(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】前駆体フィルム、被めっき層付き基板、導電性フィルム、タッチパネルセンサー、タッチパネル、導電性フィルムの製造方法、および、被めっき層形成用組成物
(51)【国際特許分類】
C23C 18/18 20060101AFI20220316BHJP
C23C 18/31 20060101ALI20220316BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20220316BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20220316BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
C23C18/18
C23C18/31 A
H01B5/14 B
G06F3/041 495
G06F3/041 650
H01B13/00 503A
(21)【出願番号】P 2020510376
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2019004806
(87)【国際公開番号】W WO2019187709
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2018058710
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】塚原 次郎
(72)【発明者】
【氏名】成田 岳史
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/035896(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/034291(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/001611(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/154896(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/163830(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C18/18
C23C18/31
H01B5/14
H01B13/00
G06F3/041
C08F2/44
C08F279/02
C08F299/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性フィルムを製造するための前駆体フィルムであって、
基板と、前記基板上に配置されたプライマー層と、前記プライマー層上に配置された被めっき層前駆体層とを含み、
前記被めっき層前駆体層は、2官能のラジカル重合性モノマーと、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーとを含み、
前記2官能のラジカル重合性モノマーは、2つのラジカル重合性基を連結する連結鎖の主鎖の原子数が25個~100個であ
り、
前記2官能のラジカル重合性モノマーが、式(100)で表される化合物であり、
前記めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーが、共役ジエン化合物由来の繰り返し単位、および、不飽和カルボン酸またはその誘導体由来の繰り返し単位を有するポリマーであり、
前記めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基が、カルボン酸である、前駆体フィルム。
【化1】
ただし、式(100)中、R
1
およびR
2
は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、nは9~33の整数を表す。
【請求項2】
前記めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーが、ブタジエン-マレイン酸共重合体である、請求項
1に記載の前駆体フィルム。
【請求項3】
前記基板のガラス転移温度が100℃以下である、請求項1
又は2に記載の前駆体フィルム。
【請求項4】
前記基板が、ポリプロピレン系樹脂基板、ポリメチルメタクリレート系樹脂基板およびポリエチレンテレフタレート系樹脂基板からなる群から選択されるいずれか1種である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の前駆体フィルム。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の前駆体フィルム中の前記被めっき層前駆体層を硬化してなる被めっき層を有する、被めっき層付き基板。
【請求項6】
前記被めっき層がパターン状に配置されている、請求項
5に記載の被めっき層付き基板。
【請求項7】
前記基板が3次元形状を有する、請求項
5または
6に記載の被めっき層付き基板。
【請求項8】
請求項
5~
7のいずれか1項に記載の被めっき層付き基板と、前記被めっき層付き基板中の前記被めっき層上に配置された金属層とを含む、導電性フィルム。
【請求項9】
請求項
8に記載の導電性フィルムを含む、タッチパネルセンサー。
【請求項10】
請求項
9に記載のタッチパネルセンサーを含む、タッチパネル。
【請求項11】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の前駆体フィルムを露光する露光工程と、露光した前記フィルムを現像する現像工程と、現像した前記フィルムを加熱成形する成形工程と、成形した前記フィルムにめっきするめっき工程とを含む、導電性フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記成形工程において、60℃~120℃で加熱成形する、請求項1
1に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記現像工程において、露光した前駆体フィルムをアルカリ性水溶液を用いて洗浄し、次いで、水を用いて洗浄する、請求項1
1または1
2に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項14】
2官能のラジカル重合性モノマーと、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーとを含み、
前記2官能のラジカル重合性モノマーは、2つのラジカル重合性基を連結する連結鎖の主鎖の原子数が25個~100個であ
り、
前記2官能のラジカル重合性モノマーが、式(100)で表される化合物であり、
前記めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーが、共役ジエン化合物由来の繰り返し単位、および、不飽和カルボン酸またはその誘導体由来の繰り返し単位を有するポリマーであり、
前記めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基が、カルボン酸である、被めっき層形成用組成物。
【化2】
ただし、式(100)中、R
1
およびR
2
は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、nは9~33の整数を表す。
【請求項15】
前記めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーが、ブタジエン-マレイン酸共重合体である、請求項1
4に記載の被めっき層形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前駆体フィルム、被めっき層付き基板、導電性フィルム、タッチパネルセンサー、タッチパネル、導電性フィルムの製造方法、および、被めっき層形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に金属層(好ましくは、パターン状金属層)が配置された導電性フィルム(金属層付き基板)は、種々の用途に使用されている。例えば、近年、携帯電話または携帯ゲーム機器などへのタッチパネルの搭載率の上昇に伴い、多点検出が可能な静電容量式のタッチセンサー用の導電性フィルムの需要が急速に拡大している。
導電性フィルムの製造方法は種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基板と、基板上に配置された被めっき層とを有する、被めっき層付き基板であって、被めっき層は、ポリオキシアルキレン基を有する多官能アクリルアミド、および、ポリオキシアルキレン基を有する多官能メタクリルアミドからなる群から選択されるアミド化合物と、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーとを含む被めっき層形成用組成物を硬化して得られる被めっき層付き基板(請求項1、7および8)、この被めっき層付き基板と、被めっき層付き基板中の被めっき層上に配置された金属層とを含む、導電性フィルム(請求項11)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、昨今、3次元形状を有する導電性フィルムが求められている。
例えば、操作性をより高めるために、タッチ面が曲面など3次元形状であるタッチパネルが求められており、このようなタッチパネルに含まれるタッチパネルセンサーには3次元形状を有する導電性フィルムが用いられる。
【0006】
