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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】基板ホルダ、基板処理装置及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/50 20060101AFI20220316BHJP
   C23C 14/56 20060101ALI20220316BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20220316BHJP
   H01L 21/673 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
C23C14/50 D
C23C14/56 G
C23C16/458
H01L21/68 U
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020038044
(22)【出願日】2020-03-05
(62)【分割の表示】P 2017250012の分割
【原出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2020094285
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生長 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】熊木 智洋
(72)【発明者】
【氏名】阿部 大和
(72)【発明者】
【氏名】渡部 新
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-015633(JP,A)
【文献】特開2011-124348(JP,A)
【文献】特開2009-016567(JP,A)
【文献】特開2005-077845(JP,A)
【文献】特開2004-221134(JP,A)
【文献】国際公開第2011/043063(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0193216(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
C23C 16/00-16/56
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理領域を含む第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とを結ぶ端面とを有する基板を保持する基板ホルダであって、
前記被処理領域を露出させる開口を有する第1枠体と、
締結手段によって前記第1枠体に締結された第2枠体と、を備え、
前記第1枠体は、前記第1主面の前記被処理領域の外側の周縁領域に当接する第1当接部を有し、
前記第2枠体は、前記第2主面の前記周縁領域に対応する位置に当接する第2当接部と、前記端面に当接する第3当接部と、を有し、
前記第1主面と前記端面とのなす第1の角、及び、前記第2主面と前記端面とのなす第2の角のそれぞれが、前記第1枠体及び前記第2枠体のいずれからも離間するように、前記第1当接部、前記第2当接部、及び前記第3当接部が前記基板を保持することを特徴とする基板ホルダ。
【請求項2】
前記第1当接部は、前記第1の角から内側に離れた位置で前記第1主面に当接し、
前記第2当接部は、前記第2の角から内側に離れた位置で前記第2主面に当接し、
前記第3当接部は、前記第1の角及び前記第2の角のそれぞれから内側に離れた位置で前記端面に当接することを特徴とする請求項1に記載の基板ホルダ。
【請求項3】
前記第1枠体は、前記第1当接部の外側に、前記第1枠体と前記第1の角との間に隙間を形成するための溝部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の基板ホルダ。
【請求項4】
前記第2枠体は、前記第2当接部の外側に、前記第2枠体と前記第2の角との間に隙間を形成するための溝部を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の基板ホルダ。
【請求項5】
前記第2枠体が前記第3当接部を複数備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の基板ホルダ。
【請求項6】
