じる。
2.本発明の偏光板を用いることで斜め虹ムラ防止と黒しまり(黒の程度が非常に良好)を両立することができ好ましい。