さらに、導電性フィルムの基板として、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリプロピレンフィルムなど、従来よりもガラス転移温度が低い素材からなるフィルムを用いて、従来の成形温度よりも低温で、3次元形状に成形することが求められるようになってきた。
【0007】
本発明者らは、特許文献1に記載された被めっき層付き基板を用いて、従来よりも低温で成形して、3次元形状を有する導電性フィルムを製造しようとした。しかし、被めっき層の延伸性が十分でなく、被めっき層を所望の形状に変形させることが困難であった。
【0008】
本発明は、上記実情を鑑みて、従来よりも低温で成形する場合であっても、被めっき層前駆体を硬化してなる被めっき層の延伸性に優れる、導電性フィルムを製造するための前駆体フィルムを提供することを課題とする。
【0009】
また、本発明は、被めっき層付き基板、導電性フィルム、タッチパネルセンサー、タッチパネル、導電性フィルムの製造方法、および、被めっき層形成用組成物を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、特定の連結鎖長を有する2官能のラジカル重合性モノマーと、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーとを用いることにより、上記解題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0011】
[1] 導電性フィルムを製造するための前駆体フィルムであって、
基板と、上記基板上に配置されたプライマー層と、上記プライマー層上に配置された被めっき層前駆体層とを含み、
上記被めっき層前駆体層は、2官能のラジカル重合性モノマーと、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーとを含み、
上記2官能のラジカル重合性モノマーは、2つのラジカル重合性基を連結する連結鎖の主鎖の原子数が25個~100個である、前駆体フィルム。
[2] 上記2官能のラジカル重合性モノマーのラジカル重合性基が、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、および、メタクリルアミド基からなる群から選択される、上記[1]に記載の前駆体フィルム。
[3] 上記2官能のラジカル重合性モノマーが、ポリオキシアルキレン基を有する、上記[1]または[2]に記載の前駆体フィルム。
[4] 上記2官能のラジカル重合性モノマーが、式(100)で表される化合物である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の前駆体フィルム。
【化1】
ただし、式(100)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、nは9~33の整数を表す。
[5] 上記めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーが、共役ジエン化合物由来の繰り返し単位、および、不飽和カルボン酸またはその誘導体由来の繰り返し単位を有するポリマーである、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の前駆体フィルム。
[6] 上記めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーが、ブタジエン-マレイン酸共重合体である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の前駆体フィルム。
[7] 上記基板のガラス転移温度が100℃以下である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の前駆体フィルム。
[8] 上記基板が、ポリプロピレン系樹脂基板、ポリメチルメタクリレート系樹脂基板およびポリエチレンテレフタレート系樹脂基板からなる群から選択されるいずれか1種である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の前駆体フィルム。
[9] 上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の前駆体フィルム中の上記被めっき層前駆体層を硬化してなる被めっき層を有する、被めっき層付き基板。
[10] 上記被めっき層がパターン状に配置されている、上記[9]に記載の被めっき層付き基板。
[11] 上記基板が3次元形状を有する、上記[9]または[10]に記載の被めっき層付き基板。
[12] 上記[9]~[11]のいずれか1つに記載の被めっき層付き基板と、上記被めっき層付き基板中の上記被めっき層上に配置された金属層とを含む、導電性フィルム。
[13] 上記[12]に記載の導電性フィルムを含む、タッチパネルセンサー。
[14] 上記[13]に記載のタッチパネルセンサーを含む、タッチパネル。
【0012】
[15] 上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の前駆体フィルムを露光する露光工程と、露光した上記フィルムを現像する現像工程と、現像した上記フィルムを加熱成形する成形工程と、成形した上記フィルムにめっきするめっき工程とを含む、導電性フィルムの製造方法。
[16] 上記成形工程において、60℃~120℃で加熱成形する、上記[15]に記載の導電性フィルムの製造方法。
[17] 上記現像工程において、露光した前駆体フィルムをアルカリ性水溶液を用いて洗浄し、次いで、水を用いて洗浄する、上記[15]または[16]に記載の導電性フィルムの製造方法。
【0013】
[18] 2官能のラジカル重合性モノマーと、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーとを含み、
上記2官能のラジカル重合性モノマーは、2つのラジカル重合性基を連結する連結鎖の主鎖の原子数が25個~100個である、被めっき層形成用組成物。
[19] 上記2官能のラジカル重合性モノマーのラジカル重合性基が、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、および、メタクリルアミド基からなる群から選択される、上記[18]に記載の被めっき層形成用組成物。
[20] 上記2官能のラジカル重合性モノマーが、ポリオキシアルキレン基を有する、上記[18]または[19]に記載の被めっき層形成用組成物。
[21] 上記2官能のラジカル重合性モノマーが、式(100)で表される化合物である、上記[18]~[20]のいずれか1つに記載の被めっき層形成用組成物。
【化2】
ただし、式(100)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、nは9~33の整数を表す。
[22] 上記めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーが、共役ジエン化合物由来の繰り返し単位、および、不飽和カルボン酸またはその誘導体由来の繰り返し単位を有するポリマーである、上記[18]~[21]のいずれか1つに記載の被めっき層形成用組成物。
[23] 上記めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーが、ブタジエン-マレイン酸共重合体である、上記[18]~[22]のいずれか1つに記載の被めっき層形成用組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来よりも低温で成形する場合であっても、被めっき層前駆体を硬化してなる被めっき層の延伸性に優れる、導電性フィルムを製造するための前駆体フィルムを提供できる。
【0015】
また、本発明によれば、被めっき層付き基板、導電性フィルム、タッチパネルセンサー、タッチパネル、導電性フィルムの製造方法、および、被めっき層形成用組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】メッシュ状の被めっき層を有する基板の上面図である。
【
図2】3次元形状を有する被めっき層付き基板の一実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明について詳述する。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明における図は発明の理解を容易にするための模式図であり、各層の厚みの関係または位置関係などは必ずしも実際のものとは一致しない。
【0018】
本発明の導電性フィルムを製造するための前駆体フィルム(以下、単に「本発明の前駆体フィルム」という場合がある。)の特徴点の一つとしては、被めっき層前駆体層が、特定の連結鎖長を有する2官能のラジカル重合性モノマーと、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーとを含む点が挙げられる。
【0019】
本発明では、連結鎖の主鎖の原子数が25個~100個である2官能のラジカル重合性モノマーを用いることにより、ポリマーの架橋点間の間隔を大きくし、被めっき層前駆体層を露光して生じる三次元架橋ポリマーのガラス転移温度を下げることができ、従来よりも低温で成形することができるようになったと考えられる。
【0020】
[導電性フィルムを製造するための前駆体フィルム]
本発明の導電性フィルムを製造するための前駆体フィルム(以下、単に「本発明の前駆体フィルム」という場合がある。)は、基板と、基板上に配置された被めっき層前駆体層とを含む。
【0021】
〈基板〉