前記第1主面及び前記第2主面のそれぞれは、4辺を有する矩形であり、
前記端面は、前記4辺のそれぞれに対応して区分けされた第1ないし第4の部分を含み、
前記第3当接部が前記端面の第1の部分に当接し、
前記第1の部分に対向する第2の部分は、前記第1枠体及び前記第2枠体のいずれからも離間することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の基板ホルダ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の基板ホルダを、前記第1主面及び前記第2主面のそれぞれが鉛直方向に沿うように前記基板を保持した状態で搬送する搬送手段を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
前記基板の、前記第3当接部に当接した端面が、鉛直方向下方に位置することを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の基板処理装置と、
前記基板の前記被処理領域に成膜処理を行う成膜手段と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板ホルダ及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスに用いられる基板の成膜処理において、基板を垂直に立てた状態(被処理面が垂直となる姿勢)で支持し、成膜装置における各室間を搬送する方式がある。基板は、被処理面が外部に開放(露出)された状態で基板ホルダに保持され、さらに基板ホルダを支持する搬送手段により各室間を移動する(特許文献1)。基板ホルダの構成としては、上下2つの枠体で基板を挟み込み、ねじ等の締結具で枠体を締結することにより、基板を固定保持する構成が一例として挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開公報WO2016/017602号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8は、従来例に係る基板ホルダの構成を示す模式的断面図(切断部端面図)である。図8に示すように、基板ホルダ130は、基板2の被処理領域を露出させる開口部を有し、基板2の被処理領域を含む第1面21と当接する第1枠体131と、基板2の第2面22と当接する第2枠体132と、からなり、ねじ34で締結されている。図8のC部に示すように、基板2の角部24(第1面21と基板側端面23との境目の部分、及び第2面22と基板側端面23との境目の部分)が、第1枠体131と第2枠体132に接触する構成となっている。そのため、締付けによる力や加熱時の熱膨張による変形等により、角部24においてチッピング(角が欠けてチップ(破片)が生じる)が発生してしまう。基板2の角部24は、基板製造時にバリが発生する部分であり、バリが欠けてチップを生じさせることで装置内が汚染される。また、チッピングは、当初は小さいものであっても、そこをとっかかりとして後の工程において破損範囲が広がりやすく、一度発生してしまうと、生産性に大きな影響を与える。対策の従来例として、基板の面取りがあるが、基板のコストが上がるという課題がある。
【0005】
本発明は、基板の破損発生を抑制した基板の保持を可能とすることができる基板ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の基板ホルダは、
被処理領域を含む第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とを結ぶ端面とを有する基板を保持する基板ホルダであって、
前記被処理領域を露出させる開口を有する第1枠体と、
締結手段によって前記第1枠体に締結された第2枠体と、を備え、
前記第1枠体は、前記第1主面の前記被処理領域の外側の周縁領域に当接する第1当接部を有し、
前記第2枠体は、前記第2主面の前記周縁領域に対応する位置に当接する第2当接部と、前記端面に当接する第3当接部と、を有し、
前記第1主面と前記端面とのなす第1の角、及び、前記第2主面と前記端面とのなす第2の角のそれぞれが、前記第1枠体及び前記第2枠体のいずれからも離間するように、前記第1当接部、前記第2当接部、及び前記第3当接部が前記基板を保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板の破損発生を抑制した基板の保持を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る基板ホルダの模式的断面図(切断部端面図)
