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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】自走式作業機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/64 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
A01D34/64 H
A01D34/64 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018033917
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019146531
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-10-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年2月19日付配布の株式会社ササキコーポレーション「電動作業機スマモ」カタログにて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年2月19日、株式会社ササキコーポレーションホームページ(http://www.sasaki-corp.co.jp/topix/2018/180219info/2018smart-kokuchi.html)に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年2月19日、農経しんぽう第10面にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年2月19日、農村ニュース第10面にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年2月20日、農機新聞第13面にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100086184
【弁理士】
【氏名又は名称】安原 正義
(72)【発明者】
【氏名】甲地 重春
(72)【発明者】
【氏名】梅田 洵平
(72)【発明者】
【氏名】田中 健
(72)【発明者】
【氏名】栗原 英治
(72)【発明者】
【氏名】山下 晃平
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176153(JP,A)
【文献】特開平06-285267(JP,A)
【文献】実公平07-039422(JP,Y2)
【文献】特開昭63-198914(JP,A)
【文献】特開平01-289411(JP,A)
【文献】米国特許第05600943(US,A)
【文献】特開2009-027991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00
A01D 34/412 - 34/90
A01B 69/00 - 69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
該本体部の進行方向左右側に設けられ、駆動走行をさせる走行モータを有した走行部と、
前記本体部及び走行部の前方に位置し、作業をするための作業部と、
前記作業部の前方部および側方部に配置され、前記作業部の前方と側方を保護する保護部材と、
前記作業部の前方側の進行方向左右両側に配置され、前記作業部の側方から円周の一部を突出させた案内輪と、
前記案内輪の左右それぞれの上部には、前部識別部材と、
前記本体部の後方部に設けられ、後方側に面を向けられた後部識別部材と、
を備えたことを特徴とした自走式草刈機。
【請求項2】
前記前部識別部材及び前記後部識別部材は進行方向の左右でそれぞれ異なる色彩である、
ことを特徴とした請求項に記載の自走式草刈機。
【請求項3】
前記案内輪は、進行方向の左右でそれぞれ異なる色彩を有している、
ことを特徴とした請求項1又は2に記載の自走式草刈機。
【請求項4】
前記自走式草刈機は、作業者によって遠隔操作される送信機から発信された制御信号を受信することによって制御する制御部と、