基板は、2つの主面を有し、後述するパターン状被めっき層を支持するものであれば、その種類は特に制限されない。基板としては、絶縁基板が好ましく、より具体的には、樹脂基板、セラミック基板、および、ガラス基板などを使用することができる。
樹脂基板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアミド、ポリアリレート、ポリオレフィン、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、および、シクロオレフィン系樹脂などが挙げられる。
樹脂基板は、ガラス転移温度が100℃以下の樹脂からなる基板が好ましく、とりわけ、ポリプロピレン系樹脂基板、ポリメチルメタクリレート系樹脂基板およびポリエチレンテレフタレート系樹脂基板からなる群から選択されるいずれか1種が好ましい。
なお、樹脂のガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)、熱機械分析(TMA)または動的粘弾性測定(DMA)などにより測定することができる。
【0022】
基板の厚み(mm)は特に制限されないが、取り扱い性および薄型化のバランスの点から、0.05mm~2mmが好ましく、0.1mm~1mmがより好ましい。
また、基板は、光を適切に透過することが好ましい。具体的には、基板の全光線透過率は、85%~100%であることが好ましい。
【0023】
また、基板は複層構造であってもよく、例えば、その一つの層として機能性フィルムを含んでいてもよい。なお、基板自体が機能性フィルムであってもよい。特に限定はされないが、機能性フィルムの例として、偏光板、位相差フィルム、カバープラスチック、ハードコートフィルム、バリアフィルム、粘着フィルム、電磁波遮蔽フィルム、発熱フィルム、アンテナフィルム、および、タッチパネル以外のデバイス用配線フィルムなどが挙げられる。
特にタッチパネルと関係する液晶セルに用いられる機能性フィルムの具体例として、偏光板としてはNPFシリーズ(日東電工社製)またはHLC2シリーズ(サンリッツ社製)など、位相差フィルムとしてはWVフィルム(富士フイルム社製)など、カバープラスチックとしてはFAINDE(大日本印刷製)、テクノロイ(住友化学製)、ユーピロン(三菱瓦斯化学製)、シルプラス(新日鐵住金製)、ORGA(日本合成化学製)、SHORAYAL(昭和電工製)など、ハードコートフィルムとしてはHシリーズ(リンテック社製)、FHCシリーズ(東山フィルム社製)、KBフィルム(KIMOTO社製)などが使用できる。これらは、各機能性フィルムの表面上にパターン状被めっき層を形成してもよい。
また、偏光板および位相差フィルムにおいては特開2007-26426号公報に記載のようにセルローストリアセテートが用いられることがあるが、めっきプロセスに対する耐性の観点から、セルローストリアセテートをシクロオレフィン(コ)ポリマーに変えて使用することもでき、例えばゼオノア(日本ゼオン製)などが挙げられる。
【0024】
〈プライマー層〉
プライマー層は、上述した基板と後述する被めっき層前駆体層の間に配置される層である。
プライマー層の厚みは特に制限されないが、0.01~100μmが好ましく、0.05~20μmがより好ましい。
プライマー層の材料は特に制限されず、基板との密着性が良好な樹脂であることが好ましい。樹脂としては、例えば、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、および、ポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0025】
後段で詳述するように、プライマー層は、所定の成分を含むプライマー層形成用組成物を用いて形成されることが好ましい。
プライマー層形成用組成物は、上述した樹脂またはその前駆体、および、溶媒を含むことが好ましい。
【0026】
〈被めっき層前駆体層および被めっき層形成用組成物〉
上記被めっき層前駆体層は、2官能のラジカル重合性モノマー(以下、単に「2官能モノマー」という場合がある。)と、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマー(以下、単に「相互作用性ポリマー」という場合がある。)とを含む。
【0027】
本発明の前駆体フィルムにおいて、上記被めっき層前駆体層は、後述する被めっき層形成用組成物により形成されることが好ましい。
上記被めっき層形成用組成物は、2官能モノマーと、相互作用性ポリマーとを含む。
なお、基板上に被めっき層前駆体層を形成する方法については後述する。
被めっき層前駆体層の厚みは特に制限されないが、0.01~100μmが好ましく、0.05~20μmがより好ましい。
【0028】
上記2官能モノマーは、2つのラジカル重合性基を連結する連結鎖の主鎖の原子数が25個~100個である。
ここで、連結鎖の主鎖とは、2つのラジカル重合性基を連結する連結鎖の、最も長く直線状に結合した部分をいう。
【0029】
以下、上記被めっき層前駆体層および被めっき層形成用組成物に含まれる各成分について説明する。
【0030】
《2官能モノマー》
上記2官能モノマーは、2つのラジカル重合性基を連結する連結鎖の主鎖の原子数が25個~100個であるものであれば、特に限定されない。なお、ここで、主鎖の原子数は、骨格を構成する原子の数をいうものとする。例えば、主鎖中のオキシエチレン単位「-CH2-CH2-O-」の原子数は3である。
【0031】
(連結基の主鎖の原子数)
2つのラジカル重合性基を連結する連結鎖の主鎖の原子数は、25個~100個であり、好ましくは30個~100個であり、より好ましくは40個~100個であり、さらに好ましくは50個~100個である。
【0032】
(ラジカル重合性基)
上記ラジカル重合性基は、特に限定されるものではないが、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、および、スチリル基が挙げられ、好ましくはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、および、メタクリルアミド基からなる群から選択される。
ここで、アクリロイルオキシ基は式(A)で表される基(IUPAC名:プロプ-2-エノイルオキシ基)であり、メタクリロイルオキシ基は式(B)で表される基(IUPAC名:2-メチルプロプ-2-エノイルオキシ基)である。*は、結合位置を表す。なお、IUPACは、国際純正・応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)の略称である。
【0033】
【0034】
また、アクリルアミド基は式(C)で表される官能基であり、メタクリルアミド基は式(D)で表される官能基である。*は、結合位置を表す。
【0035】
【化4】
ただし、式(C)および式(D)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基の種類は特に制限されず、公知の置換基(例えば、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基など。より具体的には、アルキル基またはアリール基など。)が挙げられる。Rとしては、水素原子が好ましい。*は、結合位置を表す。
【0036】
Rが水素原子である場合、式(C)はプロプ-2-エナミジル基を表し、式(D)は2-メチルプロプ-2-エナミジル基を表す。
【0037】
2官能モノマーは、ポリオキシアルキレン基を有することが好ましい。
ポリオキシアルキレン基とは、オキシアルキレン基を繰り返し単位として有する基である。ポリオキシアルキレン基としては、式(E)で表される基が好ましい。
式(E) -(A-O)m-
Aは、アルキレン基を表す。アルキレン基中の炭素数は特に制限されないが、1~4が好ましく、2~3がより好ましい。例えば、Aが炭素数1のアルキレン基の場合、-(A-O)-はオキシメチレン基(-CH2O-)を、Aが炭素数2のアルキレン基の場合、-(A-O)-はオキシエチレン基(-CH2CH2O-)を、Aが炭素数3のアルキレン基の場合、-(A-O)-はオキシプロピレン基(-CH2CH(CH3)O-、-CH(CH3)CH2O-または-CH2CH2CH2O-)を示す。なお、アルキレン基は、直鎖状でも、分岐鎖状でもよい。
【0038】
mは、オキシアルキレン基の繰り返し数を表し、2以上の整数を表す。繰り返し数mは、連結鎖の主鎖の原子数が25個~100個の範囲内となるように制限される。
なお、複数のオキシアルキレン基中のアルキレン基の炭素数は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、式(E)においては、-(A-O)-で表される繰り返し単位が複数含まれており、各繰り返し単位中のアルキレン基中の炭素数は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、-(A-O)m-において、オキシメチレン基とオキシプロピレン基とが含まれていてもよい。
また、複数種のオキシアルキレン基が含まれる場合、それらの結合順は特に制限されず、ランダム型でもブロック型でもよい。
【0039】
(2官能(メタ)アクリレートモノマー)
ラジカル重合性基がアクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基からなる群から選択される場合、2官能モノマーの好適な例として、式(1)で表される化合物が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の包括的名称として使用される。
【0040】
【0041】