図2】本発明の実施例に係る基板ホルダの模式的斜視分解図
図3】本発明の実施例に係る基板ホルダの模式的断面図(切断部端面図)
図4】本発明の実施例に係る基板ホルダの第2枠体の模式的平面図
図5】本発明の実施例の変形例に係る基板ホルダの模式的断面図(切断部端面図)
図6】本発明の実施例の変形例に係る基板ホルダの模式的断面図(切断部端面図)
図7】本発明の実施例2に係る基板ホルダの第2枠体の模式的平面図
図8】従来例に係る基板ホルダの模式的断面図(切断部端面図)
図9】本発明の実施例におけるスパッタリング装置の概略図
図10】本発明の実施例に係る成膜装置の概略図
図11】成膜処理のフローチャートの一例
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0010】
(実施例1)
<成膜装置の全体構成>
図10は、本発明の実施例に係る成膜装置1の全体構成を概略的に示した模式図である。成膜装置1は、成膜処理される基板2が収容されるストッカ室11と、基板2の加熱処理を行う加熱室12と、基板2の被処理面に成膜処理を行う成膜室13と、を備える。成膜室13には、成膜処理に先立って基板2の被処理面の洗浄等の前処理やエッチング処理を行うための基板処理装置14と、基板2の被処理面に成膜処理を行う成膜処理部としてのスパッタリング装置15と、を備える。本実施例の成膜装置1は、基板2を縦に立てた状態(被処理面が垂直となる姿勢)で各室間を搬送する構成となっている(図9参照)。
【0011】
図11は、本実施例における成膜処理のフローチャートの一例である。基板2は、ストッカ室11から加熱室12へ(S101)、加熱室12から成膜室13の基板処理装置14へ(S103)、基板処理装置14からスパッタリング装置15へ(S105)、順次搬送され、成膜処理が施される。基板2は、加熱室12でヒータ121により加熱処理された後(S102)、先ず、成膜室13の基板処理装置14による表面処理を施される(S104)。表面処理が施された基板2は、次に、スパッタリング装置15による各種異なる材料からなるターゲット151、152、153を用いたスパッタリング処理が施され(S106)、成膜処理が終了する。ここで示す成膜処理のフローはあくまで一例であり、ここで示す工程内容に限定されるものではない。
【0012】
本実施例に係る成膜装置1は、例えば、前処理を伴う種々の電極形成に適用可能である。具体例としては、例えば、FC-BGA(Flip-Chip Ball Grid Array)実装基板向けのメッキシード膜や、SAW(Surface Acoustic Wave)デバイス向けのメタル積層膜の成膜が挙げられる。また、LEDのボンディング部における導電性硬質膜、MLCC(Multi-Layered Ceramic Capacitor)の端子部膜の成膜なども挙げられる。その他、電子部品パッケージにおける電磁シールド膜やチップ抵抗器の端子部膜の成膜にも適用可能である。処理基板2のサイズは、縦横200mm×200mm、厚み0.7~6.0mmのものが例
示できる。基板2の材質としては、ガラス、アルミナ、セラミック、LTCC(Low
Temperature Co-fired Ceramics:低温同時焼成セラミックス)等が挙げられる。
【0013】
<基板搬送構成及びスパッタリング装置>
基板2は、上述したように、垂直に立てた状態で成膜装置1の各室間を搬送され、スパッタリング室51(チャンバ)内においても、被処理面21が垂直となる(被処理面21が水平方向に向いた)姿勢で設置される。図9に示すように、基板2は、基板ホルダ30により、被処理面21が開放(露出)された状態で被処理領域外周の周縁部が挟持され保持される。基板2を保持する基板ホルダ30は、基板ホルダ支持部43により支持される。基板ホルダ支持部43は、基板搬送手段としての車輪431を下方に備え、基板ホルダ30を支持した状態でスパッタリング室51内をスパッタリング室51の底面に敷設されたレール432に乗って移動可能に構成されている。なお、ここで言う垂直とは、スパッタリング室51の底面あるいはレール432上面(基板搬送面)に対して垂直であることであり、装置構成によっては、重力方向(鉛直方向)と一致しない場合がある。同様に、ここで言う水平方向も、重力方向と直交する方向と一致しない場合がある。すなわち、本実施例では、各室の内壁における基板ホルダ支持部43の設置面が水平面であることを前提として上下左右の方向を規定した説明としているが、該設置面の方向が変われば、上下左右方向の規定もそれに合わせて変化することは言うまでもない。