をさらに備えたことを特徴とした請求項1乃至3のいずれかに記載の自走式草刈機。
【請求項5】
前記作業部は、草刈り作業をするための水平回転する刈刃を有した刈刃部と、
をさらに備えたことを特徴とした請求項1乃至4のいずれかに記載の自走式草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式草刈機に係る。詳細には、作業者により操作されて草刈等の作業が可能な自走式草刈機に係る。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の自走草刈機が公知となっている。この自走草刈機は、走行部を有する機体と、機体前方部に設けられた平面刈り用の刈刃部とを有し、前記刈刃部の回転刈刃は、左右に3か所以上設けられていて、それぞれの左右方向位置が変更可能であると共に、前記機体の左右両側に位置する前記刈刃部の回転刈刃は、左右方向の傾斜角度を変更可能である、ことを特徴とする自走草刈機である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-176153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の自走式草刈機は、自走式草刈機から離れた作業者によって遠隔操作されるため、自走式草刈機の作業部の周囲状況を詳細には確認できない問題がある。また、特許文献1に記載の自走式草刈機のように、進行方向前方に作業部を有した自走式作業機の場合は、前方に存在する障害物は草に覆われて視認できないため、予想外の障害物に衝突し、作業部が損傷する問題がある。また、遠方から遠隔操作され、周囲を草等に囲まれた自走式草刈機は、機体の向きを作業者が正確に視認し難く、作業者が機体の向きを判断することに時間を要するため、瞬時に自走式草刈機向きを判断し、操作を開始できない問題がある。
【0005】
したがって本発明は、上記問題に着眼してなされたものであり、衝突による作業部及び刈刃部の損傷を防ぐと共に、作業を継続させ、さらに、前方及び後方及び上方からの視認性が向上する自走式作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本体部と、本体部の進行方向左右側に設けられ、駆動走行をさせる走行モータを有した走行部と、前記本体部及び走行部の前方に位置し、作業をするための作業部と、前記作業部の前方部および側方部に配置され、前記作業部の前方と側方を保護する保護部材と、前記作業部の前方側の進行方向左右両側に配置され、前記作業部の側方から円周の一部を突出させた案内輪と、前記案内輪の左右それぞれの上部には、前部識別部材と、前記本体部の後方部に設けられ、後方側に面を向けられた後部識別部材と、を備えたことを特徴とした自走式草刈機であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衝突による作業部及び刈刃部の損傷を防ぐと共に、作業を継続させ、さらに、前方及び後方及び上方からの視認性が向上する自走式作業機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の自走式草刈機の平面図である。
図2】本発明の一実施形態の自走式草刈機の左側面図である。
図3】本発明の一実施形態の自走式草刈機の正面図である。
図4】本発明の一実施形態の自走式草刈機の背面図である。
図5】本発明の別実施形態の自走式草刈機の後部の一部を示し、(a)は自走式草刈機の後部平面図であり、(b)は自走式草刈機の後部左側面図であり、(c)は自走式草刈機の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付すことがある。但し、図面は模式的なものであり、各部の寸法との関係等は現実のものとは異なることがある。
又、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