式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、Aは、アルキレン基を表し、pは、オキシアルキレン単位(A-O)の繰り返し数を表す。
Aの定義は、式(E)中のAの定義と同じである。
L1およびL2は、単結合または2価の連結基を表す。上記2価の連結基の種類は特に制限されないが、例えば、2価の炭化水素基(2価の飽和炭化水素基であっても、2価の芳香族炭化水素基であってもよい。2価の飽和炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよく、炭素数1~20が好ましく、例えば、アルキレン基が挙げられる。また、2価の芳香族炭化水素基は、炭素数5~20が好ましく、例えば、フェニレン基が挙げられる。それ以外にも、アルケニレン基、アルキニレン基であってもよい。)、2価の複素環基、-O-、-S-、-SO2-、-NR10-、-CO-(-C(=O)-)、-COO-(-C(=O)O-)、-NR10-CO-、-CO-NR10-、-SO3-、-SO2NR10-、および、これらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。ここで、R10は、水素原子またはアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。
なお、上記2価の連結基中の水素原子は、ハロゲン原子など他の置換基で置換されていてもよい。
【0042】
上記pは、2つのラジカル重合性基を連結する“-L1-(A-O)p-L2-”の主鎖の原子数が25個~100個の範囲内となる整数である。
【0043】
式(1)で表される化合物の好適態様としては、式(10)で表される化合物が挙げられる。
【0044】
【0045】
式(10)中、R1、R2およびAは、それぞれ、式(1)中のR1、R2およびAと同義であり、qは、オキシアルキレン単位(A-O)の繰り返し数を表す。
【0046】
上記qは、2つのラジカル重合性基を連結する“-(A-O)q-1-A-”の主鎖の原子数が25個~100個の範囲内となる整数である。例えば、Aがエチレン基を表す場合、qは3~33の整数であり、Aがn-プロピレン基を表す場合、qは6~24の整数である。
【0047】
上記式(1)で表される化合物としては、式(100)で表される化合物がより好ましい。
【0048】
【0049】
式(100)中、R1およびR2は、それぞれ、式(1)中のR1およびR2と同義であり、nは9~33の整数である。
【0050】
式(100)で表される化合物の具体例として、R1およびR2がともに水素原子またはメチル基であり、n=9、14または23であるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
(2官能(メタ)アクリルアミドモノマー)
ラジカル重合性基がアクリルアミド基およびメタクリルアミド基からなる群から選択される場合、2官能モノマーの好適な例として、式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0052】
【0053】
式(2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、L1およびL2は、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表し、Aは、アルキレン基を表し、rは、オキシアルキレン単位(A-O)の繰り返し数を表す。
Aの定義は、式(E)中のAの定義と同じである。
L1およびL2の定義は、式(1)中のL1およびL2の定義と同じである。
【0054】
R3およびR4で表される置換基の種類は特に制限されず、公知の置換基(例えば、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基など。より具体的には、アルキル基、アリール基など。)が挙げられる。
【0055】
上記rは、2つのラジカル重合性基を連結する“-L1-(A-O)p-L2-”の主鎖の原子数が25個~100個の範囲内となる整数である。
【0056】
式(2)で表される化合物の好適態様としては、式(20)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
【0058】
式(20)中、R1、R2およびAは、それぞれ、式(2)中のR1、R2およびAと同義であり、L3およびL4は、それぞれ独立に、-O-、炭素数1~4のアルキレン基、式(F)で表される基、または、これらを組み合わせた2価の連結基を表し、sは、オキシアルキレン単位(A-O)の繰り返し数を表す。
【0059】
【0060】
式(F)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、*は、結合位置を表す。
【0061】
上記sは、2つのラジカル重合性基を連結する“-L3-(A-O)s-L4-”の主鎖の原子数が25個~100個の範囲内となる整数である。
【0062】
(2官能モノマーの含有量)
被めっき層前駆体層(または、被めっき層形成用組成物)における2官能モノマーの含有量は特に制限されず、全固形分に対して、10質量%~90質量%の場合が多いが、被めっき層前駆体層のタック性がより抑制される点で、全固形分に対して、20質量%~80質量%が好ましく、被めっき層の延伸性とめっき析出性とのバランスがより優れる点で、25質量%~75質量%がより好ましい。
ここで、固形分とは、被めっき層を構成する成分を意図し、溶媒は含まれない。なお、被めっき層を構成する成分であれば、その性状が液体状であっても、固形分に含まれる。
【0063】
《相互作用性ポリマー》
相互作用性ポリマーは、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基(以下、単に「相互作用性基」という場合がある。)を有するポリマーである。
【0064】
(相互作用性基)
相互作用性基とは、被めっき層に付与されるめっき触媒またはその前駆体と相互作用できる官能基を意図し、例えば、めっき触媒またはその前駆体と静電相互作用を形成可能な官能基、ならびに、めっき触媒またはその前駆体と配位形成可能な含窒素官能基、含硫黄官能基、および、含酸素官能基が挙げられる。
上記相互作用性基としては、例えば、アミノ基、アミド基、イミド基、ウレア基、3級のアミノ基、アンモニウム基、アミジノ基、トリアジン基、トリアゾール基、ベンゾトリアゾール基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、キナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、および、シアネート基などの含窒素官能基;エーテル基、水酸基、フェノール性水酸基、カルボン酸基、カーボネート基、カルボニル基、エステル基、N-オキシド構造を含む基、S-オキシド構造を含む基、および、N-ヒドロキシ構造を含む基などの含酸素官能基;チオフェン基、チオール基、チオウレア基、チオシアヌール酸基、ベンズチアゾール基、メルカプトトリアジン基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸基、および、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基;ホスフェート基、ホスフォロアミド基、ホスフィン基、および、リン酸エステル構造を含む基などの含リン官能基;塩素原子、および、臭素原子などのハロゲン原子を含む基などが挙げられ、塩構造をとりうる官能基においてはそれらの塩も使用できる。
上記相互作用性基としては、極性が高く、めっき触媒またはその前駆体などへの吸着能が高いことから、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、および、ボロン酸基などのイオン性極性基、または、シアノ基が好ましく、カルボン酸基、または、シアノ基がより好ましい。
上記相互作用性ポリマーは、相互作用性基を2種以上有していてもよい。
【0065】
上記相互作用性ポリマー中には、相互作用性基を有する繰り返し単位が含まれることが好ましい。
相互作用性基を有する繰り返し単位の一好適態様としては、式(G)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0066】
【0067】
式(G)中、R5は、水素原子またはアルキル基を表し、L5は、単結合または2価の連結基を表し、Xは、相互作用性基を表す。
【0068】
上記アルキル基は、特に限定されないが、炭素数が1~5のアルキル基が好ましく、炭素数が1~3のアルキル基がより好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、2-プロピル基(イソプロピル基)およびプロピル基(n-プロピル基)が挙げられ、なかでも、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0069】
上記2価の連結基は、特に限定されないが、例えば、2価の炭化水素基(2価の飽和炭化水素基であっても、2価の芳香族炭化水素基であってもよい。2価の飽和炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよく、炭素数1~20が好ましく、例えば、アルキレン基が挙げられる。また、2価の芳香族炭化水素基は、炭素数5~20が好ましく、例えば、フェニレン基が挙げられる。それ以外にも、アルケニレン基、アルキニレン基であってもよい。)、2価の複素環基、-O-、-S-、-SO2-、-NR10-、-CO-(-C(=O)-)、-COO-(-C(=O)O-)、-NR10-CO-、-CO-NR10-、-SO3-、-SO2NR10-、および、これらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。ここで、R10は、水素原子またはアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。