【0014】
スパッタリング装置15のスパッタリング室51は、排気装置56により、予め所定の高真空圧まで排気された状態となっている。基板ホルダ30は、スパッタリング室51内を一定の速度で移動し、その間に、基板2に対してカソードユニット50による成膜処理が施される。スパッタリング室51内において、基板2(基板ホルダ30)とカソードユニット50は、水平方向に互いに対向するように配置される。スパッタリング室51は、排気装置56により、スパッタリングプロセスに好適な真空度(例えば、2×10Pa~2×10-5Pa)に調整されるとともに、ガス供給源57から、スパッタリングガスが流量制御されて供給される。これにより、スパッタリング室51の内部にスパッタリング雰囲気が形成される。スパッタリングガスとしては、例えばAr、Kr、Xe等の希ガスや成膜用の反応性ガスが用いられる。
【0015】
板状の成膜材料であるターゲット151は、基板2の搬送経路、すなわち基板2の被処理面21に対して平行となるように配置される。ターゲット151における基板2と対向する側とは反対側には、カソード電極251が密着して設けられている。カソード電極251には電源55が接続されており、スパッタリング室51は接地されている。電源55による電圧印加において、カソード電極251が陰極となり、スパッタリング室51の壁部が陽極となる。
【0016】
<スパッタリング>
上述したスパッタリング雰囲気の形成と、電源55からカソード電極251への電圧印加により、ターゲット151の基板2との対向面近傍にプラズマ領域が生成される。プラズマ領域の生成により生成されるスパッタリングガスイオンとターゲット151との衝突により、ターゲット粒子がターゲット151の基板2との対向面から放出される。ターゲット151から放出されたターゲット粒子が基板2に向かって飛翔、堆積することで基板2の被処理面21に成膜がなされる。ターゲット152、153についても、ターゲット151とは材料が異なるのみで、スパッタリングによる成膜処理メカニズムは同様である。
【0017】
<基板ホルダ30の構成(本実施例の特徴)>
図1~4を参照して、本実施例の特徴である基板ホルダ30の構成について説明する。
図1は、本発明の実施例に係る基板ホルダの模式的部分断面図(切断部端面図)である。図2は、本発明の実施例に係る基板ホルダの模式的斜視分解図である。図3は、本発明の実施例に係る基板ホルダの模式的断面図(切断部端面図)であり、基板2の基板ホルダ30への組み付けの様子を説明する図である。図4は、本発明の実施例に係る基板ホルダの第2枠体の模式的平面図である。
【0018】
基板ホルダ30は、上述したように、基板2の被処理領域を露出させて基板2を保持するものであり、概略、第1の枠体である基板押え31と、第2の枠体である基板ホルダ本体32と、で基板2の両面を挟持することで基板2を保持する。基板2の一方の面(第1の面)である被処理面21は、上述した成膜処理等が施される被処理領域21aと、その外側(外周)を囲む周縁領域21bと、で構成される。
【0019】
基板押え31は、基板2の被処理面21の周縁領域21bにおける、基板端部、すなわち、被処理面21と基板2の側端面23との境目の角部24(基板端部)よりも内側の位置において、被処理面21に当接する当接面(第1当接部)310を有する。角部24よりもどの程度内側で当接面310を被処理面21の周縁領域21bに当接させるかは、チッピングの発生を抑制することができる範囲で適宜設定される。当接面310は、基板押え31において基板ホルダ本体32との対向方向に突出する凸状部311の先端面である。凸状部311は、基板押え31の基板ホルダ本体32との対向部において略矩形の環状に形成されている。基板押え31の基板ホルダ本体32との対向部における凸状部311よりも外側には、基板押え31を基板2の角部24に対して非接触にする隙間を形成するための溝部(凹部)313が形成されている。また、基板押え31の基板ホルダ本体32との対向部における凸状部311よりも内側は、基板2の被処理面21を外部に開放(露出)する開口部312が形成されている。基板押え31は、基板2の被処理領域21aの周囲を囲む額縁状の部材である。
【0020】