図1乃至図5は、本発明の一実施形態である自走式草刈機1を示している。説明においては、図1の左側方向を自走式草刈機1の作業進行方向に対する前方、図1の右側方向を作業進行方向に対する後方、図1の上方向を作業進行方向に対する右方向、図1の下方向を作業進行方向に対する左方向として説明する。また、本発明の実施の形態の説明において、左右に同様の機能を有する部分がある場合には、左にあるものには「L」との接尾語を付し、右にあるものには「R」との接尾語を付し、両者をまとめて呼ぶ場合、又は単独で呼ぶ場合は、接尾語を付さないことがある。例えば、左後部識別部材を22Lとし、右後部識別部材を22Rとしても、両者の区別をしない場合には、後部識別部材を22と呼ぶことがある。
【0011】
図1に示す自走式草刈機1は、機体の本体骨格となる本体部2と、本体部2の進行方向左右側に設けられ、クローラベルト35を駆動させる走行モータ31を有した走行部3と、本体部2及び走行部3の前方に位置し、作業をするための作業部4を備えている。この実施形態において、作業部4は草を刈る作業をする。作業部4の前方側には、保護部6を設けていて、作業部4及び作業部4に設けられた刈刃部5を保護する。また、本体部2の上部で後方側には、走行モータ31及び作業部4に備えられた刈刃モータ51の駆動源であるバッテリ7と、本体部2の上部で前方側には走行部3及び作業部4の駆動や操舵等の制御を行う制御部8が設置されている。さらに、制御部8に制御信号を発信する送信機9を作業者が操作することによって、自走式草刈機1は操作され、走行すると共に地面の雑草等を刈る。
【0012】
前記本体部2は、本体フレーム20と、本体フレーム20の上部を覆う本体カバー21と、後部識別部材22と、を備えている。本体フレーム20は、複数の角パイプを進行方向と平行方向又は直交する方向に組み合わせて、各々水平に配置し、格子状に固着されている。本体フレーム20の上部には、本体フレーム20の上部を覆うように、ほぼ六面体の下方を開口した形状の本体カバー21が取り付けられている。本体カバー21は、本体フレーム20の上部に設置されたバッテリ7及び制御部8を覆っていて、本体フレーム20の上部への異物の侵入を防止している。
【0013】
本体カバー21の後方側の面には、後部識別部材22が設けられている。この実施形態において、後部識別部材22は60乃至80mmの円形のラベル材で本体カバー21の後方に貼りつけられている。後部識別部材22は、大きく設けられていて、面が後方に向いているため、後方からの視認性が良い。本体部後方の進行方向左右両側にそれぞれ設けられる後部識別部材22は、進行方向左側に設けられた左後部識別部材22Lと、進行方向右側に設けられた右後部識別部材22Rとがある。左後部識別部材22Lと、右後部識別部材22Rとは、それぞれの色彩が異なるように設けられている。この実施形態において、左後部識別部材22Lは黄色、右後部識別部材22Rは赤色で彩色され、草等に本体部2の大半が隠れていても目立つように設けられている。作業者は、色彩が異なると共に大きく設けられた左後部識別部材22Lと右後部識別部材22Rを容易に視認することできる。また、作業者は、視認した部分が本体部2の後方であることが認識できると共に、本体部2の左右を認識できる。さらに、作業者が左後部識別部材22Lと右後部識別部材22Rを視認すると、色彩によって左後部識別部材22Lと右後部識別部材22Rの間隔や傾き具合も認知できるので、本体部2の向きが把握できる。
【0014】
本体部2の進行方向の左右のそれぞれ側方には、走行部3が配置されている。走行部2は、走行部2の骨格である走行フレーム30と、走行フレーム30の後方側の上方部に支持される走行モータ31と、走行モータ31に取り付けられる駆動輪32と、走行フレーム30の後方側の下方部に支持される転輪33と、走行フレーム30の前方側に支持される従動輪34と、前記駆動輪32と転輪33と従動輪34に巻きつけられるクローラベルト35と、を備えている。
【0015】
走行フレーム30は、進行方向前後方向に長い板を図4に示すようにコの字状に折り曲げ、コの字の開口部を下方に向けた形状で、本体フレーム20の進行方向左右それぞれの端部に固着されている。
走行フレーム30の前方には従動輪34が位置していて、回転自在に取り付けられている。従動輪34の回転軸は進行方向と直交する向きに設定されている。この実施形態での従動輪34の外径は220mmとしている。
走行フレーム30の後方下部には転輪33が回転自在に取り付けられ、回転軸は従動輪34と平行である。この実施形態での転輪の外径は120mmとしている。