なお、上記2価の連結基中の水素原子は、ハロゲン原子など他の置換基で置換されていてもよい。
【0070】
上記相互作用性基は、上述したとおりである。
【0071】
相互作用性基を有する繰り返し単位の他の好適態様としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体由来の繰り返し単位が挙げられる。
不飽和カルボン酸とは、カルボン酸基(-COOH基)を有する不飽和化合物である。不飽和カルボン酸の誘導体とは、例えば、不飽和カルボン酸の無水物、不飽和カルボン酸の塩、不飽和カルボン酸のモノエステルなどが挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、および、シトラコン酸などが挙げられる。
【0072】
上記相互作用性ポリマー中における相互作用性基を有する繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、被めっき層の延伸性およびめっき析出性のバランスの点で、全繰り返し単位に対して、1~90モル%が好ましく、30~70モル%がより好ましい。
【0073】
(重合性官能基)
上記相互作用性ポリマーは、さらに、重合性官能基を有していてもよい。
重合性官能基とは、エネルギー付与により、化学結合を形成しうる官能基を意図し、例えば、ラジカル重合性官能基、および、カチオン重合性官能基などが挙げられる。
上記重合性官能基としては、反応性がより優れる点から、ラジカル重合性官能基が好ましい。
上記ラジカル重合性官能基としては、例えば、アルケニレン基、アクリル酸エステル基(アクリロイルオキシ基)、メタクリル酸エステル基(メタクリロイルオキシ基)、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基などの不飽和カルボン酸エステル基、スチリル基、ビニル基、アクリルアミド基、および、メタクリルアミド基などが挙げられる。
上記重合性基は、相互作用性ポリマーの主鎖および側鎖のいずれに含まれていてもよい。例えば、アルケニレン基が主鎖中に含まれる態様であってもよい。
【0074】
(相互作用性ポリマーの好適態様)
上記相互作用性ポリマーの好適態様としては、少ないエネルギー付与量(例えば、露光量)にて被めっき層が形成しやすい点で、共役ジエン化合物由来の繰り返し単位、および、不飽和カルボン酸またはその誘導体由来の繰り返し単位を有するポリマーXが挙げられる。
不飽和カルボン酸またはその誘導体由来の繰り返し単位の説明は、上述の通りである。
【0075】
共役ジエン化合物としては、一つの単結合で隔てられた、二つの炭素-炭素二重結合を有する分子構造を有する化合物であれば特に制限されない。
共役ジエン化合物としては、例えば、イソプレン、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、2,4-ヘプタジエン、1,3-オクタジエン、2,4-オクタジエン、3,5-オクタジエン、1,3-ノナジエン、2,4-ノナジエン、3,5-ノナジエン、1,3-デカジエン、2,4-デカジエン、3,5-デカジエン、2,3-ジメチル-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ペンタジエン、3-フェニル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、2-ヘキシル-1,3-ブタジエン、3-メチル-1,3-ヘキサジエン、2-ベンジル-1,3-ブタジエン、および、2-p-トリル-1,3-ブタジエンなどが挙げられる。
【0076】
なかでも、ポリマーXの合成が容易で、被めっき層の特性がより優れる点で、共役ジエン化合物由来の繰り返し単位は、式(3)で表されるブタジエン骨格を有する化合物由来の繰り返し単位であることが好ましい。
【0077】
【0078】
式(3)中、R6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表す。炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基など。炭素数1~12が好ましい。)、および、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ナフチル基など。)が挙げられる。複数あるR6は同一であっても異なっていてもよい。
【0079】
式(3)で表されるブタジエン骨格を有する化合物(ブタジエン構造を有する単量体)としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-n-プロピル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1-α-ナフチル-1,3-ブタジエン、1-β-ナフチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、1-ブロム-1,3-ブタジエン、1-クロルブタジエン、2-フルオロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジクロル-1,3-ブタジエン、および、1,1,2-トリクロル-1,3-ブタジエン、および、2-シアノ-1,3-ブタジエンなどが挙げられる。
【0080】
ポリマーX中における共役ジエン化合物由来の繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、25~75モル%であることが好ましい。
ポリマーX中における不飽和カルボン酸またはその誘導体由来の繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、25~75モル%であることが好ましい。
【0081】
(相互作用性ポリマーの重量平均分子量)
上記相互作用性ポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、取扱い性がより優れる点で、10000~700000が好ましく、20000~500000がより好ましい。
【0082】
(相互作用性ポリマーの具体例)
上記相互作用性ポリマーの具体例としては、1,3-ブタジエンと無水マレイン酸との交互共重合体であるブタジエン-マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸、および、ポリメタクリル酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
(相互作用性ポリマーの含有量)
被めっき層前駆体層(または、被めっき層形成用組成物)における上記相互作用性ポリマーの含有量は特に制限されず、全固形分に対して、10質量%~90質量%の場合が多いが、被めっき層前駆体層のタック性がより抑制される点で、全固形分に対して、20質量%~80質量%が好ましく、被めっき層の延伸性とめっき析出性とのバランスがより優れる点で、25質量%~75質量%がより好ましい。
ここで、固形分とは、被めっき層を構成する成分を意図し、溶媒は含まれない。なお、被めっき層を構成する成分であれば、その性状が液体状であっても、固形分に含まれる。
【0084】
上記相互作用性ポリマーの質量と上記2官能モノマーの質量の比(相互作用性ポリマーの質量/2官能モノマーの質量)は特に制限されず、0.1~10の場合が多いが、被めっき層前駆体層のタック性がより抑制される点で、0.3~3.0が好ましく、0.5~1.5がより好ましい。
【0085】
《重合開始剤》
本発明において、被めっき層前駆体層(または、被めっき層形成用組成物)は、重合開始剤を含んでもよい。重合開始剤が含まれることにより、露光処理の際の重合性官能基間の反応がより効率的に進行する。
重合開始剤としては特に制限はなく、公知の重合開始剤(いわゆる光重合開始剤)などを用いることができる。重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、α-アミノアルキルフェノン類、ベンゾイン類、ケトン類、チオキサントン類、ベンジル類、ベンジルケタール類、オキスムエステル類、アンソロン類、テトラメチルチウラムモノサルファイド類、ビスアシルフォスフィノキサイド類、アシルフォスフィンオキサイド類、アントラキノン類、アゾ化合物等およびその誘導体を挙げることができる。
被めっき層形成用組成物中における重合開始剤の含有量は、特に制限されないが、被めっき層の硬化性の点で、2官能モノマーおよび相互作用性ポリマーの合計100質量%に対して、0.1質量%~20質量%が好ましく、1質量%~10質量%がより好ましい。
【0086】
《溶媒》
被めっき層形成用組成物には、取扱い性の点から、溶媒が含まれることが好ましい。
使用できる溶媒は特に限定されず、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶媒;酢酸などの酸;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶媒;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶媒;この他にも、エーテル系溶媒、グリコール系溶媒、アミン系溶媒、チオール系溶媒、および、ハロゲン系溶媒などが挙げられる。
この中でも、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、または、カーボネート系溶媒が好ましい。