基板ホルダ本体32は、基板2の他方の面(第2の面)である、被処理面21とは反対側の裏面22における、裏面22と基板2の側端面23との境目の角部24よりも内側の位置において、裏面22に当接する当接面(第2当接部)320を有する。角部24よりもどの程度内側で当接面320を裏面22に当接させるかは、チッピングの発生を抑制することができる範囲で適宜設定される。当接面320は、基板ホルダ本体32において基板押え31との対向方向に突出する凸状部321の先端面である。凸状部321は、基板ホルダ本体32の基板押え31との対向部において略矩形の環状に形成されている。基板ホルダ本体32の基板押え31との対向部における凸状部321よりも外側には、基板ホルダ本体32を基板2の角部24に対して非接触にする隙間を形成するための溝部(凹部)323が形成されている。また、基板ホルダ本体32の基板押え31との対向部における凸状部321よりも内側には、基板2の裏面22に対して隙間を空けて対向する凹部322が形成されている。なお、凹部322に代えて、基板押え31の開口部312と同様、開口部を設けても良い。すなわち、基板2の裏面22を外部に開放するホルダ構成としてもよい。
【0021】
基板ホルダ本体32には、基板2の基板ホルダ本体32に対する位置決めを行うための突き当て部材である位置決めピン33が、ねじ35により基板ホルダ本体32に固定されている。位置決めピン33は、基板2の側端面23に向かって、基板2に垂直な方向における幅が徐々に狭くなる先端形状を有しており、その先端面330が突き当て部として基板2の側端面23に当接する。ここで、基板2に垂直な方向とは、基板2の厚み方向、基板押え31と基板ホルダ本体32の対向方向、図2等におけるZ軸方向等と同義である。位置決めピン33の先端面330の基板2に垂直な方向における幅は、基板2の厚みよりも小さく、角部24との接触を避ける位置、本実施例では、上記方向における中央部において、側端面22に当接する。先端面330が側端面22と当接する位置は、チッピング
の発生を抑制することができる位置であれば、上記中央部でなくてもよい。
【0022】
基板押え31と基板ホルダ本体32は、位置決めピン33が基板2の端面23に突き当たり、当接面310、320が基板2を挟持した状態で、締結手段としてのねじ34により、互いに締結固定される。基板押え31と基板ホルダ本体32は、複数のねじ34により複数箇所で締め付けられ、本実施例では、ねじ34の1個当たりのクランプ力を5~40cN/mとしている。基板押え31のねじ孔314と基板ホルダ本体32のねじ穴324は、基板2に対して、位置決めピン33と基板2の突き当て位置よりも外側に設けられている。ねじ34の締結により、当接面310、320が、基板2の角部24には非接触で、基板2の両面を挟持する挟持部を構成することになる。基板押え31、基板ホルダ本体32、位置決めピン33は、本実施例ではSUSを用いて製作しているが、ある程度の硬さを持つ金属であれば他の金属を用いてもよい。また、所望の位置決め保持機能が得られるのであれば適宜他の材料を採用してよい。
【0023】
基板押え31の当接面310と基板ホルダ本体32の当接面320がそれぞれ、基板2の角部24よりも内側で角部24とは非接触で、基板2の両面と接触する構成とすることで、角部24に対して基板2の厚み方向(Z方向)に働く力を緩和することができる。また、位置決めピン33も、基板2の角部24よりも内側で角部24とは非接触で、基板2の端面23と接触する構成とすることで、角部24に対して基板2の幅方向(基板2の面21、22に平行な方向、XY方向)に働く力を緩和することができる。このように、基板ホルダ30が基板2の角部24に接触する部分を有さないことで、面取りを行っていない基板2においてチッピングが発生することを抑制することができる。すなわち、本実施例によれば、基板の破損発生を抑制した基板の保持が可能となる。
【0024】
<基板2の基板ホルダ30への組み付け>
図3に示すように、基板2の基板ホルダ30への組み付けにおいては、先ず、基板2を基板ホルダ本体32における所定の基板収容部に載置する、具体的には、凸状部321の当接面320上に載せる(図3(A))。その際、基板2の裏面22を当接面320に載せつつ基板2の側端面23を位置決めピン33の先端面330に突き当てることで、基板2を基板ホルダ本体32に対して位置決めすることができる(図3(B))。基板2が位置決めされた基板ホルダ32に対し、額縁状の基板押え31を基板2の外周縁(周辺領域21b)を覆うようにかぶせて、基板2を当接面310、320で挟んだ状態とする。そして、ねじ34で締結することにより、基板2と基板押え31と基板ホルダ本体32とが一体的に固定される(図3(C))。