【0016】
走行フレーム30の後方上部には走行モータ31が固着されている。走行モータ31は、ハウジング31aの進行方向左右両側から出力軸31bを設けている。走行モータ31は、走行フレーム30の後方側上部に設けられた支持フレーム30aによって出力軸31bを固着している。出力軸31bを支持フレーム30aと固着させることによりハウジング31aが回転する。この走行モータ31の回転軸は進行方向と直交する向きであり、従動輪34及び転輪33の回転軸と平行である。
【0017】
ハウジング31a左右中間部の外周側には、駆動輪32が回転軸を走行モータ31の回転軸と同軸に取り付けられる。走行モータ31に取り付けられた駆動輪32は、走行モータ31の駆動によって回転駆動する。また駆動輪32は、外周に凹凸状の歯部を複数有している。この実施形態での駆動輪32の歯先径は260mmである。駆動輪32はクローラベルト35を周転駆動させ、自走式草刈機1を前後に走行可能にしている。
【0018】
ここで本体部2と走行部3の高さの相関関係の説明をする。駆動輪32の回転軸は本体フレーム20より高位に位置し、従動輪34及び転輪33の回転軸は本体フレーム20より低位に位置している。このことにより、本体フレーム20下面の地上高160mm程度の腰高に設けられ、刈り取った後の雑草を跨いで走行が可能になり、地上の雑草を引きずることが無い。また、自走式草刈機1の全高である本体カバー21の上面部の高さは400mmであり、高さが低い梁等の構造物を潜りながら走行ができる。
【0019】
上方に位置する障害物を避けるために全高を低く抑えられた自走式草刈機1は、生長した雑草の全高より低い位置にあり、周囲を草に囲まれても、左右異なる色彩で目立つ色を有した左後部識別部材22Lと右後部識別部材22Rを、作業者が草の隙間から容易に視認できる。
【0020】
本体部2及び走行部3の進行方向前方には作業部4が位置している。作業部4は、作業部4を本体部2と連結し昇降可能にする昇降アーム41と、作業部4を昇降させる昇降アクチュエータ42と、昇降アーム41の前方に取り付けられる刈刃ハウジング43と、刈刃ハウジング43内に配置される刈刃部5と、刈刃ハウジング43の前方部に設けられた保護部6を備える。
【0021】
昇降アーム41は、進行方向左右のそれぞれに前後方向に向けて配置されたアーム部材のそれぞれ中央部を繋ぐように、梁部材41aが固着された図1に示す平面視H字状の部材である。梁部材41aは後述する昇降アクチュエータ42の取付部分である。昇降アーム41の後部には上下方向に旋回自在にするための支点41bが、進行方向の左右両側のそれぞれに設けられている。昇降アーム41は、本体フレーム20の進行方向の左右それぞれの端部側の上部に固着された支点支持部41cに取り付けられ、上下に旋回自在である。支点支持部41cは、平面視コの字状の部材で、開口部を前方に向けられている。
【0022】
昇降アーム41を上下方向に旋回駆動するために昇降アクチュエータ42が設けられる。昇降アクチュエータ42は、一端を本体フレーム20の上部に支持され、他端を梁部材41aの下面に取り付けられる。昇降アーム41は昇降アクチュエータ42によって支点41bを軸にして上下に旋回駆動される。
【0023】
昇降アーム41の進行方向の前端部には、後述する刈刃ハウジング43を取り付けるための取付部材41eが固着されている。取付部材41eは、矩形状の板を図2に示す左側面視でクランク状に折り曲げられ、クランク凸部を上方に向けている。取付部材41eの下面には刈刃ハウジング43が取り付けられている。
【0024】
刈刃ハウジング43は、水平に配置した矩形状の板を進行方向後方側の角部を丸められた形状をしている。刈刃ハウジング43の進行方向左右の幅は、本体部2の左右に設けられた前記走行部の全幅と同じ、又は、それより広く設けられている。さらに、刈刃ハウジング43の進行方向左右側面から後方の角部にかけた端部の下面には、板状の側面カバー43aが垂れ下げられるように固着されている。側面カバー43aの後方側の中央部は、開口されて開口部43bを形成している。開口部43bは、後述する刈刃ハウジング43下部に位置する刈刃部5で刈られ、側面カバー43aの内側面で後方側に誘導された草を後方に排出する。刈刃ハウジング43の上面部は本体フレーム20の高さと同じ又はそれより低い高さに設定されているので、草の後方側への排出は本体フレーム20に干渉することなく円滑に実施される。