被めっき層形成用組成物中の溶媒の含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、50質量%~98質量%が好ましく、70質量%~98質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、パターン状被めっき層の層厚の制御などがしやすい。
【0087】
《その他の添加剤》
被めっき層形成用組成物には、他の添加剤(例えば、増感剤、硬化剤、重合禁止剤、酸
化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、フィラー、粒子、難燃剤、界面活性剤、滑剤、お
よび、可塑剤など)を必要に応じて添加してもよい。
【0088】
《被めっき層形成用組成物の製造方法》
被めっき層形成用組成物の製造方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。例えば、上述した各成分を一括して混合する方法、または、各成分を段階的に混合する方法などが挙げられる。
【0089】
〈前駆体フィルムの製造方法〉
上述した被めっき層形成用組成物を用いて、基板上に被めっき層前駆体層を形成できる。なお、被めっき層前駆体層とは、硬化処理を施すことにより被めっき層となる前駆体層であり、硬化処理が施される前の未硬化の状態の層である。
【0090】
被めっき層前駆体層の製造方法としては、以下の工程を有する方法が好ましい。
工程1:基板とプライマー層形成用組成物とを接触させ、基板上にプライマー層を形成し、次いで、基板上に形成したプライマー層に被めっき層形成用組成物を接触させ、基板上にプライマー層と被めっき層前駆体層とを形成する工程
【0091】
工程1は、基板とプライマー層形成用組成物とを接触させて、基板上にプライマー層を形成し、さらに、基板上に形成したプライマー層と被めっき層形成用組成物とを接触させて、基板上にプライマー層と被めっき層前駆体層とを形成する工程である。本工程を実施することにより、基板と、基板上に配置されたプライマー層と、プライマー層上に配置された被めっき層前駆体層とを有する被めっき層前駆体層付き基板が得られる。
【0092】
基板とプライマー層形成用組成物とを接触させる方法は、特に制限されないが、プライマー層形成用組成物を基板上に塗布する方法、または、プライマー層形成用組成物中に基板を浸漬する方法が挙げられる。
また、基板上に形成したプライマー層と被めっき層形成用組成物層とを接触させる方法は、特に制限されないが、プライマー層を形成した基板のプライマー層上にめっき層形成用組成物を塗布する方法、または、プライマー層を形成した基板をプライマー中に浸漬する方法が挙げられる。
なお、基板とプライマーとを接触させた後、必要に応じて、プライマー層から溶媒を除去するために、乾燥処理を実施してもよい。また、基板上に形成されたプライマー層と被めっき層形成用組成物とを接触させた後、必要に応じて、被めっき層前駆体層から溶媒を除去するために、乾燥処理を実施してもよい。
【0093】
[被めっき層付き基板]
本発明の被めっき層付き基板は、本発明の前駆体フィルム中の被めっき層前駆体層を硬化してなる被めっき層を有する。
【0094】
上述した本発明の前駆体フィルムを用いて、被めっき層付き基板を製造できる。なお、被めっき層とは、後述するめっき処理が施される層であり、めっき処理によりその表面上に金属層が形成される。
被めっき層付き基板の製造方法としては、以下の工程を有する方法が好ましい。
【0095】
工程2:前駆体フィルム中の被めっき層前駆体層に硬化処理を施し、被めっき層を形成する工程
【0096】
工程2は、被めっき層前駆体層に硬化処理を施し、被めっき層を形成する工程である。
硬化処理の方法は特に制限されず、加熱処理および露光処理(光照射処理)が挙げられる。なかでも、処理が短時間で終わる点で、露光処理が好ましい。硬化処理により、被めっき層前駆体層中の化合物に含まれる重合性基が活性化され、化合物間の架橋が生じ、層の硬化が進行する。
なお、上記硬化処理(特に、露光処理)を実施する際には、所望のパターン状被めっき層が得られるように、パターン状に硬化処理を施してもよい。例えば、所定の形状の開口部を有するマスクを用いて露光処理を行うことが好ましい。なお、パターン状に硬化処理を施した被めっき層前駆体層に対して、現像処理を施すことにより、パターン状被めっき層が形成される。
現像処理の方法は特に制限されず、使用される材料の種類に応じて、最適な現像処理が実施される。現像液としては、例えば、有機溶媒、純水、および、アルカリ水溶液が挙げられるが、好ましくはアルカリ水溶液である。アルカリ水溶液の例としては、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、および、炭酸水素カリウム水溶液などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
上記方法により、被めっき層形成用組成物を硬化して得られる被めっき層が基板上に配置される。つまり、基板と、基板上に配置された被めっき層とを有する、被めっき層付き基板が得られる。
【0098】
被めっき層の平均厚みは特に制限されないが、0.05~100μmが好ましく、0.07~10μmがより好ましく、0.1~3μmがさらに好ましい。
上記平均厚みは、被めっき層の垂直断面を電子顕微鏡(例えば、走査型電子顕微鏡)にて観察して、任意の10点の厚みを測定して、それらを算術平均した平均値である。
【0099】
被めっき層は、パターン状に形成されてもよい。例えば、被めっき層は、メッシュ状に形成されていてよい。
図1においては、基板10上に、メッシュ状の被めっき層12が配置されている。
被めっき層12のメッシュを構成する細線部の線幅Wの大きさは特に制限されないが、被めっき層上に形成される金属層の導電特性および視認しづらさのバランスの点で、30μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましく、5μm以下が特に好ましく、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。
【0100】
図1においては、開口部14は略菱形の形状を有しているが、この形状に制限されず、他の多角形状(例えば、三角形、四角形、六角形、ランダムな多角形)としてもよい。また、一辺の形状を直線状のほか、湾曲形状にしてもよいし、円弧状にしてもよい。円弧状とする場合は、例えば、対向する2辺については、外方に凸の円弧状とし、他の対向する2辺については、内方に凸の円弧状としてもよい。また、各辺の形状を、外方に凸の円弧と内方に凸の円弧が連続した波線形状としてもよい。もちろん、各辺の形状を、サイン曲線にしてもよい。
【0101】
開口部14の一辺の長さLは特に制限されないが、1500μm以下が好ましく、1300μm以下がより好ましく、1000μm以下がさらに好ましく、5μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、80μm以上がさらに好ましい。開口部の一辺の長さが上記範囲である場合には、後述する導電性フィルムの透明性がより優れる。
【0102】
なお、上述した被めっき層付き基板を変形させて、3次元形状を有する被めっき層付き基板としてもよい。つまり、上述した被めっき層付き基板を変形させることにより、3次元形状を有する基板と、この基板上に配置された被めっき層(または、パターン状の被めっき層)とを有する被めっき層付き基板(3次元形状を有する被めっき層付き基板)が得られる。
上述したように、上記被めっき層形成用組成物を硬化させて得られる被めっき層は、延伸性に優れ、基板の変形に追従して、その形状を変えることができる。
被めっき層付き基板の変形方法は特に制限されず、例えば、真空成形、ブロー成形、フリーブロー成形、圧空成形、真空-圧空成形、および、熱プレス成形などの公知の方法が挙げられる。
例えば、
図2に示すように、被めっき層付き基板の一部を半球状に変形させて、半球状の形状を有する被めっき層付き基板20としてもよい。なお、
図2においては、被めっき層は図示しない。
なお、上記では3次元形状を付与する態様について述べたが、一軸延伸または二軸延伸のような延伸処理を被めっき層付き基板に施して、その形状を変形させてもよい。
被めっき層付き基板を成形する際の加熱温度は、特に限定されないが、60℃~120℃の範囲内の温度が好ましく、80℃~120℃の範囲内の温度がより好ましい。
【0103】
なお、上記では被めっき層付き基板を変形する態様について述べたが、この態様には制限されず、上述した被めっき層前駆体層付き基板を変形させた後、上述した工程2を実施して、3次元形状を有する被めっき層付き基板を得てもよい。
また、上記では被めっき層前駆体層に対してパターン状に硬化処理を施してパターン状の被めっき層を形成する態様について述べたが、この態様には制限されず、基板上にパターン状に被めっき層前駆体層を配置して、このパターン状の被めっき層前駆体層に硬化処理を施すことにより、パターン状の被めっき層を形成することもできる。なお、パターン状に被めっき層前駆体層を配置する方法としては、例えば、スクリーン印刷法またはインクジェット法にて被めっき層形成用組成物を基板上の所定の位置に付与する方法が挙げられる。
【0104】
[導電性フィルム、タッチパネルセンサーおよびタッチパネル]
本発明の導電性フィルムは、本発明の被めっき層付き基板と、被めっき層付き基板中の被めっき層上に配置された金属層とを含む。また、本発明のタッチパネルセンサーは、本発明の導電性フィルムを含み、本発明のタッチパネルは、本発明のタッチパネルセンサーを含む。