【0025】
<位置決めピン33の配置>
図4に示すように、位置決めピン33は複数設けられる。複数備える位置決めピン33は、基板2の4辺のうち互いに対向する2辺のいずれか一方の辺にのみ突き当たるように配置される。すなわち、上記2辺のいずれか一方の辺にのみ位置決めピン33が突き当たるようにし、他方の辺には基板2に沿った方向の力が基板ホルダ30から作用しないように構成する。つまり、複数の位置決めピン33は、突き当て方向において互いに対向する配置とはならない。基板2における位置決めピン33と突き当たる部分とは反対側の部分を、基板2に沿った方向に位置規制しない構成とすることで、基板2や基板ホルダ30における寸法誤差や熱膨張等による寸法変化などを吸収して、基板2を位置決めすることができる。
【0026】
また、複数の位置決めピン33は、基板2の4辺のうち互いに対向しない2辺のうちの一方の辺における端面23に突き当たる位置と、他方の辺における端面23と突き当たる位置と、にそれぞれ配置される。すなわち、基板2に沿った方向における2方向において位置決めを行うことで、基板2を基板ホルダ30に対して精度よく位置決めすることがで
きる。また、基板2の4辺のうちの1辺に対してそれぞれ異なる位置で突き当たるように複数の位置決めピン33を配置することで、より精度の高い位置決めを行うことができる。さらに、位置決めピン33が突き当たる基板2の辺を、基板2が垂直に立てられた際の基板2の4辺のうちの下端の辺とすることで、基板2搬送時において、基板2の下端面となる端面23を位置決めピン33で支える構成となる。これにより、より安定した基板2の保持状態を実現することができる。
【0027】
<変形例1>
図5(A)は、本発明の実施例1の変形例1に係る基板ホルダ30aの模式的部分断面図(切断部端面図)である。本変形例において実施例1と共通する構成については同じ符号を付し、再度の説明は省略する。図5(A)に示すように、本変形例では、位置決めピン33が、基板ホルダ本体32の溝部323に配置される構成となっている。また、基板押え31と基板ホルダ本体32とが、ねじ34で締め付けられる部分において互いに当接する構成となっている。さらに、基板ホルダ本体32において、基板押え31と当接する当接面325と、基板2と当接する当接面320とが、(図2等のZ方向において)互いに同じ高さとなるように構成されている。かかる構成によれば、基板ホルダ本体32の製作において、溝部323を形成する工程によって、当接面320、325、及び位置決めピン23の設置部を形成することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0028】
<変形例2>
図5(B)は、本発明の実施例1の変形例2に係る基板ホルダ30bの模式的部分断面図(切断部端面図)である。本変形例において実施例1、変形例1と共通する構成については同じ符号を付し、再度の説明は省略する。図5(B)に示すように、変形例2では、変形例1と異なり、基板押え31において、基板ホルダ本体32と当接する当接面315と、基板2と当接する当接面310とが、(図2等のZ方向において)互いに同じ高さとなるように構成されている。かかる構成によれば、基板押え31の製作において、溝部313を形成する工程によって、当接面310、315も形成することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0029】
<変形例3>
図6(A)は、本発明の実施例1の変形例3に係る基板ホルダ30cの模式的部分断面図(切断部端面図)である。本変形例において実施例1、変形例1、2と共通する構成については同じ符号を付し、再度の説明は省略する。図6(A)に示すように、変形例3では、基板ホルダ本体32の基板押え31との対向部における凸状部321よりも外側の領域を、実施例1等の溝部323のような溝状の凹凸形状を排した構成としている。具体的には、基板ホルダ本体32における当接面320よりも外側の領域が、基板2との非接触状態を形成すべく基板2との間に隙間を形成する単一の面326で構成されている。そして、その単一の面326の一部が、位置決めピン33の設置面及び基板押え31の当接面315と当接する面を兼ねる構成となっている。かかる構成によれば、基板ホルダ本体32を、実施例1のような溝部323や位置決めピン33の設置部の形成を必要としないシンプルな構成とすることができ、基板ホルダ本体32の製作におけるコストの低減を図ることができる。