【0025】
刈刃ハウジング43の下面には、1個以上の刈刃部5が取り付けられている。この実施形態において、刈刃部5は2個配置されている。刈刃部5は、刈刃モータ51と、刈刃モータ51で回転駆動されて草を刈る刈刃53と、刈刃53の取付基部である刈刃基部54、刈刃基部54の下方に位置し刈刃53と地面との距離を一定に保つ接地体56と、を備える。
【0026】
刈刃モータ51は、刈刃ハウジング43の下方に位置させ、出力軸51aを下方に向けて配置させている。刈刃モータ51は、モータケース52に取り付けられ固定されている。モータケース52は段付きの筒状部材で、上下方向にその筒部を向けている。モータケース52の筒部は上方部が下方部より直径が大きく設けられている。筒部内側に設けられた段付部上面に刈刃モータ51が固定されている。
【0027】
刈刃モータ51の出力軸51aには、板状の刈刃基部54の中心部が接続されている。刈刃基部54は刈刃モータ51によって、回転軸を垂直方向にして水平方向に回転駆動が可能である。刈刃基部54の外周部には複数の刈刃53が回転自在に等間隔で取り付けられている。この実施形態では、刈刃基部54は矩形状であり、刈刃基部54に取り付けられる刈刃53は4個である。刈刃53は、刈刃モータ51で発生させた回転動力を刈刃基部54を介して水平方向に回転し、刈刃ハウジング43に侵入した草を刈る。刈取り後の草は、刈刃ハウジング43後方の開口部43bから排出される。
刈刃基部54の下方部には、接地体56が取り付けられている。接地体56は地面と刈刃53の距離を一定に保ち、刈刃53が地面に接触することを防ぐ。
【0028】
刈刃ハウジング43の前方部及び側方部には、保護部6が配置されている。保護部6は、支持部材61と、保護部材62と、案内輪63と、前部識別部材64と、を備えている。
支持部材61は、刈刃ハウジング43の上面の左右両側のそれぞれに、進行方向の前後方向に向けて、固着された部材である。さらに、支持部材61の後方側の端部は前記取付部材41eの前方側に固着され、前端は刈刃ハウジング43の前端より前方に位置している。この実施形態において支持部材61は、開口部を下方に向けたコの字部材で、開口部を刈刃ハウジング43の上面に固着している。
【0029】
支持部材61の前端部には、保護部材62が固着されている。保護部材62はパイプ部材で、進行方向と直交する左右方向に向けられて水平に配置されている。保護部材62は刈刃ハウジング43の前端より前方に位置している。走行時、構造物等の障害物に刈刃ハウジング43の前方が近接しても、先に保護部材62が衝突することで、刈刃ハウジング43及び、刈刃部5の破損を防ぐことができる。
【0030】
さらに、保護部材62の左右側方側の端部は、後方側に直角に折り曲げられて折り曲げ部62aを形成し、さらに後方に伸びた部分は側方部62bを形成している。折り曲げ部62aは大きな円弧を描くように設定されている。保護部材62の左右側方に形成された側方部62bは、刈刃ハウジング43の側方端部より側方外側に位置している。折り曲げ部62a及び側方部62bは、走行時、構造物等の障害物に対し刈刃ハウジング43の前方角部が近接しても、折り曲げ部62a及び側方部62bが先に衝突する。結果、刈刃ハウジング43、及び、刈刃部5への直接の衝突と、衝突による破損を防ぐことができる。また、折り曲げ部62aの設定によって、自走式草刈機1の進行方向と障害物の面とに、角度を付けながら近接した場合は、衝突しても障害物の面と折り曲げ部62aを強制的に擦るように走行の続行ができると共に、折り曲げ部62aに倣いながら進行方向を強制的に側方部62bと平行になるまで進路を変更できる。この実施形態において、自走式草刈機1の進行方向と障害物の面の角度差は1乃至35度である。さらに、折り曲げ部62aは、草等が引っかかることなく後方へ流せるので、走行モータ31への負荷を低減できる。
【0031】