【0105】
上述した被めっき層付き基板中の被めっき層に対して、めっき処理を施して、被めっき層上に金属層を形成することができる。特に、被めっき層が基板上にパターン状に配置される場合は、そのパターンに沿った金属層(パターン状金属層)が形成される。
金属層を形成する方法は特に制限されないが、例えば、被めっき層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程3、および、めっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層に対してめっき処理を施す工程4を実施することが好ましい。
以下、工程3および工程4の手順について詳述する。
【0106】
工程3は、被めっき層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程である。被めっき層には上記相互作用性基が含まれているため、相互作用性基がその機能に応じて、付与されためっき触媒またはその前駆体を付着(吸着)する。
めっき触媒またはその前駆体は、めっき処理の触媒または電極として機能する。そのため、使用されるめっき触媒またはその前駆体の種類は、めっき処理の種類により適宜決定される。
【0107】
めっき触媒またはその前駆体は、無電解めっき触媒またはその前駆体が好ましい。
無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば特に制限されず、例えば、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)が挙げられる。具体的には、Pd、Ag、Cu、Pt、Au、および、Coなどが挙げられる。
この無電解めっき触媒としては、金属コロイドを用いてもよい。
無電解めっき触媒前駆体は、化学反応により無電解めっき触媒となるものであれば特に制限されず、例えば、上記無電解めっき触媒として挙げた金属のイオンが挙げられる。
【0108】
めっき触媒またはその前駆体を被めっき層に付与する方法としては、例えば、めっき触媒またはその前駆体を溶媒に分散または溶解させた溶液を調製し、その溶液を被めっき層上に塗布する方法、または、その溶液中に被めっき層付き基板を浸漬する方法が挙げられる。
上記溶媒としては、例えば、水または有機溶媒が挙げられる。
【0109】
工程4は、めっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層に対してめっき処理を施す工程である。
めっき処理の方法は特に制限されず、例えば、無電解めっき処理、または、電解めっき処理(電気めっき処理)が挙げられる。本工程では、無電解めっき処理を単独で実施してもよいし、無電解めっき処理を実施した後にさらに電解めっき処理を実施してもよい。
以下、無電解めっき処理、および、電解めっき処理の手順について詳述する。
【0110】
無電解めっき処理とは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる処理である。
無電解めっき処理の手順としては、例えば、無電解めっき触媒が付与された被めっき層付き基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒を除去した後、無電解めっき浴に浸漬することが好ましい。使用される無電解めっき浴としては、公知の無電解めっき浴を使用できる。
なお、一般的な無電解めっき浴には、溶媒(例えば、水)の他に、めっき用の金属イオン、還元剤、および、金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれる。
【0111】
被めっき層に付与されためっき触媒またはその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒またはその前駆体が付与された被めっき層に対して、電解めっき処理を施すことができる。
なお、上述したように、上記無電解めっき処理の後に、必要に応じて、電解めっき処理を行うことができる。このような形態では、形成される金属層の厚みを適宜調整可能である。
【0112】
なお、上記では工程3を実施する形態について述べたが、めっき触媒またはその前駆体が被めっき層に含まれる場合、工程3を実施しなくてもよい。
【0113】
上記処理を実施することにより、被めっき層上に金属層が形成される。つまり、被めっき層付き基板と、被めっき層付き基板中の被めっき層上に配置された金属層とを含む、導電性フィルムが得られる。
なお、形成したいパターン状金属層の形状に合わせて、パターン状被めっき層を基板上に配置することにより、所望の形状のパターン状金属層を有する導電性フィルムを得ることができる。例えば、メッシュ状の金属層を得たい場合は、メッシュ状の被めっき層を形成すればよい。
また、3次元形状を有する被めっき層付き基板を用いて、上記工程3および4を実施した場合、3次元形状を有する導電性フィルムが得られる。
【0114】
上記手順によって得られた導電性フィルム(特に、3次元形状を有する導電性フィルム)は、各種用途に適用できる。例えば、タッチパネルセンサー、半導体チップ、FPC(Flexible printed circuits)、COF(Chip on Film)、TAB(Tape Automated Bonding)、アンテナ、多層配線基板、および、マザーボードなどの種々の用途に適用できる。なかでも、タッチパネルセンサー(特に、静電容量式タッチパネルセンサー)に用いることが好ましい。上記導電性フィルムをタッチパネルセンサーに適用する場合、パターン状金属層がタッチパネルセンサー中の検出電極または引き出し配線として機能する。このようなタッチパネルセンサーは、タッチパネルに好適に適用できる。
また、導電性フィルムは、発熱体として用いることもできる。例えば、パターン状金属層に電流を流すことにより、パターン状金属層の温度が上昇して、パターン状金属層が熱電線として機能する。
【0115】
3次元形状を有する導電性フィルムの3次元形状部分は成形前と比べて配線パターンが変形され、基板は薄くなっている。その結果、両面にパターン状金属層を有し、かつ、3次元形状を有する導電性フィルムをタッチパネルセンサーとして用いた場合、配線パターンであるパターン状金属層の面積が拡大した部分のΔCm値が小さくなり、基板が薄くなったところはΔCm値が大きくなる。
そのため、本発明では、上記のような問題に対して、各アドレスごとにΔCmの範囲を個別設定することにより対応できる。
また、上記対応方法以外にも、例えば、成形時のパターン状金属層の変形の程度を考慮して、成形後のΔCm値が面内で概ね一定になるよう、成形前の状態でのパターン状金属層の配置位置を調整する方法も挙げられる。
さらに、3次元形状を有する導電性フィルム中のパターン状金属層上に重ねるカバーフィルムの厚みを変えることで、面内においてΔCm値を概ね一定にすることもできる。
なお、これらの方法を組み合わせも用いることもできる。
【0116】
3次元形状を有する導電性フィルムの自己支持性を高めるために、インサート成形を利用してもよい。例えば、3次元形状を有する導電性フィルムを金型に配置して樹脂を金型内に充填し、導電性フィルム上に樹脂層を積層してもよい。また、めっき処理を施す前の被めっき層付き基板に3次元形状を付与した後、3次元形状を有する被めっき層付き基板を金型に配置して樹脂を金型内に充填し、得られた積層体に対してめっき処理を施して、自己支持性に優れる導電性フィルムを作製してもよい。
【0117】
また、3次元形状を有する導電性フィルムを加飾する場合、例えば、加飾フィルムを成形しながら、3次元形状を有する導電性フィルムに貼り合わせてもよい。具体的には、TOM(Three dimension Overlay Method)成形を用いることができる。
また、3次元形状を有する導電性フィルムに直接塗装を施して、加飾してもよい。
また、被めっき層前駆体層を形成する前の基板の表面及び/又は裏面上に、加飾層を配置してよい。また、基板の一方の面上に被めっき層前駆体層が配置される場合、基板の他方の面上に加飾層を形成してもよいし、加飾フィルムを貼り合わせてもよい。
さらに、加飾フィルムを用いたインモールド成形またはインサート成形により、3次元形状を有する導電性フィルムに加飾を施してもよい。
【0118】
なお、本発明の導電性フィルムの製造方法の一態様としては、上述した前駆体フィルムを露光する工程(上記「工程2」の露光処理(光照射処理)に相当する)と、露光したフィルムを現像する工程(上記「工程2」の現像処理に相当する)と、現像したフィルムを成形する工程(上記「工程2」の後の被めっき層付き基板を変形させる処理に相当する)と、成形したフィルムにめっきする工程(上記「工程3」および「工程4」に相当する)とを含んでもよい。
【実施例】
【0119】
以下では実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0120】
[実施例1]
1.被めっき層形成用組成物の調製
ブタジエン-マレイン酸共重合体(以下「BMA」と略称することがある。)(和光純薬工業社製;42質量%水溶液)をBMA正味量として50質量部と、ライトアクリレート9EG-A(共栄社化学社製;式(101)で表される化合物;連結鎖長=26;以下「9EG-A」と略称することがある。)50質量部と、IRGACURE OXE02(BASFジャパン株式会社製)2.5質量部とを、溶媒としてイソプロピルアルコール2000質量部に溶解させて、被めっき層形成用組成物(以下「被めっき層形成用組成物1」という場合がある。)を調製した。
【0121】
【0122】
2.前駆体フィルムの作製