【0030】
<変形例4>
図6(B)は、本発明の実施例1の変形例4に係る基板ホルダ30dの模式的部分断面図(切断部端面図)である。本変形例において実施例1、変形例1~3と共通する構成については同じ符号を付し、再度の説明は省略する。図6(B)に示すように、変形例4では、変形例3と異なり、基板押え31の基板ホルダ本体32との対向部における凸状部311よりも外側の領域を、実施例1等の溝部313のような溝状の凹凸形状を排した構成としている。具体的には、基板押え31における当接面310よりも外側の領域が、板2
との非接触状態を形成すべく基板2との間に隙間を形成する単一の面316で構成されている。そして、その単一の面316の一部が、基板ホルダ本体32の当接面325と当接する面を兼ねる構成となっている。かかる構成によれば、基板押え31を、実施例1のような溝部313の形成を必要としないシンプルな構成とすることができ、基板押え31の製作におけるコストの低減を図ることができる。
【0031】
(実施例2)
図7は、本発明の実施例2に係る基板ホルダ30eの基板ホルダ本体32eの模式的平面図である。本実施例において実施例1、変形例1~4と共通する構成については同じ符号を付し、再度の説明は省略する。実施例2に係る基板ホルダ30eは、2つの基板を収容し保持することができる構成となっている。具体的には、図7に示すように、2つの基板を同じ高さで水平方向に並べて保持することができるように構成されている。なお、図7は、基板ホルダ本体32eと位置決めピン33のみを図示しており、基板及び基板押えについては図示を省略している。
【0032】
図7に示すように、基板ホルダ本体32eには、2つの基板にそれぞれ対応して2つの凹部322a、322bが設けられており、それぞれの外周に、当接面320、位置決めピン33が配置されている。ここで、本実施例では、隣接する基板の間の領域に入り込んで、2つの基板の一方の位置決めを行う位置決めピン33eが設けられている。位置決めピン33eは、固定部33e1と、延在部33e2と、突出部33e3と、を有する。固定部33e1は、基板ホルダ本体32eにおける基板配置スペースより外側のねじ34の締結によって基板押えと当接する面(あるいは対向する面)に、ねじ35で固定される。延在部33e2は、固定部33e1から2つの基板配置スペースの間を、基板の1辺と所定の位置で対向する位置まで延びている。突出部33e3は、延在部33e2の側方から基板配置スペースに向かって突出し、その先端面330eが、基板の上記1辺と突き当たることで基板を位置決めする。
【0033】
本実施例の位置決めピン33eによれば、2つの基板を並べて配置するホルダ構成において、2つの基板設置スペースの間にねじ止め箇所(ねじ穴324)を形成するために設けられた間隔スペースを利用して、突き当て部を形成することができる。したがって、本実施例によれば、2つの基板を必要最低限の間隔で配置しつつ、基板の破損発生を抑制した基板の保持を可能にすることができる。なお、本実施例の位置決めピン33eを用いた位置決め構成は、3つ以上の複数の基板を保持可能な基板ホルダにも適宜適用できる。
【0034】
<その他>
当接面310、320(凸状部311、321)は、本実施例では、略矩形の環状に連続的に形成しているが、途切れ途切れの断続的に形成してもよい。
また、当接面310、320の幅は、本実施例では、それぞれ同じ幅に形成しているが、異なる幅としてもよい。また、当接面310、320のそれぞれの当接位置を基板2の幅方向に互いにずらしてもよい。
位置決めピン33やねじ34の数や配置は、上記各実施例における数や配置に限定されず、適宜変更することができる。なお、ねじ34によるねじ止め位置は、基板の角から一定の間隔離れている方がピッチング発生をより確実に防止することができる。
上記各実施例及び各変形例は、可能な限りそれぞれの構成を互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0035】
2…基板、21…被処理面(第1の面)、22…裏面(第2の面)、23…端面、24…角部、30…基板ホルダ、31…基板押え(第1枠体)、310…当接面(第1当接部)、32…基板ホルダ本体(第2枠体)、320…当接面(第2当接部)、33…位置決
めピン、330…先端面(突き当て部)、34…ねじ(締結手段)
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