進行方向左右それぞれに設けられる側方部62bの上部には、案内輪63が設けられている。案内輪63は、前記折り曲げ部62aの機能を補助することが可能なローラ状の部材で、回転軸となる中心には孔が設けられている。案内輪63の孔は、前記保護部材62及び側方部62b上に設けられた矩形板状の基部63aに、垂直で上方に向けて固着されたピン63bに挿入されている。ピン63bの上部はプリベリングトルク形ナット63cが螺入されていて、案内輪63は回転自在であると共に、抜け落ちることが無い。この実施形態において、案内輪63の直径は70乃至90mmで、案内輪63上端面の地上からの高さは200乃至220mmに設定されている。案内輪35の外周面の一部は、側方部62bよりさらに側方外側に設けられている。この実施形態では、案内輪63は側方部62bより10乃至40mm外側に出ている。また、案内輪35は、保護部材62より進行方向後方に位置している。
【0032】
自走式草刈機1が進行方向に対し、障害物の面に角度を付けながら近接しさらに案内輪63の外周面に接触した場合、案内輪63は障害物の面に押し付けられることでピン63bを軸に回転する。自走式草刈機1がさらに前進すると、案内輪63の回転によってさらに前進すると共に、障害物の面に倣いながら進行方向を強制的に障害物の面と平行になるまで変更される。案内輪63は、相対的に障害物の面を転動するような動きをすることで、刈刃ハウジング43及び刈刃部5への衝突を回避できる共に、強制的に進行方向を変更できる。この実施形態において、自走式草刈機1の進行方向と障害物の面の角度差は1乃至30度が好適である。
【0033】
進行方向左右側のそれぞれに設けられた案内輪63は、それぞれで色彩が異なる。色彩は塗色又は着色により設けられる。この実施形態においては、案内輪63そのものに着色され、左案内輪63Lは黒色、右案内輪63Rは白色に設定されている。左案内輪63Lと右案内輪63Rは、それぞれの色彩が異なることで、遠方からの視認性が良好である共に、作業者にとって作業部4の左右方向が認識しやすい。作業部4の左右方向の視認性向上は、自走式草刈機1の方向を認知し易くなるため、作業者による遠隔操作性の向上に繋がる。
【0034】
案内輪63の左右両側のそれぞれの上部には、前部識別部材64が設けられる。前部識別部材64は案内輪63の外周径より小さい径、又は、外周径と同じ径の円形で、左右それぞれで彩色が異なるように設定されている。左案内輪63Lの上部には左前部識別部材64L、右案内輪64Lの上部には右前部識別部材64Rがそれぞれ設けられる。この実施形態において、左前部識別部材64Lは黄色、右前部識別部材64Rは赤色に設定されている。また、この実施形態では、自走式草刈機1の前方部に位置する左案内輪63Lと右案内輪63Rの回転軸間、及び、左前部識別部材64L、右案内輪64Lの中心距離は、本体部2の後部に設けられている後部識別部材22の中心間距離よりも広く、さらに、走行部3の幅より広く設けられている。前部識別部材64の設定によって、機体高さが低い自走式草刈機1は、作業者からの目線となる上方からの視認性の向上が図られている。生長した草地に侵入した自走式草刈機1の上方から作業部4の左右方向及び全幅を前部識別部材64によって視認ができ、作業者は容易に自走式草刈機1の幅及び方向を把握できると共に、迷わずに遠隔操作できる。
【0035】
前記昇降アーム41及び刈刃ハウジング43及び支持部材61の上方を覆うように、作業部カバー45が設けられる。作業部カバー45は前記刈刃ハウジング43の上方部を覆い、前記本体カバー21に繋がるように形成されている。作業部カバー45の上面部は前方から後方にかけて上昇するように傾斜がかけられている。作業部カバー45は、刈刃ハウジング43の上部及び昇降アクチュエータ42へ、草や粉塵等などが侵入し堆積することを防ぐ。
【0036】
前記本体フレーム20の上部には、バッテリ7と制御部8が設置されている。バッテリ7と制御部8の周囲は、本体カバー21で覆われている。バッテリ7は、走行モータ31、刈刃モータ51、制御部8を作動させる電源である。バッテリ7の電源は電源ケーブル(図示せず)に接続した制御部8を経由して、走行モータ31と刈刃モータ51に分配される。制御部8は、後述する送信機9からの信号を制御部8に備えた受信部(図示せず)で受信し、受信した信号データに基づき制御部8によって走行モータ31及び刈刃モータ51の出力回転数を制御する。送信機9は、自走式草刈機1を遠隔操作するための装置である。作業者は送信機9に設けられたレバーやスイッチ(図示せず)を操作することによって、自走式草刈機1を作業者が10乃至30m程度遠く離れた場所から走行モータ31及び刈刃モータ51を駆動させ、意図する方向や速度で走行させ草を刈取ることが可能である。