基板(ポリエチレンテレフタレートフィルム;ノアクリスタル-V,RP東プラ社製厚み300μm;ガラス転移温度72℃)上に厚み0.8μmのプライマー層が形成されるように、基板上にアイカアイトロンZ-913-3(アイカ工業社製)を塗布し、次に、得られた塗膜に対してUV(紫外線)照射し、塗膜を硬化させ、プライマー層を形成した。
次に、得られたプライマー層上に厚み0.9μmの被めっき層前駆体層が形成されるように、プライマー層上に被めっき層形成用組成物1を塗布して、被めっき層前駆体層付き基板を得た。
【0123】
3.導電性フィルムの作製
以下の説明中の符号(10、12、14、20、W、およびL)は、
図1または
図2中におけるものと同一である。
(1)露光処理
次に、作製した前駆体フィルムを15cm角に裁断したものを用いて、細線部の幅Wが5μmで、開口部の一辺の長さLが300μmであるメッシュ状の被めっき層12が形成されるように、所定の開口パターンを有する石英マスクを介して、メタルハライド光源にて被めっき層前駆体層を露光(0.2J)した。なお、前駆体フィルムを15cm角に裁断したものは、複数準備し、複数のサンプルを作製した。
(2)現像処理
2.1)水現像
1つ以上のサンプルについて、室温の水を用いて、露光処理がされた被めっき層前駆体層をシャワー洗浄し、現像処理を行い、メッシュ状の被めっき層12を有する基板(被めっき層付き基板)を作製した(
図1参照)。以下、現像を水のみで行った被めっき層付き基板を「被めっき層付き基板(水現像)」という場合がある。
2.2)アルカリ現像
他の1つ以上のサンプルについて、3.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、露光処理がされた被めっき層前駆体層をシャワー洗浄し、次いで、室温の水を用いて、被めっき層前駆体層をシャワー洗浄し、現像処理を行い、メッシュ状の被めっき層12を有する基板(被めっき層付き基板)を作製した(
図1参照)。以下、現像処理の際に炭酸ナトリウム水溶液による洗浄を行った被めっき層付き基板を「被めっき層付き基板(アルカリ現像)」という場合がある。
(3)成形
次に、90℃に調温したオーブンにて、直径10cmの半球状の凹部を有する金型を1時間以上加熱した。金型が90℃に昇温してから、金型をオーブンから取り出し、耐熱テープを用いて、凹部の開口を覆うように、作製したパターン状被めっき層付き基板を金型に貼り付けた。金型を素早くオーブンに戻して、金型を90℃で30秒間放置したのち、半球状の凹部の底部にある空気穴から5秒間にわたって真空吸引し、半球状の形状を有する被めっき層付き基板20を得た(
図2参照)。
(4)めっき処理
次に、得られた半球状の形状を有する被めっき層付き基板(以下、単に「立体形状被めっき層付き基板」という場合がある。)を炭酸ナトリウム1質量%水溶液に常温にて5分間浸漬し、取り出した立体形状被めっき層付き基板を純水にて2回洗浄した。次に純水に5分間浸漬した後、Pd触媒付与液(オムニシールド1573アクチベーター、ローム・アンド・ハース電子材料社製)に30℃にて5分間浸漬し、その後、取り出した立体形状被めっき層付き基板を純水にて2回洗浄した。
次に、得られた立体形状被めっき層付き基板を還元液(サーキュポジットP13オキサイドコンバーター60C、ローム・アンド・ハース電子材料社製)に30℃にて5分間浸漬し、その後、取り出した立体形状被めっき層付き基板を純水にて2回洗浄した。
次に、得られた立体形状被めっき層付き基板を無電解めっき液(サーキュポジット4500、ローム・アンド・ハース電子材料社製)に45℃にて15分間浸漬し、その後、取り出した立体形状被めっき層付き基板を純水にて洗浄して、メッシュ状の金属層(パターン状金属層)を有する、半球状の形状に成形された導電性フィルムを得た。
【0124】
4.断線評価および未露光部における銅の析出評価
(1)断線評価
半球状の形状に成形された導電性フィルムの断線を、光学顕微鏡を用いて検査し、断線箇所数を記録した。結果を表1の「断線箇所数」の欄に示す。なお、断線箇所数とは、半球の天頂部2cm角の領域において光学顕微鏡で視認された断線の数を表す。
(2)未露光部における銅の析出評価
半球状の形状に成形された導電性フィルムの未露光部におけるめっき銅析出領域(以下「異常析出領域」という場合がある。)を、光学顕微鏡を用いて検査し、異常析出領域数を記録した。結果を表1の「異常析出領域数」の欄に示す。ここで、現像を水のみで行ったものの異常析出領域数は「水現像」の欄に、現像をアルカリ水溶液と水で行ったものの異常析出数は「アルカリ現像」の欄に、それぞれ示す。なお、異常析出領域数とは、半球の天頂部2cm角の領域において光学顕微鏡で視認された異常析出領域の数を表す。
【0125】
[実施例2]
ライトアクリレート9EG-Aに代えて、ライトアクリレート14EG-A(共栄社化学社製;式(102)で表される化合物;連結鎖長=41;以下「14EG-A」と略称する場合がある。)を使用した点を除いて、実施例1と同様にした。
【0126】
【0127】
[実施例3]
ライトアクリレート9EG-Aに代えて、NKエステルA-1000(新中村化学工業社製;式(103)で表される化合物;連結鎖長=68;以下「A-1000」と略称する場合がある。)を使用した点を除いて、実施例1と同様にした。
【0128】
【0129】
[実施例4]
ライトアクリレート9EG-Aに代えて、ライトエステル9EG(共栄社化学社製;式(104)で表される化合物;連結鎖長=26;以下「9EG」と略称する場合がある。)を使用した点を除いて、実施例1と同様にした。
【0130】
【0131】
[実施例5]
ライトアクリレート9EG-Aに代えて、ライトエステル14EG(共栄社化学社製;式(105)で表される化合物;連結鎖長=41;以下「14EG」と略称する場合がある。)を使用した点を除いて、実施例1と同様にした。
【0132】
【0133】
[実施例6]
ライトアクリレート9EG-Aに代えて、NKエステル23G(新中村化学工業社製;式(106)で表される化合物;連結鎖長=68;以下「23G」と略称する場合がある。)を使用した点を除いて、実施例1と同様にした。
【0134】
【0135】
[実施例7]
IRGACURE OXE02に代えて、Omnirad127(IGM Resins B.V.製)を使用し、露光時の光源をDeep UVランプ(ウシオ電機株式会社製)とした点を除いて、実施例1と同様にした。
【0136】
[比較例1]
ライトアクリレート9EG-Aに代えて、式(201)で表される2官能アクリルアミド(連結鎖長=13;公開技報2013-502654の段落[0187]に従って合成したもの;以下、「A」と略称する場合がある。)を使用した点を除いて、実施例1と同様にした。
【0137】
【0138】
[比較例2]
ライトアクリレート9EG-Aに代えて、ライトアクリレート4EG-A(共栄社化学社製;式(107)で表される化合物;連結鎖長=11;以下「4EG-A」と略称する場合がある。)を使用した点を除いて、実施例1と同様にした。
【0139】
【0140】
[比較例3]
ライトアクリレート9EG-Aに代えて、ライトエステル4EG(共栄社化学社製;式(108)で表される化合物;連結鎖長=11;以下「4EG」と略称する場合がある。)を使用した点を除いて、実施例1と同様にした。
【0141】
【0142】
【0143】
[結果の説明]
〈断線箇所数〉
実施例1~7は、断線箇所数が0であり、被めっき層は優れた延伸性を有していた。
これに対して、比較例1~3は、断線箇所数が10箇所以上であり、被めっき層の延伸性が劣っていた。
これは、ラジカル重合性基間の連結鎖長が長いことにより、90℃という従来よりも低い温度で成形した場合であっても、被めっき層の延伸性が十分であり、断線が回避されたものと推定される。
【0144】
〈異常析出領域数〉
実施例1~3は、2官能モノマーとして、連結鎖長が異なる2官能アクリレートモノマーを用いた例である。水現像の場合は、連結鎖が長いほど、異常析出領域数が少なくなる傾向が認められたが、アルカリ現像の場合は、連結鎖の長さによる異常析出領域数の違いは認められず、連結鎖が短くても、異常析出領域数が0であり、優れていた。
実施例4~6は、2官能モノマーとして、連結鎖長が異なる2官能メタクリレートモノマーを用いた例である。実施例1~3と同様に、水現像の場合は、連結鎖が長いほど、異常析出領域数が少なくなる傾向が認められたが、アルカリ現像の場合は、連結鎖の長さによる異常析出領域数の違いは認められず、連結鎖が短くても、異常析出領域数が0であり、優れていた。
比較例2および3は、2官能モノマーとして、それぞれ、連結鎖長が11のアクリレートモノマーおよび連結鎖長が11のメタクリレートモノマーを用いた例である。異常析出領域数が多く、劣っていた。その理由としては、まず、2官能アクリレートモノマーおよび2官能メタクリレートモノマーのオキシエチレンの繰り返し単位数が少なくて疎水性が高いほど、プライマー層との親和性が高くなる。そのため、プライマー層への相互作用性ポリマーの浸透が促進され、相互作用性ポリマーが浸透したプライマー層は、めっき活性を有するため、被めっき層のパターンにかかわらず、めっきされてしまう部分が生じることによるものであると考えられる。
比較例1は、2官能モノマーとして、連結鎖長が13のアクリルアミドモノマーを用いた例である。アクリルアミドモノマーは、2官能アクリレートモノマーおよび2官能メタクリレートモノマーに比べ、相互作用性ポリマーのプライマー層への浸透が抑制されため、異常析出領域が認められなかったものと考えられる。
【符号の説明】
【0145】
10 基板
12 メッシュ状の被めっき層
14 開口部
20 半球状の形状を有する被めっき層付き基板
W 細線部の線幅
L 開口部の一辺の長さ