【0037】
本発明の自走式草刈機1を使用した作業を説明する。作業者によって送信機9を用いて遠隔操作された自走式草刈機1は、作業部4を昇降アクチュエータ42によって降下させた後、走行モータ31によって駆動された走行部3で前進しながら、地面上の草を刈刃部5によって刈り取る。作業者によって遠隔操作された自走式草刈機1は、任意の場所を走行しながら草を刈る。
【0038】
一方で、生育した草に囲まれたことによって、作業者が自走式草刈機1の全体を視認できない場合、本体部2後方に設けた後部識別部材22、又は、案内輪63そのものの彩色、又は、案内輪63の上方部の前部識別部材64を視認することで、自走式草刈機1の向きや方向を認識できる。
他方、草丈が自走式草刈機1の全高より高く、作業者が自走式草刈機1の周囲を詳細に認識することができない場合がある。例えば、草の中に隠れているブロック材や杭材等の障害物が存在する場合である。この場合、作業者は障害物を発見できずに、自走式草刈機1を障害物に向かわせてしまうことがある。
【0039】
障害物が作業部4の進行方向前方の中央付近に位置している場合は、障害物は先に保護部材62の前方に衝突することで、刈刃ハウジング43及び刈刃部5及び作業部カバー45に直接衝突し損傷させることを防止する。衝突により、自走式草刈機1の進行が停止するので、作業者は送信機9の操作によって自走式草刈機1を後進させ、さらに進路変更をさせる。
障害物が作業部4の進行方向前方で側方に付近に位置している場合は、保護部材62の折り曲げ部62a及び、案内輪63によって相対的に自走式草刈機1の側方に押し退ける。このとき自走式草刈機1は、障害物を側方に側方に押し退けた反作用で、強制的に進行方向を変更し、継続して走行する。また、旋回動作等で障害物に対して斜め後方から衝突しても保護部材62、折り曲げ部62a、側方部62b、案内輪63によって、刈刃ハウジング43及び刈刃部5及び作業部カバー45を保護すると共に、自走式草刈機1は強制的に進行方向を変更し、継続走行する。作業終了後は、作業部4を昇降アクチュエータ42によって上昇させて作業を終了させる。
【0040】
以上のように構成した自走式草刈機1によって、衝突による作業部4及び刈刃部5の損傷を防ぐと共に、作業を継続させ、さらに、前方及び後方及び上方の作業者への視認性が向上する。
【0041】
さらに、別の実施形態を図5に基づいて説明をする。この実施形態では、後部識別部材22を、本体フレーム20の後端部に固着された識別基部23に設けたものである。識別基部23は、矩形状の板を直角に折り曲げ、後方に向けた折り曲げた面に後部識別部材22を設けたものである。識別基部23は、走行部3より後方で自走式草刈機1の最後端に位置させている。識別基部23は、後部識別部材22を後方に認識させる貼付基部としての機能のみならず、後進した際の衝突保護部材としても使用されるものである。識別基部23の設置によって、後進時に誤って障害物と衝突した際に本体カバー21に直接衝突を防ぎ、本体カバー21を損傷させない。この実施形態では、識別基部23の左右幅は、走行部3の幅より狭く設けられているが、走行部3の幅より広く設けても自走式草刈機1の機能を阻害しない。
【0042】
本発明は、上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示に基づく実施形態、実施例及び運用技術の改変は、当業者とって自明のことである。
【符号の説明】
【0043】
1 自走式草刈機
2 本体部
22 後部識別部材
22L 左後部識別部材
22R 右後部識別部材
3 走行部
31 走行モータ
4 作業部
43 刈刃ハウジング
5 刈刃部
6 保護部
61 支持部材
62 保護部材
63 案内輪
63L 左案内輪
63R 右案内輪
64 前部識別部材
64L 左前部識別部材
64R 右前部識別部材
図1
図2
図3
図4
図5